JP3575018B2 - 製紙用添加剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、製紙用添加剤に関する。詳しくは、高分岐構造の(メタ)アクリルアミド系共重合体を含有してなる製紙用添加剤に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、製紙用添加剤、特に紙力増強剤が紙、板紙の製造に際し重要視されて来ている。この背景としては、原木供給事情の悪化に伴い良質のパルプの使用が制限されたこと、さらには省エネルギーや省資源の目的で古紙の再利用の必要性が一段と強まったことがあげられ、その結果として紙、板紙の改質剤としての製紙用添加剤は一層不可欠なものとなっている。
【0003】
一方、抄紙機の高速化に伴う生産性の向上、あるいは紙の多様化に応じた品質向上の目的で、濾水性向上剤および紙力増強剤への依存度とその使用範囲はさらに広まっている。かかる状況下に製紙用添加剤としては、ポリアクリルアミド系が主流となっている。
【0004】
しかしながら、近年、製紙用添加剤の使用条件はますます厳しくなってきたため、従来公知の比較的低分子量のポリアクリルアミド系製紙用添加剤では、添加剤としての効果の点で限界にきている。そのため、性能の向上を図るべく高分子量化の手段が採られるが、単に高分子量化した場合には得られる共重合体の粘度が過度に上昇するため、抄紙時の分散性が不良となる。その結果、かかる共重合体を製紙用添加剤として使用した場合には過度の凝集が生じ、成紙の地合い乱れを引き起こしやすい。また、輸送コストの低減、生産性の向上の面から、高濃度の製品(製紙用添加剤)が要求されている。
【0005】
これらの問題点を解消すべく、多官能性ビニルモノマー(二重結合を少なくとも2個有するもの)を使用することにより分岐構造を持たせ、得られる共重合体の粘度上昇を抑えながらその分子量を増加させようとする試みがなされている。例えば、宇尾野ら(特開昭53−114911号公報)は架橋剤成分としてメチレンビスアクリルアミド等のジビニル系モノマーを用いることを提案している。しかし、ジビニル系モノマーの添加量を増やすとゲル化することも宇尾野らは同時に指摘している。これは、フローリーが指摘したジビニル系モノマーを添加した系でのゲル化の理論(Principles of Polymer Sciense,Cornell University Press IthacaN.Y.,1953)と一致する。また、木村らは3官能ビニルモノマーを推奨しているが(特開平2−61197号公報)、本発明者の認識や実験事実によれば、同上のゲル化効果を増幅するだけであり、かえってジビニル系モノマーを使用する場合に比べて製紙用添加剤の製造をより困難なものとする結果となった。また、多官能性ビニルモノマーを少量使用した場合には高分子量のポリマーを得ることができず、製紙用添加剤としての効果は未だ十分ではなかった。
【0006】
また、アリル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド等の連鎖移動性置換基を有するビニルモノマーを使用することにより分岐構造を持たせようとする試みもなされている(特開平5−195485号公報)。しかし、連鎖移動性置換基を有するビニルモノマーを使用した場合には、ゲル化は起こりにくいが、分子量分布が広くなり、高分子量の(メタ)アクリルアミド系共重合体を得ることはできない。このことは前記フローリーによっても指摘されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ゲル化を伴うことなく高分子量化した(メタ)アクリルアミド系共重合体を含有してなり、比較的低粘度で高濃度においても取扱性がよく、しかも製紙用添加剤としての諸性能に優れる製紙用添加剤を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記従来技術の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下に示す特定組成の(メタ)アクリルアミド系共重合体が、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)(メタ)アクリルアミド99.899〜79.9モル%、(B)炭素−炭素二重結合として(メタ)アリル基を1つ有するモノマー0.05〜10モル%、(C)一般式(1):CH2 =C(R1 )−CONR2 (R3 )(式中、R1 は水素原子またはメチル基、R2 は水素原子または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、R3 は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表す)で表されるN−置換(メタ)アクリルアミド類0.05〜10モル%、および(D)多官能性モノマー0.001〜0.1モル%を共重合して得られる(メタ)アクリルアミド系共重合体を含有してなる製紙用添加剤に関するものである。