JP4258281B2 - 透明導電層形成用塗液及びその製造方法 - Google Patents

透明導電層形成用塗液及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明基板上に透明導電層を形成するための透明導電層形成用塗液に関し、特に、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置の前面板等に適用される透明導電膜の形成に用いる透明導電層形成用塗液に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータディスプレイ等として用いられている陰極線管(CRT:ブラウン管とも称する)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置では、表示画面が見やすく、視覚疲労を感じさせないこと等が要求されている。
【0003】
更に、最近では、CRT等から発生する低周波電磁波の人体に対する悪影響が懸念され、このような電磁波が外部に漏洩しないことが望まれている。かかる漏洩電磁波に対しては、ディスプレイの前面板表面に透明導電層を形成することにより防止することが可能である。例えばCRTの漏洩電磁波防止(電界シールド)用としては、少なくとも10Ω/□以下、好ましくは5×10Ω/□以下、更に好ましくは10Ω/□以下の低抵抗の透明導電層を形成することが要求されている。
【0004】
そして、上記CRT電界シールド用の低抵抗透明導電膜として、これまでにいくつかの提案がなされており、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)等の導電性酸化物微粒子や金属微粒子を溶媒中に分散した透明導電層形成用塗液を、CRTの前面ガラス(前面板)にスピンコート法等で塗布・乾燥した後、200℃程度の温度で焼成して透明導電層を形成する方法がある。この方法は、CVD法やスパッタリング法等で透明導電膜を形成する方法に較べてはるかに簡便であり、且つ製造コストも低いため、極めて有利な方法である。
【0005】
しかし、この透明導電層形成用塗液を用いて透明導電層を形成する方法においては、インジウム錫酸化物(ITO)等の導電性酸化物微粒子を使用する場合、得られる膜の表面抵抗が10〜10Ω/□と高くなり、漏洩電界を遮蔽するには充分でなかった。一方、金属微粒子が適用された透明導電層形成用塗液では、ITOを用いた塗布液に比べ、膜の透過率が若干低くなるものの、10〜10Ω/□という低抵抗膜が得られるため、今後とも有望な方法であると思われる。
【0006】
上記透明導電層形成用塗液に適用される金属微粒子として、空気中で酸化され難い貴金属、例えば、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が提案されている(特開平8−77832号公報、特開平9−55175号公報参照)。尚、同公報には、貴金属以外の金属微粒子、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等も適用可能とあるが、実際にはこれ等の金属微粒子は大気雰囲気下で表面に酸化物被膜が必ず形成されるため、透明導電層として良好な導電性を得ることは困難である。
【0007】
また、銀、金、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム等の比抵抗を比較した場合、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウムの比抵抗は、それぞれ10.6、4.51、7.6、10.8μΩ・cmであり、銀と金の比抵抗1.62及び2.2μΩ・cmに比べて高い。従って、表面抵抗の低い透明導電層を形成するには、銀微粒子や金微粒子を適用した方が有利であるため、透明導電層形成用塗液に用いる貴金属微粒子としては銀微粒子や金微粒子が主に利用されている。
【0008】
ただし、銀微粒子の場合、硫化や食塩水により劣化しやすいという耐候性の面から、単体での使用が制限される。他方、金微粒子、白金微粒子、ロジウム微粒子、ルテニウム微粒子、パラジウム微粒子等を適用した場合には、上記耐候性の問題はなくなるが、コスト面を考慮すると必ずしも最適とは言いがたい。
【0009】
そこで最近では、銀微粒子表面に、金若しくは白金の単体又は金と白金の複合体をコーティングした貴金属コート銀微粒子や、金と金以外の1種又は複数種の貴金属(例えば銀)から成る貴金属合金微粒子等が提案されている(特開平11−228872号公報、特開2000−268639号公報参照)。
【0010】
また、CRT等の表示装置においては、表示画面を見易くするために、その前面板表面に防眩処理を施して、画面の反射を抑えることも行われている。この防眩処理としては、反射光が入射光に対して破壊的干渉を生ずるように、高屈折率の透明導電層と低屈折率の透明コート層からなる透明2層膜の屈折率と膜厚とを制御する干渉法による防眩処理が一般的に行われている。
【0011】
尚、金属においては、光学定数(n−ik、n:屈折率,i=−1、k:消衰係数)の内、n(屈折率)の値は小さいが、kの値が大きい。このため、金属微粒子からなる透明導電層を用いた場合でも、上記透明2層膜において光の干渉による反射防止効果が得られる。
【0012】
更に、近年では、CRT等の表示装置において、上述した良好な導電性、低反射率等の諸特性に加えて、表示画面の平面化に伴い、その可視光透過率を100%より低い所定範囲(具体的には40〜95%、一般的には40〜75%)に調整することにより、画像のコントラストを向上させることが要請されている。このような要請に対しては、透明導電層形成用塗液に有色顔料微粒子等を配合することにより、透明導電層の透過率を制御することが一般に行われている。
【0013】
