JP6471072B2 - 低α線高純度亜鉛及び低α線高純度亜鉛の製造方法 - Google Patents

低α線高純度亜鉛及び低α線高純度亜鉛の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、低α線高純度亜鉛及び低α線高純度亜鉛の製造方法に関する。
亜鉛の電解採取においては、アノードから電解液中に少量の鉛イオンが溶出して溶出した鉛イオンがカソード上に析出又は付着し、電析亜鉛に混入することにより、電析亜鉛中の不純物濃度を上昇させることが知られている。
このような鉛イオンのカソードへの析出又は付着を抑制するために、例えば、特開平9−20989号公報(特許文献1)には、電解液に炭酸ストロンチウムを添加することにより、電解液中の鉛イオンを吸着除去する方法が記載されている。
特開2011−117053号公報(特許文献2)には、添加する炭酸ストロンチウムを電解液中により均一に分散させるために、水に二酸化硫黄ガスを吹き込みつつ炭酸ストロンチウムを添加することによって炭酸ストロンチウムを溶解させた水溶液を予め調整し、その水溶液を電解液に添加することが知られている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載される方法のいずれにも、最終的に得られる電析亜鉛中の鉛濃度は10ppm以下、或いは数ppm以下に低減される程度のものであり、亜鉛の高純度化に関してはまだ十分なレベルとはいえない。
更に近年、電子部品の高密度化及び高集積化に伴い、半導体チップ近傍に使用される材料には、α線放出の少ない材料を使用することが求められているが、特許文献1及び2のいずれもα線放出に関する事項は一切記載されていない。
ここで、高純度金属からのα線放射について記載すると、放射性元素であるウラン(U)・ラジウム(Ra)崩壊系列に、起点となるウラン238と最終核種である鉛206の間に、放射性元素のウラン、トリウム、鉛、ビスマス等の元素が存在し、α線放出量を低減するためには、これらの不純物元素を低減することが重要となる。
特開平9−20989号公報 特開2011−117053号公報
上記課題を鑑み、本発明は、鉛濃度が低くα線放出が少ない亜鉛材料が製造可能な低α線高純度亜鉛及び低α線高純度亜鉛の製造方法を提供する。
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、亜鉛の電解採取において、電解槽中の電解液を抜き出し、抜き出した電解液中の鉛を除去した後に再び電解槽へ循環させるとともに、陰極と陽極との間に隔膜を配置した電解槽中で予備電解を実施することで、鉛濃度が低く、α線放出が少ない低α線高純度亜鉛が得られることを見いだした。
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、鉛含有量が0.01ppm未満で、α線カウント数が0.001cph/cm2以下である低α線高純度亜鉛が提供される。
本発明に係る低α線高純度亜鉛は一実施態様において、ビスマス含有量が0.005重量ppm未満、ウラン含有量が0.0001重量ppm未満、トリウム含有量が0.0001重量ppm未満である。
本発明に係る低α線高純度亜鉛は別の一実施態様において、純度が7N以上であり、銅含有量が0.05重量ppm以下、銀含有量が0.05重量ppm未満、カドミウム含有量が0.05重量ppm未満、タリウム含有量が0.03重量ppm未満である。
本発明は別の一側面において、陽極と陰極との間に隔膜を配置した電解槽中で、亜鉛原料を陽極とし、亜鉛原料を硫酸溶液中で電解浸出することにより電解液を作製する工程と、電解液を電解槽から抜き出して、抜き出した電解液中の鉛を除去し、鉛を除去した電解液を電解槽へ戻す浄液工程と、浄液後の電解液を用いて第1の電流密度で電解採取を行い、陰極の表面上に第1の電析亜鉛を析出させる予備電解工程と、第1の電析亜鉛を除去した後、第1の電流密度以上となる第2の電流密度で電解採取を行い、陰極の表面上に第2の電析亜鉛を析出させる本電解工程と、第2の電析亜鉛を溶解鋳造する溶解鋳造工程とを含む低α線高純度亜鉛の製造方法が提供される。
本発明に係る低α線高純度亜鉛の製造方法は別の一実施態様において、浄液工程において、陽極を配置した電解槽の陽極室側の電解液を抜き出して、抜き出した電解液中の鉛を除去した後、鉛を除去した電解液を、陰極を配置した電解槽の陰極室側に戻すことを含む。
