JP6874597B2 - フランジを有する鋼矢板の製造方法 - Google Patents

フランジを有する鋼矢板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えばハット形鋼矢板、U形鋼矢板等のフランジを有する鋼矢板の製造方法に関する。
従来より、ハット形等の両端に継手を有する鋼矢板の製造は孔型圧延法によって行われている。この孔型圧延法の一般的な工程としては、先ず加熱炉において所定の温度に加熱した矩形材を、孔型を備えた粗圧延機、中間圧延機及び仕上圧延機によって順に圧延することが知られている。孔型圧延法として例えば特許文献1には、粗圧延、中間圧延及び仕上圧延においてロールに複数の孔型を刻設し、それら各孔型において1〜2パスずつ圧延を行ってハット形鋼矢板を製造する技術が開示されている。
また、例えば特許文献2には、U形鋼矢板の製造においてウェブとフランジの延伸釣り合いが保たれるように孔型を構成し、同一孔型中で被圧延材を複数回往復させて圧延を行う技術が開示されている。
このように、鋼矢板の製造方法として孔型圧延法や、同一孔型において被圧延材を複数回往復させて圧延を行う技術(いわゆる1孔型多パス圧延)が従来より創案されている。
特開2006−88176号公報 特開昭60−44101号公報
しかしながら、上記特許文献1に例示される従来の孔型圧延方法では、粗圧延、中間圧延工程〜仕上圧延工程にて、フランジを製品とほぼ同じ角度の直線状態として1孔型で1〜2パスの圧延を行うが、特にフランジ幅が大きく板厚が薄い場合には、リバース圧延を行うと断面内各部の延伸バランスが取れず、フランジ波が生じてしまう場合がある。
また、上記特許文献2に記載された技術では、ハット形鋼矢板のように、特に従来に比べフランジ幅が大きくフランジ厚が薄い大型鋼矢板に対して延伸を大きくとるような圧延を実施した場合に、上記特許文献2に記載された延伸の釣り合いを保ったとしても、フランジ波等の形状不良が発生し、安定した圧延・造形が難しく、製品形状不良が発生する恐れがある。また、圧延機の制約の中ではフランジ波等の形状不良の発生を抑制するのに適正な釣り合い条件を実現できない場合がある。近年、経済性や施工性の観点から幅が大きく板厚の薄い大型断面の鋼矢板が求められており、このような大型鋼矢板の製造において更なる技術の向上が求められているのが実情である。
そこで、上記事情に鑑み、本発明の目的は、ハット形鋼矢板のように、特に従来に比べフランジ幅が大きくフランジ厚の薄い鋼矢板を製造する場合に、製造過程の圧延においてフランジ波等の形状不良が発生するのを抑制し、製品寸法精度や圧延の安定性の向上を図ることが可能なフランジを有する鋼矢板の製造技術を提供することにある。
前記の目的を達成するため、本発明によれば、被圧延材に粗圧延工程、中間圧延工程及び仕上圧延工程を行うフランジを有する鋼矢板の製造方法であって、前記粗圧延工程及び中間圧延工程における被圧延材の圧延は、連続する複数の孔型における複数パス圧延によって行われ、前記複数の孔型での圧延において、連続する2つの孔型における、前段の孔型と後段の孔型との少なくとも一方では、前段の孔型における圧延中立線近傍でのフランジ対応部位のロール隙を、当該前段の孔型の基準ロール隙に比べて狭める条件と、後段の孔型における圧延中立線近傍でのフランジ対応部位のロール隙を、当該後段の孔型の基準ロール隙に比べて広げる条件と、の少なくとも一方の条件にてフランジ対応部位のロール隙を構成し、圧延を行うことを特徴とする、フランジを有する鋼矢板の製造方法が提供される。
ここで、「圧延中立線近傍」とは、孔型における、中立線を横断するフランジ対向部分のことであり、以下、本明細書では「圧延中立線近傍」と称する。

前記連続する2つの孔型では、前段の孔型における圧延中立線近傍でのフランジ対応部位のロール隙を、当該前段の孔型の基準ロール隙に比べて狭めるように構成し、
以下の式(1a)で規定されるフランジ延伸低減率αを0.10以上0.42以下とした条件で圧延を行っても良い。
α={(t0−t0n’)/t0}/{(t0−t1)/t0} ・・・(1a)
但し、t0n’:前段孔型での最終パス時の圧延中立線近傍の孔型ロール隙、t0:前段孔型での最終パス時の基準ロール隙、t1:後段孔型での最終パス時の基準ロール隙
前記連続する2つの孔型では、後段の孔型における圧延中立線近傍でのフランジ対応部位のロール隙を、当該後段の孔型の基準ロール隙に比べて広げるように構成し、
以下の式(2)で規定される孔型フランジ隙偏差率βを0.035以上0.1以下とした条件で圧延を行っても良い。
β=(t1n’−t1)/t1 ・・・(2)
但し、t1n’:後段孔型での最終パス時の圧延中立線近傍のロール隙、t1:後段孔型での最終パス時の基準ロール隙
前段の孔型においてロール隙を狭める圧延中立線近傍でのフランジ対応部位の範囲は、当該前段の孔型のフランジ対応部位の幅方向長さ全体を1とした場合に、圧延中立線を中心として0.3以上の範囲であっても良い。
後段の孔型においてロール隙を広げる圧延中立線近傍でのフランジ対応部位の範囲は、当該後段の孔型のフランジ対応部位の幅方向長さ全体を1とした場合に、圧延中立線を中心として0.3以上の範囲であっても良い。
後段の孔型において被圧延材の圧延中立線近傍に隆起部が形成されたフランジ対応部は、当該後段の孔型の後に配置した孔型による圧延により所望の平坦形状に圧延造形されても良い。
前記フランジを有する鋼矢板はハット形鋼矢板であっても良い。
本発明によれば、ハット形鋼矢板のように、特に従来に比べフランジ幅が大きくフランジ厚の薄い鋼矢板を製造する場合に、製造過程の圧延においてフランジ波等の形状不良が発生するのを抑制し、製品寸法精度や圧延の安定性の向上を図ることが可能となる。
