以下、図面を参照して本発明の第1及び第2の実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「板」はシートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念であり、したがって、「円偏光板」は、「円偏光シート」や「円偏光フィルム」と呼ばれる部材と呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、「板面(シート面、フィルム面)」とは、対象となる板状(シート状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となる板状部材(シート状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
<<第1の実施の形態>>
まず、第1の実施の形態について説明する。図1〜図23は、本発明による第1の実施の形態及びその変形例を説明するための図である。このうち図1は画像表示装置1の層構成を模式的に示す図である。図1に示すように、画像表示装置1は、可撓性を有する画像表示パネル10と、画像表示パネル10と積層された円偏光板20及びタッチパネルセンサ30と、を有している。第1の実施の形態では、タッチパネルセンサ30と画像表示パネル10との間に、円偏光板20が設けられている。画像表示パネル10と円偏光板20は、接合層6aによって接合されている。円偏光板20とタッチパネルセンサ30は、接合層6bによって接合されている。また、画像表示装置1は、表示面1aを形成するカバー層5を有している。カバー層5は、最も観察者側に配置されており、タッチパネルセンサ30と接合層6cを介して接合されている。なお、円偏光板20は、画像表示装置1内に入射した外光の反射に起因したコントラストの低下を防止するために設けられている。この円偏光板20は、直線偏光板21と光学変換層25とを含んでいる。そして、タッチパネルセンサ30と、円偏光板20と、接合層6bと、によって、円偏光板付きタッチパネルセンサ3が構成されている。接合層6a、接合層6b及び接合層6cは、種々の公知の接着層や粘着層とすることができ、例えば感圧接着剤を用いて形成することができる。
また、図1に示すように、タッチパネル装置2が、タッチパネルセンサ30を含む積層構造体2aと、タッチパネルセンサ30に接続された外部の回路(図示せず)と、を含んで構成されている。積層構造体2aは、タッチパネルセンサ30と、カバー層5と、接合層6cと、を含んで構成されている。図示されたタッチパネル装置2は、投影型の静電容量結合方式として構成されており、表示面1aへの外部導体(例えば、人間の指)の接触位置を検出可能に構成されている。
画像表示装置1の画像表示パネル10は、可撓性を有している。また、画像表示パネル10の可撓性に対応して、円偏光板20及びタッチパネルセンサ30といったその他の構成要素も、可撓性を有している。ここで、ある部材が可撓性を有するとは、人間が視覚的に感知し得る程度に、対象となる部材が湾曲することを意味している。このような画像表示装置1、及び、その表示面1aは、三次元曲面をなすように湾曲することができる。したがって、画像表示装置1に極めて多様な意匠性を付与することができる。なお、後述するように、タッチパネルセンサ30及び円偏光板20は、各々に期待された本質的な機能を発揮しながら、可撓性を有するように構成されている。以下、各構成要素について説明していく。
<画像表示パネル>
画像表示パネル10は、可撓性を有し且つ板状に形成されていれば特に限定されない。したがって、画像表示パネル10は、液晶表示パネル、プラズマディスプレイパネル、電気泳動式の表示パネルや、或いは、電子ペーパーと呼ばれている表示パネル等を用いることができる。ただし、以下においては、画像表示パネル10として、有機EL表示パネルを用いた例を説明する。有機EL表示パネルによれば、昨今の薄型化にともない、十分な可撓性を持つことができる。
図2には、有機EL表示パネルとして構成された画像表示パネル10の一例が示されている。図2に示された画像表示パネル10は、基材11と、第1表示パネル電極12と、発光部14と、第2表示パネル電極13と、封止層15と、をこの順番で含んでいる。発光部14は、所定の色を発光する部位として設けられており、隔壁部16によって区分けされている。
基材11の種類、大きさ、厚さ等は特に限定されるものではなく、画像表示装置1の用途や基材上に積層する各層の材質等により適宜決めることができる。基材11をなす材料として、例えば、アルミニウム等の金属、ガラス、石英、または、各種の樹脂等を用いることができる。第1表示パネル電極12は、陽極または陰極のいずれかであるが、一般的には陽極として基材11上に設けられる。形成材料としては、金、銀、クロム等の金属、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO2、ZnO等の透明導電膜、ポリアニリン、ポリアセチレン等の導電性酸化物等を挙げることができる。第2表示パネル電極13は、上記第1表示パネル電極12の対極として機能する。第2表示パネル電極13は、陰極または陽極のいずれかであるが、一般的には陰極として設けられる。第2表示パネル電極13は、光の取り出し側にあるので、形成材料としては、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO2、ZnO等の透明導電材料や、MgAg等からなる半透明金属が好ましく用いられる。なお、電極12,13は、アクティブマトリクス方式で形成されてもよいし、単純マトリックス方式で形成されてもよい。
隔壁部16は、酸化ケイ素等の無機材料やレジスト等の有機材料から形成され得る。隔壁部16は、第1表示パネル電極12がパターン形成された後であって各発光部14が形成される前に、所定のパターンで形成される。隔壁部16によって各色の発光層が形成されるべき領域が区分けされた後に、各色の発光部14が形成され得る。その後、発光部14を覆うように第2表示パネル電極13が形成される。次に、第2表示パネル電極13上に、例えばSiON等のガスバリア性を有する封止層15を設けることができる。
発光部14は、各色の光を発光する部位である。第1表示パネル電極12が陽極である場合には、それぞれ第1表示パネル電極21側から、正孔注入層と発光層とからなる積層体、あるいは、正孔注入層と発光層と電子注入層とからなる積層体、あるいは、発光層と電子注入層とからなる積層体、のいずれかの積層体で構成される。正孔注入層と発光層との間には正孔輸送層が設けられていてもよいし、発光層と電子注入層との間には電子輸送層が設けられていてもよい。また、各注入層や発光層が、正孔輸送性材料や電子輸送性材料を含んでいてもよい。図3は、図2の画像表示パネル10に用いられ得る発光部の一例を示す拡大図である。図3に示された例において、発光部14は、正孔注入層14a、正孔輸送層14b、発光層14c、電子輸送層14dおよび電子注入層14eを、第1表示パネル電極(一般的には陽極)12の側から積層することにより形成されている。ただし、図3に示された画像表示パネル10は単なる例示に過ぎない。
正孔注入層14aを形成するための材料としては、正孔注入層の形成に通常使用されている材料、例えば、色素系材料、金属錯体系材料または高分子系材料等を用いることができる。また、正孔輸送層14bを形成するための材料としては、正孔輸送層の形成に通常使用されている材料、例えば、フタロシアニン、ナフタロシアニン等を用いることができる。発光層14cは、ホスト材料とゲスト材料とを含有する発光層形成材料で形成された層である。ホスト材料とゲスト材料の配合割合は、使用する材料によっても異なるが、例えば、ホスト材料に対して、重量比でおよそ1〜20重量%の範囲でゲスト材料が添加される。ここで、重量%は、質量%と同義の用語として用いている。例えば、ホスト材料として9,10−ジ−2−ナフチルアントラセン(DNA)、ゲスト材料として1−tert−ブチル−ペリレン(TBP)を用いることができる。例えば、ホスト材料としては、アントラセン誘導体、アリールアミン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体、スピロ化合物等を例示することができる。また、ゲスト材料としては、ペリレン誘導体、ピレン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、アリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、FIrPic等のイリジウム錯体等を例示することができる。
電子輸送層14dを形成するための材料としては、電子輸送層の形成に通常使用されている材料、例えば、金属錯体系材料、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体等を挙げることができる。また、電子注入層14eを形成するための材料としては、発光層の発光材料に例示した材料の他、アルミニウム、フッ化リチウム等、電子注入層として一般的に用いられている材料を挙げることができる。
以上のような構成からなる画像表示パネル10は、その厚みを50μ上以上100μm以下、さらに、70μm以下とすることができる。このような薄い画像表示パネル10は、優れた可撓性を持つことになる。
<円偏光板>
次に、主として図1、図4〜図6を参照して、円偏光板20について説明する。円偏光板20は、表示面1aから画像表示装置1内に入射した外光が、画像表示パネル10で反射して、再び、表示面1aを介して画像表示装置1から出射することを防止する。画像表示装置1内に入射した外光が、画像表示パネル10からの画像光とともに、表示面1aから出射すると、表示面1aに表示される画像のコントラストが低下する。円偏光板20は、画像表示パネル10から反射して表示面1aに向かう外光を吸収して、コントラストの低下を防止する機能を有している。
具体的には、円偏光板20は、直線偏光板21と、直線偏光板21の画像表示パネル10側に配置された光学変換層25と、を有している。直線偏光板21は、透過光を直交する二つの偏光成分に分解し、一方の方向(透過軸と平行な方向)の偏光成分を透過させ、前記一方の方向に直交する他方の方向(吸収軸と平行な方向)の偏光成分を吸収する機能を有している。光学変換層25は、透過光に1/4波長分の位相差を付与する1/4波長板として機能する。画像表示装置1へ入射した外光は、円偏光板20の直線偏光板21を透過して一方の直線偏光に変換される。次に、直線偏光による外光は、光学変換層25により右円偏光又は左円偏光の何れかの円偏光に変換される。この円偏光による外光は、画像表示パネル10で反射する際に、その旋回方向を逆転させる。この反射光は、光学変換層25により他方の直線偏光へと変換され、次に、直線偏光板21で吸収される。
とりわけ、画像表示パネル10が有機EL表示パネルからなる場合、画像表示パネル10は、反射率の高い第1表示パネル電極12を含んでいる。この結果、有機EL表示パネルからなる画像表示パネル10を用いた場合、画像表示装置1の表示面1aに表示される画像のコントラストの低下が顕著となりやすい。このため、画像表示装置1に円偏光板20を設けることによって画質を大幅に向上させることができる。
