JP6252047B2 - 透過率異方性部材、透過率異方性部材の製造方法及び表示装置 - Google Patents
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Description
さらに本発明者は、前記凹凸面を形成する微小突起の一部が、隣接する微小突起と付着してなる微小突起集合体を構成し、当該微小突起集合体を構成する微小突起の個数の割合及び当該微小突起集合体も一つの微小突起と仮定したときの微小突起間の距離の平均が、所定の範囲内であると、透過率異方性が増大し、正面方向における光透過性にも優れることを知見した。
前記凹凸構造層の前記凹凸面側に設けられ、当該凹凸面の凹凸に追従した形状を有する、可視光透過性の金属薄膜と、を備えることを特徴とする。
画像を表示する表示面を有する表示機構と、
前記表示機構の前記表示面側に配置された前記本発明に係る透過率異方性部材と、を備えることを特徴とする。
前記本発明に係る透過率異方性部材と、
前記透過率異方性部材に画像光を投射する画像光源と、を備え、
前記画像光源は、前記透過率異方性部材の法線方向に対して傾斜した方向から当該透過率異方性部材に前記画像光を投射することを特徴とする。
300nm以下となる平均間隔dAVGで配列された微小突起と、互いに隣接する当該微小突起が付着してなる微小突起集合体と、によって形成された凹凸面を有し、前記微小突起集合体を構成する微小突起の個数の割合が、前記微小突起集合体を構成する微小突起の個数と前記微小突起集合体を構成しない微小突起の個数を合わせた全個数に対して、25%より大きく且つ75%以下であり、前記微小突起集合体も一つの微小突起と仮定したときの微小突起間の平均間隔d’AVGが、200nm以上且つ可視光線帯域の最短波長以下である凹凸構造層を形成する工程と、
前記凹凸構造層の前記凹凸面側に、当該凹凸面の凹凸に追従して、可視光透過性の金属薄膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
また、「フィルム面(板面、シート面)」とは、対象となるフィルム状(板状、シート状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるフィルム状部材(板状部材、シート状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
前記凹凸構造層の前記凹凸面側に設けられ、当該凹凸面の凹凸に追従した形状を有する、可視光透過性の金属薄膜と、を備えることを特徴とする。
前記凹凸構造層の前記凹凸面側に、当該凹凸面の凹凸に追従して、可視光透過性の金属薄膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
さらに本発明者は、上記特定の微小突起と微小突起集合体により形成された凹凸構造層の凹凸面の凹凸に追従した形状を有する金属薄膜の凹凸面が、光の入射角に依存して透過率が変化する性質(以下において「透過率異方性」とも呼ぶ)に優れ、正面方向における光透過性にも優れることを見出した。
本発明に係る透過率異方性部材が優れた透過率異方性を発揮する作用は、明らかではないが、凹凸面の凹凸に追従されてなる可視光透過性金属薄膜によって、モスアイ構造体の反射防止機能が、傾斜した方向からの入射光よりも正面方向からの入射光に対して効果的に発揮されることに連動しているものと推定される。凹凸面に金属薄膜を設けると、正面方向においては、反射防止効果によって優れた光透過性が維持され、透過率の変化はほとんどないが、一方で、傾斜した方向においては、凹凸構造層における光路長が長くなったり、金属薄膜の影響をより大きく受けて、散乱する特性を有するようになり、透過率の低下が顕著になると考えられる。これにより、光の入射角に依存して透過率が変化する透過率異方性が発現されると推定される。
本発明者は、さらに、前記凹凸面を形成する微小突起の一部が、隣接する微小突起と付着してなる微小突起集合体を構成し、当該微小突起集合体を構成する微小突起の個数の割合、及び当該微小突起集合体も一つの微小突起と仮定したときの微小突起間の距離の平均d’AVGが上記特定の範囲内であることにより、透過率異方性が増大することを見出した。これは、微小突起集合体を構成する微小突起の個数の割合及び前記d’AVGが上記特定の範囲内であると、傾斜した方向の凹凸構造層における光路長の変化の影響がより大きくなって散乱する特性が顕著になり、角度に依存した反射防止効果の差による透過率異方性がより一層顕著になるためであると考えられる。
また、本発明に係る透過率異方性部材は、微小突起集合体を構成する微小突起の個数の割合が上記特定の範囲内であることにより、微小突起集合体の径が適度な大きさとなり易く、微小突起集合体の径が大きくなりすぎることによる正面方向における光の散乱を防止するため、正面方向における光透過性に優れると推定される。
また、本発明者は、本発明に係る透過率異方性部材が、外光の映り込みを防止する防眩効果も奏することを見出した。
本発明に係る透過率異方性部材が外光の映り込みを防止する作用は明らかではないが、相対的に微小突起よりも大きな塊となっている微小突起集合体が、微小突起中に存在し、その凹凸によって外光を散乱することが可能になるため、外光の映り込みが防止されると推定される。
本発明に係る透過率異方性部材は、隣接する微小突起を付着させて微小突起集合体を特定条件下で形成することにより、付着させる前には透過率異方性を示せないような微小突起であっても、透過率異方性を付与でき、且つ防眩効果をも付与できる。
図1に示す透過率異方性部材10は、微小突起22と、互いに隣接する微小突起22が付着してなる微小突起集合体24と、によって形成された凹凸面21を有する凹凸構造層20と、凹凸構造層20の凹凸面21側に設けられた金属薄膜30と、を有している。凹凸面21側に設けられた金属薄膜30は、凹凸面21の凹凸に追従して凹凸面11を形成する。また、図1に示すように透過率異方性部材10は、透明基材15をさらに有していてもよい。透明基材15は、凹凸構造層20及び金属薄膜30を支持している。
