以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施形態1に係るオイル供給装置1が設けられたエンジン2の概略構成を示す。このエンジン2は、第1気筒乃至第4気筒が順に図1の紙面に垂直な方向(以下、気筒列方向という)に直列に配置された直列4気筒ガソリンエンジンであって、自動車等の車両に搭載される。
エンジン2は、シリンダヘッド3、シリンダブロック4及びオイルパン5(図3参照)が上下に連結されている。シリンダブロック4には、第1気筒乃至第4気筒に対応する4つのシリンダボア6が気筒列方向に並んで形成されている。各シリンダボア6の内部には、各シリンダボア6をそれぞれ摺動可能なピストン7が収容されていて、該ピストン7は、コネクティングロッド8を介して、シリンダブロック4の下部に形成されたクランクケースに配設されたクランクシャフト9と連結されている。また、各シリンダボア6内には、シリンダボア6と、ピストン7と、シリンダヘッド3とによって、燃焼室10が区画されている。
シリンダヘッド3には、燃焼室10に開口する吸気ポート11と排気ポート12とが設けられている。吸気ポート11には、吸気ポート11と燃焼室10と連通する吸気口を開閉する吸気バルブ13が設けられ、排気ポート12には、排気ポート12と燃焼室10とを連通する排気口を開閉する排気バルブ14が設けられている。つまり、吸気バルブ13及び排気バルブ14が燃焼室10に突入することにより、吸気ポート11及び排気ポート12が燃焼室10と連通するようになっている。詳しくは後述するが、これら吸気バルブ13及び排気バルブ14は、シリンダヘッド3に回転可能に取り付けられたカムシャフト49上に設けられ、外周部に隆起部を有するカム44(図2参照)の回転力が、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40に伝達されることによって開閉動作を行うものである。
これら吸気バルブ13及び排気バルブ14を開閉動作させるために、各気筒には動弁機構としてのバルブ開閉機構が設置されている。すなわち、シリンダヘッド3における吸気ポート11側には、吸気バルブ13を開閉動作させるための油圧駆動式可変動弁機構としての油圧駆動式可変バルブ開閉機構40が設置され、シリンダヘッド3における排気ポート12側には、排気バルブ14を開閉動作させるための油圧駆動式可変動弁機構としての油圧駆動式可変バルブ開閉機構40が設置されている。
図2に、吸気バルブ13及び排気バルブ14のうちの少なくとも一方(本実施形態では両方)を開閉動作させる油圧駆動式可変バルブ開閉機構40を示す。油圧駆動式可変バルブ開閉機構40は、バルブ用給油路41、副室42、バルブ用油圧制御弁43を有している。油圧駆動式可変バルブ開閉機構40は、エンジン2の出力に応じて回転するカム44が、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40内の動力伝達用ピストン47を付勢し、バルブ用給油路41内のオイルを介してカム44の動力(回転力)が、吸気バルブ13又は排気バルブ14に伝達されることによって、吸気バルブ13又は排気バルブ14を開閉するように構成されている。油圧駆動式可変バルブ開閉機構40では、バルブ用油圧制御弁43によって吸気バルブ13又は排気バルブ14に入力される油圧を調整することにより、バルブの開閉タイミング及び開閉量の、連続したきめ細やかな制御が可能である。バルブ用給油路41内や副室42内は、高圧になるため、継ぎ目なく形成されたブロック状のバルブ体(図示省略)の内部にドリル等により内部形状を形成することで、バルブ用給油路41内の油圧によってオイルが漏れだすことを防止できるようにしている。
バルブ用給油路41は、副室42に接続された副室側油路41aと、油圧を吸気バルブ13等に伝達させるための第2伝達室46に接続された第2伝達室側油路41bと、カム44の動力をオイルに作用させるための第1伝達室45に接続された第1伝達室側油路41cを有している。バルブ用給油路41の各油路41a〜41cは、それぞれバルブ用油圧制御弁43を介して接続されている。すなわち、各油路41a〜41cは、一端が各室42,45,46にそれぞれ接続される一方、他端がバルブ用油圧制御弁43に接続されている。
副室42は、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40の各部(バルブ用給油路41など)に供給されるオイルが貯留されるオイル貯留部である。吸気側の油圧駆動式可変バルブ開閉機構40における副室42は、後述する第2給油路52から分岐した吸気側連通油路55と接続されており、排気側の油圧駆動式可変バルブ開閉機構40における副室42は、同じく第2給油路52から分岐した排気側連通油路56と接続されている。エンジン2の作動中は、後述する電動式オイルポンプ91(以下、電動ポンプ91という)からオイルが、吸気側又は排気側連通油路55,56を介して供給されて、バルブ用給油路41、副室42、第1伝達室45、第2伝達室46がオイルで満たされるようになっている。
