以下、本発明の第1の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
<エンジンの構成>
図1は、本発明に係るオイル供給装置が適用される多気筒エンジン2(以下、単にエンジン2という)を示している。このエンジン2は、第1〜第4気筒が順に図1の紙面に垂直な方向に直列に配置された直列4気筒ガソリンエンジンであって、自動車等の車両に搭載される。
エンジン2は、上下に連結されるカムキャップ3、シリンダヘッド4、シリンダブロック5、クランクケース(図示せず)及びオイルパン6(図4参照)を含む。シリンダブロック5には4つのシリンダボア7が形成され、各シリンダボア7内にそれぞれピストン8が摺動可能に収容され、これらピストン8、シリンダボア7およびシリンダヘッド4によって燃焼室11が気筒毎に形成されている。なお、各ピストン8は、コネクティングロッド10を介して、上記クランクケースに回転自在に支持されたクランク軸9に連結されている。
シリンダヘッド4には、燃焼室11に開口する吸気ポート12及び排気ポート13が設けられ、吸気ポート12及び排気ポート13をそれぞれ開閉する吸気弁14及び排気弁15が、各ポート12,13にそれぞれ装備されている。
吸気弁14及び排気弁15は、それぞれリターンスプリング16,17により各ポート12,13を閉止する方向(図1の上方向)に付勢されており、カムシャフト18,19の外周に設けられたカム部18a,19aによって押下されることで各ポート12,13を開くように構成されている。詳しくは、カムシャフト18,19の回転に伴い、上記カム部18a,19aがスイングアーム20,21の略中央部に設けられたカムフォロア20a,21aを押下することで、スイングアーム20,21がそれらの一端側に設けられた後記HLA24、25のピボット機構の頂部を支点として揺動し、この揺動に伴い、スイングアーム20,21の他端部が上記リターンスプリング16,17の付勢力に抗して吸気弁14及び排気弁15を押下する。これにより各ポート12,13が開く。なお、このエンジン2には、後述する可変バルブタイミング機構32、33が組み込まれており、エンジン2の運転状態に応じて、吸排気弁14、15の開閉時期が変更される。この可変バルブタイミング機構32、33については、後に説明する。
上記エンジン2の第1〜第4気筒のうち、中央部の第2、第3気筒については、各スイングアーム20,21のピボット機構として、油圧ラッシュアジャスタ(Hydraulic Lash Adjuster)24が設けられている(図4参照)。この油圧ラッシュアジャスタ24(以下、HLA24という)は油圧によりバルブクリアランスを自動的にゼロに調整するものである。
一方、第1〜第4気筒のうち、気筒配列方向の両端に位置する第1、第4気筒については、スイングアーム20、21のピポッド機構として弁停止機構付き油圧ラッシュアジャスタ25(以下、弁停止機構付きHLA25、又は単にHLA25という)が設けられている。この弁停止機構付きHLA25は、HLA24と同様にバルブクリアランスを自動的にゼロに調整するものであるが、この機能に加えて、上記吸気弁14及び排気弁15を、その作動を許容する状態と停止させる状態とに切り換える機能を有する。これにより、このエンジン2では、運転状態を、全気筒の吸排気弁14,15を作動させる(開閉動作させる)全筒運転と、全気筒のうち、第1、第4気筒の吸排気弁14,15の作動を停止(開閉動作を停止)させて、第2、第3気筒の吸排気弁14,15だけを作動をさせる減筒運転とに切り換え可能となっている。
シリンダヘッド4のうち、第1、第4気筒に対応する吸気側及び排気側の部分には、上記弁停止機構付きHLA25の下端部が挿入、装着される装着穴26,27が設けられている。また、シリンダヘッド4のうち、第2、第3気筒に対応する吸気側及び排気側の部分には、上記HLA24の下端部が挿入、装着される装着穴26,27が同様に設けられている。そして、第1〜第4気筒に亘って気筒配列方向に延びて、吸気側及び排気側のHLA24、25の装着穴26,27にそれぞれ連通する2つの油路63、64と、第1、第4気筒に対応する位置で気筒配列方向に延びて、吸気側及び排気側の弁停止機構付きHLA25の装着穴26,27にそれぞれ連通する2つの油路61、62とがシリンダヘッド4に形成されている。
これら油路61、62、63、64のうち、油路63、64は、装着穴26,27に装着されたHLA24、および弁停止機構付きHLA25の後記ピボット機構本体25aに対してオイル(作動油)を供給するためのものであり、HLA24及び弁停止機構付きHLA25のピボット機構本体25aは、その油圧(作動圧)によりバルブクリアランスを自動的にゼロに調整する。一方、油路61、62は、装着穴26,27に装着された弁停止機構付きHLA25の後記弁停止機構25b(図2に示す)に対してオイルを供給するものである。なお、これら油路61、62、63、64については、後に詳述する。
上記シリンダブロック5のうち、シリンダボア7の排気側の側壁内には、気筒配列方向に延びるメインギャラリ54が設けられている。このメインギャラリ54の下側近傍の位置であって各ピストン8に対応する位置には、メインギャラリ54と連通するピストン冷却用のオイルジェット28が設けられている。オイルジェット28は、ピストン8の下側に位置するシャワーノズル28aを有しており、このシャワーノズル28aからピストン8の裏面に向けてオイル(冷却用オイル)が噴射されるように構成されている。
また、各カムシャフト18,19の上方には、オイル供給部29,30が設けられている。これらオイル供給部29,30は、ノズル29a、30aを有しており、これらノズル29a、30aからその下方に位置するカムシャフト18,19のカム部18a,19aや、スイングアーム20,21とカムフォロア20a、21aとの接触部にオイル(潤滑用オイル)が滴下されるように構成されている。
<弁停止機構付きHLA25の構成>
次に、図2を参照しながら、弁停止機構付きHLA25の弁停止機構25bについて説明する。この弁停止機構25bは、上記の通り、上記吸気弁14及び排気弁15を、その作動を許容する状態と停止させる状態とに切り換えることにより、エンジン2の運転状態を、全気筒の吸排気弁14,15を作動させる(開閉動作させる)全筒運転状態と、第1、第4気筒の吸排気弁14,15の作動を停止(開閉動作を停止)させて、第2、第3気筒の吸排気弁14,15だけを作動をさせる減筒運転状態とに切り換えるものである。換言すれば、エンジン2が全筒運転制御されるときは、弁停止機構25bが停止され、これにより第1、第4気筒を含む、全気筒の吸排気弁14、15の開閉動作が行われる一方、エンジン2が減筒運転制御されるときは、弁停止機構25bが油圧作動され、これにより全気筒のうち、第1、第4気筒の吸排気弁14、15の開閉動作が停止される。
本実施形態では、弁停止機構25bは、上記の通り、弁停止機構付きHLA25に設けられている。つまり、弁停止機構付きHLA25は、ピボット機構本体25aと弁停止機構25bとを備える。ピボット機構本体25aは、油圧によりバルブクリアランスを自動的にゼロに調整する、上記HLA24と実質的に同じ構成である。
