JP2006032197A - 透明2層膜とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来の透明2層膜と比べて貴金属合金微粒子の発達した網目状構造を具備する透明2層膜とその製造方法を提供する。
【解決手段】 透明導電層と透明コート層とで構成されるこの透明2層膜は、溶媒に分散された平均粒径1〜20nmの貴金属コート銀微粒子若しくは貴金属合金微粒子の鎖状凝集体と銀単体微粒子を含有し、かつ、鎖状凝集体を構成する貴金属コート銀微粒子若しくは貴金属合金微粒子100重量部に対し銀単体微粒子の配合割合が0.1〜5重量部に設定された透明導電層形成用塗液を透明基板上に塗布かつ乾燥し、次いで透明コート層形成用塗布液を塗布した後、加熱処理することにより得られる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、透明基板上に順次形成された透明導電層と透明コート層とで構成される透明2層膜に係り、特に、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置の前面板等に適用される透明2層膜とその製造方法の改良に関するものである。
コンピュータディスプレイ等として用いられている陰極線管(CRT:ブラウン管とも称する)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置では、表示画面が見やすく、視覚疲労を感じさせないこと等が要求されている。
更に、最近では、CRTから発生する低周波電磁波の人体に対する悪影響が懸念され、このような電磁波が外部に漏洩しないことが望まれている。かかる漏洩電磁波に対しては、ディスプレイの前面板表面に透明導電層を形成することにより防止することが可能である。例えば、CRTの漏洩電磁波防止(電界シールド)用として少なくとも10Ω/□以下、好ましくは5×10Ω/□以下、更に好ましくは10Ω/□以下である低抵抗の透明導電層を形成することが要求されている。
そして、上記電界シールド用の低抵抗透明導電層を形成する方法としてこれまでにいくつかの提案がなされており、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)等の導電性酸化物微粒子や金属微粒子を溶媒中に分散した透明導電層形成用塗液をCRTの前面ガラス(前面板)にスピンコート法等で塗布し乾燥した後、200℃程度の温度で加熱処理して透明導電層を形成する方法が知られている。この方法は、CVD法やスパッタリング法等で透明導電膜を形成する方法に較べてはるかに簡便でありかつ製造コストも低いため、極めて有利な方法である。
しかし、この透明導電層形成用塗液を用いて透明導電層を形成する方法においては、インジウム錫酸化物(ITO)等の導電性酸化物微粒子を使用する場合、得られる膜の表面抵抗が10〜106Ω/□と高くなり、漏洩電界を遮蔽するには充分でなかった。一方、金属微粒子が適用された透明導電層形成用塗液では、ITOを用いた塗液に比べ、若干、膜の透過率が低くなるものの、10〜10Ω/□という低抵抗膜が得られるため、今後とも有望な方法であると思われる。
そして、上記透明導電層形成用塗液に適用される金属微粒子として、空気中で酸化され難い貴金属、例えば、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。尚、これ等特許文献には、貴金属以外の金属微粒子、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等も適用可能と記載されているが、実際にはこれ等の金属微粒子は大気雰囲気下で表面に酸化物被膜が必ず形成されてしまうため、透明導電層として良好な導電性が得ることは困難である。
また、銀、金、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム等の比抵抗を比較した場合、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウムの比抵抗はそれぞれ10.6、4.51、7.6、10.8μΩ・cmで、銀、金の1.62、2.2μΩ・cmに比べて高い。
従って、表面抵抗の低い透明導電層を形成するには銀微粒子や金微粒子を適用した方が有利であり、透明導電層形成用塗液に用いる貴金属微粒子としては銀微粒子や金微粒子が主に利用されている。但し、銀微粒子の場合、硫化や食塩水により劣化しやすいという耐候性の面から、単体での使用が制限される。他方、金微粒子、白金微粒子、ロジウム微粒子、ルテニウム微粒子、パラジウム微粒子等を適用した場合には、上記耐候性の問題はなくなるが、コスト面を考慮すると必ずしも最適とは言えない。
そこで最近では、銀微粒子表面に金若しくは白金の単体または金と白金の複合体をコーティングした貴金属コート銀微粒子や、金と金以外の1種または複数種の貴金属(例えば銀)から成る貴金属合金微粒子等が提案されている(特許文献3、特許文献4参照)。
また、CRT等の表示装置においては、表示画面を見易くするため、その前面板表面に防眩処理を施して画面の反射を抑えることも行われている。この防眩処理としては、反射光が入射光に対して破壊的干渉を生ずるように、高屈折率の透明導電層と低屈折率の透明コート層からなる透明2層膜の屈折率と膜厚とを制御する干渉法による防眩処理が一般的に行われている。尚、金属においては、光学定数(n−ik、n:屈折率,i=−1、k:消衰係数)の内、n(屈折率)の値は小さいがkの値が大きい。このため、金属微粒子を含有する透明導電層を用いた場合でも上記透明2層膜において光の干渉による反射防止効果が得られる。
更に、CRT等の表示装置においては、近年の表示画面の平面化に伴い、上述した良好な導電性、低反射率等の諸特性に加えて、その可視光線透過率を100%より低い所定範囲(具体的には40〜95%、一般的には40〜75%)に調整して画像のコントラストを向上させることも要請されている。このような要請に対しては、透明導電層形成用塗液に有色顔料微粒子等を配合し透明導電層の透過率を制御する手法が一般に採られている。
尚、平面CRTにおいて透過率を制御した透明導電層を形成しているのは以下の理由による。すなわち、平面CRTのフェースパネル(前面板)においては、パネルの外表面が平面で内面は曲率を有する構造になっており、パネルの厚みが画面中央部と周辺部で異なっているため、フェースパネルに従来の着色ガラス(例えば、セミティントガラス、透過率:約53%)を用いた場合、輝度の面内不均一が生じて画面が見難くなる。そこで、高透過率のパネルガラスと有色顔料微粒子等を配合した低透過率の透明導電層を組合わせることで輝度の面内均一性とコントラスト向上(透過率を低下させるとコントラストは向上する)を両立させるためであった。
ところで、金属微粒子が適用された導電層は、本来、金属が可視光線に対し透明でないことから、上述した透明導電層における高透過率と低抵抗を両立させるためにはできるだけ少量の金属微粒子が透明導電層内において効率よく導電パスを形成していることが望ましい。つまり、溶媒と金属微粒子を主成分とする一般的な透明導電層形成用塗液を基板上に塗布し乾燥させて得られる導電層の構造として、金属微粒子の層に微小な空孔(微孔)が導入された構造、すなわち網目状(ネットワーク)構造を有することが必要である。
このような網目状構造が形成されると低抵抗でかつ高透過率の透明導電層が得られるが、これは、金属微粒子から成る網目状部分が導電パスとして機能する一方、網目状構造において形成された孔の部分が光線透過率を向上させる機能を果たすためと考えられている。
