(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施形態1に係るオイル供給装置1が設けられたエンジン2の概略構成を示す。このエンジン2は、第1気筒乃至第4気筒が順に図1の紙面に垂直な方向(以下、気筒列方向という)に直列に配置された直列4気筒ガソリンエンジンであって、自動車等の車両に搭載される。
エンジン2は、シリンダヘッド3、シリンダブロック4及びオイルパン5が上下に連結されて構成されている。
シリンダブロック4には、第1気筒乃至第4気筒に対応する4つのシリンダボア6が気筒列方向に並んで形成されている。各シリンダボア6の内部には、各シリンダボア6をそれぞれ摺動可能なピストン6が収容されていて、該ピストン7は、コネクティングロッド8を介して、シリンダブロック4に設けられたクランク室15に配設されたクランクシャフト9と連結されている。クランクシャフト9にはカウンターウェイト16が設けられている。また、各シリンダボア6内には、シリンダボア6と、ピストン7と、シリンダヘッド3とによって、燃焼室10が区画されている。
シリンダヘッド3には、燃焼室10に開口する吸気ポート11と排気ポート12とが設けられている。吸気ポート11には、吸気ポート11を開閉する吸気バルブ13が設けられ、排気ポート12には、排気ポート12を開閉する排気バルブ14が設けられている。これら吸気バルブ13及び排気バルブ14は、閉じる方向にスプリングで付勢されており、該付勢力に抗して吸気バルブ13等が燃焼室10に突入することにより、吸気ポート11等が開かれるようになっている。
これら吸気バルブ13及び排気バルブ14を開閉動作させるために、各気筒には動弁機構としてのバルブ開閉機構が設置されている。すなわち、シリンダヘッド3における吸気ポート11側及び排気ポート側の少なくとも一方(本実施形態では、両方)には、吸気バルブ13及び排気バルブ14の少なくとも一方(本実施形態では、両方)を開閉動作させるための油圧駆動式可変動弁機構としての油圧駆動式可変バルブ開閉機構40が設置されている。
図2に、吸気バルブ13及び排気バルブ14を開閉動作させる油圧駆動式可変バルブ開閉機構40を示す。油圧駆動式可変バルブ開閉機構40は、バルブ用給油路41、副室42及びバルブ用油圧制御弁43を有しており、エンジン2の出力に応じて回転するカム44の動力がオイルを介してバルブに伝達されることによって吸気バルブ13等を開閉するように構成されている。油圧駆動式可変バルブ開閉機構40では、油圧の調整により、バルブの開閉タイミング及び開閉量の、連続したきめ細やかな制御が可能である。バルブ用給油路41内や副室42内は、高圧になるため、ブロック状のバルブ体(図示省略)の内部に形成されている。
バルブ用給油路41は、副室42に接続された副室側油路41aと、油圧を吸気バルブ13等に伝達させるための第2伝達室46に接続された第2伝達室側油路41bと、カム44の動力をオイルに作用させるための第1伝達室45に接続された第1伝達室側油路41cを有している。バルブ用給油路41の各油路41a〜41cは、それぞれバルブ用油圧制御弁43を介して接続されている。すなわち、各油路41a〜41cは、一端が各室42,45,46に接続される一方、他端がバルブ用油圧制御弁43に接続されている。
副室42には、後述する第1給油路51が接続されており、エンジン2の作動中は、後述するオイルポンプ81からオイルが供給されて、バルブ用給油路41、副室42、第1伝達室45、第2伝達室46がオイルで満たされている。
第1伝達室45では、クランクシャフト9と同期して回転するカム44のカム面の変化に応じて往復動する動力を、動力伝達用ピストン47を介して、バルブ用給油路41のオイルに伝達させる。上記動力が伝達されたオイルは、第2伝達室46において上記動力を吸気バルブ13等に伝達させる。
バルブ用油圧制御弁43は、図2では示していないが、後述するコントロールユニット100と電気的に接続されている。バルブ用油圧制御弁43は、コントロールユニット100の制御により、副室側油路41aと第2伝達室側油路41bとの間を遮断する閉じ状態と、副室側油路41aと第2伝達室側油路41bとの間を連通させる開き状態とに変位する。すなわち、バルブ用油圧制御弁43が閉じ状態に保持されることで、カム44から第1伝達室45に伝達される動力は、そのままオイルを介して第2伝達室46に伝達され、吸気バルブ13又は排気バルブ14が開閉動作する。一方で、バルブ用油圧制御弁43が開き状態に保持されると、第2伝達室側油路41b内のオイルが、副室側油路41aを介して副室42に流入し、該副室42に設けられた連通孔48を介して油圧駆動式可変バルブ開閉機構40の外部に流出することで、カム44から第1伝達室45内のオイルに伝達される動力が、第2伝達室46に伝達されなくなるため、吸気バルブ13又は排気バルブ14の開閉動作が停止して、吸気ポート12又は排気ポート12は閉じ状態が保持されるようになる。
