以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、本明細書において、「シート」、「板」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「シート」は、板やフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念であり、呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、「シート面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状(板状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において、対象となるシート状部材(板状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。本実施の形態においては、積層材のシート面、積層材に含まれる透明支持体のシート面、後述する透明支持体の凹凸構造層のシート面、および、後述する積層材の透明基材のシート面は、互いに平行となっている。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
<<積層材>>
図1に示すように、積層材10は、透明支持体20と、透明支持体20上に設けられた金属層15と、を備えている。この積層材10において、透明支持体20の少なくとも金属層15で覆われている面は、一方向(図1において紙面に対して垂直な方向)に延在する単位凸条32uからなる微細凸条群32により形成された凹凸面31となっている。微細凸条群32の隣接する単位凸条32uの間隔dは、可視光線帯域の最短波長以下である。
このような積層材10を金属層15の側から観察した場合、金属層15は、その構成材料に依存した金属色で観察される。その一方で、積層材10を透明支持体20の側から観察した場合、金属層15の構成材料に依存することなく金属層15は黒色に観察される。すなわち、金属層15と透明支持体20との界面の状態を工夫することによって、透明支持体20越しに観察される金属層15は、その構成材料とは無関係に、黒色を呈するようになる。金属層15の支持体として凹凸面31を有する透明支持体20を用いることにより、この透明支持体20越しに観察される金属層15が、黒化処理を施すことなく黒色に観察されるようになることは、技術水準から予測される範囲を超えた顕著な効果と言える。
以下、積層材10の構成要素である透明支持体20及び金属層15について順に説明していく。
なお、本明細書において、「透明」とは、可視光透過率が70%以上、好ましくは90%以上であることを意味している。また、本明細書で言及する可視光透過率(以下、単に「透過率」とも呼称する)は、測定対象となる部位をなすようになる材料を東洋紡績製PETフィルム(品番:コスモシャインA4300、厚さ100μm)の上に膜厚1μmで成膜し、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JIS K0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
<<透明支持体>>
透明支持体20は、基材として機能する透明基材25と、透明基材25上に設けられた透明な凹凸構造層30と、を有している。凹凸構造層30の凹凸面31は、一方向に延在する単位凸条32uからなる微細凸条群32により形成されており、微小突起が密接して配置されてなるいわゆるモスアイ構造に類似の効果が得られながら、モスアイ構造に比べて耐久性に優れている。
<透明基材>
透明基材25としては、既知の透明基材を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。透明基材25に用いられる材料としては、例えば、透明樹脂や透明無機材料を例示することができる。透明樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等のオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。一方、透明無機材料としては、例えば、ソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、PLZT等のセラミックス、石英、蛍石等を挙げることができる。
透明基材25の厚みは、積層材10の用途に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、通常20μm〜5000μmである。透明基材25は、ロールの形で供給されるもの、巻き取れるほどには曲がらないが負荷をかけることによって湾曲するもの、完全に曲がらないもの、のいずれであってもよい。
透明基材25の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有していてもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。また、透明基材25が凹凸構造層30とは別の材料から形成される場合には、透明基材25と凹凸構造層30との密着性を向上させ、ひいては耐摩耗性を向上させるためのプライマー層を透明基材25上に形成してもよい。このプライマー層は、透明基材25及び凹凸構造層30の双方に密着性を有し、透明であることが好ましい。プライマー層の材料としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、及びシランカップリング剤等から適宜選択して使用することができる。前記シランカップリング剤の市販品としては、例えば、ハーベス製のデュラサーフプライマーDS−PC−3B等が挙げられる。
<凹凸構造層>
次に、凹凸構造層30について説明する。図1及び図3に示すように、凹凸構造層30は、一方向に延在する単位凸条32uからなる微細凸条群32により形成された凹凸面31を有しており、微細凸条群32の隣接する単位凸条32u間の間隔dは、可視光線帯域の最短波長以下である。なお、凹凸構造層30及び透明支持体25のシート面は、図1においては、XY平面あるいはこれと平行な面となる。これにより、透明支持体20は、凹凸構造層30の凹凸面31において、極めて優れた反射防止機能を発揮することができる。すなわち、金属層15が未形成の状態であって透明支持体20の一方の面上に凹凸面31が形成された構造のみの状態においては、凹凸面31と空気との界面での光反射が極めて少なく、通常、法線方向入射光の場合で可視光線反射率(以下、単に「反射率」とも呼称する)が1%未満である。そのため、凹凸面31に入射する可視光線はほどんど全て透過し、透明支持体20を観察した場合、凹凸面31および凹凸面31の反対側面のいずれの側から見ても透明に見える。そして、透明支持体20自体が無色透明の場合は、いずれの側から観察しても無色透明に見える。かかる微細凸条群32により形成された凹凸面31自体は、特許第4197100号公報等で公知である。ただし、後述のように、本発明においては微細凸条群32により形成された凹凸面31を用いてそれ自体固有の反射防止性かつ高透明性の効果を奏するものでは無く、微細凸条群32により形成された凹凸面31上に可視光線を透過せずに反射し得る厚みの金属層15を被覆して、可視光線を遮断し、透明支持体20側から見た場合に黒色を呈し、金属層15の側から見た場合に金属光沢(高光反射性)を呈するという従来公知の微細凸条群32により形成された凹凸面31からは予想外の効果を奏するのである。
