以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るバルブタイミング制御装置における油圧作動式の可変バルブタイミング機構が設けられたエンジン2を示す。このエンジン2は、第1気筒乃至第4気筒が順に図1の紙面に垂直な方向に直列に配置された直列4気筒ガソリンエンジンであって、自動車等の車両に搭載される。エンジン2において、カムキャップ3、シリンダヘッド4、シリンダブロック5、クランクケース(図示せず)及びオイルパン6(図8参照)が上下に連結され、シリンダブロック5に形成された4つのシリンダボア7内をそれぞれ摺動可能なピストン8と、上記クランクケースに回転自在に支持されたクランク軸9とがコネクティングロッド10によって連結され、シリンダブロック5のシリンダボア7とピストン8とシリンダヘッド4とによって燃焼室11が気筒毎に形成されている。
シリンダヘッド4には、燃焼室11に開口する吸気ポート12及び排気ポート13が設けられ、吸気ポート12及び排気ポート13をそれぞれ開閉する吸気弁14及び排気弁15が、各ポート12,13にそれぞれ装備されている。これら吸気弁14及び排気弁15は、それぞれリターンスプリング16,17により閉方向(図1上方)に付勢されており、回転するカム軸18,19の外周に設けたカム部18a,19aによって、スイングアーム20,21の略中央部に回転自在に設けられたカムフォロア20a,21aが下方に押されて、スイングアーム20,21の一端側に設けられたピボット機構25aの頂部を支点にして該スイングアーム20,21が揺動することで、スイングアーム20,21の他端部で吸気弁14及び排気弁15がリターンスプリング16,17の付勢力に抗して下方に押されて開動するように構成されている。
エンジン2の気筒列方向中央部に位置する第2及び第3気筒のスイングアーム20,21のピボット機構(後述のHLA25のピボット機構25aと同様の構成)として、油圧によりバルブクリアランスを自動的にゼロに調整する周知の油圧ラッシュアジャスタ24(以下、Hydraulic Lash Adjusterの略記を用いてHLA24という)が設けられている。尚、HLA24は、図8にのみ示す。
また、エンジン2の気筒列方向両端部に位置する第1及び第4気筒のスイングアーム20、21に対しては、ピボット機構25aを備える弁停止機構付きHLA25が設けられている。この弁停止機構付きHLA25は、HLA24と同様にバルブクリアランスを自動的にゼロに調整可能に構成されていることに加えて、エンジン2における全気筒の一部である第1及び第4気筒の作動を休止させる減気筒運転時に、第1及び第4気筒の吸排気弁14,15を作動停止(開閉動作を停止)させる一方、全気筒(4気筒)を作動させる全気筒運転時には、第1及び第4気筒の吸排気弁14,15を作動させる(開閉動作させる)ようにするものである。第2及び第3気筒の吸排気弁14,15は、減気筒運転時及び全気筒運転時共に作動している。このため、減気筒運転時には、エンジン2の全気筒のうち第1及び第4気筒のみの吸排気弁14,15が作動停止し、全気筒運転時には、全気筒の吸排気弁14,15が作動することになる。尚、減気筒運転及び全気筒運転は、後述の如く、エンジン2の運転状態に応じて切り替えられる。
シリンダヘッド4における第1及び第4気筒に対応する吸気側及び排気側の部分には、上記弁停止機構付きHLA25の下端部を挿入して装着するための装着穴26,27がそれぞれ設けられている。また、シリンダヘッド4における第2及び第3気筒に対応する吸気側及び排気側の部分には、上記HLA24の下端部を挿入して装着するための、装着穴26,27と同様の装着穴が設けられている。さらに、シリンダヘッド4には、弁停止機構付きHLA25用の装着穴26,27にそれぞれ連通する2つの油路61,63;62,64が穿設されており、弁停止機構付きHLA25が装着穴26,27に嵌合された状態で、油路61,62は、弁停止機構付きHLA25における不図示の弁停止機構を作動させる油圧(作動圧)を供給し、油路63,64は、弁停止機構付きHLA25のピボット機構25aがバルブクリアランスを自動的にゼロに調整するための油圧を供給するように構成されている。尚、HLA24用の装着穴には、油路63,64のみが連通している。上記油路61〜64については、図8により後に詳述する。
シリンダブロック5には、シリンダボア7の排気側の側壁内を気筒列方向に延びるメインギャラリ54が設けられている。このメインギャラリ54の下側近傍には、このメインギャラリ54と連通するピストン冷却用のオイルジェット28(オイル噴射弁)が各ピストン8毎に設けられている。このオイルジェット28は、ピストン8の下側に配置されたノズル部28aを有しており、このノズル部28aからピストン8の頂部の裏面に向けてエンジンオイル(以下、単にオイルという)を噴射するように構成されている。
各カム軸18,19の上方には、パイプで形成されたオイルシャワー29,30が設けられており、該オイルシャワー29,30から潤滑用のオイルを、その下方に位置するカム軸18,19のカム部18a,19aと、さらに下方に位置するスイングアーム20,21とカムフォロア20a、21aとの接触部とに滴下するように構成されている。
ここで、油圧作動装置の一つである弁停止機構について説明する。この弁停止機構は、エンジン2における全気筒の一部である第1及び第4気筒の吸排気弁14,15のうち少なくとも一方の弁(本実施形態では、両方の弁)をエンジン2の運転状態に応じて油圧作動により作動停止させるものである。これにより、エンジン2の運転状態に応じて減気筒運転に切り替えられたときには、弁停止機構によって第1及び第4気筒の吸排気弁14、15の開閉動作が停止させられ、全気筒運転に切り替えられたときには、弁停止機構による弁作動停止がなされなくなり、第1及び第4気筒の吸排気弁14、15の開閉動作が行われる。
上記弁停止機構は、弁停止機構付きHLA25に設けられている。これにより、弁停止機構付きHLA25は、ピボット機構25aと弁停止機構とを備える。ピボット機構25aは、油圧によりバルブクリアランスを自動的にゼロに調整する、周知のHLA24のピボット機構と実質的に同じ構成である。
上記弁停止機構は、図示は省略するが、ピボット機構25aを軸方向に摺動自在に収納する有底の外筒の側周面において径方向に対向する2箇所に形成した貫通孔に対してそれぞれ出入り可能に設けられた一対のロックピンを備えている。これら一対のロックピンは、スプリングにより径方向外側へ付勢されている。外筒の内底部とピボット機構25aの底部との間には、ピボット機構25aを外筒の上方に押圧して付勢するロストモーションスプリングが設けられている。
