JP2004051746A - 透明導電層形成用塗液 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の透明導電層形成用塗液より安価で、低抵抗、低反射率を有する透明導電層の形成が可能な透明導電層形成用塗液を提供すること。
【解決手段】溶媒およびこの溶媒に分散された平均粒径1〜100nmの貴金属微粒子を主成分とし、透明基板上に透明導電層を形成するための透明導電層形成用塗液であって、上記溶媒が、25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下である低沸点溶媒(例えばジエチルエーテル)を10〜70重量%含むことを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】溶媒およびこの溶媒に分散された平均粒径1〜100nmの貴金属微粒子を主成分とし、透明基板上に透明導電層を形成するための透明導電層形成用塗液であって、上記溶媒が、25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下である低沸点溶媒(例えばジエチルエーテル)を10〜70重量%含むことを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明基板上に透明導電層を形成するための透明導電層形成用塗液に係り、特に、上記透明導電層を形成した透明導電性基材がブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、液晶ディスプレイ(LCD)等表示装置の前面板に適用された場合、安価で、かつ良好な反射防止効果と電界シールド効果を有する均一な透明導電層を形成できる透明導電層形成用塗液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、コンピュータディスプレイ等として用いられている陰極線管(上記ブラウン管とも称する:CRT)には、表示画面が見やすく、視覚疲労を感じさせないことの外に、CRT表面の帯電によるほこりの付着や電撃ショックがないこと等が要求されている。更に、これ等に加えて最近ではCRTから発生する低周波電磁波の人体に対する悪影響が懸念され、このような電磁波が外部に漏洩しないことが望まれている。
【0003】
このような漏洩電磁波に対しては、ディスプレイの前面板表面に透明導電層を形成することにより防止することが可能である。そして、上記CRTの漏洩電磁波防止(電界シールド)用として、少なくとも106Ω/□以下、好ましくは5×103 Ω/□以下、さらに好ましくは103 Ω/□以下である低抵抗の透明導電層を形成する事が要求されている。
【0004】
そして、上記CRTの電界シールドに対処するため、これまでにいくつかの提案がなされており、例えば、
(1)インジウム錫酸化物(ITO)等の導電性酸化物微粒子や金属微粒子を溶媒中に分散した透明導電層形成用塗液を、CRTの前面ガラス(前面板)にスピンコート法等で塗布・乾燥後、200℃程度の温度で焼成して上記透明導電層を形成する方法。
(2)塩化錫の高温化学的気相成長法(CVD)により、前面ガラス(前面板)に透明導電酸化錫膜(ネサ膜)を形成する方法。
(3)インジウム錫酸化物、酸窒化チタン等のスパッタリング法により前面ガラス(前面板)に透明導電膜を形成する方法。
等の方法が提案されている。
【0005】
ここで、透明導電層形成用塗液を用いる(1)の方法は、(2)(3)に示されたCVD法やスパッタ法等で透明導電膜を形成する方法に較べてはるかに簡便でありかつ製造コストも低いため、極めて有利な方法である。
【0006】
但し、(1)に示された方法において、透明導電層形成用塗液としてインジウム錫酸化物(ITO)等の導電性酸化物微粒子が適用された場合、得られる透明導電層の表面抵抗が104〜106Ω/□と高く、漏洩電界を遮蔽するには充分でなかった。
【0007】
一方、金属微粒子が適用された透明導電層形成用塗液では、ITOを用いた塗液に比べ、若干、膜の透過率が低くなるものの、102〜103Ω/□という低抵抗膜が得られるため、今後、有望な方法であると思われる。
【0008】
そして、上記透明導電層形成用塗液に適用される金属微粒子としては、特開平8−77832号公報や特開平9−55175号公報等に示されるように空気中で酸化され難い、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等の貴金属に限られている。これは、貴金属以外の金属微粒子、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等が適用された場合、大気雰囲気下でこれ等金属微粒子の表面に酸化物被膜が必ず形成されてしまい透明導電層として良好な導電性が得られなくなるからである。
【0009】
また、一方では表示画面を見やすくするために、例えば、CRTにおいては前面板表面に防眩処理を施して画面の反射を抑えることも行われている。
【0010】
この防眩処理は、微細な凹凸を設けて表面の拡散反射を増加させる方法によってもなされるが、この方法を用いた場合、解像度が低下して画質が落ちるためあまり好ましいとはいえない。
【0011】
従って、むしろ反射光が入射光に対して破壊的干渉を生ずるように、透明被膜の屈折率と膜厚とを制御する干渉法によって防眩処理を行うことが好ましい。
【0012】
このような干渉法により低反射効果を得るため、一般的には高屈折率膜と低屈折率膜の光学膜厚をそれぞれ1/4λと1/4λ、あるいは1/2λと1/4λ(λは波長)に設定した二層構造膜が採用されており、前述のインジウム錫酸化物(ITO)微粒子からなる膜もこの種の高屈折率膜として用いられている。
【0013】
尚、金属においては、光学定数(n−ik,n:屈折率,i2=−1、k:消衰係数)のうち、nの値は小さいがkの値が大きいため、金属微粒子からなる透明導電層を用いた場合でも、ITO(高屈折率膜)と同様に、二層構造膜で光の干渉による反射防止効果が得られる。
【0014】
また、透明基板にこの種の透明導電層が形成された透明導電性基材には、上述した良好な導電性、低反射率等の諸特性に加えて、近年、CRTにおける画面の平面化に伴いその透過率を100%より低い所定範囲(40〜75%)に調整して画像のコントラストを向上させる(透過率が低下するとコントラストは向上する)特性も要請されており、この場合、上記透明導電層形成用塗液に着色顔料微粒子等を配合することも行われている。
【0015】
ここで、画面が平面化されたCRT(平面CRT)において低透過率の透明導電層を用いる理由は、パネル外表面が平面で内面は曲率を有する上記平面CRTにおいてフェースパネル(前面パネル)の厚みが画面中央部と周辺部で異なっており、平面CRTのパネルガラスに従来の着色ガラス(例えば、セミティントガラス、透過率:約53%)を用いた場合に輝度の面内不均一を生ずるため、高透過率のパネルガラスと上記低透過率層とを組合わせることにより、輝度の面内均一性とコントラストの向上を両立させる必要があるためである。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した金属微粒子から成る透明導電層を形成するにはある程度以上の膜厚が必要となるため、貴金属微粒子を含有する従来の透明導電層形成用塗液においては0.4〜0.6重量%の配合割合を有する貴金属微粒子を用いており、貴金属微粒子を多量に含む分、透明導電層形成用塗液が高価格となる問題を有していた。この場合、透明導電層形成用塗液内における上記貴金属微粒子の配合割合を低く設定できる厚膜化方法として、例えば、基板温度を上昇させて透明導電層形成用塗液の乾燥速度を高める方法やスピンコートの回転速度を低下させる方法等が考えられるが、この様な方法を採った場合、得られる透明導電層の均一性を悪化させてしまうため実用的でなかった。
【0017】
尚、本件出願人は、25℃における蒸気圧が26.66〜53.33kPaである低沸点溶媒を適用して上記課題の解決を図った透明導電層形成用塗液を既に提案している(特願2001−325915号明細書参照)。
【0018】
そして、特願2001−325915号明細書においては、25℃における蒸気圧が53.33kPaを超える低沸点溶媒を適用した場合、低沸点溶媒の揮発速度が大き過ぎるため得られる透明導電層の均一性を悪化させる等の問題が記載されているが、本発明者のその後の研究において25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPaまでの低沸点溶剤も適用できることが判明した。
【0019】
そこで、本発明は、特願2001−325915号明細書に記載された発明と同様、上述した課題を解決するため、従来の透明導電層形成用塗液に比べより安価で、かつ、低抵抗、低反射率を有する均一な透明導電層の形成を可能とする透明導電層形成用塗液を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1に係る発明は、
溶媒、および、この溶媒に分散された平均粒径1〜100nmの貴金属微粒子を主成分とし、透明基板上に透明導電層を形成する透明導電層形成用塗液を前提とし、
上記溶媒が、25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下の範囲にある低沸点溶媒を10〜70重量%含むことを特徴とするものである。
【0021】
また、請求項2に係る発明は、
請求項1記載の発明に係る透明導電層形成用塗液を前提とし、
上記貴金属微粒子の含有量が0.1〜0.34重量%であることを特徴としている。
【0022】
また、請求項3に係る発明は、
請求項1または2記載の発明に係る透明導電層形成用塗液を前提とし、
上記低沸点溶媒がジエチルエーテルであることを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電層形成用塗液を前提とし、
上記貴金属微粒子が、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された貴金属の微粒子、これら貴金属の合金微粒子、あるいは、銀を除く上記貴金属により表面がコートされた貴金属コート銀微粒子のいずれかであることを特徴とするものである。
【0023】
次に、請求項5に係る発明は、
請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電層形成用塗液を前提とし、
有色顔料微粒子が含まれていることを特徴とし、
請求項6に係る発明は、
請求項5に記載の透明導電層形成用塗液を前提とし、
上記有色顔料微粒子が、カーボン、チタンブラック、窒化チタン、複合酸化物顔料、コバルトバイオレット、モリブデンオレンジ、群青、紺青、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料およびフタロシアニン系顔料から選択された1種以上の微粒子であることを特徴とし、
請求項7に係る発明は、
請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電層形成用塗液を前提とし、
無機バインダーが含まれていることを特徴とするものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
まず、本発明は、貴金属微粒子を含む透明導電層形成用塗液内に25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下の範囲にある低沸点溶媒を10〜70重量%配合した場合、上述した特願2001−325915号明細書に記載された発明と同様に塗液内の貴金属微粒子の含有量を従来より低下させても、低抵抗で均一な透明導電層を形成できることを発見し完成されたもので、これにより安価な透明導電層形成用塗液を得ることが可能となる。