なお、微細凸条群32の「微細」とは、微細凸条群32を構成する単位凸条32uが可視光線帯域の最短波長以下の間隔dで配列される程度に微細であることを意味する。また、可視光線帯域の最短波長は、透明支持体20を含む積層材10が使用される環境下においてこれに入射する可視光線帯域の最短波長を指している。したがって、積層材10が使用される環境下に波長帯域が制限された特定スペクトルを持つ光源からの光のみが存在する場合には、当該光源から放射される可視光スペクトルの最短波長が、ここでいう可視光線帯域の最短波長となり、それ以外の場合には、一般的な可視光線帯域の最短波長として380nmを、ここでいう可視光線帯域の最短波長として採用する。
また、微細凸条群32の単位凸条32uは、一方向に延在している限り、図3に示すように、その稜線が平面視において直線形状を有していることに限定されず、例えばその稜線が平面視において2つの端点を有する正弦曲線等の開曲線形状を有していてもよい。本明細書において「一方向に延在する」とは、隣接する単位凸条32uの間隔dが一定であることをいい、例えば単位凸条32uの稜線が平面視において開曲線形状を有している場合には、隣接する2つの単位凸条32uのうち一方の稜線が他方の稜線上の各点から各単位凸条32uの配列方向に一定の距離に位置していることをいう。また、本明細書において、XY平面を仮定して「一方向」をY軸に平行な方向とした場合に、「一方向に延在する」とは、端点の(x,y)座標に比べて、x値は増減しても良いが、y値は漸次増加するように延びるように存在していることをいう。すなわち、単位凸条32uの稜線は、Y軸方向において戻る方向成分、すなわちy値が減少する方向成分を有していない限り、蛇行曲線等の開曲線形状を有していてもよい。
単位凸条32uの延在方向に対して直交する面で切断した(あるいは切断したと仮定した)場合の断面形状(以下、これを主切断面形状と呼称する)は、Z軸方向に向かって線幅が連続的に狭くなっていく形状であれば、図1に示すような放物線状に限定されず、例えば、台形状、三角形状、五角形状、釣鐘状、半円状、半楕円状、双曲線状であってもよい。また、単位凸条32uの主切断面形状は、図1に示すような各単位凸条32uの頂点を通るZ軸に対して対象な構造に限定されず、非対称な構造であってもよい。例えば、各単位凸条32uの頂点を通るZ軸に対して一方側は三角形状であるが他方側は四角形状であってもよいし、各単位凸条32uの頂点を通るZ軸に対して一方側は三角形状であるが他側は半楕円状であってもよい。単位凸条32uの延在方向に対する主切断面形状がZ軸方向に向かって線幅が連続的に狭くなっていく形状を有していることで、凹凸面31における屈折率はZ軸方向(厚み方向)に沿って連続的に変化し、これにより、凹凸面31に極めて優れた反射防止性が付与される。
このように、一方向に延在する単位凸条32uからなる微細凸条群32により形成され、当該微細凸条群32の隣接する単位凸条32u同士の間隔が可視光線帯域の最短波長以下の間隔dである、という凹凸面31は、極めて優れた反射防止機能を発揮し、透明支持体20は、金属層15が無い場合において非常に高い透過率を示すようになる。具体的には、金属層15が無い場合における凹凸構造層30の可視光透過率、あるいは、凹凸構造層30及び透明基材25を含む積層材10の可視光透過率は、80%以上となっていることが好ましく、90%以上となっていることがより好ましい。また、凹凸構造層30の凹凸面31上での5°正反射による反射率が、0%以上0.3%以下となっていることが好ましく、0.1%以下となっていることがより好ましい。そして、以下に説明するようにして凹凸構造層30を形成すれば、このような特性を実現することができる。なお、本明細書で言及する正反射の反射率は、島津製作所製の分光光度計UV−3100PCを用いてJIS Z8722に準拠して測定された値とする。
凹凸構造層30は、樹脂を含有してなる層とすることができ、更に、樹脂組成物の硬化物からなる層とすることができる。凹凸構造層30の形成に用いられる樹脂組成物は、少なくとも樹脂を含み、必要に応じて重合開始剤等その他の成分を含有する。凹凸構造層30と透明基材25との界面における反射を抑制する観点から、凹凸構造層30と透明基材25との屈折率差が0.14以下となっていることが好ましく、0.05以下となっていることがより好ましい。凹凸構造層30の形成に用いられる樹脂としては、特に限定されない。例えば、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系等の電離放射線硬化性樹脂、アクリレート系、ウレタン系、エポキシ系、ポリシロキサン系等の熱硬化性樹脂、アクリレート系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の熱可塑性樹脂等の各種材料及び各種硬化形態の賦型用樹脂を、凹凸構造層30の形成に用いることができる。
凹凸構造層30の形成に用いられる樹脂としては、微細凸条群32の成形性及び機械的強度に優れる点から、電離放射線硬化性樹脂が好ましい。電離放射線硬化性樹脂とは、分子中にラジカル重合性及び/またはカチオン重合性結合を有する単量体、プレポリマー、あるいはポリマーから選択した1種以上と、必要に応じて、他の反応性重合体を適宜混合したものであり、電離放射線照射によって、架橋、付加重合等の反応により硬化されるものである。ラジカル重合性単量体としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ラジカル重合性プレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレートプレポリマー、ポリエステル(メタ)アクリレートプレポリマー等が挙げられる。ここで「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタアクリレートの各々を表す。カチオン重合性プレポリマーとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂等が挙げられる。電離放射線として紫外線または可視光線を用いる場合は、光重合開始剤を0.1質量%〜5質量%程度添加する。重合開始剤としては、ラジカル重合性の電離放射線硬化性樹脂の場合は、アセトフェノン、チオキサントン等が、カチオン重合性の電離線放射硬化性樹脂の場合は、芳香族ジアゾニウム塩、メタロセン化合物等が挙げられる。なお、非反応性重合体を含有してもよい。なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマ線、X線、電子線等が挙げられる。
樹脂組成物は、更に必要に応じて、界面活性剤、重合開始剤、離型剤、光増感剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、粘度調整剤、密着性向上剤等を含有することもできる。