さらには、(A)(メタ)アクリルアミド99.899〜55モル%、(B)炭素−炭素二重結合として(メタ)アリル基を1つ有するモノマー0.05〜10モル%、(C)一般式(1):CH2 =C(R1 )−CONR2 (R3 )(式中、R1 は水素原子またはメチル基、R2 は水素原子または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、R3 は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表す)で表されるN−置換(メタ)アクリルアミド類0.05〜10モル%、(D)多官能性モノマー0.001〜0.1モル%、ならびに(E)前記(A)〜(C)成分を除くアニオン性ビニルモノマー、カチオン性ビニルモノマーおよびノニオン性ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種40モル%以下を共重合して得られる(メタ)アクリルアミド系共重合体を含有してなる製紙用添加剤に関するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、(A)(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドのことをいい、これらは単独使用または併用できる。経済性の面からはアクリルアミドを単独使用するのがよい。なお、以下本発明において(メタ)とは同様の意味である。
【0011】
(B)炭素−炭素二重結合として(メタ)アリル基を1つ有するモノマーとは、分子中に(メタ)アリル基を1つのみ有し、(メタ)アリル基の他には炭素−炭素二重結合を有しないモノマーをいう。(メタ)アリル基は、一般的に連鎖移動性を有する官能基であり、本発明においては、連鎖移動剤と架橋剤の両方の機能を合わせ持つと考えられる。このような(B)炭素−炭素二重結合として(メタ)アリル基を1つ有するモノマーとしては、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アリルカルボン酸およびこれらの塩ならびに(メタ)アリルアルコールから選ばれる少なくとも1種を使用できる。これら(B)成分のなかでも、得られる(メタ)アクリルアミド系共重合体が高分子量化する点で(メタ)アリルスルホン酸またはその塩が好ましく、特にモノマーの安定性からメタアリルスルホン酸またはその塩がより好ましい。なお、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等があげられる。
【0012】
(C)一般式(1):CH =C(R )−CONR (R )(R は水素原子またはメチル基、R は水素原子または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、R は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基)で表されるN−置換(メタ)アクリルアミド類は、N−アルキル基中のメチル基またはメチレン基が連鎖移動点として作用することを利用して、これにより得られる共重合体に多くの分岐構造を導入しようとするものである。この手法を用いればゲル化を伴わない分岐ポリマーを得ることができる。前記一般式(1)中のR またはR における炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基とは、たとえば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等があげられる。(C)成分の具体例としては、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドおよびN−t−ブチル(メタ)アクリルアミドがあげられ、これらから選ばれる少なくとも1種を使用できる。これら(C)成分のなかでも共重合性、連鎖移動性の点でN,N−ジメチルアクリルアミドが好ましい。
【0013】
また、(D)多官能性モノマーとは、分子中に炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有するものをいい、代表的なものとしては以下のものがあげられる。たとえば、2官能性ビニルモノマーとしてはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル類、アリルメタクリレート、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアンモニウム、ジアリルフタレート、ジアリルクロレンデート、ジビニルベンゼン、N,N−ジアリルアクリルアミド等があげられる。また、3官能性モノマーとしては1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルアミン、トリアリルトリメリテート等を、4官能性ビニルモノマーとしてはテトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリテート、N,N,N’,N’−テトラアリル−1,4−ジアミノブタン、テトラアリルアミン塩、テトラアリルオキシエタン等があげられる。これらは一種を単独でまたは2種以上を使用できる。これら(D)多官能性モノマーのなかでも好ましい例としては、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート等があげられる。
【0014】
