以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、本明細書において、「シート」、「板」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「シート」は、板やフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念であり、呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、「シート面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状(板状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において、対象となるシート状部材(板状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。本実施の形態においては、積層材のシート面、積層材に含まれる透明支持体のシート面、後述する透明支持体の凹凸構造層のシート面、および、後述する積層材の透明基材のシート面は、互いに平行となっている。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
<<積層材>>
図1に示すように、積層材10は、透明支持体20と、透明支持体20上に設けられた金属層15と、を備えている。この積層材10において、透明支持体20の少なくとも金属層15で覆われている面は、可視光線帯域の最短波長以下となる間隔dで設けられた微細凸部32により形成された凹凸面31となっている。また、金属層15は、遮光性及び導電性を有する導線15cであって、透明支持体20上において、各導線15cの間に開口領域15aを画成するようにメッシュパターンにて配置された導線15cから構成されている。この導線15cの線幅Wの平均値である平均線幅Waveは、0.2μm以上5μm以下となっている。
このような積層材10を金属層15の側から観察した場合、金属層15は、その構成材料に依存した金属色で観察される。その一方で、積層材10を透明支持体20の側から観察した場合、金属層15の構成材料に依存することなく金属層15は黒色に観察される。すなわち、金属層15と透明支持体20との界面の状態を工夫することによって、透明支持体20越しに観察される金属層15は、その構成材料とは無関係に、黒色を呈するようになる。金属層15の支持体として凹凸面31を有する透明支持体20を用いることにより、この透明支持体20越しに観察される金属層15が、黒化処理を施すことなく黒色に観察されるようになることは、技術水準から予測される範囲を超えた顕著な効果と言える。
以下、積層材10の構成要素である透明支持体20及び金属層15について順に説明していく。
なお、本明細書において、「透明」とは、可視光透過率が70%以上、好ましくは90%以上であることを意味している。また、本明細書で言及する可視光透過率(以下、単に「透過率」とも呼称する)は、測定対象となる部位をなすようになる材料を東洋紡績製PETフィルム(品番:コスモシャインA4300、厚さ100μm)の上に膜厚1μmで成膜し、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JIS K0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
<<透明支持体>>
透明支持体20は、基材として機能する透明基材25と、透明基材25上に設けられた透明な凹凸構造層30と、を有している。凹凸構造層30の凹凸面31は、可視光線帯域の最短波長以下となる間隔dで設けられた微細凸部32により形成されており、優れた反射防止機能を有する。
<透明基材>
透明基材25としては、既知の透明基材を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。透明基材25に用いられる材料としては、例えば、透明樹脂や透明無機材料を例示することができる。透明樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等のオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。一方、透明無機材料としては、例えば、ソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、PLZT等のセラミックス、石英、蛍石等を挙げることができる。
透明基材25の厚みは、積層材10の用途に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、通常20μm〜5000μmである。透明基材25は、ロールの形で供給されるもの、巻き取れるほどには曲がらないが負荷をかけることによって湾曲するもの、完全に曲がらないもの、のいずれであってもよい。
透明基材25の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有していてもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。また、透明基材25が凹凸構造層30とは別の材料から形成される場合には、透明基材25と凹凸構造層30との密着性を向上させ、ひいては耐摩耗性を向上させるためのプライマー層を透明基材25上に形成してもよい。このプライマー層は、透明基材25及び凹凸構造層30の双方に密着性を有し、透明であることが好ましい。プライマー層の材料としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、及びシランカップリング剤等から適宜選択して使用することができる。前記シランカップリング剤の市販品としては、例えば、ハーベス製のデュラサーフプライマーDS−PC−3B等が挙げられる。
<凹凸構造層>
次に、凹凸構造層30について説明する。図1及び図3に示すように、凹凸構造層30は、可視光線帯域の最短波長以下の間隔で配置された微細凸部32によって形成された凹凸面31を有している。本実施の形態では、微細凸部32は、図3に示すように、凹凸構造層30のシート面内において二次元的に配列された微小突起であり、凹凸構造層30は、いわゆるモスアイ構造体として機能する。なお、凹凸構造層30及び透明支持体25のシート面は、図1においては、XY平面あるいはこれと平行な面となる。結果として、透明支持体20は、凹凸構造層30の凹凸面31において、極めて優れた反射防止機能を発揮することができる。すなわち、金属層15が未形成状態であって透明支持体20の一方の面上に凹凸面31が形成された構造のみの状態においては、凹凸面31と空気との界面での光反射が極めて少なく、通常、法線方向入射光の場合で可視光線反射率(以下、単に「反射率」とも呼称する)が1%未満である。そのため、凹凸面31に入射する可視光線はほとんど全て透過し、透明支持体20を観察した場合、凹凸面31及び凹凸面31の反対側面のいずれの側から見ても透明に見える。そして、透明支持体20自体が無色透明の場合は、いずれの側から観察しても無色透明に見える。かかるモスアイ構造体自体は特開昭50−70040号公報、特許第4197100公報等で公知である。ただし、後述のように、本発明においてはモスアイ構造それ自体を用いてそれ自体固有の反射防止かつ高透明性の效果を奏するものでは無く、モスアイ構造に相当する凹凸面31上に可視光線を透過せずに反射し得る厚みの金属層15を被覆して、可視光線を遮断し、透明支持体20側から見た場合に黒色を呈し、金属層15の側から見た場合に金属光沢(高光反射性)を呈すると言う従来公知のモスアイ構造からは予想外の效果を奏するのである。
