以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する写真以外の図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、本明細書において、「シート」、「板」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「シート」は板やフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念であり、したがって、「メッシュシート」は、「メッシュ板」や「メッシュフィルム」と呼ばれる部材と呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、シート「面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状(板状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(板状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。本実施の形態においては、メッシュシートのシート面、後述するメッシュシートの凹凸構造層のシート面、および、後述するメッシュシートの透明基材のシート面は、互いに平行となっている。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
<<メッシュシート及びメッシュ構造体>>
図1に示すように、メッシュ構造体20は、多数の開口領域21を画成するメッシュ状の部材である。図1及び図2に示すように、メッシュ構造体20は、開口領域21を画成する導電体25、例えば、金属から構成されている。この導電体25は、曲線状または直線状に延びる導電体本体部26を含んでいる。なお、導電体本体部26は、すべての部分において必ずしもいずれかの開口領域21の周縁を画成している必要はなく、端部が開口領域21内に位置する断線部分を含んでいてもよい。
ここで説明するメッシュ構造体20は、後述する凹凸構造層30を用いて形成さている。凹凸構造層30は、図3に示すように、例えばナノオーダーの間隔d1で設けられた、微小突起32によって形成された凹凸面31を有している。ここで、微小突起32の「微小」とは、メッシュ構造体20を従来のメッシュ構造体と比較して十分に微細化することができる程度に微細であることを意味しており、ナノオーダーの間隔で設けられた突起は十分に微小突起に含まれる。メッシュ構造体20は、この凹凸面31を利用して、凹凸面31上に形成されている。具体的には、図2に示すように、導電体25の導電体本体部26は、凹凸面31上のうちの微小突起32となる谷底部34上に設けられている。そして、ここで説明するメッシュ構造体20は、従来品と比較して大幅に微細化され、種々の用途において有用に機能する。
とりわけ、ここで説明するメッシュ構造体20では、導電体25の導電体本体部26の線幅w2の平均を5nm以上500nm以下とし、且つ、隣り合う開口領域21の間隔d2の平均を50nm以上1000nm以下とすることができる。導電体25の導電体本体部26の線幅w2の平均が5nm以上500nm以下となり且つ隣り合う開口領域21の間隔d2の平均が1000nm以下となっているメッシュ構造体20によれば、一般に、人間の目でメッシュ構造体20を解像することができなくなる。
ところで、導電体25の線幅w2や隣り合う二つの開口領域21の間隔d2等のメッシュ構造体20の各寸法や形状、並びに、後述する凹凸構造層30の各寸法や形状は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて、特定することができる。また、メッシュ構造体20の各寸法や形状、並びに、後述する凹凸構造層30の各寸法は、対象となるメッシュ構造体20や凹凸構造層30の全領域を調べてその平均値を算出して特定する必要はなく、実際的には、調査すべき対象(導電体25の線幅w2や隣り合う二つの開口領域21の間隔d2等)の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画内において、調査すべき対象のばらつきの程度を考慮して適当と考えられる数を調べてその平均値を算出することによって特定することができる。このようにして特定された値を、それぞれ、導電体25の線幅の平均値や、隣り合う二つの開口領域21の間隔の平均値として取り扱うことができる。例えば、直前で説明した値を目標として後述する製造方法により製造されるメッシュ構造体20においては、30mm×30mmの領域内に含まれる30箇所を顕微鏡により測定して平均を算出することにより、導電体25の線幅や開口領域21の大きさ等を特定することができる。
なお、一般的なメッシュ構造体は、例えば、蒸着法、スパッタリング法、箔の転写、塗工法等により、金属膜を透明基材上に形成し、この金属膜を所望のフォトレジストパターンをマスクにエッチングする方法、導電性感光剤(たとえばハロゲン化銀粒子を拡散させた乳剤など)を所望のパターンに露光・現像する方法、あるいは、導電性インキ(例えば、導電性金属粒子を分散させた導電性インキ)を透明基材上に所望のパターンで印刷する方法等の方法によって、透明基材上に形成することができる。ただし、導電体25の導電体本体部26の線幅w2の平均値や隣り合う二つの開口領域21の間隔d2の平均値が、上述した微細な範囲に設定されているメッシュ構造体20は、これらの従来既知の方法では作製することが不可能である。