【0026】
ところで、CRTにおける上記透明導電層形成用塗液を用いた透明導電層の成膜方法としては、スピンコート法が広く一般的に採用されているため、上記低沸点溶媒を所定量含有する透明導電層形成用塗液を用いた場合、スピンコートの成膜過程の初期段階で塗液の濃縮(低沸点溶媒の揮発)が速やかに進行することから厚膜化が効率的に行われるためと考えられる。スピンコートにおいて厚膜化を行うその他の方法として、上述したように基板温度を上昇させ透明導電層形成用塗液の乾燥速度を高める方法やスピン回転速度を低下させる方法が考えられるが、いずれも得られる透明導電層の均一性を悪化させる傾向が強く実用的とは言えない。
【0027】
ここで、上記低沸点溶媒は、25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下の範囲にあることを要する(請求項1)。25℃における蒸気圧が53.33kPa以下(但し、26.66kPa以上)の低沸点溶媒が除かれている理由は、特願2001−325915号明細書に記載された発明において適用される低沸点溶媒と同一になるからである。また、25℃における蒸気圧が80kPaを超える低沸点溶媒は、透明導電層形成用塗液内の貴金属微粒子含有量を大幅に低下できるが、低沸点溶媒の揮発速度が大き過ぎるため得られる透明導電層の均一性を悪化させたり、透明導電層形成用塗液の保管や輸送に支障をきたす問題があり、実用的とはいえないからである。
【0028】
また、上記低沸点溶媒の配合量は10〜70重量%の範囲に設定される(請求項1)。10重量%未満および70重量%を超える場合は、透明導電層形成用塗液内の貴金属微粒子含有量を低下させる効果が低かったり、得られる透明導電層の均一性の悪化や、透明導電層形成用塗液の保管や輸送の問題が生じるため好ましくない。
【0029】
ここで、上述した低沸点溶媒としては、上記成膜過程における初期段階での塗液の濃縮効率が非常に高い観点から、ジエチルエーテル(25℃の蒸気圧:72kPa)が好ましい(請求項3)。
【0030】
ところで、貴金属微粒子を含む透明導電層形成用塗液は、通常、貴金属微粒子の水系コロイド分散液を経由して得られるため、その溶媒は必然的に水分を含有し、その水分濃度は1〜50重量%、好ましくは5〜25重量%がよい。50重量%を超えると、透明基板上に透明導電層形成用塗液を塗布した後、乾燥中に、水の高い表面張力によりはじきを生じ易くなる場合があるからである。また、上記水分濃度を1重量%未満にするには、例えば、貴金属微粒子の濃度を30重量%程度の高濃度まで高めた水系コロイド分散液を製造する必要があるが、分散液中の貴金属微粒子濃度をそこまで高めると分散液が不安定となり貴金属微粒子の凝集が生じるため実用的ではない。
【0031】
また、透明導電層形成用塗液中の貴金属微粒子はその平均粒径が1〜100nmであることを要する(請求項1)。上記微粒子において、1nm未満の場合、この微粒子の製造は困難であり、かつ、透明導電層形成用塗液中で凝集し易く実用的でないからである。また、100nmを超えると、形成された透明導電層の可視光線透過率が低くなり過ぎてしまい、仮に、膜厚を薄く設定して可視光線透過率を高くした場合でも、表面抵抗が高くなり過ぎてしまい実用的でないからである。
【0032】
尚、ここで言う平均粒径とは、透過電子顕微鏡(TEM)で観察される微粒子の平均粒径を示している。
【0033】
また、上記貴金属微粒子としては、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された貴金属の微粒子、これら貴金属の合金微粒子、あるいは、銀を除く上記貴金属により表面がコートされた貴金属コート銀微粒子のいずれかを適用することができる(請求項4)。
【0034】
そして、銀、金、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウムなどの比抵抗を比較した場合、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウムの比抵抗は、それぞれ10.6、4.51、7.6、10.8μΩ・cmで、銀、金の1.62、2.2μΩ・cmに比べて高いため、表面抵抗の低い透明導電層を形成するには銀微粒子や金微粒子を適用した方が有利と考えられる。
【0035】
ただし、銀微粒子が適用された場合、硫化や食塩水による劣化が激しいという耐候性の面から用途が制限され、他方、金微粒子、白金微粒子、ロジウム、ルテニウム微粒子、パラジウム微粒子等が適用された場合には上記耐候性の問題はなくなるが、コスト面を考慮すると必ずしも最適とは言えない。
【0036】
そこで、上述したように銀微粒子の表面に銀以外の貴金属をコーティングした微粒子(すなわち、貴金属コート銀微粒子)を用いることもできる。尚、貴金属コート銀微粒子に関しては、本件出願人が先に出願した特開平11−228872号公報および特開平2000−268639号公報に記載された透明導電層形成用塗液とその製造方法を利用することが可能である。
【0037】
次に、上記貴金属コート銀微粒子において、金若しくは白金単体または金、白金複合体のコーティング量は、銀100重量部に対し5重量部以上1900重量部の範囲に設定することが好ましく、さらに好ましくは100重量部以上900重量部の範囲に設定するとよい。金若しくは白金単体または金、白金複合体のコーティング量が5重量部未満だと、紫外線等の影響による膜劣化が起こり易くコーティングの保護効果が見られず、反対に1900重量部を越えると貴金属コート銀微粒子の生産性が悪化すると共にコスト的にも難があるからである。
【0038】
次に、上記透明導電層形成用塗液内に有色顔料微粒子を添加してもよい(請求項5)。有色顔料微粒子の添加により、透明導電層が形成された透明導電性基材の透過率を100%より低い所定範囲(40〜75%)に調整し、良好な導電性、低反射率等の諸特性に加え、その画像のコントラストを向上させて表示画面を更に見易くさせることが可能となる。
【0039】
そして、上記有色顔料微粒子には、カーボン、チタンブラック、窒化チタン、複合酸化物顔料、コバルトバイオレット、モリブデンオレンジ、群青、紺青、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料およびフタロシアニン系顔料から選択された1種以上の微粒子を用いることができる(請求項6)。
【0040】
更に、上記有色顔料微粒子は、その表面が酸化ケイ素でコーティング処理された微粒子であることが好ましい。酸化ケイ素でコーティング処理された有色顔料微粒子を用いると、未処理の有色顔料微粒子を用いた場合と比較して、導電性および膜強度に優れた透明導電層が得られる。
【0041】
次に、貴金属微粒子として貴金属コート銀微粒子が適用され、かつ、溶媒に25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下である低沸点溶媒を含有する透明導電層形成用塗液は以下のような方法で製造することができる。まず、既知の方法[例えば、Carey−Lea法、Am.J.Sci.、37、47(1889)、Am.J.Sci.、38(1889)]により銀微粒子のコロイド分散液を調製する。
【0042】
すなわち、硝酸銀水溶液に、硫酸鉄(II)水溶液とクエン酸ナトリウム水溶液の混合液を加えて反応させ、沈降物を濾過・洗浄した後、純水を加えることにより簡単に銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.1〜10重量%)が調製される。この銀微粒子のコロイド分散液の調製方法は平均粒径1〜100nmの銀微粒子が分散されたものであれば任意でありかつこれに限定されるものではない。
【0043】
次に、得られた銀微粒子のコロイド分散液にヒドラジン(N2H4)等の還元剤を加え、更にそこにアルカリ金属の金酸塩溶液若しくは白金酸塩溶液を加えるか、アルカリ金属の白金酸塩溶液並びに金酸塩溶液、またはアルカリ金属の白金酸塩並びに金酸塩の混合溶液を加えることで上記銀微粒子の表面に金若しくは白金単体または金と白金の複合体をコーティングし、貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液を得ることができる。尚、この貴金属コート銀微粒子調製工程で、必要により、銀微粒子のコロイド分散液、アルカリ金属の金酸塩溶液、アルカリ金属の白金酸塩溶液、アルカリ金属の金酸塩並びに白金酸塩の混合溶液の少なくともいずれか一つ、または、それぞれに少量の分散剤を加えてもよい。
【0044】
以上のようにして得られた貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液は、この後、透析、電気透析、イオン交換、限外濾過等の脱塩処理方法により分散液内の電解質濃度を下げることが好ましい。これは、電解質濃度を下げないとコロイドは電解質で一般に凝集してしまうからであり、この現象は、Schulze−Hardy則としても知られている。
【0045】
次に、脱塩処理された貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液を濃縮処理して貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液を得、この貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液に、25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下である低沸点溶媒とその他の有機溶媒、あるいは更に有色顔料微粒子または/および無機バインダーが含まれた(請求項5、7)これ等の溶剤を添加して成分調整(微粒子濃度、水分濃度、有機溶剤濃度等)を行い、本発明に係る透明導電層形成用塗液が得られる。
【0046】
尚、上記貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液の濃縮処理は、減圧エバポレーター、限外濾過等の常用の方法で行うことができ、この濃縮度合いによって、透明導電層形成用塗液中の水分濃度を、上述した1〜50重量%の範囲に制御することができる。
【0047】
また、透明導電層形成用塗液に用いる溶媒としては上述したように25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下である低沸点溶媒が挙げられるが、その他の有機溶媒として特に制限はなく塗布方法や製膜条件により適宜に選定される。例えば、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGM−AC)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)等のグリコール誘導体、フォルムアミド(FA)、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
尚、上記貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液に代えて、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された少なくとも1種類以上の貴金属微粒子、これら貴金属の合金微粒子のコロイド分散液を適用した場合も、同様の方法にて本発明に係る透明導電層形成用塗液を得ることが可能である。
【0049】