尚、平面CRTのフェースパネル(前面板)では、その外表面が平面で且つ内面は曲率を有し、パネル厚みが画面中央部と周辺部で異なっているため、フェースパネルに従来の着色ガラス(例えばセミティントガラス、透過率:約53%)を用いると、輝度の面内不均一を生じて画面が見難くなる。そこで、画像のコントラスト向上を図り、輝度の面内均一性を高めるために、高透過率のパネルガラスに上記低透過率の透明導電層を組合せることが要請されているのである。
【0014】
ところで、金属微粒子が適用された導電層は、本来、金属が可視光線に対し透明でないことから、上述した透明導電層における高透過率と低抵抗を両立させるためには、できるだけ少量の金属微粒子が透明導電層内において効率よく導電パスを形成していることが望ましい。つまり、溶媒と金属微粒子を主成分とする一般的な透明導電層形成用塗液を基板上に塗布し、乾燥させて得られる導電層の構造として、金属微粒子の層に多数の微小な空孔が導入された構造、即ちネットワーク(網目状)構造を有することが必要である。
【0015】
このようなネットワーク構造が形成されると低抵抗で且つ高透過率の透明導電層が得られるが、これは金属微粒子からなる網目状部分が導電パスとして機能する一方、網目状構造において形成された穴の部分が透過率を向上させる機能を果たすためと考えられている。
【0016】
そして、このような金属微粒子のネットワーク構造を形成させる手法としては、大別すると以下の2つの方法が挙げられる。
【0017】
(1)透明導電層形成用塗液の塗布及び乾燥の成膜過程において、金属微粒子同士を凝集させることでネットワーク構造を形成させる方法。
【0018】
即ち、金属微粒子は酸化物微粒子等に比べて凝集し易いため、透明導電層形成用塗液の溶剤組成等を適宜選定することによって、塗布及び乾燥の成膜過程において必然的にある程度の金属微粒子同士の凝集が起きて上記ネットワーク構造が得られる(特開平9−115438号公報、特開平10−1777号公報、特開平10−142401号公報、特開平10−182191号公報等参照)。更に、透明導電層形成用塗液に、凝集誘因剤、凝集促進高沸点溶剤等を添加し、積極的に金属微粒子同士の凝集を促進することもできる(特開平10−110123号公報参照)。
【0019】
(2)複数の金属微粒子が凝集した金属微粒子の凝集体を分散させた透明導電層形成用塗液を用い、これを塗布及び乾燥させることにより金属微粒子のネットワーク構造を形成させる方法。
【0020】
即ち、透明導電層形成用塗液として、1次粒子が均一に分散されずに、1次粒子が小さな孔を持つ形で集合した2次粒子の状態で分散されている金属微粒子の分散液を用いる(「工業材料」、Vol.44,No.9,1996,p68−71参照)。更に、金属微粒子が鎖状に凝集した金属微粒子群を予め分散させた透明導電層形成用塗液を用いる方法(特開2000−124662号公報参照)も知られている。
【0021】
上記した(1)と(2)の方法を比べると、(2)の方法は透明導電層形成用塗液中で金属微粒子の凝集体が予め完成されていることから、発達したネットワーク構造の形成が容易となる利点を有している。
【0022】
【特許文献1】
特開平8−77832号公報
【特許文献2】
特開平9−55175号公報
【特許文献3】
特開平11−228872号公報
【特許文献4】
特開2000−268639号公報
【特許文献5】
特開平9−115438号公報
【特許文献6】
特開平10−1777号公報
【特許文献7】
特開平10−142401号公報
【特許文献8】
特開平10−182191号公報
【特許文献9】
特開平10−110123号公報
【特許文献10】
特開2000−124662号公報
【非特許文献1】
「工業材料」、Vol.44,No.9,1996,p68−71
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
従来一般的な透明導電層形成用塗液であっても、上述のようにネットワーク構造を有する透明導電層を形成することはある程度可能であったが、透明導電層形成用塗液の成膜過程における貴金属微粒子同士のネットワーク化の制御は実際には困難な場合が多い。この制御を誤ると、ネットワーク構造による導電パスにおいて、貴金属粒子間の接触抵抗の増大、若しくはネットワークの部分的な切断が起こり、導電性の低下をもたらす。
【0024】
尚、上記特開2000−124662公報では、ネットワーク構造の形成を容易にするため、予め連鎖状に凝集させた貴金属微粒子を含む透明導電層形成用塗液を提案している。しかし、このような透明導電層形成用塗液においても、含有する貴金属微粒子の絶対数が少ない場合には上記凝集体同士が塗液の塗布・乾燥時に接合しにくいため、十分な導電パスを形成することは困難であった。
【0025】
また、過剰な凝集処理を施した透明導電層形成用塗液については、たとえ十分な導電パスが得られても、微粒子の分散安定性が悪いため、塗液の貯蔵安定性や塗布性に問題が生じることが多い。更に、ネットワーク構造についても、接触する貴金属粒子同士の融着が乾燥・焼成過程において不完全であった場合には、粒子間の接触抵抗が障害となって十分な導電パスが確保できず、優れた導電性は得られない。
【0026】
本発明は、この様な従来の問題点に着目してなされたものであり、従来一般的な透明導電層形成用塗液に比べ、より均一で且つ発達したネットワーク構造を容易に形成でき、高い透過率を維持しながら、低抵抗で導電性に優れ、透明導電層の製造コストの低減を可能とする透明導電層形成用塗液を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記した従来の問題点を解決するため鋭意研究を行った結果、貴金属微粒子を主な固形成分とする透明導電層形成用塗液において、その塗液内に極微量の銀単体微粒子を配合するだけで、従来よりも発達したネットワーク構造が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0028】
