JP2016011595A - 油圧制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジン始動時におけるポンプ容量を変更することが可能な油圧制御装置を提供する。
【解決手段】機械式オイルポンプ5の吐出ポート50cから吐出されたオイルの制御油圧室TCへの供給量をOCV60によって変更して機械式オイルポンプ5のポンプ容量を変更可能とする。制御油圧室TCへのオイルの供給が可能な電動オイルポンプ7を設ける。エンジン始動時においてバッテリの蓄電残量が所定量を超えている場合には、電動オイルポンプ7を作動し、この電動オイルポンプ7から制御油圧室TCにオイルを供給することにより、機械式オイルポンプ5のポンプ容量を低減させる。吐出ポート50cからの吐出圧が調整リング53の回動を可能にする圧力まで上昇した時点で電動オイルポンプ7を停止し、OCV60による機械式オイルポンプ5のポンプ容量変更動作に切り換える。
【選択図】図2
【解決手段】機械式オイルポンプ5の吐出ポート50cから吐出されたオイルの制御油圧室TCへの供給量をOCV60によって変更して機械式オイルポンプ5のポンプ容量を変更可能とする。制御油圧室TCへのオイルの供給が可能な電動オイルポンプ7を設ける。エンジン始動時においてバッテリの蓄電残量が所定量を超えている場合には、電動オイルポンプ7を作動し、この電動オイルポンプ7から制御油圧室TCにオイルを供給することにより、機械式オイルポンプ5のポンプ容量を低減させる。吐出ポート50cからの吐出圧が調整リング53の回動を可能にする圧力まで上昇した時点で電動オイルポンプ7を停止し、OCV60による機械式オイルポンプ5のポンプ容量変更動作に切り換える。
【選択図】図2
Description
本発明は可変容量型オイルポンプを備えた油圧制御装置に係る。特に本発明は、制御油圧室の容積を変更することによってポンプ容量を可変とするオイルポンプを備えた油圧制御装置に関する。
従来、エンジンに装備されるオイルポンプとして、エンジンの動力を受けて作動する機械式オイルポンプを採用する場合に、エンジンの動力損失を低減することを目的として、可変容量型オイルポンプが適用されることがある(例えば特許文献1などを参照)。
特許文献1に開示されている可変容量型オイルポンプは、互いに噛み合うインナロータおよびアウタロータの回転により、吸入ポートから吸い込んだオイルを吐出ポートから吐出する内接ギヤポンプにおいて、アウタロータを外周から回転自在に保持する調整リングを設けている。そして、ポンプハウジング内に設けられた制御油圧室(この特許文献1では加圧空間と称している)に導入されるオイルの油圧(以下、制御油圧という場合もある)を受けて調整リングが変位するようになっている。これにより、吸入ポートおよび吐出ポートに対するインナロータおよびアウタロータの相対的な位置が変化し、この位置の変化によって入力軸の1回転あたりの吐出量、即ちポンプ容量が変化する。
また、同文献の段落0072〜0078や図面の図8などに開示されているように、前記制御油圧室に導入される制御油圧を変更するための構成としては、オイルポンプから吐出されるオイルの一部を前記制御油圧室に向けて供給可能な前記加圧油路に電磁バルブ(OCV;Oil Control Valve)を設けている。そして、この電磁バルブによって前記制御油圧を変更することで、ポンプ容量を可変としている。
具体的に、ポンプ容量を小さくするときには、電磁バルブを加圧位置に切り換えて、オイルポンプから吐出されるオイルの一部を制御油圧室に送り込み、制御油圧室の容積が大きくなる向きに調整リングを変位させる。
反対にポンプ容量を大きくするときには、電磁バルブをドレン位置に切り換えることによって制御油圧室からオイルを排出し、この制御油圧室の容積が小さくなる向きに調整リングを変位させる。
ところで、特許文献1に開示されているような可変容量型オイルポンプは、故障時におけるフェイルセーフを考慮し(故障が発生しても潤滑性能が確保されるように)、通常状態ではポンプ容量が最大となるように構成されている。つまり、前述した如く制御油圧室にオイルが供給されない状況(電磁バルブをドレン位置に切り換えた状態)では、制御油圧室の容積が小さくなる向きに調整リングが変位してポンプ容量が最大になるようにし、これにより、故障等が原因で制御油圧室にオイルが供給されない状況においても、潤滑性能が確保されるようにしている。
このため、エンジンの始動時(故障が発生していない始動時)にあっても、制御油圧室にオイルが供給されていないことからポンプ容量は最大となっている。従って、このエンジンの始動時や始動初期時(例えばクランキング時等)にあっては、高い潤滑性能は要求されないにも拘わらず、必要以上にポンプ容量が大きくなっている。その結果、オイルポンプを作動させるための動力が大きく必要になって(オイルポンプの作動によるエンジンの動力損失が大きくなって)、エンジンの燃料消費率の悪化を招くことになる。
本発明は、エンジン始動時等におけるポンプ容量を低減することが可能な油圧制御装置を提供するものである。
−発明の解決原理−
本発明の解決原理は、駆動源(例えばエンジン)の始動時や始動初期時に、可変容量型オイルポンプの吐出圧が低い状況であっても電動オイルポンプを利用して制御油圧室にオイルを供給することによってポンプ容量を低減できるようにしている。
本発明の解決原理は、駆動源(例えばエンジン)の始動時や始動初期時に、可変容量型オイルポンプの吐出圧が低い状況であっても電動オイルポンプを利用して制御油圧室にオイルを供給することによってポンプ容量を低減できるようにしている。
−解決手段−
具体的に、本発明は、駆動源の動力を受けることにより作動可能であると共に、この作動によって吐出するオイルの一部を制御油圧室に供給し、この制御油圧室の容積を変更することにより容量調整部材を変位させて入力軸の1回転あたりの吐出量が変更可能とされた可変容量型オイルポンプを備えた油圧制御装置を前提とする。この油圧制御装置に対し、前記可変容量型オイルポンプは、前記制御油圧室の容積が拡大するように前記容量調整部材が変位した場合には、前記制御油圧室の容積が縮小するように前記容量調整部材が変位した場合に比べて、前記入力軸の1回転あたりの吐出量が少なくなるようになっている。また、前記制御油圧室に対してオイルの供給が可能な電動オイルポンプを備えさせる。そして、前記駆動源の運転開始前から、前記可変容量型オイルポンプの吐出油圧が前記容量調整部材の変位を可能にする圧力に達するまでの期間中の少なくとも一部の期間において、前記電動オイルポンプが作動し、この電動オイルポンプから前記制御油圧室にオイルを供給して、前記制御油圧室の容積を拡大させる構成としている。
