JP6263905B2 - 透過率異方性部材、透過率異方性部材の製造方法及び表示装置 - Google Patents
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Description
前記凹凸構造層の前記凹凸面側に設けられ、当該凹凸面の凹凸に追従した形状を有する可視光透過性の金属薄膜と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る透過率異方性部は、前記微小突起の間隔の標準偏差が20nm以下であり、前記微小突起の高さの標準偏差が20nm以下であることが、光の入射角に依存した透過率の変化が増大する点から好ましい。
同様の観点から、本発明に係る透過率異方性部材は、前記金属薄膜が、前記凹凸構造層の前記凹凸面を平坦面にして、当該平坦面にスパッタリング法により金属薄膜を形成したと仮定した場合に、厚さ5〜30nmの金属薄膜が形成される量のアルミニウム及びアルミニウム合金の少なくとも一種からなることが好ましい。
画像を表示する表示面を有する表示機構と、
前記表示機構の前記表示面側に配置された前記本発明に係る透過率異方性部材と、を備えることを特徴とする。
前記本発明に係る透過率異方性部材と、
前記透過率異方性部材に画像光を投射する画像光源と、を備え、
前記画像光源は、前記透過率異方性部材の法線方向に対して傾斜した方向から当該透過率異方性部材に前記画像光を投射することを特徴とする。
平均間隔が200nm以上且つ可視光線帯域の最短波長以下となるように配列された微小突起によって形成された凹凸面を有し、前記微小突起の間隔の標準偏差が38nm未満であり、前記微小突起の高さの標準偏差が30nm未満である凹凸構造層を形成する工程と、
前記凹凸構造層の前記凹凸面側に、当該凹凸面の凹凸に追従して、可視光透過性の金属薄膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
本発明に係る透過率異方性部材の製造方法においては、前記微小突起の間隔の標準偏差が20nm以下であり、前記微小突起の高さの標準偏差が20nm以下である前記凹凸構造層を形成することが、得られる透過率異方性部材における、光の入射角に依存した透過率の変化が増大する点から好ましい。
同様の観点から、本発明に係る透過率異方性部材の製造方法においては、前記金属薄膜は、前記凹凸構造層の前記凹凸面を平坦面にして、当該平坦面にスパッタリング法により金属薄膜を形成したと仮定した場合に、厚さ5〜30nmの金属薄膜が形成される量のアルミニウム及びアルミニウム合金の少なくとも一種から形成されることが好ましい。
また、「フィルム面(板面、シート面)」とは、対象となるフィルム状(板状、シート状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるフィルム状部材(板状部材、シート状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
前記凹凸構造層の前記凹凸面側に、当該凹凸面の凹凸に追従して、可視光透過性の金属薄膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
さらに本発明者は、凹凸構造層の凹凸面の微小突起の平均間隔を200nm以上とし、且つ、前記微小突起の間隔の標準偏差を38nm未満とし、前記微小突起の高さの標準偏差を30nm未満とすることにより、当該凹凸面の凹凸に追従した形状を有する金属薄膜の凹凸面が、光の入射角に依存して透過率が変化する性質(以下において「透過率異方性」とも呼ぶ)に優れることを見出した。
本発明に係る透過率異方性部材が優れた透過率異方性を発揮する作用は、明らかではないが、凹凸面の凹凸に追従されてなる可視光透過性金属薄膜によって、モスアイ構造体の反射防止機能が、傾斜した方向からの入射光よりも正面方向からの入射光に対して効果的に発揮されることに連動しているものと推定される。凹凸面に金属薄膜を設けると、正面方向においては、反射防止効果によって優れた光透過性が維持され、透過率の変化はほとんどないが、一方で、傾斜した方向においては、凹凸構造層における光路長が長くなったり、金属薄膜の影響をより大きく受けて、散乱する特性を有するようになり、透過率の低下が顕著になると考えられる。これにより、光の入射角に依存して透過率が変化する透過率異方性が発現されると推定される。