圧延ラインの概略説明図である。 第1の孔型の孔型形状を示す概略断面図である。 第2の孔型の孔型形状を示す概略断面図である。 第3の孔型の孔型形状を示す概略断面図である。 第4の孔型の孔型形状を示す概略断面図である。 第5の孔型の孔型形状を示す概略断面図である。 第2の孔型における最終パス時に、フランジ対応部が圧下される様子について拡大した概略説明図である。 第3の孔型における最終パス時に、フランジ対応部が圧下される様子について拡大した概略説明図である。 フランジ延伸低減率と第2中間圧延の最終パスにおいて生じるフランジ波の急峻度との関係を示すグラフである。 孔型部分の所定の範囲内においてロール隙を狭めた構成とした場合の説明図である。 孔型部分においてロール隙を狭める範囲と、フランジ波の急峻度との関係を示すグラフである。 本発明の他の実施の形態にかかる孔型において、フランジ対応部が圧下される様子について拡大した概略説明図である。 本発明の他の実施の形態にかかる孔型における孔型フランジ隙偏差率と、第2中間圧延の最終パスにおいて生じるフランジ波の急峻度との関係を示すグラフである。 本発明の他の実施の形態にかかる孔型の孔型部分において孔型ロール隙を広幅化させる範囲と、フランジ波の急峻度との関係を示すグラフである。 本発明の変形例に関する説明図である。 本発明の変形例に関する説明図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。なお、本実施の形態において略ハット形鋼矢板形状の被圧延材はウェブがフランジよりも下方に位置する姿勢(いわゆるU姿勢)で圧延されるものとして説明するが、当然本発明の適用範囲はその他の姿勢(例えば逆U姿勢)での圧延にも及ぶ。また、本発明の適用範囲はハット形、U形等の種々のフランジを有する鋼矢板製品であるが、本実施の形態において製造される鋼矢板製品はハット形鋼矢板製品であるものとして説明する。
また、以下に記載の被圧延材Aとは、ハット形鋼矢板製品を製造する場合に圧延される鋼材を示しており、圧延ラインL上を通材される鋼材を総称して被圧延材Aと呼称し、それぞれの圧延機において圧下された状態の被圧延材Aについては必要に応じて別途異なる呼称で記載する。この被圧延材Aは略ハット形形状であり、略水平であるウェブ対応部3と、ウェブ対応部3の両端に所定の角度でもって連結しているフランジ対応部5、6と、各フランジ対応部5、6においてウェブ対応部3との連結側と異なる端部に連結している腕対応部8、9と、腕対応部8、9の先端に連結される継手対応部10、11から構成されている。なお、継手対応部10、11の端部はそれぞれ爪部14、15と呼称される。以下では、被圧延材Aについて上記各符号にて図示、説明する。
先ず、ハット形鋼矢板を製造する製造装置1として基本的な構成である圧延ラインLの概略について説明する。図1は、ハット形鋼矢板を製造する圧延ラインLと、圧延ラインLに備えられる圧延機等についての説明図である。図1において圧延ラインLの圧延進行方向は矢印で示されている方向であり、当該方向へ被圧延材Aが流れ、ライン上の各孔型圧延機(以下に説明する粗圧延機、中間圧延機、仕上圧延機)において圧延が行われ、製品が造形される。なお、圧延ラインL上には図示しない複数の搬送ロールが設置されており、それら搬送ロールによって被圧延材Aは圧延ラインL上を搬送される。
図1に示すように、圧延ラインLには、圧延上流側から順に粗圧延機(BD)17、第1中間圧延機(R1)18、第2中間圧延機(R2)19、仕上圧延機(F)30が配置されている。
図1に示す圧延ラインLにおいては、図示しない加熱炉(圧延ラインL上流に位置)において加熱された例えばスラブ、ブルーム等の被圧延材Aが、粗圧延機17〜仕上圧延機30において順次圧延されることで最終製品であるハット形鋼矢板が製造される。
次に、圧延ラインLに配置される粗圧延機17、第1中間圧延機18、第2中間圧延機19、仕上圧延機30に刻設される孔型の形状について上流側から順に図面を参照して簡単に説明する。なお、以下の説明において参照する図2〜6には、参考のため各孔型において圧下された状態の被圧延材Aの断面を一点鎖線にて図示している。
図2は、第1の孔型49(以下、単に孔型49とも記載)の孔型形状を示す概略断面図である。図2に示すように、孔型49は、上孔型ロール45と、下孔型ロール48によって構成される。これら上孔型ロール45と下孔型ロール48によって構成される孔型49は例えば粗圧延機17に刻設され、孔型49における孔型圧延によって被圧延材A全体に対して厚み圧下(即ち、粗圧延)が行われる。具体的には、加熱炉において所定温度に加熱されたスラブ等を略ハット形形状に近づけるような孔型圧延が行われ、図2中の一点鎖線に示す粗形材A1が造形される。なお、この時の粗圧延は、例えば同一孔型49におけるリバース圧延によって行われても良い。
また、図3は第2の孔型59(以下、単に孔型59とも記載)の孔型形状を示す概略断面図である。図3に示すように、孔型59は、上孔型ロール55と、下孔型ロール58によって構成される。これら上孔型ロール55と下孔型ロール58によって構成される孔型59は例えば第1中間圧延機18に刻設され、孔型59における孔型圧延によって被圧延材A全体に対して厚み圧下(即ち、第1中間圧延)が行われる。孔型59では厚み圧下と同時に爪部14、15の爪高さを所望の高さに揃える圧下も行われ、具体的には、上記孔型49から搬出された粗形材A1を更にハット形形状に近づけるような孔型圧延が行われる。これにより、図3中の一点鎖線に示す第1中間材A2が造形される。なお、ここでの圧延は、例えば同一孔型59におけるリバース圧延によって行われても良い。
また、図4は第3の孔型69(以下、単に孔型69とも記載)の孔型形状を示す概略断面図である。図4に示すように、孔型69は、上孔型ロール65と、下孔型ロール68によって構成される。これら上孔型ロール65と下孔型ロール68によって構成される孔型69は例えば第2中間圧延機19に刻設され、孔型69における孔型圧延によって被圧延材A全体に対して厚み圧下(即ち、第2中間圧延)が行われる。具体的には、上記孔型59から搬出された第1中間材A2を更にハット形形状に近づけるような孔型圧延が行われ、図4中の一点鎖線に示す第2中間材A3が造形される。この孔型69は幅方向の両端部が開放された形状となっているため、厚み圧下により被圧延材Aの爪部14、15は幅方向に伸びた形状となっている。なお、ここでの圧延は、例えば同一孔型69におけるリバース圧延によって行われても良い。