そして、金属微粒子の上記網目状構造を形成させる手法としては、大別すると以下の二つの方法が挙げられる。
(1)透明導電層形成用塗液の塗布および乾燥の成膜過程において金属微粒子同士を凝集させることで網目状構造を形成させる方法。
すなわち、金属微粒子は酸化物微粒子等に比べて凝集し易いため、透明導電層形成用塗液の溶剤組成等を適宜選定することによって、塗布および乾燥の成膜過程において必然的にある程度の金属微粒子同士の凝集が起きて上記網目状構造が得られる(特許文献5〜特許文献8等参照)。更に、透明導電層形成用塗液に、凝集誘因剤、凝集促進高沸点溶剤等を添加し、積極的に金属微粒子同士の凝集を促進することもできる(特許文献9参照)。
(2)複数の金属微粒子が凝集した金属微粒子の凝集体を分散させた透明導電層形成用塗液を用い、これを塗布および乾燥させることにより金属微粒子の網目状構造を形成させる方法。
すなわち、透明導電層形成用塗液として、1次粒子が均一に単分散せずに小さな孔を持つ形で集合した2次粒子の状態で分散されている金属微粒子の分散液を用いる方法(非特許文献1参照)。
更に、金属微粒子が鎖状に凝集された鎖状凝集体を予め分散させた透明導電層形成用塗液を用いる方法(特許文献10参照)も知られている。
そして、これ等(1)と(2)の方法を比べると、(2)の方法は透明導電層形成用塗液中で金属微粒子の凝集体が予め完成されていることから、発達した網目状構造の形成が容易となる利点を有している。
特開平8−77832号公報 特開平9−55175号公報 特開平11−228872号公報 特開2000−268639号公報 特開平9−115438号公報 特開平10−1777号公報 特開平10−142401号公報 特開平10−182191号公報 特開平10−110123号公報 特開2000−124662号公報 工業材料;Vol.44,No.9,1996,p68−71
ところで、金属微粒子を凝集させずに単分散させている一般的な透明導電層形成用塗液であっても、網目状構造を有する透明導電層を形成することは上述したように可能であったが、現実には透明導電層形成用塗液の成膜過程における貴金属微粒子同士の網目(ネットワーク)化の制御は困難な場合が多かった。
そして、この制御を誤ると、得られた網目状構造による導電パスにおいて、金属微粒子間の接触抵抗の増大若しくは網目(ネットワーク)の部分的な切断が起こり、導電性の低下をもたらす問題点が存在した。
他方、金属微粒子の凝集体を分散させた透明導電層形成用塗液においても、塗液内に含まれる金属微粒子の絶対数が少ない場合には、塗液の塗布・乾燥時に接合し難いため凝集体同士が十分な導電パスを形成することは困難であった。反対に、塗液内に含まれる金属微粒子の絶対数が多い場合や過剰な凝集処理を施した透明導電層形成用塗液においては、金属微粒子同士がクラスター状(房状)に重複して連なり易いため均一な網目(ネットワーク)化が困難となったり、微粒子の分散安定性が悪いため塗液の貯蔵安定性や塗布性に問題が生じることが多い。
更に、得られた網目状構造の接触する金属微粒子同士の融着が、乾燥・加熱(焼成)過程において不完全であった場合には、粒子間の接触抵抗が障害となって十分な導電パスが確保できないため優れた導電性を得ることができない問題点が存在した。
本発明はこの様な問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、上述した従来の透明2層膜と比べてより均一で発達した網目状構造を有し、膜中に含まれる金属微粒子の絶対数が少ない場合でも低抵抗で導電性に優れ、しかも良好な光線透過性を有すると共に、製造コストの低減が図れる透明2層膜とその製造方法を提供することにある。
このような課題を解決するため本発明者が鋭意研究を行った結果、貴金属微粒子の凝集体が分散された透明導電層形成用塗液内に極微量の銀単体微粒子を配合し、この塗液を用いて透明2層膜を製造した場合、上述した従来の透明2層膜と比較し、貴金属微粒子同士がクラスター状に重複して連なることなく貴金属微粒子の平均粒径と同等の太さで直鎖状に連結し、均一でかつ緻密な網目状構造を有する透明2層膜が得られることを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見に基づき完成されたものである。
すなわち、請求項1に係る発明は、
透明基板上に順次形成された透明導電層と透明コート層とで構成され、上記透明導電層内に含まれる貴金属微粒子同士が互いに連結されて無定形微孔を有する網目状構造を形成している透明2層膜を前提とし、
平均粒径1〜20nmの貴金属合金微粒子を上記貴金属微粒子の主成分とし、この貴金属合金微粒子同士が1〜30nmの平均太さで直鎖状に連結されて無定形微孔を有する網目状構造を形成していると共に、上記無定形微孔の平均孔径が25〜60nmおよび/または孔径30〜150nmの範囲にある無定形微孔の累積度数が膜中における全無定形微孔数の40%以上であり、かつ、上記無定形微孔の膜全体に対する面積占有率が45%以上であることを特徴とする。
また、請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の発明に係る透明2層膜を前提とし、
上記貴金属合金微粒子が、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された少なくとも一種の貴金属と銀との合金微粒子であることを特徴とし、
請求項3に係る発明は、
請求項1〜2のいずれかに記載の発明に係る透明2層膜を前提とし、
透明基板を含まない透明2層膜だけの可視光線透過率が、40〜95%の範囲内の任意の値に設定されていることを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の発明に係る透明2層膜を前提とし、
上記網目状構造の無定形微孔部分に有色顔料微粒子を有することを特徴とし、
請求項5に係る発明は、
請求項4に記載の発明に係る透明2層膜を前提とし、
上記有色顔料微粒子が、カーボン、チタンブラック、窒化チタン、複合酸化物顔料、コバルトバイオレット、モリブデンオレンジ、群青、紺青、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料およびフタロシアニン系顔料から選択された少なくとも1種の微粒子であることを特徴とする。
次に、請求項6に係る発明は、
請求項1に記載の透明2層膜の製造方法を前提とし、
溶媒と、この溶媒に分散された平均粒径1〜20nmの貴金属コート銀微粒子若しくは貴金属合金微粒子の鎖状凝集体と銀単体微粒子を含有し、かつ、鎖状凝集体を構成する貴金属コート銀微粒子若しくは貴金属合金微粒子100重量部に対し上記銀単体微粒子の配合割合が0.1〜5重量部に設定された透明導電層形成用塗液を透明基板上に塗布かつ乾燥し、次いで、透明コート層形成用塗布液を塗布した後、加熱処理することを特徴とし、
請求項7に係る発明は、
請求項6に記載の発明に係る透明2層膜の製造方法を前提とし、
上記銀単体微粒子の平均粒径が50nm以下であることを特徴とし、
請求項8に係る発明は、
請求項6〜7のいずれかに記載の発明に係る透明2層膜の製造方法を前提とし、
上記貴金属コート銀微粒子における貴金属が、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された少なくとも一種類以上であることを特徴とし、
請求項9に係る発明は、