第1伝達室45では、クランクシャフト9(図1参照)と同期して回転するカム44のカム面の変化に応じて往復動する動力を、動力伝達用ピストン47を介して、バルブ用給油路41のオイルに伝達させる。上記動力が伝達されたオイルは、第2伝達室46において上記動力を吸気バルブ13等に伝達させる。
カム44は、カムシャフト49に取り付けてあり、カムシャフト49が回転することにより回転する。カムシャフト49の一端側には、カムスプロケット(図示省略)が設けられており、該カムスプロケットと、クランクシャフト9(図1参照)の一端側に設けられたクランクスプロケット(図示省略)との間には、タイミングチェーン(図示省略)が掛け回されている。これにより、クランクシャフト9の回転が、クランクスプロケット、タイミングチェーン及びカムスプロケットを介してカムシャフト49に伝達され、カム44がクランクシャフト4と同期して回転するようになっている。
バルブ用油圧制御弁43は、後述するコントロールユニット100と電気的に接続されている。バルブ用油圧制御弁43は、コントロールユニット100の制御により、副室側油路41aと第2伝達室側油路41bとの間を遮断する閉じ状態と、副室側油路41aと第2伝達室側油路41bとの間を連通させる開き状態とに変位する。すなわち、バルブ用油圧制御弁43が閉じ状態に保持されることで、カム44から第1伝達室45に伝達される動力は、そのままオイルを介して第2伝達室46に伝達され、吸気バルブ13又は排気バルブ14が開閉動作する。一方で、バルブ用油圧制御弁43が開き状態に保持されると、第2伝達室側油路41b内のオイルが副室側油路41aを介して副室42に流入し、該副室42に設けられた連通孔48を介して油圧駆動式可変バルブ開閉機構40の外部に流出することで、カム44から第1伝達室45内のオイルに伝達される動力は、第2伝達室46に伝達されなくなるため、吸気バルブ13又は排気バルブ14の開閉動作が停止し、吸気ポート11又は排気ポート12は閉じ状態が保持される。
油圧駆動式可変バルブ開閉機構40では、バルブ用油圧制御弁43の作動タイミングや作動時間を調整することにより、吸気バルブ13等の開閉タイミング及び開閉量を多様に変化させることが可能である。すなわち、この油圧駆動式可変バルブ開閉機構40によって、最適な条件での燃焼が可能となるため、燃費の向上等が期待される。
次に、図3を参照しながら、上述のエンジン2にオイルを供給するためのオイル供給装置1について詳細に説明する。
オイル供給装置1は、クランクシャフト9の回転力によって駆動される可変容量型の機械式オイルポンプ81(以下、機械ポンプ81という)と、車両のバッテリ30から供給される電力によって駆動される電動式オイルポンプ91(以下、電動ポンプ91という)と、機械ポンプ81に接続され、機械ポンプ81により昇圧されたオイルを主にエンジン2の潤滑部60に導く第1給油路51と、第1給油路51と並列に設けられかつ電動ポンプ91に接続され、電動ポンプ91により昇圧されたオイルを主にエンジン2の油圧駆動式可変バルブ開閉機構40に導く第2給油路52と、第1給油路51と第2給油路52とを接続する補助給油路53と、を備えている。尚、潤滑部60は、クランクシャフト9を回転自在に支持する軸受部の軸受メタル、コネクティングロッド8が回転自在に連結されたクランクピンに配設された軸受メタル、ピストン冷却用のオイルジェット、カム44が設けられたカムシャフトのカムジャーナル(図示省略)の軸受部等を含むものである。
機械ポンプ81は、該機械ポンプ81内のポンプ室の容積を変更して機械ポンプ81のオイルの吐出量を可変にする公知の可変容量型のオイルポンプである。図示は省略するが、機械ポンプ81は、上記ポンプ室の容積を変更するための圧力室を備えており、該圧力室に供給される油圧(オイル量)によって、機械ポンプ81のオイルの吐出量が変更されるようになっている。
電動ポンプ91は、後述するコントロールユニット100から送られる制御信号に基づいて駆動されるオイルポンプである。図示は省略するが、電動ポンプ91はモータを備えており、該モータによって電動ポンプ91の駆動軸が回転駆動される。上記モータはバッテリ30と電気的に接続されており、上記制御信号に基づいて、電動ポンプ91から所望の量のオイルを吐出させるのに必要なだけ大きさの電力が、バッテリ30から上記モータに供給されることで、電動ポンプ91が駆動される。すなわち、電動ポンプ91は、バッテリ30から上記モータに供給される電力の大きさによって、吐出するオイルの量、換言すると、供給する油圧の大きさが変更可能になっている。
