JP4035934B2 - 透明導電性基材とその製造方法および透明導電性基材の製造に用いられる透明導電層形成用塗液とその製造方法 - Google Patents

透明導電性基材とその製造方法および透明導電性基材の製造に用いられる透明導電層形成用塗液とその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明基板とこの上に順次形成された透明導電層と透明コート層を備え、例えばCRT等表示装置の前面板等に適用される透明導電性基材に係り、特に、耐候性、耐紫外線性、導電性等に優れしかも製造コストの低減が図れる透明導電性基材とその製造方法および透明導電性基材の製造に用いられる透明導電層形成用塗液とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年のオフィスオートメーション(OA)化によりオフィスに多くのOA機器が導入され、OA機器のディスプレイと向き合って終日作業を行わねばならないという環境が最近珍しくない。
【0003】
ところで、OA機器の一例としてコンピュータの陰極線管(CRT)等に接して仕事を行う場合、表示画面が見やすく、視覚疲労を感じさせないことの外に、CRT表面の帯電によるほこりの付着や電撃ショックがないこと等が要求されている。更に、これ等に加えて最近では、CRTから発生する低周波電磁波の人体に対する悪影響が懸念され、このような電磁波が外部に漏洩しないことがCRTに対して望まれている。
【0004】
そして、上記電磁波は偏向コイルやフライバックトランスから発生し、テレビジョンの大型化に伴って益々大量の電磁波が周囲に漏洩する傾向にある。
【0005】
ところで、磁界の漏洩は偏向コイルの形状を変えるなどの工夫で大部分を防止することができる。一方、電界の漏洩もCRTの前面ガラス表面に透明導電層を形成することにより防止することが可能である。
【0006】
このような電界の漏洩に対する防止方法は、近年、帯電防止のために取られてきた対策と原理的には同一である。しかし、上記透明導電層は、帯電防止用に形成されていた導電層よりもはるかに高い導電性が求められている。すなわち、帯電防止用には表面抵抗で108Ω/□程度で十分とされているが、漏洩電界を防ぐ(電界シールド)ためには、少なくとも106Ω/□以下、好ましくは103Ω/□以下である低抵抗の透明導電層を形成する必要がある。
【0007】
そこで、上記要求に対処するため、従来よりいくつかの提案がなされているが、その中でも低コストでかつ低い表面抵抗を実現できる方法として、導電性微粒子をアルキルシリケート等の無機バインダーと共に溶媒中に分散した透明導電層形成用塗液を、CRTの前面ガラスに塗布・乾燥後、200℃程度の温度で焼成する方法が知られている。
【0008】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた方法は、真空蒸着やスパッタ法等の他の透明導電層の形成方法に比べてはるかに簡便であり、製造コストも低く、CRTに処理可能な電界シールドとして極めて有利な方法である。
【0009】
この方法に用いられる上記透明導電層形成用塗液として、導電性微粒子にインジウム錫酸化物(ITO)を適用したものが知られている。しかし、得られる膜の表面抵抗が104〜106Ω/□と高いため、漏洩電界を十分に遮蔽するには電界キャンセル用の補正回路が必要となることから、その分、製造コストが割高となる問題があった。一方、上記導電性微粒子に金属粉を用いた透明導電層形成用塗液では、ITOを用いた塗布液に比べ、若干、膜の透過率が低くなるものの、102〜103Ω/□という低抵抗膜が得られる。従って、上述した補正回路が必要なくなるためコスト的に有利となり、今後主流になると思われる。
【0010】
そして、上記透明導電層形成用塗液に適用される金属微粒子としては、特開平8−77832号公報や特開平9−55175号公報等に示されるように空気中で酸化され難い、銀、金、白金、ロジウム、パラジウム等の貴金属に限られている。これは、貴金属以外の金属微粒子、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等が適用された場合、大気雰囲気下でこれ等金属微粒子の表面に酸化物皮膜が必ず形成されてしまい透明導電層として良好な導電性が得られなくなるからである。
【0011】
また、一方では表示画面を見易くするために、フェイスパネル表面に防眩処理を施して画面の反射を抑えることも行われている。この防眩処理は、微細な凹凸を設けて表面の拡散反射を増加させる方法によってもなされるが、この方法を用いた場合、解像度が低下して画質が落ちるためあまり好ましい方法とはいえない。従って、むしろ反射光が入射光に対して破壊的干渉を生ずるように、透明皮膜の屈折率と膜厚とを制御する干渉法によって防眩処理を行うことが好ましい。このような干渉法により低反射効果を得るため、一般的には高屈折率膜と低屈折率膜の光学的膜厚をそれぞれ1/4λと1/4λ(λは波長)、あるいは1/2λと1/4λに設定した二層構造膜が採用されており、前述のインジウム錫酸化物(ITO)微粒子からなる膜もこの種の高屈折率膜として用いられている。
【0012】
尚、金属においては、光学定数(n−ik,n:屈折率,i2=−1,k:消衰係数)を構成するパラメータの内、nの値は小さいがkの値がITO等と比べ極端に大きいため、金属微粒子からなる透明導電層を用いた場合でも、ITO(高屈折率膜)と同様に、二層構造膜で光の干渉による反射防止効果が得られる。
【0013】
ところで、従来の透明導電層形成用塗液に適用される金属微粒子としては、上述したように銀、金、白金、ロジウム、パラジウムなどの貴金属に限定されているが、これ等の比抵抗を比較した場合、白金、ロジウム、パラジウムの比抵抗は、それぞれ10.6、5.1、10.8μΩ・cmで、銀、金の1.62、2.2μΩ・cmに比べて高いため、表面抵抗の低い透明導電層を形成するには銀微粒子や金微粒子を適用した方が有利であった。
【0014】
しかし、銀微粒子を適用した場合、硫化、酸化、紫外線や食塩水による劣化が激しく耐候性に問題があり、他方、金微粒子を適用した場合、上記耐候性の問題はなくなるが白金微粒子、ロジウム微粒子、パラジウム微粒子等が適用された場合と同様にコスト上の問題を有していた。更に、金微粒子を適用した場合には、金特有の光学特性により形成された透明導電層自体が可視光線の一部を吸収するため、可視光線全域でフラットな透過光線プロファイルが要求されるCRTなど表示装置の表示面には適用できない問題点を有していた。
【0015】
このような技術的背景の下、本発明者は、上記銀若しくは金微粒子に代えて、銀微粒子表面に金若しくは白金単体または金と白金の複合体をコーティングした平均粒径1〜100nmの貴金属コート銀微粒子が分散された透明導電層形成用塗液並びにこの塗布液を用いて製造した透明導電性基材やこの基材が適用された表示装置等を既に提案している(特願平9−309350号、特願平9−309351号、特願平9−332400号および特願平9−332401号の各明細書参照)。
【0016】
そして、銀微粒子の表面に金若しくは白金単体または金と白金の複合体をコーティングすると、貴金属コート銀微粒子内部の銀が金若しくは白金単体または金と白金の複合体により保護されるため耐候性、耐薬品性等の改善が図れる。
【0017】
すなわち、透明導電性基材における上記透明導電層は、貴金属コート銀微粒子が分散された透明導電層形成用塗液を透明基板上に塗布し、次いで加熱処理することにより形成される。そして、この加熱処理により、各貴金属コート銀微粒子は、銀微粒子表面に金若しくは白金単体または金と白金の複合体がコーティングされたまま微粒子同士が結合して、金および/または白金と銀から成る貴金属微粒子を各々構成するため、貴金属微粒子内の銀が金若しくは白金単体または金と白金の複合体により保護され、透明導電層内における貴金属微粒子の耐候性、耐薬品性等の改善が図れる。
【0018】
尚、本発明者は、上記金若しくは白金単体または金と白金の複合体を銀微粒子表面にコーティングする方法に代えて、金若しくは白金または金並びに白金と銀とを合金化させて合金微粒子とし上述した耐候性等の特性を改善させる方法も検討した。
【0019】
しかし、微粒子調製に採用されている通常の湿式法においては、上記合金微粒子を作製するための原料溶液として塩化金酸塩あるいは塩化白金酸塩と銀塩の水溶液を用いた場合、それらの混合時に難溶性の塩化銀を生じる問題がある。