請求項6〜7のいずれかに記載の発明に係る透明2層膜の製造方法を前提とし、
上記貴金属合金微粒子が、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された少なくとも一種の貴金属と銀との合金微粒子であることを特徴とし、
請求項10に係る発明は、
請求項6〜9のいずれかに記載の発明に係る透明2層膜の製造方法を前提とし、
上記透明導電層形成用塗液中に有色顔料微粒子を含むことを特徴とし、
請求項11に係る発明は、
請求項10に記載の発明に係る透明2層膜の製造方法を前提とし、
上記有色顔料微粒子が、カーボン、チタンブラック、窒化チタン、複合酸化物顔料、コバルトバイオレット、モリブデンオレンジ、群青、紺青、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料およびフタロシアニン系顔料から選択された少なくとも1種の微粒子であることを特徴とする。
透明導電層と透明コート層とで構成される本発明に係る透明2層膜によれば、
平均粒径1〜20nmの貴金属合金微粒子を透明導電層内に含まれる貴金属微粒子の主成分とし、この貴金属合金微粒子同士が1〜30nmの平均太さで直鎖状に連結されて無定形微孔を有する網目状構造を形成していると共に、無定形微孔の平均孔径が25〜60nmおよび/または孔径30〜150nmの範囲にある無定形微孔の累積度数が透明2層膜中における全無定形微孔数の40%以上で、かつ、無定形微孔の透明2層膜全体に対する面積占有率が45%以上であることを特徴としている。
従って、この透明2層膜は、均一でかつ緻密な網目状構造を有するため、低抵抗で導電性に優れしかも良好な光線透過性を具備し、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置の前面板等に好適に利用される効果を有している。
また、本発明に係る透明2層膜の製造方法によれば、
溶媒と、この溶媒に分散された平均粒径1〜20nmの貴金属コート銀微粒子若しくは貴金属合金微粒子の鎖状凝集体と銀単体微粒子を含有し、かつ、鎖状凝集体を構成する貴金属コート銀微粒子若しくは貴金属合金微粒子100重量部に対し上記銀単体微粒子の配合割合が0.1〜5重量部に設定された透明導電層形成用塗液を透明基板上に塗布かつ乾燥し、次いで、透明コート層形成用塗布液を塗布した後、加熱処理することを特徴としている。
そして、透明導電層形成用塗液に添加された極微量の銀単体粒子の作用により、貴金属微粒子同士がクラスター状に重複して連なることなく、貴金属微粒子の平均粒径と同等の太さで貴金属微粒子を直鎖状に連結させることができるため、均一でかつ緻密な網目状構造を有する透明2層膜を低コストで簡便かつ確実に製造できる効果を有する。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、透明導電層と透明コート層とで構成される本発明に係る透明2層膜は、溶媒に分散された貴金属微粒子の鎖状凝集体と極微量の銀単体微粒子を含有する透明導電層形成用塗液を透明基板上に塗布かつ乾燥し、次いで、透明コート層形成用塗布液を塗布した後、加熱処理して得られることを特徴としている。
そして、極微量の銀単体微粒子が添加された上記透明導電層形成用塗液を用いることにより、従来の一般的な透明2層膜と比べ、均一でかつ緻密な貴金属微粒子の網目状構造を有する透明2層膜を形成することができる。すなわち、貴金属微粒子同士がクラスター状に重複して連なることなく、貴金属微粒子の平均粒径と同等の太さで貴金属微粒子が直鎖状に連結された孔径の分布幅が狭い均一でかつ緻密な網目状構造を有する透明2層膜を形成することができる。
好適態様にあっては、平均粒径1〜20nmの貴金属合金微粒子同士が1〜30nmの平均太さで直鎖状に連結されて無定形微孔を有する網目状構造を形成し、かつ、この網目状構造における無定形微孔の平均孔径が25〜60nmおよび/または孔径30〜150nmの範囲にある無定形微孔の累積度数が透明2層膜中における全無定形微孔数の40%以上であり、かつ、上記無定形微孔の透明2層膜全体に対する面積占有率が45%以上であることが望ましい。この透明2層膜においては、膜中の貴金属微粒子の濃度が低くても十分な導電パスを形成できるため、従来よりも安価に低抵抗で導電性に優れしかも良好な光線透過性を具備させることが可能となる。
ここで、貴金属微粒子の鎖状凝集体と極微量の銀単体微粒子を含有する透明導電層形成用塗液を適用した場合、貴金属微粒子同士がクラスター状(房状)に重複して連なることなく直鎖状に連結されて均一でかつ緻密な網目状構造を形成できるメカニズムは明らかになっていない。しかし、透明導電層形成用塗液の塗布・乾燥過程において、塗液内に分散する貴金属微粒子と銀単体微粒子のゼータ電位(ζ電位)の違いから両微粒子との間に強い斥力が作用し貴金属微粒子同士の局所的な凝集が抑制されることが分っており、この現象が上記均一でかつ緻密な網目状構造を形成するメカニズムに関わっているものと推測している。
次に、透明導電層形成用塗液に含まれる貴金属微粒子は、貴金属コート銀微粒子若しくは貴金属合金微粒子の鎖状凝集体と銀単体微粒子からなり、鎖状凝集体を構成する貴金属コート銀微粒子若しくは貴金属合金微粒子と銀単体微粒子の配合割合は、貴金属コート銀微粒子若しくは貴金属合金微粒子100重量部に対し銀単体微粒子0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。上記銀単体微粒子の配合割合が0.1未満では、塗布・乾燥過程において十分な網目状構造が形成されず、高導電性の透明2層膜が得られない。一方、銀単体微粒子の配合割合が5重量部を超える場合には、銀単体粒子が加熱処理過程で拡散しきれずに酸化物(または硫化物)となって網目状構造の連結部分等に残留しやすくなるため、接触抵抗が増大することによって十分な導電パスが得られない。
また、上記透明導電層形成用塗液を用いて塗膜を形成し、乾燥、加熱処理して得られた透明2層膜中の貴金属微粒子は貴金属合金微粒子を主成分とし、貴金属合金微粒子100重量部に対し5重量部以下の銀単体微粒子が含まれている。尚、透明導電層形成用塗液に含まれる貴金属微粒子が貴金属コート銀微粒子の場合、上記加熱処理により貴金属コート層の一部が銀との合金化層を形成して貴金属合金微粒子となるため、本明細書においては透明導電層内に含まれる貴金属微粒子を貴金属コート銀微粒子と表現せずに貴金属合金微粒子と表現している。そして、上記貴金属合金微粒子同士が互いに連結(凝集)して網目の孔径の分布幅がせまい均一な網目状構造を形成している。
尚、添加される銀単体微粒子は、上述したように透明導電層形成用塗液内に含まれる貴金属コート銀微粒子若しくは貴金属合金微粒子に対して極少量であるため、膜厚への影響は少ない。また、塗布・乾燥後の加熱処理過程(200℃程度)において、極少量の銀単体微粒子は、直鎖状に連結した貴金属合金微粒子やシリカマトリクス中に速やかに拡散することから、完成された網目状構造では上述した銀微粒子特有の耐候性に関する問題やマイグレーション(移行現象)等を発現しにくいことが確認されている。
また、銀単体微粒子の平均粒径は50nm以下であることが望ましい。平均粒径が50nmを超えると、同じ重量比で添加した時の粒子数が極端に減少するため、貴金属微粒子同士の局所的な凝集を十分に抑制することが難しくなり、発達した網目状構造を得ることができなくなる場合があるからである。また、添加される銀単体粒子は、その粒子径が大きいほど加熱処理過程で拡散しにくく、網目状構造の連結部分等に酸化物(または硫化物)として残留しやすくなるため、接触抵抗を増大させる危険性もある。