また、本件発明者らは、メッシュ構造体20が、その微細構造に起因して単独で有用な作用効果を奏し得るだけでなく、凹凸構造層30と組み合わされたままの状態にて当該凹凸構造層30との有機的な関連により、優れた作用効果を奏し得ることを知見した。以下では、メッシュ構造体20及び凹凸構造層30を含むメッシュシート10について説明することにより、メッシュシート10の一部分をなすメッシュ構造体20についても説明していく。
上述したように、メッシュシート10は、微小突起32によって形成された凹凸面31を有する凹凸構造層30と、凹凸面31上のうちの微小突起32間となる谷底部34上に設けられた導電体25を含むメッシュ構造体20と、を有している。また、図2に示されたメッシュシート10は、凹凸構造層30と積層された透明基材15と、をさらに有している。以下、透明基材15、凹凸構造層30及びメッシュ構造体20についてこの順で説明していく。
<透明基材15>
透明基材15としては、既知の透明基材を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。透明体15に用いられる材料としては、例えば、透明樹脂や透明無機材料を例示することができる。透明樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマ一等を挙げることができる。一方、透明無機材料としては、例えばソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、PLZT等のセラミックス、石英、蛍石等を例示することができる。
メッシュ構造体20及び凹凸構造層30との組み合わせにおいて、後述するように、優れた透過性が、メッシュシート10の一つの有用な特徴となり得る。この観点から、透明基材15の可視光透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
なお、本件明細書において、「透明」とは、可視光透過率が50%以上あることを意味している。また、本明細書で言及する可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JISK0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
透明基材15の厚みは、メッシュシート10の用途に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、通常20〜5000μmであり、透明基材15は、ロールの形で供給されるもの、巻き取れるほどには曲がらないが負荷をかけることによって湾曲するもの、完全に曲がらないもののいずれであってもよい。
透明基材15の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有していてもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。また、透明基材15と凹凸構造層30とが別の材料から形成される場合には、透明基材15と金属薄膜30との密着性を向上させ、ひいては耐摩耗性を向上させるためのプライマー層を透明基材15上に形成してもよい。このプライマー層は、透明基材15および凹凸構造層30との双方に密着性を有し、透明であることが好ましい。プライマー層の材料としては、例えば、フッ素系コーティング剤及びシランカップリング剤等から適宜選択して使用することができる。フッ素系コーティング剤の市販品としては、例えば、フロロテクノロジー製のフロロサーフ FG−5010Z130等が挙げられ、前記シランカップリング剤の市販品としては、例えば、ハーベス製のデュラサーフプライマーDS−PC−3B等が挙げられる。
<凹凸構造層>
次に、凹凸構造層30について説明する。図3及び図4に示すように、凹凸構造層30は、微小突起32によって形成された凹凸面31を有している。
凹凸構造層30の凹凸面31は、凹凸構造層30のシート面に沿って間隔d1で配置された微小突起32によって形成されている。後述するように、凹凸構造層30の凹凸面31は、メッシュ構造体20の形成に利用される。メッシュ構造体20を微細化する観点からは、凹凸面31をなす微小突起32の間隔d1は、微細化されていることが好ましい。さらに、本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、凹凸面31をなす微小突起32の間隔d1が、可視光線帯域の最短波長以下の間隔d1で配列された微小突起32によって形成されている場合、凹凸構造層30が、メッシュ構造体20の機能に関連した有用な機能を発揮し得ることが知見された。すなわち、後述するように凹凸面31上に形成されたメッシュ構造体20を、凹凸構造層30から取り出すことなく、凹凸構造層30とともにメッシュシート10として利用することにより、メッシュ構造体20だけで利用するよりも有用な作用効果を奏し得る。この点から、以下の例においては、微小突起32が、可視光線帯域の最短波長以下の間隔で配列されている例について説明する。
ここで、可視光線帯域の最短波長は、メッシュ構造体20或いはメッシュ構造体20を含むメッシュシート10が使用される環境下における可視光線帯域の最短波長を指している。したがって、メッシュ構造体20又はメッシュシート10が使用される環境下に制限された光源からの光のみが存在する場合には、当該光源から射出される可視光の最短波長が、ここでいう可視光線帯域の最短波長となり、それ以外の場合には、一般的な可視光線帯域の最短波長として380nmを、ここでいう可視光線帯域の最短波長として採用する。