弁停止機構25bは、図2(a)に示すように、ピボット機構本体25aが軸方向に摺動自在に収納される有底の外筒251と、当該外筒251の周側壁に互いに対向して設けられた2つの貫通孔251aに各々出入可能に設けられる一対のロックピン252と、これら一対のロックピン252を径方向外側へ付勢するロックスプリング253と、外筒251の内底部とピボット機構本体25aの底部との間に設けられ、ピボット機構本体25aを上向きに付勢するロストモーションスプリング254とを備えている。上記一対のロックピン252は、外筒251の内側に先端を突出させた状態で上記貫通孔251aにそれぞれ挿入される離間位置と、これら貫通孔251aから外筒251の内側に抜け出た接近位置とに変位可能である。そして、ピボット機構本体25aが外筒251から上方に突出する状態で、当該一対のロックピン252がロックスプリング253の付勢力により上記離間位置に配置されることでピボット機構本体25aの上下動を規制する(ピボット機構本体25aのロック状態という)。その一方で、上記油路61,62を通じて供給される油圧により上記ロックスプリング253の弾発力に抗して一対のロックピン252が上記接近位置に配置されると、ピボット機構本体25aと共に外筒251内を上下動し得るように構成されている(ピボット機構本体25aのロック解除状態という)。
つまり、図2(a)に示すように、ピボット機構本体25aのロック状態では、外筒251から突出したピボット機構本体25aの頂部がスイングアーム20,21の揺動の支点となるため、カムシャフト18,19の回転によりカム部18a,19aがカムフォロア20a,21aを押下すると、吸排気弁14,15がリターンスプリング16,17の付勢力に抗して押下されて各ポート12,13が開弁する。したがって、第1、第4気筒について弁停止機構25bがロック状態とされることで、エンジン2の全筒運転を行うことができる。
一方、図2(b)に示すように、油圧により上記一対のロックピン252の外側端面が押圧されると、ロックスプリング253の弾発力に抗して、両ロックピン252が互いに接近して貫通孔251aから外筒251の内側に抜け出し、これにより、ロックピン252の上方に位置するピボット機構本体25aの上下方向(軸方向)の移動が可能となる。つまり、ピボット機構本体25aがロック解除状態となる。
このようにピボット機構本体25aがロック解除状態とされることで、吸排気弁14、15の開閉動作が停止される。すなわち、上記ロストモーションスプリング254の付勢力は、上記吸排気弁14,15を付勢するリターンスプリング16,17の付勢よりも小さく設定されており、そのため、ピボット機構本体25aのロック解除状態において、カムフォロア20a,21aがカム部18a,19aにより押下されると、吸排気弁14,15の頂部がスイングアーム20,21の揺動の支点となり、図2(c)に示すように、ロストモーションスプリング254の付勢力に抗してピボット機構本体25aが押下されることとなる。これにより吸排気弁14,15は閉弁状態に保たれる。従って、第1、第4気筒について弁停止機構25bがロック解除状態とされることで、エンジン2の減筒運転を行うことができる。
<可変バルブタイミング機構32、33の構成>
エンジン2には、その全気筒において、吸気弁14の弁特性を変更する可変バルブタイミング機構32(以下、VVT32という)と排気弁15の弁特性を変更する可変バルブタイミング機構33(以下、VVT33という)とが組み込まれている。
図3(a)に示すように、VVT32、33は、略円環状のハウジング321、331と、該ハウジング321、331の内部に収容されるロータ322、332とを有している。ハウジング321、331は、クランク軸9と同期して回転するカムプーリ323、333に一体回転可能に連結されており、ロータ322、332は、吸排気弁14、15を開閉させるカムシャフト19に一体回転可能に連結されている。ハウジング321、331の内部には、ハウジング321、331の内周面とロータ322、332に設けられたベーン324、334とで区画される遅角油圧室325,335と進角油圧室326、336とが複数形成されている。これら遅角油圧室325、335及び進角油圧室326、336には、第1方向切替弁34、35(図4参照)を介して、オイルを供給する後述のオイルポンプ36(図4参照)が接続されている。これら第1方向切替弁34、35の制御により、遅角油圧室325、335にオイルが導入されると、油圧によりカムシャフト19がその回転方向(図3(a)の矢印の方向)とは逆向きに回動し、これにより吸排気弁14,15の開時期が遅くなり、一方、進角油圧室326、336にオイルが導入されると、油圧によりカムシャフト19がその回転方向に動くため、吸排気弁14,15の開時期が早くなる。
図3(b)は、吸気弁14及び排気弁15の開弁位相を示しており、図からわかるように、VVT32(及び/又はVVT33)によって、吸気弁14の開弁位相を進角方向(図3(b)の矢印を参照)に変更する(及び/又は、排気弁15の開弁位相を遅角方向に変更する)と、排気弁15の開弁期間と吸気弁14の開弁期間(一点鎖線を参照)とがオーバーラップする。このように吸気弁14及び排気弁15の開弁期間をオーバーラップさせることで、エンジン燃焼時の内部EGR量を増加させることができ、ポンピングロスを低減して燃費性能を向上できる。また、燃焼温度を抑えることもできるため、NOxの発生を抑えて排気浄化を図れる。一方、VVT32(及び/又はVVT33)によって、吸気弁14の開弁位相を遅角方向に変更する(及び/又は、排気弁15の開弁位相を進角方向に変更する)と、吸気弁14の開弁期間(実線を参照)と排気弁15の開弁期間とのバルブオーバーラップ量が減少するために、アイドリング時等のようにエンジン負荷が所定値以下の低負荷時には、安定燃焼性を確保できる。本実施形態では、高負荷時にバルブオーバーラップ量を出来る限り大きくするために、上記低負荷時にも、吸気弁14及び排気弁15の開弁期間をオーバーラップさせるようにしている。
<オイル供給装置1の説明>
次に、図4を参照しながら、エンジン2の各油圧作動部にオイル(作動油)を供給するためのオイル供給装置1について詳細に説明する。なお、「油圧作動部」とは、オイルの油圧を受けて作動する装置(すなわちHLA24、25やVVT32、33等)、又はオイルをその油圧により潤滑用又は冷却用として対象物に供給するオイル供給部(すなわち、オイルジェット28やオイル供給部29、30等)を指す。
図示するように、オイル供給装置1は、クランク軸9の回転によって駆動されるオイルポンプ36と、これに接続され、オイルポンプ36により昇圧されたオイルをエンジン2の潤滑部及び各油圧作動部に導く給油路50とを備えている。オイルポンプ36は、エンジン2により駆動される補機である。
