JP6421688B2 - ハット形鋼矢板の製造方法及び粗圧延ロール - Google Patents

ハット形鋼矢板の製造方法及び粗圧延ロール Download PDF

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Description

本発明は、例えばハット形鋼矢板の製造方法及び粗圧延ロールに関する。
従来より、ハット形形状の両端に継手を有する鋼矢板の製造は孔型圧延法によって行われている。この孔型圧延法の一般的な工程としては、先ず加熱炉において所定の温度に加熱した素材を、孔型を備えた粗圧延機、中間圧延機及び仕上圧延機によって順に圧延することが知られている。
上述した一般的な孔型圧延法によれば、現状、国内で製造されている鋼矢板製品については、矩形断面の素材から製造することが可能である。具体的には、例えば壁幅1m当たりの断面二次モーメントが1.0(10cm/m)であり10H製品と呼ばれるハット形鋼矢板製品や、壁幅1m当たりの断面二次モーメントが2.5(10cm/m)であり25H製品と呼ばれるハット形鋼矢板製品は、従来より知られる一般的な孔型圧延法にて製造される。
ハット形鋼矢板の断面の形状・寸法については、その構造性、施工性や経済性を向上させるために種々の工夫が取り入れられている。例えば、特許文献1には、施工性向上の観点から施工時の打設抵抗を低減するため、図14に示すようなハット形鋼矢板101のウェブ103(特許文献1においては「中央フランジ部」と呼称)とフランジ104、105(特許文献1においては「ウェブ部」と呼称)のなす角度αを好適に設計し、特にフランジ104、105の全体(特許文献1においては「ウェブ部全体」と呼称)を緩傾斜部とした断面にすべきことが開示されている。また、ハット形鋼矢板の製造技術については、継手形状を良好とするため、特許文献2に、図15に示すように粗圧延段階において粗圧延孔型(特許文献2においては「延伸用孔型」と呼称)に突条形成溝4a、4bを設け、これにより継手成形のための突条を形成しておき、有効幅の広い継手を造形する技術が開示されている。
なお、特許文献1はハット形鋼矢板製品の断面の寸法・形状に関する技術であり、製品の各部位の名称はハット形鋼矢板の需要家の呼称で記載している。一方、本願発明はハット形鋼矢板の製造技術に関するものであることから、本明細書においては図14に示すハット形鋼矢板101の断面の各部位に付した番号について、ハット形鋼矢板の製造現場での呼称に従って、103を「ウェブ」、106、107を「腕」、104、105を「フランジ」と呼称する。また、特許文献2では、粗圧延孔型は上ロールに溝ロール、下ロールに突起ロールを配置した形式で記載されているが、後の説明の便宜上、図15では上ロールに突起ロール、下ロールに溝ロールを配置した形式で記載している。なお、両者の間に圧延造形上の本質的な差異はない。
特許第3488230号 特許第4238701号
近年では、鋼矢板壁の構造物としての信頼性の確保、さらに鋼矢板を打設するにあたり、生産性の向上や、コストの効率的な削減が求められているといった観点から、構造性、施工性や経済性に優れた、例えば上記特許文献1に記載されたようなハット形鋼矢板の製造が望まれている。しかしながら、上記特許文献2に記載されているような従来の鋼矢板の製造方法においては、以下のような問題が存在している。
1)粗圧延初期に偏平な矩形断面から略ハット形断面を形成する途中過程で、一時的に被圧延材の長手方向先後端部ではそれ以外の部位よりも局所的に断面の高さが大きくなる。このため、腕を下に、ウェブを上にした逆U姿勢で圧延した場合には、局所的に長手方向先後端部が上方へ反って危険であり、逆に腕を上に、ウェブを下にしたU姿勢で圧延した場合には、長手方向先後端部がローラガング(ローラテーブル)へ衝突しながら通材するため、ローラガングやベアリング(ローラベアリング)等の装置寿命の低下や圧延事故の発生等が懸念される。
2)被圧延材の長手方向先後端のフランジ対応部が長手方向に突出し、いわゆるフィッシュテールと呼ばれる形状不良が発生する。突出したフランジ対応部がローラガングやガイドに突っ掛かって圧延事故を起こすことが懸念される。
3)被圧延材の長手方向先後端域において局所的に爪肉量が不足し、後段の圧延において継手開口部の寸法形状不良等が発生してしまう恐れがある。
このような問題点に対し、従来は被圧延材の長手方向先後端部を不要な部位(いわゆるクロップ部)として切断して対応していたが、このような対応は生産性の低下の要因となっており、抜本的な製造工程の改善が望まれていた。
上記事情に鑑み、本発明の目的は、鋼矢板の製造において、粗圧延工程から仕上圧延工程に至るまでの被圧延材による圧延事故等を回避し、更には被圧延材の長手方向先後端部の形状不良や継手開口部の寸法形状不良等を回避し、生産性の向上が実現されるようなハット形鋼矢板の圧延設備及び製造方法を提供することにある。
