JP4694279B2 - 製紙用添加剤及び当該添加剤を含有する紙 - Google Patents

製紙用添加剤及び当該添加剤を含有する紙 Download PDF

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本発明は製紙用添加剤及びこれを用いた紙に関して、古紙回収率の向上に伴う原料事情の悪化や用水のクローズド化が進んだ抄紙条件でも、紙力や濾水性といった薬品効果の持続性に優れるものを提供する。
高い強度が要求される段ボール原紙や紙管原紙などの抄紙工程では、ポリアクリルアミド系の紙力増強剤が添加されている。しかしながら、昨今の古紙回収率向上による原料事情の悪化や用水のクローズド化は電解質物質を蓄積させて、抄紙系の電気伝導度、水温、pHの上昇を引き起こし、ポリマーの紙への歩留まりが低下するため、紙力増強効果を効率良く持続的に発揮することが困難になって来ている。
このような状況に対して、例えば、多量の電解質物質を含む抄紙系でも紙力増強効果などを発揮することを目的とした従来技術には、下記のものがある。
(1)特許文献1
多量の電解質物質が含まれる抄紙系でも紙力増強効果を有効に発揮することを目的として、(a)ベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマーと、(b)アニオン性モノマーと、(c)アクリルアミド類とを共重合反応した紙力増強剤が開示されている(請求項1と3参照)。また、この3成分以外にも、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のカチオン性モノマーを成分(a)と併用できることが記載されている(第2頁右下欄〜第3頁左上欄参照)。
(2)特許文献2
上記特許文献1の分割出願であり、同文献1の成分(a)をアミド型の4級アンモニウム塩系カチオン性モノマーに限定したものである。
(3)特許文献3
濾水向上効果と紙力向上効果の両立を目的として、(a)アミド型のベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマーと、(b)アニオン性モノマーと、(c)アクリルアミド類とを共重合反応した製紙用添加剤が開示されている(請求項1、第2頁左上欄参照)。
上記成分(a)の共重合割合は1〜50モル%であり(請求項1、第3頁左上欄参照)、また、他のモノマー(d)としては、(メタ)アクリルニトリル及びその誘導体などが挙げられる(第2頁右下欄参照)。
同文献3の第1表の実施例と比較例には、カチオン性モノマーとして上記成分(a)を単用した例が記載されている。
(4)特許文献4
硫酸バンドの使用量の少ない中性抄造において、少量でアルミニウムイオン添加効果が大きく、紙力増強効果を発揮することを目的として(段落7参照)、アルミニウムイオンと結合させてなる、両性ポリアクリルアミド系ポリマーを主成分とした製紙用添加剤が開示されている(請求項1参照)。この両性ポリマーを得るためのカチオン性モノマーとして、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの3級アミン系モノマー、或は、これらに塩化ベンジルを反応させた4級アンモニウム塩系モノマーなどが挙げられ、これらを単用又は2種以上を併用できることが記載されている(段落11参照)。
(5)特許文献5
上記特許文献4と同様の目的で、両性、カチオン性又はアニオン性ポリアクリルアミド系ポリマーの希釈液に、水溶性アルミニウム化合物の希釈液を予め混合してから、混合希釈液をパルプスラリーに添加する製紙方法が開示されている(請求項1参照)。
これらのポリマーを得るためのカチオン性モノマーとして、段落8に上記特許文献4と同様のことが記載されている。
(6)特許文献6
上記特許文献4と同様の目的で、両性、カチオン性又はアニオン性ポリアクリルアミド系ポリマーの希釈液に、水溶性アルミニウム化合物の希釈液を混合し、混合希釈液をパルプスラリーに添加してから、コロイド状ケイ酸を添加する製紙方法が開示されている(請求項1参照)。
これらのポリマーを得るためのカチオン性モノマーとして、段落20に上記特許文献4と同様のことが記載されている。
また、製紙用の添加剤ではないが、汚泥処理を対象として、ベンジル系の4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマーを構成成分とする添加剤に特許文献7がある。
即ち、同文献7には、汚泥に対して優れた凝集脱水性能を発揮することを目的として、ベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマー(I)と、他の4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマー(II)と、イタコン酸と、アクリルアミド類とを共重合反応した両性高分子凝集剤が開示されている(請求項2参照)。
特開昭63−92800号公報 特開平8−284093号公報 特開昭62−299599号公報 特開平8−188982号公報 特開平8−226092号公報 特開2001−279599号公報 特開平8−164305号公報
上記従来技術には、製紙用添加剤の主成分であるポリマーの構成モノマーにベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマーが開示されているが、このカチオン性モノマーのうち、エステル構造を有するタイプはテーブルテストや歩留まりの高い抄紙系ではある程度の紙力及び濾水性向上の効果を発揮する。
