以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図11は、本実施の形態による硬貨処理装置およびこの硬貨処理装置による硬貨処理方法を示す図である。このうち、図1は、本実施の形態による硬貨処理装置の内部構成を示す側面図であり、図2は、図1に示す硬貨処理装置の内部構成を示す正面図である。また、図3は、図1等に示す硬貨処理装置における搬送部、入金繰出部、収納繰出部、一時保留部等の構成の詳細を示す側面図である。また、図4Aは、図1等に示す硬貨処理装置における収納繰出部の構成の詳細を示す側面図であり、図4Bは、図4Aに示す収納繰出部の縦断面図である。また、図4Cおよび図4Dは、それぞれ、図4Aに示す収納繰出部の硬貨出入口におけるA−A矢視による断面図である。また、図5は、図1等に示す硬貨処理装置における入金繰出部の縦断面図である。また、図6は、図1等に示す硬貨処理装置の制御系の構成を示す機能ブロック図である。また、図7乃至図11は、それぞれ、図1等に示す硬貨処理装置による硬貨の入金処理、出金処理、補充処理、回収処理、精査処理の動作を示す図である。
図1および図2に示すように、本実施の形態による硬貨処理装置10は略直方体形状の筐体12を有しており、この筐体12内の上部には硬貨の入出金処理を行う入出金部13が配設されている。また、筐体12内の下部には、入出金部13に硬貨を補充するとともに入出金部13から硬貨を受け入れる補充回収部14が配設されている。入出金部13および補充回収部14は、メンテナンス時や硬貨詰まり等のエラー発生時に鍵による解錠操作によって筐体12から前方または後方に引き出し可能となっている。
筐体12の前側上面には、入金する硬貨を受け入れるとともに内部から送り出される硬貨を払い出す入出金口21が設けられている。また、筐体12の前面には、入金する硬貨と一緒に混入した異物等を返却する異物返却口22が設けられている。
入出金口21の下側には、硬貨を受収する受皿23が配設されており、この受皿23の反転によって当該受皿23に受収された硬貨を下方へ放出可能としている。
図2に示すように、入出金部13内には、前面(図2の紙面の手前側)から見て上部が左側方向に所定角度で傾斜するベース24が配設されている。また、このベース24の上方に臨む表面側に、硬貨の搬送を行う搬送部25が配設されている。図1に示すように、搬送部25は、筐体12の前後方向(図1における左右方向)に略水平に設けられる第1の搬送部分26、この第1の搬送部分26の上方で筐体12の前後方向に略水平に設けられる第2の搬送部分27、ならびにこれらの第1の搬送部分26と第2の搬送部分27との後部間を上下方向に接続する第3の搬送部分28を有している。ここで、第2の搬送部分27から第3の搬送部分28および第1の搬送部分26へ向けて硬貨を搬送する方向を入金搬送方向F1と呼び、逆に、第1の搬送部分26から第3の搬送部分28および第2の搬送部分27へ向けて硬貨を搬送する方向を出金搬送方向F2と呼ぶ。
図1に示すように、搬送部25の第1の搬送部分26の前側に入金繰出部31が接続配置され、この第1の搬送部分26における入金繰出部31より後側および第2の搬送部分27に金種別の複数の収納繰出部32が接続配置されている。また、第2の搬送部分27における各収納繰出部32より前側に一時保留部38が接続配置され、第2の搬送部分27の前端が入出金口21に接続されている。
入金繰出部31は、搬送部25の第1の搬送部分26において入金搬送方向F1に搬送される硬貨を受け入れ可能とするとともに第1の搬送部分26に対して硬貨を出金搬送方向F2に繰り出し可能となっている。各収納繰出部32は、搬送部25の第1の搬送部分26や第2の搬送部分27において入金搬送方向F1に搬送される硬貨を分岐して受け入れ可能とするとともに第1の搬送部分26や第2の搬送部分27に対して硬貨を出金搬送方向F2に繰り出し可能となっている。また、一時保留部38は、搬送部25の第2の搬送部分27において出金搬送方向F2に搬送される硬貨を分岐して受け入れ可能とするとともに第2の搬送部分27に対して硬貨を入金搬送方向F1に繰り出し可能となっている。
また、入金繰出部31は、入出金口21および受皿23の下方に位置し、受皿23から放出される硬貨をシュート30を介して受収可能となっている。
搬送部25における第2の搬送部分27には、一時保留部38と収納繰出部32との間において、搬送される硬貨の少なくとも金種、真偽、正損等を適宜選択して識別する識別部33が配設されている。
図4Aに示すように、搬送部25は、ベース24の表面に形成されていて硬貨の面が接する通路面41、およびこの通路面41の両側で硬貨の周縁をガイドする両側のガイド部42を有している。また、図3等に示すように、搬送部25は、硬貨を一層一列状態で搬送する無端状の搬送体としてのベルト43を有しており、このベルト43は複数のプーリ44によって掛け回されている。
また、図4Aに示すように、通路面41に対向するベルト43の面からは複数のピン45が当該ベルト43の長手方向に沿って所定のピッチで突設されている。そして、隣り合う2つのピン45の間に硬貨を受け入れ、ベルト43の回転によりピン45で硬貨を押動させながら当該硬貨を搬送するようになっている。
搬送部25において、複数のプーリ44のうちある一つのプーリ44に接続された図示しないモータの駆動により、ベルト43は入金搬送方向F1および出金搬送方向F2の双方向に正逆転し、硬貨を正逆双方向へ搬送可能としている。
また、図3に示すように、搬送部25にはベルト43の長手方向に沿って複数の光学式の通過センサ29aが設けられており、ベルト43により搬送される硬貨が各通過センサ29aを通過したときにこのことが通過センサ29aによって検知されるようになっている。通過センサ29aは概ね後述する振分部材47や後述するオーバーフロー硬貨分岐部121、取り忘れ硬貨分岐部122、リジェクト硬貨分岐部123および回収硬貨分岐部124にそれぞれ対応して配設されている。また、図3に示すように、搬送部25の第2の搬送部分27における入出金口21側の端部にも光学式の通過センサ29bが設けられており、ベルト43によって搬送される硬貨が搬送部25の第2の搬送部分27から入出金口21の受皿23に放出される際にこの硬貨が通過センサ29bを通過したときにはこのことが通過センサ29bにより検知されるようになっている。また、通過センサ29a、29bは、ベルト43により搬送される硬貨のみならず、当該ベルト43に突設された各ピン45の通過も検出するようになっている。
また、図1および図3に示すように、搬送部25には、各収納繰出部32および一時保留部38の接続部分に、これらの各収納繰出部32および一時保留部38と搬送部25との間で硬貨を出し入れするかベルト43で搬送する硬貨を搬送方向下流側へ通過させるかに応じて選択的に硬貨を振り分ける振分部材47が配設されている。図4Aに示すように、振分部材47には、収納繰出部32や一時保留部38の硬貨出入口に対して硬貨を案内する案内部48、および収納繰出部32や一時保留部38の硬貨出入口を閉塞して硬貨を搬送部25における搬送方向下流側に案内する閉塞部50が設けられている。ここで、案内部48の端縁部には湾曲した曲面が形成されており、この湾曲した曲面に沿って硬貨が案内されるようになっている。このような振分部材47は、ソレノイド等の駆動で搬送部25の通路面41に対して進退移動するようになっている。ここで、硬貨を搬送部25から収納繰出部32や一時保留部38へ振り分けるとき、および硬貨を収納繰出部32や一時保留部38から搬送部25に繰り出すときには、案内部48が搬送部25の通路面41内に突出するとともに閉塞部50が収納繰出部32や一時保留部38の硬貨出入口を開放する。一方、硬貨を搬送部25から収納繰出部32や一時保留部38に振り分けないとき、および硬貨を収納繰出部32や一時保留部38から搬送部25に繰り出さないときには、案内部48が搬送部25の通路面41外に退避するとともに閉塞部50が収納繰出部32や一時保留部38の硬貨出入口を閉塞する。
また、図4Aおよび図4Bに示すように、各収納繰出部32は、水平方向に対して所定角度で傾斜する位置で回転軸59を中心に回転可能な回転円盤60、この回転円盤60の表面側との間で硬貨を貯留するホッパ61、および収納繰出部32の硬貨出入口の近傍に配置される受渡し円盤62等を有している。
図4Bに示すように、回転円盤60は、筐体12側に回転可能に取り付けられた回転軸59により、筐体12の前面から見て、水平方向に対して右方向に傾斜しており、回転円盤60の左側が高く、右側が低く、回転円盤60の表面が筐体12の右斜め上方に対向するよう配置されている。回転円盤60は、硬貨を搬送部25へ繰り出す繰出回転方向(図4Aにおける反時計回りの方向)にモータで回転駆動するようになっている。なお、回転円盤60は、繰出回転方向と反対の反繰出回転方向(図4Aにおける時計回りの方向)にも回転駆動可能となっている。
回転円盤60の表面には、中央域に円形の高位部64が形成され、この高位部64の外周域に環状の低位部65が形成されている。回転円盤60の高位部64と低位部65との間には、処理する硬貨のうちの最小硬貨厚みより少し小さい寸法で、硬貨の周縁が厚み方向に1枚載る段差部66が形成されている。
低位部65には、回転円盤60の表面から突出する複数の拾上部材67、67aが、内周側の円周方向と外周側の円周方向との2列の円周方向に沿って所定ピッチで配置されている。そして、回転円盤60の繰出回転方向への回転時に、内周側の各拾上部材67、67aが段差部66との間で硬貨を1枚ずつ保持して回転円盤60の上部域に拾い上げ、外周側の各拾上部材67、67aが内周側の各拾上部材67、67aで回転円盤60の上部域に拾い上げた硬貨を収納繰出部32の硬貨出入口へ向けて押し出すとともに受渡し円盤62に受け渡すように構成されている。図4Aにおいて、回転円盤60の下部域から上部域に搬送される硬貨を参照符号Cで示す。