以下、透過率異方性部材10の各構成について説明する。
透過率異方性部材10は、支持体として透明基材15を含んでいてもよい。透明基材15としては、光学フィルムに用いられる公知の透明基材を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。透明基材15に用いられる材料としては、例えば、透明樹脂が挙げられる。透明樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマ一等を挙げることができる。また、透明基材15に用いられる材料としては、例えばソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)等のセラミックス、石英、蛍石等の各種透明無機材料等も挙げられる。
また、透明基材15と凹凸構造層20とが別の材料から形成される場合には、透明基材15と凹凸構造層20との密着性を向上させ、ひいては耐摩耗性を向上させるためのプライマー層を透明基材15上に形成してもよい。このプライマー層は、透明基材15および凹凸構造層20との双方に密着性を有し、可視光学的に透明であることが好ましい。
プライマー層の材料としては、例えば、フッ素系コーティング剤及びシランカップリング剤等から適宜選択して使用することができる。フッ素系コーティング剤の市販品としては、例えば、フロロテクノロジー製のフロロサーフ FG−5010Z130等が挙げられ、前記シランカップリング剤の市販品としては、例えば、ハーベス製のデュラサーフプライマーDS−PC−3B等が挙げられる。
凹凸構造層20は、微小突起22と、互いに隣接する微小突起22が付着してなる微小突起集合体24と、によって形成された凹凸面21を有している。微小突起22間の平均間隔dAVGは、300nm以下であり、微小突起集合体24も一つの微小突起と仮定したときの微小突起間の平均間隔d’AVGは、200nm以上且つ可視光線帯域の最短波長以下である。ここで、微小突起22及び微小突起集合体24の「微小」とは、可視光線帯域の最短波長以下の平均間隔dAVG及びd’AVGで配列される程度に微小であることを意味している。また、可視光線帯域の最短波長は、透過率異方性部材10が使用される環境下における可視光線帯域の最短波長を指している。したがって、透過率異方性部材10が使用される環境下に制限された光源からの光のみが存在する場合には、当該光源から射出される可視光の最短波長が、ここでいう可視光線帯域の最短波長となり、それ以外の場合には、一般的な可視光線帯域の最短波長として380nmを、ここでいう可視光線帯域の最短波長として採用する。
また、前記貯蔵弾性率(E’)は、1〜200MPaであることがより好ましく、1〜100MPaであることが更により好ましい。前記tanδは、0.18以下であることがより好ましい。
まず、2000mJ/cm2のエネルギーの紫外線を1分以上照射することにより、凹凸構造層形成用の樹脂組成物を十分に硬化させて、透明基材及び凹凸面を有しない、厚さ1mm、幅5mm、長さ30mmの平坦な単膜とする。
次いで、25℃下、上記樹脂組成物の硬化物の長さ方向に10Hzで25gの周期的外力を加え、動的粘弾性を測定することにより、25℃における、E’、E”が求められる。測定装置としては、例えば、UBM製 Rheogel E400を用いることができる。
中でも、光硬化性成分を含む光硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
上記光硬化性成分としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物を含む組成物であることが好ましく、(メタ)アクリレートを含む組成物であることがより好ましい。
光硬化性樹脂組成物は、少なくとも上記光硬化性成分を含有していればよく、必要に応じて、更に他の成分を含有してもよい。
また、上記樹脂組成物は、硬化物表面の親油性が向上し、微小突起22が柔軟性に優れる点から、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物を含有することが好ましい。
以下、光硬化性成分として好ましく用いられる(メタ)アクリレートを含む組成物中の各成分について順に説明する。
(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1個有する単官能(メタ)アクリレートであっても、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2個以上有する多官能アクリレートであってもよく、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを併用するものであってもよい。
中でも、硬化物表面の親油性が向上し、微小突起22が柔軟性に優れる点から、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを併用することが好ましい。
本発明において凹凸構造層20の形成に用いられる樹脂組成物は、硬化物表面の親油性が向上し、微小突起が柔軟性に優れる点から、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物を含有することが好ましく、炭素数12以上の長鎖アルキル基を有する化合物を含有することがより好ましい。
炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物の具体例としては、例えば、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカンを有する化合物等が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない限り、更に置換基を有していてもよい。置換基の具体例としては、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基の他、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和二重結合を有する基等が挙げられる。中でも、光硬化性を備える点から、エチレン性不飽和二重結合を有することが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有することがより好ましい。
なお、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物が(メタ)アクリロイル基を有する場合、当該化合物は、前記(メタ)アクリレートにも該当し得る。
上記(メタ)アクリレートの硬化反応を開始又は促進させるために、必要に応じて光重合開始剤を適宜選択して用いても良い。光重合開始剤の具体例としては、例えば、ビスアシルフォスフィノキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フォスフィンオキサイド、フェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
凹凸構造層20の凹凸面21は、300nm以下となる平均間隔dAVGで配列された微小突起22と、互いに隣接する当該微小突起22が付着してなる微小突起集合体24と、によって形成され、前記微小突起集合体24を構成する微小突起22の個数の割合が、前記微小突起集合体24を構成する微小突起22の個数と前記微小突起集合体24を構成しない微小突起22の個数を合わせた全個数に対して、25%より大きく且つ75%以下であり、前記微小突起集合体24も一つの微小突起と仮定したときの微小突起間の平均間隔d’AVGが、200nm以上且つ可視光線帯域の最短波長以下である。
凹凸面21は、前記微小突起集合体24も一つの微小突起と仮定したときの微小突起間の平均間隔d’AVGが、可視光線帯域の最短波長以下であることにより、いわゆるモスアイ構造体として、優れた反射防止機能を有する。ここで、凹凸構造層20の凹凸面21側に設けられる金属薄膜30は、凹凸面21の凹凸に追従した形状を有する薄膜であるため、金属薄膜30によって形成される凹凸面11も、凹凸構造層20の凹凸面21と略同一の構成を有する。その結果、透過率異方性部材10の金属薄膜30により形成される凹凸面11においても、その構成に起因して、凹凸構造層20の凹凸面21と同様の反射防止機能を発揮することができる。
また、本発明においては、凹凸構造層20の凹凸面21において、前記微小突起集合体24を構成する微小突起22の個数の割合、及び、当該微小突起集合体24も一つの微小突起と仮定したときの微小突起の平均間隔d’AVGが、各々上記特定の範囲内であることにより、凹凸面21と略同一の構成を有する金属薄膜30により形成される凹凸面11において、優れた透過率異方性が発揮され、正面方向における光透過性に優れる。
ここで、微小突起集合体24とは、互いに隣接する微小突起22の少なくとも一部が付着してなるものをいい、2個以上の微小突起22からなる。付着の程度は特に限定されず、微小突起22の側面の大部分が図1に示すように付着して一体化したものであってもよいし、図示はしないが、先端部だけが互いに結合し、中が空洞化したものであってもよい。互いに隣接する微小突起22の先端部だけが互いに結合してなる微小突起集合体24は、下の方に空洞ができ、SEM等により観察される断面において微小突起が互いに付着した様子を確認することができる。
前記平均間隔dAVGに係る隣接する微小突起は、いわゆる隣り合う微小突起である。
また、微小突起集合体24も一つの微小突起と仮定した場合においては、当該仮定した微小突起と微小突起集合体を構成しない微小突起との平均間隔d’AVGに係る隣接する微小突起が、いわゆる隣り合う微小突起である。隣り合う微小突起とは、凹凸構造層20の凹凸面21とは反対側(図1では透明基材15側)の付け根部分である微小突起の裾の部分が接している突起である。凹凸構造層20では微小突起が密接して配置されることが好ましく、微小突起間の谷の部位を順次辿るようにして線分を作成すると、平面視において各微小突起を囲む多角形状領域を多数連結してなる網目状の模様が作製されることになる。平均間隔d’AVGに係る隣接する微小突起は、この網目状の模様を構成する一部の線分を共有する突起である。
また、本発明においては、透過率異方性に優れる点から、平均間隔dAVGの下限値は、d’AVG≧200nmである。
(1)すなわち先ず、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて突起の面内配列(突起配列の平面視形状)を検出する。
(5)このようにして求めた微小突起集合体24も一つの微小突起と仮定したときの隣接突起間距離d’の度数分布から平均値(平均間隔)d’AVG及び標準偏差σを求める。
また、前記隣接突起間距離d’の標準偏差σは、特に限定されないが、透過率異方性に優れる点から100nm以下であることが好ましい。
また、前記微小突起の高さH’の標準偏差σは、特に限定されないが、透過率異方性に優れる点から50nm以下であることが好ましい。
Dmin=DAVG―2Σ
として定義する最小隣接突起間距離Dminを以って周期Dの代わりとして設計する。即ち、凹凸構造層20の凹凸面21の残留反射光の散乱効果を十分奏し得る条件は、
Dmin>λMAX
である。通常、D又はDminは1〜200μm、好ましくは10〜100μmとされる。
