JP5141839B2 - T形鋼の製造方法および圧延設備 - Google Patents

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Description

本発明は、熱間圧延によるT形鋼の製造方法および圧延設備に関し、特にフランジ幅が異なる複数のサイズのT形鋼を同一設備で製造するものに関する。
図1にT形鋼の断面形状を示す。T形鋼10はウェブ11とフランジ12からなる断面がT字形状の形鋼であり、造船や橋梁等の分野で広く使用され、その用途や使用条件、使用箇所等によって様々な寸法の製品が製造されている。
通常用いられるT形鋼の寸法は、ウェブ高さHp:200〜1000mm程度、ウェブ厚twp:8〜25mm程度、ウェブ内法寸法(フランジ内面からウェブ先端部までの距離):190〜980mm程度、フランジ幅Bp:80〜300mm程度、フランジ厚tfp:12〜40mm程度である。造船用として用いられるT形鋼の場合、ウェブ高さはフランジ幅の2倍以上であることが多い。
ウェブ高さとフランジ幅がほぼ同じであっても、ウェブ厚とフランジ厚が異なる複数のサイズのT形鋼が、必要とされる強度に応じて選択され、構造物に適用される。このため、厚みの異なるT形鋼を効率よく製造する技術が必要とされている。
T形鋼はウェブ11とフランジ12とを溶接して製造されることが一般的であるが、圧延にてT形鋼を一体成形する技術も提案されている。
例えば、ウェブ厚、フランジ厚、ウェブ高さおよびフランジ幅が様々な寸法のT形鋼を効率よく製造するため、H形鋼の製造に用いられるユニバーサル圧延法を用いてT形鋼を圧延する技術が開示されている(特許文献1)。
また、断面寸法精度が良好なT形鋼を製造するため、2基のユニバーサル圧延機を近接配置し、一方のユニバーサル圧延機の竪ロールでウェブ先端を圧延する技術が開発されている(特許文献2)。さらに、ユニバーサル圧延機を中間圧延工程に2基、仕上圧延工程に1基配置した熱間圧延設備と圧延方法が提案されている(例えば特許文献3)。
図3はその一例を示し、図において1は粗造形圧延機、2は第1の粗ユニバーサル圧延機、3はエッジャ圧延機、4は第2の粗ユニバーサル圧延機、5は仕上ユニバーサル圧延機を示す。加熱炉(図示せず)から搬出された素材鋼片(図示せず)は粗造形圧延機1によって断面形状が略T形のT形鋼片に圧延される。
得られたT形鋼片を、第1の粗ユニバーサル圧延機2とエッジャ圧延機3と第2の粗ユニバーサル圧延機4が近接して配置された圧延設備列で圧延を行って、ウェブとフランジの圧下を行う(中間圧延工程)。
第1の粗ユニバーサル圧延機2は図5に示すように、水平軸上を回転する水平ロール21a、21bと、垂直軸上を回転する竪ロール22a、22bを有する。図5の例では、水平ロール21a、21bの圧下面の幅は、ウェブ11の内法寸法(フランジ内面からウェブ先端部までの距離)より大きくする。
第1の粗ユニバーサル圧延機2では、水平ロール21a、21bによりウェブ11の高さ方向の全面をその板厚方向に圧下し、竪ロール22aと、水平ロール21a、21bの側面でフランジ12をその板厚方向に圧下する。
エッジャ圧延機3は図6に示すように、水平軸方向に大径部33と小径部32を備えた水平ロール31a、31bを有し、大径部33が被圧延材のウェブを誘導し、小径部32のロール表面がフランジの端面をその幅方向に圧下する。ここで、従来は、大径部33と小径部32の段差の大きさHEeは、T形鋼のフランジ脚長(フランジ12の幅とウェブ11の板厚の差の1/2の値)と同じかやや小さい値とされていた。
第2の粗ユニバーサル圧延機4は、図7に示すように、水平軸上を回転する水平ロール41a、41bと、垂直軸上を回転する竪ロール42a、42bを有する。図7の例では、水平ロール41a、41bのロール面の幅は、ウェブの内法寸法(フランジ内面からウェブ先端部までの距離)より小さくする。被圧延材のフランジを水平ロール41a、41bの側面に押し付けた場合、ウェブ先端部は、水平ロール41a、41bのロール面より外側に突出するので、竪ロール42bでウェブをその高さ方向に圧下することが可能となる。