油圧駆動式可変バルブ開閉機構40では、バルブ用油圧制御弁43の作動タイミングや作動時間を調整することにより、吸気バルブ13等の開閉タイミング及び開閉量を多様に変化させることが可能である。すなわち、この油圧駆動式可変バルブ開閉機構40によって、最適な条件での燃焼が可能となるため、燃費の向上等が期待される。
尚、油圧駆動式可変動弁機構として、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40以外にも、公知の油圧ラッシュアジャスタや油圧式の可変バルブタイミング機構などの油圧駆動装置が設けられていてもよい。
次に、図3を参照しながら、上述のエンジン2にオイルを供給するためのオイル供給装置1について詳細に説明する。
図3に示すように、オイル供給装置1は、オイルポンプ81と、オイルポンプ81に接続され、オイルポンプ81により昇圧されたオイルをエンジン2の油圧駆動式可変バルブ開閉機構40や潤滑部60に導く給油路50とを備えている。オイルポンプ81は、エンジン2により駆動される。尚、潤滑部60は、クランクシャフト9を回転自在に支持する軸受部の軸受メタル、コネクティングロッド8が回転自在に連結されたクランクピンに配設された軸受メタル、ピストン冷却用のオイルジェット、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40が吸気ポート11側又は排気ポート12側のうちの一方に設けられている場合には、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40が設けられていない側におけるカムシャフトのカムジャーナル等を含むものである。
オイルポンプ81は、クランクシャフト9の回転によって駆動されるオイルポンプであって、該オイルポンプ81の容量を変更してオイル吐出量を可変にする公知の可変容量型のオイルポンプである。オイルポンプ81はエンジン2のオイルパン5内に収容された状態となっている。詳しくは、オイルポンプ81は、クランクシャフト9に駆動回転される駆動シャフト81aと、駆動シャフト81aに連結されたロータ81bと、ロータ81bから径方向へ進退自在に設けられた複数のベーン81cと、ロータ81b及びベーン81cを収容し、ロータ81bの回転中心に対する偏心量が調整されるように構成されたカムリング81dと、ロータ81bの回転中心に対する偏心量が増大する方向へカムリング81dを付勢するスプリング81eと、ロータ81bの内側に配置されたリング部材81fと、ロータ81b、ベーン81c、カムリング81d、スプリング81e及びリング部材81fを収容するハウジング81gと、を有している。
図示は省略するが、駆動シャフト81aの一端部は、ハウジング81gの外方へ突出し、該一端部には、従動スプロケットが連結されている。従動スプロケットには、タイミングチェーンが巻回されている。このタイミングチェーンは、クランクシャフト9の駆動スプロケットにも巻回されており、これにより、ロータ81bは、タイミングチェーンを介してクランクシャフト9に回転駆動されている。
ロータ81bが回転する際に各ベーン81cは、カムリング81dの内周面上を摺動する。これにより、ロータ81b、隣り合う2つのベーン81c、カムリング81d及びハウジング81gによってポンプ室81iが区画される。
ハウジング81gには、ポンプ室81i内へオイルを吸入する吸入口81jが形成されるとともに、ポンプ室81iからオイルが吐出される吐出口81kが形成されている。吸入口81jには、オイルストレーナ81lが接続されている。オイルストレーナ81lは、オイルパン82に貯留されたオイルに浸漬されている。つまり、オイルパン82に貯留されたオイルがオイルストレーナ81lを介して吸入口81jからポンプ室81iへ吸入される。一方、吐出口81kには、給油路50が接続されている。つまり、オイルポンプ81によって昇圧されたオイルは、吐出口81kから給油路50へ吐出される。