本発明が提供する透明導電層形成用塗液は、溶媒とこの溶媒に分散された平均粒径1〜100nmの金コート銀微粒子と銀単体微粒子とを含み、透明基板上に金コート銀微粒子のネットワーク構造を有する透明導電層を形成する透明導電層形成用塗液であって、上記金コート銀微粒子は鎖状に凝集しており、上記銀単体微粒子は上記金コート銀微粒子のネットワーク構造を発達形成させる機能を有し、且つ該銀単体微粒子は金コート銀微粒子100重量部に対して0.1〜5重量部含まれていることを特徴とするものである。
【0029】
上記本発明の透明導電層形成用塗液においては、前記銀単体微粒子の平均粒径が50nm以下であることを特徴とする
【0030】
また、上記本発明の透明導電層形成用塗液は、有色顔料微粒子を更に含むことができる。前記有色顔料微粒子としては、有色顔料微粒子が、カーボン、チタンブラック、窒化チタン、複合酸化物顔料、コバルトバイオレット、モリブデンオレンジ、群青、紺青、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料及びフタロシアニン系顔料から選択された少なくとも1種の微粒子であることが好ましい
【0031】
更に、本発明は、溶媒とこの溶媒に分散された平均粒径1〜100nmの金コート銀微粒子と銀単体微粒子とを含み、透明基板上に金コート銀微粒子のネットワーク構造を有する透明導電層を形成する透明導電層形成用塗液の製造方法であって、金コート銀微粒子が溶媒に分散された分散液にヒドラジン溶液を加え、金コート銀微粒子を鎖状に凝集させる工程と、得られた鎖状凝集金コート銀微粒子の分散液に過酸化水素溶液を加えてヒドラジンを分解除去する工程と、得られた鎖状凝集金コート銀微粒子分散液に更に銀単体微粒子を添加して、透明導電層における金コート銀微粒子のネットワーク構造を発達形成させる機能を付与する工程とを具備することを特徴とする透明導電層形成用塗液の製造方法を提供するものである
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明においては、溶媒に主な固形成分である銀単体以外の貴金属微粒子(以下、単に貴金属微粒子とも言う)を分散させた透明導電層形成用塗液に、更に極微量の銀単体微粒子を配合分散させることによって、上記貴金属粒子同士が局在化することなく均一に連結し、従来よりも発達したネットワーク構造を形成させることができる。この透明導電層形成用塗液は、固形成分濃度が低くても十分な導電パスを形成できるため、従来よりも高透過率且つ低抵抗な透明導電膜を安価に形成することが可能となる。
【0033】
透明導電層形成用塗液内に銀単体粒子を介在させることによって、貴金属粒子同士が局在化することなく均一に連結し、発達したネットワーク構造を形成するメカニズムは明らかではない。しかし、透明導電層形成用塗液の塗布・乾燥過程において、塗液内に分散する貴金属粒子と銀単体微粒子の間に強い斥力が働くことによって、貴金属粒子同士の局所的な凝集が抑制されることが分っており、このことから銀単体微粒子のζ(ゼータ)電位に起因するものと推測される。
【0034】
透明導電層形成用塗液における貴金属微粒子と銀単体微粒子の配合割合は、貴金属微粒子100重量部に対して銀単体微粒子0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部が更に好ましい。貴金属微粒子100重量部に対する銀単体微粒子の割合が0.1重量部未満では、塗布・乾燥過程において十分なネットワーク構造が形成されず、高導電性膜が得られない。一方、銀単体微粒子の割合が5重量部を超える場合には、銀単体微粒子が焼成過程で拡散しきれずに、酸化物(又は硫化物)となってネットワーク構造の連結部分等に残留しやすくなるため、接触抵抗が増大することによって十分な導電パスが得られない。
【0035】
尚、添加される銀単体微粒子は、上記のごとく透明導電層形成用塗液内に含まれる貴金属微粒子に対して極少量であるため、膜厚への影響は少ない。また、塗布・乾燥後の焼成過程(200℃程度)において、極微量の銀単体微粒子は貴金属微粒子のネットワークやシリカマトリクス中に速やかに拡散することから、完成されたネットワーク構造は上述した銀特有の耐候性に関する問題や、マイグレーション(移行現象)等を発現しにくいことが確認できた。
【0036】
銀単体微粒子の平均粒径は、50nm以下であることが望ましい。平均粒径が50nmを超えると、同じ重量比で添加した時の粒子数が極端に減少するため、貴金属微粒子同士の局所的な凝集を十分に抑制できず、発達したネットワーク構造を得ることができない。また、添加される銀単体微粒子は、その粒子径が大きいほど焼成過程で拡散しにくく、ネットワーク構造の連結部分等に酸化物(又は硫化物)として残留しやすくなるため、接触抵抗を増大させる危険性がある。尚、ここで言う平均粒径とは、透過電子顕微鏡(TEM)で観察される微粒子の平均粒径を示している。
【0037】
貴金属微粒子としては、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された貴金属の単体微粒子、あるいは銀と上記貴金属の少なくとも1種からなる貴金属の合金微粒子などが挙げられる。また、上記貴金属の少なくとも1種により銀微粒子表面がコートされた貴金属コート銀微粒子もこれに含まれる。
【0038】
貴金属微粒子は、その平均粒径が1〜100nmであることを要する。貴金属微粒子の平均粒径が1nm未満の場合、このような微粒子の製造は困難であるうえ、塗液中で凝集しやすいため実用的ではない。また、平均粒径が100nmを超えると、形成された透明導電層の可視光透過率が低くなり過ぎてしまい、仮に膜厚を薄く設定して可視光透過率を高めたとしても、その場合には表面抵抗が高くなり過ぎて実用的ではない。
【0039】
