JP4959067B2 - 透明低反射導電性被膜形成用塗布液、透明低反射導電性被膜付基材および表示装置 - Google Patents

透明低反射導電性被膜形成用塗布液、透明低反射導電性被膜付基材および表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、透明低反射導電性被膜形成用塗布液、および該塗布液を用いて得られる透明低反射導電性被膜付基材、該基材を備えた表示装置に関する。さらに詳しくは、帯電防止性、電磁遮蔽性、反射防止性および表示性能等に優れた透明低反射導電性被膜の形成に用いる透明低反射導電性被膜形成用塗布液、および該塗布液を用いて得られる透明低反射導電性被膜付基材、該基材を備えた表示装置に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
従来より、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板などの表示パネルのような透明基材の表面の帯電防止および反射防止を目的として、これらの表面に帯電防止機能および反射防止機能を有する透明被膜を形成することが行われていた。
ところで、陰極線管などから放出される電磁波が人体に及ぼす影響が、最近問題にされており、従来の帯電防止、反射防止に加えてこれらの電磁波および電磁波の放出に伴って形成される電磁場を遮蔽することが望まれている。
【0003】
これらの電磁波などを遮蔽する方法の一つとして、陰極線管などの表示パネルの表面に電磁波遮断用の導電性被膜を形成する方法がある。しかし、従来の帯電防止用導電性被膜であれば表面抵抗が少なくとも107Ω/□程度の表面抵抗を有していれば十分であるのに対し、電磁遮蔽用の導電性被膜では102〜104Ω/□のような低い表面抵抗を有することが必要であった。
【0004】
このように表面抵抗の低い導電性被膜を、従来のSbドープ酸化錫またはSnドープ酸化インジウムのような導電性酸化物を含む塗布液を用いて形成しようとすると、従来の帯電防止性被膜の場合よりも膜厚を厚くする必要があった。しかしながら、導電性被膜の膜厚は、10〜200nm程度の薄い膜厚にしないと反射防止効果は発現しないため、従来のSbドープ酸化錫またはSnドープ酸化インジウムのような導電性酸化物では、表面抵抗が低く、電磁波遮断性に優れるとともに、反射防止にも優れた導電性被膜を得ることが困難であるという問題があった。
【0005】
また、低表面抵抗の導電性被膜を形成する方法の一つとして、Agなどの金属微粒子を含む導電性被膜形成用塗布液を用いて基材の表面に金属微粒子含有被膜を形成する方法がある。この方法では、金属微粒子含有被膜形成用塗布液として、コロイド状の金属微粒子が極性溶媒に分散したものが用いられている。このような塗布液では、コロイド状金属微粒子の分散性を向上させるために、金属微粒子表面がポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはゼラチンなどの有機系安定剤で表面処理されている。しかしながら、このような金属微粒子含有被膜形成用塗布液を用いて形成された導電性被膜は、被膜中で金属微粒子同士が安定剤を介して接触するため、粒界抵抗が大きく、被膜の表面抵抗が低くならないことがあった。このため、製膜後、400℃程度の高温で焼成して安定剤を分解除去する必要があるが、安定剤の分解除去をするため高温で焼成すると、金属微粒子同士の融着や凝集が起こり、導電性被膜の透明性やヘーズが低下するという問題があった。また、陰極線管などの場合は、高温に晒すと劣化してしまうという問題もあった。
【0006】
さらに従来のAg等の金属微粒子を含む透明導電性被膜では、金属が酸化されたり、イオン化による粒子成長したり、また場合によっては腐食が発生することがあり、塗膜の導電性や光透過率が低下し、表示装置が信頼性を欠くという問題があった。
上記した導電性酸化物微粒子または金属微粒子からなる導電性被膜上には通常反射防止性能を付与して表示性能を向上するために、あるいは導電性被膜を保護するために反射防止膜あるいは保護膜が形成されている。
【0007】
このときの反射防止膜の形成には、下層の導電性被膜よりも屈折率の低い被膜形成成分を含む反射防止膜形成用塗布液が用いられ、たとえば被膜形成成分としては、樹脂、有機ケイ素化合物の加水分解物やこれらに低屈折粒子としてフッ化マグネシウムやシリカ粒子などを配合されて用いられている。
しかしながら、このように導電性被膜層と反射防止膜とを、たとえば導電性被膜層形成用塗布液を塗布乾燥し、ついで反射防止膜形成用塗布液を塗布乾燥して形成する場合は、工程が2重であるので経済性および生産効率が低く、また下層の導電性被膜層と上層の反射防止膜との密着性が不充分となったり、膜の強度が不充分となることがあった。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、平均粒子径の異なる異種の粒子を用いた塗布液を基材上に塗布して得られる被膜では、小さい粒子径の粒子が基材上に層を形成し、その上に大きな粒子径の粒子が層を形成することを発見し、小さい粒子として導電性微粒子を用い、大きい粒子として低屈折率粒子を用いることによって、帯電防止性および電磁波遮蔽性に優れるとともに反射防止性にも優れた透明導電性被膜が得られることを見出して本発明を完成するにいたった。
