JP6350635B2 - 可変バルブタイミング機構付エンジンの制御装置 - Google Patents

可変バルブタイミング機構付エンジンの制御装置 Download PDF

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Description

本発明は可変バルブタイミング機構付エンジンの制御装置に関する。
特許文献1には、エンジンの減気筒運転時、該減気筒運転のための油圧作動式弁停止機構の要求油圧を確保するべく、可変バルブタイミング機構(以下、「VVT」という。)の進角方向及び遅角方向への作動速度を制限することが記載されている。VVTの作動速度の制限により、該VVTへの供給油量を少なくして、油圧の低下を抑制するというものである。
特許文献2には、VVTを備えたエンジンにおいて、吸気弁の開弁期間と排気弁の開弁期間が重なるバルブオーバーラップによって燃焼不良または失火を招くおそれがあるときに、バルブオーバーラップ量を小さくすることが記載されている。バルブオーバーラップ量の縮小により、内部EGRに起因する燃焼不良や失火を防止するというものである。
特開2015−194132号公報 特開2014−005750号公報
特許文献2に記載されているように、バルブオーバーラップ量の縮小はエンジンの燃焼性の悪化抑制に有効である。しかし、油圧環境等の観点からVVTの作動速度が制限されるときは、エンジンの運転状態の変化によってバルブオーバーラップ量の縮小が要求されても、該バルブオーバーラップ量が速やかに小さくならない。その場合、エンジンの燃焼安定性が悪化する懸念がある。
そこで、本発明は、VVTの作動速度が制限されているときに、エンジンの燃焼性悪化を招くことなく、バルブオーバーラップ量を縮小することができるようにする。
本発明は、上記課題を解決するために、バルブオーバーラップ量が縮小する方向にエンジン運転状態が変わる過渡期に、エンジンの吸入空気量の減少を抑制する、又は該吸入空気量を増大させるようにした。
ここに開示するエンジンの制御装置は、エンジンの運転状態に応じて、吸気弁及び排気弁の少なくとも一方の開弁又は閉弁のタイミングを変更する油圧作動式のVVTを備え、
上記VVTの作動速度が所定速度以下に制限されているときにおいて、上記吸気弁の開弁期間と上記排気弁の開弁期間が重なるバルブオーバーラップ量が大きい状態から小さい状態になるように上記VVTを作動させる上記エンジンの運転状態の過渡期に、上記バルブオーバーラップ量が予定の大きさに縮小するまで、上記エンジンの吸入空気量の減少が抑制されるように、又は該吸入空気量が増大するように制御する手段を備えていることを特徴とする。
これによれば、VVTの作動速度の制限によってバルブオーバーラップ量の縮小遅れを生ずる過渡期に、吸入空気量の減少が抑制される、又は吸入空気量が増大することによって、内部EGR量が少なくなる。つまり、バルブオーバーラップによる内部EGR量は、排圧(ないしは筒内圧力)と吸気管圧力の差の大きさに依存するから、吸入空気量の減少抑制又は増大によって当該差圧が大きくならず、その結果、内部EGRによるエンジンの燃焼性悪化が抑制される。
一実施形態では、上記VVTを作動させるオイルの温度が所定値以下であるときに、上記VVTの作動速度が所定速度以下に制限され、上記過渡期に上記吸入空気量の減少抑制制御又は増大制御がされる。
オイルの温度が低いときは、その粘度が高くなって流動速度が低下し、VVTの作動応答性が低下する。従って、VVTをオイルの温度が高いとき同様に作動させようとすると、オイルポンプの吐出油圧を高めることが必要になって燃費の点で不利になる。或いは、燃費の観点からオイルポンプの吐出油圧を制限しているときは、油圧の低下が大きくなって、エンジンの他の部分へのオイルの供給に支障が出る。
そこで、当該実施形態ではオイルの温度が低いときにVVTの作動速度を制限するものであり、このような制限下でも、上記過渡期にエンジンの吸入空気量の減少が抑制され、又は該吸入空気量が増大するから、バルブオーバーラップ量の縮小遅れによるエンジンの燃焼性悪化が抑制される。
一実施形態では、上記エンジンの運転状態が低回転又は低負荷側に移行するときに、上記VVTが上記作動速度の制限下で上記バルブオーバーラップ量が大きい状態から小さい状態になるように作動され、このときに上記エンジンの吸入空気量の減少抑制制御又は増大制御がされる。
エンジンの低回転又は低負荷の運転領域ではエンジンの燃焼性が不安定なりやすい。そこで、エンジンの運転状態が低回転又は低負荷側に移行するときにバルブオーバーラップ量を縮小するが、VVTの作動速度の制限に起因してその縮小遅れを生ずると、上記燃焼性の悪化を招く。そこで、当該実施形態では、上記移行時にエンジンの吸入空気量の減少抑制制御又は増大制御をするものである。
上記過渡期のエンジンの吸入空気量の制御は、エンジンのスロットル弁の開度の調整、或いは、エンジンの排気管から吸気管に排気を導入する外部EGR弁の開度の調整のいずれかによって実行することができる。
但し、外部EGR弁開度の縮小の場合は、吸入空気量の増大効果が出るまでには時間がかかる。すなわち、応答遅れがある。
従って、上記過渡期のエンジンの吸入空気量の制御は、上記エンジンのスロットル弁の開度を調整することによって実行されることが好ましい。もちろん、スロットル弁開度の制御と併せて、外部EGR弁開度の縮小制御を行なうようにしてもよい。
一実施形態では、所定の油圧で作動して上記エンジンのピストンに向けてオイルを噴射するオイルジェットと、
上記可変バルブタイミング機構、上記オイルジェット及び上記エンジンの潤滑要求部にオイルを供給する可変容量型オイルポンプとを備え、
上記オイルポンプは、上記VVTを作動させるときの吐出油圧が、上記オイルジェットを作動させるときの吐出油圧よりも低く設定されている。
オイルジェットを作動させるには比較的大きな油圧が必要であるところ、その油圧を確保するために、オイルポンプを常時高い吐出油圧になるように作動させることは燃費の向上に不利になる。そして、オイルジェットは、その目的からして、エンジンの燃焼室が高温になるときに限って作動させることで足りる。
