JP4521578B2 - 脱墨パルプの製造方法 - Google Patents
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Description
従って、パルプ繊維以外の成分は異物としてなるべく排除されるため、重量で約5〜40%程度を占める古紙由来の填料若しくは灰分は、紙の品質向上に有用であるにも拘わらず、脱墨工程における洗浄や脱水などの過程を経てパルプから用水中へ相当量が脱落してしまい、その一部は回収されて抄紙系に添加されるが、その他の大部分は工場排水と共に廃棄物として処分されているのが実情である。
しかしながら、近年、環境保護の観点から古紙利用比率を増加し、排水規制を進める要求が次第に高まっている中、脱墨パルプの製造工程においても灰分歩留りを高め、紙の品質を維持しつつ排水量や廃棄物を低減することが要請されている。
尚、当該両性アクリルアミド系重合体は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等の2官能性単量体などから選ばれた多官能性単量体単位を有することができることが記載されている(段落7)。
上記水溶性両性系有機ポリマーはカチオン性基とアニオン性基を1個以上有する水溶性ポリマーであり(段落35)、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、或は、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリドなどの4級化物等から選ばれたカチオン系のビニル系単量体(段落16〜17)と、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などから選ばれたアニオン性ビニル系単量体(段落37〜38)とを単量体組成とし、(メタ)アクリルアミドなどのノニオン性ビニル系単量体を含んでも良い(段落18、23)。
上記第一水溶性カチオン性モノマーは、ハロゲン化ジアリルジアルキルアンモニウム、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、これらの4級アンモニウム塩などから選択され、第二水溶性カチオン性モノマーは、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩化ベンジル4級アンモニウム塩から選ばれ(段落19〜20、段落26)、特に好ましくは、第一モノマーは塩化ジアリルジアルキルアンモニウムであり、上記第二モノマーはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩化ベンジル4級アンモニウム塩であることが記載されている(請求項11、段落22、段落28)。
上記界面活性コポリマーは、少なくとも1個の4級化窒素原子を有するビニルモノマー(アンモニウムモノマー)(A)と、少なくとも1個のアミン基を有するビニルモノマー(B)と、疎水性基と親水性基の両方を有するビニルモノマー(C)と、少なくとも1個のカルボキシル基を有するビニルモノマー(D)とを重合したポリマーである(第12〜13頁)。
この場合、好ましいアンモニウムモノマー(A)は(メタ)アクリロイルオキシエチルトリアルキルアンモニウム(クロリド又はメチルスルフェート)などであり(第13頁)、好ましいビニルモノマー(B)は(メタ)アクリルアミドなどであり(第14〜15頁)、好ましいビニルモノマー(D)は(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸などであることが記載されている(第16頁)。
特許文献2は、脱墨パルプの製造に際して、ピッチ、灰分、インクなどの異物を除去することを目的とし、特許文献3も、ホットメルト接着樹脂を除去するという特殊なものであるため、脱墨工程での填料の歩留りを改善しようとする本発明とは目的がそもそも逆である(即ち、先行文献が填料などの除去であり本発明が回収である)。
特許文献4〜5についても、合成疎水性樹脂粒子又はインク成分を除去しようとするものなので、やはり本発明の目的とは異なる。
また、上述したように、特許文献2はピッチ、灰分、インクなどの除去を目的として、水溶性両性アクリルアミド系重合体をフローテーション工程又はその前工程に添加するものであるが、後述の試験例に示す通り、実際に当該重合体をフローテーション工程中に添加すると、粘着性の強い泡を巻き込んだスラリーになり、インクが良好に分離できず、脱墨工程自体に支障が出てしまう。
本発明は、脱墨工程のパルプスラリーから填料を含む灰分を歩留り良く回収して、これを有効利用することを技術的課題とする。
上記脱墨パルプ製造用添加剤が、
(a)(メタ)アクリルアミド、
