JP2021030232A - 左右フランジ厚みの異なる非対称h形鋼の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】既存の製造設備で左右フランジ厚みの異なる非対称H形鋼を製造する場合に、被圧延材に発生する曲がり等の通材不良を抑制させ、安定的に非対称H形鋼を製造する。【解決手段】1又は複数の中間ユニバーサル圧延機を有する中間圧延機列で行われる中間圧延工程と、仕上ユニバーサル圧延機で行われる仕上圧延工程と、を含み、前記中間圧延工程及び前記仕上圧延工程でのユニバーサル圧延において被圧延材の左右フランジ部に対する厚み圧下率が等しい圧延条件下で、ユニバーサル圧延の圧延条件が以下の式(1)を満たす場合には当該圧延条件下のままユニバーサル圧延を行い、ユニバーサル圧延の圧延条件が以下の式(1)を満たさない場合には被圧延材の薄肉側フランジ幅拡がりを促進させる手段を適用してユニバーサル圧延を行うことを特徴とする、非対称H形鋼の製造方法が提供される。0<ΔBi≦0.2tf ・・・(1)【選択図】図8

Description

本発明は、左右フランジ厚みの異なる非対称H形鋼をユニバーサル圧延によって製造する製造方法に関する。
例えばH形鋼や軌条といった各種形鋼の製造は、一般的に孔型圧延法(カリバー法)やユニバーサル圧延法によって行われることが知られている。特に近年では、均質な変形が期待でき、材質の向上や寸法精度の高精度化が図れるといった観点から、中間ユニバーサル圧延機、エッジャー圧延機、仕上圧延機を備えた圧延機列によってユニバーサル圧延法が行われている。
左右フランジ厚みの異なる非対称H形鋼は力学的利点が大きいため建築構造物や橋梁等の梁材に好適に用いられる。具体的には、地面や床面に対し一方のフランジを接地させ、他方のフランジを上方に位置するような設置態様を採った場合に、厚みが薄いフランジを接地面とし、厚みの厚いフランジを上方とすることが知られている。これは、接地面ではフランジが接地された地面(あるいは床面等)を含めた剛性となるのに対し、上方のフランジはそれ単体での剛性が求められるために、上方のフランジをより厚いものとすることが望ましいからである。このような態様により、所望の剛性の梁材を、軽量且つ少量の材料でもって製造できるため、生産性の向上やコスト削減が図られる。
しかしながら、左右フランジ厚みの異なる非対称H形鋼は断面が非対称であるがゆえ、その製造過程において歪みや曲がりといった通材不良が生じることが多く、その改善を図るために様々な技術が創案されている。
例えば特許文献1には、非対称H形鋼の圧延方法が開示され、その製造の際には曲がりが生じることが記載されている。特許文献1の技術では、一般的には非駆動である左右竪ロールを個別駆動させ、左右独立に回転速度(回転数)を調整して曲がりを抑制させている。
また、例えば特許文献2には、非対称H形鋼のユニバーサル圧延での左右竪ロールの圧延荷重が左右不均一となることで水平ロールに対するスラスト荷重がかかり、スラスト変位が生じるのを抑制する技術が開示されている。具体的には、左右のフランジの一方(片側)を冷却することで、当該フランジの圧延荷重を増加させ、水平ロールに働くスラスト荷重を低減させている。
特開平5−177201号公報 特開2006−68777号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、一般的には非駆動で従動ロールである竪ロールを駆動させるための設備の新設や改造が必要となり、設備コストの増加や設備構成の煩雑化が懸念される。また、上記特許文献2に記載の技術は、左右竪ロールの圧延荷重を揃えることを目的としており、非対称H形鋼の圧延を歪みや曲がりを生じさせることなく行うための適正条件については何ら開示されていない。
上記事情に鑑み、本発明の目的は、既存の製造設備で左右フランジ厚みの異なる非対称H形鋼を製造する場合に、被圧延材に発生する曲がり等の通材不良を抑制させ、安定的に非対称H形鋼を製造することができる技術を提供することにある。
前記の目的を達成するため、本発明によれば、左右フランジ厚みの異なる非対称H形鋼の製造方法であって、1又は複数の中間ユニバーサル圧延機を有する中間圧延機列で行われる中間圧延工程と、仕上ユニバーサル圧延機で行われる仕上圧延工程と、を含み、前記中間圧延工程及び前記仕上圧延工程でのユニバーサル圧延において被圧延材の左右フランジ部に対する厚み圧下率が等しい圧延条件下で、ユニバーサル圧延の圧延条件が以下の式(1)を満たす場合には当該圧延条件下のままユニバーサル圧延を行い、ユニバーサル圧延の圧延条件が以下の式(1)を満たさない場合には被圧延材の薄肉側フランジ幅拡がりを促進させる手段を適用してユニバーサル圧延を行うことを特徴とする、非対称H形鋼の製造方法が提供される。
0<ΔBi≦0.2tf ・・・(1)
但し、ΔBi:各圧延機でのウェブ内法拡幅量、tf:各圧延機での圧延前の薄手側フランジ厚である。
前記被圧延材の薄肉側フランジ幅拡がりを促進させる手段は、被圧延材の薄肉フランジ部に当接する水平ロール側面に潤滑材を供給する潤滑手段であっても良い。