バッテリ30は、電動ポンプ91やスタータモータなどエンジン2の始動に必要な電力駆動装置を駆動させるための電力が蓄積されるものであって、エンジン2によって駆動されて発電する発電機(図示省略)により発電された電気が蓄電(充電)される。
機械ポンプ81及び電動ポンプ91は、エンジン2のオイルパン5内に収容された状態で、エンジン2にそれぞれ配設されている。機械ポンプ81及び電動ポンプ91のオイルストレーナ81a,91aはそれぞれ共通のオイルパン5に貯留されたオイルに浸漬されており、それぞれ独立してオイルパン5に貯留されたオイルを吸入して昇圧した後、機械ポンプ81は第1給油路51にオイルを吐出し、電動ポンプ91は第2給油路52にオイルを吐出する。
第1給油路51、第2給油路52及び補助給油路53は、パイプ並びに、シリンダヘッド3及びシリンダブロック4に穿設された流路で形成されている。
第1給油路51は、一端が機械ポンプ81の吐出口に接続されて、シリンダブロック4において気筒列方向に延びている。第1給油路51には、オイルフィルタ82及びオイルクーラ83が、機械ポンプ81側から順に設けられている。つまり、機械ポンプ81から第1給油路51へ吐出されたオイルは、オイルフィルタ82で濾過され、オイルクーラ83で油温が調整された後、潤滑部60等に供給される。第1給油路51におけるオイルクーラ83よりも下流側には、第1給油路51を流通するオイルの温度を検出するための油温検出手段としての油温センサ104が配置されている。
また、第1給油路51におけるオイルフィルタ82とオイルクーラ83との間の給油路からは、エンジン2の運転状態に応じて機械ポンプ81からのオイルの吐出量を調整するための油圧制御弁85を介して、機械ポンプ81の上記圧力室に接続された制御用油路54が分岐している。第1給油路51のオイルの一部は、制御用油路54を通り、油圧制御弁85によって油圧が調整された後、機械ポンプ81の上記圧力室に流入する。つまり、油圧制御弁85によって、上記圧力室内の油圧が調整される。
油圧制御弁85は、本実施形態ではリニアソレノイドバルブであり、エンジン2の運転状態に応じて、後述するコントロールユニット100から入力される制御信号のデューティ比に応じて、上記圧力室へのオイルの供給量を調整することで、機械ポンプ81からのオイルの吐出量を制御する。リニアソレノイドバルブは、開弁時に機械ポンプ81の上記圧力室にオイルが供給されるようになっているが、リニアソレノイドバルブ自体の構成は周知であるため説明を省略する。
第2給油路52は、一端が電動ポンプ91の吐出口に接続されて、シリンダブロック4からシリンダヘッド3に延びている。第2給油路52は、第1給油路51と並列に設けられている。第2給油路52からは、吸気側の油圧駆動式可変バルブ開閉機構40にオイルを供給するための吸気側連通油路55と排気側の油圧駆動式可変バルブ開閉機構40にオイルを供給するための排気側連通油路56とが分岐しており、電動ポンプ91から吐出したオイルは、第2給油路52を通った後、吸気側及び排気側連通油路55,56を介してそれぞれの油圧駆動式可変バルブ開閉機構40に供給される。
補助給油路53は、互いに並列に設けられた第1給油路51と第2給油路52とを接続する給油路であり、第1給油路51におけるオイルクーラ83よりも下流側と第2給油路52とを接続している。補助給油路53には、チェックバルブ86が設けられている。
チェックバルブ86は、逆止弁であって、第1給油路51から第2給油路52へのオイルの流入を許容する一方、第2給油路52から第1給油路51へのオイルの流入を阻止する。詳細には図示していないが、チェックバルブ86はバネ及び該バネに接続された弁とで構成されており、上記バネは、補助給油路53を閉じるように、上記弁を第2給油路52から第1給油路51に向かって付勢している。すなわち、第1給油路51内の油圧が、上記弁を上記バネの付勢力に抗して第2給油路52の方向に移動させる程度の力を発生させる程度になったときに、上記弁がチェックバルブ86を開くように移動して、補助給油路53を介して第1給油路51と第2給油路52とが連通する。一方で、第2給油路52の油圧が第1給油路51の油圧よりも高いときには、上記弁は移動せず、チェックバルブ86は閉じたままであるため、第2給油路52から第1給油路51へオイルが流入することはない。尚、上記バネの付勢力は、エンジン始動時における第1給油路51内の油圧によって発生する力よりも小さい付勢力である。つまり、チェックバルブ86は、エンジン始動時における第1給油路51内の油圧程度の油圧で開くようになっている。
エンジン2の油圧駆動式可変バルブ開閉機構40や潤滑部60等の各部に供給されたオイルは、図示しないドレン油路を通って、オイルパン5に滴下し、各ポンプ81,91により再び環流される。
