図1〜図6を参照して、本発明の内燃機関の可変動弁装置を吸気バルブのバルブタイミングを変更する内燃機関の可変動弁装置として具体化した一実施形態について説明する。
図1に示されるように、内燃機関1には、吸気及び燃料からなる混合気の燃焼を通じてクランクシャフト16を回転させる機関本体10と、機関本体10に潤滑油を供給する油圧機構50と、これら装置をはじめとして各種装置を統括的に制御する制御装置70とが設けられている。
機関本体10のシリンダブロック11には、混合気を燃焼させる燃焼室14が形成されている。混合気の燃焼にともなうピストン15の直線運動はクランクシャフト16の回転運動に変換される。
シリンダブロック11の下部には、内燃機関1の各部位に供給される潤滑油を貯留するオイルパン12が取り付けられている。シリンダブロック11の上部には、動弁系の部品が配置されるシリンダヘッド13が取り付けられている。
シリンダヘッド13には、燃焼室14を吸気通路に対して開閉する吸気バルブ21及びこれを開弁方向に駆動する吸気カムシャフト22と、燃焼室14を排気通路に対して開閉する排気バルブ23及びこれを開弁方向に駆動する排気カムシャフト24と、吸気バルブ21のバルブタイミング(以下、「バルブタイミングINVT」)を変更するバルブタイミング可変機構30とが設けられている。
油圧機構50は、オイルパン12と機関本体10及びバルブタイミング可変機構30を含む各供給部位とを接続する油路60と、クランクシャフト16により駆動されてオイルパン12から潤滑油を汲み上げるオイルポンプ51と、油路60に設けられてバルブタイミング可変機構30についての潤滑油の給排状態を変更する潤滑油制御弁52とにより構成されている。オイルポンプ51により汲み上げられた潤滑油は油路60の供給油路62を介してバルブタイミング可変機構30に供給され、また同可変機構30から排出された潤滑油は油路60の排出油路63を介して再びオイルパン12に戻される。
制御装置70には、機関運転状態等をモニタする各種センサ、すなわちクランクポジションセンサ72、カムポジションセンサ73、エアフロメータ74及び冷却水温センサ75を含む各種センサと、これらセンサの出力に基づいて各装置の動作を制御する電子制御装置71とが設けられている。クランクポジションセンサ72はクランクシャフト16の付近に設けられて、機関回転速度NEに応じた信号を出力する。カムポジションセンサ73は吸気カムシャフト22の付近に設けられて、同シャフト22の回転角度に応じた信号を出力する。エアフロメータ74は、吸気通路に設けられて、吸入空気量GAに応じた信号を出力する。冷却水温センサ75は、シリンダブロック11に設けられて、機関冷却水の温度(以下、「冷却水温THWX」)に応じた信号を出力する。
電子制御装置71は、バルブタイミングINVTを調整するバルブタイミング制御等の各種制御を行う。バルブタイミング制御においては、機関運転状態(機関負荷及び機関回転速度NE)に基づいてバルブタイミングINVTの目標値を設定する。そして、クランクポジションセンサ72及びカムポジションセンサ73の出力に基づいて算出されるバルブタイミングINVTを目標値に一致させるべくバルブタイミング可変機構30(潤滑油制御弁52)の制御が行われる。
図2を参照して、バルブタイミング可変機構30の構成について説明する。なお図2(a)は、ハウジング本体32から図2(b)に示されるカバー34を取り外した状態での同可変機構30の平面構造を示す。また同図において、矢印RAはカムシャフト22及びスプロケット33の回転方向(以下、「回転方向RA」)を示す。
図2(a)に示されるように、バルブタイミング可変機構30は、クランクシャフト16に同期して回転するハウジングロータ31と、吸気カムシャフト22の端部に固定されることにより同シャフトに同期して回転するベーンロータ35とにより構成されている。
ハウジングロータ31は、タイミングチェーン(図示略)を介してクランクシャフト16と連結されることにより同シャフトに同期して回転するスプロケット33と、このスプロケット33の内側に組みつけられてこれと一体をなす態様で回転するハウジング本体32と、この本体32に取り付けられるカバー34とにより構成されている。
ベーンロータ35は、ハウジング本体32内の空間に配置され、同本体32とカバー34とにより形成される空間に収容される。
ハウジング本体32には、径方向においてベーンロータ35に向けて突出する3つの区画壁31Aが設けられている。ベーンロータ35には、ハウジング本体32に向けて突出し、区画壁31Aの間にある3つのベーン収容室37をそれぞれ進角室38及び遅角室39に区画する3つのベーン36が設けられている。