そこで、当該実施形態では、燃費向上の観点から、VVTを作動させるときのオイルポンプの吐出油圧を低く抑えている。この場合、当該吐出油圧が低く抑えられている結果、VVTの作動速度が制限され、そのため、バルブオーバーラップ量の縮小の遅れを生じ易くなるが、その場合でも、上記過渡期の吸入空気量の制御により、エンジンの燃焼性の悪化が抑制される。
一実施形態では、上記オイルポンプによる油圧を受けて上記エンジンの一部の気筒の吸気弁及び/又は排気弁の作動を停止させることで、上記エンジンの減気筒運転を実行する油圧作動式の弁停止機構を備え、
上記減気筒運転時、上記オイルポンプから上記弁停止機構に対する供給油圧が当該弁停止状態の維持に必要な油圧を下回らないように、上記VVTの作動速度が制限される。
すなわち、VVTを作動させるときのオイルポンプの吐出油圧は上述の如く低く設定されているが、弁停止機構が働いているときは、さらに、VVTが作動しても弁停止に必要な油圧を確保されなければならない。そのため、VVTの作動速度が大きく制限され、その結果、バルブオーバーラップ量の縮小の遅れを生じ易くなる。その場合でも、上述の如く、上記過渡期の吸入空気量の制御により、エンジンの燃焼性の悪化が抑制される。
以上のように、本発明によれば、VVTの作動速度が所定速度以下に制限されているときにおいて、バルブオーバーラップ量が縮小されるようにVVTを作動させる過渡期に、エンジンの吸入空気量の減少を抑制する、又は吸入空気量を増大させるから、バルブオーバーラップ量の縮小遅れを生じても、内部EGRによるエンジンの燃焼性悪化が抑制される。
エンジンの吸気及び排気の通路構成を示す図。 VVT付エンジンの概略構成を示す断面図。 弁停止機構の構成及び作動状態を示す断面図。 吸排気VVT及び吸排気カムの駆動系を模式的に示す側面図。 吸排気VVT及び吸排気カムの駆動系を示す斜視図。 排気VVTの最進角状態における横断面図。 排気VVTの最遅角状態における横断面図。 排気VVTと油圧制御弁の関係を示す断面図。 エンジンのオイル供給系を示す図。 吸気VVTの縦断面図(図5のIX−IX千断面図)。 排気VVTの制御ブロック図。 オイルポンプの吐出油圧が一定であるときの排気VVTの作動速度制限値の油温依存性を示すグラフ図。 オイルポンプの吐出油圧を油温に応じて変えるときの排気VVTの作動速度制限値の油温依存性を示すグラフ図。 バルブタイミングの変更例を示すグラフ図。 目標スロットル開度の制御に係るタイムチャート図。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
(エンジンの構成)
図1に示すエンジン2は、例えば、第1気筒から第4気筒が図1の紙面に垂直な方向に直列に順次配置された直列4気筒ガソリンエンジンであって、自動車等の車両に搭載される。図1において、101は吸気通路、102は排気通路である。吸気通路101には、各気筒への吸入空気量を調節するスロットル弁103が配設されている。吸気通路101におけるスロットル弁103の下流側部分と、排気通路102とは、排気ガスの一部を吸気通路101に還流するためのEGR通104によって接続されている。EGR通路104には、排気ガスの吸気通路101への還流量を調整するためのEGR弁105と、排気ガスを冷却するための水冷式のEGRクーラ106が配設されている。
図2に示すように、エンジン2においては、ヘッドカバー3、シリンダヘッド4、シリンダブロック5、クランクケース(図示せず)及びオイルパン6(図9を参照。)が上下に連結されている。また、シリンダブロック5に形成された4つのシリンダボア7内をそれぞれに摺動可能なピストン8と、上記クランクケースに回転自在に支持されたクランク軸9とは、コネクティングロッド10によって連結されている。シリンダブロック5のシリンダボア7とピストン8とシリンダヘッド4とによって燃焼室11が気筒ごとに形成されている。
シリンダヘッド4には、燃焼室11にそれぞれ開口する吸気ポート12及び排気ポート13が設けられている。吸気ポート12及び排気ポート13には、それぞれを開閉する吸気弁14及び排気弁15が配設されている。吸気弁14及び排気弁15は、それぞれバルブスプリング16、17により閉方向(図2の上方)に付勢されている。吸気カム軸18及び排気カム軸19各々の外周に設けたカム部18a、19aによって、スイングアーム20、21のほぼ中央部に回転自在に設けられたカムフォロア20a、21aが下方に押される。これにより、スイングアーム20、21は、それぞれの一端側に設けられたピボット機構25aの頂部を支点として揺動する。これにより、各スイングアーム20、21の他端部において、吸気弁14及び排気弁15がバルブスプリング16、17の付勢力に抗して下方に押されて開動する。
エンジン2の気筒列方向の中央部に位置する第2気筒及び第3気筒のスイングアーム20、21におけるピボット機構(後述するHLA25のピボット機構25aと同様の構成を採る。)として、油圧によりバルブクリアランスを自動的に0に調整する公知の油圧ラッシュアジャスタ24(以下、Hydraulic Lash Adjusterの略記を用いてHLA24と呼ぶ。)が設けられている。なお、HLA24は、図9にのみ示す。
エンジン2の気筒列方向の両端部に位置する第1気筒及び第4気筒のスイングアーム20、21に対しては、ピボット機構25aを有する弁停止機構付きHLA25が設けられている。この弁停止機構付きHLA25のピボット機構25aは、上記のHLA24と同様に油圧によりバルブクリアランスを自動的に0に調整可能に構成されている。これに加え、HLA25の弁停止機構は、エンジン2の一部の気筒である第1気筒及び第4気筒の作動を休止させる減気筒運転時には、第1気筒及び第4気筒の吸排気弁14、15の作動を停止(開閉動作を停止)させる一方、全気筒(4気筒)を作動させる全気筒運転時には、第1気筒及び第4気筒の吸排気弁14、15を作動(開閉動作)させる。なお、第2気筒及び第3気筒の吸排気弁14、15は、減気筒運転時及び全気筒運転時の双方で作動する。減気筒運転及び全気筒運転は、エンジン2の運転状態に応じて適宜切り替えられる。
