JP6398638B2 - 撥水撥油性部材及び撥水撥油性部材の製造方法 - Google Patents
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Description
従来、基材の表面に、微細な凹凸構造を付与することにより、光の反射防止機能や、液体、特に水の付着を防ぐ撥水機能が得られることが知られており、撥水機能を向上させるため、微細な凹凸構造の上にさらに撥水性化合物としてフッ素系化合物を含有する被覆層を設けることが行われている。例えば、特許文献1には、微細凹凸構造を備えた基材の凹凸表面に、化学結合可能な部位と疎水性官能基とを有する化合物であって、含炭素化合物から成る第1の撥水性化合物Aと、第1の撥水性化合物Aよりも炭素数が少ない含炭素化合物B及び/又は無機化合物Cから成る第2の撥水性化合物を備えることが記載されている。
また、多数の微小突起を密接して配置した微細凹凸構造は、特許文献1、2に記載されるように賦型金型を用いて作製する場合には、多数の微小突起を密接して配置した微細凹凸構造は、製造時に使用される賦型金型を大面積で作製することが容易ではなく、また、複数の微細孔を形成するために陽極酸化やケミカルエッチング、ブラスト等の手法を用いて製造する場合には微細凹凸形状のばらつきを制御する事が難しく、また微細凹凸に賦型樹脂が詰まりやすいため賦型金型の寿命も短いなど、生産性の点からも問題があった。一方で、特許文献3に記載される超撥水性透明膜は、900〜1100℃もの高温による焼結処理が必要であり、製造工程上の負荷が高く、また、表面構造を所望の微細構造に制御することが困難であるという問題があった。
また、フッ素化合物を含む薄膜を形成する方法として、ディップコーティング法は、片面のみに薄膜を成膜することが困難であるために、表示装置、窓、壁などに貼ることのできる部材を生産する方法としては問題がある。さらに、ディップコーティング法に用いられるシランカップリング基を有するフッ素化合物は、塗布後に常温または高温高湿の雰囲気で1時間以上放置することが推奨されており、ロールツーロール方式の生産には向かない。ドライコーティング法を用いる方法は、樹脂材料を下地とする場合に、樹脂材料の耐性から条件が制約されてしまう。一方で、生産工程上の負荷を低減するため、またフレキシブル性を付与するために、樹脂材料を用いながら高い撥水性及び撥油性を発現する部材が求められている。
隣接する前記微小凹部間の距離Pが500nm以下であり、
前記撥水撥油層は、前記微細構造体に追従した凹凸形状を表面に有し、少なくとも1つの末端に炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を含有し、酸素原子を含有しない、炭素数10以下のフッ素化合物を蒸着源とした蒸着膜であることを特徴とする。
前記微細構造体の製造用金型を作製する製造用金型の作製工程と、
前記製造用金型を使用した賦型処理によって前記微細構造体を作製することにより前記微細凹凸層を形成する工程と、
前記微細凹凸層の前記微細構造体を有する側の面に、撥水撥油層を形成する工程と、を有し、
前記製造用金型の作製工程では、
前記製造用金型の母材の表面の切削により、前記母材の表面に、一方向に延長する第1の微細溝を作製する第1の切削工程と、
前記第1の微細溝を埋め戻し材により埋め戻す埋め戻し工程と、
前記埋め戻し工程により第1の微細溝を埋め戻した前記表面の切削により、前記第1の微細溝と交差する第2の微細溝を作製する第2の切削工程と、
前記埋め戻し工程による埋め戻しに供した前記埋め戻し材を、前記第1の微細溝より除去する除去工程とを有し、
前記撥水撥油層を形成する工程では、
少なくとも1つの末端に炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を含有し、酸素原子を含有しない、炭素数10以下のフッ素化合物を蒸着源とする化学蒸着法によって、前記微細凹凸層の前記微細構造体を有する側の面に、撥水撥油層を形成することを特徴とする。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「垂直」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
隣接する前記微小凹部間の距離Pが500nm以下であり、
前記撥水撥油層は、前記微細構造体に追従した凹凸形状を表面に有し、少なくとも1つの末端に炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を含有し、酸素原子を含有しない、炭素数10以下のフッ素化合物を蒸着源とした蒸着膜であることを特徴とする。
前記微細構造体の製造用金型を作製する製造用金型の作製工程と、
前記製造用金型を使用した賦型処理によって前記微細構造体を作製することにより前記微細凹凸層を形成する工程と、
前記微細凹凸層の前記微細構造体を有する側の面に、撥水撥油層を形成する工程と、を有し、
前記製造用金型の作製工程では、
前記製造用金型の母材の表面の切削により、前記母材の表面に、一方向に延長する第1の微細溝を作製する第1の切削工程と、
前記第1の微細溝を埋め戻し材により埋め戻す埋め戻し工程と、
前記埋め戻し工程により第1の微細溝を埋め戻した前記表面の切削により、前記第1の微細溝と交差する第2の微細溝を作製する第2の切削工程と、
前記埋め戻し工程による埋め戻しに供した前記埋め戻し材を、前記第1の微細溝より除去する除去工程とを有し、
前記撥水撥油層を形成する工程では、
少なくとも1つの末端に炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を含有し、酸素原子を含有しない、炭素数10以下のフッ素化合物を蒸着源とする化学蒸着法によって、前記微細凹凸層の前記微細構造体を有する側の面に、撥水撥油層を形成することを特徴とする。
本発明に係る撥水撥油性部材は、図1のように微細凹凸層1と撥水撥油層4との2層からなるものであっても良いし、図2のように、基材5の一面側に微細凹凸層1と撥水撥油層4とを備えた構造であっても良い。
また、本発明に係る撥水撥油性部材は、図示しないが、基材5の両面側に微細凹凸層1と撥水撥油層4とを備えた構造であっても良い。
また、本発明の撥水撥油性部材は、撥水撥油層を形成する材料として、少なくとも1つの末端に炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を含有し、酸素原子を含有しない、炭素数10以下のフッ素化合物、即ち炭素数7以上のパーフルオロアルキル基を含有しないフッ素化合物を用いる。これにより、いずれの末端にもパーフルオロアルキル基を含有しないフッ素化合物や、酸素原子を含有するフッ素化合物を用いる場合に比べて、撥水撥油性に優れる。これは、本発明で特定するフッ素化合物を用いることにより、撥水撥油性能を発揮するパーフルオロアルキル基が、撥水撥油層表面により多く存在することになり、且つ、酸素を含有せず、例えば水酸基やシラノール基等の親水性基により撥水撥油性能が阻害されないからと考えられる。
また、本発明に係る撥水撥油性部材は、撥水撥油性が付与されることにより、さらに防汚性も良好になる。
また、本発明の撥水撥油性部材の製造方法においては、微細構造体を有する側の面に、化学蒸着法により、フッ素化合物の蒸着膜である撥水撥油層を形成する。撥水撥油層は、フッ素化合物が微細構造体を有する面上に堆積されていくことにより形成されるため、形成された撥水撥油層の表面は、微細構造体に追従した凹凸形状を有する。このように、本発明に係る製造方法によって得られる撥水撥油性部材は、特定のフッ素化合物を用いて形成された撥水撥油層側表面が特定の凹凸形状を有するため、上述したように、優れた撥水撥油性を発揮する。