前記被圧延材の薄肉側フランジ幅拡がりを促進させる手段は、被圧延材の薄肉フランジ部を圧下する竪ロール径と、被圧延材の厚肉フランジ部を圧下する竪ロール径と、を異なる径とするロール構成であり、薄手側の竪ロール径は、厚手側の竪ロール径の0.33倍以上0.4倍以下に設計されても良い。
前記被圧延材の薄肉側フランジ幅拡がりを促進させる手段は、ユニバーサル圧延において以下の式(2)を満たす圧延条件を適用する圧延条件設計であっても良い。
rf−0.2≦rw≦rf−0.1 ・・・(2)
但し、rw:ウェブ厚み圧下率、rf:フランジ厚み圧下率である。
前記中間圧延工程及び前記仕上圧延工程は、1方向での1圧延機1パス圧延で行われても良い。
本発明によれば、既存の製造設備で左右フランジ厚みの異なる非対称H形鋼を製造する場合に、被圧延材に発生する曲がり等の通材不良を抑制させ、安定的に非対称H形鋼を製造することができる。
非対称H形鋼の製造ラインについての概略説明図である。 中間圧延機列の構成の一例を示す概略説明図である。 中間ユニバーサル圧延機のロール構成についての概略説明図である。 エッジャー圧延機のロール構成についての概略説明図である。 被圧延材に対し、厚肉フランジ部の圧下率0.34、ウェブ圧下率0.31、内法拡幅8mmと固定した条件で薄肉フランジ部の圧下率を変えた場合の圧延時の曲がりを数値解析したグラフである。 厚肉フランジ部の圧下率と薄肉フランジ部の圧下率を等しくした条件下における、被圧延材Aの各部位の幅方向移動量の推移と、各フランジ幅の広がり量の推移を示したグラフである。 薄肉フランジ部にのみ押し下げが生じた場合の被圧延材の変形に関する概略説明図である。 一般的な略H形形状の被圧延材に対し拡幅を伴うユニバーサル圧延を行う際の、片側内法拡幅量/フランジ厚とフランジ幅減少率との関係を示すグラフである。 被圧延材に対し、左右フランジ部の圧下率0.34、ウェブ圧下率0.31、内法拡幅量8mmと固定した条件で薄肉フランジ部に当接する水平ロール側面のみを潤滑した場合の圧延時の曲がりを数値解析したグラフである。 被圧延材に対し、左右フランジ部の圧下率0.34、ウェブ圧下率0.31、内法拡幅量8mmと固定した条件で薄肉フランジ部を圧下する竪ロール径と厚肉フランジ部を圧下する竪ロール径との比率を変えた場合の圧延時の曲がりを数値解析したグラフである。 被圧延材に対し、左右フランジ部の圧下率0.34、内法拡幅量8mmと固定した条件で、曲がりに対するウェブ圧下率の影響を数値解析したグラフである。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。なお、本明細書における「ユニバーサル圧延機」とは、形鋼圧延時に水平ロールと竪ロールを用いて大きな延伸を伴う圧延を行う圧延機を指し、「エッジャー圧延機」とはユニバーサル圧延機と併せて用いられ極めて軽圧下な圧延を行う圧延機を指すものとし、本明細書では、それら圧延機を「圧延スタンド」あるいは単に「スタンド」と呼称する場合もある。
(製造ラインの概要)
図1は、本実施の形態にかかる圧延設備1を含む、左右フランジ厚みの異なる非対称H形鋼(いわゆる異厚H形鋼)の製造ラインTについての説明図である。図1に示すように、製造ラインTには上流側から順に、加熱炉2、粗圧延機列4、中間圧延機列5、仕上ユニバーサル圧延機8が配置されている。なお、以下では、説明のために製造ラインTにおける鋼材を、総称して「被圧延材A」と記載し、各図において適宜その形状を破線・斜線等を用いて図示する場合がある。また、本明細書では、被圧延材Aは圧延方向左右にフランジ部が位置するいわゆる「H姿勢」にて圧延造形されるものとして説明する。また、被圧延材Aの各圧延段階において、最終H形鋼製品のフランジに相当する部位をフランジ部12と呼称し、そのフランジ部12の一方を薄肉フランジ部12a、他方を厚肉フランジ部12bと呼称する場合がある。また、ウェブに相当する部分をウェブ部20と呼称する場合がある。
図1に示すように、製造ラインTでは、加熱炉2から抽出された例えばスラブやブルームといった素材11である被圧延材Aが粗圧延機列4において粗圧延される。次いで、中間圧延機列5において中間ユニバーサル圧延される。通常の場合、粗圧延機列4には例えばブレイクダウンミルや粗圧延機等が複数スタンド配置され、それらスタンドのロールには、例えば合計で4〜6個程度の孔型が刻設されている。これら孔型を経由して数10パス程度のリバース圧延を行うことで左右非対称のドッグボーン形状のH形粗形材13が造形される。ここで造形されるH形粗形材13の左右のフランジに相当する部位の厚み比は、最終製品の左右フランジ厚み比を中間圧延以降で造形するに好適な比率とされる。次いで、H形粗形材13に対し中間圧延機列5において所定の圧延が行われ、左右非対称の中間材14が造形される。そして中間材14は、仕上ユニバーサル圧延機8での1方向1パス圧延の仕上圧延により最終製品形状となり、非対称H形鋼製品16が製造される。
(中間圧延機列の構成の概要)
次に、図1に示した中間圧延機列5の構成の概要について説明する。図2は中間圧延機列5の構成の一例を示す概略説明図である。なお、図2に示す構成は一例であり、本発明における中間圧延機列5の構成はこれに限定されるものではない。