本発明に係る低α線高純度亜鉛の製造方法は別の一実施態様において、第1の電流密度が0.3A/dm3以下である。
本発明に係る低α線高純度亜鉛の製造方法は更に別の一実施態様において、第2の電流密度が、0.25〜5.0A/dm3、好ましくは0.5〜5.0A/dm2である。
本発明に係る低α線高純度亜鉛の製造方法は更に別の一実施態様において、予備電解工程開始時の電解槽中の亜鉛濃度に対し、電解槽中の亜鉛濃度が20〜30%減少した時点で予備電解工程を終了することを含む。
本発明によれば、鉛濃度が低くα線放出が少ない亜鉛材料が製造可能な低α線高純度亜鉛及び低α線高純度亜鉛の製造方法が提供できる。
本発明の実施の形態に係る亜鉛の電解採取装置を表す概略図である。
(電解採取装置)
本発明の実施の形態に係る電解採取装置の一例を図1に示す。図1に示すように、電解採取装置は、電解槽1と、電解槽1中の電解液の一部を抜き出して電解液を洗浄する浄液槽2と、浄液槽2に接続された濾過装置3と、浄化後の電解液を保管する貯槽5と、電解液を送液する送液ライン4a〜4dを備える。
電解槽1には、陰極11と陽極12が配置されている。電解槽1内は、陰極11が配置された陰極室13と陽極12が配置された陽極室15に仕切られており、電解採取によって陽極12から発生する不純物イオンの陰極11への析出を抑制するための隔膜14が陰極11と陽極12との間に配置されている。隔膜14としてはイオン交換膜が好適に用いられる。
陽極12には、亜鉛原料、好ましくは、ガス成分元素(O、C、N、H)を除く純度4N以上の亜鉛原料(以下「純度4N以上の亜鉛原料」ともいう)を溶解鋳造して、所定の形状にしたものが用いられる。亜鉛原料中の鉛含有量が少ないほど、電解採取をより効率的に行うことができるため、亜鉛原料の鉛含有量は50ppm以下とすることが好ましく、より好ましくは20ppm以下、更に好ましくは10ppm以下、更に好ましくは5ppm以下である。
亜鉛原料は、銅含有量が20ppm以下、好ましくは10ppm以下、銀含有量が10ppm以下、好ましくは5ppm以下、カドミウム含有量が10ppm以下、好ましくは5ppm以下、タリウム含有量が10ppm以下、好ましくは5ppm以下の材料を用いることが好ましい。
陰極11には、ステンレス、チタン等の金属板が用いられる。電解槽1へ供給される電解液は、上記亜鉛原料、即ち純度4N以上の亜鉛原料、好ましくは鉛含有量が20ppm以下の亜鉛原料を硫酸溶液中で電解浸出して得られた浸出液が好適に用いられる。
浄液槽2には、電解槽1から抜き出された電解液が収容され、抜き出した電解液中の鉛が除去される。鉛の除去方法としては、抽出剤を用いた鉛イオンの溶媒抽出、イオン交換樹脂などによる吸着除去、硫化物添加による難溶性硫化物塩析出、ストロンチウムイオン等の共沈剤の添加による共沈などによって行うことができる。例えば、ストロンチウムを用いた共沈を行う場合には、浄液槽2には図示しない撹拌手段が設けられ、撹拌しながら炭酸ストロンチウムなどの共沈剤が添加されることにより、電解液から鉛を含む硫酸ストロンチウム(SrSO4)の沈殿物が生成される。共沈剤の添加量は、1〜30g/Lが好ましく、より好ましくは3〜20g/Lであり、更に好ましくは3〜10g/Lとすることがより好ましい。
浄液槽2から抜き出された電解液は、送液ライン4bを介してフィルタープレス等の濾過装置3に送られ、固液分離される。これにより、電解液中の不純物が除去される。即ち、浄液槽2において炭酸ストロンチウムなどの共沈剤を用いて電解液中に沈殿物を生成させた場合には、電解液中に含まれる鉛含有硫酸ストロンチウムが除去される。固液分離によって得られたろ液は、精製電解液として送液ライン4cを介して貯槽5へ送られ、送液ライン4dを介して電解槽1の陰極室13へ送られることで循環される。送液ライン4a〜4bは、電解槽1内の電解液を抜き出して、浄化精製し、精製後の電解液を再び電解槽1内へ戻すための送液ラインである。