樹脂組成物の硬化物は、25℃における貯蔵弾性率(E’)が300MPa以下であり、且つ、25℃における貯蔵弾性率(E’)に対する損失弾性率(E”)の比(tanδ(=E”/E’))が0.2以下であることが、防汚性、耐久性の点で好ましい。
貯蔵弾性率(E’)を300MPa以下とすることにより、拭い取り時の圧力によって凹凸面31をなす微細凸条群32が可逆的に変形し、隣接単位凸条32u同士が密接して両者間の間隙が減少して凹凸間の隙間に入り込んだ汚れを搾り出して、乾拭きにより除去することが可能となる。中でも、貯蔵弾性率(E’)が1MPa〜250MPaであることが好ましく、1MPa〜100MPaであることがより好ましい。
また、損失正接(tanδ(=E”/E’))を0.2以下とすることにより、拭い取り時に変形した凹凸面31の微細凸条群32が弾性復元されて元の形状に戻りやすい。これにより、凸部の塑性変形や凸部の先端同士の付着が抑制され、凹凸面31をなす微細凸条群32が有する機能を低下することなく、乾拭きにより汚れを拭き取ることが可能になる。中でも、tanδが0.18以下であることが好ましい。
本明細書において、貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E”)は、JIS K7244に準拠して、以下の方法により測定される。すなわち、まず、凹凸構造層形成用の樹脂組成物を、水銀燈を用いて2000mJ/cm2のエネルギーの紫外線を1分以上照射することにより十分に硬化させて、透明基材25及び凹凸面31を有しない、厚さ1mm、幅5mm、長さ30mmの単膜を形成する。次いで、25℃の環境下において形成された単膜の長さ方向に10Hzで25gの周期的外力を加え、動的粘弾性を測定することにより、25℃における貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E”)が求められる。測定装置としては、例えば、UBM性 Rheogel E400を用いることができる。
次に、凹凸構造層30の寸法について説明する。微細凸条群32により形成された凹凸面31による反射防止機能は、微細凸条群32により形成された凹凸面31とこれに隣接する媒質との界面における有効屈折率を、厚み方向に連続的に変化させて反射防止を図るものである。このため、凹凸構造層30の凹凸面31は、凹凸構造層30のシート面に沿って可視光線帯域の最短波長以下の間隔dで配列された単位凸条32uからなる微細凸条群32によって形成されている。ここで、この間隔dに係る隣接する単位凸条32uとは、いわゆる隣り合う単位凸条32uであり、透明基材25側の付け根部分(谷底分34)である単位凸条32uの裾の部分が接している2つの凸条である。凹凸構造層30では、単位凸条32uが密接して配置されることにより、単位凸条32u間の谷底の部位を辿るようにして直線または曲線を作成すると、平面視において一方向に延びる縞状の模様が作成されることになる。間隔dに係る隣接する単位凸条32uは、この縞状の模様を構成する1つの直線または曲線を共有する凸条である。また、間隔dは、図3に示すように、透明支持体20のシート面に沿った、隣接する2つの単位凸条32uの頂部33間の距離とすることができる。
凹凸構造層30に対して優れた反射防止機能を付与する観点からは、凹凸構造層30の凹凸面31をなす微細凸条群32が次のように形成されていることが好ましい。すなわち、まず、微細凸条群32の単位凸条32uは、積層材10のシート面に沿って、50nm以上380nm以下の間隔dで設けられていることが好ましく、100nm以上250nm以下の間隔dで設けられていることがより好ましい。また、積層材10のシート面への法線方向ndに沿った単位凸条32uの高さHは、50nm以上760nm以下となっていることが好ましく、100nm以上400nm以下となっていることがより好ましい。
また、凹凸構造層30の凹凸面31上における反射防止性能は、微細凸条群32の単位凸条32uのアスペクト比からも大きな影響を受ける。アスペクト比は、単位凸条32uの幅に対する単位凸条32uの高さHの比である。ただし、図1及び図3のように隣接する単位凸条32u同士がその谷底部34(透明基材25側に最接近する部分)間に間隙を介すること無く接している場合には、凹凸構造層30において、単位凸条32uの幅は単位凸条32u間の間隔dと置き換えて取り扱うことが可能であり、したがって、アスペクト比は、単位凸条32u間の間隔dに対する単位凸条32uの高さHの比(H/d)として取り扱うことができる。凹凸構造層30に対して上記の優れた反射防止機能を付与する観点から、単位凸条32uのアスペクト比は、0.5以上3以下となっていることが好ましく、1以上2以下となっていることがより好ましい。
凹凸構造層30の厚みは、特に限定されないが、当然、単位凸条32uの高さH以上となる。一例として2μm〜300μmとすることができる。なお、この場合の凹凸構造層30の厚みとは、図1に示すように、凹凸構造層30の透明基材25側の界面(谷底部34の包絡面)から、当該凹凸構造層30の凹凸面31をなす微細凸条群32の単位凸条32uの頂部33までの凹凸構造層30のシート面への法線方向ndに沿った高さt1を意味する。
なお、凹凸構造層30の凹凸面31及び単位凸条32uに関する各種寸法及び形状は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)または走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)を用いて、特定することができる。ただし、凹凸構造層30の各寸法は、対象となる凹凸構造層30の全領域を調べてその平均値を算出して特定する必要はなく、実際的には、調査すべき対象(単位凸条32uの間隔dや単位凸条32uの高さH等)の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画内において、調査すべき対象のばらつきの程度を考慮して適当と考えられる数を調べてその平均値を算出することによって特定することができる。例えば、直前で説明した値を目標として紫外線硬化性樹脂を賦型することによって作製された紫外線硬化性樹脂の硬化物からなる凹凸構造層30においては、30mm×30mmの領域内に含まれる30箇所を電子顕微鏡により測定して平均を算出することにより、単位凸条32uに関する各寸法、例えば単位凸条32uの間隔dや単位凸条32uの高さH等を、特定することができる。
単位凸条32uが完全に一定周期で配列している場合には、単位凸条32u間の間隔dはその配列周期と一致する。なお、凹凸面31をなす微細凸条群32の単位凸条32uの配列に関して、積層材10を他の部材と重ねた際に干渉模様の発生を防止する観点から、隣接する単位凸条32uの間隔dは周期的では無く、不規則的であることが好ましい。
次に、図4乃至図6を参照して、凹凸構造層30の製造方法の一例を説明する。本実施の形態では、凹凸構造層30の製造方法は、(1)バイト22による切削により、円柱状母材21の外周面に、円周方向に沿って並列した複数の溝を順次形成することにより、賦型用ロール金型23を製造する工程と、(2)賦型用ロール金型23を使用した賦型処理により、凹凸構造層30の凹凸面31をなす微細凸条群32を形成する工程と、を有している。