【0020】
また、金塩、白金塩、銀塩としてシアン錯塩を用いた場合には前記問題を生じないが、有毒なシアン化合物を取扱う必要があるという点で問題があり、金あるいは白金と銀の合金微粒子の合成は容易でない。
【0021】
そこで、本発明者は、後者の方法を採らずに、貴金属コート銀微粒子を用いる前者の方法により上述した従来における問題点の解決を図っている。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、貴金属コート銀微粒子を用いる前者の方法においても、透明導電層形成用塗液を透明基板上に塗布した後の加熱処理条件如何によっては、金および/または白金で形成される貴金属コート層の内部に銀の一部が拡散して合金化層を構成し、その一部が表面に露出してしまうことがあった。
【0023】
そして、この合金化層は、金および/または白金で形成される貴金属コート層に較べて化学的安定性が劣るため、その分、耐候性、耐紫外線性、耐薬品性等が若干低下してしまう問題があり、特に、上記合金化層内の銀の比率が高くなるにつれて顕著であった。
【0024】
本発明はこの様な問題に着目してなされたもので、その課題とするところは、製造時における加熱処理条件を任意に設定しても、耐候性、耐紫外線性等が低下し難い透明導電性基材とその製造方法を提供することにある。
【0025】
本発明の他の課題とするところは、耐候性、耐紫外線性、導電性などに優れた透明導電性基材の製造に適用される透明導電層形成用塗液とその製造方法を提供することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1に係る発明は、
透明基板、および、この透明基板上に順次形成された透明導電層と透明コート層を備える透明導電性基材を前提とし、
上記透明導電層が、金と銀とで構成されかつ金を50重量%を超え95重量%の範囲で含有する平均粒径1〜100nmの貴金属微粒子と、バインダーマトリックスとを主成分とし、上記貴金属微粒子が、銀微粒子表面に金がコーティングされた貴金属コート銀微粒子を用いて形成されていることを特徴とし、
請求項2に係る発明は、
請求項1記載の発明に係る透明導電性基材を前提とし、
上記透明導電層内に導電性酸化物微粒子が含まれていることを特徴とする。
【0027】
また、請求項3に係る発明は、
請求項2記載の発明に係る透明導電性基材を前提とし、
上記導電性酸化物微粒子が、酸化錫、錫アンチモン酸化物またはインジウム錫酸化物から選択された1種以上の微粒子であることを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の発明に係る透明導電性基材を前提とし、
透明導電層の上記バインダーマトリックスおよび透明コート層が、酸化ケイ素を主成分としていることを特徴とし、
また、請求項5に係る発明は、
請求項1〜4のいずれかに記載の発明に係る透明導電性基材を前提とし、
上記透明導電層の表面抵抗が10〜3000Ω/□であり、かつ、可視光線波長域(380〜780nm)の5nmおきの各波長における上記透明基板を含まずかつ透明導電層と透明コート層から成る透明2層膜だけの透過率の標準偏差が0〜5%であることを特徴とするものである。
【0028】
次に、請求項6〜10に係る発明は上記透明導電性基材の製造方法を特定した発明に関する。
【0029】
すなわち、請求項6に係る発明は、
透明基板、および、この透明基板上に順次形成された透明導電層と透明コート層を備える透明導電性基材の製造方法を前提とし、
銀微粒子表面に金がコーティングされかつ金を50重量%を超え95重量%の範囲で含有する平均粒径1〜100nmの貴金属コート銀微粒子とこれを分散する溶媒とを主成分とする透明導電層形成用塗液を上記透明基板上に塗布し、次いで透明コート層形成用塗布液を塗布した後、加熱処理することを特徴とし、
請求項7に係る発明は、
請求項6記載の発明に係る透明導電性基材の製造方法を前提とし、
上記透明導電層形成用塗液内に、導電性酸化物微粒子が含まれていることを特徴とし、
請求項8に係る発明は、
請求項7記載の発明に係る透明導電性基材の製造方法を前提とし、
上記導電性酸化物微粒子が、酸化錫、錫アンチモン酸化物またはインジウム錫酸化物から選択された1種以上の微粒子であることを特徴とする。
【0030】
また、請求項9に係る発明は、
請求項6〜8のいずれかに記載の発明に係る透明導電性基材の製造方法を前提とし、
上記透明導電層形成用塗液内に、透明導電層のバインダーマトリックスを構成する無機バインダーが含まれていることを特徴とし、
請求項10に係る発明は、
請求項6〜9のいずれかに記載の発明に係る透明導電性基材の製造方法を前提とし、
上記透明コート層形成用塗布液、および、上記透明導電層形成用塗液の無機バインダーがシリカゾルを主成分としていることを特徴とするものである。
【0031】
次に、請求項11〜14に係る発明は上記透明導電性基材の製造に用いられる透明導電層形成用塗液を特定した発明に関する。
【0032】
すなわち、請求項11に係る発明は、
透明基板、および、この透明基板上に順次形成された透明導電層と透明コート層を備える透明導電性基材の製造に用いられる透明導電層形成用塗液を前提とし、
溶媒、および、この溶媒に分散されかつ銀微粒子表面に金がコーティングされると共に金を50重量%を超え95重量%の範囲で含有する平均粒径1〜100nmの貴金属コート銀微粒子を主成分とすることを特徴とし、
請求項12に係る発明は、
請求項11記載の発明に係る透明導電層形成用塗液を前提とし、
導電性酸化物微粒子が含まれていることを特徴とし、
請求項13に係る発明は、
請求項12記載の発明に係る透明導電層形成用塗液を前提とし、
上記導電性酸化物微粒子が、酸化錫、錫アンチモン酸化物またはインジウム錫酸化物から選択された1種以上の微粒子であることを特徴とし、
また、請求項14に係る発明は、
請求項11〜13のいずれかに記載の発明に係る透明導電層形成用塗液を前提とし、
無機バインダーが含まれていることを特徴とするものである。
【0033】
次に、請求項15に係る発明は上記透明導電層形成用塗液の製造方法を特定した発明に関する。
【0034】
すなわち、請求項15に係る発明は、
透明基板、および、この透明基板上に順次形成された透明導電層と透明コート層を備える透明導電性基材の製造に用いられる透明導電層形成用塗液の製造方法を前提とし、
銀微粒子のコロイド状分散液に還元剤とアルカリ金属の金酸塩溶液を加えると共に、銀微粒子のコロイド状分散液とアルカリ金属の金酸塩溶液の配合割合を調整して、金を50重量%を超え95重量%の範囲で含有する貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液を得る貴金属コート銀微粒子調製工程、
上記貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液における電解質濃度を下げる脱塩処理と上記コロイド状分散液を濃縮する濃縮処理を施して貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液を得る脱塩・濃縮工程、
上記貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液に溶媒単独、あるいは導電性酸化物微粒子および/または無機バインダーが含まれた溶媒を加えて透明導電層形成用塗液を得る溶媒配合工程、
の各工程を具備することを特徴とするものである。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0036】
まず、本発明は、金が化学的に安定で、耐候性、耐薬品性、耐酸化性等に優れているため、銀微粒子の表面に金をコーティングすればその化学的安定性を高めることができるという考え方に基づいている。また、上記透明導電層は、上述したように透明基板上に透明導電層形成用塗液を塗布し、次いで加熱処理して形成される。そして、透明導電層形成用塗液に含まれる貴金属コート銀微粒子内における金の含有割合について50重量%を超え95重量%の範囲に設定した場合、上記加熱処理条件如何によって貴金属コート層の一部に合金化層が形成されても、得られる貴金属微粒子の耐候性、耐紫外線性、耐薬品性等が低下し難いといった発見に基づき本発明は完成されている。
【0037】
すなわち、本発明は、透明基板、および、この透明基板上に順次形成された透明導電層と透明コート層を備える透明導電性基材において、
