本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。なお、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
なお、図において、大きさ、膜(層)の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。
また、電圧は、ある電位と、基準の電位(例えば接地電位(GND)またはソース電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧を電位と言い換えることが可能である。
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜的に用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
なお、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「絶縁体」は境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「絶縁体」と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「絶縁体」は、「半導体」と言い換えることができる場合がある。
また、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分高い場合は「導電体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「導電体」は境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「導電体」と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「導電体」は、「半導体」と言い換えることができる場合がある。
なお、半導体膜の不純物とは、例えば、半導体膜を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物である。不純物が含まれることにより、例えば、半導体膜にDOS(Density of State)が形成されることや、キャリア移動度が低下することや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体膜が酸化物半導体膜である場合、半導体膜の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第14族元素、第15族元素、主成分以外の遷移金属などがあり、特に、例えば、水素(水にも含まれる)、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。酸化物半導体膜の場合、例えば水素などの不純物の混入によって酸素欠損を形成する場合がある。また、半導体膜がシリコン層である場合、半導体膜の特性を変化させる不純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、第13族元素、第15族元素などがある。
<CAAC−OS膜の性質>
以下では、本実施の形態に係る結晶性を有する酸化物半導体膜であるCAAC−OS(C−Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜について説明する。CAAC−OS膜は、a軸およびb軸の配向は不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向を向いている酸化物半導体膜である。
CAAC−OS膜であるIn−Ga−Zn酸化物膜に対し、試料面に平行な方向からプローブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターン(制限視野透過電子回折パターンともいう。)を図4(A)に示す。図4(A)より、InGaZnO4の結晶の(009)面に起因するスポットが確認される。したがって、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直な方向からプローブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを図4(B)に示す。図4(B)より、リング状の回折パターンが確認される。
なお、本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる(図5(A)参照。)。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、XRDを用いた構造解析からも、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
一方、CAAC−OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。CAAC−OS膜の場合は、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行っても明瞭なピークが現れない(図5(B)参照。)。これに対し、InGaZnO4の単結晶酸化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合、(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される(図5(C)参照。)。したがって、XRDを用いた構造解析から、CAAC−OS膜は、a軸およびb軸の配向が不規則であることが確認できる。
CAAC−OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって観察すると、明確な結晶領域同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
一般に、多結晶酸化亜鉛膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面TEM観察)すると、図6(A)に示すように、明確な結晶粒界を確認することができる。一方、同じ測定領域において、CAAC−OS膜を平面TEM観察すると、図6(B)に示すように、結晶粒界を確認することができない。
さらに、CAAC−OS膜に対し、平面TEM観察による明視野像および回折パターンの複合解析像(高分解能平面TEM像ともいう。)を取得した(図7(A1)参照。)。高分解能平面TEM像であっても、CAAC−OS膜における明確な結晶粒界を確認することはできない。
ここで、図7(A1)に示した高分解能平面TEM像をフーリエ変換し、フィルタを掛けた後で、逆フーリエ変換した像を図7(A2)に示す。このような画像処理を施すことにより、高分解能平面TEM像からノイズを除き、周期性成分のみを抽出した実空間像を得ることができる。画像処理することで、結晶領域を際立たせることができ、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを明瞭に確認できる。ただし、異なる結晶領域間で、金属原子の配列に規則性は見られないことがわかる。
また、さらに、CAAC−OS膜に対し、拡大した高分解能平面TEM像を取得した(図7(B1)参照。)。拡大された高分解能平面TEM像であっても、CAAC−OS膜における明確な結晶粒界を確認することはできない。
ここで、図7(B1)に示した拡大された高分解能平面TEM像をフーリエ変換し、フィルタを掛けた後で、逆フーリエ変換した像を図7(B2)に示す。拡大された高分解能平面TEM像を画像処理すると、さらに明瞭に金属原子の配列を観察することができる。図7(B2)からは、金属原子が内角60°の正三角形状、または内角120°の正六角形状に配列していることが確認できる。
次に、CAAC−OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観察)した(図8(A)参照。)。図8(A)に示す断面TEM像において、枠で囲んだ領域における断面TEM観察による明視野像および回折パターンの複合解析像(高分解能断面TEM像ともいう。)を取得した(図8(B)参照。)。
ここで、図8(B)に示した高分解能断面TEM像をフーリエ変換し、フィルタを掛けた後で、逆フーリエ変換した像を図8(C)に示す。このような画像処理を施すことにより、高分解能断面TEM像からノイズを除き、周期性成分のみを抽出した実空間像を得ることができる。画像処理することで、結晶領域を際立たせることができ、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列している。
図8(B)において、左から(1)、(2)、(3)で示す領域に分けることができる。それぞれの領域を一つの大きな結晶領域とみなすと、結晶領域の一つ一つの大きさは50nm程度であることがわかる。このとき、(1)および(2)で示した領域間、(2)および(3)で示した領域間においても、明確な結晶粒界を確認できないことがわかる。また、図8(C)において、(1)および(2)で示した領域間、ならびに(2)および(3)で示した領域間は、互いに連接(連結)していることがわかる。
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC−OS膜の結晶領域は配向性を有していることがわかる。
このように高分解能TEM像を画像解析したとしても、良好なCAAC−OS膜であれば結晶粒界を確認することは難しい。そこで、以下では、透過電子回折測定装置を用いてCAAC−OS膜にも適用可能な構造解析方法について説明する。
図9(A)に、電子銃室10と、電子銃室10の下の光学系12と、光学系12の下の試料室14と、試料室14の下の光学系16と、光学系16の下の観察室20と、観察室20に設置されたカメラ18と、観察室20の下のフィルム室22と、を有する透過電子回折測定装置を示す。カメラ18は、観察室20内部に向けて設置される。なお、フィルム室22を有さなくても構わない。
また、図9(B)に、図9(A)で示した透過電子回折測定装置内部の構造を示す。透過電子回折測定装置内部では、電子銃室10に設置された電子銃から放出された電子が、光学系12を介して試料室14に配置された物質28に照射される。物質28を通過した電子は、光学系16を介して観察室20内部に設置された蛍光板32に入射する。蛍光板32では、入射した電子の強度に応じたパターンが現れることで透過電子回折パターンを測定することができる。
カメラ18は、蛍光板32を向いて設置されており、蛍光板32に現れたパターンを撮影することが可能である。カメラ18のレンズの中央、および蛍光板32の中央を通る直線と、蛍光板32の上面と、の為す角度は、例えば、15°以上80°以下、30°以上75°以下、または45°以上70°以下とする。該角度が小さいほど、カメラ18で撮影される透過電子回折パターンは歪みが大きくなる。ただし、あらかじめ該角度がわかっていれば、得られた透過電子回折パターンの歪みを補正することも可能である。なお、カメラ18をフィルム室22に設置しても構わない場合がある。例えば、カメラ18をフィルム室22に、電子24の入射方向と対向するように設置してもよい。この場合、蛍光板32の裏面から歪みの少ない透過電子回折パターンを撮影することができる。
カメラ18は、撮影した像を、記憶媒体に記憶することができる。例えば、カメラ18をコンピュータと接続し、コンピュータに撮影した像を映し出すことも可能である。コンピュータを介して像を映し出すことによって、例えば、高感度撮影に特有のノイズを除去することなども可能となる。また、カメラ18の傾きに起因した透過電子回折パターンの歪みの除去された像を映し出すことも可能となる。また、透過電子回折パターンの変化をその場で解析することも可能となるため、新規な結晶構造の解析に高い効果を発揮できる。
カメラ18としては、例えば、天体観察用などの高感度カメラを用いればよい。カメラ18として、例えば、0.002ルクス以下、好ましくは0.001ルクス以下、さらに好ましくは0.0005ルクス以下、より好ましくは0.0002ルクス以下の照度でも撮影可能であるカメラを用いる。カメラ18として、例えば、1/4インチ以上、好ましくは1/3インチ以上、さらに好ましくは1/2.3インチ以上、より好ましくは、2/3インチ以上のCCDイメージセンサを有するカメラを用いる。
また、カメラ18は、例えば、逆光補正機能を有すると好ましい。逆光補正機能を有することで、透過波起因の発光が明るすぎても他の透過電子回折パターンを認識できる場合がある。また、カメラ18として、例えば、透過波起因の発光によって、焼きつきを起こさないカメラを用いると好ましい。
蛍光板32は、電子からエネルギーを受け取ることで発光する機能を有する。したがって、該機能を有すれば、蛍光体を塗った板に限定されるものではなく、例えば、他の発光体などを塗った板などに置き換えることも可能である。蛍光板32としては、例えば、電子からエネルギーを受け取ることによって、紫外光、可視光(青色光、緑色光、赤色光など)、赤外光などを発光する物質を用いればよい。
試料室14には、試料である物質28を固定するためのホルダが設置されている。ホルダは、物質28を通過する電子を透過するような構造をしている。ホルダは、例えば、物質28を加熱する機能を有していてもよい。また、ホルダは、例えば、物質28を回転させる機能を有していてもよい。また、ホルダは、例えば、物質28をX軸、Y軸、Z軸などに移動させる機能を有していてもよい。ホルダの移動機能は、例えば、1nm以上10nm以下、5nm以上50nm以下、10nm以上100nm以下、50nm以上500nm以下、100nm以上1μm以下などの範囲で移動させる精度を有すればよい。これらの範囲は、物質28の構造によって最適な範囲を設定すればよい。
光学系12には、集束レンズなどを用いればよい。例えば、三種以上の集束レンズおよび収束絞りを通過した電子24を、対物レンズを介して試料室14の物質28に照射させればよい。
光学系16には、中間レンズおよび投影レンズを用いればよい。例えば、物質28を通過した電子24を、対物レンズ、および三種以上の中間レンズを通過させ、投影レンズを介して観察室20の蛍光板32に入射させればよい。
電子銃室10には、熱電子放出型または電界放出型の電子銃を用いればよい。特に、電界放射型の電子銃を用いると、微細な電子線を放出することができ、また高い電流密度が得られるため好ましい。なお、電子銃のエミッタには、タングステン(タングステンを酸化ジルコニウムで被覆したエミッタなどを含む)や六ホウ化ランタン(LaB6)などを用いればよい。
フィルム室22は、フィルムまたはイメージングプレートが配置可能である。
次に、上述した透過電子回折測定装置を用いて、物質の透過電子回折パターンを測定する方法について説明する。
図10(A1)、図10(A2)および図10(A3)には、蛍光板32に現れる透過電子回折パターンの変化を示す。また、図10(B)には、透過電子回折パターンの変化をフローチャートで示す。
まず、図10(A1)に示すような輝点の透過電子回折パターンが観測される(図10(B)ステップS121参照。)。
ここで、例えば、物質における電子の照射位置を変化させることで、物質の構造が変化していく様子を確認することができる。例えば、図10(A1)から図10(A2)への間で、結晶方位が回転していく様子が観測される。さらに、物質における電子の照射位置を変化させることで、例えば、図10(A2)から図10(A3)への間で、さらに結晶方位が回転していく様子が観測される(図10(B)ステップS122参照。)。
即ち、図10のような結果が得られれば、物質は、結晶粒界を有さないCAAC−OS膜のような構造を有することがわかる。
一方、物質における電子の照射位置を変化させたときに、不連続点を示す透過電子回折パターンが観測される場合がある。不連続点とは、例えば、複数種の構造を示す透過電子回折パターンが同時に観測される場合、複数種の結晶方位を示す透過電子回折パターンが同時に観測される場合などがある。このような結果が得られたときは、当該観測箇所に結晶粒界が存在することを示すと考えることができる。したがって、質の高いCAAC−OS膜であれば、例えば、照射位置を一次元的に700nmの範囲で変化させながら同測定を行った場合、不連続点を示す透過電子回折パターンが観測される箇所が5箇所以下、好ましくは3箇所以下、さらに好ましくは2箇所以下、より好ましくは0箇所となる。なお、測定範囲は一例であり、700nmに限定されない。例えば、5μm、2μm、1μm、200nmの測定範囲としてもよい。その場合、測定範囲の長さに応じて、不連続点を示す透過電子回折パターンが観察される箇所は増減する。測定範囲を200nm未満としても構わない。その場合、不連続点を示す透過電子回折パターンが観察される箇所は1箇所以下となる。
また、同測定において、特に膜断面に対して垂直に電子を入射させた場合、入射方位<010>に対する(00x)面(xは自然数)以外を含む透過電子回折パターンが観測される場合がある。具体的には、入射方位<210>に対する(009)面、または入射方位<010>に対する(111)面などが観測される場合がある。このような結果が得られたときは、当該観測箇所にCAAC−OS膜に特徴的な構造と異なる構造が存在することを示すと考えることができる。したがって、質の高いCAAC−OS膜であれば、例えば、膜断面に対して垂直に電子を入射させ、照射位置を一次元的に700nmの範囲で変化させながら同測定を行った場合、入射方位<010>に対する(00x)面以外を含む透過電子回折パターンが観測される箇所が8箇所以下、好ましくは5箇所以下、さらに好ましくは3箇所以下、より好ましくは2箇所となる。
このような透過電子回折パターンの測定方法を用いれば、物質の微小な領域における構造変化を見出すことができる。そのため、CAAC−OS膜のようなTEMなどで構造解析が困難な物質の評価が可能となる場合がある。
なお、CAAC−OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
また、CAAC−OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによってキャリア発生源となることがある。
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。したがって、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
<CAAC−OS膜の作製方法>
以下では、CAAC−OS膜の作製方法について説明する。
まずは、ターゲットの劈開面について図11を用いて説明する。図11に、InGaZnO4の結晶の構造を示す。なお、図11(A)は、c軸を上向きとし、b軸に平行な方向からInGaZnO4の結晶を観察した場合の構造を示す。また、図11(B)は、c軸に平行な方向からInGaZnO4の結晶を観察した場合の構造を示す。なお、ターゲットは、InGaZnO4の結晶を含む多結晶構造を有する。
InGaZnO4の結晶の各結晶面における劈開に必要なエネルギーを、第一原理計算により算出した。なお、計算には、擬ポテンシャルと、平面波基底を用いた密度汎関数プログラム(CASTEP)を用いた。なお、擬ポテンシャルには、ウルトラソフト型の擬ポテンシャルを用いた。また、汎関数には、GGA PBEを用いた。また、カットオフエネルギーは400eVとした。