第2の粗ユニバーサル圧延機4では、水平ロール41a、41bのロール開度を調整して、ウェブの板厚を調整し、竪ロール42aと水平ロール41a、41bの一方の側面との開度を調整することによりフランジの板厚を調整し、竪ロール42bと水平ロール41a、41bの他方の側面との開度を調整することによりウェブの高さと、端部の形状を調整する。
中間圧延工程で得られたT形鋼は、仕上圧延工程で製品寸法に圧延する。仕上ユニバーサル圧延機5は、図8に示すように、水平軸上を回転する水平ロール51a、51bと垂直軸上を回転する竪ロール52a、52bを有し、水平ロール51a、51bの側面はロール面と直交させる。竪ロール52aで被圧延材のフランジを圧延すると、ウェブに対し、フランジが垂直に整形される。このとき、フランジとウェブの板厚は数%以下の軽圧下とすることが好ましい。竪ロール52bを水平ロール51a、51bのフランジと対向しない側の側面に押圧することで水平ロール51a、51bが軸方向に移動しないようにできる。なお、図8の例では、水平ロール51a、51bの圧下面の幅は、ウェブ内法寸法より大きくする。
特公昭43−19671号公報 特開2007−331027号公報 特許4544371号公報
ところで、T形鋼は様々なウェブ高さとフランジ幅の製品が使用されるため、熱間圧延でT形鋼を製造する場合にも、ウェブ高さやフランジ幅が異なるT形鋼を製造する必要性が高い。しかし、従来の圧延方法では、ウェブ高さやフランジ幅が異なるT形鋼を製造する場合には、粗造形圧延工程で圧延するT形鋼片を製品寸法に合わせた寸法にする必要があった。
例えば、フランジ幅の場合、T形鋼片におけるフランジ脚長は製品におけるフランジ脚長とほぼ同じ値としていた。すなわち、図1は製品断面形状における各部の寸法関係を説明する図で、フランジ脚長HEpはフランジ幅Bpとウェブ厚twpの差の1/2の値であるが、図2に示すT形鋼片におけるフランジ脚長HE0を、この製品のフランジ脚長HEpとほぼ同じ値になるように設定することが必要であった(特許文献2において、大半の実施例ではT形鋼片のフランジ脚長と製品のフランジ脚長は同じ値で、最も差が大きい実施例であってもHE0−HEp=2.5mmである。特許文献3の実施例において、HE0とHEpの差は最大で1.5mmである。特許文献1にはT形鋼片と製品におけるフランジ幅やフランジ脚長の関係は示されていない。)。
このように、熱間圧延でT形鋼を製造する場合、フランジ脚長をT形鋼片と製品間でほぼ同じ寸法にしなければならず、したがって、フランジ幅が異なるT形鋼製品を製造するためには、T形鋼片を圧延する粗造形圧延機のロールを製品のフランジ脚長に合わせて多数準備する必要がある。
例えば、フランジ幅が100mm、125mm、150mmという3種類の製品を製造する場合に、フランジ脚長が12.5〜25mm程度異なるため、従来の圧延方法では粗造形圧延機のロールをそれぞれに合わせて3組準備しなければならず、ロール費用が高価になり、製造コストを低減することが困難であった。
そこで、本発明は上記課題を解決し、フランジ幅の異なるT形鋼製品を効率よく低コストで製造する方法および圧延設備を提供することを目的とする。
従来の圧延方法のように、T形鋼片と製品のフランジ脚長がほぼ同じ場合には、フランジとウェブの厚みの比率は、製品の厚み比tfp/twpに対してT形鋼片の厚み比tf0/tw0がほぼ同じか、やや大きくなるように決められていた。
すなわち、粗ユニバーサル圧延において、フランジとウェブの厚み方向の圧下率(以下、それぞれフランジ圧下率、ウェブ圧下率と呼ぶ)をほぼ同じか、フランジ圧下率が数%大きくなるように設定していた。その理由は、特許文献1に記載されているように、フランジとウェブの長手方向への伸びを同じにして被圧延材の曲がりを防止するためであり、特許文献1にはフランジとウェブの圧下率をほぼ同じか、寸法によってはフランジ圧下率を3%程度大きくすることが記載されている。
本発明者らは、T形鋼製品の各部の寸法に及ぼす、T形鋼片の各部の寸法と粗圧延工程〜仕上圧延工程における圧延条件の影響を把握するため、粗ユニバーサル圧延でフランジの圧下をウェブ圧下よりも大きくした場合について、フランジ脚長がどのように変化するかを、製品寸法がウェブ高さ300mm、フランジ幅125mmのT形鋼の圧延において調査した。