図2に示すように、中間圧延機列5は7基の中間ユニバーサル圧延機U1〜U7と、4基のエッジャー圧延機E1〜E4から構成されている。中間ユニバーサル圧延機U1〜U7は水平ロールでウェブ厚、竪ロールでフランジ厚を圧下し、最終的に略製品の厚みに圧延造形するユニバーサル圧延機である。また、エッジャー圧延機E1〜E4はユニバーサル圧延機で未圧下となるフランジ先端部を整形する補助的な役割を有する圧延機である。図示の構成では、上流から順にU1〜U7を配置した構成において、U1とU2の間にE1が配置され、U3とU4の間にE2が配置され、U5とU6の間にE3が配置され、U6とU7の間にE4が配置されている。このように構成される中間圧延機列5において被圧延材Aに対し1方向での1圧延機1パス圧延を施すことで中間材14は造形される。
(中間ユニバーサル圧延機の概略的な構成)
次に、図2に示した中間圧延機列5を構成する中間ユニバーサル圧延機U1〜U7について説明する。図3は中間ユニバーサル圧延機U1のロール構成についての概略説明図(正面断面図)であり、(a)がロール構成の概略、(b)が圧延時の断面概略を示している。図3に示すように、中間ユニバーサル圧延機U1には、上下一対の水平ロール21、22と、左右一対の竪ロール31、32が設けられている。水平ロール21、22は、そのロール周面が被圧延材Aのウェブ部20に当接可能に構成され、そのロール側面の一部がフランジ部12(12a、12b)の内面に当接可能に構成されている。また、竪ロール31、32は、そのロール周面がフランジ部12(12a、12b)の外面に当接可能に構成されている。図示の構成では、一方の竪ロール31の周面が薄肉フランジ部12aの外面に当接し、他方の竪ロール32の周面が厚肉フランジ部12bの外面に当接する構成となっている。なお、図3では、各ロールのロール軸や圧延機筐体等の構成は図示を省略している。
図3に示す中間ユニバーサル圧延機U1では、被圧延材Aのウェブ部20に対し、水平ロール21、22の周面が当接し、当該ウェブ部20の厚み方向に対して圧下が加えられる。また、被圧延材Aのフランジ部12(12a、12b)に対し、水平ロール21、22の側面の一部が当該フランジ部12(12a、12b)の内面に当接し、フランジ部12の内側面を押し広げるような、いわゆる内法拡幅が行われる。加えて、被圧延材Aのフランジ部12(12a、12b)に対し、水平ロール21、22の側面の一部が当該フランジ部12(12a、12b)の内面に当接し、竪ロール31、32の周面がフランジ部12(12a、12b)の外面に当接し、当該フランジ部12(12a、12b)の厚み方向に対して圧下が加えられる。このようにして、被圧延材Aのフランジ部12(12a、12b)及びウェブ部20が所定の厚みに圧下される。
図3には、中間ユニバーサル圧延機U1の概略的構成を例として図示したが、中間圧延機列5に配置される7基の中間ユニバーサル圧延機U1〜U7はいずれも同じようなロール構成を有している。これら中間ユニバーサル圧延機U1〜U7では原則として1方向での1圧延機1パス圧延が行われ、後段の圧延機(圧延スタンド)に被圧延材Aは順次送られる。
一般的なH形鋼のユニバーサル圧延では、左右フランジ部の圧下率を等しくすることで、ユニバーサル圧延での被圧延材Aの曲がりは抑制できると考えられていた。しかしながら、本発明者らの検討によれば、圧延条件によっては左右フランジ部の圧下率が等しくても大きな曲がりが発生し、通材不良となる場合があることが分かっている。そこで本発明者らは、これら中間ユニバーサル圧延機U1〜U7での圧延に関し、数値解析によって左右フランジ厚みの異なる非対称な被圧延材Aに対する圧延特性を調査し、適正な圧延条件を見出すべく鋭意検討を行った。本検討結果については、グラフ等を参照して後述する。
(エッジャー圧延機の概略的な構成)
次に、エッジャー圧延機E1〜E4の概略的な構成について説明する。図4はエッジャー圧延機E1のロール構成についての概略説明図(正面断面図)である。図4に示すように、エッジャー圧延機E1には、上下一対の水平ロール41、42が設けられている。水平ロール41、42は、そのロール周面の一部が左右のフランジ部12(12a、12b)のフランジ幅方向先端部のみに当接可能に構成されている。
図4に示すエッジャー圧延機E1では、被圧延材Aの左右フランジ部12(12a、12b)の幅方向先端部のみに対し上下水平ロール41、42の周面が当接し、中間ユニバーサル圧延機U1〜U7で未圧下となるフランジ部12の先端部の整形が軽圧下によって行われる。図4には、エッジャー圧延機E1の概略的構成を例として図示したが、4基のエッジャー圧延機E1〜E4はいずれも同じようなロール構成を有している。このようなエッジャー圧延は、中間ユニバーサル圧延機U1〜U7からなる圧延機列の任意のスタンド間で1方向1パス圧延にて行われ、一例として、図2の構成ではU1とU2の間、U3とU4の間、U5とU6の間、U6とU7の間、でそれぞれ行われる。
(非対称な被圧延材Aのユニバーサル圧延での圧延特性)