カムリング81dは、所定の支点回りに揺動するようにハウジング81gに支持されている。スプリング81eは、該支点回りの一方側へカムリング81dを付勢している。また、カムリング81dの外周面とハウジング81gの内周面とにより圧力室84が区画される。圧力室84は、オイルポンプ81からのオイルの吐出量を調整するための部屋である。具体的には、圧力室84には、該圧力室に開口する導入孔84aが設けられていて、該導入孔84aを介して圧力室84へ外部からオイルが供給され、圧力室84内のオイルの油圧がカムリング81dに作用する。これにより、カムリング81dが、スプリング81eの付勢力と圧力室84の油圧とのバランスに応じて揺動し、ロータ81bの回転中心に対するカムリング81dの偏心量が決定される。この結果、カムリング81dの偏心量に応じて、オイルポンプ81の容量が変化し、オイルの吐出量が変化する。
給油路50は、パイプ並びに、シリンダヘッド3及びシリンダブロック4に穿設された流路で形成されている。給油路50は、シリンダヘッド3内で吸気側と排気側との間を略水平方向に延びかつ油圧駆動式可変バルブ開閉機構40及び油圧駆動式可変バルブ開閉機構40にオイルを供給するための第1給油路51と、シリンダブロック4において気筒列方向に延びかつエンジン2の潤滑部60にオイルを供給するための第2給油路52と、オイルポンプ81の吐出口81kと第1及び第2給油路51,52とを接続する共通給油路53と、を備えている。尚、第1給油路51から、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40に加えて、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40のカム44のカムジャーナル等にオイルが供給されてもよい。また、上述した油圧駆動装置(油圧ラッシュアジャスタや可変バルブタイミング機構など)が設けられて場合には、第2給油路52から、第1給油路51に接続された上記油圧駆動装置以外の油圧駆動装置にオイルが供給されるようになっていてもよい。
共通給油路53には、オイルフィルタ82及びオイルクーラ83が、オイルポンプ81側から順に設けられている。つまり、オイルポンプ81から共通給油路53へ吐出されたオイルは、オイルフィルタ82で濾過され、オイルクーラ83で油温が調整された後、第1給油路51や第2給油路52へ流入する。共通給油路53におけるオイルクーラ83よりも下流側には、オイルポンプ81から吐出されたオイルであって、共通給油路53を流通するオイルの温度(油温)を検出するための油温検出手段としての油温センサ104が配置されている。
また、共通給油路53におけるオイルフィルタ82とオイルクーラ83との間の油路からは、エンジン2の運転状態に応じてオイルポンプ81からのオイルの吐出量を調整するための第1油圧制御弁85を介して、オイルポンプ81の圧力室84に接続された制御用油路54が分岐している。共通給油路53のオイルは、制御用油路54を通り、第1油圧制御弁85によって油圧が調整された後、オイルポンプ81の圧力室84に流入する。つまり、第1油圧制御弁85によって、圧力室84内の油圧が調整されることで、オイルポンプ81からのオイルの吐出量が調整される。
第1油圧制御弁85は、実施形態1ではリニアソレノイドバルブであり、エンジン2の運転状態に応じて入力される制御信号のデューティ比に応じて、圧力室84に供給するオイルの流量を調整することで、オイルポンプ81からのオイルの吐出量を制御する。リニアソレノイドバルブは、開弁時にオイルポンプ81の圧力室84にオイルが供給されるようになっているが、リニアソレノイドバルブ自体の構成は周知であるため説明を省略する。
第2給油路52には、クランクシャフト9の軸受部等の潤滑部60に供給するオイル量、すなわち、油圧を制御するための流量調整手段としての第2油圧制御弁86が設けられている。この第2油圧制御弁86は、例えば、リニアソレノイドバルブ及び可変オリフィスによって構成されており、絞り量の調整により第2給油路52へのオイルの流量を調整する。
また、第1給油路51には、第1給油路51内の油圧を検出する第1油圧センサ105が設けられている一方、第2給油路52には、第2給油路52内の油圧を検出する第2油圧センサ106が設けられている。詳しくは後述するが、第1油圧センサ105により検出された第1給油路51内の油圧と、第2油圧センサ106により検出された第2給油路52内の油圧と、油温センサ104により検出された油温に基づいて、第1油圧制御弁85に制御信号が送られて、圧力室84内の油圧が調整されることで、オイルポンプ81からのオイルの吐出量が調整される。
エンジン2の油圧駆動式可変バルブ動弁機構40や潤滑部60に供給されたオイルは、図示しないドレン油路を通って、オイルパン5に滴下し、オイルポンプ81により再び環流される。