微小突起集合体24を構成しない微小突起22の平均間隔dAVG及び平均高さHAVGを求める際の上記(2)の極大点の検出は、微小突起集合体24を構成しない微小突起22同士が隣接している部分を選択して行う。すなわち、微小突起集合体24を構成していない隣り合う微小突起22間において求められた隣接突起間距離dの度数分布から、平均間隔dAVG及び平均高さHAVG並びに各々の標準偏差σを求める。
なお、微小突起集合体24を構成しない微小突起22の度数分布の検出において、突起の頂部に溝状等の凹部が存在したり、あるいは頂部が複数の峰に分裂している等の微細構造を有すること等により、複数の頂点を有する微小突起22がある場合は、上述した平均間隔d’AVGのときと同様に、最も高い頂点を極大点としてもよいし、複数の頂点をそれぞれ極大点として検出した後、求めた度数分布から、このような微細構造に起因するデータを除去し、突起本体自体のデータのみを選別して度数分布を作成してもよい。
また、前記微小突起22の間隔dの標準偏差σは、特に限定されないが、透過率異方性に優れる点から40nm以下であることが好ましい。
また、前記微小突起22の高さHの標準偏差σは、特に限定されないが、反射防止効果の観点から、35nm以下であることが好ましい。
微小突起集合体24の径及び当該径の平均が、前記下限値以上であることにより、透過率異方性及び防眩性が向上し、前記上限値以下であることにより、表示のコントラスト低下を防止することができる。
なお、本発明でいう「微小突起集合体24の径」とは、凹凸構造層20の凹凸面21又は当該凹凸面21に追従した形状を有する金属薄膜30の凹凸面11の表面を平面的に見たときに、微小突起集合体24の最も長い部分の幅をいう。
本発明の透過率異方性部材10は、中でも、防眩性を向上する点からは、径が0.4〜1.0μmの微小突起集合体24を含むことが好ましい。
中でも、防眩性に特に優れる点からは、平面観察した場合の径が0.1μm以上、1.0μm未満の微小突起集合体24の個数密度が、3〜30個/μm2であることが好ましい。
凹凸構造層20を形成する方法は、特に限定されないが、成形性に優れ、且つ安定量産ができる点から、微小突起集合体24を作製する前の凹凸面21’を、賦形により形成する工程を有する方法が好ましい。
凹凸構造層20の形成方法としては、例えば以下の方法等が挙げられる。すなわち、まず透明基材15上に凹凸構造層20形成用の樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、所望の凹凸形状を有する凹凸面形成用原版の該凹凸形状を、前記樹脂組成物の塗膜に賦形した後、前記樹脂組成物を硬化させ、前記凹凸面形成用原版を剥離することにより凹凸面21’を作製し、凹凸面21’に賦形された微小突起22の一部を、互いに隣接する微小突起と付着させて、微小突起集合体24を作製する方法である。
或いは、柔軟性が高い樹脂組成物を用いたり、樹脂組成物を半硬化させることにより、硬化又は半硬化した樹脂組成物から凹凸面形成用原版を剥離する際に、隣接する微小突起22が自然に付着することを利用して、微小突起集合体24を作製することもできる。
なお、凹凸面形成用原版の凹凸形状とは、多数の微小孔が形成されたものであり、凹凸面21の微小突起集合体24を作製する前の凹凸面21’形状に対応する形状である。
また、凹凸面形成用原版の凹凸形状を樹脂組成物に賦形し、該樹脂組成物を硬化させる方法は、樹脂組成物の種類等に応じて適宜選択することができる。
前記凹凸面形成用原版の凹凸形状を有する面は、特に限定されないが、酸化されやすく、陽極酸化による加工が容易である点から、アルミニウムからなることが好ましい。
前記凹凸面形成用原版は、具体的には、例えば、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属製の母材の表面に、直接に又は各種の中間層を介して、スパッタリング等により純度の高いアルミニウム層が設けられ、当該アルミニウム層に凹凸形状を形成したものが挙げられる。前記母材は、前記アルミニウム層を設ける前に、電解溶出作用と、砥粒による擦過作用の複合による電解複合研磨法によって母材の表面を超鏡面化しても良い。
前記凹凸面形成用原版に凹凸形状を形成する方法としては、例えば、陽極酸化法によって前記アルミニウム層の表面に複数の微小孔を形成する陽極酸化工程と、前記アルミニウム層をエッチングすることにより前記微小孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、前記アルミニウム層を前記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより前記微小孔の孔径を拡大する第2エッチング工程とを順次繰り返し実施することによって形成することができる。
凹凸面形成用原版に凹凸形状を形成する際には、アルミニウム層の純度(不純物量)や結晶粒径、陽極酸化処理及び/又はエッチング処理の諸条件を適宜調整することによって、所望の形状とすることができる。前記陽極酸化処理において、より具体的には、液温、印加する電圧、陽極酸化に供する時間等の管理により、微小孔をそれぞれ目的とする深さ及び形状に作製することができる。
前記ロール金型としては、例えば、母材として、円筒形状の金属材料を用い、当該母材の周側面に、直接に又は各種の中間層を介して設けられたアルミニウム層に、上述したように、陽極酸化処理、エッチング処理の繰り返しにより、凹凸形状が作製されたものが挙げられる。
中でも、水拭きを行うことで、微小突起22の先端が軟化し、水の表面張力により水が乾く際に、微小突起22の先端同士が互いに付着し、更に、拭き作業による圧力によって先端部が折れ曲がるため、容易に微小突起集合体24を作製することができる。
また、凹凸面21の表面を水拭きした後に、当該水拭き後の凹凸面21の表面を乾拭きする方法により、水拭き作業によって作製されすぎた微小突起集合体24の数を減らすことができるため、水拭き作業後と乾拭き作業とを組み合わせることで、より容易に微小突起集合体24の数を調節することができる。