ここで、送液ライン4dは電解槽1の陰極室13に接続され、鉛除去後の電解液が電解槽1の陰極室13へ供給される。陰極室13内に供給される電解液は、浄液槽2によって鉛が除去されているため、電析亜鉛析出時の鉛イオンの巻き込みが少なくなる。また、送液ライン4aは電解槽1の陽極室15に接続され、陽極12を構成する原料亜鉛から溶け出した鉛を含有する陽極室15内の電解液(アノライト)を抜き取ることが好ましい。このように、陽極室15内の電解液(アノライト)を抜き取って、これを浄液槽2において電解液中の鉛を除去し、鉛除去後の電解液を陰極室13側へ循環させて陰極室13内の電解液(カソライト)として再利用することにより、新たな電解液を補充する頻度が少なくなるため、電解液の有効利用を図ることができ、低α線高純度亜鉛の生産効率を向上させることができる。
(低α線高純度亜鉛の製造方法)
次に、本発明の実施の形態に係る低α線高純度亜鉛の製造方法を説明する。本実施形態に係る低α線高純度亜鉛の製造方法は(a)陽極12と陰極11との間に隔膜14を配置した電解槽1中で、亜鉛原料を陽極12とし、亜鉛原料を硫酸溶液中で電解浸出して得られた浸出液を電解液として作製する工程と、(b)電解液を電解槽から抜き出して、抜き出した電解液中の鉛を除去し、鉛を除去した電解液を電解槽へ戻す浄液工程と、(c)浄液後の電解液を用いて第1の電流密度で電解採取を行い、陰極の表面上に第1の電析亜鉛を析出させる予備電解工程と、(d)第1の電析亜鉛を除去した後、第1の電流密度以上となる第2の電流密度で電解採取を行い、陰極の表面上に第2の電析亜鉛を析出させる本電解工程と、(e)第2の電析亜鉛を溶解鋳造する溶解鋳造工程とを含むことができる。
(a)電解液作製工程
電解液作製工程では、図1に示す電解採取装置を用いて亜鉛の電解採取を行う。電解液としては、亜鉛原料、好ましくは純度4N以上の亜鉛原料を硫酸溶液中で電解浸出して得られた浸出液を電解液とする。陽極には亜鉛原料、好ましくは純度4N以上の亜鉛原料から鋳造された亜鉛アノードを、陰極にはチタン板をそれぞれ使用する。電解液の亜鉛濃度は1〜300g/L程度が好ましく、より好ましくは30〜200g/Lであり、電解液のpHは0〜1.5が好ましく、より好ましくは0.3〜1.0である。
(b)浄液工程
浄液工程では、浄液槽2において、抜き取った電解液に対して抽出剤を用いた鉛イオンの溶媒抽出、イオン交換樹脂などによるイオン交換、硫化物添加による難溶性硫化物塩析出、ストロンチウムイオン等の共沈剤の添加による共沈などを行うことにより、電解液中の鉛を除去する。例えば、抜き取った電解液にストロンチウムイオンを添加して1〜24時間攪拌する。ストロンチウムイオン源としては、炭酸ストロンチウムが好適である。その他、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属塩を利用することができる。攪拌終了後、電解液中には鉛と硫酸ストロンチウムによる沈殿物が生成される。
浄液槽2における浄液処理後の電解液は、濾過装置3において固液分離することにより不純物が除去される。例えば、浄液槽2において共沈剤を用いた鉛の共沈処理を行った場合は、電解液中に鉛を含む沈殿物が生成されるため、この沈殿物を含む電解液を濾過装置3において固液分離する。固液分離によって、本実施形態における電解液中の鉛濃度は、典型的には0.2mg/L以下、より典型的には0.1mg/L以下に低減される。
固液分離後のろ液は、高純度亜鉛電解液として貯槽5へ戻される。貯槽5では、電解液に必要に応じて硫酸を更に添加して電解液を調整することができる。貯槽5内の電解液は、送液ライン4dを介して電解槽1の陰極室13内へ供給される。
(c)予備電解工程
予備電解工程では、浄液後の電解液を用いて亜鉛の電解採取を行う。予備電解工程の電流密度(第1の電流密度)は、後述する本電解工程よりも低速となるように実施することが好ましく、具体的には0.3A/dm2以下とするのが好ましく、より典型的には0.1〜0.3A/dm3とし、より典型的には0.25A/dm2である。第1の電流密度を0.3A/dm3より高くすると異常電析が発生する場合がある。第1の電流密度が低すぎると生産性が低くなる。
予備電解の割合を高くするほど、本電解で得られる第2の電析亜鉛の純度を上げることができるが、その一方で電解歩留まりが下がることになる。より高純度な第2の電析亜鉛を得つつ、電解歩留まりの低下を防ぐためには、予備電解工程において、予備電解開始時の電解槽中の亜鉛濃度に対し、電解槽中の亜鉛濃度が20〜30%減少した時点で予備電解工程を終了することが好ましい。これにより、効率的な低α線高純度亜鉛の製造方法が提供できる。
