JP6448417B2 - 高純度錫の製造方法、高純度錫の電解採取装置及び高純度錫 - Google Patents

高純度錫の製造方法、高純度錫の電解採取装置及び高純度錫 Download PDF

Info

Publication number
JP6448417B2
JP6448417B2 JP2015045199A JP2015045199A JP6448417B2 JP 6448417 B2 JP6448417 B2 JP 6448417B2 JP 2015045199 A JP2015045199 A JP 2015045199A JP 2015045199 A JP2015045199 A JP 2015045199A JP 6448417 B2 JP6448417 B2 JP 6448417B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
tin
electrolytic solution
lead
electrolytic
cathode
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015045199A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016074969A (ja
Inventor
竹本 幸一
幸一 竹本
伊森 徹
徹 伊森
大内 高志
高志 大内
祐史 高橋
祐史 高橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JX Nippon Mining and Metals Corp
Original Assignee
JX Nippon Mining and Metals Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JX Nippon Mining and Metals Corp filed Critical JX Nippon Mining and Metals Corp
Priority to TW104129492A priority Critical patent/TWI577836B/zh
Priority to US14/872,316 priority patent/US20160097139A1/en
Publication of JP2016074969A publication Critical patent/JP2016074969A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6448417B2 publication Critical patent/JP6448417B2/ja
Priority to US16/674,676 priority patent/US11572632B2/en
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P10/00Technologies related to metal processing
    • Y02P10/20Recycling