次に、本発明における透明導電層形成用塗液の製造方法を、貴金属微粒子が金コート銀微粒子である場合を例に説明する。まず、既知の方法[例えば、Carey−Lea法:Am. J. Sci.,37,38,47(1889)参照]により、銀微粒子のコロイド分散液を調製する。即ち、硝酸銀水溶液に硫酸鉄(II)水溶液とクエン酸ナトリウム水溶液の混合液を加えて反応させ、沈降物を濾過・洗浄した後、純水を加えることによって銀微粒子のコロイド分散液が得られる。次に、この銀微粒子コロイド分散液に、ヒドラジン等の還元剤溶液と金酸塩溶液を加えることにより、金コート銀微粒子の分散液が得られる。
【0040】
尚、必要により、上記金コーティング工程で、銀微粒子のコロイド分散液か金酸塩溶液の片方又は両方に、少量の分散剤を加えてもよい。また、上記銀微粒子コロイド分散液及び金コート銀微粒子分散液の調製方法は、最終的に平均粒径1〜100nmの金コート銀微粒子の分散液が得られれば任意の方法でよく、上記方法に限定されるものではない。
【0041】
その後、得られた金コート銀微粒子分散液は、透析、電気透析、イオン交換、限外濾過等の脱塩処理方法により、分散液内の電解質濃度を下げることが好ましい。電解質濃度を下げないと、コロイドは一般に電解質で凝集してしまうからであり、この現象はSchulze−Hardy則として知られている。このように電解質濃度を下げた金コート銀微粒子分散液は、減圧エバポレーター、限外濾過等の方法で濃縮処理し、更に、有機溶剤等の添加による成分調整(微粒子濃度、水分濃度等)を行い、金コート銀微粒子の分散濃縮液が調整される。
【0042】
ここで、好ましくは、金コート銀微粒子を予め連鎖状に凝集させる。即ち、金コート銀微粒子の分散濃縮液を撹拌しながら、ヒドラジン溶液を少量ずつ添加し、例えば室温で数分から数時間程度保持して金コート銀微粒子を鎖状に凝集させた後、過酸化水素溶液を添加してヒドラジンを分解することによって、鎖状凝集金コート銀微粒子の分散(濃縮)液を得ることができる。
【0043】
得られた鎖状凝集金コート銀微粒子分散(濃縮)液に、有機溶剤等を添加して微粒子濃度、水分濃度、高沸点有機溶剤濃度等の成分調整を行い、鎖状凝集金コート銀微粒子を含有する基本塗液とする。
【0044】
最後に、塗布・乾燥時において発達したネットワーク構造を形成させるために、この基本塗液に対して所定量の銀単体微粒子を添加し、本発明の透明導電層形成用塗液を調整する。添加する銀単体微粒子は、例えば上述のCarey−Lea法等により調整することができる。
【0045】
また、貴金属微粒子及び銀単体微粒子の分散安定性を向上させ、最終的な透明導電層形成用塗液のポットライフを延長させるために、高分子樹脂等を添加することも可能である。ただし、高分子樹脂を添加すると、得られる透明導電膜の強度、耐候性が若干低下する傾向がある。
【0046】
尚、ここでは貴金属微粒子が金コート銀微粒子である透明導電層形成用塗液の製造方法について説明したが、金以外の白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等の貴金属でコートされた貴金属コート銀微粒子についても、同様に製造することができる。また、貴金属微粒子が、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等の銀以外の貴金属単体微粒子、これらの貴金属と銀とからなる貴金属合金微粒子の場合についても、例えば上述のCarey−Lea法等により貴金属微粒子の分散液を調整して、同様に透明導電層形成用塗液を得ることができる。
【0047】
また、上記基本塗液等の成分調整に用いる有機溶剤としては、特に制限はなく、塗布方法や製膜条件により適宜に選定される。例えば、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGM−AC)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)等のグリコール誘導体、フォルムアミド(FA)、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明の透明導電層形成用塗液には、有色顔料微粒子を添加してもよい。塗液に有色顔料微粒子を添加すると、透明導電層が形成された透明導電性基材の可視光透過率を100%より低い所定範囲(例えば40〜95%、一般的には40〜75%)に調整できるため、良好な導電性、低反射率等の諸特性に加え、画像のコントラスト向上と輝度の面内均一性を高め、表示画面を更に見易くさせることができるため、近年のCRT画面の平面化に伴う要求に対応することが可能となる。
【0049】
有色顔料微粒子としては、カーボン、チタンブラック、窒化チタン、複合酸化物顔料、コバルトバイオレット、モリブデンオレンジ、群青、紺青、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料およびフタロシアニン系顔料から選択された1種以上の微粒子、あるいは更にその表面が酸化ケイ素でコーティング処理された微粒子を用いることができる。
【0050】
本発明の透明導電層形成用塗液は、通常の手法により、透明導電層を形成することができる。この透明導電層形成用塗液を適用して形成された透明導電層は、従来よりも発達した貴金属微粒子のネットワーク構造を有するため、高い透過率を維持しながら、低抵抗であって導電性に優れ、低反射率、高強度であるうえ、銀微粒子を含むにもかかわらず耐侯性に優れ、しかも欠陥の少ない良質な被膜である。
【0051】
特に、本発明の透明導電層形成用塗液を適用して透明基板上に透明導電層を形成した透明導電性基材は、良好な反射防止効果と電界シールド効果を有し、且つ可視光線域での透過光線プロファイルと耐候性にも優れているため、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置の前面板として好適である。