初期状態における構造のエネルギーは、セルサイズを含めた構造最適化を行った後に導出した。また、各面で劈開後の構造のエネルギーは、セルサイズを固定した状態で、原子配置の構造最適化を行った後に導出した。
図11に示したInGaZnO4の結晶の構造をもとに、第1の面、第2の面、第3の面、第4の面のいずれかで劈開した構造を作製し、セルサイズを固定した構造最適化計算を行った。ここで、第1の面は、Ga−Zn−O層とIn−O層との間の結晶面であり、(001)面(またはab面)に平行な結晶面である(図11(A)参照。)。第2の面は、Ga−Zn−O層とGa−Zn−O層との間の結晶面であり、(001)面(またはab面)に平行な結晶面である(図11(A)参照。)。第3の面は、(110)面に平行な結晶面である(図11(B)参照。)。第4の面は、(100)面(またはbc面)に平行な結晶面である(図11(B)参照。)。
以上のような条件で、各面で劈開後の構造のエネルギーを算出した。次に、劈開後の構造のエネルギーと初期状態における構造のエネルギーとの差を、劈開面の面積で除すことで、各面における劈開しやすさの尺度である劈開エネルギーを算出した。なお、構造のエネルギーは、構造に含まれる原子と電子に対して、電子の運動エネルギーと、原子間、原子−電子間、および電子間の相互作用と、を考慮したエネルギーである。
計算の結果、第1の面の劈開エネルギーは2.60J/m2、第2の面の劈開エネルギーは0.68J/m2、第3の面の劈開エネルギーは2.18J/m2、第4の面の劈開エネルギーは2.12J/m2であることがわかった(表1参照。)。
この計算により、図11に示したInGaZnO4の結晶の構造において、第2の面における劈開エネルギーが最も低くなった。即ち、Ga−Zn−O層とGa−Zn−O層との間が最も劈開しやすい面(劈開面)であることがわかった。したがって、本明細書において、劈開面と記載する場合、最も劈開しやすい面である第2の面のことを示す。
Ga−Zn−O層とGa−Zn−O層との間である第2の面に劈開面を有するため、図11(A)に示すInGaZnO4の結晶は、二つの第2の面と等価な面で分離することができる。したがって、InGaZnO4の結晶の最小単位は、Ga−Zn−O層、In−O層およびGa−Zn−O層の3層であると考えられる。
<CAAC−OS膜の成膜モデル>
CAAC−OS膜は、結晶中の劈開面を利用して成膜することができる。以下では、スパッタリング法によるCAAC−OS膜の成膜モデルについて説明する。
ここでは、古典分子動力学計算により、ターゲットとしてホモロガス構造を有するInGaZnO4の結晶を仮定し、当該ターゲットをアルゴン(Ar)または酸素(O)によりスパッタした場合の劈開面について評価した。計算に用いたInGaZnO4の結晶(2688原子)の断面構造を図12(A)に、上面構造を図12(B)に示す。なお、図12(A)に示す固定層は、位置が変動しないよう原子の配置を固定した層である。また、図12(A)に示す温度制御層は、常に一定の温度(300K)とした層である。
古典分子動力学計算には、富士通株式会社製Materials Explorer5.0を用いた。なお、初期温度を300K、セルサイズを一定、時間刻み幅を0.01フェムト秒、ステップ数を1000万回とした。計算では、当該条件のもと、原子に300eVのエネルギーを与え、InGaZnO4の結晶のab面に垂直な方向からセルに原子を入射させた。
図13(A)は、図12に示したInGaZnO4の結晶を有するセルにアルゴンが入射してから99.9ピコ秒(psec)後の原子配列を示す。また、図13(B)は、セルに酸素が入射してから99.9ピコ秒後の原子配列を示す。なお、図13では、図12(A)に示した固定層の一部を省略して示す。
図13(A)より、アルゴンがセルに入射してから99.9ピコ秒までに、図11(A)に示した第2の面に対応する劈開面から亀裂が生じた。したがって、InGaZnO4の結晶に、アルゴンが衝突した場合、最上面を第2の面(0番目)とすると、第2の面(2番目)に大きな亀裂が生じることがわかった。
一方、図13(B)より、酸素がセルに入射してから99.9ピコ秒までに、図11(A)に示した第2の面に対応する劈開面から亀裂が生じることがわかった。ただし、酸素が衝突した場合は、InGaZnO4の結晶の第2の面(1番目)において大きな亀裂が生じることがわかった。
したがって、ホモロガス構造を有するInGaZnO4の結晶を含むターゲットの上面から原子(イオン)が衝突すると、InGaZnO4の結晶は第2の面に沿って劈開し、平板状の粒子(以下ペレット)が剥離することがわかる。また、このとき、ペレットの大きさは、アルゴンを衝突させた場合よりも、酸素を衝突させた場合の方が小さくなることがわかった。
なお、上述の計算から、剥離したペレットは損傷領域を含むことが示唆される。ペレットに含まれる損傷領域は、損傷によって生じた欠陥に酸素を反応させることで修復できる場合がある。ペレットに含まれる損傷領域の修復については後述する。
そこで、衝突させる原子の違いによって、ペレットの大きさが異なることについて調査した。
図14(A)に、図12に示したInGaZnO4の結晶を有するセルにアルゴンが入射した後、0ピコ秒から0.3ピコ秒までにおける各原子の軌跡を示す。したがって、図14(A)は、図12から図13(A)の間の期間に対応する。
図14(A)より、アルゴンが上から数えて第1層(Ga−Zn−O層)のガリウム(Ga)と衝突すると、当該ガリウムが上から数えて第3層(Ga−Zn−O層)の亜鉛(Zn)と衝突した後、当該亜鉛が上から数えて第6層(Ga−Zn−O層)の近傍まで到達することがわかった。なお、ガリウムと衝突したアルゴンは、外に弾き飛ばされる。したがって、InGaZnO4の結晶を含むターゲットにアルゴンを衝突させた場合、図12(A)における第2の面(2番目)に亀裂が入ると考えられる。
また、図14(B)に、図12に示したInGaZnO4の結晶を有するセルに酸素が入射した後、0ピコ秒から0.3ピコ秒までにおける各原子の軌跡を示す。したがって、図14(B)は、図12から図13(A)の間の期間に対応する。
一方、図14(B)より、酸素が第1層(Ga−Zn−O層)のガリウム(Ga)と衝突すると、当該ガリウムが第3層(Ga−Zn−O層)の亜鉛(Zn)と衝突した後、当該亜鉛が第5層(In−O層)まで到達しないことがわかった。なお、ガリウムと衝突した酸素は、外に弾き飛ばされる。したがって、InGaZnO4の結晶を含むターゲットに酸素を衝突させた場合、図12(A)における第2の面(1番目)に亀裂が入ると考えられる。
本計算からも、InGaZnO4の結晶は、原子(イオン)が衝突した場合、劈開面から剥離することが示唆された。
また、亀裂の深さの違いを保存則の観点から検討した。エネルギー保存則および運動量保存則は、式(1)および式(2)のように示すことができる。ここで、Eは衝突前のアルゴンまたは酸素の持つエネルギー(300eV)、mAはアルゴンまたは酸素の質量、vAは衝突前のアルゴンまたは酸素の速度、v’Aは衝突後のアルゴンまたは酸素の速度、mGaはガリウムの質量、vGaは衝突前のガリウムの速度、v’Gaは衝突後のガリウムの速度である。
アルゴンまたは酸素の衝突が弾性衝突であると仮定すると、vA、v’A、vGaおよびv’Gaの関係は式(3)のように表すことができる。
式(1)、式(2)および式(3)より、vGaを0とすると、アルゴンまたは酸素が衝突した後のガリウムの速度v’Gaは、式(4)のように表すことができる。
式(4)において、mAにアルゴンの質量または酸素の質量を代入し、それぞれの原子が衝突した後のガリウムの速度を比較する。アルゴンおよび酸素の衝突前に持つエネルギーが同じである場合、アルゴンが衝突した場合の方が、酸素が衝突した場合よりも1.24倍ガリウムの速度が高いことがわかった。したがって、ガリウムの持つエネルギーもアルゴンが衝突した場合の方が、酸素が衝突した場合よりも速度の二乗分だけ高くなる。
アルゴンを衝突させた場合の方が、酸素を衝突させた場合よりも、衝突後のガリウムの速度(エネルギー)が高くなることがわかった。したがって、アルゴンを衝突させた場合の方が、酸素を衝突させた場合よりも深い位置に亀裂が生じたと考えられる。
以上の計算により、ホモロガス構造を有するInGaZnO4の結晶を含むターゲットをスパッタすると、劈開面から剥離し、ペレットが形成されることがわかった。次に、スパッタされたペレットが堆積してCAAC−OS膜を成膜するモデルについて、図2(A)を用いて説明する。
図2(A)は、スパッタリング法によりCAAC−OS膜が成膜される様子を示した成膜室内の模式図である。
ターゲット130は、バッキングプレート上に接着されている。ターゲット130およびバッキングプレート下には、複数のマグネットが配置される。該複数のマグネットによって、ターゲット130上には磁界が生じている。
ターゲット130は、劈開面105を有する。ターゲット130には、複数の劈開面105が存在するが、ここでは理解を容易にするため一つのみを示す。
基板120は、ターゲット130と向かい合うように配置しており、その距離d(ターゲット−基板間距離(T−S間距離)ともいう。)は0.01m以上1m以下、好ましくは0.02m以上0.5m以下とする。成膜室内は、ほとんどが成膜ガス(例えば、酸素、アルゴン、または酸素を50体積%以上の割合で含む混合ガス)で満たされ、0.01Pa以上100Pa以下、好ましくは0.1Pa以上10Pa以下に制御される。ここで、ターゲット130に一定以上の電圧を印加することで、放電が始まり、プラズマ107が確認される。なお、ターゲット130上の磁界によって、ターゲット130の近傍は高密度プラズマ領域となる。高密度プラズマ領域では、成膜ガスがイオン化することで、イオン101が形成される。イオン101は、例えば、酸素の陽イオン(O+)やアルゴンの陽イオン(Ar+)などである。
イオン101は、電界によってターゲット130側に加速され、やがてターゲット130と衝突する。このとき、劈開面105から平板状(ペレット状)のスパッタ粒子であるペレット100aおよびペレット100bが剥離し、叩き出される。なお、ペレット100aおよびペレット100bは、イオン101の衝突の衝撃によって、構造に歪みが生じる場合がある。
ペレット100aは、三角形、特に正三角形の平面を有する平板状またはペレット状のスパッタ粒子である。また、ペレット100bは、六角形、特に正六角形の平面を有する平板状またはペレット状のスパッタ粒子である。なお、ペレット100aおよびペレット100bなどの平板状またはペレット状のスパッタ粒子を総称してペレット100と呼ぶ。ペレット100の平面の形状は、三角形、六角形に限定されない、例えば、三角形が2個以上6個以下合わさった形状となる場合がある。例えば、三角形(正三角形)が2個合わさった四角形(ひし形)となる場合もある。なお、ペレット100の断面を図2(B)に、上面を図2(C)に示す。
ペレット100は、成膜ガスの種類などに応じて厚さが決定する。理由は後述するが、ペレット100の厚さは、均一にすることが好ましい。また、スパッタ粒子は厚みのないペレット状である方が、厚みのあるサイコロ状であるよりも好ましい。
ペレット100は、高密度プラズマ領域を通過する際にプラズマ107から電荷を受け取ることで、端部が負または正に帯電する場合がある。ペレット100の端部は、酸素で終端され、当該酸素が負に帯電する可能性がある。ペレット100は、端部が同じ極性の電荷を帯びることにより、電荷同士の反発が起こり、平板状の形状を維持することが可能となる。
例えば、ペレット100は、プラズマ107中を凧のように飛翔し、ひらひらと基板120上に舞い上がっていく。ペレット100は電荷を帯びているため、ほかのペレット100が既に堆積している領域が近づいてくると、斥力が生じる。ここで、基板120が加熱されており、高温(例えば150℃以上400℃以下程度)である場合、ペレット100はハンググライダーのように基板120上を滑空(マイグレーション)する。ペレットの100の滑空は、平板面を基板120に向けた状態で起こる。その後、既に堆積しているほかのペレット100の側面まで到達すると、分子間力が働いて側面同士が弱く結合する。このとき、ペレット100の側面同士の間に水があると、結合を阻害する場合がある。
また、ペレット100が基板120上で加熱されることにより、イオン101の衝突で生じた構造の歪みが緩和される。歪みの緩和されたペレット100は、ほぼ単結晶となる。ペレット100がほぼ単結晶となることにより、ペレット100同士が結合した後に加熱されたとしても、ペレット100自体の伸縮はほとんど起こり得ない。したがって、ペレット100間の隙間が広がることで結晶粒界などの欠陥を形成し、クレバス化することがない。また、隙間には、伸縮性のある金属原子などが敷き詰められ、向きのずれたペレット100同士を高速道路のように繋いでいると考えられる。
以上のようなモデルにより、ペレット100が基板120上に堆積していくと考えられる。ペレット100はab面と平行な平面である平板面を下に向けて並置するため、厚さが均一で平坦、かつ高い結晶性を有する層が形成される。そして、当該層がn段(nは自然数。)積み重なることで、CAAC−OS膜103を得ることができる(図3(A)参照。)。
したがって、CAAC−OS膜103は、レーザ結晶化が不要であり、大面積のガラス基板などであっても均一な成膜が可能である。
このようなモデルによってCAAC−OS膜103が成膜されるため、スパッタ粒子が厚みのないペレット状である方が好ましい。なお、スパッタ粒子が厚みのあるサイコロ状である場合、基板120上に向ける面が一定とならず、厚さや結晶の配向を均一にできない場合がある。
なお、スパッタリング法で成膜されたIn−Ga−Zn酸化物膜は、ターゲットの原子数比よりも亜鉛が減少する場合がある。これは、酸化亜鉛が、酸化インジウムや酸化ガリウムと比べて気化しやすい性質であることに起因する可能性がある。InxGa2−xO3(ZnO)m(0<x<2、mは自然数)などの化学量論的組成から離れることで、成膜されるIn−Ga−Zn酸化物膜の結晶性が低下する場合や、部分的に多結晶化する場合などがある。
例えば、結晶性の高いCAAC−OS膜を作製するために、あらかじめターゲット中の亜鉛の原子数比を高くしても構わない。ターゲットの原子数比を調整することで、成膜されるIn−Ga−Zn酸化物膜の原子数比をInxGa2−xO3(ZnO)m(0<x<2、mは自然数)などの化学量論的組成に近づけることができる。
しかしながら、原子数比によっては、ターゲット作製時に複数種の構造が形成され、ひびや割れが生じることでターゲットの作製が困難となる場合がある。したがって、所望の原子数比のIn−Ga−Zn酸化物膜を得るために、ターゲットの原子数比のみで調整できない場合がある。例えば、ターゲットの原子数比を、作製時にひびや割れの生じにくい範囲とした場合、成膜されるIn−Ga−Zn酸化物膜において、化学量論的組成よりもZnの原子数比が低くなってしまう場合や高くなってしまう場合がある。
そこで、ターゲットの原子数比に応じて最適な成膜条件を設定し、結晶性の高いCAAC−OS膜を成膜する方法について、図1を用いて説明する。
図1(A)および図1(B)に示す成膜室170は、ターゲット130と、基板120と、排気口150と、ガス供給口140と、を有する。排気口150は、例えば、オリフィスなどを介して真空ポンプと接続され、成膜室170内の物質を排出物160として排出する機能を有する。
図1(A)に、ターゲット130中の亜鉛の原子数比が高い場合の、成膜時の成膜室170の様子を示す。ターゲット130中の亜鉛の原子数比が高い場合、ペレット100aおよびペレット100bの剥離とともに、柱状酸化亜鉛クラスタ102や酸化亜鉛分子104などがターゲット130から叩き出される。
酸化亜鉛分子104は、基板120に到達した後、基板120の表面上で水平方向に優先的に結晶成長して酸化亜鉛層を形成する。該酸化亜鉛層は、c軸配向性を有する。なお、該酸化亜鉛層の結晶のc軸は、基板120の法線ベクトルに平行な方向を向く。該酸化亜鉛層は、CAAC−OS膜を成膜するためのシード層の役割を果たすため、CAAC−OS膜の結晶性を高める機能を有する。また、該酸化亜鉛層は、厚さが0.1nm以上5nm以下、ほとんどが1nm以上3nm以下となる。該酸化亜鉛層は十分薄いため、結晶粒界をほとんど確認することができない。
一方、柱状酸化亜鉛クラスタ102は、基板120に到達した後、基板120の表面上で垂直方向に優先的に結晶成長して結晶粒を形成する。該結晶粒は、垂直方向に結晶成長した縦長の形状を有するため、ペレット100同士の結合を阻害し、結晶粒界などの欠陥を形成する場合がある。したがって、柱状酸化亜鉛クラスタ102が基板120に付着すると、CAAC−OS膜の成膜が困難となる場合がある。図3(B)に、柱状酸化亜鉛クラスタ102が混入したIn−Ga−Zn酸化物膜の断面図を示す。
したがって、ターゲット130中の亜鉛の原子数比が高い場合、質の高いCAAC−OS膜を成膜するためには、柱状酸化亜鉛クラスタ102の基板120への付着を極力抑えればよい。具体的には、柱状酸化亜鉛クラスタ102の排出量を多くすればよい。
例えば、成膜室170の圧力pと、ターゲット130と基板120との距離dと、の積が0.096Pa・m未満となるように調整することで、柱状酸化亜鉛クラスタ102の排出量を多くすることができる。圧力pが小さくなると、柱状酸化亜鉛クラスタ102が形成されにくくなる。また、柱状酸化亜鉛クラスタ102は、ペレット100と比べて体積が小さく、平均自由行程が長い。したがって、距離dが大きいほど、柱状酸化亜鉛クラスタ102の基板120に付着する割合が高くなる。したがって、距離dは小さいほうが好ましい。
また、質の高いCAAC−OS膜を成膜するために、排気口150における排気量を増やして排出物160を多くする、ガス供給口140から供給するガスの量を少なくする、ガス供給口140から供給する酸素ガスの割合を高くする、成膜時の電力を高くする、などから選ばれた一種以上の方法を行うと好ましい。例えば、成膜時の電力を高くすると、成膜されるIn−Ga−Zn酸化物膜の密度を高めることができて好ましい。
一方、図1(B)に、ターゲット130中の亜鉛の原子数比が低い場合の、成膜時の成膜室170の様子を示す。ターゲット130中の亜鉛の原子数比が低い場合、ペレット100aおよびペレット100bの剥離とともにターゲット130から叩き出される柱状酸化亜鉛クラスタ102を少なくできる。
したがって、ターゲット130中の亜鉛の原子数比が低い場合、柱状酸化亜鉛クラスタ102の排出量を多くしなくても構わない。質の高いCAAC−OS膜を成膜するためには、ペレット100aおよびペレット100bの一部を構成する酸化亜鉛など、亜鉛を含む成分が極力排出されないようにする。
例えば、成膜室170の圧力pと、ターゲット130と基板120との距離dと、の積が0.096Pa・m以上となるように調整することで、酸化亜鉛の排出量を少なくすることができる。また、酸化亜鉛は、ペレット100と比べて体積が小さく、平均自由行程が長い。したがって、距離dが小さいほど、酸化亜鉛が基板120に付着する割合が高くなる。したがって、距離dは大きいほうが好ましい。