具体的に、本発明は、駆動源の動力を受けることにより作動可能であると共に、この作動によって吐出するオイルの一部を制御油圧室に供給し、この制御油圧室の容積を変更することにより容量調整部材を変位させて入力軸の1回転あたりの吐出量が変更可能とされた可変容量型オイルポンプを備えた油圧制御装置を前提とする。この油圧制御装置に対し、前記可変容量型オイルポンプは、前記制御油圧室の容積が拡大するように前記容量調整部材が変位した場合には、前記制御油圧室の容積が縮小するように前記容量調整部材が変位した場合に比べて、前記入力軸の1回転あたりの吐出量が少なくなるようになっている。また、前記制御油圧室に対してオイルの供給が可能な電動オイルポンプを備えさせる。そして、前記駆動源の運転開始前から、前記可変容量型オイルポンプの吐出油圧が前記容量調整部材の変位を可能にする圧力に達するまでの期間中の少なくとも一部の期間において、前記電動オイルポンプが作動し、この電動オイルポンプから前記制御油圧室にオイルを供給して、前記制御油圧室の容積を拡大させる構成としている。
駆動源の運転開始前から、可変容量型オイルポンプの吐出油圧が容量調整部材の変位を可能にする圧力に達するまでの期間中にあっては、この可変容量型オイルポンプから吐出されるオイルを利用したポンプ容量の変更(入力軸の1回転あたりの吐出量の変更)が不能となっているか、または、ポンプ容量の変更が適切に行えない状況となっている。このような状況において、電動オイルポンプを作動させ、この電動オイルポンプから制御油圧室にオイルを供給する。これにより、制御油圧室の容積を拡大させることができ、入力軸の1回転あたりの吐出量を少なくすることができる。
このように、本解決手段では、駆動源の運転開始時や運転開始初期時であっても(可変容量型オイルポンプから吐出されるオイルの油圧が低い状況であっても)、電動オイルポンプを利用することでポンプ容量を小さくでき、オイルポンプを作動させるための動力を小さくできて、駆動源のエネルギ消費率(駆動源がエンジンの場合には燃料消費率)の改善を図ることができる。
また、前記駆動源の運転開始前であって前記電動オイルポンプへの給電が可能となったタイミングから前記電動オイルポンプを作動させ、この電動オイルポンプから前記制御油圧室にオイルを供給して、前記制御油圧室の容積を拡大させる構成としておくことが好ましい。
これによれば、駆動源の運転が開始される前に、ポンプ容量が小さくなる位置に容量調整部材を変位させておくことができる。このため、駆動源の運転開始時点における動力損失を小さくすることができる。例えば、スタータモータを使用して駆動源を始動させるものにあっては、スタータモータの小型化を図ることができる。
また、前記可変容量型オイルポンプから吐出されたオイルの前記制御油圧室への供給量を調整可能な制御油圧調整バルブを備えさせ、前記可変容量型オイルポンプの吐出油圧が前記容量調整部材の変位を可能にする圧力に達した場合には、前記電動オイルポンプを停止し、前記制御油圧調整バルブによる前記制御油圧室へのオイルの供給量の調整によって前記容量調整部材を変位させることが好ましい。
これによれば、可変容量型オイルポンプの吐出油圧が容量調整部材の変位を可能にする圧力に達した後には、電動オイルポンプが停止することで、それ以降の電動オイルポンプによる電力消費が無くなる。つまり、必要以上に電動オイルポンプを作動させないことで、電力の浪費を抑制することができる。
また、前記電動オイルポンプの作動により前記制御油圧室にオイルを供給している状態において、前記電動オイルポンプに給電する蓄電装置の蓄電残量が所定値以下に達した場合には、前記電動オイルポンプを停止し、前記制御油圧調整バルブの制御によって前記可変容量型オイルポンプから吐出されたオイルの一部を前記制御油圧室へ供給する動作に切り換えることが好ましい。
つまり、蓄電装置の蓄電残量が所定値以下に達して電動オイルポンプからのオイルの供給によるポンプ容量調整動作が不能になった場合、または、不能になる可能性が生じた場合には、制御油圧調整バルブの制御によるポンプ容量調整動作に切り換えられることになる。これにより、蓄電装置の蓄電残量が所定値以下に達した時点でポンプ容量が急変してしまうといった状況を回避することができる。
本発明では、駆動源の運転開始前から、可変容量型オイルポンプの吐出油圧が容量調整部材の変位を可能にする圧力に達するまでの期間中の少なくとも一部の期間において、電動オイルポンプから制御油圧室へオイルを供給してポンプ容量を低減できるようにしている。このため、可変容量型オイルポンプの吐出圧が低い状況であってもポンプ容量を低減することが可能になる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。この実施の形態では、自動車用の4気筒ガソリンエンジンのオイル供給系統に本発明を適用した場合について説明するが、これに限ることはない。
−エンジンおよびオイル供給系統の概略構成−
まず、図1に仮想線で外形を示すように、本実施形態に係るエンジン(駆動源)1は、クランクシャフト13の長手方向(図1における左右方向)に複数のシリンダ(図示せず)が設けられた直列多気筒エンジンである。各シリンダそれぞれにはピストン12(図1では一つのみを示している)が収容されている。各ピストン12は、コネクティングロッド12aを介してクランクシャフト13に連結されている。クランクシャフト13は、複数のクランクジャーナル13aによってエンジン1の下部(クランクケース)に回転自在に支持されている。
まず、図1に仮想線で外形を示すように、本実施形態に係るエンジン(駆動源)1は、クランクシャフト13の長手方向(図1における左右方向)に複数のシリンダ(図示せず)が設けられた直列多気筒エンジンである。各シリンダそれぞれにはピストン12(図1では一つのみを示している)が収容されている。各ピストン12は、コネクティングロッド12aを介してクランクシャフト13に連結されている。クランクシャフト13は、複数のクランクジャーナル13aによってエンジン1の下部(クランクケース)に回転自在に支持されている。
エンジン1の上部には、各シリンダ毎に吸気バルブ12bおよび排気バルブ12cが2つずつ配設されている。各バルブ12b,12cは、図示省略の吸気ポートおよび排気ポートをそれぞれ開閉する。吸気ポートには燃料を噴射するインジェクタ(図示せず)が配設されている。
エンジン1の動弁系は、吸気側および排気側の2本のカムシャフト14,15を有するDOHCタイプとなっている。各カムシャフト14,15は、それぞれ複数のカムジャーナル14a,15aによって回転自在に支持されている。そして、各カムシャフト14,15の前端部(図1の左側端部)にそれぞれカムスプロケット14b,15bが取り付けられ、タイミングチェーン3によってクランクシャフト13の回転が伝達されるようになっている。
また、クランクシャフト13の前端部の下方にはオイルポンプ(機械式オイルポンプ;可変容量型オイルポンプ)5が配設されている。このオイルポンプ5の入力軸5aにはポンプスプロケット5bが取り付けられている。ポンプスプロケット5bには、チェーン4によってクランクシャフト13の回転が伝達されるようになっている。そして、クランクシャフト13の回転が伝達されてオイルポンプ5が作動すると、オイルパン16内に貯留されているエンジンオイル(以下、単にオイルともいう)が、図示省略のオイルストレーナを介してオイルポンプ5に吸い上げられた後、吐出油路6aに吐出される。
