JP5652514B1 - 冷蔵冷凍ショーケース - Google Patents

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Abstract

【課題】視認性に優れた冷蔵冷凍ショーケースを提供する。【解決手段】扉を有し、少なくとも一部が透明部材1で構成され、透明部材1の外面に第一の樹脂組成物の硬化物からなる第一の微小突起構造体3を有する反射防止部材2を備え、透明部材1の内面に第二の樹脂組成物の硬化物からなる第二の微小突起構造体7を有する結露抑制部材6を備え、第一の微小突起構造体3における微小突起4は、反射防止を図る光の最短波長と一定の関係を有し、水平断面内における微小突起4の断面積占有率が、頂部から最深部に近づくに従い漸次増加する構造を有し、第一の樹脂組成物の硬化物の貯蔵弾性率等や第二の微小突起構造体7の微小突起間距離等に特定の好適範囲がある。【選択図】図4

Description

本発明は、冷蔵冷凍ショーケースに関する。
スーパー、コンビニエンスストア、精肉店等、食品を販売する店舗においては、飲料水、生鮮食品、冷凍食品等の各種商品を、冷蔵冷凍ショーケース内に保存を兼ねて陳列し、販売している。当該冷蔵冷凍ショーケースは、少なくとも一部が透明であるため、顧客は扉を開閉することなく冷蔵冷凍ショーケース内の商品を確認することができる。
当該冷蔵冷凍ショーケースの内部は常に低温環境であるため、商品の取出しや陳列の際に扉を開けると、庫内に外気が侵入して結露が発生することがあった。視認性の悪化や、陳列された食品の劣化防止の点から、当該結露の防止が求められている。
特許文献1には、結露や結氷を防ぐ手段として、3枚のガラス板が所定の空間を隔てて対向し、当該3枚のガラス板の周縁部を、スペーサーを介して保持することで一体構造が構成され、当該ガラス板の特定箇所に導電膜が付加された、特定の保冷ショーケース用複層ガラス構造体が開示されている。特許文献1の技術は、結露が生じる前、又は生じた際に導電膜に通電してガラス板の温度を上昇することによって、結露を予防し、又は解消するものであった。特許文献1の技術を適用するためには、保冷ショーケースが前記導電膜に通電するための通電部材を備える必要があり、製造コストの問題があった。また、ガラス板の温度が上昇することにより庫内の温度も上昇するという問題があった。
特許文献2には、基体上に飽和吸水量が45mg/cm以上の、吸水性の架橋樹脂が設けられた防曇性物品が開示されている。特許文献2によれば前記吸水性の架橋樹脂の吸水性により、基体表面の雰囲気湿度を低減して防曇性を発現するとされている。
しかしながら、このような吸水性能を有する防曇性部材は、吸収した水分が飽和吸水量に達すると吸水性能を発揮することができず、再度吸水性能を発揮するためには、吸水した水分を放出する必要があるが、吸水した水分を放出するためには長時間要する場合があったり、水分を放出しても吸水性能が完全に回復しない場合があった。そのため吸水性能を有する防曇性部材は、長時間持続的に結露抑制効果を発揮することが困難であり、食品等が常時保管される冷蔵冷凍ショーケース用途には不向きであった。更に吸水性能を有する防曇性部材は、吸水性架橋樹脂が吸水と乾燥を繰り返すことにより、材料自体の劣化により吸水性が低下したり、変色が生じやすいという問題があった。
また特許文献3には、長時間親水性を維持することにより、高い防曇性能を有する冷蔵ショーケースとして、構成する透明材料の少なくとも外側表面に酸化タングステンまたは酸化タングステンの複合材の微粒子を具備し、前記微粒子の平均粒径が1nm〜200nmの範囲であり、かつ、微粒子のアスペクト比が1〜3.5の範囲である冷蔵ショーケースが開示されている。しかしながら、可視光応答型の光触媒である酸化タングステンを用いているため、可視光透過率が下がることは避けられず、視認性は悪かった。
特開2011−84460号公報 国際公開第2007/52710号パンフレット 特開2010−96359号公報
冷蔵冷凍ショーケース内の商品の視認性は、内部の結露のみでなく、外光反射や、汚れの付着等によっても低下する。冷蔵冷凍ショーケースはヒトが触れやすい場所に設置されるため、指紋汚れ等が付着しやすいとういう問題があった。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、結露を抑制しながら、視認性に優れた冷蔵冷凍ショーケースを提供することを目的とする。
本発明に係る冷蔵冷凍ショーケースは、扉を有し、少なくとも一部が透明部材で構成された冷蔵冷凍ショーケースであって、
前記透明部材の外面の少なくとも一部に、第一の樹脂組成物の硬化物からなる複数の微小突起が密接して配置されてなる第一の微小突起構造体を表面に有する反射防止部材を備え、
前記透明部材の内面の少なくとも一部に、第二の樹脂組成物の硬化物からなる複数の微小突起が密接して配置されてなる第二の微小突起構造体を表面に有する結露抑制部材を備え、
前記第一の微小突起構造体における前記微小突起は、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmin、当該微小突起の隣接突起間隔d1の最大値をd1maxとしたときに、
d1max≦Λmin
なる関係を有し、且つ、前記微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断すると仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有し、
前記第一の樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率(E1’)が300MPa以下であり、且つ、前記貯蔵弾性率(E1’)に対する、前記第一の樹脂組成物の硬化物の25℃における損失弾性率(E1”)の比(tanδ(=E1”/E1’))が0.2以下であり、前記第一の樹脂組成物の硬化物表面における、n−ヘキサデカンの静的接触角が、θ/2法で30°以下、又は、オレイン酸の静的接触角が、θ/2法で25°以下であり、
前記第二の微小突起構造体において隣接する前記微小突起間の距離の平均が50〜500nmであり、前記第二の微小突起構造体の表面における純水の静的接触角が、θ/2法で20°以下であることを特徴とする。
本発明によれば、結露を抑制しながら、視認性に優れた冷蔵冷凍ショーケースを提供することができる。
図1は、本発明に係る冷蔵冷凍ショーケースの一例を示す模式図である。 図2は、本発明に係る冷蔵冷凍ショーケースの別の一例を示す模式図である。 図3は、本発明の冷蔵冷凍ショーケースを構成する透明部材を含む積層体の一例を示す模式断面図である。 図4は、本発明の冷蔵冷凍ショーケースを構成する透明部材を含む積層体の別の一例を示す模式断面図である。 図5は、本発明の冷蔵冷凍ショーケースを構成する透明部材を含む積層体の別の一例を示す模式断面図である。 図6は、本発明の冷蔵冷凍ショーケースを構成する透明部材の一例を示す模式平面図である。 図7は、ドロネー図の一例を示す模式平面図である。 図8は、微小突起構造体の別の一例を示す模式断面図である。 図9は、反射防止部材の製造方法の一例を示す概略図である。
以下、本発明に係る冷蔵冷凍ショーケースについて詳細に説明する。
なお、本明細書において「部材」は、「板」、「シート」、「フィルム」等の態様を含む概念であり、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。また、「フィルム面(板面、シート面)」とは、対象となるフィルム状(板状、シート状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるフィルム状部材(板状部材、シート状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタアクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各々を表す。
また、本発明において硬化物とは、化学反応を経て硬くなったもののことをいい、硬化性とは、化学反応を経て硬くなる性質をいう。
[冷蔵冷凍ショーケース]
本発明に係る冷蔵冷凍ショーケースは、扉を有し、少なくとも一部が透明部材で構成された冷蔵冷凍ショーケースであって、
前記透明部材の外面の少なくとも一部に、第一の樹脂組成物の硬化物からなる複数の微小突起が密接して配置されてなる第一の微小突起構造体を表面に有する反射防止部材を備え、
前記透明部材の内面の少なくとも一部に、第二の樹脂組成物の硬化物からなる複数の微小突起が密接して配置されてなる第二の微小突起構造体を表面に有する結露抑制部材を備え、
前記第一の微小突起構造体における前記微小突起は、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmin、当該微小突起の隣接突起間隔d1の最大値をd1maxとしたときに、
d1max≦Λmin
なる関係を有し、且つ、前記微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断すると仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有し、
前記第一の樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率(E1’)が300MPa以下であり、且つ、前記貯蔵弾性率(E’)に対する、前記第一の樹脂組成物の硬化物の25℃における損失弾性率(E1”)の比(tanδ(=E1”/E1’))が0.2以下であり、前記第一の樹脂組成物の硬化物表面における、n−ヘキサデカンの静的接触角が、θ/2法で30°以下、又は、オレイン酸の静的接触角が、θ/2法で25°以下であり、
前記第二の微小突起構造体において隣接する前記微小突起間の距離の平均が50〜500nmであり、前記第二の微小突起構造体の表面における純水の静的接触角が、θ/2法で20°以下であることを特徴とする。
上記本発明に係る冷蔵冷凍ショーケースについて図を参照して説明する。図1及び図2は、それぞれ本発明に係る冷蔵冷凍ショーケースの一例を示す模式図である。図1に例示される冷蔵冷凍ショーケース100は、前面に扉20を有し、当該扉20が透明部材1を備え、当該透明部材1の少なくとも一部に前記反射防止部材及び結露抑制部材を備え、例えば後述する積層体10を有している。また、図2に例示される冷蔵冷凍ショーケース100は、背面に扉20を有し、前面、側面、及び上面にそれぞれ透明部材1a、1b及び1cを備え、当該透明部材1a、1b及び1cの少なくとも一部に前記反射防止部材及び結露抑制部材を備え、例えば後述する積層体10を有する。
図3、図4、及び図5は、それぞれ本発明の冷蔵冷凍ショーケースを構成する透明部材を含む積層体の一例を示す模式断面図である。図3〜図5に例示される積層体10は、前記透明部材1を含んで構成され、透明部材1の冷蔵冷凍ショーケースの外面側に対応する面に反射防止部材2を、内面側に対応する面に結露抑制部材6を備えている。
反射防止部材2は、図3の例のように、第一の透明基材5の一面側に第一の微小突起構造体3を有し、他面側に接着層11を有して、当該接着層11を介して透明部材1上に貼付されていてもよい。また、図4の例のように第一の微小突起構造体の微小突起が密接して配置されてなる表面とは反対側の面に、第一の透明基材5と接着層11とを兼ね備えた層を有して、当該接着層11(兼第一の透明基材5)を介して透明部材1上に貼付されていてもよい。更に、図5の例のように微小突起構造体1層のみからなり、
透明部材1上に直接形成されたものであってもよい。
結露抑制部材6も同様に、図3の例のように第二の透明基材9の一面側に第二の微小突起構造体7を有し、他面側に接着層12を有して、当該接着層12を介して透明部材1上に貼付されていてもよい。また、図4の例のように第二の微小突起構造体の微小突起が密接して配置されてなる表面とは反対側の面に、第二の透明基材9と接着層12とを兼ね備えた層を有して、当該接着層12(兼第二の透明基材9)を介して透明部材1上に貼付されていてもよい。更に、図5の例のように微小突起構造体1層のみからなり、
透明部材1上に直接形成されたものであってもよい。