次に、この様にして得られた本発明に係る透明導電層形成用塗液を用いて、例えば、透明基板、および、この透明基板上に順次形成された透明導電層と透明コート層から成る透明2層膜とでその主要部が構成される透明導電性基材を得ることができる。
【0050】
そして、透明基板上に上記透明2層膜を形成するには以下の方法でこれを行うことができる。すなわち、本発明に係る透明導電層形成用塗液を、ガラス基板、プラスチック基板等の透明基板上にスピンコート、スプレーコート、ワイヤーバーコート、ドクターブレードコート等の手法にて塗布し、必要に応じて乾燥した後、例えばシリカゾル等を主成分とする透明コート層形成用塗布液を上述した手法によりオーバーコートする。次に、例えば50〜350℃程度の温度で加熱処理を施し透明コート層形成用塗布液の硬化を行って上記透明2層膜を形成する。
【0051】
ここで、25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下である低沸点溶媒を10〜70重量%配合された本発明に係る透明導電層形成用塗液を用いた場合、上記低沸点溶媒が配合されていない従来の透明導電層形成用塗液を適用した場合と比較して、上記貴金属微粒子の含有量を0.1〜0.34重量%まで低下させても均一性に優れた透明導電層を形成することができる。
【0052】
また、貴金属微粒子を含有する上記透明導電層形成用塗液において貴金属微粒子はITO等の酸化物微粒子に比べて凝集しやすく、透明導電層形成用塗液の塗布・乾燥の成膜過程において微粒子同士の凝集が起こるため、透明導電層形成用塗液を用いて得られる上記透明導電層は、貴金属微粒子の導電層に微小な空孔が導入された構造、すなわち網目状(ネットワーク)構造を有している。
【0053】
従って、シリカゾル等を主成分とする透明コート層形成用塗布液を上述した手法によりオーバーコートした際、予め形成された上記透明導電層(貴金属微粒子の導電層)における網目状構造の穴の部分に、オーバーコートしたシリカゾル液(このシリカゾル液は上記加熱処理により酸化ケイ素を主成分とするバインダーマトリックスとなる)がしみ込むことで、透過率の向上、導電性の向上が同時に達成される。
【0054】
また、網目状構造の上記穴の部分を介して、透明基板と酸化珪素等のバインダーマトリックスとの接触面積が増大するため透明基板とバインダーマトリックスの結合が強くなり、強度の向上も図られる。
【0055】
更に、貴金属微粒子が酸化ケイ素を主成分とする上記バインダーマトリックス中に分散された透明導電層の光学定数(n−ik)において、屈折率nはさほど大きくないが消衰係数kが大きいため、上記透明導電層と透明コート層の透明2層膜構造により、透明2層膜の反射率を大幅に低下できる。
【0056】
ここで、上記シリカゾルとしては、オルトアルキルシリケートに水や酸触媒を加えて加水分解し、脱水縮重合を進ませた重合物、あるいは既に4〜5量体まで重合を進ませた市販のアルキルシリケート溶液を、さらに加水分解と脱水縮重合を進行させた重合物等を利用することができる。尚、脱水縮重合が進行すると、溶液粘度が上昇して最終的には固化してしまうので、脱水縮重合の度合いについては、ガラス基板やプラスチック基板などの透明基板上に塗布可能な上限粘度以下のところに調整する。但し、脱水縮重合の度合いは上記上限粘度以下のレベルであれば特に指定されないが、膜強度、耐候性等を考慮すると重量平均分子量で500から3000程度が好ましい。そして、アルキルシリケート加水分解重合物は、透明2層膜の加熱焼成時に脱水縮重合反応がほぼ完結して、硬いシリケート膜(酸化ケイ素を主成分とする膜)になる。尚、上記シリカゾルに、弗化マグネシウム微粒子、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル等を加え、透明コート層の屈折率を調節して透明2層膜の反射率を変えることも可能である。
【0057】
また、25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下である低沸点溶媒を10〜70重量%含む溶媒とこの溶媒に分散された平均粒径1〜100nmの貴金属微粒子に加え、上述したように有色顔料微粒子(分散液)または/および無機バインダー成分としてのシリカゾル液を配合させて本発明に係る透明導電層形成用塗液を構成してもよい(請求項5、7)。この場合においても、透明導電層形成用塗液を塗布し、必要に応じて乾燥させた後に透明コート層形成用塗布液を上述した手法によりオーバーコートすることで、同様の透明2層膜が得られる。尚、貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液の製造において脱塩処理を施したのと同様の理由から、透明導電層形成用塗液内に配合する上記有色顔料微粒子分散液、シリカゾル液についてもその脱塩を十分に行っておくことが望ましい。
【0058】
以上、詳述したように本発明に係る透明導電層形成用塗液を適用して形成された透明導電層を具備する透明導電性基材は、従来より安価に製造でき、かつ、低抵抗、低反射率の諸特性を有し、均一性の優れた透明導電層を形成できるため、例えば、上述したブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、液晶ディスプレイ(LCD)等表示装置における前面板等に用いることができる。
【0059】
【実施例】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、本文中の『%』は、透過率、反射率、ヘーズ値の(%)を除いて『重量%』を示し、また『部』は『重量部』を示している。
【0060】
[実施例1]
前述のCarey−Lea法により銀微粒子のコロイド分散液を調製した。
【0061】
具体的には、9%硝酸銀水溶液33gに、23%硫酸鉄(II)水溶液39gと37.5%クエン酸ナトリウム水溶液48gの混合液を加えた後、沈降物をろ過・洗浄した後、純水を加えて、銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.15%)を調製した。
【0062】
この銀微粒子のコロイド分散液60gに、ヒドラジン1水和物(N2H4・H2O)の1%水溶液8.0gを加えて攪拌しながら、金酸カリウム[KAu(OH)4]水溶液(Au:0.075%)480gと1%高分子分散剤水溶液0.2gの混合液を加え、金単体がコーティングされた貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液を得た。
【0063】
この貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液をイオン交換樹脂(三菱化学社製商品名ダイヤイオンSK1B,SA20AP)で脱塩した後、限外ろ過を行い、貴金属コート銀微粒子の濃縮液(A液)を得た。
【0064】
A液に、低沸点溶媒としてのジエチルエーテル、他の溶媒としてエタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子およびジエチルエーテルが含まれた実施例1に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.04%、Au:0.16%、水:4.01%、ジエチルエーテル:50%、EA:33.76%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.03%)を得た。
【0065】
この透明導電層形成用塗液を透過電子顕微鏡で観察した結果、貴金属コート銀微粒子の平均粒径は、7.2nmであった。
【0066】
次に、貴金属コート銀微粒子が含まれた実施例1に係る透明導電層形成用塗液を、35℃に加熱されたガラス基板(厚さ3mmのソーダライムガラス)上に、スピンコート(90rpmで10秒間、その後120rpmで80秒間)した後、続けて、シリカゾル液(B液)をスピンコート(150rpm,60秒間)し、さらに、180℃、20分間硬化させて、貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例1に係る透明導電性基材を得た。
【0067】
尚、上記ガラス基板は、使用前に酸化セリウム系研磨剤で研磨処理し、純水による洗浄・乾燥後、35℃に加熱して用いた。
【0068】
ここで、上記シリカゾル液(B液)は、メチルシリケート51(コルコート社製商品名)を19.6部、エタノール57.8部、1%硝酸水溶液7.9部、純水14.7部を用いて、SiO2 (酸化ケイ素)固形分濃度が10%で、重量平均分子量が1350のもの(C液)を調製し、最終的に、SiO2 固形分濃度が0.8%となるようにイソプロピルアルコール(IPA)とn−ブタノール(NBA)の混合物(IPA/NBA=3/1)により希釈して得ている。
【0069】
そして、ガラス基板上に形成された透明2層膜の膜特性(表面抵抗、可視光線透過率、ヘーズ値、ボトム反射率/ボトム波長)および膜均一性を以下の表1に示す。尚、上記ボトム反射率とは透明導電性基材の反射プロファイルにおいて極小の反射率をいい、ボトム波長とは反射率が極小における波長を意味している。上記膜均一性については、膜の反射光および透過光を目視で検査し判定した。
【0070】
尚、表1において透明基板(ガラス基板)を含まない透明2層膜だけの(可視光線)透過率は、以下の様にして求められている。すなわち、
透明基板を含まない透明2層膜だけの透過率(%)=[(透明基板ごと測定した透過率)/(透明基板の透過率)]×100
ここで、本明細書においては、特に言及しない限り、透過率としては、透明基板を含まない透明2層膜だけの可視光線透過率の値を用いている。
【0071】
また、透明2層膜の表面抵抗は、三菱化学(株)製の表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400)を用い測定した。ヘーズ値と可視光線透過率は、村上色彩技術研究所製のヘーズメーター(HR−200)を用いて測定した。反射率は、日立製作所(株)製の分光光度計(U−4000)を用いて測定した。また、貴金属コート銀微粒子の粒径は日本電子製の透過電子顕微鏡で評価している。
【0072】
[実施例2]
実施例1のA液に、低沸点溶媒としてのジエチルエーテル、他の溶媒としてエタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子およびジエチルエーテルが含まれた実施例2に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.05%、Au:0.20%、水:5.01%、ジエチルエーテル:30%、EA:52.71%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.03%)を得た。
【0073】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例2に係る透明導電性基材を得た。
【0074】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の上記膜特性および膜均一性を以下の表1に示す。
【0075】
[実施例3]
実施例1のA液に、低沸点溶媒としてのジエチルエーテル、他の溶媒としてエタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子およびジエチルエーテルが含まれた実施例3に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.06%、Au:0.24%、水:6.02%、ジエチルエーテル:10%、EA:71.65%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.03%)を得た。