尚、ここで言う平均粒径とは、透過電子顕微鏡(TEM)で観察される微粒子の平均粒径を示している。
また、上記貴金属コート銀微粒子における貴金属としては、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムの中から適宜選択して用いることができる。
この貴金属コート銀微粒子は、その平均粒径が1〜20nmであることを要する。貴金属コート銀微粒子の平均粒径が1nm未満の場合、このような微粒子の製造は困難であるうえ、粒子間の接触抵抗が増大するため実用的でないからである。また、20nmを超えると、網目状構造において、粒子同士が直鎖状に連結しにくく(クラスター状に凝集しやすい)、膜中における粒子の分布に偏りが生じるため、網目(ネットワーク)の部分的な切断が起こり十分な導電パスが得られないからである。
次に、本発明において適用される透明導電層形成用塗液の製造法を、貴金属コート銀微粒子が金コート銀微粒子である場合を例に挙げて説明する。
まず、既知の方法[例えば、Carey−Lea法、Am.J.Sci.、37、38,47(1889)]により銀微粒子のコロイド分散液を調製する。すなわち、硝酸銀水溶液に硫酸鉄(II)水溶液とクエン酸ナトリウム水溶液の混合液を加えて反応させ、沈降物を濾過・洗浄した後、純水を加えることによって銀微粒子のコロイド分散液が得られる。
次に、この銀微粒子コロイド分散液にヒドラジン等の還元剤溶液と金酸塩溶液を加えることにより、金コート銀微粒子の分散液が得られる。尚、必要により、上記金コーティング工程で、銀微粒子のコロイド分散液か金酸塩溶液の片方または両方に、少量の分散剤を加えてもよい。また、上記銀微粒子コロイド分散液および金コート銀微粒子分散液の調製方法は、最終的に平均粒径1〜20nmの金コート銀微粒子の分散液が得られれば任意の方法でよく、上記方法に限定されるものではない。
その後、得られた金コート銀微粒子分散液は、透析、電気透析、イオン交換、限外ろ過等の脱塩処理方法により、分散液内の電解質濃度を下げることが好ましい。電解質濃度を下げないと、コロイドは一般に電解質で凝集してしまうからであり、この現象はSchulze-Hardy則としても知られている。このように電解質濃度を下げた金コート銀微粒子分散液は、減圧エバポレーター、限外ろ過等の方法で濃縮処理し、更に、有機溶剤等の添加による成分調整(微粒子濃度、水分濃度等)等を行い、金コート銀微粒子の分散濃縮液が調製される。
次に、得られた金コート銀微粒子を、例えば、特願2003−45596号明細書に記載された方法により連鎖状に予め凝集させる。
すなわち、金コート銀微粒子の分散濃縮液を攪拌しながらヒドラジン溶液を少量ずつ添加し、例えば室温で数分から数時間程度保持して金コート銀微粒子を鎖状に凝集させた後、過酸化水素溶液を添加してヒドラジンを分解することにより、金コート銀微粒子の鎖状凝集体が高濃度で分散した分散液を得ることができる。
得られた鎖状凝集体の分散液に、有機溶剤等を添加して微粒子濃度、水分濃度、高沸点有機溶剤濃度等の成分調整を行い、金コート銀微粒子の鎖状凝集体が含まれる基本塗液とする。
最後に、塗布・乾燥工程において、貴金属微粒子の発達した網目状構造を形成させるため、金コート銀微粒子の鎖状凝集体が含まれる基本塗液に対して所定量の銀単体微粒子を添加し透明導電層形成用塗液を調製する。添加する銀単体微粒子は、例えば上述のCarey−Lea法等により調製することができる。
また、金コート銀微粒子および銀単体微粒子の分散安定性を向上させ、最終的な透明導電層形成用塗液のポットライフを延長させるため、高分子樹脂等を添加することも可能である。但し、高分子樹脂を添加すると、得られる透明2層膜の強度、耐候性が若干悪くなる傾向があるので、添加量には十分注意する必要がある。
尚、ここでは貴金属コート銀微粒子が金コート銀微粒子である透明導電層形成用塗液の製造法について説明したが、金以外の白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等の貴金属でコートされた貴金属コート銀微粒子についても、同様に製造することができる。また、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等の銀以外の貴金属と銀とからなる貴金属合金微粒子の場合についても、例えば上述のCarey-Lea法等により貴金属微粒子の分散液を調製して、同様に透明導電層形成用塗液を得ることができる。
次に、上記基本塗液に用いる有機溶剤としては、特に制限はなく、塗布方法や成膜条件により適宜に選定される。例えば、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGM−AC)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)等のグリコール誘導体、ホルムアミド(FA)、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、上記透明導電層形成用塗液には有色顔料微粒子を添加してもよい。塗液に有色顔料微粒子を添加すると、透明導電層が形成された透明導電性基材の透過率を100%より低い所定範囲(40〜95%、一般的には40〜75%)に調整でき、良好な導電性、低反射率等の諸特性に加え、その画像のコントラスト向上と輝度の面内均一性を高め、表示画面を更に見易くさせることができるため、近年のCRT画面の平面化に伴う要求に対応することが可能となる。
有色顔料微粒子としては、カーボン、チタンブラック、窒化チタン、複合酸化物顔料、コバルトバイオレット、モリブデンオレンジ、群青、紺青、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料およびフタロシアニン系顔料から選択された1種以上の微粒子、あるいは更にその表面が酸化ケイ素でコーティング処理された微粒子を用いることができる。
そして、ガラス基板、プラスチック基板等の透明基板上に透明導電層の下層と透明コート層の上層とで構成される透明2層膜を形成するには以下の方法が通常利用される。
すなわち、上述した透明導電層形成用塗液を、透明基板(この透明基板は、例えば上述したCRTやPDPの前面板を構成している)上に、スプレーコート、スピンコート、ワイヤーバーコート、ドクターブレードコート等の手法にて塗布し、必要に応じて乾燥した後、例えばシリカゾル等を主成分とする透明コート層形成用塗液を同様の手法によりオーバーコートする。
次に、例えば50〜350℃程度の温度で加熱処理を施し、塗布層の硬化を行って透明導電層と透明コート層とで構成される本発明に係る透明2層膜は形成される。
尚、透明導電層形成用塗液の塗布は、乾燥後に10〜200nmの範囲の膜厚の透明導電層が形成されるように行なうことが好ましい。膜厚が10nm未満では導電パスを形成するための貴金属微粒子の絶対数が不足するために、十分な導電性を付与することが難しく、200nmより厚くなると、上記網目状構造の最適条件を満たすことが困難となり十分な光線透過性を付与できないからである。
また、シリカゾル等を主成分とする透明コート層形成用塗布液をオーバーコートしたとき、予め形成された透明導電層の網目状構造の無定形微孔に、オーバーコートしたシリカゾル液(このシリカゾル液は後の加熱処理により酸化ケイ素を主成分とするバインダーマトリックス、すなわち上述したシリカマトリックスとなる)が染み込むことにより、透過率の向上と導電性の向上が同時に達成される。このとき、網目状構造の無定形微孔を介して、透明基板と酸化ケイ素等のバインダーマトリックスとの接触面積が増大するため、透明基板とバインダーマトリックスとの結合強度の向上も図られる。