本発明者らは、略H形形状の非対称な被圧延材Aに対し、例えば中間ユニバーサル圧延機U1〜U7において内法拡幅を伴うユニバーサル圧延を行う場合に関し、その圧延特性の検討を行った。図5は、ウェブ内法448mm、フランジ厚32mm/16mm、ウェブ厚14mmの被圧延材A(H形粗形材13)に対し、厚肉フランジ部の圧下率0.34、ウェブ圧下率0.31、内法拡幅量8mmと固定した条件で薄肉フランジ部の圧下率を変えた場合の圧延時の曲がりを数値解析したグラフである。なお、図5のグラフでは、曲がりの評価は、被圧延材Aのロールバイト出口からの距離に応じたウェブ高さ中心位置のずれによって行い、参考として内法拡幅を行わない場合のグラフも記載している。
図5に示すように、厚肉フランジ部の圧下率と薄肉フランジ部の圧下率を等しくした場合(両方0.34とした場合)、被圧延材Aは厚肉フランジ方向(以下、厚手側とも記載)に大きく曲がっていることが分かる。そして、薄肉フランジ部12aの圧下率が小さくなるにつれて厚手側への曲がりが抑制され、薄肉フランジ部12aの圧下率を0.28とした条件でほぼ曲がりが解消されている。なお、薄肉フランジ部12aの圧下率を0.26とした条件では薄肉フランジ方向(以下、薄手側とも記載)への曲がりが生じていることが分かる。
このように、厚肉フランジ部12bの圧下率と薄肉フランジ部12aの圧下率に差をつけることで、被圧延材Aの曲がりの抑制を図ることができる一方、H形粗形材のフランジ厚み比を製品のフランジ厚み比に比べ大きくしなくてはならないことや、圧下率差に応じて左右フランジ幅差が大きくなることなどの問題点があり、所望形状の最終製品を得ることが困難である。
このような事情に鑑み、本発明者らは、厚肉フランジ部12bの圧下率と薄肉フランジ部12aの圧下率を等しくした場合に、厚手側に曲がりが生じる現象について更なる検証を行った。図6は、厚肉フランジ部12bの圧下率と薄肉フランジ部12aの圧下率を等しくした条件下における、被圧延材Aの各部位(厚手側フランジ、ウェブ中央、薄手側フランジ)の幅方向移動量の推移(ウェブ高方向移動量)と、各フランジ(厚手側フランジ、薄手側フランジ)幅の広がり量の推移(フランジ幅広がり)を示したグラフである。なお、図6のグラフの横軸は対象ロールの最圧下点を0とした時の距離を示す。
図6に示すように、薄手側フランジ幅が一旦減少した後に、竪ロールの当接により幅広がりしているのに対し、厚手側フランジ幅は減少することなく竪ロールの当接により幅広がりしている。この結果から、ユニバーサル圧延時時に拡幅圧延を伴う場合、水平ロール側面によりフランジ内側面を押し広げる圧延造形が行われるが、その際に薄手側フランジのフランジ幅のみが減少していることが分かった。即ち、厚肉フランジ部12bの圧下率と薄肉フランジ部12aの圧下率を等しくしたとしても、両者の減面率は等しくならず薄肉フランジ部12aの減面率の方が大きくなるとの現象が見られる。このような現象は、フランジ厚が薄い場合、水平ロール側面の摩擦力により薄肉フランジ部12a全体が下方に押圧されるように圧延造形されることに起因すると考えられる。
図7は、薄肉フランジ部12aにのみ押し下げが生じた場合の被圧延材の変形に関する概略説明図である。図7に示すように、左右のフランジ厚が異なる被圧延材Aに対し拡幅圧延を伴うユニバーサル圧延を行う場合、上述したように、薄手側フランジのフランジ幅のみが減少し、薄肉フランジ部12aの減面率の方が大きくなる(図7中の斜線部参照)。薄肉側フランジ幅の減少した分の肉量は、被圧延材Aの長手方向(圧延方向)への伸びに転嫁されるため、薄手側のフランジ延伸が厚手側に比べ大きくなり、その結果として曲がりが生じているものと考えられる。
(曲がりの発生しない適正な圧延条件)
以上検討したような圧延特性に鑑み、本発明者らは、左右のフランジ厚が異なる被圧延材Aに対し拡幅圧延を伴うユニバーサル圧延を行う場合の、内法拡幅量とフランジ幅の減少率との関係を数値解析により調査し、適正な圧延条件について鋭意検討を行った。
本発明者らは、上述したように、被圧延材Aの曲がりの発生の原因がフランジ幅の減少にあることに鑑み、一般的な略H形形状の被圧延材に対し内法拡幅を伴うユニバーサル圧延を行う際の、内法拡幅量とフランジ幅減少率との関係を数値解析により調査した。図8は、一般的な略H形形状の被圧延材に対し拡幅を伴うユニバーサル圧延を行う際の、片側内法拡幅量/フランジ厚とフランジ幅減少率との関係を示すグラフであり、フランジ厚が16.0mm〜32.0mmの各値である場合についての調査結果である。なお、フランジ厚16.0mmの場合のみ圧下率0.2(20%)、0.25(25%)、0.3(30%)での数値を算出し、その他のフランジ厚については圧下率0.25(25%)での数値を算出した。
図8に示すように、フランジ幅の減少率は圧下率によらず内法拡幅量とフランジ厚の比で整理され、いずれの条件でも概ね同様の傾向となることが分かる。そして、いずれの条件下においても片側内法拡幅量/フランジ厚が0.1を超えると急激にフランジ幅が減少する傾向がある。図8の解析結果に基づき、内法拡幅を伴うユニバーサル圧延では、内法拡幅量/フランジ厚が0.2を超えるとフランジ幅が減少するとの結果が得られたため、内法拡幅量/フランジ厚を0.2以下(20%以下)とすることでフランジ幅の減少が抑えられ、フランジ幅の減少に伴う減面率の左右差の影響なく通材させることが可能となる。