(b)1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミド、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート、ジアリルジアルキルアンモニウムハライドより選ばれたカチオン性モノマー、
(c)α,β−不飽和カルボン酸類、α,β−不飽和スルホン酸類より選ばれたアニオン性モノマー
を構成成分として重合した、重量平均分子量が70万〜400万の水溶性両性共重合体であって、
当該添加剤をフローテーション工程の後で、且つ、インクを分離したパルプスラリーの脱水工程の前に添加することにより、古紙由来の填料を含む灰分の歩留りを向上可能にすることを特徴とする脱墨パルプの製造方法である。
4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレートが、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートに4級化剤を作用させたものであることを特徴とする脱墨パルプの製造方法である。
従って、本発明の脱墨パルプ用の両性共重合体をフローテーション工程中ではなく、フローテーション工程の後に添加すると、古紙由来の有用成分である填料を含む灰分を洗浄や脱水などの過程でパルプから脱落することを防ぎ、パルプに歩留めた状態で効率良く回収して抄紙工程へ送ることができる。これにより、紙の品質を維持しつつ廃棄物を大幅に低減できるため、環境保全に資する。また、脱墨パルプを使用した抄紙系に供給する新たな填料の削減にも寄与し、生産性を高めてコストダウンを図ることができる。
ちなみに、脱水工程の後では比重が大きい填料を含む灰分は用水中に脱落してしまうため、本発明の脱墨パルプ用添加剤はフローテーション工程の後であって、しかも脱水工程の前に添加する必要がある。
[CH2=C(R1)−CO−A−R2−N+(R3)(R4)(R5)]X- …(1)
(式(1)中、R1はH又はCH3;R2はC1〜C3アルキレン基;R3、R4、R5はH、C1〜C3アルキル基、ベンジル基、CH2CH(OH)CH2N+(CH3)3X-であり、夫々同一又は異なっても良い;AはO又はNHである;Xはハロゲン、アルキルスルフェートなどのアニオン)
上記1〜2級アミノ基含有(メタ)アクリレートは、アミノエチル(メタ)アクリレートなどの1級アミノ基含有(メタ)アクリレート、或は、メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの2級アミノ基含有(メタ)アクリレートである。また、上記3級アミノ基含有(メタ)アクリレートは、本発明3に示すように、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(ジメチルアミノエチルメタクリレートはDMと略す)、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートを代表例とする。
また、カチオン性モノマーとしては、両性共重合体の填料の凝集力を増す見地から、分子内に2個の4級アンモニウム塩基を有するビス4級塩基含有モノマーが好ましく、具体的には、2個の4級アンモニウム塩基を有するビス4級塩基含有(メタ)アクリルアミド、或はビス4級塩基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。ビス4級塩基含有(メタ)アクリルアミドの例としては、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドに、1−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドを反応させて得られるビス4級塩基含有(メタ)アクリルアミド(DMAPAA-Q2と略す)がある。このDMAPAA-Q2は、上記カチオン性モノマーの一般式(1)において、R1=H、R2=プロピレン基、A=NH、R3とR4は各メチル基、R5=CH2CH(OH)CH2N+(CH3)3Cl-、X=塩素に相当する化合物である。
一方、上記4級アンモニウム塩基含有のカチオンモノマーに属するジアリルジアルキルアンモニウムハライドは、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMACと略す)である。
上記不飽和カルボン酸類は(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(無水)シトラコン酸、そのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩などである。
上記不飽和スルホン酸類は、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、その塩などである。