また、質の高いCAAC−OS膜を成膜するために、排気口150における排気量を減らして排出物160を少なくする、ガス供給口140から供給するガスの量を多くする、ガス供給口140から供給する酸素ガスの割合を高くする、成膜時の電力を高くする、などから選ばれた一種以上の方法を行うと好ましい。
以上に示したように、ターゲットの原子数比に応じて最適な成膜条件を設定することで、質の高いCAAC−OS膜を成膜することができる。
以上に示した成膜モデルにより、質の高いCAAC−OS膜を得ることができる。
このようにして成膜されたCAAC−OS膜の密度は、単結晶OSと同程度の密度を有する。例えば、InGaZnO4のホモロガス構造を有する単結晶OSの密度は6.36g/cm3であるのに対し、同程度の原子数比であるCAAC−OS膜の密度は6.3g/cm3程度となる。
図15に、スパッタリング法で成膜したCAAC−OS膜であるIn−Ga−Zn酸化物膜(図15(A)参照。)、およびそのターゲット(図15(B)参照。)の断面における原子配列を示す。原子配列の観察には、高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡法(HAADF−STEM:High−Angle Annular Dark Field Scanning Transmission Electron Microscopy)を用いた。なお、HAADF−STEMでは、各原子の像強度は原子番号の二乗に比例する。したがって、原子番号の近いZn(原子番号30)とGa(原子番号31)とは、ほとんど区別できない。HAADF−STEMには、日立走査透過電子顕微鏡HD−2700を用いた。
図15(A)および図15(B)を比較すると、CAAC−OS膜と、ターゲットは、ともにホモロガス構造を有しており、それぞれの原子の配置が対応していることがわかる。
<成膜装置>
以下では、前述したCAAC−OS膜を成膜することが可能な成膜装置について説明する。
まずは、成膜時に膜中に不純物の混入が少ない成膜装置の構成について図16および図17を用いて説明する。
図16は、枚葉式マルチチャンバーの成膜装置700の上面図を模式的に示している。成膜装置700は、基板を収容するカセットポート761と、基板のアライメントを行うアライメントポート762と、を備える大気側基板供給室701と、大気側基板供給室701から、基板を搬送する大気側基板搬送室702と、基板の搬入を行い、かつ室内の圧力を大気圧から減圧、または減圧から大気圧へ切り替えるロードロック室703aと、基板の搬出を行い、かつ室内の圧力を減圧から大気圧、または大気圧から減圧へ切り替えるアンロードロック室703bと、真空中の基板の搬送を行う搬送室704と、基板の加熱を行う基板加熱室705と、ターゲットが配置され成膜を行う成膜室706a、706b、706cと、を有する。
なお、カセットポート761は、図16に示すように複数(図16においては、3つ)有していてもよい。
また、大気側基板搬送室702は、ロードロック室703aおよびアンロードロック室703bと接続され、ロードロック室703aおよびアンロードロック室703bは、搬送室704と接続され、搬送室704は、基板加熱室705、成膜室706a、成膜室706b、成膜室706cと接続する。
なお、各室の接続部にはゲートバルブ764が設けられており、大気側基板供給室701と、大気側基板搬送室702を除き、各室を独立して真空状態に保持することができる。また、大気側基板搬送室702および搬送室704は、搬送ロボット763を有し、ガラス基板を搬送することができる。
また、基板加熱室705は、プラズマ処理室を兼ねると好ましい。成膜装置700は、処理と処理の間で基板を大気暴露することなく搬送することが可能なため、基板に不純物が吸着することを抑制できる。また、成膜や熱処理などの順番を自由に構築することができる。なお、搬送室、成膜室、ロードロック室、アンロードロック室および基板加熱室は、上述の数に限定されず、設置スペースやプロセス条件に合わせて、適宜最適な数を設けることができる。
次に、図16に示す成膜装置700の一点鎖線X1−X2、一点鎖線Y1−Y2、および一点鎖線Y2−Y3に相当する断面を図17に示す。
図17(A)は、基板加熱室705と、搬送室704の断面を示しており、基板加熱室705は、基板を収容することができる複数の加熱ステージ765を有している。なお、図17(A)において、加熱ステージ765は、7段の構成について示すが、これに限定されず、1段以上7段未満の構成や8段以上の構成としてもよい。加熱ステージ765の段数を増やすことで複数の基板を同時に熱処理できるため、生産性が向上するため好ましい。また、基板加熱室705は、バルブを介して真空ポンプ770と接続されている。真空ポンプ770としては、例えば、ドライポンプ、およびメカニカルブースターポンプ等を用いることができる。
また、基板加熱室705に用いることのできる加熱機構としては、例えば、抵抗発熱体などを用いて加熱する加熱機構としてもよい。または、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導または熱輻射によって、加熱する加熱機構としてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)などのRTA(Rapid Thermal Anneal)を用いることができる。LRTAは、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する。GRTAは、高温のガスを用いて熱処理を行う。ガスとしては、不活性ガスが用いられる。
また、基板加熱室705は、マスフローコントローラ780を介して、精製機781と接続される。なお、マスフローコントローラ780および精製機781は、ガス種の数だけ設けられるが、理解を容易にするため一つのみを示す。基板加熱室705に導入されるガスは、露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下であるガスを用いることができ、例えば、酸素ガス、窒素ガス、および希ガス(アルゴンガスなど)を用いる。
搬送室704は、搬送ロボット763を有している。搬送ロボット763は、複数の可動部と、基板を保持するアームと、を有し、各室へ基板を搬送することができる。また、搬送室704は、バルブを介して真空ポンプ770と、クライオポンプ771と、接続されている。このような構成とすることで、搬送室704は、大気圧から低真空または中真空(0.1から数百Pa程度)まで真空ポンプ770を用いて排気され、バルブを切り替えて中真空から高真空または超高真空(0.1Paから1×10−7Pa)まではクライオポンプ771を用いて排気される。
また、例えば、クライオポンプ771は、搬送室704に対して2台以上並列に接続してもよい。このような構成とすることで、1台のクライオポンプがリジェネ中であっても、残りのクライオポンプを使って排気することが可能となる。なお、上述したリジェネとは、クライオポンプ内にため込まれた分子(または原子)を放出する処理をいう。クライオポンプは、分子(または原子)をため込みすぎると排気能力が低下してくるため、定期的にリジェネが行われる。
図17(B)は、成膜室706bと、搬送室704と、ロードロック室703aの断面を示している。
ここで、図17(B)を用いて、成膜室(スパッタリング室)の詳細について説明する。図17(B)に示す成膜室706bは、ターゲット766と、防着板767と、基板ステージ768と、を有する。なお、ここでは基板ステージ768には、基板769が設置されている。基板ステージ768は、図示しないが、基板769を保持する基板保持機構や、基板769を裏面から加熱する裏面ヒーター等を備えていてもよい。
なお、基板ステージ768は、成膜時に床面に対して概略垂直状態に保持され、基板受け渡し時には床面に対して概略水平状態に保持される。なお、図17(B)中において、破線で示す箇所が基板受け渡し時の基板ステージ768の保持される位置となる。このような構成とすることで成膜時に混入しうるゴミまたはパーティクルが、基板769に付着する確率を水平状態に保持するよりも抑制することができる。ただし、基板ステージ768を床面に対して垂直(90°)状態に保持すると、基板769が落下する可能性があるため、基板ステージ768は、80°以上90°未満とすることが好ましい。
また、防着板767は、ターゲット766からスパッタリングされる粒子が不要な領域に推積することを抑制できる。また、防着板767は、累積されたスパッタリング粒子が剥離しないように、加工することが望ましい。例えば、表面粗さを増加させるブラスト処理、または防着板767の表面に凹凸を設けてもよい。
また、成膜室706bは、ガス加熱機構782を介してマスフローコントローラ780と接続され、ガス加熱機構782はマスフローコントローラ780を介して精製機781と接続される。ガス加熱機構782により、成膜室706bに導入されるガスを40℃以上400℃以下、好ましくは50℃以上200℃以下に加熱することができる。なお、ガス加熱機構782、マスフローコントローラ780、および精製機781は、ガス種の数だけ設けられるが、理解を容易にするため一つのみを示す。成膜室706bに導入されるガスは、露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下であるガスを用いることができ、例えば、酸素ガス、窒素ガス、および希ガス(アルゴンガスなど)を用いる。
成膜室706bに、対向ターゲット式スパッタリング装置を適用してもよい。対向ターゲット式スパッタリング装置は、プラズマがターゲット間に閉じこめられるため、基板へのプラズマダメージを低減することができる。また、ターゲットの傾きによっては、スパッタリング粒子の基板への入射角度を浅くすることができるため、段差被覆性を高めることができる。
なお、成膜室706bに、平行平板型スパッタリング装置、イオンビームスパッタリング装置を適用しても構わない。
なお、ガスを導入する直前に精製機を設ける場合、精製機から成膜室706bまでの配管の長さを10m以下、好ましくは5m以下、さらに好ましくは1m以下とする。配管の長さを10m以下、5m以下または1m以下とすることで、配管からの放出ガスの影響を長さに応じて低減できる。さらに、ガスの配管には、フッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどで内部が被覆された金属配管を用いるとよい。前述の配管は、例えばSUS316L−EP配管と比べ、不純物を含むガスの放出量が少なく、ガスへの不純物の入り込みを低減できる。また、配管の継手には、高性能超小型メタルガスケット継手(UPG継手)を用いるとよい。また、配管を全て金属で構成することで、樹脂等を用いた場合と比べ、生じる放出ガスおよび外部リークの影響を低減できて好ましい。
また、成膜室706bは、バルブを介してターボ分子ポンプ772および真空ポンプ770と接続される。
また、成膜室706bは、クライオトラップ751が設けられる。
クライオトラップ751は、水などの比較的融点の高い分子(または原子)を吸着することができる機構である。ターボ分子ポンプ772は大きいサイズの分子(または原子)を安定して排気し、かつメンテナンスの頻度が低いため、生産性に優れる一方、水素や水の排気能力が低い。そこで、水などに対する排気能力を高めるため、クライオトラップ751が成膜室706bに接続された構成としている。クライオトラップ751の冷凍機の温度は100K以下、好ましくは80K以下とする。また、クライオトラップ751が複数の冷凍機を有する場合、冷凍機ごとに温度を変えると、効率的に排気することが可能となるため好ましい。例えば、1段目の冷凍機の温度を100K以下とし、2段目の冷凍機の温度を20K以下とすればよい。
なお、成膜室706bの排気方法は、これに限定されず、先の搬送室704に示す排気方法(クライオポンプと真空ポンプとの排気方法)と同様の構成としてもよい。もちろん、搬送室704の排気方法を成膜室706bの排気方法(ターボ分子ポンプと真空ポンプとの排気方法)と同様の構成としてもよい。
なお、上述した搬送室704、基板加熱室705、および成膜室706bの背圧(全圧)、ならびに各気体分子(原子)の分圧は、以下の通りとすると好ましい。とくに、形成される膜中に不純物が混入され得る可能性があるので、成膜室706bの背圧、ならびに各気体分子(原子)の分圧には注意する必要がある。
上述した各室の背圧(全圧)は、1×10−4Pa以下、好ましくは3×10−5Pa以下、さらに好ましくは1×10−5Pa以下である。上述した各室の質量電荷比(m/z)が18である気体分子(原子)の分圧は、3×10−5Pa以下、好ましくは1×10−5Pa以下、さらに好ましくは3×10−6Pa以下である。また、上述した各室のm/zが28である気体分子(原子)の分圧は、3×10−5Pa以下、好ましくは1×10−5Pa以下、さらに好ましくは3×10−6Pa以下である。また、上述した各室のm/zが44である気体分子(原子)の分圧は、3×10−5Pa以下、好ましくは1×10−5Pa以下、さらに好ましくは3×10−6Pa以下である。
なお、真空チャンバー内の全圧および分圧は、質量分析計を用いて測定することができる。例えば、株式会社アルバック製四重極形質量分析計(Q−massともいう。)Qulee CGM−051を用いればよい。
また、上述した搬送室704、基板加熱室705、および成膜室706bは、外部リークまたは内部リークが少ない構成とすることが望ましい。
例えば、上述した搬送室704、基板加熱室705、および成膜室706bのリークレートは、3×10−6Pa・m3/s以下、好ましくは1×10−6Pa・m3/s以下である。また、m/zが18である気体分子(原子)のリークレートが1×10−7Pa・m3/s以下、好ましくは3×10−8Pa・m3/s以下である。また、m/zが28である気体分子(原子)のリークレートが1×10−5Pa・m3/s以下、好ましくは1×10−6Pa・m3/s以下である。また、m/zが44である気体分子(原子)のリークレートが3×10−6Pa・m3/s以下、好ましくは1×10−6Pa・m3/s以下である。
なお、リークレートに関しては、前述の質量分析計を用いて測定した全圧および分圧から導出すればよい。
リークレートは、外部リークおよび内部リークに依存する。外部リークは、微小な穴やシール不良などによって真空系外から気体が流入することである。内部リークは、真空系内のバルブなどの仕切りからの漏れや内部の部材からの放出ガスに起因する。リークレートを上述の数値以下とするために、外部リークおよび内部リークの両面から対策をとる必要がある。
例えば、成膜室706bの開閉部分はメタルガスケットでシールするとよい。メタルガスケットは、フッ化鉄、酸化アルミニウム、または酸化クロムによって被覆された金属を用いると好ましい。メタルガスケットはOリングと比べ密着性が高く、外部リークを低減できる。また、フッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどによって被覆された金属の不動態を用いることで、メタルガスケットから放出される不純物を含む放出ガスが抑制され、内部リークを低減することができる。
また、成膜装置700を構成する部材として、不純物を含む放出ガスの少ないアルミニウム、クロム、チタン、ジルコニウム、ニッケルまたはバナジウムを用いる。また、前述の部材を鉄、クロムおよびニッケルなどを含む合金に被覆して用いてもよい。鉄、クロムおよびニッケルなどを含む合金は、剛性があり、熱に強く、また加工に適している。ここで、表面積を小さくするために部材の表面凹凸を研磨などによって低減しておくと、放出ガスを低減できる。
または、前述の成膜装置700の部材をフッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどで被覆してもよい。
成膜装置700の部材は、極力金属のみで構成することが好ましく、例えば石英などで構成される覗き窓などを設置する場合も、放出ガスを抑制するために表面をフッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどで薄く被覆するとよい。
成膜室に存在する吸着物は、内壁などに吸着しているために成膜室の圧力に影響しないが、成膜室を排気した際のガス放出の原因となる。そのため、リークレートと排気速度に相関はないものの、排気能力の高いポンプを用いて、成膜室に存在する吸着物をできる限り脱離し、あらかじめ排気しておくことは重要である。なお、吸着物の脱離を促すために、成膜室をベーキングしてもよい。ベーキングすることで吸着物の脱離速度を10倍程度大きくすることができる。ベーキングは100℃以上450℃以下で行えばよい。このとき、不活性ガスを成膜室に導入しながら吸着物の除去を行うと、排気するだけでは脱離しにくい水などの脱離速度をさらに大きくすることができる。なお、導入する不活性ガスをベーキングの温度と同程度に加熱することで、吸着物の脱離速度をさらに高めることができる。ここで不活性ガスとして希ガスを用いると好ましい。また、成膜する膜種によっては不活性ガスの代わりに酸素などを用いても構わない。例えば、酸化物を成膜する場合は、主成分である酸素を用いた方が好ましい場合もある。
または、加熱した希ガスなどの不活性ガスまたは酸素などを導入することで成膜室内の圧力を高め、一定時間経過後に再び成膜室を排気する処理を行うと好ましい。加熱したガスの導入により成膜室内の吸着物を脱離させることができ、成膜室内に存在する不純物を低減することができる。なお、この処理は2回以上30回以下、好ましくは5回以上15回以下の範囲で繰り返し行うと効果的である。具体的には、温度が40℃以上400℃以下、好ましくは50℃以上200℃以下である不活性ガスまたは酸素などを導入することで成膜室内の圧力を0.1Pa以上10kPa以下、好ましくは1Pa以上1kPa以下、さらに好ましくは5Pa以上100Pa以下とし、圧力を保つ期間を1分以上300分以下、好ましくは5分以上120分以下とすればよい。その後、成膜室を5分以上300分以下、好ましくは10分以上120分以下の期間排気する。
また、ダミー成膜を行うことでも吸着物の脱離速度をさらに高めることができる。ダミー成膜とは、ダミー基板に対してスパッタリング法などによる成膜を行うことで、ダミー基板および成膜室内壁に膜を堆積させ、成膜室内の不純物および成膜室内壁の吸着物を膜中に閉じこめることをいう。ダミー基板は、放出ガスの少ない基板が好ましい。ダミー成膜を行うことで、後に成膜される膜中の不純物濃度を低減することができる。なお、ダミー成膜はベーキングと同時に行ってもよい。
次に、図17(B)に示す搬送室704、およびロードロック室703aと、図17(C)に示す大気側基板搬送室702、および大気側基板供給室701の詳細について以下説明を行う。なお、図17(C)は、大気側基板搬送室702、および大気側基板供給室701の断面を示している。
図17(B)に示す搬送室704については、図17(A)に示す搬送室704の記載を参照する。
ロードロック室703aは、基板受け渡しステージ752を有する。ロードロック室703aは、減圧状態から大気まで圧力を上昇させ、ロードロック室703aの圧力が大気圧になった時に、大気側基板搬送室702に設けられている搬送ロボット763から基板受け渡しステージ752に基板を受け取る。その後、ロードロック室703aを真空引きし、減圧状態としたのち、搬送室704に設けられている搬送ロボット763が基板受け渡しステージ752から基板を受け取る。