進角室38は、1つのベーン収容室37内においてベーン36よりも吸気カムシャフト22の回転方向RAの後方側に位置するものであり、油圧機構50によるバルブタイミング可変機構30についての潤滑油の給排状態に応じて容積が変化する。遅角室39は、1つのベーン収容室37内においてベーン36よりも吸気カムシャフト22の回転方向RAの前方側に位置するものであり、進角室38と同じく油圧機構50によるバルブタイミング可変機構30についての潤滑油の給排状態に応じて容積が変化する。
バルブタイミング可変機構30は、上記の構成に基づいてハウジングロータ31に対するベーンロータ35の相対的な回転位相(以下、「回転位相P」)を変更することにより、バルブタイミングINVTを変更する。同可変機構30によるバルブタイミングINVTの変更は具体的には以下のように行われる。
進角室38への潤滑油の供給及び遅角室39からの潤滑油の排出により、ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して進角側すなわち吸気カムシャフト22の回転方向RAに回転するとき、バルブタイミングINVTは進角側に変化する。ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して制御上の限界まで進角側に回転したとき、すなわちベーンロータ35の回転位相Pが最も回転方向RAの前方側の位相(以下、「最進角位相PMAX」)にあるとき、バルブタイミングINVTは最も進角側のタイミング(以下、「最進角INVTmax」)に設定される。なお、最進角位相PMAXとしては、ベーン36が遅角室39側の区画壁31Aに突き当てられる位置、あるいはベーン36が遅角室39側の区画壁31A付近にある位置が設定される。
進角室38からの潤滑油の排出及び遅角室39への潤滑油の供給により、ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して遅角側すなわち吸気カムシャフト22の回転方向RAの後方側に回転するとき、バルブタイミングINVTは遅角側に変化する。ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して制御上の限界まで遅角側に回転したとき、すなわちベーンロータ35の回転位相Pが最も回転方向RAの後方側の位相(以下、「最遅角位相PMIN」)にあるとき、バルブタイミングINVTは最も遅角側のタイミング(以下、「最遅角INVTmin」)に設定される。なお、最遅角位相PMINとしては、ベーン36が進角室38側の区画壁31Aに突き当てられる位置、あるいはベーン36が進角室38側の区画壁31A付近にある位置が設定される。
進角室38及び遅角室39のそれぞれと油圧機構50との間における潤滑油の流通が遮断されることにより、すなわち進角室38及び遅角室39のそれぞれに潤滑油が保持されることにより、ハウジングロータ31とベーンロータ35との相対的な回転が不能とされるとき、バルブタイミングINVTはそのときのタイミングに維持される。
バルブタイミング可変機構30には、進角室38及び遅角室39の油圧にかかわらずハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転を規制して、バルブタイミングINVTを最進角INVTmaxと最遅角INVTminとの間にある特定のタイミング(以下、「中間角INVTmdl」)に固定する中間ロック機構40が設けられている。この中間角INVTmdlとしては、機関始動に適したバルブタイミングINVTが設定されている。すなわち、機関始動時においてバルブタイミングINVTを中間角INVTmdlに設定した場合と、これとよりも遅角側のバルブタイミングINVTに設定した場合とを比較したとき、前者の方がより高い始動性が確保されるようになる。
中間ロック機構40は、油圧機構50からの潤滑油の供給に基づいて動作し、ハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転位相Pが中間角INVTmdlに対応する回転位相(以下、「中間位相PMDL」)にあるときに、ハウジングロータ31とベーンロータ35と互いに固定してバルブタイミングを中間角INVTmdlに保持する。
具体的には、図2(b)に示されるように、ベーン36に設けられて同ベーン36に対して移動するロックピン42と、同じくベーン36に設けられて油圧機構50により潤滑油が給排される中間室44と、また同じくベーン36に設けられてロックピン42を一方向に押すばね43と、ハウジングロータ31に設けられたロック穴41とにより構成されている。
ロックピン42は、中間室44の潤滑油の力とばね43の力との関係に基づいて、ベーン36から突出する方向(以下、「突出方向Z2」)とベーン36に引込む方向(以下、「収容方向Z1」)との間で動作する。中間室44の油圧は、ロックピン42に対して収容方向Z1に作用する。ばね43の力は、ロックピン42に対して突出方向Z2に作用する。