上記両ロックピンが上記外筒の貫通孔に嵌合しているときには、該両ロックピンの上方に位置するピボット機構25aが上方に突出した状態で固定される。このときには、ピボット機構25aの頂部がスイングアーム20,21の揺動の支点となるため、カム軸18,19の回転によりカム部18a,19aがカムフォロア20a,21aを下方に押すと、吸排気弁14,15がリターンスプリング16,17の付勢力に抗して下方に押されて開弁する。したがって、第1及び第4気筒について弁停止機構をロックピンが貫通孔に嵌合した状態にすることで、全気筒運転を行うことができる。
一方、作動油圧により上記両ロックピンの外側端面を押圧すると、上記スプリングの圧縮力に抗して、両ロックピンが互いに接近するように外筒の径方向内側に後退して、外筒の貫通孔と嵌合しなくなり、これにより、ロックピンの上方に位置するピボット機構25aがロックピンと共に外筒の軸方向の下側に移動する。これにより、弁停止状態となる。すなわち、吸排気弁14,15を上方に付勢するリターンスプリング16,17の方がピボット機構25aを上方に付勢するロストモーションスプリングよりも付勢力が強くなるように構成されているため、カム軸18,19の回転によりカム部18a,19aがカムフォロア20a,21aを下方に押すと、吸排気弁14,15の頂部がスイングアーム20,21の揺動の支点となり、吸排気弁14,15は閉弁されたまま、ピボット機構25aがロストモーションスプリングの付勢力に抗して下方に押される。したがって、作動油圧によりロックピンを貫通孔に対して非嵌合の状態にすることで、減気筒運転を行うことができる。
次に、図2〜図4を参照しながら、油圧作動装置の一つである吸気側の可変バルブタイミング機構32(以下、VVT32という)について説明する。
VVT32は、略円環状のハウジング201と、該ハウジング201の内部に収容されたベーン体202とを有している。このハウジング201は、クランク軸9と同期して回転するカムプーリ203と一体回転可能に連結されていて、クランク軸9と連動して回転する。ベーン体202は、ボルト205(図4参照)により、吸気弁14を開閉させるカム軸18と一体回転可能に連結されている。
ハウジング201の内部には、ハウジング201の内周面とベーン体202の外周面に設けられたベーン202aとで区画された進角作動室207及び遅角作動室208がそれぞれ複数形成されている。進角作動室207及び遅角作動室208は、それぞれ進角側油路211及び遅角側油路212を介して、油圧制御弁としての吸気側第1方向切替弁34に接続されている(図8参照)。カム軸18及びベーン体202には、これら進角側油路211及び遅角側油路212の一部を構成する進角側通路215及び遅角側通路216が形成されている。
進角側通路215は、ベーン体202において中心部近傍から放射状に延びて各進角作動室207に接続され、遅角側通路216は、ベーン体202において中心部近傍から放射状に延びて各遅角作動室208に接続される。ベーン体202における中心部近傍から放射状に延びる複数の進角側通路215のうちの1つは、ベーン体202の外周面におけるベーン202aが形成されていない部分に形成されかつ後述のロックピン231(ロック部材)が嵌合する嵌合凹部202bの底面に接続されて、この嵌合凹部202bを介して、複数の進角作動室207のうちの1つに接続される。
VVT32には、該VVT32の動作をロックするロック機構230が設けられている。このロック機構230は、カム軸18のクランク軸9に対する位相角を特定の位相角で固定するためのロックピン231を有している。本実施形態では、上記特定の位相角は最遅角の位相角であるが、これには限られず、どのような位相角であってもよい。
上記ロックピン231は、ハウジング201の径方向に摺動可能に配設されている。ハウジング201におけるロックピン231に対するハウジング201の径方向外側の部分には、バネホルダ232が固定され、このバネホルダ232とロックピン231との間には、ロックピン231をハウジング201の径方向内側に付勢するロックピン付勢バネ233が設けられている。上記嵌合凹部202bがロックピン231と対向する位置に位置するとき、ロックピン付勢バネ233によって、ロックピン231が、嵌合凹部202bに嵌合してロック状態となり、これにより、ベーン体202がハウジング201に対して固定されて、カム軸18のクランク軸9に対する位相角が固定されることになる。
上記進角作動室207及び上記遅角作動室208は、それぞれ進角側油路211及び遅角側油路212を介して、吸気側第1方向切替弁34に接続され、吸気側第1方向切替弁34は、オイルを供給する可変オイルポンプとしての後述の可変容量型オイルポンプ36(図8参照)に接続されている。吸気側第1方向切替弁34の制御により、進角作動室207及び遅角作動室208へのオイル供給量を制御することができる。吸気側第1方向切替弁34の制御により、遅角作動室208に進角作動室207よりも多くの供給量(高い油圧)でもってオイルを供給すると、カム軸18(ベーン体202)がハウジング201(クランク軸9)に対してその回転方向(図2及び図3の矢印の方向)とは逆向きに回動するため、吸気弁14の開時期が遅くなり、カム軸18の最遅角位置ではロックピン231が嵌合凹部202bに嵌合する(図2参照)。一方、吸気側第1方向切替弁34の制御により、進角作動室207に遅角作動室208よりも多くの供給量(高い油圧)でもってオイルを供給すると、カム軸18がその回転方向に回動して、吸気弁14の開時期が早くなる(図3参照)。カム軸18を最遅角位置から進角させる場合には、油圧により、ロックピン231をロックピン付勢バネ233に抗してハウジング201の径方向外側に押し出してロック解除する。このとき、嵌合凹部202bに連通する進角作動室207以外の進角作動室207には既にオイルが充填されており、このロック解除後直ぐに、吸気側第1方向切替弁34の制御により、カム軸18をその回転方向に回動させることで、吸気弁14の開時期を早くすることができる。尚、ロックピン231のロック解除には、ロックピン付勢バネ233の付勢力に打ち勝つ油圧を進角作動室207に供給する必要があり、この油圧は、吸気側第1方向切替弁34の制御により得られる。また、この油圧を進角作動室207に供給しながら、該油圧よりも低い油圧(基本的には、0に近い油圧)を遅角作動室208に供給することで、ロックピン231のロック解除後直ぐにカム軸18がその回転方向に回動して、ロック位置から外れる。その後に、吸気側第1方向切替弁34の制御により、吸気弁14の開弁位相の制御を行う。
図5〜図7は、油圧作動装置の一つである排気側の可変バルブタイミング33(以下、VVT33という)を示す。VVT33の構成は、VVT32の構成と同様であり、VVT32と同じ構成要素については、同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