オイル供給装置1は、制御手段としてのコントロールユニット100によって制御される。コントロールユニット100には、エンジン2の運転状態を検出する各種センサからの検出情報が入力される。例えば、コントロールユニット100には、クランクシャフト9の回転角度を検出するクランク角センサ101と、車両の乗員によるアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ102と、共通給油路53を流れるオイルの油温を検出する油温センサ104と、第1給油路51内の油圧を検出する第1油圧センサ105と、第2給油路52内の油圧を検出する第2油圧センサ106等の検出結果が入力される。コントロールユニット100は、クランク角センサ101の検出信号に基づいてエンジン回転数を検出し、アクセル開度センサ102の検出信号に基づいてエンジン負荷を検出する。尚、コントロールユニット100は、図示を省略するギヤ段検出手段により検出されたギヤ段とクランク角センサ101により検出されたエンジン回転数とアクセル開度センサ102により検出されたアクセル開度とに基づいて、目標トルクを決定し、該目標トルクからエンジン負荷を演算するように構成されていてもよい。
コントロールユニット100は、周知のマイクロコンピュータをベースとする制御装置であって、各センサ(クランク角センサ101、アクセル開度センサ102、油温センサ104、第1油圧センサ105及び第2油圧センサ106等)からの検出信号を入力する信号入力部と、制御に係る演算処理を行う演算部と、制御対象となる装置(第1油圧制御弁85、第2油圧制御弁86等)に制御信号を出力する信号出力部と、制御に必要なプログラムやデータ(油圧制御マップ等)を記憶する記憶部とを備えている。
コントロールユニット100は、第1油圧制御弁85に対し、エンジン2の運転状態に応じたデューティ比の制御信号を送信して、第1油圧制御弁85を介してオイルポンプ81の圧力室84へ供給する油圧を制御する。この圧力室84の油圧により、カムリング81dの偏心量を制御してポンプ室81iの内部容積の変化量を制御することで、オイルポンプ81の吐出量を制御する。つまり、上記デューティ比によってオイルポンプ81の容量が制御される。ここで、オイルポンプ81は、エンジン2のクランクシャフト9で駆動されるため、図4に示すように、オイルポンプ81のからのオイルの吐出量は、エンジン回転数(つまりポンプ回転数)が大きいほど増加する。そして、デューティ比が、1サイクルの時間に対する第1油圧制御弁85への通電時間を表す場合、図示するように、デューティ比が大きいほどオイルポンプ81の圧力室84への油圧が増大するため、エンジン回転数に対するオイルポンプ31の流量の傾きが減る。
また、コントロールユニット100は、エンジンの運転状態に応じて、オイルポンプの吐出量制御を行う、具体的には、コントロールユニット100は、エンジン2の運転状態に応じた目標油圧を規定したマップを記憶しており、判定した運転状態とマップとを照らし合わせて、目標油圧を決定する。そして、コントロールユニット100は、第1及び第2給油路51、52内の油圧がそれぞれの目標油圧となるように第1油圧制御弁85及び第2油圧制御弁86を制御する。
詳しくは、コントロールユニット100は、第1油圧センサ105によって検出される第1給油路51内の油圧が目標油圧になるように、オイルポンプ81の吐出量を制御する。このとき、コントロールユニット100は、目標油圧に対応するデューティ比を有する制御信号を第1油圧制御弁85に送信する。第1油圧制御弁84は、該デューティ比に応じた流量のオイルをオイルポンプ81の圧力室81mに供給する。これにより、オイルポンプ81の吐出量が調整される。コントロールユニット100は、第1給油路51内の油圧が目標油圧となるように制御信号のデューティ比を調整する。
また、コントロールユニット100は、第2油圧センサ106によって検出される第2給油路52内の油圧が目標油圧になるように、オイルポンプ81の吐出量を制御するとともに、第2油圧制御弁86を制御する。このとき、コントロールユニット100は、制御信号のデューティ比を調整することによって、第2油圧制御弁86の開度を調整し、第2給油路52へのオイルの流量、すなわち、第2給油路52内の油圧を調整する。
また、コントロールユニット100は、図5に示すように、第2給油路52へのオイルの流量を、エンジン回転数が所定回転数よりも低い、低速運転領域では、エンジン回転数が大きくなるほど増加させる一方、エンジン回転数が所定回転数以上の高速運転領域では所定流量するように、第2油圧制御弁86の開度を調整する。
この制御について、図6及び図7を参照しながら説明する。