オイルポンプ5から吐出されたオイルは、吐出油路6aからオイルフィルタ6を流通してオイル供給系2のメインギャラリ20に至る。図1の例ではメインギャラリ20は、エンジン1の長手方向に延びている。メインギャラリ20には複数の分岐オイル通路が繋がっている。メインギャラリ20に達したオイルは、これら分岐オイル通路によってエンジン1の潤滑部(前記ピストン12やシリンダライナ、クランクジャーナル13a、カムジャーナル14a,15aなど)に分配される。例えば、メインギャラリ20から下方に延びる複数の分岐オイル通路21によって、クランクジャーナル13aにオイルが供給される。また、メインギャラリ20の両端からそれぞれ上方に延びる分岐オイル通路22,23によって、カムジャーナル14a,15aなどにオイルが供給される。
−オイルポンプの構造−
次に、オイルポンプ5の構造について、図2および図3を参照して詳細に説明する。これらの図に示すようにオイルポンプ5は内接ギヤポンプであり、入力軸5aにより回転される外歯車のドライブロータ51と、これに噛み合って回転される内歯車のドリブンロータ52とを備えている。ドリブンロータ52の外周は調整リング53によって保持されている。この調整リング53は、後述するようにドライブロータ51およびドリブンロータ52を変位させることにより、ポンプ容量を変更する容量調整部材として機能する。
次に、オイルポンプ5の構造について、図2および図3を参照して詳細に説明する。これらの図に示すようにオイルポンプ5は内接ギヤポンプであり、入力軸5aにより回転される外歯車のドライブロータ51と、これに噛み合って回転される内歯車のドリブンロータ52とを備えている。ドリブンロータ52の外周は調整リング53によって保持されている。この調整リング53は、後述するようにドライブロータ51およびドリブンロータ52を変位させることにより、ポンプ容量を変更する容量調整部材として機能する。
オイルポンプ5のハウジング50には、エンジン1の内方に向かって開放する収容凹部50aが形成され、図示しないカバーが重ね合わされるようになっている。この収容凹部50aに前記ドライブロータ51、ドリブンロータ52、調整リング53などが収容される。また、収容凹部50aの底部の中央付近を入力軸5aが貫通し、この入力軸5aの端部に前記ポンプスプロケット5bが取り付けられている。
前記ドライブロータ51は、例えばスプライン(図示せず)によって入力軸5aに取り付けられている。このドライブロータ51の外周にはトロコイド曲線など(例えばインボリュート、サイクロイドなど)で形成された外歯51aが複数(図の例では11個)、形成されている。一方、前記ドリブンロータ52はリング状に形成されている。このドリブンロータ52の内周には前記ドライブロータ51の外歯51aと噛み合う複数の内歯52aが形成されている。この内歯52aの歯数は、ドライブロータ51の外歯51aの歯数よりも1つ多く(図の例では12)なっている。
また、ドリブンロータ52の中心はドライブロータ51の中心に対して所定量、偏心しており、その偏心している側とは反対側(図2の左上側)においてドライブロータ51の外歯51aとドリブンロータ52の内歯52aとが噛み合っている。一方、ドリブンロータ52の外周は、調整リング53のリング状の本体部53aによって摺動可能に保持されている。こうして調整リング53に保持されたドライブロータ51およびドリブンロータ52によって、11葉12節のトロコイドポンプが構成されている。
詳しくは、図2,3に表れているように2つのロータ51,52の間の環状の空間には円周方向に並んで複数の作動室Rが形成され、これらの作動室Rが、2つのロータ51,52の回転に連れて円周方向に移動しながら、その容積が徐々に増大または減少する。こうして徐々に作動室Rの容積が増大していく範囲(図の左下側の範囲)が、吸入ポート50bからオイルを吸入する吸入範囲となり、反対に徐々に作動室Rの容積が減少してゆく範囲(図の右上側の範囲)が、オイルを加圧しながら吐出ポート50cへ送り出す吐出範囲となる。
すなわち、図2,3に破線で示すように、ハウジング50の収容凹部50aの底面には、前記の吸入範囲に対応して吸入ポート50bが開口し、また、吐出範囲に対応して吐出ポート50cが開口している。吸入ポート50bは、ハウジング50の内部に形成された油路(図示せず)を介してオイルストレーナの油路に連通されるとともに、その一部が調整リング53の外側において、後述する低圧室TLに臨んで開口している。一方、吐出ポート50cは、図2,3に破線で示すようにハウジング50の内部に形成されて、前記吐出油路6aに連通している。
このように構成されたオイルポンプ5は、クランクシャフト13によって駆動されて、入力軸5aの回転によりドライブロータ51およびドリブンロータ52が互いに噛み合いながら回転する。そして、それらドライブロータ51およびドリブンロータ52の間に形成される複数の作動室Rが、吸入範囲を移動しながら吸入ポート50bからオイルを吸い込み、その後、吐出範囲を移動しながらオイルを吐出ポート50cへ吐出する。
−容量可変機構−
本実施形態のオイルポンプ5は、ドライブロータ51の1回転毎に吐出されるオイルの量、即ちポンプ容量が変更可能な容量可変機構を備えている。この容量可変機構は、ハウジング50の収容凹部50a内に形成した制御油圧室TCの油圧によって、調整リング53を回動(変位)させる構成である。この調整リング53の変位によって、吸入ポート50bおよび吐出ポート50cに対するドライブロータ51およびドリブンロータ52の相対的な位置が変化し、ポンプ容量が変更される。
本実施形態のオイルポンプ5は、ドライブロータ51の1回転毎に吐出されるオイルの量、即ちポンプ容量が変更可能な容量可変機構を備えている。この容量可変機構は、ハウジング50の収容凹部50a内に形成した制御油圧室TCの油圧によって、調整リング53を回動(変位)させる構成である。この調整リング53の変位によって、吸入ポート50bおよび吐出ポート50cに対するドライブロータ51およびドリブンロータ52の相対的な位置が変化し、ポンプ容量が変更される。
前記調整リング53は、ドリブンロータ52を保持するリング状の本体部53aと、この本体部53aの外周から外方に張り出す張出部53bと、これよりも大きく外方に延びるアーム部53cとを備えている。また、低圧室TLにあっては、収容凹部50aとアーム部53cとの間にコイルバネ54が圧縮された状態で介在されている。このため、調整リング53は、アーム部53cに作用するコイルバネ54の押圧力によって、図2の時計回りに回動するように付勢されている。また、調整リング53の張出部53bには略円弧形状の長穴53d,53eが形成され、これら長穴53d,53eには、ハウジング50に一体形成されたガイドピン55,56がそれぞれ挿入されている。これにより、調整リング53の回動方向が規制されている。