Description

本発明は、高純度錫の製造方法、高純度錫の電解採取装置及び高純度錫に関し、より具体的には、硫黄濃度及びアンチモン濃度の低い板状電着物を製造でき、この板状電着物から高純度錫を製造可能な高純度錫の製造方法、高純度錫の電解採取装置及び高純度錫に関する。
錫は、電子部品の製造において広く使用されてきており、例えば、半導体チップの基板との接合に用いられるはんだ材料、TAB(テープ・オートメイテッド・ボンディング)やフリップ実装時のバンプ形成材料及び半導体配線材料などに利用されている。近年の高密度化及び高集積化に伴い、半導体チップ接合周辺材料からのα線発生がソフトエラーを引き起こす問題も懸念されており、α線放出の少ない高純度な錫を得る技術が求められてきている。
例えば、特許文献1では、硫酸と珪フッ酸の混酸からなる錫の電解液を電解槽から抜き出して沈殿槽に導き、沈殿槽において電解液に炭酸ストロンチウムを添加して液中の鉛を沈殿化し、沈殿物を含む電解液を濾過して沈殿物を分離濾過し、沈殿物除去後の電解液を電解槽に戻しながら電解採取を実施する錫の電解採取方法及び設備が開示されている。
しかしながら、特許文献1で製造される高純度錫の製造方法では、電解液に珪フッ酸と硫酸の混酸を用いているためにコストが高くなり、また、沈殿槽の液温度管理が必須なため煩雑である。また、特許文献1では、浄化した電解液と未処理の電解液とを混合することで鉛を希釈する手法をとっているが、特許文献1に記載された電解採取設備では、アノードとカソードとの間には隔膜が無いため、アノードから溶出した鉛が常にカソードに取り込まれる可能性があり、鉛の精製効果が低くなり、全体として、製造コストが高くなる割には錫の高純度化に関しては期待できるレベルとは言えない。
特許文献2では、粗金属錫を加えた加熱水溶液に硝酸を添加して、メタ錫酸を沈降させて濾過し、得られたメタ錫酸を塩酸又はフッ酸にて溶解し、この溶解液を電解液として5N以上の金属錫を得る方法が記載されている。この技術には漠然とした半導体用としての適用ができると述べている。しかしながら、特許文献2には、半導体のソフトエラーの問題となるα線放出に関する事項は一切記載されておらず、このα線放出については関心が低いレベルのものといえる。
特許文献3では、Sn塩からSn−ジカルボキシレート錯体を含む懸濁液を形成し、Sn−ジカルボキシレート錯体を洗浄することにより洗浄溶液を得て、得られた洗浄Sn−ジカルボキシレート錯体を塩基と反応させることにより、約0.002cph/cm2未満のα線カウントを有する酸化錫を製造する方法が記載されている。しかしながら、特許文献3には、α線カウントに関する特性が記載されているだけで、酸化錫中の鉛などの不純物については特に記載がされていない。
特許文献4には、特級硫酸試薬で電解して製造した、品位が99.99%以上であり、放射線α粒子のカウント数が0.03cph/cm2以下である錫の例が開示されている。特許文献4のように高純度の原材料を使用すれば高純度の材料が得られることは当然であるが、それでも特許文献4の実施例に示されている析出錫の最も低いα線カウント数は0.03cph/cm2であり、コスト高の割には期待できるレベルには達していない。
特許文献5も、特許文献4と同様に、試薬一級硫酸の規格に適合する硫酸と試薬一級塩酸の規格に適合する塩酸を含有する電解液を用いて、純度が99.97重量%以上である錫を陽極に用いて電解を行う錫の製造方法の例が記載されている。しかしながら、特許文献5も、コスト高の割には析出錫のα線カウント数のレベルが期待できるレベルにまで達しているとは言えない。
このようなことから、出願人は、特許文献6及び7に示すような高純度錫及びその製造方法を検討してきた。特許文献6及び7によれば、放射線α粒子を放出するPb、Biの含有量を1ppm以下とし、且つαカウント数が0.001cph/cm2以下の高純度錫及びその製造方法が提供できる。
しかしながら、特許文献6及び7で提案される製造方法では、錫と鉛の電位差を十分に確保するために、陰極表面に電着する電着錫を平滑化するための平滑剤を添加してこなかったため、陰極表面に電着する電解錫の形状は針状であった。これにより、陰極を電解槽から引き上げて陰極から電着錫を回収する際には、針状の電着錫による電解液の持ち出しが多くなり、新たな電解液補充のために製造歩留まりが低下する場合があった。
更に、電着錫が針状であるために、電着錫の表面積が大きくなり、これを大気鋳造して錫インゴットを製造する場合には、酸化が進み易くなる場合があった。その結果、高純度錫を得るためには、水素等の還元雰囲気中での鋳造を行う必要が生じ、生産性を十分に向上できない場合があった。
特許第3882608号公報 特開平11−343590号公報 特表2014−506554号公報 特開平1−283398号公報 特開平2−228487号公報 特許5296269号公報 国際公開第2011/114824号明細書
上記課題を鑑み、本発明は、製造コストを低減して錫の生産性を向上でき、且つα線放出が少ない錫材料を製造可能な高純度錫の製造方法、高純度錫の電解採取装置及び高純度錫を提供する。
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、錫の電解採取において、電解槽中の電解液を抜き出し、抜き出した電解液中の鉛を除去した後に再び電解槽へ循環させるとともに、電解液中に平滑剤を含有させることにより、陰極表面上に、硫黄及びアンチモン等の不純物濃度が低く、且つ表面性状が比較的平坦な板状の電着錫が得られることを見出した。そしてこの板状の電着錫を大気中で溶解鋳造することによって、低コスト且つ高生産性でα線放出が少ない高純度錫が得られることを見出した。
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、陽極と陰極との間に隔膜を配置した電解槽中で、錫原料を陽極とし、錫原料を硫酸溶液中で電解浸出して得られた浸出液を電解液として、電解採取により陰極の表面上に電着錫を析出させる高純度錫の製造方法であって、電解液中に電着錫の表面性状を改善させるための平滑剤を含み、電解液を電解槽から抜き出して、抜き出した電解液中の鉛を除去し、鉛を除去した電解液を電解槽へ戻すことを含む高純度錫の製造方法が提供される。