図6は、軸受特性数Zと最小油膜厚さdとの関係を示すグラフである。図6に示すように、最小油膜厚さdは、軸受特性数Zが大きくなればなるほど大きくなる。この軸受特性数Zは、オイルの粘度をη、軸の回転数をV、軸受面圧をPとして、Z=η・V/Pで示され、オイルの粘度ηが大きいほど、またクランクシャフトの回転数V、すなわちエンジン回転数Vが大きくなるほど、その数値が大きくなる一方、軸受面圧P、すなわちエンジン負荷が大きくなるほど、その数値が小さくなる。
一方、図7は、軸受特性数Zと摩擦係数との関係を示すグラフである。図7に示すように、所定の限界厚さd0以下(軸受特性数ZがZ0以下)では、軸受部は境界摩擦状態となって、軸受部が軸と直接接触してしまい、軸受特性数Zが小さくなるほど(最小油膜厚さdが小さくなるほど)摩擦係数が増大する一方、限界厚さd0以上では、軸受部に流体摩擦が作用し、軸受特性数Zが大きくなるほど(最小油膜厚さdが大きくなるほど)摩擦係数が増大する。したがって、エンジン回転数Vが上昇したときに、それに比例させて油量を増加させ続けると、最小油膜厚さdが大きくなりすぎてしまい、流体摩擦による摩擦抵抗が増大してエンジンの駆動損失を招いてしまう。
そこで、エンジン回転数が上記所定回転数以上の高速運転領域では、第2油圧制御弁86を制御して第2給油路52へのオイルの流量を所定流量以上とならないように絞ることで、エンジン回転数が上昇したとしても、潤滑部60に供給されるオイルの量が過剰にならないように、すなわち、油膜厚さが過剰にならないようにしている。これにより、エンジン2の潤滑部60の油膜厚さを適切な厚みに維持することができ、この結果、エンジンの駆動損失を抑制することができる。尚、コントロールユニット100には、オイルポンプ81の吐出圧に対する油膜厚さに関するマップが格納されており、上記所定回転数及び上記所定流量は、上記マップから算出される。また、エンジン回転数が所定回転数よりも高いときであっても、オイルジェットが要求される場合には、図5に破線で示すように第2給油路52へのオイルの流量が、該オイルの流量を所定流量に制御したときよりも大きくすることがある。
上述のように、第2給油路52については、エンジン回転数に応じて、オイルの流量を制限するような制御が実行される一方、第1給油路51については、図5に示すように、エンジン回転数が大きくなるほどオイルの流量が多くなるようになっている。
また、コントロールユニット100は、エンジン回転数が同一であっても、油温センサ104によって検出される検出油温が高いほど第2給油路52へのオイルの流量を増大させるように第2油圧調整弁86を制御する。すなわち、上記所定流量を検出油温が高いほど大きくするようにしている。油温が高くなるとオイルの粘度が低下するため潤滑部60に供給されたオイルが、潤滑部60から流れ去りやすくなり、潤滑部60のオイル量が不足する可能性がある。そこで、上記検出油温が高いほど第2給油路52へのオイルの流量を増大させることで、油温にかかわらず潤滑部60に適切な厚さの油膜を形成できるようにしている。
ここで、エンジン回転数が高くなると、クランクシャフト9に設けられたカウンターウェイト16で、クランク室15内に飛散しているオイルやオイルパン5に貯留されているオイルが激しく撹拌されるため、オイル中に混入される空気の量が増大する。オイル中に混入される空気の量が増大すると、混入した空気がオイル中で気泡になりやすくなるため、図8に示すように、オイル中の気泡の混入量が増加する。気泡が混入したオイルが、そのままオイルポンプ81から吐出されて油圧駆動式可変バルブ開閉機構40に供給されると、気泡が消失するまでの間は、カム44の動力が吸気バルブ13等に伝えられず、リフトタイミングやリフト量が、所望のリフトタイミング及びリフト量に対してずれてしまい、エンジン2の応答性を悪化させてしまうおそれがある。
実施形態1のような可変容量型のオイルポンプ81では、オイルの吐出量を変化させることができるため、オイルポンプ81が、オイルへの気泡の混入量が許容値を超える可能性があるポンプ回転数以上の回転数で作動しているときに、第1油圧制御弁85を制御して、オイルポンプ81からのオイルの吐出量を増大させるようにすると、第1給油路51内の油圧が増大するため、気泡をオイル中に強制的に溶解させることができる。
しかしながら、オイルに対する気体の溶解度は、油温が高くなるほど低下するため、例えば、エンジン2の高負荷運転中など、油温が高いときには、図8に示すように、オイル内の気泡の混入量が増加してしまう。そのため、エンジン回転数に対する制御だけでなく、油温に対する制御も行う必要がある。
そこで、実施形態1では、コントロールユニット100は、エンジン回転数が同一であっても、油温センサ104によって検出された検出油温が高いほど第1給油路51内の油圧が高くなるように、オイルポンプ81からのオイルの吐出量を制御するようにしている。