前記調整リング53のアーム部53cは、ハウジング50の収容凹部50a内に周方向に並んで形成される制御油圧室TCと低圧室TLとの間を仕切っている。すなわち、アーム部53cの先端に配設されたシール材57によって、制御油圧室TCと低圧室TLとの間のオイルの流通が制限されている。低圧室TLは、図2において収容凹部50a内の左側から下側にかけて形成され、前述したように吸入ポート50bの一部が開口している。
一方、制御油圧室TCは、図2において収容凹部50a内の左上側に、シール材57,58によってオイルの流通が制限されて形成されている。また、ハウジング50の収容凹部50aの底面には、この制御油圧室TCに臨むように制御油圧導入開口50eが形成されている。前記制御油圧室TC(前記制御油圧導入開口50e)には、供給油路6cの一端が接続されている。この供給油路6cの他端部は、オイルコントロールバルブ(OCV;制御油圧調整バルブ)60に連通していて、このOCV60によって調整された制御油圧が供給油路6cを介して制御空間TCに供給可能となっている。
ここでOCV60について具体的に説明する。このOCV60は、制御油圧室TCへのオイルの供給量を調整することによって制御油圧室TCの容積を変更可能とするものである。図4に示すように、OCV60は、電磁ソレノイド62によってスプール63を駆動するものである。OCV60のケーシング61には導入ポート61aおよび導出ポート61bが形成されている。また、このケーシング61の先端部にはドレンポート61cが形成されている。一方、スプール63は、内部が中空であって、その先端部にドレンポート63aが形成されていると共に、外周面には、前記ケーシング61の導入ポート61aおよび導出ポート61bの少なくとも一つが連通可能な溝63bが周方向の全体に亘って形成されている。
図2に示すように、ケーシング61の導入ポート61aは、前記吐出油路6aおよび分岐油路6bを介して前記吐出ポート50cが連通している。一方、ケーシング61の導出ポート61bは、前記供給油路6cを介して前記制御油圧室TCが連通している。
そして、OCV60は、エンジン1のECU(Electronic Control Unit)100から電磁ソレノイド62に印加される電流値(OCV電流値)に応じて、スプール63の位置が変化する。このスプール63の位置に応じて、OCV60は開弁状態と閉弁状態との間で切り換え可能となっている。具体的に、スプール63が図4(a)に示す位置にある場合には、スプール63の溝63bがケーシング61の導出ポート61bに連通し、導入ポート61aに連通しない状態となる。この状態が、OCV60の第1の開弁状態である。また、スプール63が図4(b)に示す位置にある場合には、スプール63の溝63bがケーシング61の導入ポート61aおよび導出ポート61bに共に連通し、これにより、導入ポート61aと導出ポート61bとが溝63bを介して連通する状態となる。この状態が、OCV60の第2の開弁状態である。また、スプール63が図4(c)に示す位置にある場合には、スプール63の溝63bがケーシング61の導入ポート61aに連通し、導出ポート61bに連通しない状態となる。この場合、導出ポート61bがスプール63のドレンポート63aに連通する状態となる。この状態が、OCV60の閉弁状態である。
すなわち、OCV電流値が零であれば、電磁ソレノイド62は電磁力を発生しないので、図4(c)に示すようにコイルバネ64の押圧力によってスプール63が閉弁位置(図の右端の位置)に付勢され、OCV60は閉弁状態となる。
一方、OCV電流値が大きくなって、電磁ソレノイド62の発生する電磁力が所定値に達すると、図4(b)に示すようにスプール63が図の左側に移動して、OCV60は第2の開弁状態となる。この第2の開弁状態と前記閉弁状態との間で、OCV電流値に応じてスプール63の位置を調整することによって制御油圧を調圧することができる。つまり、吐出ポート50cから吐出されるオイルの一部を制御油圧室TCに向けて供給する場合に、このスプール63の位置によって制御油圧室TCに供給するオイルの量が調整され、これにより制御油圧室TCの油圧を増大(OCV60を第2の開弁状態とすることにより制御油圧室TCへオイルを供給)または減少(OCV60を閉弁状態とすることにより制御油圧室TCからオイルを排出)させて、アーム部53cに作用する押圧力を調整することができる。すなわち、制御油圧室TCの油圧によってアーム部53cには、調整リング53を図2,3の反時計回りに回動させるような押圧力が作用しており、この押圧力とコイルバネ54の押圧力とがバランスするように、図2に示す最大ポンプ容量の状態と図3に示す最小ポンプ容量の状態との間で、調整リング53の位置が決まることになる。
そして、更にOCV電流値を大きくしていくと、電磁ソレノイド62の発生する電磁力も徐々に大きくなっていき、これにより図4(a)に示すようにスプール63が図の左側に移動して、OCV60は第1の開弁状態となる。この第1の開弁状態におけるオイルの供給動作については後述する。
−電動オイルポンプおよびその油圧供給路−
次に、本実施形態の特徴である電動オイルポンプおよびその油圧供給路について説明する。図2に示すように、本実施形態では、前述した機械式のオイルポンプ5とは別に、図示しない電動モータの駆動力を受けて作動する電動オイルポンプ7が設けられている。尚、以下では、前記容量可変機構を備えた前記機械式オイルポンプ5を単にオイルポンプ5と呼ぶ場合もある。
次に、本実施形態の特徴である電動オイルポンプおよびその油圧供給路について説明する。図2に示すように、本実施形態では、前述した機械式のオイルポンプ5とは別に、図示しない電動モータの駆動力を受けて作動する電動オイルポンプ7が設けられている。尚、以下では、前記容量可変機構を備えた前記機械式オイルポンプ5を単にオイルポンプ5と呼ぶ場合もある。
前記電動オイルポンプ7は、図示しない吸入ポートが吸入通路71を介してオイルストレーナ72に接続されており、オイルパン16内に貯留されているオイルをオイルストレーナ72を介して吸い上げ可能となっている。
また、この電動オイルポンプ7は、図示しない吐出ポートが吐出通路73を介してOCV60のケーシング61の導出ポート61bに接続されている。つまり、電動オイルポンプ7が作動して、オイルパン16から吸い上げられたオイルは、吐出通路73を経てOCV60のケーシング61の導出ポート61bに向けて供給される構成となっている。そして、この場合に、OCV60が第1の開弁状態となっておれば、スプール63の溝63bがケーシング61の導出ポート61bに連通していることで、この導出ポート61bに供給されたオイルが、OCV60の内部および供給油路6cを経て制御油圧室TCに供給されることになる。これにより、制御油圧室TCの油圧によって調整リング53を図2,3の反時計回りに回動させることが可能となっている。