以下の具体例に制限されるものではないが、典型的には、予備電解工程開始時の電解槽中の亜鉛濃度が180〜230g/L、より典型的には約200g/Lであり、予備電解工程終了時の電解槽中の亜鉛濃度が120〜190g/L、より典型的には約150g/Lであることが好ましい。電解終了後、予備電解工程で得られた第1の電析亜鉛を陰極11表面から除去される。
(d)本電解工程
本電解工程では、電解槽1において、上記予備電解工程で設定された第1の電流密度以上となる第2の電流密度で亜鉛の電解採取を行う。本電解工程の電流密度(第2の電流密度)は、0.5〜5.0A/dm3とするのが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0A/dm3であり、更に好ましくは2.0〜4.0A/dm2である。第2の電流密度が小さすぎると生産性が低くなり、第2の電流密度が高すぎると精製効果が上がらない(純度が上がらない)場合や、異常電析が発生する場合がある。液温は予備電解工程と同様に10〜40℃とする。
(e)溶解鋳造工程
電解採取後、陰極11の表面に析出した第2の電析亜鉛を電解槽1から引き上げて回収し、回収後の第2の電析亜鉛を水素還元雰囲気下で600℃程度で溶解鋳造することにより精製金属亜鉛(低α線高純度亜鉛)を製造する。これにより、鉛濃度が0.01ppm未満で、α線カウント数が0.001cph/cm2以下である低α線高純度亜鉛を得ることができる。
本実施形態に係る方法によれば、亜鉛の電解採取において、電解液作製後に浄液工程を行い、その後、予備電解工程と本電解工程とを二段階に分けて実施することにより、原料中に含まれるタリウム、鉛、銀、銅等の不純物を予備電解工程で優先的に析出させ、第1の電析亜鉛中に濃縮させることができる。その結果、本電解工程で得られる第2の電析亜鉛中の不純物濃度をより低く抑えることができる。
なお、浄液工程は、予備電解工程前に行うだけでなく、予備電解工程及び本電解工程の実施時においても引き続き行うこともできる。即ち、予備電解工程及び本電解工程の実施時において、必要に応じて、電解液の少なくとも一部を電解槽1から抜き出して、浄液槽2へ送り、抜き出した電解液中の鉛を除去し、鉛を除去した電解液を電解槽1へ戻してもよい。予備電解工程及び本電解工程は、それぞれ何段階かに工程を分けて行ってもよい。
(低α線高純度亜鉛)
本発明の実施の形態に係る低α線高純度亜鉛の製造方法によって得られた低α線高純度亜鉛は、グロー放電質量分析法(GDMS:Glow Discharge Mass Spectrometry)によって評価した結果、鉛含有量が0.01ppm未満、ビスマス含有量が0.005ppm以下、ウラン含有量が0.0001ppm以下、トリウム含有量が0.0001ppm以下、銅含有量が5.0ppm以下、より典型的には0.5ppm以下、銀含有量が1.0ppm以下、より典型的には検出限界値未満、カドミウム含有量が1.0ppm以下、より典型的には検出限界値未満、タリウム含有量が2.0ppm以下、より典型的には0.5ppm以下であって、α線カウント数が0.001cph/cm2以下である。尚、本発明で使用する「ppm」の単位表記は、「重量ppm(wtppm)」を意味する。
低α線高純度亜鉛のα線カウント数は、Ordela社製のGas Flow Proportional Counterモデル8600A−LBを用いて測定した場合のα線量を示す。該装置においては、使用するガスを90%アルゴン−10%メタンとし、測定時間をバックグラウンド及び試料とも104時間とした。測定時間のうち最初の4時間は測定室パージに必要な時間とし、その後5時間から104時間後までのデータの測定に必要な時間とした。測定装置から微量のα線(バックグラウンド(BG)α線)が出るため、α線カウント数の測定データからバッググラウンドα線カウント数を差し引いた値を、低α線高純度亜鉛のα線カウント数として評価した。低α線高純度亜鉛のα線カウント数は電解採取から3ヶ月以内に測定した結果を意味する。
本発明の実施の形態に係る低α線高純度亜鉛の純度は4N以上(但し、O、C、N、Hのガス成分を除く)、より典型的には5N以上の低α線高純度亜鉛が得られる。この低α線高純度亜鉛中に含まれる不純物元素の測定は、GDMS法で73元素分析を行った結果を示す。