なお、回転円盤60に突設された複数(合計8組)の拾上部材67、67aのうち、7組の拾上部材67は回転円盤60の繰出回転方向における上流側端部(回転円盤60の上部域に硬貨を拾い上げる際に当該硬貨を押動する端部とは反対側の端部)がテーパ形状となっており、当該上流側端部は回転円盤60の表面から傾斜している。一方、回転円盤60に突設された複数の拾上部材67、67aのうち、1組の拾上部材67aは回転円盤60の繰出回転方向における上流側端部(回転円盤60の上部域に硬貨を拾い上げる際に当該硬貨を押動する端部とは反対側の端部)および下流側端部(回転円盤60の上部域に硬貨を拾い上げる際に当該硬貨を押動する端部)がそれぞれテーパ形状となっており、これらの上流側端部および下流側端部は回転円盤60の表面から傾斜している。
段差部66は、各拾上部材67、67aとの間で硬貨を1枚ずつ保持可能とする各位置に設けられている。したがって、円周方向に複数の段差部66が設けられている。これらの段差部66の間には、高位部64と低位部65との段差を傾斜面として、拾上部材67、67aと段差部66とで保持されない硬貨を下方へ滑落させる滑落部68が形成されている。
回転円盤60の上部域には、拾上部材67、67aで回転円盤60の上部域に拾い上げた硬貨を収納繰出部32の硬貨出入口へ向けて繰り出す案内通路69が形成されている。この案内通路69は、回転円盤60の表面と同一であって搬送部25に連続した通路面41と、上下のガイド部材70、71との間に形成されている。
上側のガイド部材70は、回転円盤60の上部域から収納繰出部32の硬貨出入口の一方の側部側にかけて、回転円盤60および通路面41の表面より突出して設けられている。
下側のガイド部材71は、低位部65の表面に硬貨が入り込まない間隙をあけて対向した状態で、段差部66側から収納繰出部32の硬貨出入口の他方の縁部側にわたって設けられている。このガイド部材71の案内通路69内に臨む内縁は、振分部材47の案内部48に連続する曲面に形成されている。また、ガイド部材71の低位部65に対向する面には、回転移動する各拾上部材67、67aが通過する溝部72が設けられている。そして、ガイド部材71により、拾上部材67、67aで拾い上げた硬貨を段差部66から受け取って収納繰出部32の硬貨出入口へ案内するように構成されている。
また、案内通路69には、収納繰出部32から複数の硬貨が互いに重なった状態で搬送部25に繰り出されることを防止するための規制ゲート55が設けられている。このような規制ゲート55の構成の詳細について図4Cおよび図4Dを用いて説明する。なお、図4Cおよび図4Dは、図4Aに示す収納繰出部32の硬貨出入口におけるA−A矢視による断面図である。より詳細には、図4Cは、規制ゲート55が収納繰出部32の硬貨出入口を閉じているときの状態を示す図であり、図4Dは、規制ゲート55が収納繰出部32の硬貨出入口を開いているときの状態を示す図である。
図4Cに示すように、規制ゲート55が収納繰出部32の硬貨出入口を閉じているときには、案内通路69と規制ゲート55との間には、硬貨1枚分の厚さよりもわずかに大きい間隙が形成されるようになり、回転円盤60の上部域から繰り出された硬貨はこの案内通路69と規制ゲート55との間の隙間を通って搬送部25に送られるようになる。この際に、図4Cに示すように「くの字状」に折れ曲がった変形硬貨C1は、規制ゲート55と衝突することにより案内通路69と規制ゲート55との間の隙間を通ることができず、搬送部25には送られないようになる。一方、図4Dに示すように、規制ゲート55が収納繰出部32の硬貨出入口を開くと案内通路69と規制ゲート55との間には大きな隙間が形成されるようになり、「くの字状」に折れ曲がった変形硬貨C1でも案内通路69と規制ゲート55との間の隙間を通って搬送部25に送られるようになる。
また、図4Bに示すように、ホッパ61は、回転円盤60の表面側に対向して覆うとともに上方から硬貨を受け入れ可能に上方に向けて開口された形状に形成されている。
また、受渡し円盤62は、案内通路69と搬送部25とにまたがった位置に、受渡し円盤62の表面が通路面41と面一となるように回転可能に配置されている。受渡し円盤62の外周縁部には、硬貨に当接して回転円盤60側から搬送部25側へ当該硬貨を押動することによりこの硬貨を搬送部25に繰り出す突起80が突設されている。
受渡し円盤62は、搬送部25のベルト43と連動して回転し、ベルト43が入金搬送方向F1に移動するときには、突起80が搬送部25から収納繰出部32の硬貨出入口へ移動する反繰出回転方向(すなわち、突起80で硬貨を搬送部25から回転円盤60側へ繰り入れる方向)に回転し、また、ベルト43が出金搬送方向F2に移動するときには、突起80が収納繰出部32の硬貨出入口から搬送部25へ移動する繰出回転方向(すなわち、突起80で硬貨を回転円盤60側から搬送部25へ繰り出す方向)に回転する。また、この際に、突起80により回転円盤60側から搬送部25へ繰り出された硬貨がベルト43における隣り合う2つのピン45の間に受け入れられるように、ベルト43の駆動に対する受渡し円盤62の回転位相が設定されている。
本実施の形態では、搬送部25のベルト43や受渡し円盤62と、回転円盤60とは異なるモータにより駆動されるようになっている。ここで、後述する制御部201は、搬送部25のベルト43や受渡し円盤62の位相に対して回転円盤60の位相を合わせるようこれらのモータの位相を調整するようになっている。すなわち、拾上部材67、67aで回転円盤60の上部域に拾い上げた硬貨が案内通路69において受渡し円盤62の突起80により引き続き押動されるよう、搬送部25のベルト43や受渡し円盤62の位相に対して回転円盤60の位相が制御部201により調整されるようになっている。
なお、各収納繰出部32の回転円盤60、ホッパ61および受渡し円盤62等の構成について説明したが、入金繰出部31や一時保留部38においても、回転円盤60、ホッパ61および受渡し円盤62等を有しており、基本的に各収納繰出部32と同一の構成となっている。ただし、入金繰出部31では、図5に示すように、ホッパ61の下部に排出口76が形成されており、この排出口76に排出ゲート77が上部側の軸78を支点として開閉可能に取り付けられている。排出ゲート77は、軸78を介してモータやソレノイド等のゲート駆動部により開閉駆動されるようになっている。
搬送部25における第1の搬送部分26には、入金繰出部31と最前部の収納繰出部32との間において、入金搬送方向F1に搬送される硬貨を後述するオーバーフロースタッカ90内に分岐するためのオーバーフロー硬貨分岐部121が設けられており、また、最前部の収納繰出部32と最前部から2番目の収納繰出部32との間において、入金搬送方向F1に搬送される硬貨をオーバーフロースタッカ90側に分岐するための取り忘れ硬貨分岐部122が設けられている。また、搬送部25における第1の搬送部分26には、前から2番目の収納繰出部32と3番目の収納繰出部32との間において、入金搬送方向F1に搬送される硬貨を後述する硬貨カセット92側に分岐するためのリジェクト硬貨分岐部123が設けられており、また、前から3番目の収納繰出部32と4番目の収納繰出部32との間において、入金搬送方向F1に搬送される硬貨を硬貨カセット92内に分岐するための回収硬貨分岐部124が設けられている。
オーバーフロー硬貨分岐部121、取り忘れ硬貨分岐部122、リジェクト硬貨分岐部123および回収硬貨分岐部124は、それぞれ、搬送部25の通路面41から上方に突出可能な振分ゲートを有している。各振分ゲートは、ソレノイド等の駆動手段により、入金搬送方向F1の下流側の水平な軸を中心として入金搬送方向F1の上流側が上下に移動し、このことにより搬送部25の通路面41から上方に突出することができるようになっている。ここで、各振分ゲートは、通常時は搬送部25の通路面41の下方に退避し、この振分ゲート上を硬貨が通過するようになっているが、ベルト43により搬送される硬貨のうち、各分岐部121、122、123、124により分岐される硬貨が搬送されてくる所定のタイミングで、振分ゲートの入金搬送方向F1の上流側が搬送部25の通路面41から上方に突出し、この振分ゲートにより該当金種の硬貨が当該振分ゲートに対応して設けられた開口から落下することにより搬送部25から分岐される。このように、各分岐部121、122、123、124は、開口を介して硬貨を落下させることにより搬送部25から当該硬貨を分岐させる落下式のものとなっている。
図1および図2に示すように、補充回収部14は、筐体12内の前側下部位置に固定配置されたオーバーフロースタッカ90、および筐体12内の後面から後側下部位置に着脱可能に配置される硬貨カセット92を有している。また、オーバーフロースタッカ90と硬貨カセット92との間には、これらのオーバーフロースタッカ90および硬貨カセット92から繰り出される硬貨を上方の入出金部13に搬送する補充搬送部93が設けられている。
オーバーフロースタッカ90の内部には、硬貨を非整列状態で収納する収納空間95、およびこの収納空間95の底部を構成して硬貨を後面の繰出口96から補充搬送部93に繰り出すベルト97が配設されている。ここで、搬送部25の第1の搬送部分26からオーバーフロー硬貨分岐部121で分岐された硬貨がオーバーフロースタッカ90の収納空間95に送られるようになっている。