上記給油路50は、パイプや、シリンダヘッド4、シリンダブロック5等に形成された通路からなる。給油路50は、オイルポンプ36からシリンダブロック5内の分岐点54aまで延びる第1連通路51と、分岐点54aからシリンダブロック5内で気筒配列方向に延びる上記メインギャラリ54と、該メインギャラリ54上の分岐点54bからシリンダヘッド4まで延びる第2連通路52と、シリンダヘッド4内の前端部(第1気筒側の端部)において吸気側から排気側に亘ってエンジン幅方向に延びる第3連通路53と、この第3連通路53から分岐して延びる後記複数の油路とを備えている。
上記オイルポンプ36は、周知の可変容量型のオイルポンプであって、一端側が開口するように形成され、内部に円柱状の空間からなるポンプ収容室を有する断面コ字形状のポンプボディと該ポンプボディの一旦開口を閉塞するカバー部材とからなるハウジング361と、該ハウジング361に回転自在に支持され、ポンプ収容室のほぼ中心部を貫通してクランク軸9によって回転駆動される駆動軸362と、ポンプ収容室内に回転自在に収容されて中心部が駆動軸に結合されたロータ363及び該ロータ363の外周部に放射状に切欠形成された複数のスリット内にそれぞれ出没自在に収容されたべーン364からなるポンプ要素と、該ポンプ要素の外周側にロータ363の回転中心に対して偏心可能に配置され、ロータ363及び隣接するベーン364と共に複数の作動油室であるポンプ室365を画成するカムリング366と、ポンプボディ内に収容され、ロータ363の回転中心に対するカムリング366の偏心量が増大する方向へカムリング366を常時付勢する付勢部材であるスプリング367と、ロータ363の内周側の両側部に摺動自在に配置されたロータ363よりも小径な一対のリング部材368とを備えている。ハウジング361は、内部のポンプ室365にオイルを供給する吸入口361aと、ポンプ室365からオイルを吐出する吐出口361bを備えている。ハウジング361の内部には、該ハウジング361の内周面とカムリング366の外周面により画成された圧力室369が形成されており、該圧力室369に開口する導入孔369aが設けられている。つまり、オイルポンプ36は、導入孔369aから圧力室369にオイルが導入されることで、カムリング366が支点361cに対して揺動して、ロータ363がカムリング366に対して相対的に偏心し、吐出容量が変化するように構成されている。
オイルポンプ36の吸入口361aには、オイルパン6に臨むオイルストレーナ39が接続されている。オイルポンプ36の吐出口361bに連通する第1連通路51には、上流側から下流側に順に、オイルフィルタ37及びオイルクーラ38が配置されており、オイルパン6内に貯留されたオイルは、オイルストレーナ39を通じてオイルポンプ36によってくみ上げられた後、オイルフィルタ37で濾過されかつオイルクーラ38で冷却されてからシリンダブロック5内のメインギャラリ54に導入される。なお、オイルクーラ38は、エンジン冷却水とオイルとの熱効交換により該オイルを冷却する熱効交換器である。
オイルポンプ36には、メインギャラリ54上の分岐点54cから分岐して当該オイルポンプ36の圧力室369にオイルを導入する油路40が接続されている。この油路40には、リニアソレノイドバルブ49が介設されており、上記圧力室369に導入されるオイル流量がエンジン2の運転状態に応じて該リニアソレノイドバルブ49により調整されることで、オイルポンプ36の吐出量が変更される。なお、油路40の流量制御弁は、リニアソレノイドバルブ49に限らず、例えば電磁制御弁であってもよい。
メインギャラリ54は、4つのピストン8の背面側に冷却用オイルを噴射するための上記オイルジェット28と、クランク軸9を回動自在に支持する5つのメインジャーナルに配置されたメタルベアリングのオイル供給部41と、4つのコネクティングロッドを回転自在に連結する、クランク軸9のクランクピンに配置されたメタルベアリングのオイル供給部42とに接続されており、このメインギャラリ54にはオイルが常時供給される。
メインギャラリ54上の分岐点54cの下流側には、油圧式チェーンテンショナへオイルを供給するオイル供給部43と、上記油路40とが接続されている。
第3連通路53の分岐点53aから分岐する油路68は、排気側第1方向切替弁35を介して、排気弁15の開閉時期を変更するための排気側VVT33の進角油圧室336及び遅角油圧室335に接続されており、第1方向切替弁35を制御することでオイルが供給されるように構成されている。また、分岐点53aから分岐する油路64は、排気側のカムシャフト19のカムジャーナルに配置されたメタルベアリングのオイル供給部45(図4の白抜き三角△を参照)と、HLA24(図4の黒三角▲を参照)と、弁停止機構付きHLA25(図4の白抜き楕円を参照)とに接続されており、この油路64にはオイルが常時供給される。さらに、油路64の分岐点64aから分岐する油路66は、排気側のスイングアーム21に潤滑用オイルを供給する上記オイル供給部30に接続されており、この油路66には油が常時供給される。
吸気側についても、排気側と同様であり、第3連通路53の分岐点53cから分岐する油路67は、吸気側第1方向切替弁34を介して、吸気弁14の開閉時期を変更するためのVVT32の進角油圧室326及び遅角油圧室325に接続されている。また、分岐点53dから分岐する油路63は、吸気側のカムシャフト18のカムジャーナルに配置されたメタルベアリングのオイル供給部44(図4の白抜き三角△を参照)と、HLA24(図4の黒三角▲を参照)と、弁停止機構付きHLA25(図4の白抜き楕円を参照)とに接続されている。さらに、油路63の分岐点63aから分岐する油路65は、吸気側のスイングアーム20に潤滑用オイルを供給する上記オイル供給部29に接続されている。
また、第3連通路53の分岐点53cから分岐する油路69には、オイルの流れる方向を上流側から下流側への一方向のみに規制する逆止弁48と、逆止弁48と分岐点53cとの間に位置しかつ給油路50(油路69における逆止弁48よりも上流側)における油圧を検出する油圧センサ70とが配設されている。
上記油路69は、逆止弁48の下流側の分岐点69aで、弁停止機構付きHLA25用の装着穴26,27に連通する上記2つの油路61,62に分岐する。油路61,62は、吸気側及び排気側の第2方向切替弁46,47を介して、吸気側及び排気側の弁停止機構付きHLA25の弁停止機構25bにそれぞれ接続されており、これら第2方向切替弁46,47を制御することで各弁停止機構25bにオイルが供給されるように構成されている。
逆止弁48は、第3連通路53における油圧が、弁停止機構25bの要求油圧以上になると開弁するようにスプリングで付勢され、上流側から下流側への一方向のみにオイル流れを規制する。また、この逆止弁48は、VVT32,33の要求油圧よりも大きい油圧で開弁するものである。弁停止機構25bを作動させる減気筒運転中にVVT32,33が作動すると、第3連通路53の油圧(及び、油圧センサ70により検出される油圧)が低下する可能性があるが、油路69に設けられた逆止弁48によって、弁停止機構25bから、逆止弁48の上流にある第3連通路53へのオイルの流れが遮蔽されるため、逆止弁48の下流側にある弁停止機構25bでの要求油圧が確保される。但し、本実施形態では、後述のように、減気筒運転中にVVT32,33が作動しても、油圧センサ70の検出油圧に基づき第3連通路53の油圧が低下しないようにオイルポンプ36のオイル吐出量が制御されるので、逆止弁48をなくしてもよい。