【0009】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、102〜108Ω/□程度の低い表面抵抗を有し、優れた帯電防止性、電磁遮蔽性および反射防止性を併せ持ち、信頼性にも優れた透明低反射導電性被膜を形成しうる経済性に優れた透明低反射導電性被膜形成用塗布液、透明低反射導電性被膜付基材および該基材を備えた表示装置を提供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】
本発明に係る透明低反射導電性被膜形成用塗布液は、
平均粒子径(D1)が1〜200nmの範囲にある導電性微粒子と、
平均粒子径(D2)が1.5〜300nmの範囲にあり、かつ前記導電性微粒子よりも屈折率の低い低屈折率粒子と、
極性溶媒とを含んでなり、
低屈折率粒子の平均粒子径(D2)と導電性微粒子の平均粒子径(D1)との比(D2)/(D1)が1.2〜10の範囲にあることを特徴としている。
【0011】
本発明では、前記導電性微粒子の屈折率(n1)と前記低屈折率粒子の屈折率(n2)との屈折率差((n1)−(n2))が0.1以上であることが好ましい。
また、前記導電性微粒子の密度(ρ1)と前記低屈折率粒子の密度(ρ2)の比(ρ1)/(ρ2)が、1〜10の範囲にあることが好ましい。
前記低屈折率粒子の屈折率(n2)は、1.45以下であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る透明低反射導電性被膜形成用塗布液は、さらに、マトリックス形成成分を含むことが好ましい。
本発明に係る透明低反射導電性被膜付基材は、前記記載の透明導電性被膜形成用塗布液を用いて、塗布し、乾燥し、加熱処理して得られることを特徴としている。
【0013】
本発明に係る表示装置は、前記記載の透明低反射導電性被膜付基材で構成された前面板を備え、透明低反射導電性被膜が該前面板の外表面に形成されていることを特徴としている。
【0014】
【発明の具体的説明】
以下、本発明について具体的に説明する。
透明低反射導電性被膜形成用塗布液
まず、本発明に係る透明低反射導電性被膜形成用塗布液について説明する。
本発明に係る透明低反射導電性被膜形成用塗布液は、平均粒子径(D1)が1〜200nmの範囲にある導電性微粒子と、平均粒子径(D2)が1.5〜300nmの範囲にあり、かつ前記導電性微粒子よりも屈折率の低い低屈折率粒子と極性溶媒とを含んでなり、低屈折率粒子の平均粒子径(D2)と導電性微粒子の平均粒子径(D1)との比(D2)/(D1)が1.2〜10の範囲にあることを特徴としている。
【0015】
このような粒子を含む塗布液を用いて被膜を形成すると、図1に示すように、被膜内の下層(基材側)では、選択的に導電性粒子を多く含む層が形成され、上層では低屈折率粒子を含む層が形成される。その結果、従来は、透明被膜と透明導電性被膜の2層を設けていたものが、1層被膜を形成するだけ双方の特性を具備したものが得られる。
[導電性微粒子]
本発明で用いる導電性微粒子としては、帯電防止性、電磁遮蔽性を示す導電性微粒子であれば従来公知の導電性微粒子を用いることができる。
【0016】
たとえば、金属微粒子や複合金属微粒子、導電性無機酸化物微粒子は好適に用いることができる。
前記複合金属微粒子を構成する2種以上の金属は、固溶状態にある合金であっても、固溶状態に無い共晶体であってもよく、合金と共晶体が共存していてもよい。このような複合金属微粒子は、金属の酸化やイオン化が抑制されるため、複合金属微粒子の粒子成長等が抑制され、複合金属微粒子の耐腐食性が高く、導電性、光透過率の低下が小さいなど信頼性に優れている。
【0017】
金属微粒子としてはAu、Ag、Pd、Pt、Rh、Ru、Cu、Fe、Ni、Co、Sn、Ti、In、Al、Ta、Sbなどの金属から選ばれる金属微粒子が挙げられる。
また、複合金属微粒子としては、Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Ru、Cu、Fe、Ni、Co、Sn、Ti、In、Al、Ta、Sbなどの金属から選ばれる少なくとも2種以上の金属からなる複合金属微粒子が挙げられる。好ましい2種以上の金属の組合せとしては、Au-Cu、Ag-Pt、Ag-Pd、Au-Pd、Au-Rh、Pt-Pd、Pt-Rh、Fe-Ni、Ni-Pd、Fe-Co、Cu-Co、Ru-Ag、Au-Cu-Ag、Ag-Cu-Pt、Ag-Cu-Pd、Ag-Au-Pd、Au-Rh-Pd、Ag-Pt-Pd、Ag-Pt-Rh、Fe-Ni-Pd、Fe-Co-Pd、Cu-Co-Pd などが挙げられる。
【0018】
導電性無機酸化物微粒子としては、たとえば酸化錫、Sb、FまたはPが ドーピングざれた酸化錫、酸化インジウム、SnまたはFがドーピングされた酸 化インジウム、酸化アンチモン、低次酸化チタンなどが挙げられる。
このような導電性微粒子の平均粒径(D1)は、1〜200nm、好ましくは2〜70nmの範囲にあることが望ましい。
【0019】
導電性微粒子が金属微粒子または複合金属微粒子である場合、平均粒径が200nmを越えると、金属による光の吸収が大きくなり、粒子層の光透過率が低下するとともにへーズが大きくなる。このため被膜付基材を、たとえば陰極線管の前面板として用いると、表示画像の解像度が低下することがある。また、複合金属微粒子の平均粒径が1nm未満の場合には粒子層の表面抵抗が急激に大きくなるため、本発明の目的を達成しうる程度の低抵抗値を有する被膜を得ることができないこともある。