油圧機構50により中間室44に対して潤滑油が供給されて中間室44が潤滑油により満たされるとき、中間室44の潤滑油による突出方向Z2の力がばね43による収容方向Z1の力を上回るようになる。これにより、ロックピン42に対してはこれを突出方向Z2に動作させようとする力が生じるようになる。そしてこの状態のもとで、ハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転位相Pが中間位相PMDLにあるとき、すなわちロックピン42とロック穴41との周方向の位置が一致しているとき、ロックピン42がベーン36から突出してロック穴41にはめ込まれる。これにより、ロックピン42とロック穴41との係合を通じてハウジングロータ31とベーンロータ35とが互いに固定されるため、回転位相Pは中間位相PMDLに保持される。
一方、油圧機構50により中間室44から潤滑油が排出されて中間室44が潤滑油により満たされないとき、ばね43による収容方向Z1の力により、ロックピン42に対してはこれを収容方向Z1に動作させようとする力が生じるようになる。そしてロックピン42がロック穴41にはめ込まれた状態のもとで、ロックピン42に対して収容方向Z1の力が作用するとき、ロックピン42がロック穴41から離脱してベーン36内に収容される。これにより、ロックピン42とロック穴41から離脱してベーン36内に収容されるため、ハウジングロータ31とベーンロータ35との固定が解除されてこれらの相対的な回転が許容される。
図3を参照して、バルブタイミング可変機構30と油圧機構50との間における潤滑油の流通構造について説明する。なお同図は、これら装置の間における油路の構成を模式的に示している。
オイルパン12に貯留される潤滑油は、油路60の一部としての吸込油路61を介してオイルポンプ51に汲み上げられる。そして、オイルポンプ51から吐出された潤滑油は、バルブタイミング可変機構30を含む各部位に供給される。
油路60は、オイルパン12とオイルポンプ51とを接続する上記吸込油路61と、オイルポンプ51と潤滑油制御弁52とを接続する供給油路62と、潤滑油制御弁52とオイルパン12とを接続する排出油路63と、潤滑油制御弁52と遅角室39とを接続する遅角油路65と、潤滑油制御弁52と進角室38とを接続する進角油路64と、潤滑油制御弁52と中間室44とを接続する中間油路66とを備えている。
潤滑油制御弁52は、各油路と接続したポートを設けたスリーブ53及びスリーブ53内で軸方向に駆動して各ポート同士の接続状態を切り替えることができるスプール54を備えている。そして、スリーブ53に対するスプール54の位置(以下、「スプール54の制御位置」)を第1制御位置〜第4制御位置のいずれかに変更することにより自身の動作モードを第1動作モード〜第4動作モードのいずれかに設定し、これにより供給油路62及び排出油路63と、進角油路64及び遅角油路65及び中間油路66との接続状態を切り替える。そして、進角室38及び遅角室39及び中間室44に対する潤滑油の給排状態を変更する。なおスプール54の制御位置は、スプール54がスリーブ53に対して一方から他方に向けて移動することにともない、第1制御位置〜第4制御位置の順に変更される。以下の(A)〜(D)に、各制御モードにおいてのバルブタイミング可変機構30の動作を示す。
(A)スプール54の制御位置が第1制御位置にあるとき、潤滑油制御弁52の動作モードは第1動作モードに設定される。このとき、進角油路64と供給油路62とが接続され、且つ遅角油路65と排出油路63とが接続され、且つ中間油路66と供給油路62とが接続される。これにより、進角室38に潤滑油が供給され且つ遅角室39から潤滑油が排出されるとともに、中間室44に潤滑油が供給される。
そしてこの第1モードにおいて、バルブタイミング可変機構30の駆動状態はベーンロータ35の回転位相Pを進角側に変更しようとする状態に維持され、且つ中間ロック機構40の駆動状態はバルブタイミングINVTを固定しない状態に維持されるため、バルブタイミングINVTが進角される。
(B)スプール54の制御位置が第2制御位置にあるとき、進角油路64と供給油路62及び排出油路63との間が遮断され、且つ遅角油路65と供給油路62及び排出油路63との間が遮断され、且つ中間油路66と供給油路62とが接続される。これにより、進角室38及び遅角室39についての潤滑油の供給及び排出が停止されるとともに、中間室44に潤滑油が供給される。
そしてこの第2モードにおいて、バルブタイミング可変機構30の駆動状態はベーンロータ35の回転位相Pを保持する状態に維持されるため、バルブタイミングINVTが保持される。