また、本発明の撥水撥油性部材の製造方法においては、炭素数7以上のパーフルオロアルキル基を含有しないフッ素化合物を用いるため、環境負荷等が懸念されているパーフルオロオクタン酸(PFOA)が副生されず、環境負荷が少ない。
さらに、本発明に係る撥水撥油性部材の製造方法においては、化学蒸着法により、高温環境下にすることなく撥水撥油層を形成することができる。そのため、支持部材の材料は、耐熱性の高い材料に限定されず、材料選択の幅が広い。支持部材の材料選択の幅が広いことにより、樹脂フィルム等のフレキシブル性の高い支持部材を用いることができるため、得られた撥水撥油性部材を後から貼り付けて使用する場合においても、設置場所が限定され難く、且つ容易に設置することができる。また、撥水撥油層の形成を高温環境下で行う必要がないことから、高温加熱による微細構造体の変形を抑制することができる。よって、本発明の製造方法においては、撥水撥油層の表面を所望の凹凸形状とすることが容易である。また、化学蒸着法は、真空蒸着法やスパッタリング法のような物理的成膜法に比べて成膜時の圧力が高いため、粒子の回り込みがよく、微小凹部に対するステップカバレッジに優れている。そのため、本発明の製造方法においては、撥水撥油層を微細構造体の表面に容易に均一に形成することができる。
以下、本発明に係る撥水撥油性部材の必須成分である微細凹凸層及び撥水撥油層、並びに含まれていても良い基材、その他構成について、順に説明する。
微細凹凸層1は、複数の微小凹部2が互いに離間して配置された微小凹部群を備えた微細構造体を少なくとも一方の面に有する。また、前記微小凹部2間には、凸部3が配置され、前記凸部3は、微細構造体側の表面に対して垂直方向から投影する平面視において連結している。このように微小凹部間の当該微小凹部を取り囲んだ凸部が平面視で連結して形成されているため、当該凸部は表面に他の物品等が接触しても、その圧力で、容易に凸部が潰れたり、凸部の先端同士が付着する等の塑性変形が抑制されるため、接触箇所に痕が残りにくく、使用中の耐久性が高い。
前記微細構造体が有する複数の微小凹部の形状は、同一の形状を有していても異なる形状を有していてもよい。
なお、隣接する前記微小凹部間の距離Pは、各微小凹部間において異なっていてもよく、同じであってもよいし、隣接する前記微小凹部間の距離Pが周期的に異なるように微小凹部が配置されていてもよい。
なお、本発明に係る撥水撥油性部材は、撥水撥油層の表面が、微細凹凸層の微細構造体に追従した凹凸形状を有するため、前記微小凹部間の距離Pは、撥水撥油層を含めて複数の微小凹部が互いに離間して配置された微小凹部群を備えた微細構造体を考えた場合における撥水撥油層表面の微小凹部間の距離と実質的に同じであるとすることができる。
ここで、前記微小凹部の深さDは、微細凹凸層の撥水撥油層側表面における凸部の高さから、微小凹部の最深部までの距離をいう。本発明に係る撥水撥油性部材を用いて微小凹部の深さを測定する場合は、図6に示すように、当該微小凹部の最深部を通る垂直断面を用いて、撥水撥油層表面の凸部の高さから撥水撥油層表面の凹部の最深部までの距離D’、凹部の最深部における撥水撥油層の厚みT1、凸部における撥水撥油層の厚みT2を測定し、D=D’+T1−T2により求めることができる。
また、図1に示すように、微小凹部の形状が、微細構造体の表面を垂直方向から投影する平面視において、正方形である柱状であり、この正方形の直交する2辺の延長方向に、微小凹部がそれぞれ繰り返し作成され、マトリックス状に設けられる場合は、この2辺の延長方向に係る幅Wx、Wyが、対応する繰り返しピッチPx及びPyの1/5以上、4/5以下であることが、撥水撥油性に優れ、前記微細構造体の形成に用いられる賦型用金型の微小溝の作成が容易であり、生産性に優れる点から好ましく、1/3以上、2/3以下であることがより好ましい。
また、基材の表面に前記微細構造体が設けられた微細凹凸層の場合には、当該厚みは基材の厚みに依存し、特に限定されない。
前記樹脂組成物は、特に限定されず、少なくとも樹脂を含み、必要に応じて重合開始剤等その他の成分を含有する。樹脂組成物には、1種類の樹脂のみが含まれるものも包含される。なお、本発明において樹脂とは、モノマーやオリゴマーの他、ポリマーを含む概念である。
まず、平坦な基材上に微細凹凸層用の樹脂組成物を塗布して硬化させることにより、平坦な硬化膜を形成する。当該硬化膜は、水の接触角の再現性が取れるように(例えば標準偏差が4°以内となるように)十分に溶媒を乾燥し、必要に応じて十分に反応させて硬化したものである。例えば、電離放射線硬化性樹脂が用いられる場合、透明基材上に厚さ5μmの微細凹凸層用の樹脂組成物からなる塗膜を形成し、紫外線を940mJ/cm2以上の積算光量となるように照射することにより十分に反応させて硬化した硬化膜を形成する。
そして、当該硬化膜側を上面にして、粘着層つきの黒アクリル板に水平に貼り付ける。次いで、接触角を測定しようとする溶剤(例えば純水)1.0μLの液滴を滴下し、着滴10秒後の静的接触角をθ/2法に従って計測する。測定装置としては、例えば、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いることができる。
また、損失正接を0.2以下とすることにより、拭取り時に変形した微細構造体が、弾性復元され、元の形状に戻りやすい。これにより、微細構造体の塑性変形が抑制され、微細構造体が有する機能を低下することなく、乾拭きで汚れ等を拭取ることが容易になる。中でも、tanδが0.18以下であることが好ましい。
まず、微細凹凸層形成用の樹脂組成物を、2000mJ/cm2のエネルギーの紫外線を1分以上照射することにより十分に硬化させて、基材及び微細構造体を有しない、厚さ1mm、幅5mm、長さ30mmの単膜とする。
次いで、25℃下、上記樹脂組成物の硬化物の長さ方向に10Hzで25gの周期的外力を加え、動的粘弾性を測定することにより、25℃における、E’、E”が求められる。測定装置としては、例えば、UBM製 Rheogel E4000を用いることができる。
中でも、微細構造体の成形性及び機械的強度に優れる点から好適に用いられる、電離放射線硬化性樹脂として好ましく用いられる(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物を例にとって、具体的に説明する。
(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1個有する単官能(メタ)アクリレートであっても、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2個以上有する多官能アクリレートであってもよく、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを併用するものであってもよい。
中でも、硬化物が上記貯蔵弾性率(E’)とtanδを満たしやすく、微細凹凸層が柔軟性と弾性復元性を両立する点からは、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを併用することが好ましい。
一方、硬度を高くする点からは、多官能(メタ)アクリレートのみを用いることが好ましい。
上記(メタ)アクリレートの硬化反応を開始又は促進させるために、必要に応じて光重合開始剤を適宜選択して用いても良い。光重合開始剤の具体例としては、例えば、ビスアシルフォスフィノキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フォスフィンオキサイド、フェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、前記樹脂組成物中に帯電防止剤を含有することが好ましい。帯電防止剤を含有することにより、微細凹凸層表面に汚れが付着することを抑制することができ、また、拭取り時に汚れが落ちやすい。