【0020】
また、導電性微粒子が導電性無機酸化物微粒子である場合は、平均粒径が200nmを越えると、導電性微粒子層の粒子間隙が多くなり、このため導電性微粒子層としての屈折率が低下し、導電性微粒子層上に形成される低屈折率層との屈折率差が小さくなり、反射防止性能が不充分となることがあり、場合によってはヘーズが大きくなることがある。
【0021】
平均粒径が1nm未満の場合には、金属微粒子の場合と同様に粒子層の表面抵抗が急激に大きくなることがある。
前記導電性微粒子は密度(ρ1)が概ね2.5〜23g/cm3、好ましくは4〜22g/cm3の範囲にあることが望ましい。
[低屈折率粒子]
本発明では、導電性微粒子に加えて低屈折率粒子を混合して用いる。
【0022】
このような低屈折率粒子としては、導電性微粒子より屈折率の低い従来公知の金属酸化物粒子を用いることができる。
低屈折率粒子の平均粒子径(D2)は1.5〜300nmの範囲にあり、導電性微粒子の平均粒子径(D1)と低屈折率粒子の平均粒子径(D2)の比(D2)/(D1)が1.2〜10、好ましくは2〜8の範囲にある。
【0023】
低屈折率粒子の平均粒子径(D2)が1.5nm未満の場合は、粒子径が小さすぎ、前述した導電性微粒子との分離が不完全となり、透明導電性被膜の表面抵抗が不充分となったり、反射防止性能が不充分となることがある。
低屈折率粒子の平均粒子径(D2)が300nmを越えると、導電性微粒子層と低屈折率粒子層の密着性が不充分となり、また透明導電性被膜としての膜の強度が不充分となることがある。
【0024】
また、平均粒子径の比(D2)/(D1)が1.2未満の場合は、粒子径の差が小さすぎ、前述した導電性微粒子と低屈折率粒子の分離が不完全となり、透明導電性被膜の表面抵抗が不充分となったり、反射防止性能が不充分となることがある。
平均粒子径の比(D2)/(D1)が10を越えると、導電性微粒子層と低屈折率粒子層の密着性が不充分となり、また透明導電性被膜としての膜の強度が不充分となることがある。
【0025】
上記した導電性微粒子の屈折率(n1)と低屈折率粒子の屈折率 (n2)との屈折率差((n1)−(n2))は0.1以上、好ましくは0.2以上であることが望ましい。
屈折率差が0.1以上であれば、得られる透明低反射導電性被膜付基材は基材や低屈折率粒子の粒子径にもよるが、視感反射率が低く反射防止性能に優れている。
【0026】
さらに、前記低屈折率粒子の屈折率 (n2)は1.45以下、好ましくは1.41〜1.25であることが好ましい。低屈折率粒子の屈折率(n2)が1.45以下であれば、導電性微粒子が導電性無機酸化物微粒子であっても、多くの場合、屈折率差が0.2以上となり、このため反射防止性能に優れた透明導電性被膜が得られる。
【0027】
また、低屈折率粒子の密度(ρ2)は、導電性微粒子の密度(ρ1)との比(ρ1)/(ρ2)が1〜10、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜8の範囲にあることが望ましい。
密度の比(ρ1)/(ρ2)が1未満の場合は、粒子径比が前記範囲にあっても、導電性微粒子が下層に、低屈折率粒子が上層にと分離することが困難となり、導電性微粒子層に低屈折率粒子が混ざった場合は透明導電性被膜の表面抵抗が不充分となることがあり、低屈折率粒子層に導電性微粒子が混じった場合は透明導電性被膜の反射防止性能が不充分となることがある。
【0028】
密度の比(ρ1)/(ρ2)が10を越えると、上記のような2層分離が不完全となることはないが、2層の屈折率差が大きすぎ、このためボトム反射率(可視光の波長領域400〜700nmの中央波長500nm付近における反射率)は低いものの、視感反射率(可視光全域にわたる平均反射率)が高くなる傾向があり、目で感じる反射(映り込み)が強く感じられたり、反射色の色付を抑えることが困難となることがある。
【0029】
このような低屈折率粒子としては、たとえばシリカ、アルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア等の金属酸化物から構成される粒子が挙げられる。
なかでも、本願出願人の出願による特開平7−133105号公報に開示したシリカ系微粒子、特願2000−48277号で提案しているシリカ系微粒子は屈折率が1.40以下と低く、このようなシリカ系微粒子を用いて得られる透明低反射導電性被膜付基材は反射防止性能に優れ、視感反射率が低く、このため目で感じる反射(映り込み)は弱く、反射色の色付を抑えることができる。このシリカ系微粒子は真球状でかつ低密度であるので、導電性微粒子との粒子径比が前記範囲にあれば、透明低反射導電性被膜を形成する際に、導電性微粒子と混合した導電性被膜とならず、導電性微粒子が下層に、低屈折率粒子が上層にと分離した反射防止性に優れた透明低反射導電性被膜を形成することができる。
[極性溶媒]
本発明で用いられる極性溶媒としては、
水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
【0030】
透明低反射導電性被膜形成用塗布液中の導電性微粒子濃度は、導電性微粒子の密度および粒子径等によっても異なるが0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%の範囲にあることが望ましい。