【0076】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例3に係る透明導電性基材を得た。
【0077】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の上記膜特性および膜均一性を以下の表1に示す。
【0078】
[実施例4]
窒化チタン(TiN)微粒子(ネツレン株式会社製)5gとシリカゾル液(C液)5gを純粋20gおよびエタノール70gと混合し、ジルコニアビーズと共にペイントシェーカー分散を行った後、上記イオン交換樹脂で脱塩し、分散粒径85nmの酸化ケイ素コート窒化チタン微粒子分散液(D液)を得た。
【0079】
次に、実施例1のA液に、上記D液、低沸点溶媒としてのジエチルエーテル、他の溶媒としてエタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子、窒化チタン微粒子およびジエチルエーテルが含まれた実施例4に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.06%、Au:0.24%、TiN:0.06%、水:6.56%、ジエチルエーテル:30%、EA:51.05%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.03%)を得た。
【0080】
上記透明導電層形成用塗液を透過電子顕微鏡で観察した結果、窒化チタン微粒子の平均粒径は、20nmであった。
【0081】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子および窒化チタン微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例4に係る透明導電性基材を得た。
【0082】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の上記膜特性および膜均一性を以下の表1に示す。
【0083】
[実施例5]
カーボン微粒子(カーボンブラックMA7、三菱化学株式会社製)6g、分散剤2gを水112gと混合し、ジルコニアビーズと共にペイントシェーカー分散を行った後、イオン交換樹脂で脱塩し、分散粒径130nmのカーボン分散液(E液)を得た。
【0084】
次に、実施例1のA液に、上記E液、低沸点溶媒としてのジエチルエーテル、他の溶媒としてエタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子、カーボン微粒子およびジエチルエーテルが含まれた実施例5に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.06%、Au:0.24%、カーボン:0.03%、水:7.52%、ジエチルエーテル:30%、EA:50.12%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.03%)を得た。
【0085】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子およびカーボン微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例5に係る透明導電性基材を得た。
【0086】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の上記膜特性および膜均一性を以下の表1に示す。
【0087】
[比較例1]
実施例1のA液に、低沸点溶媒としてのジエチルエーテルを添加せず、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、フォルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子を含みジエチルエーテルを含まない比較例1に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.07%、Au:0.28%、水:7.02%、EA:80.59%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.04%)を得た。
【0088】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、比較例1に係る透明導電性基材を得た。
【0089】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の上記膜特性および膜均一性を以下の表1に示す。
【0090】
[比較例2]
実施例1のA液に、低沸点溶媒としてのジエチルエーテルを添加せず、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、フォルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子を含みジエチルエーテルを含まない比較例2に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.05%、Au:0.20%、水:5.01%、EA:82.71%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.03%)を得た。
【0091】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、比較例2に係る透明導電性基材を得た。
【0092】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の上記膜特性および膜均一性を以下の表1に示す。
【0093】
[比較例3]
実施例1のA液に、メタノール(温度25℃における蒸気圧:16.93kPa)、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、フォルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子およびメタノールを含む比較例3に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.05%、Au:0.20%、水:5.01%、メタノール:30%、EA:52.71%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.03%)を得た。
【0094】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、比較例3に係る透明導電性基材を得た。
【0095】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の上記膜特性および膜均一性を以下の表1に示す。
【0096】
[比較例4]
実施例1のA液に、実施例4のD液、メタノール(温度25℃における蒸気圧:16.93kPa)、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子、窒化チタン微粒子およびメタノールが含まれた比較例4に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.06%、Au:0.24%、TiN:0.06%、水:6.56%、メタノール:30%、EA:51.05%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.03%)を得た。
【0097】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、比較例4に係る透明導電性基材を得た。
【0098】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の上記膜特性および膜均一性を以下の表1に示す。
【0099】
【表1】
『評 価』
表1に示された結果から以下のことが確認される。
【0100】
まず、貴金属の含有量が0.25〜0.30%である比較例2〜4に係る透明2層膜の表面抵抗が6050(Ω/□)〜>106(Ω/□)であるのに対し、貴金属の含有量が0.20〜0.30%である各実施例に係る透明2層膜の表面抵抗は180(Ω/□)〜990(Ω/□)であり、導電性が優れていることが確認される。
【0101】
尚、比較例2は25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下の低沸点溶媒が含まれておらず、また、比較例3〜4は低沸点溶媒としてメタノール(温度25℃における蒸気圧:16.93kPa)が適用されていることから、透明導電層形成用塗液内の貴金属微粒子含有量を低下させる効果が低く、この結果、透明2層膜の各表面抵抗が上述したように6050(Ω/□)〜>106(Ω/□)と各実施例に係る透明2層膜の表面抵抗より高い値となっている。
【0102】
また、貴金属の含有量が0.35%でかつ25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下の低沸点溶媒が含まれていない比較例1に係る透明2層膜の表面抵抗は401(Ω/□)であり、導電性は優れているものの、透明導電層形成用塗液中における貴金属の含有量が0.35%と高いため、安価に透明導電層を形成することが困難で製造コストに難があることが確認される。
【0103】
【発明の効果】
請求項1〜7記載の発明に係る透明導電層形成用塗液によれば、
その溶媒が、25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下の範囲にある低沸点溶媒を10〜70重量%含んでいることから、透明導電層形成用塗液内における貴金属微粒子の含有量を0.1〜0.34重量%まで低下させた場合でも、低抵抗、低反射率の諸特性を有する膜均一性に優れた透明導電層を形成することができるため、安価な透明導電層形成用塗液を得ることが可能となる効果を有する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明基板上に透明導電層を形成するための透明導電層形成用塗液に係り、特に、上記透明導電層を形成した透明導電性基材がブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、液晶ディスプレイ(LCD)等表示装置の前面板に適用された場合、安価で、かつ良好な反射防止効果と電界シールド効果を有する均一な透明導電層を形成できる透明導電層形成用塗液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、コンピュータディスプレイ等として用いられている陰極線管(上記ブラウン管とも称する:CRT)には、表示画面が見やすく、視覚疲労を感じさせないことの外に、CRT表面の帯電によるほこりの付着や電撃ショックがないこと等が要求されている。更に、これ等に加えて最近ではCRTから発生する低周波電磁波の人体に対する悪影響が懸念され、このような電磁波が外部に漏洩しないことが望まれている。
【0003】
このような漏洩電磁波に対しては、ディスプレイの前面板表面に透明導電層を形成することにより防止することが可能である。そして、上記CRTの漏洩電磁波防止(電界シールド)用として、少なくとも106Ω/□以下、好ましくは5×103 Ω/□以下、さらに好ましくは103 Ω/□以下である低抵抗の透明導電層を形成する事が要求されている。