しかしながら、歩留まりが低い抄紙系、つまりパルプスラリーに添加されたポリマーが紙中に効率良く歩留まらず、脱水工程で抜け落ち、抄紙系の用水中を長期間循環する実際の抄紙機においては、経時で加水分解を受けてカチオン性を失い、その薬品効果は大幅に低下してしまう。
一方、上記カチオン性モノマーのうち、アミド構造を有するタイプを用いた両性共重合体は加水分解に対する抵抗性こそ高いものの、カチオン成分としての紙力や濾水性向上効果は決して満足できるものではなかった。
このように、上記従来技術の製紙用添加剤では、多量の電解質物質を含んで歩留りが低い抄紙系では、紙力及び濾水性向上の効果の持続性は未だ充分でないというのが実情である。
本発明は上記歩留りの低い抄紙系にあっても、紙力及び濾水性などの薬品効果を良好に持続することを技術的課題とする。
本発明者らは、アミド型のベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマーに着目して、歩留りの悪い抄紙系でもこのカチオン性モノマーを活用することにより、紙力及び濾水性効果の持続性を改善することを鋭意研究した。
その結果、一般に、エステル型のカチオン性モノマーは紙力増強効果に優れる反面、抄紙系の電気伝導度、pH、水温などが上昇すると加水分解を起こして紙中に定着し難くなるが、これに上記アミド型のベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマーを適量範囲で併用すると、紙力増強や濾水性などの薬品効果を高く保持しながら、その持続性を大幅に改善できることを見い出して、本発明を完成した。
即ち、本発明1は、カチオン性モノマー(A)と、アニオン性モノマー(c)と、(メタ)アクリルアミド類(d)とを共重合反応して得られる両性水溶性アクリルアミド系共重合体を有効成分とする製紙用添加剤において、
上記カチオン性モノマー(A)が、下記の一般式(1)で表されるアミド型のベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマー(a)と、当該成分(a)以外のカチオン性モノマー(b)であり、且つ、成分(a)と(b)の総量に対する成分(a)の混合割合が10〜60モル%であり、
Figure 0004694279
(式(1)中、R1はH又はCH3、R2及びR3は各々C1〜C2アルキル基、nは2〜4の整数、Xはアニオン性対イオンである)
上記両性水溶性アクリルアミド系共重合体の重量平均分子量が80万〜500万であることを特徴とする製紙用添加剤である。
本発明2は、上記本発明1において、カチオン性モノマー(b)が、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレートの少なくとも一種であることを特徴とする製紙用添加剤である。
本発明3は、上記本発明1又は2において、アニオン性モノマー(c)が、α,β−不飽和カルボン酸類、α,β−不飽和スルホン酸類の少なくとも一種であることを特徴とする製紙用添加剤である。
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、成分(a)〜(d)に、さらに架橋性モノマー(e)及び/又は連鎖移動剤(f)を使用して、両性水溶性共重合体を得ることを特徴とする製紙用添加剤である。
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかの製紙用添加剤をパルプスラリーに添加して湿式抄造した紙である。
前述したように、一般に、カチオン性モノマー(b)、代表的にはエステル型のモノマーは紙力効果には優れるが、電気伝導度、pH、水温などの上昇した抄紙系では紙中に定着し難くて薬品効果の持続性が低い。これに対し、本発明では、当該カチオン性モノマー(b)にアミド型のベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマー(a)を適量併用するため、古紙回収率向上による原料事情の悪化や用水のクローズド化が進んだ抄紙条件であっても、紙力や濾水性の薬品効果を高く保持しながら、その持続性を向上できる。 即ち、上記アミド型のカチオン性モノマー(a)自体が加水分解に対する非常に高い抵抗性を有することに加えて、立体的にバルキーで疎水性のベンジル基が共重合体近傍への電解質物質の接近を阻止して、カチオン性モノマー(b)(特に、エステル型のモノマー)が加水分解することを効果的に抑制するため、電解質物質などが多量に共存する抄紙系でも紙力及び濾水性の薬品効果の持続性を改善できる。
特に、本発明においては、カチオン性モノマーとして、アミド型でベンジル系のカチオン性成分(a)と他のカチオン性成分(b)を併用するに際して、当該アミド型の成分(a)をカチオン性モノマーの総量に対して10〜60モル%の適量範囲で使用するため、紙力増強と濾水性の薬品効果を発揮させながら、その効果を良好に持続させることができる。
このため、古紙の有効利用の促進や、廃水量の減少を初め、製紙用添加剤の使用量自体を低減することもできるため、環境負荷の軽減にも寄与する。
上記特許文献1には、紙力増強剤の具体例としてカチオン性モノマーを併用した共重合体Kが記載されているが(第1表参照)、この共重合体Kは、アミド型のベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマーである3−アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(a2)と、他のカチオン性モノマーであるジメチルアミノプロピルアクリルアミド(d3)を併用するが、カチオン性モノマーの総量に対する成分(a2)の割合は、a2/(a2+d3)=4/(4+1)=80モル%であり、本発明の10〜60モル%から外れる。