上記透明導電層が、金と銀とで構成されかつ金を50重量%を超え95重量%の範囲で含有する平均粒径1〜100nmの貴金属微粒子と、バインダーマトリックスとを主成分とすることを特徴とするものである。
【0038】
そして、この透明導電性基材においては、透明導電層内における貴金属微粒子の耐候性、耐紫外線性、耐薬品性等が著しく改善される。例えば、銀微粒子と酸化ケイ素を主成分とするバインダーマトリックスから成る透明導電層を5%食塩水に浸漬すると、食塩水中の塩素イオンと透明導電層の銀微粒子が反応して1時間以内の短時間で著しく劣化し、透明導電層における膜の剥離さえ生じる。これに対し、銀微粒子表面に金がコーティングされかつ金を50重量%を超え95重量%の範囲で含有する貴金属コート銀微粒子を主成分とする透明導電層形成用塗液を適用して形成された透明導電層の場合には、24時間以上の浸漬でも透明導電層は全く変化せず、優れた耐候性を示す。また、金は大気中で酸化しないことから、上記貴金属コート銀微粒子により形成される金を50重量%を超え95重量%の範囲で含有する貴金属微粒子は紫外線照射時の酸素ラジカル等に起因する酸化による電気抵抗の劣化もない。従って、金を50重量%を超え95重量%の範囲で含有する貴金属微粒子が含まれる透明導電層の耐酸化性は、銀微粒子がそのまま適用された従来の透明導電層、あるいは、金の含有割合が50重量%以下の貴金属微粒子が含まれる透明導電層よりも優れている。尚、本発明において金の含有割合が50重量%を超えており、その分、貴金属微粒子内における銀の重量割合は形式的に低下しているが、金に較べて銀の原子量は半分程度で、モル%で比較した場合の割合低下はそれ程でもないため、貴金属微粒子の特性における銀の寄与は依然として維持されている。
【0039】
次に、白金の電気抵抗は、上述したように銀、金に比べて若干高いことから、上記透明導電層の表面抵抗を低くするためには、銀と白金で構成される貴金属微粒子、あるいは、銀と白金並びに金とで構成される貴金属微粒子に較べて、銀と金とで構成される貴金属微粒子を適用した方が有利である。従って、本発明においては、銀と金とで構成される貴金属微粒子に限定している
【0040】
尚、本明細書において透明導電層形成用塗液内における銀と金で構成された微粒子について貴金属コート銀微粒子と表現し、透明導電層内における銀と金で構成された微粒子については貴金属微粒子と区別して表現しているのは以下の理由による。すなわち、透明導電層形成用塗液内おいては銀微粒子表面をコーティングする貴金属コート層が金のみによって構成されるのに対し、透明導電層内においては上記加熱処理に基づく合金化層の形成により銀微粒子表面をコーティングする貴金属コート層が金のみによって構成されているとは限らない場合が存在するためである。従って、透明導電層内における銀と金で構成された微粒子については貴金属コート銀微粒子と表現せずに金と銀とで構成される貴金属微粒子と表現している。
【0041】
ここで、上記貴金属コート銀微粒子は、その平均粒径が1〜100nmであることを要する。1nm未満の場合、この微粒子の製造は困難であり、更に、塗布液中で凝集し易く実用的でない。また、100nmを越えると、形成された透明導電層の可視光線透過率が低くなり過ぎてしまい、仮に、膜厚を薄く設定して可視光線透過率を高くした場合でも、表面抵抗が高くなり過ぎてしまい実用的ではないからである。尚、ここでいう平均粒径とは、透過電子顕微鏡(TEM)で観察される微粒子の平均粒径を示している。
【0042】
次に、上記貴金属コート銀微粒子において、銀微粒子表面をコートする金の含有割合は、50重量%を超え95重量%の範囲に設定することを要し、好ましくは、60重量%〜90重量%に設定するとよい。金のコーティング量が50重量部%以下であると、加熱処理によってその一部の貴金属コート銀微粒子が合金化された場合にコーティングの保護効果が弱まって耐候性が若干悪くなる場合があり、逆に、95重量%を越えるとコスト的に難があるからである。
【0043】
尚、透明導電層における膜透過率および膜強度の向上を図る目的で、透明導電層内に酸化錫、錫アンチモン酸化物またはインジウム錫酸化物から選択された1種以上の導電性酸化物微粒子を加えてもよい。この場合、透明導電層内の貴金属微粒子と導電性酸化物微粒子の配合比は、貴金属微粒子100重量部に対し導電性酸化物微粒子1〜200重量部、好ましくは10〜100重量部の範囲に設定するとよい。導電性酸化物微粒子の配合量が1重量部未満だと、導電性酸化物微粒子添加の効果がみられず、逆に200重量部を越えると、透明導電層の抵抗が高くなり過ぎてしまい実用的ではないからである。また、貴金属微粒子と同様、導電性酸化物微粒子の平均粒径は1〜100nm程度が好ましい。
【0044】
次に、上記透明導電層を形成するために用いられる透明導電層形成用塗液は、以下のような方法で製造することができる。
【0045】
まず、既知の方法[例えば、Carey−Lea法、Am. J. Sci.、37、47(1889)、Am. J. Sci.、38(1889)]により銀微粒子のコロイド分散液を調製する。すなわち、硝酸銀水溶液に、硫酸鉄(II)水溶液とクエン酸ナトリウム水溶液の混合液を加えて反応させ、沈降物を濾過・洗浄した後、純水を加えることにより簡単に銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.1〜10重量%)が調製される。この銀微粒子のコロイド分散液の調製方法は平均粒径1〜100nmの銀微粒子が分散されたものであれば任意でありかつこれに限定されるものではない。得られた銀微粒子のコロイド分散液に還元剤を加え、更にそこにアルカリ金属の金酸塩溶液を加えることで上記銀微粒子の表面に金をコーティングし、貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液を得ることができる。
【0046】
尚、この貴金属コート銀微粒子調製工程で、必要により、銀微粒子のコロイド分散液、アルカリ金属の金酸塩溶液の少なくともいずれか一つ、または、それぞれに少量の分散剤を加えてもよい。
【0047】
ここで、上記貴金属コート銀微粒子調製工程において銀微粒子表面への金のコーティング反応が起こるのは、金酸塩の還元により金が生じる際に、既に液中に微細な銀微粒子が多量に存在するためで、金が単独で核生成(均一核生成)するよりも、銀微粒子を核としてその表面に成長する方がエネルギー的に有利な条件で進行するからである。従って、金酸塩の還元により金が生じる際、液中に微細な銀微粒子が多量に存在することを前提としているため、貴金属コート銀微粒子調製工程における金酸塩溶液と還元剤の上記銀微粒子のコロイド分散液内への添加タイミングについては以下のようにするとよい。すなわち、金酸塩溶液の添加と還元剤の添加を同時または上記溶液より先に還元剤を添加するように調整することが好ましい。すなわち、還元剤と金酸塩溶液を混ぜた状態で銀微粒子のコロイド分散液内に添加した場合には、金酸塩溶液を上記還元剤に混ぜた段階で金酸塩の還元により金が生じてしまい、かつ、金が単独で核生成(均一核生成)してしまうため、金酸塩溶液と還元剤とを混ぜた後に銀微粒子のコロイド分散液に添加しても銀微粒子表面への金のコーティング反応が起こらなくなることがあるからである。
【0048】
尚、上記還元剤には、ヒドラジン(N24)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)等の水素化ホウ素化合物、ホルムアルデヒド等を用いることができるが、銀微粒子のコロイド分散液に加えられたときに銀超微粒子の凝集を起こさず、金酸塩を金に還元できれば任意でありこれらに限定されるものではない。
【0049】
例えば、金酸カリウム[KAu(OH)4]をヒドラジンあるいは水素化ホウ素ナトリウムで還元する場合の還元反応は、それぞれ以下の様に示される。
【0050】
KAu(OH)4+3/4N24→Au+KOH+3H2O+3/4N2
KAu(OH)4+3/4NaBH4→Au+KOH+3/4NaOH
+3/4H3BO3+3/2H2
ここで、還元剤として上記水素化ホウ素ナトリウムを用いた場合、上記反応式から確認できるように還元反応により生じる電解質の濃度が高くなるため、後述するように微粒子が凝集し易く、還元剤としての添加量が限られ、用いる銀微粒子のコロイド分散液における銀濃度を高くできない不便さがある。
【0051】
一方、還元剤として上記ヒドラジンを用いた場合、上記反応式から確認できるように還元反応により生じる電解質が少なく、還元剤としてより適している。