なお、微細凸部32の「微細」とは、可視光線帯域の最短波長以下の間隔で配置される程度に微細であることを意味している。また、可視光線帯域の最短波長は、透明支持体20を含む積層材10が使用される環境下における可視光線帯域の最短波長を指している。
したがって、積層材10が使用される環境下に波長帯域が制限された特定スペクトルを持つ光源からの光のみが存在する場合には、当該光源から射出される可視光スペクトルの最短波長が、ここでいう可視光線帯域の最短波長となり、それ以外の場合には、一般的な可視光線帯域の最短波長として380nmを、ここでいう可視光線帯域の最短波長として採用する。
微細凸部32が可視光線帯域の最短波長以下の間隔dで配置されてなる凹凸面31を有した凹凸構造層30は、いわゆるモスアイ構造体として機能する。したがって、凹凸面31は、極めて優れた反射防止機能を発揮し、透明支持体20は、金属層15が無い場合において非常に高い透過率を示すようになる。具体的には、金属層15が無い場合における凹凸構造層30の可視光透過率、あるいは、凹凸構造層30及び透明基材25を含む積層材10の可視光透過率は、80%以上となっていることが好ましく、90%以上となっていることがより好ましい。また、凹凸構造層30の凹凸面31上での5°正反射による反射率が、0%以上0.3%以下となっていることが好ましく、0.1%以下となっていることがより好ましい。そして、以下に説明するようにして凹凸構造層30を形成すれば、このような特性を実現することができる。なお、本明細書で言及する正反射の反射率は、島津製作所製の分光光度計UV−3100PCを用いてJIS Z8722に準拠して測定された値とする。
凹凸構造層30は、樹脂を含有してなる層とすることができ、更に、樹脂組成物の硬化物からなる層とすることができる。凹凸構造層30の形成に用いられる樹脂組成物は、少なくとも樹脂を含み、必要に応じて重合開始剤等その他の成分を含有する。凹凸構造層30と透明基材25との界面における反射を抑制する観点から、凹凸構造層30と透明基材25との屈折率差が0.14以下となっていることが好ましく、0.05以下となっていることがより好ましい。凹凸構造層30の形成に用いられる樹脂としては、特に限定されない。例えば、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系等の電離放射線硬化性樹脂、アクリレート系、ウレタン系、エポキシ系、ポリシロキサン系等の熱硬化性樹脂、アクリレート系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の熱可塑性樹脂等の各種材料及び各種硬化形態の賦型用樹脂を、凹凸構造層30の形成に用いることができる。
凹凸構造層30の形成に用いられる樹脂としては、微細凸部32の成形性及び機械的強度に優れる点から、電離放射線硬化性樹脂が好ましい。電離放射線硬化性樹脂とは、分子中にラジカル重合性及び/またはカチオン重合性結合を有する単量体、プレポリマー、あるいはポリマーから選択した1種以上と、必要に応じて、他の反応性重合体を適宜混合したものであり、電離放射線照射によって、架橋、付加重合等の反応により硬化されるものである。ラジカル重合性単量体としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ラジカル重合性プレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレートプレポリマー、ポリエステル(メタ)アクリレートプレポリマー等が挙げられる。ここで「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタアクリレートの各々を表す。カチオン重合性プレポリマーとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂等が挙げられる。電離放射線として紫外線または可視光線を用いる場合は、光重合開始剤を0.1質量%〜5質量%程度添加する。重合開始剤としては、ラジカル重合性の電離放射線硬化性樹脂の場合は、アセトフェノン、チオキサントン等が、カチオン重合性の電離線放射硬化性樹脂の場合は、芳香族ジアゾニウム塩、メタロセン化合物等が挙げられる。なお、非反応性重合体を含有してもよい。なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマ線、X線、電子線等が挙げられる。
樹脂組成物は、更に必要に応じて、界面活性剤、重合開始剤、離型剤、光増感剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、粘度調整剤、密着性向上剤等を含有することもできる。
次に、凹凸構造層30の寸法について説明する。モスアイ構造による反射防止機能では、モスアイ構造体とこれに隣接する媒質との界面における有効屈折率を、厚み方向に連続的に変化させて反射防止を図るものである。このため、凹凸構造層30の凹凸面31は、凹凸構造層30のシート面に沿って可視光線帯域の最短波長以下の間隔dで配置された微細凸部32によって形成されている。ここで、この間隔dに係る隣接する微細凸部32とは、いわゆる隣り合う微細凸部32であり、透明基材25側の付け根部分である微細凸部32の裾の部分が接している二つの凸部である。図3に示すように、微細凸部32が凹凸構造層30のシート面内において二次元的に配列された微小突起からなる場合、凹凸構造層30では微小突起32が密接して配置されることにより、微小突起32間の谷の部位を順次辿るようにして線分を作成すると、平面視において各微小突起32を囲む多角形状領域を多数連結してなる網目状の模様が作製されることになる。間隔dに係る隣接する微小突起32は、この網目状の模様を構成する一部の線分を共有する突起である。また、間隔dは、図3に示すように、透明支持体20のシート面に沿った、隣接する二つの微小突起32の頂部33間の距離とすることができる。
ただし、凹凸構造層30に対して優れた反射防止機能を付与する観点からは、凹凸構造層30をなす微細凸部32が次のように形成されていることがより好ましい。まず、凹凸構造層30の微細凸部32は、積層材10のシート面に沿って、50nm以上380nm以下の間隔dで設けられていることが好ましく、100nm以上250nm以下の間隔dで設けられていることがより好ましい。また、積層材10のシート面への法線方向ndに沿った微小突起32の高さHは、50nm以上760nm以下となっていることが好ましく、100nm以上400nm以下となっていることがより好ましい。
