JP4372301B2 - 透明導電性被膜形成用塗布液、透明導電性被膜付基材および表示装置 - Google Patents

透明導電性被膜形成用塗布液、透明導電性被膜付基材および表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、透明導電性被膜付基材、透明導電性被膜形成用塗布液および該基材を備えた表示装置に関し、さらに詳しくは、透明導電性被膜の屈折率が、基材側から透明被膜側にむかってなだらかに低下しており、このため反射防止性能、表示性能、膜強度に優れた透明導電性被膜付基材および該基材を形成しうる透明導電性被膜形成用塗布液、該基材で構成された前面板を備えた表示装置に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
従来より、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板などの表示パネルのような透明基材の表面の帯電防止を目的として、これらの表面に帯電防止機能を有する被膜を形成することが行われている。帯電防止機能を有する被膜では概ね107〜1012Ω/□程度の表面抵抗を有することが必要である。
【0003】
また、陰極線管などからは電磁波が放出されていることが知られており、前記した帯電防止に加えて、これらの電磁波および電磁波の放出に伴って形成される電磁場を遮蔽することが望まれている。
これらの電磁波などを遮蔽する方法の一つとして、陰極線管などの表示パネルの表面に電磁波遮断用の導電性被膜を形成する方法が知られており、このような電磁遮蔽用の導電性被膜では102〜104Ω/□のような低い表面抵抗を有することが必要とされている。
【0004】
このような導電性被膜を形成する方法の一つとして、ITOなどの導電性金属酸化物微粒子を含む導電性被膜形成用塗布液を用いて基材の表面に導電性金属酸化物微粒子含有被膜を形成する方法がある。この方法では、金属酸化物微粒子含有被膜形成用塗布液として、コロイド状の金属酸化物微粒子が極性溶媒に分散したものが用いられていた。
【0005】
また、さらに低い表面抵抗の導電性被膜を形成する方法の一つとして、Agなどの金属微粒子を含む導電性被膜形成用塗布液を用いて基材の表面に金属微粒子含有被膜を形成する方法がある。この方法では、金属微粒子含有被膜形成用塗布液として、コロイド状の金属微粒子が極性溶媒に分散したものが用いられていた。
【0006】
しかしながら、Ag等の金属微粒子を含む透明導電性被膜では、金属が酸化されたり、イオン化による粒子成長したり、また場合によっては腐食が発生することがあり、塗膜の導電性や光透過率が低下し、表示装置が信頼性を欠くという問題があった。また、導電性酸化物粒子を用いた被膜は、反射防止性能が不充分であった。
【0007】
そこでこのような導電性被膜上にさらに導電性被膜よりも屈折率の低い透明被膜を設けて反射防止を行うとともに、導電性被膜を保護することが行われている。
しかしながら、従来の透明被膜形成用塗布液を用いて透明被膜が形成されている場合は、下層がITOなどの導電性微粒子を含む導電層であると、可視光(波長域:400nm〜700nm)域の中央500nm付近では反射率が1%程度と高い上に、400nmおよび700nm波長付近になるとさらに反射率が高くなるという問題があった。そこで、波長500nm付近における反射率(ボトム反射率ということもある)に加えて可視光全域にわたる平均反射率(視感反射率ということもある)の低減が求められている。
【0008】
また、下層が金属微粒子を含む導電層であると、ボトム反射率は0.2%程度と低いものの、400nmおよび700nm付近の反射率が高く、視感反射率としても0.5%程度と高いため、目で感じる反射(映り込み)は強く感じられ、このためさらなる反射防止性能の向上が求められている。
一方、MgF2などの低屈折率膜を気相法により導電層表面に設ける方法が知られているが、この方法では、設備的に経済性が低下し、また化学的耐久性が低いなどの問題がある。
【0009】
