JP5847657B2 - 製紙用歩留向上剤およびそれを用いた製紙方法 - Google Patents
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なお、本明細書においては、アクリロイル基またはメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表し、アクリル酸またはメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表し、アクリレートまたはメタクリレートを(メタ)アクリレートと表す。
本発明における両性高分子化合物は、アニオン性基を有する重量平均分子量Mwが1000〜100万の高分子化合物Aの存在下に、カチオン性単量体を必須とする単量体の混合物を重合して得られる。
本発明における両性高分子化合物を製造する際の原料として用いられる高分子化合物Aは、アニオン性基を有している。重量平均分子量は1000〜100万であり、5000〜50万であることが好ましく、8000〜25万であることが特に好ましい。重量平均分子量が1000未満の場合、得られる重合体の填料との作用能力が乏しい。一方、重量平均分子量が100万を超える場合、得られる重合体の不溶解分が多くなり、水溶性化合物としての機能を発揮し難い。なお、高分子化合物Aの重量平均分子量Mwは、標準PEO(ポリエチレンオキサイド)を分子量標準としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる測定値である。
得られた重合体は水溶液の状態または乾燥、粉砕等の工程を経て粉末化して使用される。
本発明に用いられる両性高分子化合物は、高分子化合物Aの存在下,カチオン性単量体を必須成分とし、共重合可能な他の単量体を任意成分とする単量体混合物を重合して製造される。
(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルジメチルアミンおよびその塩酸塩または硫酸塩、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド等のジアリルジアルキルアンモニウムハライドなどが例示され、これらのカチオン性単量体は単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。
これらのノニオン性単量体は単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。
これらのアニオン性単量体は単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。
なお,上記の重量平均分子量Mwは、JIS K7361−1に準じて1.0N−硝酸ナトリウム水溶液を溶媒としてpH=3.0±0.1、30℃で測定した固有粘度[η](dl/g)から、下記式により求めたポリアクリルアミド換算分子量である。
[η] =3.73×10−4×Mw0.66 (式1)
本発明の製紙用歩留向上剤は、少なくとも上記両性高分子化合物を含んでなる。この組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の水溶性高分子化合物を含めることができる。他の水溶性高分子化合物としては、特に制限されないが、上記式(2)で示されるカチオン性単量体からなるカチオン性水溶性高分子、上記式(2)および式(4)で示される単量体からなる両性水溶性高分子、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアルコール等があげられる。
本発明の製紙用歩留向上剤を用いる製紙方法は、紙種は制限されない。通常の製紙工程で使用されるものであればよく、通常、少なくともパルプおよび填料を含み、必要に応じて填料以外の添加剤、具体的には、サイズ剤、定着剤、紙力増強剤および着色剤等を含むものである。抄紙機の形式も特に制限されることはなく、長網式抄紙機、ツインワイヤー式抄紙機、円筒型抄紙機等いずれの形式でも使用できる。
なお、各単量体の名称を以下の通り略記する。
AA : アクリル酸
AM : アクリルアミド
DAC : ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩
DMC : ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩
純水400mLに試料(重合体)を0.1質量%となる量を加えて十分に溶解し、目開き180μm(83メッシュ)の網でろ過後の残渣をメスシリンダーを用いて測定した。
純水500mLに塩化ナトリウム20.8g、および試料(高分子化合物)の濃度が0.50質量%となる量を加えて十分に溶解し、試料溶液を調製した。液温を25±1℃に調整し、M1ローターを付けた東機産業社製TV−10M型B型粘度計を用いて30rpm、3分間回転後の値を読み取りこれを0.5%溶液粘度とした。粘度がM1ローターの測定上限を超えた場合は、M2ローターを使用した。
紙料の約1gを秤量びんに採り、105℃に設定した乾燥機中で恒量になるまで乾燥した後の質量を測定した。
JIS 8221「パルプのろ水度試験法」に準じて、カナディアンスタンダードフリーネス(CSF)値として求めた。
〔全歩留率〕
BTG社製Mutec−DFR05型自動リテンション測定器を用い、全歩留率を測定した。抄網は24メッシュサイズを用い、ろ過時の撹拌回転数を800rpmとした。その他の設定はメーカーの推奨値によった。
全歩留率と同装置が示すファイン歩留率を填料歩留率とした。なお填料歩留率は、別途灰分歩留率をJIS 8251「紙、板紙およびパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」により求め、この測定値をもとに検量線を作成して求めた。
(高分子化合物A1〜A3)
高分子化合物Aとして、市販されているポリアクリル酸ナトリウムA1〜A3を使用した。それぞれの重量平均分子量を表1に示す。
還流冷却器および攪拌機を備えた容量3リットルのガラスフラスコに水400gを仕込み、80℃に加温した。次いで、80質量%AA水溶液625gと、30質量%の過硫酸ナトリウム(以下「NaPS」)水溶液33.3g(AA100質量部に対してNaPSとして2質量部)と、30質量%亜硫酸水素ナトリウム(以下「NaHSO3」と略す)33.3g(AA100質量部に対してNaHSO3として5質量部)とを、それぞれ滴下ノズルから4時間かけて攪拌下に反応器に滴下した。滴下終了後さらに30分間反応液を80℃に保持し重合を完結させた。
NaPSとNaHSO3を表1に示した添加量とした以外は、製造例1と同様の操作を行い、高分子化合物A5〜A7を得た。その結果を表1に示す。
ステンレス製反応容器に、79質量%DAC水溶液を88.3g、50質量%AM水溶液を461g投入し、さらに蒸留水を451g加え、全単量体の合計濃度が30質量%で全質量が1.0kgとなる重合液とした。これに高分子化合物A5の21.0gを添加し均一に混合した。この重合液の高分子化合物Aおよび単量体の組成比は表2に示したとおりである。
この溶液をpH=4に調整し、窒素ガスを60分間溶液に吹き込みながら溶液温度を10℃に調節した。その後、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩(以下「V−50」と略記する)およびNaHSO3を、各単量体の合計質量に対して固形分換算で、それぞれ2000ppm、20ppmとなるように加えた。次いで、反応容器の上方からこの溶液に光照射して重合を行い、含水ゲル状の重合体を得た。光照射には13Wブラックライトを用いた。照射強度は0.4mW/cm2で、照射時間は60分間である。
得られた含水ゲル状の重合体を、容器から取り出して細断した。これを温度80℃で5時間乾燥後、粉砕して粉末状の両性高分子化合物(B1と略記する。以下同様)を得た。B1の0.1%不溶解分量および0.5%塩粘度を測定した。その結果を表2に示す。
高分子化合物A1〜A7を表2および表3に示した配合比となるよう仕込み量を調整した以外は実施例3と同様に操作し、高分子化合物B2〜B9および比較高分子化合物R1〜R7を得た。これらの0.1%不溶解分量および0.5%塩粘度を表2および表3に示す。
両性高分子化合物B1〜B9、R1〜R4およびR6の90質量部に対して10質量部(全組成物質量の10質量%)のクエン酸無水塩を添加、混合し製紙用歩留向上剤とした。R5およびR7は実質溶解しなかったので使用しなかった。