本発明に係る高純度錫の製造方法は一実施態様において、陽極を配置した電解槽の陽極室側の電解液を抜き出して、抜き出した電解液中の鉛を除去した後、鉛を除去した電解液を、陰極を配置した電解槽の陰極室側に戻すことを含む。
本発明に係る高純度錫の製造方法は別の一実施態様において、平滑剤が、アリール基に1又は複数の水酸基を有する化合物であって水酸基がメチレンもしくは複数のエチレンオキシドを介してアリール基に結合された非イオン性界面活性剤を含む。
本発明に係る高純度錫の製造方法は更に別の一実施態様において、平滑剤が、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを含む。
本発明に係る高純度錫の製造方法は更に別の一実施態様において、ガス成分元素(O、C、N、H)を除く純度として、4N(99.99%)以上である錫原料を用いる。
本発明に係る高純度錫の製造方法は更に別の一実施態様において、錫原料中の鉛含有量が20ppm以下である。
本発明に係る高純度錫の製造方法は更に別の一実施態様において、板状結晶からなる高純度錫の電着物を得ることを含む。なお、本発明における「板状結晶からなる高純度錫の電着物」とは、陰極板の電着面と平行方向に、高純度錫が一連の板状に電着した電着物を意味し、針状成長した際に見られるような隙間が見られず、陰極板一面に高純度錫が電着した状態を示す。一方、従来の工程の場合は、細長く針のような形状に成長した針状結晶からなる電着物が得られる。この「針状結晶からなる電着物」とは、デントライト状に成長したものや、陰極板上に網目状に電着した錫も含まれる。
本発明は別の一側面において、錫原料から作製された陽極と、陽極に対向する陰極と、陽極と陰極との間に配置された隔膜とを備え、錫原料を硫酸溶液中で電解浸出して得られた浸出液に陰極に析出する電着錫の表面性状を改善させるための平滑剤を添加した電解液を用いて電解採取を行うための電解槽と、電解液を電解槽から抜き出し、抜き出した電解液中の鉛を除去する浄液槽と、浄液槽で処理された電解液を濾過する濾過装置と、濾過後の電解液を電解槽へ送液する送液ラインとを備える高純度錫の電解採取装置が提供される。
本発明に係る高純度錫の電解採取装置は一実施態様において、陽極を配置した電解槽の陽極室側の電解液を抜き出して、抜き出した電解液中の鉛を除去し、鉛を除去した電解液を、陰極を配置した電解槽の陰極室側の電解液として送液することを含む。
本発明は更に別の一側面において、鉛含有量が0.1ppm未満、硫黄含有量が1.0ppm以下で、α線カウント数が0.001cph/cm2以下である上記高純度錫の製造方法によって製造された高純度錫が提供される。
本発明に係る高純度錫は一実施態様において、鉛含有量が0.05ppm未満、アンチモン含有量が0.5ppm未満、銅含有量が0.1ppm未満、硫黄含有量が0.5ppm以下で、α線カウント数が0.001cph/cm2以下である。
本発明によれば、製造コストを低減して錫の生産性を向上でき且つα線放出が少なく高純度な錫材料を製造可能な高純度錫の製造方法、高純度錫の電解採取装置及び高純度錫が提供できる。
本発明の実施の形態に係る錫の電解採取装置を表す概略図である。 錫原料、実施例1〜5及び比較例1の高純度錫の不純物組成を示す表である。 平滑剤及び隔膜を使用しない従来の製造方法で得られた高純度錫(比較例2〜4)と実施例1〜5の主要不純物の含有量の比較を表す表である。 針状結晶からなる電着錫と板状結晶からなる電着錫の外観例を示す。
(電解採取装置)
本発明の実施の形態に係る電解採取装置の一例を図1に示す。図1に示すように、電解採取装置は、電解槽1と、電解槽1中の電解液の一部を抜き出して電解液を洗浄する浄液槽2と、浄液槽2に接続された濾過装置3と、浄化後の電解液を保管する貯槽5と、電解液を送液する送液ライン4a〜4dを備える。
電解槽1には、陰極11と陽極12が配置されている。電解槽1内は、陰極11が配置された陰極室13と陽極12が配置された陽極室15に仕切られており、電解採取によって陽極12から発生する不純物イオンの陰極11への析出を抑制するための隔膜14が陰極11と陽極12との間に配置されている。隔膜14としてはイオン交換膜が好適に用いられる。
陽極12には、錫原料、好ましくはガス成分元素(O、C、N、H)を除く純度4N以上の錫原料(以下「純度4N以上の錫原料」ともいう)を溶解鋳造して、所定の形状にしたものが用いられる。錫原料中の鉛含有量が少ないほど、電解採取をより効率的に行うことができるため、錫原料の鉛含有量は50ppm以下とすることが好ましく、より好ましくは20ppm以下、更に好ましくは10ppm以下、更に好ましくは5ppm以下である。更に、錫原料は、硫黄含有量が20ppm以下、好ましくは10ppm以下、鉄含有量が10ppm以下、好ましくは1ppm以下、銅含有量が10ppm以下、好ましくは1ppm以下、アンチモン含有量が10ppm以下、好ましくは1ppm以下、銀含有量が10ppm以下、好ましくは1ppmの材料を用いることが好ましい。陰極11には、ステンレス、チタン等の金属板が用いられる。電解槽1へ供給される電解液は、上記錫原料、即ち純度4N以上の錫原料、好ましくは鉛含有量が20ppm以下の錫原料を硫酸溶液中で電解浸出して得られた浸出液が好適に用いられる。
電解液には、電解液中に電着錫の表面性状を改善させるための平滑剤が添加される。平滑剤としては、アリール基に1又は複数の水酸基を有する化合物であって水酸基がメチレンもしくは複数のエチレンオキシドを介してアリール基に結合された非イオン性界面活性剤が用いられる。
アリール基に1又は複数の水酸基を有する化合物を平滑剤として使用することによって、この構造を有さない化合物に比べて電解採取中の平滑剤の分解が抑制されるため、平滑剤の効果を安定的に長期間得ることができる。また、従来の高純度錫の電解精製工程では、平滑剤を加えた場合は、SnとPbの電位差が小さくなるために、高純度で表面性状の良好な電着錫を得ることが困難であったが、陽極と陰極の間に隔膜を設ける事により、陽極から溶出した鉛がそのまま陰極に析出する事を防ぐことができる。更に、陽極電解液中に蓄積した鉛イオンを浄化し、浄化後の電解液を陰極へ陰極電解液として供給することにより、SnとPbの電位差の問題を解決できるとともに、その後の溶解鋳造工程における鋳造収率が向上するとともに、高純度且つ表面性状の良好な電着錫が得られる。
平滑剤としては、以下の化学式(1)〜(4)で示される化合物が使用できる:

(式(1)〜(3)において、m、nはそれぞれ0〜12の整数、a、b、cはそれぞれ1〜3の整数、kは4〜24の整数を示す)。
より好ましくは、平滑剤としては、α−ナフトール、β−ナフトール、α−ナフトールのEO(エチレンオキシド)付加物、β−ナフトールのEO付加物及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上を用いることができる。中でも、βナフトール及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが好適に用いられる。一方、アリール基を有しない水酸基を有する鎖状化合物は、電解中に分解するために、寿命・安定性の面で本実施形態には適さない場合がある。
電解液への平滑剤の含有量は1〜20g/Lが好ましく、3〜10g/Lとすることがより好ましい。平滑剤の含有量が極度に低い場合には、電着錫の表面性状の改善効果を得ることが困難になる。なお、平滑剤に加えて、電解液にヒドロキノン等の酸化防止剤を1〜10g/L程度、より好ましくは4〜6g/L加えてもよい。平滑剤は、例えばカソードボックス13内へ電解液を循環供給する貯槽5で添加することができる。
浄液槽2には、電解槽1から抜き出された電解液が収容され、抜き出した電解液中の鉛が除去される。鉛の除去方法としては、抽出剤を用いた鉛イオンの溶媒抽出、イオン交換樹脂などによる吸着除去、硫化物添加による難溶性硫化物塩析出、ストロンチウムイオン等の共沈剤の添加による共沈などによって行うことができる。例えば、ストロンチウムを用いた共沈を行う場合には、浄液槽2には図示しない撹拌手段が設けられ、撹拌しながら炭酸ストロンチウムなどの共沈剤が添加されることにより、電解液から鉛を含む硫酸ストロンチウム(SrSO4)の沈殿物が生成される。共沈剤の添加量は、1〜30g/Lが好ましく、より好ましくは3〜20g/Lであり、更に好ましくは3〜10g/Lとすることがより好ましい。
浄液槽2から抜き出された電解液は、送液ライン4bを介してフィルタープレス等の濾過装置3に送られ、固液分離される。これにより、電解液中の不純物が除去される。即ち、浄液槽2において炭酸ストロンチウムなどの共沈剤を用いて電解液中に沈殿物を生成させた場合には、電解液中に含まれる鉛含有硫酸ストロンチウムが除去される。固液分離によって得られたろ液は、精製電解液として送液ライン4cを介して貯槽5へ送られ、送液ライン4dを介して電解槽1の陰極室13へ送られることで循環される。送液ライン4a〜4bは、電解槽1内の電解液を抜き出して、浄化精製し、精製後の電解液を再び電解槽1内へ戻すための送液ラインである。
ここで、送液ライン4dは電解槽1の陰極室13に接続され、鉛除去後の電解液が電解槽1の陰極室13へ供給される。陰極室13内に供給される電解液は、浄液槽2によって鉛が除去されているため、電着錫析出時の鉛イオンの巻き込みが少なくなる。また、送液ライン4aは電解槽1の陽極室15に接続され、陽極12を構成する錫原料から溶け出した鉛を含有する陽極室15内の電解液(アノライト)を抜き取ることが好ましい。このように、陽極室15内の電解液(アノライト)を抜き取って、これを浄液槽2において電解液中の鉛を除去し、鉛除去後の電解液を陰極室13側へ循環させて陰極室13内の電解液(カソライト)として再利用することにより、新たな電解液を補充する頻度が少なくなるため、電解液の有効利用を図ることができ、高純度錫の生産効率を向上させることができる。
更に、陰極室13内に供給される電解液には平滑剤が添加されているため、従来は針状であった陰極11の表面上に析出する電着錫の表面性状をより平坦化することができるため、板状の電着錫を得ることができる。その結果、従来の針状の電着錫を利用する場合に比べて、電着錫引上げ時の電着錫により電解液の巻き込みも少なくなり電解液の補充が少なくてすむとともに、その後溶解鋳造して金属錫を製造する際の鋳造収率も向上させることができ、さらには電解液の主成分である硫黄分の電着錫への混入も抑止できるので、電着錫中の硫黄含有量が低減でき、高純度錫の生産性の向上が図れる。本発明で製造される金属錫は、硫黄濃度が低減されるため、はんだ材として使用される際、CuやAlの電極材の腐食を抑制でき、電極とはんだ材との接触抵抗の増大を抑制できる。
(高純度錫の製造方法)
次に、本発明の実施の形態に係る高純度錫の製造方法を説明する。本実施形態に係る高純度錫の製造方法は(a)陽極と陰極との間に隔膜を配置した電解槽中で、錫原料を陽極とし、錫原料を硫酸溶液中で電解浸出して得られた浸出液を電解液として、電解採取により陰極の表面上に電着錫を析出させる工程(電解採取工程)と(b)電着錫を溶解鋳造する工程(溶解鋳造工程)とを含む。
(a)電解採取工程
電解採取工程では、図1に示す電解採取装置を用いて錫の電解採取を行う。電解液としては、錫原料、好ましくは純度4N以上の錫原料を硫酸溶液中で電解浸出して得られた浸出液を使用し、陽極には錫原料、好ましくは純度4N以上の錫原料から鋳造された錫アノードを、陰極にはチタン板をそれぞれ使用する。電解液の錫濃度は1〜100g/L程度が好ましく、より好ましくは30〜100g/Lであり、電解液のpHは0〜1が好ましく、より好ましくは0.3〜0.8である。
電解採取時の電流密度は、1〜5A/dm2とするのが好ましく、より好ましくは2〜3A/dm2である。電流密度が小さすぎると生産性が低く、電流密度が高すぎると電解電圧が高くなるため、平滑剤の効果が薄れて錫が針状に析出する場合がある。液温は10〜40℃で電解する。
電解採取時は電解液の少なくとも一部を抜き取って浄液槽2へ送る。例えば、純度4N以上で鉛含有量が20ppm以下の錫原料から鋳造された陽極12を使用した場合、不純物の多い陽極を使用する場合に比べて鉛の溶出は少ないが、それでも長時間の電解採取により電解液中には鉛が蓄積する。
浄液槽2においては、抜き取った電解液に対して抽出剤を用いた鉛イオンの溶媒抽出、イオン交換樹脂などによるイオン交換、硫化物添加による難溶性硫化物塩析出、ストロンチウムイオン等の共沈剤の添加による共沈などを行うことにより、電解液中の鉛を除去する。例えば、抜き取った電解液にストロンチウムイオンを添加して1〜24時間攪拌する。ストロンチウムイオン源としては、炭酸ストロンチウムが好適である。その他、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属塩を利用することができる。攪拌終了後、電解液中には鉛と硫酸ストロンチウムによる沈殿物が生成される。
浄液槽2における浄液処理後の電解液は、濾過装置3において固液分離することにより不純物が除去される。例えば、浄液槽2において共沈剤を用いた鉛の共沈処理を行った場合は、電解液中に鉛を含む沈殿物が生成されるため、この沈殿物を含む電解液を濾過装置3において固液分離する。固液分離によって、本実施形態における電解液中の鉛濃度は、典型的には0.2mg/L以下、より典型的には0.1mg/L以下に低減される。
固液分離後のろ液は、高純度錫電解液として貯槽5へ戻される。貯槽5では、電解液に平滑剤及び必要に応じて硫酸と添加剤、酸化防止剤等を更に添加して電解液を調整することができる。貯槽5内の電解液は、送液ライン4dを介して電解槽1の陰極室13内へ供給される。
(b)溶解鋳造工程
電解採取後、陰極11の表面に析出した電着錫を電解槽1から引き上げて回収し、回収後の電着錫を250〜300℃で溶解鋳造することにより精製金属錫を製造する。回収後の電着錫は、従来の電着錫に比べて大きな針状の電着物の形成が抑制されている。そのため、陰極11を電解槽1から引き上げて回収する際に、電着物中に電解液が大量に巻き込まれることを抑制することができる。また、本実施形態に係る錫は、従来の電着錫に比べて電着錫の表面が平坦化されているため、電着錫の表面積が小さくなることから、水素雰囲気で還元鋳造する必要がなくなり、大気中で溶解鋳造することができる。これにより溶解鋳造のための生産コストを低く抑えることができ、錫の生産性が向上できる。