前記の目的を達成するため、本発明によれば、矩形断面の素材を圧下してハット形鋼矢板を製造する製造方法であって、粗圧延工程、中間圧延工程、仕上圧延工程を有し、前記粗圧延工程は、前記素材を矩形断面形状と略ハット形断面形状との間の中間形状に造形する1段階目の孔型と、該中間形状から略ハット形断面形状に造形する2段階目の孔型によって行われ、前記1段階目の孔型の溝ロールは、素材のウェブに対向するウェブ対向部と、素材のフランジに対向するフランジ対向部と、素材の腕に対向する腕対向部からなり、当該1段階目の孔型において、前記フランジ対向部は、前記ウェブ対向部に接続する緩傾斜のフランジ対向部分と、前記腕対向部に接続する急傾斜のフランジ対向部分から構成され、前記2段階目の孔型の突起ロールならびに溝ロールは、素材のウェブに対向するウェブ対向部と、素材のフランジに対向するフランジ対向部と、素材の腕に対向する腕対向部からなり、当該2段階目の孔型において、前記フランジ対向部は、前記ウェブ対向部に接続する急傾斜のフランジ対向部分と、前記腕対向部に接続する急傾斜のフランジ対向部分と、当該2つの急傾斜のフランジ対向部分の間に位置する緩傾斜のフランジ対向部分から構成されることを特徴とする、ハット形鋼矢板の製造方法が提供される。
前記1段階目の孔型寸法と前記2段階目の孔型寸法とは、以下の式(1)〜(4)を満たしても良い。
F1>F0 ・・・(1)
D1>D0 ・・・(2)
d1≦d0 ・・・(3)
b1≦b0 ・・・(4)
但し、F0:1段階目の孔型のフランジ投影幅、F1:2段階目の孔型のフランジ投影幅、D0:1段階目の孔型の溝深さ、D1:2段階目の孔型の溝深さ、d0:1段階目の急傾斜のフランジ対向部分の深さ、d1:2段階目の孔型の腕対向部に接続する急傾斜のフランジ対向部分の深さ、b0:1段階目の孔型の左右の緩傾斜のフランジ対向部分の端部間距離、b1:2段階目の孔型の左右の緩傾斜のフランジ対向部分の端部間距離である。
前記1段階目の孔型及び前記2段階目の孔型において、前記急傾斜のフランジ対向部分と前記緩傾斜のフランジ対向部分とがなす角度は鈍角に構成されても良い。
前記1段階目の孔型における前記緩傾斜のフランジ対向部分とロール軸とのなす角度は、前記2段階目の孔型における前記緩傾斜のフランジ対向部分とロール軸とのなす角度と等しく構成されても良い。
前記2段階目の孔型において、最終パスにおける急傾斜のフランジ対向部分の上下ロール隙と、緩傾斜のフランジ対向部分の上下ロール隙は等しく構成されても良い。
また、別な観点からの本発明によれば、上記記載の製造方法で用いられる粗圧延ロールであって、素材を矩形断面形状と略ハット形断面形状との間の中間形状に造形する1段階目の上下一対の孔型ロールと、該中間形状から略ハット形断面形状に造形する2段階目の上下一対の孔型ロールから構成され、前記1段階目の孔型の溝ロールは、素材のウェブに対向するウェブ対向部と、素材のフランジに対向するフランジ対向部と、素材の腕に対向する腕対向部からなり、当該1段階目の孔型において、前記フランジ対向部は、前記ウェブ対向部に接続する緩傾斜のフランジ対向部分と、前記腕対向部に接続する急傾斜のフランジ対向部分から構成され、前記2段階目の孔型の突起ロールならびに溝ロールは、素材のウェブに対向するウェブ対向部と、素材のフランジに対向するフランジ対向部と、素材の腕に対向する腕対向部からなり、当該2段階目の孔型において、前記フランジ対向部は、前記ウェブ対向部に接続する急傾斜のフランジ対向部分と、前記腕対向部に接続する急傾斜のフランジ対向部分と、当該2つの急傾斜のフランジ対向部分の間に位置する緩傾斜のフランジ対向部分から構成されることを特徴とする、粗圧延ロールが提供される。
前記1段階目の孔型寸法と前記2段階目の孔型寸法とは、以下の式(1)〜(4)を満たしても良い。
F1>F0 ・・・(1)
D1>D0 ・・・(2)
d1≦d0 ・・・(3)
b1≦b0 ・・・(4)
但し、F0:1段階目の孔型のフランジ投影幅、F1:2段階目の孔型のフランジ投影幅、D0:1段階目の孔型の溝深さ、D1:2段階目の孔型の溝深さ、d0:1段階目の急傾斜のフランジ対向部分の深さ、d1:2段階目の孔型の腕対向部に接続する急傾斜のフランジ対向部分の深さ、b0:1段階目の孔型の左右の緩傾斜のフランジ対向部分の端部間距離、b1:2段階目の孔型の左右の緩傾斜のフランジ対向部分の端部間距離である。
前記1段階目の孔型及び前記2段階目の孔型において、前記急傾斜のフランジ対向部分と前記緩傾斜のフランジ対向部分とがなす角度は鈍角に構成されても良い。
前記1段階目の孔型における前記緩傾斜のフランジ対向部分とロール軸とのなす角度は、前記2段階目の孔型における前記緩傾斜のフランジ対向部分とロール軸とのなす角度と等しく構成されても良い。
前記2段階目の孔型において、最終パスにおける急傾斜のフランジ対向部分の上下ロール隙と、緩傾斜のフランジ対向部分の上下ロール隙は等しく構成されても良い。
本発明によれば、鋼矢板の製造において、粗圧延工程から仕上圧延工程に至るまでの被圧延材による圧延事故等を回避し、更には被圧延材の長手方向先後端部の形状不良や継手開口部の寸法形状不良等を回避し、生産性の向上が実現される。
本発明の実施の形態にかかる圧延ラインの概略説明図である。 第1孔型の孔型形状についての概略的な説明図である。 第2孔型の孔型形状についての概略的な説明図である。 第3孔型の孔型形状についての概略的な説明図である。 第4孔型の孔型形状についての概略的な説明図である。 第5孔型の孔型形状についての概略的な説明図である。 第6孔型の孔型形状についての概略的な説明図である。 第7孔型の孔型形状についての概略的な説明図である。 第8孔型の孔型形状についての概略的な説明図である。 従来の一般的な粗圧延孔型による矩形断面から略ハット形断面を造形する際の変形様式である剪断変形と曲げ変形に関する概略説明図である。 第2孔型での素材の造形の様子(造形後)を示す概略説明図である。 第3孔型での素材の造形の様子(造形前)を示す概略説明図である。 第4孔型に第3孔型で造形された被圧延材(略ハット形断面)が導入されるときの様子を示す概略説明図である。 ハット形鋼矢板の製品断面を示す説明図である。 特許文献2に記載されたハット形鋼矢板の粗圧延法を示し、粗圧延孔型により矩形断面形状から略ハット形断面形状を造形する初期パスでの圧下状態を示す説明図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