なお、前記吐出通路73には、電動オイルポンプ7から吐出されたオイルを浄化するためのオイルフィルタ8が設けられている。
また、前記電動オイルポンプ7の駆動軸を回転させる電動モータとしては、三相同期型モータを用いることができる。この場合、電動オイルポンプ7の駆動回路(図示省略)は、直流交流変換機能を有するインバータを含んで構成される。また、インバータのPWM制御におけるオン・オフデューティを変更することによって、電動オイルポンプ7の出力を可変とすることができる。
なお、三相同期型モータの代わりに単相交流モータを用いることもでき、あるいは直流モータを用いることもできる。
−ECU−
前記のようなポンプ容量の制御は、エンジン制御用のECU100によって行われる。本実施形態のECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびバックアップRAMなどを備えている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。また、RAMは、CPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶し、バックアップRAMは、例えばエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する。
前記のようなポンプ容量の制御は、エンジン制御用のECU100によって行われる。本実施形態のECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびバックアップRAMなどを備えている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。また、RAMは、CPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶し、バックアップRAMは、例えばエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する。
ECU100には、図2に模式的に表しているように、エンジン1のクランクポジションセンサ101、エアフローセンサ102、スロットル開度センサ103、排気空燃比センサ104、水温センサ105、油温センサ106、油圧センサ107、バッテリ(蓄電装置)の蓄電残量を検出するバッテリSOCセンサ108等の各種センサが接続されている。前記油圧センサ107は、前記吐出ポート50cから吐出されるオイルの油圧を検出するものであって、前記吐出油路6aまたはメインギャラリ20に設けられている。また、その他の箇所に油圧センサ107を配置し、その検出値から吐出ポート50cの吐出油圧を推定するようにしてもよい。
また、このECU100には、IGスイッチ109からの信号も入力されるようになっている。このIGスイッチ109は、図示しないイグニッションキーの操作位置に応じた信号をECU100に出力する。具体的には、イグニッションキーの各操作位置であるオフ位置、アクセサリ位置、オン位置、および、スタート位置といった4つの位置に応じた信号が出力される。そして、イグニッションキーがオフ位置からアクセサリ位置に切り換えられると、バッテリからアクセサリ類への電力供給が開始する。この際、電動オイルポンプ7への電力供給も可能になる。その他の操作位置における動作は周知であるため、ここでの説明は省略する。
ECU100は、前記各種センサから入力される信号などに基づいて、エンジン1の運転制御のための所定の制御プログラムや、前記オイルポンプ5のポンプ容量を調整するための制御プログラムを実行する。
前記オイルポンプ5のポンプ容量の調整動作としては、エンジン1が運転している場合には、エンジン1の運転条件に基づいて上述したように容量可変機構を動作させ、オイルポンプ5の容量制御を行う。これは基本的にはエンジン1の負荷率やエンジン回転数に応じてOCV60への指令値を変更するもので、負荷率が高いときにはポンプ容量を増大させる一方、負荷率が低いときにはポンプ容量を減少させる。また、エンジン回転数、即ちオイルポンプ5の入力軸5aの回転数が変化してもオイルの吐出圧が維持されるように、エンジン回転数に応じてポンプ容量を変化させる。
一例として図5には、ECU100からOCV60への指令値(OCV電流値)と、エンジン回転数と、オイルポンプ5の吐出圧との相互の関係を示している。この図から、OCV電流値の制御によってポンプ容量を変更すれば、ポンプ吐出圧を調整できることが解る。すなわち、エンジン回転数が或る程度以上、高ければ、その変化によらずポンプ吐出圧を好適に維持することができ、これにより、オイル供給系2のメインギャラリ20の油圧を好適に維持することができる。
−エンジン始動時ポンプ制御−
次に、前述の如く構成された油圧制御装置(オイルポンプ(機械式オイルポンプ)5、OCV60、電動オイルポンプ7、および、ECU100を含む装置)におけるエンジン始動時のポンプ制御について説明する。
次に、前述の如く構成された油圧制御装置(オイルポンプ(機械式オイルポンプ)5、OCV60、電動オイルポンプ7、および、ECU100を含む装置)におけるエンジン始動時のポンプ制御について説明する。
まず、このエンジン始動時のポンプ制御の概略について説明する。
前記オイルポンプ5は、故障時におけるフェイルセーフを考慮し(故障が発生しても潤滑性能が確保されるように)、通常状態ではポンプ容量が最大となるように構成されている。つまり、前述した如く制御油圧室TCにオイルが供給されない状況(OCV60の閉弁状態)では、コイルバネ54の押圧力により制御油圧室TCの容積が小さくなる向きに調整リング53が回動してポンプ容量が最大になるようにし、これにより、故障等が原因で制御油圧室TCにオイルが供給されない状況においても、ポンプ容量が最大になるようにしている。このため、前記電動オイルポンプを備えていない従来の技術では、エンジンの始動時にあっては、制御油圧室にオイルが供給されていないことからポンプ容量は最大となっている。従って、このエンジンの始動時や始動初期時にあっては、高い潤滑性能は要求されないにも拘わらず、必要以上にポンプ容量が大きくなっている。その結果、機械式オイルポンプを作動させるための動力が大きく必要になって(機械式オイルポンプの作動によるエンジンの動力損失が大きくなって)、エンジンの燃料消費率の悪化を招くことになっていた。
本実施形態では、前述した如く制御油圧室TCへのオイルの供給が可能な電動オイルポンプ7を備えさせ、エンジン1の運転開始前から、オイルポンプ(機械式オイルポンプ)5の吐出油圧が調整リング53の回動(ポンプ容量を小さくする方向への回動)を可能にする圧力に達するまでの期間中において、電動オイルポンプ7が作動して、この電動オイルポンプ7から吐出されたオイルが制御油圧室TCに供給されるようにしている。これにより、エンジン1の始動時におけるオイルポンプ5のポンプ容量を小さくすることを可能にしている。