VVT33のロック機構230も、VVT32と同様に、カム軸19のクランク軸9に対する位相角を特定の位相角で固定するためのロックピン231を有しているが、本実施形態では、その特定の位相角は、VVT32とは異なり、最進角の位相角である。但し、これに限られるものではなく、どのような位相角であってもよい。そして、ベーン体202における中心部近傍から放射状に延びる複数の遅角側通路216のうちの1つが、ロックピン231が嵌合する嵌合凹部202bの底面に接続されて、この嵌合凹部202bを介して、複数の遅角作動室208のうちの1つに接続される。
VVT33の進角作動室207及び遅角作動室208は、それぞれ進角側油路211及び遅角側油路212を介して、油圧制御弁としての排気側第1方向切替弁35に接続され、排気側第1方向切替弁35は、可変容量型オイルポンプ36に接続されている(図8参照)。排気側第1方向切替弁35の制御により、VVT33の進角作動室207及び遅角作動室208へのオイル供給量を制御することができる。排気側第1方向切替弁35の制御により、進角作動室207に遅角作動室208よりも多くの供給量(高い油圧)でもってオイルを供給すると、カム軸19がその回転方向(図5及び図6の矢印の方向)に回動して、排気弁15の開時期が早くなり、カム軸19の最進角位置ではロックピン231が嵌合凹部202bに嵌合する(図5参照)。一方、排気側第1方向切替弁35の制御により、遅角作動室208に進角作動室208よりも多くの供給量(高い油圧)でもってオイルを供給すると、カム軸19がその回転方向とは逆向きに回動して、排気弁15の開時期が遅くなる(図6参照)。カム軸19の最進角位置から遅角させる場合には、油圧により、ロックピン231をロックピン付勢バネ233に抗してハウジング201の径方向外側に押し出してロック解除する。このとき、嵌合凹部202bに連通する遅角作動室208以外の遅角作動室208には既にオイルが充填されており、このロック解除後直ぐに、排気側第1方向切替弁35により、カム軸19をその回転方向とは逆向きに回動させることで、排気弁15の開時期を遅くすることができる。尚、VVT33のロックピン231のロック解除には、ロックピン付勢バネ233の付勢力に打ち勝つ油圧を遅角作動室208に供給する必要があり、この油圧は、排気側第1方向切替弁35の制御により得られる。また、この油圧を遅角作動室208に供給しながら、該油圧よりも低い油圧(基本的には、0に近い油圧)を進角作動室207に供給することで、ロックピン231のロック解除後直ぐにカム軸18がその回転方向とは逆向きに回動して、ロック位置から外れる。その後に、排気側第1方向切替弁35の制御により、排気弁15の開弁位相の制御を行う。
VVT32とは異なり、VVT33の各ベーン202aと、ハウジング201における該ベーン202aに対しカム軸19の回転方向とは反対側に対向する部分との間(つまり進角作動室207)には、圧縮コイルバネ240が配設されている。この圧縮コイルバネ240は、ベーン体202を進角側に付勢して、ベーン体202の進角側への移動をアシストするものである。これは、カム軸19には、後述の燃料ポンプ81及びバキュームポンプ82(図8参照)の負荷がかかるので、その負荷に打ち勝ってベーン体202を最進角位置にまで確実に移動させる(ロックピン231を嵌合凹部202bに確実に嵌合させる)ためである。
VVT32(及び/又はVVT33)によって、吸気弁14の開弁位相を進角方向に変更する(及び/又は、排気弁15の開弁位相を遅角方向に変更する)と、排気弁15の開弁期間と吸気弁14の開弁期間とがオーバーラップする。特に吸気弁14の開弁位相を進角方向に変更することにより吸気弁14及び排気弁15の開弁期間をオーバーラップさせることで、エンジン燃焼時の内部EGR量を増加させることができるとともに、ポンピングロスを低減して燃費性能を向上することができる。また、燃焼温度を抑えることもできるため、NOxの発生を抑えて排気浄化を図れる。一方、VVT32(及び/又はVVT33)によって、吸気弁14の開弁位相を遅角方向に変更する(及び/又は、排気弁15の開弁位相を進角方向に変更する)と、吸気弁14の開弁期間と排気弁15の開弁期間とのバルブオーバーラップ量が減少するために、アイドリング時等のようにエンジン負荷が所定値以下の低負荷時には、安定燃焼性を確保できる。本実施形態では、高負荷時にバルブオーバーラップ量を出来る限り大きくするために、上記低負荷時にも、吸気弁14及び排気弁15の開弁期間をオーバーラップさせるようにしている。
次に、図8を参照しながら、上述のエンジン2にオイルを供給するためのオイル供給装置1について詳細に説明する。図示するように、オイル供給装置1は、クランク軸9の回転によって駆動される可変容量型オイルポンプ36(以下、オイルポンプ36という。)と、オイルポンプ36に接続され、オイルポンプ36により昇圧されたオイルをエンジン2の潤滑部及び油圧作動装置に導く給油路50(油圧経路)とを備えている。オイルポンプ36は、エンジン2により駆動される補機である。
上記給油路50は、パイプや、シリンダヘッド4、シリンダブロック5等に穿設された通路からなる。給油路50は、オイルポンプ36に連通され、オイルポンプ36(詳細には、後述の吐出口361b)からシリンダブロック5内の分岐点54aまで延びる第1連通路51と、シリンダブロック5内で気筒列方向に延びる上記メインギャラリ54と、該メインギャラリ54上の分岐点54bからシリンダヘッド4まで延びる第2連通路52と、シリンダヘッド4内で吸気側と排気側との間を略水平方向に延びる第3連通路53と、シリンダヘッド4内で第3連通路53から分岐する複数の油路61〜69とを備えている。
上記オイルポンプ36は、該オイルポンプ36の容量を変更してオイルポンプ36のオイル吐出量を可変にする公知の可変容量型オイルポンプであって、一端側が開口するように形成されかつ内部が断面円形状の空間からなるポンプ収容室を有するポンプボディと該ポンプボディの上記一端開口を閉塞するカバー部材とからなるハウジング361と、該ハウジング361に回転自在に支持され、上記ポンプ収容室の略中心部を貫通しかつクランク軸9によって回転駆動される駆動軸362と、上記ポンプ収容室内に回転自在に収容されて中心部が駆動軸362に結合されたロータ363及び該ロータ363の外周部に放射状に切欠形成された複数のスリット内にそれぞれ出没自在に収容されたべーン364からなるポンプ要素と、該ポンプ要素の外周側にロータ363の回転中心に対して偏心可能に配置され、ロータ363及び相隣接するべーン364と共に複数の作動油室であるポンプ室365を画成するカムリング366と、上記ポンプボディ内に収容され、ロータ363の回転中心に対するカムリング366の偏心量が増大する側へカムリング366を常時付勢する付勢部材であるスプリング367と、ロータ363の内周側の両側部に摺動自在に配置された、ロータ363よりも小径の一対のリング部材368とを備えている。ハウジング361は、内部のポンプ室365にオイルを供給する吸入口361aと、ポンプ室365からオイルを吐出する吐出口361bとを備えている。ハウジング361の内部には、該ハウジング361の内周面とカムリング366の外周面により画成された圧力室369が形成されており、該圧力室369に開口する導入孔369aが設けられている。オイルポンプ36は、導入孔369aから圧力室369にオイルを導入することで、カムリング366が支点361cに対して揺動して、ロータ363がカムリング366に対して相対的に偏心し、オイルポンプ36の吐出容量が変化するように構成されている。