また、同様に低屈折率粒子濃度は、密度および粒子径等によっても異なるが0.1〜3重量%、さらに好ましくは0.3〜2重量%の範囲にあることが望ましい。
【0031】
導電性微粒子の重量(WC)と低屈折率粒子の重量(WL)との重量比(WL/WC)は、粒子の密度によっても異なるが、0.1〜5、好ましくは0.2〜3の範囲にあることが望ましい。
上記のような重量および量比で導電性微粒子と低屈折率粒子を配合しておくと、導電性微粒子層の厚さが約5〜200nm、とくに10〜150nmの範囲となり、低屈折率粒子層の厚さが50〜300nm、とくに80〜200nmの範囲となるように、透明低反射導電性を形成できる。
【0032】
このような透明低反射導電性被膜形成用塗布液には、前記導電性微粒子以外にカーボン微粒子、染料、顔料など着色剤、フッ化マグネシウムなどの低屈折率材料からなる粒子などが含まれていてもよい。
これらのカーボン微粒子などの平均粒径は、前記導電性微粒子と同様の範囲にあることが好ましい。
【0033】
着色剤は、前記導電性微粒子1重量部当たり、0.5重量部以下、好ましくは0.2重量部以下の量で含まれていればよい。着色剤量が0.5重量部を超える場合は、透過率が低くなる過ぎることがあり、また得られる透明低反射導電性被膜の厚さが不均一になるとともに導電性が低下し電磁波遮蔽効果が低下することがある。
【0034】
本発明に係る透明低反射導電性被膜形成用塗布液には、被膜形成後の導電性微粒子と低屈折率粒子のバインダーとして作用するマトリックス形成成分が含まれていてもよい。
このようなマトリックス形成成分としては、シリカからなるものが好ましく、具体的には、下記式[1]で表されるアルコキシシランなどの有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物(部分加水分解物も含む)またはアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を脱アルカリして得られるケイ酸重縮合物などが挙げられる。
【0035】
aSi(OR')4-a [1]
(式中、Rはビニル基、アリール基、アクリル基、炭素数1〜8のアルキル基、水素原子またはハロゲン原子であり、R'はビニル基、アリール基、アクリル基、炭系数1〜8のアルキル基、−C24OCn2n+1(n=1〜4)または水素 原子であり、aは1〜3の整数である。)
このようなアルコキシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラオクチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメトキシメチル-3,3,3-トリフルオロプロピルシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0036】
上記のアルコキシシランの1種または2種以上を、たとえば水−アルコール混合溶媒中で酸触媒の存在下、加水分解すると、アルコキシシランの加水分解重縮合物であるマトリックス形成成分分散液が得られる。このようなマトリックス形成成分分散液に導電性微粒子と低屈折率粒子を分散させることによってマトリックス形成成を含む透明導電性被膜形成用塗布液が得られる。
【0037】
このマトリックス形成成分は、前記導電性微粒子と低屈折粒子の合計重量1重量部当たり、固形分として0.01〜0.5重量部、好ましくは0.03〜0.3重量部の量で含まれていればよい。またこのようなマトリックス形成成分の重量平均分子量は200〜5000、好ましくは400〜2000の範囲にあるものが望ましい。
【0038】
また、本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液では、使用される導電性微粒子が金属微粒子または複合金属微粒子である場合に、導電性微粒子の分散性を向上させるため、透明低反射導電性被膜形成用塗布液中に有機系安定剤が含まれていてもよい。このような有機系安定剤として具体的には、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、クエン酸などの多価カルボン酸およびその塩、複素環化合物あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0039】
このような有機系安定剤は、導電性微粒子1重量部に対し、0.005〜0.5重量部、好ましくは0.01〜0.2重量部含まれていればよい。有機系安定剤の量が0.005重量部未満の場合は充分な分散性が得られず、0.5重量部を超えて高い場合は導電性が阻害されることがある。
透明低反射導電性被膜形成用塗布液中の固形分濃度(導電性微粒子と低屈折率粒子および必要に応じて用いられるマトリックス形成成分、必要に応じて添加されるカーボン微粒子、染料、顔料などの添加剤の総量)は、液の流動性、塗布液中の導電性微粒子と低屈折率粒子などの粒状成分の分散性などの点から、15重量%以下、好ましくは0.15〜5重量%であることが好ましい。
【0040】
透明低反射導電性被膜付基材
次に、本発明に係る透明低反射導電性被膜付基材について具体的に説明する。