(金属錫)
本発明の実施の形態に係る上記高純度錫の製造方法によって得られた高純度錫(精製金属錫)は、グロー放電質量分析法(GDMS:Glow Discharge Mass Spectrometry)によって評価し、鉛含有量が0.1ppm未満、硫黄含有量が1.0ppm以下、銅含有量が0.1ppm未満、アンチモン含有量が0.5ppm未満であり、α線カウント数が0.001cph/cm2以下である。尚、本発明で使用する「ppm」の単位表記は、「重量ppm(wtppm)」を意味する。金属錫のα線カウント数は、Ordela社製のGas Flow Proportional Counterモデル8600A−LBを用いて測定した場合のα線量を示す。該装置においては、使用するガスを90%アルゴン−10%メタンとし、測定時間をバックグラウンド及び試料とも104時間とした。測定時間のうち最初の4時間は測定室パージに必要な時間とし、その後5時間から104時間後まではデータの測定に必要な時間とした。測定装置から微量のα線(バックグラウンド(BG)α線)が出るため、α線カウント数の測定データからバッググラウンドα線カウント数を差し引いた値を、金属錫のα線カウント数として評価した。金属錫のα線カウント数は電解採取から3ヶ月以内に測定した結果を意味する。
本発明の実施の形態に係る高純度錫の純度は4N以上(但し、O、C、N、Hのガス成分を除く)、より典型的には5N以上の高純度錫が得られる。この高純度錫中に含まれる不純物元素の測定は、Snをマトリクスとして、Li、Be、B、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Br、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sb、Te、I、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Th、Uを対象としてGDMS法で分析を行った結果を意味する。なお、錫原料と比較例1は全元素73成分をGDMS法で測定した結果を示す。
本実施形態に係る高純度錫は、質量分析の結果、Li、Be、B、F、Na、Mg、Al、Si、Cl、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、As、Se、Br、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Te、I、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Th、Uはいずれも検出限界値未満である。
本発明において「検出限界値未満」とは、Sc、Vが0.001ppm未満、Li、Be、B、Ti、Cr、Mn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Rh、Pd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、Uが0.005ppm未満、Na、Mg、Al、Si、P、Cl、K、Ca、Co、Ni、Zn、Ge、Se、Mo、Ru、Eu、Hf、W、Re、Os、Ir、Pt、Biが0.01ppm未満、Tlが0.02ppm未満、F、Br、Cd、I、Cs、Au、Hgが0.05ppm未満、Teが0.1ppm未満、Inが1ppm未満、Taが5ppm未満であることを意味する。
本発明の実施の形態に係る錫によれば、α線放出が少なく、不純物、特に鉛含有量の少ない高純度な錫が得られる。
−実施例−
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
(実施例1)
陰極と陽極とを陰イオン交換膜(旭硝子社製、セレミオンAMV)により仕切った電解槽の陰極側に所定量の硫酸溶液、陽極側に、pH0.5の希硫酸溶液を入れた。更に陽極側の電解液中に酸化防止剤としてヒドロキノンを電解液中で5g/Lの濃度になるように添加した。錫原料から鋳造した陽極とチタン製の陰極を電解槽内にそれぞれ配置し、電流密度2A/dm2、液温33℃で電解浸出して硫酸錫電解液(錫濃度105g/L)を作製した。
陽極に使用した錫原料(原料)の分析結果を図2に示す。
陽極室電解液の一部を抜き出して、鉛を除去する浄液槽へ入れ、そこへ純水に分散させたスラリー状の炭酸ストロンチウムを電解液に対し5g/L添加して16時間攪拌し、攪拌後の電解液を吸引濾過により固液分離して、電解液中の鉛を除去して、除去後の電解液を陰極室側に投入した。鉛除去後の電解液中鉛濃度は0.1mg/L未満であった。
陽極側の電解槽には、抜き出した電解液の減量分を補うためにpH0.5の希硫酸溶液を入れ、更に酸化防止剤としてヒドロキノンを5g/L添加した。
浄液処理をした陰極側の電解液には、平滑剤としてポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテルを5g/Lの濃度となるように添加した。この状態で、電流密度2A/dm2、pH0.5、液温30℃で、陰極側電解液の錫濃度が48g/Lになるまで電解採取し、電解槽から陰極を引き上げた。陰極上には、針状成長することなく、表面性状が平坦な板状結晶からなる電着錫が得られた。尚、陰極室に添加した平滑剤は電解槽中の陰イオン交換膜を通過して陽極側へ侵入することはない。
陰極上に析出した電着錫を引き剥がして、大気中で250〜300℃に加熱して溶解鋳造して、精製金属錫を作製した。得られた精製金属錫の分析の結果、鉛含有量は0.01ppm未満であった。また、アンチモン含有量が0.5ppm未満、銅含有量が0.06ppm、硫黄含有量が0.12ppmであった。得られた精製金属錫のα線カウント数は0.001cph/cm2以下であった。精製金属錫中の不純物のGDMS法による測定結果を図2に示す。
(実施例2)
実施例1で電解採取が終了した後の陽極室電解液の錫濃度は、94g/L、pH0.54であった。この陽極室電解液を抜き出して、鉛を除去する浄液槽へ入れ、そこへ粉末状の炭酸ストロンチウムを電解液に対し5g/L添加して16時間攪拌し、攪拌後の電解液を吸引濾過により固液分離して、電解液中の鉛を沈殿除去した。
次に、陽極側の電解槽には、抜き出した電解液の減量分を補給するために、実施例1の陰極室で電解採取した、平滑剤を含有する後液を陽極室に戻した。
次に、浄液槽で鉛を除去した後の電解液は陰極室側に投入した。鉛除去後の電解液中の鉛濃度は0.1mg/L未満であった。浄液処理をした陰極側の電解液には実施例1と同様に平滑剤としてポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテルを5g/Lとなるように添加した。この状態で、電流密度1.3A/dm2、液温24℃で、錫濃度が37g/Lになるまで電解採取をし、電解槽から陰極を引き上げた。その結果、実施例1と同様に、陰極上には、板状結晶からなる電着錫が得られた。更に、実施例1と同様に鋳造を行い、精製金属錫を作製した。得られた精製金属錫の分析の結果、鉛含有量は0.01ppm未満であった。また、アンチモン含有量が0.5ppm未満、銅含有量が0.01ppm未満、硫黄含有量が0.38ppmであった。得られた精製金属錫のα線カウント数は0.001cph/cm2以下であった。精製金属錫中の不純物のGDMS法による測定結果を図2に示す。
(実施例3)