【0052】
一般に、表示装置の前面板として用いられる透明導電性基材は、ガラス基板、プラスチック基板等の透明基板と、透明基板上に形成された透明2層膜とで構成されている。また、透明2層膜は、平均粒径1〜100nmの貴金属微粒子を主成分とする透明導電層の下層と、この透明導電層上に形成された透明コート層の上層とで構成されている。
【0053】
そして、透明基板上に透明導電層の下層と透明コート層の上層とで構成される透明2層膜を形成するには、以下の方法が通常使用される。即ち、透明導電層形成用塗液を、透明基板(この透明基板は、例えば上述したCRTやPDPの前面板を構成する)上に、スプレーコート、スピンコート、ワイヤーバーコート、ドクターブレードコート等の手法にて塗布し、必要に応じて乾燥した後、例えばシリカゾル等を主成分とする透明コート層形成用塗布液を同様の手法によりオーバーコートする。次に、例えば50〜350℃程度の温度で加熱処理を施し、塗布層の硬化を行って透明2層膜を形成する。
【0054】
このようにシリカゾル等を主成分とする透明コート層形成用塗布液をオーバーコートしたとき、予め形成された透明導電層のネットワーク(網目状)構造の穴の部分に、オーバーコートしたシリカゾル液(このシリカゾル液は後の加熱処理により酸化ケイ素を主成分とするバインダーマトリックスとなる)が染み込むことにより、透過率の向上と導電性の向上が同時に達成される。また、ネットワーク構造の穴の部分を介して、透明基板と酸化ケイ素等のバインダーマトリックスとの接触面積が増大するため、透明基板とバインダーマトリックスの結合強度の向上も図られる。
【0055】
更に、貴金属微粒子が酸化ケイ素等を主成分とするバインダーマトリックス中に分散された透明導電層では、その光学定数(n−ik)における屈折率nはさほど大きくないが、消衰係数kが大きいため、透明導電層と透明コート層の透明2層膜構造により、その反射率を大幅に低下することができる。
【0056】
ここで、上記シリカゾルとしては、オルトアルキルシリケートに水や酸触媒を加えて加水分解し、脱水縮重合を進ませた重合物、あるいは既に4〜5量体まで重合を進ませた市販のアルキルシリケート溶液を、更に加水分解と脱水縮重合を進行させて得た重合物等を利用することができる。尚、脱水縮重合が過度に進行すると、溶液粘度が上昇して最終的には固化してしまうので、脱水縮重合の度合は透明基板上に塗布可能な上限粘度以下に調整する。ただし、脱水縮重合の度合は、膜強度や耐候性等を考慮すると、重量平均分子量で500〜3000程度が好ましい。
【0057】
これらのアルキルシリケート加水分解重合物は、透明2層膜の加熱焼成時に脱水縮重合反応がほぼ完結して、硬いシリケート膜(酸化ケイ素を主成分とする膜)になる。尚、シリカゾルに、弗化マグネシウム微粒子、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル等を加え、透明コート層の屈折率を調節して透明2層膜の反射率を変えることも可能である。
【0058】
このように、本発明の透明導電層形成用塗液を用いて形成した透明導電層と、透明コート層とからなる透明2層膜を具備した透明導電性基材は、例えば、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置における前面板等に用いることができる。
【0059】
【実施例】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、本文中の「%」は、透過率、反射率、ヘイズ値の(%)を除いて「重量%」を示し、また「部」は「重量部」を示している。
【0060】
[実施例1]
Carey−Lea法により、銀微粒子のコロイド分散液を調製した。具体的には、9%硝酸銀水溶液330gに、23%硫酸鉄(II)水溶液390gと37.5%クエン酸ナトリウム水溶液480gの混合液を加えて反応させ、沈降物を濾過・洗浄した後、純水を加えて、銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.15%)(A液)を調製した。この銀微粒子コロイド分散液(A液)を透過電子顕微鏡で観察したところ、銀微粒子の平均粒径は4.8nmであった。
【0061】
この銀微粒子コロイド分散液(A液)600gに、ヒドラジン1水和物(N・HO)の1%水溶液80.0gを加え、撹拌しながら金酸カリウム[KAu(OH)]水溶液(Au:0.075%)4800gと1%高分子分散剤水溶液2.0gの混合液を加え、表面を金単体でコーティングした金コート銀微粒子のコロイド分散液を得た。
【0062】
この金コート銀微粒子コロイド分散液を、イオン交換樹脂(三菱化学社製、商品名ダイヤイオンSK1B、SA20AP)で脱塩した後、限外濾過を行い、金コート銀微粒子の濃縮を行った。得られた液にエタノール(EA)を加えて、金コート銀微粒子の分散(濃縮)液(Ag−Au:1.6%、水:20.0%、EA:78.4%、)(B液)を得た。この金コート銀微粒子分散(濃縮)液(B液)を透過電子顕微鏡で観察したところ、金コート銀微粒子の平均粒径は6.2nmであった。
【0063】
金コート銀微粒子分散(濃縮)液(B液)60gを撹拌しながら、ヒドラジン水溶液(N・HO:0.75%)0.8g(1.6%のAg−Au分散液に対して100ppm)を1分間かけて添加した後、室温で15分間保持して金コート銀微粒子を鎖状に凝集させた。引き続き、過酸化水素水溶液(H:1.5%)0.6gを1分間かけて添加することで、ヒドラジンを分解させ、鎖状凝集金コート銀微粒子分散(濃縮)液(C液)を得た。
【0064】
この鎖状凝集金コート銀微粒子分散(濃縮)液(C液)を透過電子顕微鏡で観察した結果、金コート銀微粒子は数珠状に連なり、且つ一部が分岐した形状(長さ:20〜100μm[個々の鎖状凝集金コート銀微粒子における長さの最大値])を有していた。