また、汚泥処理用の添加剤を対象とする特許文献7には、アミド型のベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマーであるアクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(DMPBC)(20モル%)と、他のカチオン性モノマーであるアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(DMAQ)(10モル%)とを併用した共重合体(同文献7の本発明品2)が開示されているが(段落28の表1参照)、カチオン性モノマーの総量に対するDMPBCの混合割合は、20/(20+10)=67モル%であり、やはり本発明の混合範囲(10〜60モル%)から外れる。
尚、両性ポリマーの具体例として、上記特許文献4には、アミド型のベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマーであるジメチルアミノプロピルアクリルアミドの塩化ベンジル4級化物(DMAPAA−BQ)を使用したポリマーS−4が開示されており(段落25の表1参照)、同様に、特許文献5には、同DMAPAA−BQを使用したポリマーに、S−3、S−8、S−9、S−11Aが開示されており(段落21の表1参照)、特許文献6には、同DMAPAA−BQを使用したポリマーに、S−3、S−8、S−9、S−11Aが開示されているが(段落49の表1参照)、当該DMAPAA−BQに他のカチオン性モノマーを併用した共重合体の例は開示されていない。
本発明は、第一に、カチオン性モノマー(A)として、アミド型のベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマー(a)と他のカチオン性モノマー(b)を適量割合で併用しながら、これらとアニオン性モノマー(c)と(メタ)アクリルアミド類(d)とを共重合反応させて得られた、特定の重量平均分子量を有する両性水溶性アクリルアミド系共重合体を有効成分とする製紙用添加剤であり、第二に、この添加剤を含有する紙である。
上記アミド型のベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマー(a)は、一般式(1)で表される。
当該成分(a)は、アクリルアミド(AMと略す)又はメタクリルアミドを基本骨格とする、いわばアミド型3級アミン系モノマーをハロゲン化ベンジルなどで4級化したものである。Xはハロゲン、アンモニウム、アルキルスルホネートなどのアニオン部分である。
上記成分(a)としては、アクリルアミドエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、メタクリルアミドエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(DPA-BQと略す)、メタクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(DPMA-BQと略す)、アクリルアミドプロピルジエチルベンジルアンモニウムクロライド、メタクリルアミドプロピルジエチルベンジルアンモニウムクロライド、アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムブロマイド、メタクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムブロマイド、アクリルアミドブチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、メタクリルアミドブチルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどが挙げられるが、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの塩化ベンジル4級化物が好ましい。
成分(b)は成分(a)以外のカチオン性モノマーである。
当該カチオン性モノマー(b)には、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミド、或は、ジアリルジアルキルアンモニウムハライドなどが挙げられるが、前述したように、紙力効果を担保する見地から、エステル型のモノマー、即ち、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレートが好ましい(本発明2参照)。
上記1〜2級アミノ基含有(メタ)アクリレートは、アミノエチル(メタ)アクリレートなどの1級アミノ基含有(メタ)アクリレート、或は、メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの2級アミノ基含有(メタ)アクリレートである。また、上記3級アミノ基含有(メタ)アクリレートは、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(ジメチルアミノエチルアクリレートはDAと略す;ジメチルアミノエチルメタクリレートはDMと略す)、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートを代表例とする。