また、オーバーフロースタッカ90には、取り忘れ硬貨を収納するための取り忘れボックス127、および任意に設定される所定の硬貨の収納に利用可能な予備ボックス128がそれぞれ設けられている。ここで、搬送部25の第1の搬送部分26から取り忘れ硬貨分岐部122で分岐された硬貨が、取り忘れ硬貨通路129およびこの取り忘れ硬貨通路129に設けられた図示しない切換機構により、取り忘れボックス127および予備ボックス128のいずれか一方に導かれて収納される。これらの取り忘れボックス127および予備ボックス128は、筐体12から個別に着脱可能な分離型として構成されている。本実施の形態では、オーバーフロースタッカ90、取り忘れボックス127および予備ボックス128によりオーバーフロー硬貨収納部が構成されている。
硬貨カセット92は、硬貨を非整列状態で収納する収納空間98、およびこの収納空間98の底部を構成して硬貨を後面の繰出口99から補充搬送部93に繰り出すベルト100が配設されている。ここで、搬送部25の第1の搬送部分26から回収硬貨分岐部124で分岐された硬貨が硬貨カセット92の収納空間98に送られるようになっている。
また、硬貨カセット92には、硬貨の入金処理時や出金処理時に識別部33で正常硬貨と識別されなかったリジェクト硬貨を収納するリジェクトボックスとしての運用リジェクトボックス104、および硬貨の補充処理時に識別部33で正常硬貨と識別されなかったリジェクト硬貨を収納するリジェクトボックスとしての補充リジェクトボックス105がそれぞれ設けられている。ここで、搬送部25の第1の搬送部分26からリジェクト硬貨分岐部123で分岐された硬貨が、図示しない通路およびこの通路に設けられた切換機構により、運用リジェクトボックス104および補充リジェクトボックス105のいずれか一方に導かれて収納される。これらの運用リジェクトボックス104および補充リジェクトボックス105は、筐体12から個別に着脱可能な分離型として構成されている。本実施の形態では、硬貨カセット92、運用リジェクトボックス104および補充リジェクトボックス105により硬貨回収部が構成されている。
図2に示すように、補充搬送部93は、オーバーフロースタッカ90および硬貨カセット92から繰り出される硬貨を受け入れる横搬送部分108、およびこの横搬送部分108から硬貨を上方に搬送する縦搬送部分109が設けられた搬送コンベア110を有している。縦搬送部分109は、入出金部13の側部であって、搬送部25や入金繰出部31、収納繰出部32、一時保留部38等に対向する側面に配置されている。また、縦搬送部分109は、図2に実線で示すように筐体12内に配置されて硬貨を搬送する位置と、図2に二点鎖線で示すように筐体12の外側に移動して入出金部13との間を解放可能とする位置との間で揺動可能となっている。また、搬送コンベア110の縦搬送部分109で上方に搬送された硬貨は一時保留部38に送られるようになっている。
また、本実施の形態による硬貨処理装置10には、当該硬貨処理装置10の各構成要素の制御を行う制御部201(図1乃至図5では図示せず)が設けられている。図6に示すように、制御部201には識別部33、通過センサ29a、29b、搬送部25、入金繰出部31、収納繰出部32、一時保留部38、オーバーフロースタッカ90、硬貨カセット92、補充搬送部93等がそれぞれ通信可能に接続されている。ここで、識別部33による硬貨の識別結果に係る情報や通過センサ29a、29bによる硬貨の検知結果に係る情報は制御部201に送信されるようになっている。また、制御部201は、搬送部25、入金繰出部31、収納繰出部32、一時保留部38、オーバーフロースタッカ90、硬貨カセット92、補充搬送部93等の各構成要素に指令信号を送ることによりこれらの構成要素の制御を行うようになっている。
また、図6に示すように、制御部201には記憶部203、操作表示部204、異常接近検知手段205およびピン外れ検知手段206がそれぞれ通信可能に接続されている。記憶部203には硬貨処理装置10における硬貨の処理状況に係る情報や各収納繰出部32の在高等の情報が記憶されるようになっている。また、操作表示部204は筐体12の前面や上面に配設された例えばタッチパネル式のモニタ等からなり、当該操作表示部204には硬貨処理装置10における硬貨の処理状況に係る情報や各収納繰出部32の在高等の情報等が表示されるようになっている。また、操作者は操作表示部204の操作によって制御部201に様々な指令を入力することができるようになっている。また、異常接近検知手段205は、通過センサ29a、29bによる硬貨の検知情報に基づいて、搬送部25により搬送される硬貨の間隔が所定の間隔よりも小さくなったときに硬貨が異常接近状態であることを検知するようになっている。また、ピン外れ検知手段206は、通過センサ29a、29bによる硬貨の検知情報に基づいて、搬送部25のベルト43に設けられたピン45に押動されていた硬貨が当該ピン45から外れたときにこのことを検知するようになっている。異常接近検知手段205やピン外れ検知手段206の構成の詳細については後述する。
次に、このような構成からなる本実施の形態の硬貨処理装置10の動作について説明する。なお、以下に示すような硬貨処理装置10の動作は、制御部201が当該硬貨処理装置10の各構成要素を制御することにより行われるようになっている。
まず、本実施の形態の硬貨処理装置10による硬貨の入金処理について図7を用いて説明する。
図7(a)には、硬貨の入金処理における入金硬貨の計数一時保留動作が示されている。図7(a)に示すように、筐体12の入出金口21から受皿23に投入された硬貨は、この受皿23の反転によって下方に放出され、入金繰出部31に受け入れられる。受皿23は、反転後に硬貨を受収する姿勢に復帰する。
入金繰出部31に受け入れられた硬貨は当該入金繰出部31から1枚ずつ搬送部25の第1の搬送部分26に繰り出され、この搬送部25の第1の搬送部分26に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により出金搬送方向F2に搬送される。この際に、搬送部25により搬送される硬貨は識別部33により識別される。
識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別された硬貨は、一時保留部38の振分部材47で搬送部25の第2の搬送部分27から一時保留部38に振り分けられ、当該一時保留部38内に収納される。また、識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別されなかった硬貨は、一時保留部38の位置を通過して搬送部25の第2の搬送部分27から受皿23に放出され、このことにより操作者に返却される。
図7(b)には、硬貨の入金処理における異物返却動作が示されている。
入金繰出部31内の硬貨や異物等の残留物を検知する図示しない残留検知センサの検知に基づき、入金繰出部31から繰り出されずに残留する異物が存在すると判断された場合に、あるいは入金繰出部31から全ての硬貨の繰り出しが完了した後に、入金繰出部31のホッパ61の排出ゲート77を開き、入金繰出部31から繰り出されずに当該入金繰出部31内に残留するクリップおよび紙片や変形硬貨等の異物を下方の異物シュート83に放出し、異物返却口22に返却する。
図7(c)には、硬貨の入金処理において一時保留部38に一時保留された硬貨の収納動作が示されている。
筐体12の入出金口21から受皿23に投入された全ての硬貨の計数一時保留動作が終了した後、操作表示部204の操作で硬貨収納指令が出されると、一時保留部38内の硬貨は1枚ずつ搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出され、この搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により入金搬送方向F1に搬送される。この際に、搬送部25により搬送される硬貨は識別部33により識別される。
識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別された硬貨は、該当金種の硬貨を収納する収納繰出部32の振分部材47で搬送部25から収納繰出部32に振り分けられ、当該収納繰出部32に収納される。
収納繰出部32の硬貨収納枚数が所定の満杯枚数に達した場合には、それ以降の該当金種の硬貨はオーバーフロー硬貨とみなされ、当該オーバーフロー硬貨はオーバーフロー硬貨分岐部121で搬送部25から分岐され、オーバーフロースタッカ90に送り込まれて当該オーバーフロースタッカ90に収納される。
また、識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別されなかった硬貨は、オーバーフロー硬貨分岐部121で搬送部25から分岐され、オーバーフロースタッカ90に送り込まれて当該オーバーフロースタッカ90に収納されるか、またはリジェクト硬貨分岐部123で搬送部25から分岐され、硬貨カセット92の運用リジェクトボックス104に送り込まれて当該運用リジェクトボックス104に収納される。
図7(d)(e)には、硬貨の入金処理において一時保留部38に一時保留された硬貨の返却動作が示されている。
図7(d)に示すように、筐体12の入出金口21から受皿23に投入された全ての硬貨の計数一時保留動作が終了した後、操作表示部204の操作で硬貨返却指令が出されると、一時保留部38内の硬貨は1枚ずつ搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出され、この搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により入金搬送方向F1に搬送され、入金繰出部31に収納される。
