JP6457093B2 - 高純度錫及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、パーティクルが少ない高純度錫(Sn)及びそれを製造する方法に関する。
市販で入手可能な高純度錫の製造方法は、スルファミン酸錫、硫酸錫、塩化錫などの酸性電解浴からの電解法が一般的である。
例えば、特公昭62−1478号公報(特許文献1)には、低α線化を目的として、99.95重量%以上の錫をアノードとし、液組成はSn:30〜150g/L、放射性同位元素をほとんど含有しないスルファミン酸30〜200g/Lで、電解条件はカソード電流密度:0.5〜2.0Amp/dm2、液温度:15〜50℃で電解を行う方法が記載されている(特許文献1の請求項2)。
特許第2754030号公報(特許文献2)には、低α線化を目的として、JIS K 8951に規定される試薬一級硫酸の規格に少なくとも適合する硫酸90〜240g/LとJIS K 8180に規定される試薬一級塩酸の規格に少なくとも適合する塩酸10〜50g/Lを含有する電解液中で、純度が99.97重量%以上である錫を陽極に用いて電解を行なうことを特徴とする錫の製造方法が記載されている(特許文献2の請求項1)。
特許第3882608号公報(特許文献3)には、金属錫中の不純物の電解精製による鉛の除去方法が記載されている。具体的には、硫酸と珪フッ酸の混酸からなる電解液を用いた錫の電解精製において、錫電解液を電解槽から抜き出して沈澱槽に導き、沈澱槽において電解液に炭酸ストロンチウムを添加して35℃以下の液温下で液中の鉛を沈殿化し、次いでこの沈殿物を含む電解液を濾過器に導いて沈殿物を濾過分離し、沈殿物を除去した電解液を電解槽に戻して錫の電解精製を行うことを特徴とする高純度錫の電解精製方法が記載されている(特許文献3の請求項1)。
特許第5296269号公報(特許文献4)には、原料となる錫を酸、たとえば硫酸で浸出させた後、この浸出液を電解液とし、該電解液に不純物の吸着材を懸濁させ、原料Snアノードを用いて電解精製を行う方法が記載されており、これにより純度が5N以上(但し、O、C、N、H、S、Pのガス成分を除く)の高純度錫が得られることが記載されている。具体的には、アノードとして3Nレベルの錫を用い硫酸浴や塩酸浴で電解温度10〜80℃、電流密度0.1〜50A/dm2の条件で電解精製する方法が記載されている。不純物の吸着は、電解液中に、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫等の酸化物、活性炭、カーボンを懸濁させて行うことが記載されている。
特公昭62−1478号公報 特許第2754030号公報 特許第3882608号公報 特許第5296269号公報
先行技術で開示される製法によれば、高純度化した錫を得ることは可能である。しかしながら、先行技術に記載されるような高純度の錫であっても、極微細配線用はんだ材料として十分な特性を発揮しないことや、LSI等の超微細加工装置に、本発明による高純度金属を溶湯として使用する場合に、溶湯中に存在するパーティクルによって微細な流路に目詰まりを起こし、超微細加工工程に支障を来すことがわかった。
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、その目的の一つは、パーティクルの抑制された高純度錫を提供することである。また、本発明の目的の別の一つは、パーティクルの抑制された高純度錫を製造する方法を提供するものである。
本発明者はこの原因について検討したところ、酸素(O)、硫黄(S)といったガス成分元素と化合した酸化錫(SnO、SnO2)や硫化錫(SnS、SnS2)、更には二酸化ケイ素(SiO2)などの系外からの混入物がパーティクルの原因物質であることを見出し、本発明に到った。
本発明者の検討結果によれば、パーティクルを効果的に抑制する上では、錫を高純度化する際に、硫酸浴で電解精製した後、更に塩酸浴で電解精製する2段精製を採用すること、1段目の硫酸浴電解精製では、陽陰極間を隔膜で仕切った電解槽中の、陽極側電解液を抜き出し、抜き出した電解液中の鉛や酸化物スラッジを除去した後に電解槽の陰極側へ循環させるとともに、電解液中に平滑剤を添加して電析錫を板状化することにより電析錫の表面積を低減すること、1段目の硫酸浴電解精製で得られた一次精製錫を電解槽より取り出し、溶解鋳造して陽極板とする。この時、平滑剤成分の炭素は蒸発除去される。次に、2段目の電解精製を行うために、1段目の電解槽とは異なる別の電解槽を用いて、塩酸浴電解精製を行い、電析錫中に平滑剤成分が巻き込まれることを防ぐ為、平滑剤は使用せず、電解槽中の電解液を抜き出し、抜き出した電解液中の粒子を除去した後に再び電解槽へ循環させ、更に2段目の塩酸浴で電解精製した二次精製錫を還元性ガス雰囲気下で溶解鋳造することで精製錫中に含まれるパーティクルの原因となる酸化物を還元して酸素を取り除く操作を行うことが効果的であることが分かった。