また、凹凸構造層30の凹凸面31上における反射防止性能は、微細凸部32のアスペクト比からも大きな影響を受ける。アスペクト比は、微細凸部32の幅に対する微細凸部32の高さHの比である。ただし、図1及び図3のように隣接する微細凸部32同士がその谷底部34(透明基材25側に最接近する部分)間に間隙を介すること無く接している場合には、凹凸構造層30において、微細凸部32の幅は微細凸部32間の間隔dと置き換えて取り扱うことが可能であり、したがって、アスペクト比は、微細凸部32間の間隔dに対する微細凸部32の高さHの比(H/d)として取り扱うことができる。凹凸構造層30に対して上記の優れた反射防止機能を付与する観点から、微細凸部32のアスペクト比は、0.5以上3以下となっていることが好ましく、1以上2以下となっていることがより好ましい。
凹凸構造層30の厚みは、特に限定されないが、当然、微細凸部32の高さH以上となる。一例として2μm〜300μmとすることができる。なお、この場合の凹凸構造層30の厚みとは、図1に示すように、凹凸構造層30の透明基材25側の界面から、当該凹凸構造層30の凹凸面31をなす微細凸部32の頂部33までの凹凸構造層30のシート面への法線方向ndに沿った高さt1を意味する。
なお、凹凸構造層30の凹凸面31及び微細凸部32に関する各種寸法及び形状は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)または走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)を用いて、特定することができる。ただし、凹凸構造層30の各寸法は、対象となる凹凸構造層30の全領域を調べてその平均値を算出して特定する必要はなく、実際的には、調査すべき対象(微細凸部32の間隔dや微細凸部32の高さH等)の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画内において、調査すべき対象のばらつきの程度を考慮して適当と考えられる数を調べてその平均値を算出することによって特定することができる。例えば、直前で説明した値を目標として紫外線硬化性樹脂を賦型することによって作製された紫外線硬化性樹脂の硬化物からなる凹凸構造層30においては、30mm×30mmの領域内に含まれる30箇所を電子顕微鏡により測定して平均を算出することにより、微細凸部32に関する各寸法、例えば微細凸部32の間隔dや微細凸部32の高さH等を、特定することができる。
微細凸部32が完全に一定周期で配列している場合には、隣接する微細凸部32間の間隔dはその配列周期と一致する。なお、凹凸面31をなす微細凸部32の配列に関して、積層材10を他の部材と重ねた際に干渉模様の発生を防止する観点から、微細凸部32の配列は周期的では無く、微細凸部32の間隔dは不規則的であることが好ましい。
<<金属層>>
次に、金属層15について説明する。金属層15は、透明支持体20の凹凸面31を覆うようにして凹凸面31上に設けられている。図1及び図2に示された例において、金属層15は、遮光性及び導電性を有する導線15cであって、透明支持体20上において、各導線15cの間に開口領域15aを画成するようにメッシュパターンにて配置された導線15cから構成されている。言い換えると、金属層15は、分岐点15bから延び出す複数の導線15cによって形成されており、各開口領域15aは、3以上の導線15cにより取り囲まれることによって画成されている。
なお、図2に示された例において、金属層15は、単位格子形状が正方形である正方格子配列状の規則的なメッシュパターンを有している。ただし、金属層15によってなされるパターンは、図2に示された例に限定されることはなく、積層材10の用途に応じて適宜設定される。金属層15は、格子配列以外の規則的なメッシュパターン、例えば、単位格子形状が3角形である3角格子、単位格子形状が6角形である6角格子(蜂の巣乃至亀甲)、特開2012−164648号公報開示のように単位格子形状が特定内角の菱形からなる菱形格子等のパターンを有していても良いし、あるいは特開平4−217397号公報開示のように正方格子の格子点位置を在る範囲内でランダム変位させたパターン、特開2013−69261号公報記載の特定ランダム母点のボロノイ分割図形からなるパターン等の不規則的なメッシュパターンを有していても良い。
金属層15は、透明支持体20の凹凸面31の凹凸を埋めて凹凸面31を覆うように設けられている。したがって、積層材10の法線方向nd(凹凸面31のシート面に直交する方向)に沿った金属層15の厚みt2は、積層材10の法線方向ndに沿った微細凸部32の高さHよりも厚くなっている。なお、金属層15の厚みt2とは、図1に示すように、金属層15のうちの凹凸面31の微細凸部32間となる谷底部34に接触する部位から、金属層15のうちの凹凸面31から最も離間する部位までの、積層材10のシート面への法線方向ndに沿った高さを意味する。
このような金属層15は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等の気相法(ドライプロセス) 、あるいは無電解メッキ法を用いて、金属層15をなすようになる金属材料を、凹凸構造層30の凹凸面31上に付着させることにより形成され得る。このような方法により形成された金属層15は、凹凸面31の凹凸に沿うようにして凹凸面31上に設けられる。言い換えると、金属層15は、凹凸面31の隣り合う二つの微細凸部32の間となる谷底部34にまで入り込むようになる。
金属層15の平均膜厚は、金属層15を透明支持体20側から観察した場合に黒色を呈して本発明の效果を奏するためには、透明支持体20とは反対側(すなわち図1で言うと図の上方側)から観察した場合に、金属層15が可視光線を反射して金属光沢を呈する程度の厚みとする必要が有る。そのためには、可視光線帯域の最長波長780nmよりも厚くする。ただし、必要以上に厚くしても、透明支持体側から見た場合の黒色の度合いは飽和し、また材料費や加工時間の増大等の不利益を生じる。これらの点を考慮し、単に透明支持体20側から観察して黒色を呈することのみを目的とする場合、例えば、凹凸構造層30の微細凸部32の寸法及び形状がより好ましい範囲として上述した寸法及び形状となっている場合は、1000nm以上2000nm(1μm〜2μm)以下とすることができる。ただし、更に、金属層15に導電性、熱伝導性、機械的強度等の物性値を所望の程度求める場合は、金属層の平均膜厚は、これら要求物性も考慮して決定する。例えば、画像表示装置の画面に装着する透視性電磁波遮蔽材、タッチパネルの位置検知の検出電極として利用する場合は、要求される導電性を確保することも考慮し、金属層15の平均膜厚を2000nm〜10000nm(2μm〜10μm)とする。なお、ここでいう平均膜厚とは、図1のように積層材10をそのシート面の法線方向を含む面(図1ではZX平面と平行な面)で切断した断面において、膜厚方向と直交する方向(図1では、例えば、X方向)における位置Xでの金属層の厚みt2(X)をX方向に微細凸部の間隔dの10〜30倍の距離にわたって平均した値t2aveとして定義する。