直線偏光板21は、ポリビニルアルコール(PVA)によるフィルム材に、ヨウ素化合物分子を吸着配向させて作製される。ポリビニルアルコール(PVA)によるフィルム材は、画像表示装置1を構成する他の構成要素上、或いは、TAC(トリアセチルセルロース)等の透明フィルムからなる基材の鹸化処理された面に形成されて接合層を介して画像表示装置1を構成する他の構成要素と接合される。
一方、光学変換層25は、第1位相差層26及び第2位相差層27を含んでいる。このうち第1位相差層26は、正のAプレート(+Aプレート)26aを含んでおり、特定波長の光に1/4波長分の位相差を付与する。一方、第2位相差層27は、正のCプレート(+Cプレート)27aを含んでおり、斜め方向に進む光の光学特性を正面方向に進む光の光学特性に近づけることができる。第1位相差層26に加えて第2位相差層27を設けることにより、円偏光板20の板面への法線方向に対して傾斜した方向に進む光に対して、円偏光板20の機能が損なわれることを補償することができる。なお、図示された例において、第1位相差層26は、第1配向膜26bを有しており、正のAプレート26aは、第1配向膜26b上に形成されている。また、第2位相差層27は、第2配向膜27bを有しており、正のCプレート27aは、第2配向膜27b上に形成されている。以下、各層について順に説明する。
正のAプレート26aは、面内における遅相軸方向の屈折率nx、面内における進相軸方向の屈折率ny、及び、厚さ方向の屈折率nzが、次の関係を満たす位相差層である。
nx>ny=nz
直線偏光板21の吸収軸に対して正のAプレート26aの面内における遅相軸がなす角度θaを45°とする。波長が550nmの透過光に対する正のAプレート26aの面内のリタデーションRe1(550)を、120nm以上150nm以下とする。このような構成により、正のAプレート26aが、波長が550nmの透過光に対して1/4波長位相差板として機能する。
正のAプレート26aは、屈折率異方性を保持した状態で固化(硬化)された逆分散性を有する液晶材料(重合性液晶材料)により形成されている。逆分散性を有する液晶(逆分散液晶)とは、可視光線の波長帯域のうち、特に450nm〜650nm(好ましくは、380nm〜780nmの全域)において、面内のリタデーション値が波長に対して増加関数となる特性を有する。一例として、波長が550nmの透過光に対する正のAプレート26aの面内のリタデーション値Re1(550)、波長が450nmの透過光に対する正のAプレート26aの面内のリタデーション値Re1(450)、及び、波長が650nmの透過光に対する正のAプレート26aの面内のリタデーション値Re1(650)が、次の関係を満たすようにしてもよい。
0.81≦Re1(450)/Re1(550)≦0.95
1.00≦Re1(650)/Re1(550)≦1.18
正のCプレート27aは、面内における遅相軸方向の屈折率nx、面内における進相軸方向の屈折率ny、及び、厚さ方向の屈折率nzが、次の関係を満たす位相差層である。
nz>nx=ny
波長が550nmの透過光に対する正のCプレート27aの厚み方向のリタデーションRth2(550)を、−300nm以上−10nm以下とすることが好ましく、−200nm以上−20nm以下とすることがより好ましく、−150nm以上−30nm以下とすることがさらに好ましい。このような構成により、正のCプレート27aは、正のAプレート26aとの組み合わせにおいて、斜め方向に進む光の光学特性を正面方向に進む光の光学特性に近づけることができる。
なお、面内のリタデーション値Re及び厚み方向のリタデーション値Rthは、王子計測機器製KOBRA−WRを用いて、測定することができる。
円偏光板20は、円偏光板20を十分に薄型化して円偏光板20に優れた可撓性を付与する観点から、次に説明する転写を利用した製造方法で形成されることが好ましい。すなわち、まず、光学変換層25を仮支持フィルム19a上に形成する。次に、仮支持フィルム19a上の光学変換層25を直線偏光板21に接合層6bを介して接合する。ここで、接合層6bは、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系のUV硬化型の接着剤とすることができる。最後に、直線偏光板21と接合された光学変換層25から仮支持フィルム19を剥がすことにより、円偏光板20が得られる。
ここで、図4に示された光学変換層25は、具体的な方法として、次のようにして形成され得る。まず、光学変換層25を作製するために用いられる仮支持フィルム19aを準備する。仮支持フィルム19aとして、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)製のフィルムを用いることができる。仮支持フィルム19aは、光学変換層25の作製及び検査時に支持体として用いられるが、円偏光板20に組み込まれる必要はない。円偏光板20を薄型化して十分な可撓性を確保する観点からは、光学変換層25だけが組み込まれ、仮支持フィルム19aは剥ぎ取られた方がよい。ただし、仮支持フィルム19a上に作製された光学変換層25を偏光板と組み合わせてその光学特性を確認することができれば都合が良いため、仮支持フィルム19aは、低配向であることが好ましく、延伸樹脂フィルムであれば一軸延伸であることが好ましい。また、光学変換層25との剥離性が確保されるのであれば、PET以外にも、COP(シクロオレフィン)、PC(ポリカーボネート)、アクリル系樹脂からなるフィルムを、仮支持フィルム19aとして用いることができる。また、光学変換層25との十分な剥離性を確保する観点から、仮支持フィルム19aの光学変換層25を支持する側の面に、メラニン樹脂、シリコーン、フッ素系の離型層を設けるようにしてもよい。
次に、仮支持フィルム19a上に、第2位相差層27の第2配向膜27bを形成する。第2配向膜27bは、樹脂硬化物からなる層として形成される。第2配向膜27bをなす樹脂として、紫外線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂を用いることができる。更には、第2配向膜27bを垂直配向膜として形成することもでき、この場合、第2配向膜27b上に形成される正のCプレート27aの配向性を向上させることができる。その後、第2配向膜27b上に、液晶材料及び重合性液晶モノマーを含んでなる紫外線硬化性樹脂を塗工し、紫外線照射により硬化させる。これにより、液晶材料を含んだ樹脂硬化物からなる正のCプレート27aが、形成される。
次に、正のCプレート27a上に、第1位相差層26の第1配向膜26bを形成する。第1配向膜26bは、樹脂硬化物からなる層として形成される。第1配向膜26bをなす樹脂として、紫外線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂を用いることができる。第1配向膜26bの表面には、ストライプ状の溝が賦型される。溝の賦型は、例えば、その回転軸線に対して40°〜50°傾斜した方向に延びる凹凸をその側周面にラビングによって形成されたロール型を用いて実施され得る。或いは、第1配向膜26bは、偏光露光照射によって形成されてもよい。
その後、第1配向膜26b上に、重合性液晶モノマーを含んでなる紫外線硬化性樹脂を塗工し、紫外線照射により硬化させる。これにより、液晶材料を含んだ樹脂硬化物からなる正のAプレート26aが、形成される。紫外線硬化性樹脂の塗工は、ダイヘッドによる薄膜塗工が望ましいがコンマコート、グラビアコートなどでも構わない。正のAプレート26aの形成に用いられる液晶材料は、上述したように、逆波長分散性材料であり、例えば特表2010−522892号公報、特表2010−522893号公報、特開2011−29161号公報に開示されているような、重合性液晶混合系の他、2官能複素環系、4官能複素環系、フルオレン系の材料でも良い。
以上のようにして、仮支持フィルム19a上に光学変換層25が作製される。その後、光学変換層25の正のAプレート26aが直線偏光板21に対面するようして、直線偏光板21と光学変換層25とを接合層22を介して接合する。次に、仮支持フィルム19aを光学変換層25から剥がすことにより、円偏光板20が得られる。接合層22は、種々の公知の接合層を用いることができる。一例として、接合層22が、紫外線硬化性樹脂の硬化物からなるようしてもよい。
なお、図4に示された光学変換層25の層構成は、例示に過ぎない。また、上述した光学変換層25の製造方法も例示に過ぎない。例えば、図5に示すように、第1位相差層26よりも観察者側に、第2位相差層27が配置されるようにしてもよい。すなわち、円偏光板20が、観察者側から順に、直線偏光板21、接合層22、正のCプレート27a、第2配向膜27b、正のAプレート26a及び第1配向膜26bを含むようにしてもよい。このような光学変換層25及び円偏光板20は、仮支持フィルム19a上に、第1配向膜26b、正のAプレート26a、第2配向膜27b及び正のCプレート27aを、例えば上述した方法にて形成して光学変換層25を作製し、次に、正のCプレート27aが直線偏光板21に対面するようにして、光学変換層25を直線偏光板21に接合層22を介して積層し、最後に、仮支持フィルム19aを剥離することにより、作製され得る。
また、仮支持フィルム19a上に光学変換層25を作製した後、光学変換層25を直線偏光板21上に転写して円偏光板20を作製するようにしたが、この例に限られない。仮支持フィルム19a上に作製した光学変換層25を、まず、円偏光板20の画像表示パネル10側に位置する画像表示装置1の構成要素上に転写し(図1に示す例では、画像表示パネル10上に転写し)、次に、仮支持フィルム19aを剥離し、その後、光学変換層25の観察者側に直線偏光板21を接合層22を介して積層するようにしてもよい。この方法では、例えば、図4に示された光学変換層25及び仮支持フィルム19aの積層体を利用した場合、円偏光板20は、観察者側から順に、直線偏光板21、接合層22、第2配向膜27b、正のCプレート27a、第1配向膜26b及び第1配向膜26bを含むようになる。一方、図5に示された光学変換層25及び仮支持フィルム19aの積層体を利用した場合、円偏光板20は、観察者側から順に、直線偏光板21、接合層22、第1配向膜26b、正のAプレート26a、第2配向膜27b及び正のCプレート27aを含むようになる。
さらに、正のCプレート27aは、液晶材料の選択等により、第2配向膜27bを省略しても作製することが可能となる。例えば、疎水性を有した表面を持つ仮支持フィルム19aを使用し、仮支持フィルム19aの疎水性面上に、棒状液晶材料を含んだ組成物を塗工することにより、棒状液晶材料が立ち上がり、正のCプレート27aが得られる。すなわち、上述してきたいくつかの円偏光板20の構成から、第2配向膜27bを削除することができる。
また、図6に示すように、光学変換層25において、第1位相差層26及び第2位相差層27が接合層28を介して接合されていてもよい。接合層28は、特に限定されないが、アクリル系の熱硬化性接着剤や、その他のアクリル系、ウレタン系、ポリエステル系の接合層を用いることができる。例えば、図6に示された光学変換層25は、次のようにして作製される。まず、上述した材料及び方法により、第1の仮支持フィルム19a上に、第1配向膜26b及び正のAプレート26aを順に形成し、第1の積層体を作製し、第2の仮支持フィルム19b上に、第2配向膜27b及び正のCプレート27aを順に形成し、第2の積層体を作製する。その後、第1の積層体と第2の積層体とを接合層28により接合することにより、一対の仮支持フィルム19a,19bに挟まれた光学変換層25が得られる。