上述の制御について、図9を参照しながら説明する。
図9は、油温に基づいて油圧を決定するための相関図である。横軸は共通給油路53を流れるオイルの油温、縦軸は第1給油路51の要求油圧である。上述したように、油温が高いほどオイルへの気体の溶解度が低下するため、油温が高いほど第1給油路51内の油圧を高くするようにする。詳しくは、油温が高いほどオイルポンプ81からのオイルの吐出量を増大させる。尚、本実施形態では、油温に対して油圧を線形的に増大させるようになっているが、線形的に増大させる必要はなく、油温に対するオイルへの気体の溶解度の曲線に基づいて、第1給油路51内の油圧の増加の割合を変化させるようにしてもよい。
コントロールユニット100には、図9のような油温に関する相関図以外にも、図5に示すようなエンジン回転数とオイルの流量との相関図等が格納されており、コントロールユニット100は、これらの相関図に基づいて作成されたマップ(すなわち、エンジンの運転状態と油温とに基づくマップ)を読み込んで、油温等に基づいて決定された要求油圧を満たすようなオイルの吐出量を算出する。そして、コントロールユニット100は、オイルポンプ81からのオイルの吐出量が、算出されたオイルの吐出量になるように、第1油圧制御弁85に制御信号を出力して、オイルポンプ81からのオイルの吐出量を制御する。
ここで、コントロールユニット100は、上記要求油圧を満たすオイルの吐出量を算出する際に、オイルの粘度について考慮するように構成されている。
オイルの粘度は、油温やオイルの劣化に依存する。具体的には、油温については、油温が高いほどオイルの粘性が低くなる一方、油温が低いほどオイルの粘度が高くなり、オイルの劣化については、劣化が進んでいるほどオイルの粘度が高くなる一方、オイルが新しいほどオイルの粘性が低くなる傾向にある。
そこで、コントロールユニット100は、油温及びオイルの劣化状態の少なくとも一方に基づいて推定する。具体的には、コントロールユニット100は、上述のような関係に基づいた、油温に対するオイルの粘度のマップ及びオイルの劣化状態に対するオイルの粘度のマップを有しており、それらのマップを読み込むことで、オイルの粘度を推定する。
コントロールユニット100は、オイルの粘度を推定する際に、油温については、油温センサ104の検出結果を用いる一方、オイルの劣化状態については、エンジン2の運転状態から推定されるスモーク発生量の積算値を用いる。
具体的にスモーク発生量の推定について説明すると、コントロールユニット100は、先ず、エンジン回転数、エンジン負荷及び燃焼室10の温度を検出する。上述したように、本実施形態では、エンジン回転数はクランク角センサ101によって検出され、エンジン負荷はアクセル開度センサ102によって検出される。
燃焼室10の温度は、本実施形態では、油温センサ104の検出結果を用いる。油温は燃焼室10の温度と相関関係を有するため、油温から燃焼室10の温度を算出することができる。尚、燃焼室10の温度は、上記油温に代えて、燃焼室10の温度と相関関係のある、エンジン冷却水の温度や排気ガスの温度から算出するようにしてもよい。
そして、コントロールユニット100は、検出されたエンジン回転数、エンジン負荷及び燃焼室10の温度を、予め格納されたマップに照らし合わせて、スモーク発生量を推定し、該推定値を以前の推定結果に加えて積算する。これにより、スモーク発生量の積算値が求められ、該積算値からオイルの劣化状態が推定される。
尚、オイルの粘度について、油温とオイルの劣化状態との両方に基づいて推定するときには、例えば、オイルの劣化状態から推定されたオイルの粘度を、油温に基づいて補正するなどして推定される。
次に、油圧制御時のコントロールユニット100の処理動作について、図10のフローチャートに基づいて説明する。
最初のステップS101で、クランク角センサ101、アクセル開度センサ102、油温センサ104、第1油圧センサ105及び第2油圧センサ106等からの各種検出信号を読み込み、次のステップS102で、第1及び第2給油路51,52の目標油圧を決定する。このとき、第1及び第2給油路51,52の目標油圧としては、油温が高いほど高い目標油圧が設定される。
次のステップS103では、上記目標油圧をオイルの流量に変換して目標流量(目標吐出量)を求める。このとき、目標流量は、検出油温等から推定されたオイルの粘度について考慮した上で算出される。さらに、ステップS104において、上記目標流量に、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40等の作動時の消費流量を加算して修正目標流量を算出する。