クランク軸9及びカムシャフト18,19を回転自在に支持するメタルベアリングや、ピストン8、カムシャフト18,19等に供給された潤滑用及び冷却用のオイルは、冷却や潤滑を終えた後、図示しないドレイン油路を通ってオイルパン6内に滴下し、オイルポンプ36により再び環流される。
上記エンジン2の作動は、コントローラ100によって制御される。コントローラ100には、エンジン2の運転状態を検出する各種センサからの検出情報が入力されている。コントローラ100は、例えば、クランク角センサ71によりクランク軸9の回転角度を検出し、この検出信号に基づいてエンジン回転速度を検出する。また、エアフローセンサ72により、エンジン2が吸入する空気量を検出し、これに基づいてエンジン負荷を検出する。さらに、油温センサ73及び上記油圧センサ70により上記給油路50におけるオイルの温度及び圧力をそれぞれ検出する。油温センサ73は、上記油圧経路(本実施形態ではメインギャラリ54)に配設されている。なお、油温センサと油圧センサの機能を有する一体式の油圧/油温センサをメインギャラリ54に配設してもよい。さらに、カムシャフト18,19の近傍に設けられたカム角センサ74により、カムシャフト18,19の回転位相を検出し、このカム角に基づいてVVT32,33の作動角を検出する。また、水温センサ75によって、エンジン2を冷却する冷却水の温度(以下、水温という)を検出する。
コントローラ100は、周知のマイクロコンピュータをベースとする制御装置であって、各種センサ(油圧センサ70、クランク角センサ71、エアフローセンサ72、油温センサ73、カム角センサ74、水温センサ75等)からの検出信号を入力する信号入力部と、制御に係る演算処理を行う演算部と、制御対象となる装置(第1方向切替弁34,35、第2方向切替弁46,47、リニアソレノイドバルブ49等)に制御信号を出力する信号出力部と、制御に必要なプログラムやデータ(後述する油圧制御マップやデューティ比マップ等)を記憶する記憶部とを備えている。
コントローラ100は、リニアソレノイドバルブ49に対し、後述の如く設定されたデューティ比の制御信号を送信して、リニアソレノイドバルブ49を介して、オイルポンプ36の圧力室369へ供給する油圧を制御する。この圧力室369の油圧により、カムリング366の偏心量を制御してポンプ室365の内部容積の変化量を制御することで、オイルポンプ36の流量(吐出量)を制御する。つまり、上記デューティ比によってオイルポンプ36の容量が制御される。ここで、ポンプ36はエンジン2のクランク軸9で駆動するため、図5に示すように、ポンプ36の流量(吐出量)はエンジン回転速度と比例する。デューティ比が1サイクルの時間に対するリニアソレノイドバルブへの通電時間の割合を表す場合、図示するように、デューティ比が大きい(高い)ほどポンプ36の圧力室369への油圧が増すため、エンジン回転速度に対するポンプ36の流量の傾きが減ることとなる。
このようにコントローラ100は、オイルポンプ36の容量を変更してオイルポンプ36の吐出量を制御する。
次に、図6を参照しながら、エンジン2の減気筒運転について説明する。
エンジン2の減気筒運転又は全気筒運転は、エンジン2の運転状態に応じて切り替えられる。すなわち、エンジン回転速度、エンジン負荷及びエンジン2の水温から把握されるエンジン2の運転状態が、図示する減気筒運転領域内にあるときは減気筒運転が実行される。また、図示するように、この減気筒運転領域に隣接して減気筒運転準備領域が設けられており、エンジンの運転状態がこの減気筒運転準備領域内にあるときは減気筒運転を実行するための準備として、油圧を弁停止機構25bの要求油圧に向けて予め昇圧させておく。そして、エンジン2の運転状態がこれら減気筒運転領域及び減気筒運転準備領域の外にあるときは、全気筒運転を実行する。
図6(a)を参照すると、所定のエンジン負荷(L0以下)で加速して、エンジン回転速度が上昇する場合、エンジン回転速度が所定回転速度V1未満では、全気筒運転を行い、エンジン回転速度がV1以上かつV2(>V1)未満になると、減気筒運転の準備に入り、エンジン回転速度がV2以上になると、減気筒運転を行う。また、例えば、所定のエンジン負荷(L0以下)で減速して、エンジン回転速度が下降する場合、エンジン回転速度がV4以上では、全気筒運転を行い、エンジン回転速度がV3(<V4)以上かつV4未満になると、減気筒運転の準備を行い、エンジン回転速度がV3以下になると、減気筒運転を行う。
図6(b)を参照すると、所定のエンジン回転速度(V2以上V3以下)、所定のエンジン負荷(L0以下)で走行し、エンジン2が暖機して水温が上昇する場合、水温がT0未満では全気筒運転を行い、水温がT0以上かつT1未満になると減気筒運転の準備を行い、水温がT1以上になると減気筒運転を行う。
以下、コントローラ100によるオイルポンプ36等の制御について説明する。
このオイル供給装置1では、1つのオイルポンプ36によって複数の油圧作動部(HLA24,25、VVT32,33、オイルジェット28、クランク軸9のジャーナル等のメタルベアリングのオイル供給部44,45等)にオイルを供給しており、各油圧作動部が必要とする要求油圧は、エンジン2の運転状態に応じて変化する。そのため、エンジン2の全ての運転状態において全ての油圧作動部が必要な油圧を得るためには、当該オイルポンプ36は、エンジン2の運転状態ごとに各油圧作動部の要求油圧のうちで最も高い要求油圧以上の油圧を当該エンジン2の運転状態に応じた目標油圧に設定するのが合理的である。そのためには、全ての油圧作動部のうちで要求油圧が比較的高い弁停止機構付きHLA25(弁停止機構25b)、オイルジェット28、クランク軸9のジャーナル等のメタルベアリングのオイル供給部41,42及びVVT32,33の要求油圧を満たすように目標油圧を設定すればよい。このように目標油圧を設定すれば、要求油圧が比較的低い他の油圧作動部は当然に要求油圧が満たされるからである。
図7は、エンジン回転数と油圧作動部の要求油圧との関係を示しており、(a)は、主にエンジン2の低負荷運転時の関係を、(b)はエンジン2の高負荷運転時の関係をそれぞれ示している。
図7(a)を参照すると、エンジン2の低負荷運転時においては、要求油圧が比較的高い油圧作動部は、VVT32,33、クランク軸9のジャーナル等のメタルベアリングのオイル供給部41、42及び弁停止機構付きHLA25の弁停止機構25bである。これら各油圧作動部の要求油圧は、エンジン2の運転状態に応じて変化する。例えば、VVT32,33の要求油圧(図7では、「VVT要求油圧」と記載)は、エンジン回転速度がV0(<V1)以上で略一定である。メタルベアリングのオイル供給部41,42の要求油圧(図7では、「メタル要求油圧」と記載)は、エンジン回転速度が大きくなるにつれて大きくなる。弁停止機構25bの要求油圧(図7では、「弁停止要求油圧」と記載)は、所定範囲のエンジン回転速度(V2〜V3)においてほぼ一定である。そして、これらの要求油圧をエンジン回転速度ごとに大小を比較すると、エンジン回転速度がV0よりも低いときにはメタル要求油圧しかなく、エンジン回転速度がV0〜V1では、VVT要求油圧が最も高く、エンジン回転速度がV1〜V4では、弁停止要求油圧が最も高く、エンジン回転速度がV4〜V6では、VVT要求油圧が最も高く、エンジン回転速度がV6以上では、メタル要求油圧が最も高い。従って、エンジン回転数毎に、上述の最も高い要求油圧をオイルポンプ36の目標油圧に設定する必要がある。