帯電防止剤は、従来公知のものの中から適宜選択して用いることができる。帯電防止剤の具体例としては、例えば、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、1級〜3級アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物、スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられる。中でも、カチオン性化合物が好ましく、3級アミノ基を有するカチオン性化合物がより好ましく、N,N−ジオクチル−1−オクタンアミン等のトリアルキルアミンであることが更により好ましい。
本発明において樹脂組成物は、塗工性などを付与する点から溶剤を用いてもよい。溶剤を用いる場合、当該溶剤は、組成物中の各成分とは反応せず、当該各成分を溶解乃至分散可能な溶剤の中から適宜選択して用いることができる。このような溶剤の具体例としては、例えば、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)等のエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、シクロヘキサン等のアノン系溶剤、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶剤を例示することができるが、これらに限られるものではない。また、樹脂組成物に用いられる溶剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上の溶剤の混合溶剤でもよい。
本発明において用いられる微細凹凸層用の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更にその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、濡れ性調整のための界面活性剤、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、安定化剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、粘度調整剤、離型剤等が挙げられる。
前記微細凹凸層を形成する方法としては、複数の微小凹部が互いに離間して配置された微小凹部群を備えた微細構造体を少なくとも一方の面に有し、前記微細構造体において、隣接する前記微小凹部間の距離Pが500nm以下であり、樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸層を形成することができる方法であれば、特に限定はされない。例えば、前記微細構造体の製造用金型を作製する製造用金型の作製工程(以下、単に「製造用金型作製工程」と称する場合がある。)と、前記製造用金型を使用した賦型処理によって前記微細構造体を作製することにより前記微細凹凸層を形成する工程(以下、単に「微細凹凸層形成工程」と称する場合がある。)とを有することが好ましい。また、前記製造用金型作製工程では、前記微細構造体を反転した反転構造を有する金型を作製できる方法を適宜選択すればよい。中でも、前記製造用金型作製工程では、前記製造用金型の母材の表面の切削により、前記母材の表面に、一方向に延長する第1の微細溝を作製する第1の切削工程と、前記第1の微細溝を埋め戻し材により埋め戻す埋め戻し工程と、前記埋め戻し工程により第1の微細溝を埋め戻した前記表面の切削により、前記第1の微細溝と交差する第2の微細溝を作製する第2の切削工程と、前記埋め戻し工程による埋め戻しに供した前記埋め戻し材を、前記第1の微細溝より除去する除去工程とを有する方法が、生産性に優れる点から好ましい。
図7は、微細凹凸層形成工程の一例を示す図である。図7に示す形成工程では、樹脂供給工程において、ダイ11により帯状フィルム形態の基材5に受容層1’を構成する未硬化で液状の紫外線硬化性樹脂を塗布する。なお紫外線硬化性樹脂の塗布については、ダイ11による場合に限らず、各種の手法を適用することができる。続いて、押圧ローラ13により、微細構造体の製造用金型であるロール版12の周側面に基材5を加圧押圧し、これにより未硬化状態で液状の紫外線硬化性樹脂をロール版12の周側面に密着させると共に、ロール版12の周側面に作製された微細な凹凸形状の凹部に紫外線硬化性樹脂を充分に充填する。この製造工程は、この状態で、紫外線の照射により紫外線硬化性樹脂を硬化させ、これにより基材5の表面に微小凹部群を作製する。この製造工程は、続いて剥離ローラ14を介してロール版12から、硬化した紫外線硬化性樹脂と一体に基材5を剥離する。製造工程は、必要に応じてこの基材5に粘着層等を作製した後、所望の大きさに切断して微細凹凸層1を作製する。これにより微細凹凸層1は、ロール材による長尺の基材5上に、微細構造体の製造用金型であるロール版12の周側面に作製された微細凹凸形状を順次賦型して、効率良く大量生産される。
また直交するように2つの微細溝を作製することにより、微小凹部を賦型するための凸部を効率良く金型に作製することができる。
第2実施形態では、ステンレス等の金属材料によるパイプ材の周側面に、直接に、又は中間層を介して、銅の薄膜を作製し、微細構造体の製造用金型の母材を作製する。さらにこの母材の周側面に、第1実施形態について上述したと同様にして微細構造体を反転した形状の微細凹凸形状を作製する。その後、この母材の周側面に、管軸に延長する方向に、レーザーの照射等により表面薄膜の切断線を設け、この切断線により母材の周側面からこの薄膜を剥離する。またこの剥離した薄膜を、平板形状の金属板等によるベース材に貼り付け、これにより平板による微細構造体の製造用金型を作製する。
前記第2実施形態では、このようにして作成した平板による金型を使用した枚葉の処理により、微細構造体を作製する。
前記第2実施形態のように、パイプ材の周側面に微細凹凸形状を作製し、この微細凹凸形状を展開して平板による金型を作製する場合でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
第3実施形態では、切削に供するバイトの交換により、第1の切削工程による微細溝のピッチと、第2の切削工程による微細溝のピッチを異ならせ、これに代えて、又はこれに加えて、繰り返しの方向に係る微小凹部5の幅(例えば図1ではWx及びWy)を異ならせる。このように、各切削工程による微細溝のピッチ及び/又は繰り返し方向に係る微細凹部の幅を異ならせることにより、撥水撥油性部材が発揮し得る機能に異方性を付与する。
このように異方性を付与する場合にあっても、前記第1実施形態及び前記第2実施形態と同一の効果を得ることができる。
本発明に係る撥水撥油性部材は、前記微細構造体を有する側の面に撥水撥油層を備える。なお、微細構造体を有する側の面とは、前記微細凹凸層の前記微細構造体を有する面であってもよいし、前記微細凹凸層上に更に別の層が形成されてなる、表面に前記微細構造体を有する面であってもよい。
また、撥水撥油層は、前記微細構造体に追従した凹凸形状を表面に有し、少なくとも1つの末端に炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を含有し、酸素原子を含有しない、炭素数10以下のフッ素化合物を蒸着源とした蒸着膜である。