本発明は、上記知見に基づいて完成したものであって、一側面において純度が5N(99.999質量%)以上である高純度錫であって、粒径が0.5μm以上のパーティクルが1g中に50,000個以下である高純度錫である。
本発明に係る高純度錫の一実施形態においては、粒径が0.5μm以上のパーティクルが1g中に10,000個以下である。
本発明に係る高純度錫の別の一実施形態においては、鉄、銅、鉛、及び硫黄の含有濃度がそれぞれ0.5質量ppm以下である。
本発明に係る高純度錫の更に別の一実施形態においては、アンチモンの含有濃度が1質量ppm以下である。
本発明に係る高純度錫の更に別の一実施形態においては、酸素の含有濃度が5質量ppm未満である。
本発明は別の一側面において、電解液として硫酸酸性硫酸錫溶液を使用し、陽極と陰極との間に隔膜を配置することにより陽極室と陰極室に分けた電解槽中で、鉛含有量が20質量ppm以下、鉄含有量が5質量ppm以下、銅含有量が0.5質量ppm以下、アンチモン含有量が5質量ppm以下、且つ、銀、砒素、ビスマス、カドミウム、銅、鉄、インジウム、ニッケル、鉛、アンチモン及び亜鉛の合計含有量が30質量ppm以下である原料錫を陽極とし、少なくとも陰極室に電析錫の表面積を低減させるための平滑剤が添加された状態で電解精製することにより陰極の表面上に純度が高められた一次精製電析錫を得る工程1であって、陽極室側の前記硫酸錫溶液の少なくとも一部を抜き出して、抜き出した前記硫酸錫溶液中の鉛及び酸化物スラッジを除去し、鉛及び酸化物スラッジを除去した硫酸錫溶液を陰極室へ送ることを含む工程1と、
前記一次精製電析錫、又は前記一次精製電析錫を加熱溶解及び鋳造した後の鋳造錫を陽極とし、電解液として塩酸酸性塩化錫溶液を使用する電解槽中で電解精製することにより陰極の表面上に針状の二次精製電析錫を得る工程2であって、前記塩化錫溶液の少なくとも一部を電解槽から抜き出し、前記塩化錫溶液中の粒子、及び、工程1から持ち込まれた平滑剤の残留成分を除去した後、粒子及び平滑剤の残留成分が除去された塩化錫溶液を再び電解槽へ戻すことを含む工程2と、
前記針状の二次精製電析錫を還元性ガス雰囲気下で溶解鋳造することを含む工程3と、
を含む高純度錫の製造方法である。
本発明に係る高純度錫の一実施形態においては、平滑剤が、1又は複数の水酸基が一つ若しくは複数のメチレン基、及び/又は、一つ若しくは複数のエチレンオキシド基を介して、或いは、直接アリール基に結合されている構造を有する化合物からなる非イオン性界面活性剤を含む。
本発明に係る高純度錫の別の一実施形態においては、平滑剤が、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを含む。
本発明に係る高純度錫の更に別の一実施形態においては、前記工程1において、前記硫酸錫溶液中に、前記平滑剤とともに、さらに、酸化防止剤を添加する工程を含む。
本発明による高純度錫は、溶湯として使用する場合に、酸素、硫黄、ケイ素が極めて低減されており、望まれないパーティクルの形成を抑制でき、微細な流路に目詰まりを起こすことがなく、超微細加工工程に支障を来すことを抑制できる。本発明によれば、硫酸浴で精製した後、更に塩酸浴で精製する2段精製をすることにより、硫酸浴による1段精製では除去が難しい硫黄を低減することができ、且つ、1段目の硫酸浴電解液中に平滑剤を添加することで電析錫の表面積を低減して表面酸化物の生成を抑制でき、更に2段目の塩酸浴電解液を濾過してパーティクルの原因となる物質を取り除き、更に塩酸浴で針状に析出する電析錫を還元雰囲気下で溶解鋳造することで、非金属介在物を極めて少なくできるようになった。具体的には、粒径が0.5μm以上のパーティクルが1g中に50,000個以下である高純度金属錫を得ることができる。
工程1を実施し、一次精製電析錫を製造するための電解精製装置の構成例を示す。 工程2を実施し、二次精製電析錫を製造するための電解精製装置の構成例を示す。 実施例及び比較例における精製錫の元素分析結果、及びパーティクル数測定結果を示す。 実施例及び比較例における精製錫の元素分析結果、及びパーティクル数測定結果を示す(図3−1の続き)。
(工程1)
本発明に係る高純度錫の製造方法の実施形態について以下に説明する。本発明に係る高純度錫の製造方法は一実施形態において、電解液として硫酸酸性硫酸錫溶液を使用し、陽極と陰極との間に隔膜を配置することにより陽極室と陰極室に分けた電解槽中で、原料錫を陽極として電解精製することにより陰極の表面上に純度が高められた電析錫を得る工程1を含む。
工程1は例えば図1に示す電解精製装置を用いて実施可能である。図1に示すように、電解精製装置は、電解槽1と、電解槽1中の電解液の少なくとも一部を抜き出して電解液を洗浄する浄液槽2と、浄液槽2に接続された濾過装置3と、浄化後の電解液を保管する貯槽5と、電解液を送液する送液ライン4a〜4dを備える。