続いて、図7(e)に示すように、入金繰出部31から硬貨が1枚ずつ搬送部25の第1の搬送部分26に繰り出され、この搬送部25の第1の搬送部分26に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により出金搬送方向F2に搬送され、入出金口21の受皿23に放出されて操作者に返却される。
次に、本実施の形態の硬貨処理装置10による硬貨の出金処理について図8を用いて説明する。
図8(a)には、硬貨の出金処理における出金硬貨の計数出金動作が示されている。図8(a)に示すように、操作表示部204の操作により出金すべき硬貨の金種と枚数、または出金すべき硬貨の金額を含んだ硬貨出金指令を制御部201が受けると、該当する収納繰出部32内の硬貨が1枚ずつ搬送部25に繰り出され、この搬送部25に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により出金搬送方向F2に搬送され、搬送部25により搬送される硬貨は識別部33により識別される。
識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別された硬貨は、搬送部25の第2の搬送部分27から入出金口21の受皿23に放出される。一方、識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別されなかった硬貨は、一時保留部38の振分部材47で搬送部25の第2の搬送部分27から一時保留部38に振り分けられて当該一時保留部38に収納される。正常硬貨と識別されなかった硬貨については、収納繰出部32からの投出タイミングと、ベルト43の搬送によって識別部33に到達するタイミングとによって金種が分かるため、該当する金種の収納繰出部32から硬貨1枚分を追加投出する。
このようにして、出金分の硬貨を入出金口21の受皿23に出金する。
図8(b)には、硬貨の出金処理において正常硬貨と識別されなかった硬貨の戻し動作が示されている。
正常硬貨と識別されなかった硬貨を収納した一時保留部38から硬貨が1枚ずつ搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出され、この搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により入金搬送方向F1に搬送される。また、搬送部25により搬送される硬貨は識別部33により再識別される。
識別部33での再識別の結果、正常硬貨と識別された硬貨は、該当金種の硬貨を収納する収納繰出部32の振分部材47により搬送部25から収納繰出部32に振り分けられ、当該収納繰出部32に収納される。
識別部33での再識別の結果、正常硬貨と識別されなかった硬貨は、オーバーフロー硬貨分岐部121により搬送部25から分岐され、オーバーフロースタッカ90に送り込まれて当該オーバーフロースタッカ90に収納される。
図8(c)(d)には、硬貨の出金処理における取り忘れ硬貨の回収動作が示されている。
図8(c)に示すように、出金分の硬貨を入出金口21の受皿23に出金してから所定時間経過しても硬貨が取り出されないことが図示しないセンサにより検知されると、制御部201は操作者が硬貨を取り忘れているものと判断し、受皿23を反転させて硬貨を入金繰出部31に放出する。入金繰出部31に受け入れられた硬貨は1枚ずつ搬送部25の第1の搬送部分26に繰り出され、この搬送部25の第1の搬送部分26に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により出金搬送方向F2に搬送される。搬送部25により搬送される硬貨は識別部33により識別され、一時保留部38の振分部材47で搬送部25の第2の搬送部分27から一時保留部38に振り分けられて当該一時保留部38に収納される。
続いて、図8(d)に示すように、一時保留部38から硬貨が1枚ずつ搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出され、この搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により入金搬送方向F1に搬送される。そして、搬送部25により搬送される硬貨は取り忘れ分岐部122で搬送部25から分岐され、取り忘れボックス127に送られて当該取り忘れボックス127に収納される。
次に、本実施の形態の硬貨処理装置10による硬貨の補充処理について図9を用いて説明する。
図9(a)には、オーバーフロースタッカ90からの硬貨の補充処理が示されている。オーバーフロースタッカ90からの硬貨の補充処理は、硬貨処理装置10の運用中に、ある金種の収納繰出部32の硬貨量が減少し、該当金種の硬貨がオーバーフロースタッカ90に収納されている場合に行われる。
図9(a)に示すように、オーバーフロースタッカ90のベルト97が回転することにより、オーバーフロースタッカ90内の硬貨が補充搬送部93の搬送コンベア110に放出される。この搬送コンベア110の縦搬送部分109により硬貨が上方に搬送され、縦搬送部分109の上部から一時保留部38に硬貨が放出される。
次に、一時保留部38から硬貨が1枚ずつ搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出され、この搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により入金搬送方向F1に搬送される。搬送部25により搬送される硬貨は識別部33で識別される。
識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別された硬貨は、該当金種の硬貨を収納する収納繰出部32の振分部材47により搬送部25から収納繰出部32に振り分けられ、当該収納繰出部32に収納される。
収納繰出部32の硬貨収納枚数が所定の満杯枚数に達した場合には、それ以降の該当金種の硬貨はオーバーフロー硬貨とみなされ、当該オーバーフロー硬貨はオーバーフロー硬貨分岐部121で搬送部25から分岐され、オーバーフロースタッカ90に送り込まれて収納される。
また、識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別されなかった硬貨は、オーバーフロー硬貨分岐部121で搬送部25から分岐され、オーバーフロースタッカ90に送り込まれて当該オーバーフロースタッカ90に収納される。
図9(b)には、硬貨カセット92からの硬貨の補充処理が示されている。硬貨カセット92からの硬貨の補充処理は、硬貨処理装置10に硬貨が収納されていない初期補充、およびオーバーフロースタッカ90を含めて収納繰出部32の硬貨量が減少した場合の途中補充がある。
図9(b)に示すように、硬貨カセット92のベルト100が回転することにより、硬貨カセット92内の硬貨が補充搬送部93の搬送コンベア110に放出される。この搬送コンベア110の縦搬送部分109により硬貨が上方に搬送され、縦搬送部分109の上部から一時保留部38に硬貨が放出される。
次に、一時保留部38から硬貨が1枚ずつ搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出され、この搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により入金搬送方向F1に搬送される。搬送部25により搬送される硬貨は識別部33で識別される。
識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別された硬貨は、該当金種の硬貨を収納する収納繰出部32の振分部材47により搬送部25から収納繰出部32に振り分けられ、当該収納繰出部32に収納される。
収納繰出部32の硬貨収納枚数が所定の満杯枚数に達した場合には、それ以降の該当金種の硬貨はオーバーフロー硬貨とみなされ、当該オーバーフロー硬貨はオーバーフロー硬貨分岐部121で搬送部25から分岐され、オーバーフロースタッカ90に送り込まれて収納される。
また、識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別されなかった硬貨は、リジェクト硬貨分岐部123で搬送部25から分岐され、補充リジェクトボックス105に送り込まれて当該補充リジェクトボックス105に収納される。
図9(c)(d)は、入出金口21からの硬貨の補充処理が示されている。図9(c)に示すように、筐体12の上面の入出金口21から受皿23に投入された補充用の硬貨は、この受皿23の反転によって入金繰出部31に放出される。受皿23は反転後に硬貨を受収する姿勢に復帰する。
入金繰出部31内に受け入れられた硬貨は1枚ずつ当該入金繰出部31から搬送部25の第1の搬送部分26に繰り出され、この搬送部25の第1の搬送部分26に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により出金搬送方向F2に搬送される。搬送部25により搬送される硬貨は識別部33により識別される。
識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別された硬貨は、一時保留部38の振分部材47で搬送部25の第2の搬送部分27から一時保留部38に振り分けられ、当該一時保留部38に収納される。
また、識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別されなかった硬貨は、一時保留部38の位置を通過して搬送部25の第2の搬送部分27から受皿23に放出され、操作者に返却される。