本発明に係る透明低反射導電性被膜付基材では、ガラス、プラスチック、セラミックなどからなるフィルム、シートあるいはその他の成形体などの基材上に、前記透明低反射導電性被膜形成用塗布液を用いて形成された透明低反射導電性被膜を有している。
【0041】
透明低反射導電性被膜では、導電性微粒子からなる導電性微粒子層と、その層上に前記低屈折率粒子からなる低屈折率粒子層とが一体化された透明低反射導電性被膜が形成されている。
透明低反射導電性被膜の膜厚は、20〜300nm、好ましくは40〜200nmの範囲にあることが望ましい。
【0042】
透明低反射導電性被膜では、常に明瞭とは限らないものの、透明導電性微粒子層と低屈折率粒子層とに分離している。
透明導電性微粒子層の厚さは、約5〜200nm、好ましくは10〜150nmの範囲にあることが望ましく、この範囲の厚さであれば帯電防止性、電磁遮蔽性に優れた透明低反射導電性被膜付基材を得ることができる。
【0043】
このような導電性微粒子層には、必要に応じて、上記導電性微粒子以外にカーボン微粒子などの微粒子、マトリックス成分を含んでいてもよく、具体的には、前記と同様のものが挙げられる。
低屈折率粒子層の厚さは、50〜300nm、好ましくは80〜200nmの範囲にあることが好ましい。
【0044】
このような低屈折率粒子層は、前記した低屈折率粒子からなっている。また低屈折率粒子のバインダーとして作用するマトリックス成分が含まれていてもよい。このようなマトリックス成分としては、シリカからなるものが好ましく、具体的には、アルコキシシランなどの有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物またはアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を脱アルカリして得られるケイ酸重縮合物、あるいは塗料用樹脂などが挙げられる。
【0045】
このマトリックスは、前記低屈折率粒子1重量部当たり、0.01〜3重量部、好ましくは0.03〜2重量部の量で含まれていればよい。
本発明では、マトリックス成分としては、特に加水分解性有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物、またはアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を脱アルカリして得られるケイ酸重縮合物からなるシリカ系マトリックス成分が好ましい。このような低屈折率層が形成された透明低反射導電性被膜付基材は、反射防止性能に優れている。
【0046】
また、上記低屈折率粒子層中には、必要に応じて、フッ化マグネシウムなどの低屈折率材料で構成された微粒子、染料、顔料などの添加剤が含まれていてもよい。
基材上に設けられた透明低反射導電性被膜の表面に、さらにフッ化マグネシウム、シリカなどの低屈折率被膜がさらに設けられていてもよい。
【0047】
このような透明低反射導電性被膜付基材は、前記した透明低反射導電性被膜形成用塗布液を基材上に塗布・乾燥することによって形成することができる。
透明低反射導電性被膜を形成する方法としては、前記透明低反射導電性被膜形成用塗布液をディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法などの方法で、基材上に塗布したのち、常温〜約90℃の範囲の温度で乾燥する。
【0048】
透明低反射導電性被膜形成用塗布液中に上記のようなマトリックス形成成分が含まれている場合には、マトリックス形成成分の硬化処理を行ってもよい。
硬化処理としては、このような透明低反射導電性被膜形成用塗布液を塗布して形成した被膜を、乾燥時、または乾燥後に、150℃以上で加熱するか、未硬化の被膜に可視光線よりも波長の短い紫外線、電子線、X線、γ線などの電磁波を照射するか、あるいはアンモニアなどの活性ガス雰囲気中に晒してもよい。このようにすると、マトリックス形成成分の硬化が促進され、得られる被膜の硬度が高くなる。
【0049】
表示装置
本発明に係る透明低反射導電性被膜付基材は、帯電防止、電磁遮蔽に必要な101〜108Ω/□の範囲の表面抵抗を有し、かつ可視光領域および近赤外領域で充分な反射防止性能を有する透明低反射導電性被膜付基材は、表示装置の前面板として好適に用いられる。
【0050】
本発明に係る表示装置は、ブラウン管(CRT)、蛍光表示管(FIP)、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶用ディスプレイ(LCD)などのような電気的に画像を表示する装置であり、上記のような透明低反射導電性被膜付基材で構成された前面板を備えている。
従来の前面板を備えた表示装置を作動させると、前面板に画像が表示されると同時に電磁波が前面板から放出され、この電磁波が観察者の人体に影響を及ぼすが、本発明に係る表示装置では、前面板が102〜104Ω/□の表面抵抗を有する透明導電性被膜付基材で構成されている場合は、このような電磁波、およびこの電磁波の放出に伴って生じる電磁場を電磁場を効果的に遮蔽することができる。
【0051】
また、前面板が104〜108Ω/□の表面抵抗を有する透明低反射導電性被膜付基材で構成されている場合は、優れた帯電防止性を発揮する。
また、表示装置の前面板で反射光が生じると、この反射光によって表示画像が見にくくなるが、本発明に係る表示装置では、前面板が可視光領域および近赤外領域で充分な反射防止性能を有する透明低反射導電性被膜付基材で構成されているので、このような反射光を効果的に防止することができる。