仮支持フィルム19aを剥がして露出した第1配向膜26bが、円偏光板20の画像表示パネル10側に位置する画像表示装置1の構成要素(図1に示す例では、画像表示パネル10)に接合層6aを介して接合され、且つ、第2仮支持フィルム19bを剥がして露出した第2配向膜27bが、直線偏光板21に接合層22を介して接合されることにより、画像表示装置1に組み込まれた円偏光板20が得られる。得られた円偏光板20は、観察者側から順に、直線偏光板21、接合層22、第2配向膜27b、正のCプレート27a、接合層28、正のAプレート26a及び第1配向膜26bを含むようになる。
また、別の例として、第2仮支持フィルム19bを剥がして露出した第2配向膜27bが、円偏光板20の画像表示パネル10側に位置する画像表示装置1の構成要素(図1に示す例では、画像表示パネル10)に接合層6aを介して接合され、且つ、仮支持フィルム19aを剥がして露出した第1配向膜26bが、直線偏光板21に接合層22を介して接合されることにより、画像表示装置1に組み込まれた円偏光板20が得られる。得られた円偏光板20は、観察者側から順に、直線偏光板21、接合層22、第1配向膜26b、正のAプレート26a、接合層28、正のCプレート27a及び第2配向膜27bを含むようになる。なお、図6を参照して説明した例においても、第2配向膜27bを省略して円偏光板20及び光学変換層25を作製することが可能となる。
以上のような円偏光板20の各層の厚みは、次のように、設定され得る。まず、直線偏光板21の厚みは、0を超え200μm以下することができ、150μm以下であれば好ましく、100μm以下であればより好ましい。接合層22の厚みは、20μm程度とすることができ、3μm以下であれば好ましく、1μm以下であればより好ましい。次に、光学変換層25に含まれる各層の厚みは、次のように設定され得る。第1位相差層26の第1配向膜26bの厚みは、当該第1配向膜26bが放射線硬化性樹脂を賦型してなる場合、0を超え10μm以下することができ、5μm以下であれば好ましく、3μm以下であればより好ましい。一方、光配向を利用して形成された第1配向膜26bの厚みは、50nm以上200nm程度とすることができる。第1位相差層26の正のAプレート26aの厚みは、複屈折の値Δnにもよるが、2μm以上3μm程度とすることができる。第2位相差層27の第2配向膜27bの厚みは、0を超え10μm以下することができ、5μm以下であれば好ましく、3μm以下であればより好ましい。第2位相差層27の正のCプレート27aの厚みは、上述した厚み方向のリタデーション値Rthが確保される厚みとする。具体的には、正のCプレート27aの厚みは、0を超え10μm以下することができ、5μm以下であれば好ましく、3μm以下であればより好ましい。このように各層が薄く形成された光学変換層25によれば、円偏光板20が優れた可撓性を有するようになる。また、以上の構成からなる円偏光板20によれば、JIS K 5600−5−1に準拠して、φ30mmの円筒形マンドレル法の曲げ試験を行った場合に、各層の割れや剥離が確認されなかった。
<タッチパネルセンサ及びタッチパネル装置>
次に、タッチパネル装置2及びタッチパネルセンサ30について説明する。図1に示すように、タッチパネル装置2は、画像表示パネル10とともに組み合わせられて用いられ、画像表示装置1を構成している。画像表示パネル10は、画像を表示することができる表示領域と、表示領域を取り囲むようにして表示領域の外側に配置された非表示領域(額縁領域とも呼ばれる)と、を含んでいる。上述したように、タッチパネル装置2は、タッチパネルセンサ30を含む積層構造体2aと、タッチパネルセンサ30に接続された外部の回路(図示せず)と、を含んで構成されている。タッチパネルセンサ30を含む積層構造体2aは、画像表示パネル10の画像形成面10a上となる位置に配置されている。積層構造体2aは、タッチパネルセンサ30と、カバー層5と、接合層6cと、を含んで構成されている。図示されたタッチパネル装置2は、投影型の静電容量結合方式として構成されており、表示面1aへの外部導体(例えば、人間の指)の接触位置を検出可能に構成されている。
(((カバー層)))
カバー層5は、誘電体として機能する透光性を有した層であり、例えばガラスや樹脂フィルムから形成される。このカバー層5は、タッチパネル装置2への入力面(タッチ面、接触面)として機能するようになる。つまり、カバー層5に導体、例えば人間の指を接触させると指の位置が検出され、これにより、タッチパネル装置2を介して外部から情報を入力することができる。また、カバー層5は、画像表示装置1の最観察者側面をなしており、画像表示装置1において、タッチパネル装置2、円偏光板20および画像表示パネル10を外部から保護するカバーとしても機能するカバー層5は、接合層6cを介してタッチパネルセンサ30と接合されている。接合層6cは、タッチパネルセンサ30の電極40,50と、カバー層5に接触する導体、例えば人間の指と、の間で誘電体として機能する。尚、本発明のタッチパネルセンサを適用すべき画像表示パネル10が可撓性を有するものである為、カバー層5も画像表示パネル10の許容される変形に追従し得るだけの可撓性は必要となる。カバー層5の材料としては、例えば、表面に紫外線硬化アクリル樹脂からなるハードコート層を形成した2軸延伸PETフィルム、可撓性硝子板等が挙げられる。
なお、タッチパネル装置2の積層構造体2aには、図示された例に限られず、特定の機能を発揮することを期待されたその他の機能層が設けられても良い。また、一つの機能層が二以上の機能を発揮するようにしてもよいし、例えば、タッチパネルセンサ30の後述するカバー層5や、その他の積層構造体2aに含まれる各層(各基材や、接着層)に機能を付与するようにしてもよい。タッチパネル装置2の積層構造体2aに付与され得る機能としては、一例として、防眩(AG)機能、反射防止(AR)機能、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、帯電防止(AS)機能、電磁波遮蔽機能、防汚機能等を例示することができる。
(((タッチパネルセンサ)))
次に、タッチパネルセンサ30について、詳述する。タッチパネルセンサ30は、図7及び図8に図示の如く、第1電極40および第2電極50を含んでいる。図示された例において、第1電極40は、観察者側に位置し、第2電極50は、観察者側とは反対側となる画像表示パネル10側に位置している。図7に示された例において、タッチパネルセンサ30は、第1電極40を有する第1センサフィルム31と、第2電極50を有する第2センサフィルム32と、を含んでいる。第1センサフィルム31及び第2センサフィルム32は、接合層37を介して互いに接合されている。第1センサフィルム31は、第1透明樹脂フィルム34と、第1透明樹脂フィルム34の観察者側面上に設けられた第1電極40と、を有している。第2センサフィルム32は、第2透明樹脂フィルム35と、第2透明樹脂フィルム35の観察者側面上に設けられた第2電極50と、を有している。
接合層37としては、制限されることなく種々の粘着層や接着層を用いることができる。一例として、接合層37は、いわゆるリワーク性(一度剥がした後に再接合可能である性質)を有した粘着剤からなる粘着層ではなく、リワーク性を持たない接着剤からなる接着層として形成されていることが好ましい。例えば、接合層37は、硬化性樹脂の硬化物からなる接着層であることが好ましい。接合層37が硬化性樹脂の硬化物からなる接着層である場合には、タッチパネルセンサ30が用いられる環境条件の変化(温度変化や湿度変化等)にともなって第2センサフィルム32(第2電極50)の第1センサフィルム31(第1電極40)に対する相対位置が変化することを、効果的に抑制することができる。これにより、安定して優れた位置検出精度を確保することが可能となる。
((透明樹脂フィルム))
透明樹脂フィルム34,35は、電極40,50を支持する基材として機能し、且つ、タッチパネルセンサ30における誘電体としても機能する。図8に示すように、透明樹脂フィルム34,35は、タッチ位置を検出され得る領域に対応するアクティブエリアAa1と、アクティブエリアAa1に隣接して其の周囲の囲繞する非アクティブエリアAa2と、を含んでいる。図8の実施形態に於いては、アクティブエリアAa1は画像表示パネル10の中央部及び其の周辺の表示領域に対峙し、非アクティブエリアAa2には画像表示パネル10の表示領域の周縁部の非表示領域に対峙する。アクティブエリアAa1を介して画像表示パネル10の画像を観察することができるよう、透明樹脂フィルム34,35は、透明または半透明となっている。透明樹脂フィルム34,35は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、84%以上であることがより好ましい。なお、第1透明樹脂フィルム34の可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JISK0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
透明樹脂フィルム34,35は、例えば、誘電体として機能し得るガラスや樹脂フィルムから構成され得る。樹脂フィルムとしては、光学部材の基材として使用されている種々の樹脂フィルムを好適に用いることができる。一例として、複屈折性を有さない光学等方性のフィルム、典型的には、トリアセチルセルロースに代表されるセルロースエステルからなるフィルムを、透明樹脂フィルム34,35として用いることができる。透明樹脂フィルム34、35にガラスを用いる場合は、可撓性の画像表示パネル10に許容される変形に追従し得るだけの可撓性は必要となる。其の為、ガラスとしては可撓性ガラスを使用する。
その一方で、タッチパネルセンサ30が円偏光板20よりも観察者側に配置された第1の実施の形態では、複屈折性を有する光学異方性のフィルムも、透明樹脂フィルム34,35として用いることができる。例えば、安価で安定性に優れたポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルムを透明樹脂フィルム34,35として用いることができる。ポリエステルフィルムは、吸湿性が低く、高温多湿の環境化においても変形等が生じ難いといった利点を、有している。また、延伸樹脂フィルムを透明樹脂フィルム34,35として用いることができる。透明樹脂フィルム34,35上の電極40,50は、通常、エッチングを用いてパターニングされるが、延伸樹脂フィルムは、エッチング液に対して優れた耐性を有する点において好ましい。すなわち第1の実施の形態では、透明樹脂フィルム34,35の材料選択の自由度が高い。これにより、電極40,50に対して優れた密着性を呈する材料のフィルムを選択することも可能となり、タッチパネルセンサ30に優れた可撓性を付与することができる。
((電極))
次に、透明樹脂フィルム34,35上に設けられたタッチパネルセンサ30の第1電極40及び第2電極50について説明する。図8に示すように、各電極40,50は、位置検出に用いられる検出電極45,55と、検出電極45,55に接続された取出電極(取出配線)42,52と、を有している。検出電極45,55は、パターンをなすようにしてアクティブエリアAa1内に配置されている。一方、取出電極42,52は、非アクティブエリアAa2内に配置されている。