一方、エンジン2の高負荷運転時においては、図7(b)に示すように、要求油圧が比較的高い油圧作動部は、VVT32,33、メタルベアリングのオイル供給部41,42及びオイルジェット28である。低負荷運転の場合と同様に、これら各油圧作動部の要求油圧はエンジン2の運転状態に応じて変化し、例えば、VVT要求油圧は、エンジン回転速度がV0′以上で略一定であり、メタル要求油圧は、エンジン回転速度が大きくなるにつれて大きくなる。また、オイルジェット28の要求油圧は、エンジン回転速度がV1′未満では0であり、そこから或る回転速度まではエンジン回転速度に応じて高くなり、その回転速度以上では一定である。
図8は、エンジン2が特定の運転状態、具体的には、上記油温センサ73により検出される給油路50の油温が、予め定められた基準上限温度Tlim以上のときのエンジン回転速度と要求油圧との関係を示している。同図に示す要求油圧は、VVT32,33等の油圧作動部の要求油圧とは異なり、主にオイル冷却の観点から求められる要求油圧ある。つまり、オイルが長期的に高温状態にあると、その性状が変化(劣化)して摺動部の焼き付きなどをもたらす原因となる。これを未然に防止するには、オイルを冷却する必要があるが、その場合には、オイルポンプ36によるオイルの吐出量を増大させ、上記オイルクーラ38を経由するオイル流量を増大させるのが簡単かつ合理的である。図8は、このオイル冷却に有効となるオイル流量、すなわちオイル冷却用の要求油圧(以下、オイル冷却要求油圧という/本発明の最大油圧に相当する)とエンジン回転速度との関係を示している。なお、基準上限温度Tlimは、その温度で長期的に継続してオイルが使用されると、その性状の変化(劣化)が生じるおそれがある油温であって、試験的に求められた温度である。
オイル冷却要求油圧は、図8(a)に示すように、エンジン2の低負荷運転時においては、エンジン2の運転状態毎のVVT要求油圧、弁停止要求油圧およびメタル要求油圧のいずれの要求油圧よりも大きい。また、このオイル冷却要求油圧は、エンジン回転速度の増加に伴い増加し、特定のエンジン回転速度(上記V2〜V3の間の速度)以上で略一定となる。
一方、エンジン2の高負荷運転時においては、図8(b)に示すように、オイル冷却要求油圧は、エンジン2の運転状態に対応したVVT要求油圧、メタル要求油圧およびオイルジェット要求油圧の何れの要求油圧よりも大きく、このオイル冷却要求油圧は、エンジン回転速度の増加に伴い一定割合で増加し、オイルジェット28の要求油圧が一定となるエンジン回転速度(V2′)を超える所定のエンジン回転速度以上で略一定となる。
このように、オイル冷却要求油圧は、油圧作動部の何れの要求油圧よりも大きい。これにより、VVT32,33等の油圧作動部の作動に支障を来たすことなく、オイルクーラ38を経由する流量を増大させて、オイル冷却を促進させることが可能となっている。
なお、本実施形態では、エンジン2の低負荷運転時のオイル冷却要求油圧は、所定のエンジン回転速度域(V1〜V2)では弁停止要求油圧とほぼ一致し、エンジン2の高負荷運転時のオイル冷却要求油圧は、所定のエンジン回転速度域(V1′〜V2′)では弁停止要求油圧とほぼ一致しているが、これらのエンジン回転速度域についても、オイル冷却要求油圧が他の要求油圧よりも大きくなるようにしてもよい。
本実施形態では、エンジン2の運転状態毎に、VVT32,33、メタルベアリングのオイル供給部41,42及びオイルジェット28の要求油圧のうちで最も高い要求油圧に基づいて当該運転状態の仮の目標油圧が予め設定された油圧制御マップが上記コントローラ100の記憶部に記憶されている。コントローラ100は、その油圧制御マップからエンジン2の運転状態に応じた仮の目標油圧を読み取り、該読み取った仮の目標油圧と、弁停止機構25bの要求油圧との高い方の油圧を目標油圧に設定する。また、コントローラ100の記憶部には、エンジン2の運転状態毎のオイル冷却要求油圧に基づいて当該運転状態の仮の目標油圧が定められた油圧制御マップが記憶されており、コントローラ100は、上記油温センサ73により検出される給油路50の油温が、予め定められた基準上限温度Tlim以上のときには、その油圧制御マップからエンジン2の運転状態に応じた仮の目標油圧を読み取り、該読み取った仮の目標油圧と、弁停止機構25bの要求油圧との高い方の油圧を目標油圧に設定する。この場合、油圧制御マップから読み取った仮の目標油圧は、弁停止機構25bの要求油圧よりも高いか又は等しくなるので、油圧制御マップから読み取った仮の目標油圧がそのまま目標油圧となる。そして、コントローラ100は、油圧センサ70により検出される油圧(実油圧)が該目標油圧になるように、オイルポンプ36の吐出量を制御する油圧フィードバック制御を実行する。
次に、図9、図10を参照しながら、油圧制御マップについて説明する。図7、図8で示した要求油圧は、エンジン回転速度をパラメータとしたものであるが、さらに、エンジン負荷と油温もパラメータとして仮の目標油圧を3次元グラフに表したのが、図9及び図10に示した油圧制御マップである。
すなわち、図9及び図10(a)の油圧制御マップは、エンジン2の運転状態毎に、VVT32,33、メタルベアリングのオイル供給部41,42及びオイルジェット28の要求油圧のうちで最も高い要求油圧に基づいて当該運転状態の仮の目標油圧が予め設定されたものであり、図10(b)の油圧制御マップは、エンジン2の運転状態毎に、オイル冷却要求油圧に基づいて当該運転状態の仮の目標油圧が予め設定されたものである。
ここで、図9(a)、(b)は、エンジン2(油温)の冷間時及び温間時の油圧制御マップをそれぞれ示しており、図10(a)、(b)は、エンジン2(油温)の高温時の油圧制御マップ、詳しくは、(a)は基準上限温度Tlim未満、(b)は基準上限温度Tlim以上の油圧制御マップをそれぞれ示している。コントローラ100は、油温センサ73が検出する油温に応じてこれらの油圧制御マップを使い分ける。すなわち、エンジン2を始動してエンジン2が冷間状態にあるときは、コントローラ100は、図9(a)に示す冷間時の油圧制御マップに基づいてエンジン2の運転状態(エンジン回転速度、エンジン負荷)に応じた仮の目標油圧を読み取る。エンジン2が暖機してオイルが所定の油温(<Tlim)以上になると、図9(b)の温間時の油圧制御マップ又は図10(a)の高温時の油圧制御マップに基づいて仮の目標油圧を読み取る。そして、高温時であってかつ油温が上記基準上限温度Tlimを超えるようなエンジン2の運転状態となると、コントローラ100は、図10(b)に示す油圧制御マップに基づいて仮の目標油圧を読み取る。