実施例2で電解採取が終了した後の陽極室電解液の錫濃度は、100g/L、pH0.63であった。炭酸ストロンチウムの添加量を10g/Lとした以外は実施例2と同様の浄液処理を行い、鉛除去後の電解液中の鉛濃度は0.1mg/L未満であった。
次に、陽極側の電解槽には、抜き出した電解液の減量分を補給するために、実施例2の陰極室で電解採取した、平滑剤を含有する後液を陽極室に戻した。
次に、浄液槽で鉛を除去した後の電解液は陰極室側に投入した。陰極室の電解槽内には、実施例1で添加した平滑剤が分解することなく陰極室内の電解液中に含有されているので、改めて平滑剤を補充することなく、この状態で、電流密度1.3A/dm2、液温26℃で、錫濃度が43g/Lになるまで電解採取をし、電解槽から陰極を引き上げた。実施例1と同様に、陰極上には板状結晶からなる電着錫が得られていた。更に、実施例1、2と同様に鋳造を行い、精製金属錫を作製した。得られた精製金属錫の分析の結果、鉛含有量は0.01ppm未満であった。また、アンチモン含有量が0.5ppm未満、銅含有量が0.02ppm、硫黄含有量が0.28ppmであった。得られた精製金属錫のα線カウント数は0.001cph/cm2以下であった。精製金属錫中の不純物のGDMS法による測定結果を図2に示す。
(実施例4)
実施例1と同様に、陰極と陽極とを陰イオン交換膜(旭硝子社製、セレミオンAMV)により仕切った電解槽の陰極側に所定量の硫酸溶液、陽極側に、pH0.5の希硫酸溶液を入れた。更に陽極側の電解液中に酸化防止剤としてヒドロキノンを5g/L、平滑剤としてβ−ナフトールを5g/L添加した。
錫原料から鋳造した陽極とチタン製の陰極を電解槽内にそれぞれ配置し、電流密度2A/dm2、液温33℃で電解浸出して硫酸錫電解液(錫濃度105g/L)を作製した。
次に、陽極室電解液の一部を抜き出して、鉛を除去する浄液槽へ入れ、そこへ純水に分散させたスラリー状の炭酸ストロンチウムを電解液に対し5g/L添加して16時間攪拌し、攪拌後の電解液を吸引濾過により固液分離して、電解液中の鉛を除去して、除去後の電解液を陰極側に投入した。鉛除去後の電解液中鉛濃度は0.1mg/L未満であった。また、陽極側の電解液には、抜き出した不足分を補うためにpH0.5の希硫酸溶液を入れ、更に酸化防止剤としてヒドロキノンを5g/L添加した。
実施例4では、陽極室の電解浸出液に、予め、平滑剤としてβ−ナフトールが添加されているので、陰極室電解液中に、改めて平滑剤を補充する事無く、この状態で、電流密度1.3A/dm2、液温32℃で、錫濃度が31g/Lになるまで電解採取をし、電解槽から陰極を引き上げた。陰極上には、実施例1〜3と同様に、板状結晶からなる電着錫が得られていた。更に、実施例1〜3と同様に鋳造を行い、精製金属錫を作製した。得られた精製金属錫の分析の結果、鉛含有量は0.01ppm未満であった。また、アンチモン含有量が0.5ppm未満、銅含有量が0.01ppm未満、硫黄含有量が0.17ppmであった。得られた精製金属錫のα線カウント数は0.001cph/cm2以下であった。精製金属錫中の不純物のGDMS法による測定結果を図2に示す。
(実施例5)
実施例1と同様に、陰極と陽極とを陰イオン交換膜(旭硝子社製、セレミオンAMV)により仕切った電解槽の陰極側に所定量の硫酸溶液、陽極側に、pH0.5の希硫酸溶液を入れた。更に、陽極側の電解液中に酸化防止剤としてヒドロキノンを5g/L添加した。錫原料から鋳造した陽極とチタン製の陰極を電解槽内にそれぞれ配置し、電流密度2A/dm2、液温33℃で電解浸出して硫酸錫電解液(錫濃度105g/L)を作製した。
次に、陽極室電解液の一部を抜き出して、鉛を除去する浄液槽へ移し、そこへ平滑剤としてα−ナフトールのEO付加物を10g/L添加し、さらに、純水に分散させたスラリー状の炭酸ストロンチウムを電解液に対し5g/L添加して16時間攪拌し、攪拌後の電解液を吸引濾過により固液分離して、電解液中の鉛を除去して、除去後の電解液を陰極側に投入した。鉛除去後の電解液中鉛濃度は0.1mg/L未満であった。
陽極側の電解液には、抜き出した不足分を補うためにpH0.5の希硫酸溶液を入れ、更に酸化防止剤としてヒドロキノンを5g/L添加した。
次に、電流密度1.3A/dm2、液温34℃で、錫濃度が35g/Lになるまで電解採取をし、電解槽から陰極を引き上げた。陰極上には、実施例1〜4と同様に、板状結晶からなる電着錫が得られていた。更に、実施例1〜4と同様に鋳造を行い、精製金属錫を作製した。得られた精製金属錫の分析の結果、鉛含有量は0.01ppm未満であった。また、アンチモン含有量が0.5ppm未満、銅含有量が0.05ppm、硫黄含有量が0.2ppmであった。得られた精製金属錫のα線カウント数は0.001cph/cm2以下であった。精製金属錫中の不純物のGDMS法による測定結果を図2に示す。
(比較例1)
実施例4に於いて、電着錫を得る為に電解した時に発生した陽極室電解液の錫濃度は73g/L、pH0.6であった。浄液処理を行わず、この電解液を陰極室電解液に移して、平滑剤を添加することなく、電流密度2.0A/dm2、液温34℃で、錫濃度が37g/Lになるまで電解採取をし、電解槽から陰極を引き上げた。陰極板上に電着した金属錫は針状成長しており、電解槽から陰極板を引上げる際には多くの電解液を巻き込みながら引き上げられた。その後、実施例1〜5と同様に鋳造を行い、精製金属錫を作製した。得られた精製金属錫の分析の結果、鉛含有量は1.5ppmであった。また、アンチモン含有量が0.5ppm未満、銅含有量が0.1ppm、硫黄含有量が1.5ppmであった。得られた精製金属錫のα線カウント数は0.0014cph/cm2であった。精製金属錫中の不純物のGDMS法による測定結果を図2に示す。
<電着錫の外観及び鋳造収率の比較結果>
特許第5296269号公報で生成した平滑剤を用いない電着錫と実施例1〜5で得られた電着錫の外観写真を評価したところ、特許第5296269号公報で生成した電着錫の場合は、針状の電着錫(針状結晶からなる電着錫)が陰極11全面にわたって形成されていた。そのため、陰極11から電着錫を引き剥がす際に、電着錫の電解槽への落下が生じてこれが電着錫のロスに繋がり、電解収率は90%に留まった。また、鋳造収率としては、実施例1〜5はいずれも電解収率が97%、鋳造収率が97%程度得られたのに対し、特許第5296269号公報で生成した電着錫では鋳造収率が82%程度しか得られなかった。図4には、特許第5296269公報で生成した針状結晶からなる電着錫(図4a)と本願発明による板状結晶からなる電着錫(図4b)の外観例を示す。
<隔膜及び平滑剤の有無による不純物除去効果への影響>
特許第5296269号の製法で、平滑剤の添加を行わず、隔膜なしの電解精製をして得られた電着錫を溶融鋳造して得られた精製金属錫(比較例2〜4)の主要不純物(S、Cu、Sb、Pb)の含有量と、実施例1〜5の主要不純物の含有量をGDMS法で評価した。比較結果を図3に示す。
比較例2〜4のいずれもα線カウント数測定結果は0.001cph/cm2以下であったが、図3の結果から、電解精製において陰極と陽極の間にイオン交換膜による隔膜を使用せず、平滑剤を使用しない場合には、錫と鉛の電位差を維持できた為に鉛がある程度は精製されたものの、実施例1〜5のように、錫中の鉛含有量を0.1ppm未満にし、且つ硫黄含有量を1ppm未満にまで低減することはできなかった。また、比較例2〜4では針状電析メタルが生成され、この針状電析メタル回収時に電解液を多量に巻き込んでいた。
1…電解槽
2…浄液槽
3…濾過装置
4a〜4d…送液ライン
5…貯槽
11…陰極
12…陽極
13…陰極室
14…隔膜
15…陽極室