微小突起32が可視光線帯域の最短波長以下の間隔d1で配置されてなる凹凸面31を有した凹凸構造層30は、いわゆるモスアイ構造体として機能する。したがって、凹凸面31は、極めて優れた反射防止機能を発揮し、非常に高い透過率を示すようになる。具体的には、凹凸構造層30の可視光透過率、或いは、凹凸構造層30及び透明基材15を含む積層体の可視光透過率は、80%以上となっていることが好ましく、90%以上となっていることがより好ましい。また、凹凸構造層30の凹凸面31上での5°正反射による反射率が、0%以上0.3%以下となっていることが好ましく、0.1%以下となっていることがより好ましい。そして、以下に説明するようにして凹凸構造層30を形成すれば、このような特性を実現することができる。なお、本明細書で言及する正反射の反射率は、日本分光製の分光光度計V−7100と自動絶対反射率測定ユニットVAR−7010を用いてJIS Z8722に準拠して測定された値とする。
凹凸構造層30は、樹脂を含有してなる層とすることができ、更に、樹脂組成物の硬化物からなる層とすることができる。凹凸構造層30の形成に用いられる樹脂組成物は、少なくとも樹脂を含み、必要に応じて重合開始剤等その他の成分を含有する。凹凸構造層30の形成に用いられる樹脂として、例えば、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系等の電離放射線硬化性樹脂、アクリレート系、ウレタン系、エポキシ系、ポリシロキサン系等の熱硬化性樹脂、アクリレート系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の熱可塑性樹脂等の各種材料及び各種硬化形態の賦型用樹脂を用いることができる。
凹凸構造層30の形成に用いられる樹脂としては、微小突起32の成形性及び機械的強度に優れる点から電離放射線硬化性樹脂が好ましい。電離放射線硬化性樹脂とは、分子中にラジカル重合性及び/又はカチオン重合性結合を有する単量体、低重合度の重合体、反応性重合体を適宜混合したものであり、重合開始剤によって硬化されるものである。なお、非反応性重合体を含有してもよい。なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線等が挙げられる。
樹脂組成物は、さらに必要に応じて、界面活性剤、重合開始剤、離型剤、光増感剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、粘度調整剤、密着性向上剤等を含有することもできる。
次に、凹凸構造層30の寸法について説明する。モスアイ構造体による反射防止機能では、モスアイ構造体とこれに隣接する媒質との界面における有効屈折率を、厚み方向に連続的に変化させて反射防止を図るものである。このため、凹凸構造層30の凹凸面31は、凹凸構造層30のシート面に沿って可視光線帯域の最短波長以下の間隔d1で配列された微小突起32によって形成されている。ここで、この間隔d1に係る隣接する微小突起32とは、いわゆる隣り合う微小突起32であり、透明基材15側の付け根部分である微小突起の裾の部分が接している二つの突起である。凹凸構造層30では微小突起32が密接して配置されることにより、微小突起32間の谷の部位を順次辿るようにして線分を作成すると、平面視において各微小突起を囲む多角形状領域を多数連結してなる網目状の模様が作製されることになる。間隔d1に係る隣接する微小突起32は、この網目状の模様を構成する一部の線分を共有する突起である。また、間隔d1は、図2及び図3に示すように、メッシュシート10のシート面に沿った、隣接する二つの微小突起32の頂部33間の距離とすることができる。
ただし、凹凸構造層30に対して優れた反射防止機能を付与する観点からは、凹凸構造層30をなす微小突起32が次のように形成されていることがより好ましい。まず、凹凸構造層30の微小突起32は、メッシュシート10のシート面に沿って、可視光線帯域の最短波長としての380nm以下の間隔d1で設けられていることが好ましい。また、メッシュシート10のシート面への法線方向ndに沿った微小突起32の高さHは、1500nm以下50nm以上となっていることが好ましく、1200nm以下80nm以上となっていることがより好ましい。
また、凹凸構造層30の凹凸面31上における反射防止性能は、微小突起32のアスペクト比からも大きな影響を受ける。アスペクト比は、微小突起32の幅に対する微小突起32の高さHの比である。ただし、凹凸構造層30において、微小突起32の幅は微小突起32間の間隔d1と置き換えて取り扱うことが可能であり、したがって、アスペクト比は、微小突起32間の間隔d1に対する微小突起32の高さHの比(H/d1)として取り扱うことができる。凹凸構造層30に対して上記の優れた反射防止機能を付与する観点から、微小突起32のアスペクト比は、1.5以下0.5以上となっていることが好ましく、1.2以下0.8以上となっていることがより好ましい。
凹凸構造層30の厚みは、特に限定されないが、一例として10〜300μmとすることができる。なお、この場合の凹凸構造層30の厚みとは、図3に示すように、凹凸構造層30の透明基材15側の界面から、当該凹凸構造層30の凹凸面31をなす微小突起32の頂部33までの凹凸構造層30のシート面への法線方向ndに沿った高さt1を意味する。