また、電動オイルポンプ7の作動は、電動オイルポンプ7への給電が可能となったタイミング(本実施形態では、イグニッションキーがアクセサリ位置まで操作されたタイミング)から開始するようにしている。
また、オイルポンプ5の吐出油圧が調整リング53の回動を可能にする圧力に達した場合には、電動オイルポンプ7を停止し、OCV60による制御油圧室TCへのオイルの供給量の調整によって調整リング53を回動させるようにしている。
更に、電動オイルポンプ7の作動により制御油圧室TCにオイルを供給している状態において、バッテリの蓄電残量が所定値以下に達した場合にも、電動オイルポンプ7を停止し、OCV60の制御によってオイルポンプ5から吐出されたオイルの一部を制御油圧室TCへ供給する動作に切り換えるようにしている。
以下、エンジン始動時のポンプ制御の具体的な手順について図6のフローチャートを用いて説明する。この図6に示すフローチャートは、運転者によるエンジン始動操作時(例えばキーシリンダにイグニッションキーが挿入された時点)から所定のサイクルタイムで繰り返し実行される。
まず、ステップST1では、バッテリの蓄電残量が所定量αを超えているか否かを判定する。具体的には、前記バッテリSOCセンサ108によって検出されているバッテリの蓄電残量が所定量αを超えているか否かを判定する。これは、今回のエンジン始動時において、電動オイルポンプ7を作動させることによるポンプ容量の低減動作が可能であるか否かを判断するものである。つまり、バッテリの蓄電残量が所定量α以下であった場合には、電動オイルポンプ7を作動させることができたとしても、そのオイル吐出量が不足し、ポンプ容量の低減動作を良好に行うことができなくなる。この点に鑑み、ステップST1は、バッテリの蓄電残量に応じて電動オイルポンプ7を利用したポンプ容量の低減動作が可能であるか否かを判断するものである。
なお、前記所定量αは、電動オイルポンプ7の作動に必要な電力(単位時間あたりの消費電力)や、制御油圧室TCの容積等に基づいて実験やシミュレーションによって適宜設定される。つまり、電動オイルポンプ7の作動に必要な電力が大きいほど、ポンプ容量の低減動作に必要な電力も大きくなるので、前記所定量αは大きな値として設定される。また、制御油圧室TCの容積が大きいほど、この制御油圧室TCに供給すべきオイルの量が多く、それに伴ってポンプ容量の低減動作に必要な電力も大きくなるので、前記所定量αは大きな値として設定される。
バッテリの蓄電残量が所定量α以下であり、ステップST1でNO判定された場合には、ステップST8に移り、EOP作動中フラグが「1」となっているか否かを判定する。このEOP作動中フラグは、電動オイルポンプ7の作動によるポンプ容量の低減動作が実行されている場合に「1」とされる(後述するステップST5で「1」とされる)フラグである。
本制御の開始時点では、電動オイルポンプ7の作動によるポンプ容量の低減動作は実行されていないため、EOP作動中フラグは「0」となっており、ステップST8ではNO判定されてリターンされる。
バッテリの蓄電残量が所定量αを超えており、ステップST1でYES判定された場合には、ステップST2に移り、IGスイッチ109からの信号に基づき、イグニッションキーがアクセサリ位置まで操作されたか否かを判定する。つまり、車両の各種電気機器に給電可能な状態、つまり、前記電動オイルポンプ7に給電可能な状態になったか否かを判定する。
イグニッションキーがアクセサリ位置まで操作されておらず、ステップST2でNO判定された場合にはステップST9に移り、EOP作動中フラグが「1」となっているか否かを判定する。前述したように、本制御の開始時点では、電動オイルポンプ7の作動によるポンプ容量の低減動作は実行されていないため、EOP作動中フラグは「0」となっており、ステップST9ではNO判定されてリターンされる。
イグニッションキーがアクセサリ位置まで操作されてステップST2でYES判定された場合には、ステップST3に移り、EOP作動中フラグが「1」となっているか否かを判定する。この時点では電動オイルポンプ7の作動によるポンプ容量の低減動作は実行されていないため、EOP作動中フラグは「0」となっており、ステップST3ではNO判定されてステップST4に移る。
ステップST4では、電動オイルポンプ7の目標吐出量を決定する。この電動オイルポンプ7の目標吐出量は、オイルポンプ5からの吐出油圧が予め設定された目標油圧に達するように、油温に応じてオイルポンプ5のポンプ容量を変更するべく設定されるものである。前記目標油圧は、前述した各潤滑部(前記ピストン12やシリンダライナ、クランクジャーナル13a、カムジャーナル14a,15aなど)にオイルを圧送するための必要最低限の油圧として設定される。
図7は、電動オイルポンプ7の目標吐出量を求めるためのマップである。このマップでは、油温が低いほど電動オイルポンプ7の目標吐出量を少なく設定するようになっている。これは、油温が低いほどオイルの粘度が高く、オイル吐出量が少なくても油圧が上昇しやすいことを考慮したものである。つまり、油温が低いほど電動オイルポンプ7の吐出量を少なく設定しても、オイルポンプ5からの吐出油圧を前記目標吐出油圧に到達させることが可能である点を考慮したものであり、電動オイルポンプ7の作動による消費電力を必要最小限に抑えることができる値として前記目標吐出量は設定可能である。
このようにして電動オイルポンプ7の目標吐出量を決定した後、ステップST5に移り、バッテリから電動オイルポンプ7への給電を行って電動オイルポンプ7の作動を開始する。これにより、オイルパン16内に貯留されているオイルが、オイルストレーナ72を介して吸入通路71に吸い上げられ、電動オイルポンプ7から吐出通路73を経て、OCV60の導出ポート61bに供給される。この際、OCV60は、前記第1の開弁状態となっており(図4(a)を参照)、スプール63の溝63bがケーシング61の導出ポート61bに連通し、導入ポート61aに連通しない状態となっている。このため、電動オイルポンプ7から吐出されたオイルは、オイルフィルタ8で浄化された後、OCV60の内部および供給油路6cを経て、制御油圧室TCに供給されることになる。これにより、調整リング53は、コイルバネ54の押圧力に抗して、制御油圧室TCの容積が拡大するように回動し、ポンプ容量が小さくなる(入力軸5aの1回転あたりの吐出量が少なくなる)位置となる。この場合、エンジン1は未だ始動していないため、調整リング53の回動位置は、オイルポンプ5のポンプ容量を最小とする位置となっていることが好ましい。このため、制御油圧室TCの容積が最大になる位置まで調整リング53は回動される。つまり、電動オイルポンプ7の目標吐出量は、制御油圧室TCの容積が最大になる位置まで調整リング53を回動させる吐出量に設定される。