或いは、微小突起集合体24は、凹凸構造層20’を硬化させる際の露光量及び/又は加熱温度を調整し、樹脂組成物完全に硬化させない程度に行う硬化処理、いわゆる半硬化処理を行うことにより作製することもできる。半硬化処理によって形成された微小突起22は、先端部が折れ曲がりやすくなるため、凹凸面形成用原版を剥離する際に、互いに隣接する微小突起22同士が容易に付着し、微小突起集合体24が作製される。微小突起22同士を付着させた後、樹脂組成物を完全に硬化させるために、更に光照射及び/又は加熱をしてもよい。
微小突起集合体24の大きさ及び個数密度は、凹凸構造層20形成用の樹脂組成物の組成、樹脂組成物を硬化する際の露光量及び/又は加熱温度、凹凸面21’に拭き作業を行う際の圧力、当該拭き作業を水拭きにより行った場合の水の量等を調整することにより、制御することができる。
次に、金属薄膜30について説明する。上述したように、凹凸面21側に設けられた金属薄膜30は、凹凸面21の凹凸に追従した形状を有する。金属薄膜30の「薄膜」とは、金属薄膜30の表面上に凹凸面21の微小突起22に起因した凹凸が残存し、当該金属薄膜30の凹凸面11によっても反射防止効果が発現される程度に薄膜であることを意味している。
図1に示された金属薄膜30は、或る程度の均一な厚みにて、凹凸面21の凹凸に追従して形成されてなり、当該凹凸面21上に設けられている。このような形態によれば、金属薄膜30によって構成される透過率異方性部材10の凹凸面11は、凹凸構造層20の凹凸面21と同様の形状となり、当該凹凸面11は、凹凸構造層20の凹凸面21によって発現される反射防止効果と同様の作用効果を発揮することができる。すなわち、透過率異方性部材10の凹凸面11は、平均間隔200nm以上且つ可視光線帯域の最短波長以下で配列された微小突起によって形成された凹凸面であることが、透過率異方性及び反射防止性能の観点から好ましい。また、凹凸面11を形成している微小突起の高さも50〜350nmであることが、透過率異方性及び反射防止性能の観点から好ましい。
つまり、金属薄膜30自体の透過率は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上に設定される。
また、金属薄膜30は、凹凸構造層20の凹凸面21を平坦面にして当該平坦面上にスパッタリング法により金属薄膜30を形成したと仮定した場合に、厚さ5〜30nm、好ましくは厚さ5〜20nmの金属薄膜が形成される量のアルミニウム及びアルミニウム合金の少なくとも一種からなる膜であることが好ましい。すなわち、金属薄膜30をなすアルミニウム及びアルミニウム合金の少なくとも一種は、凹凸面21上の領域と平面視において同面積となる平坦面に成膜した場合に、厚さが5〜30nm、好ましくは5〜20nmとなる量であることが好ましい。さらに言い換えると、金属薄膜30は、平面視において同面積となる平坦面に成膜した場合に、5〜30nm、好ましくは5〜20nmとなる厚さの膜が形成される条件でのスパッタリング法にて成膜されたアルミニウム及びアルミニウム合金の少なくとも一種からなる膜であることが好ましい。
金属薄膜30の厚みが前記下限値以上であることにより、本発明の透過率異方性部材10は、透過率異方性に優れたものとなる。また、金属薄膜30の厚みが前記上限値以下であることにより、本発明の透過率異方性部材10は、正面方向における光透過性及び反射防止機能に優れ、さらに、透過率異方性部材10での映り込みを抑えながら、透過率異方性部材10の正面方向における背面側の像を観察することが可能となり、また、金属薄膜30に起因した金属光沢が低減されるため、透過率異方性部材10の正面方向における背面側の像を、変色させることなく、明瞭に観察することが可能となる。
次に、以上のような構成及び特性を有した本発明に係る透過率異方性部材の用途の一例について説明する。
本発明に係る第一の表示装置は、画像を表示する表示面を有する表示機構と、前記表示機構の前記表示面側に配置された前記本発明に係る透過率異方性部材と、を備えるものである。
図5には、本発明に係る第一の表示装置の一例として、本発明に係る透過率異方性部材10を組み込んだ表示装置50が開示されている。表示装置50は、表示面52を有した表示機構51と、透過率異方性部材10と、を備える。透過率異方性部材10は、表示機構51の表示面52側に表示面52を覆うように配置されている。表示機構51としては、液晶表示パネル、エレクトロルミネッセンス表示パネル、プラズマディスプレイパネル等の既知の表示機構を用いることができる。
例えば、表示装置50が、携帯電話等の携帯端末用表示装置である場合には、表示機構51の表示面52に表示される画像を、表示面52の法線方向に位置する使用者のみが明瞭に観察することができ、広角度から表示面52を覗き込む者が表示面52に表示された画像を観察することを防止することができる。すなわち、透過率異方性部材10は、表示機構51の視野角を制御する視野角制御シートとして機能する。
本発明に係る第二の表示装置は、前記本発明に係る透過率異方性部材と、前記透過率異方性部材に画像光を投射する画像光源と、を備え、前記画像光源が、前記透過率異方性部材の法線方向に対して傾斜した方向から当該透過率異方性部材に前記画像光を投射するものである。
図6には、本発明に係る第二の表示装置の一例として、本発明に係る透過率異方性部材10と、当該透過率異方性部材10に画像光を投射する画像光源61とを備えた表示装置60が開示されている。上述したように、透過率異方性部材10は、正面方向(法線方向nd)に対して大きく傾斜した方向から入射する光を、高い反射率で選択的に反射することができる。したがって、画像光源61からの画像光が透過率異方性部材10にて高い反射率で反射するように配置された画像光源61および透過率異方性部材10によって、特定の角度域からのみ画像を明瞭に観察することができる表示装置60を構成することができる。