オイル供給装置1は、コントロールユニット100によって制御される。コントロールユニット100には、エンジン2の運転状態を検出する各種センサからの検出情報が入力される。例えば、コントロールユニット100には、クランクシャフト9の回転角度を検出するクランク角センサ101と、車両の乗員によるアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ102と、バッテリ30の電圧を検出するバッテリ残量検出手段としてのバッテリ電圧センサ103と、第1給油路51内の油温を検出する油温センサ104等の検出結果が入力される。コントロールユニット100は、クランク角センサ101の検出信号に基づいてエンジン回転数を検出し、アクセル開度センサ102の検出信号に基づいてエンジン負荷を検出する。
コントロールユニット100は、周知のマイクロコンピュータをベースとする制御装置であって、各センサ(クランク角センサ101、アクセル開度センサ102、バッテリ電圧センサ103、油温センサ104等)からの検出信号を入力する信号入力部と、制御に係る演算処理を行う演算部と、制御対象となる装置(電動ポンプ91,油圧制御弁85等)に制御信号を出力する信号出力部と、制御に必要なプログラムやデータ(油圧制御マップ等)を記憶する記憶部とを備えている。
コントロールユニット100は、車両の乗員からの始動要求があったときには、スタータモータなどエンジン2の始動に必要な電力駆動装置に制御信号を出力し、該電力駆動装置を駆動させてエンジン2の始動を行う。また、他にも、各センサからの検出信号に基づいてエンジン2の作動制御を行う。このことから、コントロールユニット100はエンジン制御部を構成する。
コントロールユニット100は、油圧制御弁85に対し、エンジン2の運転状態に応じたデューティ比の制御信号を送信して、油圧制御弁85を介して機械ポンプ81の上記圧力室へ供給する油圧を制御する。この上記圧力室の油圧により、機械ポンプ81の上記ポンプ室の容積の変化量を制御することで、機械ポンプ81の吐出量を制御する。つまり、上記デューティ比によって機械ポンプ81の容量が制御される。このことから、コントロールユニット100は機械ポンプ制御部を構成する。
ここで、機械ポンプ81は、エンジン2のクランクシャフト9の回転によって駆動されるため、図4に示すように、機械ポンプ81のからのオイルの吐出量は、エンジン回転数(つまりポンプ回転数)が大きいほど増加する。そして、デューティ比が、1サイクルの時間に対する油圧制御弁85への通電時間を表す場合、図示するように、デューティ比が大きいほど機械ポンプ81の上記圧力室への油圧が増大するため、エンジン回転数に対する機械ポンプ81の流量の傾きが減るようになる。
コントロールユニット100は、電動ポンプ91に対し、油圧制御弁85に対する制御と同様に、エンジン2の運転状態に応じたデューティ比の制御信号を送信して、電動ポンプ91(詳しくは、電動ポンプ91のモータ)へ供給される電力量を制御して、電動ポンプ91の吐出量を制御する。デューティ比が、1サイクルの時間に対する上記モータの通電時間を表す場合、デューティ比が大きいほど上記モータへの供給される電力量が大きくなるため、1サイクルの時間あたりの電動ポンプ91の吐出量が多くなる。このことから、コントロールユニット100は電動ポンプ制御部を構成する。
ここで、上述したように、バッテリ30には、電動ポンプ91以外にも、スタータモータなどエンジン2の始動に必要な電力駆動装置を駆動させるための電力が蓄積されている。そのため、エンジン2を始動させる際に、電動ポンプ91に電力を供給した結果、上記電力駆動装置を駆動させるための電力が不足してしまうと、エンジン始動性が悪化してしまう。このような現象は、エンジン2が長期間始動されなかった場合や、短時間の運転が頻繁に続きバッテリ30の充電が充分に行われなかった場合、外気温が低い場合に起こり得る。
そこで、本実施形態では、コントロールユニット100は、エンジン2の始動要求があったときに、バッテリ電圧センサ103によって検出されたバッテリ30の電圧から算出されるバッテリ30の残存容量である検出容量が、所定容量以下であるときには、バッテリ30から電動ポンプ91への電力供給を禁止して電動ポンプ91を駆動させないバッテリ保護制御を実行するようにしている。
このとき、上記所定容量は、エンジン2の始動に必要な電力駆動装置を駆動させるための電力量に基づいて決定された残存容量である。詳しくは、上記所定容量は、電動ポンプ91を駆動しかつ上記電力駆動装置を駆動させることができる程度の残存容量に設定される。すなわち、上記所定容量を、このような残存容量に設定しておき、エンジン2の始動要求があったときに、上記検出容量が上記所定容量以下であるときには、上記バッテリ保護制御を実行することにより、上記電力駆動装置を駆動させるだけの電力については確保することができる。この結果、エンジン始動性の悪化を防止することができる。