また、ロードロック室703aは、バルブを介して真空ポンプ770、およびクライオポンプ771と接続されている。真空ポンプ770、およびクライオポンプ771の排気系の接続方法は、搬送室704の接続方法を参考とすることで接続できるため、ここでの説明は省略する。なお、図16に示すアンロードロック室703bは、ロードロック室703aと同様の構成とすることができる。
大気側基板搬送室702は、搬送ロボット763を有する。搬送ロボット763により、カセットポート761とロードロック室703aとの基板の受け渡しを行うことができる。また、大気側基板搬送室702、および大気側基板供給室701の上方にHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)等のゴミまたはパーティクルを清浄化するための機構を設けてもよい。
大気側基板供給室701は、複数のカセットポート761を有する。カセットポート761は、複数の基板を収容することができる。
ターゲットは、表面温度が100℃以下、好ましくは50℃以下、さらに好ましくは室温程度(代表的には25℃)とする。大面積の基板に対応するスパッタリング装置では大面積のターゲットを用いることが多い。ところが、大面積に対応した大きさのターゲットをつなぎ目なく作製することは困難である。現実には複数のターゲットをなるべく隙間のないように並べて大きな形状としているが、どうしても僅かな隙間が生じてしまう。こうした僅かな隙間から、ターゲットの表面温度が高まることで亜鉛などが揮発し、徐々に隙間が広がっていくことがある。隙間が広がると、バッキングプレートや接着に用いている金属がスパッタリングされることがあり、不純物濃度を高める要因となる。したがって、ターゲットは、十分に冷却されていることが好ましい。
具体的には、バッキングプレートとして、高い導電性および高い放熱性を有する金属(具体的には銅)を用いる。また、バッキングプレート内に水路を形成し、水路に十分な量の冷却水を流すことで、効率的にターゲットを冷却できる。
なお、ターゲットが亜鉛を含む場合、酸素ガス雰囲気で成膜することにより、プラズマダメージが軽減され、亜鉛の揮発が起こりにくい酸化物膜を得ることができる。
上述した成膜装置を用いることで、CAAC−OS膜中の水素濃度を、二次イオン質量分析(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)において、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm3以下とすることができる。
また、CAAC−OS膜中の窒素濃度を、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とすることができる。
また、CAAC−OS膜中の炭素濃度を、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とすることができる。
また、CAAC−OS膜を、昇温脱離ガス分光法(TDS:Thermal Desorption Spectroscopy)分析によるm/zが2(水素分子など)である気体分子(原子)、m/zが18である気体分子(原子)、m/zが28である気体分子(原子)およびm/zが44である気体分子(原子)の放出量が、それぞれ1×1019個/cm3以下、好ましくは1×1018個/cm3以下とすることができる。
以上の成膜装置を用いることで、CAAC−OS膜への不純物の混入を抑制できる。さらには、以上の成膜装置を用いて、CAAC−OS膜に接する膜を成膜することで、CAAC−OS膜に接する膜からCAAC−OS膜へ不純物が混入することを抑制できる。
<CAAC−OS膜の応用>
上述したCAAC−OS膜は、例えば、トランジスタの半導体膜などとして用いることができる。
<CAAC−OS膜を用いたトランジスタ>
以下では、本発明の一態様に係るトランジスタの構造および作製方法について説明する。
<トランジスタ構造(1)>
まず、トップゲートトップコンタクト型のトランジスタの一例について説明する。
図18は、トランジスタの上面図および断面図である。図18(A)は、トランジスタの上面図を示す。図18(A)において、一点鎖線A1−A2に対応する断面図を図18(B1)および図18(B2)に示す。また、図18(A)において、一点鎖線A3−A4に対応する断面図を図18(C)に示す。
図18(B1)および図18(B2)において、トランジスタは、基板200上の下地絶縁膜202と、下地絶縁膜202上の酸化物半導体膜206と、酸化物半導体膜206上のソース電極216aおよびドレイン電極216bと、酸化物半導体膜206上、ソース電極216a上およびドレイン電極216b上のゲート絶縁膜212と、ゲート絶縁膜212上のゲート電極204と、を有する。なお、好ましくは、ソース電極216a上、ドレイン電極216b上、ゲート絶縁膜212上およびゲート電極204上の保護絶縁膜218と、保護絶縁膜218上の配線226aおよび配線226bと、を有する。また、ゲート絶縁膜212および保護絶縁膜218は、ソース電極216aおよびドレイン電極216bにそれぞれ達する開口部を有し、当該開口部を介して配線226aおよび配線226bと、ソース電極216aおよびドレイン電極216bとが、それぞれ接する。なお、トランジスタは、下地絶縁膜202を有さなくても構わない場合がある。
上面図である図18(A)において、酸化物半導体膜206がゲート電極204と重なる領域におけるソース電極216aとドレイン電極216bとの間隔をチャネル長という。また、酸化物半導体膜206がゲート電極204と重なる領域において、ソース電極216aとドレイン電極216bとの中間地点を結んだ線の長さをチャネル幅という。なお、チャネル形成領域とは、酸化物半導体膜206において、ゲート電極204と重なり、かつソース電極216aとドレイン電極216bとに挟まれる領域をいう。また、チャネルとは、酸化物半導体膜206において、電流が主として流れる領域をいう。
なお、ゲート電極204は、図18(A)に示すように、上面図において酸化物半導体膜206のチャネル形成領域が内側に含まれるように設けられる。こうすることで、ゲート電極204側から光が入射した際に、酸化物半導体膜206中で光によってキャリアが生成されることを抑制することができる。即ち、ゲート電極204は遮光膜としての機能を有する。ただし、ゲート電極204の外側まで酸化物半導体膜206のチャネル形成領域が設けられても構わない。
以下では、酸化物半導体膜206について説明する。酸化物半導体膜206には、上述したCAAC−OS膜を適用することができる。
酸化物半導体膜206は、インジウムを含む酸化物である。酸化物は、例えば、インジウムを含むと、キャリア移動度(電子移動度)が高くなる。また、酸化物半導体膜206は、元素Mを含むと好ましい。元素Mとして、例えば、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどがある。元素Mは、例えば、酸素との結合エネルギーが高い元素である。元素Mは、例えば、酸化物のエネルギーギャップを大きくする機能を有する元素である。また、酸化物半導体膜206は、亜鉛を含むと好ましい。酸化物が亜鉛を含むと、例えば、酸化物を結晶化しやすくなる。酸化物の価電子帯上端のエネルギーは、例えば、亜鉛の原子数比によって制御できる。
ただし、酸化物半導体膜206は、インジウムを含む酸化物に限定されない。酸化物半導体膜206は、例えば、Zn−Sn酸化物、Ga−Sn酸化物であっても構わない。
酸化物半導体膜206のチャネル形成領域において、その上下に、第1の酸化物半導体膜および第2の酸化物半導体膜を有してもよい。なお、第2の酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜206とゲート絶縁膜212との間に設けられる。
なお、第1の酸化物半導体膜または/および第2の酸化物半導体膜はCAAC−OS膜であると好ましい。CAAC−OS膜は原子が規則的に配列しているため、密度が高く、銅の拡散をブロックする機能を有する。したがって、後に説明するソース電極216aおよびドレイン電極216bに銅を含む導電膜を用いても、トランジスタの電気特性を劣化させる要因とならない。銅を含む導電膜は、電気抵抗が低いため、電気特性の優れたトランジスタとすることができる。
第1の酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜206を構成する酸素以外の元素一種以上、または二種以上から構成される酸化物半導体膜である。酸化物半導体膜206を構成する酸素以外の元素一種以上、または二種以上から第1の酸化物半導体膜が構成されるため、酸化物半導体膜206と第1の酸化物半導体膜との界面において、界面準位が形成されにくい。
第2の酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜206を構成する酸素以外の元素一種以上、または二種以上から構成される酸化物半導体膜である。酸化物半導体膜206を構成する酸素以外の元素一種以上、または二種以上から第2の酸化物半導体膜が構成されるため、酸化物半導体膜206と第2の酸化物半導体膜との界面において、界面準位が形成されにくい。
なお、第1の酸化物半導体膜がIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMを併せて100atomic%とすると、好ましくはInが50原子%未満、Mが50原子%以上、さらに好ましくはInが25原子%未満、Mが75原子%以上とする。また、酸化物半導体膜206がIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMを併せて100atomic%とすると、好ましくはInが25原子%以上、Mが75原子%未満、さらに好ましくはInが34原子%以上、Mが66原子%未満とする。また、第2の酸化物半導体膜がIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMを併せて100atomic%とすると、好ましくはInが50原子%未満、Mが50原子%以上、さらに好ましくはInが25原子%未満、Mが75原子%以上とする。なお、第2の酸化物半導体膜は、第1の酸化物半導体膜と同種の酸化物を用いても構わない。
ここで、第1の酸化物半導体膜と酸化物半導体膜206との間には、第1の酸化物半導体膜と酸化物半導体膜206との混合領域を有する場合がある。また、酸化物半導体膜206と第2の酸化物半導体膜との間には、酸化物半導体膜206と第2の酸化物半導体膜との混合領域を有する場合がある。混合領域は、界面準位密度が低くなる。そのため、第1の酸化物半導体膜、酸化物半導体膜206および第2の酸化物半導体膜の積層体は、それぞれの界面近傍において、エネルギーが連続的に変化する(連続接合ともいう。)バンド構造となる。
また酸化物半導体膜206は、エネルギーギャップが大きい酸化物を用いる。酸化物半導体膜206のエネルギーギャップは、例えば、2.5eV以上4.2eV以下、好ましくは2.8eV以上3.8eV以下、さらに好ましくは3eV以上3.5eV以下とする。また、第2の酸化物半導体膜のエネルギーギャップは、2.7eV以上4.9eV以下、好ましくは3eV以上4.7eV以下、さらに好ましくは3.2eV以上4.4eV以下とする。
また、第1の酸化物半導体膜は、エネルギーギャップが大きい酸化物を用いる。例えば、第1の酸化物半導体膜のエネルギーギャップは、2.7eV以上4.9eV以下、好ましくは3eV以上4.7eV以下、さらに好ましくは3.2eV以上4.4eV以下とする。
また、第2の酸化物半導体膜は、エネルギーギャップが大きい酸化物を用いる。第2の酸化物半導体膜のエネルギーギャップは、2.7eV以上4.9eV以下、好ましくは3eV以上4.7eV以下、さらに好ましくは3.2eV以上4.4eV以下とする。ただし、第1の酸化物半導体膜および第2の酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜206よりもエネルギーギャップが大きい酸化物とする。
酸化物半導体膜206は、第1の酸化物半導体膜よりも電子親和力の大きい酸化物を用いる。例えば、酸化物半導体膜206として、第1の酸化物半導体膜よりも電子親和力の0.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上0.7eV以下、さらに好ましくは0.15eV以上0.4eV以下大きい酸化物を用いる。なお、電子親和力は、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差である。
また、酸化物半導体膜206として、第2の酸化物半導体膜よりも電子親和力の大きい酸化物を用いる。例えば、酸化物半導体膜206として、第2の酸化物半導体膜よりも電子親和力の0.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上0.7eV以下、さらに好ましくは0.15eV以上0.5eV以下大きい酸化物を用いる。なお、電子親和力は、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差である。
このとき、ゲート電極204に電界を印加すると、第1の酸化物半導体膜、酸化物半導体膜206、第2の酸化物半導体膜のうち、電子親和力の大きい酸化物半導体膜206にチャネルが形成される。
また、トランジスタのオン電流を高くするためには、第2の酸化物半導体膜の厚さは小さいほど好ましい。例えば、第2の酸化物半導体膜は、10nm未満、好ましくは5nm以下、さらに好ましくは3nm以下とする。一方、第2の酸化物半導体膜は、チャネルの形成される酸化物半導体膜206へ、ゲート絶縁膜212を構成する酸素以外の元素(シリコンなど)が入り込まないようブロックする機能を有する。そのため、第2の酸化物半導体膜は、ある程度の厚さを有することが好ましい。例えば、第2の酸化物半導体膜の厚さは、0.3nm以上、好ましくは1nm以上、さらに好ましくは2nm以上とする。
また、信頼性を高めるためには、第1の酸化物半導体膜は厚く、酸化物半導体膜206は薄く、第2の酸化物半導体膜は薄く設けられることが好ましい。具体的には、第1の酸化物半導体膜の厚さは、20nm以上、好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上とする。第1の酸化物半導体膜の厚さを、20nm以上、好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上とすることで、下地絶縁膜202と第1の酸化物半導体膜との界面からチャネルの形成される酸化物半導体膜206までを20nm以上、好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上離すことができる。ただし、半導体装置の生産性が低下する場合があるため、第1の酸化物半導体膜の厚さは、200nm以下、好ましくは120nm以下、さらに好ましくは80nm以下とする。また、酸化物半導体膜206の厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上80nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。
例えば、第1の酸化物半導体膜の厚さは酸化物半導体膜206の厚さより厚く、酸化物半導体膜206の厚さは第2の酸化物半導体膜の厚さより厚くすればよい。
以下では、酸化物半導体膜206中における不純物の影響について説明する。なお、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体膜206中の不純物濃度を低減し、低キャリア密度化および高純度化することが有効である。なお、酸化物半導体膜206のキャリア密度は、1×1017個/cm3未満、1×1015個/cm3未満、または1×1013個/cm3未満とする。酸化物半導体膜206中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。
例えば、酸化物半導体膜206中のシリコンは、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。そのため、酸化物半導体膜206と第1の酸化物半導体膜との間におけるシリコン濃度を、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)において、1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは2×1018atoms/cm3未満とする。また、酸化物半導体膜206と第2の酸化物半導体膜との間におけるシリコン濃度を、SIMSにおいて、1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは2×1018atoms/cm3未満とする。
また、酸化物半導体膜206中に水素が含まれると、キャリア密度を増大させてしまう場合がある。酸化物半導体膜206の水素濃度はSIMSにおいて、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm3以下とする。また、酸化物半導体膜206中に窒素が含まれると、キャリア密度を増大させてしまう場合がある。酸化物半導体膜206の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体膜206の水素濃度を低減するために、第1の酸化物半導体膜の水素濃度を低減すると好ましい。第1の酸化物半導体膜の水素濃度はSIMSにおいて、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm3以下とする。また、酸化物半導体膜206の窒素濃度を低減するために、第1の酸化物半導体膜の窒素濃度を低減すると好ましい。第1の酸化物半導体膜の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体膜206の水素濃度を低減するために、第2の酸化物半導体膜の水素濃度を低減すると好ましい。第2の酸化物半導体膜の水素濃度はSIMSにおいて、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm3以下とする。また、酸化物半導体膜206の窒素濃度を低減するために、第2の酸化物半導体膜の窒素濃度を低減すると好ましい。第2の酸化物半導体膜の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
図18に示す下地絶縁膜202は、例えば、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを含む絶縁膜を単層で、または積層で用いればよい。また、下地絶縁膜202は、過剰酸素を含む絶縁膜を用いると好ましい。下地絶縁膜202は、例えば、厚さを20nm以上1000nm以下、好ましくは50nm以上1000nm以下、さらに好ましくは100nm以上1000nm以下、より好ましくは200nm以上1000nm以下とする。