また、図9(d)に示すように、筐体12の入出金口21から受皿23に投入された全ての硬貨の計数一時保留動作が終了した後、操作表示部204の操作で硬貨収納指令が出されると、一時保留部38内の硬貨は1枚ずつ搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出され、この搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により入金搬送方向F1に搬送される。この際に、搬送部25により搬送される硬貨は識別部33により識別される。
識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別された硬貨は、該当金種の硬貨を収納する収納繰出部32の振分部材47で搬送部25から収納繰出部32に振り分けられ、当該収納繰出部32に収納される。
収納繰出部32の硬貨収納枚数が所定の満杯枚数に達した場合には、それ以降の該当金種の硬貨はオーバーフロー硬貨とみなされ、当該オーバーフロー硬貨はオーバーフロー硬貨分岐部121で搬送部25から分岐され、オーバーフロースタッカ90に送り込まれて収納される。
また、識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別されなかった硬貨は、オーバーフロー硬貨分岐部121で搬送部25から分岐され、オーバーフロースタッカ90に送り込まれて当該オーバーフロースタッカ90に収納される。
次に、本実施の形態の硬貨処理装置10による硬貨の回収処理について図10を用いて説明する。
図10(a)(b)には、収納繰出部32からの硬貨の回収動作が示されている。図10(a)に示すように、操作表示部204の操作で硬貨の回収指令が出されると、ある1つの収納繰出部32内の硬貨が1枚ずつ搬送部25に繰り出され、この搬送部25に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により出金搬送方向F2に搬送される。搬送部25により搬送される硬貨が識別部33により識別された後、一時保留部38の振分部材47で一時保留部38に振り分けられて当該一時保留部38に収納される。
続いて、図10(b)に示すように、一時保留部38から硬貨が1枚ずつ搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出され、この搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により入金搬送方向F1に搬送される。搬送部25により搬送される硬貨は識別部33により識別される。
識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別された硬貨は回収硬貨分岐部124により搬送部25から分岐され、硬貨カセット92に送り込まれて当該硬貨カセット92に収納される。一方、識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別されなかった硬貨はオーバーフロー硬貨分岐部121により搬送部25から分岐され、オーバーフロースタッカ90に送り込まれて当該オーバーフロースタッカ90に収納される。
そして、このような回収動作を全ての収納繰出部32について順次行う。
図10(c)には、オーバーフロースタッカ90からの硬貨の回収動作が示されている。
オーバーフロースタッカ90のベルト97が回転することによって、当該オーバーフロースタッカ90内の硬貨がオーバーフロースタッカ90から補充搬送部93の搬送コンベア110に放出される。この搬送コンベア110の縦搬送部分109により硬貨が上方に搬送され、当該縦搬送部分109の上部から一時保留部38に硬貨が放出される。
その後、一時保留部38から硬貨が1枚ずつ搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出され、この搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により入金搬送方向F1に搬送される。搬送部25により搬送される硬貨は識別部33により識別される。
識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別された硬貨は回収硬貨分岐部124により搬送部25から分岐され、硬貨カセット92に送り込まれて当該硬貨カセット92に収納される。一方、識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別されなかった硬貨はリジェクト硬貨分岐部123により搬送部25から分岐され、運用リジェクトボックス104に送り込まれて当該運用リジェクトボックス104に収納される。
次に、本実施の形態の硬貨処理装置10による硬貨の精査処理について図11を用いて説明する。
制御部201が硬貨の自動精査指令を受けると、まず、硬貨カセット92から収納繰出部32に硬貨が補充される。具体的には、図11(a)に示すように、硬貨カセット92のベルト100が回転することにより、硬貨カセット92内の硬貨が補充搬送部93の搬送コンベア110に放出される。この搬送コンベア110の縦搬送部分109により硬貨が上方に搬送され、縦搬送部分109の上部から一時保留部38に硬貨が放出される。
次に、一時保留部38から硬貨が1枚ずつ搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出され、この搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により入金搬送方向F1に搬送される。搬送部25により搬送される硬貨は識別部33で識別される。
識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別された硬貨は、該当金種の硬貨を収納する収納繰出部32の振分部材47により搬送部25から収納繰出部32に振り分けられ、当該収納繰出部32に収納される。
収納繰出部32の硬貨収納枚数が所定の満杯枚数に達した場合には、それ以降の該当金種の硬貨はオーバーフロー硬貨とみなされ、当該オーバーフロー硬貨はオーバーフロー硬貨分岐部121で搬送部25から分岐され、オーバーフロースタッカ90に送り込まれて収納される。
また、識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別されなかった硬貨は、リジェクト硬貨分岐部123で搬送部25から分岐され、補充リジェクトボックス105に送り込まれて当該補充リジェクトボックス105に収納される。
硬貨カセット92から収納繰出部32に硬貨が補充されると、図11(b)に示すように、いずれか1つの収納繰出部32から硬貨が1枚ずつ搬送部25に繰り出され、この搬送部25に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により出金搬送方向F2に搬送される。搬送部25により搬送される硬貨は識別部33により識別された後、一時保留部38の振分部材47により一時保留部38に振り分けられて当該一時保留部38に収納される。
続いて、図11(c)に示すように、精査する収納繰出部32内の全ての硬貨が識別されて一時保留部38に移動させられた後、一時保留部38内の硬貨が1枚ずつ搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出され、この搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により入金搬送方向F1に搬送される。搬送部25により搬送される硬貨は識別部33により識別される。
識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別された硬貨は、該当金種の硬貨を収納する収納繰出部32の振分部材47により搬送部25から収納繰出部32に振り分けられ、当該収納繰出部32に収納される。一方、識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別されなかった硬貨は、オーバーフロー硬貨分岐部121で搬送部25から分岐され、オーバーフロースタッカ90に送り込まれて当該オーバーフロースタッカ90に収納される。
そして、このような収納繰出部32から一時保留部38への硬貨の識別および移動後に、一時保留部38から元の収納繰出部32への硬貨の識別および移動を行うという一連の動作を、全ての収納繰出部32について順番に実施し、筐体12内の全ての収納繰出部32に収納された硬貨を精査する。
次に、オーバーフロースタッカ90内の硬貨の精査動作を行う。図11(d)(e)には、オーバーフロースタッカ90内の硬貨の精査動作が示されている。
図11(d)に示すように、オーバーフロースタッカ90のベルト97が回転することにより、オーバーフロースタッカ90内の硬貨が補充搬送部93の搬送コンベア110に放出される。この搬送コンベア110の縦搬送部分109により硬貨が上方に搬送され、縦搬送部分109の上部から一時保留部38に硬貨が放出される。
次に、一時保留部38から硬貨が1枚ずつ搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出され、この搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により入金搬送方向F1に搬送される。搬送部25により搬送される硬貨は識別部33で識別された後、回収硬貨分岐部124により搬送部25から分岐させられ、硬貨カセット92に送り込まれて当該硬貨カセット92に収納される。