なお、既に述べたように、凹凸構造層30の凹凸面31及び微小突起32に関する各種寸法及び形状は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて、特定することができる。図4は、実際に原子間力顕微鏡により求められた拡大写真である。
また、凹凸構造層30の各寸法は、対象となるメッシュ構造体20や凹凸構造層30の全領域を調べてその平均値を算出して特定する必要はなく、実際的には、調査すべき対象(微小突起32の間隔d2や突起の高さH等)の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画内において、調査すべき対象のばらつきの程度を考慮して適当と考えられる数を調べてその平均値を算出することによって特定することができる。例えば、直前で説明した値を目標として紫外線硬化製樹脂を賦型することによって作製された紫外線硬化製樹脂の硬化物からなる凹凸構造層30においては、30mm×30mmの領域内に含まれる30箇所を電子顕微鏡により測定して平均を算出することにより、微小突起32に関する各寸法、例えば微小突起32の間隔d2や突起の高さH等を、特定することができる。
ところで、図4に示された凹凸構造層30において、微小突起32は不規則的に配置されているが、微小突起32の配列は、不規則的でも規則的でもよい。ただし、干渉模様の発生を防止する観点からは、微小突起32の配列が不規則的であることが好ましい。
<メッシュ構造体>
次に、メッシュ構造体20について説明する。メッシュ構造体20は、多数の開口領域21を画成するメッシュ状の材料である。上述したように、メッシュ構造体20は、開口領域21を画成する導電体25、例えば、金属から構成されている。この導電体25は、曲線状または直線状に延びる導電体本体部26を含んでいる。図2に示すように、導電体25の導電体本体部26は、凹凸構造層30の凹凸面31のうちの微小突起32の間となる谷底部34に沿って延びている。
したがって、各開口領域21は、凹凸構造層30の微小突起32に対応して形成され、メッシュシート10において、開口領域21は、対応する微小突起32に貫通されている。このメッシュシート10において、開口領域21の間隔d2(図1参照)は、微小突起32間の間隔d1(図2及び図3参照)と置き換えて取り扱うことが可能となる。このようなことから、凹凸面31を微細化することによって、メッシュ構造体20を微細化することが可能となる。このため、微小突起32の間隔d1を小さくすることにより、開口領域21の間隔d1を小さくすることができ、且つ、導電体25の導電体本体部26の線幅w2を小さくすることができる。
また、図2に示されたメッシュシート10は、凹凸構造層30の凹凸面31の凹凸に対応した凹凸面を含むようになる。そして、メッシュシート10の凹凸面の凹凸は、凹凸構造層30の凹凸面31をなす微小突起32に対応して形成された突起によって形成される。
このようなメッシュ構造体20は、次のようにして形成することができる。まず、図7(a)に示すように、凹凸構造層30の凹凸面31上に、メッシュ構造体20をなすようになる材料25aを付着させる。材料25aを付着させる方法としては、特に限定されることなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等の気相法(ドライプロセス) が挙げられる。ただし、図7(a)及び図6(a)に示すように、材料25aの付着量は、材料25aが、凹凸面31上で膜を形成することなく、粒状として凹凸面31に付着することが好ましい。例えば、凹凸構造層30の微小突起32の寸法及び形状がより好ましい範囲として上述した寸法及び形状となっている場合には、例えば、後述する金属材料からなる材料25aの成膜厚を1nm以上50nm以下とすることができる。
なお、ここでいう成膜厚とは、凹凸構造層30の凹凸面31が仮に凹凸の無い平坦面であったと仮定した場合に形成される膜の厚みのことを意味している。そして、図6(a)及び図7(a)では、実際に、5nmの成膜厚で真空蒸着により金を凹凸面31上に付着させた状態を示している。
図6(a)及び図7(a)に示されているように、材料25aは、粒状にて、凹凸面31上に付着している。そして、図6(a)及び図7(a)に示すように、凹凸面31に材料25aを付着させて場合、より多くの材料25aが、隣り合う二つの微小突起32間となる谷底部34上に付着するようになる。そして、図5(a)及び図6(a)に示すように、材料25aの一部は、凹凸面31上において、微小突起32の周囲に形成される谷底部34上に並ぶようになる。ただし、材料25aは、凹凸面31上において、谷底部34以外の部分にも概ね均一に付着している。
次に、凹凸構造層30上に付着した材料25aに対してアニール処理を行う。ここでのアニール処理は、材料25aを単純に加熱するのではなく、材料25aに対してキセノンフラッシュランプ光や赤外線を照射する。より具体的には、200nm以上30μm以下の波長の光を、材料25aが付着した凹凸面31に面状に照射する。凹凸面31上の材料25aが、十分に微細化されている場合、典型的には、ナノオーダーの粒子状となっている場合、キセノンフラッシュランプ光や赤外線の照射によって、隣接して位置する金属製の材料25aが溶接、すなわち溶融して接合される。