(C)スプール54の制御位置が第3制御位置にあるとき、潤滑油制御弁52の動作モードは第3モードに設定される。このとき、進角油路64と排出油路63とが接続され、且つ遅角油路65と供給油路62とが接続され、且つ中間油路66と供給油路62とが接続される。これにより、進角室38から潤滑油が排出され且つ遅角室39に潤滑油が供給されるとともに、中間室44に潤滑油が供給される。
そしてこの第3モードにおいて、バルブタイミング可変機構30の駆動状態はベーンロータ35の回転位相Pを遅角側に変更しようとする状態に維持され、且つ中間ロック機構40の駆動状態はバルブタイミングINVTを固定しない状態に維持されるため、バルブタイミングINVTが遅角される。
(D)スプール54の制御位置が第4制御位置にあるとき、潤滑油制御弁52の動作モードは第4モードに設定される。このとき、進角油路64と供給油路62とが接続され、且つ遅角油路65と排出油路63とが接続され、且つ中間油路66と排出油路63とが接続される。これにより、進角室38に潤滑油が供給され且つ遅角室39から潤滑油が排出されるとともに、中間室44から潤滑油が排出される。
そしてこの第4モードにおいて、バルブタイミング可変機構30の駆動状態はベーンロータ35の回転位相Pを進角側に変更しようとする状態に維持され、且つ中間ロック機構40の駆動状態はバルブタイミングINVTを固定しようとする状態に維持される。このため、ベーンロータ35の進角側への回転にともない回転位相Pが中間位相PMに達したときには、バルブタイミングINVTが中間角INVTmdlに固定される。すなわち、中間室44の潤滑油が排出されることにより、ロックピン42に対して突出方向Z2の力が付与される。そして、ベーンロータ35の回転位相Pが中間位相PMDLにあるときには、同ピン42がロック穴41にはめ込まれる。
そして、スプール54の制御位置が第4制御位置に変更されるとき、中間油路66は供給油路62に接続され、中間油路66を介して中間室44に潤滑油が供給される。これにより、ロックピン42に対して収容方向Z1の力が付与される。そして、ロックピン42がロック穴41にはめ込まれた状態にあるときには、同ピン42がロック穴41から引き抜かれる。
図4を参照して、バルブタイミング可変機構30の動作態様の一例について説明する。なお同図は、図2(a)のDB−DB線に沿うバルブタイミング可変機構30の断面構造を平面上に展開したものについて、これを模式的に示している。
ハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転位相Pについて、これが図4(a)に示される最進角位相PMAXから図4(b)に示される最遅角位相PMINまでの間にて変更されるときには、ロックピン42はベーン36内に収容された状態に維持される。また、ベーンロータ35の回転位相Pが中間位相PMDLにあるときであっても、中間室44への潤滑油の供給にともないロックピン42がベーン36内に収容されている限りは、図4(c)に示されるようにベーンロータ35の回転位相Pが中間位相PMDLに固定されることはない。
一方、回転位相Pが中間位相PMDLにあるときに、中間室44から潤滑油の排出が行われてロックピン42に対して突出方向Z2の力が作用するときには、図4(d)に示されるようにロックピン42がベーン36から突出してロック穴41にはめ込まれ、これによりベーンロータ35が中間位相PMDLに保持される。
ところで、バルブタイミング可変機構30の制御を通じて良好な機関始動性を確保するためには、内燃機関1の始動動作が開始された時点においてバルブタイミングINVTが中間角INVTmdlにすでに保持されていることが要求される。そこで当該内燃機関1では、機関運転状態についての要求(以下、「機関運転要求」)として、機関運転中のイグニッションスイッチの切替操作にともない機関停止要求が生じたとき、次回の機関始動に備えて中間ロック機構40によるバルブタイミングINVTの固定を行うようにしている。すなわち、機関停止要求に基づいて内燃機関1の運転を停止する前に中間ロック機構40によりバルブタイミングINVTを中間角INVTmdlに固定し、その後に機関停止要求に基づいて内燃機関1の運転を停止(以下、「機関通常停止」)するようにしている。なお、バルブタイミングINVTの固定態様としてはこの他に、機関停止要求に基づく内燃機関1の停止動作が開始されてから中間ロック機構40の操作を開始してバルブタイミングINVTを固定するものが挙げられる。
またさらに、機関運転状態がアイドル運転状態に移行したときにはその後に機関停止要求が生じる可能性が高いため、機関運転要求としてアイドル運転要求があることに基づいてバルブタイミングINVTの固定を行うようにもしている。この場合には、アイドル運転状態から通常の機関運転状態に移行する要求(以下、「通常運転要求」)が生じたとき、これに基づいて中間ロック機構40によるバルブタイミングINVTの固定が解除される。