オイルポンプ36の吸入口361aには、オイルパン6に臨むオイルストレーナ39が接続されている。オイルポンプ36の吐出口361bに連通する第1連通路51には、上流側から下流側に順に、オイルフィルタ37及びオイルクーラ38が配置されており、オイルパン6内に貯留されたオイルは、オイルストレーナ39を通じてオイルポンプ36によってくみ上げられた後、オイルフィルタ37で濾過されかつオイルクーラ38で冷却されてからシリンダブロック5内のメインギャラリ54に導入される。
メインギャラリ54は、4つのピストン8の背面側に冷却用オイルを噴射するための上記オイルジェット28と、クランク軸9を回動自在に支持する5つのメインジャーナルに配置されたメタルベアリングのオイル供給部41と、4つのコネクティングロッドを回転自在に連結する、クランク軸9のクランクピンに配置されたメタルベアリングのオイル供給部42とに接続されており、このメインギャラリ54にはオイルが常時供給される。
メインギャラリ54上の分岐点54cの下流側には、油圧式チェーンテンショナへオイルを供給するオイル供給部43と、リニアソレノイドバルブ49を介してオイルポンプ36の圧力室369へ導入孔369aからオイルを供給する油路40とが接続されている。
第3連通路53の分岐点53aから分岐する油路68は、排気側第1方向切替弁35に接続されており、この排気側第1方向切替弁35の制御により、進角側油路211及び遅角側油路212を介して、排気側のVVT33の進角油圧室207及び遅角油圧室208にオイルがそれぞれ供給される。また、分岐点53aから分岐する油路64は、排気側のカム軸19のカムジャーナルに配置されたメタルベアリングのオイル供給部45(図8の白抜き三角△を参照)と、HLA24(図8の黒三角▲を参照)と、弁停止機構付きHLA25(図8の白抜き楕円を参照)と、カム軸19により駆動され、燃焼室11に燃料を供給する燃料噴射弁に高圧の燃料を供給する燃料ポンプ81と、カム軸19により駆動され、ブレーキマスタシリンダの圧力を確保するためのバキュームポンプ82とに接続されており、この油路64にはオイルが常時供給される。さらに、油路64の分岐点64aから分岐する油路66は、排気側のスイングアーム21に潤滑用オイルを供給するオイルシャワー30に接続されており、この油路66にはオイルが常時供給される。
吸気側についても、排気側と同様であり、第3連通路53の分岐点53cから分岐する油路67は、吸気側第1方向切替弁34に接続されており、この吸気側第1方向切替弁34の制御により、進角側油路211及び遅角側油路212を介して、吸気側のVVT32の進角油圧室207及び遅角油圧室208にオイルがそれぞれ供給される。この油路67には、該油路67(吸気側のVVT32のみへオイルを供給するための油圧経路)の油圧を検出する油圧センサ70が配設されている。また、分岐点53dから分岐する油路63は、吸気側のカム軸18のカムジャーナルに配置されたメタルベアリングのオイル供給部44(図8の白抜き三角△を参照)と、HLA24(図8の黒三角▲を参照)と、弁停止機構付きHLA25(図8の白抜き楕円を参照)とに接続されている。さらに、油路63の分岐点63aから分岐する油路65は、吸気側のスイングアーム20に潤滑用オイルを供給するオイルシャワー29に接続されている。
また、第3連通路53の分岐点53cから分岐する油路69には、オイルの流れる方向を上流側から下流側への一方向のみに規制する逆止弁48が配設されている。この油路69は、逆止弁48の下流側の分岐点69aで、弁停止機構付きHLA25用の装着穴26,27に連通する上記2つの油路61,62に分岐する。油路61,62は、吸気側第2方向切替弁46及び排気側第2方向切替弁47を介して、吸気側及び排気側の弁停止機構付きHLA25の弁停止機構にそれぞれ接続されており、これら吸気側及び排気側第2方向切替弁46,47を制御することで各弁停止機構にオイルが供給されるように構成されている。
クランク軸9及びカム軸18,19を回転自在に支持するメタルベアリングや、ピストン8、カム軸18,19等に供給された潤滑用及び冷却用のオイルは、冷却や潤滑を終えた後、図示しないドレイン油路を通ってオイルパン6内に滴下し、オイルポンプ36により再び環流される。
上記エンジン2の作動は、コントローラ100によって制御される。コントローラ100には、エンジン2の運転状態を検出する各種センサからの検出情報が入力される。コントローラ100は、例えば、クランク角センサ71によりクランク軸9の回転角度を検出し、この検出信号に基づいてエンジン回転速度を検出する。また、スロットルポジションセンサ72により、エンジン2が搭載された車両の乗員によるアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出し、これに基づいてエンジン負荷を検出する。さらに、上記油圧センサ70により上記油路67の圧力を検出する。また、油圧センサ70と略同じ位置に設けた油温センサ73により、上記油路67におけるオイルの温度を検出する。油温センサ73は、給油路50のどこに配設してもよいが、その検出値を後述の予測値tの補正に用いる場合には、特に、油路67、又は、VVT32の進角作動室207又は遅角作動室208と吸気側第1方向切替弁34とを接続する進角側油路211若しくは遅角側油路212に配設するのが好ましい。さらに、カム軸18,19の近傍に設けられたカム角センサ74により、カム軸18,19の回転位相を検出し、このカム角に基づいてVVT32,33の位相角を検出する。また、水温センサ75によって、エンジン2を冷却する冷却水の温度(以下、水温という)を検出する。
コントローラ100は、周知のマイクロコンピュータをベースとする制御装置であって、各種センサ(油圧センサ70、クランクポジションセンサ71、スロットルポジションセンサ72、油温センサ73、カム角センサ74、水温センサ75等)からの検出信号を入力する信号入力部と、制御に係る演算処理を行う演算部と、制御対象となる装置(吸気側及び排気側第1方向切替弁34,35、吸気側及び排気側第2方向切替弁46,47、リニアソレノイドバルブ49等)に制御信号を出力する信号出力部と、制御に必要なプログラムやデータ(後述する油圧制御マップやデューティ比マップ等)を記憶する記憶部とを備えている。