上記カチオン性モノマー(b)は単用又は併用でき、両性共重合体に対する含有量は0.5〜40モル%が適当であり、好ましくは3〜35モル%である。40モル%を越えると、カチオン電荷が飽和状態になり、ポリマー同士がイオンコンプレックスを形成したり、ポリマー同士がカチオン電荷で反発するなどして、灰分の歩留りが低下する。
また、上記アニオン性モノマー(c)は単用又は併用でき、両性共重合体に対する含有量は0.5〜30モル%が適当であり、好ましくは1〜25モル%である。30モル%を越えると灰分の歩留りが低下し、また、低pH領域においてカルボキシル基(酸)の固定化により水溶性が低下する恐れもある。
上記架橋モノマー(d)は共重合体の分子量を増し、灰分を歩留らせる活性点を増大させるために寄与し、メチレンビスアクリルアミド(MBAMと略す)、エチレンビス(メタ)アクリルアミドなどのビス(メタ)アクリルアミド類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート類、ジメチルアクリルアミド(DMAMと略す)、メタクリロニトリル(MANと略す)などが使用できる。
上記連鎖移動剤は共重合体の粘度の増大を抑制し、分岐構造を増して分子量を調整する作用をし、イソプロピルアルコール(IPAと略す)、メタリルスルホン酸ナトリウム(SMSと略す)、n−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、チオグリコール酸等のメルカプタン類などの公知の連鎖移動剤が使用できる。
さらに、本発明の水溶性両性共重合体では必要に応じて、他のモノマーとして、アクリロニトリルなどのノニオン系モノマーを使用しても差し支えない。
また、本発明の脱墨パルプの製造方法では、本発明の水溶性両性共重合体の他に、公知の凝集剤(カチオンポリマーなど)を併用できることはいうまでもない。市販の凝集剤としては、ハーマイドPY−525A(ハリマ化成(株)製)などがある。
ちなみに、本発明の製造方法で使用する水溶性両性共重合体としては、成分(b)に上記DMAPAA−Q2のビス4級塩基含有モノマーを使用し、平均分子量が70万〜400万である水溶性両性共重合体が好ましく、さらには、成分(c)に(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸を使用した両性共重合体がより好ましい。
尚、本発明は下記の合成例、実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
下記の合成例1〜8のうち、合成例5は(メタ)アクリルアミド(a)、カチオン性モノマー(b)、アニオン性モノマー(c)の3成分のみを構成単位とする両性共重合体の例、他の合成例はさらに架橋剤(d)及び/又は連鎖移動剤(e)を使用した例である。合成例3は2種類のカチオン性モノマーを併用した例、合成例7はカチオン性モノマーにビス4級塩基含有(メタ)アクリルアミドを使用した例、合成例6は重量平均分子量が本発明の下限である50万に近い例である。
下記の比較合成例1〜4のうち、比較合成例1は上記成分(a)〜(c)のうちで成分(a)のみを使用した重合体の例である。比較合成例2〜3は、構成単位としてカチオン性モノマー又はアニオン性モノマーを欠く水溶性共重合体の例である。比較合成例4は本発明の成分(a)〜(c)を必須構成単位とし、重量平均分子量が50万より少ない両性共重合体の例である。
ちなみに、上記合成例1〜8及び比較合成例1〜4で得られた各共重合体水溶液の組成、粘度や分子量などの性状値を図1にまとめた。また、同図1においては、下記の架橋剤(d)及び連鎖移動剤(e)の含有量はモノマー成分(a)〜(c)の総モル量に対するモル%で表記した。
攪拌機、温度計、環流冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、50%アクリルアミド水溶液114g(67モル%)、80%アクリル酸4.33g(4モル%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート7.55g(4モル%)、メチレンビスアクリルアミド0.02g(0.01モル%)、イソプロパノール3.6g(5モル%)およびイオン交換水245gを仕込み、硫酸にてpHを3.0に調整し、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した。
次いで、系内を55℃とし、攪拌下で触媒として1%過硫酸アンモニウム水溶液5gを投入した後、90℃まで昇温した。