更に、酸化ケイ素を主成分とするバインダーマトリックス中に貴金属微粒子が分散された透明導電層では、その光学定数(n−ik)における屈折率nはさほど大きくないが消衰係数kが大きいため、透明導電層と透明コート層の透明2層膜構造により、透明2層膜の反射率を大幅に低下させることができる。
ここで、上記シリカゾルとしては、オルトアルキルシリケートに水や酸触媒を加えて加水分解し、脱水縮重合を進ませた重合物、あるいは既に4〜5量体まで重合を進ませた市販のアルキルシリケート溶液を、更に加水分解と脱水縮重合を進行させた重合物等を利用することができる。尚、脱水縮重合が過度に進行すると、溶液粘度が上昇して最終的には固化してしまうので、脱水縮重合の度合は透明基板上に塗布可能な上限粘度以下に調整する。但し、脱水縮重合の度合は、膜強度、耐候性等を考慮すると重量平均分子量で500〜3000程度が好ましい。
これらのアルキルシリケート加水分解重合物は、透明2層膜の加熱処理時に脱水縮重合反応がほぼ完結して、硬いシリケート膜(酸化ケイ素を主成分とする膜)になる。尚、シリカゾルに、弗化マグネシウム微粒子、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル等を加え、透明コート層の屈折率を調節して透明2層膜の反射率を変えることも可能である。
このように上述の透明導電層形成用塗液を用いて形成した透明導電層と透明コート層とで構成される透明2層膜は、貴金属微粒子の従来より発達した均一でかつ緻密な網目状構造を有するため、この透明2層膜を具備する透明導電性基材は、良好な反射防止効果と電界シールド効果を有し、かつ、光線透過性と耐候性にも優れていることから、例えば、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、液晶ディスプレイ(LCD)等表示装置における前面板等に用いることができる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、本文中の「%」は、透過率、反射率、ヘイズ値、空孔率、所定サイズの無定形微孔の累積度数(頻度)の(%)を除いて「重量%」を示し、また「部」は「重量部」を示している。
尚、本発明における透過率は、特に言及しない限り、透明基板を含まない透明2層膜だけの可視光線透過率である。尚、下記表2に示す透明基板(ガラス基板)を含まない透明2層膜だけの可視光線透過率は次の計算式により求めている。
透明基板を含まない透明2層膜だけの透過率(%)
=[(透明基板ごと測定した透過率)/(透明基板の透過率)]×100
また、透明2層膜の表面抵抗は、三菱化学(株)製の表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400)を用い測定した。可視光線透過率とヘイズ値は、村上色彩技術研究所製のヘイズメーター(HR−200)を用いて測定した。反射率は、日立製作所(株)製の分光光度計(U−4000)を用いて測定した。
また、透明導電層形成用塗液における金コート銀微粒子および銀単体微粒子の平均粒径、貴金属合金微粒子(金コート銀微粒子)同士の連結(または凝集)部分の平均太さ(短方向長さ)、上記無定形微孔の平均孔径、膜全体に対する無定形微孔の面積占有率(以下、空孔率と称する)は、日本電子製の透過電子顕微鏡により測定した分散液(塗液)または膜の表面TEM像から、画像解析ソフト(Media Cybernetics社製 Image-Pro Plus)を用いて測定・算出した。尚、無定形微孔の平均孔径については、貴金属微粒子の平均粒径と実質的に同等以下(10nm以下)の微孔を任意に除去(貴金属微粒子同士が連鎖状に連結されて形成された網目状構造の微孔でないため)した上で測定・算出した。
そして、透明導電層形成用塗液における金コート銀微粒子の平均粒径とその含有量、銀単体微粒子における平均粒径とその添加量(金コート銀微粒子100重量部に対する重量部)を以下の表1に示す。
また、透明2層膜の膜特性、すなわち貴金属合金微粒子(金コート銀微粒子)同士の連結(凝集)部分の平均太さ(短方向長さ)、無定形微孔の平均孔径、孔径が30〜150nmの範囲にある無定形微孔の累積度数(頻度)、空孔率、表面抵抗、可視光線透過率、ヘイズ値、ボトム反射率/ボトム波長を以下の表2に示す。
また、実施例1に係る透明2層膜表面のTEM写真を図1に示し、比較例1に係る透明2層膜表面のTEM写真を図2に示し、また、比較例3に係る透明2層膜表面のTEM写真を図3に示す。
Carey−Lea法により銀微粒子のコロイド分散液を調製した。
具体的には、9%硝酸銀水溶液330gに、23%硫酸鉄(II)水溶液390gと37.5%クエン酸ナトリウム水溶液480gの混合液を加えて反応させ、沈降物をろ過・洗浄した後、純水を加えて、銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.15%)(A液)を調製した。この銀微粒子のコロイド分散液(A液)を透過電子顕微鏡で観察したところ、銀微粒子の平均粒径は4.8nmであった。
この銀微粒子コロイド分散液(A液)600gに、ヒドラジン1水和物(N・HO)の1%水溶液80.0gを加えて攪拌しながら金酸カリウム[KAu(OH)]水溶液(Au:0.075%)4800gと1%高分子分散剤水溶液2.0gとの混合液を加え、表面を金単体でコーティングした金コート銀微粒子のコロイド分散液を得た。
この金コート銀微粒子のコロイド分散液をイオン交換樹脂(三菱化学社、製商品名ダイヤイオンSK1B,SA20AP)で脱塩した後、限外ろ過を行い、金コート銀微粒子のコロイド分散液の濃縮を行った。得られた液にエタノール(EA)を加えて、金コート銀微粒子が高濃度に単分散された分散濃縮液(Ag−Au:1.6%、水:20.0%、EA:78.4%、)(B液)を得た。この金コート銀微粒子が高濃度に単分散された分散濃縮液(B液)を透過電子顕微鏡で観察したところ、金コート銀微粒子の平均粒径は6.2nmであった。
次に、上記金コート銀微粒子の分散濃縮液(B液)60gを攪拌しながら、ヒドラジン水溶液(N・HO:0.75%)0.8g(1.6%のAg−Au分散液に対して100ppm)を1分間かけて添加した後、室温で15分間保持して金コート銀微粒子を鎖状に凝集させた。引き続き、過酸化水素水溶液(H:1.5%)0.6gを1分間かけて添加することでヒドラジンを分解させ、金コート銀微粒子の鎖状凝集体が高濃度で分散された鎖状凝集体の分散濃縮液(C液)を得た。
この鎖状凝集体の分散濃縮液(C液)を透過電子顕微鏡で観察した結果、金コート銀微粒子は数珠状に連なり、かつ、一部分岐した形状[長さ:20〜100nm(個々の鎖状凝集体における長さの最大値)]を有していた。
尚、上記金コート銀微粒子の分散濃縮液(B液)にヒドラジン溶液を添加した際の金コート銀微粒子の安定性低下、および、金コート銀微粒子が凝集した分散液に過酸化水素溶液を添加した際の鎖状凝集体における安定性の向上は、各分散液のゼータ電位の測定値から科学的に確認することができた。