このアニール処理によって、図5(a)に示されているように、線状に並べられていた多数の材料25aが、互いに溶接されて、図5(b)に示されているように、開口領域21を画成する導電体本体部26をなすようになる。また、図6及び図7からも理解され得るように、微小突起32の谷底部34以外の部分に付着していた粒状の材料25aは、アニール処理の進行とともに、近傍に位置する他の粒状の材料25aと溶接され且つ谷底部34の側へ寄っていく。このようにして、多くの材料25aが、アニール処理によって凹凸面31上において谷底部34に集まり、導電体本体部26を形成する。
ただし、アニール処理の程度によっては、材料25aのすべてが、谷底部34へ移動するわけでない。図7(b)によく示されているように、材料25aの一部は、アニール処理後においても、微小突起32の表面のうち、谷底部34と頂部33との間の側面や、さらには頂部33に残留することがある。このような材料25aは、作製されたメッシュ構造体20において、導電体本体部26から延び出した導電体延出部27を形成する。
導電体延出部27は、凹凸面31上において、微小突起32の表面上を、谷底部34から頂部33に向けて延び上がるようになる。すなわち、図2に示すように、凹凸面31上における或る仮想面上に凹凸面31の谷底部34が位置しており、導電体延出部27は、図2に二点鎖線で示すように、谷底部34上に形成された導電体本体部26とは、当該仮想面への法線方向に沿って(凹凸構造層30(メッシュシート10)のシート面への法線方向に沿って)、異なる位置に位置する。さらに言い換えると、メッシュ構造体20において、導電体延出部27は、導電体本体部26のうちの当該導電体延出部27と接続された部分が画成する開口領域21に対面し且つ開口領域21から仮想面への法線方向にずれた位置を延びている。すなわち、メッシュ構造体20は、三次元的な構造を有するようになる。なお、導電体延出部27の量、太さ、形状等は、アニール処理の条件によって制御することができる。
なお、導電体25をなすようになる材料25aとして、金属材料、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、及び、これらの合金の一以上を用いることができる。とりわけ、材料25aを凹凸面31上に粒状で付着させて導電体本体部26の線幅w2を微細化する観点からは、金、銀、銅、白金、及び、これらの合金の一以上を材料25として、真空蒸着法により、凹凸面31上に付着させることが好適である。
なお、以上のようなメッシュ構造体20において、面抵抗を低下させて高い導電性を付与する観点から、アニール処理後にめっき、例えば無電界めっきを行うようにしてもよい。めっきに用いられる材料として、例えば、銅、アルミニウム、クロム、ニッケル、及び、これらの合金の一以上を用いることができる。
また、用途に応じて、メッシュシート10からメッシュ構造体20を取り出すことも可能である。例えば、メッシュシート10のうち、透明基材15及びメッシュ構造体20が透明樹脂から構成されている場合、透明基材15及びメッシュ構造体20を化学的または物理的に溶解させることにより、金属からなるメッシュ構造体20だけを取り出すことができる。
<メッシュシート及びメッシュ構造体の作用効果>
以上のようなメッシュ構造体20は、導電性を有した導電体25から形成されている。したがって、メッシュ構造体20は、導電性に関連した何らかの機能を発揮することができる。
また、メッシュ構造体20は、開口領域21を画成する編み目状の形状を有しており、光透過性となっている。とりわけ、メッシュ構造体20は、非常に微細化されている。例えば、導電体25の導電体本体部26の線幅w2の平均が5nm以上500nm以下であり、且つ、隣り合う開口領域21の間隔d2の平均が1000nm以下であるようにすることもできる。このような、メッシュ構造体20の導電体本体部26は、一般に、人間の目では解像され得ない。すなわち、ここで説明したメッシュ構造体20は、視認されることを効果的に回避され得る。これにより、メッシュ構造体20の透過性を単に改善することが可能となるだけでなく、メッシュ構造体20が視認されることに起因した以下の不具合の発生も効果的に防止することができる。
まず、メッシュ構造体20をなす導電体25の線幅w2が十分に細くなっているので、ぎらつきや濃淡むらの発生を防止することができる。濃淡むらは、メッシュ構造体20のパターンにおける導電体25の密度分布の不均一性および導電体25の線幅の不均一性に起因して、局所的に透過率が減少する現象と考えられている。一方、ぎらつきは、メッシュ構造体のパターンにおける導電体25の密度分布の不均一性に起因して反射光量が局所的に増加する現象と考えられている。ここで説明するメッシュ構造体20によれば、導電体25の線幅の平均が500nm以下にまで細くなっているため、導電体25のライン部12自体が十分に不可視化され、濃淡むらやぎらつきが視認されにくくなる。
また、カラー表示可能な表示パネル上にメッシュ構造体を配置した場合、メッシュ構造体の導電体によって特定の画素が覆われてしまうことがある。一例として、赤色サブ画素、緑色サブ画素および青色サブ画素を含む典型的な画素にて白表示を行う場合、メッシュ構造体の導電体によって赤色サブ画素が覆われると白色ではなく水色に表示され、緑色サブ画素が覆われると白色ではなくマゼンダに表示され、青色サブ画素が覆われると白色ではなく黄色に表示される。このような現象は、ちらつきと呼ばれ、色再現性を低下させることになる。一方、ここで説明したメッシュ構造体20によれば、導電体25の線幅の平均が5nm以上500nm以下に設定されている。したがって、メッシュ構造体20の導電体25が特定の画素を塞いでしまうことはない。これにより、表示装置の色再現性を悪化させてしまうことはない。