さらに、前記透明被膜の上にアンチグレア膜を設けて光を乱反射させて視感反射率を低下させるなどの方法もあるが、この方法では表示画像の解像度が落ちたり、経済性が低下するなどの問題がある。また、屈折率の異なる透明被膜を屈折率の高いものから順に導電性層の表面に形成する方法もあるが、この場合では、工程が煩雑であり、経済性の点で不充分である。
【0010】
なお、本発明者等は先に、多孔質の微粒子の表面をシリカで被覆した低屈折率の複合酸化物微粒子を被膜に含んでなる低反射用の基材を開示している(特開平7−133105号公報)が、さらなる反射防止性能にすぐれた被膜付基材の開発が望まれている。
しかしながら、いずれの方法においてもボトム反射率および視感反射率がともに優れたものは得られていなかった。
【0011】
そこで、本発明者等は、透明導電性被膜付基材について鋭意検討した結果、透明導電性被膜と透明被膜との間に、特定の大きさおよび屈折率を有する酸化物粒子を存在させることによって、屈折率の異なる複数の被膜を形成することなく、被膜底面から被膜表面に向かって該被膜の屈折率が順次低下する傾斜屈折率膜が形成でき、この傾斜屈折率膜を形成すれば、ボトム反射率とともに視感反射率が低く、しかも本来の目的である帯電防止性能または電磁遮蔽性能に優れた基材が得られることを見いだして本発明を完成するに至った。
【0012】
【発明の目的】
本発明は、視感反射率が低く、耐久性に優れた透明導電性被膜が形成され、このため映り込みが少なく、解像度が向上し、疲労感を低減できる等表示性能に優れた液晶表示装置を形成しうる透明導電性被膜付基材、該透明導電性被膜を形成しうる透明導電性被膜形成用塗布液および前記透明導電性被膜付基材を備えた表示装置を提供することを目的としている。
【0013】
【発明の概要】
本発明に係る透明導電性被膜付基材は、
基材と、該基材表面に形成された透明導電性被膜と、該透明導電性被膜表面に形成された透明被膜とからなり、
前記透明導電性被膜および透明被膜が、基材側から透明被膜側に向かって屈折率が順次低下する傾斜屈折率膜であることを特徴としている。
【0014】
前記傾斜屈折率膜を構成する透明導電性被膜が、金属微粒子と酸化物粒子とを含み、
(i)酸化物粒子の屈折率(Ro)と、金属微粒子の屈折率(Rm)と、透明被膜の屈折率(Rt)とが、下記式(1)で表される関係を満足し、
t<Ro<Rm …(1)
(ii)酸化物粒子の平均粒子径(Do)と、透明導電性被膜の厚さ(Le)と、透明被膜の厚さ(Lt)とが、下記式(2)で表される関係を満足し、
1.2Le<Do<5Le …(2)
(ただし、DoはLe+Ltを超えない)
(iii)酸化物粒子の平均粒子径(Do)と、金属微粒子の平均粒子径(Dm)とが下記式(3)で表される関係を満足する
2Dm<Do<200Dm …(3)
ことが好ましい。
【0015】
また、透明被膜の屈折率は、1.45以下であることが好ましい。
このような透明被膜は、無機酸化物マトリックスとともに、
(i)シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる多孔質の核粒子と、該核粒子表面のシリカ被覆層とからなる積層粒子、または、
(ii)内部に空洞を有し、かつ空洞内に溶媒および/または気体が充填された空洞粒子を含み、
かつ前記積層粒子または空洞粒子の平均粒子径が5〜300nmの範囲にあり、積層粒子のシリカ被覆層の厚さまたは空洞粒子の粒子壁の厚さが1〜20nmの範囲にあることが好ましい。
【0016】
本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液は、金属微粒子と酸化物粒子と極性溶媒とからなる透明導電性被膜形成用塗布液であって、
(i)酸化物粒子の屈折率(Ro)と、金属微粒子の屈折率(Rm)とが、下記式(1)で表される関係を満足し、
o<Rm …(1)
(ii)酸化物粒子の平均粒子径(Do)と、金属微粒子の平均粒子径(Dm)とが下記式(2)で表される関係を満足する
2Dm<Do<200Dm …(2)
ことを特徴とする。
【0017】
この透明導電性被膜形成用塗布液には、さらに有機系安定剤を含んでいることが好ましい。
透明導電性被膜形成用塗布液は、前記金属微粒子以外の導電性微粒子を含有していてもよい。
本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液は、さらにマトリックス形成成分を含有していることが好ましい。