上記目標油圧が設定されると、コントローラ100は、その目標油圧をオイル流量(吐出量)に変換して、目標流量(目標吐出量)を得る。そして、コントローラ100は、その目標流量を後述の如く補正した目標流量とエンジン回転速度とから、図5のオイルポンプ36の特性と同様のデューティ比マップを用いて、リニアソレノイドバルブ49を駆動するためのデューティ比を設定し、その設定したデューティ比の制御信号をリニアソレノイドバルブ49に送信し、オイルポンプ36の吐出量を制御する。
図11は、コントローラ100によるオイルポンプ36の吐出量制御の構成を示すブロック図である。
同図に示すように、コントローラ100は、各種センサより検出されたエンジン回転速度、エンジン負荷及び油温より、上記油圧制御マップを用いて仮の目標油圧を読み取り、この仮の目標油圧と弁停止要求油圧との高い方の油圧を目標油圧として設定する。この目標油圧は、油圧センサ70の位置での目標油圧であるため、オイルポンプ36から油圧センサ70までの油圧低下代(予め調べておく)を考慮して目標油圧を修正して(油圧低下代の分を増大して)修正目標油圧を算出する。この修正目標油圧をオイルポンプ36の流量(吐出量)に変換して目標流量(目標吐出量)を得る。
一方、コントローラ100は、吸気側VVT32を作動させる場合の該吸気側VVT32の予測作動量(現在の作動角と目標の作動角との差及びエンジン回転速度から求まる)を流量変換して、吸気側VVT32の作動時の消費流量を求めるとともに、同様に、排気側VVT33を作動させる場合の該排気側VVT33の予測作動量を流量変換して、排気側VVT33の作動時の消費流量を求める。これら両消費流量を上記目標流量に加えて、上記目標流量を補正する。
また、コントローラ100は、弁停止機構25bを作動させて弁停止させる場合の該弁停止機構25bの予測作動量(ロックピン252の予測作動量)を流量変換して、弁停止機構25bの作動時の消費流量を得る。ロックピン252の予測作動量は一定であるため、弁停止機構25bの作動時の消費流量も一定である。この弁停止機構25bの作動時の消費流量も上記目標流量に加えて、上記目標流量を補正する。
エンジン2の定常運転時には、VVT32,33および弁停止機構25bの予測作動量は0であるので、これらの予測作動量に応じた目標流量の補正はなされない。これに対し、エンジン2の過渡運転時には、VVT32,33および弁停止機構25bの予測作動量に応じて目標流量の補正がなされる、つまりオイルポンプ36の吐出量が補正制御されることになる。
さらに、予測作動量に応じて補正された目標流量は、油圧フィードバック量によって更に補正される。この油圧フィードバック量は、本実施形態では、エンジン2の過渡運転時に、油圧センサ70により検出される油圧(実油圧)が目標油圧の変化に対してどのように変化するかを予測した予測油圧と該検出される実油圧との偏差に応じた油圧フィードバック量である。実油圧が予測油圧よりも高いときには、油圧フィードバック量が負の値となり、上記目標流量を減量する一方、実油圧が予測油圧よりも低いときには、油圧フィードバック量が正の値となり、上記目標流量を増量する。実油圧が予測油圧と同じであれば、油圧フィードバック量は0である(油圧フィードバック量による補正はなされない)。この場合、目標油圧がステップ状に変化したときのオイルポンプ36自体の応答遅れや、油圧がオイルポンプ36から油圧センサ70に達するまでの応答遅れ等を考慮して予測油圧が求められる。
このようにして補正した目標流量(図11では「補正目標流量」と記載)及びエンジン回転速度から、コントローラ100は、予め記憶されている図外のデューティ比マップを用いて上記デューティ比を設定し、その設定したデューティ比の制御信号をリニアソレノイドバルブ49に送信する。これによりオイルポンプ36の吐出量を制御する。
<オイル供給装置1の作用効果等>
上記のようなオイル供給装置1によれば、油温が基準上限温度Tlim未満の通常のエンジン2の運転状態では、その運転状態毎に、VVT32,33、弁停止機構25b、オイルジェット28およびクランク軸9のジャーナル等のメタルベアリングのオイル供給部41,42等の油圧作動部の要求油圧のうちで最も高い要求油圧が目標油圧とされ、油圧センサ70により検出される油圧(実油圧)が目標油圧になるように、オイルポンプ36の吐出量がフィードバック制御される。そのため、各油圧作動部の作動油圧(要求油圧)を適切に確保しながら、オイルポンプ36の駆動負荷を必要最小限に保ち、これにより燃費の向上を図ることができる。
しかも、このオイル供給装置1によれば、油温センサ73により検出される給油路50の油温が基準上限温度Tlim以上になると、上記の通り、エンジン2の運転状態に対応した油圧作動部の要求油圧のうちで最も高い要求油圧を超えるオイル冷却要求油圧が目標油圧に設定され、この目標油圧に基づきオイルポンプ36からの吐出量が制御される。つまり、オイルポンプ36によるオイルの吐出量が、油圧作動部の要求油圧に対応する吐出量を超えて増大され、これにより、オイルクーラ38を経由するオイルの流量が増大することによりオイルの冷却が促進される。従って、既存のオイルクーラ38を利用した簡単かつ合理的な構成で、オイルの温度上昇を効果的に抑制することができ、ひいてはオイルの劣化に起因する摺動部の焼き付きなどを高度に防止することが可能となる。
なおこの場合、オイル冷却要求油圧は、上記の通り、エンジン2の運転状態に対応した油圧作動部の要求油圧のうちで最も高い要求油圧を超える油圧とされているので(図8参照)、VVT32,33等の油圧作動部の作動に支障を来たすことなく、オイルの温度上昇を抑制することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図面を用いて説明する。
図12は、第2実施形態に係るエンジン2′を示しており、図13は、このエンジン2′に適用されるオイル供給装置1′を示している。なお、第2実施形態のエンジン2′及びオイル供給装置1′の構成は第1実施形態と共通するため、以下の説明では、第1実施形態との相違点について詳細に説明する。
<エンジンの構成>
図12に示す、第2実施形態のエンジン2′は、弁停止機構25bを備えていない。すなわち、エンジン2′には、その全気筒について、各スイングアーム20,21のピボット機構として、弁停止機構の無いHLA24が設けられている。
また、エンジン2′のシリンダブロック5のうち、シリンダボア7の吸気側の側壁内には、気筒配列方向に延びる上記メインギャラリ54が設けられている。このメインギャラリ54の下側近傍の位置であって各ピストン8に対応する位置には、メインギャラリ54と連通するピストン潤滑用のオイルジェット56が設けられている。このオイルジェット56は、ピストン8の下側に位置するノズル56aを有しており、このノズル56aからピストン8の主にスカート部裏面に向けて、ピストン冷却用のオイルジェット28よりも狭角でオイル(潤滑用オイル)を噴射するように構成されている。ピストン8のスカート部には、オイル案内用の通路が形成されており、ノズル56aから噴射されるオイルが当該通路を通じてピストン摺動面に案内される。