シリンダヘッド4における第1及び第4気筒に対応する吸気側及び排気側の部分には、弁停止機構付きHLA25の下端部を挿入して装着するための装着穴26、27が設けられている。シリンダヘッド4における第2気筒及び第3気筒に対応する吸気側及び排気側の部分には、HLA24の下端部を挿入して装着するための装着穴が設けられている。さらに、シリンダヘッド4には、弁停止機構付きHLA25用の装着穴26、27にそれぞれ連通する2つずつの油路(61、63)、(62、64)が穿設されている。弁停止機構付きHLA25が装着穴26、27に嵌合された状態で、各油路61、62から、弁停止機構付きHLA25の弁停止機構25b(図3(a)〜図3(c)を参照。)に油圧(作動圧)が供給される。一方、油路63、64から、弁停止機構付きHLA25のピボット機構25aがバルブクリアランスを自動的に0に調整するための油圧が供給される。HLA24用の装着穴には、油路63、64のみが連通している。各油路61〜64については、図9により後に詳述する。
シリンダブロック5には、シリンダボア7の排気側の側壁内を気筒列方向に延びるメインギャラリ54が設けられている。メインギャラリ54の下側の近傍には、該メインギャラリ54と連通するピストン冷却用のオイルジェット28が設けられている。オイルジェット28は、ピストン8の下側に配置されたノズル部28aを有しており、該ノズル部28aからピストン8の頂部の裏面に向けてオイル(エンジンオイル)を噴射する。
各カム軸18、19の上方には、パイプで形成されたオイルシャワー29、30が設けられている。オイルシャワー29、30から潤滑用のオイルがカム軸18、19のカム部18a、19aと、さらに下方に位置するスイングアーム20、21及びカムフォロア20a、21aの接触部とに滴下する。
ここで、図3を参照しながら、弁停止機構25bについて説明する。弁停止機構25bは、エンジン2の一部の気筒である第1気筒及び第4気筒の吸排気弁14、15のうち少なくとも一方の弁(本実施形態では、両方の弁)の作動を停止する。エンジン2の減気筒運転時には、弁停止機構25bによって第1気筒及び第4気筒の各吸排気弁14、15の開閉動作が停止する。また、エンジン2の全気筒運転時には、弁停止機構25bによる弁の作動停止が解除され、第1気筒及び第4気筒の各吸排気弁14、15の開閉動作が行われる。
弁停止機構25bには、図3(a)に示すように、ピボット機構25aの動作をロックするロック機構250が設けられている。ロック機構250は、一対のロックピン252(ロック部材)を備えている。各ロックピン252は、ピボット機構25aを軸方向に摺動自在に収納する有底外筒251の側面の径方向に対向する2箇所に形成した貫通孔251aにそれぞれ出入り可能に設けられている。一対のロックピン252は、スプリング253により径方向の外側へ付勢されている。外筒251の内底部とピボット機構25aの底部との間には、ピボット機構25aを外筒251の上方に押圧して付勢するロストモーションスプリング254が設けられている。
上記の両ロックピン252が外筒251の貫通孔251aに嵌合している場合には、該両ロックピン252の上方に位置するピボット機構25aが上方に突出した状態で固定される。この場合には、ピボット機構25aの頂部がスイングアーム20、21の揺動の支点となるため、カム軸18、19の回転によりそのカム部18a、19aがカムフォロア20a、21aを下方に押すと、吸排気弁14、15がバルブスプリング16、17の付勢力に抗して下方に押されて開弁する。このように、第1気筒及び第4気筒において、ロックピン252が弁停止機構25bを貫通孔251aに嵌合した状態とすることにより、エンジン2は全気筒運転を行うことができる。
一方、図3(b)及び図3(c)に示すように、作動油圧によって上記の両ロックピン252の外側端面が押圧されると、スプリング253の付勢力に抗して、両ロックピン252が互いに接近するように外筒251の径方向の内側に後退する。その結果、両ロックピン252が外筒251の貫通孔251aから抜けるので、ロックピン252の上方に位置するピボット機構25aがロックピン252と共に外筒251の軸方向の下側に移動して弁停止状態となる。
すなわち、吸排気弁14、15を上方に付勢するバルブスプリング16、17が、ピボット機構25aを上方に付勢するロストモーションスプリング254よりも付勢力が強くなるように構成されている。これにより、カム軸18、19の回転により各カム部18a、19aがカムフォロア20a、21aをそれぞれ下方に押すと、吸排気弁14、15の頂部が各スイングアーム20、21の揺動の支点となる。その結果、吸排気弁14、15は閉弁されたまま、ピボット機構25aがロストモーションスプリング254の付勢力に抗して下方に押される。従って、作動油圧によりロックピン252を貫通孔251aに対して非嵌合の状態にすることにより、減気筒運転を行うことができる。
(吸気VVT及び排気VVT)
図4及び図5に示すように、クランク軸プーリ(スプロケット)9Aと吸気側カムプーリ(スプロケット)204と排気側カムプーリ(スプロケット)203にタイミングチェーン114が巻き掛けられている。吸気側カムプーリ204に電動式の吸気VVT90が固定され、排気側カムプーリ203に油圧作動式の排気VVT33が固定されている。クランク軸プーリ9Aと排気側カムプーリ203との間には、油圧式のチェーンテンショナ111が配設されている。吸気側カムプーリ204とクランク軸プーリ9Aとの間には、チェーンガイド112が配設されている。吸気VVT90は、電動モータ91と、吸気側カムプーリ204に取り付けられた位相(クランク軸9に対する吸気カム軸18の位相角)変換部92とから構成される。
(油圧作動式排気VVT33)
図6〜図8は排気VVT33を示している。なお、図8には、排気VVT33の動作を油圧により制御する油圧制御弁(Oil Control Valve)35も図示している。