ウェブ厚が30mm程度の圧延初期において、フランジ圧下率を約24%、ウェブ圧下率を約15%に設定し、フランジ圧下率がウェブ圧下率よりも9%程度大きな条件にしたところ、粗ユニバーサル圧延の前後でフランジ脚長が6mm程度と大きく増加するという結果が得られた。
ここで、フランジをウェブより強く圧下すると、圧延機の出側で被圧延材がウェブ側に大きく曲がる可能性があるが、ウェブ厚が厚い圧延初期の段階では、ウェブ側への曲がりが少々発生するものの、その量は小さくガイド等で抑制可能な程度であった。
以上のように、フランジとウェブの厚みが厚い粗ユニバーサル圧延の初期において、フランジ圧下率をウェブ圧下率よりも9%程度大きく強圧下した場合に、圧延の支障にならない程度の圧延機出側における曲がりの範囲内でフランジ脚長を増加させることが可能である、すなわち、粗ユニバーサル圧延においてフランジ脚長を増加させて、同じフランジ脚長のT形鋼片からフランジ幅の異なるT形鋼を作り分けることが可能であるとする新しい知見を得た。
本発明は上記知見を基に更に検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、
1.鋼片を粗造形圧延機により略T字形状に粗成形する粗圧延工程と、略T字形状に粗成形されたT形鋼片を、ユニバーサル圧延機によりウェブとフランジを圧下するとともにエッジャ圧延機によりフランジの端面を圧下する中間圧延工程と、前記中間圧延工程で得られたT形鋼を製品寸法に圧延する仕上圧延工程を有し、前記T形鋼片のフランジ脚長よりも製品のフランジ脚長が大きいT形鋼を製造するT形鋼の製造方法であって、前記中間圧延工程でユニバーサル圧延機でウェブとフランジの厚み方向に圧下する際のフランジ圧下率rfとウェブ圧下率rwの差rf−rwを圧下率差とし、前記中間圧延工程の前半パスにおいて前記圧下率差が5〜15%の範囲で圧延を行うパスを少なくとも1パス設けるとともに、1パス目または1パス目を含む最初の複数パスではエッジャ圧延機でフランジ先端を圧下しないことを特徴とするT形鋼の製造方法。
2.前記粗圧延工程におけるT形鋼片のフランジとウェブの圧延は、粗圧延後に得られるT形鋼片のフランジ厚tf0とウェブ厚tw0の比(tf0/tw0)が、前記T形鋼片から製造されるT形鋼のフランジ厚tfpとウェブ厚twpの比(tfp/twp)より大きくなるように圧延することを特徴とする1記載のT形鋼の製造方法。
3.製造する製品のフランジ幅が、前記中間圧延工程においてフランジ脚長を増加させない場合の製品フランジ幅に対して大きいほど、前記粗圧延工程で圧延するT形鋼片のウェブ厚を小さくすることを特徴とする1または2記載のT形鋼の製造方法。
4.製造する製品のフランジ幅が、前記中間圧延工程においてフランジ脚長を増加させない場合の製品フランジ幅に対して大きいほど、前記粗圧延工程で圧延するT形鋼片のフランジ幅を小さくすることを特徴とする1乃至3のいずれか記載のT形鋼の製造方法。
5.鋼片を粗造形圧延機により略T字形状に粗成形する粗圧延工程と、略T字形状に粗成形されたT形鋼片を、ユニバーサル圧延機によりウェブとフランジを圧下するとともにエッジャ圧延機によりフランジの端面を圧下する中間圧延工程と、前記中間圧延工程で得られたT形鋼を製品寸法に圧延する仕上圧延工程を有し、前記T形鋼片のフランジ脚長よりも製品のフランジ脚長が長いT形鋼を製造するT形鋼の製造方法であって、前記粗圧延工程の粗造形圧延機では1種類のロール孔型形状を用いて製品フランジ幅に応じてT形鋼片のウェブ厚を変更する圧延を行い、前記中間圧延工程のエッジャ圧延機では製品フランジ幅に応じて孔型深さの異なるロール孔型を使い分けて圧延を行うことにより、フランジ幅の異なる複数サイズのT形鋼を製造することを特徴とするT形鋼の製造方法。
6.粗造形圧延機と、ユニバーサル圧延機およびエッジャ圧延機からなる中間圧延機群を有するT形鋼の圧延設備であって、前記エッジャ圧延機のロールのT形鋼のフランジ脚長に相当する孔型深さHEeが、前記粗造形圧延機のロールのT形鋼片のフランジ脚長に相当する孔型深さHE0よりも10mm以上大きく、且つT形鋼製品のフランジ脚長HEpと略等しいことを特徴とする、T形鋼の圧延設備。