【0052】
尚、金のコーティング原料として、アルカリ金属の金酸塩以外の塩、例えば塩化金酸(HAuCl4)、または、塩化金酸塩(NaAuCl4、KAuCl4等)を用いた場合、ヒドラジンによる還元反応は以下のように示される。
【0053】
XAuCl4+3/4N24→Au+XCl+3HCl+3/4N2
(X=H,Na,K等)
この様に塩化金酸等を適用した場合、上記金酸塩を用いた場合と比較して、還元反応による電解質濃度が高くなるだけでなく塩素イオンを生じるため、これが銀微粒子と反応し、難溶性の塩化銀を生成してしまうことから、本発明に係る透明導電層形成用の原料に用いることは困難である。
【0054】
以上のようにして得られた貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液は、この後、透析、電気透析、イオン交換、限外濾過等の脱塩処理方法により分散液内の電解質濃度を下げることが好ましい。これは、電解質濃度が高いとコロイドは電解質で一般に凝集してしまうからであり、この現象は、Schulze−Hardy則としても知られている。尚、同様の理由から、上記貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液若しくは透明導電層形成用塗液内に、酸化錫、錫アンチモン酸化物またはインジウム錫酸化物から選択された導電性酸化物微粒子を配合する場合、これ等導電性酸化物微粒子若しくはその分散液についてもその脱塩を十分に行っておくことが望ましい。
【0055】
次に、脱塩処理された貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液を濃縮処理して貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液を得、この貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液に、有機溶剤単独、あるいは導電性酸化物微粒子および/または無機バインダーが含まれた有機溶剤を添加して成分調整(微粒子濃度、水分濃度等)を行い、透明導電層形成用塗液が得られる。尚、脱塩処理方式として限外濾過が適用された場合、この限外濾過は以下に述べるように濃縮処理としても作用することから、脱塩処理と濃縮処理を同時進行で行うことも可能である。従って、貴金属コート銀微粒子が分散されたコロイド状分散液の脱塩処理と濃縮処理については、適用する処理方式によりその順序は任意に設定され、限外濾過等が適用された場合には同時処理も可能である。
【0056】
尚、透明導電層形成用塗液内の貴金属コート銀微粒子おいて、銀微粒子表面に金がコーティングされていることの根拠は、透過電子顕微鏡(TEM)による粒子観察と成分分析(EDX:エネルギー分散型X線解析装置)にて、金のコーティング前後で粒子径がほとんど変化してないこと、および、金の分布が各粒子に対して一様であること、更にはEXAFS(Extended X-ray Absorption Fine Structure:広域X線吸収微細構造)解析による金の配位数から技術的に確認されている。
【0058】
また、上記貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液の濃縮処理は、減圧エバポレーター、限外濾過等の常用の方法で行うことができる。また、透明導電層形成用塗液中の水分濃度は、1〜50重量%好ましくは5〜20重量%がよい。50重量%を超えると、透明基板上にこの透明導電層形成用塗液を塗布した後、乾燥中に、水の高い表面張力によりはじきを生じ易くなる場合があるからである。
【0059】
尚、透明導電層形成用塗液中に界面活性剤を加えれば上記はじきの問題は解決可能である。しかし、界面活性剤の配合による塗布欠陥が生じ易くなる別の問題を生ずることがある。従って、透明導電層形成用塗液中の水分濃度は1〜50重量%が好ましい。
【0060】
また、上記有機溶剤としては特に制限はなく、塗布方法や製膜条件により、適宜に選定される。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル等のグリコール誘導体、アセトニトリル、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
次に、この様にして得られた透明導電層形成用塗液を用いて、透明基板、および、この透明基板上に形成され平均粒径1〜100nmの貴金属微粒子とバインダーマトリックスを主成分とする透明導電層と、この上に形成された透明コート層を備える透明導電性基材を得ることができる。
【0062】
そして、透明基板上に、透明導電層と透明コート層とで構成される透明2層膜を形成するには以下の方法でこれを行うことができる。すなわち、溶媒と平均粒径1〜100nmの貴金属コート銀微粒子を主成分とする透明導電層形成用塗液を、ガラス基板、プラスチック基板等の透明基板上にスプレーコート、スピンコート、ワイヤーバーコート、ドクターブレードコート等の手法にて塗布し、必要に応じて乾燥した後、例えばシリカゾル等を主成分とする透明コート層形成用塗布液を上述した手法によりオーバーコートする。
【0063】
次に、オーバーコートした後、例えば50〜350℃程度の温度で加熱処理を施しオーバーコートした透明コート層の硬化を行って上記透明2層膜を形成する。尚、50〜350℃程度の加熱処理では、貴金属コート銀微粒子は金で保護されているため問題を生じないが、従来法において適用されている銀微粒子であると200℃を超えた場合に酸化拡散により表面抵抗値が上昇し膜の劣化が生じる。
【0064】
ここで、シリカゾル等を主成分とする透明コート層形成用塗布液を上述した手法によりオーバーコートした際、予め塗布された溶媒と貴金属コート銀微粒子を主成分とする透明導電層形成用塗液により形成された貴金属コート銀微粒子層の間隙に、オーバーコートしたシリカゾル液(このシリカゾル液は上記加熱処理により酸化ケイ素を主成分とするバインダーマトリックスとなる)がしみ込むことで、導電性の向上、強度の向上、耐候性の一層の向上が同時に達成される。
【0065】
更に、酸化ケイ素を主成分とするバインダーマトリックス中に貴金属微粒子が分散された透明導電層の上記光学定数(n−ik)において、屈折率nはさほど大きくないが消衰係数kが大きいため、上記透明導電層と透明コート層の透明2層膜構造により、透明2層膜の反射率を大幅に低下できる。そして、図1に示すように、ITO微粒子(比較例2)や銀微粒子(比較例1)が適用された場合と比較しても、金と銀とで構成される貴金属微粒子(実施例1)を用いた場合、可視光線の短波長域(380〜500nm)で反射率が改善される。また、透明2層膜の透過光線プロファイルも、金と銀とで構成される貴金属微粒子を適用することにより、図2に示すように可視光線の短波長域で改善される。例えば、可視光線波長域(380〜780nm)の5nmおきの各波長での透明基板を含まない透明2層膜だけの透過率について、その標準偏差を比較すると、銀微粒子(比較例1)を用いた場合7%程度あるが、金および/または白金と銀とで構成される貴金属微粒子を適用した場合(実施例1〜7、参考例1〜2)、1〜3%程度の小さな値となり、非常にフラットな透過プロファイルが得られている。これら透明2層膜の反射、透過特性が改善される理由については未だ明らかでないが、銀微粒子に金若しくは白金単体または金と白金の複合体がコーティングされ若しくは含まれたことによる金属微粒子の表面プラズモンの変化が考えられる。
【0066】
ここで、上記シリカゾルとしては、オルトアルキルシリケートに水や酸触媒を加えて加水分解し、脱水縮重合を進ませた重合物、あるいは既に4〜5量体まで加水分解縮重合を進ませた市販のアルキルシリケート溶液を、さらに加水分解と脱水縮重合を進行させた重合物等を利用することができる。尚、脱水縮重合が進行すると、溶液粘度が上昇して最終的には固化してしまうので、脱水縮重合の度合いについては、ガラス基板やプラスチック基板などの透明基板上に塗布可能な上限粘度以下のところに調整する。但し、脱水縮重合の度合いは上記上限粘度以下のレベルであれば特に指定されないが、膜強度、耐候性等を考慮すると重量平均分子量で500から3000程度が好ましい。そして、アルキルシリケート加水分解重合物は、透明2層膜の加熱焼成時に脱水縮重合反応がほぼ完結して、硬いシリケート膜(酸化ケイ素を主成分とする膜)になる。尚、上記シリカゾルに、弗化マグネシウム微粒子、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル等を加え、透明コート層の屈折率を調節して透明2層膜の反射率を変えることも可能である。