次に、金コート銀微粒子の鎖状凝集体が高濃度で分散された鎖状凝集体の分散濃縮液(C液)に、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)と、更に、上記銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.15%)(A液)を加え、実施例1に係る透明導電層形成用塗液(AuコートAg微粒子:0.20%、Ag単体微粒子:0.003%、水:6.39%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.1%、EA:63.31%)を得た。
尚、実施例1に係る透明導電層形成用塗液におけるAg単体微粒子の含有量は、金コート銀微粒子100重量部に対して1.5重量部である。
次に、この透明導電層形成用塗液を濾過精度(ポアサイズ):5μmのフィルターで濾過した後、35℃に加熱されたガラス基板(厚さ3mmのソーダライムガラス)上に、スピンコート(90rpmで10秒間、引き続き130rpmで80秒間)し、続けてシリカゾル液(D液)をスピンコート(150rpmで60秒間)した。
その後、180℃、20分間硬化させて、貴金属合金微粒子(金コート銀微粒子)と微量の銀単体微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とする透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例1に係る透明導電性基材を得た。
尚、上記シリカゾル液(D液)は、メチルシリケート51(コルコート社製商品名)を19.6部、エタノール57.8部、1%硝酸水溶液7.9部、純水14.7部を用いて、SiO(酸化ケイ素)固形分濃度が10%で、重量平均分子量が1050のものを調製し、最終的に、SiO固形分濃度が0.8%となるようにイソプロピルアルコール(IPA)とn−ブタノール(NBA)の混合物(IPA/NBA=3/1)により希釈して得ている。また、上記ガラス基板は、使用前に酸化セリウム系研磨剤で研磨処理し、純水による洗浄・乾燥後、35℃に加熱して用いた。
そして、実施例1に係る透明導電層形成用塗液の組成等を表1に示した。また、実施例1に係る透明導電性基材の透明2層膜を評価した結果を表2に示し、また、透明2層膜表面のTEM写真を図1に示した。
実施例1で得られた鎖状凝集体の分散濃縮液(C液)に、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)と、上記銀微粒子コロイド分散液(Ag:0.15%)(A液)を加え、実施例2に係る透明導電層形成用塗液(AuコートAg粒子:0.20%、Ag単体粒子:0.009%、水:6.39%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.1%、EA:63.3%)を得た。
尚、実施例2に係る透明導電層形成用塗液におけるAg単体微粒子の含有量は、金コート銀微粒子100重量部に対して4.5重量部である。
この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様にして、貴金属合金微粒子(金コート銀微粒子)と微量の銀単体微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とする透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例2に係る透明導電性基材を得た。
そして、実施例2に係る透明導電層形成用塗液の組成等を表1に示し、また、実施例2に係る透明導電性基材の透明2層膜を実施例1と同様に評価した結果を表2に示した。
有色顔料である窒化チタン(TiN)微粒子(ネツレン株式会社製)4gと分散剤0.2gを、水25g、およびエタノール10.8gと混合し、ジルコニアビーズと共にペイントシェーカー分散を行った後、上記イオン交換樹脂で脱塩し、分散粒径80nmの窒化チタン微粒子分散液を得た。
次に、実施例1で得られた鎖状凝集体の分散濃縮液(C液)に、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)と、上記銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.15%)(A液)および窒化チタン微粒子分散液を加え、実施例3に係る透明導電層形成用塗液(AuコートAg粒子:0.30%、Ag単体粒子:0.0045%、TiN:0.15%、水:7.92%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.1%、EA:61.53%)を得た。
尚、実施例3に係る透明導電層形成用塗液におけるAg単体微粒子の含有量は、金コート銀微粒子100重量部に対して1.5重量部である。また、この透明導電層形成用塗液を透過電子顕微鏡で観察したところ、窒化チタン微粒子の平均粒径は20nmであった。
この実施例3に係る透明導電層形成用塗液を用いた以外は実施例1と同様にして、貴金属合金微粒子(金コート銀微粒子)、微量の銀単体微粒子および窒化チタン微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とする透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例3に係る透明導電性基材を得た。
そして、実施例3に係る透明導電層形成用塗液の組成等を表1に示し、また、実施例3に係る透明導電性基材の透明2層膜を実施例1と同様に評価した結果を表2に示した。
銀微粒子コロイド分散液を調製する際に、原料の調製条件を実施例1と変えて別途調製することにより、銀微粒子の平均粒径が実施例1と異なる銀微粒子コロイド分散液(A1液)を得た。この銀微粒子コロイド分散液を透過電子顕微鏡で観察した結果、銀微粒子の平均粒径は60.5nmであった。
次に、実施例1で得られた鎖状凝集体の分散濃縮液(C液)に、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)と、上記別途調製した銀微粒子コロイド分散液(A1液)を加え、Ag単体微粒子の平均粒径が実施例1とは異なる実施例4に係る透明導電層形成用塗液(AuコートAg粒子:0.20%、Ag単体粒子:0.003%、水:6.39%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.1%、EA:63.31%)を得た。
尚、実施例4に係る透明導電層形成用塗液におけるAg単体微粒子の含有量は、金コート銀微粒子100重量部に対して1.5重量部である。
この実施例4に係る透明導電層形成用塗液を用いた以外は実施例1と同様にして、貴金属合金微粒子(金コート銀微粒子)と微量の銀単体微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とする透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例4に係る透明導電性基材を得た。
そして、実施例4に係る透明導電層形成用塗液の組成等を表1に示し、また、実施例4に係る透明導電性基材の透明2層膜を実施例1と同様に評価した結果を表2に示した。
[比較例1]
実施例1で得られた鎖状凝集体の分散濃縮液(C液)に、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、銀単体粒子を含まない比較例1に係る透明導電層形成用塗液(AuコートAg粒子:0.20%、水:6.39%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.1%、EA:63.31%)を得た。