ここで説明した透過率異方性部材10は、上記の用途に限定されることなく、その他の種々の用途に利用され得る。透過率異方性部材10は、視野角制御フィルムとして好適に用いられ、表示用途以外にも各種プライバシーフィルムとして好適に用いられる。更に、例えば、透過率異方性部材10を備えた部分において選択的に光が反射されるガラス装飾フィルム、マーキングフィルム等として透過率異方性部材10を使用することができる。
上述した実施の形態において、透過率異方性部材10が、一方の面側のみに、凹凸構造層20の凹凸面21を有し且つ当該凹凸面21側に金属薄膜30が形成されている例を示したが、本発明はこれに限らず、一方の面側および他方の面側の両側に凹凸構造層20の凹凸面21を有し、且つ、両方の凹凸面21に金属薄膜30が形成されていてもよい。
或いは、本発明の透過率異方性部材10は、一方の面側および他方の面側の両側に凹凸構造層20の凹凸面21を有し、且つ、片方の凹凸面21のみに金属薄膜30が形成されていてもよい。
[実施例1]
(凹凸面形成用原版の作製)
純度99.50%の圧延されたアルミニウム板を、その表面が、十点平均粗さRz30nm、且つ周期1μmの凹凸形状となるように研磨後、0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、印加電圧40V、20℃の条件にて120秒間、陽極酸化を実施した。次に、第一エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第二エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径処理を行った。さらに、上記処理を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム基板上に微細な凹凸形状が形成された陽極酸化アルミニウム層が形成された。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、凹凸面形成用原版を得た。
EO変性ビスフェノールAジアクリレート55質量部、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート35質量部、トリデシルアクリレート5質量部、ドデシルアクリレート5質量部、及び、光開始剤としてルシリン(商品名;TPO社製)1重量部を酢酸エチル200重量部に溶解させ、凹凸構造層形成用の活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化型樹脂組成物)を得た。
得られた紫外線硬化型樹脂組成物を、上記凹凸面形成用原版の表面を覆うようにして、厚さ20μmとなるように塗布、充填し、その上に透明基材15として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、品番:TD80UL)を斜めから貼り合わせた後、貼り合わせられた貼合体をゴムローラーで10N/cm2の加重で圧着した。凹凸面形成用原版全体に均一な組成物が塗布されたことを確認し、フィルム側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させた。当該樹脂組成物の硬化物を透明基材15とともに、凹凸面形成用原版より剥離した。形成された微小突起の平均間隔dAVGは100nmであり、平均高さHAVGは180nmであった。凹凸面形成用原版を剥離後、凹凸面に水を噴きかけワイプ(商品名:ザヴィーナ ミニマックス、KBセーレン製)で2回全体的に拭いて水拭きをすることにより、凹凸構造層20を形成した。
得られた凹凸構造層20の凹凸面21のSEM写真(倍率3万倍、大きさ3μm×2μmの平面視拡大写真)を観察したところ、微小突起22の一部が互いに隣接する微小突起22同士で付着した微小突起集合体24を構成していることが明らかにされた。上記SEM写真を観察して求めたところ、微小突起集合体24を構成する微小突起22の個数の割合は、微小突起集合体24が作製される前の微小突起22の全個数に対して50%であった。また、微小突起集合体24も一つの微小突起と仮定した場合における微小突起の平均間隔d’AVGは200nmであり、平均高さH’AVGは180nmであった。
次いで、凹凸構造層20の凹凸面21上に、スパッタリング法により、アルミニウムを成膜し、金属薄膜30を形成することにより、実施例1の透過率異方性部材10を作製した。なお、金属薄膜30の形成に用いたアルミニウムの量は、前記凹凸構造層20の前記凹凸面21上の領域と平面視において同面積となる平坦面に成膜した場合に、厚さ10nmの金属薄膜が形成される量とした。
実施例1で得られた透過率異方性部材10において、金属薄膜30側の表面に対し、法線方向からの傾斜角度が5°から75°までの5°きざみの入射角度で可視光を入射させた場合における透過率を測定した。測定結果を図7に示す。なお、透過率の測定は、日本分光製のV−600(絶対反射率測定システム)を用い行った。
凹凸構造層20の微小突起集合体24を作製する際に、紫外線照射量を2000mJ/cm2から1500mJ/cm2に変更し、凹凸面形成用原版剥離後の水拭きの後に、再度2000mJ/cm2の紫外線を露光させることで、樹脂組成物を硬化させたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の透過率異方性部材10を得た。
実施例1と同様にSEM観察を行ったところ、実施例2で得られた透過率異方性部材10は、微小突起集合体24を構成する微小突起22の個数の割合が、微小突起集合体24が作製される前の微小突起22の全個数に対して70%であり、微小突起集合体24も一つの微小突起と仮定した場合における微小突起の平均間隔d’AVGは、300nmであり、平均高さH’AVGは180nmであった。
