JP6315062B1 - 可変バルブタイミング機構付きエンジンの制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】異なる運転領域に移行する際の可変バルブタイミング機構の作動時におけるポンピングロスを低減して燃費の向上を図る。【解決手段】エンジンの運転領域に対応して、吸気バルブ及び排気バルブの少なくとも一方の開弁又は閉弁タイミングを変更する可変バルブタイミング機構を備えている。制御装置は、運転領域の移行に伴い、可変バルブタイミング機構に対して、吸気バルブ及び排気バルブの開弁期間のオーバラップ量を制御する過渡期におけるオーバラップ量を、エンジンの運転領域ごとにあらかじめ設定されたオーバラップ量よりも大きくし、移行した運転領域に収まった際に、あらかじめ設定されたオーバラップ量に戻す。【選択図】図11

Description

本発明は、可変バルブタイミング機構付きエンジンの制御装置に関する。
下記の特許文献1には、気筒の膨張行程における燃焼の終了持期を検知し、その終了時期を判定値と比較することで、バルブオーバラップによる燃焼不良又は失火を引き起こすおそれがあるか否かを判断する内燃機関の制御装置が記載されている。燃焼不良又は失火を引き起こすおそれがあると判断した場合は、そうでない場合と比較してバルブオーバラップ期間を短くするように可変バルブタイミング(Variable Valve Timing:VVT)機構を操作することが示されている。
特開2014−005750号公報
前記従来の内燃機関の制御装置においては、燃焼の安定性を確保するために、バルブオーバラップ期間を短く設定している。しかしながら、バルブオーバラップ期間を短くすると、ポンピングロス(ポンプ損失)が増大して燃費が悪化するという問題がある。
本発明は、異なる運転領域に移行する際の可変バルブタイミング機構の作動時におけるポンピングロスを低減して燃費の向上を図れるようにすることを目的とする。
前記の目的を達成するため、本発明は、エンジンの運転領域の移行時に、移行先の運転領域における開弁期間のオーバラップ量を所定のオーバラップ量よりも一時的に大きくする構成とする。
具体的に、本発明は、可変バルブタイミング機構付きエンジンの制御装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
すなわち、第1の発明は、エンジンの運転領域に対応して、吸気バルブ及び排気バルブの少なくとも一方の開弁タイミング又は閉弁タイミングを変更する可変バルブタイミング機構を備えたエンジンの制御装置であって、運転領域の移行に伴い、可変バルブタイミング機構に対して、吸気バルブ及び排気バルブの開弁期間のオーバラップ量を制御する過渡期における該オーバラップ量を、エンジンの運転領域ごとにあらかじめ設定されたオーバラップ量よりも大きくし、移行した運転領域に収まった際には、あらかじめ設定されたオーバラップ量に戻すと共に、過渡期においては、吸気バルブ及び排気バルブを同一の位相にシフトする
これによれば、エンジンの運転領域の移行の過渡期には、吸気バルブ及び排気バルブの開弁期間のオーバラップ量を所定量よりも大きくすることにより、ポンピングロスが減少するので燃費が向上する。さらに、移行した運転領域に収まった際には、所定のオーバラップ量に戻すため、エンジンの燃焼安定性を確保することができる。その上、移行の過渡期において、吸気バルブ及び排気バルブを同一の位相にシフトするため、例えば、排気バルブの遅開きと吸気バルブの遅閉じとを同時に実現することができる。その結果、排気バルブの遅開きにより高膨張比を得られてエンジントルクが増大し、且つ、吸気バルブの遅閉じによりポンピングロスを低減することができる。
第2の発明は、上記第1の発明において、エンジンは複数の気筒を有しており、移行した運転領域は、緩減速により移行した、複数の気筒の全てが作動する全気筒運転領域であってもよい。
これによれば、全気筒の一部を休止させる減気筒運転領域から、緩減速により移行した全気筒運転領域に適用することができる。
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、エンジンの加速度又は減速度に応じてその度合いが小さいほど、過渡期におけるオーバラップ量を大きく設定してもよい。
これによれば、移行の過渡期におけるポンピングロスをより減少することができる。
の発明は、上記第1〜第3の発明において、遅角方向にシフトする際に、排気用の可変バルブタイミング機構の作動速度が吸気用の可変バルブタイミング機構の作動速度よりも高くてもよい。
これによれば、吸排気バルブの開弁期間のオーバラップ量を確実に大きくすることができる。
の発明は、上記第1〜第3の発明において、遅角方向にシフトする際に、排気用の前記可変バルブタイミング機構の作動開始時期が吸気用の前記可変バルブタイミング機構の作動開始時期よりも早くてもよい。
このようにしても、吸排気バルブの開弁期間のオーバラップ量を確実に大きくすることができる。
本発明によれば、異なる運転領域に移行する際の可変バルブタイミング機構の作動時におけるポンピングロスを低減して燃費の向上を図ることができる。
図1は本発明の一実施形態に係るエンジンの制御装置における油圧式の可変バルブタイミング機構が設けられたエンジンの部分的な概略構成を示す断面図である。 図2(a)〜図2(c)は一実施形態に係る油圧式のバルブ停止機構の構成及び作動状態を示す断面図である。 図3は一実施形態に係る排気用の可変バルブタイミング機構であって、ロック機構によりベーン体(カム軸)が最進角位置に保持された状態でのカム軸に垂直な方向を示す断面図である。 図4は一実施形態に係る排気用の可変バルブタイミング機構であって、ロック機構が解除されてベーン体(カム軸)が最遅角位置に保持された状態でのカム軸に垂直な方向を示す断面図である。 図5の右図は図3のV−V線における断面図であり、図5の左図は油圧制御バルブを示す断面図である。 図6は一実施形態に係るエンジンのオイル供給装置の構成を示す概略図である。 図7は一実施形態に係る、電動式で吸気用の可変バルブタイミング機構と油圧式で排気用の可変バルブタイミング機構とを示すエンジンの模式的な側面図である。 図8は一実施形態に係る、各カム軸に固定された、電動式で吸気用の可変バルブタイミング機構と油圧式で排気用の可変バルブタイミング機構とを示す部分的な斜視図である。 図9は図8のIX−IX線における断面図である。 図10は一実施形態に係る排気用の可変バルブタイミング機構の作動速度の制御方法を示す制御ブロック図である。 