【0052】
さらに、ブラウン管の前面板が、本発明に係る透明低反射導電性被膜付基材で構成され、この透明低反射導電性被膜に少量の微粒子カーボン、染料または顔料が含まれている場合には、これらの微粒子カーボン、染料または顔料がそれぞれ固有な波長の光を吸収し、これによりブラウン管から放映される表示画像のコントラストを向上させることができる。
【0053】
【発明の効果】
本発明による透明低反射導電性被膜形成用塗布液を用いると、透明低反射導電性被膜形成用塗布液には粒子径の小さな導電性微粒子と、大きな粒子径の低屈折率粒子が含まれているので、この塗布液を基材上に塗布し、乾燥して得られる透明低反射導電性被膜は、基材上に導電性微粒子層、導電性微粒子層上に低屈折率粒子層が一体化して形成された透明低反射導電性被膜を、1種の塗布液を使用し、一回の塗工で形成することができる。このため、従来の塗布液では2回塗装工程(導電性被膜と透明被膜)を必要であったものが1回のみの塗工で充分であり、被膜形成工程が著しく簡素化できる。
【0054】
本発明に係る透明低反射導電性被膜形成用塗布液を用いて形成された透明低反射導電性被膜付基材は、上記構成を有するため優れた帯電防止性、電磁遮蔽性および反射防止性を有している。
このような透明導電性被膜付基材を表示装置の前面板として用いれば、電磁遮蔽性に優れるとともに反射防止性にも優れた表示装置を得ることができる。
【0055】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
【製造実施例】
) 導電性微粒子 (A-1) 分散液の調製
錫酸カリウム333gと吐酒石酸(K[Sb(C4H2O6)(OH2)])69.5gとを純水1,019gに溶解させ、錫酸カリウムと吐酒石酸の水溶液を調製した。ついで、50℃に保持された1,876gの純水中に濃硝酸を添加して溶液のpHを10に維持しながら、上記錫酸カリウムおよび吐酒石の水溶液を12時間かけて全量添加して反応させ、アンチモン含有酸化スズ水和物を得た。
【0057】
このアンチモン含有酸化スズ水和物を反応液から限外濾過膜で濾過し、得られた濾過ケーキを純水で洗浄した後、空気中で550℃の温度で3時間焼成し、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)微粉末を得た。
得られたアンチモンドープ酸化スズ(ATO)微粉末400gを、40gの水酸化カリウムを含む水溶液1,600g中に加え、30℃に保持しながらサンドミルで6時間撹拌し、アンチモンドープ酸化スズゾルを得た。このゾルをイオン交換樹脂で脱イオン処理し、表1に示す平均粒子径、固形分濃度の導電性微粒子(A-1)分散液を調製した。
【0058】
導電性微粒子 (A-2) 分散液の調製
着色剤・導電性微粒子(A-2)としてカーボン微粒子(東海カーボン(株)製)を濃度が20重量%となるようにエタノールに分散させて導電性微粒子(A-2)分散液を調製した。
導電性微粒子 (A-3) 分散液の調製
メタノール・水混合溶媒(メタノール40重量部/60重量部)に、あらかじめポリビニルピロリドンを複合金属1重量部当たり0.01重量部となるように加え、 分散液中の複合金属微粒子の濃度が金属換算で2重量%であり、銀とパラジウムの重量比が7:3となるように、硝酸銀と硝酸パラジウムを添加し、次いで還流器付フラスコで90℃、窒素雰囲気下5時間加熱して、導電性微粒子(A-3)の分散液を得た。
【0059】
5時間加熱した後、還流を止め、加熱しながらメタノールを除去し、水を加えて表1に示す濃度の導電性微粒子(A-3)の分散液を調製した。
導電性微粒子 (A-4) 分散液の調製
硝酸インジウム79.9gを水686gに溶解して得られた溶液と、錫酸カリウム12.7gを濃度10重量%の水酸化カリウム溶液に溶解して得られた溶液 とを調製し、これらの溶液を、50℃に保持された1000gの純水に2時間かけて添加した。この間、系内のpHを11に保持した。得られたSnドープ酸化インジウム水和物分散液からSnドープ酸化インジウム水和物を濾別・洗浄した後、乾燥し、次いで空気中で350℃の温度で3時間焼成し、さらに空気中で600℃の温度で2時間焼成することによりSnドープ酸化インジウム微粒子を得た。 これを濃度が30重量%となるように純水に分散させ、さらに硝酸水溶液でpHを3.5に調製した後、この混合液を30℃に保持しながらサンドミルで、4時間粉砕してゾルを調製した。次に、このゾルをイオン交換樹脂で処理して硝酸イオンを除去し、純水を加えて表1に示す濃度のSnドープ酸化インジウム微粒子(A-4)の分散液を調製した。
【0060】
得られた微粒子の特性を表1に示す。なお、微粒子の粒子径は、マイクロトラック粒度分析計((株)日機装製)を使用し、評価した。また屈折率は、上記した方法により評価した。
【0061】
【表1】
Figure 0004959067
【0062】
) 低屈折率粒子 (B-1,B-2,B-5) 分散液の調製
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:SI−30、平均粒子径12nm)を両性イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオン SMNUPB)で処理し、濃度20重量%の低屈折率粒子(B-1)の分散液を調製した。