金属層15をなす導線15cの平均線幅Waveは、金属層15を極めて効果的に不可視化するという観点から、細い方が好ましい。本実施の形態においては、金属層15をなす導線15cの平均線幅Waveは、0.2μm以上5μm以下となっている。このような金属層15は、金属層15全体の面積のうち開口領域15aによって占められる面積の割合を示す開口率が90%以上に設定されていれば、十分に不可視化される。但し、開口率を大きくし過ぎると、開口面積が大きくなり過ぎ(導線15c間の距離が長くなり)、位置検知の分解能が低下するため、開口率の上限は99.5%以下とすることが好ましい。
なお、後述するように金属膜をエッチングすることによって導線15cを作製する場合、図4に示すように、導線15cの線幅Waは変動することになる。このため、導線15cの線幅Waを、複数の測定値の平均値である平均線幅Waveにより評価する。平均線幅Waveは、金属層15をなす導線15cの線幅Waを、当該線幅Waのばらつきの全体的な傾向を反映し得ると期待される複数の箇所にて測定し、測定された線幅Waの平均値として特定される。具体的には、以下の方法により平均線幅Waveを特定する。少なくとも後述する製造方法にて製造される積層材10については、以下の方法により平均線幅Waveを高精度に特定することが可能となる。
すなわち、図4に示すように、金属層15は、分岐点15b間を延びる導線15cの集合体と言える。そこで、まず、任意に15個の導線15cを選択する。次に、各導線15cを画定する一対の分岐点15b間を結ぶ仮想直線vl上に位置する3つの中間点15dであって、当該仮想直線vlを4等分する中間点15dを特定する。そして、選択された15個の導線15cのそれぞれについて、3つの中間点15dでの線幅Waを測定する。線幅Waは、中間点15dを通過して仮想直線vlに対して直交する方向における導線15cの両縁部間の長さとして特定され、例えば、光学顕微鏡を用いて測定される。そして、合計45個の線幅Waの測定値を平均した値を、当該金属層15をなす導線15cの平均線幅Waveとする。
金属層15のメッシュパターンをなす導線の15cの平均線幅Waveが0.2μm以上に設定されていると、線幅Waのばらつきにともなった導線15cの断線を極めて効果的に回避することができる。線幅Waのばらつきにともなう導線15cの断線を回避する観点からは、導線の15cの平均線幅Waveが0.5μm以上に設定されていることがより好ましい。
なお、前記したように、積層材10を画像表示装置の画面に装着する透視性電磁波遮蔽材、タッチパネルの位置検知の検出電極として利用する場合は、要求される導電性を確保することも考慮し、金属層15の平均膜厚を2000nm〜10000nm(2μm〜10μm)とすることが好ましい。さらに、腐食(エッチング)加工によって金属層15をメッシュパターン化する際のサイドエッチングによる線幅Wのばらつきを低減し、平均線幅0.2〜5μmの細線の場合においても、再現性良く確実に断線を防ぐために、金属層の平均膜厚t2aveは5000μm以下とすることが好ましい。このような金属層15によれば、導線15cが十分に細線化される一方で、導線15cの高さが十分な高さとなり、すなわち、導線15cの断面形状のアスペクト比(H/W)が十分に大きくなり、高い導電性をも有するようになる。
すなわち、このような断面寸法を有する導線15cによれば、例えばタッチパネルの位置検知の検出電極を低抵抗に維持しながら、当該電極をなす導線を細線化することができる。細線化した導線によれば、高繊細化された画素との組み合わせにおいて、あるいは、タブレットと呼ばれる携帯端末の短ピッチ配列された画素との組み合わせにおいても、十分に検知電極を不可視化しながら、高い検出精度を発揮することができる。
金属層15をなすようになる高導電性の金属材料として、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、コバルト、錫、チタン、パラジウム、インジウム、及び、これらの金属を含む合金の一以上を用いることができる。合金としては、例えば、真鍮(黄銅)、青銅、白銅、ニッケル−クロム合金、ジュラルミン等が挙げられる。
<<積層材の製造方法>>
次に、図5乃至図11を参照して、積層材10の製造方法について説明する。
まず、図5に示すように、凹凸面31を有する透明支持体20を準備する。透明支持体20は、透明基材25をなすようになる基材上に電離放射線硬化型樹脂を積層して賦型することによって凹凸構造層30を形成し、作製され得る。
次に、図6に示すように、金属層15を形成するようになる金属膜91を、透明支持体20の凹凸面31上に形成する。金属膜91の成膜は、前記の如く、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等の気相法(ドライプロセス)等の種々の方法を採用することができる。とりわけ真空蒸着法によれば、後述するように積層材10をタッチパネルセンサや電磁波遮蔽材として用いた場合に好適な厚みの金属膜91を、比較的に短時間で安価に製造することができる。また、別の方法として、スパッタリングと他の方法、例えばスパッタリングと電解めっきとを含む複数工程にて、金属膜91を成膜することも有効である。スパッタリングによれば、密着性に優れた下地層を形成することができ、かつ、その後の電解めっきによって、金属膜91の厚みを比較的迅速に所望の厚みまで増加させることができる。
その後、フォトリソグラフィ技術を用いて、透明支持体20上の金属膜91を所望のパターンにてパターニングする。具体的には、まず、図7に示すように、金属膜91上にレジスト膜92を設ける。レジスト膜92の成膜は、例えば、ドライフィルムレジストの積層により行うことができる。次に、図8に示すように、レジスト膜92上にフォトマスク93を配置した状態にて、光Lを照射してレジスト膜92をパターン露光する。露光に用いる光は、通常、紫外線を用いるが、可視光線、X線等を用いることもできる。その後、図9に示すように、露光されたレジスト膜92を現像することにより、レジスト膜92をパターニングしてなるレジストパターン94が金属膜91上に得られる。図9は、レジストとしてネガ型の感光性レジストを用いた場合を示しており、この場合には、未露光部のレジスト膜92が現像液によって溶解、除去され、架橋乃至重合反応によって硬化して現像液に不溶性となった露光部のレジスト膜92のみが残留してレジストパターン94となる。
次に、図10に示すように、パターニングされたレジストパターン94をマスクとして、塩化第二鉄水溶液、塩酸等の腐蝕液を用いて金属膜91をエッチングする。これにより、レジストパターン94の無い部分の金属膜91が腐食液によって除去され、レジストパターン層94の直下の金属膜91のみが残留する。残留した金属膜91から平面視形状がメッシュパターンとなった金属層15が形成される。このようにして、透明支持体20上に、金属層15が、所望のパターンで形成される。その後、金属層15上のレジストパターン94を除去することによって、図11に示すように、積層材10が得られる。