(検出電極)
第1検出電極45は、第1透明樹脂フィルム34の観察者側の面上に所定のパターンで配置されている。また、第2検出電極55は、第2透明樹脂フィルム35の観察者側の面上に、第1検出電極45とは異なるパターンで配置されている。より具体的には、図8に示すように、第1検出電極45は、線状に延び、且つ、その長手方向と交差する方向に配列されている。同様に、第2検出電極55も、線状に延び、且つ、その長手方向と交差する方向に配列されている。ただし、第1検出電極45の配列方向と第2検出電極55の配列方向とは非平行となっている。図示された例において、第1検出電極45は、ストライプ状に配列され、且つ、その配列方向に直交する方向に直線状に延びている。また、第2検出電極55も、ストライプ状に配列され、且つ、その配列方向に直交する方向に直線状に延びている。さらに、第1検出電極45の配列方向と第2検出電極55の配列方向とは直交している。
検出電極45,55は、外部導体がタッチパネルセンサ30に接近した際に生じる、電磁的な変化または静電容量の変化を検知するために設けられるものである。従って、検出電極45,55には、電磁的な変化または静電容量の変化に起因する電流を検知可能なレベルで流すことができる程度の導電性が求められる。このような検出電極45,55を構成するための材料として、優れた導電性を有する金属材料、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、及び、これらの合金の一以上を用いることができる。これらの金屬材料の中でも、特に、可撓性の画像表示パネルの曲げ、撓み等の変形に龜裂や破斷無く追従し得る点からは、金、銀、銅、或いはアルミニウムが好ましい。
一方、これらの金属材料は、可視光に対して遮光性を有している。そこで、検出電極45,55は、図9の如く、導線46,56が多数の開口領域45b,55bを画成するメッシュパターンにて配置されている導電体メッシュ45a,55aを含んでいる。とりわけ図8に示された例においては、各検出電極45,55が、細長い領域に形成された導電体メッシュ45a,55aから形成されている。図9に示された例においては、アクティブエリアAa1の全域に導電体メッシュ45a,55aが形成され、各検出電極45,55の輪郭に対応して、導電体メッシュをなす導線46,56を断線させることにより、各検出電極45,55が形成されている。なお、図9に示された例において、導電体メッシュ45a,55aは、正方格子配列状の規則的なメッシュパターンを有している。ただし、導電体メッシュ45a,55aは、正方格子以外の3角格子、6角格子等の多角形格子配列、格子配列以外の規則的なメッシュパターンを有していてもよいし、特開2013−69261号公報の如き不規則的なメッシュパターンを有していてもよい。
(取出電極)
取出電極42,52は、検出電極45,55の各々に対し、接触位置の検出方法に応じて一つまたは二つ設けられている。各取出電極42,52は、対応する検出電極45,55に接続されて配線を形成している。取出電極42,52は、透明樹脂フィルム34,35の非アクティブエリアAa2内を、対応する検出電極45,55から透明樹脂フィルム34,35の端縁まで延びている。そして、取出電極42,52の検出電極45,55とは反対側の端部に、端子部42a,52aが形成されている。取出電極42,52は、その端子部42a,52aにて、図示しない外部接続配線(例えば、FPC)を介し、検出制御部21に接続される。
(電極の断面形状)
次に、電極40,50の断面形状について説明する。図7は、厚さ方向に沿った断面において、タッチパネルセンサ30が示されている。ここで厚さ方向とは、シート状からなるタッチパネルセンサ30のシート面への法線方向に沿った断面のことを指す。図7に示すように、第1検出電極45の導電体メッシュ45aをなす第1導線46は、第1透明樹脂フィルム34側に位置する基端面46aと、基端面46aに対向して配置された平坦な先端面46bと、基端面46aと先端面46bとの間を接続する一対の側面46cと、を有している。基端面46aと先端面46bは互いに平行となっている。そして、図7に示された例において、第1導線46は、第1透明樹脂フィルム34側に位置して基端面46aを形成する第1導電性金属層47と、第1導電性金属層47上に設けられ先端面46bを形成する第1暗色層48と、有している。すなわち、第1暗色層48は、第1導電性金属層47を観察者側から覆っている。
同様に、第2検出電極55の導電体メッシュ55aをなす第2導線56は、第2透明樹脂フィルム35側に位置する基端面56aと、基端面56aに対向して配置された平坦な先端面56bと、基端面56aと先端面56bとの間を接続する一対の側面56cと、を有している。基端面56aと先端面56bは互いに平行となっている。そして、図7に示された例において、第2導線56は、接合層38側に位置して基端面56aを形成する第2暗色層58と、第2暗色層58上に設けられ先端面56bを形成する第2導電性金属層57と、を有している。すなわち、第2導電性金属層57は、第1暗色層48によって観察者側から覆われている。
ここで導電性金属層47,48は、高導電率を有した金属材料を用いて形成された層であり、上述したように、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、及び、これらの合金の一以上からなる層である。
金属材料からなる導電性金属層47,48は、優れた導電率を有する反面、比較的に高い反射率を呈する。したがって、タッチパネルセンサ30の検出電極45,55をなす導電性金属層47,48によって外光が反射されると、タッチパネル装置2のアクティブエリアAa1を介して観察される画像表示機構12の画像コントラストが低下してしまう。そこで、暗色層48,58が、導電性金属層47,48の観察者側に配置されている。この暗色層48,58によって、コントラストを向上させ、画像表示機構12によって表示される画像の視認性を改善することができる。すなわち、暗色層48,58は、黒色等の暗色の層であり、隣接する導電性金属層47,57よりも低反射率の層である。
暗色層48,58としては、種々の既知の層を用いることができる。導電性金属層47,57を部分的に暗色化処理して、金属酸化物や金属硫化物からなる暗色層48,58を導電性金属層47,57の一部分から形成してもよい。また、暗色材料の塗膜や、ニッケルやクロム等のめっき層等のように、導電性金属層47,57上に暗色層48,58を設けるようにしてもよい。一具体例として、導電性金属層47,57が鉄からなる場合には、450〜470℃程度のスチーム雰囲気中に導電性金属層47,57を10〜20分間さらして、導電性金属層47,57の表面に1〜2μm程度の酸化膜(暗色膜)を形成するようにしてもよい。別の方法として、鉄からなる導電性金属層47,57を濃硝酸などで薬品処理して、導電性金属層47,57の表面に酸化膜(暗色膜)を形成するようにしてもよい。また、導電性金属層47,57が銅からなる場合には、硫酸、硫酸銅及び硫酸コバルトなどからなる電解液中にて、導電性金属層47,57を陰極電解処理して、カチオン性粒子を付着させるカソーディック電着が好ましい。該カチオン性粒子を設けることでより粗化し、同時に暗色が得られる。カチオン性粒子としては、銅粒子、銅と他の金属との合金粒子が適用できるが、好ましくは銅−コバルト合金の粒子である。該カチオン性粒子の粒径は、黒濃度の点から、平均粒径0.1〜1μm程度が好ましい。なお、ここで用いる暗色層48,58とは、暗色化された層のみでなく、粗化された層も含む。
なお、コントラストの低下を防止する観点から、暗色層48,58に関しては、その色味がL*a*b*表色系(CIE1976)において、a*が−5.0〜3.0、b*が−5.0〜4.0であることが好ましい。暗色層48,58の色味の測定条件は、C光源、観測視野2°であり、導電体メッシュ45a,55aの開口率が95%以上である電極40,50の背面に黒色アクリル板を配置した状態で測定するものとする。
なお、図7は、導電体メッシュ45a,55aをなす導線46,56の断面形状を示しているが、電極40,50の導電体メッシュ45a,55a以外の部分も、幅が異なるだけで、導電体メッシュ45a,55aをなす導線46,56と同様の断面形状を有するようにしてもよい。
例えば、取出電極42,52も、図7に示された検出電極45,55の導線46,56と同様の断面形状を有することができる。そして、取出電極42,52と検出電極45,55との間で、導電性金属層47,57は一体的に形成されていてもよい。ただし、取出電極42,52は、画像表示パネル10の非表示領域に対面する非アクティブエリアAa2内に配置されている。したがって、取出電極42,52は、暗色層45,58を有している必要はない。その一方で、暗色層48,58のパターニング等の煩雑さを回避するため、取出電極42,52が、検出電極45,55と同様に暗色層48,58を有するようにしてもよい。この場合、取出電極42,52と検出電極45,55との間で、暗色層48,58が一体的に形成されていてもよい。
なお図示された例において、電極40,50は導電性金属層47,57と暗色層48,58とを有するように構成されているが、これに限られず、電極40,50がさらに他の層を含んでいてもよい。電極40,50に含まれるべき他の層として、例えば、防錆層が例示される。
このような構成からなる電極40,50において、図7に示された導電体メッシュ45a,45bをなす導線46,56の幅(最大幅)W、すなわち、シート状からなるタッチパネルセンサ30のシート面に沿った幅(最大幅)Wを1μm以上5μm以下とし、且つ、図7に示された導電体メッシュ45a,45bをなす導線46,56の高さ(厚さ)H、すなわち、シート状からなるタッチパネルセンサ30のシート面への法線方向に沿った高さ(厚さ)Hを0.1μm以上2μm以下とすることが好ましい。このような寸法の導電体メッシュ45a,45bによれば、導線46,56が十分に細線化されているので、電極40,50を極めて効果的に不可視化することができる。同時に、断面形状において平行となる基端面46a,56aおよび先端面46b,56bの間の高さが十分な高さとなり、すなわち、導線46,56の断面形状のアスペクト比(H/W)が十分に大きくなり、高い導電性を有するようになる。結果として、導電性メッシュ55における面抵抗率を50Ω/□以下、さらに好ましくは20Ω/□以下にすることも可能となる。
すなわち、このような断面寸法を有した導線46,56によれば、タッチパネルセンサ30の電極40,50を低抵抗に維持しながら、当該電極40,50をなす導線46,56を細線化することができる。細線化した導線46,56によれば、高精細化された画素との組み合わせにおいて、或いは、タブレットと呼ばれる携帯端末の短ピッチ配列された画素との組み合わせにおいても、十分に検出電極45,55を不可視化しながら、高い検出精度を発揮することができる。