7.粗造形圧延機と、粗ユニバーサル圧延機、エッジャ圧延機および仕上ユニバーサル圧延機からなる圧延機群を有するT形鋼の圧延設備であって、前記エッジャ圧延機のロールのT形鋼のフランジ脚長に相当する孔型深さHEeが、前記粗造形圧延機のロールのT形鋼片のフランジ脚長に相当する孔型深さHE0よりも10mm以上大きく、且つT形鋼製品のフランジ脚長HEpと略等しいことを特徴とする、T形鋼の圧延設備。
本発明によればフランジ幅が異なる複数のサイズのT形鋼を一つの粗造形圧延ロールから作り分けることが可能で、ロール費用の大幅な削減により低製造コストで様々なフランジ幅のT形鋼が製造可能となり、産業上極めて有用である。
T形鋼の断面形状を示す図。 粗造形圧延後のT形鋼片の断面形状を示す図。 T形鋼の圧延ラインの設備配置を示す図。 粗造形圧延におけるT形鋼片の圧延状況と孔型形状を示す図。 T形鋼圧延設備の第1の粗ユニバーサル圧延機の圧延状態を示す図。 T形鋼圧延設備のエッジャ圧延機の圧延状態を示す図。 T形鋼圧延設備の第2の粗ユニバーサル圧延機の圧延状態を示す図。 T形鋼圧延設備の仕上ユニバーサル圧延機の圧延状態を示す図。 T形鋼の圧延ラインの設備配置を示す図。
本発明に係るT形鋼の製造方法および圧延設備を、図3に示したT形鋼圧延設備を用いて説明する。
図3に示す実施形態におけるT形鋼の圧延設備は、粗造形圧延機1と、第1の粗ユニバーサル圧延機2とエッジャ圧延機3と第2の粗ユニバーサル圧延機4が近接して配置された中間圧延機群を有している。そして、エッジャ圧延機3のロールのT形鋼のフランジ脚長に相当する孔型深さHEeは、後述するように、粗造形圧延機1のロールのT形鋼片のフランジ脚長に相当する孔型深さHE0よりも10mm以上大きく、T形鋼製品のフランジ脚長HEpと略等しくなっている。
粗造形圧延機1により、素材となるブルーム等の矩形断面鋼片は、T形断面を有するT形鋼片に圧延される(粗圧延工程)。得られたT形鋼片を、第1の粗ユニバーサル圧延機2とエッジャ圧延機3と第2の粗ユニバーサル圧延機4が近接して配置された圧延設備列でウェブとフランジの圧下を行い(中間圧延工程)、仕上ユニバーサル圧延機5で製品寸法のT形鋼に仕上げる(仕上圧延工程)。図1にT形鋼の製品断面形状を、図2にT形鋼片の断面形状を示す。
製品断面におけるフランジ脚長HEp(図1)とT形鋼片におけるフランジ脚長HE0(図2)は、従来ほぼ同じ値であるが、本発明では、中間圧延工程の粗ユニバーサル圧延においてフランジ圧下率とウェブ圧下率を制御してフランジ脚長を増加させることにより、一つのT形鋼片のフランジ脚長HE0から様々な寸法のフランジ脚長HEpを有する製品を作り分けることを特徴とする。
フランジ脚長は、粗ユニバーサル圧延の前半において、フランジ圧下率をウェブ圧下率に対して10%程度大きくするパスを少なくとも1パス設けることで制御する。このような圧延を施すと、施さない場合と比較して、同じフランジ脚長のT形鋼片からフランジ脚長が10mm以上大きく、フランジ幅が20mm以上大きいT形鋼製品が圧延できる。
ただし、フランジとウェブの圧下率の差が大きいほど、フランジ脚長の増加量も大きくなるが、ウェブ側への曲がりが増大するため、15%以下とすることが好ましい。また、有効なフランジ脚長の増加量を得るため、フランジとウェブの圧下率差を5%以上とする。好ましくはフランジとウェブの圧下率差を6%以上とし、さらに好ましくは6.2%以上とする。
すなわち、本発明では、中間圧延工程のユニバーサル圧延機でウェブとフランジの厚み方向に圧下する際のフランジ圧下率rfとウェブ圧下率rwの差rf−rwを圧下率差と定義するとき、中間圧延工程の前半パスにおいて、前記圧下率差が5〜15%の範囲で圧延を行うパス(以下、フランジ強圧下パスと呼ぶ)を少なくとも1パス設ける。なお、中間圧延工程の総圧下パス数が奇数回の場合は、真ん中の圧下パスまでを前半パスとする。
フランジ脚長を増加させるフランジ強圧下パスは、圧延曲がりが少ない粗ユニバーサル圧延の早い段階で行うことが好ましい。粗ユニバーサル圧延が進み、フランジやウェブの厚みが小さくなるほど、フランジを強圧下することによるウェブ側への圧延曲がりが発生しやすくなるためである。