<<積層材の作用効果>>
以上のような積層材10は、透明支持体20上に金属層15を有している。このため、金属層15の性質、例えば、良好な導電性、熱伝導性、強磁性等に関連して何らかの機能を発揮することができる。ただし、金属層15が、当該金属層15をなす金属材料の性質に起因した機能を発揮する際、金属層15が、本質的に有することになる光反射性を発揮しないことを要望されることもあり、さらには、本質的に有することになる光反射性とは相反する光吸収性を発揮することが要望されることすらある。
例えば、図2に示された例のように、金属層15が、メッシュ状のパターンを形成することにより、導電性及び可視光透過性を期待されている場合、金属層15をなす金属材料自体の光反射性が問題となることがある。具体的には、積層材10がタッチパネルセンサや画像表示装置の画面用の電磁波遮蔽材として用いられる例のように、積層材10越しの視認性が要求される用途では、金属層15をなす金属材料自体の光反射性が問題となる。積層材10が一定の透過率を呈する場合でも、金属層15で多量の反射光が生じると、積層材10越しの画像の視認性が著しく悪化することになる。また、積層材10が、金属層15の良好な熱伝導性を利用した、熱伝達部材として用いられる場合、積層材10が熱線(赤外線)を取り込む機能を有していることが好ましいこともある。この用途においては、金属層15が、熱線を反射するのではなく、熱線を吸収することが好ましい。そして、背景技術の欄でも説明したように、金属層15での反射を防止する観点から、金属層15の表面に黒色材料からなる黒化層を設けることが行われてきた。
金属層15の表面に黒化層を設ければ、金属層15での反射を抑制して、金属層15を目立たなくさせることもできる。しかしながら、金属層15との密着性が良好な黒色材料は多く存在しない。とりわけ、積層材10のうちの透明支持体20の側から金属層15を黒化処理する場合には、黒色材料は、金属層15だけでなく透明支持体20に対しても優れた密着性を示す必要がある。金属層15及び透明支持体20の両方に密着性を示し且つ工業上使用可能な黒色材料は、数種類しか存在せず、結果として、コストや材料確保等の面において好ましくない。
また、金属膜と黒化膜とをエッチングすることによってメッシュパターンをなす導線を作製する場合、金属膜及び黒化膜をそれぞれなす2つの材料として現実的に選択され得る組み合わせでは、いずれの組み合わせにおいても、エッチング液に対する耐性が2つの材料の間で大きく異なる。具体的には、例えば、銅または銅合金からなる金属膜と窒化銅または酸化銅(CuO。酸化銅(II)あるいは酸化第二銅とも呼称される。)からなる黒化膜との組み合わせの場合、黒化膜をなす窒化銅または酸化銅は、金属層をなす銅または銅合金と比較して、塩化第二鉄(塩化鉄(III))からなるエッチング液に対する耐性が高く、エッチングによる浸食が進みにくい。
そして、平均線幅Waveが5μm以下となる細線化された導線を、金属膜と黒化膜とをエッチングによってパターニングして作製しようとすると、従来、作製されるべき細線化された導線の線幅Waが大きくばらつくことにより、導線が断線してしまう可能性があった。
線幅Waのばらつきが生じる原因は、次のことにあると考えられる。すなわち、積層された金属膜と黒化膜とを連続してエッチングする場合、まず、エッチングによる浸食がエッチング開始側となる金属膜を貫通するタイミングのずれが、面内の位置によって必然的に生じてしまう。そして、深層側の黒化膜の浸食は、金属膜を貫通した領域から開始される。ここで、エッチングによる浸食は、深さ方向(縦方向)だけでなく、いわゆるサイドエッチングと呼ばれる現象により横方向にも進む。その結果、最後に金属膜が貫通された領域において黒化膜までのエッチングが完了した時点では、当該領域のサイドエッチングはほとんど未進行なのに対して、最初に金属膜が貫通された領域においては最も多くサイドエッチングが進行してしまっている。すなわち、両領域間のサイドエッチングの進行量の差は大きくなる。この現象により、金属膜及び黒化膜の両方をパターニングして細線を作製する際の線幅のばらつきが顕著となる。
仮に、金属膜が浸食され易い膜(エッチング耐性が低い膜)であったとすると、深層側の黒化膜のエッチングが進行している間に、早期に金属膜が貫通された領域において金属膜のサイドエッチングが進行している。この際、当該領域においては、黒化膜の表面が露出し、この黒化膜は、側方および上方からエッチングされることになる。すなわち、金属膜のエッチング進行速度の面内ばらつきと、黒化膜のエッチング進行速度の面内ばらつきとが、単に足し合わされるのではなく、それ以上の面内ばらつきが生じてしまうことになる。
また、金属膜が浸食され難い膜(エッチング耐性が高い膜)であったとすると、早期に金属膜が貫通された領域では、深層側の黒化膜の横方向への浸食が進むことにより、金属膜が下方からも露出する。したがって、当該領域においては、金属膜は、上方及び側方だけでなく、下方からも浸食される。やはり、金属膜のエッチング進行速度の面内ばらつきと、黒化膜のエッチング進行速度の面内ばらつきとが、単に足し合わされるのではなく、それ以上の面内ばらつきが生じてしまうことになる。
以上のことから、エッチング耐性の異なる金属膜と黒化膜とを連続してエッチングして細線パターンを作製する場合、面内でのエッチング進行速度のばらつきが顕著となり、結果として線幅を大きく変動していたと推測される。
これに対して、本実施の形態では、透明支持体20の金属層15で覆われている面は、可視光線帯域の最短波長以下となる間隔dで設けられた微細凸部32によって形成された凹凸面31となっている。そして本実施の形態によれば、金属層15と透明支持体20との間のこの界面性状に応じて、透明支持体20の側から積層材10を観察した場合に金属層15が黒色に観察されるようになる。本件発明者らが鋭意検討を行ったところ、金属層15が黒色に観察される現象は、金属層15をなす金属材料に依存することなく、生じ得ることが確認された。
このような本実施の形態によれば、別途の黒化層を設けることなく、透明支持体20の側から積層材10を観察した場合に金属層15が黒色に観察されるようになるため、メッシュパターンをなす細線の作製時に、エッチング耐性の異なる金属膜と黒化膜とを連続してエッチングする必要は無く、単体の金属膜をエッチングするだけで足りる。これにより、導線の線幅のばらつきは、金属膜のエッチング進行速度の面内ばらつきの範囲内に抑えられ、それ以上の面内ばらつきが生じることはない。したがって、メッシュパターンをなす導線15cを、線幅のばらつきを効果的に抑制しながら、十分に細線化することが可能である。具体的には、例えば、平均線幅Waveを0.2μm以上5μm以下にすることが可能である。