賦型用ロール金型23を製造する工程を説明する。まず、図4に示すように、円柱状母材21を準備する。円柱状母材21としては、繰り返し使用した際に変形及び摩耗し難いものであれば、特に限定されるものではなく、金属製であってもよく、樹脂製であってもよいが、通常、金属製が好適に用いられる。金属製のものは、耐変形性及び耐摩耗性に優れているからである。
金属製の円柱状母材21の材質としては、ニッケル、クロム、ステンレス、鉄、アルミ、銅、もしくはそれらの合金を用いることができる。再使用しやすいように金属製の円柱状母材21の表面に前記材質による金属めっきを施した円柱状母材を用いてもよい。円柱状母材21としては、中実、あるいは中空すなわち円筒状のいずれであってもよいが、軽量化のため、円筒状とすることが好ましい。また、初めに、切削工程により円柱状母材21の外周面を平滑化する工程を有していても良い。この場合、円柱状母材21を回転させながら、平滑用のバイトの刃先を円柱状母材21の外周面に対して加圧押圧し、押圧状態を維持しながらバイトを円柱状母材21の回転軸方向に移動させることにより、円柱状母材21の外周面を平滑化する。必要に応じてバフ研磨や電界研磨等の研磨工程を追加してもよい。また、転写する際に円柱状母材21から樹脂が剥離しやすいように、円柱状母材21表面に剥離シリコーン、フッ素系樹脂もしくはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)などのコーティング、蒸着、もしくはそれらを組み合わせた離型処理を行ってもよい。
続いて、微細溝作成用のバイト22を用いて、円柱状母材21の外周面に、円周方向に沿って並列した複数の凹溝を順次形成する。ここで、微細溝作成用のバイト22の刃先の形状は、適宜、形成すべき微細凸条群32の形状に対応する形状とする。例えば、図1のような放物線状の主切断面形状を有する単位凸条32uからなる微細凸条群32を形成する場合には、バイト22の刃先を図5に示すような単位凸条32uの主切断面形状と相補的な放物線状とする。なお、微細溝作成用のバイト22の作製は、従来公知の方法を適宜選択して、製造すべき微細凸条群32の形状に対応する形状となるように行えばよい。
円柱状母材21を回転させながら、微細溝作成用のバイト22の刃先を外周面に押圧して切削する。次いで、矢印Aにより示すように円柱状母材21の回転軸方向に、バイト22の刃先幅のピッチだけ間欠送りして移動させる。切削と間欠送りの移動とを交互に繰り返すことにより、円周方向に沿って並列した複数の円環状の凹溝を順次形成する。斯かる切削加工は公知の旋盤加工に準じて行う。バイト22の刃先幅としては、例えば、20μm〜100μm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。以上のようにして、賦型用ロール金型23を製造することができる。賦型用ロール金型23表面の微細溝を切削加工に形成することで、複数の凹溝の形状のばらつきを制御することが容易である。
次に、賦型用ロール金型23を使用した賦型処理により凹凸構造層30の凹凸面31を形成する工程について説明する。例えば、まず透明基材25上に、凹凸構造層形成用の流動状態の樹脂組成物を塗布して受容層1’を形成し、当該受容層1’の表面と、所望の微細凸条群32の形状に対応する微細溝形状を有する賦型用ロール金型23の表面と、を接触させて配置し、圧力をかけることによって受容層1’の金型23側表面に微細凸条群32を形成した後、適宜、当該受容層1’の樹脂組成物を硬化させることにより凹凸構造層30を形成し、その後賦型用ロール金型23を剥離する、という方法等が挙げられる。樹脂組成物を硬化させる方法は、当該樹脂組成物の種類等に応じて適宜選択することができる。
図6に、凹凸構造層形成用の樹脂組成物として電離放射線硬化性樹脂を用いるともに、前記した工程により製造された賦型用ロール金型23を用いて、透明基材25上に凹凸構造層30を形成する方法の一例を示す。
図6に示す方法では、樹脂供給工程において、図中の矢印方向に走行する帯状フィルム形態の透明基材25に、未硬化で液状の電離放射線硬化性樹脂を、ダイ11により塗布し、受容層1’を形成する。なお、電離放射線硬化性樹脂の塗布については、ダイ11による場合に限らず、ロールコート、バーコート等の各種の手法を適用することができる。続いて、押圧ローラ12により、微細凸条群形成用原版である賦型用ロール金型23の周側面に透明基材25を加圧押圧し、これにより、透明基材25に受容層1’を密着させるとともに、図中の矢印方向に回転する賦型用ロール金型23の周側面に作製された微細凸条群32に対応する形状の微細溝に、受容層1’を構成する電離放射線硬化性樹脂を十分に充填する。この状態で、紫外線の照射により電離放射線硬化性樹脂を硬化乃至固化させ、これにより、透明基材25の表面に凹凸面が賦型された凹凸構造層30を作製する。続いて、剥離ローラ13を介して賦型用ロール金型23から、硬化した凹凸構造層30と一体に透明基材25を剥離する。賦型用ロール金型23の回転に応じて、単位凸条32uは延在方向に沿って順に金型23の凹溝から剥離されていくため、単位凸条32uをなす賦型用樹脂が金型32の凹溝に詰まり難い。このようにして、凹凸構造層30は、ロール材による長尺の透明基材25に、凹凸構造層形成用原版である賦型用ロール金型23の周側面に作製された微細溝形状を順次賦型して、効率良く大量生産される。
なお、ここでは賦型用ロール金型23を使用した賦型処理により凹凸構造層30の凹凸面31をなす微細凸条群32を形成する方法を説明したが、微細凸条群32は当該方法に限られずに形成されてもよい。例えば、凹凸面31の形成に係る基材の形状に応じて、例えば平面または特定の曲面形状を有する賦型用金型を使用した枚葉の処理により凹凸構造層30の凹凸面31をなす微細凸条群32を形成する方法等、賦型処理に係る工程及び微細凸条群形成用原版は、凹凸面31の形成に係る基材の形状に応じて適宜変更することができる。
<<金属層>>
次に、金属層15について説明する。金属層15は、透明支持体20の凹凸面31を覆うようにして凹凸面31上に設けられている。図1及び図2に示された例において、金属層15は、透明支持体20上にパターニングされている。とりわけ、図1及び図2に示された例において、金属層15は、透明支持体20上において、開口領域15aを画成するメッシュパターンを形成している。すなわち、金属層15は、分岐点15bから延び出す多数の接続要素15cによって形成されている。そして、各開口領域15aは、3以上の接続要素15cで取り囲まれることによって、画成されている。なお、図2に示された例において、金属層15は、正方格子配列となるメッシュパターンを形成している。
ただし、金属層15によってなされるパターンは、図2に示された例に限定されることはなく、積層材10の用途に応じて適宜設定される。例えば、開口領域の形状が3角形、4角形(正4角形の場合が正方格子)、5角形、6角形、8角形、円、楕円等からなるメッシュパターンを形成しても良い。また、金属層15が、特開2012−178556号公報、特開平4−21739号公報等に記載の不規則なメッシュパターンを形成するようにしてもよいし、或いは、メッシュ以外のパターンを形成するようにしてもよいし、或いは、ベタで設けられる、すなわち隙間無く面状の領域に設けられるようにしてもよい。