Claims (13)

  1. 陽極と陰極との間に隔膜を配置した電解槽中で、錫原料を陽極とし、前記錫原料を硫酸溶液中で電解浸出して得られた浸出液を電解液として、電解採取により前記陰極の表面上に電着錫を析出させる高純度錫の製造方法であって、
    前記電解液中に前記電着錫の表面性状を改善させるための平滑剤を3〜10g/L添加し、
    前記電解液を電解槽から抜き出して、抜き出した電解液中の鉛を除去し、鉛を除去した電解液を前記電解槽へ戻すことを含む高純度錫の製造方法。
  2. 前記陽極を配置した前記電解槽の陽極室側の電解液を抜き出して、抜き出した電解液中の鉛を除去した後、鉛を除去した電解液を、前記陰極を配置した前記電解槽の陰極室側に戻すことを含む請求項1に記載の高純度錫の製造方法。
  3. 前記平滑剤が、アリール基に1又は複数の水酸基を有する化合物であって前記水酸基がメチレンもしくは複数のエチレンオキシドを介してアリール基に結合された非イオン性界面活性剤を含む請求項1又は2に記載の高純度錫の製造方法。
  4. 前記平滑剤が、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の高純度錫の製造方法。
  5. ガス成分元素(O、C、N、H)を除く純度として、4N(99.99%)以上である前記錫原料を用いる請求項1〜4のいずれか1項に記載の高純度錫の製造方法。
  6. 前記錫原料中の鉛含有量が20ppm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の高純度錫の製造方法。
  7. 板状結晶からなる高純度錫の電着物を得ることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高純度錫の製造方法。
  8. 前記電解液を電解槽から抜き出して、抜き出した電解液中の鉛を除去することが、抜き出した電解液に共沈剤を添加して鉛の沈殿物を生成させて除去することを含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の高純度錫の製造方法。
  9. 錫原料から作製された陽極と、前記陽極に対向する陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置された隔膜とを備え、前記錫原料を硫酸溶液中で電解浸出して得られた浸出液に前記陰極に析出する電着錫の表面性状を改善させるための平滑剤を3〜10g/L添加した電解液を用いて電解採取を行うための電解槽と、
    前記電解液を前記電解槽から抜き出し、抜き出した電解液中の鉛を除去する浄液槽と、
    前記浄液槽で処理された電解液を濾過する濾過装置と、
    前記濾過後の電解液を前記電解槽へ送液する送液ラインと
    を備える高純度錫の電解採取装置。
  10. 前記陽極を配置した前記電解槽の陽極室側の電解液を抜き出して、抜き出した電解液中の鉛を除去し、鉛を除去した電解液を、前記陰極を配置した前記電解槽の陰極室側の電解液として送液することを含む請求項に記載の高純度錫の電解採取装置。
  11. 前記浄液槽において、共沈剤を添加して鉛の沈殿物を生成させ、該沈殿物を固液分離することを含む請求項9又は10に記載の高純度錫の電解採取装置。
  12. 鉛含有量が0.1ppm未満、硫黄含有量が1.0ppm以下で、α線カウント数が0.001cph/cm2以下の高純度錫を得ることを含む請求項1〜のいずれか1項に記載の高純度錫の製造方法。
  13. 鉛含有量が0.05ppm未満、アンチモン含有量が0.5ppm未満、銅含有量が0.1ppm未満、硫黄含有量が0.5ppm以下で、α線カウント数が0.001cph/cm2以下である高純度錫。
JP2015045199A 2014-10-02 2015-03-06 高純度錫の製造方法、高純度錫の電解採取装置及び高純度錫 Active JP6448417B2 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
TW104129492A TWI577836B (zh) 2014-10-02 2015-09-07 High purity tin manufacturing methods, high purity tin electrolytic refining devices and high purity tin
US14/872,316 US20160097139A1 (en) 2014-10-02 2015-10-01 Method For Manufacturing High Purity Tin, Electrowinning Apparatus For High Purity Tin And High Purity Tin
US16/674,676 US11572632B2 (en) 2014-10-02 2019-11-05 Method for manufacturing high purity tin, electrowinning apparatus for high purity tin and high purity tin