図6は、本発明の冷蔵冷凍ショーケースを構成する透明部材の一例を示す模式平面図である。図6では、透明部材1を外面側からみた平面図の例を示している。図6の例では、透明部材1の外面側の一部に反射防止部材を有しない部分13、即ち、透明部材1が露出した部分が存在する。反射防止部材2は、図6の例のように、透明部材1の一部分のみに有していてもよく、図示はしないが、透明部材1の全面に有していてもよい。
また、図示はしないが、結露抑制部材6は透明部材1の内側面の一部分のみに有していてもよく、透明部材1の全面に有していてもよい。
例えば、透明部材1上の外面又は内面に商品名等を示すシール等を貼る場合、当該シール等の剥がし易さの点から、当該シール等の貼り付け部分は反射防止部材2乃至結露抑制部材6が形成されていないことが好ましい。
一方、透明部材の外面と内面との全面にそれぞれ反射防止部材及び結露抑制部材を備える場合には、結露を抑制しながら視認性に優れる効果が大きくなる点から好ましい。
本発明の冷蔵冷凍ショーケース100は、透明部材1の外面側の少なくとも一部に適宜上記特定の反射防止部材2が設けられ、透明部材1の内面側の少なくとも一部に適宜上記特定の結露抑制部材6が設けられているため、透明部材の外光反射を防止しながら、透明部材の外面側の指紋汚れを拭き取りやすく、且つ、ショーケース内の結露が抑制されるため、優れた視認性を有するものである。
なお、本発明の冷蔵冷凍ショーケースは、冷蔵及び冷凍の少なくとも1つの機能を有すればよく、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、並びに冷蔵及び冷凍の両方の機能を有する冷蔵冷凍ショーケースのいずれも包含するものである。
以下、本発明に係る冷蔵冷凍ショーケースの各部材について、順に詳細に説明する。
<反射防止部材>
本発明において反射防止部材2は、第一の樹脂組成物の硬化物からなる複数の微小突起4が密接して配置されてなる第一の微小突起構造体3を表面に有する。
反射防止部材2が有する第一の微小突起構造体3における微小突起4は、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmin、当該微小突起4の隣接突起間隔d1(図3及び図4)の最大値をd1maxとしたときに、
d1max≦Λmin
なる関係を有し、且つ、前記微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起4を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起4の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有している。反射防止部材2がこのような構造を有することにより、Λmin以上の波長を有する光の反射防止を図ることができる。
反射防止部材2は、前記第一の微小突起構造体3が第一の樹脂組成物の硬化物からなり、当該第一の樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率(E1’)が300MPa以下であり、且つ、当該第一の樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率(E1’)に対する損失弾性率(E1”)の比(tanδ(=E1”/E1’))が0.2以下であり、前記第一の樹脂組成物の硬化物表面における、n−ヘキサデカンの静的接触角が、θ/2法で30°以下、又は、オレイン酸の静的接触角が、θ/2法で25°以下であるため、乾拭きで汚れが拭取りやすく、仮に表面に付着した指紋汚れ等の油性の汚れが完全に拭取れなかった場合であっても、微細凹凸層の表面に薄く広がるため、当該汚れが目立たなくなり、拭取り後の視認性が良好になる。そのため、当該反射防止物品をショーケースの外面など、汚れが付着しやすい箇所に備えることにより、前記微小突起構造体による反射防止効果、即ち、優れた視認性が持続する。
従来の反射防止部材は、耐擦傷性の点から、微小突起の硬度が高いものが広く用いられてきた。硬度の高い微小突起は、拭取り時に圧力がかかってもほとんど変形しないため、乾拭きで汚れを拭き取ることは困難であった。
一方、圧力により容易に変形可能な微小突起は、圧力により当該突起が潰れたり、スティッキングが生じやすく、拭いた箇所に拭き痕が残ってしまう場合があった。
本発明に用いられる反射防止部材2においては、前記第一の微小突起構造体3として上記特定の物性を有する第一の樹脂組成物の硬化物を用いる。当該第一の樹脂組成物の硬化物は、貯蔵弾性率(E1’)が300MPa以下、且つ、損失正接(tanδ)が0.2以下であることにより、当該第一の微小突起構造体3の微小突起4は、拭取る程度の圧力で変形し、且つ、優れた弾性復元性を備えている。そのため、乾拭きで汚れを拭取る際には、その圧力により微小突起4が変形して、微小突起4間に付着した汚れを機械的に掻き出し易くなり、その後、圧力が取り除かれると、塑性変形を生じることなく元の微小突起4の形状に復元する。このようなことから、本発明において用いられる反射防止部材は、乾拭きであっても、反射防止性能を低下させることなく、汚れを拭取ることが可能である。
なお、本発明における拭取り時の圧力の大きさは、特に限定されるものではないが、通常、およそ2〜5kg/cm程度の圧力である。
(第一の微小突起構造体)
第一の微小突起構造体は、複数の微小突起が密接して配置されてなる表面を有する。第一の微小突起構造体を構成する微小突起の形状は、当該微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有するものの中から適宜選択すればよい。このような微小突起の形状の具体例としては、半円状、半楕円状、三角形状、放物状、釣鐘状等の垂直断面形状を有するものが挙げられる。複数ある微小突起は同一の形状を有していても異なる形状を有していてもよい。微小突起が上記の形状を有することにより、微細凹凸等の深さ方向に屈折率が連続的に変化するため、反射防止性が付与される。
本発明において隣接突起間隔d1及び微小突起の高さH1は以下の方法により測定される。
(1)先ず、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて突起の面内配列(突起配列の平面視形状)を検出する。
(2)続いてこの求められた面内配列から各突起の高さの極大点(以下、単に極大点と称する。)を検出する。なお極大点を求める方法としては、平面視形状と対応する断面形状の拡大写真とを逐次対比して極大点を求める方法、平面視拡大写真の画像処理によって極大点を求める方法等、種々の手法を適用することができる。
(3)次に検出した極大点を母点とするドロネー図(Delaunary Diagram)を作成する。図7にドロネー図の一例を示す模式平面図を示す。図7の例に示されるようにドロネー図とは、各極大点21を母点としてボロノイ分割を行った場合に、ボロノイ領域が隣接する母点同士を隣接母点と定義し、各隣接母点同士を線分22で結んで得られる3角形の集合体からなる網状図形である。各3角形は、ドロネー3角形と呼ばれ、各3角形の辺(隣接母点同士を結ぶ線分)は、ドロネー線と呼ばれる。
(4)次に、各ドロネー線の線分長の度数分布、すなわち隣接する極大点間の距離(隣接突起間距離)の平面視の拡大写真から、5〜20個程度の互いに隣接する前記微細構造を有しない微小突起を選んで、その隣接突起間距離の値を標本抽出し、この標本抽出して求められる数値範囲から明らかに外れる値(通常、標本抽出して求められる隣接突起間距離平均値に対して、値が1/2以下のデータ)を除外して度数分布を検出する。
(5)このようにして求めた隣接突起間距離d1の度数分布を正規分布とみなして平均値d1AVG及び標準偏差σd1を求める。本発明においては、隣接突起間距離d1の最大値d1maxをd1max=d1AVG+2σd1と定義して算出する。
同様の手法を適用して突起の高さを定義する。この場合、上述の(2)により求められる極大点から、特定の基準位置からの各極大点位置の相対的な高さの差を取得してヒストグラム化する。このヒストグラムによる度数分布から突起高さの平均値H1AVG、標準偏差σH1を求める。なお突起の頂部に凹部が存在する微細構造、或いは、頂部が複数の峰に分裂している微細構造を有する微小突起が含まれる場合は、1つの微小突起が頂点を複数有していることにより、1つの突起に対してこれら複数のデータが突起高さH1のヒストグラムにおいて混在することになる。そこでこの場合は麓部が同一の微小突起に属するそれぞれ複数の頂点の中から高さの最も高い頂点を、当該微小突起の突起高さとして採用して度数分布を求める。
なお、微小突起の高さを測る際の基準位置は、突起付け根位置、すなわち隣接する微小突起の間の谷底(高さの極小点)を高さ0の基準とする。但し、係る谷底の高さ自体が場所によって異なる場合、例えば、各微小突起間の谷底を連ねた包絡面が、微小突起の隣接突起間距離に比べて大きな周期でうねった凹凸形状を有する場合(図8参照)等は、(1)先ず、微小突起構造体30の微小突起表面31とは反対側の面から測った各谷底の高さの平均値を、該平均値が収束するに足る面積の中で算出する。(2)次いで、該平均値の高さを有し、且つ微小突起構造体30の微小突起表面31とは反対側の面と平行な面を基準面として考える。(3)その後、該基準面を改めて高さ0として、該基準面からの各微小突起の高さを算出する。
隣接する微小突起32の間の谷底の高さ自体が場所によって異なる場合、例えば図8に示すように、各微小突起間の谷底を連ねた包絡面が、可視光線帯域の最長波長λMAX以上の周期D(すなわちD>λMAXである)でうねることもある。該周期的なうねりは、透明基材の表裏面に平行な平面(図8におけるXY平面)における1方向(例えばX方向)のみでこれと直交する方向(例えばY方向)には一定高さであっても良いし、或いは透明基材の表裏面に平行な平面(図8におけるXY平面)における2方向(X方向及びY方向)共にうねりを有していても良い。D>λMAXを満たす周期Dでうねった凹凸面33が多数の微小突起32からなる微小突起構造体30の微小突起表面31に重畳することによって、当該微小突起表面31で完全に反射防止し切れずに残った反射光を散乱させ、反射防止性を一段と向上させることができる。
尚、係るうねりによる凹凸面33の周期Dが全面に渡って一定では無く分布を有する場合は、該凹凸面33について凸部間距離の度数分布を求め、その平均値をDAVG、標準偏差をΣとしたときの、
min=DAVG―2Σ
として定義する最小隣接突起間距離Dminを以って周期Dの代わりとして設計する。即ち、微小突起構造体30の微小突起表面31の残留反射光の散乱効果を十分奏し得る条件は、
min>λMAX
である。通常、D又はDminは1〜200μm、好ましくは10〜100μmとされる。
また、微小突起構造体30の良好な平滑性を確保するために、前記周期Dでうねった凹凸面33の高低差(図8中のh)は、10nm以下であることが好ましく、1nm〜5nmの範囲内であることがより好ましい。なお、前記凹凸面33により形成される凹凸面の高低差は、例えば500nm以上離れた微小突起32の谷底部の位置の高低差を測定することにより求めることができる。微小突起32の谷底部の位置は、微小突起構造体30を、厚み方向に切断した垂直断面のTEM写真又はSEM写真を用いて観察することにより求めることができる。
前記第一の微小突起構造体中の各微小突起が同一の高さH1を有し、当該微小突起が一定周期で規則正しく配置されている場合、隣接突起間隔d1は、微小突起配列の周期pと一致するため、d1max=pとなる。よって、反射防止効果を奏し得る条件は、d1max=p≦Λminであり、微小突起配列の周期p以上の波長を有する光に対して反射防止効果を奏することができる(例えば、特開昭50−70040号公報、特許第4632589号公報、特許第4270806号公報を参照することができる)。従って、例えば、可視光線帯域の全波長に対して反射防止効果を得るためには、可視光線帯域の最短波長を380nmとした場合、微小突起配列の周期を380nm以下とすればよい。また、微小突起の高さH1は、反射防止効果を得ようとする波長のうち最長波長Λmaxの0.2倍以上であることが好ましい(H1≧0.2×Λmax)。従って、例えば可視光線帯域の全波長に対して優れた反射防止効果を得ようとするためには、可視光線帯域の最長波長を780nmとした場合、H1≧0.2×780nm=156nmであることが好ましい。