金属層15は、透明支持体20の凹凸面31の凹凸を埋めて凹凸面31を覆うように設けられている。したがって、積層材10の法線方向nd(凹凸面31のシート面に直交する方向)に沿った金属層15の厚みt2の最大値、すなわち最大膜厚t2maxは、積層材10の法線方向ndに沿った単位凸条32uの高さHよりも厚くなっている。なお、金属層15の最大膜厚t2maxとは、図1に示すように、金属層15のうちの凹凸面31の微細凸条群32の単位凸条32u間となる谷底部34に接触する部位から、金属層15のうちの凹凸面31から最も離間する部位までの、積層材10のシート面への法線方向ndに沿った高さを意味する。
このような金属層15は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等の気相法(ドライプロセス) 、あるいは無電解メッキ法を用いて、金属層15をなすようになる金属材料を、凹凸構造層30の凹凸面31上に付着させることにより形成され得る。このような方法により形成された金属層15は、凹凸面31の凹凸に沿うようにして凹凸面31上に設けられる。言い換えると、金属層15は、凹凸面31の微細凸条群32の隣り合う二つの単位凸条32uの間となる谷底部34にまで入り込むようになる。
金属層15の平均膜厚は、金属層15を透明支持体20側から観察した場合に黒色を呈して本発明の效果を奏するためには、透明支持体20とは反対側(すなわち図1で言うと図の上方側)から観察した場合に、金属層15が可視光線を反射して金属光沢を呈する程度の厚みとする必要が有る。そのためには、可視光線帯域の最長波長780nmよりも厚くする。ただし、必要以上に厚くしても、透明支持体側から見た場合の黒色の度合いは飽和し、また材料費や加工時間の増大等の不利益を生じる。これらの点を考慮し、単に透明支持体20側から観察して黒色を呈することのみを目的とする場合、例えば、凹凸構造層30の微細凸条群32の単位凸条32uの寸法及び形状がより好ましい範囲として上述した寸法及び形状となっている場合は、1000nm以上2000nm以下とすることができる。ただし、更に、金属層15に導電性、熱伝導性、機械的強度等の物性値を所望の程度求める場合は、金属層の平均膜厚は、これら要求物性も考慮して決定する。例えば、画像表示装置の画面に装着する透視性電磁波遮蔽材、タッチパネルの位置検知の検出電極として利用する場合は、要求される導電性を確保することも考慮し、金属層15の平均膜厚を2000nm〜10000nm(2μm〜10μm)とする。なお、ここでいう平均膜厚とは、図1のように積層材10をそのシート面の法線方向と単位凸条32uの延在方向とを含む面(図1ではZX平面と平行な面)で切断した断面において、膜厚方向と直交する方向(図1では、例えば、X方向)における位置Xでの金属層の厚みt2(X)をX方向に単位凸条32uの間隔dの10〜30倍の距離にわたって平均した値t2aveとして定義する。
金属層15をなすようになる高導電性の金属材料として、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、コバルト、錫、チタン、パラジウム、インジウム、及び、これらの金属を含む合金の一以上を用いることができる。合金としては、例えば、真鍮(黄銅)、青銅、白銅、ニッケル−クロム合金、ジュラルミン等が挙げられる。
なお、金属層15のパターニングは、フォトリソグラフィ技術を用いて、次のように実施され得る。まず、図7に示すように、凹凸面31を有した透明支持体20を準備する。
透明支持体20は、透明基材25をなすようになる基材上に電離放射線硬化型樹脂を積層して賦型することによって凹凸構造層30を形成し、作製され得る。
次に、図8に示すように、金属層15を形成するようになる金属膜91を、透明支持体20の凹凸面31上に形成する。金属膜91の成膜は、前記の如く、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等の気相法(ドライプロセス)等の種々の方法を採用することができる。とりわけ真空蒸着法によれば、後述するように積層材10をタッチパネルセンサや電磁波遮蔽材としての用いた場合に好適な厚みの金属膜91を、比較的に短時間で安価に製造することができる。また、別の方法として、スパッタリングと他の方法、例えばスパッタリングと電解めっきとを含む複数工程にて、金属膜91を成膜することも有効である。スパッタリングによれば、密着性に優れた下地層を形成することができ、かつ、その後の電解めっきによって、金属膜91の厚みを比較的迅速に所望の厚みまで増加させることができる。
その後、フォトリソグラフィ技術を用いて、透明支持体20上の金属膜91を所望のパターンにてパターニングする。具体的には、まず、図9に示すように、金属膜91上にレジスト膜92を設ける。レジスト膜92の成膜は、例えば、ドライフィルムレジストの積層により行うことができる。次に、図10に示すように、レジスト膜92上にフォトマスク93を配置した状態にて、光Lを照射しレジスト膜92をパターン露光する。露光に用いる光は、通常、紫外線を用いるが、可視光線、X線等を用いる事もできる。その後、図11に示すように、露光されたレジスト膜92を現像することにより、レジスト膜92をパターニングしてなるレジストパターン94が金属膜91上に得られる。図11はレジストとしてネガ型の感光性レジストを用いた場合を示しており、この場合には未露光部のレジスト膜92が現像液によって溶解、除去され、架橋乃至重合反応によって硬化して現像液に不溶性となった露光部のレジスト膜92のみが残留してレジストパターン94となる。
次に、図12に示すように、パターニングされたレジストパターン94をマスクとして、塩化第2鉄水溶液、塩酸等の腐蝕液を用いて金属膜91をエッチングする。これにより、レジストパターン94の無い部分の金属膜91が腐蝕液によって除去され、レジストパターン層94の直下の金属膜91のみが残留する。残留した金属膜91から平面視形状がメッシュパターンとなった金属層15が形成される。このようにして、透明支持体20上に、金属層15が、所望のパターンで形成される。その後、金属層15上のレジストパターン94を除去することによって、図13に示すように、積層材10が得られる。
<<積層材の作用効果>>
以上のような積層材10は、透明支持体20上に金属層15を有している。このため、金属層15の性質、例えば、良好な導電性、熱伝導性、強磁性等に関連して何らかの機能を発揮することができる。ただし、金属層15が、当該金属層15をなす金属材料の性質に起因した機能を発揮する際、金属層15が、本質的に有することになる光反射性を発揮しないことを要望されることもあり、さらには、本質的に有することになる光反射性とは相反する光吸収性を発揮することが要望されることすらある。