図5は第4の孔型79(以下、単に孔型79とも記載)の孔型形状を示す概略断面図である。図5に示すように、孔型79は、上孔型ロール75と、下孔型ロール78によって構成される。これら上孔型ロール75と下孔型ロール78によって構成される孔型79は例えば第2中間圧延機19に刻設され、当該孔型79によって例えば被圧延材Aの爪部14、15の成形が重点的に行われる。具体的には、第3の孔型69で伸びた状態の爪部14、15の爪高さを所望の高さに揃えて成形するような圧下が行われ第2中間材A3が造形される。なお、ここでの圧延は、厚みを圧下するものでも良い。
また、図6は第5の孔型89(以下、単に孔型89とも記載)の孔型形状を示す概略断面図である。図6に示すように、孔型89は、上孔型ロール85と、下孔型ロール88によって構成される。これら上孔型ロール85と下孔型ロール88によって構成される孔型89は例えば仕上圧延機30に刻設され、当該孔型89によって被圧延材Aに対して主に爪部14、15の曲げ成形(即ち、仕上圧延)が行われる。具体的には、上記第2中間材A3を略ハット形形状(略ハット形鋼矢板製品形状)の仕上材A4とする圧下が行われる。なお、仕上圧延は通常リバース圧延では行われず、1パスのみの圧延にて行われる。
以上、図2〜図6を参照して説明した各圧延において被圧延材Aが孔型圧延され、最終的に仕上材A4が造形される。
なお、本実施の形態において上述してきた第1の孔型〜第5の孔型の構成は、最小限の孔型を使用した場合を例示したものであり、図示の形態に限られるものではなく、例えば孔型の配置順や、各圧延機に配置する孔型形状、各種孔型の修正孔型の増減配列については設備状況や製品寸法等の条件に応じて適宜変更可能である。また、素材の種類によっては、素材からの粗造形過程に用いる予備成形孔型といった孔型を別途設けることも考えられる。
本発明者らの検討によれば、上記製造工程における孔型59や孔型69による中間圧延工程では、ウェブ対応部3とフランジ対応部5、6との延伸の釣り合いをほぼ保って圧延が行われた場合でも、図3、4に示すように、上下孔型ロールは部位によって上下のロール径が異なるため、被圧延材A(特にフランジ対応部5、6)とロールとの相対滑り速度が各部位によって異なる。このため、フランジ対応部5、6では、上下ロールの直径が等しいピッチラインに対応する位置(以下、「中立線」、「圧延ピッチライン」とも記載する)を中心にしてロールバイト出口近傍において長手方向に圧縮応力が発生しやすく、圧縮応力が座屈限界を超えた場合、フランジ対応部5、6にはいわゆるフランジ波と呼ばれる形状不良が発生する。
特に、フランジ幅/フランジ厚の比率が大きいハット形鋼矢板のような大型鋼矢板の製造においては、フランジの座屈限界が低く、フランジ波が顕著に発生しやすくなる。
また、リバース圧延でこれら孔型59、69での圧延が行われる場合、フランジ対応部5、6では、リバース圧延のたびにこれらフランジ対応部5、6の中央部(中立線近傍)に肉が集まり、フランジ厚みの復元といった現象が発生しやすいことも検討の結果明らかとなった。厚みの復元が発生すると、次パスでのフランジ延伸が増大してしまい、更にフランジ波が生じやすくなり好ましくない。
また、孔型59と孔型69を比較すると、後段の孔型である孔型69の方がより被圧延材A(特にフランジ対応部5、6)を薄く圧延するため、上述したフランジ波の発生といった形状不良が顕著になりやすい。また、形状不良が発生する工程が仕上圧延に近いほど、製品形状不良に直結しやすい。即ち、製品寸法精度や圧延の安定性といった観点から、特に後段の孔型である孔型69での上記のような問題点を解決することが重要となる。
このような問題点に鑑み、本発明者らは、孔型59における最終パス圧延でのフランジ対応部5、6の厚み偏差率と、孔型69における最終パス圧延でのフランジ対応部5、6の圧下率との関係性を所定の好適な条件とすることで、孔型69の圧延造形時にフランジ波の発生を抑制させることが可能となることを知見し、その好適な条件について鋭意検討を行った。以下では、本知見について詳細に説明する。なお、以下の説明ではフランジ対応部5を例示して図示・説明しているが、当然フランジ対応部6についても同様の技術を適用できる。また、以下の本明細書では、第2の孔型59で第1中間圧延が実施され、第3の孔型69で第2中間圧延が実施されるものとして説明を行う。
先ず、第1中間圧延の最終パス圧延におけるフランジ対応部5、6の厚み偏差率について図7を参照して説明する。図7は、孔型59における最終パス時に、フランジ対応部5が圧下される様子について拡大した概略説明図である。ここで、図7においてフランジ対応部5の圧延に関する中立線をOとする。なお、図7における破線は、孔型59の最終パス圧下後の被圧延材形状を示している。
図7に示すように、孔型59での最終パス時の中立線O近傍のフランジ対応部5に対向する上下孔型ロール55、58のロール隙をt0nとし、フランジ対応部5に対向する上下孔型ロール55、58の他の部分のロール隙(以下、孔型59の基準ロール隙とも記載する)をt0とする。この場合、第1中間圧延の最終パス圧延におけるフランジ対応部5の厚み偏差率は、(t0−t0n)/t0で示される。
次に、第2中間圧延におけるフランジ対応部5、6のフランジ圧下率について図8を参照して説明する。図8は、孔型69における最終パス時に、フランジ対応部5が圧下される様子について拡大した概略説明図である。ここで、図8においてフランジ対応部5の圧延に関する中立線をOとして図示している。なお、図8における破線は、孔型69の最終パス圧下後の被圧延材形状を示している。
図8に示すように、孔型69での最終パス時の中立線O近傍のフランジ対応部5に対向する上下孔型ロール65、68のロール隙をt1nとし、フランジ対応部5に対向する上下孔型ロール65、68の他の部分のロール隙(以下、孔型69の基準ロール隙とも記載する)をt1とする。この場合、第2中間圧延におけるフランジ対応部5の総圧下率は、(t0−t1)/t0で示される。