本実施形態に係る低α線高純度亜鉛は、分析の結果、Li、Be、B、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ga、Ge、As、Se、Br、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Th、Uが検出限界値未満である。
本発明において「検出限界値未満」とは、表6に示す値を意味する。
本発明の実施の形態に係る低α線高純度亜鉛の製造方法によれば、α線放出が少なく、不純物、特に鉛含有量の少ない低α線高純度亜鉛が得られる。
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
(実施例1)
陰極と陽極とを陰イオン交換膜(旭硝子社製、セレミオンAMV)により仕切った電解槽の陰極側に所定量の硫酸溶液、陽極側に、pH1.0の希硫酸溶液を入れた。亜鉛原料から鋳造した陽極とチタン製の陰極を電解槽内にそれぞれ配置し、電流密度2A/dm2、液温33℃で電解浸出して硫酸亜鉛電解液(亜鉛濃度200g/L)を作製した。陽極に使用した亜鉛原料(原料)の分析結果を表1−1及び表1−2に示す。
この際、陽極室電解液の一部を抜き出して、鉛を除去する浄液槽へ入れ、そこへ純水に分散させたスラリー状の炭酸ストロンチウムを電解液に対し5g/L添加して16時間攪拌し、攪拌後の電解液を吸引濾過により固液分離して、電解液中の鉛を除去して、除去後の電解液を陰極室側に投入した。鉛除去後の電解液中鉛濃度は0.1mg/L未満であった。陽極側の電解槽には、抜き出した電解液の減量分を補うためにpH1.0の希硫酸溶液を入れた。
この状態で、電流密度0.25A/dm2、pH1.0、液温30℃で、陰極側電解液の亜鉛濃度が150g/Lになるまで電解採取する予備電解を行った後、電解槽から陰極を引き上げた。陰極上には、針状成長することなく、表面性状が平坦な板状結晶からなる第1の電析亜鉛が得られた。尚、予備電解は、陰極側電解液の亜鉛濃度が予備電解開始時に比べて25%減少した時点で終了させた。
第1の電析亜鉛を剥ぎ取った後、電流密度を3.5A/dm2まで上げて、陰極側電解液の亜鉛濃度が30g/Lになるまで電解採取する本電解工程を行った。その後、電解槽から陰極を引き上げた。陰極上には、針状成長することなく、表面性状が平坦な板状結晶からなる第2の電析亜鉛が得られた。
陰極上に析出した第2電着亜鉛を引き剥がして、水素還元雰囲気下で約600℃に加熱して溶解鋳造して、精製金属亜鉛(低α線高純度亜鉛)を作製した。得られた低α線高純度亜鉛の分析の結果、純度が7N(99.99999%)以上であった。また、ニッケル含有量が0.01ppm、銅含有量が0.05ppm、タリウム含有量が0.03ppmであった。さらに、鉛、銀、カドミウム等の亜鉛原料中に有意に含有していた不純物はいずれもGDMSの検出限界値未満である、鉛含有量は0.01ppm未満、銀含有量およびカドミウム含有量が0.05ppm未満に低減されていた。特に、放射性不純物元素であるウラン(U)・ラジウム(Ra)崩壊系列には、起点となるウラン238と最終核種である鉛206の間に、放射性元素のウラン、トリウム、鉛、ビスマスの同位体元素が存在し、これらの不純物元素を低減することが重要であり、本発明で製造された低α線高純度亜鉛中のウラン、トリウム、ビスマス等も、GDMSの検出限界値未満であった。
得られた低α線高純度亜鉛のα線カウント数は0.001cph/cm2以下であった。予備電解で得られた第1の電析亜鉛と本電解で得られた第2の電析亜鉛中の不純物のGDMS法による測定結果を表1−1及び表1−2に示す。溶解鋳造後の精製金属亜鉛(低α線高純度亜鉛)のGDMS法による不純物分析結果を表2−1及び表2−2に示す。
Figure 0006471072
Figure 0006471072
Figure 0006471072
Figure 0006471072
(比較例1)
実施例1において電解液の浄液を行わず、予備電解工程において第1の電流密度を0.5A/m2とした以外は、実施例1と同様の条件で電解採取を行って、第2の電析亜鉛を得た。第2の電析亜鉛中の不純物のGDMS法による測定結果を表3−1及び表3−2に示す。
Figure 0006471072
Figure 0006471072