図5を参照して、中間ロック機構40によりバルブタイミングINVTを中間角INVTmdlに固定するための処理である「中間ロック処理」について、その処理手順の詳細を説明する。なお当該「中間ロック処理」は、機関運転中に電子制御装置71により実行されるものであり、一旦終了のステップに到達した後は、機関運転中である限りステップS11から順に同様の処理が繰り返し行われる。
当該処理ではまずステップS11において、中間ロック要求が設定されているか否かを判定し、次のステップS12において、潤滑油の粘度(以下、「潤滑油粘度VX」)が基準粘度VA以下か否かを判定する。そして、これらステップS11及びS12の判定結果に応じて次の(A)〜(C)のいずれかの処理を行う。
(A)ステップS11により中間ロック要求が設定されている旨判定し、且つステップS12において潤滑油粘度VXが基準粘度VA以下である旨判定したとき、ステップS13において中間ロック機構40によるバルブタイミングINVTの固定を行う。具体的には、第1モードまたは第3モードまたは第4モードのいずれかを選択してバルブタイミングINVTを中間角INVTmdlに対応するバルブタイミングINVTもしくは中間角INVTmdlよりも遅角側へと変更した後に第4モードを選択し、ロックピン42を突出させ、ロックピン42とロック穴41とをはめ合わせる。
(B)ステップS11により中間ロック要求が設定されている旨判定し、且つステップS12において潤滑油粘度VXが基準粘度VAよりも大きい旨判定したとき、ステップS14において中間ロック機構40を解除状態に維持し、且つバルブタイミングINVTを中間角INVTmdlに設定し、且つ進角室38及び遅角室39の油圧により同バルブタイミングINVTを保持する。具体的には、第1モードまたは第3モードを選択してバルブタイミングINVTを中間角INVTmdlに対応するバルブタイミングINVTへと変更した後に、第2モードを選択しバルブタイミングINVTを保持する。
(C)ステップS11により中間ロック要求が設定されていない旨判定したとき、中間ロック機構40を解除状態に維持して本処理を一旦終了する。その後は、所定の演算周期が経過したときに再びステップS11の判定処理が行われる。
中間ロック要求は、電子制御装置71により別途実行される制御において、次の態様をもって設定または解除される。すなわち、機関始動要求、機関停止要求、及びアイドル運転要求のいずれかがある旨判定されるとき、これに基づいて中間ロック要求が設定される。またバルブタイミングINVTの変更要求がある旨判定されるとき、これに基づいて中間ロック要求が解除される。
潤滑油粘度VXについての判定は、具体的には次のように行われる。
潤滑油の温度(以下、「潤滑油温TFX」)が基準油温TFAよりも小さいことをもって、潤滑油粘度VXが基準粘度VAよりも小さい旨推定される。また、冷却水温センサ75による冷却水温THWXが基準水温THWAよりも小さいことをもって、潤滑油温TFXが基準油温TFAよりも小さい旨判定される。ちなみに、潤滑油粘度VXが小さくなるにつれて潤滑油の圧縮性は大きくなる傾向を示す。すなわち、潤滑油によるバルブタイミングINVTの保持性は低下する。また、潤滑油温TFXが大きくなるにつれて潤滑油粘度VXは小さくなる傾向を示す。また、冷却水温THWXが大きくなるにつれて潤滑油温TFXは大きくなる傾向を示す。
すなわちステップS11の判定処理においては、冷却水温センサ75の冷却水温THWXが基準水温THWAよりも小さいか否かが判定され、小さい旨判定されたときには、このことをもって潤滑油温TFXが基準油温TFAよりも小さい旨推定され、このことをもって潤滑油粘度VXが基準粘度VAよりも小さい状態にある旨推定される。
ここで基準粘度VAは、進角室38及び遅角室39の油圧によりバルブタイミングINVTを安定した状態のもと所定のタイミングに保持するうえで必要となる潤滑油粘度VXについて、そのうちの最も小さい粘度またはその付近の粘度を示す。すなわち、潤滑油粘度VXが基準粘度VAよりも小さいときには基準粘度VAよりも大きいときと比較して、進角室38及び遅角室39の油圧によりベーンロータ35の回転位相Pを保持したときのバルブタイミングINVTの安定性が過度に低下する。また基準油温TFAは、潤滑油粘度VXが基準粘度VAとなるときの潤滑油温TFXに相当し、基準水温THWAは、潤滑油温TFXが基準油温TFAとなるときの冷却水温THWXに相当する。この基準水温THWAについては、試験等を通じて把握されたものが電子制御装置71に予め記憶されている。
上記ステップS11〜S14の処理を通じて、中間ロック要求に基づく中間ロック機構40によるバルブタイミングINVTの固定、または中間ロック要求に基づく潤滑油制御弁52によるバルブタイミングINVTの保持を実行した後、次のステップS15〜S18の処理を行う。