例えば、図2に示された例のように、金属層が、メッシュ状のパターンを形成することにより、導電性及び可視光透過性を期待されている場合、金属層をなす金属材料自体の光反射性が問題となることがある。具体的には、積層材がタッチパネルセンサや画像表示装置の画面用の電磁波遮蔽材として用いられる例のように、積層材越しの画像の視認性が要求される用途では、メッシュ状パターンの不可視性が必要となる。そのためには、金属層をなす金属材料自体の光反射性が問題(障碍乃至は阻害要因)となる。積層材が一定の透過率を呈する場合でも、金属層で多量の反射光が生じると、積層材越しの画像が白化したり、明暗のコントラストが低下したりして、その視認性が著しく悪化することになる。また、積層材が、金属層の良好な熱伝導性を利用した、熱伝達部材として用いられる場合、積層材が熱線(赤外線)を取り込む機能を有していることが好ましいこともある。この用途においては、金属層が、熱線を反射するのではなく、熱線を吸収することが好ましい。そして、従来技術の欄でも説明したように、金属層での反射を防止する観点から、金属層の表面に黒色材料からなる黒化層を設けることが行われてきた。
金属層の表面に黒化層を設ければ、金属層での反射を抑制して、金属層を目立たなくさせることもできる。しかしながら、金属層との密着性が良好な黒色材料は多く存在しない。とりわけ、積層材のうちの透明支持体の側から金属層を黒化処理する場合には、黒色材料は、金属層だけでなく透明支持体に対しても優れた密着性を示す必要がある。金属層及び透明支持体の両方に密着性を示し且つ工業上使用可能な黒色材料は、数種類しか存在せず、結果として、コストや材料確保等の面において好ましくない。
また、金属層がパターニングされる場合には、黒化層も、黒色材料からなる黒化膜をパターニングして形成することになる。ただし、黒化膜を金属膜とともにフォトエッチングしてパターニングする際におけるエッチング時の浸食速度は、黒化膜と金属膜との間で大きく異なる。したがって、黒化層または金属層のパターン輪郭がぼやけ、一般的にエッチングの浸食が速い金属層が断線してしまうことすらある。そもそも、金属層をなすようになる金属膜に加えて、黒色材料かなる黒化膜を成膜することは、製造コスト上の観点から好ましくなく、加えて、製造工程も煩雑となる。
これに対して、本実施の形態では、透明支持体20の金属層15で覆われている面は、一方向に延在する単位凸条32uからなる微細凸条群32によって形成された凹凸面31となっており、微細凸条群32の隣接する単位凸条32u同士の間隔は、可視光線帯域の最短波長以下となる間隔dとなっている。そして本実施の形態によれば、金属層15と透明支持体20との間のこの界面性状に応じて、透明支持体20の側から積層材10を観察した場合に金属層15が黒色に観察されるようになる。本件発明者らが鋭意検討を行ったところ、金属層15が黒色に観察される現象は、金属層15をなす金属材料に依存することなく、生じ得ることが確認された。
このような本実施の形態によれば、金属層15とは別途に黒化層を設ける必要性を排除することが可能となり、製造コストや製造の手間の点において優れる。加えて、黒化層が間に介在しないことに加えて、界面が凹凸面31として形成されることから、金属層15と透明支持体20との間の密着性が大幅に向上する。
また、図示された実施の形態では、金属層15が、開口領域15aを画成するメッシュパターンを形成しており、透明支持体20の一方の表面の一部分のみを覆っている。そして、図示された実施の形態では、金属層15によって覆われていない透明支持体20の表面も、一方向に延在する単位凸条32uからなる微細凸条群32によって形成された凹凸面31となっている。すなわち、積層材10の開口領域15aをなす部分においても極めて優れた反射防止性能が発現され、積層材10の透過率を大幅に向上させることができる。
さらに、積層材10を金属層15の側から観察した場合、金属層15は、当該金属層15を構成する金属材料に依存した金属色として把握され、黒色には把握されない。したがって、積層材10のどちらの主面の側から観察するかに応じて、金属層15の色味を変化させることができる。すなわち、別途の着色層を設けることなく、意外性を持った意匠性を積層材10に付与することができる。
ところで、金属層15が黒色に観察されるようになるのは、以下の要因によるものと推定される。ただし、本発明は、以下の推定に限定されるものではない。まず、金属層15によって覆われている透明支持体20の凹凸面31は、モスアイ構造体の反射防止面を形成している。したがって、図1に示すように、積層材10内を透明支持体20から金属層15へと進む光L11は、透明支持体20と金属層15との界面において反射することを極めて効果的に防止され、金属層15内に入射する。ただし、金属層15の透過率は、勿論金属層15の厚みにも依存するが、著しく低い。電磁気学及び固体物理学の知見によれば、金属層15内部に浸透する光L11の電磁場の強度は指数関数的に減衰し、金属層15内部の光L11の電場は金属層15表面から光L11の波長(最大780nm)程度の深さまでの間の表皮層内に局在化される。その結果、当該表皮層内において光L11の電磁場は金属原子の結晶格子振動を励振して熱に変換され、消失する。したがって、金属層15に入射した光は、金属層15内に吸収されることになる。すなわち、透明支持体20の側から積層材10を観察した場合、観察者は、金属層15と透明支持体20との界面での反射光を含む金属層15からの光を感知することはない。このことが主たる要因として、積層材10を透明支持体20の側から観察した場合、金属層15は、黒色に把握されると推定される。
また、本実施の形態によれば、凹凸面31が一方向に延在する単位凸条32uからなる微細凸条群32によって形成されていることで、微小突起が密接して配置されてなるいわゆるモスアイ構造に比べて、凸部自体の構造上の耐久性に優れ、樹脂組成物の硬化物からなるものであっても、凸部が潰れたり、凸部の先端同士の付着が生じ難い。更に、本実施の形態によれば、いわゆるモスアイ構造に比べて、皮脂等の汚れが付着しても、単位凸条32uの延在方向に沿って除去することが容易であり、表面外観が悪化し難い。
また、本実施の形態によれば、凹凸面31が一方向に延在する単位凸条32uからなる微細凸条群32によって形成されていることで、微小突起が密接して配置されてなるいわゆるモスアイ構造に比べて、生産性に優れる。すなわち、前記したように賦型用ロール金型23を使用した賦型処理により凹凸面31を形成する場合、大面積の凹凸面31を長尺状に製造することが可能である。また、この場合、微細凸条群32の形状に対応する微細溝を賦型用ロール金型23の表面に切削加工することで、複数の凹溝の形状のばらつきを抑えることが容易であり、これにより、微細凸条群32の単位凸条32uの形状のばらつきを抑えることが容易である。また、この場合、賦型用ロール金型23の回転に応じて単位凸条32uをその延在方向に沿って順に金型23の凹溝から剥離していくことで、単位凸条32uをなす賦型用樹脂が金型32の凹溝に詰まり難い。
<<積層材の具体的な適用例>>
次に、積層材10の用途例を具体的に説明する。
まず、図14を参照しながら、積層材10をタッチパネル装置50のタッチパネルセンサ51,52に適用した例について説明する。図14には、タッチパネルセンサ51,52を含んだタッチパネル装置50が示されている。図示されたタッチパネル装置50は、投影型容量結合方式のタッチパネル装置として構成されており、それぞれ、電極55が形成された第1タッチパネルセンサ51及び第2タッチパネルセンサ52を有している。このタッチパネル装置50は、図15に示すように画像形成装置41上に配置されるようになる。第1及び第2タッチパネルセンサ51,52は、画像形成装置41の画素が配列された領域に対面するアクティブエリアAa1と、アクティブエリアAa1の周囲となる非アクティブエリアAa2と、を含んでいる。電極55は、アクティブエリアAa1内に位置して位置検出に用いられる検出電極60と、検出電極60に接続され非アクティブエリアAa2内に位置する取出電極70と、を有している。