電解槽1には、陰極11と陽極12が配置されている。電解槽1内は、隔膜14によって、陰極11が配置された陰極室13と陽極12が配置された陽極室15に仕切られている。隔膜14は陽極12から発生する不純物イオンが陰極11へ析出するのを抑制するため、陰極11と陽極12との間に配置されている。隔膜14としてはイオン交換膜が好適に用いられる。
陽極12に使用する原料錫は、電析錫の鉛含有量をより低減させるために鉛含有量が20ppm以下であることが望ましく、好ましくは10ppm以下、更に好ましくは5ppm以下である。この原料錫は、鉄含有量が5ppm以下であることが望ましく、好ましくは1ppm以下であり、アンチモン含有量が5ppm以下であることが望ましく、好ましくは1ppm以下であり、銀、砒素、ビスマス、カドミウム、銅、鉄、インジウム、ニッケル、鉛、アンチモン及び亜鉛の合計含有量が30ppm以下であることが望ましく、好ましくは10ppm以下である。陰極11には、錫、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属板、又は黒鉛板を用いることができる。
この原料錫は、純度が低すぎると精製工程に負担がかかることから、99.9質量%(3N)以上の純度であることが好ましく、99.995質量%(4N5)以上の純度であることがより好ましい。但し、過度に純度の高い原料錫を使用すると経済性が悪化するため、典型的な原料錫の純度は99.95〜99.99質量%(3N5〜4N)であり、より典型的な原料錫の純度は99.99〜99.995質量%(4N〜4N5)である。
なお、原料錫中に含まれる不純物元素の測定方法は、後述する高純度錫と同様である。
電解液には電析錫の表面性状を改善させるための平滑剤を添加することが好ましい。平滑剤としては、1又は複数の水酸基が一つ若しくは複数のメチレン基、及び/又は、一つ若しくは複数のエチレンオキシド基を介してアリール基に結合されている構造を有する化合物からなる非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
アリール基に直接又は間接的に結合した1又は複数の水酸基を有する化合物を平滑剤として使用することによって、この構造を有さない化合物に比べて電解中の平滑剤の分解が抑制されるため、平滑剤の効果を安定的に長期間得ることができる。平滑剤を加えた場合は、錫と鉛の電位差が小さくなるために、高純度な電析錫を得ることが困難となるが、本発明者は、陽極と陰極の間に隔膜を設ける事により、陽極から溶出した鉛がそのまま陰極に析出する事を防ぐことができることを見出した。更に、陽極室側の電解液中に蓄積した鉛イオンを除去し、鉛イオンを除去後の電解液を陰極室へ供給することにより、錫と鉛の電位差の問題を解決できるとともに、その後の溶解鋳造工程における鋳造収率が向上するとともに、高純度且つ表面性状の良好な電析錫が得られる。
平滑剤としては、以下の化学式(1)〜(4)で示される化合物が好適に使用できる:
Figure 0006457093

Figure 0006457093
Figure 0006457093
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(式(1)〜(4)において、m、nはそれぞれ0〜12の整数、a、b、cはそれぞれ1〜3の整数、kは4〜24の整数、Rは水素、又は、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアラルキル基等の有機基(典型的には炭素数1〜3)を示す)
より好ましくは、平滑剤としては、α−ナフトール、β−ナフトール、α−ナフトールのEO(エチレンオキサイド)付加物、β−ナフトールのEO付加物及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上を用いることができる。中でも、βナフトール及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが好適に用いられる。一方、アリール基を有しない水酸基を有する鎖状化合物は、電解中に分解するために、寿命・安定性の面で本実施形態には適さない場合がある。
電解液への平滑剤の含有量は少なくとも陰極室においては1〜20g/Lが好ましく、3〜10g/Lとすることがより好ましい。平滑剤の含有量が極度に低い場合には、電析錫の表面性状の改善効果を得ることが困難になる。また、平滑剤の含有量が過剰になると経済的に無駄なだけでなく、電析錫への有機物の巻き込みが増えて、酸素の増加を招く。平滑剤は、例えば陰極室13内へ電解液を循環供給する貯槽5で添加することができる。なお、平滑剤に加えて、電解液にヒドロキノン等の酸化防止剤を1〜10g/L程度、より好ましくは4〜6g/L加えてもよい。酸化防止剤を添加することによって、電解液中に溶解している錫イオンが+2価から+4価に酸化することを抑制し、電解液中に析出、沈殿することを抑制でき、電解精製の効率の低下を防止できる。