ここで、図7を参照して示した第1中間圧延の最終パスにおけるフランジ厚み偏差率(t0−t0n)/t0と、図8を参照して示した第2中間圧延のフランジ総圧下率(t0−t1)/t0と、を用いて、以下の式(1)、(1)’に示すようにフランジ延伸低減率αを定義する。なお、式(1)’は式(1)を変形したものである。
α={(t0−t0n)/t0}/{(t0−t1)/t0} ・・・(1)
即ち、α=(t0−tn0)/(t0−t1) ・・・(1)’
そして、このように定義されるフランジ延伸低減率αと、第2中間圧延の最終パスにおいて生じるフランジ波の急峻度(h/L、h:波の高さ、L:波のピッチで定義される)との関係について検討すると、フランジ延伸低減率αが大きくなるほどフランジ波の急峻度が低くなり、フランジ波の発生が抑制されている。これは、第2中間圧延で幾何学的にフランジ延伸が低減することに加え、上述したように、フランジ対応部5、6を複数パス圧延する場合、リバース圧延のたびにこれらフランジ対応部5、6の中央部(中立線近傍)に肉が集まり、フランジ厚みの復元といった現象が発生しやすいが、フランジ延伸低減率αが大きくなるほど、フランジ厚みの復元が生じにくいことにも起因している。
図9は、フランジ延伸低減率αと第2中間圧延の最終パスにおいて生じるフランジ波の急峻度との関係を示すグラフである。なお、図9における「当該孔型」とは第2中間圧延を行う孔型69を示している。図9に示すように、フランジ延伸低減率αの値が大きくなるにつれて、第2中間圧延の最終パスにおいて生じるフランジ波の急峻度は低減しており、フランジ延伸低減率αが0.25以上となった場合には、急峻度が0となりフランジ波が発生していないことが分かる。即ち、上記式(1)にて規定されるフランジ延伸低減率αの値を0.25以上とすることで、第2中間圧延後にフランジ波が発生させずに圧延工程を実施することができることが分かる。
また、フランジ波に関しては、第2中間圧延の後工程である仕上圧延(仕上圧延機30において実施される圧延)によって消去可能となるような許容範囲が存在し、その許容範囲は、図9に記載しているように、急峻度が1.0E−02以下であるようなフランジ波である。この点を考慮すると、上記式(1)にて規定されるフランジ延伸低減率αの値を0.10以上とすることで、フランジ波の発生を許容範囲内として圧延工程を実施できることが分かる。
一方、フランジ延伸低減率αの上限値に関しては、例えば0.42程度とすることが好ましい。これは、フランジ延伸低減率αをこれ以上大きくすると、第1中間圧延でのフランジ延伸が大きくなりすぎて形状が崩れたり、第2中間圧延の初期パスでフランジの厚み圧下がなくなり、圧延が不安定となるためである。
ここで、フランジ延伸低減率αを0.10以上、あるいは0.25以上とするためには、図7、図8及び式(1)を参照して分かるように、第2中間圧延において、総フランジ圧下率に比べ、中立線O近傍での圧下率を低くする必要がある。具体的な方法としては、第1中間圧延において、中立線O近傍でのフランジ厚t0nを基準ロール隙でのフランジ厚t0に比べて所定量だけ薄くなるように孔型設計をし、そのように設計される孔型によって造形を行い、第2中間圧延での総フランジ圧下率に比べ、中立線O近傍での圧下率を低くすることが考えられる。なお、第1中間圧延において中立線O近傍にて薄くすべき所定量は、フランジ延伸低減率αの値をどの程度の値(例えば0.10〜0.42の範囲内の値)にするかによって定まる。
上記のように、フランジ波の発生を抑制・回避させるためには、第1中間圧延において、孔型59の設計として、中立線O近傍でのフランジ厚t0nを基準ロール隙でのフランジ厚t0に比べて所定量だけ薄くなるように孔型設計して圧延を行う必要があるが、この時の好ましい孔型設計としては、中立線O近傍の所定の範囲において孔型ロール隙を狭めるような構成とする必要がある。具体的には、図7に示す孔型59のフランジ対応部5に対向する孔型部分59aのうち、所定の範囲内においてロール隙を狭めた構成にて第1中間圧延を実施する必要がある。
図10は、図7に示す孔型59において、孔型部分59aの所定の範囲内においてロール隙を狭めた構成とした場合の説明図である。図10に示すように、本孔型構成では、フランジ対応部5に対向する孔型部分59aのうち、中立線O近傍の所定の範囲において孔型ロール隙が基準ロール隙t0に比べて狭いt0n’となるように構成されている。このような構成により、第1中間圧延の例えば最終パスにおいて中立線O近傍では、フランジ厚が基準ロール隙でのフランジ厚t0に比べ薄いt0n’まで圧下されることになる。これにより、第2中間圧延での総フランジ圧下率に比べ、中立線O近傍でのフランジ圧下率を低くすることができ、第2中間圧延最終パス時に発生するフランジ波を抑制・回避することができる。即ち、上記式(1)のt0nをより薄いt0n’に替えて示される以下の式(1a)で規定されたフランジ延伸低減率αが0.10以上0.42以下となるような条件とすることで、第2中間圧延最終パス時に発生するフランジ波を抑えることが可能となる。
α={(t0−t0n’)/t0}/{(t0−t1)/t0} ・・・(1a)
なお、ここではフランジ対応部5を対象として図示、説明したが、フランジ対応部6に対向する孔型部分についても同様である。また、図10に示す所定の範囲内においてロール隙を狭めた孔型構成としたことで、第2中間圧延時に、フランジ対応部5は必ずしも均一なフランジ厚にならない場合があるが、当該フランジ対応部5の形状は、後段の孔型や仕上圧延機30(仕上圧延工程)によって所望の平坦なフランジ形状(ハット形鋼矢板製品のフランジ形状)とされる。