下地絶縁膜202は、例えば、1層目を窒化シリコン膜とし、2層目を酸化シリコン膜とした積層膜としてもよい。なお、酸化シリコン膜は酸化窒化シリコン膜でも構わない。また、窒化シリコン膜は窒化酸化シリコン膜でも構わない。酸化シリコン膜は、欠陥密度の小さい酸化シリコン膜を用いると好ましい。具体的には、電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)にてg値が2.001の信号に由来するスピンの密度が3×1017個/cm3以下、好ましくは5×1016個/cm3以下である酸化シリコン膜を用いる。窒化シリコン膜は水素およびアンモニアの放出量が少ない窒化シリコン膜を用いる。水素、アンモニアの放出量は、TDSにて測定することができる。また、窒化シリコン膜は、水素、水および酸素を透過しない、またはほとんど透過しない窒化シリコン膜を用いる。
または、下地絶縁膜202は、例えば、1層目を窒化シリコン膜とし、2層目を第1の酸化シリコン膜とし、3層目を第2の酸化シリコン膜とした積層膜とすればよい。この場合、第1の酸化シリコン膜または/および第2の酸化シリコン膜は酸化窒化シリコン膜でも構わない。また、窒化シリコン膜は窒化酸化シリコン膜でも構わない。第1の酸化シリコン膜は、欠陥密度の小さい酸化シリコン膜を用いると好ましい。具体的には、ESRにてg値が2.001の信号に由来するスピンの密度が3×1017個/cm3以下、好ましくは5×1016個/cm3以下である酸化シリコン膜を用いる。第2の酸化シリコン膜は、過剰酸素を含む酸化シリコン膜を用いる。窒化シリコン膜は水素およびアンモニアの放出量が少ない窒化シリコン膜を用いる。また、窒化シリコン膜は、水素、水および酸素を透過しない、またはほとんど透過しない窒化シリコン膜を用いる。
ソース電極216aおよびドレイン電極216bは、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、タンタルまたはタングステンを含む導電膜を、単層で、または積層で用いればよい。
ソース電極216aおよびドレイン電極216bとなる導電膜を酸化物半導体膜206上に成膜する際、酸化物半導体膜206に欠陥を生じさせる場合がある。したがって、ソース電極216aおよびドレイン電極216bとなる導電膜の成膜は、酸化物半導体膜206に欠陥を生じさせない条件で行うことが好ましい。例えば、ソース電極216aおよびドレイン電極216bとなる導電膜をスパッタリング法で成膜する場合、成膜時の電力密度を低く(3W/cm2以下程度)すればよい。
ソース電極216aおよびドレイン電極216bを形成する際に、酸化物半導体膜206の一部がエッチングされ、溝が形成される場合がある。図19に、ソース電極216aおよびドレイン電極216bの設けられていない領域において、酸化物半導体膜206に溝が形成された例を示す。
図19(A)に、異方性エッチングなどによって酸化物半導体膜206に溝が形成された場合を示す。酸化物半導体膜206に形成された溝は、側面がテーパー角を有する形状となる。図19(A)に示す形状は、後に形成されるゲート絶縁膜212などの段差被覆性を高めることのできる形状である。したがって、当該形状の溝を有するトランジスタを用いることで、半導体装置の歩留まりを高めることができる。
図19(B)に、異方性エッチングなどによって酸化物半導体膜206に溝が形成された場合を示す。図19(B)に示す形状の溝は、図19(A)に示した形状の溝を形成する場合と比べ、エッチング速度の速い条件で酸化物半導体膜206をエッチングすることで得られる。酸化物半導体膜206に形成された溝は、側面が切り立った形状となる。図19(B)に示す形状は、トランジスタの微細化に適した形状である。したがって、当該形状の溝を有するトランジスタを用いることで、半導体装置の集積度を高めることができる。
ゲート絶縁膜212は、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルを含む絶縁膜を、単層で、または積層で用いればよい。また、ゲート絶縁膜212は、過剰酸素を含む絶縁膜を用いると好ましい。ゲート絶縁膜212は、例えば、厚さ(または等価酸化膜厚)を1nm以上500nm以下、好ましくは3nm以上300nm以下、さらに好ましくは5nm以上100nm以下、より好ましくは5nm以上50nm以下とする。
ゲート絶縁膜212は、例えば、1層目を窒化シリコン膜とし、2層目を酸化シリコン膜とした積層膜とすればよい。なお、酸化シリコン膜は酸化窒化シリコン膜でも構わない。また、窒化シリコン膜は窒化酸化シリコン膜でも構わない。酸化シリコン膜は、欠陥密度の小さい酸化シリコン膜を用いると好ましい。具体的にはESRにてg値が2.001の信号に由来するスピンの密度が3×1017個/cm3以下、好ましくは5×1016個/cm3以下である酸化シリコン膜を用いる。酸化シリコン膜は、過剰酸素を含む酸化シリコン膜を用いると好ましい。窒化シリコン膜は水素ガスおよびアンモニアガスの放出量が少ない窒化シリコン膜を用いる。水素ガス、アンモニアガスの放出量は、TDSにて測定することができる。
ゲート電極204は、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、タンタルまたはタングステンを含む導電膜を、単層で、または積層で用いればよい。
保護絶縁膜218は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルを含む絶縁膜を、単層で、または積層で用いればよい。また、保護絶縁膜218は、過剰酸素を含む絶縁膜を用いると好ましい。保護絶縁膜218として、酸素をブロックする絶縁膜を用いてもよい。保護絶縁膜218は、例えば、厚さを20nm以上1000nm以下、好ましくは50nm以上1000nm以下、さらに好ましくは100nm以上1000nm以下、より好ましくは200nm以上1000nm以下とする。
配線226aおよび配線226bは、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、タンタルまたはタングステンを含む導電膜を、単層で、または積層で用いればよい。
基板200に大きな制限はない。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを、基板200として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI(Silicon On Insulator)基板などを適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板200として用いてもよい。
また、基板200として、可とう性基板を用いてもよい。なお、可とう性基板上にトランジスタを設ける方法としては、非可とう性の基板上にトランジスタを作製した後、トランジスタを剥離し、可とう性基板である基板200に転置する方法もある。その場合には、非可とう性基板とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。
<トランジスタ構造(2)>
まず、トップゲートトップコンタクト型のトランジスタのトランジスタ構造(1)と異なる例について説明する。
図20は、トランジスタの上面図および断面図である。図20(A)は、トランジスタの上面図を示す。図20(A)において、一点鎖線B1−B2に対応する断面図を図20(B1)および図20(B2)に示す。また、図20(A)において、一点鎖線B3−B4に対応する断面図を図20(C)に示す。
図20(B1)および図20(B2)において、トランジスタは、基板300上の下地絶縁膜302と、下地絶縁膜302上の酸化物半導体膜306と、酸化物半導体膜306の側面と接するソース電極316aおよびドレイン電極316bと、酸化物半導体膜306上、ソース電極316a上およびドレイン電極316b上のゲート絶縁膜312と、ゲート絶縁膜312上のゲート電極304と、を有する。なお、好ましくは、ソース電極316a上、ドレイン電極316b上、ゲート絶縁膜312上およびゲート電極304上の保護絶縁膜318と、保護絶縁膜318上の配線326aおよび配線326bと、を有する。また、ゲート絶縁膜312および保護絶縁膜318は、ソース電極316aおよびドレイン電極316bにそれぞれ達する開口部を有し、当該開口部を介して配線326aおよび配線326bと、ソース電極316aおよびドレイン電極316bとが、それぞれ接する。なお、トランジスタは、下地絶縁膜302を有さなくても構わない場合がある。
上面図である図20(A)において、酸化物半導体膜306がゲート電極304と重なる領域におけるソース電極316aとドレイン電極316bとの間隔をチャネル長という。また、酸化物半導体膜306がゲート電極304と重なる領域において、ソース電極316aとドレイン電極316bとの中間地点を結んだ線の長さをチャネル幅という。なお、チャネル形成領域とは、酸化物半導体膜306において、ゲート電極304と重なり、かつソース電極316aとドレイン電極316bとに挟まれる領域をいう。また、チャネルとは、酸化物半導体膜306において、電流が主として流れる領域をいう。
なお、ゲート電極304は、図20(A)に示すように、上面図において酸化物半導体膜306のチャネル形成領域が内側に含まれるように設けられる。こうすることで、ゲート電極304側から光が入射した際に、酸化物半導体膜306中で光によってキャリアが生成されることを抑制することができる。即ち、ゲート電極304は遮光膜としての機能を有する。ただし、ゲート電極304の外側まで酸化物半導体膜306のチャネル形成領域が設けられても構わない。
例えば、基板300は基板200についての記載を参照する。下地絶縁膜302は下地絶縁膜202についての記載を参照する。酸化物半導体膜306は酸化物半導体膜206についての記載を参照する。ソース電極316aおよびドレイン電極316bは、ソース電極216aおよびドレイン電極216bについての記載を参照する。ゲート絶縁膜312はゲート絶縁膜212についての記載を参照する。ゲート電極304はゲート電極204についての記載を参照する。保護絶縁膜318は保護絶縁膜218についての記載を参照する。配線326aおよび配線326bは、配線226aおよび配線226bについての記載を参照する。
<トランジスタ構造(3)>
次に、ボトムゲートトップコンタクト型のトランジスタの一例について説明する。
図21は、トランジスタの上面図および断面図である。図21(A)は、トランジスタの上面図を示す。図21(A)において、一点鎖線C1−C2に対応する断面図を図21(B)に示す。また、図21(A)において、一点鎖線C3−C4に対応する断面図を図21(C)に示す。
図21(B)において、トランジスタは、基板400上のゲート電極404と、ゲート電極404上のゲート絶縁膜412と、ゲート絶縁膜412上の酸化物半導体膜406と、酸化物半導体膜406上のソース電極416aおよびドレイン電極416bと、を有する。なお、好ましくは、ソース電極416a上、ドレイン電極416b上、ゲート絶縁膜412上および酸化物半導体膜406上の保護絶縁膜418と、保護絶縁膜418上の配線426aおよび配線426bと、を有する。また、保護絶縁膜418は、ソース電極416aおよびドレイン電極416bにそれぞれ達する開口部を有し、当該開口部を介して配線426aおよび配線426bと、ソース電極416aおよびドレイン電極416bとが、それぞれ接する。なお、トランジスタは、基板400とゲート電極404との間に下地絶縁膜を有しても構わない。
図21に示すトランジスタについての記載の一部は、図18に示したトランジスタについての記載を参照する。
例えば、基板400は基板200についての記載を参照する。酸化物半導体膜406は酸化物半導体膜206についての記載を参照する。ソース電極416aおよびドレイン電極416bは、ソース電極216aおよびドレイン電極216bについての記載を参照する。ゲート絶縁膜412はゲート絶縁膜212についての記載を参照する。ゲート電極404はゲート電極204についての記載を参照する。配線426aおよび配線426bは、配線226aおよび配線226bについての記載を参照する。
なお、ゲート電極404は、図21(A)に示すように、上面図において酸化物半導体膜406のチャネル形成領域が内側に含まれるように設けられる。こうすることで、ゲート電極404側から光が入射した際に、酸化物半導体膜406中で光によってキャリアが生成されることを抑制することができる。即ち、ゲート電極404は遮光膜としての機能を有する。ただし、ゲート電極404の外側まで酸化物半導体膜406のチャネル形成領域が設けられても構わない。
図21に示す保護絶縁膜418は、例えば、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを含む絶縁膜を単層で、または積層で用いればよい。また、保護絶縁膜418は、過剰酸素を含む絶縁膜を用いると好ましい。保護絶縁膜418は、例えば、厚さを20nm以上1000nm以下、好ましくは50nm以上1000nm以下、さらに好ましくは100nm以上1000nm以下、より好ましくは200nm以上1000nm以下とする。
保護絶縁膜418は、例えば、1層目を酸化シリコン膜とし、2層目を窒化シリコン膜とした積層膜としてもよい。なお、酸化シリコン膜は酸化窒化シリコン膜でも構わない。また、窒化シリコン膜は窒化酸化シリコン膜でも構わない。酸化シリコン膜は、欠陥密度の小さい酸化シリコン膜を用いると好ましい。具体的には、ESRにてg値が2.001の信号に由来するスピンの密度が3×1017個/cm3以下、好ましくは5×1016個/cm3以下である酸化シリコン膜を用いる。窒化シリコン膜は水素およびアンモニアの放出量が少ない窒化シリコン膜を用いる。水素、アンモニアの放出量は、TDSにて測定することができる。また、窒化シリコン膜は、水素、水および酸素を透過しない、またはほとんど透過しない窒化シリコン膜を用いる。
または、保護絶縁膜418は、例えば、1層目を第1の酸化シリコン膜とし、2層目を第2の酸化シリコン膜とし、3層目を窒化シリコン膜とした積層膜とすればよい。この場合、第1の酸化シリコン膜または/および第2の酸化シリコン膜は酸化窒化シリコン膜でも構わない。また、窒化シリコン膜は窒化酸化シリコン膜でも構わない。第1の酸化シリコン膜は、欠陥密度の小さい酸化シリコン膜を用いると好ましい。具体的には、ESRにてg値が2.001の信号に由来するスピンの密度が3×1017個/cm3以下、好ましくは5×1016個/cm3以下である酸化シリコン膜を用いる。第2の酸化シリコン膜は、過剰酸素を含む酸化シリコン膜を用いる。窒化シリコン膜は水素およびアンモニアの放出量が少ない窒化シリコン膜を用いる。また、窒化シリコン膜は、水素、水および酸素を透過しない、またはほとんど透過しない窒化シリコン膜を用いる。
上述したトランジスタは、例えば、表示装置、メモリ、CPUなど様々な用途に用いることができる。
<表示装置>
以下では、上述したトランジスタを適用した表示装置について説明する。
図22(A)に、表示装置の一例を示す。図22(A)に示す表示装置は、画素部901と、走査線駆動回路904と、信号線駆動回路906と、各々が平行または略平行に配置され、かつ走査線駆動回路904によって電位が制御されるm本の走査線907と、各々が平行または略平行に配置され、かつ信号線駆動回路906によって電位が制御されるn本の信号線909と、を有する。また、画素部901はマトリクス状に配置された複数の画素903を有する。また、信号線909に沿って、各々が平行または略平行に配置された容量線915を有する。容量線915は、走査線907に沿って、各々が平行または略平行に配置されていてもよい。なお、走査線駆動回路904および信号線駆動回路906を単に駆動回路部という場合がある。
各走査線907は、画素部901においてm行n列に配置された画素903のうち、いずれかの行に配置されたn個の画素903と電気的に接続される。また、各信号線909は、m行n列に配置された画素903のうち、いずれかの列に配置されたm個の画素903に電気的と接続される。m、nは、ともに自然数である。また、各容量線915は、m行n列に配置された画素903のうち、いずれかの行に配置されたn個の画素903と電気的に接続される。なお、容量線915が、信号線909に沿って、各々が平行または略平行に配置されている場合は、m行n列に配置された画素903のうち、いずれかの列に配置されたm個の画素903に電気的と接続される。
図22(B)、(C)は、図22(A)に示す表示装置の画素903に用いることができる回路構成の一例を示している。
図22(B)に示す画素903は、液晶素子921と、トランジスタ902と、容量素子905と、を有する。
液晶素子921の一対の電極の一方の電位は、画素903の仕様に応じて適宜設定される。液晶素子921は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。また、複数の画素903のそれぞれが有する液晶素子921の一対の電極の一方に共通の電位(コモン電位)を与えてもよい。また、各行の画素903毎の液晶素子921の一対の電極の一方に異なる電位を与えてもよい。
なお、液晶素子921は、液晶の光学的変調作用によって光の透過または非透過を制御する素子である。なお、液晶の光学的変調作用は、液晶にかかる電界(横方向の電界、縦方向の電界または斜め方向の電界を含む)によって制御される。なお、液晶素子921に用いることのできる液晶としては、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶、サーモトロピック液晶、ライオトロピック液晶、強誘電液晶、反強誘電液晶等が挙げられる。
液晶素子921を有する表示装置の表示方式としては、例えば、TNモード、VAモード、ASM(Axially Symmetric Aligned Micro−cell)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、MVAモード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、IPSモード、FFSモード、またはTBA(Transverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい。ただし、これに限定されるものではない。
また、ブルー相(Blue Phase)を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物を含む液晶素子を用いてもよい。ブルー相を示す液晶は、応答速度が1msec以下と短く、光学的等方性であるため、配向処理が不要であり、視野角依存性が小さいなどの特長がある。
図22(B)に示す画素903の構成において、トランジスタ902のソース電極およびドレイン電極の一方は、信号線909に電気的に接続され、他方は液晶素子921の一対の電極の他方に電気的に接続される。また、トランジスタ902のゲート電極は、走査線907に電気的に接続される。トランジスタ902は、オン状態またはオフ状態になることにより、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。なお、トランジスタ902は、上述したいずれかのトランジスタを用いることができる。