また、本実施の形態では、説明の都合上、矩形断面を有する材料を素材Bと呼称し、素材Bを圧下して略ハット形断面形状とした被圧延材を被圧延材Aと呼称する。即ち、略ハット形断面形状にて圧延ラインL上を通材される鋼材を総称して被圧延材Aと呼称し、また、被圧延材Aの各部位については以下に記述する別途異なる呼称にて記載するものとする。ここで、被圧延材Aはハット形鋼矢板製品のウェブ103に対応するウェブ対応部3と、ウェブ対応部3の両端部それぞれに接続されるフランジ対応部4、5と、フランジ対応部4、5のそれぞれの先端に形成される腕対応部6、7と、腕対応部6、7の先端に形成される継手対応部8、9から構成されている。また、継手対応部8、9の先端には爪対応部8a、9aが形成されている。
図1は、本発明の実施の形態にかかる圧延設備であるハット形鋼矢板を製造する圧延ラインLと、圧延ラインLに備えられる圧延機についての説明図である。図1に示すように、圧延ラインLには、粗圧延機(BD)11、第1中間圧延機(R1)13、第2中間圧延機(R2)14、仕上圧延機(F)19が順に配置されている。圧延ラインLは複数のラインL1〜L3によって構成されており、ラインL1とラインL2が隣接し、ラインL2とラインL3が隣接している。それぞれのラインL1〜L3は、互いの一部が重なるようにして直列的に連結しており、被圧延材AはL1からL2、あるいはL2からL3に、その幅方向に平行移動して圧延ラインLを進む構成となっている。
また、図1に示すように、ラインL1には粗圧延機11が配置され、ラインL2には第1中間圧延機13が配置され、ラインL3には第2中間圧延機14及び仕上圧延機19が配置されている。各ラインL1〜L3にはそれぞれ別の被圧延材Aを載せて圧延を行うことが可能であり、圧延ラインL上において複数の被圧延材Aの圧延を同時に並行して実施することが可能な構成となっている。
図1に示す圧延ラインLにおいては、図示しない加熱炉において加熱された矩形断面形状の素材(素材B、後の被圧延材A)が粗圧延機11〜仕上圧延機19において順次圧延され、最終製品であるハット形鋼矢板となる。即ち、素材B(被圧延材A)に対して粗圧延工程、中間圧延工程、仕上圧延工程をこの順に行うことで最終製品が製造される。
以下では、圧延ラインLに配置される粗圧延機11、第1中間圧延機13、第2中間圧延機14、仕上圧延機19(以下、粗圧延機11〜仕上圧延機19といったように複数の圧延機を略して記載する)に刻設される孔型の構成について、圧延ラインLの上流から順を追って図面を参照して簡単に説明する。なお、上記粗圧延機11、第1中間圧延機13、第2中間圧延機14、仕上圧延機19は従来から用いられている一般的な設備であるため、本明細書における以下の記述では孔型構成の説明に注視し、各圧延機の詳細な設備構成等についての説明は省略する。
また、図2〜図9を参照して以下に説明する孔型は、粗圧延機11〜仕上圧延機19の各圧延機に刻設されるものであるが、以下に説明する各孔型をどの圧延機に刻設するかは、通常は生産性(能率・歩留)や作業性を考慮した上で、設備状況や製品寸法等の条件によって適宜変更可能なものである。そこで、本実施の形態ではこれらの孔型を第1孔型K1〜第8孔型K8と呼称し、それぞれの孔型は圧延ラインL上流側から順に刻設されていれば良いものとして説明する。なお、図3〜図9には、参考のためにそれぞれの孔型にて圧下・造形される素材B、被圧延材Aの形状を一点鎖線にて図示している。
但し、以下に説明する本実施の形態に係る第1孔型K1〜第8孔型K8の構成は、図示の形態に限られるものではなく、例えば、各種孔型の修正孔型の増減配列については設備状況や製品寸法等の条件に応じて適宜変更可能である。
図2は、第1孔型K1の孔型形状についての概略的な説明図である。図2に示すように、第1孔型K1は上孔型ロール20aと下孔型ロール20bから構成されるボックス孔型であり、該ボックス孔型の孔底は所定のテーパー形状となっている。この第1孔型K1により、矩形断面形状の素材Bの幅方向端部の短辺部にテーパー形状を付与し、かつ長手方向均一な幅寸法にするために、図示しない矩形断面形状の素材Bを立てた状態(鋼矢板の幅方向を鉛直方向とした状態)で幅方向に軽く圧下(所謂エッジング圧延)が施される。なお、矩形断面形状の素材Bの幅方向端部にテーパー形状を付与するのは、後述する第2孔型K2の孔型形状に好適に噛み込ませ、所望の圧下を安定して行い、両端部に所望の肉量を有する爪を形成するためである。この図2に示す第1孔型K1は所謂エッジング孔型と呼称される。
また、図3は、第2孔型K2の孔型形状についての概略的な説明図である。図3に示すように、第2孔型K2は突起ロールとしての上孔型ロール30aと、溝ロールとしての下孔型ロール30bから構成され、この第2孔型K2によって、上記第1孔型K1においてエッジング圧延された矩形断面形状の素材B(後の被圧延材A)全体に対して圧下が行われる。ここで、上記第1孔型K1における圧下では素材Bを立てた状態とされるが、その後、素材Bは90°あるいは270°回転させられ、第2孔型K2では素材Bの幅方向を水平方向とした状態(鋼矢板の幅方向を水平方向とした状態)で圧下が行われ、断面が矩形断面形状と略ハット形断面形状との間の中間形状とする圧延造形が行われる。