以上の図8に示す解析結果から、左右のフランジ厚が異なる被圧延材Aに対し内法拡幅を伴うユニバーサル圧延を行う際の、各圧延機でのウェブ内法拡幅量をΔBi、各圧延機での圧延前の薄手側フランジ厚をtfとすると、以下の式(1)を満たす圧延条件とすることで曲がり等の通材不良を抑制させ、安定的に圧延造形を実施することが可能であることが示された。
0<ΔBi≦0.2tf ・・・(1)
ここで、ΔBiの値が0超なのは、式(1)はウェブ内法拡幅を行う条件下での圧延特性を規定しているからである。
なお、被圧延材Aに対し内法拡幅を伴うユニバーサル圧延を行う際の内法拡幅量は左右フランジ厚の合計未満とすることが好ましい。これは、フランジ厚以上の内法拡幅量を採ろうとすると、水平ロール側面でフランジ内面を押し広げる(拡幅する)前に、水平ロール平行部(周面部)でフランジ先端を圧下してしまう懸念があるからである。即ち、水平ロール平行部でフランジを幅方向に過剰に圧下することになり、フランジ座屈やフランジを押し潰すといった形状不良を伴う圧延造形となってしまう恐れがあるからである。
(曲がり等の通材不良を抑制させる手段)
上記の通り、式(1)を満たす圧延条件でユニバーサル圧延を行うことで、左右のフランジ厚が異なる被圧延材Aに対し、曲がり等の通材不良を抑制させ、安定的に圧延造形を実施することができるが、一方で、設備条件等の理由により、上記式(1)を満たす圧延条件が実現されない場合には、左右のフランジ部(薄肉フランジ部12a及び厚肉フランジ部12b)に対する厚み圧下率を等しくした上で、薄肉フランジ部12aのフランジ幅拡がりを、厚肉フランジ部12bのフランジ幅拡がりに比べ促進させるような手段(薄肉側フランジ幅拡がり促進手段)を講じることが望ましい。薄肉フランジ部12aのフランジ幅拡がりを促進させることで、薄肉側と厚肉側のフランジ幅拡がりがなるべく同じになるように調整することが可能となり、その結果、曲がり等の通材不良が抑制されることになる。以下、その具体的な手段について説明する。
(第1の薄肉側フランジ幅拡がり促進手段)
先ず、第1の薄肉側フランジ幅拡がり促進手段として、薄肉フランジ部12aに当接する水平ロール側面に潤滑材を付加する潤滑手段を用いることが考えられる。即ち、厚肉フランジ部12bに当接する水平ロール側面には潤滑を行わず、薄肉フランジ部12aに当接する水平ロール側面にのみ潤滑を行うことで、水平ロール側面における被圧延材Aとの間の摩擦係数を左右不均一とすることが考えられる。その際に用いられる潤滑材は特に限定されるものではないが、一般的なノズル等から吐出される潤滑油を用いれば良い。以下では、上記のように通常の圧延状態に付加的な潤滑材を供給する場合を「潤滑有」、供給しない場合を「潤滑無」と呼称する。
図9は、ウェブ内法448mm、フランジ厚32mm/16mm、ウェブ厚14mmの被圧延材A(H形粗形材13)に対し、左右フランジ部の圧下率0.34、ウェブ圧下率0.31、内法拡幅量8mmと固定した条件で薄肉フランジ部に当接する水平ロール側面のみを潤滑した場合の圧延時の曲がりを数値解析したグラフである。図9には、潤滑を行わない場合(潤滑無)と、潤滑により摩擦係数を0.1とする範囲(潤滑範囲)を図示の通りに変えた場合(図中の3つの条件)において、左右(厚肉側と薄肉側)の摩擦係数の差に伴うフランジ幅差(mm)と、下流側に生じた曲がり量(mm)を図示している。なお、図9に示したグラフの解析条件では、厚肉側の摩擦係数は0.3とした。
図9に示すように、薄肉フランジ部に当接する水平ロール側面のみを潤滑することで、フランジ幅差は減少する傾向にあり、フランジ幅差が減少するに伴い、発生する曲がり量も減少していることが分かる。また、図中の3条件の比較から、薄肉フランジ部の内面における直線部よりもコーナー部(曲率を有する範囲)を潤滑した方が、潤滑効果が大きく、曲がり量の減少(曲がり抑制効果)が大きいことが分かる。潤滑による摩擦係数の低減効果は、潤滑無の摩擦係数に対して30〜50%程度と推定され、圧延条件によっても曲がり抑制効果は変化するので、確実に曲がりを抑制させるためには、薄肉フランジ部の内面において少なくともコーナー部を含むような範囲を潤滑することが望ましい。
以上、図9を参照して説明したように、第1の薄肉側フランジ幅拡がり促進手段として、薄肉フランジ部12aに当接する水平ロール側面のみに潤滑材を供給し、水平ロール側面における被圧延材Aとの間の摩擦係数を左右不均一にすることで、曲がり等の通材不良を抑制させ、安定的に圧延造形を実施できるとの知見が得られた。
(第2の薄肉側フランジ幅拡がり促進手段)
また、第2の薄肉側フランジ幅拡がり促進手段として、ユニバーサル圧延において薄肉フランジ部12aを圧下する竪ロール径と、厚肉フランジ部12bを圧下する竪ロール径と、を異なる径とするロール構成を用いることが考えられる。ユニバーサル圧延においては、水平ロール径が一定である場合に、竪ロール径を変えると、被圧延材Aと竪ロールとの間での接触弧長が異なることに起因し、フランジ幅拡がり量が異なる傾向があることが分かっている。具体的には、小径の竪ロールで圧下を行う場合の方が、大径の竪ロールで圧下を行う場合に比べ、フランジ幅拡がり量が大きくなることが分かっている。