ここで、電動ポンプ91の駆動に必要な電力は、オイルの粘度に依存するため、コントロールユニット100は、オイルの粘度を推定して、該推定されたオイルの粘度から、電動ポンプ91の駆動に必要な電力を算出する。
オイルの粘度は、油温及びオイルの劣化状態の少なくとも一方に基づいて推定される。オイルの粘度は、油温については、油温が高いほどオイルの粘性が低くなる一方、油温が低いほどオイルの粘性が高くなる傾向にあり、オイルの劣化状態については、劣化が進んでいるほどオイルの粘性が高くなる一方、オイルが新しいほどオイルの粘性が低くなる傾向がある。コントロールユニット100は、上述のような関係に基づいた、油温に対するオイルの粘度のマップ及びオイルの劣化状態に対するオイルの粘度のマップを有しており、それらのマップを読み込むことで、オイルの粘度を推定する。
コントロールユニット100は、オイルの粘度を推定する際に、油温については、油温センサ104の検出結果を用いる。スタータモータによってクランクシャフト9が回転していれば、機械ポンプ81は駆動するため、機械ポンプ81から吐出されたオイルを油温センサ104で検出すれば、油温を求めることができる。一方で、オイルの劣化状態については、エンジン2の停止直前におけるスモーク発生量の積算値を用いる。
上記スモーク発生量の積算値は、エンジン2の運転状態から推定される。具体的にスモーク発生量の推定について説明すると、コントロールユニット100は、先ず、エンジン回転数、エンジン負荷及び燃焼室10の温度を検出する。上述したように、本実施形態では、エンジン回転数はクランク角センサ101によって検出され、エンジン負荷はアクセル開度センサ102によって検出される。
燃焼室10の温度は、本実施形態では、油温センサ104の検出結果を用いる。油温は燃焼室10の温度と相関関係を有するため、油温から燃焼室10の温度を算出することができる。尚、燃焼室10の温度は、上記油温に代えて、燃焼室10の温度と相関関係のある、エンジン冷却水の温度や排気ガスの温度から算出するようにしてもよい。
そして、コントロールユニット100は、検出されたエンジン回転数、エンジン負荷及び燃焼室10の温度を、予め格納されたマップに照らし合わせて、スモーク発生量を推定し、該推定値を以前の推定結果に加えて積算する。これにより、スモーク発生量の積算値が求められ、該積算値からオイルの劣化状態が推定される。
尚、オイルの粘度について、油温とオイルの劣化状態との両方に基づいて推定するときには、例えば、オイルの劣化状態から推定されたオイルの粘度を、油温に基づいて補正するなどして推定される。
上述のように、上記バッテリ保護制御を実行すれば、エンジン2の始動に必要な電力駆動装置を駆動させるための電力については確保できる。しかし、上記バッテリ保護制御を実行したときには、電動ポンプ91が駆動しないため、電動ポンプ91から油圧駆動式可変バルブ開閉機構40にオイルが供給されなくなる。上述したように、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40は、油圧を変化させることによって吸気バルブ13等の開閉タイミングや開閉量を制御しているため、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40にオイルが供給されなくなると、エンジン始動時において、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40による吸気バルブ13等の開閉動作を正常に実行することができなくなってしまう。
そこで、本実施形態では、チェックバルブ86を、上記バッテリ保護制御が実行されるエンジン始動時において、機械ポンプ81から吐出されるオイルの、第1給油路51から第2給油路52への流入を許容するように構成して、上記バッテリ保護制御が実行されるエンジン始動時には、機械ポンプ81から油圧駆動式可変バルブ開閉機構40にオイルが供給されるようにしている。
具体的には、先ず、コントロールユニット100は、エンジン2の始動要求があったときに、バッテリ電圧センサ103によって検出されたバッテリ30の電圧から検出容量を算出する。次に、上記検出容量と上記所定容量とを比較して、上記検出容量が上記所定容量以下であるときには、バッテリ30から電動ポンプ91への電力供給を禁止して電動ポンプ91を駆動させないようにする。
電動ポンプ91が駆動しなければ、電動ポンプ91から第2給油路52にオイルが吐出されず、第2給油路52内の油圧は上昇しない。一方で、機械ポンプ81は、スタータモータによってクランクシャフト9が回転することで駆動するため、機械ポンプ81からは第1給油路51にオイルが吐出される。これにより、第1給油路51内の油圧が第2給油路52内の油圧よりも高くなる。