排気VVT33は、ほぼ円環状のハウジング201と、該ハウジング201の内部に収容されたベーン体202とを有する。ハウジング201は、クランク軸9と同期して回転するカムプーリ203と一体回転可能に連結されており、クランク軸9と連動して回転する。ベーン体202は、複数のベーン202aを有し、図8に示すように、締結ボルト205により、排気カム軸19と一体回転可能に連結されている。
ハウジング201の内部には、該ハウジング201とベーン体202とによって区画された複数の進角室207及び複数の遅角室208が形成されている。進角室207及び遅角室208は、図8及び図9に示すように、それぞれ進角側油路211及び遅角側油路212を介して、油圧制御弁(排気側第1方向切替弁)35と接続されている。油圧制御弁35は、可変容量型オイルポンプ36と接続されている。排気カム軸19及びベーン体202には、これら進角側油路211及び遅角側油路212の一部を構成する進角側通路215及び遅角側通路216がそれぞれ形成されている。
図6は、各進角側通路215を通して供給されたオイルにより、各ベーン202aがカムプーリ203に対して、すなわちクランク軸9に対して、最進角位置に保持されている状態を示す。これとは逆に、図7は、各遅角側通路216を通して供給されたオイルにより、各ベーン202aがカムプーリ203に対して最遅角位置に保持されている状態を示す。
進角側通路215は、ベーン体202において中心部近傍から放射状に延びて各進角室207とそれぞれ接続されている。遅角側通路216は、ベーン体202において中心部近傍から放射状に延びて各遅角室208とそれぞれ接続されている。ベーン体202における中心部近傍から放射状に延びる複数の進角側通路215のうちの1つは、ベーン体202の外周面におけるベーン202aが形成されていない部分に形成され、且つ後述するロックピン231が嵌合する嵌合凹部202bの底面と接続され(図8参照)、この嵌合凹部202bを介して、複数の進角室207のうちの1つと接続される。
図7に示す室208aは遅角側通路216と連通しておらず、オイルの供給はなく、ベーン202aに対する回転トルクは生じない。すなわち、遅角室208の室数は、進角室207の室数と比べて少ない。従って、遅角に必要な油量も少なくなるので、遅角速度を上げやすくなる。
図8に示すように、排気VVT33には、該排気VVT33の動作をロックするロック機構230が設けられている。なお、図6及び図7ではロック機構230の図示を省略している。ロック機構230は、排気カム軸19のクランク軸9に対する位相角を特定の位相角で固定するためのロックピン231を有する。本実施形態では、この特定の位相角は最進角の位相角である。但し、最進角の位相角に限られず、どのような位相角であってもよい。
ロックピン231は、ハウジング201の径方向に摺動可能に配設されている。ハウジング201におけるロックピン231に対する該ハウジング201の径方向の外側の部分には、ばねホルダ232が固定されている。このばねホルダ232とロックピン231との間には、該ロックピン231をハウジング201の径方向の内側に付勢するロックピン付勢ばね233が設けられている。上記の嵌合凹部202bがロックピン231と対向する位置にあるときには、ロックピン付勢ばね233によって、ロックピン231が嵌合凹部202bと嵌合してロック状態となる。これにより、ベーン体202がハウジング201に固定されて、排気カム軸19のクランク軸9に対する位相角が固定される。
図8に示すように、油圧制御弁35は、3ポート3位置の電磁弁であり、供給ポート351がオイルポンプ36に接続され、出力ポート352,353が進角側通路215及び遅角側通路216にそれぞれ接続されている。図8において、符号354は、スプール356に電磁力を作用させるソレノイドである。
図8は供給ポート351が出力ポート352に連通した状態を示している。その連通度に応じた量のオイルが排気VVT33の進角室207に供給される。これにより、ベーン体202が進角方向に回動し、遅角室208の容積が縮小される。この容積縮小に伴って遅角室208から排出されるオイルが出力ポート353からドレンポート357を通ってオイルパン6にドレンされる。
スプール356がリターンスプリング359の付勢に抗して前進(図8における下方へ移動)し、出力ポート352及び353の両方が閉じられた中立位置になると、進角室207及び遅角室208へのオイルの供給が遮断される。
スプール356がリターンスプリング359の付勢に抗してさらに前進すると、供給ポート351が出力ポート353に連通した状態になる。これにより、オイルが排気VVT33の遅角室208に供給されてベーン体202が遅角方向に回動し、進角室207の容積縮小に伴ってこの進角室207から排出されるオイルが出力ポート352からドレンポート358を通ってオイルパン6にドレンされる。
以上のように、油圧制御弁35によって、排気VVT33の進角室207及び遅角室208へのオイルの供給を制御し、排気側のバルブタイミングを変更することができる。具体的には、進角室207に遅角室208よりも多くの供給量(高い油圧)でもってオイルを供給すると、排気カム軸19がハウジング201に対して該カム軸19の回転方向(図6及び図7の矢印方向)に回動して、排気弁15の開時期が早くなる。排気カム軸19の最進角位置(図6の状態)ではロックピン231が嵌合凹部202bに嵌合する。
一方、遅角室208に進角室207よりも多くの供給量(高い油圧)でもってオイルを供給すると、排気カム軸19がその回転方向とは逆方向に回動して、排気弁15の開時期が遅くなる(図7参照)。排気カム軸19を最進角位置から遅角させる場合には、油圧により、ロックピン231をロックピン付勢ばね233に抗してハウジング201の径方向の外側に押し出すことにより、ロックピン231によるロックを解除する。この時点では、嵌合凹部202bと連通する遅角室208を除く他の遅角室208には既にオイルが充填されている。このため、ロック解除の直後に、排気カム軸19を回動させて、排気弁15の開時期を遅く(遅角)することができる。
なお、VVT33のロックピン231のロック解除には、ロックピン付勢ばね233の付勢力に打ち克つ油圧を遅角室208に供給する必要があり、この油圧を遅角室208に供給しながら、該油圧よりも低い油圧(基本的には、0に近い油圧)を進角室207に供給することにより、ロックピン231のロック解除の直後に排気カム軸19が遅角方向に回動して、ロック位置から外れる。