図1を参照すると、送液ライン4a〜4dは、電解槽1内の電解液を抜き出して、浄化精製し、精製後の電解液を再び電解槽1内へ戻すための送液ラインである。浄液槽2には、電解槽1から抜き出された電解液が送液ライン4aを通って供給される。浄液槽2においては、抜き出した電解液中の鉛が除去される。原料錫の鉛含有量が20ppm以下の陽極12を使用することで、鉛の溶出は少ないが、それでも長時間の電解精製により電解液中には鉛が蓄積することから、電解液から鉛を除去することが望ましい。鉛の除去方法としては、抽出剤を用いた鉛イオンの溶媒抽出、イオン交換樹脂などによる吸着除去、硫化物添加による難溶性硫化物塩析出、ストロンチウム及びバリウム等のアルカリ土類金属の塩等の共沈剤の添加による共沈などによって行うことができる。例えば、ストロンチウムを用いた共沈を行う場合には、浄液槽2には図示しない撹拌手段が設けられ、撹拌しながら炭酸ストロンチウムなどの共沈剤が添加されることにより、電解液から鉛を含む硫酸ストロンチウム(SrSO4)の沈殿物が生成される。共沈剤としては炭酸バリウム等のアルカリ土類金属塩を利用することもできる。攪拌時間は鉛の含有量を考慮して適宜調整すればよいが、例えば1〜24時間とすることができる。共沈剤の添加量は、1〜30g/Lが好ましく、より好ましくは3〜20g/Lであり、更に好ましくは3〜10g/Lとすることがより好ましい。
浄液槽2から抜き出された電解液は、送液ライン4bを介してフィルタープレス等の濾過装置3に送られ、固液分離される。これにより、電解液中の酸化錫を含む酸化物スラッジ及び貴な金属(銅、鉛等)などの固形不純物が除去される。また、浄液槽2において炭酸ストロンチウムなどの共沈剤を用いて電解液中に沈殿物を生成させた場合には、電解液中に含まれる鉛が硫酸ストロンチウムに巻き込まれて除去される。固液分離によって、電解液中の鉛濃度は、典型的には0.2mg/L以下、より典型的には0.1mg/L以下に低減することが可能である。固液分離によって得られた濾液は、精製電解液として送液ライン4cを介して貯槽5へ送られ、送液ライン4dを介して電解槽1の陰極室13へ送られることで循環される。貯槽5では、電解液に平滑剤及び必要に応じて硫酸と酸化防止剤等を更に添加して電解液の組成を調整することができる。
このように、陰極室13内に供給される電解液は、浄液槽2によって鉛が除去され、濾過装置3で酸化物等の固形不純物が除去されているため、電析錫析出時の鉛イオン及び酸化物の巻き込みが少なくなる。
送液ライン4aは電解槽1の陽極室15に接続され、陽極12を構成する原料錫から溶け出した鉛を含有する陽極室15内の電解液(アノライト)を抜き取ることが好ましい。このように、陽極室15内の電解液(アノライト)を抜き取って、これを浄液槽2において電解液中の鉛及び酸化物スラッジを除去し、鉛及び酸化物スラッジを除去後の電解液を陰極室13側へ循環させて陰極室13内の電解液(カソライト)として再利用することにより、新たな電解液を補充する頻度が少なくなるため、電解液の有効利用を図ることができ、高純度錫の生産効率を向上させることができる。
更に、陰極室13内に供給される電解液には平滑剤が添加されており、従来は針状であった陰極11の表面上に析出する電析錫の表面性状をより平坦化することができるため、板状の電析錫を得ることができる。その結果、従来の針状の電析錫を利用する場合に比べて、電析錫引上げ時の電析錫への電解液の巻き込みも少なくなり電解液の補充が少なくて済むとともに、その後溶解鋳造して金属錫を製造する際の鋳造収率も向上させることができ、さらには電解液の主成分である硫黄分の電析錫への混入も抑止でき、高純度錫の生産性の向上が図れる。
電解液中の錫濃度は高すぎると飽和溶解度を超えて錫イオンが析出する。一方、低すぎると陰極板からの水素発生が多くなり錫の析出を妨げることから、1〜100g/L程度が好ましく、30〜100g/Lがより好ましい。
電解液のpHは高すぎると加水分解で錫イオンが水酸化物として析出し、錫濃度が低下する。一方、低すぎると陰極板からの水素発生が多くなり錫の析出を妨げることから、pHは0〜1.0が好ましく、0.3〜0.8がより好ましい。
電解液の液温は高すぎると設備への機械的負荷が増える。一方、低すぎるとエネルギーを無駄に消費することから、10〜40℃とするのが好適である。
電解精製時の陰極電流密度は、1〜5A/dm2とするのが好ましく、より好ましくは2〜3A/dm2である。電流密度が小さすぎると生産性が低く、電流密度が高すぎると電解電圧が高くなるため、平滑剤の効果が薄れて錫が針状に析出する場合がある。
硫酸浴での電解精製後、陰極の表面に析出した板状一次精製電析錫を電解槽から引き上げて回収し、回収後の板状一次精製電析錫を十分に純水で洗浄した後、乾燥することが好ましい。乾燥温度は、低すぎると時間を要する一方で、高すぎると熱による錫の過剰な酸化が発生するおそれがあるため、60〜100℃で乾燥することが好ましく、80〜100℃で乾燥することがより好ましい。
(工程2)