【0004】
そして、上記CRTの電界シールドに対処するため、これまでにいくつかの提案がなされており、例えば、
(1)インジウム錫酸化物(ITO)等の導電性酸化物微粒子や金属微粒子を溶媒中に分散した透明導電層形成用塗液を、CRTの前面ガラス(前面板)にスピンコート法等で塗布・乾燥後、200℃程度の温度で焼成して上記透明導電層を形成する方法。
(2)塩化錫の高温化学的気相成長法(CVD)により、前面ガラス(前面板)に透明導電酸化錫膜(ネサ膜)を形成する方法。
(3)インジウム錫酸化物、酸窒化チタン等のスパッタリング法により前面ガラス(前面板)に透明導電膜を形成する方法。
等の方法が提案されている。
【0005】
ここで、透明導電層形成用塗液を用いる(1)の方法は、(2)(3)に示されたCVD法やスパッタ法等で透明導電膜を形成する方法に較べてはるかに簡便でありかつ製造コストも低いため、極めて有利な方法である。
【0006】
但し、(1)に示された方法において、透明導電層形成用塗液としてインジウム錫酸化物(ITO)等の導電性酸化物微粒子が適用された場合、得られる透明導電層の表面抵抗が104〜106Ω/□と高く、漏洩電界を遮蔽するには充分でなかった。
【0007】
一方、金属微粒子が適用された透明導電層形成用塗液では、ITOを用いた塗液に比べ、若干、膜の透過率が低くなるものの、102〜103Ω/□という低抵抗膜が得られるため、今後、有望な方法であると思われる。
【0008】
そして、上記透明導電層形成用塗液に適用される金属微粒子としては、特開平8−77832号公報や特開平9−55175号公報等に示されるように空気中で酸化され難い、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等の貴金属に限られている。これは、貴金属以外の金属微粒子、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等が適用された場合、大気雰囲気下でこれ等金属微粒子の表面に酸化物被膜が必ず形成されてしまい透明導電層として良好な導電性が得られなくなるからである。
【0009】
また、一方では表示画面を見やすくするために、例えば、CRTにおいては前面板表面に防眩処理を施して画面の反射を抑えることも行われている。
【0010】
この防眩処理は、微細な凹凸を設けて表面の拡散反射を増加させる方法によってもなされるが、この方法を用いた場合、解像度が低下して画質が落ちるためあまり好ましいとはいえない。
【0011】
従って、むしろ反射光が入射光に対して破壊的干渉を生ずるように、透明被膜の屈折率と膜厚とを制御する干渉法によって防眩処理を行うことが好ましい。
【0012】
このような干渉法により低反射効果を得るため、一般的には高屈折率膜と低屈折率膜の光学膜厚をそれぞれ1/4λと1/4λ、あるいは1/2λと1/4λ(λは波長)に設定した二層構造膜が採用されており、前述のインジウム錫酸化物(ITO)微粒子からなる膜もこの種の高屈折率膜として用いられている。
【0013】
尚、金属においては、光学定数(n−ik,n:屈折率,i2=−1、k:消衰係数)のうち、nの値は小さいがkの値が大きいため、金属微粒子からなる透明導電層を用いた場合でも、ITO(高屈折率膜)と同様に、二層構造膜で光の干渉による反射防止効果が得られる。
【0014】
また、透明基板にこの種の透明導電層が形成された透明導電性基材には、上述した良好な導電性、低反射率等の諸特性に加えて、近年、CRTにおける画面の平面化に伴いその透過率を100%より低い所定範囲(40〜75%)に調整して画像のコントラストを向上させる(透過率が低下するとコントラストは向上する)特性も要請されており、この場合、上記透明導電層形成用塗液に着色顔料微粒子等を配合することも行われている。
【0015】
ここで、画面が平面化されたCRT(平面CRT)において低透過率の透明導電層を用いる理由は、パネル外表面が平面で内面は曲率を有する上記平面CRTにおいてフェースパネル(前面パネル)の厚みが画面中央部と周辺部で異なっており、平面CRTのパネルガラスに従来の着色ガラス(例えば、セミティントガラス、透過率:約53%)を用いた場合に輝度の面内不均一を生ずるため、高透過率のパネルガラスと上記低透過率層とを組合わせることにより、輝度の面内均一性とコントラストの向上を両立させる必要があるためである。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した金属微粒子から成る透明導電層を形成するにはある程度以上の膜厚が必要となるため、貴金属微粒子を含有する従来の透明導電層形成用塗液においては0.4〜0.6重量%の配合割合を有する貴金属微粒子を用いており、貴金属微粒子を多量に含む分、透明導電層形成用塗液が高価格となる問題を有していた。この場合、透明導電層形成用塗液内における上記貴金属微粒子の配合割合を低く設定できる厚膜化方法として、例えば、基板温度を上昇させて透明導電層形成用塗液の乾燥速度を高める方法やスピンコートの回転速度を低下させる方法等が考えられるが、この様な方法を採った場合、得られる透明導電層の均一性を悪化させてしまうため実用的でなかった。
【0017】
尚、本件出願人は、25℃における蒸気圧が26.66〜53.33kPaである低沸点溶媒を適用して上記課題の解決を図った透明導電層形成用塗液を既に提案している(特願2001−325915号明細書参照)。
【0018】
そして、特願2001−325915号明細書においては、25℃における蒸気圧が53.33kPaを超える低沸点溶媒を適用した場合、低沸点溶媒の揮発速度が大き過ぎるため得られる透明導電層の均一性を悪化させる等の問題が記載されているが、本発明者のその後の研究において25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPaまでの低沸点溶剤も適用できることが判明した。
【0019】
そこで、本発明は、特願2001−325915号明細書に記載された発明と同様、上述した課題を解決するため、従来の透明導電層形成用塗液に比べより安価で、かつ、低抵抗、低反射率を有する均一な透明導電層の形成を可能とする透明導電層形成用塗液を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1に係る発明は、
溶媒、および、この溶媒に分散された平均粒径1〜100nmの貴金属微粒子を主成分とし、透明基板上に透明導電層を形成する透明導電層形成用塗液を前提とし、
上記溶媒が、25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下の範囲にある低沸点溶媒を10〜70重量%含むことを特徴とするものである。
【0021】
また、請求項2に係る発明は、
請求項1記載の発明に係る透明導電層形成用塗液を前提とし、
上記貴金属微粒子の含有量が0.1〜0.34重量%であることを特徴としている。
【0022】
また、請求項3に係る発明は、
請求項1または2記載の発明に係る透明導電層形成用塗液を前提とし、
上記低沸点溶媒がジエチルエーテルであることを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電層形成用塗液を前提とし、
上記貴金属微粒子が、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された貴金属の微粒子、これら貴金属の合金微粒子、あるいは、銀を除く上記貴金属により表面がコートされた貴金属コート銀微粒子のいずれかであることを特徴とするものである。
【0023】
次に、請求項5に係る発明は、
請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電層形成用塗液を前提とし、
有色顔料微粒子が含まれていることを特徴とし、
請求項6に係る発明は、
請求項5に記載の透明導電層形成用塗液を前提とし、
上記有色顔料微粒子が、カーボン、チタンブラック、窒化チタン、複合酸化物顔料、コバルトバイオレット、モリブデンオレンジ、群青、紺青、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料およびフタロシアニン系顔料から選択された1種以上の微粒子であることを特徴とし、
請求項7に係る発明は、
請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電層形成用塗液を前提とし、
無機バインダーが含まれていることを特徴とするものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
まず、本発明は、貴金属微粒子を含む透明導電層形成用塗液内に25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下の範囲にある低沸点溶媒を10〜70重量%配合した場合、上述した特願2001−325915号明細書に記載された発明と同様に塗液内の貴金属微粒子の含有量を従来より低下させても、低抵抗で均一な透明導電層を形成できることを発見し完成されたもので、これにより安価な透明導電層形成用塗液を得ることが可能となる。
【0026】
ところで、CRTにおける上記透明導電層形成用塗液を用いた透明導電層の成膜方法としては、スピンコート法が広く一般的に採用されているため、上記低沸点溶媒を所定量含有する透明導電層形成用塗液を用いた場合、スピンコートの成膜過程の初期段階で塗液の濃縮(低沸点溶媒の揮発)が速やかに進行することから厚膜化が効率的に行われるためと考えられる。スピンコートにおいて厚膜化を行うその他の方法として、上述したように基板温度を上昇させ透明導電層形成用塗液の乾燥速度を高める方法やスピン回転速度を低下させる方法が考えられるが、いずれも得られる透明導電層の均一性を悪化させる傾向が強く実用的とは言えない。
【0027】
ここで、上記低沸点溶媒は、25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下の範囲にあることを要する(請求項1)。25℃における蒸気圧が53.33kPa以下(但し、26.66kPa以上)の低沸点溶媒が除かれている理由は、特願2001−325915号明細書に記載された発明において適用される低沸点溶媒と同一になるからである。また、25℃における蒸気圧が80kPaを超える低沸点溶媒は、透明導電層形成用塗液内の貴金属微粒子含有量を大幅に低下できるが、低沸点溶媒の揮発速度が大き過ぎるため得られる透明導電層の均一性を悪化させたり、透明導電層形成用塗液の保管や輸送に支障をきたす問題があり、実用的とはいえないからである。
【0028】
また、上記低沸点溶媒の配合量は10〜70重量%の範囲に設定される(請求項1)。10重量%未満および70重量%を超える場合は、透明導電層形成用塗液内の貴金属微粒子含有量を低下させる効果が低かったり、得られる透明導電層の均一性の悪化や、透明導電層形成用塗液の保管や輸送の問題が生じるため好ましくない。
【0029】
ここで、上述した低沸点溶媒としては、上記成膜過程における初期段階での塗液の濃縮効率が非常に高い観点から、ジエチルエーテル(25℃の蒸気圧:72kPa)が好ましい(請求項3)。
【0030】
ところで、貴金属微粒子を含む透明導電層形成用塗液は、通常、貴金属微粒子の水系コロイド分散液を経由して得られるため、その溶媒は必然的に水分を含有し、その水分濃度は1〜50重量%、好ましくは5〜25重量%がよい。50重量%を超えると、透明基板上に透明導電層形成用塗液を塗布した後、乾燥中に、水の高い表面張力によりはじきを生じ易くなる場合があるからである。また、上記水分濃度を1重量%未満にするには、例えば、貴金属微粒子の濃度を30重量%程度の高濃度まで高めた水系コロイド分散液を製造する必要があるが、分散液中の貴金属微粒子濃度をそこまで高めると分散液が不安定となり貴金属微粒子の凝集が生じるため実用的ではない。