また、排気VVT33の各ベーン202aと、ハウジング201における該ベーン202aに対し、カム軸19の回転方向とは反対側に対向する部分との間(すなわち、進角室207)には、少なくとも1つのアシストばね(圧縮コイルばね,図示省略)が配設されている。アシストばねは、ベーン体202を進角側に付勢して、該ベーン体202の進角側への回動をアシストする。これは、排気カム軸19には、後述する燃料ポンプ81及びバキュームポンプ82(図9を参照。)の負荷が加わっており、この負荷に打ち克ってベーン体202を最進角位置にまで確実に移動させる(ロックピン231を嵌合凹部202bに確実に嵌合させる)ためである。
(オイル供給装置)
図9に示すように、エンジン2にオイルを供給するオイル供給装置1は、クランク軸9の回転によって駆動される可変容量型オイルポンプ36と、該オイルポンプ36と接続され、オイルポンプ36によって昇圧されたオイルをエンジン2の潤滑部及び排気VVT33等の油圧作動装置に導く給油路50(油圧経路)とを備えている。
給油路50は、第1連通路51と、メインギャラリ54と、第2連通路52と、第3連通路53と、複数の油路61〜69とから構成されている。
第1連通路51は、オイルポンプ36の吐出口361bから、シリンダブロック5内の分岐点54aまで延びている。メインギャラリ54は、シリンダブロック5内で気筒列方向に延びている。第2連通路52は、メインギャラリ54上の分岐点54bからシリンダヘッド4まで延びている。第3連通路53は、シリンダヘッド4内で吸気側と排気側との間をほぼ水平方向に延びている。複数の油路61〜69は、シリンダヘッド4内で第3連通路53から分岐している。
オイルポンプ36は、ハウジング361と、駆動軸362と、ポンプ要素と、カムリング366と、スプリング367と、リング部材368とを有している。
ハウジング361は、一端側が開口するように形成され、且つ内部が断面円形状の空間からなるポンプ収容室を有するポンプボディと該ポンプボディの上記一端側の開口を閉塞するカバー部材とから構成される。駆動軸362は、ハウジング361に回転自在に支持され、ポンプ収容室のほぼ中心部を貫通し、且つクランク軸9によって回転駆動される。ポンプ要素は、ポンプ収容室内に回転自在に収容されて中心部が駆動軸362に結合されたロータ363及び該ロータ363の外周部に放射状に切欠き形成された複数のスリット内にそれぞれ出没自在に収容されたべーン364から構成される。カムリング366は、ポンプ要素の外周側にロータ363の回転中心に対して偏心可能に配置され、ロータ363及び相隣接するベーン364と共に複数の作動油室であるポンプ室365を画成する。スプリング367は、ポンプボディ内に収容され、ロータ363の回転中心に対するカムリング366の偏心量が増大する側へ、カムリング366を常時付勢する付勢部材である。リング部材368は、ロータ363の内周側の両側部に摺動自在に配置され、ロータ363よりも小径の一対のリング状部材である。
また、ハウジング361は、内部のポンプ室365にオイルを供給する吸入口361aと、ポンプ室365からオイルを吐出する吐出口361bとを有している。ハウジング361の内部には、該ハウジング361の内周面とカムリング366の外周面とによって画成された圧力室369が形成されており、該圧力室369にはそれに開口する導入孔369aが設けられている。
このように、オイルポンプ36は、導入孔369aから圧力室369にオイルを導入することにより、カムリング366が支点361cに対して揺動して、ロータ363がカムリング366に対して相対的に偏心し、該オイルポンプ36の吐出容量が変化するように構成されている。
オイルポンプ36の吸入口361aには、オイルパン6に臨むオイルストレーナ39が接続されている。オイルポンプ36の吐出口361bと連通する第1連通路51には、上流側から下流側に順に、オイルフィルタ37及びオイルクーラ38が配置されている。オイルパン6内に貯留されたオイルは、オイルポンプ36により、オイルストレーナ39を通して汲み上げられ、その後、オイルフィルタ37で濾過され、且つオイルクーラ38で冷却された後、シリンダブロック5内のメインギャラリ54に導入される。
メインギャラリ54は、上述した、4つのピストン8の背面側に冷却用オイルを噴射するためのオイルジェット28と、クランク軸9を回動自在に支持する5つのメインジャーナルに配置されたメタルベアリングのオイル供給部41と、4つのコネクティングロッドを回転自在に連結する、クランク軸9のクランクピンに配置されたメタルベアリングのオイル供給部42とに接続されている。メインギャラリ54には、オイルが常時供給される。
メインギャラリ54上の分岐点54cの下流側には、油圧式チェーンテンショナにオイルを供給するオイル供給部43と、リニアソレノイド弁49を介してオイルポンプ36の圧力室369に、導入孔369aからオイルを供給する油路40とが接続されている。
第3連通路53の分岐点53aから分岐する油路68は、排気VVT33の油圧制御弁35と接続されている。分岐点53aから分岐する油路64は、オイル供給部45(図9の白抜き三角△を参照。)と、HLA24(図9の黒三角▲を参照。)と、弁停止機構付きHLA25(図9の白抜き楕円を参照。)と、燃料ポンプ81と、バキュームポンプ82とに接続されている。オイル供給部45は、排気側のカム軸19のカムジャーナルにオイルを供給する。燃料ポンプ81は、カム軸19により駆動され、燃焼室11に燃料を供給する燃料噴射弁に高圧の燃料を供給する。バキュームポンプ82は、カム軸19により駆動され、ブレーキマスタシリンダの圧力を確保する。該油路64には、オイルが常時供給される。さらに、油路64の分岐点64aから分岐する油路66は、排気側のスイングアーム21に潤滑用オイルを供給するオイルシャワー30と接続されており、該油路66にもオイルが常時供給される。