リニアソレノイドバルブ49は、エンジン2の運転状態に応じてオイルポンプ36の吐出量を制御するための流量(吐出量)制御弁である。リニアソレノイドバルブ49の開弁時にオイルポンプ36の圧力室369にオイルが供給されるようになっているが、リニアソレノイドバルブ49自体の構成は周知であるため説明を省略する。尚、流量(吐出量)制御弁としては、リニアソレノイドバルブ49に限らず、例えば電磁制御弁を用いてもよい。
コントローラ100は、リニアソレノイドバルブ49に対し、エンジン2の運転状態に応じたデューティ比の制御信号を送信して、リニアソレノイドバルブ49を介して、オイルポンプ36の圧力室369へ供給する油圧を制御する。この圧力室369の油圧により、カムリング366の偏心量を制御してポンプ室365の内部容積の変化量を制御することで、オイルポンプ36の流量(吐出量)を制御する。つまり、上記デューティ比によってオイルポンプ36の容量が制御される。ここで、オイルポンプ36は、エンジン2のクランク軸9で駆動されるため、図9に示すように、オイルポンプ36の流量(吐出量)はエンジン回転速度(つまりポンプ回転数)に比例する。そして、デューティ比が、1サイクルの時間に対するリニアソレノイドバルブ49への通電時間の割合を表す場合、図示するように、デューティ比が大きいほどオイルポンプ36の圧力室369への油圧が増すため、エンジン回転速度に対するオイルポンプ36の流量の傾きが減る。
次に、図10を参照しながら、エンジン2の減気筒運転について説明する。エンジン2の減気筒運転又は全気筒運転は、エンジン2の運転状態に応じて切り替えられる。すなわち、エンジン回転速度、エンジン負荷及びエンジン2の水温から把握されるエンジン2の運転状態が、図示する減気筒運転領域内にあるときは減気筒運転が実行される。また、図示するように、この減気筒運転領域に隣接して減気筒運転準備領域が設けられており、エンジンの運転状態がこの減気筒運転準備領域内にあるときは減気筒運転を実行するための準備として、油圧を弁停止機構の要求油圧に向けて予め昇圧させておく。そして、エンジン2の運転状態がこれら減気筒運転領域及び減気筒運転準備領域の外にあるときは、全気筒運転を実行する。
図10(a)を参照すると、所定のエンジン負荷(L0以下)で加速して、エンジン回転速度が上昇する場合、エンジン回転速度が所定回転速度V1未満では、全気筒運転を行い、エンジン回転速度がV1以上かつV2(>V1)未満になると、減気筒運転の準備に入り、エンジン回転速度がV2以上になると、減気筒運転を行う。また、例えば、所定のエンジン負荷(L0以下)で減速して、エンジン回転速度が下降する場合、エンジン回転速度がV4以上では、全気筒運転を行い、エンジン回転速度がV3(<V4)以上かつV4未満になると、減気筒運転の準備を行い、エンジン回転速度がV3以下になると、減気筒運転を行う。
図10(b)を参照すると、所定のエンジン回転速度(V2以上V3以下)、所定のエンジン負荷(L0以下)で走行し、エンジン2が暖機して水温が上昇する場合、水温がT0未満では全気筒運転を行い、水温がT0以上かつT1未満になると減気筒運転の準備を行い、水温がT1以上になると減気筒運転を行う。
仮に上記減気筒運転準備領域を設けなかった場合、全気筒運転から減気筒運転に切り替える際、エンジン2の運転状態が減気筒運転領域に入ってから油圧を弁停止機構の要求油圧まで昇圧させることになるが、油圧が要求油圧に達するまでの時間分、減気筒運転を行う時間が短くなるため、この減気筒運転を行う時間が短くなる分、エンジン2の燃費効率が下がってしまう。
そこで、本実施形態では、エンジン2の燃費効率を最大限上げるため、減気筒運転領域に隣接して減気筒運転準備領域が設けて、この減気筒運転準備領域において油圧を予め昇圧させておき、油圧が要求油圧に達するまでの時間分のロスをなくすように目標油圧(図11(a)参照)を設定しておく。
尚、図10(a)に示すように、減気筒運転領域の高エンジン負荷側に隣接する、一点鎖線で示された領域を減気筒運転準備領域としてもよい。これにより、例えば、所定のエンジン回転速度(V2以上V3以下)においてエンジン負荷が下降する場合、エンジン負荷がL1(>L0)以上では、全気筒運転を行い、エンジン負荷がL0以上かつL1未満になると、減気筒運転の準備に入り、エンジン負荷がL0以下になると、減気筒運転を行うようにしてもよい。
次に、図11を参照しながら、各油圧作動装置(ここでは、弁停止機構及びVVT32,33に加えて、オイルジェット28や、クランク軸9のジャーナル等のメタルベアリングも油圧作動装置に含まれるものとする)の要求油圧と、オイルポンプ36の目標油圧とについて説明する。本実施形態におけるオイル供給装置1は、1つのオイルポンプ36によって複数の油圧作動装置にオイルを供給しており、各油圧作動装置が必要とする要求油圧は、エンジン2の運転状態に応じて変化する。そのため、エンジン2の全ての運転状態において全ての油圧作動装置が必要な油圧を得るためには、当該オイルポンプ36は、エンジン2の運転状態ごとに各油圧作動装置の要求油圧のうちで最も高い要求油圧以上の油圧を当該エンジン2の運転状態に応じた目標油圧に設定する必要がある。そのためには、本実施形態においては、全ての油圧作動装置のうちで要求油圧が比較的高い弁停止機構、オイルジェット28、クランク軸9のジャーナル等のメタルベアリング及びVVT32,33の要求油圧を満たすように目標油圧を設定すればよい。なぜなら、このように目標油圧を設定すれば、要求油圧が比較的低い他の油圧作動装置は当然に要求油圧が満たされるからである。
図11(a)を参照すると、エンジン2の低負荷運転時において、要求油圧が比較的高い油圧作動装置は、VVT32,33、メタルベアリング及び弁停止機構である。これら各油圧作動装置の要求油圧は、エンジン2の運転状態に応じて変化する。例えば、VVT32,33の要求油圧(図11では、「VVT要求油圧」と記載)は、エンジン回転速度がV0(<V1)以上で略一定である。メタルベアリングの要求油圧(図11では、「メタル要求油圧」と記載)は、エンジン回転速度が大きくなるにつれて大きくなる。弁停止機構の要求油圧(図11では、「弁停止要求油圧」と記載)は、所定範囲のエンジン回転速度(V2〜V3)においてほぼ一定である。そして、これらの要求油圧をエンジン回転速度ごとに大小を比較すると、エンジン回転速度がV0よりも低いときにはメタル要求油圧しかなく、エンジン回転速度がV0〜V2では、VVT要求油圧が最も高く、エンジン回転速度がV2〜V3では、弁停止要求油圧が最も高く、エンジン回転速度がV3〜V6では、VVT要求油圧が最も高く、エンジン回転速度がV6以上では、メタル要求油圧が最も高い。したがって、エンジン回転速度ごとに上述の最も高い要求油圧を基準目標油圧としてオイルポンプ36の目標油圧に設定する必要がある。