比較例1では、浄液工程を実施せず、予備電解工程の電流密度が高すぎたために、鉛濃度が0.76ppmとなり、実施例1に比べて低純度の第2の電析亜鉛が得られた。
(比較例2)
実施例1において、予備電解工程を行わない以外は、実施例1と同様の条件で電解採取を行って、第2の電析亜鉛を得た。第2の電析亜鉛中の不純物のGDMS法による測定結果を表4−1及び表4−2に示す。
Figure 0006471072
Figure 0006471072
比較例2では、浄液工程を実施しなかったために鉛濃度が0.03ppm程度となり、実施例1に比べて低純度の第2の電析亜鉛が得られた。
(比較例3)
実施例1において、予備電解工程を、電流密度0.25A/dm2、pH1.0、液温30℃で、陰極側電解液の亜鉛濃度が予備電解開始時に比べて10%減少した時点で予備電解工程を終了した以外は、実施例1と同様の条件で電解採取を行って、第2の電析亜鉛を得た。第2の電析亜鉛中の不純物のGDMS法による測定結果を表5−1及び表5−2に示す。
Figure 0006471072
Figure 0006471072
比較例3では、予備電解工程を十分に行わなかったために、鉛濃度が0.83ppm程度となり、実施例1に比べて低純度の第2の電析亜鉛が得られた。
[検出限界値]
なお、GDMS法による不純物分析結果において、上記表1−1〜表5−2に示さなかった元素については、いずれも検出限界値未満であった。実施例及び比較例の測定における検出限界値を以下の表6に示す。
Figure 0006471072
1…電解槽
2…浄液槽
3…濾過装置
4a〜4d…送液ライン
5…貯槽
11…陰極
12…陽極
13…陰極室
14…隔膜
15…陽極室

Claims (9)

  1. 鉛含有量が0.01重量ppm未満で、α線カウント数が0.001cph/cm2以下である低α線高純度亜鉛。
  2. ビスマス含有量が0.005重量ppm未満、ウラン含有量が0.0001重量ppm未満、トリウム含有量が0.0001重量ppm未満である請求項1に記載の低α線高純度亜鉛。
  3. 陽極と陰極との間に隔膜を配置した電解槽中で、亜鉛原料を陽極とし、前記亜鉛原料を硫酸溶液中で電解浸出することにより電解液を作製する工程と、
    前記電解液を前記電解槽から抜き出して、抜き出した電解液中の鉛を除去し、鉛を除去した電解液を前記電解槽へ戻す浄液工程と、
    浄液後の電解液を用いて第1の電流密度で電解採取を行い、前記陰極の表面上に第1の電析亜鉛を析出させる予備電解工程と、
    前記第1の電析亜鉛を除去した後、前記第1の電流密度以上となる第2の電流密度で電解採取を行い、前記陰極の表面上に第2の電析亜鉛を析出させる本電解工程と、
    前記第2の電析亜鉛を溶解鋳造する溶解鋳造工程と
    を含む低α線高純度亜鉛の製造方法。
  4. 前記浄液工程において、前記陽極を配置した前記電解槽の陽極室側の電解液を抜き出して、抜き出した電解液中の鉛を除去した後、鉛を除去した電解液を、前記陰極を配置した前記電解槽の陰極室側に戻すことを含む請求項に記載の低α線高純度亜鉛の製造方法。
  5. 前記第1の電流密度が0.3A/dm3以下である請求項3又は4に記載の低α線高純度亜鉛の製造方法。
  6. 前記第2の電流密度が、0.5〜5.0A/dm3である請求項3〜5のいずれか1項に記載の低α線高純度亜鉛の製造方法。
  7. 前記予備電解工程開始時の前記電解槽中の亜鉛濃度に対し、前記電解槽中の亜鉛濃度が20〜30%減少した時点で前記予備電解工程を終了することを含む請求項3〜6のいずれか1項に記載の低α線高純度亜鉛の製造方法。
  8. 前記予備電解工程開始時の前記電解槽中の亜鉛濃度が180〜230g/Lであり、前記予備電解工程終了時の前記電解槽中の亜鉛濃度が120〜190g/Lであることを含む請求項3〜6のいずれか1項に記載の低α線高純度亜鉛の製造方法。
  9. 前記第2の電析亜鉛を水素還元雰囲気で溶解鋳造することにより、鉛含有量0.01重量ppm未満で、α線カウント数が0.001cph/cm2以下である低α線高純度亜鉛を作製することを含む請求項3〜8のいずれか1項に記載の低α線高純度亜鉛の製造方法。
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