本発明においては、前記撥水撥油層に用いられるフッ素化合物が炭素数7以上のパーフルオロアルキル基を含有しないため、前記撥水撥油層の形成において、環境負荷等が懸念されているパーフルオロオクタン酸(PFOA)が副生されず、環境負荷が少ない。また、前記フッ素化合物は、酸素原子を含有しないため、撥水撥油層の材料自体の撥水性及び撥油性を向上する。これは、水酸基やシラノール基等の親水性基を有しないことから、撥水性及び撥油性が阻害され難くなるためと推定される。本発明においては、前記撥水撥油層が、さらに、前記微細構造体に追従した凹凸形状を表面に有することにより、撥水撥油層の比表面積が大きくなるため、撥水撥油性が強調され、より一層優れた撥水撥油性を発揮することができる。
前記パーフルオロアルキル基としては、撥水性及び撥油性の点から、中でも炭素数が3〜6のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、更に、炭素数が4〜6のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
また、前記フッ素化合物としては、イオンやラジカル等の活性種が発生し易く、前記微細凹凸層の表面に、化学蒸着法により前記微細構造体に追従した凹凸形状を有する撥水撥油層を形成し易い点から、不飽和炭化水素基及びヨード基から選ばれる少なくとも一種を含有するものが好ましい。
F(CF2)n−Y 式(1)
(式(1)中、nは1〜6であり、Yはフッ素原子及び酸素原子を含有しない置換基である。)
nは好ましくは3〜6であり、更に好ましくは4〜6である。
前記Yとしては、例えば、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、並びに、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子よりなる群から選択されるハロゲン原子等の置換基が挙げられる。前記アルキル基としては、更に炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、前記アルケニル基としては、炭素数2〜4のアルケニル基が好ましい。前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、各種ブテニル基等を挙げることができる。
中でも好適なフッ素化合物としては、例えば、パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロヘキシルヨージド等が挙げられる。
前記撥水撥油層の厚さは、例えば、微細構造体側の表面を平坦面にして当該平坦面上に撥水撥油層を形成したと仮定した場合の厚さが、3〜100nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは4〜80nmの範囲内であり、更により好ましくは4〜50nmの範囲内である。すなわち、撥水撥油層をなすフッ素化合物の量が、平面視において同面積となる平坦面に成膜した際に、前記厚さとなる量であることが好ましい。さらに言い換えると、撥水撥油層は、平面視において同面積となる平坦面に成膜した場合に、前記厚さの膜が形成される条件で成膜された前記フッ素化合物からなる膜であることが好ましい。撥水撥油層の厚さを前記範囲内とすることにより、撥水撥油層の表面を、微細構造体に追従した凹凸形状を容易に形成することができ、また、撥水撥油層の透過率が向上する。
微細凹凸層の微細構造体側の表面を平坦面にして当該平坦面上に撥水撥油層を形成したと仮定した場合の厚さの測定は、例えば、表面が鏡面加工されたシリコンウエハを一部マスキングした状態で、当該シリコンウエハの表面に、本発明の撥水撥油性部材が備える撥水撥油層の形成に用いられるフッ素化合物と同じ量のフッ素化合物を用いて、本発明の撥水撥油性部材と同じ方法により撥水撥油層を形成し、その後マスキングを除去することにより、シリコンウエハの表面に撥水撥油層を形成する部分と形成しない部分を設け、撥水撥油層のある部分とない部分の段差を測定することにより、行うことができる。
また、前記撥水撥油層の厚さを、本発明の撥水撥油性部材を厚み方向に切断した垂直断面のSEM、TEM、STEMなどの電子顕微鏡写真を観察することにより測定することもできる。この場合に測定される撥水撥油層の厚さは、3〜100nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは4〜80nmの範囲内であり、更により好ましくは4〜50nmの範囲内である。
撥水撥油層の厚さを前記範囲内とすることにより、撥水撥油層の表面を、微細凹凸層の微細構造体に追従した凹凸形状にすることが容易になり、また、撥水撥油層の透過率が向上する。なお、撥水撥油層の厚みは、成膜時における成膜圧力、成膜時間等の成膜条件を適宜変更することにより、調整することができる。
また、前記撥水撥油層を含めた微細構造体における微小凹部の深さD’と、微細凹凸層が有する微細構造体の微小凹部の深さDとの差は、50nm以内であることが好ましく、30nm以内であることがより好ましい。中でも、撥水撥油層の凹凸形状は、反射防止機能等の微細凹凸層の微細構造体を有する表面の機能を同様に発現できる程度に、微細構造体と略同一の形状であることが好ましい。
また、前記凹凸形状を構成する微小凹部の深さD’は、好ましくは50nm以上500nm以下であり、中でも、撥水撥油性及び反射防止性能の発現が向上する点から、より好ましくは70nm以上250nm以下である。
本発明に係る撥水撥油性部材は、撥油性の観点から、前記撥水撥油層の表面におけるn−ヘキサデカンの静的接触角が、90°以上であることが好ましい。
撥水撥油層の表面における接触角は、撥水撥油層の表面を構成するフッ素化合物の種類、撥水撥油層表面の凹凸形状の形状等を変更することにより、調整することができる。
前記撥水撥油層をパターン状に形成する場合の撥水撥油層のパターン形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができるが、例えば、ストライプ状、L字状、マトリクス状、開放端を有しない縁どりを持つ任意の図形、開放端を有する縁どりを持つ任意の図形等の形状が挙げられる。
或いは、例えば、開放端を有しない縁どりを持つ任意の図形、及び開放端を有する縁どりを持つ任意の図形は、縁部を撥水撥油層とし、縁部の内部に存在する内部図形部を親水性とすることにより、内部図形部に水がたまったときに図形を浮かび上がらせることができる。開放端を有する縁どりを持つ任意の図形においては、当該開放端において特に流れやすい。
また、前記撥水撥油層のパターン形状の撥水撥油層部分の幅と撥水撥油層が設けられていない部分の幅との比(撥水撥油層部分の幅/撥水撥油層が設けられていない部分の幅)は、特に限定されるものではない。例えば、本発明に係る撥水撥油性部材を窓のような透明な部分の透明部材として用いる場合には、反対側を見通しやすくするため、防曇効果を有する部分、即ち撥水撥油層が設けられていない部分の幅をむしろ広くすることが好適に用いられる。
例えば、前記微細凹凸層用の樹脂組成物として、親水性の樹脂組成物を用いた場合は、撥水撥油層が設けられていない部分を親水性にすることができる。これにより、本発明に係る部材表面を傾斜面とすることにより、部材表面に付着した水滴は重力に従って移動し、撥水撥油層が設けられていない部分に集めやすくすることができる。このように、撥水撥油層が設けられていない部分を、水滴の流路とすることができ、撥水撥油層がパターン状に配置されてなる本発明の撥水撥油性部材は、排水部材として用いることも可能である。また、前記微細凹凸層用の樹脂組成物として、親油性の樹脂組成物を用いた場合は、撥水撥油層が設けられていない部分を親油性にすることができるため、本発明に係る撥水撥油性部材を排油部材として用いることが可能である。
前記撥水撥油層の形成方法は、前記特定のフッ素化合物を蒸着源として蒸着膜であって、前記微細構造体に追従した凹凸形状を表面に有する層を形成することができる方法であれば、特に限定はされない。例えば、物理蒸着法、化学蒸着法が挙げられるが、中でも、撥水撥油層を微細凹凸層の微細構造体を有する表面に容易に均一に形成することができる点から、化学蒸着法(CVD法)が好ましい。