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:SS−120、平均粒子径120nm)を両性イオン交換樹脂で処理し、濃度18重量%の低屈折率粒子(B-2)の分散液を調製した。
【0063】
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:SI−550、平均粒子径5nm)を両性イオン交換樹脂で処理し、濃度20重量%の低屈折率粒子(B-5)の分散液を調製した。
低屈折率粒子 (B-3) 分散液の調製
酸化チタンコロイド(触媒化成工業(株)製:HPW-15R、平均粒子径15nm)を両性イオン交換樹脂で処理し、濃度20重量%の低屈折率粒子(B-3)の分散液を調製した。
【0064】
低屈折率粒子 (B-4) 分散液の調製 ( 外殻層内部に空洞となっている粒子 )
平均粒径5nm、SiO2濃度20重量%のシリカゾル10gと純水190gとを混合して反応母液を調製し、95℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として1.5重量%のケイ酸ナトリウム水溶液24,900gと、Al23として0.5重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液36,800gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を95℃に保持した。反応液のpHは、ケイ酸ナトリウムおよびアルミン酸ナトリウムの添加直後、12.5に上昇し、その後、ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のSiO2・Al23多孔質物質前駆体粒子の分散液(F)を調製した。
【0065】
次いで、この多孔質物質前駆体粒子の分散液(F)500gを採取し、純水1,700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2 濃度3.5重量%)3,000gを添加して多孔質物質前駆体粒子表面にシリカ保護膜を形成した。得られた多孔質物質前駆体粒子の分散液を、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13重量%に調整したのち、多孔質物質前駆体粒子の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(35.5重量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行ったのち、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、粒子前駆体分散液を調製した。
【0066】
上記粒子前駆体分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750gおよび28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO2 28重量%)104gを添加し、粒子前駆体表面にエチルシリケートの加水分解重縮合物でシリカ外殻層を形成することによって、外殻層内部に空洞を有する粒子を作製した。次いで、エバポレーターで固形分濃度5重量%まで濃縮した後、濃度15重量%のアンモニア水を加えてpH10とし、オートクレーブで180℃、2時間加熱処理し、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20重量%の低屈折率粒子(B-4)の分散液を調製した。
【0067】
得られた低屈折率粒子(B-1)〜(B-5)の特性について表2に示す。
粒子の粒子径は、マイクロトラック粒度分析計((株)日機装製)を使用し、評価した。また、屈折率は、上記した方法で評価した。
【0068】
【表2】
Figure 0004959067
【0069】
低屈折率粒子の屈折率の測定方法 ( )
(1)後述するマトリックス形成成分液(C-1)と無機化合物粒子とを、酸化物換算の重量比(マトリックス(SiO2):無機化合物粒子(MOx+SiO2))が、それぞれ100:0、90:10、80:20、60:40、50:50、25:75となるように、混合した屈折率測定用塗布液を調製した。
(2)各塗布液を、表面を50℃に保ったシリコンウェハー上に300rpm、スピナー法で各々塗布し、次いで160℃で30分加熱処理した後、エリプソメーターで形成した屈折率測定用被膜の屈折率を測定した。
(3)得られた屈折率と粒子混合割合(粒子:(MOx+SiO2)/[粒子:(MOx+SiO2)+マトリックス:SiO2])をプロットし、外挿によって粒子が100%のときの屈折率を求める。
(4)空隙率は、求めた屈折率を用いて、純粋なSiO2の屈折率(1.45)との差から、空気に換算して含まれている空隙を算出して求めた。
【0070】
導電性微粒子の屈折率の測定方法 (II)
(1)導電性微粒子の濃度2重量%のエタノール分散液を調製した。
(2)上記分散液を塗布液とし、表面を50℃に保ったシリコンウェハー上に300rpm、スピナー法で各々塗布し、次いで160℃で30分加熱処理した後、エリプソメーターで形成した屈折率測定用被膜の屈折率を測定した。