また、VVT32、33のうち、排気側のVVT33は、第1実施形態と同様に、油圧作動により弁特性を変更する油圧VVTであるが、吸気側のVVT32は、電気作動、具体的には電気モータの作動により弁特性を変更する電動VVTである。このように吸気側と排気側とで異なる作動方式を採用しているのは、吸気側では、エンジン2′の始動後、いち早く弁特性を制御することが求められる場合が多いため、電動方式の方が有利だからである。すなわち、油圧VVTはその作動に比較的高い油圧が求められるが、エンジン回転数が低く、また油温も低いエンジン始動直後の運転領域では、十分な作動油圧を確保することが難しく、弁特性を速やかに制御することが難しいためである。
<オイル供給装置1′の説明>
図13に示すように、第2実施形態のオイル供給装置1′においては、メインギャラリ54に、ピストン潤滑用のオイルジェット56とそのオイル噴射をオンオフする開閉弁57が接続されている。また、VVT33(進角油圧室336及び遅角油圧室335)が排気側第1方向切替弁35を介して第2連通路52に接続されている。
第2連通路52のうち、排気側第1方向切替弁35の接続位置よりも下流側の位置には、可変オリフィス58が介設されている。この可変オリフィス58は、オイルの流量を変更する流量調整弁の一つであり、コントローラ100の制御により第2連通路52のオイル流量を調整する。
なお、図示を省略するが、上記エンジン2′のクランク軸9は、第2、第4メインジャーナルのメタルベアリングに供給されるオイルを、該クランク軸9の内部通路を通じてクランクピンに供給するものである。そのため、このオイル供給装置1′には、クランク軸9のクランクピンに配置されたメタルベアリングの上記オイル供給部42は設けられておらず、クランク軸9の5つのメインジャーナルに配置されたメタルベアリングのオイル供給部41のうち、高い油圧が必要となる第2、第4番メタルベアリングのオイル供給部41aがメインギャラリ54に接続され、それ以外のメインジャーナル、すなわち要求油圧が比較的低い第1、第3、第5メタルベアリングのオイル供給部41bは第3連通路53に接続されている。これにより、クランクピン専用の上記オイル供給42を設けることなく、クランク軸9の全てのメタルベアリング、およびクランクピンに対して適量のオイルを供給できるようになっている。
また、このオイル供給装置1′には、給油路50の油圧を検出する油圧センサ70として、メインギャラリ54又はそれ同等の油圧となる上流側の油路(当例では第2連通路52)の油圧を検出する第1油圧センサ70aと、その下流側の油路(当例では第3連通路53)の油圧を検出する第2油圧センサ70bとが設けられている。
なお、上記エンジン2′には、上記の通り弁停止機構が設けられていないため、オイル供給装置1′には、第1実施形態で説明した上記油路61,62、第2方向切替弁46,47及び逆止弁48等は備えられていない。
この第2実施形態でも、基本的には第1実施形態と同様に、コントローラ100が各種センサより検出されたエンジン回転速度、エンジン負荷及び油温より、エンジン2′の運転状態毎に、予めコントローラ100の記憶部に記憶されている油圧制御マップを用いて目標油圧を読み取り、第1油圧センサ70aにより検出される給油路50の油圧(実油圧が)が目標油圧となるように、オイルポンプ36の吐出量をフィードバック制御する。
第2実施形態では、上記の通り、エンジン2′は弁停止機構を備えておらず、また、吸気側のVVT32は電動方式である。そのため、図示を省略するが、エンジン2′の運転状態毎に、VVT32、クランク軸9の第2、第4番メタルベアリングのオイル供給部41a(41)及びオイルジェット28、56の要求油圧のうちで最も高い要求油圧に基づいて当該運転状態の目標油圧が予め設定された油圧制御マップ(図9及び図10に相当する油圧制御マップ)が上記コントローラ100の記憶部に記憶されており、コントローラ100は、その油圧制御マップからエンジン2′の運転状態に応じた目標油圧を設定する。
なお、第2実施形態では、上記油圧制御マップ(以下、第1油圧制御マップと称す)とは別に、主に第3連通路53を含む下流側の油路63〜66(以下、サブギャラリと称す)に接続される油圧作動部との関係で定められた油圧制御マップ(以下、第2油圧制御マップと称す)がコントローラ100に記憶されている。具体的には、エンジン2′の運転状態毎に、油路63〜66に接続されるHLA24、カムシャフト18、19のカム部18a,19a等のオイル供給部29,30、カムシャフト18、19のメタルベアリングのオイル供給部44、45、及びクランク軸9の第1、第3番、第5番メタルベアリングのオイル供給部41b(41)等のうちで最も高い要求油圧に基づいて当該運転状態の目標油圧が予め設定された油圧制御マップ(図9及び図10に相当する油圧制御マップ)が上記コントローラ100の記憶部に記憶されており、コントローラ100は、この第2油圧制御マップからエンジン2′の運転状態に応じた目標油圧を設定する。そして、コントローラ100は、第2油圧センサ70bにより検出される給油路50の油圧(実油圧が)が第2油圧制御マップから求めた目標油圧となるように、可変オリフィス58の開度をフィードバック制御する。
すなわち、コントローラ100は、エンジン2′の運転状態毎に、第1油圧制御マップを用いて目標油圧(以下、第1目標油圧という)を決定し、第1油圧センサ70aにより検出される給油路50の油圧(実油圧が)が第1目標油圧となるように、図11の吐出量制御の構成と同等の構成に基づき、オイルポンプ36の吐出量をフィードバック制御するその一方で、エンジン2′の運転状態毎に、第2油圧制御マップを用いて目標油圧(以下、第2目標油圧という)を決定し、第2油圧センサ70aにより検出される給油路50の油圧(実油圧が)が第2目標油圧となるように、可変オリフィス58の開度をフィードバック制御する。
コントローラ100は、油温センサ73により検出される給油路50の油温が基準上限温度Tlim以上になると、第1油圧制御マップ(図10(b)に相当する油圧制御マップ)に基づき、エンジン2′の運転状態に対応した油圧作動部の要求油圧のうちで最も高い要求油圧を超えるオイル冷却要求油圧を第1目標油圧に設定し、この第1目標油圧に基づきオイルポンプ36からの吐出量を制御する。なお、コントローラ100には、高温時の第2油圧制御マップとして、図10(b)に相当するような、基準上限温度Tlim以上の専用のマップは記憶されていない。そのため、コントローラ100は、基準上限温度Tlimに拘わらず、高温時には、一つの第2油圧制御マップ(図10(a)に相当する油圧制御マップ)に基づき第2目標油圧を設定し、この第2目標油圧に基づき可変オリフィス58の開度をフィードバック制御する。
<オイル供給装置1′の作用効果等>