第3連通路53の分岐点53cから分岐する油路67には、該油路67の油圧を検出する油圧センサ70が配設されている。また、分岐点53dから分岐する油路63は、吸気カム軸18のカムジャーナルのオイル供給部44(図9の白抜き三角△を参照。)と、HLA24(図9の黒三角▲を参照。)と、弁停止機構付きHLA25(図9の白抜き楕円を参照。)とに接続されている。さらに、油路63の分岐点63aから分岐する油路65は、吸気側のスイングアーム20に潤滑用オイルを供給するオイルシャワー29と接続されている。
第3連通路53の分岐点53cから分岐する油路69には、オイルが流れる方向を上流側から下流側への一方向のみに規制する逆止弁48が配設されている。この油路69は、逆止弁48の下流側の分岐点69aで、弁停止機構付きHLA25用の装着穴26、27と連通する上記の2つの油路61、62に分岐する。油路61、62各々は、油圧制御弁46,47を介して、吸気側及び排気側の各弁停止機構付きHLA25の弁停止機構25bとそれぞれ接続されている。これら油圧制御弁46,47をそれぞれ制御することにより、各弁停止機構25bにオイルが供給されるように構成されている。
クランク軸9を回転自在に支持するメタルベアリング、ピストン8並びにカム軸18、19等に供給された潤滑用及び冷却用のオイルは、冷却及び潤滑を終えた後には、図示しないドレイン油路を通ってオイルパン6内に滴下し、オイルポンプ36により環流される。
(制御系)
エンジン2の作動は、コントローラ100によって制御される。コントローラ100には、エンジン2の運転状態を検出する各種センサからの検出情報が入力される。コントローラ100は、例えば、クランク角センサ71によりクランク軸9の回転角度を検出し、この検出信号に基づいてエンジン回転速度を検出する。また、アクセルポジションセンサ72により、エンジン2が搭載された車両の乗員によるアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出し、これに基づいて要求トルクを算出する。さらに、油圧センサ70により油路67の圧力を検出する。また、油圧センサ70とほぼ同じ位置に設けた油温センサ73により、油路67におけるオイルの温度を検出する。なお、油圧センサ70及び油温センサ73は、給油路50におけるいずれの場所に配設してもよい。さらに、カム軸18、19の近傍に設けられたカム角センサ74により、該カム軸18、19の回転位相を検出し、検出したカム角に基づいて各VVT33、90の位相角を検出する。また、水温センサ75によって、エンジン2を冷却する冷却水の温度(以下、水温という)を検出する。
コントローラ100は、公知のマイクロコンピュータをベースとする制御装置であって、各種センサ(油圧センサ70、クランク角センサ71、スロットルポジションセンサ72、油温センサ73、カム角センサ74、及び水温センサ75等)からの検出信号を入力する信号入力部と、制御に係る演算処理を行う演算部と、制御対象となる装置(油圧制御弁35,46,47、及びリニアソレノイド弁49等)に制御信号を出力する信号出力部と、制御に必要なプログラム及びデータ(油圧制御マップ及びデューティ比マップ等)を記憶する記憶部とを有している。
リニアソレノイド弁49は、エンジン2の運転状態に応じてオイルポンプ36の吐出量を制御するための流量(吐出量)制御弁である。リニアソレノイド弁49の開弁時に、オイルポンプ36の圧力室369にオイルが供給されるように構成されている。ここでは、リニアソレノイド弁49自体の構成は公知であるため説明を省略する。
コントローラ100は、リニアソレノイド弁49に対し、エンジン2の運転状態に応じたデューティ比の制御信号を送信して、該リニアソレノイド弁49を介して、オイルポンプ36の圧力室369に供給する油圧を制御する。この圧力室369の油圧により、カムリング366の偏心量を制御してポンプ室365の内部容積の変化量を制御することによって、オイルポンプ36の流量(吐出量)を制御する。すなわち、上記のデューティ比によって、オイルポンプ36の容量が制御される。
(電動式吸気VVT90)
図10に示すように、吸気VVT90の変換部92は、ギヤプーリ(スプロケット)93と、ギヤプラネタリ94と、ギヤカム軸95とから構成されている。ギヤプーリ93は、カムプーリ203の周縁部にねじ留めされ、且つ、例えば34個の内歯を有し、タイミングチェーン114からカムプーリ203に伝わった回転力(トルク)をギヤプラネタリ94に伝える。ギヤプラネタリ94は、ギヤプーリ93の内歯と噛み合う、例えば33個の大外歯及び27個の小外歯を有している。ギヤカム軸95は、ギヤプラネタリ94の小外歯と噛み合う、例えば28個の内歯を有し、カム軸19の端部に固持されている。ここで、電動モータ91の変換部92による減速比は154となる。
(排気VVT33の制御)
図11は排気VVT33の制御方法を示すブロック図である。エンジン運転状態(エンジン回転数及び空気充填効率)に対応して設定された排気VVT要求進角マップC01から、エンジン運転状態に応じて、排気VVT33の要求進角量が取得される。取得されたマップ要求進角量は、排気VVT速度制限要求ブロックC04に入力される。
一方、ブロックC02において、エンジン油温に基づいて、排気VVT33の作動速度の制限値が取得される。減気筒運転と全気筒運転各々について、別個の油温−速度制限テーブルが予め作成されており、そのテーブルから排気VVT33の作動速度の制限値が取得される。
各テーブルから取得された速度制限値は、スイッチブロックC03に入力される。スイッチブロックC03には、上記テーブルの速度制限値の他、減気筒運転時には「減気筒判定運転判定」が入力され、全気筒運転時には、弁停止維持のための「速度制限なし」が入力される。そして、減気筒運転時には、減気筒運転用の油温−速度制限テーブルから取得された速度制限値が排気VVT速度制限要求ブロックC04に入力される。全気筒運転時には、全気筒運転用の油温−速度制限テーブルから取得された速度制限値が排気VVT速度制限要求ブロックC04に入力される。