同様に、メッシュ構造体20が微細化されているので、他の部材と重ね合わせられた際に生じ得るモアレを効果的に目立たなくさせることができる。とりわけ、例えば導電体本体部26の線幅w2の平均が5nm以上500nm以下となり且つ隣り合う開口領域21の間隔d2の平均が1000nm以下となるように、メッシュ構造体20が微細化されていると、開口領域21の配置の規則性の有無に依らず、もはや、メッシュ構造体20が他の部材と重ね合わせられた際にモアレを視認されなくすることができる。
モアレは、明暗の筋模様が視認されるようになる現象であり、メッシュ構造体のパターンの規則性(周期性)と、メッシュ構造体と重ねられる他の部材のパターンの規則性(例えば表示装置の画素配列の規則性)との干渉によって生じるとされている。したがって、メッシュ構造体20の開口領域21の配列ピッチを、他の部材の規則的パターンと干渉を生じ得ないピッチに調整しておくことにより、モアレを効果的に目立たなくさせることができる。一方、ここで説明したメッシュ構造体20では、導電体25の線幅が非常に細く設定されていることに加え、隣り合う二つの開口領域21の間隔d2も非常に小さく設定されている。したがって、これまで問題とされてきた部材との組み合わせにおいて発生し得るモアレ、例えば数十μmでサブ画素が配列されている典型的な表示パネルとの組み合わせで発生し得るモアレを、効果的に目立たなくさせることができる。加えて図示された例では、メッシュ構造体20の開口領域21の配列が周期的なパターンを有していない。したがって、極めて効果的にモアレの発生を抑制することができる。
さらに、メッシュ構造体20は、多くの場合、透明な基材上に支持されて使用される。一方、メッシュ構造体20は、凹凸構造層30の凹凸面31を利用して形成され得る。具体的には、メッシュ構造体20をなす導電体25の導電体本体部26は、凹凸面31をなす微小突起32の谷底部34上を延びている。この凹凸構造層30は、微小突起32が可視光線帯域の最短波長以下の間隔d1にて設けられている場合に、モスアイ構造体として機能する。すなわち、メッシュ構造体20を支持する凹凸構造層30は、極めて優れた反射防止機能を発揮することができ、これにより、映り込みを防止しながら高い透過率を示すことができる。
メッシュ構造体20自体の優れた可視光透過性と、凹凸構造層30の優れた反射防止機能に起因した優れた可視光透過性とによって、メッシュシート10は、メッシュ構造体20の導電性に関連した何らかの機能を発揮しながら、極めて優れた可視光透過性を呈することになる。導電性及び優れた可視光透過性を有するメッシュ構造体20の支持体として、極めて優れた反射防止機能を有した凹凸構造層30を適用することは、従来とは異質または際だって優れた作用効果、言い換えると技術水準から予測される範囲を超えた顕著な作用効果を、奏することを可能にしていると言える。
その一方で、メッシュ構造体20が非常に微細化されているため、メッシュ構造体20の単体での比表面積が非常に大きくなっている。このため、メッシュシート10からメッシュ構造体20を取り出して、メッシュ構造体20を凹凸構造層30とは別途に利用した際にも、メッシュ構造体20によって優れた作用効果が奏される。例えば、メッシュ構造体20を触媒担体として用いた場合には、微細化された触媒を多量に担持すること及び担持した触媒に起因した触媒反応を促進することが可能となる。とりわけ、導電体25が、導電体本体部26と、導電体本体部26から延び出る導電体延出部27と、を含んで立体的な構造を有している場合には、触媒反応の促進がより顕著となる。
ここで本件発明者らが、実際にメッシュシートを作製し、その透過率を測定した結果の一例を紹介する。
まず、メッシュシートは、原版を用いて電離放射線硬化型樹脂を賦型することにより凹凸構造層を形成し、その後、この凹凸構造層上にメッシュ構造体を作製した。
凹凸構造層を作製するための原版を次のようにして作製した。純度99.50%の圧延されたアルミニウム板を、その表面が、小さいうねりとして十点平均粗さRz30nm、且つ大きいうねりとして周期1μmの凹凸形状となるように研磨後、0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、陽極酸化を実施した。次に、第一エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第二エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径処理を行った。さらに、上記処理を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム基板上に微細な凹凸形状が形成された陽極酸化アルミニウム層が形成された。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、微細凹凸層形成用原版を得た。なお、アルミニウム層に形成された微細な凹凸形状は、平均隣接微細孔間距離が100nm、平均深さが200nmで、深さ方向に徐々に孔径が小さくなる多数の微細孔が密に形成された形状であった。