本発明は、前記(B)成分、(C)成分および(D)成分を使用することにより、ゲル化を伴うことなく高分子量化した(メタ)アクリルアミド系共重合体を製造したものである。すなわち、(D)成分のみではゲル化を生じること、一方(B)成分または(C)成分だけでは連鎖移動による分岐反応に寄与するが、分子量分布が広くなり分子量を十分に上げることはできないこと、さらには(D)成分と(B)成分または(C)成分との組み合わせた場合でも、分子量分布が狭い高分子量の(メタ)アクリルアミド系共重合体を収得することが困難なことことから、これら(B)成分、(C)成分および(D)成分の全てを組み合わせて、分子量分布が狭い高分子量の(メタ)アクリルアミド系共重合体を製造したものである。なお、(B)成分または(C)成分に代えて、一般に知られている、イソプロピルアルコール等の連鎖移動剤を組み合わせても本発明の分子量分布が狭い高分子量の(メタ)アクリルアミド系共重合体を収得することはできない。
【0015】
本発明では、(メタ)アクリルアミド系共重合体の構成成分として、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分に加えて、さらに、(E)成分として前記(A)〜(C)成分を除くアニオン性ビニルモノマー、カチオン性ビニルモノマーおよびノニオン性ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種を使用することができる。すなわち、得られる共重合体にアニオン性を付与する場合にはアニオン性ビニルモノマーを使用すればよく、得られる共重合体にカチオン性を付与する場合にはカチオン性ビニルモノマーを使用すればよい。得られる共重合体にアニオン性とカチオン性を付与して両性にする場合にはアニオン性ビニルモノマーとカチオン性ビニルモノマーの両者を使用すればよい。また、ノニオン性ビニルモノマーは、ポリマーに疎水性を付与するために使用され、単独で前記(A)〜(D)成分と併用できる他、前記イオン性ビニルモノマーと組み合わせて併用することもできる。
【0016】
前記(E)成分のなかのアニオン性ビニルモノマーとしては、たとえば(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、ムコン酸等のジカルボン酸;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの有機スルホン酸;またはこれら各種有機酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等があげられる。
【0017】
(E)成分のなかのカチオン性ビニルモノマーとしては、たとえばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの第三級アミノ基を有するビニルモノマーまたはそれらの塩酸、硫酸、酢酸などの無機酸もしくは有機酸の塩類、または該第三級アミノ基含有ビニルモノマーとメチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロルヒドリンなどの四級化剤との反応によって得られる第四級アンモニウム塩を含有するビニルモノマー等があげられる。
【0018】
(E)成分のなかのノニオン性ビニルモノマーとしては、前記アニオン性ビニルモノマーのアルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜8)、アクリロニトリル、スチレン類、酢酸ビニル、メチルビニルエーテルなどがあげられる。
【0019】
本発明において、(A)〜(D)成分からなる共重合体の各成分の各使用量は、得られる共重合体の製紙用添加剤としての性能を十分考慮して決定しなければならない。すなわち、(A)成分は(A)〜(D)成分の総モル和に対し、通常、99.899〜79.9モル%程度、好ましくは99.2〜80モル%、より好ましくは99.2〜90モル%である。一方、(E)成分を使用する場合には、(A)成分は(A)〜(E)成分の総モル和に対し、通常、99.899〜55モル%程度、好ましくは99.2〜70モル%である。なお、(A)成分が55モル%に満たない場合には、製紙用添加剤としての十分な紙力効果等を得難い。
【0020】
(B)成分も同様に、(A)〜(D)成分の総モル和、または(A)〜(E)成分の総モル和に対し、通常、0.05〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%である。(B)成分が0.05モル%に満たない場合には連鎖移動の効果が小さく、また分岐点の生成も少ないために分岐構造が不十分である。10モル%を超える場合には連鎖移動の効果が強すぎるためにポリマー鎖が短くなり高分子量ポリマーを生成しにくくなる。
【0021】
(C)成分も同様に、前記総モル和に対し、通常、0.05〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%である。(C)成分が0.05モル%に満たない場合には分岐点の生成が少ないために分岐構造が不十分である。10モル%を超える場合には、連鎖移動による分岐反応が多くなりゲル化を起こす傾向がある。
【0022】
(D)成分も同様に、前記総モル和に対し、通常、0.001〜0.1モル%、好ましくは0.005〜0.08モル%、より好ましくは0.01〜0.05モル%である。(D)成分は、(B)成分および(C)成分との組み合わせによりゲル化を伴うことなく(メタ)アクリルアミド系共重合体を高分子量化するとともに、(メタ)アクリルアミド系共重合体の製造時間を短縮し、製造を容易にするものである。なお、(D)成分は、上記範囲の比較的少量を使用することも特徴である。(D)成分が多くなるに従って、連鎖移動による分岐反応が多くなりゲル化を起こす傾向がある。