本発明者は、さらに、モスアイ構造体を形成する微小突起が、特定の平均間隔で、且つ、より均一に配列されていることにより透過率異方性が増大することを見出した。これは、微小突起集合体を構成する微小突起の平均間隔が上記特定の範囲内であり、且つ、微小突起間の間隔及び微小突起の高さの標準偏差が各々上記特定の値未満であると、傾斜した方向の凹凸構造層における光路長の変化の影響がより大きくなって光が散乱する特性が顕著になり、且つ、規則構造による光学干渉が起こるため、光の干渉色が見えることにより、角度に依存した反射防止効果の差による透過率異方性がより一層顕著になるためであると考えられる。
図1に示す透過率異方性部材10は、微小突起22によって形成された凹凸面21を有する凹凸構造層20と、凹凸構造層20の凹凸面21側に設けられた金属薄膜30と、を有している。凹凸面21側に設けられた金属薄膜30は、凹凸面21の凹凸に追従して凹凸面11を形成する。また、図1に示すように、透過率異方性部材10は、透明基材15をさらに有してもよい。透明基材15は、凹凸構造層20及び金属薄膜30を支持している。
以下、透過率異方性部材10の各構成について説明する。
透過率異方性部材10は、支持体として透明基材15を含んでいてもよい。透明基材15としては、光学フィルムに用いられる公知の透明基材を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。透明基材15に用いられる材料としては、例えば、透明樹脂が挙げられる。透明樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマ一等を挙げることができる。また、透明基材15に用いられる材料としては、例えばソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)等のセラミックス、石英、蛍石等の各種透明無機材料等も挙げられる。
また、透明基材15と凹凸構造層20とが別の材料から形成される場合には、透明基材15と凹凸構造層20との密着性を向上させ、ひいては耐摩耗性を向上させるためのプライマー層を透明基材15上に形成してもよい。このプライマー層は、透明基材15および凹凸構造層20との双方に密着性を有し、可視光学的に透明であることが好ましい。
プライマー層の材料としては、例えば、フッ素系コーティング剤及びシランカップリング剤等から適宜選択して使用することができる。フッ素系コーティング剤の市販品としては、例えば、フロロテクノロジー製のフロロサーフ FG−5010Z130等が挙げられ、前記シランカップリング剤の市販品としては、例えば、ハーベス製のデュラサーフプライマーDS−PC−3B等が挙げられる。
凹凸構造層20は、微小突起22によって形成された凹凸面21を有している。微小突起22は、平均間隔が200nm以上且つ可視光線帯域の最短波長以下となるように配列される。ここで、微小突起22の「微小」とは、可視光線帯域の最短波長以下の平均間隔dAVGで配列される程度に微小であることを意味している。また、可視光線帯域の最短波長は、透過率異方性部材10が使用される環境下における可視光線帯域の最短波長を指している。したがって、透過率異方性部材10が使用される環境下に制限された光源からの光のみが存在する場合には、当該光源から射出される可視光の最短波長が、ここでいう可視光線帯域の最短波長となり、それ以外の場合には、一般的な可視光線帯域の最短波長として380nmを、ここでいう可視光線帯域の最短波長として採用する。
凹凸構造層20の凹凸面21は、200nm以上且つ可視光線帯域の最短波長以下の平均間隔dAVGで配列された微小突起22によって形成されている。凹凸面21は、微小突起22の平均間隔dAVGが可視光線帯域の最短波長以下であることにより、いわゆるモスアイ構造体として、極めて優れた反射防止機能を有する。ここで、凹凸構造層20の凹凸面21側に設けられる金属薄膜30は、凹凸面21の凹凸に追従した形状を有する薄膜であるため、金属薄膜30によって形成される凹凸面11も、凹凸構造層20の凹凸面21と略同一の構成を有する。その結果、透過率異方性部材10の金属薄膜30により形成される凹凸面11においても、微小突起12の配列に起因して、凹凸構造層20の凹凸面21と同様の反射防止機能を発揮することができる。
また、本発明においては、凹凸構造層20の凹凸面21を形成する微小突起22の平均間隔dAVGが200nm以上であり、微小突起22の間隔の標準偏差が38nm未満であり、微小突起22の高さの標準偏差が30nm未満であることにより、凹凸面21と略同一の構成を有する金属薄膜30により形成される凹凸面11において、優れた透過率異方性が発揮される。