図10を参照して上述したように、孔型59においては所定の範囲内においてロール隙を狭めた構成とすることがフランジ波の発生を抑制・回避させる観点から好ましい。そこで本発明者らは、上記孔型部分59aのうち、第2中間圧延最終パスでのフランジ波の発生の抑制を好適に行うために、孔型部分59aにおいて狭めるべき範囲(以下、所定範囲W、範囲Wとも記載)について更なる検討を行った。図11は、第1中間圧延を行う孔型59の孔型部分59aのフランジ幅に沿った方向(フランジ対応部5の傾斜方向)において、孔型部分59a全体のフランジ幅方向長さを1とし、中立線Oを中心として0〜1の範囲でロール隙を狭める範囲を適宜変更させ、それぞれの場合において第2中間圧延最終パスで生じるフランジ波の急峻度の値を示すグラフである。即ち、図11は孔型部分59aにおいてロール隙を狭める範囲(グラフ中の前孔型フランジ厚偏差範囲/当該孔型フランジ幅)と、フランジ波の急峻度との関係を示すグラフである。なお、上記図9の場合と同じく、フランジ波の急峻度が1.0E−02以下になるような条件が、中間圧延として許容される範囲内であり、フランジ波の急峻度が0となるような条件がより望ましい範囲である。
図11に示すように、孔型部分59aにおいてロール隙を狭める範囲Wを0.3以上(即ち、全体の30%以上)の範囲とした場合に、第2中間圧延最終パスで発生するフランジ波の急峻度が1.0E−02以下であることが分かる。また、孔型部分59aにおいてロール隙を狭める範囲Wを0.45以上0.7以下(即ち、全体の45%以上70%以下)の範囲とした場合に、第2中間圧延最終パスで発生するフランジ波の急峻度が0となりフランジ波が発生していないことが分かる。このことから、第2中間圧延最終パスで発生するフランジ波を抑制させるためには、孔型部分59aにおいて当該孔型部分59a全体幅Bを1とした時に、ロール隙を狭める範囲を中立線Oを中心として0.3以上とすることが好ましく、また、フランジ波が発生しない構成とするためには、当該範囲を0.45以上0.7以下とすることが好ましい。なお、孔型部分59aの全体幅Bは、孔型59におけるコーナー部(接続部)の厚み中心同士を結ぶ線分の長さで規定している。
以上、図7〜図11を参照して説明したように、本実施の形態にかかる技術によれば、第2中間圧延において、総フランジ圧下率に比べ、中立線O近傍での圧下率を低くすることで、第2中間圧延最終パス時に発生するフランジ波を抑制させ、更には、フランジ波を発生させないような圧延を実施することが可能となる。
より具体的には、上記式(1a)によって定義されるフランジ延伸低減率αを0.10以上とすることで、第2中間圧延最終パス時に発生するフランジ波を操業許容範囲内に抑えることが可能となり、更に、フランジ延伸低減率αを0.25以上0.42以下とすることで、フランジ波を発生させることなく効率的に圧延を実施することが可能となる。
また、第2中間圧延において、総フランジ圧下率に比べ、中立線O近傍での圧下率を低くするために、第1中間圧延において中立線O近傍でのフランジ厚t0nを基準ロール隙でのフランジ厚t0に比べて所定量だけ薄くなるように孔型設計してt0n’とすることで、第2中間圧延最終パス時に発生するフランジ波を抑制・回避することができる。この場合、孔型部分59aにおいて当該孔型部分59a全体幅を1とした時に、ロール隙を狭める範囲を中立線Oを中心として0.3以上とすることでフランジ波の発生を抑制させることが可能となり、更に、当該範囲を0.45以上0.7以下とすることでフランジ波を発生させることなく圧延を実施することができる。
このように、本実施の形態にかかる鋼矢板の製造方法にあっては、製造過程の圧延(特に、中間圧延、更には第2中間圧延)においてフランジ波等の形状不良が発生するのを抑制・回避し、製品寸法精度や圧延の安定性の向上が実現される。ハット形鋼矢板のように、特に従来に比べフランジ幅が大きく板厚の薄い大型の鋼矢板の製造においては、それら作用効果が顕著に享受される。
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
(本発明の他の実施の形態)
例えば上記実施の形態では、第2中間圧延において、総フランジ圧下率に比べ、中立線O近傍での圧下率を低くするために、第1中間圧延において中立線O近傍でのフランジ厚t0nを基準ロール隙でのフランジ厚t0に比べて所定量だけ薄くなるように孔型設計し、フランジ対応部5、6の中立線O近傍における厚みを薄くする技術について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。そこで、以下では本発明の他の実施の形態として、第2中間圧延において、総フランジ圧下率に比べ、中立線O近傍での圧下率を低くするために、第2中間圧延に用いる孔型69(他の形態における孔型69’)の形状を好適に設計する技術について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において上記実施の形態と同一の機能構成を有する構成要素については同一の符号を付し、その説明は省略する。また、以下では上記実施の形態と同様、フランジ対応部5に関して説明するが、フランジ対応部6に関しても同様の技術が当然適用可能である。
図12は、本発明の他の実施の形態にかかる孔型69’において、フランジ対応部5が圧下される様子について拡大した概略説明図である。図12に示すように、孔型69’の形状は、フランジ対応部5に対向する孔型部分69aのうち、中立線O近傍の所定の範囲において孔型ロール隙が基準ロール隙t1に比べて広幅となるように構成されている。このような構成とすることで、第2中間圧延において、総フランジ圧下率に比べ、中立線O近傍での圧下率を低くすることが可能となり、上記実施の形態と同様に、第2中間圧延最終パス時に発生するフランジ波を抑制・回避することができる。
ここで本発明者らは、図12に示す本発明の他の実施の形態にかかる孔型69’に関して、フランジ対応部5に対向する孔型部分69aのうち、中立線O近傍の所定の範囲の孔型ロール隙を基準ロール隙t1に比べて広幅とする構成を創案したが、このように孔型ロール隙を広幅化する際の好適な拡幅量や、広幅化する好適な範囲について更なる検討を行った。