ステップS15では、機関停止要求が設定されているか否かを判定し、ステップS16では、中間ロック要求が解除されているか否かを判定する。そして、これらステップS15及びS16の判定結果に応じて次の(D)〜(F)のいずれかの処理を行う。
(D)ステップS15により機関停止要求が設定されている旨判定したとき、ステップS18においてバルブタイミングINVTの固定態様に応じて次のいずれかの処理を行う。すなわち、中間ロック機構40によるバルブタイミングINVTの固定がすでに行われているときには、同固定の状態を維持する。一方、中間ロック機構40によるバルブタイミングINVTの固定が行われていないときには、中間ロック機構40によるバルブタイミングINVTの固定を行う。具体的には、第4モードが選択されているときにはこれを維持し、第2モードが選択されているときには第4モードを選択する。
(E)ステップS15により機関停止要求が設定されていない旨判定し、且つステップS16により中間ロック要求が解除されている旨判定したとき、ステップS17において中間ロック機構40によるバルブタイミングINVTの固定を解除する。
(F)ステップS15により機関停止要求が設定されていない旨判定し、且つステップS16により中間ロック要求が解除されていない旨判定したとき、すなわち例えば中間ロック要求がアイドル運転状態に基づいて設定された場合において同運転状態が継続されているとき、バルブタイミング可変機構30及び中間ロック機構40をそのときの状態に維持する。
図6を参照して、「中間ロック処理」の実行態様の一例について説明する。
時刻t1において、機関運転要求が通常運転要求からアイドル運転要求に変化し、且つバルブタイミングINVTに対する要求として中間ロック要求が設定されたとする。このとき、冷却水温THWXが基準水温THWAに達していないことに基づいて、中間ロック機構40が解除状態に維持されるとともにバルブタイミングINVTが油圧により中間角INVTmdlに保持される。
時刻t2において、機関運転要求がアイドル運転要求から通常運転要求に変化し、且つ中間ロック要求が解除されたとする。このとき、中間ロック要求が解除されたことに基づいて、バルブタイミングINVTを中間角INVTmdl以外のものに変更することが許容される。
時刻t3において、機関運転要求が通常運転要求からアイドル運転要求に変化し、且つ中間ロック要求が設定されたとする。このとき、冷却水温THWXが基準水温THWAを超えていることに基づいて、中間ロック機構40が固定状態に維持される、すなわち同機構40によりバルブタイミングINVTが中間角INVTmdlに固定される。
時刻t4すなわち、機関運転要求がアイドル運転要求から通常運転要求に変化し、且つ中間ロック要求が解除されたとき、中間ロック機構40によるバルブタイミングINVTの固定が解除される。
時刻t5すなわち、機関運転要求が通常運転要求からアイドル運転要求に変化し、且つ中間ロック要求が設定されたとき、冷却水温THWXが基準水温THWAを超えていることに基づいて、中間ロック機構40が固定状態に維持される。
時刻t6すなわち、機関運転要求がアイドル運転要求から機関停止要求に変化し、且つ中間ロック要求が設定されたとき、中間ロック機構40の固定状態が維持されたうえで機関停止動作が行われる。また、時刻t2において破線にて示されるように、機関運転要求がアイドル運転要求から機関停止要求に変化し、且つ中間ロック要求が設定されたとときには、中間ロック機構40が解除状態から固定状態に操作されたうえで機関停止動作が行われる。
以上にて説明したように、内燃機関1がアイドル運転状態になったとき、油温TFXが基準油温TFAよりも高いときには中間ロックが行われる。また、基準油温TFAよりも低いときにはバルブタイミングINVTが潤滑油圧力によって中間角INVTmdlに保持されることにより、このアイドル運転状態から通常運転に移行したときにはただちにバルブタイミング制御が行われ、機関停止の状態に移行したときには、ただちに中間ロックが行われるようになる。
以上詳述したように、本実施形態によれば以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、機関運転中にバルブタイミングINVTを中間角INVTmdlに固定する旨の要求である中間ロック要求があり且つ潤滑油粘度VXが基準粘度VAよりも高いときには、中間ロック機構40が解除状態に維持された状態のもとバルブタイミングINVTが中間角INVTmdlに設定されるようにしている。