また、この際、電動オイルポンプ7の作動に伴って、EOP作動中フラグは「1」に設定される。
このようにして電動オイルポンプ7の作動に伴うポンプ容量の低減動作が行われている状態で、エンジン1が始動すると(イグニッションキーがスタート位置まで操作されてエンジン1が始動すると)、このエンジン1の動力を受けてオイルポンプ5が作動を開始し、吐出ポート50cからオイルが吐出される。この吐出ポート50cから吐出されたオイルは、吐出油路6aを経た後、オイルフィルタ6に達し、このオイルフィルタ6で浄化されながらオイルフィルタ6の内部を満たしていく。そして、オイルフィルタ6の内部にオイルが満たされると、この浄化後のオイルがオイルフィルタ6からメインギャラリ20に向けて流出し、このオイルが、分岐オイル通路21,22,23によってエンジン1の潤滑部(前記ピストン12やシリンダライナ、クランクジャーナル13a、カムジャーナル14a,15aなど)に分配されることになる。
図8は、このように電動オイルポンプ7が作動した状態でのオイルの流れを示すオイル供給系の概略構成図であって、オイルが流通する流路のみを実線で示している。
その後、ステップST6ではオイルポンプ(機械式オイルポンプ)5の吐出圧が所定値βを超えたか否かを判定する。つまり、前記油圧センサ107によって検出されているオイルポンプ5の吐出圧が所定値βを超えたか否かを判定する。この所定値βは、調整リング53の回動(ポンプ容量を低減させる方向への回動)を可能にする圧力(コイルバネ54の押圧力に対して所定量だけ大きい値としての圧力)に相当する値として設定されている。
エンジン1が未だ始動していない場合や、始動初期時(例えばクランキング時等)にあっては、オイルポンプ5の吐出圧が所定値βを超えていないため、ステップST6ではNO判定されてリターンされる。
このリターン後の次のルーチンでは、バッテリの蓄電残量が所定量αを超えており、且つイグニッションキーがアクセサリ位置にある場合(未だエンジン1が始動していない場合)には、ステップST1およびステップST2で共にYES判定されてステップST3に移り、EOP作動中フラグが「1」となっているか否かが判定される。ここでは、前回のルーチンにおいてEOP作動中フラグが「1」に設定されているため(前回のルーチンのステップST5でEOP作動中フラグが「1」に設定されたため)、YES判定されてステップST6に移る。つまり、オイルポンプ5の吐出圧が所定値βを超えたか否かを判定する。未だ、オイルポンプ5の吐出圧が所定値βを超えていない場合には(エンジン1が始動していない場合にはオイルポンプ5の吐出圧が所定値βを超えることがない)、ステップST6ではNO判定されてリターンされる。
また、バッテリの蓄電残量が所定量αを超えており、且つイグニッションキーがアクセサリ位置にない場合(例えばオン位置やスタート位置まで操作された場合)には、ステップST1でYES判定されると共にステップST2でNO判定されてステップST9に移り、EOP作動中フラグが「1」となっているか否かが判定される。ここでも、前回のルーチンにおいてEOP作動中フラグが「1」に設定されているため、YES判定されてステップST6に移る。つまり、オイルポンプ5の吐出圧が所定値βを超えたか否かを判定する。未だ、オイルポンプ5の吐出圧が所定値βを超えていない場合には、ステップST6ではNO判定されてリターンされる。
このような動作(ステップST6でNO判定されてリターンされる動作)が、バッテリの蓄電残量が所定量αを超えている状況では、オイルポンプ5の吐出圧が所定値βを超えるまで繰り返される。
そして、バッテリの蓄電残量が所定量α以下となるまでにオイルポンプ5の吐出圧が所定値βを超えた場合には、ステップST6でYES判定され、ステップST7に移って、バッテリから電動オイルポンプ7への給電を停止して電動オイルポンプ7を停止する。また、EOP作動中フラグを「0」に設定する。そして、OCV60によるポンプ容量制御を開始する。つまり、ECU100からOCV60への指令値(OCV電流値)の制御によって、OCV60を前記第1の開弁状態(図4(a)に示す状態)から前記第2の開弁状態(図4(b)に示す状態)に切り換える。これにより、吐出ポート50cから吐出されたオイルの一部を、OCV60を経て制御油圧室TCに供給し、ポンプ容量を調整する。
図9は、このように電動オイルポンプ7が停止した状態(OCV60によるポンプ容量制御の実行状態)でのオイルの流れを示すオイル供給系の概略構成図であって、オイルが流通する流路のみを実線で示している。
一方、オイルポンプ5の吐出圧が所定値βを超える前に、バッテリの蓄電残量が所定量α以下となった場合には、ステップST1でNO判定されると共に、ステップST8でYES判定され、この場合にも、バッテリから電動オイルポンプ7への給電を停止して電動オイルポンプ7を停止する。また、EOP作動中フラグを「0」に設定する。そして、OCV60によるポンプ容量制御を開始する。つまり、ECU100からOCV60への指令値(OCV電流値)の制御によってポンプ容量の変更動作を行う。
以上の動作が繰り返されることにより、エンジン始動時におけるポンプ容量の変更動作が行われる。
以上説明したように、本実施形態では、エンジン1の始動時にあっては、電動オイルポンプ7を作動させ、この電動オイルポンプ7から制御油圧室TCにオイルを供給するようにしている。これにより、制御油圧室TCの容積を拡大させることができ、ポンプ容量を低減することができる。その結果、オイルポンプ5を駆動するための動力を小さくできて(オイルポンプ5の作動によるエンジン1の動力損失を小さくできて)、エンジン1の燃料消費率の改善を図ることができる。
特に、エンジン1の始動前からポンプ容量を小さくする位置に調整リング53を回動させているため、エンジン1の運転開始時における動力損失を小さくすることができる。その結果、エンジン1のクランキングを行うためのスタータモータに必要な駆動力が小さくて済み、スタータモータの小型化を図ることができる。
また、電動オイルポンプ7の作動によってポンプ容量を変更している状態から、機械式オイルポンプ5の吐出油圧が、調整リング53の回動を可能にする所定値βに達した場合には、電動オイルポンプ7を停止し、OCV60によるポンプ容量の変更動作に切り換えるようにしている。このため、機械式オイルポンプ5の吐出油圧が、調整リング53の回動を可能にする所定値βに達した後には、それ以降の電動オイルポンプ7による電力消費が無くなる。つまり、必要以上に電動オイルポンプ7を作動させないことで、電力の浪費を抑制することができる。
また、電動オイルポンプ7の作動によってポンプ容量を変更している状態において、バッテリの蓄電残量が所定値α以下に達した場合には、電動オイルポンプ7を停止し、OCV60によるポンプ容量の変更動作に切り換えるようにしている。このため、バッテリの蓄電残量が所定値α以下に達した時点でポンプ容量が急変してしまう(ポンプ容量が急速に増大してエンジン1の動力損失が急増する)といった状況を回避することができる。