なお、シート状からなるタッチパネルセンサ30のシート面に沿った幅Wは、電極40の不可視化の観点から、5.0μm以下であることが好ましく、3.5μm以下であることがさらに好ましく、面抵抗率を低下させる観点から、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがさらに好ましい。また、シート状からなるタッチパネルセンサ30のシート面への法線方向に沿った高さ(厚さ)Hは、電極40の製造精度を安定させる観点から、2.0μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがさらに好ましく、面抵抗率を低下させる観点から、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましい。加えてここで説明した作用効果を確保する観点から、細導線60の断面形状のアスペクト比(H/W)は、0.04以上2.00以下であることが好ましく、0.67以上7.00以下であることがより好ましい。
以上のような構成からなるタッチパネルセンサ30では、センサフィルム31,32の透明樹脂フィルム34,35上に、導線46,56が形成されている。そして、導線46,56の厚みは、非常に薄くなっている。このため、タッチパネルセンサ30が優れた柔軟性及び可撓性を有するようになる。そして、十分に薄く形成された導線46,56は、タッチパネルセンサ30が変形する際に、可撓性を有した透明樹脂フィルムに追従して柔軟に変形することができる。また、図示された導線46,56は、透明樹脂フィルム上に位置する基端面46a,56aと、基端面46a,56aに対向して配置された平坦な先端面46b,56bと、を有しており、先端面46b,56bは基端面46a,56aと平行である。すなわち、先端面46b,56bは、エッチングにより形成された浸食面ではない。このため導線46,56は、タッチパネルセンサ30が変形性する際に、可撓性を有した透明樹脂フィルムに追従してより柔軟に変形することができる。加えて、そもそも、導線46,56は、ITOに代表される透明な金属酸化物と比較して、透明樹脂フィルム34,35に対して優れた密着性を持つようになり、導線46,56の割れや透明樹脂フィルム34,35からの剥離を効果的に回避することができる。実際に、以上の形状及び寸法からなるタッチパネルセンサ30によれば、JIS K 5600−5−1に準拠して、φ30mmの円筒形マンドレル法の曲げ試験を行った場合に、導線46,56の割れや透明樹脂フィルム34,35からの剥離が確認されなかった。
((タッチパネルセンサの変形例))
なお、図7〜図9に示すタッチパネルセンサ30は一例に過ぎず、図10〜図23に示すように、種々の変更が可能である。ここでは、タッチパネルセンサ30のいくつかの変形例について説明する。
図8及び図9に示されたタッチパネルセンサ30では、各検出電極45,55がアクティブエリアAa1内に配置された細長い矩形状の導電体メッシュ45a,55aとして形成されているが、これに限られない。図10に示された例では、各検出電極45,55が、その長手方向に間隔を明けて配列された多数の導電性メッシュ45a,55aと、隣り合う二つの導電性メッシュ45a,55aの間を接続する接続導線45c,55cと、を有している。各検出電極45,55は、導電性メッシュ45a,55aおよび接続導線45c,55cにより、アクティブエリアAa1内を直線状に延びている。各検出電極45,55が配置されている領域の幅は、導電性メッシュ45a,55aが設けられている部分において太くなっている。第1電極40に含まれる各第1検出電極45は、第2電極50に含まれる多数の第2検出電極55と交差している。そして、図10に示すように、第1電極40の第1検出電極45は、その接続要素45cにおいて、第2電極50の第2検出電極55の接続要素55cと交差している。したがって、第1検出電極45の導電体メッシュ45aは、隣り合う二つの第2検出電極55の間に配置され、第2検出電極55の導電体メッシュ55aは、隣り合う二つの第1検出電極45の間に配置されている。
また、図11に示された例では、第1センサフィルム31の第1電極40は、第1透明樹脂フィルム34の画像表示パネル側の面上に配置され、第2センサフィルム32の第2電極50は、第2透明樹脂フィルム35の画像表示パネル側の面上に配置されている。第1電極40の第1暗色層48は、第1金属層47の観察者側となる第1透明樹脂フィルム34上に配置され、第1金属層47を観察者側から覆っている。第2電極50の第2暗色層58は、第2金属層57の観察者側となる第2透明樹脂フィルム35上に配置され、第2金属層57を観察者側から覆っている。
さらに、図12に示された例では、タッチパネルセンサ30が、単一のセンサフィルム33を含んでいる。センサフィルム33は、透明樹脂フィルム36と、透明樹脂フィルム36の観察者側の面上に配置された第1電極40と、透明樹脂フィルム36の画像表示パネル側の面上に配置された第2電極50と、を有している。第1電極40の第1金属層47は、第1暗色層48の画像表示パネル側となる透明樹脂フィルム36の観察者側の面上に配置され、第1暗色層48によって観察者側から覆われている。一方、第2電極50の第2暗色層58は、第2金属層57の観察者側となる透明樹脂フィルム36の画像表示パネル側の面上に配置され、第2金属層57を観察者側から覆っている。図12に示されたタッチパネルセンサ30によれば、薄型化されているので、より優れた可撓性を呈するようになる。
さらに、図10に示されたパターンの第1電極40及び第2電極50は、単一の透明樹脂フィルム36の同一の面上に形成することができる。ただし、この例においては、第1電極40の接続要素45cと第2電極50の接続要素55cとが交差するため、図13に示すように、接続要素45c及び接続要素55cの間に絶縁層39が設けられている。図13に示されたタッチパネルセンサ30も、薄型化されていることから、より優れた可撓性を呈するようになる。
さらに、図14に示された例においては、透明樹脂フィルム36の画像表示パネル側の面上に接合層38が設けられており、接合層38の画像表示パネル10側の面上に第2電極50が設けられている。すなわち、接合層38は、透明樹脂フィルム36の片側のみに設けられている。より具体的には、接合層38は、透明樹脂フィルム36の画像表示パネル側の面上に設けられている。図14に示された例において、接合層38は、透明樹脂フィルム36の画像表示パネル側の面上にベタで設けられ、すなわち、透明樹脂フィルム36の画像表示パネル側の面上に隙間無く面状の領域に設けられている。
接合層38は、第2電極50を透明樹脂フィルム36に接合するための層である。接合層38をなす材料は、第2電極50を透明樹脂フィルム36に接合し得る範囲で特に限定されることはない。一例として、接合層38は、いわゆるリワーク性(一度剥がした後に再接合可能である性質)を有した粘着剤からなる粘着層ではなく、リワーク性を持たない接着剤からなる接着層として形成されていることが好ましい。例えば、接合層38は、硬化性樹脂の硬化物からなる接着層であることが好ましい。接合層38が硬化性樹脂の硬化物からなる接着層である場合には、タッチパネルセンサ30が用いられる環境条件の変化(温度変化や湿度変化等)にともなって第2電極50の第1電極40に対する相対位置が変化することを、効果的に抑制することができる。これにより、安定して優れた位置検出精度を確保することが可能となる。
図14に示されたタッチパネルセンサ30では、接合層38を介して、第2電極50が、透明樹脂フィルム36に接合されている。したがって、第2電極50の透明樹脂フィルム36への密着性が向上し、第2電極50が透明樹脂フィルム36に安定して密着し続けるようになる。これにより、画像表示装置1を湾曲させた状態で使用した場合においても、或いは、変形を繰り返しながら画像表示装置1を使用した場合においても、タッチパネル装置2が外部導体(例えば、指)の位置検出機能を安定して有効に発揮し続けることができる。
また、導電性金属層47,48は、単層である必要はなく、複数の層として構成されていてもよい。図14に示された例では、透明樹脂フィルム36の観察者側の面上に直接に積層された第1導電性金属層47は、透明樹脂フィルム36側に位置する基材側導電性金属層47aと、第1暗色層48側に位置する表層側導電性金属層47bと、を含んでいる。このような構成によれば、透明樹脂フィルム36と直接接触する基材側導電性金属層47aを、透明樹脂フィルム36との密着性に優れた材料、例えば、ニッケルやニッケル合金から形成することができる。その一方で、透明樹脂フィルム36と接触しない表層側導電性金属層47bを、導電率に優れ且つ安価な材料、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金から形成することができる。これにより、第1電極40の透明樹脂フィルム36への密着性が向上し、第1電極40が透明樹脂フィルム36に安定して密着し続けるようになる。これにより、画像表示装置1を湾曲させた状態で使用した場合においても、或いは、変形を繰り返しながら画像表示装置1を使用した場合においても、タッチパネル装置2が外部導体(例えば、指)の位置検出機能を安定して有効に発揮し続けることができる。
ところで、図14に示されたタッチパネルセンサ30では、第1暗色層48及び第2暗色層58が、いずれも透明樹脂フィルム36に接触していない。すなわち、第1暗色層48及び第2暗色層58を、いずれも透明樹脂フィルム36上に形成する必要がなく、金属層47,57上に形成すればよい。一般に黒化膜に代表される暗色膜は、樹脂製のフィルムに対して低密着性を示す。このため、透明樹脂フィルム36上に積層される暗色膜の材料は、制約を受け、結果としてコスト面や取り扱い面において劣っていた。その一方で、黒化膜に代表される暗色膜は、金属材料からなる膜に対しては比較的に良好な密着性を示す。このため、種々の方法を採用しながら種々の材料を用いて、金属層47,57上に暗色層48,58を形成することができる。すなわち、暗色層48,58の材料選択における自由度、及び、暗色層48,58の作製方法選択における自由度を大幅に改善することができる。
さらに、図15に示された例においては、第1電極40の幅が一定ではない。透明樹脂フィルム36に対して高い密着性を示す基材側導電性金属層47aの幅Waが、表層側金属層47bの幅Wbよりも太くなっている。そして、図15に示すように、表層側金属層47bは、基材側金属層47aの上方となる領域内に配置されている。すなわち、タッチパネルセンサ30のシート面への法線方向からの観察において、基材側金属層47aが、表層側金属層47bの外輪郭の内側に配置されている。このようなタッチパネルセンサ30によれば、表層側金属層47bが透明樹脂フィルム36から完全離間する。そして、明樹脂フィルム36に優れた密着性を有し得る基材側金属層47aのみが、透明樹脂フィルム36と接触している。この結果、剥離の起点が形成され難くなり、第1電極40が透明樹脂フィルム36により安定して密着し続けるようになる。
((タッチパネルセンサの製造方法))
ここで、タッチパネルセンサ30の製造方法の一例について説明する。以下では、図14に示されたタッチパネルセンサ30を製造する方法について、主として、図16〜図23を参照しながら説明する。
まず、図16に示すようにして第1積層体70を準備し、また、図17に示すようにして第2積層体75を準備する。第2積層体75の準備は、第1積層体70の準備の前に行っても良いし、第1積層体70の準備の後に行っても良いし、或いは、第1積層体70の準備と並行して行っても良い。その後、第1積層体70および第2積層体75から中間積層体80を作製し、中間積層体80からタッチパネルセンサ30を作製する。以下、各工程について順に説明していく。
(第1積層体70の製造)