その後、さらに50%アクリルアミド水溶液35.8g(21モル%)、80%アクリル酸2.16g(2モル%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート3.77g(2モル%)を混合し、硫酸にてpHを3.0に調整したモノマー水溶液を添加し、続いて追加の触媒として1%過硫酸アンモニウム水溶液5gを投入し、重合熱を制御しながら3時間温度を保持した。
適度な粘度になったところで水50gを投入して冷却を行い、反応を終了させて、pH3.5、固形分20.5%、粘度(25℃)6400mPa・s、重量平均分子量280万の両性共重合体水溶液を得た。
上記合成例1を基本として、成分(a)〜(e)の種類とその含有量を、アクリルアミド78モル%、ジメチルアミノエチルメタクリレート12モル%、イタコン酸10モル%、ジメチルアクリルアミド2モル%に代替した他は、合成例1と同様な操作を行って、重量平均分子量200万の両性共重合体水溶液を得た。
前記合成例1を基本として、成分(a)〜(e)の種類とその含有量を、アクリルアミド76モル%、メタクリロイロキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド10モル%、ジメチルアミノエチルメタクリレート10モル%、フマル酸4モル%、ジメチルアクリルアミド5モル%、メタリルスルホン酸ナトリウム0.9モル%に代替した他は、合成例1と同様な操作を行って、重量平均分子量150万の両性共重合体水溶液を得た。
前記合成例1を基本として、成分(a)〜(e)の種類とその含有量を、アクリルアミド62.5モル%、アクリロイロキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド35モル%、イタコン酸2.5モル%、メタクリロニトリル3モル%に代替した他は、合成例1と同様な操作を行って、重量平均分子量219万の両性共重合体水溶液を得た。
前記合成例1を基本として、成分(a)〜(e)の種類とその含有量を、アクリルアミド71モル%、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド4モル%、イタコン酸25モル%に代替した他は、合成例1と同様な操作を行って、重量平均分子量106万の両性共重合体水溶液を得た。
前記合成例1を基本として、成分(a)〜(e)の種類とその含有量を、アクリルアミド89モル%、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド10モル%、イタコン酸1モル%、メタリルスルホン酸ナトリウム0.4モル%に代替した他は、合成例1と同様な操作を行って、重量平均分子量74万の両性共重合体水溶液を得た。
前記合成例1を基本として、成分(a)〜(e)の種類とその含有量を、アクリルアミド85モル%、2−ヒドロキシ−N,N,N,N′,N′−ペンタメチル−N′−[3−{(1−オキソ−2−プロペニル)アミノ}プロピル]−1,3−プロパンジアンモニウムジクロリド(DMAPAA−Q2)10モル%、イタコン酸5モル%、メタクリロニトリル6モル%、メタリルスルホン酸ナトリウム1.2モル%に代替した他は、合成例1と同様な操作を行って、重量平均分子量320万の両性共重合体水溶液を得た。
前記合成例1を基本として、成分(a)〜(e)の種類とその含有量を、アクリルアミド82モル%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド5モル%、イタコン酸3モル%、ジメチルアクリルアミド1.2モル%、メタリルスルホン酸ナトリウム0.4モル%に代替した他は、合成例1と同様な操作を行って、重量平均分子量245万の両性共重合体水溶液を得た。
前記合成例1を基本として、成分(a)〜(e)の種類とその含有量を、アクリルアミド100モル%、ジメチルアクリルアミド0.5モル%、メタリルスルホン酸ナトリウム0.5モル%に代替した他は、合成例1と同様な操作を行って、重量平均分子量260万の重合体水溶液を得た。
前記合成例1を基本として、成分(a)〜(e)の種類とその含有量を、アクリルアミド95モル%、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド5モル%、ジメチルアクリルアミド0.5モル%、メタリルスルホン酸ナトリウム0.5モル%に代替した他は、合成例1と同様な操作を行って、重量平均分子量305万の共重合体水溶液を得た。
前記合成例1を基本として、成分(a)〜(e)の種類とその含有量を、アクリルアミド95モル%、イタコン酸5モル%、イソプロパノール5モル%、メチレンビスアクリルアミド0.03モル%に代替した他は、合成例1と同様な操作を行って、重量平均分子量272万の共重合体水溶液を得た。
前記合成例1を基本として、成分(a)〜(e)の種類とその含有量を、アクリルアミド90モル%、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド5モル%、イタコン酸5モル%、イソプロパノール5モル%に代替した他は、合成例1と同様な操作を行って、重量平均分子量23万の両性共重合体水溶液を得た。