そして、ステップS105では、上記修正目標流量を予め格納されたデューティ比マップに照らし合わせて目標デューティ比を設定する。
次に、ステップS106において、第1油圧制御弁85への制御信号の現在のデューティ比を読み込むとともに、現在のデューティ比と目標デューティ比とを比較して、現在のデューティ比が目標デューティ比と一致するか否かを判定する。現在のデューティ比と目標デューティ比とが一致しないときには、ステップS107に進む一方、現在のデューティ比と目標デューティ比とが一致するときには、リターンする。
上記ステップS107では、制御信号のデューティ比を、現在のデューティ比から目標デューティ比に変更して、変更後の制御信号を第1油圧制御弁85へ出力する。変更後の制御信号の出力が完了した後は、リターンする。
このように、上記検出油温が高いほど、第1給油路51内の油圧が高くなるように、オイルポンプ81からのオイルの吐出量を制御することによって、第1給油路51におけるオイルに対する気体の溶解度が高くなるため、気泡が発生しにくくなる。また、仮に気泡が発生していたとしても、第1給油路51内の油圧を高くすることで、気泡を強制的にオイルに溶解させることができる。これにより、エンジン2の油圧駆動式可変バルブ開閉機構40に供給されるオイルへの気泡の混入量が抑制され、吸引バルブ12等のリフトタイミングやリフト量が、所望のリフトタイミングやリフト量に対してずれるのを抑制することができる。この結果、エンジン2の応答性の悪化を抑制することができる。
したがって、実施形態1では、オイルポンプ81から吐出されたオイルの油温を検出する油温センサ104と、該油温センサ104によって検出される検出油温に基づいてオイルポンプ81からのオイルの吐出量を調整することで、第1給油路51内の油圧を制御するコントロールユニット100と、を備え、コントロールユニット100は、上記検出油温が高いほど第1給油路51内の油圧が高くなるように、オイルポンプ81からのオイルの吐出量を調整するように構成されているため、油温が高いときでも、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40に供給されるオイルへの気泡の混入が抑制され、吸気バルブ13等のリフトタイミングやリフト量が、所望のリフトタイミングやリフト量に対してずれるのを防止することができる。この結果、エンジン2の応答性の悪化を抑制することができる。
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
図11は、実施形態2に係るオイル供給装置1が設けられたエンジン2の給油系統を示す。実施形態1では、エンジン2の各部にオイルを供給するオイルポンプとして、エンジン2によって駆動される可変容量型のオイルポンプ81が用いられていたが、実施形態2では、エンジン2と独立して駆動可能な電動式オイルポンプ181(以下、電動ポンプ181という)が用いられる。その他の構成については、実施形態1と同じである。また、第1及び第2給油路51,52に対する油圧制御についても実施形態1と同様の油圧制御を実行可能である。すなわち、実施形態2において、コントロールユニット100は、油温センサ104で検出される検出油温が高いほど第1給油路51内の油圧が高くなるように、電動ポンプ181からのオイルの吐出量を制御する。また、コントロールユニット100は、エンジン回転数が所定回転数よりも小さい運転領域では、エンジン回転数が大きくなるほど第2給油路52へのオイルの流量を増大させる一方、エンジン回転数が所定回転数以上の高速運転領域では第2給油路52へのオイルの流量を所定流量するように、第2油圧制御弁86の開度を調整する。さらに、コントロールユニット100は、上記検出油温が高いほど、第2給油路52へのオイルの流量を増大させる。
電動ポンプ181は、図示を省略するモータによって駆動され、車両のバッテリ等から上記モータに供給される電力の大きさによって、オイルの吐出量を調整できるようになっている。また、電動ポンプ181は、ポンプ回転数をエンジン回転数とは、独立して制御することが可能である。そのため、例えば、エンジン2が高回転数で作動している場合であっても、ポンプ回転数を抑えて、オイルへの気泡の混入を抑えることもできる。
ここで、実施形態2におけるコントロールユニット100の制御について説明すると、コントロールユニット100は、エンジン回転数の低下とともに電動ポンプ181の回転数を低下させる際に、エンジン回転数の低下速度が所定低下速度以上のときには、電動ポンプ181の回転数の低下速度を上記所定低下速度よりも小さくするようにしている。