また、本実施の形態によれば、金属層15とは別途に黒化層を設ける必要性を排除することが可能となり、製造コストや製造の手間の点において優れる。加えて、黒化層が間に介在しないことに加えて、界面が凹凸面31として形成されることから、金属層15と透明支持体20との間の密着性が大幅に向上する。
また、図示された実施の形態では、金属層15が、開口領域15aを画成するメッシュパターンを形成しており、透明支持体20の一方の表面の一部分のみを覆っている。そして、図示された実施の形態では、金属層15によって覆われていない透明支持体20の表面も、可視光線帯域の最短波長以下となる間隔dで設けられた微細凸部32によって形成された凹凸面31となっている。すなわち、積層材10の開口領域15aをなす部分においても極めて優れた反射防止性能が発現され、積層材10の透過率を大幅に向上させることができる。
さらに、積層材10を金属層15の側から観察した場合、金属層15は、当該金属層15を構成する金属材料に依存した金属色として把握され、黒色には把握されない。したがって、積層材10のどちらの主面の側から観察するかに応じて、金属層15の色味を変化させることができる。すなわち、別途の着色層を設けることなく、意外性を持った意匠性を積層材10に付与することができる。
ところで、金属層15が黒色に観察されるようになるのは、以下の要因によるものと推定される。ただし、本発明は、以下の推定に限定されるものではない。まず、金属層15によって覆われている透明支持体20の凹凸面31は、モスアイ構造体の反射防止面を形成している。したがって、図1に示すように、積層材10内を透明支持体20から金属層15へと進む光L11は、透明支持体20と金属層15との界面において反射することを極めて効果的に防止され、金属層15内に入射する。ただし、金属層15の透過率は、勿論金属層15の厚みにも依存するが、著しく低い。電磁気学及び固体物理学の知見によれば、金属層15内部に浸透する光L11の電磁場の強度は指数関数的に減衰し、金属層15内部の光L11の電場は金属層15表面から光L11の波長(最大780nm)程度の深さまでの間の表皮層内に局在化される。その結果、当該表皮層内において光L11の電磁場は金属原子の結晶格子振動を励振して熱に変換され、消失する。したがって、金属層15に入射した光は、金属層15内に吸収されることになる。すなわち、透明支持体20の側から積層材10を観察した場合、観察者は、金属層15と透明支持体20との界面での反射光を含む金属層15からの光を感知することはない。このことが主たる要因として、積層材10を透明支持体20の側から観察した場合、金属層15は、黒色に把握されると推定される。
ここで、本件発明者らが行った実験結果の一例を説明する。
まず、透明基材25をなすようになる基材上に電離放射線硬化性樹脂を積層と同時に賦型して凹凸構造層30を形成することにより、透明支持体20を作製した。凹凸構造層30を作製するための原版は、次のようにして作製した。すなわち、純度99.50%の圧延されたアルミニウム基板を、その表面が、小さいうねりとして十点平均粗さRz30nm、且つ大きいうねりとして周期1μmの凹凸形状となるように研磨後、0.02Mシュウ(蓚)酸水溶液の電解液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、陽極酸化処理を実施しアルミニウム基板表面全面に微細孔が開孔してなるアルミニウム酸化物層を形成した。次に、第一エッチング処理として、陽極酸化後の電解液をそのまま腐蝕液として用いて、電圧無印加の状態で該アルミニウム基板を浸漬して60秒間エッチング処理を行った。
続いて、第二エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径拡大処理を行った。さらに、上記処理を繰り返し、これら陽極酸化処理及びエッチング処理の組合せを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム基板上に微細孔による微細な凹凸形状が形成された陽極酸化アルミニウム層が形成された。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、微細凹凸構造層形成用原版を得た。なお、アルミニウム層に形成された微細な凹凸形状は、平均隣接微細孔間距離が100nm、平均深さが200nmで、深さ方向に徐々に孔径が小さくなる多数の微細孔が密に形成された形状であった。
このようにして作製した原版を用い、次の方法で、凹凸構造層30を作製した。まず、凹凸構造層30を形成するための凹凸構造層形成用樹脂組成物は、ジペンタエリスリトールへキサアクリレート(DPHA)20重量部、アロニックスM−260(東亜合成社製)70重量部、ヒドロキシエチルアクリレート10重量部、及び光重合開始剤としてルシリンTPO(BASF社製)3重量部を混合することによって、作製した。その後、凹凸構造層形成用樹脂組成物を、凹凸構造層形成用原版の微細凹凸面が覆われ、硬化後の凹凸構造層30の厚さが20μmとなるように塗布、充填し、その上に透明基材25として厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フィルム社製)を貼り合わせた後、貼り合わせられた貼合体をゴムローラーで10N/cm2の加重で圧着した。原版全体に均一な組成物が塗布されたことを確認し、透明基材25側から水銀燈を用いて2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して凹凸構造層形成用樹脂組成物を硬化させた。次に、原版より剥離し透明基材25と表面が微細孔に対応する形状の微細凸部32の集合体(微小突起群)からなる凹凸面31を有する凹凸構造層30との透明支持体20を得た。
次に、真空蒸着法により、透明支持体20の凹凸面31上に銅を成膜して、透明支持体20及び金属層15からなる積層材10に係る20cm×20cmのサンプル1〜4を作製した。サンプル1における銅の平均膜厚を0.1μmとし、サンプル2における銅の平均膜厚を0.2μmとし、サンプル3における銅の平均膜厚を1μmとし、サンプル4における銅の平均膜厚を2μmとした。サンプル1〜4は、銅の平均膜厚以外の点において、同一に構成した。
得られたサンプル1〜4について、可視光透過性、及び、透明支持体20の側から積層材10を観察した場合における金属層15の色味を調査した。可視光透過性は、サンプル越しに点灯中の蛍光灯を観察した際に、サンプル越しに蛍光灯の位置を確認できなかった場合に当該サンプルを「遮光」と評価し、蛍光灯の位置を確認できた場合に当該サンプルを「透過」と評価した。その結果、可視光透過性に関して、サンプル1及びサンプル2は「透過」と評価され、サンプル3及びサンプル4は「遮光」と評価された。また、透明支持体20の側から積層材10を観察した場合における金属層15の色味に関して、サンプル1及びサンプル2は紺色と評価され、サンプル3及びサンプル4は黒色と評価された。すなわち、以上の評価結果から、金属層15が遮光層として機能し得る厚みを有したサンプル(サンプル3及びサンプル4)では、透明支持体20の側から積層材10を観察した場合に金属層15が黒色に観察された。