本発明に係る高純度錫の製造方法は一実施形態において、工程1により得られた一次精製電析錫、又は前記一次精製電析錫を加熱溶解及び鋳造した後の鋳造錫を陽極とし、電解液として塩酸酸性塩化錫溶液を使用する電解槽中で電解精製することにより陰極の表面上に針状の二次精製電析錫を得る工程2を含む。
工程2は例えば図2に示す電解精製装置を用いて実施可能である。図2に示すように、電解精製装置は、電解槽21と、電解槽21中の電解液の少なくとも一部を抜き出して電解液を濾過するフィルター22と、電解液を送液する送液ライン24a〜24bを備える。
電解槽21には、陰極25と陽極23が配置されている。電解槽21内には電解液26が配置される。電解液26は、工程1で電解精製された一次精製電析錫を塩酸で浸出した塩酸酸性塩化錫溶液を用いることができる。
陽極23に使用する原料錫は、工程1で電解精製された電析錫を洗浄した上で、大気又は真空中で溶解鋳造したものを用いることが好ましい。陰極25には、錫、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属板、又は黒鉛板を用いることができる。
塩化錫溶液中の粒子が電析する錫に取り込まれることを防止するため、電解液は少なくともその一部を電解槽から抜き出して、固液分離しておくことが好ましい。固液分離の方法としては、フィルターを通過させることで濾過しておく方法が好ましく用いられる。濾過に使用するフィルターの好適な条件はポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂等の耐酸性基材を使用すること、有効濾過面積が大きいこと、カートリッジタイプで交換が容易であること、微細粒子の捕集効率が高い(例えば、孔の大きさが0.05〜10μmの精密濾過膜(MF膜))こと、通液抵抗が低いこと等が挙げられる。また、工程1で電解精製された一次精製電析錫を塩酸で浸出した塩酸酸性塩化錫溶液を用いる場合や、一次精製錫を300℃以上の温度で鋳造し、平滑剤成分(有機物)を酸化物として除去する際にその一部が鋳造物中に取り込まれる可能性があり、固液分離のみでは工程1から持ち込まれ得る平滑剤の残留成分を除去することはできないため、更に平滑剤の残留成分(主に炭素及び酸素)を除去することが好ましい。平滑剤の残留成分を除去する方法としては、限定的ではないが、活性炭フィルターを通過させる方法が挙げられる。また、予め塩酸及び硫酸などの酸で金属成分を抽出除去した高純度の粉末活性炭を電解槽に投入し、一定時間撹拌後、固液分離を行うことで平滑剤の残留成分を除去する方法も挙げられる。他には精密濾過なども有効と考えられる。固液分離プロセスと平滑剤の除去プロセスは別個のプロセスで行ってもよいし、同一プロセスで行ってもよい。
塩酸浴電解精製では、電析メタルへの平滑剤巻き込みによる粒子の混入を避ける為、平滑剤は添加しないことが好ましい。その為、塩酸浴での電析錫メタルは針状となる。
電解液中の錫濃度は高すぎると比重が大きくなり、電解液を循環する送液ポンプの負荷が増え、エネルギーを無駄に消費する。また、仕掛が増えて無駄である。一方、低すぎると電解液の抵抗が高くなって、錫電解析出と競合する水素発生が多くなり、錫の析出を妨げることから、10〜150g/L程度が好ましく、30〜100g/Lがより好ましい。
電解液のpHは高すぎると加水分解で錫イオンが水酸化物として析出し、錫濃度が低下する。一方、低すぎると陰極板からの水素発生が多くなり錫の析出を妨げることから、pH0.0〜1.0が好ましく、より好ましくはpH0.01〜0.8である。
電解精製時の液温は高すぎると設備への機械的負荷が増える一方、低すぎるとエネルギーを無駄に消費することから、10〜40℃とするのが好適である。
電解精製時の陰極電流密度は1〜10A/dm2とするのが好ましく、より好ましくは2〜8A/dm2である。電流密度が小さすぎると生産性が低く、電流密度が高すぎると電解電圧が高くなるため、水素発生が多くなり、電流効率が低下し、電力の無駄となる。
塩酸浴での電解精製後、陰極の表面に析出した針状電析錫を電解槽から引き上げて回収し、回収後の針状電析錫を十分に純水で洗浄した後、乾燥する。乾燥温度は、低すぎると時間を要する一方で、高すぎると熱による錫の過剰な酸化が発生するおそれがあるため、60〜100℃で乾燥することが好ましく、80〜100℃で乾燥することがより好ましい。
(工程3)
本発明に係る高純度錫の製造方法は一実施形態において、工程2で得られた針状の二次精製電析錫を還元性ガス雰囲気下で溶解鋳造することを含む。乾燥した針状電析錫を水素、一酸化炭素などの還元性ガス雰囲気下で500〜1,000℃で溶解鋳造することにより高純度錫を製造する。針状の電析錫は表面が非常に大きい為、大気中で加熱すると大半が酸化してしまう。水素等の還元性雰囲気下で溶解鋳造することで、パーティクルの原因となる酸素が除去されることから、得られる高純度錫のパーティクルの粒径及び個数が低下する。また、針状電析錫の酸化を防ぎ歩留の低下を避けることができる為、結果として生産コストを低く抑えることができ、高純度錫の生産性が向上できる。