透過率異方性部材10が使用されている環境下に特に制限されることなく種々の波長域の光が存在する場合には、可視光波長帯域の最短波長Λminを380nmに設定することができる。
また、この間隔dに係る隣接する微小突起22は、いわゆる隣り合う微小突起22であり、凹凸構造層20の凹凸面21とは反対側(図1では透明基材15側)の付け根部分である微小突起の裾の部分が接している突起である。凹凸構造層20では微小突起22が密接して配置されることにより、微小突起22間の谷の部位を順次辿るようにして線分を作成すると、平面視において各微小突起を囲む多角形状領域を多数連結してなる網目状の模様が作製されることになる。間隔dに係る隣接する微小突起22は、この網目状の模様を構成する一部の線分を共有する突起である。
また、本発明においては、透過率異方性に優れる点から、dAVG≧200nmである。
(1)すなわち先ず、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて突起の面内配列(突起配列の平面視形状)を検出する。
本発明において、隣接突起間距離の最大値dMAX=dAVG+2σが、上述のdAVGの条件を満足することが、凹凸構造層20に有効な反射防止機能を付与する観点においてより有効であり、且つ、入射光の入射角度に依存する透過率異方性を透過率異方性部材10に付与する観点においてもより有効であることから好ましい。つまり、反射防止機能及び透過率異方性の観点から、好ましい条件は、dMAX≦350nmであり、更に好ましい条件は、dMAX≦300nmである。また、透過率異方性に優れる点から、dMAX≧200nmであることが更に好ましい。
微小突起の高さHの平均値HAVGは、十分な反射防止効果を発現する為には、HAVG≧0.2×λMAX=156nm(λMAX=780nmとして)であることが好ましい。前記微小突起22の高さHは、反射防止効果の観点から、通常50〜350nmの範囲内である。
また、前記微小突起22の高さHの標準偏差σは、反射防止効果の観点から30nm未満である。
Dmin=DAVG―2Σ
として定義する最小隣接突起間距離Dminを以って周期Dの代わりとして設計する。即ち、凹凸構造層20の凹凸面21の残留反射光の散乱効果を十分奏し得る条件は、
Dmin>λMAX
である。通常、D又はDminは1〜200μm、好ましくは10〜100μmとされる。
ここで、六方格子とは、正六角形状の格子のことをいい、準六方格子とは、正六角形状の格子とは異なり、歪んだ正六角形状の格子のことをいう。また、四方格子とは、正四角形状の格子のことをいい、準四方格子とは、正四角形状の格子とは異なり、歪んだ正四角形状の格子のことをいう。
六方格子状に周期的に配列されてなるとは、正六角形状の格子パターンにより周期的に配列されてなることをいい、準六方格子状に周期的に配列されてなるとは、例えば微小突起22の配列方向に引き伸ばされ歪んだ六方格子パターンにより周期的に配列されてなるものが挙げられる。なお、微小突起22の配列は、直線状のみならず、蛇行していてもよい。図4に示すように、隣接する3列の直線状の配列(T1〜T3)間において、a1〜a7の各点に微小突起22の中心が位置するように微小突起22を配置することにより、微小突起22は、六方格子状または準六方格子状に周期的に配列される。
四方格子状に周期的に配列されてなるとは、正四角形状の格子パターンにより周期的に配列されてなることをいい、準四方格子状に周期的に配列されてなるとは、例えば微小突起22の配列方向に引き伸ばされ歪んだ四方格子パターンにより周期的に配列されてなるものが挙げられる。図5に示す凹凸面は、微小突起22が、隣接する3列の直線状の配列(T1〜T3)間において四方格子状または準四方格子状に周期的に配列されている。
本発明において、凹凸構造層20の凹凸面21は、反射特性の観点から、微小突起22の充填率が高いことが好ましく、微小突起22が密接して配置されていることがより好ましい。中でも、微小突起22が密接して配置され、且つ六方格子状に周期的に配列されていることがより好ましい。
凹凸構造層20を形成する方法は、特に限定されないが、成形性に優れ、且つ安定量産ができる点から、賦形により凹凸面21を形成する方法が好ましい。
凹凸構造層20の形成方法としては、例えば以下の方法等が挙げられる。すなわち、まず透明基材15上に凹凸構造層20形成用の樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、所望の凹凸形状を有する凹凸面形成用原版の該凹凸形状を、前記樹脂組成物の塗膜に賦形した後、前記樹脂組成物を硬化させることにより凹凸面21を形成し、前記凹凸面形成用原版を剥離する方法等である。