オーバーフロースタッカ90から繰り出された硬貨の移動動作後、図11(e)に示すように、硬貨カセット92のベルト100が回転することにより、硬貨カセット92内の硬貨が補充搬送部93の搬送コンベア110に放出される。この搬送コンベア110の縦搬送部分109により硬貨が上方に搬送され、縦搬送部分109の上部から一時保留部38に硬貨が放出される。
次に、一時保留部38から硬貨が1枚ずつ搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出され、この搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により入金搬送方向F1に搬送される。搬送部25により搬送される硬貨は識別部33で識別される。
識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別された硬貨は、オーバーフロー硬貨分岐部121により搬送部25から分岐させられ、オーバーフロースタッカ90に送り込まれて当該オーバーフロースタッカ90に収納される。一方、識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別されなかった硬貨は、リジェクト硬貨分岐部123で搬送部25から分岐され、運用リジェクトボックス104に送り込まれて当該運用リジェクトボックス104に収納される。
その後、オーバーフロースタッカ90に収納された硬貨について、戻し補充動作が行われる。具体的には、図11(f)に示すように、オーバーフロースタッカ90のベルト97が回転することにより、オーバーフロースタッカ90内の硬貨が補充搬送部93の搬送コンベア110に放出される。この搬送コンベア110の縦搬送部分109により硬貨が上方に搬送され、縦搬送部分109の上部から一時保留部38に硬貨が放出される。
次に、一時保留部38から硬貨が1枚ずつ搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出され、この搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出された硬貨は1枚ずつベルト43により入金搬送方向F1に搬送される。搬送部25により搬送される硬貨は識別部33で識別される。
識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別された硬貨は、該当金種の硬貨を収納する収納繰出部32の振分部材47により搬送部25から収納繰出部32に振り分けられ、当該収納繰出部32に収納される。
収納繰出部32の硬貨収納枚数が所定の満杯枚数に達した場合には、それ以降の該当金種の硬貨はオーバーフロー硬貨とみなされ、当該オーバーフロー硬貨はオーバーフロー硬貨分岐部121で搬送部25から分岐され、オーバーフロースタッカ90に送り込まれて収納される。
また、識別部33での識別の結果、正常硬貨と識別されなかった硬貨は、オーバーフロー硬貨分岐部121で搬送部25から分岐され、オーバーフロースタッカ90に送り込まれて当該オーバーフロースタッカ90に収納される。
従来技術の硬貨処理装置では、上述した自動精査処理において硬貨の詰まり等のトラブルが発生した場合には、制御部201は硬貨処理装置の動作をエラー終了させていた。しかしながら、硬貨処理装置を自動復旧して自動精査処理を再実行することが可能な場合でもエラー終了としているため従来技術では硬貨処理装置の休止率が高くなってしまい処理効率が悪化するという問題があった。
これに対し、本実施の形態による硬貨処理装置10では、図11(b)(c)に示すような収納繰出部32内の硬貨の精査処理において、収納繰出部32から一時保留部38への硬貨の識別および移動、ならびに一時保留部38から元の収納繰出部32への硬貨の識別および移動において硬貨の詰まり等のトラブルが発生した場合には、以下に示すようなリトライ動作を行うようになっている。具体的には、ベルト43を出金搬送方向F2に移動させることにより搬送部25により搬送されている最中の硬貨を全て受皿23に放出し、次に受皿23を反転させることによって当該受皿23に受収された硬貨を入金繰出部31に受収させる。受皿23は、反転後に硬貨を受収する姿勢に復帰する。また、一時保留部38に収納されている硬貨について当該一時保留部38から搬送部25の第2の搬送部分27に1枚ずつ繰り出し、搬送部25の第2の搬送部分27に繰り出された硬貨を1枚ずつベルト43により入金搬送方向F1に搬送し、入金繰出部31の振分部材47によって入金繰出部31に振り分けることにより当該入金繰出部31に収納させる。その後、入金繰出部31から搬送部25の第1の搬送部分26に硬貨を1枚ずつ繰り出し、搬送部25の第1の搬送部分26に繰り出された硬貨を1枚ずつベルト43により出金搬送方向F2に搬送し、一時保留部38の振分部材47により一時保留部38に振り分けることにより当該一時保留部38に収納させる。このようにして、硬貨の自動精査処理が行われている際に硬貨の詰まり等のトラブルが発生した場合でも、上述したリトライ動作を行うことによって硬貨処理装置10の復旧処理を行うことができるようになる。
また、上述したような本実施の形態による硬貨処理装置10では、搬送部25においてベルト43により変形硬貨が搬送される際に、この変形硬貨が搬送部25の通路面41に引っ掛かってしまうことによりベルト43のピン45から外れてしまい、後続のピン45により搬送される硬貨に接近または接触してしまう場合がある。このような場合には、前述のように、搬送部25により搬送される硬貨の間隔が所定の間隔よりも小さくなったときに異常接近検知手段205により硬貨が異常接近状態であることが検知される。より詳細には、ベルト43から突設するピン45間に複数の硬貨が存在することが通過センサ29a、29bにより検知されたときに、異常接近検知手段205は硬貨が異常接近状態であることを検知する。そして、本実施の形態では、制御部201は、異常接近検知手段205により硬貨が異常接近状態であることが検知されたときでも、所定条件が満たされる場合には硬貨の搬送を続行させるよう搬送部25の制御を行うようになっている。
従来技術の硬貨処理装置では、搬送部25において搬送される硬貨の間隔が所定の大きさ以下に接近するような異常接近状態が検出されたときには、搬送部25により搬送されている硬貨のうち異常接近状態であると判断された複数の硬貨を出金搬送方向F2に搬送することにより受皿23に放出することによって搬送部25から排除していた。しかしながら、このような運用では、硬貨を搬送部25から分岐させる分岐部の構成等によっては硬貨が異常接近状態であっても問題ない場合でも、当該硬貨を排除してしまうこととなり、硬貨の処理効率が悪化してしまうという問題があった。これに対し、本実施の形態による硬貨処理装置10では、硬貨が異常接近状態であることが検知されたときでも、所定条件が満たされる場合には搬送部25による硬貨の搬送を続行させることにより、異常接近状態であると判断された複数の硬貨を常に搬送部25から排除するような従来技術の場合と比較して硬貨の処理効率を向上させることができる。
より詳細に説明すると、制御部201は、異常接近検知手段205により異常接近状態であることが検知された複数の硬貨を搬送部25から分岐させる分岐部が、開口を介して硬貨を落下させる落下式のものであるときに、上記の所定条件が満たされたと判断するようになっている。ここで、開口を介して硬貨を落下させる落下式の分岐部としては、振分ゲートを有するようなオーバーフロー硬貨分岐部121、硬貨分岐部122、リジェクト硬貨分岐部123および回収硬貨分岐部124が挙げられる。このような分岐部121、122、123、124では、振分ゲートにより開口を介して硬貨を落下させるため、ベルト43のピン45により押動される硬貨が異常接近状態である場合でも、この異常接近状態にある複数の硬貨を一度に当該開口によって搬送部25から分岐させることができるため問題ない。一方、振分部材47により搬送部25から硬貨を収納繰出部32や一時保留部38に振り分ける際には、搬送部25から収納繰出部32や一時保留部38の硬貨出入口に送られた硬貨は受渡し円盤62の突起80により1枚ずつ押動されながら案内通路69に沿って収納繰出部32や一時保留部38に収納されるため、ベルト43のピン45により押動される硬貨が異常接近状態である場合には、異常接近状態にある複数の硬貨を一度に搬送部25から分岐させることはできない。なぜならば、ベルト43のピン45により押動される硬貨が異常接近状態である場合に、振分部材47により搬送部25から異常接近状態にある複数の硬貨を一度に収納繰出部32や一時保留部38に振り分けようとすると、ベルト43のピン45と受渡し円盤62の突起80との間に複数(具体的には、例えば2枚)の硬貨が入ってしまうこととなるが、この場合には硬貨の詰まりが発生してしまうからである。このように、搬送部25により搬送される硬貨がオーバーフロー硬貨分岐部121、硬貨分岐部122、リジェクト硬貨分岐部123および回収硬貨分岐部124により当該搬送部25から分岐されるときには、ベルト43のピン45により押動される硬貨が異常接近状態である場合でもこれらの硬貨を搬送部25から分岐させることができるが、搬送部25により搬送される硬貨が振分部材47により収納繰出部32や一時保留部38に振り分けられるときには、ベルト43のピン45により押動される硬貨が異常接近状態である場合にこれらの硬貨を搬送部25から分岐させることができない。
