JP6419612B2 - 紙粉低減剤、紙粉低減方法及び紙製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、紙粉を低減する方法として、紙表面を塗工液や表面サイズ剤、もしくは澱粉等で塗工する方法が提案されている(例えば非特許文献1)。塗工液は一般的に炭酸カルシウム、澱粉、ラテックス等の混合物が用いられている。表面サイズ剤としてはポリアクリルアミド系合成ポリマーやアルキルケテンダイマー、ポリビニルアルコール等が用いられている。
そのため、凝結剤や紙力剤としてポリアミド-エピクロルヒドリン等のカチオンポリマーや両性ポリマーを添加する手段が一般的に用いられている。(例えば非特許文献2)。
しかし、特許文献2で用いられているカチオンポリマーや両性ポリマーでは、紙力を低下させることなく紙粉を低減する効果が十分ではなかった。具体的には、炭酸カルシウム等の填料を定着させることによって紙力を発現することが困難な灰分が紙製品中に多くなり、紙力が低下してしまう。また、繊維間結合を強化させても未定着の炭酸カルシウムが紙表面に存在することで、紙粉は発生してしまう。
[1]ポリマーを構成する構造単位として、カチオン性モノマーに由来する構造単位及びアニオン性モノマーに由来する構造単位を含み、該ポリマーの全構造単位の由来となるモノマーの全量に対するカチオン性モノマーの配合割合が50mol%未満であり、かつ下記式(1)で表されるカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとの配合比が1.5以上である両性ポリマーを含む紙粉低減剤。
両性ポリマーの全構造単位の由来となるモノマーの全量に対するカチオン性モノマーの配合割合(mol%)/両性ポリマーの全構造単位の由来となるモノマーの全量に対するアニオン性モノマーの配合割合(mol%) (1)
[2]前記配合比が1.5以上7以下である上記[1]に記載の紙粉低減剤。
[3]前記両性ポリマーの塩粘度が50mPa・s未満である上記[1]又は[2]に記載の紙粉低減剤。
[4]紙製造工程において、上記[1]〜[3]の何れかに記載の紙粉低減剤を添加する紙粉低減方法。
[5]紙製造工程において、上記[1]〜[3]の何れかに記載の紙粉低減剤を添加する紙製造方法。
まず、本発明の紙粉低減剤の実施の形態について説明する。
本発明の紙粉低減剤は、ポリマーを構成する構造単位として、カチオン性モノマーに由来する構造単位及びアニオン性モノマーに由来する構造単位を含み、該ポリマーの全構造単位の由来となるモノマーの全量に対するカチオン性モノマーの配合割合が50mol%未満であり、かつ下記式(1)で表されるカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとの配合比が1.5以上である両性ポリマーを含むものである。
両性ポリマーの全構造単位の由来となるモノマーの全量に対するカチオン性モノマーの配合割合(mol%)/両性ポリマーの全構造単位の由来となるモノマーの全量に対するアニオン性モノマーの配合割合(mol%) (1)
なお、カチオン性モノマーの配合割合が少なすぎる場合、炭酸カルシウム等のアニオン性物質との反応性に劣る。このため、カチオン性モノマーの配合割合は、2mol%以上50mol%未満であることが好ましく、5mol%以上30mol%以下であることがより好ましい。
上記配合比は、1.7以上であることが好ましく、1.8以上であることがより好ましい。なお、条件1を満たす限りにおいて、上記配合比の上限は特に制限されないが、上限は7であることが好ましく、5であることがより好ましい。
(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル並びにその4級塩及び酸塩としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル4級塩、アクリル酸ジメチルアミノエチル塩化ベンジル4級塩、アクリル酸ジメチルアミノエチル塩酸塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル4級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル塩化ベンジル4級塩、及びメタクリル酸ジメチルアミノエチル塩酸塩等が挙げられる。
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド並びにそれらの4級塩及び酸塩としては、特に限定されないが、例えば、塩化アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩酸塩、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミド塩酸塩等が挙げられる。
これらのカチオン性モノマーは、1種又は2種以上を用いることができる。