ここで、このようなフランジ脚長を増加させる圧延を可能とするため、本発明では、図6に示すエッジャ圧延機3に用いるロールのT形鋼のフランジ脚長に相当する孔型深さHEeを、図4に示す粗造形圧延機1のロールのT形鋼片のフランジ脚長に相当する孔型深さHE0よりも10mm以上大きく、T形鋼製品のフランジ脚長HEpと略等しいものを用いる。なお、孔型深さHEeが製品フランジ脚長HEpに略等しいとは、孔型深さHEeが製品フランジ脚長HEpよりも0〜4mm程度小さいことを意味する。このような孔型深さHEeのエッジャロールを用いることにより、中間圧延工程の前半パスにおいて、1パス目または1パス目を含む最初の複数パス(通常は1パス目から最後のフランジ強圧下パスよりも前までの連続パス)ではエッジャ圧延機でフランジ先端を圧下せず、フランジ強圧下パスにおいてはフランジ脚長を増加させることができるとともに、フランジ強圧下パスよりも後のパスではウェブ厚を圧下することなく目的とする製品フランジ幅に応じた適切なフランジ幅に圧下することができる。
なお、本発明では、フランジをウェブよりも強圧下するため、粗造形圧延においてT形鋼片のフランジ厚tf0とウェブ厚tw0の比率tf0/tw0を、そのT形鋼片から製造されるT形鋼製品でのフランジ厚tfpとウェブ厚twpの厚み比tfp/twpよりも大きくなるように圧延する。ここで、tf0/tw0の値は粗造形圧延ロールの想定製品フランジ幅(中間圧延工程でフランジ脚長を増加させない場合の製品フランジ幅)と実際に圧延する製品のフランジ幅の比率に応じて決定する。
ここで、粗造形圧延の孔型を示す図4から明らかなように、粗造形圧延機のロール開度を変更すると、主にウェブ厚tw0が変化し、フランジ厚tf0はほとんど変化しない。したがって、tf0/tw0を大きくするためには、T形鋼片のウェブ厚tw0を通常よりも薄く圧延する必要がある。
例えば、通常の圧延条件でフランジ幅が100mmのT形鋼製品を製造するために用いる粗造形圧延ロールでフランジ幅150mmの製品を製造する場合、フランジ幅が1.5倍となることに対応してT形鋼片のウェブ厚tw0を2/3のウェブ厚に減じる。ただし、粗ユニバーサル圧延工程で多少の寸法調整が可能であるため、ウェブ厚tw0は厳密に2/3のウェブ厚に減じる必要はなく、フランジ幅比の逆数倍の厚みに対し±10%程度の許容範囲内の厚みであればよい。
このように、本発明法によりフランジ幅を増加させる場合、粗造形圧延におけるT形鋼片のウェブ厚が、従来法(フランジとウェブの圧下率がほぼ等しく、T形鋼片のフランジ脚長を中間圧延工程で増加させない)で得られる製品フランジ幅と本発明法で得られる製品フランジ幅との比の略逆数を乗じた値となるように設定する。すなわち、製造する製品フランジ幅Bpが、中間圧延工程でフランジ脚長を増加させない場合の製品フランジ幅に対して大きいほど、粗圧延工程で圧延するT形鋼片のウェブ厚tw0を小さくする。
ここで、このようなウェブ厚の調整を実施すると、製品フランジ幅Bpが中間圧延工程でフランジ脚長を増加させない場合、前記従来法の製品フランジ幅に対して大きなT形鋼を製造する場合ほど、T形鋼片のフランジ幅B0を小さくすることが必要になる。これは、製品のフランジ幅Bpが大きいほどフランジ脚長HEpが大きくなるので、粗ユニバーサル圧延でよりフランジを強圧下する必要性が生じ、これに対応するためにT形鋼片のウェブ厚tw0を小さくするためである。粗造形圧延では同じ孔型を使用するため、B0の減少幅はtw0の減少と同じ寸法となるが、B0が減少しても問題なく本発明のフランジ幅拡大効果が得られる。
なお、中間圧延工程において、フランジ圧下率をウェブ圧下率よりも大きくしてフランジ脚長を増加させる圧延パスは、複数の粗ユニバーサル圧延機が設置されている場合、どの粗ユニバーサル圧延機で実施してもよい。
例えば、図3に示すT形鋼圧延設備の場合には、中間圧延工程の圧延機として第1の粗ユニバーサル圧延機2と第2の粗ユニバーサル圧延機4の2台が設置されているので、その両方の粗ユニバーサル圧延機においてフランジ脚長を増加させることができる。
図3に示す圧延設備の中間圧延工程では、2基の粗ユニバーサル圧延機で往復圧延するので、ユニバーサル圧延の1パス目は第1の粗ユニバーサル圧延機2(U1)、2パス目は第2の粗ユニバーサル圧延機(U2)となり、以降は逆方向圧延と正方向圧延が交互に実施されるためU2→U1→U1→U2・・・という順番で圧延される。どちらの圧延機で圧延されるかは関係なく、圧延される順番で1パス目から最終パスまでのパス数が決定される。