まず、図16を参照して、第1積層体70を準備する工程について説明する。図16(c)に示すように、第1積層体70は、透明樹脂フィルム36、第1導電性金属膜71及び第1暗色膜72をこの順で含んでいる。第1積層体70を作製するにあたり、まず、透明樹脂フィルム36を準備する。第1積層体70の透明樹脂フィルム36は、センサフィルム33の透明樹脂フィルム36をなすようになる。したがって、第1積層体70の透明樹脂フィルム36の材料は、タッチパネルセンサ30の透明樹脂フィルム用の材料として例示した材料を適宜選択して用いることができる。また、以下に説明する第1積層体70の製造方法によれば、透明樹脂フィルム36に加えられる負荷、とりわけ熱負荷は大きくならない。したがって、透明樹脂フィルム36の厚みは、25μm以上300μm以下と薄くすることもできる。
次に、透明樹脂フィルム36の片側の面上に、第1導電性金属膜71及び第1暗色膜72を順に作製する。第1導電性金属膜71及び第1暗色膜72は、パターニングされることにより、タッチパネルセンサ30の第1電極40を形成するようになる。このうち、第1導電性金属膜71が、第1電極40の第1導電性金属層47を形成し、第1暗色膜72が、第1電極40の第1暗色層48を形成する。
また、図示された例では、第1導電性金属膜71は、透明樹脂フィルム36上に形成された基材側導電性金属膜71aと、基材側導電性金属膜71aの透明樹脂フィルム36とは反対側に形成された表層側導電性金属膜71bと、を有している。基材側導電性金属膜71aは、第1導電性金属層47の基材側導電性金属層47aを形成し、表層側導電性金属膜71bは、第1導電性金属層47の表層側導電性金属層47bを形成するようになる。図16(a)では、透明樹脂フィルム36の面上に、基材側導電性金属膜71aが形成されている。図16(b)では、基材側導電性金属膜71aの透明樹脂フィルム36とは逆側の面上に、表層側導電性金属膜71bが形成されている。そして、図16(c)では、表層側導電性金属膜71bの基材側導電性金属膜71aとは逆側の面上に、第1暗色層48bが形成されている。
上述した厚みの第1電極40を作製する観点から、基材側導電性金属膜71aの厚みは、10nm以上100nm以下とすることができる。また、表層側導電性金属膜71bの厚みは、0.1μm以上3.0m以下とすることができる。さらに、第1暗色膜72の厚みは、10nm以上100nm以下とすることができる。
基材側導電性金属膜71aは、銅箔等の金属箔を接着層を介して基材にラミネートしたものから形成するのではなく、接着層を介さずに透明樹脂フィルム36上に直接的に形成する。また、表層側導電性金属膜71bも、銅箔等の金属箔を接着層を介して基材にラミネートしたものから形成するのではなく、接着層を介さずに基材側導電性金属膜71a上に直接的に形成する。すなわち、入手可能な特定の厚みを有した金属箔を積層するのではなく、透明樹脂フィルム36または基材側導電性金属膜71a上に所望の厚みを有した基材側導電性金属膜71a及び表層側導電性金属膜71bを成膜する。基材側導電性金属膜71a及び表層側導電性金属膜71bの成膜方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、電界めっき法及び無電界めっき法を含むめっき法、CVD法、イオンプレーティング法又はこれらの二以上を組み合わせた方法を採用することができる。
上述したように、第1電極40の高さ(厚さ)Hを0.2〜2μm程度とするため、0.2〜2μmの厚みで第1導電性金属膜71を成膜しようとすると、蒸着を採用することが好ましい。蒸着によれば、0.2〜2μmの厚みの第1導電性金属膜71、とりわけ0.5μm以上の厚みの第1導電性金属膜71を比較的に短時間で安価に製造することができる。図示された例では、第1導電性金属膜71が基材側導電性金属膜71aと表層側導電性金属膜71bとを含んでおり、基材側導電性金属膜71a及び表層側導電性金属膜71bを、それぞれ、別の材料を用いて真空蒸着法により形成することができる。
また、別の方法として、スパッタリングと他の方法、例えばスパッタリングと電界めっきとを含む複数工程にて、第1導電性金属膜71を成膜することも有効である。スパッタリングによれば、密着性に優れた下地層を形成することができ、且つ、その後の電界メッキによって、第1導電性金属膜71の厚みを比較的迅速に所望の厚みまで増加させることができる。さらに、図示された例のように、第1導電性金属膜71が基材側導電性金属膜71aと表層側導電性金属膜71bとを含む場合には、基材側導電性金属膜71aを真空蒸着法やスパッタリング法により作製し、その後に、表層側導電性金属膜71bを電界めっき法によって作製することもできる。
なお、第1導電性金属膜71の材料は、既に説明したタッチパネルセンサ30の第1導電性金属層47用の材料を用いることができる。例えば、透明樹脂フィルム36に接触する第1導電性金属膜71の基材側導電性金属膜71aの材料は、透明樹脂フィルム36との密着性に優れた材料、例えば、ニッケルやニッケル合金とすることができる。また、透明樹脂フィルム36から離間した第1導電性金属膜71の表層側導電性金属膜71bの材料は、導電率に優れ且つ安価な材料、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金とすることができる。なお、透明樹脂フィルムへの密着性に優れた基材側金属層47a(基材側導電性金属膜71a)を設けることに代えて、透明樹脂フィルムの第1金属層47(第1導電性金属膜71)が形成される側の面が、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂の硬化物からなる密着強化層によって形成されるようにしてもよい。
透明樹脂フィルム36上に第1導電性金属膜71を形成した後、透明樹脂フィルム36から離間した第1導電性金属膜71の面上に、第1電極40の第1暗色層48を構成するようになる第1暗色膜72を成膜する。既に説明したように、第1導電性金属膜71の表層部分を黒化処理して、第1導電性金属膜71の一部分に金属酸化物や金属硫化物からなる第1暗色膜72を形成してもよい。また、スパッタリング法、真空蒸着法、電界めっき法及び無電界めっき法を含むめっき法、CVD法、イオンプレーティング法、又は、これらの二以上を組み合わせた方法により、第1導電性金属膜71上に第1暗色膜72を設けるようにしてもよい。
以上のようにして、第1積層体70が製造され得る。一般に、多くの黒化膜(暗色膜)が、樹脂製シートに対して弱い密着性しか示さないため、従来、黒化膜の材料選択の自由度は非常に制約されてきた。しかしながら、以上に説明した方法では、第1暗色膜72を、樹脂製の透明樹脂フィルム36上ではなく、第1導電性金属膜71上に形成すればよい。このため、上述したように、種々の方法を採用しながら種々の材料を用いて、第1導電性金属膜71上に第1暗色膜72を形成することができる。また、第1積層体70の製造において、透明樹脂フィルム36の片側のみに、成膜処理を行う。したがって、透明樹脂フィルム36への負荷が大きくなり過ぎることを回避することができ、真空蒸着法等の高温処理によって、透明樹脂フィルム36が大きく損傷してしまうことを防止することができる。このため、透明樹脂フィルム36の材料選択の自由度が増し、加えて、透明樹脂フィルム36の厚みを薄くすることも可能となる。さらに、透明樹脂フィルム36の片側のみに成膜処理が行われており、透明樹脂フィルム36の一方の面が、第1積層体70の一方の面となっている。このため、第1積層体70は取り扱い性に優れ、透明樹脂フィルム36上に成膜された薄膜を損傷してしまうことを効果的に抑制することができる。これにより、第1積層体70の歩留まり、最終的にはタッチパネルセンサ30の歩留まりを改善することができる。
(第2積層体75の製造)
次に、図17を参照して、第2積層体75を準備する工程について説明する。図17(b)に示すように、第2積層体75は、支持体78、第2導電性金属膜76及び第2暗色膜77をこの順で含んでいる。第2積層体75を作製するにあたり、まず、支持体78を準備する。第2積層体75の支持体78は、最終的に廃棄され、タッチパネルセンサ30の一部分を構成するものではない。したがって、支持体78の材料は、特に限定されることなく種々の材料、例えば樹脂や紙を用いることができ、また不透明な材料を用いることもできる。なお、図示された例においては、後述する第2導電性金属膜76との剥離を円滑に行うため、支持体78の一方の面に剥離層78aが設けられている。剥離層78aは、シリコーン等の剥離剤の塗膜として形成され得る。
この支持体78の片側の面、図示された例では、支持体78の剥離層78a上に、第2導電性金属膜76及び第2暗色膜77を順に作製する。第2導電性金属膜76及び第2暗色膜77は、パターニングされることにより、タッチパネルセンサ30の第2電極50を形成するようになる。このうち、第2導電性金属膜76が、第2電極50の第2導電性金属層57を形成し、第2暗色膜77が、第2電極50の第2暗色層58を形成する。図17(a)では、支持体78上に、第2導電性金属膜76が形成されている。図17(b)では、第2導電性金属膜76の支持体78とは逆側の面上に、第2暗色膜77が形成されている。上述した厚みの第2電極50を作製する観点から、第2導電性金属膜76の厚みは、0.1μm以上3.0μm以下とすることができ、第2暗色膜77の厚みは、0.01nm以上100nm以下とすることができる。
第2導電性金属膜76は、銅箔等の金属箔を接着層を介して基材にラミネートしたものから形成するのではなく、接着層を介さずに支持体78上に直接的に形成する。すなわち、入手可能な特定の厚みを有した金属箔を積層するのではなく、支持体78上に所望の厚みを有した第2導電性金属膜76を成膜する。第2導電性金属膜76の成膜方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、電界めっき法及び無電界めっき法を含むめっき法、CVD法、イオンプレーティング法、又は、これらの二以上を組み合わせた方法を採用することができる。上述したように、第2電極50の高さ(厚さ)Hを0.1〜2μm程度とするため、0.2〜2μmの厚みで第2導電性金属膜76を成膜しようとすると、蒸着を採用することが好ましい。蒸着によれば、0.2〜2μmの厚みの第2導電性金属膜76、とりわけ0.5μm以上の厚みの第2導電性金属膜76を比較的に短時間で安価に製造することができる。また、別の方法として、スパッタリングと他の方法、例えばスパッタリングと電界めっきとを含む複数工程にて、第2導電性金属膜76を成膜することも有効である。
第2導電性金属膜76の材料は、既に説明したタッチパネルセンサ30の第2導電性金属層57用の材料を用いることができる。なお、後述するように、支持体78は、第2導電性金属膜76から剥がされるようになる。したがって、第2導電性金属膜76は、支持体78に対して優れた密着性を有する必要はない。このため、第2導電性金属膜76は、導電率に優れ且つ安価な材料、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金からなる単層とすることが有効である。支持体78上に第2導電性金属膜76を形成した後、支持体78から離間した第2導電性金属膜76の面上に、第2電極50の第2暗色層58を構成するようになる第2暗色膜77を成膜する。既に説明したように、また第1暗色膜72と同様にして、第2導電性金属膜76上に第2暗色膜77を設けるようにしてもよい。