排気VVT速度制限要求ブロックC04からは、排気VVT要求進角量が出力される。この排気VVT要求進角量と現時点の排気VVT実進角量との差分が算出される。この差分から、進角量の要求値(目標値)と実進角量との偏差が算出されて、進角F/B制御ブロックC05に入力される。
進角F/B制御ブロックC05において、入力された進角量の目/実偏差に基づいて、例えばPID(Proportional-Integral-Differential)制御法により上記排気VVT33の作動速度の制限値に応じたOCV駆動デューティ比が求められ、油圧制御弁35が駆動される。
図12はオイルポンプ36の吐出油圧を175kPaに固定したケースの減気筒運転における排気VVT33の作動速度制限テーブルに係るグラフである。
燃費向上の観点から、排気VVT33が作動するときの吐出油圧(175kPa)は、オイルジェット28が作動するときの吐出油圧(例えば、200kPa)よりも低く設定されている。そうして、排気VVT33が作動すると、進角室207又は遅角室208にオイルが供給されることに伴って、給油路50の油圧が低下する。一方、減気筒運転を維持するためには、弁停止機構25bに所定値以上の油圧をかけておく必要がある。すなわち、排気VVT33の作動によって油圧が低下しても、その低下したときの油圧が、減気筒運転(弁停止)の維持に必要な油圧、例えば105kPaを下回らないようにしなければならない。
図12に示す排気VVT33の作動速度の上限値(制限速度)は、175kPaから許容される油圧降下代が70kPaという条件下で設定されたものである。遅角方向の制限速度が進角方向の制限速度よりも高いのは、遅角室208の数が進角室207の数よりも少ないため、排気VVT作動時の油圧降下量が少ないこと、並びに、バルブスプリング17の付勢力がベーン体202に対して遅角方向に働いていることによる。また、オイルの温度(油温)が低くなると、上記制限速度が低くなっているのは、オイルの温度が低くなるほど、その粘度が高くなることによる。同図によれば、オイルの温度が20℃になると、当該制限速度は50゜CA/秒以下になっている。
一方、電動式の吸気VVT90の作動速度は、エンジン運転状態の変化に応じて吸気のバルブタイミングを速やかに変更する必要から、排気VVT33の作動速度の制限値よりも高く(例えば、200゜CA/秒)設定されている。すなわち、排気VVT33の作動速度は吸気VVT90の作動速度に比べてかなり遅いということである。
図13はオイルポンプ36の吐出油圧をオイルの温度(油温)に応じて低減するケースの減気筒運転における排気VVT33の作動速度制限テーブルに係るグラフである。
同図の例では、オイルの温度が40℃以上に上昇した時点で、オイルポンプ36の吐出油圧を175kPaから150kPaに低減している。オイル温度が高くなると、排気VVT33の作動時の油圧の落ち込みが少なくなる。そのことを踏まえて、吐出油圧を下げているものであり、これにより燃費の向上に有利になる。換言すれば、40℃未満のときの吐出油圧を高くしているのは、オイルの粘度の上昇による油圧の落ち込みが大きくなることを補うためである。
当該ケースにおいても、先のケース(図12)と同じ理由から、オイル温度が低いときは排気VVT33の作動速度の制限値を低くせざるを得ない。なお、本ケースでは、遅角方向の作動速度の制限値をオイルの温度に応じて段階的に変化させているが、リニアに変化させるようにしてもよい。また、進角方向の作動速度の制限値をオイルの温度に拘わらず一定にしているが、該温度が高くなるにしたがって段階的又はリニアに上昇する設定にしてもよい。
次に全気筒運転時における排気VVT33の作動速度の制限について説明する。全気筒運転時には、弁停止状態を維持するための油圧は必要ないから、その観点からの速度制限は不要である。しかし、減気筒運転時と同様にオイルポンプ36の吐出油圧は制限されているから、作動速度は制限される。図示は省略するが、作動速度の上限値を図12に示すケースよりも20〜40゜CA/秒程度高めることが可能になる。しかし、この場合でも、オイル温度が20〜30℃程度の低いときの作動速度は70゜CA以下に制限される。
(吸入空気量制御)
コントローラ100は、エンジン運転状態に応じてバルブタイミングを設定するために、目標空気充填効率とエンジン回転数に対応して設定された吸排気カム軸18,19の位相マップを備えている。
図14はエンジン2が中回転・中負荷運転状態から低回転・低負荷運転状態に移行するときの、上記位相マップに基づいて設定される吸排気弁14,15の開閉タイミング(バルブタイミング)の変化を示す。同図の細実線は移行前の開閉タイミングを示し、太実線は移行後の開閉タイミングを示す。これは、吸排気弁14,15の開閉タイミングを進角させて、バルブオーバーラップ量が大きい運転状態から小さい運転状態へ移行するケースである。
上述の如く、油圧作動式の排気VVT33の作動速度は電動式の吸気VVT90は作動速度よりも遅い。そのため、排気VVT33及び吸気VVT90を同時に作動させたとき、吸気弁14が太実線の開閉タイミングになった時点では、排気弁15の開閉タイミングは未だ同図の例えば破線の位置にあり、バルブオーバーラップ量の縮小遅れを生じている。エンジン2が低回転・低負荷運転状態に移行すると、その燃焼安定性が低下しやすいところ、バルブオーバーラップ量の縮小遅れは内部EGR量の減少遅れとなるため、この運転状態の移行過渡期にエンジンの燃焼性が悪化しやすい。
そこで、コントローラ100は、エンジン2がバルブオーバーラップ量が大きい中回転・中負荷運転状態からバルブオーバーラップ量が小さい低回転・低負荷運転状態に移行するときに、エンジン2の吸入空気量を補正する吸入空気量制御手段を備えている。この吸入空気量制御手段は、吸入空気量の目標値をエンジンの運転状態に応じて設定し、該目標値に基づいて燃焼室への空気の吸入を制御する。以下、具体的に説明する。
吸入空気量制御手段は、エンジン回転数及びアクセル開度に基づいてエンジン2の目標負荷を設定する。この目標負荷に応じて、スロットル弁103を制御すべく、目標空気充填効率を演算し、目標空気充填効率とエンジン回転数とに基づいて目標スロットル開度を演算する。その際、エンジン回転数とスロットル開度との対応関係はEGRの有無によって異なるので、EGR時と非EGR時とで異なるマップが設定されて記憶されており、いずれかのマップから目標スロットル開度を読み込む。この目標スロットル開度に応じてスロットル弁103の駆動モータに制御信号を出力されて、スロットル弁103の開度が調節される