【0031】
また、透明導電層形成用塗液中の貴金属微粒子はその平均粒径が1〜100nmであることを要する(請求項1)。上記微粒子において、1nm未満の場合、この微粒子の製造は困難であり、かつ、透明導電層形成用塗液中で凝集し易く実用的でないからである。また、100nmを超えると、形成された透明導電層の可視光線透過率が低くなり過ぎてしまい、仮に、膜厚を薄く設定して可視光線透過率を高くした場合でも、表面抵抗が高くなり過ぎてしまい実用的でないからである。
【0032】
尚、ここで言う平均粒径とは、透過電子顕微鏡(TEM)で観察される微粒子の平均粒径を示している。
【0033】
また、上記貴金属微粒子としては、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された貴金属の微粒子、これら貴金属の合金微粒子、あるいは、銀を除く上記貴金属により表面がコートされた貴金属コート銀微粒子のいずれかを適用することができる(請求項4)。
【0034】
そして、銀、金、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウムなどの比抵抗を比較した場合、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウムの比抵抗は、それぞれ10.6、4.51、7.6、10.8μΩ・cmで、銀、金の1.62、2.2μΩ・cmに比べて高いため、表面抵抗の低い透明導電層を形成するには銀微粒子や金微粒子を適用した方が有利と考えられる。
【0035】
ただし、銀微粒子が適用された場合、硫化や食塩水による劣化が激しいという耐候性の面から用途が制限され、他方、金微粒子、白金微粒子、ロジウム、ルテニウム微粒子、パラジウム微粒子等が適用された場合には上記耐候性の問題はなくなるが、コスト面を考慮すると必ずしも最適とは言えない。
【0036】
そこで、上述したように銀微粒子の表面に銀以外の貴金属をコーティングした微粒子(すなわち、貴金属コート銀微粒子)を用いることもできる。尚、貴金属コート銀微粒子に関しては、本件出願人が先に出願した特開平11−228872号公報および特開平2000−268639号公報に記載された透明導電層形成用塗液とその製造方法を利用することが可能である。
【0037】
次に、上記貴金属コート銀微粒子において、金若しくは白金単体または金、白金複合体のコーティング量は、銀100重量部に対し5重量部以上1900重量部の範囲に設定することが好ましく、さらに好ましくは100重量部以上900重量部の範囲に設定するとよい。金若しくは白金単体または金、白金複合体のコーティング量が5重量部未満だと、紫外線等の影響による膜劣化が起こり易くコーティングの保護効果が見られず、反対に1900重量部を越えると貴金属コート銀微粒子の生産性が悪化すると共にコスト的にも難があるからである。
【0038】
次に、上記透明導電層形成用塗液内に有色顔料微粒子を添加してもよい(請求項5)。有色顔料微粒子の添加により、透明導電層が形成された透明導電性基材の透過率を100%より低い所定範囲(40〜75%)に調整し、良好な導電性、低反射率等の諸特性に加え、その画像のコントラストを向上させて表示画面を更に見易くさせることが可能となる。
【0039】
そして、上記有色顔料微粒子には、カーボン、チタンブラック、窒化チタン、複合酸化物顔料、コバルトバイオレット、モリブデンオレンジ、群青、紺青、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料およびフタロシアニン系顔料から選択された1種以上の微粒子を用いることができる(請求項6)。
【0040】
更に、上記有色顔料微粒子は、その表面が酸化ケイ素でコーティング処理された微粒子であることが好ましい。酸化ケイ素でコーティング処理された有色顔料微粒子を用いると、未処理の有色顔料微粒子を用いた場合と比較して、導電性および膜強度に優れた透明導電層が得られる。
【0041】
次に、貴金属微粒子として貴金属コート銀微粒子が適用され、かつ、溶媒に25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下である低沸点溶媒を含有する透明導電層形成用塗液は以下のような方法で製造することができる。まず、既知の方法[例えば、Carey−Lea法、Am.J.Sci.、37、47(1889)、Am.J.Sci.、38(1889)]により銀微粒子のコロイド分散液を調製する。
【0042】
すなわち、硝酸銀水溶液に、硫酸鉄(II)水溶液とクエン酸ナトリウム水溶液の混合液を加えて反応させ、沈降物を濾過・洗浄した後、純水を加えることにより簡単に銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.1〜10重量%)が調製される。この銀微粒子のコロイド分散液の調製方法は平均粒径1〜100nmの銀微粒子が分散されたものであれば任意でありかつこれに限定されるものではない。
【0043】
次に、得られた銀微粒子のコロイド分散液にヒドラジン(N2H4)等の還元剤を加え、更にそこにアルカリ金属の金酸塩溶液若しくは白金酸塩溶液を加えるか、アルカリ金属の白金酸塩溶液並びに金酸塩溶液、またはアルカリ金属の白金酸塩並びに金酸塩の混合溶液を加えることで上記銀微粒子の表面に金若しくは白金単体または金と白金の複合体をコーティングし、貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液を得ることができる。尚、この貴金属コート銀微粒子調製工程で、必要により、銀微粒子のコロイド分散液、アルカリ金属の金酸塩溶液、アルカリ金属の白金酸塩溶液、アルカリ金属の金酸塩並びに白金酸塩の混合溶液の少なくともいずれか一つ、または、それぞれに少量の分散剤を加えてもよい。
【0044】
以上のようにして得られた貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液は、この後、透析、電気透析、イオン交換、限外濾過等の脱塩処理方法により分散液内の電解質濃度を下げることが好ましい。これは、電解質濃度を下げないとコロイドは電解質で一般に凝集してしまうからであり、この現象は、Schulze−Hardy則としても知られている。
【0045】
次に、脱塩処理された貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液を濃縮処理して貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液を得、この貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液に、25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下である低沸点溶媒とその他の有機溶媒、あるいは更に有色顔料微粒子または/および無機バインダーが含まれた(請求項5、7)これ等の溶剤を添加して成分調整(微粒子濃度、水分濃度、有機溶剤濃度等)を行い、本発明に係る透明導電層形成用塗液が得られる。
【0046】
尚、上記貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液の濃縮処理は、減圧エバポレーター、限外濾過等の常用の方法で行うことができ、この濃縮度合いによって、透明導電層形成用塗液中の水分濃度を、上述した1〜50重量%の範囲に制御することができる。
【0047】
また、透明導電層形成用塗液に用いる溶媒としては上述したように25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下である低沸点溶媒が挙げられるが、その他の有機溶媒として特に制限はなく塗布方法や製膜条件により適宜に選定される。例えば、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGM−AC)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)等のグリコール誘導体、フォルムアミド(FA)、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
尚、上記貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液に代えて、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された少なくとも1種類以上の貴金属微粒子、これら貴金属の合金微粒子のコロイド分散液を適用した場合も、同様の方法にて本発明に係る透明導電層形成用塗液を得ることが可能である。
【0049】
次に、この様にして得られた本発明に係る透明導電層形成用塗液を用いて、例えば、透明基板、および、この透明基板上に順次形成された透明導電層と透明コート層から成る透明2層膜とでその主要部が構成される透明導電性基材を得ることができる。
【0050】
そして、透明基板上に上記透明2層膜を形成するには以下の方法でこれを行うことができる。すなわち、本発明に係る透明導電層形成用塗液を、ガラス基板、プラスチック基板等の透明基板上にスピンコート、スプレーコート、ワイヤーバーコート、ドクターブレードコート等の手法にて塗布し、必要に応じて乾燥した後、例えばシリカゾル等を主成分とする透明コート層形成用塗布液を上述した手法によりオーバーコートする。次に、例えば50〜350℃程度の温度で加熱処理を施し透明コート層形成用塗布液の硬化を行って上記透明2層膜を形成する。
【0051】
ここで、25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下である低沸点溶媒を10〜70重量%配合された本発明に係る透明導電層形成用塗液を用いた場合、上記低沸点溶媒が配合されていない従来の透明導電層形成用塗液を適用した場合と比較して、上記貴金属微粒子の含有量を0.1〜0.34重量%まで低下させても均一性に優れた透明導電層を形成することができる。
【0052】
また、貴金属微粒子を含有する上記透明導電層形成用塗液において貴金属微粒子はITO等の酸化物微粒子に比べて凝集しやすく、透明導電層形成用塗液の塗布・乾燥の成膜過程において微粒子同士の凝集が起こるため、透明導電層形成用塗液を用いて得られる上記透明導電層は、貴金属微粒子の導電層に微小な空孔が導入された構造、すなわち網目状(ネットワーク)構造を有している。
【0053】
従って、シリカゾル等を主成分とする透明コート層形成用塗布液を上述した手法によりオーバーコートした際、予め形成された上記透明導電層(貴金属微粒子の導電層)における網目状構造の穴の部分に、オーバーコートしたシリカゾル液(このシリカゾル液は上記加熱処理により酸化ケイ素を主成分とするバインダーマトリックスとなる)がしみ込むことで、透過率の向上、導電性の向上が同時に達成される。
【0054】
また、網目状構造の上記穴の部分を介して、透明基板と酸化珪素等のバインダーマトリックスとの接触面積が増大するため透明基板とバインダーマトリックスの結合が強くなり、強度の向上も図られる。
【0055】
更に、貴金属微粒子が酸化ケイ素を主成分とする上記バインダーマトリックス中に分散された透明導電層の光学定数(n−ik)において、屈折率nはさほど大きくないが消衰係数kが大きいため、上記透明導電層と透明コート層の透明2層膜構造により、透明2層膜の反射率を大幅に低下できる。