【0065】
尚、上記金コート銀微粒子分散(濃縮)液(B液)にヒドラジン溶液を添加した際の金コート銀微粒子の安定性低下、及び鎖状凝集させた金コート銀微粒子分散(濃縮)液に過酸化水素溶液を添加した際の安定性向上は、それら分散(濃縮)液のゼータ電位の測定値から科学的に確認することができた。
【0066】
この鎖状凝集金コート銀微粒子分散(濃縮)液(C液)に、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)と、更に上記銀微粒子コロイド分散液(Ag:0.15%)(A液)を加え、試料1の透明導電層形成用塗液(AuコートAg微粒子:0.20%、Ag単体微粒子:0.009%、水:6.39%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.1%、EA:63.31%)を得た。
【0067】
尚、試料1の透明導電層形成用塗液におけるAg単体微粒子の含有量は、AuコートAg微粒子100重量部に対して4.5重量部である。
【0068】
次に、上記試料1の透明導電層形成用塗布液を、濾過精度(ポアサイズ)5μmのフィルターで濾過した後、35℃に加熱されたガラス基板(厚さ3mmのソーダライムガラス)上に、スピンコート(90rpmで10秒間、引き続き130rpmで80秒間)し、続けてシリカゾル液(D液)をスピンコート(150rpmで60秒間)した。その後、180℃で20分間硬化させて、金コート銀微粒子と銀単体微粒子を含有する透明導電層と、その上層の酸化ケイ素を主成分とする透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、即ち試料1の透明導電性基材を得た。
【0069】
上記シリカゾル液(D液)は、メチルシリケート51(コルコート社製商品名)19.6部、エタノール57.8部、1%硝酸水溶液7.9部、純水14.7部を用いて、SiO(酸化ケイ素)固形分濃度が10%で、重量平均分子量1050のものを調製し、最終的にSiO固形分濃度が0.8%となるように、イソプロピルアルコール(IPA)とn−ブタノール(NBA)の混合物(IPA/NBA=3/1)により希釈して得ている。また、上記ガラス基板は、使用前に酸化セリウム系研磨剤で研磨処理し、純水による洗浄・乾燥後、35℃に加熱して用いた。
【0070】
試料1の透明導電層形成用塗布液における金コート銀微粒子の含有量、銀単体微粒子の平均粒径とその添加量(金コート銀微粒子100重量部に対する重量部)を、下記表1に示した。また、試料1の透明導電性基材における透明2層膜の膜特性、即ち表面抵抗、可視光透過率、ヘイズ値、ボトム反射率/ボトム波長を下記表2に示した。
【0071】
本発明における透過率は、特に言及しない限り、透明基板を含まない透明2層膜だけの可視光透過率である。尚、下記表2に示す透明基板(ガラス基板)を含まない透明2層膜だけの可視光透過率は、次の計算式により求めている。即ち、透明基板を含まない透明2層膜だけの透過率(%)=[(透明基板ごと測定した透過率)/(透明基板の透過率)]×100
【0072】
また、透明2層膜の表面抵抗は、三菱化学(株)製の表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400)を用い測定した。可視光透過率とヘイズ値は、村上色彩技術研究所製のヘイズメーター(HR−200)を用いて測定した。反射率は、日立製作所(株)製の分光光度計(U−4000)を用いて測定した。また、鎖状凝集金コート銀微粒子の形状、粒子サイズ(長さ)は日本電子製の透過電子顕微鏡で評価した。
【0073】
[実施例2]
実施例1で得られた鎖状凝集金コート銀微粒子の濃縮液(C液)に、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)と、上記銀微粒子コロイド分散液(Ag:0.15%)(A液)を加え、試料2に係る透明導電層形成用塗液(AuコートAg粒子:0.20%、Ag単体粒子:0.01%、水:6.39%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.1%、EA:63.3%)を得た。
【0074】
尚、試料2の透明導電層形成用塗液におけるAg単体微粒子の含有量は、AuコートAg微粒子100重量部に対して5.0重量部である。
【0075】
この透明導電層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様にして、金コート銀微粒子と銀単体微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とする透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、即ち試料2の透明導電性基材を得た。
【0076】
この試料2の透明導電層形成用塗液の組成等を下記表1に示し、また、試料2の透明導電性基材における透明2層膜を実施例1と同様に評価した結果を下記表2に示した。
【0077】
[比較例1]
実施例1で得られた鎖状凝集金コート銀微粒子の濃縮液(C液)に、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、銀単体粒子を含まない試料1aの透明導電層形成用塗液(AuコートAg微粒子:0.20%、水:6.39%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.1%、EA:63.31%)を得た。
【0078】
この試料1aの透明導電層形成用塗液を用いた以外は実施例1と同様にして、金コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とする透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、即ち試料1aの透明導電性基材を得た。