凹凸面形成用原版の作製において陽極酸化における所定の時間を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の透過率異方性部材10を得た。実施例3において、微小突起集合体24が作製される前の微小突起の平均間隔dAVGは150nmであり、平均高さHAVGは280nmであった。
実施例3で得られた透過率異方性部材10は、微小突起集合体24を構成する微小突起22の個数の割合が、微小突起集合体24が作製される前の微小突起22の全個数に対して30%であり、微小突起集合体24も一つの微小突起と仮定した場合における微小突起の平均間隔d’AVGは、250nmであり、平均高さH’AVGは280nmであった。
紫外線照射量を2000mJ/cm2から1500mJ/cm2に変更し、凹凸面形成用原版剥離後の水拭きの後に、再度2000mJ/cm2の紫外線を露光させることで、樹脂組成物を硬化させたこと以外は、実施例3と同様にして、実施例4の透過率異方性部材10を得た。
実施例4で得られた透過率異方性部材10は、微小突起集合体24を構成する微小突起22の個数の割合が、微小突起集合体24が作製される前の微小突起22の全個数に対して75%であり、微小突起集合体24も一つの微小突起と仮定した場合における微小突起の平均間隔d’AVGは、350nmであり、平均高さH’AVGは280nmであった。
実施例1の凹凸構造層20の形成において、凹凸面の水拭きをしなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の部材を作製した。
比較例1で得られた部材は、微小突起集合体24を作製する前の凹凸構造層20’に相当し、微小突起22の平均間隔dAVGは100nmであり、平均高さHAVGは180nmであった。
凹凸構造層20の微小突起集合体24を作製する際に紫外線照射量を2000mJ/cm2から4000mJ/cm2に変更し、硬化後の樹脂組成物の柔軟性を低下させたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の部材を得た。
比較例2で得られた部材は、微小突起集合体24を構成する微小突起22の個数の割合が、前記微小突起22の全個数に対して25%であり、微小突起集合体24も一つの微小突起と仮定した場合における微小突起の平均間隔d’AVGは、150nmであり、平均高さH’AVGは180nmであった。
凹凸構造層20の微小突起集合体24を作製する際に、紫外線照射量を2000mJ/cm2から1000mJ/cm2に変更し、凹凸面の水拭きをする回数を10回に増やし、水拭きの後に、再度2000mJ/cm2の紫外線を露光させることで、樹脂組成物を硬化させたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の部材を得た。
比較例3で得られた部材は、微小突起集合体24を構成する微小突起22の個数の割合が、前記微小突起22の全個数に対して80%であり、微小突起集合体24も一つの微小突起と仮定した場合における微小突起の平均間隔d’AVGは、350nmであり、平均高さH’AVGは180nmであった。
スパッタ装置SX−200を用いて作製した従来のハーフミラーを比較例4の部材とした。比較例4の部材(ハーフミラー)は、平坦な表面に、厚さ10nmの金属薄膜を有するものであった。
各実施例及び各比較例で得られた部材について、下記の評価を行った。評価結果をそれぞれ表1に示す。
各実施例及び各比較例で得られた部材を、金属薄膜側が表面となるようにして、文字が表示された表示装置の表示面上に配置した。次いで、部材の法線方向に対し60°の傾斜角の方向から、表示面を目視で観察し、以下の評価基準により、覗き見防止効果を評価した。評価結果を表1に示す。
◎:表示面上の部材が白濁することにより、表示面の文字を全く判読できない。
○:表示面上の部材が白濁することにより、表示面の文字をほとんど判読できない。
△:表示面上の部材がほとんど白濁せず、表示面の文字を判読できる。
×:表示面上の部材が白濁せず、表示面の文字を良好に判読できる。
各実施例及び各比較例で得られた部材において、金属薄膜側の面に対し、法線方向から可視光を入射させた場合における透過率と、法線方向に対して60°の入射角度で可視光を入射させた場合における透過率をそれぞれ測定し、以下の評価基準に基づいて、透過率異方性及び正面の光透過性を評価した。評価結果を表1に示す。なお、透過率の測定は、日本分光製のV−600(絶対反射率測定システム)を用い行った。
(法線方向における透過率(%))−(60°の入射角度における透過率(%))の値が、50%以上のものを○とし、20%以上且つ50%未満のものを△とし、20%未満のものを×と評価した。
法線方向における透過率が、90%以上のものを○とし、90%未満のものを×と評価した。
各実施例及び各比較例で得られた部材を、金属薄膜側が表面となるようにして、粘着層を介して黒アクリル板に貼り付け、明室環境下にて、透過率異方性部材の法線方向に対し60°の傾斜角の方向から、金属薄膜表面を目視で観察し、以下の評価基準により、防眩性を評価した。評価結果を表1に示す。
◎:周囲の写り込みがない。
○:周囲の写り込みがほとんど見えない。
×:周囲の写りこみが目立って見える。
「個数割合」は、微小突起集合体を構成する微小突起の個数と微小突起集合体を構成しない微小突起の個数を合わせた全個数に対する微小突起集合体を構成する微小突起の個数の割合である。
実施例1〜4及び比較例1〜3において、金属薄膜の厚みは、凹凸面を平坦面にして、当該平坦面に金属薄膜を形成したと仮定した場合の厚みを示す。