中間圧延工程でフランジ先端を圧下してフランジ幅とフランジ脚長を制御する役割はエッジャ圧延機3が担っている。前述したように、図6に示すエッジャ圧延機3の大径部33と小径部32の段差の大きさHEeは、図4に示す粗造形圧延ロールのT形鋼片の脚長に相当する孔型深さHE0よりも10mm以上大きく、また目標とする製品のフランジ脚長HEpと同じまたはフランジ幅を圧下する分を考慮して数mm(0超〜4mm)程度小さな値とする(同じである場合も含めて「0〜4mm程度小さい」とも言う)。
したがって、フランジ幅の異なるT形鋼を圧延する場合に、エッジャ圧延機のロール孔型は製品に適した段差HEeの大きさのものを使い分ける必要があるが、粗造形圧延ロールは製品のフランジ幅によらず、ある寸法を有する一つのロール孔型形状で良い。
エッジャ圧延機3のロールに軸方向に大径部33との段差HEeが夫々異なる複数の小径部32を設ければ、ロールを軸方向にシフトさせるだけで段差HEeを変更することが可能であるので、粗造形圧延機のロールを交換する場合に比べれば、ロール費用の負担ははるかに小さくなる。
なお、本発明に係る製造方法を適用する圧延設備は、図3に示すこの圧延設備に限定されるものではなく、例えば、特許文献1のように粗ユニバーサル圧延機が1基の場合や、あるいは粗ユニバーサル圧延機が3基以上の場合にも適用できる。
特許文献2のように2基のユニバーサル圧延機が近接配置されている場合であっても、ウェブとフランジの厚みを圧下する圧延機が実質的にその片方の1基である場合には、当該1基の粗ユニバーサル圧延機の圧延パスに本発明に係る製造方法を適用すれば良い。
さらに、図9に示すように、仕上ユニバーサル圧延機5を第1の粗ユニバーサル圧延機と兼用され、圧延機の数を少なくする場合においても、本発明に係る製造方法を適用することができる。図9に示す圧延ラインにおけるT形鋼の圧延設備は、粗造形圧延機1と、第2の粗ユニバーサル圧延機4とエッジャ圧延機3と仕上ユニバーサル圧延機5が近接して配置された圧延機群を有している。エッジャ圧延機3のロールのT形鋼のフランジ脚長に相当する孔型深さHEeは、粗造形圧延機1のロールのT形鋼片のフランジ脚長に相当する孔型深さHE0よりも10mm以上大きく、T形鋼製品のフランジ脚長HEpと略等しくなっている。
粗造形圧延機1で成形したT形鋼片を、第2の粗ユニバーサル圧延機4とエッジャ圧延機3と仕上ユニバーサル圧延機5が近接して配置された圧延設備列で往復圧延してウェブとフランジの圧下を行い(中間圧延工程)、最終パスの圧延では、仕上ユニバーサル圧延機5で製品寸法のT形鋼に仕上げる(仕上圧延工程)。
第2の粗ユニバーサル圧延機4または仕上ユニバーサル圧延機5で中間圧延工程の圧延を行う際に本発明の圧延方法を適用し、フランジを強圧下することによってフランジ幅を増加させる。
なお、第2の粗ユニバーサル圧延機4ではウェブ先端が厚み方向に圧下されないが、仕上ユニバーサル圧延機5でウェブ厚が均一化されるため、製品のウェブを均一な厚みとすることができる。
また、第2の粗ユニバーサル圧延機4とエッジャ圧延機3において、フランジは外側に傾斜した状態で圧延されるのに対し、仕上ユニバーサル圧延機5ではフランジが垂直な状態で圧延される。しかし、フランジの傾斜角度θが10°以下であれば、安定した圧延が可能であり、特に問題は生じなかった。
図3に示すT形鋼の圧延設備を用いて、T形鋼のユニバーサル圧延を実施した。
[従来例]
通常の圧延法により製品寸法が、ウェブ高さ300mm、フランジ幅100mm、ウェブ厚12mm、フランジ厚19mmで、製品フランジ脚長HEpが44mmのT形鋼を製造した。
通常の粗造形圧延により得られた、ウェブ厚tw0=48mm、フランジ厚tf0=85mm、ウェブ高さH0=370mm,フランジ幅B0=136mmで、フランジ脚長HE0=44mmのT形鋼片を用い、中間圧延工程のパス数は5パスとし、第1の粗ユニバーサル圧延機2と第2の粗ユニバーサル圧延機2でそれぞれ5パスずつ、合計10パスのユニバーサル圧延を行った。