《水溶性両性共重合体を用いた脱墨パルプシートの製造実施例》
図2の左寄り2欄に示す通り、下記の実施例1〜9のうち、実施例1〜8は前記合成例1〜8をフローテーション工程の後に添加した例であり、実施例9は前記合成例1と市販の凝集剤(カチオンポリマー)とを併用添加した例である。
また、下記の比較例1〜6のうち、比較例1は本発明の脱墨パルプ用添加剤を用いないブランク例である。比較例2〜5は前記比較合成例1〜4をフローテーション工程の後に添加した例であり、比較例6は前記合成例1をフローテーション工程中に添加した例である(図2の左寄り2欄参照)。
先ず、古紙(灰分30%)を水道水に一昼夜浸漬し、ナイアガラ式ビーターにて離解した後、パルプスラリー濃度を1%に希釈した。これに市販脱墨剤のハリトップP-100K(ハリマ化成(株)製)を添加し、フローテーション法による脱墨処理を行った。
次いで、フローテーションによりインク成分を除去したスラリーに、前記合成例1の両性共重合体水溶液を攪拌下で対パルプ0.1%の割合で添加し、200meshワイヤー上に流し入れて脱水させ、ウェットシートを得た。
このシートを乾燥機中で105℃にて6時間乾燥させ、乾燥パルプの重量を測定した後、JIS P8003に準じてパルプシートに歩留まった灰分を測定し、当初の灰分量(30%)に対する歩留り率(%)を算出した。
上記実施例1を基本として、図2に示す通り、パルプスラリーに添加する添加剤を合成例2〜8に夫々変更し、その他は実施例1と同様な操作を行って、乾燥シートの灰分を測定した。
前記実施例1を基本として、合成例1の両性共重合体水溶液を攪拌下で対パルプ0.05%の割合で添加した後、さらに市販のカチオンポリマー(ハーマイドPY-525A[ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂];ハリマ化成(株)製)を0.05%の割合で添加したものを200meshワイヤー上に流し入れて脱水させ、ウェットシートを得た他は、実施例1と同様の操作を行って、乾燥シートの灰分を測定した。
前記実施例1を基本として、フローテーション後のスラリーに本発明の両性共重合体を全く添加しなかった他は、当該実施例1と同様の操作を行って、乾燥シートの灰分を測定した。
上記実施例1を基本として、図2に示す通り、パルプスラリーに添加する添加剤を比較合成例1〜4に夫々変更し、その他は実施例1と同様な操作を行って、乾燥シートの灰分を測定した。
パルプスラリーに市販脱墨剤のハリトップP-100Kを添加し、フローテーション法によるインク分離処理の工程中に前記合成例1の両性共重合体水溶液を添加した。
しかしながら、この場合、脱離したインクなどの樹脂成分を伴う粘着性の強い泡を巻き込んだスラリーとなってしまい、インクが良好に分離できず、脱墨処理自体に支障が出たため、操作を途中で中止した。
図2の右欄は、上記実施例1〜9並びに比較例1〜6の各脱墨パルプの製造方法により得られた乾燥シート中の灰分の歩留り率(%)である(比較例6を除く)。
これによると、先ず、本発明の脱墨パルプ用添加剤を脱墨工程でまったく添加しない比較例1では灰分の歩留りは10.9%であった。これに対して、(メタ)アクリルアミド(a)、カチオン性モノマー(b)、アニオン性モノマー(c)を必須構成単位とし、特定の重量平均分子量を有する本発明の水溶性両性共重合体をフローテーション工程の後に添加した実施例1〜9では灰分の歩留りは21.0〜26.9%であり、本発明の脱墨パルプ用添加剤を使用した場合には、ブランク例である比較例1に比べて、灰分の歩留りは顕著に改善されることが確認できた。
次いで、上記成分(a)〜(c)のうち、成分(a)のみを構成単位とした水溶性重合体を使用した比較例2では灰分の歩留りは14.2%であり、構成単位として成分(c)又は(b)を欠く水溶性共重合体を使用した比較例3〜4では、同歩留りは15.7〜16.0%にとどまった。従って、水溶性両性共重合体を使用した実施例1〜9をこれらの比較例2〜4に対比させると、カチオン電荷又はアニオン電荷の一方、或は両方を欠く重合体に対して、両性共重合体よりなる本発明の添加剤は、脱墨工程のパルプ繊維に灰分を効率良く歩留まらせる点で明らかに優位性があることが確認できた。
また、上記成分(a)〜(c)を構成単位とするが、重量平均分子量が所定値より小さい水溶性両性共重合体を使用した比較例5では灰分の歩留りは15.1%にとどまるため、水溶性両性共重合体であっても平均分子量が小さいと、灰分をパルプ繊維に凝結する能力が不足することが認められ、もって灰分の歩留りを改善するには両性共重合体の平均分子量が所定以上に大きいことが重要である点が明白になった。