上述したように、チェックバルブ86は、エンジン始動時における第1給油路51内の油圧、すなわち、上記スタータモータによるクランクシャフト9の回転によって、機械ポンプ81から吐出される量程度のオイル量によって発生する油圧で開くように構成されているため、上記スタータモータによるクランクシャフト9の回転によって、機械ポンプ81から第1給油路51にオイルが吐出されることで、補助給油路53に設けられたチェックバルブ86が開く。チェックバルブ86が開くことにより、補助給油路53を介して、第1給油路51と第2給油路52とが連通して、第1給油路51から第2給油路52へオイルが流入する。この結果、機械ポンプ81から吐出したオイルが油圧駆動式可変バルブ開閉機構40に供給される。
このように、上記バッテリ保護制御が実行されたときに、機械ポンプ81から吐出されたオイルが、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40に供給されることで、電動ポンプ91が非作動状態となったとしても、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40へのオイルの供給を安定して行うことができる。また、第1給油路51から第2給油路52へのオイルの流入については,コントロールユニット100による制御を介さずに行われるため、電動ポンプ91が非作動状態となってから、第1給油路51から第2給油路52へオイルが流入されるまでに、ほとんどタイミングラグが生じない。これにより、エンジン始動時において、電動ポンプ91が非作動状態となったとしても、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40に即座にオイルを供給できるようになり、エンジンの信頼性を向上させることができる。
また、上記バッテリ保護制御ではなく、電動ポンプ91自体が故障したことによって、電動ポンプ91が非作動状態となったときであっても、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40に即座にオイルを供給することができる。
ここで、コントロールユニット100は、上記バッテリ保護制御を実行するときには、機械ポンプ81のみで、エンジン2の油圧駆動式可変バルブ開閉機構40や潤滑部60等の要求油圧を満たすように、油圧制御弁85を制御して、機械ポンプ81からのオイルの吐出量を制御する。
具体的に、図5のフローチャートを参照しながら、上記バッテリ保護制御実行時にコントロールユニット100が実行する油圧制御弁85に対する制御について説明する。
最初のステップS101で、油圧センサ104等からの各種検出信号を読み込み、次のステップS102で、目標油圧を決定する。このとき、目標油圧は、各油圧作動装置の要求油圧のうち最大のもの以上の油圧を目標油圧として設定する。本実施形態では、特に、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40の要求油圧が他の油圧作動装置よりも大きいため、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40の要求油圧を満たすように目標油圧を設定すれば、その他の油圧作動装置の要求油圧も満たすことになる。
次のステップS103では、上記目標油圧をオイルの流量に変換して目標流量(目標吐出量)を求める。さらに、ステップS104において、上記目標流量に、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40等の作動時の消費流量を加算して修正目標流量を算出する。
そして、ステップS105では、上記修正目標流量を予め格納されたデューティ比マップに照らし合わせて目標デューティ比を設定する。
次に、ステップS106において、第1油圧制御弁85への制御信号の現在のデューティ比を読み込むとともに、現在のデューティ比と目標デューティ比とを比較して、現在のデューティ比が目標デューティ比と一致するか否かを判定する。現在のデューティ比と目標デューティ比とが一致しないときには、ステップS107に進む一方、現在のデューティ比と目標デューティ比とが一致するときには、リターンする。
上記ステップS107では、制御信号のデューティ比を、現在のデューティ比から目標デューティ比に変更して、変更後の制御信号を油圧制御弁85へ出力する。変更後の制御信号の出力が完了した後は、リターンする。
以上のようにして、油圧制御弁85が制御されて、機械ポンプ81からのオイルの吐出量が制御される。