そうして、吸入空気量制御手段は、上記位相マップから得られるエンジン2の運転状態の移行前の位相と移行後の位相から、当該移行がバルブオーバーラップ量が縮小するエンジン低回転・低負荷方向への移行か否かを判定する。バルブオーバーラップ量が縮小するエンジン低回転・低負荷方向への移行であるときは、図15に実線で示すように、目標スロットル開度がVVT33,90の作動開始に遅れて減少するように、目標スロットル開度を補正する。
図15の例では、目標スロットル開度は、バルブオーバーラップ量が予定の大きさに縮小するまで、移行前の開度に保たれ、バルブオーバーラップ量が縮小した後に移行後の目標スロットル開度とされる。
これにより、上記バルブオーバーラップ量の縮小遅れに拘わらず、内部EGR量が多い状態が続くことが避けられ、エンジン2の燃焼安定性の確保に有利になる。
エンジン2がバルブオーバーラップ量が大きい中回転・中負荷運転状態からバルブオーバーラップ量が小さい低回転・低負荷運転状態に移行する過渡期に、目標スロットル開度を一時的に大きくするようにしてもよい。
また、上記過渡期に外部EGR弁105を閉じ方向に制御する(外部EGR量を減少させる)ことによって、吸入空気量を増大させるようにしてもよい。
なお、上記実施形態では、バルブオーバーラップ量が大きい中回転・中負荷運転状態からバルブオーバーラップ量が小さい低回転・低負荷運転状態に移行する過渡期に吸入空気量を補正するが、これに限らず、油圧作動式VVTを所定の作動速度の制限下でバルブオーバーラップ量が縮小されるように作動させる他の過渡期においても、内部EGRによるエンジン燃焼性の悪化が懸念されるときは、上述の吸入空気量の減少抑制又は増大の制御を行なうようにしてもよい。
また、上記実施形態は、排気VVT33を油圧作動式とし、吸気VVT90を電動式としたケースであるが、これに限らず、排気VVT33を電動式とし、吸気VVT90を油圧作動式とするケースや、この両VVT33,90を油圧作動式とするケースにおいて、油圧作動式VVTを所定の作動速度の制限下でバルブオーバーラップ量が縮小されるように作動させる過渡期に、内部EGRによるエンジン燃焼性の悪化が懸念されるときは、上述の吸入空気量の減少抑制又は増大の制御を行なうようにしてもよい。
1 オイル供給装置
2 エンジン
8 ピストン
14 吸気弁
15 排気弁
18 吸気カム軸
19 排気カム軸
25 弁停止機構付HLA
25a ピボット機構
25b 弁停止機構
28 オイルジェット
33 排気VVT
35 油圧制御弁
36 オイルポンプ
90 吸気VVT
103 スロットル弁
105 外部EGR弁
207 進角室
208 遅角室

Claims (6)

  1. エンジンの運転状態に応じて、吸気弁及び排気弁の少なくとも一方の開弁又は閉弁のタイミングを変更する油圧作動式の可変バルブタイミング機構を備えたエンジンの制御装置であって、
    上記可変バルブタイミング機構の作動速度が所定速度以下に制限されているときにおいて、上記吸気弁の開弁期間と上記排気弁の開弁期間が重なるバルブオーバーラップ量が大きい状態から小さい状態になるように上記可変バルブタイミング機構を作動させる上記エンジンの運転状態の過渡期に、上記バルブオーバーラップ量が予定の大きさに縮小するまで、上記エンジンの吸入空気量の減少が抑制されるように、又は該吸入空気量が増大するように制御する手段を備えていることを特徴とする可変バルブタイミング機構付エンジンの制御装置。
  2. 請求項1において、
    上記可変バルブタイミング機構を作動させるオイルの温度が所定値以下であるときに、上記可変バルブタイミング機構の作動速度が所定速度以下に制限され、上記過渡期に上記エンジンの吸入空気量の減少抑制制御又は増大制御がされることを特徴とする可変バルブタイミング機構付エンジンの制御装置。
  3. 請求項1又は請求項2おいて、
    上記エンジンの運転状態が低回転又は低負荷側に移行するときに、上記可変バルブタイミング機構が上記作動速度の制限下で上記バルブオーバーラップ量が大きい状態から小さい状態になるように作動され、このときに上記エンジンの吸入空気量の減少抑制制御又は増大制御がされることを特徴とする可変バルブタイミング機構付エンジンの制御装置。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
    上記過渡期のエンジンの吸入空気量の制御は、上記エンジンのスロットル弁の開度を調整することによって実行されることを特徴とする可変バルブタイミング機構付エンジンの制御装置。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
    所定の油圧で作動して上記エンジンのピストンに向けてオイルを噴射するオイルジェットと、
    上記可変バルブタイミング機構、上記オイルジェット及び上記エンジンの潤滑要求部にオイルを供給する可変容量型オイルポンプとを備え、
    上記オイルポンプは、上記可変バルブタイミング機構を作動させるときの吐出油圧が、上記オイルジェットを作動させるときの吐出油圧よりも低く設定されていることを特徴とする可変バルブタイミング機構付エンジンの制御装置。
  6. 請求項5において、
    上記オイルポンプによる油圧を受けて上記エンジンの一部の気筒の吸気弁及び/又は排気弁の作動を停止させることで、上記エンジンの減気筒運転を実行する油圧作動式の弁停止機構を備え、
    上記減気筒運転時、上記オイルポンプから上記弁停止機構に対する供給油圧が当該弁停止状態の維持に必要な油圧を下回らないように、上記可変バルブタイミング機構の作動速度が制限されることを特徴とする可変バルブタイミング機構付エンジンの制御装置。
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