【0067】
また、溶媒とこの溶媒に分散された平均粒径1〜100nmの貴金属コート銀微粒子に加え、透明導電層のバインダーマトリックスを構成する無機バインダー成分としてのシリカゾル液を配合させて上記透明導電層形成用塗液を構成してもよい。この場合においても、シリカゾル液が含まれた透明導電層形成用塗液を塗布し、必要に応じて乾燥させた後に透明コート層形成用塗布液を上述した手法によりオーバーコートすることで、透明導電層と透明コート層から成る同様の上記透明2層膜が得られる。尚、透明導電層形成用塗液内に導電性酸化物微粒子を配合する場合と同様の理由から、透明導電層形成用塗液内に配合する上記シリカゾル液についてもその脱塩を十分に行っておくことが望ましい。
【0068】
以上説明したように本発明に係る透明導電性基材は、従来の透明導電性基材に較べ優れた反射防止効果と透過光線プロファイルを有し、かつ、良好な耐候性、耐紫外線性と高い電界シールド効果を有するため、例えば、上述したCRT、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、液晶ディスプレイ(LCD)等表示装置における前面板等に適用することが可能となる。
【0069】
【実施例】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、本文中の『%』は、透過率、反射率、ヘーズ値の(%)を除いて『重量%』を示し、また『部』は『重量部』を示している。
【0070】
[実施例1]
前述のCarey−Lea法により銀微粒子のコロイド分散液を調製した。具体的には、9%硝酸銀水溶液33gに、23%硫酸鉄(II)水溶液39gと37.5%クエン酸ナトリウム水溶液48gの混合液を加えた後、沈降物をろ過・洗浄した後、純水を加えて、銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.15%)を調製した。この銀微粒子のコロイド分散液110gに、ヒドラジン1水和物(N24・H2O)の1%水溶液8.0gを加えて攪拌しながら、金酸カリウム[KAu(OH)4]水溶液(Au:0.075%)480gと1%高分子分散剤水溶液0.27gの混合液を加え、金単体がコーティングされた貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液を得た。
【0071】
この貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液をイオン交換樹脂(三菱化学社製商品名ダイヤイオンSK1B,SA20AP)で脱塩した後、限外ろ過により濃縮した液に、エタノール(EA)を加え、貴金属コート銀微粒子が含まれた透明導電層形成用塗液(Ag:0.141%、Au:0.309%、水:12.1%、EA:87.45%)を得た。
【0072】
この透明導電層形成用塗液を透過電子顕微鏡で観察した結果、貴金属コート銀微粒子の平均粒径は、8.2nmであった。また、貴金属コート銀微粒子内における金の含有割合は、上記透明導電層形成用塗液の組成比から68.7重量%であった。
【0073】
次に、貴金属コート銀微粒子が含まれた透明導電層形成用塗液を、40℃に加熱されたガラス基板(厚さ3mmのソーダライムガラス)上に、スピンコート(130rpm,60秒間)した後、続けて、シリカゾル液をスピンコート(150rpm,60秒間)し、さらに、210℃、20分間硬化させて、銀と金から成る貴金属微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例1に係る透明導電性基材を得た。
【0074】
ここで、上記シリカゾル液は、メチルシリケート51(コルコート社製商品名)を19.6部、エタノール57.8部、1%硝酸水溶液7.9部、純水14.7部を用いて、SiO2 (酸化ケイ素)固形分濃度が10%で、重量平均分子量が2850のものを調製し、最終的に、SiO2 固形分濃度が0.75%となるようにイソプロピルアルコール(IPA)とn−ブタノール(NBA)の混合物(IPA/NBA=3/1)により希釈して得ている。
【0075】
そして、ガラス基板上に形成された透明2層膜の膜特性(表面抵抗、可視光線透過率、透過率の標準偏差、ヘーズ値、ボトム反射率/ボトム波長)を以下の表1に示す。尚、上記ボトム反射率とは透明導電性基材の反射プロファイルにおいて極小の反射率をいい、ボトム波長とは反射率が極小における波長を意味している。また、製造された実施例1に係る透明導電性基材の反射プロファイルを図1と図3に、また、透過プロファイルを図2と図4に合わせて示す。
【0076】
尚、表1において可視光線波長域(380〜780nm)の5nmおきの各波長における透明基板(ガラス基板)を含まない透明2層膜だけの透過率は、以下の様にして求められている。すなわち、
Figure 0004035934
ここで、本明細書においては、特に言及しない限り、透過率としては、透明基板ごと(すなわち透明基板を含む透明2層膜のことで上記透明導電性基材を意味する)測定した値を用いている。
【0077】
また、透明2層膜の表面抵抗は、三菱化学(株)製の表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400)を用い測定した。ヘーズ値と可視光線透過率は、透明基板ごと、村上色彩技術研究所製のヘーズメーター(HR−200)を用いて測定した。反射率、及び反射・透過プロファイルは、日立製作所(株)製の分光光度計(U−4000)を用いて測定した。また、貴金属コート銀微粒子の粒径は日本電子製の透過電子顕微鏡で評価している。
【0078】
[実施例2]
実施例1で調製した貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液を用い、限外ろ過により濃縮した液のエタノール希釈割合を変えた以外は実施例1と同様の処理を行って平均粒径8.2nmの貴金属コート銀微粒子が分散した実施例2に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.1%、Au:0.219%、水:8.6%、EA:91.0%)を得た。
【0079】
尚、貴金属コート銀微粒子内における金の含有割合は、上記透明導電層形成用塗液の組成比から68.7重量%であった。
【0080】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、銀と金から成る貴金属微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例2に係る透明導電性基材を得た。
【0081】
そして、ガラス基板上に形成された透明2層膜の膜特性を以下の表1に示す。また、製造された実施例2に係る透明導電性基材の反射プロファイルを図5に、また、透過プロファイルを図6に示す。
【0082】
[実施例3]
実施例1と同様の方法で調製した銀微粒子のコロイド分散液83gを用い、かつ、ヒドラジン1水和物(N24・H2O)の1%水溶液9.0gと金酸カリウム水溶液(Au:0.075%)540gを用いると共に、実施例1と同様の処理を行って平均粒径8.4nmの貴金属コート銀微粒子が分散した透明導電層形成用塗液(Ag:0.093%、Au:0.307%、水:10.7%、EA:88.9%)を得た。
【0083】
尚、貴金属コート銀微粒子内における金の含有割合は、上記透明導電層形成用塗液の組成比から76.8重量%であった。
【0084】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、銀と金から成る貴金属微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例3に係る透明導電性基材を得た。
【0085】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の膜特性を以下の表1に示す。また、実施例3に係る透明導電性基材の反射プロファイルを図7に、透過プロファイルを図8に示す。
【0086】
[実施例4]