また、制御部201は、異常接近検知手段205により異常接近状態であることが検知された複数の硬貨の搬送先が同一であるときのみ所定条件が満たされたと判断するようになっている。異常接近検知手段205により異常接近状態であることが検知された複数の硬貨を分岐させる分岐部が、分岐部121、122、123、124の振分ゲートのような開口を介して硬貨を落下させる落下式のものであるときでも、異常接近状態である複数の硬貨が互いに異なる分岐部により搬送部25から分岐される場合には、ある一つの硬貨が搬送部25から分岐された後に振分ゲートが搬送部25の通路面41の下方に退避する前に後続の硬貨が振分ゲートと通路面41との間に挟まれてしまい硬貨の詰まりが発生するおそれがある。また、本実施の形態では、制御部201は、異常接近検知手段205により異常接近状態であることが検知された複数の硬貨の搬送先がオーバーフロー硬貨収納部(オーバーフロースタッカ90、取り忘れボックス127および予備ボックス128)または硬貨回収部(硬貨カセット92、運用リジェクトボックス104および補充リジェクトボックス105)であるときにのみ所定条件が満たされたと判断するようになっている。
また、本実施の形態では、前述したように、搬送部25においてベルト43のピン45に押動されていた硬貨が当該ピン45から外れたときには、通過センサ29a、29bによる硬貨の検知結果に基づいて、ピン外れ検知手段206によりこのことが検知されるようになっている。そして、制御部201は、ピン外れ検知手段206により硬貨がベルト43のピン45から外れたことが検知されたときでも、当該ピン45に引き続く後続のピン45により硬貨が押動されていない場合には硬貨の搬送を続行させるよう搬送部25の制御を行うようになっている。搬送部25においてベルト43により硬貨が搬送される際に、この硬貨が搬送部25の通路面41に引っ掛かってしまうことによりベルト43のピン45から外れてしまった場合でも、後続のピン45により硬貨が押動されていない場合には、ピン45から外れてしまった硬貨は後続のピン45により引き続き押動されるようになる。従来技術の硬貨処理装置では、搬送部25においてベルト43により硬貨が搬送される際に当該ベルト43のピン45から硬貨が外れてしまった場合には、硬貨処理装置の動作を停止させてピン45から外れてしまった硬貨を筐体12の外部に手動で取り出す必要があったが、本実施の形態では、ピン外れ検知手段206により硬貨がベルト43のピン45から外れたことが検知されたときでも、当該ピン45に引き続く後続のピン45により硬貨が押動されていない場合には搬送部25において硬貨の搬送を続行させることにより、硬貨の処理効率を向上させることができる。また、この際に、制御部201は元のピン45に関連付けられていた硬貨の情報(例えば、当該硬貨の金種等に係る情報)を、後続のピン45に関連付けるようデータの移行を行うようになっている。
また、前述のように、制御部201は、異常接近検知手段205により硬貨が異常接近状態であることが検知されたときに、上記の所定条件が満たされない場合には搬送部25により搬送されている最中の全ての硬貨を出金搬送方向F2に搬送することにより受皿23に放出することによって搬送部25から排除するようになっている。本実施の形態では、このような硬貨の排除動作を行う際のベルト43の速度を、通常の硬貨の入出金処理時等のベルト43の速度よりも小さくしている。搬送部25により搬送されている最中の全ての硬貨を受皿23に放出することによって当該搬送部25から排除する際に、2枚以上の硬貨が連鎖状態でピン45により押動される場合には、各分岐部121、122、123、124の振分ゲートや振分部材47と搬送部25の通路面41との間のつなぎ目部分に形成されたテーパ構造により硬貨が詰まってしまうおそれがある。このため、搬送部25から硬貨を排除する際に、ベルト43の速度を小さくすることにより、2枚以上の硬貨が連鎖状態でピン45により押動される場合でも搬送部25の通路面41上での硬貨の詰まりの発生を抑制するようになっている。
また、従来技術の硬貨処理装置では、入金繰出部31、収納繰出部32および一時保留部38から硬貨を搬送部25に繰り出す際に、これらの入金繰出部31等から繰り出された硬貨を検知するための通過センサ29a、29bにより一定時間硬貨が検知されないことにより硬貨の繰り出し不良が発生していると判断された場合には、回転円盤60の正転および反転を複数回繰り返すようなリトライ動作が行われるようになっており、このようなリトライ動作を行うことにより、入金繰出部31等からの硬貨の繰り出し不良を解消するようになっている。しかしながら、従来技術の硬貨処理装置では、硬貨出入口において2枚の硬貨が重なった状態で噛み込んでしまう等の硬貨の詰まりが発生した場合には、回転円盤60の正転および反転を複数回繰り返すようなリトライ動作を行った場合には、硬貨出入口で詰まった硬貨が後続の硬貨により何度も押されるようになり噛み込みがきつくなるだけで硬貨の繰り出し不良を解消することができないという問題があった。
これに対して、本実施の形態の硬貨処理装置10では、入金繰出部31、収納繰出部32および一時保留部38からの硬貨の繰り出し不良が発生していると判断された場合には、受渡し円盤62を反繰出回転方向(図4Aにおける反時計回りの方向)に回転させるようになっている。このことにより、硬貨出入口において詰まった硬貨の噛み込み状態を解消して当該硬貨を入金繰出部31等に戻すことにより硬貨の詰まりを解消することができる。より詳細には、一回の取引で位相ズレ補正、回転円盤60のモータロックおよびベルト43の駆動異常が合計5回発生すれば、入金繰出部31等からの硬貨の繰り出し不良が発生していると判断される。ここで、「位相ズレ補正」とは、搬送部25のベルト43や受渡し円盤62の位相に対して回転円盤60の位相がずれているときに、制御部201が搬送部25のベルト43や受渡し円盤62の位相に対して回転円盤60の位相を合わせるような動作のことをいう。また、「回転円盤60のモータロック」とは、回転円盤60を繰出回転方向に回転させる際に硬貨出入口における硬貨の詰まりにより当該回転円盤60のモータがロックしてしまうことをいう。また、「ベルト43の駆動異常」とは、搬送部25のベルト43が正常に駆動されず当該ベルト43を駆動するモータがロックされてしまうことをいう。また、入金繰出部31等に設けられた残留検知センサにより入金繰出部31等に残留物が残っていることが検知されたときに回転円盤60を例えば3秒間回転させても残留物の繰り出しが検知できなかった場合、回転円盤60を一旦停止させた後に逆回転させるような繰出不良リトライが行われるが、このような繰出不良リトライが3回繰り返して行われると、入金繰出部31等からの硬貨の繰り出し不良が発生していると判断され、受渡し円盤62が反繰出回転方向(図4Aにおける反時計回りの方向)に回転するようになる。
本実施の形態では、入金繰出部31等からの硬貨の繰り出し不良が発生していると判断されたときに、案内部48が搬送部25の通路面41外に退避するとともに閉塞部50が収納繰出部32等の硬貨出入口を閉塞するよう振分部材47が駆動される。また、受渡し円盤62は一旦停止する。次に、図4Dに示すように、入金繰出部31等の硬貨出入口が規制ゲート55により開かれて案内通路69と規制ゲート55との間には大きな隙間が形成される。そして、回転円盤60の繰出回転方向における上流側端部および下流側端部がテーパ形状となっている拾上部材67aが入金繰出部31等の硬貨出入口の近傍に位置するよう回転円盤60が停止する。その後、閉塞部50が収納繰出部32等の硬貨出入口を開くよう振分部材47が駆動され、このような状態で受渡し円盤62を所定時間だけ反繰出回転方向(図4Aにおける反時計回りの方向)に回転させる。このことにより、硬貨出入口において詰まった状態にある硬貨は当該受渡し円盤62の突起80により入金繰出部31等に落とされるようになる。また、この際に、回転円盤60の繰出回転方向における上流側端部および下流側端部がテーパ形状となっている拾上部材67aが入金繰出部31等の硬貨出入口の近傍に位置しているため、受渡し円盤62の突起80と回転円盤60の拾上部材67aとの間で硬貨が詰まってしまうことはない。その後、閉塞部50が収納繰出部32等の硬貨出入口を閉塞するよう振分部材47が駆動される。そして、受渡し円盤62を繰出回転方向に回転させるとともに図4Cに示すように入金繰出部31等の硬貨出入口を規制ゲート55により閉じ、また閉塞部50が収納繰出部32等の硬貨出入口を開くよう振分部材47を駆動する。このようにして、入金繰出部31等からの硬貨の繰り出し動作が再開される。
このように、本実施の形態では、入金繰出部31、収納繰出部32および一時保留部38からの硬貨の繰り出し不良が発生していると判断された場合に、受渡し円盤62を反繰出回転方向に回転させることにより、入金繰出部31等の硬貨出入口における複数の硬貨の噛み込み等の詰まり状態を解消することができ、硬貨処理装置10の休止率の低減を図ることができる。
また、従来技術の硬貨処理装置では、硬貨の入金処理において正常な硬貨ではない樹脂貨が誤って入出金口21の受皿23に投入されてしまい当該樹脂貨が搬送部25に繰り出されたときに、硬貨の搬送先が受皿23である場合には、当該樹脂貨は識別部33により識別されるが当該識別部33よりも下流側に配置された通過センサ29a、29bにより検知されないことにより、通過センサ29a、29bの検知タイムオーバー等のトラブルにより硬貨処理装置が休止してしまうという問題があった。これに対し、本実施の形態の硬貨処理装置10では、識別部33により識別された硬貨が樹脂貨であった場合には、当該樹脂貨が識別部33よりも下流側に配置された通過センサ29a、29bにより検知されなかったときでも検知タイムオーバーとしないで識別部33よりも下流側にある振分部材47の駆動を行うようになっている。