ここで、減気筒運転を行うエンジン回転速度(V2〜V3)の前後のエンジン回転速度(V1〜V2、V3〜V4)においては、減気筒運転の準備のために目標油圧が弁停止要求油圧に向けて予め昇圧するように基準目標油圧から補正して設定されている。これによれば、図10において説明したように、エンジン回転速度が減気筒運転を行うエンジン回転速度になる際に油圧が弁停止要求油圧に達するまでの時間分のロスをなくして、エンジンの燃費効率を向上できる。この補正により設定されたオイルポンプ36の目標油圧(図11では、「オイルポンプ目標油圧」と記載)の一例が、図11(a)の太線(V1〜V2、V3〜V4)で示されている。
さらに、オイルポンプ36の応答遅れやオイルポンプ36の過負荷等を考慮すると、前述の減気筒運転準備の補正を行った後の基準目標油圧について、エンジン回転速度に対して要求油圧が急激に変化するエンジン回転速度(例えば、V0、V1、V4)における油圧の変化が小さくなるように、要求油圧以上の油圧でエンジン回転速度に応じて漸次増加又は減少するように補正して目標油圧として設定するのがよい。この補正を行って設定されたオイルポンプ36の目標油圧の一例が、図11(a)に太線(V0以下、V0〜V1、V4〜V5)で示されている。
図11(b)を参照すると、エンジン2の高負荷運転時において、要求油圧が比較的高い油圧作動装置は、VVT32,33、メタルベアリング及びオイルジェット28である。低負荷運転の場合と同様に、これら各油圧作動装置の要求油圧はエンジン2の運転状態に応じて変化し、例えば、VVT要求油圧は、エンジン回転速度がV0′以上で略一定であり、メタル要求油圧は、エンジン回転速度が大きくなるにつれて大きくなる。また、オイルジェット28の要求油圧は、エンジン回転速度がV2′未満では0であり、そこから或る回転速度まではエンジン回転速度に応じて高くなり、その回転速度以上では一定である。
高負荷運転の場合も低負荷運転の場合と同様に、エンジン回転速度に対して要求油圧が急激に変化するエンジン回転速度(例えば、V0′、V2′)において基準目標油圧を補正して目標油圧として設定するのがよく、適宜補正(特に、V0′以下、V1′〜V2′で補正)を行って設定されたオイルポンプ36の目標油圧の一例が、図11(b)に太線で示されている。
尚、図示されているオイルポンプ36の目標油圧は、折れ線状に変化するものであるが、曲線状に滑らかに変化するものであってもよい。また、本実施形態においては、要求油圧が比較的高い弁停止機構、オイルジェット28、メタルベアリング及びVVT32,33の要求油圧に基づいて目標油圧を設定したが、目標油圧を設定するのに考慮する油圧作動装置はこれらに限るものではない。要求油圧が比較的高い油圧作動装置があればどのようなものであっても、その要求油圧を考慮して目標油圧を設定すればよい。
次に、図12を参照しながら、油圧制御マップについて説明する。図11で示したオイルポンプ36の目標油圧は、エンジン回転速度をパラメータとしたものであるが、さらに、エンジン負荷と油温もパラメータとして目標油圧を3次元グラフに表したのが、図12に示した油圧制御マップである。すなわち、この油圧制御マップは、エンジン2の運転状態(ここでは、エンジン回転速度及びエンジン負荷に加えて、油温も含む)ごとに各油圧作動装置の要求油圧のうちで最も高い要求油圧に基づいて、当該運転状態に応じた目標油圧が予め設定されたものである。
図12(a)、図12(b)及び図12(c)は、エンジン2(油温)の高温時、温間時及び冷間時の油圧制御マップをそれぞれ示している。コントローラ100は、オイルの油温に応じてこれらの油圧制御マップを使い分ける。すなわち、エンジン2を始動してエンジン2が冷間状態(油温がT1未満)にあるときは、コントローラ100は、図12(c)に示す冷間時の油圧制御マップに基づいてエンジン2の運転状態(エンジン回転速度、エンジン負荷)に応じた目標油圧を読み取る。エンジン2が暖機してオイルが所定の油温T1以上になると、図12(b)に示す温間時の油圧制御マップに基づいて目標油圧を読み取り、エンジン2が完全に暖機してオイルが所定の油温T2(>T1)以上になると、図12(a)に示す高温時の油圧制御マップに基づいて目標油圧を読み取る。
尚、本実施形態では、油温を高温時、温間時及び冷間時の3つの温度範囲に分けて各温度範囲ごとに予め設定された油圧制御マップを用いて目標油圧を読み取ったが、油温を考慮しないで1つの油圧制御マップのみを用いて目標油圧を読み取るようにしてもよい。また、逆に、より細かく温度範囲を分けてより多くの油圧制御マップを用意してもよい。さらに、1つの油圧制御マップ(例えば、温間時の油圧制御マップ)が対象とする温度範囲内(T1≦t<T2)にある油温tはいずれも同じ値の目標油圧P1を読み取ったが、前後の温度範囲内(T2≦t)の目標油圧(P2)を考慮して、油温tに応じて目標油圧pを比例換算(p=(t−T1)×(P2−P1)/(T2−T1))により算出できるようにしてもよい。このように温度に応じた目標油圧をより高精度に読み取り、算出可能にすることで、より高精度なポンプ容量の制御が可能になる。
次に、図13を参照しながら、デューティ比マップについて説明する。ここでのデューティ比マップは、上述の油圧制御マップからエンジン2の運転状態(エンジン回転速度、エンジン負荷及び油温)ごとの目標油圧を読み取り、該読み取った目標油圧に基づいて油路の流路抵抗等を考慮してオイルポンプ36から供給されるオイルの目標吐出量を設定し、該設定した目標吐出量に基づいてそのエンジン回転速度(オイルポンプ回転数)等を考慮して算出した当該運転状態に応じた目標デューティ比が予め設定されたものである。
図13(a)、図13(b)及び図13(c)は、エンジン2(油温)の高温時、温間時及び冷間時のデューティ比マップをそれぞれ示している。コントローラ100は、オイルの油温に応じてこれらのデューティ比マップを使い分ける。すなわち、エンジン2の始動時は、エンジンが冷間状態であるため、コントローラ100は、図13(c)に示す冷間時のデューティ比マップに基づいて、エンジン2の運転状態(エンジン回転速度、エンジン負荷)に応じたデューティ比を読み取る。エンジン2が暖機してオイルが所定の油温T1以上になると、図13(b)に示す温間時のデューティ比マップに基づいて目標デューティ比を読み取り、エンジン2が完全に暖機してエンジンが所定の油温T2(>T1)以上になると、図13(a)に示す高温時のデューティ比マップに基づいて目標デューティ比を読み取る。
尚、本実施形態では、油温を高温時、温間時及び冷間時の3つの温度範囲に分けて各温度範囲ごとに予め設定されたデューティ比マップを用いてデューティ比を読み取ったが、上述の油圧制御マップと同様に、1つのデューティ比マップのみを用意したり、より細かく温度範囲を分けてより多くのデューティ比マップを用意したり、油温に応じて目標デューティ比を比例換算により算出できるようにしてもよい。