本発明において、化学蒸着法による撥水撥油層の形成の際には、化学蒸着の対象物又は当該対象物が接する台の温度をコントロールできる状態で行うことが好ましい。前記温度が高すぎると、微細凹凸層及び基材等の材料として樹脂等の相対的に耐熱性の低い材料を使用することが困難となる場合がある。本発明においては、前記温度を低温にすることができるため、基材としてPETフィルム等の樹脂フィルムを用いる等、樹脂を使用することができる。そのため、材料の選択の幅が広く、また、微細構造体の加熱による変形を抑制することができる。前記温度は、微細凹凸層及び基材等の化学蒸着の対象物となり得るものの耐熱性により異なるが、基材として特に好ましく用いられるPETフィルムやTACフィルムの使用可能温度の観点から120℃以下であることが好ましく、PETフィルムなどのガラス転移点(Tg)を考慮すると70℃以下であることがより好ましい。本発明の好ましい態様によっては、前記温度を50℃以下とすることもできる。また、前記温度は、通常、−20℃以上である。
本発明に必要に応じて用いられる基材は、本発明の撥水撥油性部材の用途に合わせて適宜選択して用いられれば良い。基材は、透明基材に限定されるものではなく、用途に合わせて不透明基材であっても良い。
また、基材と微細凹凸層との密着性を向上させ、ひいては耐摩耗性(耐傷性)を向上させるためのプライマー層を基材上に形成してもよい。このプライマー層は、基材および微細凹凸層との双方に密着性を有し、可視光を透過するものが好ましい。また基材と微細凹凸層の屈折率差により干渉ムラが出る場合にはプライマー層の屈折率を基材と微細凹凸層の中間の値に調整することでムラ軽減が可能である。
本発明の撥水撥油性部材は、本発明の効果を損なわない範囲において、更にその他の層を有していてもよい。例えば、その他の層としては、低反射層、紫外線吸収層(UVA層)、放熱層(熱伝導層)などが挙げられる。
また、本発明の撥水撥油性部材は、撥水撥油層の表面に、剥離可能な保護フィルムを仮接着した状態で保管、搬送、売買、後加工又は施工を行い、適時、該保護フィルムを剥離除去する形態とすることもできる。これにより、保管、搬送等の間における撥水撥油性部材の表面の損傷、汚染を防止することができる。
本発明に係る撥水撥油性部材は、用途により、透明性の高い部材とすることが好ましい。すなわち、下地の意匠性を損傷しない点から、撥水撥油性部材の全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、更に90%以上であることが好ましく、より更に92%以上であることが好ましい。なおここで、撥水撥油性部材の全光線透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)により測定することができる。
撥水撥油性部材が透明部材である場合は、微細構造体を、反射防止機能を発現し得る形状とすることにより、それに追従した撥水撥油層の凹凸形状も反射防止機能を発現し得るため、撥水撥油性部材に反射防止機能を付与することができる。
本発明に係る撥水撥油性部材は、撥水性及び/又は撥油性が必要なあらゆる用途に用いることができる。本発明に係る撥水撥油性部材は、撥水撥油層の表面が前記特定の凹凸形状を有することにより、従来の、多数の微小突起を密接して配置した微細凹凸構造を表面に有する部材に比べて、表面形状が維持され易く、撥水撥油性の劣化が抑制されることから、撥水撥油性の持続性が高い撥水撥油性部材として用いることができる。
本発明に係る撥水撥油性部材の用途としては、例えば、自動車、電車、航空機等の乗り物や建造物等の窓ガラス又は強化ガラス、デパート等店舗のショーウィンドウ、商品や美術品のショーケース、PDA乃至は携帯情報端末、カーナビゲーションシステム、券売機、ATM(現金自動預金支払兼用機)等のタッチパネルディスプレイ及びその他の液晶画面に用いられる液晶保護フィルム、外壁用建材、台所、風呂場、洗面所、トイレ等の水回り空間に使用される建材、野菜の包装フィルム、シャンプー用容器やレトルト食品用容器等の粘性の高い液体を保存する容器の内側に使用される部材等において、撥水撥油効果を発揮して好ましく用いることができる。
本発明に係る撥水撥油性部材は、撥水撥油性を付与したい部分に後から貼り付ける態様において用いても良いし、撥水撥油性が必要な部材そのものとして用いても良い。
さらに、本発明に係る撥水撥油性部材は、上述した方法により、撥水撥油性に加えて反射防止性能を発揮する態様とすることができる。反射防止性能をも発揮し得る本発明に係る撥水撥油性部材は、前記用途の中でも、特に優れた視認性が求められる、窓ガラス、ショーウィンドウ、ショーケース、液晶保護フィルム等として好ましく用いることができる。
また、本発明に係る撥水撥油性部材は、微細凹凸形状を形成するためのモールドとして用いることもできる。
これに対し、冷蔵ショーケース内部の天井を構成する部材として、撥水撥油層がパターン状に形成された本発明に係る撥水撥油性部材を用いることにより、商品への水滴の落下を防ぐことができる。具体的には、例えばストライプパターン状の撥水撥油層を有する本発明に係る撥水撥油性部材を、撥水撥油層側が表面になり、且つストライプパターンが水平方向に対して傾斜を有するように、冷蔵ショーケース内部の天井部分に設置する。これにより、結露により当該天井に付着した水滴は、撥水撥油層が設けられていない部分に集められ、当該部分が流路となって、集められた水滴が重力に従って流路を移動して排出される。これにより、冷蔵ショーケースの天井に付着した水滴が商品に落下することを防止でき、ヒーターの使用を必要としないため、省電力にもなる。同様に、冷蔵ショーケース内部の扉、側板ガラス、棚などに設置することにより、ヒーターを用いずに、結露を商品に付着することなく、適宜排水することができる。
パターン状の撥水撥油層を有する本発明に係る撥水撥油性部材は、冷蔵ショーケースの他にも、同様の原理を利用して、例えば浴室の天井、農業用ビニールハウスの天井等に用いることができる。本発明に係る撥水撥油性部材を浴室又は農業用ビニールハウスの天井に使用した場合は、当該天井に付着した水滴を所望の流路を通って排出させることができるため、天井からの水滴の落下を防ぐことができる。
また、本発明に係る撥水撥油性部材を用いることにより、DNAアレイによる抗原抗体反応の高感度化や、流体セル等の低圧損化を実現し得る。即ち、DNAアレイでは、セルの部分には撥水撥油層を設けず、セルの部分にのみ親水性の領域を形成することにより、液体を残して抗原抗体反応を高感度に検出することができる。また、マイクロTAS(Micro Total Analysis System)等、ミクロンオーダーの流体セルでは、流体を流したくない部分に撥水撥油層を形成し、流体を流したい流路部分を親水性の領域とすることにより、所望の部分のみに流体が流れやすくなるため、より低圧で流体を流すことが可能である。
(製造例1 賦型用ロール金型1の作製)
幅1300mm、直径298mmで表面に銅めっきを施した鉄製の円柱状母材を準備した。
一方で、刃先幅30μmの表面に、延在方向Yに対する垂直断面形状が矩形状の微小凸部(隣接する微小凸部間隔が150nm、微小凸部幅が75nm、微小凸部間の幅が75nm、微小凸部の高さが70nm)を有する切削用バイトを準備した。
円柱状母材を回転させながら、前記切削用バイトの刃先を外周面に押圧して切削し、前記切削用バイトの刃先幅30μmのピッチで間欠送りして回転軸方向に移動させることにより、円周方向に沿って並列した複数の第1の溝を順次形成することにより、第1の切削工程を行った。
次に、前記第1の溝を形成した母材に、埋め戻し材としてUV硬化性のアクリル樹脂を塗布し、スキージングにより第1の溝にアクリル樹脂を充填し、UV照射により前記アクリル樹脂を硬化処理することにより、埋め戻し工程を行った。