以上のようにして、第2積層体75が製造され得る。一般に、多くの黒化膜(暗色膜)が、樹脂製シートに対して弱い密着性しか示さないため、従来、従来、黒化膜の材料選択の自由度は非常に制約されてきた。しかしながら、以上に説明した方法では、第2暗色膜77を、比較的に相性の良い金属材料からなる第2導電性金属膜76上に形成すればよい。このため、上述したように、種々の方法を採用しながら種々の材料を用いて、第2導電性金属膜76上に第2暗色膜77を形成することができる。また、第2積層体75の製造において、支持体78の片側のみに、成膜処理を行う。したがって、支持体78への負荷が大きくなり過ぎることを回避することができ、真空蒸着法等の高温処理によって、支持体78が大きく損傷してしまうことを防止することができる。このため、支持体78の材料選択の自由度が増し、加えて、支持体78の厚みを薄くすることも可能となる。さらに、支持体78の片側のみに成膜処理が行われており、支持体78の一方の面が、第2積層体75の一方の面となっている。このため、第2積層体75は取り扱い性に優れ、支持体78上に成膜された薄膜を損傷してしまうことを効果的に抑制することができる。これにより、第2積層体75の歩留まり、最終的にはタッチパネルセンサ30の歩留まりを改善することができる。
(中間積層体80の製造)
次に、図18及び図19を参照して、中間積層体80を準備する工程について説明する。図18に示すように、接合層38を介して、第1積層体70と第2積層体75とを接合する。この際、第1積層体70の透明樹脂フィルム36と、第2積層体75の第2暗色膜77とが向き合うように、第1積層体70及び第2積層体75を積層する。
ここで、第1積層体70と第2積層体75とを接合する接合層38は、最終的に、タッチパネルセンサ30の接合層38を形成するようになる。この接合層38は、タッチパネルセンサ30において、第1電極40と第2電極50との間に位置する。したがって、タッチパネルセンサ30が配置された環境の条件変化によって、第1電極40の第1検出電極45と第2電極50の第2検出電極55との相対位置が変化しないよう、接合層38は、環境条件の変化に対して耐性を有していることが好ましい。この点から、接合層38は、いわゆるリワーク性(一度剥がした後に再接合可能である性質)を有した粘着剤からなる粘着層ではなく、リワーク性を持たない接着剤からなる接着層として形成されていることが好ましい。例えば、接合層38は、硬化性樹脂の硬化物からなる接着層であることが好ましい。このような接合層38として、アクリル系の接着層を例示することができる。
接合層38が硬化性樹脂からなる場合、まず、未硬化状態の原材料を、第1積層体70と第2積層体75との間に塗布する。次に、第1積層体70と第2積層体75とを積層した状態で、当該原材料を硬化させる。これにより、第1積層体70及び第2積層体75を接合層38で接合してなる積層物が得られる。
次に、図19に示すように、第1積層体70、接合層38及び第2積層体75がこの順番で接合された積層物から、第1積層体70の支持体78を剥ぎ取る。図示された例では、支持体78の第2導電性金属膜76に対面する面が、剥離層78aとなっている。したがって、第1積層体70、接合層38及び第2積層体75からなる積層物から、支持体78だけを、円滑かつ安定して分離させることができる。ただし、剥離層78aを設けることは必須ではなく、支持体78と第2導電性金属膜76との接合力(密着力)が、他の層の間での密着力、とりわけ第2導電性金属膜76と第2暗色膜77との接合力(密着力)及び第2暗色膜77と接合層38との接合力(密着力)よりも弱くなっていればよい。このような接合力の調整は、各層に用いられる材料の選択、とりわけ、支持体78をなす材料の選択によって、調整可能である。なお、層間の密着力の強さは、JIS K5600−5−7に規定されたプルオフ法によって、評価することができる。
以上のようにして、第2導電性金属膜76、第2暗色膜77、接合層38、透明樹脂フィルム36、第1導電性金属膜71及び第1暗色膜72をこの順で含む中間積層体80が、得られる。
(パターニング)
次に、図20〜図23を参照して、フォトリソグラフィー技術を用いたパターニングにより、透明樹脂フィルム36上の第1導電性金属膜71および第1暗色膜72を所望のパターンにて、パターニングする。同様に、フォトリソグラフィー技術を用いたパターニングにより、接合層38上の第2導電性金属膜76および第2暗色膜77を所望のパターンにて、パターニングする。
まず、図20に示すように、第1暗色膜72によって形成されている中間積層体80の一方の面上に、第1感光膜81を設け、第2導電性金属膜76によって形成されている中間積層体80の他方の面上に、第2感光膜86を設ける。ここでは、感光膜81,86は、特定波長域の光、例えば紫外線に対する感光性を有している。感光膜81,86の具体的な感光特性が特に限られることはない。例えば、感光膜81,86として、光硬化型の感光材が用いられてもよく、若しくは、光溶解型の感光材が用いられてもよい。ここでは、感光膜81,86として光硬化型の感光材が用いられる例を説明する。
(露光工程)
次に、図21に示すように、第1感光膜81上に第1マスク83を配置するとともに、第2感光膜86上に第2マスク88を配置する。マスク83,88は各々、後に形成される第1電極40及び第2電極50に対応したパターンで露光光を透過させる透過部83a,88aと、露光光を遮蔽する遮光部83b,88bと、を含んでいる。その後、図21に示すように、露光光を、マスク83,88を介して感光膜81,86に照射する。この結果、第1感光膜81および第2感光膜86が互いに異なるパターンで同時に露光される。
ここで本実施の形態によれば、中間積層体80は、遮光性を有する第1暗色膜72、第1導電性金属膜71,第2暗色膜77及び第2導電性金属膜76を有している。このため、第1感光膜81を透過した露光光は第1暗色膜72及び第1導電性金属膜71によって遮光される。また、第2感光膜86を透過した露光光は第2導電性金属膜76及び第2暗色膜77によって遮光される。従って、第1感光膜81を露光するために中間積層体80の観察者側から照射される露光光が第2感光膜86に到達することはなく、同様に、第2感光膜86を露光するために中間積層体80の画像表示パネル側から照射される露光光が第1感光膜81に到達することもない。この結果、この露光工程において、第1感光膜81および第2感光膜86を、それぞれ所望のパターンで精度良く同時に露光することができる。とりわけ、この露光工程では、第1マスク83及び第2マスク88が中間積層体80を挟んで対向して配置されている。したがって、第1マスク83及び第2マスク88の相対位置を極めて精度良く位置決めすることができる。結果として、製造されたタッチパネルセンサ30において、第1電極40及び第2電極50の相対位置が極めて高精度に位置決めされる。
(現像工程)
次に、露光された第1感光膜81および第2感光膜86を現像する。具体的には、感光膜81,86に対応した現像液を用意し、この現像液を用いて、感光膜81,86を現像する。これにより、図22に示すように、感光膜81,86のうち露光光が照射されていない部分が除去され、感光膜81,86が所定のパターンにパターニングされる。この結果、第1感光膜81が所定のパターンにパターニングされてなる第1レジストパターン82が、第1暗色膜72によって形成されている中間積層体80の一方の面上に形成される。また、第2感光膜86が所定のパターンにパターニングされてなる第2レジストパターン87が、第2導電性金属膜76によって形成されている中間積層体80の他方の面上に形成される。
(パターニング工程)
その後、図23に示すように、第1レジストパターン82をマスクとして、第1暗色膜72及び第1導電性金属膜71をエッチングする。このエッチングにより、第1暗色膜72及び第1導電性金属膜71が、第1レジストパターン82と略同一のパターンにパターニングされる。また、第2レジストパターン87をマスクとして、第2導電性金属膜76及び第2暗色膜77をエッチングする。このエッチングにより、第2導電性金属膜76及び第2暗色膜77が、第2レジストパターン87と略同一のパターンにパターニングされる。エッチング方法は特に限られることはなく、エッチング液を用いるウェットエッチングや、機械的なエッチングなどが適宜用いられる。ウェットエッチングが採用される場合、導電性金属膜71,76及び暗色膜72,77を構成する材料を溶解させることができるエッチング液が適宜選択される。例えば、塩化第2鉄水溶液、塩酸等をエッチング液として用いることができる。
なお、第1導電性金属膜71の基材側金属膜71aをなす材料と、表層側金属膜71bをなす材料とのエッチング液に対する耐性(エッチングレート)が異なる場合、基材側金属膜71aからなる基材側金属層47aの幅と、表層側金属膜71bからなる表層側金属層47bの幅が異なるようにすることができる。基材側金属膜71aをなす材料が、表層側金属膜71bをなす材料よりも、エッチング液に対して耐性を有する場合、図15に示すように、第1金属層47が作製され、基材側金属層47aの幅Waが表層側金属層47bの幅Wbよりも太くなる。例えば、基材側金属膜71aをなす材料がニッケルであり、表層側金属膜71bが銅、アルミ、又は、これらの合金である場合、図15に示された第1金属層47を作製することができる。
(感光膜の除去工程)
その後、第1レジストパターン82及び第2レジストパターン87を除去する。これによって、図5に示すように、パターニングされた第1暗色膜72及び第1導電性金属膜71によって形成された第1電極40が、観察者側に露出し、パターニングされた第2導電性金属膜76及び第2暗色膜77によって形成された第2電極50が、画像表示パネル側に露出する。以上のようにして、タッチパネルセンサ30が得られる。
ところで、従来、金属材料からなる検出電極は、透明基材上に、接着剤を介して金属箔を積層し、次に、パターニングされたレジストをマスクとして、金属箔をエッチングすることにより作製されてきた。ただし、工業的に製造されている金属箔の厚みは10μm以上である。このような厚みの金属箔をエッチングすることによって安定して作製され得る、金属導線の幅は少なくとも10μm以上となる。その理由は、図25に示すように、エッチング時に必然的に生じてしまう横方向への浸食(サイドエッチング)により、隣り合う浸食箇所がレジストの下方で繋がってしまうことにある。レジストの下方で浸食箇所が繋がってしまうと、当該レジスト部分はもはや安定して支持され得ない。結果として、当該レジスト部分の下方に形成されるべき金属導線は直線性に欠け、また、高さ(厚み)にばらつきが生じる。加えて、図25に示すように、得られた金属導線の断面形状は、基材から突出する三角形形状となる。このような金属導線は、幅が狭い上に高さも低いため、十分な導電率を呈することはない。したがって、このタッチパネルセンサの面抵抗率は高くなってしまい、位置検出のためのセンシング感度が低下する。さらに、このようなタッチパネルセンサを、突出した金属導線が観察者側を向くようにしてタッチパネル装置や表示装置に組み込んだ場合、必要な面抵抗率を有する金属導線が視認されやすくもなる。