突起が不規則に配置されている場合には、上述のようにして求めた隣接突起間距離d1の最大値d1max=d1AVG+2σd1が、d1max≦Λminを満たすことが必要であり、微小突起の高さH1の平均値H1AVGが、HAVG≧0.2×Λmaxを満たすことが好ましい。例えば、可視光線帯域の全波長に対して反射防止効果を奏し得るためには、d1max=d1AVG+2σd1≦380nmとすればよい。可視光線帯域の全波長に対する反射防止効果をより確実に奏し得る好ましい条件は、d1max≦300nmであり、更に好ましい条件は、d1max≦200nmである。また反射防止効果の発現及び反射率の等方性(低角度依存性)の確保等の理由から、通常、d1max≧50nmであり、好ましくは、d1max≧100nmとされる。また突起高さH1については、十分な反射防止効果を発現する為には、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmaxとしたときに、H1AVG≧0.2×Λmaxとなることが好ましく、可視光線帯域の全波長に対して反射防止効果を奏し得るためにはH1AVG≧0.2×780nm=156nmであることが好ましく、H1AVG≧170nmとすることがより好ましい。突起の高さH1AVGは、反射防止効果の点から、通常350nm以下とされる。また、突起の高さの分布は、通常50〜350nmである。
微細突起のアスペクト比(平均突起高さH1AVG/平均隣接突起間隔d1AVG)は0.8〜2.5であることが好ましく、更に、0.8〜2.1であることがより好ましい。
第一の微小突起構造体の厚み(図3におけるT1)は、適宜調整すればよいが、3μm〜30μmであることが好ましく、5μm〜10μmであることがより好ましい。なお、本発明において第一の微小突起構造体の厚みT1は、当該第一の微小突起構造体3の第一の透明基材5又は剛性を有する透明基材1との界面から、最も高い微小突起の頂部までの厚みで定義される。
本発明において第一の微小突起構造体は、第一の樹脂組成物の硬化物からなる。以下、反射防止部材を構成する第一の微小突起構造体として用いられる第一の樹脂組成物について、まず第一の樹脂組成物の硬化物の物性を説明し、次いで、第一の樹脂組成物の組成について説明する。
(第一の樹脂組成物の硬化物)
第一の樹脂組成物の硬化物は、後述する第一の樹脂組成物を、光及び/又は熱の作用により硬化させて得られたものである。後述する製造方法により、当該硬化物は所定の微小突起形状が付与された微小突起構造体とすることができる。
本発明において、第一の樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率(E1’)は300MPa以下である。E1’を300MPa以下とすることにより、拭取り時の圧力によって微小突起が変形し、微小突起間の隙間に入り込んだ汚れを、乾拭きで除去することが可能となる。中でも貯蔵弾性率(E1’)が、1〜250MPaであることが好ましく、1〜100MPaであることがより好ましい。
また、本発明においては、前記第一の樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率(E1’)に対する損失弾性率(E1”)の比(tanδ(=E1”/E1’)損失正接)が0.2以下である。損失正接を0.2以下とすることにより、拭取り時に変形した微小突起が、弾性復元され、元の形状に戻りやすい。これにより、突起の塑性変形やスティッキングが抑制され、反射防止性能を低下することなく、乾拭きで汚れを拭取ることが可能になる。中でも、tanδが0.18以下であることが好ましい。
本発明において貯蔵弾性率及び損失弾性率は、JIS K7244に準拠して、以下の方法により測定される。
まず、前記第一の樹脂組成物を、2000mJ/cmのエネルギーの紫外線を1分以上照射することにより十分に硬化させて、基材及び微小突起形状を有しない、厚さ1mm、幅5mm、長さ30mmの単膜とする。
次いで、25℃下、上記第一の樹脂組成物の硬化物の長さ方向に10Hzで25gの周期的外力を加え、動的粘弾性を測定することにより、25℃における、E’、E”が求められる。測定装置としては、例えば、UBM製 Rheogel E400を用いることができる。
また前記第一の樹脂組成物の硬化物は、当該硬化物の表面において、n−ヘキサデカンの静的接触角がθ/2法で30°以下、又はオレイン酸の静的接触角が、θ/2法で25°以下である。第一の樹脂組成物の硬化物の表面が上記のような親油性を有することにより、第一の微小突起構造体の表面に付着した油性の汚れが完全に拭取れなかった場合であっても、第一の微小突起構造体の表面に薄く広がるため、当該汚れが目立たなくなり、拭取り後の視認性が良好になる。
また、前記第一の樹脂組成物の硬化物は、表面の拭取り性の点から、当該硬化物の表面における水の静的接触角が、θ/2法で70°以上であることが好ましい。
なお、第一の樹脂組成物の硬化物の静的接触角は、基材上に第一の樹脂組成物を塗布して硬化させて、微小突起形状を有しない塗膜を形成する。当該塗膜の表面に接触角を測定しようとする溶剤(n−ヘキサデカン、オレイン酸、又は純水)の1.0μLの液滴を滴下し、着滴1秒後に、滴下した液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度から接触角を算出するθ/2法に従って測定した接触角とする。測定装置としては、例えば、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いることができる。
本発明の反射防止部材において、第一の微小突起構造体表面の弾性率は、柔軟性に優れる点から、200〜500MPaであることが好ましく、220〜400MPaであることが好ましい。
第一の微小突起構造体表面の最大押し込み深さは、変形し易く、拭取り性に優れる点から、1.0〜2.0μmであることが好ましく、1.2〜1.8μmであることがより好ましい。
また、第一の微小突起構造体表面の弾性復元率は、塑性変形が少なく、拭き痕が生じにくい点から、80%以上であることが好ましく、85〜98%であることがより好ましい。
本発明において、弾性率、最大押し込み深さ、及び弾性復元率は、以下のように測定される。
反射防止部材の第一の微小突起構造体表面に、下記特定の条件で圧子を押し込んで、フィルム表面の弾性率、最大押し込み深さ、弾性復元率を測定することができる。
測定装置は、例えば、フィッシャーインストルメンツ社製PICODENTER HM−500を用いることができる。
<測定条件>
・荷重速度 1mN/10秒
・保持時間 10秒
・荷重除荷速度 1mN/10秒
・圧子 ビッカース
・測定温度 25℃
(第一の樹脂組成物)
第一の樹脂組成物は、熱硬化性成分及び/又は光硬化性成分を含み、硬化後に上記物性が得られるものが用いられる。中でも、光硬化性成分を含む光硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
上記光硬化性成分としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物を含む組成物であることが好ましく、(メタ)アクリレートを含む組成物であることがより好ましい。
光硬化性樹脂組成物は、少なくとも上記光硬化性成分を含有していればよく、必要に応じて、更に他の成分を含有してもよい。
また、上記第一の樹脂組成物は、硬化物表面の親油性が向上し、微小突起が柔軟性に優れる点から、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物を含有することが好ましい。
以下、光硬化性成分として好ましく用いられる(メタ)アクリレートを含む組成物中の各成分について順に説明する。
(1)(メタ)アクリレート
(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1個有する単官能(メタ)アクリレートであっても、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2個以上有する多官能アクリレートであってもよく、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを併用するものであってもよい。
中でも、硬化物が上記物性を満たし、微小突起が柔軟性と弾性復元性を両立する点から、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを併用することが好ましい。
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、イソデキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ビフェニロキシエチルアクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、硬化物表面の親油性が向上し、微小突起が柔軟性に優れる点から、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましく、中でも、炭素数12以上であることがより好ましく、トリデシル(メタ)アクリレート、及びドデシル(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含むことが更により好ましい。これらの単官能(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレートを用いる場合、後述する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物の特性を兼ね備える。
単官能(メタ)アクリレートの含有量は、光硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、5〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
また、多官能アクリレートの具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、微小突起が柔軟性及び復元性に優れる点から、アルキレンオキサイドを含む多官能(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、エチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレートを用いることがより好ましく、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含むことが更により好ましい。
上記多官能(メタ)アクリレートの含有量は、光硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、10〜95質量%であることが好ましく、15〜90質量%であることがより好ましい。
(2)炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物
第一の樹脂組成物は、硬化物表面の親油性が向上し、微小突起が柔軟性に優れる点から、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物を含有することが好ましく、炭素数12以上の長鎖アルキル基を有する化合物を含有することがより好ましい。
炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物の具体例としては、例えば、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカンを有する化合物等が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない限り、更に置換基を有していてもよい。置換基の具体例としては、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基の他、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和二重結合を有する基等が挙げられる。中でも、光硬化性を備える点から、エチレン性不飽和二重結合を有することが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有することがより好ましい。