【0056】
ここで、上記シリカゾルとしては、オルトアルキルシリケートに水や酸触媒を加えて加水分解し、脱水縮重合を進ませた重合物、あるいは既に4〜5量体まで重合を進ませた市販のアルキルシリケート溶液を、さらに加水分解と脱水縮重合を進行させた重合物等を利用することができる。尚、脱水縮重合が進行すると、溶液粘度が上昇して最終的には固化してしまうので、脱水縮重合の度合いについては、ガラス基板やプラスチック基板などの透明基板上に塗布可能な上限粘度以下のところに調整する。但し、脱水縮重合の度合いは上記上限粘度以下のレベルであれば特に指定されないが、膜強度、耐候性等を考慮すると重量平均分子量で500から3000程度が好ましい。そして、アルキルシリケート加水分解重合物は、透明2層膜の加熱焼成時に脱水縮重合反応がほぼ完結して、硬いシリケート膜(酸化ケイ素を主成分とする膜)になる。尚、上記シリカゾルに、弗化マグネシウム微粒子、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル等を加え、透明コート層の屈折率を調節して透明2層膜の反射率を変えることも可能である。
【0057】
また、25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下である低沸点溶媒を10〜70重量%含む溶媒とこの溶媒に分散された平均粒径1〜100nmの貴金属微粒子に加え、上述したように有色顔料微粒子(分散液)または/および無機バインダー成分としてのシリカゾル液を配合させて本発明に係る透明導電層形成用塗液を構成してもよい(請求項5、7)。この場合においても、透明導電層形成用塗液を塗布し、必要に応じて乾燥させた後に透明コート層形成用塗布液を上述した手法によりオーバーコートすることで、同様の透明2層膜が得られる。尚、貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液の製造において脱塩処理を施したのと同様の理由から、透明導電層形成用塗液内に配合する上記有色顔料微粒子分散液、シリカゾル液についてもその脱塩を十分に行っておくことが望ましい。
【0058】
以上、詳述したように本発明に係る透明導電層形成用塗液を適用して形成された透明導電層を具備する透明導電性基材は、従来より安価に製造でき、かつ、低抵抗、低反射率の諸特性を有し、均一性の優れた透明導電層を形成できるため、例えば、上述したブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、液晶ディスプレイ(LCD)等表示装置における前面板等に用いることができる。
【0059】
【実施例】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、本文中の『%』は、透過率、反射率、ヘーズ値の(%)を除いて『重量%』を示し、また『部』は『重量部』を示している。
【0060】
[実施例1]
前述のCarey−Lea法により銀微粒子のコロイド分散液を調製した。
【0061】
具体的には、9%硝酸銀水溶液33gに、23%硫酸鉄(II)水溶液39gと37.5%クエン酸ナトリウム水溶液48gの混合液を加えた後、沈降物をろ過・洗浄した後、純水を加えて、銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.15%)を調製した。
【0062】
この銀微粒子のコロイド分散液60gに、ヒドラジン1水和物(N2H4・H2O)の1%水溶液8.0gを加えて攪拌しながら、金酸カリウム[KAu(OH)4]水溶液(Au:0.075%)480gと1%高分子分散剤水溶液0.2gの混合液を加え、金単体がコーティングされた貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液を得た。
【0063】
この貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液をイオン交換樹脂(三菱化学社製商品名ダイヤイオンSK1B,SA20AP)で脱塩した後、限外ろ過を行い、貴金属コート銀微粒子の濃縮液(A液)を得た。
【0064】
A液に、低沸点溶媒としてのジエチルエーテル、他の溶媒としてエタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子およびジエチルエーテルが含まれた実施例1に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.04%、Au:0.16%、水:4.01%、ジエチルエーテル:50%、EA:33.76%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.03%)を得た。
【0065】
この透明導電層形成用塗液を透過電子顕微鏡で観察した結果、貴金属コート銀微粒子の平均粒径は、7.2nmであった。
【0066】
次に、貴金属コート銀微粒子が含まれた実施例1に係る透明導電層形成用塗液を、35℃に加熱されたガラス基板(厚さ3mmのソーダライムガラス)上に、スピンコート(90rpmで10秒間、その後120rpmで80秒間)した後、続けて、シリカゾル液(B液)をスピンコート(150rpm,60秒間)し、さらに、180℃、20分間硬化させて、貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例1に係る透明導電性基材を得た。
【0067】
尚、上記ガラス基板は、使用前に酸化セリウム系研磨剤で研磨処理し、純水による洗浄・乾燥後、35℃に加熱して用いた。
【0068】
ここで、上記シリカゾル液(B液)は、メチルシリケート51(コルコート社製商品名)を19.6部、エタノール57.8部、1%硝酸水溶液7.9部、純水14.7部を用いて、SiO2 (酸化ケイ素)固形分濃度が10%で、重量平均分子量が1350のもの(C液)を調製し、最終的に、SiO2 固形分濃度が0.8%となるようにイソプロピルアルコール(IPA)とn−ブタノール(NBA)の混合物(IPA/NBA=3/1)により希釈して得ている。
【0069】
そして、ガラス基板上に形成された透明2層膜の膜特性(表面抵抗、可視光線透過率、ヘーズ値、ボトム反射率/ボトム波長)および膜均一性を以下の表1に示す。尚、上記ボトム反射率とは透明導電性基材の反射プロファイルにおいて極小の反射率をいい、ボトム波長とは反射率が極小における波長を意味している。上記膜均一性については、膜の反射光および透過光を目視で検査し判定した。
【0070】
尚、表1において透明基板(ガラス基板)を含まない透明2層膜だけの(可視光線)透過率は、以下の様にして求められている。すなわち、
透明基板を含まない透明2層膜だけの透過率(%)=[(透明基板ごと測定した透過率)/(透明基板の透過率)]×100
ここで、本明細書においては、特に言及しない限り、透過率としては、透明基板を含まない透明2層膜だけの可視光線透過率の値を用いている。
【0071】
また、透明2層膜の表面抵抗は、三菱化学(株)製の表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400)を用い測定した。ヘーズ値と可視光線透過率は、村上色彩技術研究所製のヘーズメーター(HR−200)を用いて測定した。反射率は、日立製作所(株)製の分光光度計(U−4000)を用いて測定した。また、貴金属コート銀微粒子の粒径は日本電子製の透過電子顕微鏡で評価している。
【0072】
[実施例2]
実施例1のA液に、低沸点溶媒としてのジエチルエーテル、他の溶媒としてエタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子およびジエチルエーテルが含まれた実施例2に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.05%、Au:0.20%、水:5.01%、ジエチルエーテル:30%、EA:52.71%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.03%)を得た。
【0073】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例2に係る透明導電性基材を得た。
【0074】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の上記膜特性および膜均一性を以下の表1に示す。
【0075】
[実施例3]
実施例1のA液に、低沸点溶媒としてのジエチルエーテル、他の溶媒としてエタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子およびジエチルエーテルが含まれた実施例3に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.06%、Au:0.24%、水:6.02%、ジエチルエーテル:10%、EA:71.65%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.03%)を得た。
【0076】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例3に係る透明導電性基材を得た。
【0077】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の上記膜特性および膜均一性を以下の表1に示す。
【0078】
[実施例4]
窒化チタン(TiN)微粒子(ネツレン株式会社製)5gとシリカゾル液(C液)5gを純粋20gおよびエタノール70gと混合し、ジルコニアビーズと共にペイントシェーカー分散を行った後、上記イオン交換樹脂で脱塩し、分散粒径85nmの酸化ケイ素コート窒化チタン微粒子分散液(D液)を得た。
【0079】
次に、実施例1のA液に、上記D液、低沸点溶媒としてのジエチルエーテル、他の溶媒としてエタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子、窒化チタン微粒子およびジエチルエーテルが含まれた実施例4に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.06%、Au:0.24%、TiN:0.06%、水:6.56%、ジエチルエーテル:30%、EA:51.05%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.03%)を得た。
【0080】
上記透明導電層形成用塗液を透過電子顕微鏡で観察した結果、窒化チタン微粒子の平均粒径は、20nmであった。
【0081】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子および窒化チタン微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例4に係る透明導電性基材を得た。
【0082】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の上記膜特性および膜均一性を以下の表1に示す。
【0083】
[実施例5]
カーボン微粒子(カーボンブラックMA7、三菱化学株式会社製)6g、分散剤2gを水112gと混合し、ジルコニアビーズと共にペイントシェーカー分散を行った後、イオン交換樹脂で脱塩し、分散粒径130nmのカーボン分散液(E液)を得た。
【0084】