図11は一実施形態に係る第1の制御であって、バルブタイミングの進角側の対象シーンと遅角側の対象シーンとにおける各バルブのシフト位置と開閉タイミングとの関係を示すグラフである。 図12は図11の対象シーンAに対応する模式的なバルブタイミング図である。 図13は図11の対象シーンBに対応する模式的なバルブタイミング図である。 図14は一実施形態に係る第2の制御であって、エンジンの減気筒運転領域及び全気筒運転領域におけるエンジン回転数と負荷との関係を示す模式的なグラフである。 図15は一実施形態に係る第2の制御であって、減気筒運転中におけるエンジンの回転数ごとの空気充填効率と排気用VVTの遅角量との関係を示すVVTマップである。 図16は一実施形態に係る第2の制御であって、全気筒運転中におけるエンジンの回転数ごとの空気充填効率と排気用VVTの遅角量との関係を示すVVTマップである。 図17は本発明の概念図であって、運転領域が高負荷状態から低負荷状態に移行する際の、吸排気バルブの開弁期間のオーバラップ量の時間的変化を表す模式的なグラフである。 図18は本発明の概念図であって、運転領域が低負荷状態から高負荷状態に移行する際、又は低負荷状態からより低負荷状態に移行する際の吸排気バルブの開弁期間のオーバラップ量の時間的変化を表す模式的なグラフである。 図19は図17のオーバラップ量がOL0の時点のバルブタイミングを示す模式的なグラフである。 図20は図17のオーバラップ量がOL3の時点のバルブタイミングを示す模式的なグラフである。 図21は図17のオーバラップ量がOL4の時点のバルブタイミングを示す模式的なグラフである。 図22は図20及び図21の状態を実現する一例のバルブタイミングを示す模式的なグラフである。 図23は一実施形態の第3の制御に係るバルブタイミングを示す模式的なグラフである。 図24は一実施形態に係る第3の制御であって、VTTの作動速度に制限を加えない全気筒運転時の油圧とVTT作動速度の関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物又はその用途を制限することを意図しない。
(一実施形態)
本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るエンジンの制御装置における油圧作動式の可変バルブタイミング(VVT)機構が設けられたエンジンを示している。
(エンジンの構成)
図1に示すように、エンジン2は、例えば、第1気筒から第4気筒が図1の紙面に垂直な方向に直列に順次配置された直列4気筒ガソリンエンジンであって、自動車等の車両に搭載される。エンジン2において、ヘッドカバー3、シリンダヘッド4、シリンダブロック5、クランクケース(図示せず)及びオイルパン6(図6を参照。)が上下に連結されている。また、シリンダブロック5に形成された4つのシリンダボア7内をそれぞれに摺動可能なピストン8と、上記クランクケースに回転自在に支持されたクランク軸9とは、コネクティングロッド10によって連結されている。シリンダブロック5のシリンダボア7とピストン8とシリンダヘッド4とによって燃焼室11が気筒ごとに形成されている。
シリンダヘッド4には、燃焼室11にそれぞれ開口する吸気ポート12及び排気ポート13が設けられている。該吸気ポート12及び排気ポート13には、それぞれを開閉する吸気バルブ14及び排気バルブ15が配設されている。該吸気バルブ14及び排気バルブ15は、それぞれリターンスプリング16、17により閉方向(図1の上方)に付勢されており、それぞれ回転するカム軸18、19の外周に設けたカム部18a、19aによって、スイングアーム20、21のほぼ中央部に回転自在に設けられたカムフォロア20a、21aが下方に押される。スイングアーム20、21は、それぞれの一端側に設けられたピボット機構25aの頂部を支点として揺動することにより、各スイングアーム20、21の他端部において、吸気バルブ14及び排気バルブ15がリターンスプリング16、17の付勢力に抗して下方に押されて開動する。
エンジン2の気筒列方向の中央部に位置する第2気筒及び第3気筒のスイングアーム20、21におけるピボット機構(後述するHLA25のピボット機構25aと同様の構成を採る。)として、油圧によりバルブクリアランスを自動的に0に調整する公知の油圧ラッシュアジャスタ24(以下、Hydraulic Lash Adjusterの略記を用いてHLA24と呼ぶ。)が設けられている。なお、HLA24は、図6にのみ示す。
一方、エンジン2の気筒列方向の両端部に位置する第1気筒及び第4気筒のスイングアーム20、21に対しては、ピボット機構25aを有するバルブ停止機構付きHLA25が設けられている。このバルブ停止機構付きHLA25は、上記のHLA24と同様にバルブクリアランスを自動的に0に調整可能に構成されている。これに加え、バルブ停止機構付きHLA25は、エンジン2における全気筒の一部である第1気筒及び第4気筒の作動を休止させる減気筒運転時には、第1気筒及び第4気筒の吸排気バルブ14、15の作動を停止(開閉動作を停止)させる一方、全気筒(4気筒)を作動させる全気筒運転時には、第1気筒及び第4気筒の吸排気バルブ14、15を作動(開閉動作)させるようにする。なお、第2気筒及び第3気筒の吸排気バルブ14、15は、減気筒運転時及び全気筒運転時の双方で作動する。このため、減気筒運転時には、エンジン2の全気筒のうち第1気筒及び第4気筒のみの吸排気バルブ14、15が作動を停止し、全気筒運転時には、全気筒の吸排気バルブ14、15が作動する。なお、減気筒運転及び全気筒運転は、後述するように、エンジン2の運転状態に応じて適宜切り替えられる。
シリンダヘッド4における第1及び第4気筒に対応する吸気側及び排気側の部分には、上記のバルブ停止機構付きHLA25の下端部を挿入して装着するための装着穴26、27がそれぞれ設けられている。また、シリンダヘッド4における第2気筒及び第3気筒に対応する吸気側及び排気側の部分には、上記のHLA24の下端部を挿入して装着するための、装着穴26、27と同様の装着穴がそれぞれ設けられている。さらに、シリンダヘッド4には、バルブ停止機構付きHLA25用の装着穴26、27にそれぞれ連通する2つずつの油路(61、63)、(62、64)が穿設されている。バルブ停止機構付きHLA25が装着穴26、27に嵌合された状態で、各油路61、62は、バルブ停止機構付きHLA25におけるバルブ停止機構25b(図2(a)〜図2(c)を参照。)を作動させる油圧(作動圧)を供給するように構成されている。一方、油路63、64は、バルブ停止機構付きHLA25のピボット機構25aがバルブクリアランスを自動的に0に調整するための油圧を供給するように構成されている。なお、HLA24用の装着穴には、油路63、64のみが連通している。各油路61〜64については、図6により後に詳述する。