なお、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物が(メタ)アクリロイル基を有する場合、当該化合物は、前記(メタ)アクリレートにも該当し得る。
炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物を用いる場合、当該化合物の含有量は、光硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、5〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。
第一の樹脂組成物として好ましく用いられる光硬化性樹脂組成物は、硬化物の貯蔵弾性率、損失正接を上記所定の範囲に調整しやすく、且つ親油性に調整しやすく、優れた乾拭き取り性を得ることができる点から、少なくとも、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートと、エチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレートとを含有することが特に好ましい。中でも、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有割合が、エチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、5〜30質量部であることが好ましく、10〜15質量部であることがより好ましい。
(3)光重合開始剤
上記(メタ)アクリレートの硬化反応を開始又は促進させるために、必要に応じて光重合開始剤を適宜選択して用いても良い。光重合開始剤の具体例としては、例えば、ビスアシルフォスフィノキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フォスフィンオキサイド、フェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤を用いる場合、当該光重合開始剤の含有量は、通常、光硬化性樹脂組成物の全固形分に対して0.8〜20質量%であり、0.9〜10質量%であることが好ましい。
(4)帯電防止剤
本発明においては、前記第一の樹脂組成物中に帯電防止剤を含有することが好ましい。帯電防止剤を含有することにより、微細凹凸層表面に汚れが付着することを抑制することができ、また、拭取り時に汚れが落ちやすい。
帯電防止剤は、従来公知のもの中から適宜選択して用いることができる。帯電防止剤の具体例としては、例えば、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、1級〜3級アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物、スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられる。中でも、カチオン性化合物が好ましく、3級アミノ基を有するカチオン性化合物がより好ましく、N,N−ジオクチル−1−オクタンアミン等のトリアルキルアミンであることが更により好ましい。
帯電防止剤を用いる場合、当該帯電防止剤の含有量は、通常、光硬化性樹脂組成物の全固形分に対して1〜20質量%であり、2〜10質量%であることが好ましい。
(5)溶剤
本発明において第一の樹脂組成物は、塗工性などを付与する点から溶剤を用いてもよい。溶剤を用いる場合、当該溶剤は、組成物中の各成分とは反応せず、当該各成分を溶解乃至分散可能な溶剤の中から適宜選択して用いることができる。このような溶剤の具体的としては、例えば、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)等のエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、シクロヘキサン等のアノン系溶剤、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶剤を例示することができるが、これらに限られるものではない。また、第一の樹脂組成物に用いられる溶剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上の溶剤の混合溶剤でもよい。
第一の樹脂組成物全量に対する、固形分の割合は20〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。なお本発明において固形分とは、樹脂組成物中の溶剤以外のすべての成分を表す。
(6)その他の成分
反射防止部材に用いられる第一の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更にその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、濡れ性調整のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、安定化剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、粘度調製剤、離型剤等が挙げられる。
(第一の透明基材)
本発明に用いられる反射防止部材は、前記第一の微小突起構造体3が、第一の透明基材5上に形成されたものであってもよい。第一の透明基材は、反射防止部材に用いられる公知の透明基材の中から用途に応じて適宜選択して用いることができる。第一の透明基材に用いられる材料の具体例としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の透明樹脂や、ソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、PLZT等のセラミックス、石英、蛍石等の透明無機材料等が挙げられる。
前記第一の透明基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
前記第一の透明基材の厚みは、適宜設定することができ、特に限定されないが、通常20〜5000μmであり、前記第一の透明基材は、ロールの形で供給されるもの、巻き取れるほどには曲がらないが負荷をかけることによって湾曲するもの、完全に曲がらないもののいずれであってもよい。
第一の透明基材の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。
また、第一透明基材と前記微小突起構造体との密着性を向上させ、ひいては耐摩耗性(耐傷性)を向上させるためのプライマー層を透明基材上に形成してもよい。このプライマー層は、第一の透明基材および第一の微小突起構造体との双方に密着性を有し、可視光を透過するものが好ましい。
(その他の層)
反射防止部材は、本発明の効果を損なわない範囲において、更にその他の層を有していてもよい。第一の透明基材を有する場合、当該第一の透明基材の第一の微小突起構造体を有しない面側には、光学フィルム用途に用いられる従来公知の各種層を有していてもよい。例えば、従来公知の単層或いは多層構成の反射防止層、光拡散による防眩性(或いは反射防止)を付与する層、傷付き防止等の為に従来公知のハードコート層等が挙げられる。また第一の微小突起構造体の微小突起が密接して配置されてなる表面とは反対側の最表面には、後述する透明部材上に貼付するための接着層を有することが好ましい。透明接着剤としては、粘着剤(感圧接着剤)、2液硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、熱溶融型接着剤等、従来公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
(反射防止部材の製造方法)
反射防止部材の製造方法は、前記第一の透明基材、又は後述する剛性を有する透明基材上に第一の微小突起構造体を形成する従来公知の方法の中から適宜選択すればよい。
例えば、まず基材上に、前記第一の樹脂組成物を塗布し、所望の微小突起形状を有する第一の微小突起構造体形成用原版の微小突起形状を、前記第一の樹脂組成物の塗膜に賦型した後、該樹脂組成物を硬化させることにより第一の微小突起構造体を形成し、前記第一の微小突起構造体形成用原版から剥離する方法等が挙げられる。前記第一の樹脂組成物を硬化させる方法は、該樹脂組成物の種類等に応じて適宜選択することができる。
前記第一の微小突起構造体形成用原版としては、繰り返し使用した際に変形および摩耗するものでなければ、特に限定されるものではなく、金属製であっても良く、樹脂製であっても良いが、通常、金属製が好適に用いられる。耐変形性および耐摩耗性に優れているからである。
前記第一の微小突起構造体形成用原版の微小突起形状を有する面は、特に限定されないが、酸化されやすく、陽極酸化による加工が容易である点から、アルミニウムからなることが好ましい。
前記第一の微小突起構造体形成用原版は、具体的には、例えば、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属製の母材の表面に、直接に又は各種の中間層を介して、スパッタリング等により純度の高いアルミニウム層が設けられ、当該アルミニウム層に微小突起形状を形成したものが挙げられる。前記母材は、前記アルミニウム層を設ける前に、電解溶出作用と、砥粒による擦過作用の複合による電解複合研磨法によって母材の表面を超鏡面化しても良い。
前記第一の微小突起構造体形成用原版に微小突起形状を形成する方法としては、例えば、陽極酸化法によって前記アルミニウム層の表面に複数の微細孔を形成する陽極酸化工程と、前記アルミニウム層をエッチングすることにより前記微細孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、前記アルミニウム層を前記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより前記微細孔の孔径を拡大する第2エッチング工程とを順次繰り返し実施することによって形成することができる。
微細な凹凸形状を形成する際には、アルミニウム層の純度(不純物量)や結晶粒径、陽極酸化処理及び/又はエッチング処理の諸条件を適宜調整することによって、所望の形状とすることができる。前記陽極酸化処理において、より具体的には、液温、印加する電圧、陽極酸化に供する時間等の管理により、微細な孔をそれぞれ目的とする深さ及び微小突起形状に対応する形状に作製することができる。
このようにして、前記第一の微小突起構造体形成用原版は、深さ方向に徐々に孔径が小さくなる多数の微細孔が密に作製される。当該第一の微小突起構造体形成用原版を用いて製造される第一の微小突起構造体には、前記微細孔に対応して、頂部に近付くに従って徐々に径が小さくなる複数の微小突起が密接して配置された微小突起構造体が形成され、すなわち、当該微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微細突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する微小突起形状が形成される。
また、前記第一の微小突起構造体形成用原版の形状としては、所望の形状を賦型することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、平板状であっても良く、ロール状であっても良いが、前記第一の微小突起構造体形成用原版は、生産性向上の観点からは、ロール状の金型(以下、「ロール金型」と称する場合がある。)を用いることが好ましい。
本発明において用いられるロール金型としては、例えば、母材として、円筒形状の金属材料を用い、当該母材の周側面に、直接に又は各種の中間層を介して設けられたアルミニウム層に、上述したように、陽極酸化処理、エッチング処理の繰り返しにより、微細な凹凸形状が作製されたものが挙げられる。
図9に、第一の樹脂組成物として光硬化性樹脂組成物を用い、第一の微小突起構造体形成用原版としてロール金型を用いた場合に、透明基材上に第一の微小突起構造体を形成する方法の一例を示す。