すなわち、エンジン2の回転数に比例してオイルポンプからのオイルの吐出量、すなわち、各給油路51,52,53内の油圧が増大するような構成の場合、エンジン回転数が上記所定低下速度以上の速度で急激に低下すると、オイルポンプの回転数も上記所定低下速度に比例して急激に低下するため、オイルポンプからのオイルの吐出量も急激に減少し、各給油路51,52,53内の油圧が急激に低下する。油圧が急激に低下すると、オイルに対する気体の溶解度が低下するため、各給油路51,52,53内のオイルに溶解していた空気が気泡として析出してしまう。気泡が析出すると、各給油路51,52,53が目詰まりしてしまう可能性がある。また、オイルが気泡ごと油圧駆動式可変バルブ開閉機構40に供給されると、気泡が消失するまでの間は、吸気バルブ13等のリフトタイミングやリフト量が、所望のリフトタイミングやリフト量に対してずれてしまい、車両を再発進させる際に、エンジン2の応答性が悪化してしまう。
これに対して、コントロールユニット100は、エンジン回転数が、急激に低下した場合、詳しくは上記所定低下速度以上の速度で低下した場合に、電動ポンプ181のポンプ回転数を、該所定低下速度よりも低い低下速度で緩やかに減少させる。これにより、エンジン回転数の急激な低下による各給油路51,52,53内の油圧の急激な低下を抑えることができ、オイル中の気泡の発生を抑制することができる。
尚、上記所定低下速度は、気泡の析出量とエンジンの応答性との関係から決定される。具体的には、オイル中の気泡の析出量が増大するほどエンジンの応答性が低下するところ、エンジンの応答性が、許容できる応答性よりも低下してしまう量の気泡を析出させるような、エンジン回転数の低下速度が所定低下速度に相当する。
したがって、実施形態2では、オイルポンプとして電動ポンプ181を採用し、コントロールユニット100は、実施形態1における第1及び第2給油路51,52内の油圧の制御に加えて、エンジン回転数の低下とともに電動ポンプ181の回転数を低下させる際に、エンジン回転数の低下速度が所定低下速度以上の低下速度のときには、電動ポンプ181の回転数の低下速度を上記所定低下速度よりも低くするように構成されているため、実施形態1と同様の効果が得られるとともに、エンジン回転数の低下速度が上記所定低下速度以上の速度であるときでも、電動ポンプ181の回転数の低下速度を上記所定低下速度よりも小さい速度にすることができ、これにより、許容される混入量を超える量の気泡が析出するのを防止することができる。この結果、エンジン2の応答性の低下をより確実に抑制することができる。
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、上述の実施形態では、油圧駆動式可変動弁機構として、吸気バルブ13及び排気バルブ14ともに油圧駆動式可変バルブ開閉機構40を用いていたが、これに限らず、公知の油圧ラッシュアジャスタや油圧式の可変バルブタイミング機構が設けられた直動式バルブ開閉機構としてもよい。また、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40と上記直動式バルブ開閉機構とを混在させるようにしてもよい。この場合でも、オイルに気泡が混入していると上記油圧ラッシュアジャスタや上記可変バルブタイミング機構に必要な油圧が供給されなくなって、正常に作動しない可能性があるため、実施形態1及び実施形態2のような油圧制御が必要となってくる。
また、上述の実施形態では、コントロールユニット100は、エンジン2の運転状態と油温とに基づくマップを有しており、該マップを読み込んで目標油圧を決定するようにしていたが、これに限らず、先ずエンジンの運転状態から暫定的な目標油圧を決定し、それを油温に基づいて補正することで、最終的な目標油圧を決定するようにしてもよい。
さらに、上述の実施形態では、第1給油路51及び第2給油路52の両方に油圧センサ105,106を設けていたが、これに限らず、第1給油路51及び第2給油路52のうちの第2給油路52にのみ油圧センサを設けるようにしてもよい。この場合、コントロールユニット100は、第1給油路51に流入するオイルの流量から第1給油路51内の油圧を求める。詳しくは、第2給油路52への流量は第2油圧制御弁86によって調整されるため、コントロールユニット100は、オイルポンプ81の吐出量と第2給油路52へのオイルの流量から第1給油路51へのオイルの流量を算出することができる。そして、コントロールユニット100は、予め格納された油圧マップ等を参照して、算出された第1給油路51のオイルの流量から第1給油路51の油圧を求める。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。