この比較例1に係る透明導電層形成用塗液を用いた以外は実施例1と同様にして、貴金属合金微粒子(金コート銀微粒子)を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とする透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、比較例1に係る透明導電性基材を得た。
そして、比較例1に係る透明導電層形成用塗液の組成等を表1に示した。また、比較例1に係る透明導電性基材の透明2層膜を実施例1と同様に評価した結果を表2に示し、また、透明2層膜表面のTEM写真を図2に示した。
[比較例2]
実施例1で得られた鎖状凝集体の分散濃縮液(C液)に、実施例3で得られた窒化チタン微粒子分散液と、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、銀単体粒子を含まない比較例2に係る透明導電層形成用塗液(AuコートAg粒子:0.30%、TiN:0.15%、水:7.92%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.1%、EA:61.53%)を得た。
この比較例2に係る透明導電層形成用塗液を用いた以外は実施例1と同様にして、貴金属合金微粒子(金コート銀微粒子)と窒化チタン微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とする透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、比較例2に係る透明導電性基材を得た。
そして、比較例2に係る透明導電層形成用塗液の組成等を表1に示し、また、比較例2に係る透明導電性基材の透明2層膜を実施例1と同様に評価した結果を表2に示した。
[比較例3]
金コート銀微粒子の分散液を調製する際に、原料の調製条件を実施例1と変えて別途調製することにより、金コート銀微粒子の平均粒径が実施例1と異なる金コート銀微粒子の分散液(B1液)を得た。この金コート銀微粒子の分散液を透過電子顕微鏡で観察した結果、金コート銀微粒子の平均粒径は23.0nmであった。
そして、上記別途調製した金コート銀微粒子の分散液(B1液)60gを攪拌しながら、ヒドラジン水溶液(N・HO:0.75%)0.8g(1.6%のAg−Au分散液に対して100ppm)を1分間かけて添加した後、室温で15分間保持して金コート銀微粒子を鎖状に凝集させた。引き続き、過酸化水素水溶液(H:1.5%)0.6gを1分間かけて添加することで、ヒドラジンを分解させ、金コート銀微粒子の鎖状凝集体が高濃度で分散された鎖状凝集体の分散濃縮液(C1液)を得た。
得られた鎖状凝集体の分散濃縮液(C1液)に、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)と、実施例1で得られた銀微粒子コロイド分散液(A液)を加え、金コート銀微粒子の平均粒径が実施例1とは異なる比較例3に係る透明導電層形成用塗液(AuコートAg粒子:0.20%、Ag単体粒子:0.003%、水:6.39%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.1%、EA:63.31%)を得た。
尚、比較例3に係る透明導電層形成用塗液におけるAg単体微粒子の含有量は、金コート銀微粒子100重量部に対して1.5重量部である。
この比較例3に係る透明導電層形成用塗液を用いた以外は実施例1と同様にして、貴金属合金微粒子(金コート銀微粒子)と微量の銀単体微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とする透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、比較例3に係る透明導電性基材を得た。
そして、比較例3に係る透明導電層形成用塗液の組成等を表1に示した。また、比較例3に係る透明導電性基材の透明2層膜を実施例1と同様に評価した結果を表2に示し、また、透明2層膜表面のTEM写真を図3に示した。
[比較例4]
実施例1で得られた鎖状凝集体の分散濃縮液(C液)に、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)と、上記銀微粒子コロイド分散液(Ag:0.15%)(A液)を加え、比較例4に係る透明導電層形成用塗液(AuコートAg粒子:0.20%、Ag単体粒子:0.012%、水:6.39%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.1%、EA:63.3%)を得た。
尚、比較例4に係る透明導電層形成用塗液におけるAg単体微粒子の含有量は、金コート銀微粒子100重量部に対して6.0重量部である。
この比較例4に係る透明導電層形成用塗液を用いた以外は実施例1と同様にして、貴金属合金微粒子(金コート銀微粒子)と微量の銀単体微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とする透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、比較例4に係る透明導電性基材を得た。
そして、比較例4に係る透明導電層形成用塗液の組成等を表1に示し、また、比較例4に係る透明導電性基材の透明2層膜を実施例1と同様に評価した結果を表2に示した。
注)TiN粒子を含有する透明2層膜表面のTEM像においては、貴金属合金微粒子(Ag−Au粒子)とTiN粒子の分離が難しく、画像解析を行なう上で正確な「平均孔径」、「所定孔径を有する無定形微孔の累積頻度」および「空孔率」の測定・算出は困難であったため、表2における実施例3と比較例2の該当欄は「−」と表示されている。
「確 認」
表1〜表2と図1〜図3より以下のことが確認される。
(1)まず、従来と同様に銀単体粒子を含有しない比較例1に係る透明導電層形成用塗液を用いて製造された比較例1に係る透明2層膜の表面抵抗が5130(Ω/□)、銀単体粒子を含有するが金コート銀微粒子の平均粒径が23nmと20nmを超えた比較例3に係る透明導電層形成用塗液を用いて製造された比較例3に係る透明2層膜の表面抵抗が89(kΩ/□)であるのに対し、銀単体粒子を含有し、かつ、金コート銀微粒子の平均粒径が6.2nmである実施例1および2に係る透明導電層形成用塗液を用いて製造された実施例1および2に係る透明2層膜の表面抵抗はそれぞれ980(Ω/□)、1380(Ω/□)と低いことが確認される。
(2)また、実施例1に係る透明2層膜においては、図1のTEM写真が示すように平均粒径6.2nmの貴金属合金微粒子(金コート銀微粒子)同士が平均15nmの太さで直鎖状に連結することで孔径の分布幅のせまい均一かつ緻密な網目状構造が形成されていることが確認される。
これに対して、銀単体粒子を含有しない比較例1に係る透明導電層形成用塗液を用いて製造された比較例1に係る透明2層膜においては、図2のTEM写真が示すように膜中における貴金属合金微粒子(金コート銀微粒子)の分布に偏りがあり(孔径の分布幅が広い)、結果として不均一な網目状構造を形成していることが確認される。