刃先幅10μmの切削用バイトであって、刃先幅以外は前記で用いた切削用バイトと寸法が同一の切削用バイトを用いて、埋め戻し工程後の母材に、前記と同様にして、回転軸と垂直な方向に切削用バイトを順次移動させる事により、直径方向に沿って並列した複数の第2の溝を順次作成することにより、第2の切削工程を行った。
次いで、第2の切削工程後の母材を溶剤に浸漬し、当該母材を溶剤中で回転させる工程を、その都度溶剤を交換しながら、3回繰り返し行うことにより、前記埋め戻し工程による埋め戻しに供した前記アクリル樹脂を、前記第1の微細溝より除去する除去工程を行った。これにより、賦型用ロール金型1を作製した。
前記製造例1の賦型用ロール金型1の作製において、切削用バイトが有する微小凸部を、隣接する微小凸部間隔を200nm、微小凸部幅を100nm、微小凸部間の幅を100nm、微小凸部の高さを100nmとしたこと以外は、前記製造例1と同様にして、賦型用ロール金型2を作製した。
以下の各成分を混合し、希釈溶剤として、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンを用いて、固形分45質量%の微細凹凸層形成用樹脂組成物Aを調製した。
<微細凹凸層形成用樹脂組成物Aの組成>
・エチレンオキサイド変性(EO変性)ビスフェノールAジアクリレート 65質量部
・EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 35質量部
・ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(ルシリンTPO) 1質量部
1.微細凹凸層の形成
図7に示す方法により、微細凹凸層を形成した。
ロール版12として、製造例1の賦型用ロール金型1を用い、透明基材5として、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)(東洋紡社製)を用いた。また、ダイ11により帯状フィルム形態の透明基材5に、硬化後の微細凹凸層の厚さが20μmとなるように、製造例3で得られた微細凹凸層形成用樹脂組成物Aを塗布した。透明基材側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して微細凹凸層形成用樹脂組成物Aを硬化させた。その後、賦型用ロール金型より剥離し、図1に示すように、微細構造体の表面を垂直方向から投影する平面視において微小凹部の形状が正方形である柱状の微小凹部が、この正方形の直交する2辺の延長方向にそれぞれ繰り返し作成され、マトリックス状に設けられた微細凹凸層を形成した。微小凹部の延在方向Xに係る繰り返しピッチPxは、150nm±5.0nmであり、微小凹部の延在方向Yに係る繰り返しピッチPyは、150nm±5.0nmであり、正方形の微小凹部の各辺の長さは75nm±2.5nmであった。また、微小凹部の深さDは70nm±4nmであった。
撥水撥油層の形成には、平行平板型の電極構造を有するプラズマCVD装置(アネルバ製、型番:PED−401)を使用した。当該プラズマCVD装置直径325mmの下部電極に40kHzの高周波電力が投入されるように改造してある。下部電極はチラーにより温度設定が可能であり、上部電極はガスを導入するためシャワーヘッドになっている。フッ素化合物を導入するためのバブラーを設置し、ウォーターバスにより温度を設定できるようにした。バブラーからニードルバルブを介して、プラズマCVD装置内にガスが導入される。ニードルバルブの調整によりバブラーの圧力を変更できる。
得られた支持部材、すなわち基材上に微細凹凸層を形成したものをプラズマCVD装置の真空チャンバーに入れ、下部電極上に設置した。また、膜厚を測定するため、表面が鏡面加工されたシリコンウエハを一部マスキングした状態で下部電極上に設置した。下部電極の温度は18℃とした。チャンバーを閉めて5mTorrまで減圧したあと、Arガスをキャリアガスとし、バブリングして、フッ素化合物(モノマー材料)として(パーフルオロヘキシル)エチレン(ダイキン工業(株)製、品番:F−1620)をプラズマCVD装置の真空チャンバー内に供給した。このとき、Arガスの流量を50sccm、バブラーの温度を25℃、バブラーの圧力を150Torrとした。排気量を調整して真空チャンバー内の圧力(成膜圧力)を400mTorrに調整したのち、放電電力を52Wとし、成膜を行った。成膜時間は5分間とした。成膜時間経過後放電を止めて、大気圧に戻してから、蒸着膜が成膜された支持部材をCVD装置のチャンバーから取り出すことにより、支持部材の微細凹凸層側の面にフッ素化合物を蒸着源とした蒸着膜である撥水撥油層が形成された実施例1の撥水撥油性部材を得た。
得られた撥水撥油性部材は、撥水撥油層の膜厚が37nmであり、撥水撥油層側の表面は、微細構造体に追従した凹凸形状を有するものであった。なお、撥水撥油層の膜厚は、シリコンウエハ上の撥水撥油層のある部分とない部分の段差を小阪研究所製サーフコーダET4000Lにて測定することで確認し、10点で測定された膜厚の測定値の平均値を撥水撥油層の膜厚とした。以下の各実施例及び比較例においても同様である。
各実施例及び各比較例の成膜条件を表1に示す。
実施例1において、成膜時間を5分から1分に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の撥水撥油性部材を得た。
得られた撥水撥油性部材は、撥水撥油層の膜厚が7nmであり、撥水撥油層側の表面に凹凸形状を有するものであった。
実施例1において、成膜圧力を400mTorrから30mTorrに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の撥水撥油性部材を得た。
得られた撥水撥油性部材は、撥水撥油層の膜厚が4nmであり、撥水撥油層側の表面は、微細構造体に追従した凹凸形状を有するものであった。
実施例1において、賦型用ロール金型1の代わりに賦型用ロール金型2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の撥水撥油性部材を得た。
実施例4で形成した微細凹凸層の微細構造体の形状は、図1に示すように、微細構造体の表面を垂直方向から投影する平面視において微小凹部の形状が正方形である柱状の微小凹部が、この正方形の直交する2辺の延長方向にそれぞれ繰り返し作成され、マトリックス状に設けられており、微小凹部の延在方向Xに係る繰り返しピッチPxは、200nm±5.0nmであり、微小凹部の延在方向Yに係る繰り返しピッチPyは、200nm±5.0nmであり、正方形の微小凹部の各辺の長さは100nm±2.5nmであった。また、微小凹部の深さDは100nm±4nmであった。
得られた撥水撥油性部材は、撥水撥油層の膜厚が37nmであり、撥水撥油層側の表面は、微細構造体に追従した凹凸形状を有するものであった。
実施例1において、フッ素化合物としてF−1620の代わりに、(パーフルオロブチル)エチレン(ダイキン工業(株)製、品番:F−1420)を用い、成膜圧力を400mTorrから200mTorrに変え、放電電力を52Wから105Wに変え、キャリアガスを用いず、バブラーの圧力を150Torrから210Torrに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5の撥水撥油性部材を得た。
得られた撥水撥油性部材は、撥水撥油層の膜厚が47nmであり、撥水撥油層側の表面は、微細構造体に追従した凹凸形状を有するものであった。
実施例1において、フッ素化合物としてF−1620の代わりに、パーフルオロヘキシルヨージド(ダイキン工業(株)製、品番:I−1600)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6の撥水撥油性部材を得た。