上孔型ロール30aは、素材Bのウェブ対応部3の上面に対向するウェブ対向部32と、フランジ対応部4、5の上面に対向するフランジ対向部34、35と、腕対応部6、7の上面に対向する腕対向部37、38から構成されている。
一方、下孔型ロール30bは、素材Bのウェブ対応部3の下面に対向するウェブ対向部42と、フランジ対応部4、5の下面に対向するフランジ対向部44、45と、腕対応部6、7の下面に対向する腕対向部47、48から構成されている。更に、フランジ対向部44、45は傾斜の異なる複数の部位から構成されており、ウェブ対向部42に接続する緩傾斜のフランジ対向部分44a、45aと、腕対向部47、48に接続する急傾斜のフランジ対向部分44b、45bから構成されている。
ここで、図3に示すように、第2孔型K2の各寸法を、全体の溝深さD0、急傾斜のフランジ対向部分44b、45bの深さd0、フランジ投影幅F0、左右の緩傾斜のフランジ対向部分44a、45aの端部間距離(左右間距離)b0、緩傾斜のフランジ対向部分44a、45aの傾斜角度(ロール軸とのなす角度)α0とする。
また、図4は、第3孔型K3の孔型形状についての概略的な説明図である。図4に示すように、第3孔型K3は突起ロールとしての上孔型ロール50aと、溝ロールとしての下孔型ロール50bから構成され、この第3孔型K3では、第2孔型K2において造形された素材B(後の被圧延材A)に対し更なる圧下が加えられ、断面形状が中間形状(矩形断面形状と略ハット形断面形状との中間形状)から略ハット形断面形状となるような圧下が素材B全体に対して行われる。
なお、ここで略ハット形断面形状とは、素材Bにおいてウェブに対応する部分(ウェブ対応部3)、フランジに対応する部分(フランジ対応部4、5)、腕に対応する部分(腕対応部6、7)それぞれの境界が明確である程度に圧下された断面形状を言い、必ずしも継手形状等の細かな形状まで成形された断面形状を示すものではない。
上孔型ロール50aは、素材Bのウェブ対応部3の上面に対向するウェブ対向部52と、フランジ対応部4、5の上面に対向するフランジ対向部54、55と、腕対応部6、7の上面に対向する腕対向部57、58から構成されている。更に、フランジ対向部54、55は3箇所の部位によって構成され、即ち、ウェブ対向部52に接続する急傾斜のフランジ対向部分54a、55aと、腕対向部57、58に接続する急傾斜のフランジ対向部分54c、55cと、それらの中間に位置する緩傾斜のフランジ対向部分54b、55bから構成されている。
また、下孔型ロール50bは、素材Bのウェブ対応部3の下面に対向するウェブ対向部62と、フランジ対応部4、5の下面に対向するフランジ対向部64、65と、腕対応部6、7の下面に対向する腕対向部67、68から構成されている。更に、フランジ対向部64、65は3箇所の部位によって構成され、即ち、ウェブ対向部62に接続する急傾斜のフランジ対向部分64a、65aと、腕対向部67、68に接続する急傾斜のフランジ対向部分64c、65cと、それらの間(略中間位置)に位置する緩傾斜のフランジ対向部分64b、65bから構成されている。
ここで、図4に示すように、第3孔型K3の各寸法を、全体の溝深さD1、腕対向部67、68に接続する急傾斜のフランジ対向部分64c、65cの深さd1、フランジ投影幅F1とする。
また、緩傾斜のフランジ対向部分64b、65bの端部間距離(左右間距離)b1、緩傾斜のフランジ対向部分64b、65bの傾斜角度(ロール軸とのなす角度)α1とする。
また、この第3孔型K3での圧延の最終パスにおける急傾斜のフランジ対向部分のロール隙をtf、緩傾斜のフランジ対向部分のロール隙をtsとする。
図5は、第4孔型K4の孔型形状についての概略的な説明図である。図5に示すように、第4孔型K4は突起ロールとしての上孔型ロール70aと溝ロールとしての下孔型ロール70bから構成され、この第4孔型K4によって爪対応部が形成されると共に、被圧延材A全体に対して厚み圧下ならびに成形(厚み延伸圧延)が行われ、よりハット形鋼矢板製品に近い形状とされる。
図6は、第5孔型K5の孔型形状についての概略的な説明図である。図6に示すように、第5孔型K5は突起ロールとしての上孔型ロール80aと溝ロールとしての下孔型ロール80bから構成され、この第5孔型K5によって被圧延材A全体に対して厚み圧下ならびに成形が行われる。具体的には、爪対応部8a、9aの高さ(図中、上下方向の高さh1)を調整して2つの爪対応部8a、9aの高さを揃える爪高さ成形と、被圧延材A全体の厚み圧下が同時に行われる。なお、この第5孔型K5のような爪対応部8a、9aの高さを揃える成形は爪成形工程と呼称され、爪成形工程を行う孔型は爪成形孔型と呼称される。
図7は、第6孔型K6の孔型形状についての概略的な説明図である。図7に示すように、第6孔型K6は突起ロールとしての上孔型ロール90aと溝ロールとしての下孔型ロール90bから構成され、この第6孔型K6によって被圧延材A全体に対して厚み圧下ならびに成形(厚み延伸圧延)が行われる。
図8は、第7孔型K7の孔型形状についての概略的な説明図である。図8に示すように、第7孔型K7は突起ロールとしての上孔型ロール100aと溝ロールとしての下孔型ロール100bから構成され、この第7孔型K7によって被圧延材A全体に対して厚み圧下ならびに成形が行われ、特に、爪対応部8a、9aの高さ(図中、上下方向の高さh2)を調整して2つの爪対応部8a、9aの高さを揃える爪高さ成形が行われる。但し、第7孔型K7では、被圧延材A全体の厚み圧下を積極的に行う第6孔型K6に比べ厚み圧下量は小さい。