図9に示す方法では、樹脂供給工程において、ダイ41により帯状フィルム形態の透明基材45に、未硬化で液状の光硬化性樹脂組成物を塗布し、微小突起形状の受容層46を形成する。なお光硬化性樹脂組成物の塗布については、ダイ41による場合に限らず、各種の手法を適用することができる。続いて、押圧ローラ43により、第一の微小突起構造体形成用原版であるロール金型42の周側面に透明基材45を加圧押圧し、これにより透明基材45に受容層46を密着させると共に、ロール金型42の周側面に作製された微細な凹凸形状の凹部に、受容層46を構成する光硬化性樹脂組成物を充分に充填する。この状態で、紫外線の照射により光硬化性樹脂組成物を硬化させ、これにより透明基材45の表面に第一の微小突起構造体47を作製する。続いて剥離ローラ44を介してロール金型42から、硬化した第一の微小突起構造体47と一体に透明基材45を剥離する。必要に応じてこの透明基材45に粘着層等を作製した後、所望の大きさに切断して反射防止部材を作製する。これにより反射防止部材は、ロール材による長尺の透明基材45に、第一の微小突起構造体形成用原版であるロール金型42の周側面に作製された微小突起形状を順次賦型して、効率良く大量生産される。
また上述の実施形態では、ロール金型を使用した賦型処理によりフィルム形状の反射防止部材を生産する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、反射防止部材の形状に係る透明基材の形状に応じて、例えば平板、特定の曲面形状による賦型用金型を使用した枚葉の処理により反射防止部材を作成する場合等、賦型処理に係る工程、第一の微小突起構造体形成用原版は、反射防止部材の形状に係る透明基材の形状に応じて適宜変更することができる。
<結露抑制部材>
本発明において結露抑制部材6は、第二の樹脂組成物の硬化物からなる複数の微小突起8が密接して配置されてなる第二の微小突起構造体7を表面に有する。
結露抑制部材6が有する第二の微小突起構造体7において隣接する前記微小突起間の距離の平均が50〜500nmであり、前記第二の微小突起構造体7の表面における純水の静的接触角が、θ/2法で20°以下であることを特徴とする。
本発明に用いられる結露抑制部材6は、第二の微小突起構造体7が上記特定の隣接突起間距離を有して微小突起が密接配置された微小突起群を備えることにより、その構造上、液体が濡れ広がり易く、且つ広がった液体が再凝集され難く、部材に保持される。広がった液体が再凝集され難いのは、微小突起構造体を構成する微小突起間の谷部に液体が保持されることにより、重力に従って液体が集合して液滴を形成することが抑制されることも一因になっていると考えられる。また、当該微小突起構造体は、その表面積が大きいことから、微小突起構造体表面の速乾性に優れ、ひいては優れた結露抑制効果を発揮する。その結果、本発明に冷蔵冷凍ショーケースの庫内表面は、結露が抑制され、また抗菌剤の付与なく湿気によるカビ菌等細菌類の繁殖を抑えることもできる。
また、本発明に係る結露抑制部材は、微小突起構造体の特定の形状により、十分な水の濡れ広がり性を有するため、親水性の材料を用いなくても優れた結露抑制効果を発揮する。本発明においては、光エネルギーを用いることなく第二の微小突起構造体の表面における静的接触角がθ/2法で20°以下とすることができ液体が濡れ広がり易い。
(第二の微小突起構造体)
第二の微小突起構造体は、複数の微小突起が密接して配置されてなる表面を有する。
第二の微小突起構造体を構成する各微小突起は、基材に植立するように形成され、その形状は、特に限定されないが、中でも、当該微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造、すなわち各微小突起が先細りとなる構造を有するものが好ましい。このような微小突起の形状の具体例としては、半円状、半楕円状、三角形状、放物状、釣鐘状等の垂直断面形状を有するものが挙げられる。複数ある微小突起は、同一の形状を有していても異なる形状を有していてもよい。
前記第二の微小突起構造体を構成する微小突起は、液体が濡れ広がりやすく且つ広がった液体が再凝集されないように部材に保持させる観点から、隣接する前記微小突起間の距離d2(以下、「隣接突起間距離d2」と称する。)の平均d2AVGが、50〜500nmとなるよう密接して配置される。この隣接突起間距離d2に係る隣接する微小突起は、いわゆる隣り合う微小突起であり、基材側の付け根部分である微小突起の裾の部分が接している突起である。結露抑制部材を構成する第二の微小突起構造体では、微小突起が密接して配置されることにより、微小突起間の谷の部位を順次辿るようにして線分を作成すると、平面視において各微小突起を囲む多角形状領域を多数連結してなる網目状の模様が作製されることになる。隣接突起間距離d2に係る隣接する微小突起は、この網目状の模様を構成する一部の線分を共有する突起である。
また、前記微小突起の平均隣接突起間距離d2AVGは、濡れ性が向上する点から、70〜300nmであることが好ましく、70〜180nmであることが特に好ましい。
また、前記第二の微小突起構造体を構成する微小突起の高さH2の平均値H2AVGは、特に限定されないが、液体が濡れ広がりやすく且つ広がった液体が再凝集されないように部材に保持させる観点から、50〜350nmであることが好ましく、100〜250nmであることが特に好ましい。
なお第二の微小突起構造体を構成する微小突起の隣接突起間距離d2及び微小突起の高さH2は、前記第一の微小突起構造体と同様にして測定することができるため、ここでの説明は省略する。
前記第二の微小突起構造体を構成する各微小突起は、高さに高低差があるものとすることができる。各微小突起の高さに高低差がある場合には、例えば第二の微小突起構造体表面上に各種の部材が配置されたときに、多数の微小突起のうちの高さの高い微小突起のみが、当該部材と接触することになる。これにより、微小突起構造体が同一高さの微小突起のみにより構成される場合に比して格段的に滑りを良くすることができ、製造工程等における結露抑制部材や、当該結露抑制部材を備えた透明部材の取り扱いを容易とすることができる。
また、微小突起の高さが種々に異なる場合には、例えば物体の接触により高さの高い微小突起の形状が損なわれた場合でも、高さの低い微小突起においては、形状が維持されることになるため、耐擦傷性が向上する。さらに、多数の微小突起のうちの高さの高い微小突起のみが、当該部材と接触することになるため、相対的に高さの低い微小突起には汚れが付きにくくなるので、耐汚染性も向上する。
第二の微小突起構造体における各微小突起の高さの高低差は、標準偏差により規定した場合に、15nm以上60nm以下であることが好ましい。15nm以上であることにより、第二の微小突起構造体表面の滑り、耐擦傷性及び耐汚染性がより向上する。60nmを超えると、第二の微小突起構造体表面のざらつき感が感じられるようになる場合がある。
第二の微小突起構造体における前記微小突起のアスペクト比(平均突起高さH2AVG/平均隣接突起間距離d2AVG)は、特に限定されないが、0.4〜2.5であることが好ましく、0.8〜2.1であることが特に好ましい。
結露抑制部材は、前記第二の微小突起構造体の表面における純水の静的接触角が、θ/2法で20°以下であることが好ましく、10°以下であることが特に好ましい。これにより、前記第二の微小突起構造体の表面に付着した水が濡れ広がり易くなるため、速乾性に優れ、結露抑制効果が向上する。また、前記第二の微小突起構造体の表面における純水の静的接触角は、特に限定されないが、通常3°以上である。
また、前記第二の微小突起構造体の表面は、n−ヘキサデカンの静的接触角が、θ/2法で20°以下であることが好ましく、16°以下であることが特に好ましい。これにより、第二の微小突起構造体の表面に付着した油性の汚れが薄く広がり易くなるため、汚れが目立ち難く、防曇性が向上する。また、前記第二の微小突起構造体の表面におけるn−ヘキサデカンの静的接触角は、特に限定されないが、通常8°以上である。
なお、前記第二の微小突起構造体の表面の静的接触角は、当該第二の微小突起構造体の表面に接触角を測定しようとする溶剤(純水又はn−ヘキサデカン)の1.0μLの液滴を滴下し、着滴1秒後に、滴下した液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度から接触角を算出するθ/2法に従って測定した接触角とする。測定装置としては、例えば、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いることができる。
また、第二の微小突起構造体表面における静的接触角は、当該第二の微小突起構造体を形成する第二の樹脂組成物の成分、及び第二の微小突起構造体の形状等を変更することにより、調整することができる。
結露抑制部材における前記第二の微小突起構造体の厚みは、特に限定されないが、通常3〜30μmである。なお、この場合の微小突起層の厚みとは、微小突起層の基材側の界面から、最も高さの高い微小突起の頂部の高さまでの基材平面に対する垂線方向の距離を意味する(図3中のT2)。
(第二の樹脂組成物)
第二の樹脂組成物は、少なくとも樹脂を含有し、必要に応じて重合開始剤等その他の成分を含有する。なお、本発明において樹脂とは、モノマーやオリゴマーの他、ポリマーを含む概念である。
前記樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系等の電離放射線硬化性樹脂、アクリレート系、ウレタン系、エポキシ系、ポリシロキサン系等の熱硬化性樹脂、アクリレート系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の熱可塑性樹脂等の各種材料及び各種硬化形態の賦形用樹脂を使用することができる。また、非反応性重合体を含有してもよい。なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線等が挙げられる。
前記樹脂としては、中でも成形性及び機械的強度に優れる点から電離放射線硬化性樹脂が好ましい。本発明に用いられる電離放射線硬化性樹脂とは、分子中にラジカル重合性及び/又はカチオン重合性結合を有する単量体又は重合体を適宜混合したものであり、適宜重合開始剤を用いて電離放射線により硬化されるものである。また、本発明において成形性に優れるとは、所望の形状に精度良く成形できることをいう。
中でも、第二の樹脂組成物は、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系の電離放射線硬化性樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、更に、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有するアクリレート系の電離放射線硬化性樹脂から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
第二の樹脂組成物は、さらに必要に応じて、重合開始剤、離型剤、光増感剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、粘度調整剤、密着性向上剤等を含有することもできる。
また、第二の樹脂組成物は、特に限定されないが、平坦な硬化膜としたときの表面における、純水の静的接触角が、θ/2法で85°以下であることが好ましく、より好ましくは60°以下であり、n−ヘキサデカンの静的接触角が、θ/2法で70°以下であることが好ましく、より好ましくは60°以下である。
(第二の透明基材)
本発明に用いられる結露抑制部材6は、前記第二の微小突起構造体7が、第二の透明基材9上に形成されたものであってもよい。第二の透明基材は、結露抑制部材に用いられる公知の透明基材の中から用途に応じて適宜選択して用いることができる。透明基材に用いられる材料の具体例としては、前記第一の透明基材と同様のものが挙げられ、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。
前記第二の透明基材の厚みは、適宜設定することができ、特に限定されないが、通常20〜5000μmであり、前記第一の透明基材は、ロールの形で供給されるもの、巻き取れるほどには曲がらないが負荷をかけることによって湾曲するもの、完全に曲がらないもののいずれであってもよい。