シリンダブロック5には、シリンダボア7の排気側の側壁内を気筒列方向に延びるメインギャラリ54が設けられている。メインギャラリ54の下側の近傍には、該メインギャラリ54と連通するピストン冷却用のオイルジェット28(オイル噴射バルブ)が各ピストン8に設けられている。オイルジェット28は、ピストン8の下側に配置されたノズル部28aを有しており、該ノズル部28aからピストン8の頂部の裏面に向けてエンジンオイル(以下、単にオイルと呼ぶ。)を噴射するように構成されている。
各カム軸18、19の上方には、パイプで形成されたオイルシャワー29、30がそれぞれ設けられている。潤滑用のオイルが、オイルシャワー29、30からその下方に位置するカム軸18、19のカム部18a、19aと、さらに下方に位置するスイングアーム20、21及びカムフォロア20a、21aの接触部とに滴下するように構成されている。
ここで、図2を参照しながら、油圧作動装置の1つであるバルブ停止機構25bについて説明する。バルブ停止機構25bは、エンジン2における全気筒の一部である第1気筒及び第4気筒の吸排気バルブ14、15のうち少なくとも一方のバルブ(本実施形態では、両方のバルブ)をエンジン2の運転状態に応じて油圧の作動により作動を停止する。これにより、エンジン2の運転状態に応じて減気筒運転に切り替えられた際には、バルブ停止機構25bによって第1気筒及び第4気筒の各吸排気バルブ14、15の開閉動作が停止する。また、全気筒運転に切り替えられた際には、バルブ停止機構25bによるバルブの作動が停止しなくなって、第1気筒及び第4気筒の各吸排気バルブ14、15の開閉動作が行われる。
上記したバルブ停止機構25bは、バルブ停止機構付きHLA25に設けられている。すなわち、バルブ停止機構付きHLA25は、ピボット機構25aとバルブ停止機構25bとを備える。ピボット機構25aは、油圧によりバルブクリアランスを自動的に0に調整する、公知のHLA24のピボット機構と実質的に同一の構成である。
バルブ停止機構25bには、図2(a)に示すように、ピボット機構25aの動作をロックするロック機構250が設けられている。該ロック機構250は、ピボット機構25aを軸方向に摺動自在に収納する有底の外筒251の側周面において径方向に対向する2箇所に形成した貫通孔251aに対してそれぞれ出入り可能に設けられた一対のロックピン252(ロック部材)を備えている。これら一対のロックピン252は、スプリング253により径方向の外側へ付勢されている。外筒251の内底部とピボット機構25aの底部との間には、ピボット機構25aを外筒251の上方に押圧して付勢するロストモーションスプリング254が設けられている。
上記の両ロックピン252が外筒251の貫通孔251aに嵌合している場合には、該両ロックピン252の上方に位置するピボット機構25aが上方に突出した状態で固定される。この場合には、ピボット機構25aの頂部がスイングアーム20、21の揺動の支点となるため、カム軸18、19の回転によりそのカム部18a、19aがカムフォロア20a、21aを下方に押すと、吸排気バルブ14、15がリターンスプリング16、17の付勢力に抗して下方に押されて開弁する。このように、第1気筒及び第4気筒において、ロックピン252がバルブ停止機構25bを貫通孔251aに嵌合した状態とすることにより、エンジン2は全気筒運転を行うことができる。
一方、図2(b)及び図2(c)に示すように、作動油圧によって上記の両ロックピン252の外側端面が押圧されると、スプリング253の付勢力に抗して、両ロックピン252が互いに接近するように外筒251の径方向の内側に後退する。その結果、両ロックピン252が外筒251の貫通孔251aから抜けるので、ロックピン252の上方に位置するピボット機構25aがロックピン252と共に外筒251の軸方向の下側に移動してバルブ停止状態となる。
すなわち、吸排気バルブ14、15を上方に付勢するリターンスプリング16、17が、ピボット機構25aを上方に付勢するロストモーションスプリング254よりも付勢力が強くなるように構成されている。これにより、カム軸18、19の回転により各カム部18a、19aがカムフォロア20a、21aをそれぞれ下方に押すと、吸排気バルブ14、15の頂部が各スイングアーム20、21の揺動の支点となる。その結果、吸排気バルブ14、15は閉弁されたまま、ピボット機構25aがロストモーションスプリング254の付勢力に抗して下方に押される。従って、作動油圧によりロックピン252を貫通孔251aに対して非嵌合の状態にすることにより、減気筒運転を行うことができる。
(油圧式排気VVT機構)
図3〜図5は油圧作動装置の1つである排気用の可変バルブタイミング(VVT)機構33(以下、単にVVT33と呼ぶ。)を示している。なお、図5には、該VVT33の動作を油圧により制御する油圧制御バルブ(Oil Control Valve)110も図示している。
図3〜図5に示すように、VVT33は、ほぼ円環状のハウジング201と、該ハウジング201の内部に収容されたベーン体202とを有している。ハウジング201は、クランク軸9と同期して回転するカムプーリ203と一体回転可能に連結されており、クランク軸9と連動して回転する。ベーン体202は、締結ボルト205により、排気バルブ15を開閉するカム軸19と一体回転可能に連結されている。
ハウジング201の内部には、該ハウジング201の内周面とベーン体202の外周面に設けられた複数のベーン202aとによって区画された複数の進角作動室207及び遅角作動室208がそれぞれ形成されている。進角作動室207及び遅角作動室208は、図5及び図6に示すように、それぞれ進角側油路211及び遅角側油路212を介して、公知の油圧制御バルブ110としての排気側第1方向切替バルブ35と接続されている。該排気側第1方向切替バルブ35は、可変容量型オイルポンプ36と接続されている。カム軸19及びベーン体202には、これら進角側油路211及び遅角側油路212の一部を構成する進角側通路215及び遅角側通路216がそれぞれ形成されている。