そして、図14に示すように、各検出電極60は、その長手方向に間隔を明けて配列された多数の導電性メッシュ62と、隣り合う2つの導電性メッシュ62の間を接続する接続導線61と、を有している。各導電性メッシュ62は、4角形の外輪郭線内の領域に金属層15が形成されており、該金属層15は開口領域を画成する接続要素15cによりメッシュパターンを形成している。該導電性メッシュ62の外輪郭線は接続要素15cから構成されていても良いし、接続要素15cの末端を連ねた仮想線から構成されていても良い。図14及び図16は後者の形態の外輪郭線を有する形態である。各検出電極60は、導電性メッシュ62および接続導線61により、アクティブエリアAa1内を一方向に延びている。各検出電極60が配置されている領域の幅は、導電性メッシュ62が設けられている部分において太くなっている。一方のタッチパネルセンサ51,52に含まれる各検出電極60は、他方のタッチパネルセンサ52,51に含まれる多数の検出電極60と交差している。そして、図14に示すように、一方のタッチパネルセンサ51,52の導電性メッシュ62は、検出電極60上において、他方のタッチパネルセンサ52,51の隣り合う二つの検出電極60との交差点の間に配置されている。
この場合、各導電性メッシュ62(金属層15)の寸法は検出電極として要求される導電性と背後の画像の透視性とを両立させるために、線幅は1〜15μm、開口率(導電性メッシュの全形成領域に対する開口部の合計面積の占める比率)は90〜99.5%とすることが好ましい。
このタッチパネル装置50の各タッチパネルセンサ51,52は、積層材10を用いて形成されている。各タッチパネルセンサ51,52において、電極55の少なくとも一部が金属層15をなし、この電極55は透明支持体20に支持されている。すなわち、電極55の少なくとも一部分を支持する基材の表面は、一方向に延在する単位凸条32uからなる微細凸条群32によって形成された凹凸面31となっており、微細凸条群32の隣接する単位凸条32uの間隔dは、可視光線帯域の最短波長以下となっている。また、電極55の検出電極60をなす導電性メッシュ62及び接続導線61の一部または全部が、金属層15として、透明支持体20の凹凸面31上に設けられている。一例として、各タッチパネルセンサ51,52の電極55を支持する基材の全表面が、凹凸面31として形成されていてもよい。
図15に示すように、タッチパネルセンサ51、52は、画像が形成される画像形成面を有した画像形成装置(表示パネル、表示部)41と組み合わされて画像表示装置40を形成する。この際、図15に示すように、第1タッチパネルセンサ51をなす積層材10は、金属層15が画像形成装置41と透明支持体20との間に位置するよう、配置されている。すなわち、透明支持体20が観察者側となり且つ金属層15が画像形成装置41側となるように、積層材10が配置されている。第2タッチパネルセンサ52も、第1タッチパネルセンサ51と同様に、金属層15が画像形成装置41と透明支持体20との間に位置するよう、配置されている。この結果、画像表示装置40の観察者は、積層材10の金属層15を黒色に観察することになる。したがって、金属層15での外光反射に起因して、画像表示装置40によって表示される画像のコントラスが低下してしまう等の画質劣化を回避することができる。
なお、図15に示された例において、検出電極60が、接続導線61と導電性メッシュ62とからなる例を示したがこれに限られない。例えば、図16に示すように、各検出電極60が、細長状の長方形の外輪郭線内の領域に形成された単一の導電性メッシュ62からなるようにしてもよい。図16に示されたタッチパネルセンサ53では、ストライプ状の領域に形成された多数の導電性メッシュ62から検出電極60が形成され、且つ、検出電極60をなす各導電性メッシュ62に取出電極70が接続されている。この例においても、タッチパネルセンサ53は、積層材10から形成され得る。すなわち、検出電極60及び取出電極70の一部または全部が、金属層15をなし、透明支持体20の凹凸面31上に支持され得る。
さらに、図15に示された例では、第1タッチパネルセンサ51および第2タッチパネルセンサ52から投影型の静電容量式のタッチパネル装置50が形成されている例を示したが、これに限られない。例えば、図17に示されたタッチパネルセンサ53のように、透明支持体20上に画成されたアクティブエリアAa1内に二次元配列された正方形の外輪郭線内の各領域に導電性メッシュ62が形成されるようにしてもよい。図17に示された例では、各導電性メッシュ62は、接続導線61を介して対応する取出電極70に接続されている。この例においても、タッチパネルセンサ53は、積層材10から形成され得る。すなわち、検出電極60及び取出電極70の一部または全部が、金属層15をなし、透明支持体20の凹凸面31上に支持され得る。
また、図18に示された例では、透明支持体20上に画成されたアクティブエリアAa1の全域に、単一の導電性メッシュ62が形成されている。検出電極60をなす導電性メッシュ62は、その四隅から、取出電極70に接続されている。すなわち、図18に示されたタッチパネル装置50は、表面型の静電容量式タッチパネルを構成する。この例においても、タッチパネル装置50は、積層材10から形成され得る。すなわち、検出電極60及び取出電極70の一部または全部が、金属層15をなし、透明支持体20の凹凸面31上に支持され得る。
なお、図14〜図18に示された電極55の形状は一例に過ぎず、種々の変更が可能である。また、積層材10は、容量結合形式のタッチパネル装置に限られず、抵抗膜形式等の種々の形式のタッチパネル装置に適用することができる。
さらに積層材10の他の用途例について説明する。図19に示すように、積層材10は、テレビジョン受像装置、各種測定機器や計器類、各種事務用機器、各種医療機器、電算機器、電話機、電飾看板、各種遊戯機器等の表示部に用いられるプラズマディスプレイパネル装置(PDP)、ブラウン管(CRT)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置(LCD)、電場発光(EL)ディスプレイ装置などの画像表示装置に、電磁波遮蔽材として、組み込まれ得る。