<<積層材の具体的な適用例>>
次に、積層材10の用途例を具体的に説明する。
まず、図12を参照しながら、積層材10をタッチパネル装置50のタッチパネルセンサ51,52に適用した例について説明する。図12には、タッチパネルセンサ51,52を含んだタッチパネル装置50が示されている。図示されたタッチパネル装置50は、投影型容量結合方式のタッチパネル装置として構成されており、それぞれ、電極55が形成された第1タッチパネルセンサ51及び第2タッチパネルセンサ52を有している。このタッチパネル装置50は、図13に示すように画像形成装置41上に配置されるようになる。第1及び第2タッチパネルセンサ51,52は、画像形成装置41の画素が配列された領域に対面するアクティブエリアAa1と、アクティブエリアAa1の周囲となる非アクティブエリアAa2と、を含んでいる。電極55は、アクティブエリアAa1内に位置して位置検出に用いられる検出電極60と、検出電極60に接続され非アクティブエリアAa2内に位置する取出電極70と、を有している。
そして、図12に示すように、各検出電極60は、その長手方向に間隔を明けて配列された多数の導電性メッシュ62と、隣り合う2つの導電性メッシュ62の間を接続する接続導線61と、を有している。各導電性メッシュ62は、4角形の外輪郭線内の領域に金属層15が形成されており、該金属層15は開口領域を画成する導線15cによりメッシュパターンを形成している。該導電性メッシュ62の外輪郭線は導線15cから構成されていても良いし、導線15cの末端を連ねた仮想線から構成されていても良い。図12は後者の形態の外輪郭線を有する。各検出電極60は、導電性メッシュ62および接続導線61により、アクティブエリアAa1内を一方向に延びている。各検出電極60が配置されている領域の幅は、導電性メッシュ62が設けられている部分において太くなっている。一方のタッチパネルセンサ51,52に含まれる各検出電極60は、他方のタッチパネルセンサ52,51に含まれる多数の検出電極60と交差している。そして、図12に示すように、一方のタッチパネルセンサ51,52の導電性メッシュ62は、検出電極60上において、他方のタッチパネルセンサ52,51の隣り合う二つの検出電極60との交差点の間に配置されている。
このタッチパネル装置50の各タッチパネルセンサ51,52は、積層材10を用いて形成されている。各タッチパネルセンサ51,52において、電極55の少なくとも一部が金属層15をなし、この電極55は透明支持体20に支持されている。すなわち、電極55の少なくとも一部分を支持する基材の表面は、可視光線帯域の最短波長以下となる間隔dで設けられた微細凸部32によって形成された凹凸面31となっている。また、電極55の検出電極60をなす導電性メッシュ62及び接続導線61の一部または全部が、金属層15として、透明支持体20の凹凸面31上に設けられている。一例として、各タッチパネルセンサ51,52の電極55を支持する基材の全表面が、凹凸面31として形成されていてもよい。
図13に示すように、タッチパネルセンサ51、52は、画像が形成される画像形成面を有した画像形成装置(表示パネル、表示部)41と組み合わされて画像表示装置40を形成する。この際、図13に示すように、第1タッチパネルセンサ51をなす積層材10は、金属層15が画像形成装置41と透明支持体20との間に位置するよう、配置されている。すなわち、透明支持体20が観察者側となり且つ金属層15が画像形成装置41側となるように、積層材10が配置されている。第2タッチパネルセンサ52も、第1タッチパネルセンサ51と同様に、金属層15が画像形成装置41と透明支持体20との間に位置するよう、配置されている。この結果、画像表示装置40の観察者は、積層材10の金属層15を黒色に観察することになる。したがって、金属層15での外光反射に起因して、画像表示装置40によって表示される画像のコントラスが低下してしまう等の画質劣化を回避することができる。
なお、図13に示された例において、検出電極60が、接続導線61と導電性メッシュ62とからなる例を示したがこれに限られない。例えば、図14に示すように、各検出電極60が、細長状の長方形の外輪郭線内の領域に形成された単一の導電性メッシュ62からなるようにしてもよい。図14に示されたタッチパネルセンサ53では、ストライプ状の領域に形成された多数の導電性メッシュ62から検出電極60が形成され、且つ、検出電極60をなす各導電性メッシュ62に取出電極70が接続されている。この例においても、タッチパネルセンサ53は、積層材10から形成され得る。すなわち、検出電極60及び取出電極70の一部または全部が、金属層15をなし、透明支持体20の凹凸面31上に支持され得る。
さらに、図13に示された例では、第1タッチパネルセンサ51および第2タッチパネルセンサ52から投影型の静電容量式のタッチパネル装置50が形成されている例を示したが、これに限られない。例えば、図15に示されたタッチパネルセンサ53のように、透明支持体20上に画成されたアクティブエリアAa1内に二次元配列された各正方形の外輪郭線内の領域に導電性メッシュ62が形成されるようにしてもよい。図15に示された例では、各導電性メッシュ62は、接続導線61を介して対応する取出電極70に接続されている。この例においても、タッチパネルセンサ53は、積層材10から形成され得る。すなわち、検出電極60及び取出電極70の一部または全部が、金属層15をなし、透明支持体20の凹凸面31上に支持され得る。
また、図16に示された例では、透明支持体20上に画成されたアクティブエリアAa1の全域に、単一の導電性メッシュ62が形成されている。検出電極60をなす導電性メッシュ62は、その四隅から、取出電極70に接続されている。すなわち、図16に示されたタッチパネル装置50は、表面型の静電容量式タッチパネルを構成する。この例においても、タッチパネル装置50は、積層材10から形成され得る。すなわち、検出電極60及び取出電極70の一部または全部が、金属層15をなし、透明支持体20の凹凸面31上に支持され得る。
なお、図12〜図16に示された電極55の形状は一例に過ぎず、種々の変更が可能である。また、積層材10は、容量結合形式のタッチパネル装置に限られず、抵抗膜形式等の種々の形式のタッチパネル装置に適用することができる。
さらに積層材10の他の用途例について説明する。図17に示すように、積層材10は、テレビジョン受像装置、各種測定機器や計器類、各種事務用機器、各種医療機器、電算機器、電話機、電飾看板、各種遊戯機器等の表示部に用いられるプラズマディスプレイ(PDP)装置、ブラウン管ディスプレイ(CRT)装置、液晶ディスプレイ装置(LCD)、電場発光ディスプレイ(EL)装置などの画像表示装置に、電磁波遮蔽材として、組み込まれ得る。