ここで、図3は、各進角側通路215を通して供給されたオイルにより、各ベーン202aがカムプーリ203に対して、すなわちクランク軸9に対して、最進角位置に保持されている場合を示し、図4は、これとは逆に、各遅角側通路216を通して供給されたオイルにより、各ベーン202aがカムプーリ203に対して最遅角位置に保持されている場合を示している。
進角側通路215は、ベーン体202において中心部近傍から放射状に延びて各進角作動室207とそれぞれ接続されている。遅角側通路216は、ベーン体202において中心部近傍から放射状に延びて各遅角作動室208とそれぞれ接続されている。ベーン体202における中心部近傍から放射状に延びる複数の進角側通路215のうちの1つは、ベーン体202の外周面におけるベーン202aが形成されていない部分に形成され、且つ後述するロックピン231が嵌合する嵌合凹部202bの底面と接続されている(図5を参照。)。この嵌合凹部202bを介して、複数の進角作動室207のうちの1つと接続される。なお、図4に示す遅角作動室208のうち、1つの遅角作動室208aは遅角側通路216と連通しておらず、オイルの供給はなく、ベーン202aに対する作動トルクは生じない。従って、遅角作動室208の室数は、進角作動室207の室数と比べて少ないため、作動に必要な油量も少なくなる。
図5に示すように、VVT33には、該VVT33の動作をロックするロック機構230が設けられている。該ロック機構230は、カム軸19のクランク軸9に対する位相角を特定の位相角で固定するためのロックピン231を有している。本実施形態では、この特定の位相角は最進角の位相角である。但し、最進角の位相角に限られず、どのような位相角であってもよい。
ロックピン231は、ハウジング201の径方向に摺動可能に配設されている。ハウジング201におけるロックピン231に対する該ハウジング201の径方向の外側の部分には、ばねホルダ232が固定されている。このばねホルダ232とロックピン231との間には、該ロックピン231をハウジング201の径方向の内側に付勢するロックピン付勢ばね233が設けられている。上記の嵌合凹部202bがロックピン231と対向する位置にあるときには、ロックピン付勢ばね233によって、ロックピン231が嵌合凹部202bと嵌合してロック状態となる。これにより、ベーン体202がハウジング201に固定されて、カム軸19のクランク軸9に対する位相角が固定される。
以上の構成により、排気側第1方向切替バルブ35の制御によって、VVT33の進角作動室207及び遅角作動室208へのオイルの供給量を制御することができる。具体的には、排気側第1方向切替バルブ35の制御により、進角作動室207に遅角作動室208よりも多くの供給量(高い油圧)でもってオイルを供給すると、カム軸19がその回転方向(図3及び図4の矢印の方向)に回動して、排気バルブ15の開時期が早くなり(図3を参照。)、カム軸19の最進角位置ではロックピン231が嵌合凹部202bに嵌合する。
一方、排気側第1方向切替バルブ35の制御により、遅角作動室208に進角作動室207よりも多くの供給量(高い油圧)でもってオイルを供給すると、カム軸19がその回転方向とは逆向きに回動して、排気バルブ15の開時期が遅くなる(図4を参照。)。カム軸19の最進角位置から遅角させる場合には、油圧により、ロックピン231をロックピン付勢ばね233に抗してハウジング201の径方向の外側に押し出すことにより、ロックピン231によるロックを解除する。このとき、嵌合凹部202bと連通する遅角作動室208を除く遅角作動室208には既にオイルが充填されている。このため、ロック解除の直後に、排気側第1方向切替バルブ35により、カム軸19をその回転方向とは逆向きに回動させることにより、排気バルブ15の開時期を遅く(遅角)することができる。
なお、VVT33のロックピン231のロック解除には、ロックピン付勢ばね233の付勢力に打ち克つ油圧を遅角作動室208に供給する必要があり、この油圧は、排気側第1方向切替バルブ35の制御によって得られる。また、この油圧を遅角作動室208に供給しながら、該油圧よりも低い油圧(基本的には、0に近い油圧)を進角作動室207に供給することにより、ロックピン231のロック解除の直後にカム軸19がその回転方向とは逆向きに回動して、ロック位置から外れる。その後に、排気側第1方向切替バルブ35の制御によって、排気バルブ15の開弁位相の制御を行う。
また、VVT33の各ベーン202aと、ハウジング201における該ベーン202aに対し、カム軸19の回転方向とは反対側に対向する部分との間(すなわち、進角作動室207)には、少なくとも1つのアシストばね(圧縮コイルばね)(図示せず)が配設されている。該アシストばねは、ベーン体202を進角側に付勢して、該ベーン体202の進角側への移動をアシストする。これは、カム軸19には、後述する燃料ポンプ81及びバキュームポンプ82(図6を参照。)の負荷が掛かっており、この負荷に打ち克ってベーン体202を最進角位置にまで確実に移動させる(ロックピン231を嵌合凹部202bに確実に嵌合させる)ためである。
図5の左図に、油圧制御バルブ110により構成される排気側第1方向切替バルブ35の構成の一例を示す。同左図に示すように、排気側第1方向切替バルブ35は、筐体350内に保持されたコイル351と、該コイル351の内側に摺動可能に支持されたプランジャ352と、該プランジャ352の一方の端部に保持されたスプール弁354と、該スプール弁354を内部に摺動可能に支持するスリーブ355と、筐体350から突出して配設されたコネクタ359とを有している。
スリーブ355はカムキャップ(不図示)に保持されており、そのプランジャ352側の端部は筐体350に保持されている。スプール弁354におけるプランジャ352と反対側の端部とスリーブ355の底部との間には、スプール弁354にコイル351側に付勢力を与える付勢ばね356が配設されている。
スリーブ355の一側面には、オイルポンプ36と接続された油路68及びカムキャップに形成された開口部を介して供給されるオイルの供給口357aが設けられている。スリーブ355の供給口357aが設けられた当該側面には、オイルの排出口(ドレイン)357b、357cが設けられている。
プランジャ352の他の側面には、進角側油路211及び遅角側油路212、並びにそれぞれに対応してカムキャップに形成された開口部を介して流通するオイルの流通口358a、358bが設けられている。
上記のコネクタ359にOCV駆動デューティ信号が入力されると、そのデューティ比に従って、スプール弁354がプランジャ352によって所定の位置に移動する。これにより、VVT33における進角作動室207又は遅角作動室208に流入する油量が決定される。