上記1〜2級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドは、アミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの1級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、或は、メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの2級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドである。また、上記3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドは、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド(ジメチルアミノプロピルアクリルアミドはDPAと略す)、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドを代表例とする。
上記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート、又は4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミドは、3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、又は3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドを塩化メチル、塩化ベンジル、硫酸メチル、エピクロルヒドリンなどの4級化剤を用いたモノ4級塩基含有モノマーである。但し、成分(b)は成分(a)以外のカチオン性モノマーであるため、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミドは、3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドを塩化ベンジルで4級化したものは排除される。 当該4級アンモニウム塩基含有モノマーの具体例には、メタクリロイロキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド(DM-BQと略す)、アクリロイロキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド(DA-BQと略す)、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(メタクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドはDM−Qと略す)、(メタ)アクリロイロキシエチルトリエチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
また、カチオン性モノマーとしては、高分子量化を図る見地から、分子内に2個の4級アンモニウム塩基を有するビス4級塩基含有モノマー、即ち、2個の4級アンモニウム塩基を有するビス4級塩基含有(メタ)アクリレートなどを使用しても良い。
一方、上記4級アンモニウム塩基含有のカチオンモノマーに属するジアリルジアルキルアンモニウムハライドは、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドである。
本発明の両性水溶性共重合体の構成単位であるアニオン性モノマー(c)は、α,β−不飽和カルボン酸類、α,β−不飽和スルホン酸類である(本発明3参照)。
上記不飽和カルボン酸類は(メタ)アクリル酸(アクリル酸はAAと略す)、(無水)マレイン酸、フマル酸(FAと略す)、イタコン酸(IAと略す)、(無水)シトラコン酸、そのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩などである。
上記不飽和スルホン酸類は、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、その塩などである。
本発明の両性水溶性共重合体の構成単位である(メタ)アクリルアミド類(d)は、アクリルアミド、メタクリルアミドの外、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどである。
また、本発明4に示すように、本発明の両性水溶性共重合体においては、上記成分(a)〜(d)に、さらに架橋性モノマー(e)及び/又は連鎖移動剤(f)を使用して、共重合体に分岐架橋構造を持たせることができる。
上記架橋モノマー(e)は共重合体の分子量を増し、灰分を歩留らせる活性点を増大させるために寄与し、メチレンビスアクリルアミド(MBAMと略す)、エチレンビス(メタ)アクリルアミドなどのビス(メタ)アクリルアミド類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート類、ジメチルアクリルアミド(DMAMと略す)、メタクリロニトリル(MANと略す)などが使用できる。
上記連鎖移動剤(f)は共重合体の粘度の増大を抑制し、分岐構造を増して分子量を調整する作用をし、イソプロピルアルコール(IPAと略す)、メタリルスルホン酸ナトリウム(SMSと略す)、n−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、チオグリコール酸等のメルカプタン類などの公知の連鎖移動剤が使用できる。