次に、実施例1のA液に、上記E液、低沸点溶媒としてのジエチルエーテル、他の溶媒としてエタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子、カーボン微粒子およびジエチルエーテルが含まれた実施例5に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.06%、Au:0.24%、カーボン:0.03%、水:7.52%、ジエチルエーテル:30%、EA:50.12%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.03%)を得た。
【0085】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子およびカーボン微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例5に係る透明導電性基材を得た。
【0086】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の上記膜特性および膜均一性を以下の表1に示す。
【0087】
[比較例1]
実施例1のA液に、低沸点溶媒としてのジエチルエーテルを添加せず、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、フォルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子を含みジエチルエーテルを含まない比較例1に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.07%、Au:0.28%、水:7.02%、EA:80.59%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.04%)を得た。
【0088】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、比較例1に係る透明導電性基材を得た。
【0089】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の上記膜特性および膜均一性を以下の表1に示す。
【0090】
[比較例2]
実施例1のA液に、低沸点溶媒としてのジエチルエーテルを添加せず、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、フォルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子を含みジエチルエーテルを含まない比較例2に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.05%、Au:0.20%、水:5.01%、EA:82.71%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.03%)を得た。
【0091】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、比較例2に係る透明導電性基材を得た。
【0092】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の上記膜特性および膜均一性を以下の表1に示す。
【0093】
[比較例3]
実施例1のA液に、メタノール(温度25℃における蒸気圧:16.93kPa)、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、フォルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子およびメタノールを含む比較例3に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.05%、Au:0.20%、水:5.01%、メタノール:30%、EA:52.71%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.03%)を得た。
【0094】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、比較例3に係る透明導電性基材を得た。
【0095】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の上記膜特性および膜均一性を以下の表1に示す。
【0096】
[比較例4]
実施例1のA液に、実施例4のD液、メタノール(温度25℃における蒸気圧:16.93kPa)、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子、窒化チタン微粒子およびメタノールが含まれた比較例4に係る透明導電層形成用塗液(Ag:0.06%、Au:0.24%、TiN:0.06%、水:6.56%、メタノール:30%、EA:51.05%、PGM:10%、DAA:2.0%、FA:0.03%)を得た。
【0097】
そして、この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜から成る透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、すなわち、比較例4に係る透明導電性基材を得た。
【0098】
ガラス基板上に形成された透明2層膜の上記膜特性および膜均一性を以下の表1に示す。
【0099】
【表1】
『評 価』
表1に示された結果から以下のことが確認される。
【0100】
まず、貴金属の含有量が0.25〜0.30%である比較例2〜4に係る透明2層膜の表面抵抗が6050(Ω/□)〜>106(Ω/□)であるのに対し、貴金属の含有量が0.20〜0.30%である各実施例に係る透明2層膜の表面抵抗は180(Ω/□)〜990(Ω/□)であり、導電性が優れていることが確認される。
【0101】
尚、比較例2は25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下の低沸点溶媒が含まれておらず、また、比較例3〜4は低沸点溶媒としてメタノール(温度25℃における蒸気圧:16.93kPa)が適用されていることから、透明導電層形成用塗液内の貴金属微粒子含有量を低下させる効果が低く、この結果、透明2層膜の各表面抵抗が上述したように6050(Ω/□)〜>106(Ω/□)と各実施例に係る透明2層膜の表面抵抗より高い値となっている。
【0102】
また、貴金属の含有量が0.35%でかつ25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下の低沸点溶媒が含まれていない比較例1に係る透明2層膜の表面抵抗は401(Ω/□)であり、導電性は優れているものの、透明導電層形成用塗液中における貴金属の含有量が0.35%と高いため、安価に透明導電層を形成することが困難で製造コストに難があることが確認される。
【0103】
【発明の効果】
請求項1〜7記載の発明に係る透明導電層形成用塗液によれば、
その溶媒が、25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下の範囲にある低沸点溶媒を10〜70重量%含んでいることから、透明導電層形成用塗液内における貴金属微粒子の含有量を0.1〜0.34重量%まで低下させた場合でも、低抵抗、低反射率の諸特性を有する膜均一性に優れた透明導電層を形成することができるため、安価な透明導電層形成用塗液を得ることが可能となる効果を有する。
Claims (7)
- 溶媒、および、この溶媒に分散された平均粒径1〜100nmの貴金属微粒子を主成分とし、透明基板上に透明導電層を形成する透明導電層形成用塗液において、
上記溶媒が、25℃における蒸気圧が53.33kPaを超え80kPa以下の範囲にある低沸点溶媒を10〜70重量%含むことを特徴とする透明導電層形成用塗液。 - 上記貴金属微粒子の含有量が0.1〜0.34重量%であることを特徴とする請求項1記載の透明導電層形成用塗液。
- 上記低沸点溶媒がジエチルエーテルであることを特徴とする請求項1または2記載の透明導電層形成用塗液。
- 上記貴金属微粒子が、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された貴金属の微粒子、これら貴金属の合金微粒子、あるいは、銀を除く上記貴金属により表面がコートされた貴金属コート銀微粒子のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電層形成用塗液。
- 有色顔料微粒子が含まれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電層形成用塗液。
- 上記有色顔料微粒子が、カーボン、チタンブラック、窒化チタン、複合酸化物顔料、コバルトバイオレット、モリブデンオレンジ、群青、紺青、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料およびフタロシアニン系顔料から選択された1種以上の微粒子であることを特徴とする請求項5記載の透明導電層形成用塗液。
- 無機バインダーが含まれていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電層形成用塗液。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002209753A JP2004051746A (ja) | 2002-07-18 | 2002-07-18 | 透明導電層形成用塗液 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002209753A JP2004051746A (ja) | 2002-07-18 | 2002-07-18 | 透明導電層形成用塗液 |
Publications (1)
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---|---|
JP2004051746A true JP2004051746A (ja) | 2004-02-19 |
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ID=31933521
Family Applications (1)
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JP2002209753A Pending JP2004051746A (ja) | 2002-07-18 | 2002-07-18 | 透明導電層形成用塗液 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004051746A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN108877992A (zh) * | 2018-07-10 | 2018-11-23 | 北京工业大学 | 一种基于超长银铂合金空心纳米线透明导电电极的制备方法 |
-
2002
- 2002-07-18 JP JP2002209753A patent/JP2004051746A/ja active Pending
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CN108877992A (zh) * | 2018-07-10 | 2018-11-23 | 北京工业大学 | 一种基于超长银铂合金空心纳米线透明导电电极的制备方法 |
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