(オイル供給装置)
次に、図6を参照しながら、上述のエンジン2にオイルを供給するためのオイル供給装置1について詳細に説明する。
図6に示すように、オイル供給装置1は、クランク軸9の回転によって駆動される可変容量型オイルポンプ36(以下、オイルポンプ36という。)と、該オイルポンプ36と接続され、オイルポンプ36によって昇圧されたオイルをエンジン2の潤滑部及び油圧作動装置に導く給油路50(油圧経路)とを備えている。オイルポンプ36は、エンジン2により駆動される補機である。
給油路50は、パイプ、シリンダヘッド4、及びシリンダブロック5等に穿設されたオイルの通路である。給油路50は、第1連通路51と、メインギャラリ54と、第2連通路52と、第3連通路53と、複数の油路61〜69とから構成されている。
第1連通路51は、オイルポンプ36と連通され、該オイルポンプ36から、詳細には後述する吐出口361bから、シリンダブロック5内の分岐点54aまで延びている。メインギャラリ54は、シリンダブロック5内で気筒列方向に延びている。第2連通路52は、メインギャラリ54上の分岐点54bからシリンダヘッド4まで延びている。第3連通路53は、シリンダヘッド4内で吸気側と排気側との間をほぼ水平方向に延びている。複数の油路61〜69は、シリンダヘッド4内で第3連通路53から分岐している。
オイルポンプ36は、該オイルポンプ36の容量を変更してオイルポンプ36のオイル吐出量を可変にする公知の可変容量型オイルポンプであって、ハウジング361と、駆動軸362と、ポンプ要素と、カムリング366と、スプリング367と、リング部材368とを有している。
ハウジング361は、一端側が開口するように形成され、且つ内部が断面円形状の空間からなるポンプ収容室を有するポンプボディと該ポンプボディの上記一端側の開口を閉塞するカバー部材とから構成される。駆動軸362は、ハウジング361に回転自在に支持され、ポンプ収容室のほぼ中心部を貫通し、且つクランク軸9によって回転駆動される。ポンプ要素は、ポンプ収容室内に回転自在に収容されて中心部が駆動軸362に結合されたロータ363及び該ロータ363の外周部に放射状に切欠き形成された複数のスリット内にそれぞれ出没自在に収容されたべーン364から構成される。カムリング366は、ポンプ要素の外周側にロータ363の回転中心に対して偏心可能に配置され、ロータ363及び相隣接するベーン364と共に複数の作動油室であるポンプ室365を画成する。スプリング367は、ポンプボディ内に収容され、ロータ363の回転中心に対するカムリング366の偏心量が増大する側へ、カムリング366を常時付勢する付勢部材である。リング部材368は、ロータ363の内周側の両側部に摺動自在に配置され、ロータ363よりも小径の一対のリング状部材である。
また、ハウジング361は、内部のポンプ室365にオイルを供給する吸入口361aと、ポンプ室365からオイルを吐出する吐出口361bとを有している。ハウジング361の内部には、該ハウジング361の内周面とカムリング366の外周面とによって画成された圧力室369が形成されており、該圧力室369にはそれに開口する導入孔369aが設けられている。
このように、オイルポンプ36は、導入孔369aから圧力室369にオイルを導入することにより、カムリング366が支点361cに対して揺動して、ロータ363がカムリング366に対して相対的に偏心し、該オイルポンプ36の吐出容量が変化するように構成されている。
オイルポンプ36の吸入口361aには、オイルパン6に臨むオイルストレーナ39が接続されている。オイルポンプ36の吐出口361bと連通する第1連通路51には、上流側から下流側に順に、オイルフィルタ37及びオイルクーラ38が配置されている。オイルパン6内に貯留されたオイルは、オイルポンプ36により、オイルストレーナ39を通して汲み上げられ、その後、オイルフィルタ37で濾過され、且つオイルクーラ38で冷却された後、シリンダブロック5内のメインギャラリ54に導入される。
メインギャラリ54は、上述した、4つのピストン8の背面側に冷却用オイルを噴射するためのオイルジェット28と、クランク軸9を回動自在に支持する5つのメインジャーナルに配置されたメタルベアリングのオイル供給部41と、4つのコネクティングロッドを回転自在に連結する、クランク軸9のクランクピンに配置されたメタルベアリングのオイル供給部42とに接続されている。メインギャラリ54には、オイルが常時供給される。
メインギャラリ54上の分岐点54cの下流側には、油圧式チェーンテンショナにオイルを供給するオイル供給部43と、リニアソレノイドバルブ49を介してオイルポンプ36の圧力室369に、導入孔369aからオイルを供給する油路40とが接続されている。
第3連通路53の分岐点53aから分岐する油路68は、排気側第1方向切替バルブ35と接続されており、該排気側第1方向切替バルブ35の制御により、進角側油路211及び遅角側油路212を介して、排気用のVVT33の進角作動室207及び遅角作動室208にオイルがそれぞれ供給される。また、分岐点53aから分岐する油路64は、オイル供給部45(図6の白抜き三角△を参照。)と、HLA24(図6の黒三角▲を参照。)と、バルブ停止機構付きHLA25(図6の白抜き楕円を参照。)と、燃料ポンプ81と、バキュームポンプ82とに接続されている。オイル供給部45は、排気側のカム軸19のカムジャーナルにオイルを供給する。燃料ポンプ81は、カム軸19により駆動され、燃焼室11に燃料を供給する燃料噴射バルブに高圧の燃料を供給する。バキュームポンプ82は、カム軸19により駆動され、ブレーキマスタシリンダの圧力を確保する。該油路64には、オイルが常時供給される。さらに、油路64の分岐点64aから分岐する油路66は、排気側のスイングアーム21に潤滑用オイルを供給するオイルシャワー30と接続されており、該油路66にもオイルが常時供給される。
第3連通路53の分岐点53cから分岐する油路67には、該油路67の油圧を検出する油圧センサ70が配設されている。また、分岐点53dから分岐する油路63は、吸気側のカム軸18におけるカムジャーナルのオイル供給部44(図6の白抜き三角△を参照。)と、HLA24(図6の黒三角▲を参照。)と、バルブ停止機構付きHLA25(図6の白抜き楕円を参照。)とに接続されている。さらに、油路63の分岐点63aから分岐する油路65は、吸気側のスイングアーム20に潤滑用オイルを供給するオイルシャワー29と接続されている。