【0018】
前記マトリックス形成成分がシリカ前駆体、シリカ系複合酸化物前駆体、ジルコニア前駆体、酸化アンチモン前駆体からなる群から選ばれる1種以上の無機酸化物前駆体からなることが好ましい。
本発明に係る透明被膜形成用塗布液は、
無機酸化物マトリクス形成成分とともに、
(i)シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる多孔質の核粒子と、該核粒子表面のシリカ被覆層とからなる積層粒子、または、
(ii)内部に空洞を有し、かつ空洞内に溶媒および/または気体が充填された空洞粒子を含み、
かつ前記積層粒子または空洞粒子の平均粒子径が5〜300nmの範囲にあり、積層粒子のシリカ被覆層の厚さまたは空洞粒子の粒子壁の厚さが1〜20nmの範囲にあることを特徴としている。
【0019】
本発明に係る表示装置は、前記透明導電性被膜付基材で構成された前面板を備え、透明導電性被膜が該前面板の外表面に形成されていることを特徴としている。
【0020】
【発明の具体的説明】
以下、本発明について具体的に説明する。
透明導電性被膜付基材
本発明に係る透明導電性被膜付基材は、
基材と、該基材表面に形成された透明導電性被膜と、該透明導電性被膜表面に形成された透明被膜とからなり、
前記透明導電性被膜および透明被膜が、基材側から透明被膜側に向かって屈折率が順次低下する傾斜屈折率膜であることを特徴としている。
【0021】
この傾斜屈折率膜では、前記透明導電性被膜が金属微粒子と酸化物粒子とを含み、
(i)酸化物粒子の屈折率(Ro)と、金属微粒子の屈折率(Rm)と、透明被膜の屈折率(Rt)とが、下記式(1)で表される関係を満足し、
t<Ro<Rm …(1)
(ii)酸化物粒子の平均粒子径(Do)と、透明導電性被膜の厚さ(Le)と、透明被膜の厚さ(Lt)とが、下記式(2)で表される関係を満足し、
e<Do<(Le+Lt) …(2)
(iii)酸化物粒子の平均粒子径(Do)と、金属微粒子の平均粒子径(Dt)とが下記式(3)で表される関係を満足する
2Dt<Do<200Dt …(3)
ことを特徴としている。
【0022】
このような透明導電性被膜付基材の概略模式図を図1に示す。
図1中、添字1は、基材を示し、添字2は透明導電性被膜を示し、添字3は透明被膜を示す。また、添字4は金属微粒子を示し、添字5は酸化物粒子を示す。図1に示されるように、本発明に係る透明導電性被膜付基材では、基材表面の透明導電性被膜から酸化物粒子が一部露出し、透明被膜中に侵入している。屈折率は、透明被膜が最も低く、次いで酸化物粒子であり、透明導電性被膜が最も高いので、透明導電性膜および透明被膜が形成された透明導電性被膜付基材は、屈折率が、見かけ上、基材側から透明被膜側にむかってなだらかに低下している。このような傾斜した屈折率を有する膜を、傾斜屈折率膜といい、特に反射防止性能(ボトム反射率および視感反射率が低い)に優れている。
【0023】
[基材]
本発明に用いられる基材としてはガラス、プラスチック、セラミック等からなるフィルム、シートあるいはその他の成形体などが挙げられる。
[透明導電性被膜]
透明導電性被膜は、金属微粒子と酸化物粒子とを含む。
【0024】
透明導電性被膜の膜厚は、約5〜200nm、好ましくは10〜150nmの範囲にあることが好ましい。この範囲の膜厚であれば電磁遮蔽効果に優れた透明導電性被膜付基材を得ることができる。
なお、透明導電性被膜の膜厚には、透明導電性被膜上端から突出した酸化物粒子の部分は含めないものとする。(図1参照)
金属微粒子
本発明に用いる「金属微粒子」としては、従来公知の金属微粒子を用いることができ、単一成分の金属微粒子であってもよく、2種以上の金属成分を含む複合金属微粒子であってもよい。
【0025】
前記複合金属微粒子を構成する2種以上の金属は、固溶状態にある合金であっても、固溶状態にない共晶体であってもよく、合金と共晶体が共存していてもよい。このような複合金属微粒子は、金属の酸化やイオン化が抑制されるため、複合金属微粒子の粒子成長等が抑制され、複合金属微粒子の耐腐食性が高く、導電性、光透過率の低下が小さいなど信頼性に優れている。
【0026】