得られた撥水撥油性部材は、撥水撥油層の膜厚が4nmであり、撥水撥油層側の表面は、微細構造体に追従した凹凸形状を有するものであった。
実施例1において、フッ素化合物としてF−1620の代わりにCF4を用い、バブラーを用いずにガスボンベを使用した。CF4の流量は200sccmとし、キャリアガスは用いなかった。成膜圧力、成膜時間、放電電力は表1に示す値とした。その他は、実施例1と同様にして、実施例7の撥水撥油性部材を得た。
得られた撥水撥油性部材は、撥水撥油層側の表面は、微細構造体に追従した凹凸形状を有するものであった。
実施例1において、基材上に微細凹凸層を形成した支持部材に代えて、表面が平坦なPETフィルム(東洋紡績(株)製、A4100、厚さ:100μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の部材を得た。
得られた部材は、蒸着膜の膜厚が37nmであり、蒸着膜側の表面は平坦面であった。
実施例1において、フッ素化合物として、F−1620の代わりに、1H,1H−ペンタフルオロプロパノール(ダイキン工業(株)製、品番:A−1210)を用い、バブラーの圧力を150Torrから180Torrに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の部材を得た。
得られた部材は、蒸着膜の膜厚が60nmであり、蒸着膜側の表面は、微細構造体に追従した凹凸形状を有するものであった。
実施例1において、フッ素化合物として、F−1620の代わりに、3−パーフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン(ダイキン工業(株)製、品番:E−1630)を用い、バブラーの圧力を150Torrから140Torrに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の部材を得た。
得られた部材は、蒸着膜の膜厚が81nmであり、蒸着膜側の表面は、微細構造体に追従した凹凸形状を有するものであった。
実施例1において、フッ素化合物として、F−1620の代わりに、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、品番:ビスコート8F)を用い、成膜時間を5分から2分に変え、バブラーの圧力を150Torrから140Torrに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の部材を得た。
得られた部材は、蒸着膜の膜厚が23nmであり、蒸着膜側の表面は、微細構造体に追従した凹凸形状を有するものであった。
実施例1において、フッ素化合物として、F−1620の代わりに、1,4−ジビニルパーフルオロブタン(東ソー・エフテック(株)製、品番:C4−DV)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例5の部材を得た。
得られた部材は、蒸着膜の膜厚が152nmであり、蒸着膜側の表面は、微細構造体に追従した凹凸形状を有するものであった。
実施例1において、フッ素化合物として、F−1620の代わりに、1,6−ジビニルパーフルオロヘキサン(東ソー・エフテック(株)製、品番:C6−DV)を用い、バブラーの圧力を150Torrから140Torrに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例6の部材を得た。
得られた部材は、蒸着膜の膜厚が98nmであり、蒸着膜側の表面は、微細構造体に追従した凹凸形状を有するものであった。
実施例1において、撥水撥油層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例7の部材を得た。
<接触角の測定>
ポリエチレンテレフタレート(PET)に微細凹凸層形成用樹脂組成物Aを乾燥後の膜厚が厚さ5μmとなるように塗膜を形成し、紫外線を940mJ/cm2の積算光量となるように照射して硬化させて、微細構造体を有しない硬化膜を形成した。当該硬化膜側表面を上面にして、粘着層つきの黒アクリル板に貼り付けたものの上に、純水1.0μLの液滴を滴下し、着滴10秒後、協和界面科学(株)製 接触角計DM 500を用いて、θ/2法に従って静的接触角を測定した。
上記微細凹凸層形成用樹脂組成物Aの平坦な硬化膜表面における純水の接触角は54.9°であった。
また、純水の代わりにn−ヘキサデカン(n−HD)を用いて、同様にして静的接触角を測定したところ、上記微細凹凸層形成用樹脂組成物Aの平坦な硬化膜表面におけるn−HDの接触角は3°であった。
また、純水の代わりにn−ヘキサデカン(n−HD)を用いて、同様にして静的接触角を測定した。
測定結果を表1に示す。
実施例1〜7で得られた撥水撥油性部材及び比較例1〜6で得られた部材においては蒸着膜側の面を、比較例7で得られた部材においては微細構造体を有する面を、光源に向けるように粘着層つきの黒アクリル板に貼り付けて、JIS K−7361−1に従って全光線透過率を測定した。測定機器としては、反射・透過率計HR−100(村上色彩技術研究所)を使用した。測定結果を表1に示す。
実施例1〜7で得られた撥水撥油性部材及び比較例1〜6で得られた部材においては蒸着膜側の面を、比較例7で得られた部材においては微細構造体を有する面を上面にして、粘着層つきの黒アクリル板に貼り付けたものを用い、分光光度計(島津製作所製 MPC3100)にて、反射Y値(5°正反射率)を測定した。測定結果を表1に示す。
実施例1〜7で得られた撥水撥油性部材の撥水撥油層側の面を上面にして、粘着層つきの黒アクリル板に貼り付けた後、指を押し付けて指紋を付着させた。その後、ザヴィーナミニマックス(富士ケミカル製)にて指紋を乾拭きした。乾拭きは3kg/cm2程度の力で10往復行い、拭取り後の外観を評価した。
実施例1〜7で得られた撥水撥油性部材は柔軟性及び復元性に優れており、撥水撥油層表面の拭き取り性に優れ、指紋汚れが視認できなかった。また、拭き取りに際し、撥水撥油層表面において、塑性変形が抑制されていた。
実施例1〜7で得られた撥水撥油性部材は、特定の微細構造体を有し、樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸層と、前記微細構造体に追従した凹凸形状を表面に有し、特定のフッ素化合物を蒸着源とした蒸着膜である撥水撥油層を備えた本発明に係る撥水撥油性部材であったため、水及びn−HDの接触角が大きく、撥水撥油性に優れていた。また、比較例1と同種のフッ素化合物を用いた実施例1〜4においては、比較例1との対比により、いずれも、平坦な硬化膜表面における接触角よりも更に撥水撥油性が強調されていることが確認できた。なお、実施例7において、撥水撥油層の膜厚は未測定であるが、実施例7は、撥水撥油層が形成されていない比較例7に比べて水及びn−HDの接触角が大きく、撥水撥油性に優れていたため、撥水撥油層が形成されていることがわかる。また、実施例1〜7で得られた撥水撥油性部材は、特に、特定の微細構造体に追従した凹凸形状を表面に有するものであったため、生産性に優れ、表面形状が変形することなく、耐久性にも優れていながら、反射率が低く、光学特性にも優れていた。実施例1〜7で得られた撥水撥油性部材の反射率が低いのは、微小凹部群を有することで空気界面との屈折率が連続的に変化し、その結果、界面反射が低減しているものと考察する。
また、実施例1〜7における撥水撥油性部材の製造工程においては、炭素数7以上のパーフルオロアルキル基を含有しないフッ素化合物を用いたため、前記撥水撥油層の形成において、環境負荷等が懸念されているパーフルオロオクタン酸(PFOA)が副生されず、環境負荷が少なく、化学蒸着法により、高温環境下にすることなく撥水撥油層を形成することができたため、製造工程上の負担が小さかった。