図22(B)に示す画素903の構成において、容量素子905の一対の電極の一方は、電位が供給される容量線915に電気的に接続され、他方は、液晶素子921の一対の電極の他方に電気的に接続される。なお、容量線915の電位の値は、画素903の仕様に応じて適宜設定される。容量素子905は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
例えば、図22(B)の画素903を有する表示装置では、走査線駆動回路904により各行の画素903を順次選択し、トランジスタ902をオン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
データが書き込まれた画素903は、トランジスタ902がオフ状態になることで保持状態になる。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
また、図22(C)に示す画素903は、表示素子のスイッチングを行うトランジスタ933と、画素の駆動を制御するトランジスタ902と、トランジスタ935と、容量素子905と、発光素子931と、を有する。
トランジスタ933のソース電極およびドレイン電極の一方は、データ信号が与えられる信号線909に電気的に接続される。さらに、トランジスタ933のゲート電極は、ゲート信号が与えられる走査線907に電気的に接続される。
トランジスタ933は、オン状態またはオフ状態になることにより、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
トランジスタ902のソース電極およびドレイン電極の一方は、アノード線として機能する配線937と電気的に接続され、トランジスタ902のソース電極およびドレイン電極の他方は、発光素子931の一方の電極に電気的に接続される。さらに、トランジスタ902のゲート電極は、トランジスタ933のソース電極およびドレイン電極の他方、および容量素子905の一方の電極に電気的に接続される。
トランジスタ902は、オン状態またはオフ状態になることにより、発光素子931に流れる電流を制御する機能を有する。なお、トランジスタ902は、上述したいずれかのトランジスタを用いることができる。
トランジスタ935のソース電極およびドレイン電極の一方はデータの基準電位が与えられる配線939と接続され、トランジスタ935のソース電極およびドレイン電極の他方は、発光素子931の一方の電極、および容量素子905の他方の電極に電気的に接続される。さらに、トランジスタ935のゲート電極は、ゲート信号が与えられる走査線907に電気的に接続される。
トランジスタ935は、発光素子931に流れる電流を調整する機能を有する。例えば、発光素子931が劣化等により、発光素子931の内部抵抗が上昇した場合、トランジスタ935のソース電極およびドレイン電極の一方が接続された配線939に流れる電流をモニタリングすることで、発光素子931に流れる電流を補正することができる。
容量素子905の一対の電極の一方は、トランジスタ933のソース電極およびドレイン電極の他方、およびトランジスタ902のゲート電極と電気的に接続され、容量素子905の一対の電極の他方は、トランジスタ935のソース電極およびドレイン電極の他方、および発光素子931の一方の電極に電気的に接続される。
図22(C)に示す画素903の構成において、容量素子905は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
発光素子931の一対の電極の一方は、トランジスタ935のソース電極およびドレイン電極の他方、容量素子905の他方、およびトランジスタ902のソース電極およびドレイン電極の他方と電気的に接続される。また、発光素子931の一対の電極の他方は、カソードとして機能する配線941に電気的に接続される。
発光素子931としては、例えば有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子ともいう)などを用いることができる。ただし、発光素子931としては、これに限定されず、無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。
なお、配線937および配線941の一方には、高電源電位VDDが与えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。図22(C)に示す構成においては、配線937に高電源電位VDDを、配線941に低電源電位VSSを、それぞれ与える構成としている。
図22(C)の画素903を有する表示装置では、走査線駆動回路904により各行の画素903を順次選択し、トランジスタ902をオン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
データが書き込まれた画素903は、トランジスタ933がオフ状態になることで保持状態になる。さらに、トランジスタ933は、容量素子905と接続しているため、書き込まれたデータを長時間保持することが可能となる。また、トランジスタ902により、ソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子931は、流れる電流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
次に、表示装置に含まれる素子基板の具体的な構成について説明する。ここでは、画素903に液晶素子を用いた液晶表示装置の具体的な例について説明する。ここでは、図22(B)に示す画素903の上面図を図23(A)に示す。
図23(A)において、走査線907は、信号線909に略直交する方向(図中上下方向)に延伸して設けられている。信号線909は、走査線907に略直交する方向(図中左右方向)に延伸して設けられている。容量線915は、信号線と平行方向に延伸して設けられている。なお、走査線907は、走査線駆動回路904(図22(A)参照。)と電気的に接続されており、信号線909および容量線915は、信号線駆動回路906(図22(A)参照。)に電気的に接続されている。
トランジスタ902は、走査線907および信号線909が交差する領域に設けられている。トランジスタ902は、上述したトランジスタと同様の構造のトランジスタを用いることができる。なお、走査線907において、酸化物半導体膜817aと重なる領域がトランジスタ902のゲート電極として機能し、図23(B)および図23(C)において、ゲート電極813と示す。また、信号線909において、酸化物半導体膜817aと重なる領域がトランジスタ902のソース電極またはドレイン電極として機能し、図23(B)において、電極819と示す。また、図23(A)において、走査線907は、上面形状において端部が酸化物半導体膜817aの端部より外側に位置する。このため、走査線907はバックライトなどの光源からの光を遮る遮光膜として機能する。この結果、トランジスタに含まれる酸化物半導体膜817aに光が照射されず、トランジスタの電気特性の変動を抑制することができる。
また、電極820は、開口部893において、電極892と接続する。電極892は、透光性を有する導電膜であり、画素電極として機能する。
容量素子905は、容量線915と接続されている。また、容量素子905は、ゲート絶縁膜上に配置した導電膜817bと、トランジスタ902上に設けられる誘電体膜と、電極892とで構成されている。誘電体膜には、窒化物絶縁膜用いる。導電膜817b、窒化物絶縁膜、および電極892はそれぞれ透光性を有するため、容量素子905は透光性を有する。
このように容量素子905は透光性を有するため、画素903内に容量素子905を大きく(大面積に)することができる。したがって、開口率を高める(代表的には55%以上、好ましくは60%以上とする)ことが可能であるとともに、電荷容量の大きい表示装置を得ることができる。例えば、解像度の高い表示装置は、画素の面積が小さくなると容量素子の面積も小さくせざるを得ない。このため、解像度の高い表示装置は、容量素子に蓄積可能な電荷容量が小さくなる。しかしながら、上述した表示装置の容量素子905は透光性を有するため、各画素において十分な電荷容量を得つつ、開口率を高めることができる。代表的には、画素密度が200ppi以上、さらには300ppi以上、さらには500ppi以上である高解像度の表示装置に好適に用いることができる。
また、本発明の一態様は、高解像度の表示装置においても、開口率を高めることができるため、バックライトなどの光源の光を効率よく利用することができ、表示装置の消費電力を低減することができる。
次いで、図23(A)の一点鎖線A−B、C−Dにおける断面図を、それぞれ図23(B)および図23(C)に示す。なお、一点破線A−Bは、トランジスタ902のチャネル長方向、トランジスタ902と画素電極として機能する電極892の接続部、および容量素子905aの断面図であり、C−Dにおける断面図は、トランジスタ902のチャネル幅方向の断面図、およびゲート電極813およびゲート電極891の接続部における断面図である。
図23(B)および図23(C)に示すトランジスタ902は、チャネルエッチ型のトランジスタであり、基板811上に設けられるゲート電極813と、基板811およびゲート電極813上に配置されるゲート絶縁膜815と、ゲート絶縁膜815を介して、ゲート電極813と重なる酸化物半導体膜817aと、酸化物半導体膜817aに接する、電極819および電極820とを有する。また、ゲート絶縁膜815、酸化物半導体膜817a、電極819および電極820上には、酸化物絶縁膜883が配置され、酸化物絶縁膜883上には酸化物絶縁膜885が配置される。ゲート絶縁膜815、酸化物絶縁膜883、酸化物絶縁膜885、電極820上には窒化物絶縁膜887が配置される。また、電極819および電極820の一方、ここでは電極820に接続する電極892、およびゲート電極891が窒化物絶縁膜887上に配置される。なお、電極892は画素電極として機能する。
また、ゲート絶縁膜815は、窒化物絶縁膜815aおよび酸化物絶縁膜815bで配置される。酸化物絶縁膜815bは、酸化物半導体膜817a、電極819、電極820、および酸化物絶縁膜883と重複する領域に配置される。
C−Dにおける断面図に示すように、窒化物絶縁膜815aおよび窒化物絶縁膜887に設けられる開口部894において、ゲート電極891は、ゲート電極813と接続する。即ち、ゲート電極813およびゲート電極891は同電位である。
トランジスタ902上には、トランジスタごとに分離された酸化物絶縁膜883および酸化物絶縁膜885が配置される。分離された酸化物絶縁膜883および酸化物絶縁膜885が酸化物半導体膜817aと重なる。また、C−Dに示すチャネル幅方向の断面図において、酸化物半導体膜817aの外側に酸化物絶縁膜883および酸化物絶縁膜885の端部が位置する。また、チャネル幅方向において、酸化物半導体膜817aの一方の側面および他方の側面それぞれの外側において、ゲート電極891は、酸化物絶縁膜883、酸化物絶縁膜885、および窒化物絶縁膜887を介して酸化物半導体膜817aの側面と向かい合う。また、窒化物絶縁膜887は、酸化物絶縁膜883および酸化物絶縁膜885の上面および側面を覆うように配置され、窒化物絶縁膜815aと接する。
トランジスタ902は、窒化物絶縁膜815aおよび窒化物絶縁膜887が、酸化物半導体膜817aおよび酸化物絶縁膜885を内側に有しつつ、接している。窒化物絶縁膜815aおよび窒化物絶縁膜887は、酸素の拡散係数が小さく、酸素の対するバリア性を有するため、酸化物絶縁膜885に含まれる酸素の一部を効率よく酸化物半導体膜817aに移動させることが可能であり、酸化物半導体膜817aの酸素欠損量を減らすことが可能である。また、窒化物絶縁膜815aおよび窒化物絶縁膜887は、水、水素等に対するバリア性を有するため、外部から酸化物半導体膜817aへの水、水素等の混入を防ぐことが可能である。これらの結果、トランジスタ902は、信頼性の高いトランジスタとなる。
容量素子905aは、ゲート絶縁膜815上に配置される導電膜817bと、窒化物絶縁膜887と、電極892とで構成されている。容量素子905aにおいて、導電膜817bは、酸化物半導体膜817aと同時に形成された膜であり、かつ不純物を含むことにより導電性が高められた膜である。または、導電膜817bは、酸化物半導体膜817aと同時に形成された膜であり、かつ不純物を含むとともに、プラズマダメージ等により酸素欠損が形成され、導電性が高められた膜である。
酸化物半導体膜817aおよび導電膜817bはともに、ゲート絶縁膜815上に配置されるが、不純物濃度が異なる。具体的には、酸化物半導体膜817aと比較して、導電膜817bの不純物濃度が高い。例えば、酸化物半導体膜817aに含まれる水素濃度は、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下であり、導電膜817b含まれる水素濃度は、8×1019atoms/cm3以上、好ましくは1×1020atoms/cm3以上、より好ましくは5×1020atoms/cm3以上である。また、酸化物半導体膜817aと比較して、導電膜817bに含まれる水素濃度は2倍、好ましくは10倍以上である。
導電膜817bは、酸化物半導体膜817aより抵抗率が低い。導電膜817bの抵抗率が、酸化物半導体膜817aの抵抗率の1×10−8倍以上1×10−1倍未満であることが好ましく、代表的には1×10−3Ωcm以上1×104Ωcm未満、さらに好ましくは、抵抗率が1×10−3Ωcm以上1×10−1Ωcm未満であるとよい。
導電膜817bは、例えば、窒化物絶縁膜887の形成時に、プラズマダメージを与えることで形成してもよい。なお、窒化物絶縁膜887は水素濃度が高いため、プラズマダメージを与えるとともに導電膜817bの水素濃度を高める。酸化物半導体膜は、水素が入ることで、または酸素欠損のサイトに水素が入ることでキャリアを生成する場合がある。したがって、窒化物絶縁膜887の作用によって、酸化物半導体膜のキャリア密度を高めることができ、導電膜817bを形成することができる場合がある。
トランジスタの酸化物半導体膜と同時に、容量素子の一方となる電極が形成される。また、画素電極として機能する導電膜を容量素子の他方の電極として用いる。これらのため、容量素子を形成するために、新たに導電膜を形成する工程が不要であり、作製工程を削減できる。また、一対の電極が透光性を有するため、容量素子は透光性を有する。この結果、容量素子の占有面積を大きくしつつ、画素の開口率を高めることができる。
以上のように優れた表示性能を有する表示装置を得ることができる。
<メモリ1>
以下では、上述したトランジスタを有する半導体記憶装置であるメモリセルの回路構成およびその動作について、図24を参照して説明する。
なお、半導体記憶装置は、メモリセルの他、別の基板上に配置された駆動回路、電源回路等を含む場合がある。
図24(A)は、メモリセル500の一例を示す回路図である。
図24(A)に示すメモリセル500では、トランジスタ511と、トランジスタ512と、トランジスタ513と、容量素子514と、を示している。なおメモリセル500は、図24(A)では、図示を省略しているが、実際にはマトリクス状に複数設けられている。
トランジスタ511は、ゲートに、書き込みワード線WWLが接続される。また、トランジスタ511は、ソースおよびドレインの一方に、ビット線BLが接続される。また、トランジスタ511は、ソースおよびドレインの他方に、フローティングノードFNが接続される。
トランジスタ512は、ゲートに、フローティングノードFNが接続される。また、トランジスタ512は、ソースおよびドレインの一方に、トランジスタ513のソースおよびドレインの一方が接続される。また、トランジスタ512は、ソースおよびドレインの他方に、電源線SLが接続される。
トランジスタ513は、ゲートに、読み出しワード線RWLが接続される。また、トランジスタ513は、ソースおよびドレインの他方に、ビット線BLが接続される。
容量素子514は、一方の電極に、フローティングノードFNが接続される。また、容量素子514は、他方の電極に、固定電位が与えられる。
書き込みワード線WWLには、ワード信号が与えられる。
ワード信号は、ビット線BLの電圧をフローティングノードFNに与えるために、トランジスタ511を導通状態とする信号である。
なお、書き込みワード線WWLに与えられるワード信号を制御することで、フローティングノードFNの電位が、ビット線BLの電圧に応じた電位となることを、メモリセルにデータを書き込む、という。また、読み出しワード線RWLに与えられる読み出し信号を制御することで、ビット線BLの電圧が、フローティングノードFNの電位に応じた電圧となることを、メモリセルからデータを読み出す、という。
ビット線BLには、多値のデータが与えられる。またビット線BLには、データを読み出すための、ディスチャージ電圧Vdischargeが与えられる。
多値のデータは、kビット(kは2以上の整数)のデータである。具体的には、2ビットのデータであれば4値のデータであり、4段階の電圧のいずれか一を有する信号である。
ディスチャージ電圧Vdischargeは、データを読み出すために、ビット線BLに与えられる電圧である。また、ディスチャージ電圧Vdischargeが与えられた後、ビット線BLは電気的に浮遊状態となる。また、ディスチャージ電圧Vdischargeは、ビット線BLの初期化を行うために与えられる電圧である。
読み出しワード線RWLには、読み出し信号が与えられる。
読み出し信号は、メモリセルからデータを選択的に読み出すために、トランジスタ513のゲートに与えられる信号である。
フローティングノードFNは、容量素子514の一方の電極、トランジスタ511のソースおよびドレインの他方、およびトランジスタ512のゲートを接続する配線上のいずれかのノードに相当する。
フローティングノードFNの電位は、ビット線BLによって与えられる、多値のデータに基づく電位である。また、フローティングノードFNは、トランジスタ511を非導通状態とすることで、電気的に浮遊状態となる。
電源線SLには、ビット線BLに与えられるディスチャージ電圧Vdischargeよりも高いプリチャージ電圧Vprechargeが与えられる。
電源線SLの電圧は、少なくともメモリセル500からデータを読み出す期間に、プリチャージ電圧Vprechargeであればよい。そのため、メモリセル500にデータを書き込む期間、または/およびデータの読み出しや書き込みを行わない期間では、電源線SLの電圧をディスチャージ電圧Vdischargeとし、ビット線BLと電源線SLとが等電位となる構成としてもよい。当該構成により、ビット線BLと電源線SLとの間にわずかに流れる貫通電流を低減することができる。
また別の構成として、電源線SLは、プリチャージ電圧Vprechargeとした定電圧を与える構成としてもよい。当該構成により、電源線SLの電圧を、プリチャージ電圧Vprechargeとディスチャージ電圧Vdischargeとで切り換えなくてよいため、電源線SLの充放電に要する消費電力を削減することができる。
電源線SLに与えられるプリチャージ電圧Vprechargeは、ビット線BLに与えられるディスチャージ電圧Vdischargeを、トランジスタ512およびトランジスタ513を介した充電により変化させる電圧である。