図9は、第8孔型K8の孔型形状についての概略的な説明図である。図9に示すように、第8孔型K8は突起ロールとしての上孔型ロール110aと溝ロールとしての下孔型ロール110bから構成され、この第8孔型K8では、被圧延材Aの継手対応部8、9の曲げ成形と、軽圧下圧延による被圧延材A全体の整形が行われる。具体的には、爪対応部8a、9aを含む継手対応部8、9全体を製品の継手形状となるように曲げる継手成形が行われる。これにより、第8孔型K8では、ハット形鋼矢板製品の形状まで被圧延材Aが成形されることとなる。なお、この第8孔型K8のような継手対応部8、9全体を曲げ成形する孔型は仕上孔型と呼称される。
以上、図2〜図9を参照して第1孔型K1〜第8孔型K8の孔型形状とその機能について説明した。上述したように、ハット形鋼矢板の孔型圧延法は粗圧延工程、中間圧延工程、仕上圧延工程からなり、例えば第1孔型K1〜第7孔型K7までの孔型において粗圧延工程及び中間圧延工程が順次行われ、第8孔型K8において仕上圧延工程が行われる。ここで、第4孔型K4〜第8孔型K8の孔型形状はいずれも略ハット形断面形状であるが、後段の孔型へいくほど製品形状に近い形状にて刻設されている。即ち、最終工程である仕上圧延が行われる第8孔型K8の形状は、略ハット形鋼矢板製品形状となる。
本実施の形態では、圧延ラインLには、粗圧延機(BD)11、第1中間圧延機(R1)13、第2中間圧延機(R2)14、仕上圧延機(F)19が順に配置されているものとしているが、上記第1孔型K1〜第8孔型K8は各圧延機に任意の構成にて分散して刻設される。一例としては、粗圧延機11に第1孔型K1〜第3孔型K3が刻設され、第1中間圧延機13に第4孔型K4及び第5孔型K5が刻設され、第2中間圧延機14に第6孔型K6及び第7孔型K7が刻設され、仕上圧延機19に第8孔型K8が刻設されるといった構成が挙げられる。ただし、本発明における孔型構成はこのような構成に限定されるものではない。
本発明者らは、従来、矩形断面形状の素材Bから略ハット形断面形状を造形するための粗圧延工程(上記第2孔型K2、第3孔型K3での造形工程に相当)において、以下のような問題点があることに鑑み、その問題点に関する原因について鋭意検討を行った。
1)粗圧延初期に偏平な矩形断面から略ハット形断面を形成する途中過程で、一時的に被圧延材の長手方向先後端部ではそれ以外の部位よりも局所的に断面の高さが大きくなる。このため、腕を下に、ウェブを上にした逆U型姿勢で圧延した場合には局所的に長手方向先後端部が上方へ反って危険であり、逆に腕を上に、ウェブを下にしたU姿勢で圧延した場合には長手方向先後端部がローラガング(ローラテーブル)へ衝突しながら通材するため、ローラガングやベアリング(ローラベアリング)等の装置寿命の低下や圧延事故の発生等が懸念される。
2)被圧延材の長手方向先後端のフランジ対応部が長手方向に突出し、いわゆるフィッシュテールと呼ばれる形状不良が発生する。突出したフランジ対応部がローラガングやガイドに突っ掛かって圧延事故を起こすことが懸念される。
3)被圧延材の長手方向先後端域において局所的に爪肉量が不足し、後段の圧延において継手開口部の寸法形状不良等が発生してしまう恐れがある。
本発明者らの検討によれば、粗圧延工程における素材Bの変形は剪断変形と曲げ変形が混在した形の変形となっている。図10は剪断変形と曲げ変形に関する概略説明図であり、図15にしめすような従来の粗圧延工程において突起ロールである上孔型ロールと、溝ロールである下孔型ロールとの間における素材Bの変形の様子を模式的に図示したものである。図10(a)は剪断変形を示し、図10(b)は曲げ変形を示している。
素材Bの長手方向先後端部は、片側が周囲のメタルの拘束のない自由端であり、周囲のメタルによる拘束が弱いため、図10(b)に示す曲げ変形が特に優勢となる。曲げ変形が優勢な長手方向先後端部では、図10(b)に示すように、剪断変形が優勢な長手方向の他の部位よりも早くに溝ロール(下孔型ロール)にメタルが充満するため、特にウェブに相当する部位が局所的に下方に変形してしまう。その結果、図10のように腕を上に、ウェブを下にしたU姿勢で圧延した場合には、素材Bの長手方向先後端部がローラガングへ衝突しながら通材することになり、通材不良や装置寿命の低下、圧延事故等が発生する恐れがある。また、腕を下に、ウェブを上にした逆U姿勢で圧延した場合には、局所的に長手方向先後端部が上方へ反って危険である。
また、曲げ変形では、矩形断面形状である素材Bの板厚中心線(図10(b)において一点鎖線で示す)の長さは変化しないため、板厚中心線長さは略ハット形断面として必要な線長まで達しない。このため、溝ロール(下孔型ロール)の両端から素材B端部が離間し、将来鋼矢板の継手部を構成する爪の肉量(メタル量)が不足し、長手方向先後端部で局所的な継手開口部の形状不良等が発生してしまう恐れがある。
更には、曲げ変形では図10(b)に示すように、ウェブ及び腕に相当する部位に対する圧下がまだ始まっていない段階で、既にフランジに相当する部位の圧下が始まっている。即ち、フランジに相当する部位の圧下が早まるため、素材Bの長手方向先後端部ではフランジ対応部が突出し、いわゆるフィッシュテールと呼ばれる形状不良が発生する。
そこで、本実施の形態に係るハット形鋼矢板の製造方法によれば、粗圧延工程での素材Bの造形を、図3に示す第2孔型K2と図4に示す第3孔型K3の2段階にて実施し、上記問題点を回避するものとしている。