【0023】
また、(E)成分を使用する場合には、(A)〜(E)成分の総モル和に対し、通常40モル%程度以下、好ましくは30モル%以下で使用する。(E)成分が40モル%を超える場合には十分な紙力効果を得難い。なお、(E)成分として、共重合体にアニオン性を付与する場合には、前記総モル和に対し、通常、アニオン性ビニルモノマーを1〜20モル%、好ましくは2〜15モル%使用する。共重合体にカチオン性を付与する場合には、総モル和に対し、通常、カチオン性ビニルモノマーを1〜20モル%、好ましくは2〜15モル%使用する。また、共重合体に両性を付与する場合には総モル和に対し、通常、アニオン性ビニルモノマーを1〜15モル%、好ましくは2〜10モル%、カチオン性ビニルモノマーを1〜15モル%、好ましくは2〜10モル%使用する。
【0024】
本発明に用いられる共重合体の合成は、従来公知の各種方法により行うことができる。例えば、所定の反応容器に前記各種モノマー((A)〜(D)成分、または(A)〜(E)成分)および水を仕込み、ラジカル重合開始剤を加え、撹拌下、加温することにより目的とする水溶性の(メタ)アクリルアミド系共重合体を得ることができる。反応温度は、通常50〜100℃程度、反応時間は1〜5時間程度である。反応濃度(モノマー濃度)は、通常10〜40重量%程度で行うことができ、高濃度においても重合できる。また、得られた共重合体の水溶液は、高濃度の場合にも希釈することなく使用、保存できる。その他、モノマーの仕込み方法は同時重合、連続滴下重合等の従来公知の各種方法により行うことができる。ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、またはこれらと亜硫酸水素ナトリウムのごとき還元剤とを組み合わせた形のレドックス系重合開始剤等の通常のラジカル重合開始剤を使用できる。また、前記ラジカル重合開始剤には、アゾ系開始剤を併用してもよい。ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマーの総重量和の0.05〜2.0重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%である。0.05重量%では重合自体が十分に進行せず、他方2.0重量%を超える場合には高分子量ポリマーを得ることが困難である。
【0025】
かくして得られた(メタ)アクリルアミド系共重合体は、重量平均分子量が通常、50万〜600万程度であり、濾水性向上剤、紙力増強剤等の内添薬品、表面紙力増強剤等の外添薬品、抄き合わせ紙の層間接着剤等の各種の製紙用添加剤として使用できる。なお、濾水性向上剤、紙力増強剤等の内添薬品、抄き合わせ紙の層間接着剤等として用いる場合には、重量平均分子量が200万以上であるのが好ましい。また、粘度は、取扱性の点から、通常、10000cps程度(25℃)以下の性状で使用するのがよい。なお、本発明の製紙用添加剤は、固形分濃度10〜40重量%に調整されるが、固形分濃度を40重量%の場合においても、粘度を10000cps程度(25℃)以下に調整できる。通常は、固形分濃度を30重量%以下とするのが好ましい。このように本発明の(メタ)アクリルアミド系共重合体を含有してなる製紙用添加剤は、高分子量であるにもかかわらず、低粘度であり、高固形分濃度で使用できる。
【0026】
【発明の効果】
本発明の製紙用添加剤は、(1)高分子量の(メタ)アクリルアミド系共重合体を含有しているにもかかわらず、比較的低粘度であり作業性にも優れる。また、製品濃度の高濃度化が可能であり、生産性を向上できるとともに輸送コストを大幅に削減することができる。また、(2)得られる(メタ)アクリルアミド系共重合体は高分岐構造であると推察でき、パルプ繊維間での接点が多く紙力増強効果等の製紙用添加剤としての種々の特徴ある性能を示す。その結果として、近時の厳しい抄紙条件下でも、濾水性向上剤、紙力増強剤等の内添薬品、表面紙力増強剤等の外添薬品、抄き合わせ紙の層間接着剤等の各種の製紙用添加剤として優れた諸効果を奏する。
【0027】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、部および%はいずれも特記ない限り重量基準による。
【0028】
実施例1
撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、アクリルアミド234.6部(モノマーの総モル和に対し、94.97モル%、以下同様)、メタアリルスルホン酸ソーダ16.5部(3モル%)、ジメチルアクリルアミド6.9部(2モル%)、トリアリルイソシアヌレート0.074部(0.03モル%)およびイオン交換水960部(モノマー濃度21%)を仕込み、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した。系内を40℃にし撹拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.25部および亜硫酸水素ナトリウム0.15部を投入した。90℃まで昇温した後、2時間保温した。重合終了後、イオン交換水70部(固形分濃度20%に調整)を投入し、pH4.5、固形分20.2%、粘度(25℃)が9800cps、重量平均分子量が290万の共重合体水溶液を得た。また、ゲル量を測定したところ0%であった。なお、ゲル量とは試料を0.45μmのメンブランフィルターで濾過したときの該フィルターを通過しないものの含有量(重量%)をいう。