このような金属微粒子としては、Au,Ag,Pd,Pt,Rh,Ru,Cu,Fe,Ni,Co,Sn,Ti,In,Al,Ta,Sbなどの金属から選ばれる金属の微粒子が挙げられる。また、複合金属微粒子としては、Au,Ag,Pd,Pt,Rh,Ru,Cu,Fe,Ni,Co,Sn,Ti,In,Al,Ta,Sbなどの金属から選ばれる少なくとも2種以上の金属からなる複合金属微粒子が挙げられる。好ましい2種以上の金属の組合せとしては、Au-Cu,Ag-Pt,Ag-Pd,Au-Pd,Au-Rh,Pt-Pd,Pt-Rh,Fe-Ni,Ni-Pd,Fe-Co,Cu-Co,Ru-Ag,Au-Cu-Ag,Ag-Cu-Pt,Ag-Cu-Pd,Ag-Au-Pd,Au-Rh-Pd,Ag-Pt-Pd,Ag-Pt-Rh,Fe-Ni-Pd,Fe-Co-Pd,Cu-Co-Pd などが挙げられる。
【0027】
また、Au,Ag,Pd,Pt,Rh,Cu,Co,Sn,In,Taなどの金属からなる金属微粒子を用いる場合は、その一部が酸化状態にあってもよく、該金属の酸化物を含んでいてもよい。さらに、PやB原子が結合して含有していてもよい。
このような金属微粒子は、たとえば以下のような公知の方法(特開平10−188681号公報)によって得ることができる。
【0028】
(i)アルコール・水混合溶媒中で、1種の金属塩を、あるいは2種以上の金属塩を同時にあるいは別々に還元する方法。このとき、必要に応じて還元剤を添加してもよい。還元剤としては、硫酸第1鉄、クエン酸3ナトリウム、酒石酸、水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、圧力容器中で約100℃以上の温度で加熱処理してもよい。
(ii)単一成分金属微粒子または合金微粒子の分散液に、金属微粒子または合金微粒子よりも標準水素電極電位が高い金属の微粒子またはイオンを存在させて、金属微粒子または/および合金微粒子上に標準水素電極電位が高い金属を析出させる方法。このとき、得られた複合金属微粒子上に、さらに標準水素電極電位が高い金属を析出させてもよい。また、このような標準水素電極電位の最も高い金属は、複合金属微粒子表面層に多く存在していることが好ましい。このように、標準水素電極電位の最も高い金属が複合金属微粒子の表面層に多く存在すると、複合金属微粒子の酸化およびイオン化が抑えられ、イオンマイグレーション等による粒子成長の抑制が可能となる。さらに、このような複合金属微粒子は、耐腐食性が高いので、導電性、光透過率の低下を抑制することができる。
【0029】
このような金属微粒子の平均粒径は、1〜100nm、好ましくは2〜70nmの範囲にあることが望ましい。金属微粒子の平均粒径が100nmを越えると、金属微粒子の粒子径が大きすぎて、後述する酸化物粒子の粒子径と差が少なくなり酸化物粒子の下部に金属微粒子が充填できないために傾斜屈折率膜が得られないことがある。このため被膜付基材を、たとえば陰極線管の前面板として用いると、明瞭で着色した強い映り込みがあり表示画像が見にくくなることがある。また、金属微粒子の平均粒径が1nm未満の場合には粒子層の表面抵抗が急激に大きくなるため、本発明の目的を達成しうる程度の低抵抗値を有する被膜を得ることができないこともある。
【0030】
このような金属微粒子は、透明導電膜中に、50〜99重量%、好ましくは70〜95重量%の割合で含まれていることが望ましい。
酸化物粒子
酸化物粒子としては、屈折率が後記する透明被膜の屈折率より高く、前記金属微粒子の屈折率よりも低い範囲にあるものが使用される。なお、金属微粒子の屈折率は、通常、酸化物の屈折率よりも高い。
【0031】
酸化物粒子の屈折率は、好ましくは1.45〜2.00の範囲にあることが好ましい。酸化物粒子の屈折率が透明被膜の屈折率よりも低いと、透明導電性被膜が傾斜屈折率膜とならないことがあり、透明導電性被膜付基材が視感反射率の低くなることがある。
このような酸化物粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア、などの他、酸化錫、Sb、FまたはPがドーピングざれた酸化錫、酸化インジウム、SnまたはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、低次酸化チタンなどが挙げられる。