また、第3連通路53の分岐点53cから分岐する油路69には、オイルが流れる方向を上流側から下流側への一方向のみに規制する逆止バルブ48が配設されている。この油路69は、逆止バルブ48の下流側の分岐点69aで、バルブ停止機構付きHLA25用の装着穴26、27と連通する上記の2つの油路61、62に分岐する。油路61、62は、第2油圧制御バルブとしての吸気側第2方向切替バルブ46及び排気側第2方向切替バルブ47を介して、吸気側及び排気側の各バルブ停止機構付きHLA25のバルブ停止機構25bとそれぞれ接続されている。これら吸気側第2方向切替バルブ46及び排気側第2方向切替バルブ47をそれぞれ制御することにより、各バルブ停止機構25bにオイルが供給されるように構成されている。
クランク軸9を回転自在に支持するメタルベアリング、ピストン8並びにカム軸18、19等に供給された潤滑用及び冷却用のオイルは、冷却及び潤滑を終えた後には、図示しないドレイン油路を通ってオイルパン6内に滴下し、オイルポンプ36により環流される。
エンジン2の作動は、コントローラ100によって制御される。コントローラ100には、エンジン2の運転状態を検出する各種センサからの検出情報が入力される。コントローラ100は、例えば、クランク角センサ71によりクランク軸9の回転角度を検出し、この検出信号に基づいてエンジン回転速度を検出する。また、アクセルポジションセンサ72により、エンジン2が搭載された車両の乗員によるアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出し、これに基づいて要求トルクを算出する。さらに、油圧センサ70により油路67の圧力を検出する。また、油圧センサ70とほぼ同じ位置に設けた油温センサ73により、油路67におけるオイルの温度を検出する。なお、油圧センサ70及び油温センサ73は、給油路40に配設してもよい。さらに、カム軸18、19の近傍に設けられたカム角センサ74により、該カム軸18、19の回転位相を検出し、検出したカム角に基づいて各VVT33、90の位相角を検出する。また、水温センサ75によって、エンジン2を冷却する冷却水の温度(以下、水温という)を検出する。
コントローラ100は、公知のマイクロコンピュータをベースとする制御装置であって、少なくとも各種センサ(油圧センサ70、クランク角センサ71、スロットルポジションセンサ72、油温センサ73、カム角センサ74、及び水温センサ75等)からの検出信号を入力する信号入力部と、制御に係る演算処理を行う演算部と、制御対象となる装置(排気側第1方向切替バルブ35、吸気側及び排気側第2方向切替バルブ46、47、及びリニアソレノイドバルブ49等)に制御信号を出力する信号出力部と、制御に必要なプログラム及びデータ(油圧制御マップ及びデューティ比マップ等)を記憶する記憶部とを有している。
リニアソレノイドバルブ49は、エンジン2の運転状態に応じてオイルポンプ36の吐出量を制御するための流量(吐出量)制御バルブである。リニアソレノイドバルブ49の開弁時に、オイルポンプ36の圧力室369にオイルが供給されるように構成されている。ここでは、リニアソレノイドバルブ49自体の構成は公知であるため説明を省略する。
コントローラ100は、リニアソレノイドバルブ49に対し、エンジン2の運転状態に応じたデューティ比の制御信号を送信して、該リニアソレノイドバルブ49を介して、オイルポンプ36の圧力室369に供給する油圧を制御する。この圧力室369の油圧により、カムリング366の偏心量を制御してポンプ室365の内部容積の変化量を制御することによって、オイルポンプ36の流量(吐出量)を制御する。すなわち、上記のデューティ比によって、オイルポンプ36の容量が制御される。
(電動式吸気VVT機構)
図7は油圧式で排気用の可変バルブタイミング(VVT)機構33及び電動式で吸気用の可変バルブタイミング(VVT)機構90の動作を模式的に表している。図7に示すように、VVT33及びVVT90の各カムプーリ203は、クランク軸プーリ(スプロケット)9Aにより、タイミングチェーン114を介して駆動される。クランク軸プーリ9AとVVT33のカムプーリ203との間には、油圧式のチェーンテンショナ111が配設されている。また、VVT90のカムプーリ203とクランク軸プーリ9Aとの間には、チェーンガイド112が配設されている。VVT90のカム軸(図示せず)の端部には、後述するように、該カム軸の位相をシフトする電動モータ91が取り付けられている。
図8は油圧式のVVT33と電動式のVVT90との各カム軸を含む斜視図である。また、図9は図8のIX−IX線における断面構成を表している。
図8及び図9に示すように、電動式のVVT90は、電動モータ91とカム軸18における位相のシフトを生じさせる変換部92とから構成される。
図9に示すように、変換部92は、ギヤプーリ(スプロケット)93と、ギヤプラネタリ94と、ギヤカム軸95とから構成されている。ギヤプーリ93は、カムプーリ203の周縁部にねじ留めされ、且つ、例えば34個の内歯を有し、タイミングチェーン114からカムプーリ203に伝わった回転力(トルク)をギヤプラネタリ94に伝える。ギヤプラネタリ94は、ギヤプーリ93の内歯と噛み合う、例えば33個の大外歯及び27個の小外歯を有している。ギヤカム軸95は、ギヤプラネタリ94の小外歯と噛み合う、例えば28個の内歯を有し、カム軸19の端部に固持されている。ここで、電動モータ91の変換部92による減速比は154となる。
(油圧式排気VVT機構の制御)
図10は本実施形態に係るVVT作動速度の制御方法を示す制御ブロック図である。本実施形態に係るVVTの作動速度を制御する、すなわちVVTの作動速度に制限を付与する対象は排気用のVVT33である。
図10に示すように、排気VVT要求進角マップブロックC01において、入力されるエンジン回転数及び空気充填効率から、VVT33の対応するマップ要求進角量が取得される。取得されたマップ要求進角量は、排気VVT速度制限要求ブロックC04に入力される。
一方、排気VVT速度制限値ブロックC02において、入力されるエンジン油温から、減気筒用及び全気筒用のVVT33におけるそれぞれ所定の速度制限値が取得される。取得された速度制限値は、スイッチブロックC03を介して、排気VVT速度制限要求ブロックC04に入力される。なお、スイッチブロックC03には、入力として、上記の排気VVTの速度制限値、及び減気筒(2気筒)運転か否かの「判定値」又は「速度制限なし」が入力され、これらは速度制限要求ブロックC04に入力される。