トランジスタ511は、導通状態と非導通状態とを切り換えることで、データの書き込みを制御するスイッチとしての機能を有する。また、非導通状態を保持することで、書き込んだデータに基づく電位を保持する機能を有する。なお、トランジスタ511は、nチャネル型のトランジスタとして、説明を行うものとする。
トランジスタ511は、非導通状態においてソースとドレインとの間を流れる電流(オフ電流)が低いトランジスタが用いられることが好適である。
図24(A)に示すメモリセル500の構成では、非導通状態を保持することで、書き込んだデータに基づく電位を保持している。そのため、フローティングノードFNでの電荷の移動を伴った電位の変動を抑えるスイッチとして、オフ電流の低いトランジスタが用いられることが特に好ましい。なお、オフ電流の低いトランジスタのオフ電流を評価する方法は後述する。
トランジスタ511は、オフ電流の低いトランジスタとし、非導通状態を保持することで、メモリセル500を不揮発性のメモリとすることができる。よって、一旦、メモリセル500に書き込まれたデータは、再度、トランジスタ511を導通状態とするまで、フローティングノードFNに保持し続けることができる。
トランジスタ512は、フローティングノードFNの電位にしたがって、ソースとドレインとの間にドレイン電流Idを流す機能を有する。なお、図24(A)に示すメモリセル500の構成で、トランジスタ512のソースとドレインとの間に流れるドレイン電流Idは、ビット線BLと電源線SLとの間に流れる電流である。なおトランジスタ512は、第2のトランジスタともいう。また、トランジスタ512は、nチャネル型のトランジスタとして説明を行う。
トランジスタ513は、読み出しワード線RWLの電位にしたがって、ソースとドレインとの間にドレイン電流Idを流す機能を有する。なお、図24(A)に示すメモリセル500の構成で、トランジスタ513のソースとドレインとの間に流れるドレイン電流Idは、ビット線BLと電源線SLとの間に流れる電流である。なおトランジスタ513は、第3のトランジスタともいう。また、トランジスタ513は、nチャネル型のトランジスタとして説明を行う。
なおトランジスタ512およびトランジスタ513には、しきい値電圧のばらつきの小さいトランジスタが用いられることが好ましい。ここで、しきい値電圧のばらつきが小さいトランジスタとは、トランジスタが同一プロセスで作製される際に、許容されるしきい値電圧の差が20mV以内であるトランジスタのことをいう。具体的には、チャネルが単結晶シリコンであるトランジスタが挙げられる。しきい値電圧のばらつきは小さければ小さいほど好ましいが、前述した単結晶シリコンであるトランジスタであっても、しきい値電圧の差が20mV程度残りうる。
次に、図24(A)に示すメモリセル500の動作を説明する。
図24(B)に示すタイミングチャートは、図24(A)で示した書き込みワード線WWL、読み出しワード線RWL、フローティングノードFN、ビット線BL、および電源線SLに与えられる各信号の変化について示すものである。
図24(B)に示すタイミングチャートでは、初期状態である期間T1、データを読み出すためにビット線BLの充電を行う期間T2、を示している。
図24(B)に示す期間T1では、ビット線BLの放電を行う。このとき、書き込みワード線WWLは、Lレベルの電位が与えられる。また、読み出しワード線RWLは、Lレベルの電位が与えられる。また、フローティングノードFNは、多値のデータに対応する電位が保持される。またビット線BLは、ディスチャージ電圧Vdischargeが与えられる。また、電源線SLは、プリチャージ電圧Vprechargeが与えられる。
なお図24(B)では、多値のデータの一例として、2ビットのデータ、すなわち4値のデータを示している。具体的に図24(B)では、4値のデータ(V00、V01、V10、V11)を示しており、4段階の電位で表すことができる。
ビット線BLは、ディスチャージ電圧Vdischargeが与えられた後、電気的に浮遊状態となる。すなわち、ビット線BLは、電荷の充電または放電により電位の変動が生じる状態となる。この浮遊状態は、ビット線BLに電位を与えるスイッチをオフにすることで実現することができる。
次に、図24(B)に示す期間T2では、データを読み出すためにビット線BLの充電を行う。このとき、書き込みワード線WWLは、前の期間に引き続き、Lレベルの電位が与えられる。また、読み出しワード線RWLは、Hレベルの電位が与えられる。また、フローティングノードFNは、前の期間に引き続き、多値のデータに対応する電位が保持される。またビット線BLは、ディスチャージ電圧VdischargeがフローティングノードFNの電位にしたがって上昇する。また、電源線SLは、前の期間に引き続き、プリチャージ電圧Vprechargeが与えられる。
読み出しワード線RWLの電位の変化にしたがって、トランジスタ513が導通状態となる。そのため、トランジスタ512のソースおよびドレインの一方の電位が下降して、ディスチャージ電圧Vdischargeとなる。
トランジスタ512はnチャネル型のトランジスタであり、トランジスタ512のソースおよびドレインの一方の電位が下降してディスチャージ電圧Vdischargeとなることで、ゲートとソースとの間の電圧(ゲート電圧)の絶対値が大きくなる。このゲート電圧の上昇にしたがってトランジスタ512およびトランジスタ513では、ソースとドレインとの間にドレイン電流Idが流れる。
トランジスタ512およびトランジスタ513にドレイン電流Idが流れることで、電源線SLの電荷がビット線BLに充電される。トランジスタ512のソースの電位、およびビット線BLの電位は、充電により上昇する。トランジスタ512のソースの電位が上昇することで、トランジスタ512のゲート電圧が徐々に小さくなる。
期間T2において、トランジスタ512のゲート電圧がしきい値電圧になると、ドレイン電流Idは流れなくなる。そのため、ビット線BLは、電位の上昇が進行し、トランジスタ512のゲート電圧がしきい値電圧となった時点で充電が完了し、定電位となる。このときのビット線BLの電位は、概ねフローティングノードFNの電位としきい値電圧との差となる。
つまり、充電により変化するビット線BLの電位は、フローティングノードFNの電位の高低を反映した形で得ることができる。この電位の違いを多値のデータの判定に用いることで、メモリセル500に書き込まれた多値のデータを読み出すことができる。
したがって、データを読み出すための信号を多値のデータの数に応じて切り換えることなく、メモリセルから多値のデータの読み出しを行うことができる。
<メモリ2>
以下では、メモリ1と異なる半導体記憶装置の回路構成およびその動作について、図25を参照して説明する。
図25(A)には、本発明の一態様である半導体記憶装置として、記憶装置600を示す。図25(A)に示す記憶装置600は、記憶素子部602と、第1の駆動回路604と、第2の駆動回路606と、を有する。
記憶素子部602には、記憶素子608がマトリクス状に複数配置されている。図25(A)に示す例では、記憶素子部602には記憶素子608が5行6列に配置されている。
第1の駆動回路604および第2の駆動回路606は、記憶素子608への信号の供給を制御し、読み取り時には記憶素子608からの信号を取得する。例えば、第1の駆動回路604をワード線駆動回路とし、第2の駆動回路606をビット線駆動回路とする。ただし、これに限定されず、第1の駆動回路604をビット線駆動回路とし、第2の駆動回路606をワード線駆動回路としてもよい。
なお、第1の駆動回路604および第2の駆動回路606は、それぞれ記憶素子608と配線により電気的に接続されている。
記憶素子608は、揮発性メモリと、不揮発性メモリと、を有する。記憶素子608の具体的な回路構成の一例を図25(B)に示す。図25(B)に示す記憶素子608は、第1の記憶回路610と、第2の記憶回路612と、を有する。
第1の記憶回路610は、第1のトランジスタ614と、第2のトランジスタ616と、第3のトランジスタ618と、第4のトランジスタ620と、第5のトランジスタ622と、第6のトランジスタ624と、を有する。
まず、第1の記憶回路610の構成について説明する。第1のトランジスタ614のソースおよびドレインの一方は、第1の端子630に電気的に接続され、第1のトランジスタ614のゲートは、第2の端子632に電気的に接続されている。第2のトランジスタ616のソースおよびドレインの一方は、高電位電源線Vddに電気的に接続され、第2のトランジスタ616のソースおよびドレインの他方は、第1のトランジスタ614のソースおよびドレインの他方と、第3のトランジスタ618のソースおよびドレインの一方と、第1のデータ保持部640に電気的に接続されている。第3のトランジスタ618のソースおよびドレインの他方は、低電位電源線Vssに電気的に接続されている。第2のトランジスタ616のゲートと第3のトランジスタ618のゲートは、第2のデータ保持部642に電気的に接続されている。
そして、第4のトランジスタ620のソースおよびドレインの一方は、第3の端子634に電気的に接続され、第4のトランジスタ620のゲートは、第4の端子636に電気的に接続されている。第5のトランジスタ622のソースおよびドレインの一方は、高電位電源線Vddに電気的に接続され、第5のトランジスタ622のソースおよびドレインの他方は、第4のトランジスタ620のソースおよびドレインの他方と、第6のトランジスタ624のソースおよびドレインの一方と、第2のデータ保持部642に電気的に接続されている。第6のトランジスタ624のソースおよびドレインの他方は、低電位電源線Vssに電気的に接続されている。第5のトランジスタ622のゲートと第6のトランジスタ624のゲートは、第1のデータ保持部640に電気的に接続されている。
第1のトランジスタ614、第3のトランジスタ618、第4のトランジスタ620および第6のトランジスタ624は、nチャネル型のトランジスタである。
第2のトランジスタ616および第5のトランジスタ622は、pチャネル型のトランジスタである。
第1の端子630は、ビット線に電気的に接続されている。第2の端子632は、第1のワード線に電気的に接続されている。第3の端子634は、反転ビット線に電気的に接続されている。第4の端子636は、第1のワード線に電気的に接続されている。
以上説明した構成を有することで、第1の記憶回路610は、SRAMを構成している。即ち、第1の記憶回路610は、揮発性メモリである。本発明の一態様である記憶装置600では、第1の記憶回路610に設けられた第1のデータ保持部640および第2のデータ保持部642が第2の記憶回路612に電気的に接続されている。
第2の記憶回路612は、第7のトランジスタ626と、第8のトランジスタ628と、を有する。
次に、第2の記憶回路612の構成について説明する。第7のトランジスタ626のソースおよびドレインの一方は、第2のデータ保持部642に電気的に接続され、第7のトランジスタ626のソースおよびドレインの他方は、第1の容量素子648の一方の電極に電気的に接続されている。第1の容量素子648の他方の電極には、低電位電源線Vssが電気的に接続されている。第8のトランジスタ628のソースおよびドレインの一方は、第1のデータ保持部640に電気的に接続され、第8のトランジスタ628のソースおよびドレインの他方は、第2の容量素子650の一方の電極に電気的に接続されている。第2の容量素子650の他方の電極には、低電位電源線Vssが電気的に接続されている。第7のトランジスタ626のゲートと第8のトランジスタ628のゲートは、第5の端子638に電気的に接続されている。
第5の端子638は、第2のワード線に電気的に接続されている。なお、第1のワード線と第2のワード線は、一方の動作にしたがって他方の信号が制御される構成であってもよいし、各々が独立に制御される構成であってもよい。
第7のトランジスタ626と第8のトランジスタ628は、オフ電流の低いトランジスタである。なお、図25(B)に例示する構成では、第7のトランジスタ626と第8のトランジスタ628は、nチャネル型のトランジスタであるが、これに限定されない。
第7のトランジスタ626と第1の容量素子648の一方の電極の間には、第3のデータ保持部644が配置されている。第8のトランジスタ628と第2の容量素子650の一方の電極の間には、第4のデータ保持部646が配置されている。第7のトランジスタ626と第8のトランジスタ628のオフ電流が小さいため、第3のデータ保持部644および第4のデータ保持部646の電荷は、長時間保持される。即ち、第2の記憶回路612は、不揮発性メモリである。
上記したように、第1の記憶回路610は揮発性メモリであり、第2の記憶回路612は不揮発性メモリであり、第1の記憶回路610のデータ保持部である第1のデータ保持部640および第2のデータ保持部642は、第2の記憶回路612のデータ保持部である第3のデータ保持部644および第4のデータ保持部646に、オフ電流の低いトランジスタを介して電気的に接続されている。したがって、オフ電流の低いトランジスタのゲート電位を制御することで、第1の記憶回路610のデータを第2の記憶回路612のデータ保持部に退避させることができる。また、オフ電流の小さいトランジスタを用いることで、記憶素子608への電力の供給がない場合であっても、第3のデータ保持部644および第4のデータ保持部646には、長期にわたって記憶内容を保持することができる。
このように、図25(B)に示す記憶素子608は、揮発性メモリのデータを不揮発性メモリに退避させることができる。
また、第1の記憶回路610はSRAMを構成するため、高速動作が要求される。他方、第2の記憶回路612では電力の供給を停止した後の長期間のデータ保持が要求される。このような構成は、第1の記憶回路610を高速動作可能なトランジスタを用い、第2の記憶回路612をオフ電流の低いトランジスタを用いることによって実現することができる。例えば、第1の記憶回路610にシリコンを用いたトランジスタを利用し、第2の記憶回路612に酸化物半導体膜を用いたトランジスタを利用すればよい。
本発明の一態様である記憶装置600において、第1のトランジスタ614および第4のトランジスタ620をオンして、揮発性メモリである第1の記憶回路610のデータ保持部にデータを書き込む際に、第2の記憶回路612に含まれる第7のトランジスタ626および第8のトランジスタ628がオンしていると、第1の記憶回路610のデータ保持部(第1のデータ保持部640および第2のデータ保持部642)が所定の電位を保持するためには、第2の記憶回路612に含まれる第1の容量素子648および第2の容量素子650に電荷を蓄積すればよい。したがって、第1の記憶回路610のデータ保持部にデータを書き込む際に、第7のトランジスタ626と第8のトランジスタ628がオンしていると、記憶素子608の高速動作を阻害する。また、第2の記憶回路612にシリコンを用いたトランジスタを利用すると、オフ電流を十分に小さくすることが難しく、第2の記憶回路612に長期にわたって記憶内容を保持することが困難である。
そこで、本発明の一態様である半導体記憶装置では、第1の記憶回路610のデータ保持部(揮発性メモリ)にデータを書き込む際には、第1の記憶回路610のデータ保持部と第2の記憶回路612のデータ保持部の間に配されたトランジスタ(即ち、第7のトランジスタ626および第8のトランジスタ628)をオフしておく。これによって、記憶素子608の高速動作を実現する。また、第1の記憶回路610のデータ保持部への書き込みおよび読み出しを行わない際(即ち、第1のトランジスタ614および第4のトランジスタ620がオフの状態)には、第1の記憶回路610のデータ保持部と第2の記憶回路612のデータ保持部の間に配されたトランジスタをオンする。
記憶素子608の揮発性メモリへのデータの書き込みの具体的な動作を以下に示す。まず、オンされている第7のトランジスタ626および第8のトランジスタ628をオフする。次いで、第1のトランジスタ614および第4のトランジスタ620をオンして、第1の記憶回路610のデータ保持部(第1のデータ保持部640および第2のデータ保持部642)に所定の電位を供給した後、第1のトランジスタ614および第4のトランジスタ620をオフする。その後、第7のトランジスタ626および第8のトランジスタ628をオンする。これによって、第2の記憶回路612のデータ保持部には、第1の記憶回路610のデータ保持部に保持されたデータに対応したデータが保持される。
なお、少なくとも第1の記憶回路610のデータ保持部へのデータの書き込みのために、第1のトランジスタ614および第4のトランジスタ620をオンする際には、第2の記憶回路612に含まれる第7のトランジスタ626および第8のトランジスタ628をオフとする。ただし、第1の記憶回路610のデータ保持部からのデータの読み出しのために、第1のトランジスタ614および第4のトランジスタ620をオンする際には、第2の記憶回路612に含まれる第7のトランジスタ626および第8のトランジスタ628はオフとしてもよいし、オンとしてもよい。
また、記憶素子608への電力の供給を停止する場合には、記憶素子608への電力の供給を停止する直前に、第1の記憶回路610のデータ保持部と第2の記憶回路612のデータ保持部の間に配されたトランジスタ(即ち、第7のトランジスタ626および第8のトランジスタ628)をオフして、第2の記憶回路612に保持されたデータを不揮発化する。揮発性メモリへの電力の供給が停止される直前に第7のトランジスタ626と第8のトランジスタ628をオフする手段は、第1の駆動回路604および第2の駆動回路606に搭載してもよいし、これらの駆動回路を制御する別の制御回路に設けられていてもよい。
なお、ここで、第1の記憶回路610のデータ保持部と第2の記憶回路612のデータ保持部の間に配された第7のトランジスタ626および第8のトランジスタ628のオンまたはオフは、記憶素子ごとに行ってもよいし、記憶素子部602をいくつかに区分けしたブロックごとに行ってもよい。
第1の記憶回路610をSRAMとして動作させる際に、第1の記憶回路610のデータ保持部と第2の記憶回路612のデータ保持部の間に配されたトランジスタをオフするため、第2の記憶回路612に含まれる第1の容量素子648および第2の容量素子650への電荷の蓄積を行うことなく第1の記憶回路610にデータを保持することが可能となるため、記憶素子608を高速に動作させることができる。
また、本発明の一態様である記憶装置600では、記憶装置600への電力の供給を停止する(記憶装置600の電源を遮断する)前に、最後にデータを書き換えた記憶素子608が有する、第1の記憶回路610のデータ保持部と第2の記憶回路612のデータ保持部の間に配されたトランジスタのみをオンしてもよい。このとき、最後にデータを書き換えた記憶素子608のアドレスを外部メモリに記憶しておくと、スムーズに退避させることができる。
ただし、本発明の一態様である半導体記憶装置の駆動方法は上記説明に限定されるものではない。
以上説明したように、記憶装置600を高速動作させることができる。また、データの退避を一部の記憶素子のみで行うため、消費電力を抑えることができる。
なお、ここでは、揮発性メモリとしてSRAMを用いたが、これに限定されず、他の揮発性メモリを用いてもよい。
<CPU>
図26は、上述したトランジスタまたは半導体記憶装置を少なくとも一部に用いたCPUの具体的な構成を示すブロック図である。