第2実施形態のオイル供給装置1′によれば、エンジン2′の運転状態毎に、VVT32、クランク軸9の第2、第4番メタルベアリングのオイル供給部41a(41)及びオイルジェット28、56の要求油圧のうちで最も高い要求油圧が第1目標油圧とされ、第2連通路52に設けられた第1油圧センサ70aにより検出される油圧(実油圧)が該第1目標油圧になるように、オイルポンプ36の吐出量がフィードバック制御される。そのため、各油圧作動部の作動油圧(要求油圧)を適切に確保しながら、オイルポンプ36の駆動負荷を必要最小限に保ち、燃費の向上を図ることができる。
しかも、このオイル供給装置1′によれば、エンジン2′の運転状態毎に、HLA24、カムシャフト18、19のカム部18a,19a等のオイル供給部29,30、カムシャフト18、19のメタルベアリングのオイル供給部44、45、及びクランク軸9の第1、第3番、第5番メタルベアリングのオイル供給部41b(41)等のうちで最も高い要求油圧が該第2目標油圧とされ、第3連通路53に設けられた第2油圧センサ70bにより検出される油圧(実油圧)が該第2目標油圧になるように、可変オリフィス58の開度がフィードバック制御される。そのため、サブギャラリ(第3連通路53を含む下流側の油路63〜66)の油圧が、オイルジェット28、56等の作動によるメインギャラリ54の油圧変動の影響を受けて大きく変動することが抑制される。
従って、この第2実施形態のオイル供給装置1′によれば、オイルポンプ36の駆動損失を抑制しながら、給油路50に接続される全ての油圧作動部に対して、必要な油量、油圧のオイルをより確実にかつ安定的に供給することが可能となる。
なお、油温センサ73により検出される給油路50の油温が基準上限温度Tlim以上になると、エンジン2′の運転状態に対応した油圧作動部の要求油圧のうちで最も高い要求油圧を超えるオイル冷却要求油圧が第1目標油圧に設定され、この第1目標油圧に基づきオイルポンプ36からの吐出量が制御される。従って、この第2実施形態についても、第1実施形態と同様に、油温が基準上限温度Tlim以上となるエンジン2′の運転状態のときには、オイルクーラ38の流量を増大させて、オイルの温度上昇を抑制することができる。
この場合、第2実施形態によれば、上記の通り、第2目標油圧に基づき可変オリフィス58が制御されるため、オイルクーラ38を経由するオイルの流量を増大させる場合でも、サブギャラリ(第3連通路53を含む下流側の油路63〜66)に接続される各油圧作動部を適切に作動させることができるという利点がある。すなわち、オイルクーラ38のオイルの吐出量が増大すると給油路50全体の油圧が上昇するため、サブギャラリに接続されるような比較的要求油圧が低い油圧作動部については、油圧の上昇によって作動不良が生じることが考えられる。しかし、第2実施形態によれば、上記の通り、高温時の第2油圧制御マップ(図10(a)に相当する油圧制御マップ)に基づき定められる目標油圧(第2目標油圧)に基づき可変オリフィス58の開度が制御されるので、サブギャラリの油圧が上昇し過ぎることが抑制され、これにより各油圧作動部を適正に作動させることができる。
<その他の構成等>
ところで、以上説明したオイル供給装置1、1′は、本発明にかかるエンジンのオイル供給装置の好ましい実施形態の例示であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、第1実施形態(図4)では、ピストン冷却用のオイルジェット28は、メインギャラリ54の油圧が該オイルジェット28の要求油圧に達するとオイルを噴射する構成であるが、第2実施形態のピストン潤滑用のオイルジェット56と同様に、開閉弁の制御によりオイル噴射をオンオフできるように構成してもよい。この場合、開閉弁としてリニアソレノイドバルブを適用することによってオイル噴射量を制御できるように構成した上で、油温が基準上限温度Tlim以上となってオイルポンプ36からのオイル吐出量が増大されるとき、すなわち、図10(b)の油圧制御マップに基づきオイルポンプ36が制御されるときに、オイルジェット28からのオイル噴射量を低減させるように構成してもよい。この構成によれば、オイルの温度上昇を抑制する上でより有効となる。すなわち、第1実施形態(図4)の構成の場合、油温が基準上限温度Tlim以上となってオイルポンプ36からのオイル吐出量が増大して油圧が上昇すると、これに伴いオイルジェット28からのオイル噴射量が増大し、ピストンからのオイルの受熱量も増大することとなるが、上記のようにオイルジェット28からのオイル噴射量を低減させる構成によれば、該オイル噴射量の低減によって、ピストンからのオイルの受熱量を抑制することができるため、その分、オイルの温度上昇を抑制することが可能となる。この場合には、例えば図14に示すような制御マップ、具体的には、所定の油圧P0を超えるとオイル噴射量を漸減させるようにオイル噴射量と油圧との関係を定めた制御マップを予め上記記憶部に記憶させ、油圧センサ70が検出する油圧に基づき、コントローラ100が上記ソレノイドバルブを制御するように構成することができる。なお、このような構成は、第2実施形態のオイルジェット28、56についても適用可能である。
なお、第1実施形態では、「オイルが所定の高油温状態となるようなエンジンの運転状態」として、油温センサ73が検出する油温が基準上限温度Tlim以上になる状態をコントローラ100が検知し、これにより図10(b)の油圧制御マップに基づきオイルポンプ36を制御することによりオイル吐出量を増大させているが、「オイルが所定の高油温状態となるようなエンジンの運転状態」は、必ずしも基準上限温度Tlimを基準として判断されるものには限定されない。例えば第1実施形態では、図7(b)に示すように、エンジンの高負荷運転状態で、エンジン回転速度がV1′以上でオイルジェット28によるオイル噴射を開始するが、このようにオイルジェット28によるオイル噴射が開始されると、ピストンからの受熱量が増大してオイル温度が上昇するので、このオイルジェット28が作動するとき、すなわちエンジン速度がV1′以上のときを「オイルが所定の高油温状態となるようなエンジンの運転状態」と判断して、オイルポンプ36によるオイル吐出量を増大させるように構成してもよい。また、所定のエンジン負荷以上である高負荷運転状態、あるいは、所定のエンジン回転速度以上である高回転状態で所定のエンジン負荷以上である高負荷状態であるときを「オイルが所定の高油温状態となるようなエンジンの運転状態」と判断して、オイルポンプ36によるオイル吐出量を増大させるように構成してもよい。第2実施形態についても同様に、オイルジェット28、56が作動するとき、を「オイルが所定の高油温状態となるようなエンジンの運転状態」と判断して、オイルポンプ36によるオイル吐出量を増大させるように構成してもよい。
また、上記実施形態では、オイルポンプ36としてエンジン2、2′により駆動されるポンプが適用されているが、オイルポンプ36は、電気モータにより駆動され、回転速度を制御してオイル吐出量を変更するものであってもよい。
また、上記実施形態では、本発明を直列4気筒ガソリンエンジンに適用した例について説明したが、本発明は、これ以外のエンジン、例えばディーゼルエンジンなどについても適用可能である。