中間ロック要求があり且つ潤滑油粘度VXが基準粘度VAよりも高いときには中間ロック機構40が解除状態に維持されるため、その後にバルブタイミングINVTの変更要求が生じたとしてもこれに速やかに応じることができるようになる。また、中間ロック機構40によるバルブタイミングINVTの固定が行われない状態のもとでバルブタイミングINVTが中間角INVTmdlに設定されるものの、潤滑油粘度VXが基準粘度VAよりも高いときに同設定が行われるため、バルブタイミングINVTは安定した状態で中間角INVTmdlに維持されるようになる。これにより、その後に機関停止要求が生じたことにともない中間ロック機構40によりバルブタイミングINVTを固定するに際し、バルブタイミングINVTがすでに中間角INVTmdlにある状態のもとで同固定の動作が開始されるため、中間ロック機構40によりバルブタイミングINVTを速やかに固定することができるようになる。
すなわち本実施形態によれば、機関停止時に中間ロック機構40によりバルブタイミングINVTが速やかに固定される頻度を増大することと、機関運転中のバルブタイミングINVTの固定に起因してバルブタイミングINVTの変更要求に対する応答性の低下が生じる頻度を低減することとを両立することができるようになる。
(2)本実施形態では、中間ロック要求はアイドル運転状態において設定されるようにしている。アイドル運転状態において潤滑油粘度VXに基づいて中間ロック機構40を解除状態に維持し、且つアイドル運転状態から機関停止せずに通常運転状態に移行したときには、中間ロック機構40を固体状態から解除状態に変更する必要がない。このため、中間ロック機構40の固定状態解除に起因するバルブタイミングINVTの変更要求に対する応答性の低下が生じる頻度を低減することができる。
(3)本実施形態では、中間角INVTmdlは最進角INVTmaxよりも遅角側且つ最遅角INVTminよりも進角側のバルブタイミングINVTとしている。機関始動時に中間ロック機構40を通じてバルブタイミングINVTが中間角INVTmdlに固定された状態を維持することにより、機関始動時においてバルブタイミングINVTが中間角INVTmdlよりも遅角側にある場合よりも良好な始動性を確保することができるようになる。
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば以下に示す態様をもって実施することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
・上記実施形態では、中間ロック要求が設定されている旨判定し且つ潤滑油粘度VXが基準粘度VAよりも大きい旨判定したとき、中間ロック機構40を解除状態に維持し、且つバルブタイミングINVTを中間角INVTmdlに保持するようにしたが、これに代えて次の(A)及び(B)の処理を行うこともできる。
(A)中間ロック機構40を固定状態に維持することを禁止する。すなわち、潤滑油制御弁の動作モードとして中間油路66と排出油路63とを接続するモードを選択する指令について、これを同バルブに対して送信することを禁止する。
(B)バルブタイミングINVTについては、中間角INVTmdlに保持することに代えて、そのときの機関運転状態に基づいて設定される目標値に保持する。
このような構成によれば、上記第1実施形態の(1)の効果に代えて次の効果が得られるようになる。すなわち、中間ロック要求があり且つ潤滑油粘度VXが基準粘度VAよりも大きいときに中間ロック機構40を固定状態に変更することが禁止されるため、すなわち中間ロック機構40は解除状態が維持されるため、その後にバルブタイミングINVTの変更要求が生じたとしてもこれに速やかに応じることができるようになる。すなわち、機関運転中のバルブタイミングの固定に起因してバルブタイミングINVTの変更要求に対する応答性の低下が生じる頻度を低減することができるようになる。
・上記実施形態では、機関始動時及び機関停止時以外の機関運転中において中間ロック要求が設定される条件としてアイドル運転要求があることを採用したが、これとは別の条件を採用することもできる。例えば、機関運転中に機関回転速度NEが低回転速度領域にあること(機関回転速度NEが基準回転速度よりも小さいこと)を条件として中間ロック要求を設定することもできる。機関低回転時には油圧機構50を通じてバルブタイミング可変機構30に供給される潤滑油の圧力が低いため、基本的には進角室38及び遅角室39の油圧によるバルブタイミングINVTの保持性も低下した状態にある。とはいえ、こうした場合においても潤滑油粘度VXが十分に高いときには、進角室38及び遅角室39の油圧によるバルブタイミングINVTの保持性としても十分なものが確保されるようになる。上記の変形例によれば、機関回転速度NEが低回転速度領域にあることにより中間ロック要求が設定された場合において、潤滑油粘度VXが小さいときには中間ロック機構40によるバルブタイミングINVTの固定を、また潤滑油粘度VXが大きいときには進角室38及び遅角室39によるバルブタイミングINVTの保持を行うことにより、バルブタイミングINVTを安定して保持することとバルブタイミングINVTの変更要求に対する応答性の低下を抑制することとの両立を図ることができるようになる。