(高純度錫)
本発明の一実施形態に係る上記高純度錫の製造方法によって得られた高純度錫(精製電析錫)の純度は、グロー放電質量分析法(GDMS:Glow Discharge Mass Spectrometry)によって評価する。また、酸素濃度は非分散型赤外線吸収法で評価する。尚、本発明で使用する「ppm」の単位表記は、「質量ppm(massppm)」を意味する。
本発明の高純度錫の純度は一実施形態において、5N以上、典型的には6N以上、より典型的には7N以上とすることができる。この高純度錫中に含まれる不純物元素の測定は、錫をマトリックスとして不純物を元素記号で記すと、Li、Be、B、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Br、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sb、Te、I、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Th、Uを対象としてGDMS法で分析を行った結果を意味する。なお、原料錫と比較例1は全元素73成分をGDMS法で測定した結果を示す。
本発明の高純度錫は一実施形態において、GDMS法による質量分析の結果、鉄の含有濃度が0.5ppm以下であり、好ましくは0.05ppm以下とすることができ、より好ましくは0.005ppm未満とすることができる。
本発明の高純度錫は一実施形態において、GDMS法による質量分析の結果、銅の含有濃度が0.5ppm以下であり、好ましくは0.05ppm以下とすることができ、より好ましくは0.005ppm未満とすることができる。
本発明の高純度錫は一実施形態において、GDMS法による質量分析の結果、アンチモンの含有濃度が1.0ppm以下であり、好ましくは0.5ppm未満とすることができる。
本発明の高純度錫は一実施形態において、GDMS法による質量分析の結果、鉛の含有濃度が0.5質量ppm以下であり、好ましくは0.1ppm以下とすることができ、より好ましくは0.01ppm未満とすることがでる。
本発明の高純度錫は一実施形態において、GDMS法による質量分析の結果、硫黄の含有濃度が0.5ppm以下であり、好ましくは0.1ppm以下とすることができ、より好ましくは0.01ppm未満とすることができる。
本発明の高純度錫は一実施形態において、非分散型赤外線吸収法による質量分析の結果、酸素の含有濃度が10ppm以下であり、好ましくは5ppm未満とすることができる。
本発明の高純度錫は一実施形態において、GDMS法による質量分析の結果、Li、Be、B、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Br、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sb、Te、I、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Th、Uはいずれも検出限界値未満である。
本発明において「検出限界値未満」とは、Sc、Vが0.001ppm未満、Li、Be、B、Ti、Cr、Mn、Fe、Cu、Ga、As、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Rh、Pd、Ag、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Bi、Th、Uが0.005ppm未満、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、K、Ca、Co、Ni、Zn、Ge、Se、Mo、Ru、Eu、Hf、W、Re、Os、Ir、Pt、Pbが0.01ppm未満、Tlが0.02ppm未満、F、Br、Cd、I、Cs、Au、Hgが0.05ppm未満、Te、Ba、La、Prが0.1ppm未満、Sbが0.5ppm未満、Inが1ppm未満、Taが5ppm未満であることを意味する。
本発明に係る高純度錫の一実施形態においては、粒径が0.5μm以上のパーティクルを錫1g中に50,000個以下とすることができ、好ましくは40,000個以下とすることができ、より好ましくは30,000個以下とすることができ、更により好ましくは10,000個以下とすることができ、例えば5000未満〜50,000個とすることができる。
本発明において、このパーティクルの数は、不溶解性残渣粒子数(LPC)と同義であると定義する。不溶解性残渣粒子数(LPC)は、電子デバイス用金属原料評価法のひとつとして重要視されているパラメータであって、金属を酸溶解させた時に検出される不溶解性残渣粒子数を意味するものであり、該LPC値と電子材料の良否との間、特にスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングした場合のパーティクルの発生をはじめとする、スパッタ成膜の不良率との間に、非常に良い相関性が認められているものである。