図17に示された例において、画像表示装置40は、画像が形成される画像形成面を有する画像形成装置(表示パネル、表示部)41と、画像形成装置41の出光側に配置された積層体45と、を有している。したがって、積層体45の出光面が、画像表示装置40の表示面(出光面)40aをなし、観察者は、画像形成装置41で形成された画像を、積層体45を介して観察することになる。この積層体45に、電磁波遮蔽シートとしての積層材10が、組み込まれている。積層材10の金属層15は、図1に示されているように、透明支持体20上において、開口領域15aを画成するメッシュパターンを形成している。金属層15は、画像形成装置41の画像が形成される領域に延び広がっている。この積層材10は、電磁波を効果的に遮蔽することができる一方で、その線幅を細く設定され且つ開口率(平面視における開口領域15aが占める面積の割合)を大きく設定することにより、視認され難くなっている。本用途の場合の開口率も通常90.0〜99.5%程度に設定される。また、積層体45には電磁波遮蔽シートとしての本発明の積層体10の他に、必要に応じて、透明保護層、各種反射防止層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、着色フィルター層等の各種機能層を1層又は2層以上積層しても良い。この例においても、図13に示す例と同様に、金属層15が画像形成装置41と透明支持体20との間に位置するよう、積層材10が配置されている。この結果、画像表示装置40の観察者は、積層材10の金属層15を黒色に観察することになる。したがって、金属層15での外光の反射に起因して、画像表示装置40によって表示される画像のコントラスが低下してしまう等の画質劣化を回避することができる。
さらに、積層材10の別の用途として、積層材10を遮光部材として用いることができる。図18には、遮光部材としての積層材10が接合層76を介して窓を構成する硝子板75に積層された例が示されている。この例においては、凹凸構造層30及び金属層15は全面に広がるように形成されている。積層材10の透明支持体20が室内側(図18では左側)、金属層15が屋外側(図18では右側)となる様に積層されている。積層材10の透明支持体20から入射する室内の光L171が、黒色に観察される金属層15によって吸収され室内から見た窓の硝子板は光を反射せず黒色を呈する。一方、該窓の硝子板を室外側から観察すると金属層15が光を反射して金属光沢を呈する。斯かる構成の遮光性窓硝子板は室内光を吸収すると共に室外からの光も遮蔽する必要の有る暗室、光学実験室等の部屋の窓に使用することができる。この場合、窓の硝子板75の中央部分と窓のサッシによって覆われた周縁部との間で温度差が生じ、ガラスからなる窓75が割れてしまう可能性がある。図18に示された例では、光を吸収する金属層15が、高い熱伝導性を有した金属材料から形成されているので、窓の硝子板75の全面に広がる金属層15によって硝子板75の温度が均一化するので、硝子板75が割れてしまうことを効果的に抑制することができる。積層材10は窓の硝子板の室内側、屋外側のいずれにも積層は可能である。ただし、積層材10の耐久性の点からは、硝子板の室内側に積層材10を積層することが好ましい。
更に、図2及び図11のごとき金属層15がメッシュパターンとして形成されてなる積層材10を自動車、鉄道車輛、船舶、航空機等の乗物の窓の硝子板に積層し、乗物内部からは透視性の金屬メッシュとして用いることが出来る。かかる金属メッシュは、窓の結露、曇り、乃至霜付着の防止用の面発熱体、電磁波遮蔽フィルタ、送受信アンテナ等の用途に使用することができる。各用途に応じて、適宜、接地用導線、電源、同調回路、検波回路、高周波増幅回路等の周辺回路、その他各種附帯的部材を接続、組み合せ、複合する。これらの用途の場合、乗物内部側からの金属メッシュ(メッシュ化された金属層15)の不可視性を高めるため、透明支持体20が乗物内部を向くように設置される。積層材10は窓の硝子板の乗物内部側、屋外側のいずれにも積層は可能である。ただし、積層材10の耐久性の点からは、硝子板の乗物内部側に積層材10を積層することが好ましい。
<<追加、変形、その他>>
なお、上述した例に対して様々な追加や変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
上述した例では、図3に示すように、凹凸構造層30の凹凸面31を形成する微細凸部32が、凹凸構造層30のシート面内において二次元的に配列された微小突起であったが、これに限定されず、図19に示すように、凹凸構造層30の凹凸面31’を形成する微細凸部32’が、一次元的に配列された、一方向に延在する微細凸条であってもよい。このような一次元的に配列された微細凸条32’からなる凹凸面31’の形成方法の一例を説明すると、まず、バイトによる旋盤切削により、円柱状母材の外周面に、円周方向に沿って並列した複数の溝を順次形成することにより、賦型用ロール金型を製造し、次に、透明基材25上に、凹凸構造層形成用樹脂組成物を塗布して受容層を形成し、当該受容層の表面と、賦型用ロール金型の表面と、を接触させて配置し、圧力をかけることによって受容層の金型側表面に一次元的に配列された微細凸条32’からなる凹凸面31’を形成し、適宜、当該受容層の樹脂組成物を硬化させることにより凹凸構造層30を形成し、その後賦型用ロール金型を剥離する。このように微細凸部32’が一次元的に配列された微細凸条からなる場合、二次元的に配列された微小突起からなる場合に比べて、凹凸構造層30の生産性及び耐久性が向上し得る。
また、上述した例では、透明支持体20の透明基材25と凹凸構造層30とが別の層として形成されていた。このような透明支持体20は、透明基材25上に、電離放射線硬化型樹脂を賦型してなる凹凸構造層30を形成することにより作製され得る。その一方で、積層材10が、金属層15、凹凸構造層30及び透明基材25以外の層を更に含むようにしてもよいし、あるいは、射出成形や押出成形によって凹凸構造層30を作製することにより凹凸構造層30と透明基材25とが一体化した単層構成としても良い。
また、凹凸構造層30の凹凸面31が、耐擦傷性を向上させるためのハードコート層として形成されていてもよい。このハードコート層は、薄膜として形成されていてもよい。或いは、耐擦傷性の改善を図る観点から、凹凸構造層30が、弗素系有機化合物、珪素系有機化合物等のスリップ剤を含有するようにしてもよい。さらに、紫外線による劣化を防止する観点から、積層材10が、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の紫外線吸収剤を含有するようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態では、透明支持体20の金属層15を支持する側の全面が、凹凸面31として形成されている例を示したが、これに限られない。例えば、透明支持体20の金属層15を支持する側の面のうち、金属層15によって覆われている部分のみが、凹凸面31として形成されていてもよい。
なお、以上において上述した例に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。