実施例1と同様の方法で調製した銀微粒子のコロイド分散液62gを用い、かつ、ヒドラジン1水和物(N24・H2O)の1%水溶液9.0gと金酸カリウム水溶液(Au:0.075%)540gを用いると共に、実施例1と同様の処理を行って平均粒径8.6nmの貴金属コート銀微粒子が分散した透明導電層形成用塗液(Ag:0.074%、Au:0.326%、水:10.7%、EA:88.9%)を得た。
【0087】
尚、貴金属コート銀微粒子内における金の含有割合は、上記透明導電層形成用塗液の組成比から81.5重量%であった。
【0088】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、銀と金から成る貴金属微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例4に係る透明導電性基材を得た。
【0089】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の膜特性を以下の表1に示す。
【0090】
[実施例5]
実施例1と同様の方法で平均粒径8.2nmの貴金属コート銀微粒子が分散した溶液を得た。
【0091】
次に、この溶液内に、平均粒径0.03μmのインジウム錫酸化物(ITO)微粒子(住友金属鉱山社製、商品名SUFP−HX)を用いかつイオン交換により十分に脱塩して得られたITO分散液を加えて、最終的に貴金属コート銀微粒子とITO微粒子が分散した透明導電層形成用塗液(Ag:0.113%、Au:0.247%、ITO:0.036%、水:10.8%、EA:88.0%)を得た。
【0092】
尚、貴金属コート銀微粒子内における金の含有割合は、上記透明導電層形成用塗液の組成比から68.6重量%であった。
【0093】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、銀と金から成る貴金属微粒子とITO微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例5に係る透明導電性基材を得た。
【0094】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の膜特性を以下の表1に示す。また、製造された実施例5に係る透明導電性基材の反射プロファイルを図9に、透過プロファイルを図10に示す。
【0095】
[実施例6]
実施例1と同様の方法で平均粒径8.2nmの貴金属コート銀微粒子が分散した溶液を得た。
【0096】
次に、この溶液内に、平均粒径0.01μmのアンチモン錫酸化物(ATO)微粒子(石原産業社製、商品名SN−100P)を用いかつイオン交換により十分に脱塩して得られたATO分散液を加えて、最終的に貴金属コート銀微粒子とATO微粒子が分散した透明導電層形成用塗液(Ag:0.113%、Au:0.247%、ATO:0.072%、水:11.6%、EA:87.9%)を得た。
【0097】
尚、貴金属コート銀微粒子内における金の含有割合は、上記透明導電層形成用塗液の組成比から68.6重量%であった。
【0098】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、銀と金から成る貴金属微粒子とATO微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例6に係る透明導電性基材を得た。
【0099】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の膜特性を以下の表1に示す。
【0100】
[実施例7]
実施例1と同様の方法で貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液を得、これに無機バインダーとしてのテトラメチルシリケートの4量体(コルコート社製商品名メチルシリケート51)を含んだ溶液を加えて、平均粒径8.2nmの貴金属コート銀微粒子が分散した透明導電層形成用塗液(Ag:0.113%、Au:0.247%、SiO2 :0.018%、水:10.0%、EA:89.6%)を得た。
【0101】
尚、貴金属コート銀微粒子内における金の含有割合は、上記透明導電層形成用塗液の組成比から68.6重量%であった。
【0102】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、銀と金から成る貴金属微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例7に係る透明導電性基材を得た。
【0103】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の膜特性を以下の表1に示す。
【0104】
参考例1
実施例1と同様の方法で調製した銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.45%)を用いこの銀微粒子のコロイド分散液83gにヒドラジン1水和物(N24・H2O)の1%水溶液15gを加えて攪拌しながら、白金(IV)酸カリウム[K2Pt(OH)6]水溶液(Pt:0.075%)600gを加え、白金単体がコーティングされた貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液を得た。
【0105】
この貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液を限外濾過により濃縮した後、この濃縮液に純水を加えて再び限外濾過により濃縮する工程を繰返して得た脱塩された濃縮液に、エタノール(EA)、ジアセトンアルコール(DAA)を加えて、平均粒径7.9nmの貴金属コート銀微粒子が分散した透明導電層形成用塗液(Ag:0.245%、Pt:0.295%、水:8.2%、EA:86.2%、DAA:5.0%)を得た。
【0106】
尚、貴金属コート銀微粒子内における白金の含有割合は、上記透明導電層形成用塗液の組成比から54.6重量%であった。
【0107】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、銀と白金から成る貴金属微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、参考例1に係る透明導電性基材を得た。
【0108】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の膜特性を以下の表1に示す。
【0109】
参考例2
実施例1と同様の方法で調製した銀微粒子のコロイド分散液28gを用い、かつ、ヒドラジン1水和物(N24・H2O)の1%水溶液2.5gと、金酸塩[KAu(OH)4]水溶液(Au:0.075%)60gおよび白金酸カリウム[K2Pt(OH)6]水溶液(Pt:0.075%)60gの混合溶液を用いて、金と白金の複合体がコーティングされた平均粒径8.3nmの貴金属コート銀微粒子を分散した透明導電層形成用塗液(Ag:0.182%、Au:0.194%、Pt:0.194%、水:7.7%、EA:91.7%)を得た。
【0110】
尚、貴金属コート銀微粒子内における金および白金の含有割合は、上記透明導電層形成用塗液の組成比から68.1重量%であった。
【0111】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、参考例1と同様に行い、銀と金と白金から成る貴金属微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、参考例2に係る透明導電性基材を得た。
【0112】
そして、ガラス基板上に形成された透明2層膜の膜特性を以下の表1に示す。また、製造された参考例2に係る透明導電性基材の反射プロファイルを図11に、また、透過プロファイルを図12に示す。
【0113】
[比較例1]
実施例1と同様の方法で調製した銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.45%)を用い、貴金属コーティングせずに、平均粒径6.9nmの銀微粒子が分散した透明導電層形成用塗液(Ag:0.3%、水:4.0%、EA:90.7%、DAA:5.0%)を得た。
【0114】
そして、この透明導電層形成用塗液を用い、SiO2 (酸化ケイ素)固形分濃度が0.7%のシリカゾル液をスピンコート(130rpm,60秒間)し、さらに、180℃、20分間硬化させた以外は、実施例1と同様に行い、銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、比較例1に係る透明導電性基材を得た。