なお、LPCの計測には湿式レーザ計測器(LPC;Liquid Particle Counter)を用いることから、不溶解性残渣粒子数を「LPC」という略称を用いている。
不溶解性残渣粒子数(LPC)の測定方法を具体的に説明すると、クラス100(米国209E基準)のクリーンな室内で試料5gを採取し、濃度6Nの塩酸200mLを1時間かけて投入し、その後、140℃に加熱して48時間保持し、完全に溶解する。これを1時間放冷し、さらにこれを500mLになるように純水で希釈する。この溶液を10mLとり、前記溶液中のパーティクルを液中パーティクルカウンターでJIS B9925:2010に準拠して測定するものである。例えば、パーティクルの個数が1000個/mLの場合には、10mL中には0.1gのサンプルが測定されることになるので、パーティクルは100,000個/gとなる。
以下に、実施例及び比較例をもって説明するが、これらは発明を理解し易いようにするためであり、本発明は実施例又は比較例によって限定されるものではない。
(実施例1)
(工程1)
図1に示す構成の電解精製装置を使用し、陽極と陰極とを陰イオン交換膜(旭硝子社製セレミオンAMV)により仕切った電解槽の陽極側にpH0.6の希硫酸溶液、陰極側に陽極で溶解する錫と反応するのに必要な量の硫酸溶液を入れた。原料錫から鋳造した陽極とチタン製の陰極を電解槽内にそれぞれ配置し、陰極電流密度2A/dm2、液温30℃で電解浸出して硫酸錫電解液(錫濃度98g/L)を作製した。
ここで、原料錫(原料)の分析結果を図3−1及び図3−2に示す。分析は、酸素は非分散型赤外線吸収法、それ以外の元素は、GDMS法で品位を測定した。尚、電解精製にあたっては、陽極側に酸化防止剤としてヒドロキノンを5g/L添加した。
電解浸出後、陽極室電解液及び陰極室電解液を共に全量抜き出した。陽極室電解液については鉛を除去する浄液槽へ入れ、そこへ炭酸ストロンチウムを電解液に対し5g/L添加して16時間攪拌し、攪拌後の電解液をフィルタープレス(濾過圧力0.4MPa、圧搾圧力0.7MPa、濾布材質:ポリプロピレン製、濾布通気度100cm3/cm2/min)により固液分離して、電解液中の鉛とともに酸化物スラッジ及び固形不純物を除去して、除去後の電解液を陰極側に投入した。鉛除去後の鉛濃度はICP発光分光分析法で測定した結果、0.1mg/L未満であった。
更に、陰極側の電解液には、ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテルを5g/L添加した。また、陽極側にはpH0.6の希硫酸溶液を新たに加えた。この状態で、陰極電流密度2A/dm2、pH0.6、液温30℃で、陰極側電解液の錫濃度が98g/Lから40g/Lになるまで電解析出をし、電解槽から陰極を引き上げた。陰極上に析出した電析錫を引き剥がして、純水で洗浄、乾燥し、一次精製電析錫を得た。
(工程2)
工程1で得られた一次精製電析錫を大気中で250〜300℃に加熱して溶解鋳造し、鋳造錫を得た。鋳造錫の一部を、濃度6N塩酸に浸出して、錫濃度60g/L、pH0.2の塩化錫溶液を得た。図2に示す構成の工程1とは別の電解精製装置を使用し、同じく鋳造錫の一部を陽極とし、チタン製の陰極とともに、電解槽内にそれぞれ配置し、電流密度4A/dm2、pH0.2、液温25℃で、この塩化錫溶液中で電解精製を行った。電解中は電解液(100L)の一部を1〜10L/分の循環流量で抜き出し、ADVANTEC社製TCC−A1−S0COの活性炭フィルターを前段に、ADVANTEC社製TCPD−01A−SIFE(1μm粒子捕集効率99.9%)のフィルターを後段に設置して二段濾過した後、電解槽へ循環した。電解液の循環を継続した状態で所定の時間、電解を行い、電解槽から陰極を引き上げた。陰極上に析出した電析錫を引き剥がして、洗浄水が中性を示すまで純水で十分に洗浄を行い、95℃にした乾燥機内で16時間乾燥した。このようにして針状の二次精製電析錫を得た。
(工程3)
2段精製を行った錫の電析物1,000gを還元炉内で、水素流量1L/分、温度800℃で4時間加熱溶解(水素熱処理)した後、鋳造して高純度錫を得た。
(評価)
得られた高純度錫の一部を用いて、GDMS法で不純物を測定した。測定結果を図3に示す。図3−1及び図3−2に示されるように、すべての元素において不純物は定量下限未満であった。同様に、得られた高純度錫の一部を用いて、非分散型赤外線吸収法で酸素品位を測定した所、定量下限の5ppm未満であった。
得られた高純度錫の一部を用いて先述した方法により、液体用光散乱式自動粒子計数器(九州リオン株式会社製KS−42B)で不溶解性残渣粒子数を測定した。その結果、錫1g中に存在する、粒径が0.5μm以上のパーティクルは5,170個であった。当該精製錫は不純物が十分に低く、且つパーティクルも極めて少ないものであった。