さらに、フローテーション工程の途中に本発明の両性共重合体を添加した比較例6では、上述の通り、粘着性の強い泡が生じて脱墨処理自体に支障が出たことから、本発明の水溶性両性共重合体はフローテーション工程中ではなく、フローテーション工程の後に添加することが重要である点が明白になった。
尚、前述したように、比重の大きい灰分は脱水により大部分がパルプスラリー系から水と共に系外に排出されるため、本発明の添加剤はフローテーション工程の後であっても、脱水工程の前に添加する必要がある。
重量平均分子量が74万である両性共重合体を使用した実施例6では、灰分の歩留りは20.5%であり、分子量320万の実施例7での歩留りには及ばないが、比較例1〜5に比べて良好な歩留りを示した。
成分(a)〜(c)のみを構成単位とする両性共重合体を使用した実施例5では、灰分の歩留りは21.0%であり、成分(a)〜(c)の他に、架橋剤(d)及び/又は連鎖移動剤(e)を構成単位とする両性共重合体を使用した実施例3〜4では、灰分の歩留りは24.3〜24.8%であった。この実施例5では、弱いながらも架橋効果と連鎖移動効果があるイタコン酸が構成単位として25モル%含有され、この点が分子量を106万に押し上げ、もって歩留りを意外に改善できたものと思われる(図1によると、実施例5で使用した合成例5の粘度は18000mPa・sであり、この粘度の高さは分子の拡がりが大きいことを示唆している)。
実施例8は、実施例1の本発明の水溶性両性共重合体(合成例1)に加えて、市販の凝集剤(カチオンポリマー)をフローテーション工程の後に併用添加したものである。実施例1での歩留り(22.1%)より実施例8の方が高い(25.1%)ことに鑑みると、公知の凝集剤の併用は、本発明の添加剤の灰分の歩留り効果を阻害することがないばかりか、本発明の添加剤の効果を補填する作用があることを窺わせる。
Claims (4)
- 脱墨工程のパルプスラリー中に脱墨パルプ製造用添加剤を添加する脱墨パルプの製造方法において、
上記脱墨パルプ製造用添加剤が、
(a)(メタ)アクリルアミド、
(b)1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミド、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート、ジアリルジアルキルアンモニウムハライドより選ばれたカチオン性モノマー、
(c)α,β−不飽和カルボン酸類、α,β−不飽和スルホン酸類より選ばれたアニオン性モノマー
を構成成分として重合した、重量平均分子量が70万〜400万の水溶性両性共重合体であって、
当該添加剤をフローテーション工程の後で、且つ、インクを分離したパルプスラリーの脱水工程の前に添加することにより、古紙由来の填料を含む灰分の歩留りを向上可能にすることを特徴とする脱墨パルプの製造方法。 - 3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドがジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドであり、3級アミノ基含有(メタ)アクリレートがジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1に記載の脱墨パルプの製造方法。
- 4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミドが、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドに4級化剤を作用させたモノ4級塩基含有(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドに1−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドを反応させて得られるビス4級塩基含有(メタ)アクリルアミドであり、 4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレートが、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートに4級化剤を作用させたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の脱墨パルプの製造方法。
- 成分(a)〜(c)に、さらに、架橋性モノマー(d)及び/又は連鎖移動剤(e)を使用して、水溶性両性共重合体に分岐架橋構造を持たせることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱墨パルプの製造方法。
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