また、銀単体粒子を含有するが金コート銀微粒子の平均粒径が23nmと20nmを超えた比較例3に係る透明導電層形成用塗液を用いて製造された比較例3に係る透明2層膜においては、図3のTEM写真が示すように貴金属合金微粒子(金コート銀微粒子)同士が50〜300nm前後の太さ(短方向長さ)をもったクラスター状に連結していることから、全体的に孔径が小さく、それらの孔径分布もブロードであるため、均一な網目状構造を形成しておらず、膜の透過率が低い(73.1%)ばかりか、網目(ネットワーク)構造の部分的な切断が生じるため膜抵抗も上述したように高い(89kΩ/□)ことが確認される。
(3)そして、上記(1)〜(2)から、実施例1〜2に係る透明2層膜をブラウン管等の表示装置に適用した場合、輝度を損なわずに、従来よりも優れた電磁波シールド特性が得られることが確認される。
(4)次に、銀単体微粒子の平均粒径が60.5nmと50nmを超えた実施例4に係る透明導電層形成用塗液を用いて製造された実施例4に係る透明2層膜においては、実施例1に係る透明2層膜と比較してその表面抵抗が2950(Ω/□)と若干上昇していることが確認される。
(5)また、金コート銀微粒子100重量部に対し銀単体微粒子の添加量が5重量部を超えた(6.0重量部)比較例4に係る透明導電層形成用塗液を用いて製造された比較例4に係る透明2層膜においては、実施例1と2に係る透明2層膜と比較してその表面抵抗が56(kΩ/□)までに急増することが確認される。
(6)更に、有色顔料として窒化チタン微粒子を添加した透明導電層形成用塗液において、従来と同様に銀単体粒子を含有しない比較例2に係る透明導電層形成用塗液を用いて製造された比較例2に係る透明2層膜においてはその表面抵抗が75(kΩ/□)であるのに対し、銀単体粒子を含有する実施例3に係る透明導電層形成用塗液を用いて製造された実施例3に係る透明2層膜においてはその表面抵抗が850(Ω/□)と低く、高導電性の有色系透明2層膜を形成できることが確認される。
(7)尚、各実施例においては貴金属微粒子として金コート銀微粒子を用いた透明導電層形成用塗液が適用されているが、金以外の白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムでコートされた貴金属コート銀微粒子を用いた透明導電層形成用塗液を適用しても各実施例と同様に可視光線透過性および導電性に優れた透明2層膜を得ることができ、また、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムの貴金属と銀との貴金属合金微粒子を用いた透明導電層形成用塗液を適用しても各実施例と同様に可視光線透過性および導電性に優れた透明2層膜を得ることができることも確認されている。
溶媒と、この溶媒に分散された平均粒径1〜20nmの貴金属コート銀微粒子若しくは貴金属合金微粒子の鎖状凝集体と銀単体微粒子を含有し、かつ、鎖状凝集体を構成する貴金属コート銀微粒子若しくは貴金属合金微粒子100重量部に対し上記銀単体微粒子の配合割合が0.1〜5重量部に設定された透明導電層形成用塗液を用いて形成された透明導電層と透明コート層とで構成される透明2層膜は、従来より発達した均一で緻密な貴金属微粒子の網目状構造を有するため、この透明2層膜は、良好な反射防止効果と電界シールド効果を有し、かつ、光線透過性と耐候性にも優れていることから、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、液晶ディスプレイ(LCD)等表示装置における前面板等に好適に利用される。
実施例1に係る透明2層膜表面のTEM写真図。 比較例1に係る透明2層膜表面のTEM写真図。 比較例3に係る透明2層膜表面のTEM写真図。

Claims (11)

  1. 透明基板上に順次形成された透明導電層と透明コート層とで構成され、上記透明導電層内に含まれる貴金属微粒子同士が互いに連結されて無定形微孔を有する網目状構造を形成している透明2層膜において、
    平均粒径1〜20nmの貴金属合金微粒子を上記貴金属微粒子の主成分とし、この貴金属合金微粒子同士が1〜30nmの平均太さで直鎖状に連結されて無定形微孔を有する網目状構造を形成していると共に、上記無定形微孔の平均孔径が25〜60nmおよび/または孔径30〜150nmの範囲にある無定形微孔の累積度数が膜中における全無定形微孔数の40%以上であり、かつ、上記無定形微孔の膜全体に対する面積占有率が45%以上であることを特徴とする透明2層膜。
  2. 上記貴金属合金微粒子が、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された少なくとも一種の貴金属と銀との合金微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の透明2層膜。
  3. 透明基板を含まない透明2層膜だけの可視光線透過率が、40〜95%の範囲内の任意の値に設定されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の透明2層膜。
  4. 上記網目状構造の無定形微孔部分に有色顔料微粒子を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明2層膜。
  5. 上記有色顔料微粒子が、カーボン、チタンブラック、窒化チタン、複合酸化物顔料、コバルトバイオレット、モリブデンオレンジ、群青、紺青、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料およびフタロシアニン系顔料から選択された少なくとも1種の微粒子であることを特徴とする請求項4に記載の透明2層膜。
  6. 請求項1に記載の透明2層膜の製造方法において、
    溶媒と、この溶媒に分散された平均粒径1〜20nmの貴金属コート銀微粒子若しくは貴金属合金微粒子の鎖状凝集体と銀単体微粒子を含有し、かつ、鎖状凝集体を構成する貴金属コート銀微粒子若しくは貴金属合金微粒子100重量部に対し上記銀単体微粒子の配合割合が0.1〜5重量部に設定された透明導電層形成用塗液を透明基板上に塗布かつ乾燥し、次いで、透明コート層形成用塗布液を塗布した後、加熱処理することを特徴とする透明2層膜の製造方法。
  7. 上記銀単体微粒子の平均粒径が50nm以下であることを特徴とする請求項6に記載の透明2層膜の製造方法。
  8. 上記貴金属コート銀微粒子における貴金属が、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された少なくとも一種類以上であることを特徴とする請求項6〜7のいずれかに記載の透明2層膜の製造方法。
  9. 上記貴金属合金微粒子が、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された少なくとも一種の貴金属と銀との合金微粒子であることを特徴とする請求項6〜7のいずれかに記載の透明2層膜の製造方法。
  10. 上記透明導電層形成用塗液中に有色顔料微粒子を含むことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の透明2層膜の製造方法。
  11. 上記有色顔料微粒子が、カーボン、チタンブラック、窒化チタン、複合酸化物顔料、コバルトバイオレット、モリブデンオレンジ、群青、紺青、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料およびフタロシアニン系顔料から選択された少なくとも1種の微粒子であることを特徴とする請求項10に記載の透明2層膜の製造方法。
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