次に、図14のフローチャートに従って、コントローラ100によるオイルポンプ36の流量(吐出量)制御動作について説明する。
まず、ステップS1で、エンジン2の運転状態を把握するために、各種センサより検出情報を読み込んで、エンジン負荷、エンジン回転速度、油温等を検出する。
続いて、ステップS2で、コントローラ100に予め記憶されているデューティ比マップを読み出し、ステップS1で読み込まれたエンジン負荷、エンジン回転速度及び油温に応じた目標デューティ比を読み取る。
次のステップS3で、現在のデューティ比が、上記ステップS2で読み取られた目標デューティ比に一致しているか否かを判定する。このステップS3の判定がYESであるときには、ステップS5に進む。一方、ステップS3の判定がNOであるときには、ステップS4に進んで、目標デューティ比をリニアソレノイドバルブ49(図14のフローチャートでは、「流量制御弁」と記載)へ信号を出力し、しかる後にステップS5に進む。
ステップS5では、油圧センサ70より現在の油圧を読み込み、次のステップS6で、予め記憶されている油圧制御マップを読み出し、この油圧制御マップから現在のエンジンの運転状態に応じた目標油圧を読み取る。
次のステップS7では、現在の油圧が、上記ステップS6で読み取られた目標油圧に一致しているか否かを判定する。このステップS7の判定がNOであるときには、ステップS8に進んで、リニアソレノイドバルブ49に対し目標デューティ比を所定割合変更した出力信号を出力し、しかる後に上記ステップS5に戻る。すなわち、油圧センサ70により検出される油圧が、上記目標油圧になるように、オイルポンプ36の吐出量を制御する。
一方、ステップS7の判定がYESであるときには、ステップS9に進んで、エンジン負荷、エンジン回転速度及び油温を検出し、次のステップS10で、エンジン負荷、エンジン回転速度及び油温が変わったか否かを判定する。
ステップS10の判定がYESであるときには、上記ステップS2に戻る一方、ステップS10の判定がNOであるときには、上記ステップS5に戻る。尚、上述の流量制御は、エンジン2が停止するまで継続される。
上述のオイルポンプ36の流量制御は、デューティ比のフィードフォワード制御と油圧のフィードバック制御とを組み合わせたものであり、この流量制御によれば、フィードフォワード制御による応答性の向上とフィードバック制御による精度の向上とを実現している。
続いて、図15のフローチャートに従って、コントローラ100による気筒数制御の動作について説明する。
まず、ステップS11で、エンジン2の運転状態を把握するために、各種センサより検出情報を読み込んで、エンジン負荷、エンジン回転速度、水温等を検出する。
次のステップS12で、その読み込んだエンジン負荷、エンジン回転速度及び水温に基づいて、現在のエンジン2の運転状態が弁停止作動条件を満たしているか(減気筒運転領域内にあるか)否かを判定する。
上記ステップS12の判定がNOであるときには、ステップS13に進んで、4気筒運転(全気筒運転)を行う。その際、各気筒において、後述のステップS14〜S16と同様の動作を行って、カム角センサ74より読み込んだ現在のカム角に対応するVVT32,33の現在の位相角を、エンジン2の運転状態に応じて設定した目標の位相角になるように、吸気側及び排気側第1方向切替弁34,35を作動させる。
一方、上記ステップS12の判定がYESであるときには、ステップS14に進んで、吸気側及び排気側第1方向切替弁34,35を作動させ、次のステップS15で、カム角センサ74から現在のカム角を読み込む。
次のステップS16では、上記読み込んだ現在のカム角に対応するVVT32,33の現在の位相角が、目標の位相角となっているか否かを判定する。
上記ステップS16の判定がNOであるときには、上記ステップS15に戻る。すなわち、現在の位相角が目標の位相角になるまで、吸気側及び排気側第2方向切替弁46,47の作動を禁止する。
上記ステップS16の判定がYESであるときには、ステップS17に進んで、吸気側及び排気側第2方向切替弁46,47を作動させて、2気筒運転(減気筒運転)を行う。
ここで、エンジン2が停止しているときには、VVT32,33の進角作動室207及び遅角作動室208からオイルが抜け出て空になる。このとき、ロックピン231が嵌合凹部202bに嵌合していないと、次にエンジン2を始動したときに、ベーン体202がばたついてベーン体202とハウジング201との衝突による打音が発生する。
そこで、この打音の発生を防止するために、コントローラ100は、車両のイグニッションスイッチがオフになることでイグニッションスイッチよりエンジン停止信号を受けてエンジン2を停止させる際に、カム軸18,19のクランク軸9に対する位相角が上記特定の位相角(VVT32では、最遅角の位相角であり、VVT33では、最進角の位相角である)にないときには、エンジン2を停止させる直前に、ロックピン231をロックピン付勢バネ233による弾性付勢力によりロック復帰させるべく、カム軸18,19のクランク軸9に対する位相角を上記特定の位相角にし、その後にエンジン2を停止させる。
このような構成のために、エンジン2の始動時には、先ずロックピン231をロック解除し、その後にVVT32,33を作動させる。しかし、ロックピン231のロック解除前に、VVT32,33の進角作動室207及び遅角作動室208にオイルが充填されている必要がある。
一方、エンジン2の始動直後に、エミッションを改善するとともに、空気吸入量を過剰にして点火リタードにより触媒の早期活性化を図るために、特に吸気側のVVT32を早期に進角作動させることが好ましく、そのためには、VVT32のロックピン231のロック解除を、VVT32の進角作動室207及び遅角作動室208へのオイル充填後に出来る限り速やかに行うことが望ましい。
そこで、本実施形態では、エンジン2の始動時に、VVT32の進角作動室207及び遅角作動室208へのオイル充填時間を正確に予測して、そのオイル充填時間の予測値に基づいて、ロックピン231のロック解除を行うようにしている。
以下、上記オイル充填時間の予測方法について、図16を参照して詳細に説明する。
図16は、図8のオイル供給装置におけるVVT32への油圧供給経路を簡略化して描いた図である。オイルポンプ36から吐出されたオイルは、エンジン2内におけるVVT32を除く各所に充填された後、最後に油路67に流入し、そこから、吸気側第1方向切替弁34、進角側油路211及び遅角側油路212を通ってVVT32の進角作動室207及び遅角作動室208に流入する。したがって、VVT32へのオイル供給量Qvvtは、オイルポンプ36のオイル吐出量Qpから、オイルジェット28やオイルシャワー29,30等から流出するオイルのようにエンジン2から流出するオイル量Q0を引いた値になる。また、厳密には、オイルポンプ36のポンプ圧損α(0<α<1)を考慮する必要がある。したがって、VVT32へのオイル供給量Qvvtは、