図10は、ウェブ内法448mm、フランジ厚32mm/16mm、ウェブ厚14mmの被圧延材A(H形粗形材13)に対し、左右フランジ部の圧下率0.34、ウェブ圧下率0.31、内法拡幅量8mmと固定した条件で薄肉フランジ部を圧下する竪ロール径と厚肉フランジ部を圧下する竪ロール径との比率を変えた場合の圧延時の曲がりを数値解析したグラフである。図10では、竪ロール径(厚手側/薄手側)に係る条件を、475/900(mm)、950/950(mm)、950/475(mm)、950/360(mm)、の4つの条件とした場合の、左右(厚肉側と薄肉側)の竪ロール径の差に伴うフランジ幅差(mm)と、下流側に生じた曲がり量(mm)を図示している。
図10に示すように、薄手側の竪ロール径を厚手側の竪ロール径に対して小径とすることで、フランジ幅差が小さくなり(即ち、左右のフランジ幅拡がり量がほぼ等しくなり)、その結果、曲がり等の通材不良が抑制され、安定的に圧延造形を実施できるとの知見が得られた。
左右の竪ロール径の径差としては、薄手側の竪ロール径を厚手側の竪ロール径に対して小径とすれば曲がり抑制効果は得られるが、より具体的には、薄手側の竪ロール径を厚手側の竪ロール径の0.4倍以下とすることが望ましい。即ち、例えば図10に示す竪ロール径(厚手側/薄手側)が950/360(mm)である場合には曲がりが抑制され、その条件より薄手側の竪ロール径が大きい場合には曲がり量が増大する傾向が分かっていることから、薄手側の竪ロール径を厚手側の竪ロール径の0.4倍以下にすることで、曲がり量の抑制がある程度実現されることが分かる。
一方で、薄手側の竪ロール径を厚手側の竪ロール径の0.33倍未満に設計すると、ロールの耐荷重が低下し、圧延荷重を下回る恐れがある。
従って、薄手側の竪ロール径は、厚手側の竪ロール径の0.33倍以上0.4倍以下に設計することが好ましい。
(第3の薄肉側フランジ幅拡がり促進手段)
また、本発明者らは、ユニバーサル圧延では、被圧延材Aのフランジ部12とウェブ部20は一体的に圧延されることに着目し、被圧延材Aの断面全体における左右の断面積延伸を考慮すると、フランジの厚み圧下率(フランジ圧下率)>ウェブの厚み圧下率(ウェブ圧下率)、となるほど厚手側の減面率が大きくなる傾向があることを見出した。このような傾向に鑑み、ユニバーサル圧延におけるフランジ圧下率とウェブ圧下率の比率に着目し、ウェブ圧下率を小さくするように圧延条件設計を行うことで、曲がり等の通材不良が抑制されることが推定される。
図11は、ウェブ内法448mm、フランジ厚32mm/16mm、ウェブ厚14mmの被圧延材A(H形粗形材13)に対し、左右フランジ部の圧下率0.34、内法拡幅量8mmと固定した条件で、曲がりに対するウェブ圧下率の影響を数値解析したグラフである。図11では、ウェブ圧下率を0.17〜0.31まで変化させた場合の、フランジ圧下率−ウェブ圧下率に伴う圧延曲がり及び左右フランジ幅差を解析している。
図11に示すように、ウェブ圧下率をフランジ圧下率に比べ小さくすることで、曲がり等の通材不良が抑制されていることが分かる。図11によれば、フランジ圧下率とウェブ圧下率の差が大きい値である程、曲がりが抑制されていることが分かる。図11の解析結果においては、例えば、フランジ圧下率−ウェブ圧下率>0.1であれば通材可能な曲がり量であると言える。一方で、ユニバーサル圧延において、ウェブ圧下率を小さくし過ぎると、ウェブ厚が圧延前に減少し、ウェブ部20が未圧下となる恐れがあることから、フランジ圧下率とウェブ圧下率との圧下率差は最大でも0.2にとどめることが好ましい。以上の図11に基づく解析結果等を、ウェブ厚み圧下率をrw、フランジ厚み圧下率をrfとしてまとめると、以下の式(2)に示す条件となる。
rf−0.2≦rw≦rf−0.1 ・・・(2)
この式(2)を満たす条件下でもってウェブ圧下率をフランジ圧下率に比べ小さくすることで、曲がり等の通材不良が抑制され、安定的に圧延造形を実施できる。ここで、上記rfやrwといった厚み圧下率は、「(圧延前厚み−圧延後厚み)/圧延前厚み」で表される値である。
なお、以上説明した第1〜第3の薄肉側フランジ幅拡がり促進手段を、製品と同じ左右フランジ厚み比を有するH形粗形材13に対し、左右同じ圧下率でもってユニバーサル圧延を行う際に適用する場合に、それぞれの手段を単独で適用しても良く、これら第1〜第3の薄肉側フランジ幅拡がり促進手段を組み合わせて適用しても良い。例えば、あるユニバーサル圧延パスにおいて、左右竪ロールの径比を異径とし、ウェブ圧下率をフランジ圧下率に比べ小さくした条件で、通材状況に応じて薄肉側の水平ロール側面の潤滑の有無を調整するといった事も可能である。
(作用効果)
以上、図8に示す解析結果に基き算出された式(1)で示す圧延条件下で、左右のフランジ厚が異なる被圧延材Aに対し内法拡幅を伴うユニバーサル圧延を行うことで、圧下率によらずフランジ幅の減少が抑えられ、フランジ幅の減少に伴う減面率の左右差の影響なく通材させることができる。例えば、製品と同じ左右フランジ厚み比を有するH形粗形材13に対し、左右同じ圧下率でもってユニバーサル圧延を施し、最終製品である非対称H形鋼製品を製造する場合に、各ユニバーサル圧延の圧延条件を式(1)で示す圧延条件とすることで通材不良を抑えることができる。