上述のカチオン性モノマーの中では、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル4級塩が好適であり、このうち、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル4級塩が好ましく、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(DAA)の単独、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(DAM)の単独、あるいはアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド及びメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドの組み合わせがさらに好ましい。
アニオン性モノマーの配合割合を1mol%以上とすることにより、密な繊維フロックを形成するため地合いを低下させにくく、25mol%以下とすることにより、填料や微細繊維の凝集を抑制し、紙力の低下を防止しやすくできる。
このようなノニオン性モノマーとしては、カチオン性基及びアニオン性基を有さず、かつ重合性不飽和二重結合を有するものが挙げられ、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、及びダイアセトンアクリルアミド等のN置換低級アルキルアクリルアミド等が挙げられる。これらのノニオン性ビニルモノマーは1種又は2種以上を用いることができる。
上記のノニオン性モノマーの中では、(メタ)アクリルアミドが好ましい。
なお、塩粘度とは、4質量%NaCl溶液中に両性ポリマーを0.5質量%溶解させた試料の25℃での粘度をいう。
次に、本発明の紙粉低減方法の実施形態について説明する。
本発明の紙粉低減方法は、紙製造工程において、上述した本発明の紙粉低減剤を添加するものである。
次に、本発明の紙製造方法の実施形態について説明する。
本発明の紙製造方法は、紙製造工程において、上述した本発明の紙粉低減剤を添加するものである。
本発明の紙製造方法における紙粉低減剤の添加場所、添加量等の実施の形態は、上述した本発明の紙粉低減方法における紙粉低減剤の実施の形態と同様である。
市販の段ボールを、株式会社東洋精機製作所製の商品名ナイアガラビータL23を用いて、CSF(カナダ標準濾水度)450mlとなるように叩解したパルプスラリーを作製し、さらに炭酸カルシウム(キシダ化学株式会社製)を0.1質量%加え、乾燥質量が1.0質量%の試験用パルプスラリーを作製した。
薬剤として、表1の組成比で作製したポリマーを用いて以下の評価を行った(実施例1〜5、及び比較例3〜10)。また、薬剤を用いずに以下の評価を行った(比較例1)。また、薬剤として硫酸バンドを用いて以下の評価を行った(比較例2)。それぞれの結果を表2に示す。
なお、表1の塩粘度は、4質量%NaCl溶液中に薬剤を0.5質量%溶解させた試料を、試料温度を25℃としてB型粘度計で測定したものである。
試験用パルプスラリー160mlに対し、表2の濃度で薬剤を添加した後、800rpmで20秒間撹拌を行った。その後丸型シートマシン(熊谷理機工業株式会社製)を用いて坪量80g/m2になるよう試験紙を作製した。シートマシン用プレス(熊谷理機工業株式会社製)及び大型回転乾燥機(熊谷理機工業株式会社製)を用いて試験紙を乾燥させた後、温度23℃、湿度50%条件下で一晩調湿した。調湿した試験紙を、テーバー式アブレーションテスター(株式会社安田精機製作所製)を用いて重り1000g、回転数50回転の条件下で紙粉量の測定を行った。TAPPI T476に準拠し、下式を用いて紙粉量を算出した。比較例2は薬剤を添加しない以外は上記と同様に紙粉量を算出した。
紙粉量(mg/1000回転)=1000L/R
L=こすり取られた風乾物質のmg数
R=回転テーブルの回転数
絶乾質量が0.7%になるよう水道水で希釈した試験用パルプスラリー1Lに対し、表2の濃度で薬剤を添加し、ミューテック社製の濾水歩留試験機DFS(ダイナミックフィルトレーションシステム)を用いて濾液を回収し、JIS K0102に準拠して、試験用パルプスラリー及び試験後の濾液中の灰分量を測定した。灰分歩留率は下式を用いて算出した。比較例2は薬剤を添加しない以外は上記と同様に灰分歩留率を算出した。灰分歩留率が高いほど、炭酸カルシウムの紙への定着率が高いことを意味している。
灰分歩留率(%)=(試験用パルプスラリー中の灰分質量―試験後の濾液中の灰分質量)/試験用パルプスラリー中の灰分質量
試験用パルプスラリー450mlに対し、表2の濃度で薬剤を添加した後、800rpmで20秒間撹拌を行った。その後角型シートマシン(熊谷理機工業株式会社製)を用いて坪量80g/m2になるよう試験紙を作製した。シートマシン用プレス(熊谷理機工業株式会社製)及び大型回転乾燥機(熊谷理機工業株式会社製)を用いて試験紙を乾燥させた後、温度23℃、湿度50%条件下で一晩調湿した。3Dシートアナライザー(株式会社マツボー製)を用いて、調湿した試験紙の地合い指数(透過式)を測定した。比較例2は薬剤を添加しない以外は上記と同様に地合い指数を算出した。地合い指数が高いほど地合いが良好なことを表している。