上述したように、素材Bの長手方向先後端部での問題点は、長手方向先後端部において曲げ変形が優勢となってしまうことに起因している。即ち、粗圧延工程における曲げ変形を抑制し、剪断変形を促進することで上記問題点は回避される。
ここで、図10に示すような従来の一般的な粗圧延孔型のフランジ投影幅をF、溝深さをDとした場合に、図3の第2孔型K2に示すフランジ投影幅F0を従来孔型のフランジ投影幅Fよりも小さい値とし(即ち、F0<F)、溝深さD0を従来孔型の溝深さDより小さい値とする(即ち、D0<D)。なお、上記フランジ投影幅F、溝深さDは、所望する略ハット形断面材をただ一つの孔型で造形しようとした場合には必須な寸法である。
素材Bの粗圧延においては、フランジ投影幅が大きい程、当該素材Bに対して大きな曲げモーメントが作用し、曲げ変形が優勢となる。また、溝深さが大きい程、曲げ変形が継続するパス数が多くなる。従って、従来に比べフランジ投影幅および溝深さが小さい第2孔型K2での圧延工程では、従来に比べ曲げ変形が抑制され、剪断変形が促進される。これにより、上記問題点を生じさせることなく、素材Bの圧下・造形が実施される。
一方で、第2孔型K2の構成においてフランジ投影幅F0及び溝深さD0を従来よりも小さい値に設計したために、この第2孔型K2のみでは素材Bを所望の形状まで造形することができない。具体的には、第2孔型K2のみでは、素材Bを略ハット形断面形状に近づける造形において、十分な高さを有する形状まで造形することができない。図11は、第2孔型K2での素材B(後の被圧延材A)の造形の様子(造形後)を示す概略説明図である。図11に示すように、第2孔型K2では、特に溝深さD0を従来よりも小さい値としたことで、高さ方向(素材Bの厚み方向)に対する圧下が十分に行われず、従来の粗圧延工程に比べ造形後の形状がスラブ形状に近い形状に留まってしまう。
そこで、本実施の形態においては、粗圧延工程の2段階目として、第3孔型K3を用いた造形が行われる。図12は、第3孔型K3での素材B(後の被圧延材A)の造形の様子(造形前)を示す概略説明図である。図12に示すように、第3孔型K3では、第2孔型K2での造形後の素材Bが、その下面が緩傾斜のフランジ対向部分64b、65bを底として支持され造形が開始される。この第3孔型K3にあっては、フランジ対向部64a、65aの投影長fが従来孔型のフランジ投影幅Fに比べ短く構成される。
fの値が小さいため、ロールから受ける曲げモーメント(=ロールから受ける押圧力×てこの長さ(f))が小さい値に抑えられ、素材Bの断面に作用する曲げモーメントに基づく垂直応力による材料の降伏よりも、ロールからの押圧力に基づく剪断応力による材料の剪断降伏が優勢となる。その結果、素材Bの変形は剪断変形が優勢となるのである。
以下では、図3、4、11、12を参照して、第2孔型K2及び第3孔型K3の好適な寸法条件について説明する。先ず、上述したように、第2孔型K2ではフランジ投影幅F0及び溝深さD0を従来よりも小さい値に設計したため素材Bに対する圧下・造形が十分に行われないといった観点から、所望の断面の粗形材を得るために、第3孔型K3のフランジ投影幅F1はF0よりも大きい値とし、溝深さD1はD0よりも大きい値とする必要がある。即ち、第2孔型K2及び第3孔型K3の寸法条件としては、以下の式(1)、(2)を満たす必要がある。
F1>F0 ・・・(1)
D1>D0 ・・・(2)
また、第2孔型K2で造形後の素材Bが第3孔型の緩傾斜のフランジ対向部分64b、65bを底として安定して支持される必要があることから、第2孔型K2における急傾斜のフランジ対向部分44b、45bの深さd0は、第3孔型K3における急傾斜のフランジ対向部分64c、65cの深さd1以上の値とすることが好ましい。同様に、第2孔型K2における左右の緩傾斜のフランジ対向部分44a、45aの端部間距離(左右間距離)b0は、第3孔型K3における緩傾斜のフランジ対向部分64b、65bの端部間距離(左右間距離)b1以上の値とすることが好ましい。即ち、第2孔型K2及び第3孔型K3の寸法条件としては、以下の式(3)、(4)を満たす必要がある。
d1≦d0 ・・・(3)
b1≦b0 ・・・(4)
また、第2孔型K2における緩傾斜のフランジ対向部分44a、45aと急傾斜のフランジ対向部分44b、45bとがなす角度θ0は鈍角(90°超180°未満)であることが望ましい。
更には、第3孔型K3における緩傾斜のフランジ対向部分64b、65bと急傾斜のフランジ対向部分64c、65cとがなす角度θ1も鈍角(90°超180°未満)であることが望ましい。
このようにθ0、θ1を鈍角に構成することで、後段の第4孔型K4以降の孔型において、被圧延材Aのフランジ対応部4、5の段付き形状を効率的に消去することが可能となる。
図13は、第4孔型K4に第3孔型K3で造形された被圧延材A(略ハット形断面)が導入されるときの様子を示す概略説明図である。図13の右下拡大図から分かるように、θ1が鈍角であれば、緩傾斜のフランジ対応部(段付き形状)と両側の急傾斜のフランジ対応部は図中の○印の方向に回転するが、θ1が直角以下の角度であれば図中の×印の方向に回転する恐れがあり、×印の方向に回転するとラップ疵に発展し不良となる。従って段付き形状を効率的に消去するためにはθ1は鈍角であることが望ましい。また、第3孔型K3の圧延では第2孔型K2で造形された被圧延材Aの段付き形状を安定的に支える必要があることから、θ0についても鈍角に設定することが望ましい。