さらに、本発明の両性水溶性共重合体では必要に応じて、他のモノマーとして、アクリロニトリルなどのノニオン系モノマーを使用しても差し支えない。
本発明の両性水溶性共重合体の構成成分(a)〜(d)は夫々単用又は併用できる。
前述したように、一般的なカチオン性モノマー(b)(特に、エステル型モノマー)は電解質物質などが多量に含まれる抄紙系では加水分解し易いため、アミド型のベンジル系カチオン性成分(a)を適量併用することに本発明の特徴がある。
成分(a)と成分(b)を併せたカチオン性モノマー(A)の総量に対する成分(a)の混合割合は10〜60モル%であることが必要であり、好ましくは20〜50モル%、より好ましくは20〜40モル%である。10モル%より少ないと成分(b)が加水分解し易くなり、紙力や濾水性の効果の持続性が低下してしまい、60モル%を越えると紙力や濾水性の効果自体が低減してしまう。
上記共重合体を得る際の構成成分(a)〜(d)の組成比にあっては、カチオン性モノマー(A)(成分(a)と(b)の合計)が1.5〜20モル%、アニオン性モノマー(c)が0.5〜10モル%、アクリルアミド類(d)が残部とするのが適当である。
また、共重合体の重量平均分子量は80〜500万であることが必要であり、好ましくは100〜400万程度である。当該特定範囲においては、分子量が大きい方が好ましいが、その一方で、成分(b)の種類や量、抄紙系のpH、電解質の量や種類などの多くの要素が薬品効果に関係し、分子量の特定だけで効果の有効性が左右されるわけではない。
本発明5は、上記製紙用添加剤をパルプスラリーに添加して湿式抄造した紙である。
湿式抄造の方法は特に制限されることなく公知の方法が採用でき、硫酸アルミニウムを定着剤とする酸性紙、炭酸カルシウムを填料とする中性紙を問わず、各種抄紙に広く適用できる。
また、湿式抄造で得られる紙は、新聞用紙、インクジェット用紙、感熱記録原紙、感圧記録原紙、上質紙、板紙、その他の紙類などを問わない。
以下、本発明の製紙用添加剤の合成例、当該添加剤を用いて湿式抄造した紙の製造実施例、当該実施例で得られた紙の紙力、紙力保持率、濾水性の各種評価試験例を順次説明する。また、合成例、実施例、試験例中の「部」、「%」は基本的に重量基準である。
尚、本発明は下記の合成例、実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
《製紙用添加剤の合成例》
合成例1〜6のうち、合成例6は共重合体の構成モノマーとしてアミド型のベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマー(a)と他のアミド型のカチオン性モノマー(b)を併用した例、合成例1〜5は共に成分(a)と他のエステル型のカチオン性モノマー(b)を併用した例である。また、合成例3は他のエステル型のカチオン性モノマー(b)として、3級アミン系モノマーと4級アンモニウム塩系モノマーを複用した例である。合成例1は成分(a)のカチオン性モノマーの総量に対する混合率が本発明の適正範囲の下限(10モル%)近傍の例である。合成例6は成分(a)のカチオン性モノマーの総量に対する混合率が本発明の適正範囲の上限(60モル%)に近い例である。
また、比較合成例1〜6のうち、比較合成例1は成分(a)のカチオン性モノマーの総量に対する混合率が本発明の適正範囲の下限(10モル%)より少ない例である。比較合成例2は成分(a)のカチオン性モノマーの総量に対する混合率が本発明の適正範囲の上限(60モル%)を越える例であり、冒述の特許文献1の表1のポリマーK、或は、特許文献7の表1の発明品2に準拠した例でもある。比較合成例3は本発明の成分(a)に替えて、塩化ベンジルで4級化する前のアミド型3級アミン系カチオン性モノマー(DPA)を使用した例である。比較合成例4は両性水溶性アクリルアミド系共重合体の分子量が本発明の特定範囲より低い例である。比較合成例5は本発明の成分(a)に替えて、エステル型のベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマー(DM−BQ)を使用した例であり、冒述の特許文献5の表1のポリマーS−5などに準拠した例でもある。比較合成例6は本発明の成分(a)に替えて、アミド型の3級アミン系モノマーの塩化メチル4級化物(DPA−Q)を使用した例である。
尚、合成例1〜6、比較合成例1〜6で得られた各共重合体水溶液(製紙用添加剤)の組成、性状値を図1にまとめた。その際、架橋剤(e)及び連鎖移動剤(f)は、モノマー成分(a)、(b)、(c)及び(d)の総量に対するモル%で表記した。
(1)合成例1
攪拌機、温度計、環流冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、50%アクリルアミド水溶液121g(70.7モル%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート3.77g(2モル%)、60%アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド1.70g(0.3モル%)、80%アクリル酸2.16g(2モル%)、メチレンビスアクリルアミド0.02g(0.01モル%)、イソプロパノール3.6g(5モル%)及びイオン交換水233gを仕込み、硫酸にてpHを3.0に調整し、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した。