即ち、既存の設備(既存の構成のユニバーサル圧延機)において非対称H形鋼製品を製造するにあたり、圧延条件を調整するだけで、圧延造形時の被圧延材Aの曲がりの発生を抑え、通材性を向上させ、圧延の安定化を実現させることができる。これにより安定的に非対称H形鋼を製造することができ、生産性の向上が図られる。
また、製品と同じ左右フランジ厚み比を有するH形粗形材13に対し、左右同じ圧下率でもってユニバーサル圧延を施すにあたり、上記式(1)を満たさないような圧延条件下であっても、上述した第1〜第3の薄肉側フランジ幅拡がり促進手段を適用してユニバーサル圧延を行うことで、圧延造形時の被圧延材Aの曲がりの発生を抑え、通材性を向上させ、圧延の安定化を実現させることができる。これにより安定的に非対称H形鋼を製造することができ、生産性の向上が図られる。
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施の形態では、本発明技術を中間ユニバーサル圧延機U1〜U7に適用する場合を例示して説明したが、本発明の適用範囲はこれに限られるものではない。即ち、本発明技術はユニバーサル圧延機に全般的に適用可能であり、中間ユニバーサル圧延機U1〜U7に限らず、仕上ユニバーサル圧延機8に適用することも可能である。また、中間圧延機列5を構成する任意のスタンドに適用しても良く、全てのスタンドに適用しても良い。また、エッジャー圧延機E1〜E4の構成についても、図4に例示した構成以外のものを用いる場合にも適用できる。また、素材としては矩形断面のスラブやブルームのほか、連続鋳造されたビームブランクといった素材を使用して非対称H形鋼を製造する場合にも適用できる。
上記実施の形態で図1〜4を参照して説明した構成の製造ラインTにおいて、左右フランジ厚みの異なる非対称H形鋼(幅492mmウェブ厚6mm厚肉フランジ厚12mm薄肉フランジ厚8mm)を製造する場合に、実施例1では上記式(1)を満たすような圧延条件で圧延を行い、実施例2−1では上記式(1)を満たさない圧延機においては上記第2の薄肉側フランジ幅拡がり促進手段を適用させ、実施例2−2では上記式(1)を満たさない圧延機においては上記第1の薄肉側フランジ幅拡がり促進手段を適用させて圧延造形を行った。一方で、比較例1、2では上記式(1)を満たさない圧延機において何も対策を講じずに圧延を行った。以下の表1は、実施例1、比較例1、2、実施例2−1、2−2における中間ユニバーサル圧延機U1〜U7での圧延条件(ウェブ内法(mm)、内法拡幅量ΔBi(mm)、ΔBi/tf)と水平ロール潤滑の有無、竪ロール径(mm)を示したものである。なお、表1には、各実施例及び比較例のいずれにも共通する、各圧延段階での被圧延材寸法(mm)も併せて記載している。
実施例1では、H形粗形材のウェブ内法を455mmとし、U1〜U7での内法拡幅量ΔBiをそれぞれ6mm、4mm、2mm、2mm、1mm、1mm、1mmとした圧延条件設定とし、U1〜U7のいずれのスタンドでもΔBi/tfが0.2以下となるような圧延条件設計(式(1)を満たす条件)とした。その結果、実施例1では通材不良が生じることなく圧延が実施できた。
また、比較例1では、H形粗形材のウェブ内法を445mmとし、U1〜U7での内法拡幅量ΔBiをそれぞれ8mm、8mm、6mm、2mm、1mm、1mm、1mmとし、U2、U3でΔBi/tfが0.2超となるような圧延条件設計(式(1)を満たさない条件)とした。その結果、比較例1ではU2での被圧延材の曲がりが大きく通材不良となり、U3以降の圧延が実施不可能であった。
また、比較例2では、H形粗形材のウェブ内法を455mmとし、U1〜U7での内法拡幅量ΔBiをそれぞれ3mm、3mm、3mm、3mm、3mm、1mm、1mmとし、U5でΔBi/tfが0.2超となるような圧延条件設計(式(1)を満たさない条件)とした。その結果、比較例2ではU5での被圧延材の曲がりが大きく通材不良となり、U6以降の圧延が実施不可能であった。
また、実施例2−1では、H形粗形材のウェブ内法を455mmとし、U1〜U7での内法拡幅量ΔBiをそれぞれ3mm、3mm、3mm、3mm、3mm、1mm、1mmとし、U5でΔBi/tfが0.2超となるような圧延条件設計(式(1)を満たさない条件)とし、当該U5において竪ロール径を厚手側950mm、薄手側360mmとし、薄手側の竪ロール径を厚手側の竪ロール径に対して小径とした(上記第2の薄肉側フランジ幅拡がり促進手段を適用)。その結果、実施例2−1では通材不良が生じることなく圧延が実施できた。
また、実施例2−2では、H形粗形材のウェブ内法を455mmとし、U1〜U7での内法拡幅量ΔBiをそれぞれ3mm、3mm、3mm、3mm、3mm、1mm、1mmとし、U5でΔBi/tfが0.2超となるような圧延条件設計(式(1)を満たさない条件)とし、当該U5において薄肉側の水平ロール側面のみに潤滑を施した(上記第1の薄肉側フランジ幅拡がり促進手段を適用)。その結果、実施例2−2では通材不良が生じることなく圧延が実施できた。