実施例1〜4で得られた透過率異方性部材は、300nm以下となる平均間隔dAVGで配列された微小突起と、互いに隣接する当該微小突起が付着してなる微小突起集合体と、によって形成された凹凸面を有し、前記微小突起集合体を構成する微小突起の個数の割合が、25%より大きく且つ75%以下であり、前記微小突起集合体も一つの微小突起と仮定したときの微小突起間の平均間隔d’AVGが、200nm以上且つ可視光線帯域の最短波長以下である凹凸構造層と、当該凹凸面の凹凸に追従した形状を有する、可視光透過性の金属薄膜とを備えることから、覗き見防止効果に優れ、透過率異方性及び正面方向における光透過性、並びに防眩性にも優れていた。中でも、実施例2、4が特に防眩性に優れていたのは、大きな塊となっている微小突起集合体の影響によるものと考えられる。
図7から明らかなように、実施例1で得られた透過率異方性部材10においては、入射角度(入射光の進行方向が透過率異方性部材のフィルム面の法線方向に対してなす角度)が大きくなるにつれて、透過率が低下した。また、可視光線帯域内の異なる波長において、光の透過率の差が小さく、この傾向は、入射角が小さい程強く現れた。このように、本発明の透過率異方性部材は、可視光域内での透過率のスペクトル分布におけるバラツキが少なくなることが判明した。このような作用効果は、従来の技術水準から予測される範囲を超えた顕著なものであると言える。
一方、比較例1で得られた部材は、凹凸面に微小突起集合体が形成されていなかったため、覗き見防止効果及び透過率異方性に劣っていた。
比較例2で得られた部材は、凹凸面に形成された微小突起集合体が少なすぎ、d’AVGが200nm以上とならなかったため、覗き見防止効果及び透過率異方性に劣っていた。
比較例3で得られた部材は、透過率異方性及び正面方向からの光透過性に劣っていた。これは、凹凸面において、微小突起集合体を構成する微小突起の個数の割合が大きく、形成された微小突起集合体の径が大きすぎるものが存在していたため、正面方向からの入射光においても光が散乱したためと考えられる。
比較例4の部材は、背景技術で説明した従来のハーフミラーであり、凹凸面を有しないため、透過率異方性及び正面方向からの光透過性に劣っていた。防眩性評価においても、比較例4の部材は表面が鏡面化されていたため、周囲の写りこみがあった。また、比較例4の覗き見防止効果の評価においては、金属薄膜側の表面が鏡面化されていたことにより、表示面の文字が判読できなかった。また、図8に示すように、比較例4の従来のハーフミラーでは、長波長域の光の透過率が、短波長域の光の透過率に対して10〜20%程度も低下した。なお、実施例1の透過率異方性部材及び比較例4のハーフミラーにおいては、金属薄膜が積層される透明基材に紫外線吸収剤が添加されていたため、この紫外線吸収剤に起因して、図7及び図8に示された結果では、420nm以下の短波長側での透過率が低下したと考えられる。比較例4のハーフミラーにおいては、透明基材に紫外線吸収剤が添加されていない場合には、波長が長くなるにつれて透過率が低下するといった現象がより強く現れると推定される。
11 金属薄膜により形成される凹凸面
12 微小突起
14 微小突起集合体
15 透明基材
20 凹凸構造層
20’ 微小突起集合体を作製する前の凹凸構造層
20” 凹凸構造層20’を作製する前の受容層
21 凹凸構造層の凹凸面
21’ 微小突起集合体を作製する前の凹凸構造層の凹凸面
22 微小突起
23 頂部
24 微小突起集合体
30 金属薄膜
41 ダイ
42 ロール金型
43 押圧ローラ
44 剥離ローラ
50 表示装置
51 表示機構
52 表示面
60 表示装置
61 画像光源
Claims (6)
- 300nm以下となる平均間隔dAVGで配列された微小突起と、互いに隣接する当該微小突起が付着してなる微小突起集合体と、によって形成された凹凸面を有し、前記微小突起集合体を構成する微小突起の個数の割合が、前記微小突起集合体を構成する微小突起の個数と前記微小突起集合体を構成しない微小突起の個数を合わせた全個数に対して、25%より大きく且つ75%以下であり、前記微小突起集合体も一つの微小突起と仮定したときの微小突起間の平均間隔d’AVGが、200nm以上且つ可視光線帯域の最短波長以下である凹凸構造層と、
前記凹凸構造層の前記凹凸面側に設けられ、当該凹凸面の凹凸に追従した形状を有する、可視光透過性の金属薄膜と、を備える透過率異方性部材。 - 前記金属薄膜は、スパッタリング法により形成されたアルミニウム及びアルミニウム合金の少なくとも一種からなる、請求項1に記載の透過率異方性部材。
- 画像を表示する表示面を有する表示機構と、
前記表示機構の前記表示面側に配置された前記請求項1又は2に記載の透過率異方性部材と、を備える、表示装置。 - 前記請求項1又は2のいずれか一項に記載の透過率異方性部材と、
前記透過率異方性部材に画像光を投射する画像光源と、を備え、
前記画像光源は、前記透過率異方性部材の法線方向に対して傾斜した方向から当該透過率異方性部材に前記画像光を投射する、表示装置。 - 300nm以下となる平均間隔dAVGで配列された微小突起と、互いに隣接する当該微小突起が付着してなる微小突起集合体と、によって形成された凹凸面を有し、前記微小突起集合体を構成する微小突起の個数の割合が、前記微小突起集合体を構成する微小突起の個数と前記微小突起集合体を構成しない微小突起の個数を合わせた全個数に対して、25%より大きく且つ75%以下であり、前記微小突起集合体も一つの微小突起と仮定したときの微小突起間の平均間隔d’AVGが、200nm以上且つ可視光線帯域の最短波長以下である凹凸構造層を形成する工程と、
前記凹凸構造層の前記凹凸面側に、当該凹凸面の凹凸に追従して、可視光透過性の金属薄膜を形成する工程と、を有する透過率異方性部材の製造方法。 - 前記金属薄膜は、スパッタリング法を用いて、アルミニウム及びアルミニウム合金の少なくとも一種から形成される、請求項5に記載の透過率異方性部材の製造方法。
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