図26(A)に示すCPUは、基板1190上に、ALU1191(ALU:Arithmetic logic unit、論理演算回路)、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、タイミングコントローラ1195、レジスタ1196、レジスタコントローラ1197、バスインターフェース1198、書き換え可能なROM1199、およびROMインターフェース1189を有している。基板1190は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用いる。ROM1199およびROMインターフェース1189は、別チップに設けてもよい。もちろん、図26(A)に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
バスインターフェース1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクションデコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195に入力される。
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行う。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御するための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行う。
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、およびレジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ1195は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、内部クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
図26(A)に示すCPUでは、レジスタ1196に、メモリセルが設けられている。レジスタ1196のメモリセルとして、上述したトランジスタを用いることができる。
図26(A)に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、ALU1191からの指示に従い、レジスタ1196における保持動作の選択を行う。即ち、レジスタ1196が有するメモリセルにおいて、フリップフロップによるデータの保持を行うか、容量素子によるデータの保持を行うかを、選択する。フリップフロップによるデータの保持が選択されている場合、レジスタ1196内のメモリセルへの、電源電圧の供給が行われる。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えが行われ、レジスタ1196内のメモリセルへの電源電圧の供給を停止することができる。
電源停止に関しては、図26(B)または図26(C)に示すように、メモリセル群と、高電源電位VDDまたは低電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設けることにより行うことができる。以下に図26(B)および図26(C)の回路の説明を行う。
図26(B)および図26(C)は、メモリセルへの電源電位の供給を制御するスイッチング素子に、上述したトランジスタを用いた記憶装置である。
図26(B)に示す記憶装置は、スイッチング素子1141と、メモリセル1142を複数有するメモリセル群1143とを有している。具体的に、各メモリセル1142には、上述したトランジスタを用いることができる。メモリセル群1143が有する各メモリセル1142には、スイッチング素子1141を介して、高電源電位VDDが供給されている。さらに、メモリセル群1143が有する各メモリセル1142には、信号INの電位と、低電源電位VSSの電位が与えられている。
図26(B)では、スイッチング素子1141として、上述したトランジスタを用いており、該トランジスタは、そのゲート電極層に与えられる信号SigAによりスイッチングが制御される。
なお、図26(B)では、スイッチング素子1141がトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、特に限定されず、トランジスタを複数有していてもよい。スイッチング素子1141が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
また、図26(B)では、スイッチング素子1141により、メモリセル群1143が有する各メモリセル1142への、高電源電位VDDの供給が制御されているが、スイッチング素子1141により、低電源電位VSSの供給が制御されていてもよい。
また、図26(C)には、メモリセル群1143が有する各メモリセル1142に、スイッチング素子1141を介して、低電源電位VSSが供給されている、記憶装置の一例を示す。スイッチング素子1141により、メモリセル群1143が有する各メモリセル1142への、低電源電位VSSの供給を制御することができる。
メモリセル群と、高電源電位VDDまたは低電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設け、一時的にCPUの動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合においてもデータを保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。具体的には、例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUの動作を停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
ここでは、CPUを例に挙げて説明したが、DSP(Digital Signal Processor)、カスタムLSI、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のLSIにも応用可能である。
<設置例>
図27(A)において、テレビジョン装置8000は、筐体8001に表示部8002が組み込まれており、表示部8002により映像を表示し、スピーカー部8003から音声を出力することが可能である。
テレビジョン装置8000は、受信機やモデムなどを備えていてもよい。テレビジョン装置8000は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
また、テレビジョン装置8000は、情報通信を行うためのCPUや、メモリを備えていてもよい。テレビジョン装置8000は、上述した表示装置、メモリまたはCPUを用いることが可能である。
図27(A)において、警報装置8100は、住宅用火災警報器であり、検出部と、マイクロコンピュータ8101を有している。マイクロコンピュータ8101には、上述したトランジスタを用いたCPUが含まれる。
図27(A)において、室内機8200および室外機8204を有するエアコンディショナーには、上述したトランジスタを用いたCPUが含まれる。具体的に、室内機8200は、筐体8201、送風口8202、CPU8203等を有する。図27(A)において、CPU8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、CPU8203は室外機8204に設けられていてもよい。または、室内機8200と室外機8204の両方に、CPU8203が設けられていてもよい。上述したトランジスタを用いたCPUが含まれることで、エアコンディショナーを省電力化できる。
図27(A)において、電気冷凍冷蔵庫8300には、上述したトランジスタを用いたCPUが含まれる。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、CPU8304等を有する。図27(A)では、CPU8304が、筐体8301の内部に設けられている。上述したトランジスタを用いたCPUが含まれることで、電気冷凍冷蔵庫8300を省電力化できる。
図27(B)および図27(C)において、電気自動車の例を示す。電気自動車9700には、二次電池9701が搭載されている。二次電池9701の電力は、制御回路9702により出力が調整されて、駆動装置9703に供給される。制御回路9702は、図示しないROM、RAM、CPU等を有する処理装置9704によって制御される。上述したトランジスタを用いたCPUが含まれることで、電気自動車9700を省電力化できる。
駆動装置9703は、直流電動機もしくは交流電動機単体、または電動機と内燃機関と、を組み合わせて構成される。処理装置9704は、電気自動車9700の運転者の操作情報(加速、減速、停止など)や走行時の情報(上り坂や下り坂等の情報、駆動輪に掛かる負荷情報など)の入力情報に基づき、制御回路9702に制御信号を出力する。制御回路9702は、処理装置9704の制御信号により、二次電池9701から供給される電気エネルギーを調整して駆動装置9703の出力を制御する。交流電動機を搭載している場合は、図示していないが、直流を交流に変換するインバータも内蔵される。
なお、本実施の形態は、基本原理の一例について述べたものである。したがって、本実施の形態の一部または全部について、実施の形態の一部また全部と、自由に組み合わせることや、適用することや、置き換えて実施することができる。
本実施例では、各種In−Ga−Zn酸化物膜を成膜した例を示す。
まずは、本実施例で作製した試料について説明する。
また、試料1乃至試料7は、ガラス基板上にスパッタ装置Aを用いて厚さ100nmのIn−Ga−Zn酸化物膜を成膜した試料である。試料1乃至試料7のIn−Ga−Zn酸化物膜は、In−Ga−Zn酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:3:6[原子数比])を用い、ターゲット−基板間距離dを160mmとして成膜した。
試料1は、成膜ガスに酸素およびアルゴンを用い、酸素の割合を10体積%とし、圧力を0.6Paとし、電力密度を1.658W/cm2(AC電源使用)とし、基板温度を170℃とした。また、試料2は、成膜ガスに酸素およびアルゴンを用い、酸素の割合を50体積%とし、圧力を0.6Paとし、電力密度を1.658W/cm2(AC電源使用)とし、基板温度を170℃とした。また、試料3は、成膜ガスの酸素の割合を100体積%とし、圧力を0.6Paとし、電力密度を1.658W/cm2(AC電源使用)とし、基板温度を170℃とした。また、試料4は、成膜ガスの酸素の割合を100体積%とし、圧力を0.3Paとし、電力密度を2.984W/cm2(AC電源使用)とし、基板温度を170℃とした。また、試料5は、成膜ガス中の酸素の割合を100体積%とし、圧力を0.15Paとし、電力密度を1.658W/cm2(AC電源使用)とし、基板温度を170℃とした。また、試料6は、成膜ガス中の酸素の割合を100体積%とし、圧力を0.15Paとし、電力密度を1.658W/cm2(AC電源使用)とし、基板温度を200℃とした。また、試料7は、成膜ガスに酸素およびアルゴンを用い、酸素の割合を50体積%とし、圧力を0.3Paとし、電力密度を1.658W/cm2(AC電源使用)とし、基板温度を170℃とした。
次に、試料8は、ガラス基板上にスパッタ装置Bを用いて厚さ100nmのIn−Ga−Zn酸化物膜を成膜した試料である。試料8のIn−Ga−Zn酸化物膜は、In−Ga−Zn酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:3:6[原子数比])を用い、成膜ガスに酸素およびアルゴンを用い、酸素の割合を33体積%とし、圧力を0.4Pa、電力密度を4.933W/cm2(DC電源使用)、ターゲット−基板間距離dを0.13m、基板温度を200℃として成膜した。
表2に、試料1乃至試料8の成膜条件の一覧を示す。
次に、試料1、試料2および試料3の平面TEM像を400万倍および800万倍にて観察した(図28参照。)。
図28より、試料1、試料2および試料3は、CAAC−OS膜に特徴的な構造を有する領域と、該領域とは異なる構造を有する領域と、を有することがわかった。これは、試料1、試料2および試料3が、比較的高い圧力で成膜されていることで、膜中に柱状酸化亜鉛クラスタが取り込まれたことに起因する可能性がある。
次に、試料が銅をブロックする機能を有するかを確認するため、試料1、試料2または試料3のIn−Ga−Zn酸化物膜上に銅膜を形成した試料を作製した。銅膜の形成後、温度350℃、窒素および酸素が2:8[体積比]の雰囲気で1時間の熱処理を行い、銅の拡散を評価した。
銅の拡散を評価するために、該試料に対して、ガラス基板側から膜をエッチングしながらSIMSを行った。深さに対する銅濃度のプロファイルを図29に示す。なお、図29(A)、図29(B)、図29(C)は、それぞれ試料1、試料2、試料3に対応する。
いずれ試料においても、銅膜からIn−Ga−Zn酸化物膜へ、銅が数十nmの範囲で拡散していることがわかった。したがって、例えば、この条件で銅の拡散をブロックする(1×1018atoms/cm3未満とする)ためには、試料1、試料2および試料3のIn−Ga−Zn酸化物膜を50nm以上の厚さとしなくてはならないことなどが読み取れる。
このように、試料1、試料2および試料3が、銅の拡散をブロックする能力が低い理由としては、比較的高い圧力で成膜されていることで、膜中に柱状酸化亜鉛クラスタが取り込まれたことに起因する可能性がある。
次に、試料2について、微小な領域における構造解析を行った。構造解析は、図30に示す断面TEM像において、破線矢印に沿って一定速度で測定領域を変えながら透過電子回折パターンを取得することで行った。なお、試料2は、電子が透過する厚さ(50nm程度)に薄片化した。測定開始時間を0秒(sec)とし、測定終了時間を96秒とした。透過電子回折パターンの測定には、実施の形態で示した装置を用いた。また、電子線プローブ径を1nm、加速電圧を200kV、カメラ長を0.4mとした。
各時間における透過電子回折パターンを図31に示す。図31より、例えば、12秒および88秒における透過電子回折パターンでは、少なくとも二種類の構造を示す透過電子回折パターンが観測された。また、31秒、39秒、43秒、53秒、55秒、70秒、76秒および96秒における透過電子回折パターンでは、CAAC−OS膜に特徴的な構造とは異なる構造を示す透過電子回折パターンが観測された。
したがって、試料2は、測定範囲(約700nm)において、結晶粒界を2箇所有し、かつCAAC−OS膜に特徴的な構造と異なる構造を有する領域を8箇所有することがわかった。
先の実施の形態で記載したように、結晶粒界、およびCAAC−OS膜に特徴的な構造と異なる構造を有する領域を形成する一因は、成膜時の柱状酸化亜鉛クラスタにあると考えられる。即ち、成膜時の柱状酸化亜鉛クラスタを効果的に排出することで銅をブロックするIn−Ga−Zn酸化物膜を成膜できる可能性がある。
次に、試料1、試料2および試料3と比べて、低い圧力で成膜された試料7および試料8について、微小な領域における構造解析を行った。試料7および試料8は、試料1、試料2および試料3と比べて、膜中に柱状酸化亜鉛クラスタが取り込まれにくいと考えられる。
試料7の構造解析は、図32に示す断面TEM像において、破線矢印に沿って一定速度で測定領域を変えながら透過電子回折パターンを取得することで行った。なお、試料7は、電子が透過する厚さ(50nm程度)に薄片化した。測定開始時間を0秒とし、測定終了時間を92秒とした。透過電子回折パターンの測定には、実施の形態に示した装置を用いた。また、電子線プローブ径を1nm、加速電圧を200kV、カメラ長を0.4mとした。
各時間における透過電子回折パターンを図33に示す。図33より、透過電子回折パターンでは、少なくとも二種類の構造を示す透過電子回折パターンは観測されなかった。また、11.5秒および34.5秒における透過電子回折パターンでは、CAAC−OS膜に特徴的な構造とは異なる構造を示す透過電子回折パターンが観測された。
したがって、試料7は、測定範囲(約700nm)において、明確な結晶粒界を有さず、かつCAAC−OS膜に特徴的な構造と異なる構造を有する領域を2箇所有することがわかった。試料7は、結晶粒界、およびCAAC−OS膜に特徴的な構造と異なる構造を有する領域が、試料2と比べて少ないことがわかった。
試料8の構造解析は、図34に示す断面TEM像において、破線矢印に沿って一定速度で測定領域を変えながら透過電子回折パターンを取得することで行った。なお、試料8は、電子が透過する厚さ(50nm程度)に薄片化した。測定開始時間を0秒とし、測定終了時間を101秒とした。透過電子回折パターンの測定には、実施の形態で示した装置を用いた。また、電子線プローブ径を1nm、加速電圧を200kV、カメラ長を0.4mとした。
各時間における透過電子回折パターンを図35に示す。図35より、例えば、65秒における透過電子回折パターンでは、少なくとも二種類の構造を示す透過電子回折パターンが観測された。また、36秒および53秒における透過電子回折パターンでは、CAAC−OS膜に特徴的な構造とは異なる構造を示す透過電子回折パターンが観測された。
したがって、試料8は、測定範囲(約700nm)において、結晶粒界を1箇所有し、かつCAAC−OS膜に特徴的な構造と異なる構造を有する領域を2箇所有することがわかった。試料8は、結晶粒界、およびCAAC−OS膜に特徴的な構造と異なる構造を有する領域が、試料2と比べて少ないことがわかった。
試料7および試料8が、試料1、試料2および試料3と比べて、結晶粒界などの欠陥が低減されている理由としては、膜中に柱状酸化亜鉛クラスタが取り込まれにくい成膜条件であるためと考えられる。
次に、試料8を含む以下の試料について、銅の拡散を評価した。
まずは、試料4、試料5、試料6または試料8のIn−Ga−Zn酸化物膜上に銅膜を形成した試料を作製した。銅膜の形成後、温度350℃、窒素および酸素が2:8[体積比]の雰囲気で1時間の熱処理を行い、銅の拡散を評価した。なお、試料4、試料5、試料6および試料8は、いずれも試料2と比べて低い圧力で成膜しており、柱状酸化亜鉛クラスタの取り込みによる欠陥の生成が起こりにくい条件と考えられる。
銅の拡散を評価するために、該試料に対して、ガラス基板側から膜をエッチングしながらSIMSを行った。深さに対する銅濃度のプロファイルを図36に示す。なお、図36(A)、図36(B)、図36(C)、図36(D)は、それぞれ試料4、試料5、試料6、試料8に対応する。
いずれ試料においても、図29と比較して銅の拡散が抑えられていることがわかった。したがって、例えば、この条件で銅の拡散をブロックする(1×1018atoms/cm3未満とする)ためには、試料4、試料5、試料6、試料8のIn−Ga−Zn酸化物膜を20nm以上の厚さとすればよいことなどが読み取れる。
したがって、試料8のように結晶粒界などの欠陥の低減されたIn−Ga−Zn酸化物膜は、銅の拡散のブロックする機能を有することがわかる。また、欠陥が低減されているため、トランジスタの半導体膜に用いたときに、優れた電気特性と高い信頼性を実現できることが示唆される。