なお、凹凸面形成用原版の凹凸形状とは、多数の微小孔が形成されたものであり、凹凸面21の形状に対応する形状である。
また、凹凸面形成用原版の凹凸形状を樹脂組成物に賦形し、該樹脂組成物を硬化させる方法は、樹脂組成物の種類等に応じて適宜選択することができる。
前記凹凸面形成用原版の凹凸形状を有する面は、特に限定されないが、酸化されやすく、陽極酸化による加工が容易である点から、アルミニウムからなることが好ましい。
前記凹凸面形成用原版は、具体的には、例えば、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属製の母材の表面に、直接に又は各種の中間層を介して、スパッタリング等により純度の高いアルミニウム層が設けられ、当該アルミニウム層に凹凸形状を形成したものが挙げられる。前記母材は、前記アルミニウム層を設ける前に、電解溶出作用と、砥粒による擦過作用の複合による電解複合研磨法によって母材の表面を超鏡面化しても良い。
前記凹凸面形成用原版に凹凸形状を形成する方法としては、例えば、陽極酸化法によって前記アルミニウム層の表面に複数の微小孔を形成する陽極酸化工程と、前記アルミニウム層をエッチングすることにより前記微小孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、前記アルミニウム層を前記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより前記微小孔の孔径を拡大する第2エッチング工程とを順次繰り返し実施することによって形成することができる。
凹凸面形成用原版に凹凸形状を形成する際には、アルミニウム層の純度(不純物量)や結晶粒径、陽極酸化処理及び/又はエッチング処理の諸条件を適宜調整することによって、所望の形状とすることができる。前記陽極酸化処理において、より具体的には、液温、印加する電圧、陽極酸化に供する時間等の管理により、微小孔をそれぞれ目的とする深さ及び形状に作製することができる。
前記ロール金型としては、例えば、母材として、円筒形状の金属材料を用い、当該母材の周側面に、直接に又は各種の中間層を介して設けられたアルミニウム層に、上述したように、陽極酸化処理、エッチング処理の繰り返しにより、凹凸形状が作製されたものが挙げられる。
次に、金属薄膜30について説明する。上述したように、凹凸面21側に設けられた金属薄膜30は、凹凸面21の凹凸に追従した形状を有する。金属薄膜30の「薄膜」とは、金属薄膜30の表面上に凹凸面21の微小突起22に起因した凹凸が残存し、当該金属薄膜30の凹凸面11によっても反射防止効果が発現される程度に薄膜であることを意味している。
図1に示された金属薄膜30は、或る程度の均一な厚みにて、凹凸面21の凹凸に追従して形成されてなり、当該凹凸面21上に設けられている。このような形態によれば、金属薄膜30によって構成される透過率異方性部材10の凹凸面11は、凹凸構造層20の凹凸面21と同様の形状となり、当該凹凸面11は、凹凸構造層20の凹凸面21によって発現される反射防止効果と同様の作用効果を発揮することができる。すなわち、透過率異方性部材10の凹凸面11は、平均間隔200nm以上且つ可視光線帯域の最短波長以下で配列された微小突起によって形成された凹凸面であることが、透過率異方性及び反射防止性能の観点から好ましい。また、凹凸面11を形成している微小突起の高さも50〜350nmであることが、透過率異方性及び反射防止性能の観点から好ましい。
つまり、金属薄膜30自体の透過率は、少なくとも10%以上、好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上に設定される。
また、金属薄膜30は、凹凸構造層20の凹凸面21を平坦面にして当該平坦面上にスパッタリング法により金属薄膜30を形成したと仮定した場合に、厚さ5〜30nm、好ましくは厚さ5〜20nmの金属薄膜が形成される量のアルミニウム及びアルミニウム合金の少なくとも一種からなる膜であることが好ましい。すなわち、金属薄膜30をなすアルミニウム及びアルミニウム合金の少なくとも一種は、凹凸面21上の領域と平面視において同面積となる平坦面に成膜した場合に、厚さが5〜30nm、好ましくは5〜20nmとなる量であることが好ましい。さらに言い換えると、金属薄膜30は、平面視において同面積となる平坦面に成膜した場合に、5〜30nm、好ましくは5〜20nmとなる厚さの膜が形成される条件でのスパッタリング法にて成膜されたアルミニウム及びアルミニウム合金の少なくとも一種からなる膜であることが好ましい。