このようにして作製した原版を用い、次の方法で、凹凸構造層を作製した。まず、凹凸構造層を形成するための凹凸構造層形成用樹脂組成物は、ジペンタエリスリトールへキサアクリレート(DPHA)20重量部、アロニックスM−260(東亜合成社製)70重量部、ヒドロキシエチルアクリレート10重量部、及び光重合開始剤としてルシリンTPO(BASF社製)3重量部を混合することによって、作製した。その後、凹凸構造層形成用樹脂組成物を、凹凸構造層形成用原版の微細凹凸面が覆われ、硬化後の微細凹凸層の厚さが20μmとなるように塗布、充填し、その上に透明基材として厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フィルム社製)を斜めから貼り合わせた後、貼り合わせられた貼合体をゴムローラーで10N/cm2の加重で圧着した。原版全体に均一な組成物が塗布されたことを確認し、透明基材側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して凹凸構造層形成用樹脂組成物を硬化させた。次に、原版より剥離し透明基材と凹凸構造層との積層体(中間サンプルA)を得た。
その後、中間サンプルAの凹凸構造層の凹凸面上に、真空蒸着装置(アルバック社製、VPC−410)を用い、真空度8×10E−6Torrで、凹凸面上の領域と平面視において同面積となる平版材の表面に成膜した場合に5nmとなるような平面での換算膜厚5nmで金を蒸着することで中間サンプルBの物品を得た。目視により観察される色調としては青紫色を示した。
次に、中間サンプルBの物品を、フラッシュランプアニール装置(SINTRON2000、XENON社製)を用い、1251JのエネルギーでアニールすることでサンプルBの物品(メッシュシート)を得た。目視により観察される色調としては赤紫色を示した。なお、図6は、中間サンプルB及びサンプルBについて、SEMの反射電子により重元素のマッピングを行った像であり、図7は、中間サンプルB及びサンプルBについてのSTEM像である。中間サンプルBの物品には金のナノ粒子が形成されていた。一方、サンプルBの物品には金の細線が形成されていた。
中間サンプルBと同様に、金を銀に変更することで中間サンプルCの物品を得た。目視により観察される色調としては黄色を示した。中間サンプルCの物品を、フラッシュランプアニール装置(SINTRON2000、XENON社製)を用い、1501JのエネルギーでアニールすることでサンプルCの物品(メッシュシート)を得た。目視により観察される色調としては淡黄色を示した。
<反射防止性能の評価>
作製された各サンプルの反射率を評価した。黒アクリル板(三菱レイヨン製、製品名アクリライト)に粘着剤(パナック製、製品名パナクリーンPDR5)を介して、各サンプル実施例で得られた物品の透明基材側を貼合し、分光器(日本分光製、分光器V−7100と自動絶対反射率測定ユニットVAR−7010)にて反射率を測定した。結果を図8に示す。図8の結果から理解されるように、凹凸構造層の凹凸面(中間サンプルA)は極めて優れた反射防止機能を発揮していた。また、金属を蒸着された凹凸面(中間サンプルB,C)の反射率並びにメッシュ構造体を形成された凹凸面(サンプルB,C)の反射率も、0.3%程度であり、極めて低い値となっていた。すなわち、金属を蒸着された凹凸面(中間サンプルB,C)並びにメッシュ構造体を形成された凹凸面(サンプルB,C)は、広く利用されている低屈折率層からなる反射防止膜と比較して、格段に優れた反射防止機能を有していた。
<透過率の評価>
作製された各サンプルの透過率を評価した。分光器(島津製作所製、分光光度計UV−3100PC)にて測定することで、各サンプルに係る物品の波長380〜780nmでの透過率(%)の平均値を得た。中間サンプルAの透過率は95%であり、中間サンプルBの透過率は66%であり、サンプルBの透過率は67%であり、中間サンプルCの透過率は62%であり、中間サンプルCの透過率は69%であった。
<メッシュシート及びメッシュ構造体の具体的な適用例>
次に、メッシュ構造体20及びメッシュシート10の用途例を具体的に説明する。メッシュ構造体20及びメッシュシート10は、一例として、接地されて電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽材、タッチパネル装置のタッチパネルセンサ用の電極、可視光透過性を有したアンテナ、太陽電池の集電電極、結露防止用の発熱電極として、用いられ得る。
まず、図9に示すように、メッシュ構造体20及びメッシュシート10は、テレビジョン受像装置、各種測定機器や計器類、各種事務用機器、各種医療機器、電算機器、電話機、電飾看板、各種遊戯機器等の表示部に用いられるプラズマディスプレイ(PDP)装置、ブラウン管ディスプレイ(CRT)装置、液晶ディスプレイ装置(LCD)、電場発光ディスプレイ(EL)装置などの画像表示装置に、電磁波遮蔽材として、組み込まれ得る。
図9に示された例において、画像表示装置40は、画像を形成し得る画像形成装置(表示パネル、表示部)41と、画像形成装置41の出光側に配置された積層体45と、を有している。したがって、積層体45の出光面が、画像表示装置40の表示面(出光面)40aをなし、観察者は、画像形成装置41で形成された画像を、積層体45を介して観察することになる。この積層体45に、電磁波遮蔽シートとしてのメッシュシート10が、組み込まれている。メッシュシート10のメッシュ構造体20は、画像形成装置41の画像が形成される領域に延び広がっている。このメッシュ構造体20は、電磁波を効果的に遮蔽することができる一方で、その線幅を細く設定されることにより、視認され難くなっている。このため、メッシュ構造体20が視認されることに起因したモアレ、濃淡むら及びちらつきといった不具合の発生を効果的に防止することができる。なお、積層体45には、反射防止シートやルーバー等の機能性シートが適宜組み込まれるが、メッシュ構造体20と他の機能性シートとの間でのモアレの発生も効果的に防止されるようになる。