また、実施例3として、上記実施の形態で図1〜4を参照して説明した構成の製造ラインTにおいて、左右フランジ厚みの異なる非対称H形鋼(幅492mmウェブ厚6mm厚肉フランジ厚12mm薄肉フランジ厚8mm)を製造する場合に、上記式(1)を満たさない圧延機においては上記第3の薄肉側フランジ幅拡がり促進手段を適用させて圧延造形を行った。以下の表2は、実施例3における中間ユニバーサル圧延機U1〜U7での圧延条件(ウェブ内法(mm)、内法拡幅量ΔBi(mm)、ΔBi/tf)と、ウェブ厚(mm)、水平ロール潤滑の有無、竪ロール径(mm)を示したものである。なお、表2には、各圧延段階での被圧延材寸法(mm)として左右(厚手側・薄手側)のフランジ厚を記載している。
実施例3では、比較例1と同様に、H形粗形材のウェブ内法を445mmとし、U1〜U7での内法拡幅量ΔBiをそれぞれ8mm、8mm、6mm、2mm、1mm、1mm、1mmとし、U2、U3でΔBi/tfが0.2超となるような圧延条件設計(式(1)を満たさない条件)とした。一方で、実施例3においては、比較例1と被圧延材のウェブ厚寸法を異なるものとし、粗仕上〜U3までのウェブ圧下率を比較例1に比べ小さく設定した(上記第3の薄肉側フランジ幅拡がり促進手段を適用)。その結果、実施例3では通材不良が生じることなく圧延が実施できた。
以上の通り、実施例1では、U1〜U7のいずれのスタンドでもΔBi/tfが0.2以下となるような圧延条件設計としたことで被圧延材に曲がりが抑えられ、安定した圧延が実現された。また、実施例2−1、2−2、3では、ΔBi/tfが0.2超となるような圧延条件においては、上記実施の形態で説明した薄肉側フランジ幅拡がり促進手段を適用することで、被圧延材に曲がりが抑えられ、安定した圧延が実現された。一方で、比較例1、2ではΔBi/tfが0.2超となるような圧延条件設計のスタンドがあり、好適な対策を講じる事もなかったため、被圧延材に曲がりが生じ、安定した圧延が実現されなかった。
本発明は、左右フランジ厚みの異なる非対称H形鋼をユニバーサル圧延によって製造する製造方法に適用できる。
1…圧延設備
2…加熱炉
4…粗圧延機列
5…中間圧延機列
8…仕上ユニバーサル圧延機
11…素材
12…フランジ部
12a…薄肉フランジ部
12b…厚肉フランジ部
13…H形粗形材
14…中間材
16…非対称H形鋼製品
20…ウェブ部
21、22…(中間ユニバーサル圧延機の)水平ロール
31、32…(中間ユニバーサル圧延機の)竪ロール
41、42…(エッジャー圧延機の)水平ロール
U1〜U7…中間ユニバーサル圧延機(中間ユニバーサル圧延スタンド)
E1〜E4…エッジャー圧延機
A…被圧延材
T…製造ライン

Claims (5)

  1. 左右フランジ厚みの異なる非対称H形鋼の製造方法であって、
    1又は複数の中間ユニバーサル圧延機を有する中間圧延機列で行われる中間圧延工程と、
    仕上ユニバーサル圧延機で行われる仕上圧延工程と、を含み、
    前記中間圧延工程及び前記仕上圧延工程でのユニバーサル圧延において被圧延材の左右フランジ部に対する厚み圧下率が等しい圧延条件下で、
    ユニバーサル圧延の圧延条件が以下の式(1)を満たす場合には当該圧延条件下のままユニバーサル圧延を行い、
    ユニバーサル圧延の圧延条件が以下の式(1)を満たさない場合には被圧延材の薄肉側フランジ幅拡がりを促進させる手段を適用してユニバーサル圧延を行うことを特徴とする、非対称H形鋼の製造方法。
    0<ΔBi≦0.2tf ・・・(1)
    但し、ΔBi:各圧延機でのウェブ内法拡幅量、tf:各圧延機での圧延前の薄手側フランジ厚である。
  2. 前記被圧延材の薄肉側フランジ幅拡がりを促進させる手段は、被圧延材の薄肉フランジ部に当接する水平ロール側面に潤滑材を供給する潤滑手段であることを特徴とする、請求項1に記載の非対称H形鋼の製造方法。
  3. 前記被圧延材の薄肉側フランジ幅拡がりを促進させる手段は、被圧延材の薄肉フランジ部を圧下する竪ロール径と、被圧延材の厚肉フランジ部を圧下する竪ロール径と、を異なる径とするロール構成であり、薄手側の竪ロール径は、厚手側の竪ロール径の0.33倍以上0.4倍以下に設計されることを特徴とする、請求項1に記載の非対称H形鋼の製造方法。
  4. 前記被圧延材の薄肉側フランジ幅拡がりを促進させる手段は、ユニバーサル圧延において以下の式(2)を満たす圧延条件を適用する圧延条件設計であることを特徴とする、請求項1に記載の非対称H形鋼の製造方法。
    rf−0.2≦rw≦rf−0.1 ・・・(2)
    但し、rw:ウェブ厚み圧下率、rf:フランジ厚み圧下率である。
  5. 前記中間圧延工程及び前記仕上圧延工程は、1方向での1圧延機1パス圧延で行われることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の非対称H形鋼の製造方法。
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