表1に中間圧延工程のパススケジュールを示す。各パスのフランジ圧下率はウェブ圧下率よりも0〜4%大きく設定されているが、本発明範囲内である5〜15%より小さい。エッジャ圧延機の段差HEeの大きさは製品のフランジ脚長HEpよりもやや小さい42mmとした。
表1のパススケジュールに従って中間圧延を行った後、1パスの仕上ユニバーサル圧延を実施して、エッジャ圧延後のフランジ脚長が43mm、最終パスによって、フランジ脚長が45mmでフランジ幅が100mmの製品を圧延した。
[本発明例1]
本発明例として、従来例と同じ粗造形圧延ロールを用いてフランジ幅が150mmのT形鋼を製造することにした。ウェブ高さは300mm、ウェブ厚12mm、フランジ厚19mmと、他の断面寸法は同じにしたので、製品フランジ脚長HEpは69mmとなる。そこで、本発明法を用いて、フランジ脚長HEpを増加させることにした。
製品フランジ幅が1.5倍となることに対応して、粗造形圧延により圧延されるT形鋼片のウェブ厚を従来例の2/3倍の32mmに変更し、T形鋼片の寸法をウェブ厚tw0=32mm、フランジ厚tf0=85mm、フランジ幅B0=120mmとした。フランジ脚長HE0は同じロールを使用したため44mmのままである。
このT形鋼片を用い、表2のパススケジュールに基づいて粗ユニバーサル圧延を行った。粗ユニバーサル圧延前半のU−2〜U−5パスのフランジ圧下率をウェブ圧下率よりも6〜10%大きく設定した。粗ユニバーサル圧延後半のU−6〜U−10パスでは、フランジ圧下率をウェブ圧下率よりも1〜3%大きくした。また、エッジャ圧延機の段差の大きさは、製品のフランジ脚長HEpが69mmであることから、67mmのものを用いた。
表2のパススケジュールにおいて、粗ユニバーサル圧延の前半のU−5パスまでに実施されるエッジャ圧延のパスでは、フランジ脚長がエッジャ圧延機のロール段差よりも小さいため、フランジ先端が圧下されない。粗ユニバーサル圧延でフランジ脚長が増加し、エッジャロールの段差よりも大きくなったU−5パスの後のエッジャ圧延から、フランジ先端が圧下されてフランジ脚長が減少するパススケジュールとした。
このパススケジュールで粗ユニバーサル圧延した後に仕上ユニバーサル圧延を実施した圧延材の寸法を測定したところ、フランジ幅Bpが150mmと目標寸法どおりの製品が圧延できていた。
[本発明例2]
本発明例2として、従来例や本発明例1と同じ粗造形圧延ロールを用いてフランジ幅が125mmでその他の寸法は従来例や本発明例1と同じT形鋼を圧延した。製品フランジ脚長HEpは56.5mmである。
粗造形圧延により圧延されるT形鋼片のウェブ厚を40mmに変更し、T形鋼片の寸法をウェブ厚tw0=40mm、フランジ厚tf0=85mm、フランジ幅B0=128mmとした。フランジ脚長HE0は同じロールを使用したため44mmのままである。
このT形鋼片を用い、表3のパススケジュールに基づいて、フランジ幅が100mm、150mmの場合と同様に中間圧延工程で5パスの圧延を行った後、仕上ユニバーサル圧延を実施した。なお、エッジャ圧延機のロールとして段差HEeの大きさが54mmのものを用いた。粗ユニバーサル圧延前半のU−2およびU−3パスのフランジ圧下率をウェブ圧下率よりも6%程度大きく設定したところ、目標通りのフランジ幅のT形鋼を圧延することができた。
以上の結果より、フランジ幅が100mmのT形鋼を圧延する設備において、エッジャロールの段差HEeの大きさを変更するだけでフランジ幅が125mmと150mmのT形鋼が圧延できることが確認できた。
本発明に係る製造方法を用いれば、粗造形圧延ロールを交換することなく、フランジ幅が異なるT形鋼の製品を製造することができる。
Figure 0005141839
Figure 0005141839
Figure 0005141839
本発明によればフランジ幅が異なる複数のサイズのT形鋼を一つの粗造形圧延ロールから作り分けることが可能で、ロール費用の大幅な削減により低コストで様々なフランジ幅のT形鋼が製造可能となり、産業上極めて有用である。
1 粗造形圧延機
2 第1の粗ユニバーサル圧延機
3 エッジャ圧延機
4 第2の粗ユニバーサル圧延機
5 仕上ユニバーサル圧延機
10 T形鋼