【0115】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の膜特性を以下の表1に示す。また、製造された比較例1に係る透明導電性基材の反射プロファイルを図1に、透過プロファイルを図2に示す。
【0116】
[比較例2]
平均粒径30nmのITO微粒子が溶剤に分散された透明導電層形成用塗液(住友金属鉱山社製、商品名SDA−104、ITO:2%)を40℃に加熱されたガラス基板(厚さ3mmのソーダライムガラス)上に、スピンコート(150rpm,60秒間)した後、続けて、SiO2 (酸化ケイ素)固形分濃度が1.0%となるように希釈したシリカゾル液をスピンコート(150rpm,60秒間)し、さらに、180℃、30分間硬化させて、ITO微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち比較例2に係る透明導電性基材を得た。
【0117】
そして、ガラス基板上に形成された透明2層膜の膜特性を以下の表1に示す。また、製造された比較例2に係る透明導電性基材の反射プロファイルを図1に示す。
【0118】
[比較例3]
実施例1と同様の方法で調製した銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.45%)を用い、この銀微粒子のコロイド分散液15gに、0.5%ヒドラジン水溶液0.5gを加えて攪拌しながら、金酸カリウム[KAu(OH)4 ]水溶液(Au:0.05%)15gと2%高分子分散剤水溶液0.3gの混合液を加え、金単体がコーティングされた貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液を得た。
【0119】
この貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液をイオン交換樹脂(三菱化学社製商品名ダイヤイオンSK1B,SA20AP)で脱塩した後、限外ろ過により濃縮した液に、エタノール(EA)、ジアセトンアルコール(DAA)を加え、平均粒径6.8nmの貴金属コート銀微粒子が含まれた比較例3に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.24%、Au:0.028%、水:3.7%、EA:91.0%、DAA:5.0%)を得た。
【0120】
尚、貴金属コート銀微粒子内における金の含有割合は、上記透明導電層形成用塗液の組成比から10.4重量%であった。
【0121】
そして、この透明導電層形成用塗液を用い、SiO2 (酸化ケイ素)固形分濃度が0.65%のシリカゾル液をスピンコート(130rpm,60秒間)し、さらに、180℃、20分間硬化させた以外は、実施例1と同様に行い、銀と金から成る貴金属微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、比較例3に係る透明導電性基材を得た。
【0122】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の膜特性を以下の表1に示す。また、比較例3に係る透明導電性基材の反射プロファイルを図13に、透過プロファイルを図14に示す。
【0123】
【表1】
Figure 0004035934
『耐候性試験』
実施例1〜7、参考例1〜2に係る透明導電性基材と比較例1、3に係る透明導電性基材を、5%食塩水に浸漬し、透明基板(ガラス基板)上に設けた透明2層膜の表面抵抗値、膜の外観を調べた。この結果を以下の表2に示す。
【0124】
【表2】
Figure 0004035934
『耐紫外線試験』
実施例1〜7、参考例1〜2に係る透明導電性基材と比較例1、比較例3に係る透明導電性基材に、コールドミラーと赤外線カットフィルターが付設されたメタルハライドランプ(アイグラフィックス株社製)を用い、80W/cmの条件で紫外線を5時間照射し、透明基板(ガラス基板)上に設けられた透明2層膜の表面抵抗値、膜の外観を調べた。透明導電性基材は、紫外線ランプから20cmの位置にセットし、紫外線照射中に基板温度は、60〜65℃まで上昇していた。
【0125】
この結果を以下の表3に示す。
【0126】
【表3】
Figure 0004035934
『評 価』
1.表1に示された結果から以下のことが確認される
【0127】
(1)まず、比較例2に係る透明2層膜の表面抵抗16000(Ω/□)に比べて実施例1〜7、参考例1〜2に係る透明2層膜の表面抵抗(Ω/□)が著しく改善されており、また、比較例1に係る透明2層膜の980表面抵抗(Ω/□)に比べて実施例1〜7に係る透明2層膜の表面抵抗(Ω/□)が改善されている。
【0128】
(2)また、実施例1〜7、参考例1〜2に係る透過率の標準偏差の値も比較例1(6.67)、比較例3(2.72)に比べて改善されている。
2.図1〜図14に示されたプロファイルから以下のことが確認される。
【0129】
(1)図1に示された実施例1に係る透明導電性基材の反射プロファイルと、同じく図1に示された比較例1、2に係る透明導電性基材の反射プロファイル並びに図13に示された比較例3に係る透明導電性基材の反射プロファイルとの比較から明らかなように実施例1に係る透明導電性基材では比較例1〜3に比べ可視光線波長域における反射特性が改善されており、また、図2に示された実施例1に係る透明導電性基材の透過プロファイルと、同じく図2に示された比較例1に係る透明導電性基材の透過プロファイル並びに図14に示された比較例3に係る透明導電性基材の透過プロファイルとの比較から明らかなように実施例1に係る透明導電性基材では比較例1と3に比べ非常にフラットな透過プロファイルになっている。
【0130】
すなわち、実施例1に係る透明導電性基材では可視光線波長域における反射特性と透過光線プロファイルが改善されていることが確認される。
【0131】
(2)同様に、図1に示された比較例1、2に係る透明導電性基材の反射プロファイル並びに図13に示された比較例3に係る透明導電性基材の反射プロファイルと、図5、図7および図9に示された実施例2、3および5に係る透明導電性基材の反射プロファイルとの比較から明らかなように実施例2、3および5に係る透明導電性基材では比較例1〜3に比べ可視光線波長域における反射特性が改善されており、また、図2に示された比較例1に係る透明導電性基材の透過プロファイル並びに図14に示された比較例3に係る透明導電性基材の透過プロファイルと、図6、図8、図10および図12に示された実施例2、3、5および参考例2に係る透明導電性基材の透過プロファイルとの比較から明らかなように実施例2、3、5および参考例2に係る透明導電性基材で比較例1と3に比べ非常にフラットな透過プロファイルになっている。
【0132】
すなわち、実施例2、3および5に係る透明導電性基材でも可視光線波長域における反射特性と透過光線プロファイルが改善され、参考例2に係る透明導電性基材では透過光線プロファイルが改善されていることが確認される。
3.表2に示された結果から、比較例1、3に係る透明2層膜に較べて実施例1〜7、参考例1〜2に係る透明2層膜の耐候性も著しく改善されていることが確認される。
4.更に、表3に示された結果から、比較例1および比較例3に係る透明2層膜に較べて実施例1〜7、参考例1〜2に係る透明2層膜の耐紫外線性も著しく改善されていることが確認される。
【0133】
そして、この事は、実施例1〜7、参考例1〜2に係る透明2層膜の耐候性が従来に比べて著しく改善されていることを示している。
5.尚、実施例1〜7、参考例1〜2においては、金酸塩と白金酸塩として金酸カリウムおよび白金酸カリウムを適用して貴金属コート銀微粒子を調製しているが、これ等金酸カリウムおよび白金酸カリウムに代えて金酸ナトリウムおよび白金酸ナトリウムを適用した実験も行っている。そして、金酸ナトリウムおよび白金酸ナトリウムを適用して得られた貴金属コート銀微粒子についても実施例1〜7、参考例1〜2と同様の評価試験を行い、かつ、同様の評価が得られることを確認している。
【0134】
【発明の効果】
請求項1〜5記載の発明に係る透明導電性基材によれば、