(その他の層)
結露抑制部材は、本発明の効果を損なわない範囲において、更にその他の層を有していてもよい。その他の層の具体例としては、前記反射防止部材におけるその他の層と同様のものが挙げられる。第二の微小突起構造体の微小突起が密接して配置されてなる表面とは反対側の最表面には、後述する透明部材上に貼付するための接着層を有することが好ましい。
(結露抑制部材の製造方法)
結露抑制部材の製造方法は特に限定されないが、成形性に優れ、且つ安定量産ができる点から、基材の少なくとも一方の面に、賦形により第二の微小突起構造体を形成する方法が好ましい。
前記第二の微小突起構造体は、前記第二の透明基材上に賦形しても良いし、後述する剛性を有する透明基材上に賦形しても良い。
第二の微小突起構造体を賦型する方法、及び第二の微小突起構造体形成用原版は、前記反射防止部材における第一の微小突起構造体を賦型する方法、及び第一の微小突起構造体形成用原版と同様のものとすることができるためここでの説明は省略する。
<透明部材>
本発明における透明部材は、当該透明部材の外面の少なくとも一部に前記反射防止部材を備え、当該透明部材の内面の少なくとも一部に前記結露抑制部材を備えている。本発明に係る冷蔵冷凍ショーケースは、このような透明部材を備えることにより、結露を抑制しながら内部の視認性に優れている。
本発明の透明部材は、冷蔵冷凍ショーケースのケースの一部を形作るように構成するため、通常、剛性を有する透明基材が用いられる。
剛性を有する透明基材は、冷蔵冷凍ショーケースに用いられる公知の透明基材の中から適宜選択して用いることができる。構成を有する透明基材の具体例としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の透明樹脂や、ソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、PLZT等のセラミックス、石英、蛍石等の透明無機材料等が挙げられ、中でも、硝子又はアクリル樹脂であることが好ましい。
剛性を有する透明基材の厚みは、適宜設定することができ、特に限定されないが、強度の点から、通常5mm〜20mmである。
本発明に用いられる透明部材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明部材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
<冷蔵冷凍ショーケース>
本発明に係る冷蔵冷凍ショーケースは、扉を有し、少なくとも一部が前記透明部材で構成される冷蔵冷凍ショーケースであればよく、前記透明部材以外の構成は、従来公知の冷蔵冷凍ショーケースと同様の構成を適宜選択して用いればよい。
本発明に係る冷蔵冷凍ショーケースは、前記透明部材が、当該透明部材の外面の少なくとも一部に前記反射防止部材を備え、当該透明部材の内面の少なくとも一部に前記結露抑制部材を備えていることにより、扉の開閉時に冷却されたケース内部に外気が入り込んだ場合であっても結露が抑制され、蛍光灯などの照明類による外光の反射が抑制され、更に、付着した指紋汚れ等が乾拭きでも容易に拭取れることから、視認性に優れている。
(冷蔵冷凍ショーケースの製造方法)
冷蔵冷凍ショーケースの製造方法は特に限定されない。例えば、(1)前記剛性を有する透明基材上に、第一の微小突起構造体、及び第二の微小突起構造体を賦型することにより、反射防止部材及び結露抑制部材を形成して積層体とし、当該積層体を冷蔵冷凍ショーケースの透明部材として用いて、従来公知の方法で冷蔵冷凍ショーケースを製造してもよい。或いは、(2)扉と、透明部材を有する既存の冷凍冷蔵ショーケースと、前記反射防止部材と、前記結露抑制部材とをそれぞれ準備し、図3や図4の例のように、前記透明部材の外面側に反射防止部材を、前記透明部材の内面側に結露抑制部材をそれぞれ、適宜付着することにより、本発明の冷凍冷蔵ショーケースとしてもよい。
本発明に係る冷蔵冷凍ショーケースは、精肉、鮮魚等の生鮮食品、アイスクリーム等の冷凍食品、飲料等の食品類や生花等の販売用に用いられる他、試薬等の保管庫、低温実験用の保冷庫等に用いることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
(製造例1−1:反射防止部材用金型1−1の製造)
純度99.50%の圧延されたアルミニウム板を、その表面が、十点平均粗さRz30nm、且つ周期1μmの凹凸形状となるように研磨後、0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、陽極酸化を実施した。次に、第一エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第二エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径処理を行った。さらに、上記処理を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム基板上に微細な凹凸形状が形成された陽極酸化アルミニウム層が形成された。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、反射防止部材用金型1−1を得た。なお、アルミニウム層に形成された微細な凹凸形状は、平均隣接微細孔間距離が100nm、平均深さが200nmで、深さ方向に徐々に孔径が小さくなる多数の微細孔が密に形成された形状であった。
(製造例1−2:反射防止部材用樹脂組成物Aの製造)
以下の各成分を混合し、希釈溶剤として、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンを用いて、固形分45質量%の反射防止部材用樹脂組成物Aを調製した。
<樹脂組成物Aの組成>
・エチレンオキサイド変性(EO変性)ビスフェノールAジアクリレート 55質量部
・EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 35質量部
・トリデシルアクリレート 5質量部
・ドデシルアクリレート 5質量部
・ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(ルシリンTPO) 1質量部
(製造例1−3:反射防止部材用樹脂組成物Bの製造)
以下の各成分を混合し、希釈溶剤として、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンを用いて、固形分45質量%の反射防止部材用樹脂組成物Bを調製した。
<樹脂組成物Bの組成>
・EO変性ビスフェノールAジアクリレート 50質量部
・EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 30質量部
・トリデシルアクリレート 5質量部
・ドデシルアクリレート 5質量部
・メチルメタクリレート 5質量部
・ヘキシルメタクリレート 5質量部
・ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(ルシリンTPO) 1質量部
(比較製造例1−4:比較反射防止部材用樹脂組成物Cの製造)
以下の各成分を混合し、希釈溶剤として、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンを用いて、固形分45質量%の比較反射防止部材用樹脂組成物Cを調製した。
<樹脂組成物Cの組成>
・EO変性ビスフェノールAジアクリレート 30質量部
・EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 20質量部
・ドデシルアクリレート 50質量部
・ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(ルシリンTPO) 1質量部
(比較製造例1−5:比較反射防止部材用樹脂組成物Dの製造)
以下の各成分を混合し、希釈溶剤として、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンを用いて、固形分45質量%の比較反射防止部材用樹脂組成物Dを調製した。
<樹脂組成物Dの組成>
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 15質量部
・2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート 15質量部
・ポリエチレングリコールジアクリレート 70質量部
・ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(ルシリンTPO) 1質量部
(製造例1−6:反射防止部材Aの製造)
製造例1−2で得られた反射防止部材用樹脂組成物Aを、製造例1−1で得られた反射防止部材用金型1−1の微細凹凸面が覆われ、硬化後の微細凹凸層の厚さが20μmとなるように塗布、充填し、その上に透明基材として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TAC)(富士フィルム社製)を斜めから貼り合わせた後、貼り合わせられた貼合体をゴムローラーで10N/cmの加重で圧着した。金型全体に均一な組成物が塗布されたことを確認し、透明基材側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して反射防止部材用樹脂組成物Aを硬化させた。その後、金型より剥離し、反射防止部材Aを得た。
(製造例1−7:反射防止部材Bの製造)
製造例1−6において、反射防止部材用樹脂組成物Aの代わりに、製造例1−3で得られた反射防止部材用樹脂組成物Bを用いた以外は、製造例1−6と同様にして反射防止部材Bを得た。
(比較製造例1−8:比較反射防止部材Cの製造)
製造例1−6において、反射防止部材用樹脂組成物Aの代わりに、比較製造例1−4で得られた比較反射防止部材用樹脂組成物Cを用いた以外は、製造例1−6と同様にして比較反射防止部材Cを得た。
(比較製造例1−9:比較反射防止部材Dの製造)
製造例1−6において、反射防止部材用樹脂組成物Aの代わりに、比較製造例1−5で得られた比較反射防止部材用樹脂組成物Dを用いた以外は、製造例1−6と同様にして比較反射防止部材Dを得た。
(製造例2−1:結露抑制部材用金型2−1の製造)
純度99.50%の圧延されたアルミニウム板を、研磨後、0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、印加電圧40V、20℃の条件にて100秒間、陽極酸化を実施した。次に、第一エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で50秒間エッチング処理を行った。続いて、第二エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で120秒間孔径処理を行った。さらに、上記処理を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム基板上に微小孔が密に形成された陽極酸化アルミニウム層が形成された。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、第二の微小突起構造体形成用の金型2−1を得た。なお、金型2−1のアルミニウム層に形成された微細な凹凸形状は、平均隣接微小孔間距離100nm、平均深さ160nmであった。また、頂点を複数有する微小突起となるような微小孔が一部存在しており、一部の微小孔に深さのばらつきがある形状であった。
(製造例2−2:結露抑制部材用金型2−2の作製)
製造例2−1と同様の操作を用いて、繰り返し操作を7回追加実施したこと以外は、製造例2−1と同様にして、平均隣接微小孔間距離150nm、平均深さ200nmの第二の微小突起構造体形成用の金型2−2を得た。なお、金型2−2のアルミニウム層に形成された微細な凹凸形状は、頂点を複数有する微小突起となるような微小孔が一部存在しており、一部の微小孔に深さのばらつきがある形状であった。
(製造例2−3:結露抑制部材用金型2−3の作製)