11 ウェブ
12 フランジ
21a、21b 粗ユニバーサル圧延機2の水平ロール
22a、22b 粗ユニバーサル圧延機2の竪ロール
31a、31b エッジャ圧延機3の水平ロール
32 小径部
33 大径部
41a、41b 粗ユニバーサル圧延機4の水平ロール
42a、42b 粗ユニバーサル圧延機4の竪ロール
51a、51b 仕上ユニバーサル圧延機5の水平ロール
52a、52b 仕上ユニバーサル圧延機5の竪ロール

Claims (7)

  1. 鋼片を粗造形圧延機により略T字形状に粗成形する粗圧延工程と、略T字形状に粗成形されたT形鋼片を、ユニバーサル圧延機によりウェブとフランジを圧下するとともにエッジャ圧延機によりフランジの端面を圧下する中間圧延工程と、前記中間圧延工程で得られたT形鋼を製品寸法に圧延する仕上圧延工程を有し、前記T形鋼片のフランジ脚長よりも製品のフランジ脚長が長いT形鋼を製造するT形鋼の製造方法であって、
    前記中間圧延工程でユニバーサル圧延機でウェブとフランジの厚み方向に圧下する際のフランジ圧下率rfとウェブ圧下率rwの差rf−rwを圧下率差とし、前記中間圧延工程の前半パスにおいて前記圧下率差が5〜15%の範囲で圧延を行うパスを少なくとも1パス設けるとともに、1パス目または1パス目を含む最初の複数パスではエッジャ圧延機でフランジ先端を圧下しないことを特徴とするT形鋼の製造方法。
  2. 前記粗圧延工程におけるT形鋼片のフランジとウェブの圧延は、粗圧延後に得られるT形鋼片のフランジ厚tf0とウェブ厚tw0の比(tf0/tw0)が、前記T形鋼片から製造されるT形鋼のフランジ厚tfpとウェブ厚twpの比(tfp/twp)より大きくなるように圧延することを特徴とする請求項1記載のT形鋼の製造方法。
  3. 製造する製品のフランジ幅が、前記中間圧延工程においてフランジ脚長を増加させない場合の製品フランジ幅に対して大きいほど、前記粗圧延工程で圧延するT形鋼片のウェブ厚を小さくすることを特徴とする請求項1または2記載のT形鋼の製造方法。
  4. 製造する製品のフランジ幅が、前記中間圧延工程においてフランジ脚長を増加させない場合の製品フランジ幅に対して大きいほど、前記粗圧延工程で圧延するT形鋼片のフランジ幅を小さくすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のT形鋼の製造方法。
  5. 鋼片を粗造形圧延機により略T字形状に粗成形する粗圧延工程と、略T字形状に粗成形されたT形鋼片を、ユニバーサル圧延機によりウェブとフランジを圧下するとともにエッジャ圧延機によりフランジの端面を圧下する中間圧延工程と、前記中間圧延工程で得られたT形鋼を製品寸法に圧延する仕上圧延工程を有し、前記T形鋼片のフランジ脚長よりも製品のフランジ脚長が長いT形鋼を製造するT形鋼の製造方法であって、
    前記粗圧延工程の粗造形圧延機では1種類のロール孔型形状を用いて製品フランジ幅に応じてT形鋼片のウェブ厚を変更する圧延を行い、前記中間圧延工程のエッジャ圧延機では製品フランジ幅に応じて孔型深さの異なるロール孔型を使い分けて圧延を行うことにより、フランジ幅の異なる複数サイズのT形鋼を製造することを特徴とするT形鋼の製造方法。
  6. 粗造形圧延機と、ユニバーサル圧延機およびエッジャ圧延機からなる中間圧延機群を有するT形鋼の圧延設備であって、
    前記エッジャ圧延機のロールのT形鋼のフランジ脚長に相当する孔型深さHEeが、前記粗造形圧延機のロールのT形鋼片のフランジ脚長に相当する孔型深さHE0よりも10mm以上大きく、且つT形鋼製品のフランジ脚長HEpと略等しいことを特徴とする、T形鋼の圧延設備。
  7. 粗造形圧延機、粗ユニバーサル圧延機、エッジャ圧延機および仕上ユニバーサル圧延機からなる圧延機群を有するT形鋼の圧延設備であって、前記エッジャ圧延機のロールのT形鋼のフランジ脚長に相当する孔型深さHEeが、前記粗造形圧延機のロールのT形鋼片のフランジ脚長に相当する孔型深さHE0よりも10mm以上大きく、且つT形鋼製品のフランジ脚長HEpと略等しいことを特徴とする、T形鋼の圧延設備。
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