より詳細に説明すると、識別部33には光センサからなるタイミングセンサ(図示せず)が設けられており、このタイミングセンサにより硬貨が検知されたときには識別部33に設けられたイメージセンサ(図示せず)により硬貨の撮像が行われるとともに識別部33に設けられた磁気センサ(図示せず)により当該硬貨が金属であるか否かが検知される。ここで、搬送部25により識別部33に送られた硬貨が樹脂貨であった場合には、タイミングセンサにより樹脂貨は検知されるが磁気センサにより金属製でないことが検知され、このことにより樹脂貨であると判別される。このときには、制御部201は、樹脂貨を搬送するベルト43のピン45を監視するようになる。また、識別部33により識別された樹脂貨は搬送部25により受皿23に送られるが、この際に、樹脂貨よりも1つ前に搬送される硬貨がリジェクト硬貨であった場合には、当該リジェクト硬貨は受皿23に搬送されるため、案内部48が搬送部25の通路面41外に退避するとともに閉塞部50が収納繰出部32等の硬貨出入口を閉塞するよう振分部材47が駆動される。その後、樹脂貨を搬送するピン45が識別部33の下流側にある通過センサ29a(すなわち、一時保留部38の振分部材47よりも上流側にある通過センサ29a)により検知された場合でも、振分部材47は一時保留部38の硬貨出入口を塞ぐ位置に維持される。このことにより、樹脂貨も受皿23に送られるようになる。なお、上記の説明では、通過センサ29a、29bがベルト43のピン45の直接検知するような態様について説明したが、このような態様に限定されることはなく、ベルト43の回転をパルス数に変換し、このパルス数をカウントすることでピン45の位置を監視するようにしてもよい。
一方、樹脂貨よりも1つ前に搬送される硬貨が正常硬貨であった場合には、当該正常硬貨は一時保留部38に搬送されるため、案内部48が搬送部25の通路面41内に突出するとともに閉塞部50が収納繰出部32や一時保留部38の硬貨出入口を開放するよう振分部材47が駆動される。その後、樹脂貨を搬送するピン45が、識別部33の下流側にある通過センサ29aに到達すると、振分部材47は一時保留部38の硬貨出入口を塞ぐよう駆動され、案内部48が搬送部25の通路面41外に退避するとともに閉塞部50が収納繰出部32等の硬貨出入口を閉塞するようになる。このことにより、樹脂貨は振分部材47により一時保留部38に振り分けられずに受皿23に送られるようになる。
このように、本実施の形態では、識別部33により識別された硬貨が樹脂貨であった場合には、当該樹脂貨が識別部33よりも下流側に配置された通過センサ29a、29bにより検知されなかったときでも検知タイムオーバーとせず、この樹脂貨を押動するベルト43のピン45を監視することにより識別部33よりも下流側にある振分部材47の駆動を行うようになっている。このため、搬送部25に樹脂貨が繰り出されてしまった場合でも硬貨処理装置10が休止しないようになるため、硬貨処理装置10の休止率の低減を図ることができる。
また、従来技術の硬貨処理装置では、「くの字状」に折れ曲がった変形硬貨が入金繰出部31、収納繰出部32および一時保留部38に収納された場合には、これらの入金繰出部31等から変形硬貨が繰り出されないことにより硬貨の繰り出し不良が発生してしまって硬貨処理装置が休止してしまうという問題があった。具体的には、回転円盤60に対する変形硬貨の向きが当該回転円盤60から繰り出し難い向きの場合、従来技術の硬貨処理装置では変形硬貨の向きが変わりにくいため、硬貨の繰り出し不良が解消されにくいという問題があった。
これに対して、本実施の形態による硬貨処理装置10では、くの字状に折れ曲がった変形硬貨が入金繰出部31、収納繰出部32および一時保留部38に収納された場合には、回転円盤60の回転速度を大きくすることにより変形硬貨の回転モーメントを増加させ、回転円盤60から繰り出し易い向きに変形硬貨を反転させることで当該回転円盤60から変形硬貨を繰り出すようにしている。より詳細には、くの字状に折れ曲がった変形硬貨(図12において参照符号C1で表示)が入金繰出部31に収納された場合に、回転円盤60に対する変形硬貨の向きとして図12(a)に示すような状態と図12(a)に示すような状態とがある。ここで、図12(a)に示すような向きの変形硬貨は回転円盤60から繰り出し易いが図12(b)に示すような向きの変形硬貨は回転円盤60から繰り出し難くなっている。なぜならば、図4Cに示すように規制ゲート55が収納繰出部32の硬貨出入口を閉じているときには、案内通路69と規制ゲート55との間には、硬貨1枚分の厚さよりもわずかに大きい間隙が形成されるようになるため、図12(b)に示すような向きの変形硬貨は案内通路69と規制ゲート55との間の隙間を通ることが難しいからである。このため、入金繰出部31等に設けられた残留検知センサ(図示せず)により当該入金繰出部31等において残留硬貨が発生していることが検知された場合には、回転円盤60を高速で回転させることにより図12(b)に示すような向きの変形硬貨を反転させて図12(a)に示すような向きとする。また、図4Dに示すように規制ゲート55が収納繰出部32の硬貨出入口を開くようにする。このことにより、回転円盤60から案内通路69に送られた変形硬貨について、規制ゲート55に衝突して案内通路69から落下してしまうことを防止することができるようになる。
このように、本実施の形態による硬貨処理装置10では、くの字状に折れ曲がった変形硬貨が入金繰出部31、収納繰出部32および一時保留部38に収納された場合でも、回転円盤60の回転速度を大きくすることにより変形硬貨の向きを図12(a)に示すような回転円盤60から繰り出し易い向きに変えることで当該回転円盤60から変形硬貨を繰り出すようになっているため、硬貨処理装置10の休止率の低減を図ることができる。
以上のように、本実施の形態の硬貨処理装置10および硬貨処理方法によれば、硬貨が異常接近状態であることが検知されたときでも、所定条件が満たされる場合には搬送部25による硬貨の搬送を続行させることにより、異常接近状態であると判断された複数の硬貨を常に搬送部25から排除するような従来技術の場合と比較して硬貨の処理効率を向上させることができる。
また、本実施の形態の硬貨処理装置10においては、前述したように、異常接近状態であることが検知された複数の硬貨を分岐させる分岐部が開口を介して硬貨を落下させる落下式のもの(具体的には、オーバーフロー硬貨分岐部121、硬貨分岐部122、リジェクト硬貨分岐部123、回収硬貨分岐部124の振分ゲート)であるときに上記の所定条件が満たされたと判断されるようになっている。また、異常接近状態であることが検知された複数の硬貨の搬送先が同一であるときにのみ上記の所定条件が満たされたと判断されるようになっている。
また、本実施の形態の硬貨処理装置10においては、前述したように、異常接近状態であることが検知された複数の硬貨の搬送先がオーバーフロー硬貨収納部(オーバーフロースタッカ90、取り忘れボックス127および予備ボックス128)または硬貨回収部(硬貨カセット92、運用リジェクトボックス104および補充リジェクトボックス105)であるときにのみ上記の所定条件が満たされたと判断されるようになっている。
また、本実施の形態の硬貨処理装置10においては、前述したように、搬送部25には、硬貨を押動するピン45が複数設けられており、ピン45間に複数の硬貨が存在するときに硬貨が異常接近状態であることが検知されるようになっている。
また、本実施の形態の硬貨処理装置10においては、前述したように、硬貨が異常接近状態であることが検知されたときに、上記の所定条件が満たされない場合には搬送部25により搬送されている最中の全ての硬貨を当該搬送部25により受皿23に搬送し、この際に搬送部25による硬貨の搬送速度を通常の硬貨処理時の硬貨の搬送速度よりも小さくしている。このように、搬送部25から硬貨を排除する際に、ベルト43の速度を小さくすることにより、2枚以上の硬貨が連鎖状態でピン45により押動される場合でも搬送部25の通路面41上での硬貨の詰まりの発生を抑制するようになっている。
また、本実施の形態の硬貨処理装置10および硬貨処理方法によれば、硬貨が搬送部25のピン45から外れたことが検知されたときでも、当該ピン45に引き続く後続のピン45により硬貨が押動されていない場合には硬貨の搬送を続行させることにより、硬貨処理装置の動作を停止させてピン45から外れてしまった硬貨を筐体12の外部に手動で取り出すことにより当該硬貨を搬送部25から排除するような従来技術の場合と比較して硬貨の処理効率を向上させることができる。
なお、本実施の形態による硬貨処理装置10や硬貨処理方法は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
例えば、入金繰出部31、収納繰出部32、一時保留部38、受皿23等の間で硬貨を搬送する搬送部25は、ピン45が設けられたベルト43を有するものに限定されることはない。他の構成の搬送部25として、ピンが設けられていない丸ベルトにより硬貨を一層一列状態で搬送するようなものが用いられてもよい。このような構成からなる搬送部25が用いられる場合でも、搬送される硬貨の間隔が所定の間隔よりも小さくなるような硬貨の異常接近状態が検知されたときに、所定条件が満たされる場合には搬送部25による硬貨の搬送を続行させるようになっており、このことにより、異常接近状態であると判断された複数の硬貨を常に搬送部25から排除するような従来技術の場合と比較して硬貨の処理効率を向上させることができる。