図13は、本発明の他の実施の形態にかかる孔型69’における孔型フランジ隙偏差率βと、第2中間圧延の最終パスにおいて生じるフランジ波の急峻度との関係を示すグラフである。なお、図13における「当該孔型」とは第2中間圧延を行う孔型69’を示している。また、ここで孔型フランジ隙偏差率βとは、以下の式(2)によって定義される値であり、基準ロール隙からの拡幅量を示す指標である。
β=(t1n’−t1)/t1 ・・・(2)
ここで、t1n’は、図12に示すように、最終パスでの拡幅された孔型ロール隙の最大幅であり、本形態においては中立線O上における孔型ロール隙を示している。
図13に示すように、孔型フランジ隙偏差率βの値が大きくなるにつれて、第2中間圧延の最終パスにおいて生じるフランジ波の急峻度は低減しており、孔型フランジ隙偏差率βが0.06以上となった場合には、急峻度が0となりフランジ波が発生していないことが分かる。また、孔型フランジ隙偏差率βが0.035以上の場合、フランジ波の急峻度が許容範囲内に収まっており、フランジ波の発生を十分に抑制した圧延が実施できることが分かる。即ち、上記式(2)にて規定される孔型フランジ隙偏差率βの値を0.035以上とすることでフランジ波の発生を抑制させることができ、更に孔型フランジ隙偏差率βを0.06以上とすることでフランジ波を発生させることなく圧延工程を実施できることが分かる。孔型69’によりフランジ対応部5、6に形成された中立線O近傍の隆起部は、孔型69’よりも後段の孔型や仕上圧延機30(仕上圧延工程)によって所望の平坦なフランジ形状(ハット形鋼矢板製品のフランジ形状)に圧延造形される。
一方、孔型フランジ隙偏差率βの上限値に関しては、例えば0.1とすることが好ましい。これは、孔型フランジ隙偏差率βが0.1を超えると、第2中間圧延後の中立線O近傍のフランジ厚がその両側のフランジ厚に比べて大きくなり過ぎるため、仕上圧延でフランジ波が発生してしまう。そのため、上限値は0.1とすることが好ましい。
また、本発明者らは、第2中間圧延最終パスでのフランジ波の発生の抑制を好適に行うために、図12に示す孔型部分69aにおいて孔型ロール隙を広幅化すべき範囲W1(以下、単に範囲W1とも記載)について更なる検討を行った。図14は、本発明の他の実施の形態にかかる孔型69’の孔型部分69aのフランジ幅に沿った方向(フランジ対応部5の傾斜方向)において、孔型部分69a全体のフランジ幅方向長さを1とし、中立線Oを中心として0〜1の範囲で孔型ロール隙を広幅化させる範囲を適宜変更させ、それぞれの場合において第2中間圧延最終パスで生じるフランジ波の急峻度の値を示すグラフである。即ち、図14は孔型部分69aにおいて孔型ロール隙を広幅化させる範囲(グラフ中の当該孔型フランジ隙偏差範囲/当該孔型フランジ幅)と、フランジ波の急峻度との関係を示すグラフである。
図14に示すように、孔型部分69aにおいてロール隙を広幅化させる範囲W1を0.3以上(即ち、全体の30%以上)の範囲とした場合に、第2中間圧延最終パスで発生するフランジ波の急峻度が1.0E−02以下であることが分かる。また、孔型部分69aにおいてロール隙を広幅化させる範囲W1を0.45以上0.7以下(即ち、全体の45%以上70%以下)の範囲とした場合に、第2中間圧延最終パスで発生するフランジ波の急峻度がほぼ0となりフランジ波が発生していないことが分かる。このことから、第2中間圧延最終パスで発生するフランジ波を抑制させるためには、孔型部分69aにおいて当該孔型部分69a全体幅Bを1とした時に、孔型ロール隙を広幅化する範囲W1を中立線Oを中心として0.3以上とすることが好ましく、また、フランジ波が発生しない構成とするためには、当該範囲W1を0.45以上0.7以下とすることが好ましい。
以上、図12〜図14を参照して説明した本発明の他の実施の形態によれば、第2中間圧延において、総フランジ圧下率に比べ、中立線O近傍での圧下率を低くすることで、第2中間圧延最終パス時に発生するフランジ波を抑制させ、更には、フランジ波を発生させないような圧延を実施することが可能となり、上記実施の形態と同様の作用効果を享受することができる。
また、上記実施の形態において、フランジ波を抑制するために、第1中間圧延において狭めるべき孔型部分での範囲は、中立線Oを中心としてその近傍を含めた範囲として説明したが、その範囲は正確に中立線Oを中心とした範囲にする必要はなく、被圧延材Aの温度分布や圧延条件等に応じて適宜変更することも可能である。また、中立線Oを中心として直線的に狭める形状を説明したが、それ以外にも、曲線状に狭めた形状や、図15に示すように溝形状に狭めた形状としても良い。
同様に、上記他の実施の形態において、フランジ波を抑制するために、第2中間圧延において広幅化すべき孔型部分での範囲は、中立線Oを中心としてその近傍を含めた範囲として説明したが、その範囲は正確に中立線Oを中心とした範囲にする必要はなく、被圧延材Aの温度分布や圧延条件等に応じて適宜変更することも可能である。また、中立線Oを中心として直線的に広幅化した形状を説明したが、それ以外にも、曲線状に広幅化した形状や、図16に示すように溝形状に広幅化した形状としても良い。
また、上記実施の形態では、本発明技術を適用させる圧延工程の一例として、第2の孔型59と第3の孔型69を用いて実施される中間圧延工程を例示して説明したが、本発明の適用範囲はこれに限られるものではない。即ち、1基の中間圧延機に2つの厚み圧下孔型を配置して実施する場合や、第2の孔型59及び第3の孔型69に関して、第2の孔型59を幅方向両端部が開放された孔型形状とし、第3の孔型69を爪高さの成形を同時に行う孔型形状とした場合についても、同様の改良を適用することが可能である。更には、複数パス圧延を実施する際に連続して配置される2つの圧延機で実施され、フランジ波が発生する恐れがあるような圧延工程に対して本発明は適用可能であり、必ずしも中間圧延工程にのみ適用されるものではない。具体的には、例えば粗圧延機と中間圧延機(第1中間圧延機)での圧延工程や、3基以上配設された中間圧延機の連続する2基において適用するといった事が可能である。