また、第2孔型K2における緩傾斜のフランジ対向部分44a、45aの傾斜角度(ロール軸とのなす角度)α0と、第3孔型K3における緩傾斜のフランジ対向部分64b、65bの傾斜角度(ロール軸とのなす角度)α1は等しい角度であることが望ましい。即ち、第2孔型K2及び第3孔型K3の寸法条件としては、以下の式(5)を満たす必要がある。
α0=α1 ・・・(5)
これは、第2孔型K2において造形された素材Bが、第3孔型K3の内部においてその姿勢を崩すことなく、適切に噛み込まれるための条件であり、この式(5)に示す条件を満たさないと、通材不良等が生じてしまう恐れがある。即ち、式(5)は、第2孔型K2の左右の緩傾斜のフランジ対向部分44a、45aで形成された素材Bの段付き部144a、145aが、図12に示すように第3孔型K3に噛み込まれる際に、その緩傾斜のフランジ対向部分64a、64bを底として、安定的に支持されるための条件である。
また、第3孔型K3での圧延の最終パスにおける急傾斜のフランジ対向部分のロール隙tfと、緩傾斜のフランジ対向部分のロール隙tsは等しいことが好ましい。即ち、第3孔型K3の寸法条件としては、以下の式(6)を満たすことが好ましい。
tf=ts ・・・(6)
tf:最終パスでの急傾斜のフランジ対向部分のロール隙
ts:最終パスでの緩傾斜のフランジ対向部分のロール隙
これは、第4孔型K4以降での圧延・造形において、被圧延材Aのフランジ対応部4、5の厚みが均一になるための条件である。
以上、本実施の形態に係るハット形鋼矢板の製造方法によれば、特に図3及び図4を参照して説明したような、所定の寸法条件を満たすような第2孔型K2、第3孔型K3を用いて粗圧延工程が2段階で実施される。これにより、素材Bの長手方向先後端部において粗圧延での変形が曲げ変形優勢とならず、被圧延材の長手方向先後端部(特に、ウェブに対応する部位)がローラガングに衝突するといった通材不良や、被圧延材の長手方向先後端のフランジ対応部が長手方向に突出する形状不良(いわゆるフィッシュテール)や、被圧延材の長手方向先後端域において局所的に爪肉量が不足することによる継手開口部の寸法形状不良などが生じるのを回避することができる。
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施の形態では、ハット形鋼矢板製品を製造する場合を例に挙げて図示・説明しているが、本発明の適用範囲はこれに限られるものではない。具体的には、傾斜した形状のフランジを有する鋼矢板製品であれば、本発明を適用して、被圧延材に対して長手方向先後端部における曲げ変形が優勢となるような粗圧延工程を回避することが可能であり、例えばU形鋼矢板等のフランジを有する鋼矢板製品の製造に適用することが可能である。
また、上記実施の形態においては、圧延機に刻設される孔型の構成として、粗圧延機11に第1孔型K1〜第3孔型K3が刻設され、第1中間圧延機13に第4孔型K4及び第5孔型K5が刻設され、第2中間圧延機14に第6孔型K6及び第7孔型K7が刻設され、仕上圧延機19に第8孔型K8が刻設されるといった構成を挙げたが、本発明における各圧延機での孔型の刻設は任意に定めることができる。特に、従来の鋼矢板製品を製造していた圧延ラインに対して本発明を適用する場合には、粗圧延工程に要する孔型を増設する構成となるため、各圧延機における孔型構成には工夫が必要となる。
更に、上記実施の形態では、図3〜図13及び図15において一連の孔型列の突起ロールを上孔型ロールとし、溝ロールを下孔型ロールとして配置した構成、所謂U姿勢圧延でハット形鋼矢板の圧延を行う場合について説明した。しかし、このような一連の孔型列の一部又は全部について、突起ロールを下孔型ロールとし、溝ロールを上孔型ロールとして配置した構成、所謂逆U姿勢圧延でハット形鋼矢板の圧延を行っても良い。
本発明は、例えばハット形鋼矢板の製造方法及び粗圧延ロールに適用できる。
3…ウェブ対応部
4、5…フランジ対応部
6、7…腕対応部
8、9…継手対応部
8a、9a…爪対応部
11…粗圧延機
13…第1中間圧延機
14…第2中間圧延機
19…仕上圧延機
32、42…(第2孔型の)ウェブ対向部
34、35、44、45…(第2孔型の)フランジ対向部
37、38、47、48…(第2孔型の)腕対向部
52、62…(第3孔型の)ウェブ対向部
54、55、65、65…(第3孔型の)フランジ対向部
57、58、67、68…(第3孔型の)腕対向部
101…ハット形鋼矢板製品
103…ハット形鋼矢板製品のウェブ
104、105…ハット形鋼矢板製品のフランジ
106、107…ハット形鋼矢板製品の腕
144a、145a…第2孔型の左右の緩傾斜のフランジ対向部分で形成された素材Bの左右の段付き部
A…被圧延材
B…素材
K1〜K8…第1孔型〜第8孔型
L(L1〜L3)…圧延ライン

Claims (10)

  1. 矩形断面の素材を圧下してハット形鋼矢板を製造する製造方法であって、
    粗圧延工程、中間圧延工程、仕上圧延工程を有し、
    前記粗圧延工程は、前記素材を矩形断面形状と略ハット形断面形状との間の中間形状に造形する1段階目の孔型と、該中間形状から略ハット形断面形状に造形する2段階目の孔型によって行われ、
    前記1段階目の孔型の溝ロールは、素材のウェブに対向するウェブ対向部と、素材のフランジに対向するフランジ対向部と、素材の腕に対向する腕対向部からなり、
    当該1段階目の孔型において、前記フランジ対向部は、前記ウェブ対向部に接続する緩傾斜のフランジ対向部分と、前記腕対向部に接続する急傾斜のフランジ対向部分から構成され、