金属薄膜30の厚みが前記下限値以上であることにより、本発明の透過率異方性部材10は、透過率異方性に優れたものとなる。また、金属薄膜30の厚みが前記上限値以下であることにより、本発明の透過率異方性部材10は、反射防止機能に優れ、さらに、透過率異方性部材10での映り込みを抑えながら、透過率異方性部材10の正面方向における背面側の像を観察することが可能となり、また、金属薄膜30に起因した金属光沢が低減されるため、透過率異方性部材10の正面方向における背面側の像を、変色させることなく、明瞭に観察することが可能となる。
次に、以上のような構成及び特性を有した本発明に係る透過率異方性部材の用途の一例について説明する。
本発明に係る第一の表示装置は、画像を表示する表示面を有する表示機構と、前記表示機構の前記表示面側に配置された前記本発明に係る透過率異方性部材と、を備えるものである。
図7には、本発明に係る第一の表示装置の一例として、本発明に係る透過率異方性部材10を組み込んだ表示装置50が開示されている。表示装置50は、表示面52を有した表示機構51と、透過率異方性部材10と、を備える。透過率異方性部材10は、表示機構51の表示面52側に表示面52を覆うように配置されている。表示機構51としては、液晶表示パネル、エレクトロルミネッセンス表示パネル、プラズマディスプレイパネル等の既知の表示機構を用いることができる。
例えば、表示装置50が、携帯電話等の携帯端末用表示装置である場合には、表示機構51の表示面52に表示される画像を、表示面52の法線方向に位置する使用者のみが明瞭に観察することができ、広角度から表示面52を覗き込む者が表示面52に表示された画像を観察することを防止することができる。すなわち、透過率異方性部材10は、表示機構51の視野角を制御する視野角制御シートとして機能する。
本発明に係る第二の表示装置は、前記本発明に係る透過率異方性部材と、前記透過率異方性部材に画像光を投射する画像光源と、を備え、前記画像光源が、前記透過率異方性部材の法線方向に対して傾斜した方向から当該透過率異方性部材に前記画像光を投射するものである。
図8には、本発明に係る第二の表示装置の一例として、本発明に係る透過率異方性部材10と、当該透過率異方性部材10に画像光を投射する画像光源61とを備えた表示装置60が開示されている。上述したように、透過率異方性部材10は、正面方向(法線方向nd)に対して大きく傾斜した方向から入射する光を、高い反射率で選択的に反射することができる。したがって、画像光源61からの画像光が透過率異方性部材10にて高い反射率で反射するように配置された画像光源61および透過率異方性部材10によって、特定の角度域からのみ画像を明瞭に観察することができる表示装置60を構成することができる。
ここで説明した透過率異方性部材10は、上記の用途に限定されることなく、その他の種々の用途に利用され得る。透過率異方性部材10は、視野角制御フィルムとして好適に用いられ、表示用途以外にも各種プライバシーフィルムとして好適に用いられる。更に、例えば、透過率異方性部材10を備えた部分において選択的に光が反射されるガラス装飾フィルム、マーキングフィルム等として透過率異方性部材10を使用することができる。
上述した実施の形態において、透過率異方性部材10が、一方の面側のみに、凹凸構造層20の凹凸面21を有し且つ当該凹凸面21側に金属薄膜30が形成されている例を示したが、本発明はこれに限らず、一方の面側および他方の面側の両側に凹凸構造層20の凹凸面21を有し、且つ、両方の凹凸面21に金属薄膜30が形成されていてもよい。
或いは、本発明の透過率異方性部材10は、一方の面側および他方の面側の両側に凹凸構造層20の凹凸面21を有し、且つ、片方の凹凸面21のみに金属薄膜30が形成されていてもよい。
[実施例1]
(凹凸面形成用原版の準備)
まず、ガラスロール原版を準備し、希釈レジストをディップによりガラスロール原版の円柱面上に厚さ130nm程度に塗布することにより、レジストを着膜した。次に、記録媒体としてのガラス原版を、ロール原版露光装置に搬送し、レジストを0.5mJ/m2のレーザー光で照射することにより、六方格子パターンをなす潜像をレジストにパターニングした。
次に、ガラスロール原版上のレジストに現像処理を施して、露光した部分のレジストを溶解させて現像を行い、レジスト層が六方格子パターンに開口しているレジストガラス原版を得た。