また、上記実施の形態では、前段の孔型(孔型59)における圧延中立線近傍でのフランジ対応部位のロール隙を、当該前段の孔型(孔型59)の基準ロール隙に比べて狭める構成を説明し、他の実施の形態では、後段の孔型(孔型69’)における圧延中立線近傍でのフランジ対応部位のロール隙を基準ロール隙に比べて広幅化する構成を説明している。これらの技術は組み合わせることも可能であり、それにより更なる作用効果が期待される。即ち、総フランジ圧下率に比べ、中立線O近傍での圧下率を低くし、第2中間圧延最終パス時に発生するフランジ波を抑制させ、フランジ波を発生させないような圧延を実施することが可能となる。
なお、上記実施の形態及び他の実施の形態では、ハット形鋼矢板を圧延する場合を例に挙げて図示・説明したが、本発明の適用範囲はこれに限られるものではない。即ち、中間圧延においてフランジ波が発生する恐れがある種々の形状のフランジを有する鋼矢板に対して本発明は適用可能である。具体的には、ハット形鋼矢板に加え、U形鋼矢板等にも適用することができる。
本発明の実施例として、本発明に係る鋼矢板の製造方法をハット形鋼矢板の第1中間圧延機(R1)及び第2中間圧延機(R2)に適用し、熱間圧延を実施した。一方で、本発明技術を適用しない熱間圧延を比較例とした。ここで本実施例でのハット形鋼矢板は、壁幅1mあたりの断面二次モーメントが約10000cm/mであるいわゆる10Hと呼ばれる製品をベースにフランジ厚を0.3mm小さくした製品を用いた。
以下に表1を参照して説明する実施例1〜8では、前段の孔型(第1中間圧延機の孔型)における圧延中立線近傍でのフランジ対応部位のロール隙を、当該前段の孔型(第1中間圧延機の孔型)の基準ロール隙に比べて狭める構成とし、上記実施の形態で説明したフランジ延伸低減率αを0.10≦α≦0.42の範囲内の値として圧延を実施した。また、実施例1〜8では、前段の孔型においてロール隙を狭める圧延中立線近傍でのフランジ対応部位の範囲(以下、単にロール隙を狭める範囲とも記載)を、当該フランジ対応部位の幅長さ全体を1とした時の0.3以上の範囲とした。
一方、表1に示す比較例1ではフランジ延伸低減率αを本発明の範囲外とし、比較例2ではロール隙を狭める範囲を本発明の範囲外とした。
Figure 0006874597
表1に示す実施例1〜5では、ロール隙を狭める範囲を一定の値(0.60)とし、フランジ延伸低減率αが0.10≦α≦0.42の範囲内の値となるように構成し、圧延を実施した。その結果、被圧延材のフランジ波急峻度は0.010以下となり、仕上圧延機においてフランジ波を消去することができた。
一方、比較例1では、フランジ延伸低減率αが本発明の範囲外である0.08となるような構成とし、圧延を実施した。その結果、被圧延材のフランジ波急峻度は0.012となり、仕上圧延機においてフランジ波を消去することができず、製品として不合格となった。
また、表1に示す実施例6〜8では、フランジ延伸低減率αを一定の値(0.35)とし、ロール隙を狭める範囲を0.30〜0.70として圧延を実施した。その結果、被圧延材のフランジ波急峻度は0.010以下となり、仕上圧延機においてフランジ波を消去することができた。
一方、比較例2では、ロール隙を狭める範囲を本発明の範囲外である0.20として圧延を実施した。その結果、被圧延材のフランジ波急峻度は0.015となり、仕上圧延機においてフランジ波を消去することができず、製品として不合格となった。
以下に表2を参照して説明する実施例9〜14では後段の孔型(第2中間圧延機の孔型)における圧延中立線近傍でのフランジ対応部位のロール隙を、当該後段の孔型(第2中間圧延機の孔型)の基準ロール隙に比べて広げる構成とし、上記実施の形態で説明したフランジ隙偏差率βを0.035≦β≦0.100の範囲内の値として圧延を実施した。また、実施例9〜14では、後段の孔型においてロール隙を広げる圧延中立線近傍でのフランジ対応部位の範囲(以下、単にロール隙を広げる範囲とも記載)を、当該フランジ対応部位の幅長さ全体を1とした時の0.3以上の範囲とした。
一方、表2に示す比較例3ではフランジ隙偏差率βを本発明の範囲外とし、比較例4ではロール隙を広げる範囲を本発明の範囲外とした。
Figure 0006874597
表2に示す実施例9〜11では、ロール隙を広げる範囲を一定の値(0.60)とし、フランジ隙偏差率βが0.035≦β≦0.100の範囲内の値となるように構成し、圧延を実施した。その結果、被圧延材のフランジ波急峻度は0.010以下となり、仕上圧延機においてフランジ波を消去することができた。
一方、比較例3では、フランジ隙偏差率βが本発明の範囲外である0.020となるような構成とし、圧延を実施した。その結果、被圧延材のフランジ波急峻度は0.016となり、仕上圧延機においてフランジ波を消去することができず、製品として不合格となった。
また、表2に示す実施例12〜14では、フランジ隙偏差率βを一定の値(0.080)とし、ロール隙を広げる範囲を0.30〜0.70として圧延を実施した。その結果、被圧延材のフランジ波急峻度は0.010以下となり、仕上圧延機においてフランジ波を消去することができた。
一方、比較例4では、ロール隙を広げる範囲を本発明の範囲外である0.20として圧延を実施した。その結果、被圧延材のフランジ波急峻度は0.015となり、仕上圧延機においてフランジ波を消去することができず、製品として不合格となった。
以上、表1及び表2を参照して説明した実施例1〜14においては、フランジ延伸低減率α及びロール隙を狭める範囲、フランジ隙偏差率β及びロールを広げる範囲を所定の条件とすることで、連続する2つの孔型(ここでは第1中間圧延機と第2中間圧延機の孔型)において、後段の孔型における圧延中立線近傍でのフランジ厚下率をフランジ総圧下率に比べて小さくすることで、フランジ波の急峻度を低く抑え、製品寸法精度の向上が実現された。一方で、比較例1〜4に示すように、圧延時のフランジ圧下率の条件を本発明の範囲外とした場合には、フランジ波の急峻度を十分に低減できず、形状不良の発生が確認された。