・上記実施形態では、冷却水温THWXと基準水温THWAとの関係に基づいて、潤滑油温TFXと基準油温TFAとの関係、並びに潤滑油粘度VXと基準粘度VAとの関係を推定するようにしたが、同関係の推定態様はこれに限られるものではない。例えば、潤滑油温TFXをセンサにより直接的に監視し、これにより得られる潤滑油温TFXと基準油温TFAとの関係に基づいて、潤滑油粘度VXと基準粘度VAとの関係を推定することもできる。
・上記実施形態では、潤滑油粘度VXと基準粘度VAとの関係の推定結果に基づいて中間ロック機構40の制御を行うようにしたが、潤滑油粘度VXをセンサにより直接的に監視し、これにより得られる潤滑油粘度VXと基準粘度VAとの関係に基づいて同機構40の制御を行うこともできる。この場合には、基準粘度VAとして試験等を通じて把握されたものが電子制御装置71に予め記憶される。
・上記実施形態では、進角室38及び遅角室39及び中間室44についての潤滑油の給排状態を単一の潤滑油制御弁52により制御する油圧機構50の構成を採用したが、同機構50の構成はこれに限られるものではない。例えば、進角室38及び遅角室39についての潤滑油の給排状態を一の潤滑油制御弁により制御し、中間室44についての潤滑油の給排状態を別の潤滑油制御弁により制御する構成を採用することもできる。
・上記実施形態では、潤滑油制御弁52として第1動作モード〜第4動作モードを有するものを採用したが、第4動作モードに代えてあるいは同4つの動作モードに加えて次の第5動作モードを採用することもできる。
すなわち、スプール54の制御位置が第5制御位置にあるとき、潤滑油制御弁52の動作モードは第5モードに設定される。このとき、進角油路64と排出油路63とが接続され、且つ遅角油路65と供給油路62とが接続され、且つ中間油路66と排出油路63とが接続される。これにより、進角室38から潤滑油が排出され且つ遅角室39に潤滑油が供給されるとともに、中間室44から潤滑油が排出される。
そしてこの第5動作モードにおいて、バルブタイミング可変機構30の駆動状態はベーンロータ35の回転位相Pを遅角側に変更しようとする状態に維持され、且つ中間ロック機構40の駆動状態はバルブタイミングINVTを固定しようとする状態に維持される。このため、ベーンロータ35の遅角側への回転にともない回転位相Pが中間位相PMに達したときには、バルブタイミングINVTが中間角INVTmdlに固定される。
・上記実施形態では、中間ロック機構40の構成として、ベーンロータ35にロックピン42及び中間室44及びばね43が設けられるとともに、ハウジングロータ31にロック穴41が設けられる構成を採用したが、中間ロック機構40の構成はこれに限られるものではない。例えば、ハウジングロータ31にロックピン42及び中間室44及びばね43を設け、ベーンロータ35にロック穴41を設けることもできる。
・上記実施形態では、ロックピン42に対する中間室44の油圧が解除されるときにロックピン42がベーン36から突出し得る状態に維持される構成としたが、中間室44とばね43との関係を上記実施形態とは反対のものに設定することもできる。すなわち、油圧によりロックピン42に対して突出方向Z2の力を付与するとともに、ばね43の力によりロックピン42に対して収容方向Z1の力を付与する構成に変更することもできる。
・上記実施形態では、バルブタイミング可変機構30としてバルブタイミングINVTを中間角INVTmdlに固定する中間ロック機構40を備えるものを採用したが、固定されるバルブタイミングINVTは中間角INVTmdlに限られるものではなく、これを最進角INVTmaxまたは最遅角INVTminに変更することもできる。要するに、固定機構により固定されるバルブタイミングINVTの特定角としては、最進角INVTmax及び最遅角INVTmin及び中間角INVTmdlのいずれをも採用することができる。このときも上記実施形態の(3)以外の効果を奏することはできる。
・上記実施形態では、吸気バルブ21のバルブタイミング可変機構30を備える可変動弁装置に対して本発明を適用したが、排気バルブのバルブタイミング可変機構を備える可変動弁装置に対しても上記実施形態に準じた態様をもって、本発明を適用することはできる。
・本発明を適用することのできる可変動弁装置は、上記実施形態にて例示した構造の装置に限られるものではない。要するに、機関弁のバルブタイミングを特定角に固定する固定状態と前記バルブタイミングの固定を解除する解除状態とが油圧機構により切り替え固定機構を備えた油圧駆動式のバルブタイミング可変機構であれば、いずれの装置に対しても本発明の適用は可能であり、その場合にも上記実施形態の効果に準じた効果を奏することはできる。