排気VVT速度制限要求ブロックC04からは、減気筒用又は全気筒用のいずれかの速度制限値に対応した排気VVT要求進角量が出力される。この後、出力された排気VVT要求進角量と現状の排気VVT実進角量との差分が算出され、この差分から、進角量の要求値(目標値)と実進角量との偏差(=「進角量の目/実偏差」)が算出されて、速度制限要求値と共に、進角F/B制御ブロックC05に入力される。
進角F/B制御ブロックC05において、入力された進角量の目/実偏差から、例えばPID(Proportional-Integral-Differential)制御法によりOCV駆動デューティが導出される。導出されたOCV駆動デューティは、図5に示した油圧制御バルブ(OCV)110に入力され、該油圧制御バルブ110が駆動される。
(VVT機構に対する第1の制御)
図11は、本実施形態に係るエンジン2及びオイル供給装置1を搭載した車両をほぼ一定の速度で且つ減気筒運転で平坦路を走行させた際に、VVT機構への進角トリガ及び遅角トリガが生じた場合のそれぞれの対象シーンにおける排気用のVVT33のシフト位置の目標値(tg)及び実行値(ac)を表している。
図11に示すように、対象シーンAは、進角トリガが生じたことにより、排気用のVVT33(グラフtg、ac)が、最遅角位置の55°CAから20°CAにまで進角している(但し、CAはクランク角を表す。以下、同様。)。このとき、VVT33におけるカム位相の進角速度を、例えば−40°CA/sに制限(図中の破線の矢印a)すると、図12に示すように、排気バルブ15吸気バルブ14との開弁期間のオーバラップ量OL1が増大する。このように、吸排気バルブ14、15の開弁期間のオーバラップ量OL1が増大することにより、ポンピングロスが低減するので、燃費が向上する。
ここで、VVT33のカムの位相速度、すなわち進角速度に制限を加えているのは、オイルの作動油圧を下げて燃費を改善すること、さらに、エンジン2が減気筒運転(ここでは2気筒運転)を行う際に、上述したバルブ停止機構を保持するのに必要な所定の油圧(例えば、105kPa)が要求されることから、VVT機構への供給油量を制限する、すなわち、その動作速度を抑制して供給油量を低減させるのが好ましいことによる。
これに対し、図11の対象シーンBは、遅角トリガが生じたことにより、排気用のVVT33(グラフtg、ac)が、遅角位置の22°CAから55°CAにまで遅角している。このとき、VVT33におけるカム位相の遅角速度を、例えば40°CA/sに制限(図中の破線の矢印b)すると、図13のグラフe1に示すように、吸排気バルブ14、15の開弁期間のオーバラップ量OL2が縮小する。このように、上記開弁期間のオーバラップ量OL2が縮小することにより、ポンピングロスが増大するので、燃費が悪化する。
そこで、本実施形態においては、図11の対象シーンBのグラフtg、acに示すように、VVT33におけるカム位相の遅角速度を、例えば130°CA/s程度に一時的に増大している。このように、本実施形態においては、遅角速度に速度制限を課すと、開弁期間のオーバラップ量OL2が縮小してポンピングロスが増大してしまうところ、積極的に位相速度を上昇させてオーバラップ量OL2を増大させている(図13のグラフe2)。
(VVT機構に対する第2の制御)
図14は、本実施形態に係るエンジン2におけるエンジン回転数と負荷とによる運転領域(減気筒域及び全気筒域)を表している。例えば、減気筒運転領域からトルクの要求が低い運転領域、又は高い運転領域に移行する際には、該減気筒運転領域から全気筒運転領域に移行する。
図15及び図16は、図14の一例として、排気用のVVT33における減気筒運転領域のVVTマップと、該VVT33における全気筒運転領域のVVTマップとをそれぞれ表している。
具体的には、図15は2気筒運転時におけるエンジン回転数ごとの空気充填効率(ce)と排気用のVVT33の遅角量との関係を表している。図16は4気筒運転時におけるエンジン回転数ごとの空気充填効率(ce)と排気用のVVT33の遅角量との関係を表している。いずれの場合も、空気充填効率は1気筒当たりの数値を表している。また、各グラフに付した数値1250、1500等はエンジン回転数(rpm)を表している。
図15に示すように、2気筒運転時には、1気筒当たり4気筒運転時の2倍の負荷となるため、空気充填効率(ce)が0.2以上及び0.6以下の負荷状態では、排気用VVT33の遅角量は30°CA以上となり、相対的に遅角側にシフトしていることが分かる。
一方、図16に示すように、4気筒運転時には、例えば低負荷側では1気筒当たりの空気充填効率が0.2未満となり、排気用のVVT33の遅角量は30°CA未満であり、相対的に進角側にシフトすることが分かる。
図17は、運転領域が高負荷状態から低負荷状態に移行する際の、吸排気バルブ14、15の開弁期間のオーバラップ量の時間的変化を概念的に表している。図17に示すように、本実施形態においては、高負荷状態のオーバラップ量OL0から、所定のオーバラップ量OL4に移行する過渡期においては、該オーバラップ量OL4よりも大きいオーバラップ量OL3を得られるように排気用のVVT33をシフトする。なお、オーバラップ量OL3よりも小さいオーバラップ量OL4を生成する際には、後述するように、排気用のVVT33の遅角のシフト量を減らす(戻す)のではなく、吸気用のVVT90をさらに遅角方向にシフトさせることにより行う。
図18は、運転領域が低負荷状態から高負荷状態に移行する際、又は低負荷状態からより低負荷状態に移行する際の吸排気バルブ14、15の開弁期間のオーバラップ量の時間的変化を概念的に表している。図18に示すように、ここでは、低負荷状態のオーバラップ量OL0から、所定のオーバラップ量OL6に移行する過渡期においては、該オーバラップ量OL6よりも大きいオーバラップ量OL5を得られるように排気用のVVT33をシフトする。ここでも、オーバラップ量OL5よりも小さいオーバラップ量OL6を生成するのは、吸気用のVVT90をより遅角方向にシフトさせることによって行うことができる。
図19〜図21に、図17に示した各オーバラップ量を吸排気バルブ14、15の位相シフト量として表している。ここでは、図20において、排気用のVVT33の位相シフトが先に開始され、所定の遅角角度に達した後に、図21において、吸気用のVVT90の位相シフトが開始されて、所定のオーバラップ量OL4となる遅角角度で停止する。ここで、排気用のVVT33が、吸気用のVVT90よりもその作動速度が構成的に遅い場合には、作動速度が速いVVT90の作動開始時期を、所定のオーバラップ量OL3が得られるまで遅らせればよい。