) マトリックス形成成分液 (C-1) の調製
正珪酸エチル(SiO2:28重量%)50g、エタノール194.6g、濃硝酸1.0gおよび純水34gの混合溶液を室温で1時間攪拌してSiO2濃度5重量%のマトリックス形成成分を含む液(C-1)を調製した。
【0071】
マトリックス形成成分液 (C-2) の調製
正珪酸メチル(SiO2:51重量%)9.80g、エタノール73.6g、濃塩酸 4.7gおよび純水11.9gを混合し、50℃で2時間攪拌し、SiO2濃度5重量%のマトリックス形成成分液(C-2)を調製した。
【0072】
【表3】
Figure 0004959067
【0073】
【実施例1〜8、比較例1〜4】
透明低反射導電性被膜形成用塗布液 (D-1) (D-13) の調製
表1に示す各導電性微粒子の分散液と、表2に示す各低屈折率粒子分散液と上記表3に示すマトリックス形成成分液(C-1)と、混合溶媒(エタノール:プロピレングリコールモノメチルエーテル:N,N-ジメチルホルムアミド:N-メチルピロリドン=6:3:1.5:0.5)を、混合して表4に示す組成の透明低反射導電性被膜形成用塗布液(D-1)〜(D-13)を調製した。
【0074】
透明低反射導電性被膜付パネルガラスの製造
ブラウン管用パネルガラス(14")の表面を40℃で保持しながら、スピナー法で100rpm、90秒の条件で上記透明低反射導電性被膜形成用塗布液(D-1)〜(D-11)をそれぞれ塗布し乾燥した。また、塗布液(D-12)、(D-13)については、塗布液(D-12)を塗布した後乾燥し、表面を40℃で保持しながら塗布液(D-13)を塗布し乾燥した。塗布液(D-12)、(D-13)から得られた被膜の厚さは、順に120nm、80nmであり、合計膜厚は約200nmであった。
【0075】
次いで、表4に示す条件で焼成して透明低反射導電性被膜付基材を得た。
これらの透明導電性被膜付基材の表面抵抗を表面抵抗計(三菱油化(株)製:LORESTA)で測定し、ヘーズをへーズコンピューター(日本電色(株)製:3000A)で測定した。透過率は日本分光(株)製:U-Vest560で測定した。
反射率は反射率計(大塚電子(株)製:MCPD-2000)を用いて測定し、波長400〜700nmの範囲における平均反射率を視感反射率として表示した。
【0076】
消しゴム強度
また、上記で得た透明低反射導電性被膜付基材の被膜上に消しゴム(ライオン(株)製:1K)をセットし、1±0.1Kgの荷重をかけ、約25mmのストロークで25往復させた。このとき発生する削り屑は、その都度高圧エアーで除去した。
【0077】
消しゴムを25往復させた後、1000ルックスの照明下で、被膜表面から45cm離れて表面の目視観察を行った。
Figure 0004959067
【0078】
Figure 0004959067
結果をあわせて表4に示す。
【0079】
【表4】
Figure 0004959067
【0080】
表4より、本発明に係る透明低反射導電性被膜形成用塗布液によれば、視感反射率が低く、被膜強度の高い導電性被膜を、1回の塗布液の塗工で形成できる。
このため、従来の塗布液では2回塗装した工程(導電性被膜と透明被膜)が著しく簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る透明低反射導電性被膜形成用塗布液を用いて形成した透明低反射導電性被膜の概略断面図を示す。

Claims (6)

  1. 平均粒子径(D1)が1〜200nmの範囲にある導電性微粒子と、
    平均粒子径(D2)が1.5〜300nmの範囲にあり、かつ前記導電性微粒子よりも屈折率の低い低屈折率粒子と、
    極性溶媒とを含んでなり、
    低屈折率粒子の平均粒子径(D2)と導電性微粒子の平均粒子径(D1)との比(D2)/(D1)が1.2〜10の範囲にあり、
    前記導電性微粒子の密度(ρ1)と前記低屈折率粒子の密度(ρ2)の比(ρ1)/(ρ2)が1〜10の範囲にあり、
    導電性微粒子の重量(W C )と低屈折率粒子の重量(W L )との重量比(W L /W C )が、0.1〜5の範囲にあることを特徴とする透明低反射導電性被膜形成用塗布液。
  2. 前記導電性微粒子の屈折率(n1)と前記低屈折率粒子の屈折率(n2)との屈折率差((n1)−(n2))が0.1以上であることを特徴とする請求項1に記載の透明低反射導電性被膜形成用塗布液。
  3. 前記低屈折率粒子の屈折率(n2)が1.45以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明低反射導電性被膜形成用塗布液。
  4. さらに、マトリックス形成成分を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明低反射導電性被膜形成用塗布液。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性被膜形成用塗布液を用いて、塗布し、乾燥し、加熱処理して得られることを特徴とする透明低反射導電性被膜付基材。
  6. 請求項5に記載の透明低反射導電性被膜付基材で構成された前面板を備え、透明低反射導電性被膜が該前面板の外表面に形成されていることを特徴とする表示装置。
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