透明基板上に順次形成された透明導電層と透明コート層から成る透明2層膜の上記透明導電層が、金と銀とで構成されかつ金を50重量%を超え95重量%の範囲で含有する平均粒径1〜100nmの貴金属微粒子と、バインダーマトリックスとを主成分とし、上記貴金属微粒子が、銀微粒子表面に金がコーティングされた貴金属コート銀微粒子を用いて形成されているため、従来の透明導電性基材に較べ優れた反射防止効果と透過光線プロファイルを有し、かつ、良好な耐候性、耐紫外線性と高い電界シールド効果を有している。
【0135】
また、請求項6〜10記載の発明に係る透明導電性基材の製造方法によれば、
銀微粒子表面に金がコーティングされかつ金を50重量%を超え95重量%の範囲で含有する平均粒径1〜100nmの貴金属コート銀微粒子とこれを分散する溶媒とを主成分とする透明導電層形成用塗液を上記透明基板上に塗布し、次いで透明コート層形成用塗布液を塗布した後、加熱処理しているため、請求項1〜5に係る透明導電性基材を低コストでかつ簡便に製造できる効果を有している。
【0136】
次に、請求項11〜14記載の発明に係る透明導電層形成用塗液によれば、
溶媒、および、この溶媒に分散されかつ銀微粒子表面に金がコーティングされると共に金を50重量%を超え95重量%の範囲で含有する平均粒径1〜100nmの貴金属コート銀微粒子を主成分としているため、従来の透明導電層形成用塗液が適用された透明導電層と比較して、良好な反射防止機能と電界シールド機能を有しかつ可視光線域での透過光線プロファイルと耐候性、耐紫外線性も良好な透明導電層を形成できる効果を有する。
【0137】
また、請求項15記載の発明に係る透明導電層形成用塗液の製造方法によれば、
請求項11〜14に係る透明導電層形成用塗液を低コストかつ簡便に製造できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1および比較例1〜2に係る透明導電性基材の反射プロファイルを示すグラフ図。
【図2】実施例1および比較例1に係る透明導電性基材の透過プロファイルを示すグラフ図。
【図3】実施例1に係る透明導電性基材の反射プロファイルを示すグラフ図。
【図4】実施例1に係る透明導電性基材とこの基材の構成部材であるガラス基板の透過プロファイルを示すグラフ図。
【図5】実施例2に係る透明導電性基材の反射プロファイルを示すグラフ図。
【図6】実施例2に係る透明導電性基材とこの基材の構成部材であるガラス基板の透過プロファイルを示すグラフ図。
【図7】実施例3に係る透明導電性基材の反射プロファイルを示すグラフ図。
【図8】実施例3に係る透明導電性基材とこの基材の構成部材であるガラス基板の透過プロファイルを示すグラフ図。
【図9】実施例5に係る透明導電性基材の反射プロファイルを示すグラフ図。
【図10】実施例5に係る透明導電性基材とこの基材の構成部材であるガラス基板の透過プロファイルを示すグラフ図。
【図11】 参考例2に係る透明導電性基材の反射プロファイルを示すグラフ図。
【図12】 参考例2に係る透明導電性基材とこの基材の構成部材であるガラス基板の透過プロファイルを示すグラフ図。
【図13】比較例3に係る透明導電性基材の反射プロファイルを示すグラフ図。
【図14】比較例3に係る透明導電性基材とこの基材の構成部材であるガラス基板の透過プロファイルを示すグラフ図。

Claims (15)

  1. 透明基板、および、この透明基板上に順次形成された透明導電層と透明コート層を備える透明導電性基材において、
    上記透明導電層が、金と銀とで構成されかつ金を50重量%を超え95重量%の範囲で含有する平均粒径1〜100nmの貴金属微粒子と、バインダーマトリックスとを主成分とし、上記貴金属微粒子が、銀微粒子表面に金がコーティングされた貴金属コート銀微粒子を用いて形成されていることを特徴とする透明導電性基材。
  2. 上記透明導電層内に導電性酸化物微粒子が含まれていることを特徴とする請求項1記載の透明導電性基材。
  3. 上記導電性酸化物微粒子が、酸化錫、錫アンチモン酸化物またはインジウム錫酸化物から選択された1種以上の微粒子であることを特徴とする請求項2記載の透明導電性基材。
  4. 透明導電層の上記バインダーマトリックスおよび透明コート層が、酸化ケイ素を主成分としていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性基材。
  5. 上記透明導電層の表面抵抗が10〜3000Ω/□であり、かつ、可視光線波長域(380〜780nm)の5nmおきの各波長における上記透明基板を含まずかつ透明導電層と透明コート層から成る透明2層膜だけの透過率の標準偏差が0〜5%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性基材。
  6. 透明基板、および、この透明基板上に順次形成された透明導電層と透明コート層を備える透明導電性基材の製造方法において、
    銀微粒子表面に金がコーティングされかつ金を50重量%を超え95重量%の範囲で含有する平均粒径1〜100nmの貴金属コート銀微粒子とこれを分散する溶媒とを主成分とする透明導電層形成用塗液を上記透明基板上に塗布し、次いで透明コート層形成用塗布液を塗布した後、加熱処理することを特徴とする透明導電性基材の製造方法。
  7. 上記透明導電層形成用塗液内に、導電性酸化物微粒子が含まれていることを特徴とする請求項6記載の透明導電性基材の製造方法。
  8. 上記導電性酸化物微粒子が、酸化錫、錫アンチモン酸化物またはインジウム錫酸化物から選択された1種以上の微粒子であることを特徴とする請求項7記載の透明導電性基材の製造方法。
  9. 上記透明導電層形成用塗液内に、透明導電層のバインダーマトリックスを構成する無機バインダーが含まれていることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の透明導電性基材の製造方法。
  10. 上記透明コート層形成用塗布液、および、上記透明導電層形成用塗液の無機バインダーがシリカゾルを主成分としていることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の透明導電性基材の製造方法。
  11. 透明基板、および、この透明基板上に順次形成された透明導電層と透明コート層を備える透明導電性基材の製造に用いられる透明導電層形成用塗液において、
    溶媒、および、この溶媒に分散されかつ銀微粒子表面に金がコーティングされると共に金を50重量%を超え95重量%の範囲で含有する平均粒径1〜100nmの貴金属コート銀微粒子を主成分とすることを特徴とする透明導電層形成用塗液。
  12. 導電性酸化物微粒子が含まれていることを特徴とする請求項11記載の透明導電層形成用塗液。
  13. 上記導電性酸化物微粒子が、酸化錫、錫アンチモン酸化物またはインジウム錫酸化物から選択された1種以上の微粒子であることを特徴とする請求項12記載の透明導電層形成用塗液。
  14. 無機バインダーが含まれていることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の透明導電層形成用塗液。
  15. 透明基板、および、この透明基板上に順次形成された透明導電層と透明コート層を備える透明導電性基材の製造に用いられる透明導電層形成用塗液の製造方法において、
    銀微粒子のコロイド状分散液に還元剤とアルカリ金属の金酸塩溶液を加えると共に、銀微粒子のコロイド状分散液とアルカリ金属の金酸塩溶液の配合割合を調整して、金を50重量%を超え95重量%の範囲で含有する貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液を得る貴金属コート銀微粒子調製工程、
    上記貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液における電解質濃度を下げる脱塩処理と上記コロイド状分散液を濃縮する濃縮処理を施して貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液を得る脱塩・濃縮工程、
    上記貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液に溶媒単独、あるいは導電性酸化物微粒子および/または無機バインダーが含まれた溶媒を加えて透明導電層形成用塗液を得る溶媒配合工程、
    の各工程を具備することを特徴とする透明導電層形成用塗液の製造方法。
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