図19に示された例において、画像表示装置40は、画像が形成される画像形成面を有する画像形成装置(表示パネル、表示部)41と、画像形成装置41の出光側に配置された積層体45と、を有している。したがって、積層体45の出光面が、画像表示装置40の表示面(出光面)40aをなし、観察者は、画像形成装置41で形成された画像を、積層体45を介して観察することになる。この積層体45に、電磁波遮蔽シートとしての積層材10が、組み込まれている。積層材10の金属層15は、図1に示されているように、透明支持体20上において、開口領域15aを画成するメッシュパターンを形成している。金属層15は、画像形成装置41の画像が形成される領域に延び広がっている。この積層材10は、電磁波を効果的に遮蔽することができる一方で、その線幅を細く設定され且つ開口率を大きく設定することにより、視認され難くなっている。本用途の場合、線幅は通常5〜20μm程度、開口率は通常90.0〜99.5%程度に設定される。また、積層体45には電磁波遮蔽シートとしての本発明の積層体10の他に、必要に応じて、透明保護層、各種反射防止層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、着色フィルター層等の各種機能層を1層又は2層以上積層しても良い。この例においても、図15に示す例と同様に、金属層15が画像形成装置41と透明支持体20との間に位置するよう、積層材10が配置されている。この結果、画像表示装置40の観察者は、積層材10の金属層15を黒色に観察することになる。したがって、金属層15での外光の反射に起因して、画像表示装置40によって表示される画像のコントラスが低下してしまう等の画質劣化を回避することができる。
さらに、積層材10の別の用途として、積層材10を遮光部材として用いることができる。図20には、遮光部材としての積層材10が接合層76を介して窓を構成する硝子板75に積層された例が示されている。この例においては、凹凸構造層30及び金属層15は全面に広がるように形成されている。積層材10の透明支持体20が室内側(図20では左側)、金属層15が屋外側(図20では右側)となる様に積層されている。積層材10の透明支持体20から入射する室内の光L171が、黒色に観察される金属層15によって吸収され室内から見た窓の硝子板は光を反射せず黒色を呈する。一方、該窓の硝子板を室外側から観察すると金属層15が光を反射して金属光沢を呈する。斯かる構成の遮光性窓硝子板は室内光を吸収すると共に室外からの光も遮蔽する必要の有る暗室、光学実験室等の部屋の窓に使用することができる。この場合、窓の硝子板75の中央部分と窓のサッシによって覆われた周縁部との間で温度差が生じ、ガラスからなる窓75が割れてしまう可能性がある。図20に示された例では、光を吸収する金属層15が、高い熱伝導性を有した金属材料から形成されているので、窓の硝子板75の全面に広がる金属層15によって硝子板75の温度が均一化するので、硝子板75が割れてしまうことを効果的に抑制することができる。積層材10は窓の硝子板の室内側、屋外側のいずれにも積層は可能である。ただし、積層材10の耐久性の点からは、硝子板の室内側に積層材10を積層することが好ましい。
更に、図2のように金属層15をメッシュパターン状に形成した形態において、開口率を20〜60%程度とすることによって、一方向透視性の遮光部材として用いることができる。斯かる一方向透視性の遮光部材の基本原理は、特許第4580523号公報、実公平6−16731号公報等により公知であるが、斯かる遮光部材における開口領域を有する遮光層として、一方の側に微細凹凸群32を有する金属層15を採用したもの(すなわち、図1及び図2において、開口率を前記特定範囲とした形態)は新規な構成である。斯かる一方向透視性の遮光部材から建築物、乗物等の室内外を区画する閉領域に開口する窓硝子を構成し、且つ室内側が透明支持体20側、室外側が金属層15側となる向きで設置すると、昼間の室外の方が室内よりも明るい環境下においては、開口領域15aを通して出入りする光量は、
室内側から室外側に向う光量 < 室外側から室内側に向う光量
となるため、また、人の視覚は低光量の画像と高光量の画像とが重畳して眼に入ると、低光量の画像はマスクされて知覚不能になるため、当該遮光部材を介して室内外から見た場合には、室外からは該窓硝子の金属層15による室外光の反射光(反射画像)のみが視認され、室内の光景は視認可能となり、一方、室内からは該窓硝子の金属層15は黒色を呈し室外光は無反射であり、且つ室外からの入射光のみが視認され、室外の光景は視認可能となる。
更に、図2及び図13のごとき金属層15がメッシュパターンとして形成されてなる積層材10を自動車、鉄道車輛、船舶、航空機等の乗物の窓の硝子板に積層し、乗物内部からは透視性の金屬メッシュとして用いることが出来る。かかる金属メッシュは、窓の結露、曇り、乃至霜付着の防止用の面発熱体、電磁波遮蔽フィルタ、送受信アンテナ等の用途に使用することができる。各用途に応じて、適宜、接地用導線、電源、同調回路、検波回路、高周波増幅回路等の周辺回路、その他各種附帯的部材を接続、組み合せ、複合する。これらの用途の場合、乗物内部側からの金属メッシュ(メッシュ化された金属層15)の不可視性を高めるため、透明支持体20が乗物内部を向くように設置される。積層材10は窓の硝子板の乗物内部側、屋外側のいずれにも積層は可能である。ただし、積層材10の耐久性の点からは、硝子板の乗物内部側に積層材10を積層することが好ましい。
<<追加、変形、その他>>
なお、上述した例に対して様々な追加や変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
上述した例では、透明支持体20の透明基材25と凹凸構造層30とが別の層として形成されていた。このような透明支持体20は、透明基材25上に、電離放射線硬化型樹脂を賦型してなる凹凸構造層30を形成することにより作製され得る。その一方で、積層材10が、金属層15、凹凸構造層30及び透明基材25以外の層を更に含むようにしてもよいし、あるいは、射出成形や押出成形によって凹凸構造層30を作製することにより凹凸構造層30と透明基材25とが一体化した単層構成としても良い。
また、凹凸構造層30の凹凸面31が、耐擦傷性を向上させるためのハードコート層として形成されていてもよい。このハードコート層は、薄膜として形成されていてもよい。
或いは、耐擦傷性の改善を図る観点から、凹凸構造層30が、弗素系有機化合物、珪素系有機化合物等のスリップ剤を含有するようにしてもよい。さらに、紫外線による劣化を防止する観点から、積層材10が、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の紫外線吸収剤を含有するようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態では、透明支持体20の金属層15を支持する側の全面が、凹凸面31として形成されている例を示したが、これに限られない。例えば、透明支持体20の金属層15を支持する側の面のうち、金属層15によって覆われている部分のみが、凹凸面31として形成されていてもよい。
また、図4の賦型用ロール金型23の製造方法においては、バイト22を用いて円柱状母材21表面に円環状の凹溝群を切削する例を例示したが、これには限らない。例えば、円柱状母材21を円周方向の一方の向きに回転すると同時に、バイト22を回転軸方向の図の矢印の向きに一定速度で送り、バイト22の刃先を円柱状母材21に押圧し続けることによって、円柱状母材21表面に螺旋状の凹溝群を形成させロール金型としても良い。
なお、以上において上述した例に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。