また、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車両、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジの窓等の各種家電製品の窓等の電磁波遮蔽用途にも使用可能である。この例では、電磁波遮蔽材としてのメッシュ構造体20を支持するようになる窓材が、メッシュシート10における透明基材15をなすようにしてもよいし、窓材がメッシュシート10のその他の一部分を構成するようになっていてもよい。この例において、窓材に重ねて配置された網戸やカーテンの模様等と、メッシュ構造体20との間でのモアレの発生を効果的に防止することができるとともに、濃淡むら、ぎらつき及びちらつき等による不快感を受けることも効果的に防止される。
次に、図10を参照しながら、メッシュ構造体20をタッチパネル装置50のタッチパネルセンサ51,52に適用した例について説明する。図10には、タッチパネルセンサ51,52を含んだタッチパネル装置50が開示されている。図示されたタッチパネル装置50は、投影型容量結合方式のタッチパネル装置として構成されており、それぞれ、透明基材35上に電極55が形成された第1タッチパネルセンサ51及び第2タッチパネルセンサ52を有している。このタッチパネル装置50は、画像形成装置上に配置されるようになり、第1及び第2タッチパネルセンサ51,52は、画像形成装置の画素が配列された領域に対面するアクティブエリアAa1と、アクティブエリアAa1の周囲となる非アクティブエリアAa2と、を含んでいる。電極55は、アクティブエリアAa1内に位置して位置検出に用いられる検出電極60と、検出電極60に接続され非アクティブエリアAa2内に位置する取出電極70と、を有している。
そして、図10に示すように、各検出電極60は、その長手方向に間隔を明けて配列された多数のメッシュ構造体20と、隣り合う二つのメッシュ構造体20の間を接続する接続導線61と、を有している。各検出電極60は、メッシュ構造体20および接続導線61により、アクティブエリアAa1内を直線状に延びている。各検出電極60が配置されている領域の幅は、メッシュ構造体20が設けられている部分において太くなっている。一方のタッチパネルセンサ51,52に含まれる各検出電極60は、他方のタッチパネルセンサ52,51に含まれる多数の検出電極60と交差している。そして、図10に示すように、一方のタッチパネルセンサ51,52のメッシュ構造体20は、検出電極60上において、他方のタッチパネルセンサ52,51の隣り合う二つの検出電極60との交差点の間に配置されている。
このタッチパネル装置50では、タッチパネルセンサ51,52のメッシュ構造体20が、画像形成装置41の画素が配列されている領域上に配置される。このメッシュ構造体20は、その優れた導電性により検出電極60として機能するとともに、上述したように、モアレ、濃淡むら、ぎらつき及びちらつきの発生を防止することができる。
なお、図10に示された電極55の形状は一例に過ぎず、種々の変更が可能である。また、メッシュ構造体20及びメッシュシート10は、投影型容量結合形式のタッチパネル装置に限られず、種々の形式のタッチパネル装置に適用することができる。
その他の用途として、メッシュ構造体20及びメッシュシート10は、窓に支持されたアンテナとして機能する。また、メッシュ構造体20及びメッシュシート10は、窓に支持された結露防止用の発熱電極として機能する。これらの例では、窓材が、メッシュシート10及びメッシュシート10の透明基材15をなすようにしてもよいし、窓材がメッシュシート10のその他の一部分を構成するようにしてもよい。そしてこれらの例では、窓に重ねて配置された網戸やカーテンの模様等と、メッシュ構造体20との間でのモアレの発生を効果的に防止することができるとともに、濃淡むら、ぎらつき及びちらつきによる不快感を受けることも効果的に防止される。
<<追加、変形、その他>>
なお、上述した例に対して様々な追加や変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
上述した例では、メッシュシート10の透明基材15と凹凸構造層30とが別の層として形成されていた。このようなメッシュシート10は、透明基材15上に、電離放射線硬化型樹脂を賦型してなる凹凸構造層30を形成することにより作製され得る。その一方で、メッシュシート10が、メッシュ構造体20、凹凸構造層30及び透明基材15以外の層を更に含むようにしてもよいし、或いは、射出成形や押出成形によって凹凸構造層30を作製することにより透明基材15が省かれるようにしても良い。
また、凹凸構造層30の凹凸面31が、耐擦傷性を向上させるためのハードコート層として形成されていてもよい。このハードコート層は、薄膜として形成されていてもよい。或いは、耐擦傷性の改善を図る観点から、凹凸構造層30が、スリップ剤を含有するようにしてもよい。さらに、紫外線による劣化を防止する観点から、メッシュシート10が、紫外線吸収剤を含有するようにしてもよい。
なお、以上において上述した例に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。