【0029】
実施例2〜7および比較例1〜4
実施例1において、(A)〜(E)成分の種類またはその使用割合のうちいずれか少なくとも1種を表1のように変えたほかは、実施例1と同様の操作を行い各種共重合体水溶液を得た。得られた各種共重合体水溶液の性状値を表2に示す。
【0030】
【表1】
Figure 0003575018
【0031】
表中、AM:アクリルアミド、SMAS:メタアリルスルホン酸ソーダ、DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド、IPAA:N−イソプロピルアクリルアミド、TAIC:トリアリルイソシアヌレート、TAF:1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、AA:アクリル酸、DM:ジメチルアミノエチルメタクリレート、AN:アクリロニトリルを表す。
【0032】
【表2】
Figure 0003575018
【0033】
(性能評価方法1)
段ボール古紙をナイアガラ式ビーターにて叩解し、カナディアン・スタンダード・フリーネス(C.S.F)420mlに調整したパルプに硫酸バンドを1.6%添加してpH5.5とし、ついで実施例1〜11または比較例1〜5で得られた各共重合体水溶液を紙力増強剤として対パルプ0.6%を添加し、撹拌した後、パルプスラリー濃度を0.1%になるように希釈し、タッピ・シートマシンにて坪量150g/m となるよう抄紙し、5Kg/cm で2分プレス脱水した。次いで回転型乾燥機で105℃において3分間乾燥し、20℃、65%R.H.の条件下に24時間調湿したのちJIS P 8112に準じて、比破裂強度を測定した。結果を表3に示す。
【0034】
(性能評価方法2)
N−BKPをナイアガラ式ビーターにて叩解し、(C.S.F)550mlに調整したパルプ(pH6.8)に、上記各実施例および比較例で得られた各共重合体水溶液を上記と同様に添加し、上記と同様の操作を行い、比破裂強度を測定した。結果を表3に示す。
【0035】
【表3】
Figure 0003575018
【0036】
表3の結果より、本発明で得られるアクリルアミド系共重合体を用いた製紙用添加剤は、優れた紙力増強効果を発現すると認められる。

Claims (5)

  1. (A)(メタ)アクリルアミド99.899〜79.9モル%、(B)炭素−炭素二重結合として(メタ)アリル基を1つ有するモノマー0.05〜10モル%、(C)一般式(1):CH2 =C(R1 )−CONR2 (R3 )(式中、R1 は水素原子またはメチル基、R2 は水素原子または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、R3 は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表す)で表されるN−置換(メタ)アクリルアミド類0.05〜10モル%、および(D)多官能性モノマー0.001〜0.1モル%を共重合して得られる(メタ)アクリルアミド系共重合体を含有してなる製紙用添加剤。
  2. (A)(メタ)アクリルアミド99.899〜55モル%、(B)炭素−炭素二重結合として(メタ)アリル基を1つ有するモノマー0.05〜10モル%および(C)一般式(1):CH2 =C(R1 )−CONR2 (R3 )(式中、R1 は水素原子またはメチル基、R2 は水素原子または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、R3 は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表す)で表されるN−置換(メタ)アクリルアミド類0.05〜10モル%、(D)多官能性モノマー0.001〜0.1モル%、ならびに(E)前記(A)〜(C)成分を除くアニオン性ビニルモノマー、カチオン性ビニルモノマーおよびノニオン性ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種40モル%以下を共重合して得られる(メタ)アクリルアミド系共重合体を含有してなる製紙用添加剤。
  3. (B)炭素−炭素二重結合として(メタ)アリル基を1つ有するモノマーが、(メタ)アリルカルボン酸、(メタ)アリルスルホン酸およびこれらの塩ならびに(メタ)アリルアルコールから選ばれる少なくとも1種である請求項1または2のいずれかに記載の製紙用添加剤。
  4. (C)N−置換(メタ)アクリルアミド類が、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドおよびN−t−ブチル(メタ)アクリルアミドから選ばれる少なくとも1種である請求項1または2のいずれかに記載の製紙用添加剤。
  5. (E)成分として、全モノマーの総モル和に対し、アニオン性ビニルモノマーを1〜15モル%およびカチオン性ビニルモノマーを1〜15モル%使用してなる請求項記載の製紙用添加剤。
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