また、以下の表3を参照して説明する実施例15、16では前段の孔型における圧延中立線近傍でのフランジ対応部位のロール隙を、当該前段の孔型の基準ロール隙に比べて狭める構成とし、上記実施の形態で説明したフランジ延伸低減率αを0.10≦α≦0.42の範囲内の値とした。加えて、後段の孔型における圧延中立線近傍でのフランジ対応部位のロール隙を、当該後段の孔型の基準ロール隙に比べて広げる構成とし、上記実施の形態で説明したフランジ隙偏差率βを0.035≦β≦0.100の範囲内の値として圧延を実施した。なお、ロール隙の変更を行う圧延中立線近傍でのフランジ対応部位の範囲を、当該フランジ対応部位の幅長さ全体を1とした時の0.3以上の範囲とした。
Figure 0006874597
表3に示す実施例15では、フランジ延伸低減率αを0.10とし、フランジ隙偏差率βを0.035とし、それぞれの孔型(前段孔型・後段孔型)でのロール隙の変更範囲W/Bを0.60として圧延を実施した。その結果、被圧延材のフランジ波急峻度は0.000となり、フランジ波は発生しなかった。
また、表3に示す実施例16では、フランジ延伸低減率αを0.35とし、フランジ隙偏差率βを0.080とし、それぞれの孔型(前段孔型・後段孔型)でのロール隙の変更範囲W/Bを0.30として圧延を実施した。その結果、被圧延材のフランジ波急峻度は0.000となり、フランジ波は発生しなかった。
以上のことから、本発明を適用した場合の圧延の優位性が確認された。
本発明は、例えばハット形鋼矢板、U形鋼矢板等のフランジを有する鋼矢板の製造方法に適用できる。
1…製造装置
3…ウェブ対応部
5、6…フランジ対応部
8、9…腕対応部
10、11…継手対応部
14、15…爪部
17…粗圧延機
18…第1中間圧延機
19…第2中間圧延機
30…仕上圧延機
45…(第1の孔型の)上孔型ロール
48…(第1の孔型の)下孔型ロール
49…第1の孔型
55…(第2の孔型の)上孔型ロール
58…(第2の孔型の)下孔型ロール
59…第2の孔型
59a…(第2の孔型の)孔型部分
65…(第3の孔型の)上孔型ロール
68…(第3の孔型の)下孔型ロール
69、69’…第3の孔型
69a…(第3の孔型の)孔型部分
75…(第4の孔型の)上孔型ロール
78…(第4の孔型の)下孔型ロール
79…第4の孔型
85…(第5の孔型の)上孔型ロール
88…(第5の孔型の)下孔型ロール
89…第5の孔型
A(A1〜A4)…被圧延材
L…圧延ライン
O…中立線

Claims (7)

  1. 被圧延材に粗圧延工程、中間圧延工程及び仕上圧延工程を行うフランジを有する鋼矢板の製造方法であって、
    前記粗圧延工程及び中間圧延工程における被圧延材の圧延は、連続する複数の孔型における複数パス圧延によって行われ、
    前記複数の孔型での圧延において、連続する2つの孔型における、前段の孔型と後段の孔型との少なくとも一方では、
    前段の孔型における圧延中立線近傍でのフランジ対応部位のロール隙を、当該前段の孔型の基準ロール隙に比べて狭める条件と、
    後段の孔型における圧延中立線近傍でのフランジ対応部位のロール隙を、当該後段の孔型の基準ロール隙に比べて広げる条件と、の少なくとも一方の条件にてフランジ対応部位のロール隙を構成し、圧延を行うことを特徴とする、フランジを有する鋼矢板の製造方法。
  2. 前記連続する2つの孔型では、前段の孔型における圧延中立線近傍でのフランジ対応部位のロール隙を、当該前段の孔型の基準ロール隙に比べて狭めるように構成し、
    以下の式(1a)で規定されるフランジ延伸低減率αを0.10以上0.42以下とした条件で圧延を行うことを特徴とする、請求項1に記載のフランジを有する鋼矢板の製造方法。
    α={(t0−t0n’)/t0}/{(t0−t1)/t0} ・・・(1a)
    但し、t0n’:前段孔型での最終パス時の圧延中立線近傍の孔型ロール隙、t0:前段孔型での最終パス時の基準ロール隙、t1:後段孔型での最終パス時の基準ロール隙
  3. 前記連続する2つの孔型では、後段の孔型における圧延中立線近傍でのフランジ対応部位のロール隙を、当該後段の孔型の基準ロール隙に比べて広げるように構成し、
    以下の式(2)で規定される孔型フランジ隙偏差率βを0.035以上0.1以下とした条件で圧延を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載のフランジを有する鋼矢板の製造方法。
    β=(t1n’−t1)/t1 ・・・(2)
    但し、t1n’:後段孔型での最終パス時の圧延中立線近傍のロール隙、t1:後段孔型での最終パス時の基準ロール隙
  4. 前段の孔型においてロール隙を狭める圧延中立線近傍でのフランジ対応部位の範囲は、
    当該前段の孔型のフランジ対応部位の幅方向長さ全体を1とした場合に、圧延中立線を中心として0.3以上の範囲であることを特徴とする、請求項2に記載のフランジを有する鋼矢板の製造方法。
  5. 後段の孔型においてロール隙を広げる圧延中立線近傍でのフランジ対応部位の範囲は、
    当該後段の孔型のフランジ対応部位の幅方向長さ全体を1とした場合に、圧延中立線を中心として0.3以上の範囲であることを特徴とする、請求項3に記載のフランジを有する鋼矢板の製造方法。
  6. 後段の孔型において被圧延材の圧延中立線近傍に隆起部が形成されたフランジ対応部は、当該後段の孔型の後に配置した孔型による圧延により所望の平坦形状に圧延造形されることを特徴とする、請求項3又は5に記載のフランジを有する鋼矢板の製造方法。
  7. 前記フランジを有する鋼矢板はハット形鋼矢板であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフランジを有する鋼矢板の製造方法。
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