一方で、比較例1で得られた部材は、部材の表面が平坦面であったため、撥水性及び撥油性に劣り、反射防止性能も劣っていた。
比較例2〜6は、使用したフッ素化合物が、本発明で特定するものでなく、酸素原子を含有する及び/又はいずれの末端にもパーフルオロアルキル基を含有しないフッ素化合物であったため、撥水性及び撥油性に劣っていた。
比較例7は、撥水撥油層が形成されなかったため、撥水性及び撥油性に劣っていた。
実施例1において、撥水撥油層の形成の際に、微細凹凸層上にメタルマスクを設置し、蒸着膜を成膜後、メタルマスクを取り除いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例8の撥水撥油性部材を得た。メタルマスクとしては、ストライプ状にライン/スペース=5.0mm/5.0mmのパターンが形成されているものを用い、ストライプ状となるように、メタルマスクを設置した。
メタルマスクのライン部分が、親水性且つ親油性の微細凹凸層表面のまま残り、スペース部分のみに撥水撥油層が形成された。
実施例8において、メタルマスクのパターンをライン/スペース=10.0mm/2.0mmに変更したこと以外は、実施例8と同様にして実施例9の撥水撥油性部材を得た。
実施例8において、メタルマスクのパターンをライン/スペース=5.0mm/1.0mmに変更したこと以外は、実施例8と同様にして実施例10の撥水撥油性部材を得た。
実施例8において、メタルマスクのパターンをライン/スペース=2.5mm/0.5mmに変更したこと以外は、実施例8と同様にして実施例11の撥水撥油性部材を得た。
実施例8において、メタルマスクのパターンをライン/スペース=0.5mm/0.1mmに変更したこと以外は、実施例8と同様にして実施例12の撥水撥油性部材を得た。
実施例8において、メタルマスクのパターンをライン/スペース=1.0mm/0.1mmに変更したこと以外は、実施例8と同様にして実施例13の撥水撥油性部材を得た。
実施例8において、メタルマスクのパターンをライン/スペース=10.0mm/0.1mmに変更したこと以外は、実施例8と同様にして実施例14の撥水撥油性部材を得た。
実施例8において、メタルマスクのパターンをライン/スペース=5.0mm/5.0mmに変更したこと以外は、実施例8と同様にして実施例15の撥水撥油性部材を得た。
実施例8において、メタルマスクのパターンをライン/スペース=1.0mm/1.0mmに変更したこと以外は、実施例8と同様にして実施例16の撥水撥油性部材を得た。
実施例8において、メタルマスクのパターンをライン/スペース=0.5mm/0.5mmに変更したこと以外は、実施例8と同様にして実施例17の撥水撥油性部材を得た。
実施例8〜17で得られた撥水撥油性部材及び比較例7で得られた部材の基材側を、各々粘着層を介してアルミ板に貼り付け、撥水撥油性部材表面が水平面に対して10°または60°の角度になるように大気中で設置した。なお、実施例8〜17で得られた撥水撥油性部材においては、撥水撥油層のストライプパターンの直線と水平面とが、上記所定の角度をなすように設置した。次いで、アルミ板を冷却し、撥水撥油性部材表面に結露を生じさせ、各部材表面の水滴の動き及び視認性を目視により観察した。
実施例8〜17で得られた撥水撥油性部材は、各設置角度において、撥水撥油層が設けられていない部分を伝わって水が流れる様子を観察することができた。また、実施例9〜17で得られた撥水撥油性部材については、前記設置角度を90°として、同様にして評価を行った。実施例9〜17の中では、実施例9〜11及び実施例13〜16で得られた撥水撥油性部材が、特に短時間で水が流れ始め、流水性に優れ、撥水撥油層が形成されていない部分の視認性に優れることにより、撥水撥油性部材全体も視認性に優れていた。これは、実施例9〜11及び実施例13〜16では、親水性を有する撥水撥油層が形成されていない部分の幅がある程度大きく、当該部分において水滴が大きく成長しやすいためであると考えられる。また、これらの中でも、実施例9〜11及び実施例13、14で得られた撥水撥油性部材は、流水性に優れていたことに加えて、撥水撥油層部分よりも撥水撥油層が形成されていない部分の方が撥水撥油性部材全体を占める割合が大きかったため、特に撥水撥油性部材全体の視認性に優れていた。
比較例7で得られた部材においては、撥水撥油層を有しないため、特定方向に水滴が流れる様子を確認することができず、排水の流路を制御することができなかった。
2 微小凹部
3 凸部
4 撥水撥油層
5 基材
10 撥水撥油性部材
11 ダイ
12 ロール版
13 押圧ローラ
14 剥離ローラ
22 母材
23 微小凸部
24 バイト
25、28 微細溝
Claims (3)
- 複数の微小凹部が互いに離間して配置された微小凹部群、及び、前記各微小凹部の間に各微小凹部を取り囲むように配置され連結している凸部を備えた微細構造体を少なくとも一方の面に有し、且つ樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸層と、前記微細構造体を有する側の面に設けられた撥水撥油層とを備え、
隣接する前記微小凹部間の距離Pが500nm以下であり、
前記撥水撥油層は、前記微細構造体に追従した凹凸形状を表面に有し、少なくとも1つの末端に炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を含有し、酸素原子を含有しない、炭素数10以下のフッ素化合物を蒸着源とした蒸着膜であることを特徴とする、撥水撥油性部材。 - 前記撥水撥油層の表面における、純水の静的接触角が、150°以上であり、n−ヘキサデカンの静的接触角が、90°以上である、請求項1に記載の撥水撥油性部材。
- 複数の微小凹部が互いに離間して配置された微小凹部群、及び、前記各微小凹部の間に各微小凹部を取り囲むように配置され連結している凸部を備えた微細構造体を少なくとも一方の面に有し、且つ樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸層と、前記微細構造体を有する側の面に設けられた撥水撥油層とを備え、隣接する前記微小凹部間の距離Pが500nm以下であり、前記撥水撥油層は、前記微細構造体に追従した凹凸形状を表面に有する、撥水撥油性部材の製造方法であって、
前記微細構造体の製造用金型を作製する製造用金型の作製工程と、
前記製造用金型を使用した賦型処理によって前記微細構造体を作製することにより前記微細凹凸層を形成する工程と、
前記微細凹凸層の前記微細構造体を有する側の面に、撥水撥油層を形成する工程と、を有し、
前記製造用金型の作製工程では、
前記製造用金型の母材の表面の切削により、前記母材の表面に、一方向に延長する第1の微細溝を作製する第1の切削工程と、
前記第1の微細溝を埋め戻し材により埋め戻す埋め戻し工程と、
前記埋め戻し工程により第1の微細溝を埋め戻した前記表面の切削により、前記第1の微細溝と交差する第2の微細溝を作製する第2の切削工程と、
前記埋め戻し工程による埋め戻しに供した前記埋め戻し材を、前記第1の微細溝より除去する除去工程とを有し、
前記撥水撥油層を形成する工程では、
少なくとも1つの末端に炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を含有し、酸素原子を含有しない、炭素数10以下のフッ素化合物を蒸着源とする化学蒸着法によって、前記微細凹凸層の前記微細構造体を有する側の面に、撥水撥油層を形成する、撥水撥油性部材の製造方法。
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