Qvvt=(Qp−Q0)×(1−α) …(1)
となる。
オイルポンプ36のオイル吐出量Qpは、図9から、エンジン回転速度(つまりポンプ回転数)とリニアソレノイドバルブ49に対するデューティ比とから分かる。また、エンジン2から流出するオイル量Q0及びポンプ圧損αも、予め調べておくことで分かる。したがって、上記式(1)より、VVT32へのオイル供給量Qvvtを求めることができる。
また、油圧センサ70の設置箇所からVVT32までの油圧経路並びにVVT32の進角作動室207及び遅角作動室208のオイルで満たすべき容積Vは予め分かっている。そこで、コントローラ100は、エンジン2の始動時において、油圧センサ70による検出油圧が所定油圧値以上になったときに、オイル吐出量に基づいて、進角作動室207及び遅角作動室208へのオイル充填時間を予測する。油圧センサ70による検出油圧が所定油圧値以上になったときということは、エンジン2の始動によって、オイルが油圧センサ70の設置箇所にまで到達したということであり、この時点からの上記オイル充填時間の予測値tは、
t=V/Qvvt …(2)
となる。
上記予測値tは、油温センサ73により検出されたオイルの温度に応じて、補正することが好ましい。すなわち、オイルの温度が低くなると、オイルの粘性が高くなって、オイル充填時間が長くなるので、粘性を考慮した補正を行うことが好ましい。
コントローラ100は、油圧センサ70による検出油圧が所定油圧値以上になったときから、上記予測値tが経過したとき、吸気側第1方向切替弁34を制御してロックピン231のロック解除を行う。その後、コントローラ100は、エンジン2の運転状態に応じて、吸気側第1方向切替弁34を制御して、吸気弁14の開弁位相を進角方向に変更する。尚、排気側のVVT33のロックピン231のロック解除は、エンジン2の始動から、VVT33の進角作動室207及び遅角作動室208にオイルが十分に充填される時間が経過した後に行う。
上記コントローラ100によるエンジン始動時のVVT32の制御動作について、図17のフローチャートに基づいて説明する。
ステップS21で、油圧センサ70により所定油圧値以上の油圧を検出したか否かを判定し、このステップS21の判定がNOであるときには、当該ステップS21の動作を繰り返す。一方、ステップS21の判定がYESであるときには、ステップS22に進んで、オイルポンプ36のオイル吐出量を算出する。
次のステップS23で、上記式(1)及び式(2)より、進角作動室207及び遅角作動室208へのオイル充填時間の予測値tを算出し、次のステップS24で、油圧センサ70による検出油圧が所定油圧値以上になったときから、上記予測値tが経過したか否かを判定する。
上記ステップS24の判定がNOであるときには、当該ステップS24の動作を繰り返す一方、ステップS24の判定がYESであるときには、ステップS25に進んで、吸気側第1方向切替弁34を制御して、ロックピン231のロック解除を行う。
次のステップS26では、エンジン2の運転状態に応じて、吸気側第1方向切替弁34を制御して、吸気弁14の開弁位相を変更し、しかる後に、本制御動作を終了する。
本実施形態では、コントローラ100は、油圧センサ70による検出油圧が、エンジン2の運転状態に応じて予め設定された目標油圧になるように、オイルポンプ36の吐出量を制御するポンプ制御装置を構成するとともに、オイルポンプ36のオイル吐出量を算出する吐出量算出手段と、エンジン2の始動時において、油圧センサ70による検出油圧が所定油圧値以上になったときに、上記吐出量算出手段により算出された上記オイル吐出量に基づいて、VVT32の進角作動室208及び遅角作動室208へのオイル充填時間を予測するオイル充填時間予測手段と、このオイル充填時間予測手段によるオイル充填時間の予測値に基づいて、吸気側第1方向切替弁34を制御してロックピン231のロック解除を行うロック解除制御手段とを構成することになる。
したがって、本実施形態では、エンジン2の始動時において、油圧センサ70による検出油圧が所定油圧値以上になったときに、オイルポンプ36のオイル吐出量を算出し、その算出したオイル吐出量に基づいて、VVT32の進角作動室207及び遅角作動室208へのオイル充填時間を予測し、そのオイル充填時間の予測値tに基づいて、吸気側第1方向切替弁34を制御してVVT32のロックピン231のロック解除を行うようにしたので、エンジン2の始動時に、精度の高い予測値tによりオイル充填時期を適切に予測することができ、よって、VVT32のベーン体202とハウジング201との衝突による異音の発生を防止しながら、VVT32によるバルブタイミング制御を出来る限り早期に実施することができる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、上記実施形態では、エンジン2の始動時に、吸気側のVVT32の進角作動室207及び遅角作動室208へのオイル充填時間を予測して、そのオイル充填時間の予測値に基づいて、吸気側第1方向切替弁34を制御してVVT32のロックピン231のロック解除を行うようにしたが、排気側のVVT33の進角作動室207及び遅角作動室208へのオイル充填時間を予測して、そのオイル充填時間の予測値に基づいて、排気側第1方向切替弁35を制御してVVT33のロックピン231のロック解除を行うようにしてもよい。この場合、VVT33のみへオイルを供給する油圧経路である油路68を、例えば、油路67のように、エンジン2内にオイルが充填された後に流入するように設ける(オイルポンプ36のオイル吐出量のうち、実際にVVT33に供給されるオイル供給量が分かるように構成すれば、どのような構成であってもよい(油路67も同様))、その油路68に、該油路68の油圧を検出する油圧センサを設けておき、エンジン2の始動時において、その油圧センサによる検出油圧が所定油圧値以上になったときに、吸気側のVVT32の進角作動室207及び遅角作動室208へのオイル充填時間の予測と同様に、オイルポンプ36のオイル吐出量に基づいて、VVT33の進角作動室207及び遅角作動室208へのオイル充填時間を予測するようにすればよい。
また、上記実施形態では、可変オイルポンプとして、エンジン2で駆動される可変容量型オイルポンプを用いているが、これに代えて、モータ駆動の電動オイルポンプを用い、この電動オイルポンプの回転数を制御して目標油圧になるようにオイル吐出量を制御するポンプ制御装置を備えるようにしてもよい。この場合、オイル吐出量は、所定容量を吐出する電動オイルポンプの回転数により算出することができる。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。