【0079】
この試料1aの透明導電層形成用塗液の組成等を下記表1に、また、試料1aの透明導電性基材における透明2層膜を実施例1と同様に評価した結果を下記表2に示した。
【0080】
[比較例2]
実施例1で得られた鎖状凝集金コート銀微粒子の濃縮液(C液)に、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)と、上記銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.15%)(A液)を加え、試料1bの透明導電層形成用塗液(AuコートAg微粒子:0.20%、Ag単体微粒子:0.05%、水:6.39%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.1%、EA:63.26%)を得た。
【0081】
尚、試料1bの透明導電層形成用塗液におけるAg単体微粒子の含有量は、AuコートAg微粒子100重量部に対して25重量部である。
【0082】
この試料1bの透明導電層形成用塗液を用いた以外は実施例1と同様にして、金コート銀微粒子と銀単体微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とする透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、即ち試料1bの透明導電性基材を得た。
【0083】
この試料1bの透明導電層形成用塗液の組成等を下記表1に、また、試料1bの透明導電性基材における透明2層膜を実施例1と同様に評価した結果を下記表2に示した。
【0084】
[実施例3]
有色顔料である窒化チタン(TiN)微粒子(ネツレン株式会社製)4gと分散剤0.2gを、水25g及びエタノール10.8gと混合し、ジルコニアビーズと共にペイントシェーカー分散を行った後、上記イオン交換樹脂で脱塩し、分散粒径80nmの窒化チタン微粒子分散液を得た。
【0085】
次に、実施例1で得られた鎖状凝集金コート銀微粒子の濃縮液(C液)に、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)と、上記銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.15%)(A液)及び上記窒化チタン微粒子分散液を加え、試料3に係る透明導電層形成用塗液(AuコートAg微粒子:0.30%、Ag単体微粒子:0.005%、TiN微粒子:0.15%、水:7.92%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.1%、EA:61.53%)を得た。
【0086】
尚、試料3の透明導電層形成用塗液におけるAg単体微粒子の含有量は、AuコートAg微粒子100重量部に対して1.7重量部である。また、この透明導電層形成用塗液を透過電子顕微鏡で観察したところ、窒化チタン微粒子の平均粒径は20nmであった。
【0087】
この試料3の透明導電層形成用塗液を用いた以外は実施例1と同様にして、金コート銀微粒子、銀単体微粒子及び窒化チタン微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とする透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、即ち試料3の透明導電性基材を得た。
【0088】
この試料3の透明導電層形成用塗液の組成等を下記表1に示し、また、試料3の透明導電性基材における透明2層膜を実施例1と同様に評価した結果を下記表2に示した。
【0089】
[比較例3]
実施例1で得られた鎖状凝集金コート銀微粒子の濃縮液(C液)に、実施例3で得られた窒化チタン微粒子分散液と、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、銀単体微粒子を含まない試料3aに係る透明導電層形成用塗液(AuコートAg微粒子:0.30%、TiN微粒子:0.15%、水:7.92%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.1%、EA:61.53%)を得た。
【0090】
この試料3aの透明導電層形成用塗液を用いた以外は実施例1と同様にして、金コート銀微粒子と窒化チタン微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とする透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、即ち試料3aの透明導電性基材を得た。
【0091】
この試料3aの透明導電層形成用塗液の組成等を下記表1に、また、試料3aの透明導電性基材における透明2層膜を実施例1と同様に評価した結果を下記表2に示した。
【0092】
[実施例4]
銀微粒子コロイド分散液を調整する際に、原料の調整条件を実施例1と変えて別途調整することにより、銀微粒子の平均粒径が実施例1と異なる2種の銀微粒子コロイド分散液(A1液、A2液)を得た。これらの銀微粒子コロイド分散液を透過電子顕微鏡で観察した結果、片方(A1液)の銀微粒子の平均粒径は50nmであり、他方(A2液)の銀微粒子の平均粒径は60.5nmであった。
【0093】
実施例1で得られた鎖状凝集金コート銀微粒子の濃縮液(C液)に、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)と、上記別途調整した銀微粒子コロイド分散液(A1液又はA2液)を加え、Ag単体微粒子の平均粒径が異なる試料4と試料5の透明導電層形成用塗液(いずれも、AuコートAg微粒子:0.20%、Ag単体微粒子:0.003%、水:6.39%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.1%、EA:63.31%)を得た。