次いで、系内を55℃とし、攪拌下で触媒として1%過硫酸アンモニウム水溶液5gを投入した後、90℃まで昇温した。その後、さらに50%アクリルアミド水溶液37g(21.8モル%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート2.08g(1.1モル%)、60%アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド0.57g(0.1モルl%)、80%アクリル酸2.16g(2モル%)を混合し、硫酸にてpHを3.0に調整したモノマー水溶液を添加し、続いて追加の触媒として1%過硫酸アンモニウム水溶液5gを投入し、重合熱を制御しながら3時間温度を保持した。
適度な粘度になったところで水50gを投入して冷却を行って反応を終了させ、固形分20.2%、粘度(25℃)7300mPa・s、pH3.7、重量平均分子量270万の両性共重合体水溶液を得て、製紙用添加剤とした。
尚、本合成例1では、成分(a)のカチオン性モノマー(A)の総量に対する混合割合は、{0.4/(0.4+3.1)}×100=11モル%である。
(2)合成例2〜6
上記合成例1を基本として、成分(a)〜成分(e)の種類又はその使用割合を図1に示すように変化させた他は、合成例1と同様に操作して、各共重合体水溶液(製紙用添加剤)を得た。
尚、合成例3では、成分(a)のカチオン性モノマー(A)の総量に対する混合割合は、{2/(2+1+2)}×100=40モル%、同様に、合成例4では{5/(5+10)}×100=33モル%である。また、合成例6では、成分(a)のカチオン性モノマー(A)の総量に対する混合割合は、{2/(2+2)}×100=50モル%である。
(3)比較合成例1〜6
前記合成例1を基本として、成分(a)〜成分(e)の種類又はその使用割合を図1に示すように変化させた他は、合成例1と同様に操作して、各共重合体水溶液(製紙用添加剤)を得た。
尚、比較合成例1では、成分(a)のカチオン性モノマー(A)の総量に対する混合割合は、{0.2/(3.3+0.2)}×100=5.7モル%、同様に、比較合成例2では{4/(4+1)}×100=80モル%である。
そこで、以下の通り、上記合成例1〜6及び比較合成例1〜6で得られた各製紙用添加剤をパルプスラリーに添加して、湿式抄造した紙の製造実施例を述べる。
《紙の製造実施例》
合成例n(n=1〜6の整数)を添加して湿式抄造した紙の例が実施例(2n−1)と実施例2nである。この場合、合成例nを使用して湿式抄造した紙自体が実施例(2n−1)であり、実施例2nは、後述する紙力効果の持続性の優劣を評価するために、合成例nに熱処理、即ち、薬品効果が減じる方向への処理を行ったものを用いて湿式抄造した紙である。
従って、例えば、n=1の場合、実施例1と実施例2はともに合成例1の添加剤を用いた紙であり、実施例1は熱処理なし、実施例2は熱処理ありの例である。
一方、比較例1は本発明の製紙用添加剤を添加しないで湿式抄造したブランク例である。また、比較合成例n(n=1〜6の整数)を添加して湿式抄造した紙の例が比較例2nと比較例(2n+1)である。この場合、比較合成例nを用いて湿式抄造した紙自体が比較例2nであり、比較例(2n+1)は比較合成例nに熱処理(即ち、薬品効果が減じる方向への処理)を行ったものを用いて湿式抄造した紙である。
従って、例えば、n=1の場合、比較例2と比較例3はともに比較合成例1の添加剤を用いた紙であり、比較例2は熱処理なし、比較例3は熱処理ありの例である。
尚、図2の左半部の欄に、この合成例(比較合成例)と実施例(比較例)の関係、熱処理の有無をまとめた。
(1)実施例1
段ボール古紙を水道水に一昼夜浸漬し、ナイアガラ式ビーターにて叩解し、カナディアン・スタンダード・フリーネス(CSF)が300mlになるように調整して、3%濃度のパルプスラリーを得た。
攪拌下のパルプスラリーにまず硫酸バンドを2%添加して、pHを7とした。続いて、上記合成例1で得られた重合体水溶液を水道水にて1%希釈液とし、対パルプ当たりの重合体添加量が0.3%になるように添加した。その後、パルプスラリー濃度をpH7に調整した水道水にて1%に希釈し、TAPPIシートマシンにて坪量95g/m2となるように抄紙し、ウェットシートを得た。
このシートを濾紙の間に挟み、5kg/cm2で1分間プレス脱水し、回転式ドラムドライヤーで105℃にて3分間乾燥させて、手抄き紙を作製した。
(2)実施例2
上記合成例1で得た重合体水溶液を水道水にて1%希釈液とし、pHを7に調整してから、密栓をして50℃の恒温槽にて24時間の熱処理を行った。
攪拌下のパルプスラリーに硫酸バンドを2.5%添加してpHを7とし、続いて熱処理後の前記重合体水溶液を対パルプ当たりの重合体添加量が0.3%になるように添加した。その後、上記実施例1と同様の操作を行って、手抄き紙を得た。
(3)実施例3、5、7、9、11
上記実施例1を基本として、パルプスラリーに添加する添加剤を合成例2〜6に各々変化させた他は、実施例1と同様に操作して、手抄き紙を得た。
(4)実施例4、6、8、10、12
上記実施例2を基本として、パルプスラリーに添加する添加剤を合成例2〜6に各々変化させた他は、実施例2と同様に操作して、手抄き紙を得た。
(5)比較例1
上記実施例1を基本として、パルプスラリーに本発明の添加剤を全く添加しなかった他は、実施例1と同様に操作して、手抄き紙を得た。
(6)比較例2、4、6、8、10、12