製造例B−1において、第一エッチング処理時間を60秒、第二エッチング処理時間を130秒とし、繰り返し操作を7回追加実施したこと以外は、製造例2−1と同様にして、平均隣接微小孔間距離200nm、平均深さ160nmの第二の微小突起構造体形成用の金型2−3を得た。なお、金型2−3のアルミニウム層に形成された微細な凹凸形状は、頂点を複数有する微小突起となるような微小孔が一部存在しており、一部の微小孔に深さのばらつきがある形状であった。
(製造例2−4:結露抑制部材用金型2−4の作製)
製造例B−1において、第一エッチング処理時間を70秒、第二エッチング処理時間を170秒とし、繰り返し操作を5回追加実施したこと以外は、製造例2−1と同様にして、平均隣接微小孔間距離400nm、平均深さ210nmの第二の微小突起構造体形成用の金型2−4を得た。なお、金型2−4のアルミニウム層に形成された微細な凹凸形状は、頂点を複数有する微小突起となるような微小孔が一部存在しており、一部の微小孔に深さのばらつきがある形状であった。
(製造例2−5:結露抑制部材用金型2−5の作製)
製造例B−1において、第一エッチング処理時間を70秒、第二エッチング処理時間を170秒とし、繰り返し操作を7回追加実施したこと以外は、製造例2−1と同様にして、平均隣接微小孔間距離500nm、平均深さ230nmの第二の微小突起構造体形成用の金型2−5を得た。なお、金型2−5のアルミニウム層に形成された微細な凹凸形状は、頂点を複数有する微小突起となるような微小孔が一部存在しており、一部の微小孔に深さのばらつきがある形状であった。
(製造例2−6:結露抑制部材用樹脂組成物Aの調製)
以下の各成分を混合し、結露抑制部材用樹脂組成物Aを調製した。
・EO変性ビスフェノールAジアクリレート 70質量部
・ポリエチレングリコールジアクリレート 30質量部
・ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(ルシリンTPO) 1質量部
(製造例2−7:結露抑制部材用樹脂組成物Bの調製)
以下の各成分を混合し、結露抑制部材用樹脂組成物Bを調製した。
・EO変性ビスフェノールAジアクリレート 30質量部
・EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 20質量部
・ドデシルアクリレート 50質量部
・ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(ルシリンTPO) 1質量部
(製造例2−8:結露抑制部材用樹脂組成物Cの調製)
以下の各成分を混合し、結露抑制部材用樹脂組成物Cを調製した。
・EO変性ビスフェノールAジアクリレート 50質量部
・EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 30質量部
・トリデシルアクリレート 5質量部
・ドデシルアクリレート 5質量部
・メチルメタクリレート 5質量部
・ヘキシルメタクリレート 5質量部
・ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(ルシリンTPO) 1質量部
(比較製造例2−9:比較結露抑制部材用樹脂組成物Dの調製)
以下の各成分を混合し、比較結露抑制部材用樹脂組成物Dを調製した。
・EO変性ビスフェノールAジアクリレート 70質量部
・ポリエチレングリコールジアクリレート 30質量部
・ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(ルシリンTPO) 1質量部
・シリカゲル 5質量部
(製造例2−10:結露抑制部材A)
結露抑制部材用樹脂組成物Aを、金型2−1の凹凸形状を有する面が覆われ、微小突起構造体が形成される微小突起層の硬化後の厚さが20μmとなるように塗布、充填し、その上に基材(材質:PET、厚さ:25μm、商品名:ルミラー、東レ社製)を斜めから貼り合わせた後、貼り合わせられた貼合体をゴムローラーで10N/cmの加重で圧着した。金型全体に均一に組成物が塗布されたことを確認し、基材側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して樹脂を硬化させた。その後、金型より剥離し、結露抑制部材Aを得た。
得られた冷結露抑制部材Aの表面の断面をSEMにより観察したところ、平均隣接微小突起間距離100nm、平均微小突起高さ160nmの微小突起群が形成されていた。また、微小突起の一部が頂点を複数有する微小突起であり、各微小突起の高さに、標準偏差30nmの高低差があった。
(製造例2−11:結露抑制部材B)
製造例2−10において、金型2−1の代わりに金型2−2を用いたこと以外は、製造例2−10と同様にして、結露抑制部材Bを得た。
結露抑制部材Bの表面の断面をSEMにより観察したところ、平均隣接微小突起間距離150nm、平均微小突起高さ200nmの微小突起群が形成されていた。また、微小突起の一部が頂点を複数有する微小突起であり、各微小突起の高さに、標準偏差25nmの高低差があった。
(製造例2−12:結露抑制部材C)
製造例2−10において、金型2−1の代わりに金型2−3を用いたこと以外は、製造例2−10と同様にして、結露抑制部材Cを得た。
結露抑制部材Cの冷蔵冷凍庫用結露抑制部材の表面の断面をSEMにより観察したところ、平均隣接微小突起間距離200nm、平均微小突起高さ160nmの微小突起群が形成されていた。また、微小突起の一部が頂点を複数有する微小突起であり、各微小突起の高さに、標準偏差30nmの高低差があった。
(製造例2−13:結露抑制部材D)
製造例2−10において、結露抑制部材用樹脂組成物Aの代わりに結露抑制部材用樹脂組成物Bを用い、金型2−1の代わりの金型2−2を用いたこと以外は、製造例2−10と同様にして、結露抑制部材Dを得た。
結露抑制部材Dの表面の断面をSEMにより観察したところ、平均隣接微小突起間距離150nm、平均微小突起高さ200nmの微小突起群が形成されていた。また、微小突起の一部が頂点を複数有する微小突起であり、各微小突起の高さに、標準偏差25nmの高低差があった。
(製造例2−14:結露抑制部材E)
製造例2−10において、結露抑制部材用樹脂組成物Aの代わりに結露抑制部材用樹脂組成物Cを用い、金型2−1の代わりの金型2−2を用いたこと以外は、製造例2−10と同様にして、結露抑制部材Eを得た。
結露抑制部材Eの表面の断面をSEMにより観察したところ、平均隣接微小突起間距離150nm、平均微小突起高さ200nmの微小突起群が形成されていた。また、微小突起の一部が頂点を複数有する微小突起であり、各微小突起の高さに、標準偏差35nmの高低差があった。
(製造例2−15:結露抑制部材F)
製造例2−10において、金型2−1の代わりに金型2−4を用いた以外は、製造例2−10と同様にして、結露抑制部材Fを得た。
結露抑制部材Fの表面の断面をSEMにより観察したところ、平均隣接微小突起間距離400nm、平均微小突起高さ210nmの微小突起群が形成されていた。また、微小突起の一部が頂点を複数有する微小突起であり、各微小突起の高さに、標準偏差25nmの高低差があった。
(製造例2−16:結露抑制部材G)
製造例2−10において、結露抑制部材用樹脂組成物Aの代わりに結露抑制部材用樹脂組成物Bを用い、金型2−1の代わりに金型2−4を用いた以外は、製造例2−10と同様にして、結露抑制部材Gを得た。
結露抑制部材Gの冷蔵冷凍庫用結露抑制部材の表面の断面をSEMにより観察したところ、平均隣接微小突起間距離400nm、平均微小突起高さ210nmの微小突起群が形成されていた。また、微小突起の一部が頂点を複数有する微小突起であり、各微小突起の高さに、標準偏差30nmの高低差があった。
(製造例2−17:結露抑制部材H)
製造例2−10において、結露抑制部材用樹脂組成物Aの代わりに結露抑制部材用樹脂組成物Cを用い、金型2−1の代わりに金型2−4を用いた以外は、製造例2−10と同様にして、結露抑制部材Hを得た。
結露抑制部材Hの表面の断面をSEMにより観察したところ、平均隣接微小突起間距離400nm、平均微小突起高さ210nmの微小突起群が形成されていた。また、微小突起の一部が頂点を複数有する微小突起であり、各微小突起の高さに、標準偏差30nmの高低差があった。
(製造例2−18:結露抑制部材I)
製造例2−10において、金型2−1の代わりに金型2−5を用いた以外は、製造例2−10と同様にして、結露抑制部材Iを得た。
結露抑制部材Iの表面の断面をSEMにより観察したところ、平均隣接微小突起間距離500nm、平均微小突起高さ230nmの微小突起群が形成されていた。また、微小突起の一部が頂点を複数有する微小突起であり、各微小突起の高さに、標準偏差35nmの高低差があった。
(製造例2−19:結露抑制部材J)
製造例2−10において、結露抑制部材用樹脂組成物Aの代わりに結露抑制部材用樹脂組成物Bを用い、金型2−1の代わりに金型2−5を用いた以外は、製造例2−10と同様にして、結露抑制部材Jを得た。
結露抑制部材Jの表面の断面をSEMにより観察したところ、平均隣接微小突起間距離500nm、平均微小突起高さ230nmの微小突起群が形成されていた。また、微小突起の一部が頂点を複数有する微小突起であり、各微小突起の高さに、標準偏差25nmの高低差があった。
(製造例2−20:結露抑制部材K)
製造例2−10において、結露抑制部材用樹脂組成物Aの代わりに結露抑制部材用樹脂組成物Cを用い、金型2−1の代わりに金型2−5を用いた以外は、製造例2−10と同様にして、結露抑制部材Kを得た。
結露抑制部材Kの冷蔵冷凍庫用結露抑制部材の表面の断面をSEMにより観察したところ、平均隣接微小突起間距離500nm、平均微小突起高さ230nmの微小突起群が形成されていた。また、微小突起の一部が頂点を複数有する微小突起であり、各微小突起の高さに、標準偏差30nmの高低差があった。
(比較製造例2−21:比較結露抑制部材L)
基材(材質:PET、厚さ:25μm、商品名:ルミラー、東レ社製)上に、結露抑制部材用樹脂組成物Aを、硬化後の厚さが20μmの平坦膜となるように塗布し、基材側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して樹脂を硬化させることにより、比較結露抑制部材Lを得た。
(比較製造例2−22:比較結露抑制部材M)
比較製造例2−21において、結露抑制部材用樹脂組成物Aの代わりに結露抑制部材用樹脂組成物Bを用いたこと以外は、比較製造例2−21と同様にして、比較結露抑制部材Mを得た。
(比較製造例2−23:比較結露抑制部材N)
比較製造例2−21において、結露抑制部材用樹脂組成物Aの代わりに結露抑制部材用樹脂組成物Cを用いたこと以外は、比較製造例2−21と同様にして、比較結露抑制部材Nを得た。
(比較製造例2−24:比較結露抑制部材O)
比較製造例2−21と同様にして製造した比較結露抑制部材Lにおいて、硬化させた樹脂表面を#2000の紙やすりを用いて粗面化することにより表面に凹凸を形成し、比較結露抑制部材Oを得た。
(比較製造例2−25:比較結露抑制部材P)
比較製造例2−24において、#2000の紙やすりの代わりに、#1200の紙やすりを用いた以外は、比較製造例2−24と同様にして、比較結露抑制部材Pを得た。
(比較製造例2−26:比較結露抑制部材Q)
まず、比較結露抑制部材用樹脂組成物Dを厚さ25μmのフィルム状に硬化させることにより、表面に凹凸形状を有する防眩フィルムを作製した。次いで、当該防眩フィルムを、粘着層を介して基材(材質:PET、厚さ:25μm、商品名:ルミラー、東レ社製)上に貼り合わせることにより、比較結露抑制部材Qを得た。
比較結露抑制部材Qの表面の断面をSEMにより観察したところ、防眩フィルム側の表面は、高さ10〜800nmの範囲内で高さにバラつきのある微小突起が、隣接微小突起間距離500nm〜1μmの範囲で不規則に配置された、不規則な凹凸形状が形成されていた。
(比較製造例2−27:比較結露抑制部材R)
製造例2−10において、1500mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して樹脂を硬化させたこと以外は、製造例2−10と同様にして、比較結露抑制部材Rを得た。