次に、ロールプラズマエッチングを用い、CHF3ガス雰囲気中でのプラズマエッチングを行った。これにより、ガラスロール原版の表面において、レジスト層から露出している六方格子パターンの部分のみエッチングが進行し、その他の領域はフォトレジストがマスクとなりエッチングはされず、楕円錐形状の凹部が得られた。このときのパターンでのエッチング量(深さ)はエッチング回数によって変化させた。最後に、O2アッシングにより完全にフォトレジストを除去することにより、実施例1の凹凸面形成用原版を得た。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)20重量部、アロニックスM―260(商品名;東亜合成社製)70重量部、ヒドロキシエチルアクリレート10重量部、及び、光開始剤としてルシリン(商品名;TPO社製)3重量部を酢酸エチル200重量部に溶解させ、凹凸構造層形成用の活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化型樹脂組成物)を得た。
得られた紫外線硬化型樹脂組成物を、上記凹凸面形成用原版の表面を覆うようにして、厚さ20μmとなるように塗布、充填し、その上に透明基材15として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、品番:T80SZ)を斜めから貼り合わせた後、貼り合わせられた貼合体をゴムローラーで10N/cm2の加重で圧着した。凹凸面形成用原版全体に均一な組成物が塗布されたことを確認し、フィルム側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させて凹凸構造層20を透明基材15上に作製した。その後、紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物としての凹凸構造層20を透明基材15とともに、凹凸面形成用原版より剥離した。凹凸構造層20の凹凸面21は、微小突起22の平均間隔dAVGが350nm(標準偏差σ20nm)であり、平均高さHAVGが300nm(標準偏差σ20nm)であり、微小突起22は、密接して配置され、且つ六方格子状に周期的に配列されてなるものであった。
次いで、凹凸構造層20の凹凸面21上に、スパッタリング法により、アルミニウムを成膜し、金属薄膜30を形成することにより、実施例1の透過率異方性部材10を作製した。なお、金属薄膜30の形成に用いたアルミニウムの量は、前記凹凸構造層20の前記凹凸面21上の領域と平面視において同面積となる平坦面に成膜した場合に、厚さ10nmの金属薄膜が形成される量とした。
実施例1で得られた透過率異方性部材10において、金属薄膜30側の表面に対し、法線方向からの傾斜角度が5°から75°までの5°きざみの入射角度で可視光を入射させた場合における透過率を測定した。測定結果を図9に示す。なお、透過率の測定は日本分光製のV−600(絶対反射率測定システム)を用いて行った。
凹凸面形成用原版として、以下の手順により作製したものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の透過率異方性部材10を作製した。実施例2で得られた透過率異方性部材10は、凹凸構造層20の凹凸面21を形成する微小突起22の平均間隔dAVGが250nm(標準偏差σ20nm)であり、平均高さHAVGが280nm(標準偏差σ20nm)であり、微小突起22は、密接して配置され、且つ六方格子状に周期的に配列されてなるものであった。
実施例1の凹凸面形成用原版の作製において、六方格子パターンをなす潜像をレジストにパターニングする際の、ガラスロール原版の回転数及びロール軸方向の走査、並びに、プラズマエッチングの回数を調整することにより、実施例2の凹凸面形成用原版を得た。
凹凸面形成用原版として、以下の手順により作製したものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の透過率異方性部材10を作製した。実施例3で得られた透過率異方性部材10は、凹凸構造層20の凹凸面21を形成する微小突起22の平均間隔dAVGが200nm(標準偏差σ30nm)であり、平均高さHAVGが250nm(標準偏差σ25nm)であり、微小突起22は、不規則に配列されてなるものであった。