上記実施例1を基本として、パルプスラリーに添加する添加剤を比較合成例1〜6に各々変化させた他は、実施例1と同様に操作して、手抄き紙を得た。
(7)比較例3、5、7、9、11、13
上記実施例2を基本として、パルプスラリーに添加する添加剤を比較合成例1〜6に各々変化させた他は、実施例2と同様に操作して、手抄き紙を得た。
《紙力、紙力持続性及び濾水性の評価試験例》
上記実施例1〜12並びに比較例1〜13で得られた各パルプスラリー、並びにこのパルプスラリーから製造された各手抄き紙について、以下の通り、紙力、紙力の持続性並びに濾水性の評価試験を行った。
(1)紙力評価
上記各手抄き紙を温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間調湿した後、JIS P8112に準じて破裂強さ(比破裂強さ)を測定した。
(2)紙力持続性の評価
各重合体の紙力効果の持続性を示す指標として、当該重合体を熱処理せずに添加して湿式抄造した紙の比破裂強さに対して、熱処理した後に添加して湿式抄造した紙の比破裂強さがどのように変動したかを下記の式(I)で算出することにより、その算出数値を熱処理後の添加剤の「紙力保持率」とした。
紙力保持率(%)={(比破裂C−比破裂A)/(比破裂B−比破裂A)}×100 …(I)
(上記式(I)中、比破裂Aは重合体未添加の手抄き紙(比較例1)の比破裂強さ、比破裂Bは熱処理前の重合体を添加した手抄き紙の比破裂強さ、比破裂Cは熱処理後の重合体を添加した手抄き紙の比破裂強さである)
即ち、合成例n(n=1〜6)の添加剤を用いたときの比破裂Bは実施例(2n−1)の紙の比破裂強さ、比破裂Cは実施例2nの紙の比破裂強さである。例えば、合成例1(n=1)の添加剤を用いたときの比破裂Bは実施例1の比破裂強さ、比破裂Cは実施例2の比破裂強さであって、紙力保持率は{(2.78−2.38)/(2.87−2.38)}×100=82%である。
また、比較合成例n(n=1〜6)の添加剤を用いたときの比破裂Bは比較例2nで得た紙の比破裂強さ、比破裂Cは比較例(2n+1)で得た紙の比破裂強さである。例えば、比較合成例1(n=1)の添加剤を用いたときの比破裂Bは比較例2の比破裂強さ、比破裂Cは比較例3の比破裂強さであって、紙力保持率は{(2.47−2.38)/(2.73−2.38)}×100=26%である。
(3)濾水性評価
pH7に調整した水道水にて上記各パルプスラリーを0.3%に希釈し、その1000mLを用いて、JIS P8121に準じてCSF(ml)を測定した。
図2の右半部の欄はその試験結果である。
本発明の製紙用添加剤を含まない比較例1に比べて、熱処理なしの奇数番号の実施例(2n−1)(n=1〜6)では比破裂強さは高く、紙力に優れることが判る。
また、同じ添加剤を含む一対の実施例(2n−1)と実施例2n(n=1〜6)から算出した紙力保持率を見ると、82%以上の数値を示し、実施例1〜12は紙力の持続性にも優れることが判る。さらに、実施例1〜12は比較例1に比べて濾水性にも優れる。
成分(a)のカチオン性モノマーの総量に対する混合率が本発明の適正範囲の下限より少ない比較合成例1を用いた比較例2〜3について、比較例2ではエステル系のカチオン性モノマー(b)の含有量が多いために紙力は低くない数値を示したが、比較例2〜3の紙力保持率は26%ときわめて低かった。
これに対して、実施例1〜12では紙力は高く、また、紙力保持率も82%以上の数値を示したことから、実施例は当該比較例に比べて紙力持続性が大幅に改善されたことが確認できた。
成分(a)のカチオン性モノマーの総量に対する混合率が本発明の適正範囲の上限を越える比較合成例2を用いた比較例3〜4について、比較例3ではエステル系のカチオン性モノマー(b)の含有量が少ないために紙力は低かったが、比較例3〜4の紙力保持率は90%を示した。
これに対して、実施例1〜12では紙力は高く、且つ、紙力保持率も82%以上の数値を示したことから、実施例は当該比較例に比べて紙力、紙力持続性ともに改善されたことが確認できた。また、実施例の濾水性も当該比較例より優れていた。
以上のように、比較例2〜5と実施例1〜12を対比すると、紙力及びその持続性、濾水性を改善するためには、カチオン性モノマーとしてアミド型のベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマー(a)と他のカチオン性モノマー(b)を併用するだけでは充分ではなく、成分(a)と(b)を適正量の範囲内で組み合わせることが必要である点が確認できた。
塩化ベンジルで4級化する前のアミド型3級アミン系カチオン性モノマー(ジメチルアミノプロピルアクリルアミド:DPA)を用いた比較合成例3を添加した比較例6〜7について、比較例6の紙力は高い数値を示したが、実施例1〜12に比べて紙力の持続性は劣った。
従って、比較例6〜7と実施例1〜12を対比すると、紙力及びその持続性、濾水性を改善するためには、カチオン性モノマー(b)と併用するアミド型のカチオン性成分(a)として、3級アミン系モノマーではなく、バルキーな疎水基であるベンジル基が結合した4級アンモニウム塩系のカチオン性モノマーを使用する必要がある点が確認できた。この試験結果から、アミド型の成分(a)のバルキーなベンジル基が、成分(b)の加水分解の抑制に有効に寄与していることが推定できる。
両性水溶性アクリルアミド系共重合体の分子量が本発明の特定範囲より低い比較合成例4を用いた比較例8〜9では、紙力、紙力持続性、濾水性ともに実施例1〜12より劣った。従って、紙力及びその持続性、濾水性を改善するためには、成分(a)と(b)を適量範囲で併用するだけでは不充分であり、共重合体の分子量を適正範囲に特定化すること、特に、適正に増大させる必要があることが確認できた。