比較結露抑制部材Rの表面の断面をSEMにより観察したところ、金型の形状が十分に賦形されておらず、各微小突起の形状は先細りでなく、また、各微小突起は密接配置されていなかった。平均隣接微小突起間距離は650nm、平均微小突起高さは150nmであった。
(比較製造例2−28:比較結露抑制部材S)
製造例2−11において、1500mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して樹脂を硬化させたこと以外は、製造例2−11と同様にして、比較結露抑制部材Sを得た。
比較結露抑制部材Sの表面の断面をSEMにより観察したところ、金型の形状が十分に賦形されておらず、各微小突起の形状は先細りでなく、また、各微小突起は密接配置されていなかった。平均隣接微小突起間距離は600nm、平均微小突起高さは200nmであった。
(比較製造例2−29:比較結露抑制部材T)
製造例2−12において、1500mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して樹脂を硬化させたこと以外は、製造例2−12と同様にして、比較結露抑制部材Tを得た。
比較結露抑制部材Tの表面の断面をSEMにより観察したところ、金型の形状が十分に賦形されておらず、各微小突起の形状は先細りでなく、また、各微小突起は密接配置されていなかった。平均隣接微小突起間距離は600nm、平均微小突起高さは150nmであった。
(実施例1:冷蔵冷凍ショーケースAの製造)
前面に扉を有し、当該扉が透明部材(ガラス板)を備えた、市販の冷蔵冷凍ショーケース(RS−63XT:ホシザキ電機製)を準備した。
製造例1−6で得られた反射防止部材Aを、扉が有する透明部材の外面側に、接着層を介して貼付した。
次いで、製造例2−10で得られた結露抑制部材Aを、扉が有する透明部材の内側面に、接着層を介して貼付し、実施例1の冷蔵冷凍ショーケースAを得た。
(実施例2〜11:冷蔵冷凍ショーケースB〜Kの製造)
実施例1において、反射防止部材及び結露抑制部材を表1の組み合わせに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜11の冷蔵冷凍ショーケースB〜Kを得た。
(比較例1〜9:比較冷蔵冷凍ショーケースL〜Tの製造)
実施例1において、反射防止部材及び結露抑制部材を表1の組み合わせに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜9の比較冷蔵冷凍ショーケースL〜Tを得た。
(比較例10:比較冷蔵冷凍ショーケースU)
市販の冷蔵冷凍ショーケース(RS−63XT:ホシザキ電機製)をそのまま用いて、比較冷蔵冷凍ショーケースUとした。
表1に、各冷蔵冷凍ショーケースに用いられた反射防止部材及び結露抑制部材の組み合わせを示す。
<反射防止部材用樹脂組成物及び反射防止部材の物性>
(貯蔵弾性率(E’)及びtanδの測定)
製造例1−2〜1−5で得られた反射防止部材用樹脂組成物A〜Dをそれぞれ2000mJ/cmのエネルギーの紫外線を1分間照射することにより十分に硬化させて、基材及び微細凹凸形状を有しない、厚さ1mm、幅5mm、長さ30mmの試験用単膜A〜Dをそれぞれ得た。
次いで、JIS K7244に準拠し、25℃下、上記試験用単膜A〜Dの長さ方向に10Hzで25gの周期的外力を加え、動的粘弾性を測定することにより、25℃における、貯蔵弾性率E’、及び損失弾性率E”を求めた。また、当該E’及びE”の結果からtanδを算出した。測定装置はUBM製 Rheogel E400を用いた。結果を表2に示す。
(接触角の測定)
トリアセチルセルロースフィルム上に反射防止部材用樹脂組成物A〜Dを塗布して硬化させて、微細凹凸形状を有しない塗膜を形成した。当該塗膜側表面を上面にして、粘着層つきの黒アクリル板に貼り付けたものの上に、水1.0μLの液滴を滴下し、着滴5秒後の水の接触角を計測した。水の代わりに、n−ヘキサデカン及びオレイン酸をそれぞれ用いて、各溶媒の接触角をそれぞれ計測した。結果を表2に示す。
測定装置は協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いた。
(弾性率、最大押し込み深さ、弾性復元率の測定)
製造例1−6〜1−9で得られた反射防止部材A〜B及び比較反射防止部材C〜Dの微小突起構造体側表面に、下記特定の条件で圧子を押し込んで、微小突起構造体表面の弾性率、最大押し込み深さ、弾性復元率を測定した。測定装置は、フィッシャーインストルメンツ社製PICODENTER HM−500を用いた。結果を表2に示す。
○測定条件
・荷重速度 1mN/10秒
・保持時間 10秒
・荷重除荷速度 1mN/10秒
・圧子 ビッカース
・測定温度 25℃
<結露抑制部材の物性>
(静的接触角の測定)
各結露抑制部材の基材側表面を、粘着層を介して黒アクリル板に貼り付け、該黒アクリル板とは反対側の表面に、純水(液クロマトグラフィー用蒸留水(純正化学(株)製))1.0μLの液滴を滴下し、着滴1秒後、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いて、θ/2法に従って静的接触角を測定した。
また、純水の代わりにn−ヘキサデカンをそれぞれ用いて、同様にして静的接触角を測定した。結果を表3に示す。
[冷凍冷蔵ショーケース評価]
<指紋拭き取り試験評価>
実施例1〜11及び比較例1〜10の冷蔵冷凍ショーケースの透明部材を有する扉の外面側(各反射防止部材の微小突起構造体側表面)に、指を押し付けて指紋を付着させた。その後、ザヴィーナミニマックス(富士ケミカル製)にて指紋を乾拭きした。乾拭きは3kg/cm程度の力で10往復行い、拭取り後の外観を評価した。結果を表4に示す。
(指紋拭き取り試験評価基準)
A:指紋汚れが視認できない。
B:指紋付着跡に若干の色味の変化が視認される。
C:指紋がほぼ拭取られない。
<摺動性試験>
実施例1〜11及び比較例1〜10の冷蔵冷凍ショーケースの透明部材を有する扉の外面側(各反射防止部材の微小突起構造体側表面)に、ザヴィーナミニマックス(富士ケミカル製)にて3kg/cm程度の力で10往復擦った。擦過1分後の視認性の評価を下記基準で行った。結果を表4に示す。
(摺動性試験評価基準)
A:擦り痕が視認されない。
B:擦り痕に若干色味の変化がある。
C:擦り痕が明らかに白濁する。
<曇りの回復性試験>
実施例1〜11及び比較例1〜10の冷蔵冷凍ショーケースを温度25℃、湿度60%に保った環境に設置し、庫内を冷却して−25℃で安定させた。当該温度で安定し、更に5分経過した後、冷蔵冷凍ショーケースの扉を開放した。開放したまま3分経過後、扉の内面側の曇り状態を目視で確認した。また、−25℃に代えて、−10℃、−0℃、5℃の状態で庫内の温度を安定させ同様の試験を行った。結果を表4に示す。
(曇りの回復性試験評価基準)
○:曇りが確認されなかった。
△:曇りがわずかに確認された。
×:明らかな曇りが確認された。
<乾燥性試験>
実施例1〜11及び比較例1〜10の冷蔵冷凍ショーケースを温度25℃、湿度60%に保った環境に設置し、庫内を冷却して−25℃で安定させた。当該温度で安定し、更に5分経過した後、冷蔵冷凍ショーケースの扉を開放した。開放したまま5分経過後、扉の内面側の乾燥状態を、塩化コバルト紙により確認した。また、−25℃に代えて、−10℃、−0℃、5℃の状態で庫内の温度を安定させ同様の試験を行った。結果を表4に示す。
(乾燥性試験評価基準)
○:塩化コバルト紙が青色のまま変化がない。
△:塩化コバルト紙が青色からわずかに紫色がかった。
×:塩化コバルト紙が青色から赤色へと変化した。
[結果のまとめ]
(1)何も貼り付けていない冷蔵冷凍ショーケースのガラス製の前扉(比較例10)においては、扉の開放時に結露による曇りが観察された。
それに対し、実施例1〜11の冷蔵冷凍ショーケースは、結露抑制部材の表面に形成された微小突起構造体が、樹脂組成物の硬化物からなる複数の微小突起が特定の隣接突起間距離を有して密接配置された微小突起群を備えるため、液体が濡れ広がり易く、速乾性及び結露抑制効果に優れていた。中でも、微小突起間の距離の平均が相対的に小さい実施例1〜8は、特に結露抑制効果に優れていた。
一方、比較例1〜3で得られた冷蔵冷凍庫用部材は、基材上に形成された樹脂層表面が未加工で平坦であるため、速乾性及び結露抑制効果に劣っていた。
比較例4〜9で得られた冷蔵冷凍庫用部材も速乾性及び結露抑制効果に劣っていた。これらは、基材上に形成された樹脂層表面の凹凸形状が不適切で親水性を向上できなかったためと考えられる。なお、比較例7〜9では、紫外線の照射が不十分であったことにより、微小突起同士が接触した状態で樹脂が硬化し、その結果、独立した微小突起が連続して形成されず、あたかも大きな突起形状として振舞ったため、親水性が低下したと考えられる。
(2)25℃において、貯蔵弾性率(E’)が300MPa以下であり、且つ、tanδが0.2以下である反射防止部材用樹脂組成物の硬化物を用いて形成された微小突起構造体を有する反射防止部材A及びBは、乾拭きであっても指紋を拭取ることが可能で、拭取り跡が確認されなかった。tanδが0.69の比較反射防止部材Cは、拭取り時の圧力により微細突起が塑性変形を生じたり、スティッキングが発生したものと推定される。貯蔵弾性率E’が330MPaの比較反射防止部材Dは、微小突起が変形しにくく、乾拭きでは十分に指紋汚れを落とすことができなかった。
このように上記特定の反射防止部材と、上記特定の結露抑制部材とを組み合わせて用いた実施例1〜10の冷凍冷蔵ショーケースは、透明部材の外光反射を防止しながら、透明部材の外面側の指紋汚れを拭き取りやすく、且つ、ショーケース内の結露が抑制されるため、優れた視認性を有することが明らかとなった。
1 透明部材
2 反射防止部材
3 第一の微小突起構造体
4 微小突起
5 第一の透明基材
6 結露抑制部材
7 第二の微小突起構造体
8 微小突起
9 第二の透明基材
10 透明部材
11 接着層
12 接着層
13 反射防止部材を有しない部分
20 扉
21 極大点(母点)
22 線分(ドロネー線)
23 微小突起
30 微小突起構造体
31 微小突起構造体の微小突起表面
32 微小突起
33 うねりによる凹凸面
41 ダイ
42 ロール金型
43 押圧ローラ
44 剥離ローラ
45 透明基材
46 受容層
47 微小突起構造体
100 冷蔵冷凍ショーケース

Claims (1)

  1. 扉を有し、少なくとも一部が透明部材で構成された冷蔵冷凍ショーケースであって、
    前記透明部材の外面の少なくとも一部に、第一の樹脂組成物の硬化物からなる複数の微小突起が密接して配置されてなる第一の微小突起構造体を表面に有する反射防止部材を備え、
    前記透明部材の内面の少なくとも一部に、第二の樹脂組成物の硬化物からなる複数の微小突起が密接して配置されてなる第二の微小突起構造体を表面に有する結露抑制部材を備え、
    前記第一の微小突起構造体における前記微小突起は、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmin、当該微小突起の隣接突起間隔d1の最大値をd1maxとしたときに、
    d1max≦Λmin
    なる関係を有し、且つ、前記微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断すると仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有し、
    前記第一の樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率(E1’)が300MPa以下であり、且つ、前記貯蔵弾性率(E1’)に対する、前記第一の樹脂組成物の硬化物の25℃における損失弾性率(E1”)の比(tanδ(=E1”/E1’))が0.2以下であり、前記第一の樹脂組成物の硬化物表面における、n−ヘキサデカンの静的接触角が、θ/2法で30°以下、又は、オレイン酸の静的接触角が、θ/2法で25°以下であり、
    前記第二の微小突起構造体において隣接する前記微小突起間の距離の平均が50〜500nmであり、前記第二の微小突起構造体の表面における純水の静的接触角が、θ/2法で20°以下である、冷蔵冷凍ショーケース。
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