ここで、上記S103において、目標油圧を目標流量に変換する際には、油温センサ104による検出油温が低いほど、流量が少なくなるように計算される。上述したように、油温が低い低油温時には、油温が高い高油温時よりもオイルの粘度が高くなるため、油圧がかかりやすくなる。そのため、低油温時は、高油温時よりもオイルの量を少なくしたとしても、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40等の要求油圧を満たすことができる。そこで、コントロールユニット100は、上記検出油温が低いほど、目標流量を少なく設定するようにして、機械ポンプ81からのオイルの吐出量を少なくする。これにより、機械ポンプ81の駆動トルクを小さくすることができる。
上記バッテリ保護制御を実行しているときには、バッテリ30の消費を必要最小限に抑えるために、上記スタータモータ等の駆動力を必要最小限に抑えることが望ましいところ、上述のように、機械ポンプ81からのオイルの吐出量を制御することで、エンジン始動時においてクランクシャフト9を回転させる上記スタータモータ等の駆動力を必要最小限に抑えることができ、この結果、バッテリ30に蓄えられた電力の消費を必要最小限に抑えることができる。尚、目標流量を計算する際に、油温だけでなく、オイルの劣化についても考慮するようにしてもよい。
そして、コントロールユニット100は、バッテリ保護制御を実行している間に、エンジン2の始動が完了したときには、バッテリ30から電動ポンプ91への電力供給を開始するようにしている。
すなわち、エンジン2の始動が完了すれば、エンジン2によって駆動され発電する発電機(図示省略)によって、バッテリ30への充電が可能になる。また、エンジン2の始動が完了しているため、スタータモータ等に電力を供給する必要がなくなる。そこで、コントロールユニット100は、エンジン2の始動が完了したときには、電動ポンプ91に電力を供給させて、電動ポンプ91を駆動する。尚、エンジン2の始動が完了したか否かは、クランク角センサ101によって検出されるエンジン回転数が所定回転数以上であるか否かに基づいて判定される。
しかしながら、バッテリ30の電力は、スタータモータ等を駆動させるために消費されているため、電動ポンプ91が油圧駆動式可変バルブ機構40の要求油圧を満たす程度のオイルを吐出できるような駆動電力が、バッテリ30に残っているとは限らない。エンジン2の始動後であれば、上記駆動電力を電動ポンプ91に供給できる程度にまで、バッテリ30に充電させることもできるが、該充電が完了するまでは、機械ポンプ81によって油圧駆動式可変バルブ機構40にオイルを供給しなければならず、機械ポンプ81への負担が大きくなる。
そこで、コントロールユニット100は、バッテリ保護制御を実行している状態から、電動ポンプ91への電力供給を開始するときには、電動ポンプ91が、油圧駆動式可変バルブ機構40の要求油圧を満たす油圧を発生させるような量のオイルを吐出する電力まで、バッテリ30から電動ポンプ91への供給電力を漸増させる(予め設定された設定量ずつ増大させる)ようにしている。これにより、バッテリ30の充電状況に合わせて、適切に電動ポンプ91を駆動させることができる。また、電動ポンプ91への供給電力を漸増させることにより、電動ポンプ91からのオイルの吐出量が、油圧駆動式可変バルブ機構40の要求油圧を満たす油圧を発生させるような吐出量まで、徐々に増加されていくため、第1油路と第2油路との油圧差も次第に小さくなり、チェックバルブ86の開度が徐々に小さくなる。これにより、補助給油路53を介して、機械ポンプ81から第2給油路52に供給するオイルの量を徐々に減少させることができる。この結果、機械ポンプ81の駆動トルクを徐々に低減させることができ、該駆動トルクを発生させるためのエネルギーに無駄が生じにくくなる。
次に、図6を参照しながら、エンジン2が始動されて電動ポンプ91が駆動される際のコントロールユニット100による処理動作について説明する。
最初のステップS201で、エンジン2の始動要求があるか否かを判定する。エンジン2の始動要求があるか否かは、例えば、車両に搭載されたエンジン始動スイッチが押されたか否か等に基づいて判定する。該判定の結果、エンジン2の始動要求があるYESのときには、ステップS202に進む一方、エンジン2の始動要求がないNOのときには、エンジン2の始動要求があるまで、ステップS201の判定を繰り返す。
上記ステップS202では、スタータモータ等に電力を供給してエンジン2の始動を開始する。
次のステップS203では、バッテリ電圧センサ103の検出信号を読み込み、バッテリ30の残存容量が上記所定容量よりも大きいか否かについて判定する。該判定の結果、上記残存容量が上記所定容量よりも大きいYESのときには、ステップS204に進む一方、上記残存容量が上記所定容量以下であるNOのときには、ステップS205に進む。
上記ステップS204では、電動ポンプ91に電力を供給して、油圧駆動式可変バルブ機構40の要求油圧を満たすように電動ポンプ91からオイルを吐出させる。ステップS204の後はステップS208に進む。