エステル型のベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマー(メタクリロイロキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド:DM−BQ)を使用した比較合成例5を添加した比較例10〜11について、比較例10の紙力は高い数値を示したが、実施例1〜12に比べて紙力の持続性には劣った。
従って、紙力及びその持続性、濾水性を改善するためには、4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマー(a)がバルキーなベンジル基を有することに加えて、エステル型ではなく、アミド型のモノマーである点が必要なことが確認できた。この試験結果から、紙力の持続性の改善には、加水分解に対する抵抗性に優れたアミド型の成分(a)でなければ、カチオン性モノマー(b)の加水分解の抑制に寄与できないことが推定される。
アミド型の3級アミン系モノマーの塩化メチル4級化物(アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド:DPA−Q)を使用した比較合成例6を添加した比較例12〜13について、3級アミン系モノマーの塩化メチル4級化物をアミド型のカチオン性成分(a)に使用したのでは紙力の持続性を良好に改善できず、当該持続性の改善には、立体障害効果の大きいベンジル基が結合した4級アンモニウム塩系モノマー(即ち、塩化ベンジル4級化物)を使用する必要があることが確認できた。
この点は、前述の比較例6〜7の試験結果と共通する。
以下、実施例1〜12を詳細に検討する。
先ず、合成例3〜4は成分(a)と成分(b)をより好ましい適量範囲(20〜40モル%)で併用して共重合体を得た例であるが、この合成例3〜4を用いた実施例5〜6及び実施例7〜8では紙力の持続性が96〜99%に達して、持続性の評価が特に高かった。
次いで、一般的な成分(b)としてエステル型のカチオン性モノマーを使用した合成例1〜5を添加した奇数番号の実施例(2n−1)(n=1〜5)に着目すると、これらの実施例は概ね高い紙力を示した。その反面、成分(b)としてアミド型のカチオン性モノマーを使用した合成例6を添加した実施例11では、上記エステル型の成分を用いた他の実施例に比べて、紙力の持続性は優れていたが、紙力の水準は少し後退していた。
例えば、冒述の特許文献1のポリマーKでは、アミド型のベンジル系4級アンモニウム塩基含有モノマーa2と併用する他のカチオン性モノマーd3として、アミド型の3級アミン系モノマーを使用しているが、上記実施例11の試験結果から、紙力自体を高く保持するには、本発明の成分(b)として、エステル型のカチオン性モノマー(3級アミン系又は4級アンモニウム塩系モノマーを包含する)を使用する方が好ましいことが窺われる。
合成例1〜6及び比較合成例1〜6の各両性水溶性アクリルアミド系共重合体について、構成成分(a)〜(f)の組成、共重合体の性状をまとめた図表である。 合成例1〜6及び比較合成例1〜6の各共重合体を添加したパルプスラリーの濾水性、当該パルプスラリーを湿式抄造した紙の比破裂強さ、紙力保持率などをまとめた図表である。

Claims (5)

  1. カチオン性モノマー(A)と、アニオン性モノマー(c)と、(メタ)アクリルアミド類(d)とを共重合反応して得られる両性水溶性アクリルアミド系共重合体を有効成分とする製紙用添加剤において、
    上記カチオン性モノマー(A)が、下記の一般式(1)で表されるアミド型のベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマー(a)と、当該成分(a)以外のカチオン性モノマー(b)であり、且つ、成分(a)と(b)の総量に対する成分(a)の混合割合が10〜60モル%であり、
    Figure 0004694279
    (式(1)中、R1はH又はCH3、R2及びR3は各々C1〜C2アルキル基、nは2〜4の整数、Xはアニオン性対イオンである)
    上記両性水溶性アクリルアミド系共重合体の重量平均分子量が80万〜500万であることを特徴とする製紙用添加剤。
  2. カチオン性モノマー(b)が、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレートの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の製紙用添加剤。
  3. アニオン性モノマー(c)が、α,β−不飽和カルボン酸類、α,β−不飽和スルホン酸類の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製紙用添加剤。
  4. 成分(a)〜(d)に、さらに架橋性モノマー(e)及び/又は連鎖移動剤(f)を使用して、両性水溶性共重合体を得ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製紙用添加剤。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製紙用添加剤をパルプスラリーに添加して湿式抄造した紙。
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