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014204346 2014-10-02
JP2014204346 2014-10-02

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016074969A JP2016074969A (ja) 2016-05-12
JP6448417B2 true JP6448417B2 (ja) 2019-01-09

Family

ID=55949725

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015045199A Active JP6448417B2 (ja) 2014-10-02 2015-03-06 高純度錫の製造方法、高純度錫の電解採取装置及び高純度錫

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6448417B2 (ja)
TW (1) TWI577836B (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6512354B2 (ja) * 2017-08-17 2019-05-15 三菱マテリアル株式会社 低α線放出量の金属又は錫合金及びその製造方法
WO2019035446A1 (ja) * 2017-08-17 2019-02-21 三菱マテリアル株式会社 低α線放出量の金属及び錫合金並びにその製造方法
JP7314658B2 (ja) * 2018-07-30 2023-07-26 三菱マテリアル株式会社 低α線放出量の酸化第一錫の製造方法
WO2020026745A1 (ja) * 2018-07-30 2020-02-06 三菱マテリアル株式会社 低α線放出量の酸化第一錫及びその製造方法
WO2020179614A1 (ja) 2019-03-04 2020-09-10 Jx金属株式会社 耐酸化性金属錫
CN113433208A (zh) * 2021-05-18 2021-09-24 紫金矿业集团黄金冶炼有限公司 用于gdms检测6n铜样品的制备方法与低s测试方法
CN116988087B (zh) * 2023-09-28 2023-12-08 西南石油大学 一种用于废水制氢的无隔膜电解槽、系统及运行方法

Family Cites Families (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01283398A (ja) * 1988-05-09 1989-11-14 Mitsui Mining & Smelting Co Ltd 錫およびその製造方法
US4944851A (en) * 1989-06-05 1990-07-31 Macdermid, Incorporated Electrolytic method for regenerating tin or tin-lead alloy stripping compositions
JP3816241B2 (ja) * 1998-07-14 2006-08-30 株式会社大和化成研究所 金属を還元析出させるための水溶液
JP2004043946A (ja) * 2002-05-21 2004-02-12 Nikko Materials Co Ltd 高純度金属の製造方法及び装置
JP2006097128A (ja) * 2004-09-06 2006-04-13 Nippon Mining & Metals Co Ltd 板状電気銅の製造方法
CN100370062C (zh) * 2005-03-24 2008-02-20 广东风华高新科技集团有限公司 镀纯锡溶液组合物及采用该组合物制得的电子元器件
EP1900853B1 (en) * 2005-07-01 2018-05-09 JX Nippon Mining & Metals Corporation Process for producing high-purity tin
CN101033557A (zh) * 2006-03-10 2007-09-12 浙江师范大学 从无铅焊锡废料中回收锡和银的方法
JP5456881B2 (ja) * 2010-03-16 2014-04-02 Jx日鉱日石金属株式会社 α線量が少ない錫又は錫合金の製造方法
WO2012120982A1 (ja) * 2011-03-07 2012-09-13 Jx日鉱日石金属株式会社 α線量が少ない銅又は銅合金及び銅又は銅合金を原料とするボンディングワイヤ
US20130341196A1 (en) * 2012-06-20 2013-12-26 Honeywell International Inc. Refining process for producing low alpha tin

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016074969A (ja) 2016-05-12
TWI577836B (zh) 2017-04-11
TW201615898A (zh) 2016-05-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6448417B2 (ja) 高純度錫の製造方法、高純度錫の電解採取装置及び高純度錫
JP6457093B2 (ja) 高純度錫及びその製造方法
US11572632B2 (en) Method for manufacturing high purity tin, electrowinning apparatus for high purity tin and high purity tin
JP5690917B2 (ja) 銅又は銅合金、ボンディングワイヤ、銅の製造方法、銅合金の製造方法及びボンディングワイヤの製造方法
JP2013185214A (ja) α線量が少ないビスマス又はビスマス合金及びその製造方法
JP5996771B2 (ja) 高純度In及びその製造方法
JP6471072B2 (ja) 低α線高純度亜鉛及び低α線高純度亜鉛の製造方法
JP5903497B2 (ja) 低α線ビスマスの製造方法並びに低α線ビスマス及びビスマス合金
JP6985678B2 (ja) 低品位銅アノードの電解精錬方法およびそれに用いる電解液
TW200307060A (en) Method and device for producing high-purity metal
JP6067855B2 (ja) 低α線ビスマス及び低α線ビスマスの製造方法
JP7180039B1 (ja) 錫およびニッケルを含む混合物からの錫とニッケルとの分離方法
JP5996797B2 (ja) 高純度In及びその製造方法
US2225904A (en) Lead oxide and electrolytic process of forming the same
JP5960341B2 (ja) 低α線ビスマスの製造方法
JP2022524364A (ja) 銅の電解採取方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170706

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180518

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180605

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180806

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20181106

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20181204

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6448417

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250