純度99.50%の圧延されたアルミニウム板を、小さいうねりとして表面粗さRzが30nm、大きいうねりが1μmとなるように研磨した後、0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、印加電圧80V、20℃の条件にて120秒間、陽極酸化を実施した。次に、第一エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第二エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径処理を行った。さらに、上記処理を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム基板上に陽極酸化アルミニウム膜が形成された。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、実施例3の凹凸面形成用原版を得た。
凹凸面形成用原版の作製において、印加電圧を55Vとし、陽極酸化、第一エッチング処理及び第二エッチング処理の追加実施の回数を5回としたこと以外は、実施例3と同様にして、比較例1の部材を作製した。比較例1で得られた部材は、凹凸構造層20の凹凸面21を形成する微小突起22の平均間隔dAVGが180nm(標準偏差σ30nm)であり、平均高さHAVGが200nm(標準偏差σ30nm)であり、微小突起22は、不規則に配列されてなるものであった。
凹凸面形成用原版の作製において、印加電圧を45Vとし、陽極酸化、第一エッチング処理及び第二エッチング処理の追加実施の回数を5回としたこと以外は、実施例3と同様にして、比較例2の部材を作製した。比較例2で得られた部材は、凹凸構造層20の凹凸面21を形成する微小突起22の平均間隔dAVGが100nm(標準偏差σ30nm)であり、平均高さHAVGが180nm(標準偏差σ30nm)であり、微小突起22は、不規則に配列されてなるものであった。
スパッタ装置SX−200を用いて作製した従来のハーフミラーを、比較例3の部材とした。比較例3の部材(ハーフミラー)は、平坦な表面に、厚さ10nmの金属薄膜を有するものであった。
各実施例及び各比較例で得られた部材について、下記の評価を行った。評価結果をそれぞれ表1に示す。
各実施例及び各比較例で得られた部材を、金属薄膜側が表面となるようにして、文字が表示された表示装置の表示面上に配置した。次いで、部材の法線方向に対し60°の傾斜角の方向から、表示面を目視で観察し、以下の評価基準により、覗き見防止効果を評価した。評価結果を表1に示す。
◎:表示面上の部材が白濁するまたは干渉色が見えることにより、表示面の文字を全く判読できない。
○:表示面上の部材が白濁するまたは干渉色が見えることにより、表示面の文字をほとんど判読できない。
△:表示面上の部材がほとんど白濁せずまたは干渉色が見えず、表示面の文字を判読できる。
×:表示面上の部材が白濁せずまたは干渉色が見えず、表示面の文字を良好に判読できる。
各実施例及び各比較例で得られた部材において、金属薄膜側の面に対し、法線方向から可視光を入射させた場合における透過率と、法線方向に対して60°の入射角度で可視光を入射させた場合における透過率をそれぞれ測定し、以下の評価基準に基づいて、透過率異方性及び正面からの視認性について評価した。評価結果を表1に示す。なお、透過率の測定は村上色彩製のHM−150を用いて行った。
(法線方向における透過率(%))−(60°の入射角度における透過率(%))の値が、50%以上のものを○とし、20%以上且つ50%未満のものを△とし、20%未満のものを×と評価した。
法線方向における透過率が、90%以上のものを○とし、90%未満のものを×と評価した。
実施例1〜3で得られた透過率異方性部材10は、凹凸構造層20の凹凸面21を形成する微小突起22が、平均間隔が200nm以上且つ可視光線帯域の最短波長以下となるように配列され、微小突起22の間隔の標準偏差が38nm未満であり、微小突起22の高さの標準偏差が30nm未満であり、凹凸面21の凹凸に追従した形状を有する可視光透過性の金属薄膜30が形成されてなるものであることから、覗き見防止効果に優れ、透過率異方性及び正面からの視認性にも優れていた。
中でも、実施例1及び2が特に覗き見防止効果に優れていたのは、凹凸面21を形成する微小突起22の間隔及び高さの標準偏差が小さく、均一な凹凸形状であることに起因すると考えられる。
また、図9から明らかなように、実施例1で得られた透過率異方性部材10においては、入射角度(入射光の進行方向が透過率異方性部材のフィルム面の法線方向に対してなす角度)が大きくなるにつれて、透過率が低下した。また、可視光線帯域内の異なる波長において、光の透過率の差が小さく、この傾向は、入射角が小さい程強く現れた。このように、本発明の透過率異方性部材は、可視光域内での透過率のスペクトル分布におけるバラツキが少なくなることが判明した。このような作用効果は、従来の技術水準から予測される範囲を超えた顕著なものであると言える。