(実施例2〜3)
以下の表1に記載の条件を変更した以外は実施例1と同様の工程を行って、実施例2及び実施例3の高純度錫を得た。
Figure 0006457093
得られた高純度錫の一部を用いて、GDMS法で不純物を測定した。測定結果を図3−1及び図3−2に示す。図3−1及び図3−2に示されるように、実施例2、3共に、すべての元素において不純物は定量下限未満であった。同様に、得られた高純度錫の一部を用いて先述した方法により、酸素品位を測定した所、実施例2、3共に、定量下限の5ppm未満であった。
得られた高純度錫の一部を用いて先述した方法により、不溶解性残渣粒子数を測定した。その結果、錫1g中に存在する、粒径が0.5μm以上のパーティクルは、実施例2で9,060個、実施例3で13,800個であった。実施例2、3共に、当該高純度錫は不純物が十分に低く、且つパーティクルも極めて少ないものであった。
(比較例1)
実施例1で得られた硫酸浴電解の一次精製錫を二次精製せずにそのまま、実施例1の高純度錫と同様の評価をした。結果を図3−1及び図3−2に示す。不純物として鉄、銅、銀が微量検出され、また、酸素も検出された。パーティクルは実施例1〜3と比べると非常に多い値であった。
(比較例2)
実施例1で得られた塩酸浴電解の二次精製錫を還元雰囲気鋳造せずに、大気鋳造を行った。その大半が酸化して金属錫はごく少量しか得られなかった。酸化物と分離回収した金属錫を、実施例1の高純度錫と同様の評価をした。結果を図3−1及び図3−2に示す。不純物はリンと塩素が微量検出され、また、酸素も多量に検出された。パーティクルはこれも実施例1〜3と比べると非常に多い値であった。
1 電解槽
2 浄液槽
3 濾過装置
5 貯槽
4a〜4d 送液ライン
11 陰極
12 陽極
13 陰極室
14 隔膜
15 陽極室
21 電解槽
22 フィルター
23 陽極
24a〜24b 送液ライン
25 陰極
26 電解液

Claims (9)

  1. 純度が6N(99.9999質量%)以上である高純度錫であって、粒径が0.5μm以上のパーティクルが1g中に50,000個以下である高純度錫。
  2. 粒径が0.5μm以上のパーティクルが1g中に10,000個以下である請求項1に記載の高純度錫。
  3. 鉄、銅、鉛、及び硫黄の含有濃度がそれぞれ0.5質量ppm以下である請求項1又は2に記載の高純度錫。
  4. アンチモンの含有濃度が1質量ppm以下である請求項1〜3の何れか一項に記載の高純度錫。
  5. 酸素の含有濃度が5質量ppm未満である請求項1〜4の何れか一項に記載の高純度錫。
  6. 電解液として硫酸酸性硫酸錫溶液を使用し、陽極と陰極との間に隔膜を配置することにより陽極室と陰極室に分けた電解槽中で、鉛含有量が20質量ppm以下、鉄含有量が5質量ppm以下、銅含有量が0.5質量ppm以下、アンチモン含有量が5質量ppm以下、且つ、銀、砒素、ビスマス、カドミウム、銅、鉄、インジウム、ニッケル、鉛、アンチモン及び亜鉛の合計含有量が30質量ppm以下である原料錫を陽極とし、少なくとも陰極室に電析錫の表面積を低減させるための平滑剤が添加された状態で電解精製することにより陰極の表面上に純度が高められた一次精製電析錫を得る工程1であって、陽極室側の前記硫酸錫溶液の少なくとも一部を抜き出して、抜き出した前記硫酸錫溶液中の鉛及び酸化物スラッジを除去し、鉛及び酸化物スラッジを除去した硫酸錫溶液を陰極室へ送ることを含む工程1と、
    前記一次精製電析錫、又は前記一次精製電析錫を加熱溶解及び鋳造した後の鋳造錫を陽極とし、電解液として塩酸酸性塩化錫溶液を使用する電解槽中で電解精製することにより陰極の表面上に針状の二次精製電析錫を得る工程2であって、前記塩化錫溶液の少なくとも一部を電解槽から抜き出し、前記塩化錫溶液中の粒子、及び、工程1から持ち込まれた平滑剤の残留成分を除去した後、粒子及び平滑剤の残留成分が除去された塩化錫溶液を再び電解槽へ戻すことを含む工程2と、
    前記針状の二次精製電析錫を還元性ガス雰囲気下で溶解鋳造することを含む工程3と、
    を含む請求項1〜5の何れか一項に記載の高純度錫の製造方法。
  7. 平滑剤が、1又は複数の水酸基が一つ若しくは複数のメチレン基、及び/又は、一つ若しくは複数のエチレンオキシド基を介して、或いは、直接アリール基に結合されている構造を有する化合物からなる非イオン性界面活性剤を含む請求項6に記載の高純度錫の製造方法。
  8. 平滑剤が、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを含む請求項6又は7に記載の高純度錫の製造方法。
  9. 前記工程1において、前記硫酸錫溶液中に、前記平滑剤とともに、さらに、酸化防止剤を添加する工程を含む請求項6〜8の何れか一項に記載の高純度錫の製造方法。
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