試験用パルプスラリー160mlに対し、表2の濃度で薬剤を添加した後、800rpmで20秒間撹拌を行った。その後丸型シートマシン(熊谷理機工業株式会社製)を用いて坪量80g/m2になるよう試験紙を作製した。シートマシン用プレス(熊谷理機工業株式会社製)及び大型回転乾燥機(熊谷理機工業株式会社製)を用いて試験紙を乾燥させた後、温度23℃、湿度50%条件下で一晩調湿した。ミューレン低圧型破裂度試験機(熊谷理機工業株式会社製)を用いてJIS Z1516に準拠して、調湿した試験紙の比破裂強度を測定した。比較例2は薬剤を添加しない以外は上記と同様に比破裂強度を算出した。比破裂強度が高いほど、紙力が強いことを意味している。
i:2-(メタクロイルオキシ)エチル(トリメチル)アンモニウムクロリド
ii:2-(アクロイルオキシ)エチル(トリメチル)アンモニウムクロリド
iii:アクリル酸
iv:アクリルアミド
具体的には、薬剤として、カチオン性モノマーの配合割合が50mol%未満であり、かつカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとの配合比が1.5以上である両性ポリマーを用いた実施例1〜5は、地合い指数及び比破裂強度が良好であり、紙力の低下を抑制していることが分かる。さらに、実施例1〜5は、紙粉量も少ないことから、紙力の低下を抑制しつつ、紙粉を低減していることが分かる。
また、カチオン性モノマーの配合割合が50mol%以上、あるいはカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとの配合比が1.5未満のポリマーは、紙力の低下の抑制と、紙粉の低減とを同時に満足できないことが分かる。
例えば、比較例3及び4は、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとの配合比が1.5以上である両性ポリマーを用いたものである。比較例3及び4では、地合い指数及び比破裂強度が低く、紙力が不十分であることが分かる。また、比較例3及び4は紙粉量も大きく低減できていない。
また、比較例5〜9は、カチオン性モノマーの配合割合が50mol%以上のポリマーを用いたものである。比較例5〜9のものは、凝集時に形成したフロック(凝集体)中に微細繊維や填料を含んでいるため灰分歩留が向上していると考えられる。しかし、このことは、比較例5〜9においては、微細繊維や填料は紙製品中に十分に定着されていないことを意味し、そのため紙粉量が多くなっている。
また、カチオン性モノマーを含まず、アニオン性モノマーを多く含む比較例10は、強い凝集が起きることで地合い指数が大きく低下し、その結果比破裂強度が低下していることが分かる。
Claims (5)
- ポリマーを構成する構造単位として、
カチオン性モノマーである(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル4級塩に由来する構造単位、アニオン性モノマーに由来する構造単位、及びノニオン性モノマーであるN置換低級アルキルアクリルアミドに由来する構造単位を含み、
該ポリマーの全構造単位の由来となるモノマーの全量に対する(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル4級塩の配合割合が10mol%以上50mol%未満、該ポリマーの全構造単位の由来となるモノマーの全量に対するアニオン性モノマーの配合割合が5mol%以上25mol%以下、該ポリマーの全構造単位の由来となるモノマーの全量に対するN置換低級アルキルアクリルアミドの配合割合が45mol%以上85mol%以下であり、
かつ下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル4級塩とアニオン性モノマーとの配合比が1.7以上であり、塩粘度が50mPa・s未満である両性ポリマーを含む紙粉低減剤。
両性ポリマーの全構造単位の由来となるモノマーの全量に対する(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル4級塩の配合割合(mol%)/両性ポリマーの全構造単位の由来となるモノマーの全量に対するアニオン性モノマーの配合割合(mol%) (1) - 前記配合比が1.7以上7以下である請求項1に記載の紙粉低減剤。
- 前記両性ポリマーの塩粘度が20〜40mPa・sである請求項1又は2に記載の紙粉低減剤。
- 紙製造工程において、請求項1〜3の何れか1項に記載の紙粉低減剤を添加する紙粉低減方法。
- 紙製造工程において、請求項1〜3の何れか1項に記載の紙粉低減剤を添加する紙製造方法。
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