一方、比較例1及び比較例2で得られた部材は、凹凸面を形成する微小突起の平均間隔が小さすぎたため、覗き見防止効果及び透過率異方性に劣っていた。
比較例3の部材は、背景技術で説明した従来のハーフミラーであり、凹凸面を有しないため、透過率異方性及び正面からの視認性に劣っていた。また、比較例3の覗き見防止効果の評価においては、金属薄膜側の表面が鏡面化されていたことにより、表示面の文字が判読できなかった。また、図10に示すように、比較例3の従来のハーフミラーでは、長波長域の光の透過率が、短波長域の光の透過率に対して10〜20%程度も低下した。なお、比較例3のハーフミラーにおいては、金属薄膜が積層される透光性樹脂フィルムに紫外線吸収剤が添加されていたため、この紫外線吸収剤に起因して、図10に示された結果では、420nm以下の短波長側での透過率が低下したと考えられる。透光性樹脂フィルムに紫外線吸収剤が添加されていない場合には、波長が長くなるにつれて透過率が低下するといった現象がより強く現れると推定される。
11 金属薄膜により形成される凹凸面
12 微小突起
15 透明基材
20 凹凸構造層
20’ 受容層
21 凹凸構造層の凹凸面
22 微小突起
23 頂部
30 金属薄膜
41 ダイ
42 ロール金型
43 押圧ローラ
44 剥離ローラ
50 表示装置
51 表示機構
52 表示面
60 表示装置
61 画像光源
Claims (11)
- 平均間隔が200nm以上且つ可視光線帯域の最短波長以下となるように配列された微小突起によって形成された凹凸面を有し、前記微小突起の間隔の標準偏差が38nm未満であり、前記微小突起の高さの標準偏差が30nm未満である凹凸構造層と、
前記凹凸構造層の前記凹凸面側に設けられ、当該凹凸面の凹凸に追従した形状を有する可視光透過性の金属薄膜と、を備える透過率異方性部材。 - 前記微小突起の間隔の標準偏差が20nm以下であり、前記微小突起の高さの標準偏差が20nm以下である、請求項1に記載の透過率異方性部材。
- 前記金属薄膜は、スパッタリング法により形成されたアルミニウム及びアルミニウム合金の少なくとも一種からなる、請求項1又は2に記載の透過率異方性部材。
- 前記金属薄膜は、前記凹凸構造層の前記凹凸面を平坦面にして、当該平坦面にスパッタリング法により金属薄膜を形成したと仮定した場合に、厚さ5〜30nmの金属薄膜が形成される量のアルミニウム及びアルミニウム合金の少なくとも一種からなる、請求項3に記載の透過率異方性部材。
- 前記凹凸構造層の凹凸面を形成する前記微小突起が、六方格子状、準六方格子状、四方格子状又は準四方格子状に周期的に配列されてなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の透過率異方性部材。
- 画像を表示する表示面を有する表示機構と、
前記表示機構の前記表示面側に配置された前記請求項1〜5のいずれか一項に記載の透過率異方性部材と、を備える、表示装置。 - 前記請求項1〜5のいずれか一項に記載の透過率異方性部材と、
前記透過率異方性部材に画像光を投射する画像光源と、を備え、
前記画像光源は、前記透過率異方性部材の法線方向に対して傾斜した方向から当該透過率異方性部材に前記画像光を投射する、表示装置。 - 平均間隔が200nm以上且つ可視光線帯域の最短波長以下となるように配列された微小突起によって形成された凹凸面を有し、前記微小突起の間隔の標準偏差が38nm未満であり、前記微小突起の高さの標準偏差が30nm未満である凹凸構造層を形成する工程と、
前記凹凸構造層の前記凹凸面側に、当該凹凸面の凹凸に追従して、可視光透過性の金属薄膜を形成する工程と、を有する透過率異方性部材の製造方法。 - 前記微小突起の間隔の標準偏差が20nm以下であり、前記微小突起の高さの標準偏差が20nm以下である前記凹凸構造層を形成する、請求項8に記載の透過率異方性部材の製造方法。
- 前記金属薄膜は、スパッタリング法を用い手、アルミニウム及びアルミニウム合金の少なくとも一種から形成される、請求項8又は9に記載の透過率異方性部材の製造方法。
- 前記金属薄膜は、前記凹凸構造層の前記凹凸面を平坦面にして、当該平坦面にスパッタリング法により金属薄膜を形成したと仮定した場合に、厚さ5〜30nmの金属薄膜が形成される量のアルミニウム及びアルミニウム合金の少なくとも一種から形成される、請求項10に記載の透過率異方性部材の製造方法。
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