    前記2段階目の孔型の突起ロールならびに溝ロールは、素材のウェブに対向するウェブ対向部と、素材のフランジに対向するフランジ対向部と、素材の腕に対向する腕対向部からなり、
    当該2段階目の孔型において、前記フランジ対向部は、前記ウェブ対向部に接続する急傾斜のフランジ対向部分と、前記腕対向部に接続する急傾斜のフランジ対向部分と、当該2つの急傾斜のフランジ対向部分の間に位置する緩傾斜のフランジ対向部分から構成されることを特徴とする、ハット形鋼矢板の製造方法。
  2. 前記1段階目の孔型寸法と前記2段階目の孔型寸法とは、以下の式(1)〜(4)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載のハット形鋼矢板の製造方法。
    F1>F0 ・・・(1)
    D1>D0 ・・・(2)
    d1≦d0 ・・・(3)
    b1≦b0 ・・・(4)
    但し、F0:1段階目の孔型のフランジ投影幅、F1:2段階目の孔型のフランジ投影幅、D0:1段階目の孔型の溝深さ、D1:2段階目の孔型の溝深さ、d0:1段階目の急傾斜のフランジ対向部分の深さ、d1:2段階目の孔型の腕対向部に接続する急傾斜のフランジ対向部分の深さ、b0:1段階目の孔型の左右の緩傾斜のフランジ対向部分の端部間距離、b1:2段階目の孔型の左右の緩傾斜のフランジ対向部分の端部間距離である。
  3. 前記1段階目の孔型及び前記2段階目の孔型において、
    前記急傾斜のフランジ対向部分と前記緩傾斜のフランジ対向部分とがなす角度は鈍角に構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のハット形鋼矢板の製造方法。
  4. 前記1段階目の孔型における前記緩傾斜のフランジ対向部分とロール軸とのなす角度は、前記2段階目の孔型における前記緩傾斜のフランジ対向部分とロール軸とのなす角度と等しく構成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のハット形鋼矢板の製造方法。
  5. 前記2段階目の孔型において、最終パスにおける急傾斜のフランジ対向部分の上下ロール隙と、緩傾斜のフランジ対向部分の上下ロール隙は等しく構成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のハット形鋼矢板の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法で用いられる粗圧延ロールであって、
    素材を矩形断面形状と略ハット形断面形状との間の中間形状に造形する1段階目の上下一対の孔型ロールと、該中間形状から略ハット形断面形状に造形する2段階目の上下一対の孔型ロールから構成され、
    前記1段階目の孔型の溝ロールは、素材のウェブに対向するウェブ対向部と、素材のフランジに対向するフランジ対向部と、素材の腕に対向する腕対向部からなり、
    当該1段階目の孔型において、前記フランジ対向部は、前記ウェブ対向部に接続する緩傾斜のフランジ対向部分と、前記腕対向部に接続する急傾斜のフランジ対向部分から構成され、
    前記2段階目の孔型の突起ロールならびに溝ロールは、素材のウェブに対向するウェブ対向部と、素材のフランジに対向するフランジ対向部と、素材の腕に対向する腕対向部からなり、
    当該2段階目の孔型において、前記フランジ対向部は、前記ウェブ対向部に接続する急傾斜のフランジ対向部分と、前記腕対向部に接続する急傾斜のフランジ対向部分と、当該2つの急傾斜のフランジ対向部分の間に位置する緩傾斜のフランジ対向部分から構成されることを特徴とする、粗圧延ロール。
  7. 前記1段階目の孔型寸法と前記2段階目の孔型寸法とは、以下の式(1)〜(4)を満たすことを特徴とする、請求項6に記載の粗圧延ロール。
    F1>F0 ・・・(1)
    D1>D0 ・・・(2)
    d1≦d0 ・・・(3)
    b1≦b0 ・・・(4)
    但し、F0:1段階目の孔型のフランジ投影幅、F1:2段階目の孔型のフランジ投影幅、D0:1段階目の孔型の溝深さ、D1:2段階目の孔型の溝深さ、d0:1段階目の急傾斜のフランジ対向部分の深さ、d1:2段階目の孔型の腕対向部に接続する急傾斜のフランジ対向部分の深さ、b0:1段階目の孔型の左右の緩傾斜のフランジ対向部分の端部間距離、b1:2段階目の孔型の左右の緩傾斜のフランジ対向部分の端部間距離である。
  8. 前記1段階目の孔型及び前記2段階目の孔型において、
    前記急傾斜のフランジ対向部分と前記緩傾斜のフランジ対向部分とがなす角度は鈍角に構成されることを特徴とする、請求項6又は7に記載の粗圧延ロール。
  9. 前記1段階目の孔型における前記緩傾斜のフランジ対向部分とロール軸とのなす角度は、前記2段階目の孔型における前記緩傾斜のフランジ対向部分とロール軸とのなす角度と等しく構成されることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載の粗圧延ロール。
  10. 前記2段階目の孔型において、最終パスにおける急傾斜のフランジ対向部分の上下ロール隙と、緩傾斜のフランジ対向部分の上下ロール隙は等しく構成されることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載の粗圧延ロール。
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