【0094】
尚、試料4及び試料5の透明導電層形成用塗液におけるAg単体微粒子の含有量は、AuコートAg微粒子100重量部に対して、共に1.5重量部である。
【0095】
この試料4及び試料5の透明導電層形成用塗液を用いた以外は実施例1と同様にして、金コート銀微粒子と銀単体微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とする透明コート層とで構成された透明2層膜付きのガラス基板、即ち試料4及び試料5の透明導電性基材を得た。
【0096】
この試料4及び試料5の透明導電層形成用塗液の組成等を下記表1に、また、試料4及び試料5の透明導電性基材における透明2層膜を実施例1と同様に評価した結果を下記表2に示した。
【0097】
【表1】
Figure 0004258281
【0098】
【表2】
Figure 0004258281
【0099】
上記表1及び表2から以下のことが分る。まず、従来と同様に銀単体微粒子を含有しない比較例の試料1aに係る透明2層膜の表面抵抗が3080Ω/□であるのに対し、銀単体微粒子を含有する実施例1〜2に係る試料1〜2の透明2層膜の表面抵抗は980〜1280Ω/□と低く、且つ可視光透過率はほとんど変化していない。このことから、試料1〜2に係る透明2層膜をブラウン管等の表示装置に適用した場合、輝度を損なわずに、従来よりも優れた電磁波シールド特性が得られることが分る。
【0100】
しかし、比較例の試料1bのように、透明導電層形成用塗液中の銀単体微粒子の金コート銀微粒子100部に対する添加量が5部を超えると、得られる透明2層膜の表面抵抗が56kΩ/□にまで急増することが分る。また、銀単体微粒子の平均粒径を変えた透明導電層形成用塗液においても、銀単体微粒子の平均粒径が50nmの試料4では透明2層膜の表面抵抗が試料1と大きな差はないが、平均粒径が60.5nmの試料5では2910Ω/□に上昇したことが分る。
【0101】
更に、有色顔料として窒化チタン微粒子を添加した透明導電層形成用塗液においても、従来と同様に銀単体微粒子を含有しない試料3aに係る透明2層膜の表面抵抗が3150Ω/□であるのに対し、銀単体微粒子を含有する実施例3に係る試料3の透明2層膜の表面抵抗は850Ω/□と低く、高導電性の有色系透明2層膜をより安価に形成できることが分る。
【0102】
尚、上記の各実施例では、貴金属微粒子として金コート銀微粒子を用いた透明導電層形成用塗液について記載したが、金以外の白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムでコートされた貴金属コート銀微粒子、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムの貴金属単体微粒子、又はこれらの貴金属と銀との貴金属合金微粒子を用いても、上記各実施例と同様に透明導電層形成用塗液を調整して、同様に可視光透過性及び導電性に優れた透明2層膜を得ることができた。
【0103】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の貴金属微粒子を主成分とする透明導電層形成用塗液に銀単体粒子を添加するだけで、より均一で且つ貴金属微粒子の発達したネットワーク構造を容易に形成でき、高透過率を維持しながら、低抵抗で導電性に優れた透明導電層形成用塗液を提供することができる。しかも、透明導電層形成用塗液は、銀単体微粒子を含むにもかかわらず耐侯性に優れ、貯蔵安定性及び塗布性も良好であって、透明導電層の製造コストの低減を図ることができる。

Claims (5)

  1. 溶媒とこの溶媒に分散された平均粒径1〜100nmの金コート銀微粒子と銀単体微粒子とを含み、透明基板上に金コート銀微粒子のネットワーク構造を有する透明導電層を形成する透明導電層形成用塗液であって、上記金コート銀微粒子は鎖状に凝集しており、上記銀単体微粒子は上記金コート銀微粒子のネットワーク構造を発達形成させる機能を有し、且つ該銀単体微粒子は金コート銀微粒子100重量部に対して0.1〜5重量部含まれていることを特徴とする透明導電層形成用塗液。
  2. 前記銀単体微粒子の平均粒径が50nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の透明導電層形成用塗液。
  3. 有色顔料微粒子を更に含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の透明導電層形成用塗液。
  4. 前記有色顔料微粒子が、カーボン、チタンブラック、窒化チタン、複合酸化物顔料、コバルトバイオレット、モリブデンオレンジ、群青、紺青、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料及びフタロシアニン系顔料から選択された少なくとも1種の微粒子であることを特徴とする、請求項3に記載の透明導電層形成用塗液。
  5. 溶媒とこの溶媒に分散された平均粒径1〜100nmの金コート銀微粒子と銀単体微粒子とを含み、透明基板上に金コート銀微粒子のネットワーク構造を有する透明導電層を形成する透明導電層形成用塗液の製造方法であって、
    金コート銀微粒子が溶媒に分散された分散液にヒドラジン溶液を加え、金コート銀微粒子を鎖状に凝集させる工程と、得られた鎖状凝集金コート銀微粒子の分散液に過酸化水素溶液を加えてヒドラジンを分解除去する工程と、得られた鎖状凝集金コート銀微粒子分散液に更に銀単体微粒子を添加して、透明導電層における金コート銀微粒子のネットワーク構造を発達形成させる機能を付与する工程とを具備することを特徴とする透明導電層形成用塗液の製造方法
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