−他の実施形態−
上述した実施形態の記載はあくまで例示に過ぎず、本発明の構成や用途などについても限定することを意図しない。
上述した実施形態の記載はあくまで例示に過ぎず、本発明の構成や用途などについても限定することを意図しない。
前記実施形態では、バッテリの蓄電残量が所定値を超えていることを条件に、エンジン1の運転開始前から、オイルポンプ5の吐出油圧が調整リング53の変位を可能にする圧力に達するまでの期間中の全期間において電動オイルポンプ7を作動させてポンプ容量を小さくするようにしていた。本発明はこれに限らず、エンジン1の運転開始前から、オイルポンプ5の吐出油圧が調整リング53の変位を可能にする圧力に達するまでの期間のうちの一部の期間のみにおいて電動オイルポンプ7を作動させてポンプ容量を小さくするようにしてもよい。
また、前記実施形態では、電動オイルポンプ7から吐出されたオイルはOCV60を経て制御油圧室TCに供給されるようになっていた。これは、OCV60から制御油圧室TCにオイルを供給する給油経路と、電動オイルポンプ7から制御油圧室TCにオイルを供給する給油経路との一部を共用するためである。本発明はこれに限らず、電動オイルポンプ7から吐出されたオイルを、OCV60に流すことなく、直接的に制御油圧室TCに供給するようにしてもよい。この場合、電動オイルポンプ7と制御油圧室TCとを直接的に連通させる専用の給油経路を設けることになる。
更に、前記実施形態では、イグニッションキーがアクセサリ位置に操作された時点で電動オイルポンプ7に給電を行うようにしていた。本発明はこれに限らず、イグニッションキーがオン位置に操作された時点で電動オイルポンプ7に給電を行うようにしてもよい。
また、前記実施形態では、イグニッションキーの操作によってエンジン1が始動する車両に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、スタートスイッチの押し込み操作に伴ってエンジンが始動する車両に対しても適用が可能である。この場合、スタートスイッチの押し込み操作と同時に電動オイルポンプ7に給電が行われて電動オイルポンプ7が作動を開始し、その後にスタータモータの作動によってエンジン1が始動することになる。つまり、この場合にも、ポンプ容量を小さくする位置に調整リング53が回動した状態で、エンジン1が始動してオイルポンプ5が作動することになる。
また、前記実施形態では、本発明を直列多気筒エンジン1に適用した例について説明したが、これにも限定されず、本発明は、単気筒エンジンやV型エンジン、水平対向エンジンなどにも適用可能である。
本発明は、エンジンに装備され、OCVによる制御油圧の変更によってポンプ容量が可変とされた可変容量型オイルポンプを備えた油圧制御装置に適用可能である。
1 エンジン(駆動源)
5 オイルポンプ(可変容量型オイルポンプ)
5a 入力軸
53 調整リング(容量調整部材)
60 OCV(制御油圧調整バルブ)
7 電動オイルポンプ
TC 制御油圧室
107 油圧センサ
108 バッテリSOCセンサ
5 オイルポンプ(可変容量型オイルポンプ)
5a 入力軸
53 調整リング(容量調整部材)
60 OCV(制御油圧調整バルブ)
7 電動オイルポンプ
TC 制御油圧室
107 油圧センサ
108 バッテリSOCセンサ
Claims (4)
- 駆動源の動力を受けることにより作動可能であると共に、この作動によって吐出するオイルの一部を制御油圧室に供給し、この制御油圧室の容積を変更することにより容量調整部材を変位させて入力軸の1回転あたりの吐出量が変更可能とされた可変容量型オイルポンプを備えた油圧制御装置において、
前記可変容量型オイルポンプは、前記制御油圧室の容積が拡大するように前記容量調整部材が変位した場合には、前記制御油圧室の容積が縮小するように前記容量調整部材が変位した場合に比べて、前記入力軸の1回転あたりの吐出量が少なくなるように構成されており、
前記制御油圧室に対してオイルの供給が可能な電動オイルポンプを備え、
前記駆動源の運転開始前から、前記可変容量型オイルポンプの吐出油圧が前記容量調整部材の変位を可能にする圧力に達するまでの期間中の少なくとも一部の期間において、前記電動オイルポンプが作動し、この電動オイルポンプから前記制御油圧室にオイルを供給して、前記制御油圧室の容積を拡大させる構成となっていることを特徴とする油圧制御装置。 - 請求項1記載の油圧制御装置において、
前記駆動源の運転開始前であって前記電動オイルポンプへの給電が可能となったタイミングから前記電動オイルポンプを作動させ、この電動オイルポンプから前記制御油圧室にオイルを供給して、前記制御油圧室の容積を拡大させる構成となっていることを特徴とする油圧制御装置。 - 請求項1または2記載の油圧制御装置において、
前記可変容量型オイルポンプから吐出されたオイルの前記制御油圧室への供給量を調整可能な制御油圧調整バルブを備え、
前記可変容量型オイルポンプの吐出油圧が前記容量調整部材の変位を可能にする圧力に達した場合には、前記電動オイルポンプを停止し、前記制御油圧調整バルブによる前記制御油圧室へのオイルの供給量の調整によって前記容量調整部材を変位させる構成となっていることを特徴とする油圧制御装置。 - 請求項3記載の油圧制御装置において、
前記電動オイルポンプの作動により前記制御油圧室にオイルを供給している状態において、前記電動オイルポンプに給電する蓄電装置の蓄電残量が所定値以下に達した場合には、前記電動オイルポンプを停止し、前記制御油圧調整バルブの制御によって前記可変容量型オイルポンプから吐出されたオイルの一部を前記制御油圧室へ供給する動作に切り換える構成となっていることを特徴とする油圧制御装置。
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Cited By (3)
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JP2017133458A (ja) * | 2016-01-29 | 2017-08-03 | アイシン精機株式会社 | オイル供給装置 |
JP2017160839A (ja) * | 2016-03-09 | 2017-09-14 | マツダ株式会社 | エンジンのオイル供給装置 |
JP2018013070A (ja) * | 2016-07-20 | 2018-01-25 | マツダ株式会社 | エンジンのオイル供給装置 |
-
2014
- 2014-06-27 JP JP2014132313A patent/JP2016011595A/ja active Pending
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