一方、以上に説明した製造方法によれば、エッチングされる導電性金属膜71,76及び暗色膜72,77の厚みは、作製されるべき電極40,50の厚さと同一の厚さ、例えば0.1μm以上2μm以下とすることができる。そして、この厚みの導電性金属膜71,76及び暗色膜72,77をエッチングする場合、大きなサイドエッチングを引き起こすことなく、1μm〜5μm程度の細線化された電極40,50を作製することができる。すなわち、形成されるべき導線46,56の線幅に対して、導電性金属膜71,76及び暗色膜72,77の厚みが厚過ぎない。したがって、図25を参照して説明した金属箔を用いた場合と比較して、エッチングによる浸食箇所が、レジスト膜の下方で繋がってしまうことはない。これにより、安定して精度よく細線化された電極40,50(導線46,56)を作製することができる。加えて、形成されるべき導線46,56の線幅に対して、導電性金属膜71,76及び暗色膜72,77を適切な厚みに設定しておくことにより、形成された導線46,56の厚さ方向での断面形状を所望の形状、例えば所望のアスペクト比を有した形状とすることができる。
また、以上のような製造方法において、このタッチパネルセンサ30は、第1積層体70及び第2積層体75を用いて作製された中間積層体80をブランク(材料)として、製造され得る。第1積層体70及び第2積層体75を用いて中間積層体80を製造する際、透明樹脂フィルム36または支持体78の片面のみに、蒸着法、スパッタリング法、めっき法、CVD法、イオンプレーティング法、又は、これらの二以上を組み合わせた方法による成膜処理を行う。すなわち、透明樹脂フィルム36又は支持体78の両面に成膜処理を行う必要はない。したがって、透明樹脂フィルム36及び支持体78への負荷が大きくなり過ぎることを回避することができ、真空蒸着法等の高温処理によって、透明樹脂フィルム36又は支持体78が大きく損傷してしまうことを防止することができる。このため、透明樹脂フィルム36及び支持体78の材料選択の自由度が増し、加えて、透明樹脂フィルム36及び支持体78の厚みを薄くすることも可能となる。これにより、
タッチパネルセンサ30に優れた柔軟性及び可撓性を付与することができる。
さらに、第1積層体70及び第2積層体75を用いて中間積層体80を製造する際、透明樹脂フィルム36の片面のみに成膜処理が行われており、透明樹脂フィルム36の一方の面が、第1積層体70の一方の面となっている。また、支持体78の片面のみに成膜処理が行われており、支持体78の一方の面が、第2積層体75の一方の面となっている。このため、第1積層体70及び第2積層体75の取り扱い性が良く、透明樹脂フィルム36上に成膜された薄膜を損傷してしまうこと並びに支持体78上に成膜された薄膜を損傷してしまうことを効果的に抑制することができる。これにより、第1積層体70及び第2積層体75の歩留まり、最終的にはタッチパネルセンサ30の歩留まりを改善することができる。
以上のことから、本実施の形態によるタッチパネルセンサ30は、高い自由度で材料を選定しながら安定して製造され得る。また、タッチパネルセンサ30は、蒸着法、スパッタリング法、めっき法、CVD法、イオンプレーティング法、又は、これらの二以上を組み合わせた方法によって成膜された膜を、パターニングすることによって、形成され得る。このため、タッチパネルセンサ30の第1電極40及び第2電極50を十分に細線化することができる。さらに、第1電極40及び第2電極50は、両面露光を用いたフォトリソグラフィー技術によって、パターニングされる。したがって、第1電極40及び第2電極50を互いに対して高精度に位置決めすることも可能となる。
なお以上において、図14及び図15に示されたタッチパネルセンサ30を作製する方法を説明した。ただし、中間積層体(ブランク)80の層構成が適宜変更するとともに、上述した方法と同様のパターニング方法を採用することにより、図14及び図15に示されたタッチパネルセンサ以外のタッチパネルセンサ(センサフィルム)を製造することができる。
<作用効果>
以上のような第1の実施の形態によれば、センサフィルム31,32,33の透明樹脂フィルム34,35,36上に、導線46,56が形成されている。そして、導線46,56の厚みは、非常に薄くなっている。このため、タッチパネルセンサ30が優れた柔軟性及び可撓性を有するようになる。これにより、可撓性を有した画像表示パネル10の変形に追従して、タッチパネルセンサ30が柔軟に変形することができる。十分に薄く形成された導線46,56は、タッチパネルセンサ30が変形性する際に、可撓性を有した透明樹脂フィルムに追従して柔軟に変形することができる。
また、図示された導線46,56は、透明樹脂フィルム上に位置する基端面46a,56aと、基端面46a,56aに対向して配置された平坦な先端面46b,56bと、を有しており、先端面46b,56bは基端面46a,56aと平行である。すなわち、先端面46b,56bは、エッチングにより形成された浸食面ではない。このため導線46,56は、タッチパネルセンサ30が変形性する際に、可撓性を有した透明樹脂フィルムに追従してより柔軟に変形することができる。これに対して、図25を参照して説明した従来のタッチパネルセンサでは、金属導線の断面形状は、基材から突出する三角形形状となってしまう。このような断面形状の金属導線の剛性は高くなり、金属導線を支持する透明樹脂フィルムの変形に追従して変形し難くなる。このため、金属導線に割れが発生したり、金属導線が透明樹脂フィルムから剥離して断線しやすくなっていたが、本実施の形態によれば、このような従来の不具合に対処することができる。
加えて、そもそも、導線46,56は、ITOに代表される透明な金属酸化物と比較して、透明樹脂フィルム34,35に対して優れた密着性を呈する。
以上のことから、第1の実施の形態においては、電極40,50の透明樹脂フィルム34,35,36への密着性が大幅に改善され、電極40,50が透明樹脂フィルム34,35,36に安定して密着し続けるようになる。これにより、画像表示装置1を湾曲させた状態で使用した場合においても、或いは、変形を繰り返しながら画像表示装置1を使用した場合においても、導線46,56の割れや透明樹脂フィルム34,35,36からの剥離を有効に防止して、タッチパネル装置2が外部導体(例えば、指)の位置検出機能を安定して有効に発揮し続けることができる。
なお、画像表示装置1は、画像表示パネル10での外光反射に起因したコントラストの低下を防止すべく、円偏光板20を有している。この円偏光板20は、直線偏光板21、正のAプレート26a及び正のCプレート27aを有しており、正面方向に進む外光に加えて斜めに進む外光に対して反射防止機能を発揮しながら、十分に薄型化されている。したがって、この円偏光板20は、優れた可撓性を有しており、画像表示パネル10の変形に追従して変形することが可能である。以上のことから、この円偏光板20は、反射率が高くなる傾向のある有機EL表示パネルからなる画像表示パネル10との組み合わせにおいて有効である。
さらに、第1の実施の形態では、タッチパネルセンサ30が円偏光板20よりも観察者側に配置されている。したがって、複屈折性を有する光学異方性のフィルムを、タッチパネルセンサ30の透明基材として用いることができる。例えば、安価で安定性に優れたポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルムを、電極40,50を支持する透明樹脂フィルムとして用いることができる。ポリエステルフィルムは、吸湿性が低く、高温多湿の環境化においても変形等が生じ難いといった利点を、有している。また、延伸樹脂フィルムを透明樹脂フィルム34,35,36として用いることができる。透明樹脂フィルム34,35,36上の電極40,50は、通常、エッチングを用いてパターニングされるが、延伸樹脂フィルムは、エッチング液に対して優れた耐性を有する点において好ましい。すなわち第1の実施の形態では、透明樹脂フィルム34,35,36の材料選択の自由度が高い。これにより、電極40,50に対して優れた密着性を呈する材料のフィルムを選択することも可能となり、可撓性を有した画像表示装置1において、外部導体(例えば、指)の位置検出機能を安定して確保し続けることができる。
<<第2の実施の形態>>
次に、主として図24を参照しながら、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、円偏光板20がタッチパネルセンサ30よりも観察者側に配置されている点において、第1の実施の形態と異なっているが、その他において、第1の実施の形態と同一に構成することができる。以下、主として第1の実施の形態と異なる点について説明する。
図24に示すように、画像表示装置1は、第1の実施の形態と同様に、可撓性を有する画像表示パネル10と、画像表示パネル10と積層された円偏光板20及びタッチパネルセンサ30と、を有している。第2の実施の形態では、円偏光板20と画像表示パネル10との間に、タッチパネルセンサ30が設けられている。画像表示パネル10とタッチパネルセンサ30は、接合層6aによって接合されている。タッチパネルセンサ30と円偏光板20は、接合層6bによって接合されている。また、画像表示装置1は、表示面1aを形成するカバー層5を有している。カバー層5は、最も観察者側に配置されており、円偏光板20と接合層6cを介して接合されている。画像表示装置1内におけるカバー層5、円偏光板20、タッチパネルセンサ30、画像表示パネル10、及び、接合層6a,6b,6cは、第1の実施の形態と同様に構成することができる。
図24に示すように、円偏光板20は、直線偏光板21、接合層22及び光学変換層25を有している。図24に示された例において、直線偏光板21は、接合層6cを介してカバー層5と接合しているが、直線偏光板21が、カバー層5の鹸化された表面に形成されたポリビニルアルコール(PVA)によるフィルム材に、ヨウ素化合物分子を吸着配向させてなる層であってもよい。この例においては、接合層6cを省略することができる。
また第2の実施の形態においては、円偏光板20が、タッチパネルセンサ30よりも観察者側に配置されている。したがって、円偏光板20を設けることによって、画像表示装置1内に入射した外光のタッチパネルセンサ30での反射に起因した、コントラスト低下も低減することができる。このため、タッチパネルセンサ30から第1暗色層48,58を省くことができる。これにより、電極40,50の薄型化を実現し、電極40,50と透明樹脂フィルム34,35,36に対する密着性を強化することが可能となる。
なお、第2の実施の形態においては、光学変換層付きタッチパネルセンサ4が、タッチパネルセンサ30と、接合層6bと、光学変換層25と、を含んで構成されている。
以上のような第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
<<その他の形態>>
以上、本発明を図示する第1及び第2の実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、この他にも種々の形態にて実施可能である。
例えば、上述した実施の形態において、画像表示パネル10が、有機EL表示パネルからなる例を示したが、この例に限られず、画像表示パネル10は、液晶表示パネルであってもよし、プラズマディスプレイパネルであってもよい。また、上述した実施の形態において、画像表示装置1が円偏光板20を含む例について説明したが、この例に限られず、円偏光板20を画像表示装置1から省くことも可能である。