市販の広葉樹由来の原料パルプ(以下LBKPと表す)をナイアガラビーターで叩解したものと、国内製紙会社から入手した脱墨パルプ(以下DIPと表す)の約5質量%のスラリーおよび填料を混合し、表4に示した組成の紙料を得た。歩留向上剤を0.10質量%に溶解し、添加率を対絶乾パルプ質量で400ppmとして全歩留率、填料歩留率を測定した。その結果を表5および表6に示す。
なお比較例6および比較例7は、実施例3で使用したB3および実施例7で使用したB7と同一の単量体組成となるように、R1にそれぞれA1およびA4を混合したものを使用したものである。
後から高分子化合物Aを両性高分子化合物に混合することにより調整した比較例6および7は、比較例1と比べるといくらか歩留性能は向上しているものの、同様の単量体組成となる実施例3および実施例7と比べると填料歩留率が劣った。
以上より、本発明の歩留向上剤は、高い歩留性能を示し、特に填料歩留率の向上に有効といえる。
1000ml四つ口セパラブルフラスコに79質量%DAC水溶液を91.2g、79質量%DMC水溶液を3.9g、50質量%AM水溶液を196.3g、80質量%AA水溶液を8.4g、連鎖移動剤としてイソプロピルアルコール4.6g(単量体合計質量に対し2.0質量%)、および蒸留水を投入し、濃硫酸でpHを4に調整した後、V−50を0.04g含む20gの水溶液を添加し、全量400gの単量体水溶液になるように調製した。これに高分子化合物A5の22.0gを添加し均一に混合した。この単量体水溶液の高分子化合物Aおよび単量体の組成比は表6に示したとおりである。さらに、この単量体水溶液をHLB8.0のノニオン性界面活性剤10.0gを溶解したパラフィン油155gに加え、ホモジナイザーにて約1分間高速攪拌し乳化した。
フラスコに窒素ガス吹き込み管、還流冷却器、温度計を取り付け、攪拌機を通常の化学反応用の攪拌機に代え、攪拌しながらこの乳化液中に30分間窒素ガスを通し脱気した後、50℃に昇温して、窒素ガス雰囲気下で重合を行った。重合終了後、HLBが13.0のノニオン性界面活性剤17.2gを加えてエマルション型の両性高分子化合物B10とした。
高分子化合物A1〜A7(A2を除く)を表7および表8に示した配合比となるよう仕込み量を調整した以外は実施例20と同様に操作し、両性高分子化合物B10〜B17、比較高分子化合物R8〜R12を得た。これらの0.1%不溶解分量および0.5%塩粘度を表7および表8に示す。
両性高分子化合物B10〜B18および比較高分子化合物R8、R9およびR11は、他の成分を添加せずそのまま製紙用歩留向上剤として使用した。R10およびR12は実質溶解しなかったため使用しなかった。
市販のLBKPをナイアガラビーターで叩解したものおよび填料を混合し、表9に示した組成の紙料を得た。歩留向上剤を重合体濃度として0.10質量%に溶解し、添加率を対絶乾パルプ質量で350ppmとして全歩留率、填料歩留率を測定した。その結果を表10および表11に示す。
以上より、本発明の両性高分子化合物を使用した歩留向上剤は、高い歩留性能を示し、特に填料歩留率の向上に有効といえる。
Claims (7)
- 下記式(1)で表されるアニオン性単量体単位を有する重量平均分子量Mwが1000〜100万の高分子化合物Aの存在下に、下記式(2)で表されるカチオン性単量体を必須とする単量体混合物を重合して得られる両性高分子化合物からなり、前記単量体混合物100質量部に対する高分子化合物Aの量が0.1〜10質量部である製紙用歩留向上剤。
- 高分子化合物Aの一部または全部が、カチオン性単量体を必須とする単量体混合物の重合体と化学的に結合していることを特徴とする請求項1に記載の製紙用歩留向上剤。
- 単量体混合物がノニオン性単量体単位を含む請求項1又は2に記載の製紙用歩留向上剤。
- 単量体混合物がアニオン性単量体単位を含む請求項1〜請求項3のいずれかに記載の製紙用歩留向上剤。
- 紙料に対して、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の製紙用歩留向上剤を添加した後、抄紙することを特徴とする製紙方法。
- 紙料が、パルプの絶乾質量100部に対して17質量部以上の填料を含むことを特徴とする請求項5に記載の製紙方法
- 全填料のうち、炭酸カルシウムが50質量%以上である請求項6に記載の製紙方法。
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