図22は、排気バルブ15と吸気バルブ14との開閉タイミングを縦軸t0に採り、その時間的変化を横軸t1に採っている。
具体的には、横軸の時刻t2において、排気バルブ15のカム位相のシフトを開始し、その後の時刻t3において、吸気バルブ14のカム位相のシフトを開始し、その後、所定のオーバラップ量OL4となる時刻t4において、吸排気バルブ14、15の各カムの位相シフトを停止する。
第2の制御においては、移行した先の運転領域は、例えば、緩減速により移行した全気筒運転領域であってもよい。なお、緩減速とは、例えば、エンジン2に対する燃料カットが生じない程度の減速をいう。
また、エンジン2の加速度又は減速度に応じて、その加減速の度合いが小さいほど、移行の過渡期におけるオーバラップ量(OL3等)を大きく設定する。これにより、移行の過渡期におけるポンピングロスをより減少することができる。
(VVT機構に対する第3の制御)
吸気用のVVT90に油圧式を用いるか、又は電動式であっても油圧式のVVT33よりも作動速度を小さくできる構成である場合には、図23に示すように、排気用のVVT33と、吸気用のVVT90とを同時に遅角方向に作動させてもよい。なお、この場合、吸排気バルブ14、15における開弁期間のオーバラップ量OL3を過渡的に増大させているため、吸気バルブ14の作動停止タイミングを排気バルブ15の作動停止タイミングよりも遅らせることにより、オーバラップ量OL3よりも小さい所定のオーバラップ量OL4を得る。
また、過渡的に増大させるオーバラップ量OL3を得られる限りは、必ずしもVVT33とVVT90とを同時に作動させる必要はなく、いずれのVVTを先に作動させてもよい。
なお、VVT33の作動速度の一例として、図24に該VVT33の作動速度の油温及び油圧依存性を示す。図24においては、VVTの作動速度には制限を与えていない。
また、本実施形態に係る上述の第1から第3の各制御において、排気用のVVT33の作動速度を増減するには、図5に示した油圧制御バルブ110からVVT33への単位時間当たりのオイルの供給量を増減すればよい。
−効果−
本実施形態に係る第1の制御においては、図11の対象シーンBに示すように、排気用のVVT33を遅角方向にシフトする場合に、一時的に作動速度を上げて、該排気用のVVT33と吸気用のVVT90との開弁期間のオーバラップ量を大きくしている。これにより、各VVT33、90のシフトの過渡期に互いの開弁期間のオーバラップ量が増えるので、ポンピングロスが低減して燃費が向上する。また、吸気バルブ14の遅閉じによっても、ポンピングロスが低減する。さらに、排気バルブ15の遅開きによって、燃焼時の高膨張比化を実現することができる。
また、本実施形態に係る第2の制御においては、図20及び図21に示すように、例えば、排気用のVVT33のカム位相を、吸気用のVVT90に先んじて遅角させている。これにより、該排気用のVVT33と吸気用のVVT90との開弁期間のオーバラップ量が一時的に増大する。その結果、第1の制御と同様に、各VVT33、90のシフトの過渡期に互いの開弁期間のオーバラップ量が増えるので、ポンピングロスが低減して燃費が向上する。さらに、吸気バルブ14の遅閉じの効果、及び排気バルブ15の遅開きの効果をも同様に得ることができる。
また、本実施形態に係る第3の制御においては、図23及び図24に示すように、遅角方向にシフトする際の排気用VVT33の作動速度を、吸気用VVT90の作動速度よりも過渡的に速くすれば、VVT33とVVT90との開弁期間のオーバラップ量が一時的に増大する。従って、上記と同様に、両バルブ14、15の開弁期間のオーバラップ量が増えるので、ポンピングロスが低減して燃費が向上する。さらに、吸気バルブ14の遅閉じの効果、及び排気バルブ15の遅開きの効果をも同様に得ることができる。
本発明に係るエンジンの制御装置は、可変バルブタイミング機構を備えた自動車用エンジンの制御装置として有用である。
1 オイル供給装置
2 エンジン
3 ヘッドカバー
8 ピストン
9 クランク軸
14 吸気バルブ
15 排気バルブ
18 吸気側のカム軸
19 排気側のカム軸
25 バルブ停止機構付き油圧ラッシュアジャスタ
25a ピボット機構
25b バルブ停止機構
33 油圧式で排気用の可変バルブタイミング機構
35 排気側第1方向切替バルブ
36 可変容量型オイルポンプ
90 電動式で吸気用の可変バルブタイミング機構
91 電動モータ
92 変換部
110 油圧制御バルブ(OCV)
207 進角作動室
208 遅角作動室

Claims (5)

  1. エンジンの運転領域に対応して、吸気バルブ及び排気バルブの少なくとも一方の開弁タイミング又は閉弁タイミングを変更する可変バルブタイミング機構を備えたエンジンの制御装置であって、
    運転領域の移行に伴い、前記可変バルブタイミング機構に対して、前記吸気バルブ及び排気バルブの開弁期間のオーバラップ量を制御する過渡期における該オーバラップ量を、前記エンジンの運転領域ごとにあらかじめ設定されたオーバラップ量よりも大きくし、
    移行した運転領域に収まった際には、あらかじめ設定された前記オーバラップ量に戻すと共に、前記過渡期においては、前記吸気バルブ及び排気バルブを同一の位相にシフトするエンジンの制御装置。
  2. 請求項1に記載のエンジンの制御装置において、
    前記エンジンは複数の気筒を有しており、
    移行した前記運転領域は、緩減速により移行した、前記複数の気筒の全てが作動する全気筒運転領域であるエンジンの制御装置。
  3. 請求項1又は2に記載のエンジンの制御装置において、
    エンジンの加速度又は減速度に応じてその度合いが小さいほど、前記過渡期におけるオーバラップ量を大きく設定するエンジンの制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置において、
    遅角方向にシフトする際に、排気用の前記可変バルブタイミング機構の作動速度が吸気用の前記可変バルブタイミング機構の作動速度よりも高いエンジンの制御装置。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置において、
    遅角方向にシフトする際に、排気用の前記可変バルブタイミング機構の作動開始時期が吸気用の前記可変バルブタイミング機構の作動開始時期よりも早いエンジンの制御装置。
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