一方、上記ステップS205では、上記バッテリ保護制御を実行し、電動ポンプ91への電力供給を禁止する。このときには、機械ポンプ81から吐出されたオイルが、補助給油路53を介して、第1給油路51から第2給油路52へ流入して、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40に供給される。
次のステップS206では、エンジン2の始動が完了したか否かについて判定する。エンジン2の始動が完了したか否かは、クランク角センサ101によって検出されるエンジン回転数がエンジンストールの懸念が無い回転数として設定された所定回転数以上であるか否かに基づいて判定する。すなわち、エンジン回転数が上記所定回転数以上であるときには、エンジン2の始動が完了したと判断する一方、エンジン回転数が上記所定回転数よりも小さいときには、エンジン2の始動が完了していないと判定する。このステップS206の判定の結果、エンジン2の始動が完了したYESのときには、ステップS207に進む一方、エンジン2の始動が完了していないNOのときには、エンジン2の始動が完了するまでステップS206の判定を繰り返す。
上記ステップS207では、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40の要求油圧に到達する程度のオイルを電動ポンプ91が吐出できる電力まで、電動ポンプ91に、電力を漸増させながら供給させる。電動ポンプ91へ電力が供給されることにより、第2給油路52には、電動ポンプ91から吐出されたオイルが流入する。そして、電動ポンプ91へ供給する電力を漸増させることで、電動ポンプ91からのオイルの吐出量が徐々に増加するため、第2給油路52の油圧が徐々に増加する。これにより、機械ポンプ81から吐出させるべきオイルの量を徐々に減少させることができるため、機械ポンプ81の駆動トルクを徐々に減少させることができる。
このステップS207において、電動ポンプ91から供給される油圧が油圧駆動式可変バルブ開閉機構40の要求油圧に到達した後には、電動ポンプ91が、エンジン2の運転状況に基づく油圧駆動式可変バルブ開閉機構40の要求油圧を満たす程度のオイルを吐出するように、電動ポンプ91に電力を供給させる。そして、ステップS207の後は、ステップS208に進む。
上記ステップS208では、各種センサからの信号を読み込んで新たにエンジン要求の有無を確認して、エンジン運転要求がなくなったか否かを判定する。このステップS208の判定がNOであるときには、上記ステップS204に戻る一方、ステップS208の判定がYESであるときには、ステップS209に進んで、エンジン2を停止し、しかる後にリターンする。
したがって、本実施形態に係るオイル供給装置1によると、第1給油路51と第2給油路52とを接続するとともに、第1給油路51から第2給油路52へのオイルの流入を許容する一方、第2給油路52から第1給油路51へのオイルの流入を阻止するチェックバルブ86が設けられた補助給油路53を備え、チェックバルブ86は、上記電動式オイルポンプの非作動時において、機械ポンプ81から吐出されるオイルの、第1給油路51から第2給油路52への流入を許容するように構成されているため、電動ポンプ91が非作動状態となったときであっても、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40には、第1給油路51、補助給油路53及び第2給油路52を介して、機械ポンプ81からオイルが供給される。この結果、エンジン始動時において、電動ポンプ91が非作動状態となったとしても、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40に即座にオイルを供給できるようにして、エンジン2の始動性を向上させることができる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、上述の実施形態では、油圧駆動式可変動弁機構として、吸気バルブ13及び排気バルブ14の両方に、油圧駆動式可変バルブ開閉機構40を用いていたが、これに限らず、吸気バルブ13及び排気バルブ14に設けられる油圧駆動式可変動弁機構の少なくとも一方を、公知の油圧ラッシュアジャスタや油圧式のバルブタイミング機構が設けられた直動式バルブ開閉機構としてもよい。この場合でも、上記バッテリ保護制御等により電動ポンプ81の作動が停止して、油圧ラッシュアジャスタやバルブタイミング機構に必要な油圧が供給されなくなると、正常に作動しない可能性があるため、本実施形態のような第1給油路51と第2給油路52とを、チェックバルブ86が設けられた補助給油路53によって接続する必要がある。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。