【0032】
酸化物粒子の平均粒子径は20〜200nmの範囲にあり、さらに好ましくは30〜150nmの範囲にあることが望ましい。酸化物粒子の平均粒子径が20nm未満の場合は、透明導電性被膜から、酸化物粒子を露出させることが困難であり、実質的に単なる透明導電性被膜と透明被膜からなる透明導電性被膜となり、傾斜屈折率を有する被膜が得られない。
【0033】
酸化物粒子の平均粒子径が200nmを越えると、酸化物粒子が大きすぎて滑らかな傾斜の屈折率を有する被膜付基材が得られないことがある。
この酸化物粒子の平均粒子径(Do)と、透明導電性被膜の厚さ(Le)と、透明被膜の厚さ(Lt)とは、下記式(2)で表される関係を満足し、
1.2Le<Do<5Le …(2)
さらに好ましくは(2')で表される関係を満足している。
【0034】
1.5Le<Do<4.5Le …(2')
(ただし、DoはLe+Ltを超えない)
酸化物粒子の平均粒子径(Do)が透明導電性被膜(Le)の膜厚の1.2倍未満の場合は、酸化物粒子が実質的に透明導電性被膜に埋没した形になり、この場合も実質的に屈折率の異なる透明導電性被膜と透明被膜からなる透明導電性被膜となり、傾斜屈折率被膜が得られないことがある。さらにまた、酸化物粒子の平均粒子径(Do)が透明導電性被膜の膜厚(Le)の5倍を越えると、酸化物粒子が大きすぎて滑らかな屈折率の傾斜が得られないことがある。
【0035】
また、酸化物粒子の平均粒子径(Do)と、金属微粒子の平均粒子径(Dm)とは、下記式(3)で表される関係を満足し、
2Dm<Do<200Dm …(3)
さらに好ましくは(3')で表される関係を満足している。
5Dm<Do<200Dm …(3)
また、酸化物粒子の平均粒子径(Do)が金属微粒子の平均粒子径の2倍未満の場合は、粒子径に大きな差がないために透明導電性被膜における屈折率の傾斜が得られないことがある。
【0036】
一方、酸化物粒子の平均粒子径(Do)が、金属微粒子の平均粒子径(Dm)の200倍を越えるのは、金属微粒子の平均粒子(Dm)径が1nm未満であるか、酸化物粒子の平均粒子径(Do)が200nmを越える場合であるが、金属微粒子の平均粒子径(Dm)が1nm未満の場合は透明導電性被膜の表面抵抗が急激に大きくなるため、本発明の目的を達成しうる程度の低抵抗値を有する被膜を得ることができないことがある。酸化物粒子自体の平均粒子径が200nmを越えると、前記したように酸化物粒子が大きすぎて滑らかな屈折率の傾斜が得られないことがある。
【0037】
透明導電性被膜中の金属微粒子と酸化物粒子の配合比は、特に制限されるものではないが、重量比(酸化物粒子重量/金属微粒子重量)で0.01〜0.5、好ましくは0.05〜0.3の範囲にあることが望ましい。
このような透明導電性被膜は、後述する透明被膜導電性被膜形成用塗布液を用いて作製することができる。
【0038】
このような透明導電性被膜には、必要に応じて、金属微粒子以外の導電性微粒子、マトリックス、後述する有機系安定剤が含まれていてもよい。
金属微粒子以外の導電性微粒子としては、公知の透明導電性無機酸化物微粒子あるいは微粒子カーボンなどを用いることができる。透明導電性無機酸化物微粒子としては、たとえば酸化錫、Sb、FまたはPが ドーピングざれた酸化錫、酸化インジウム、SnまたはFがドーピングされた酸 化インジウム、酸化アンチモン、低次酸化チタンなどが挙げられる。
【0039】
これらの導電性微粒子の平均粒径は、1〜200nm、好ましくは2〜150nmの範囲にあることが好ましい。(なお、粒径が異なれば、前記酸化物粒子で例示した材料からなる導電性微粒子を用いることができる。)
金属微粒子および酸化物粒子以外の導電性微粒子は、電磁波遮蔽効果が得られる102〜104Ω/□程度の表面抵抗を有する透明導電性被膜を得ようとする場合は、前記金属微粒子1重量部当たり、4重量部以下の量で含まれていればよい。導電性微粒子が4重量部を超える場合は、導電性が低下し電磁波遮蔽効果が低下することがあるので好ましくない。
【0040】
このような導電性微粒子を含有すると、金属微粒子のみで透明導電性被膜を形成した場合と比較して、より透明性に優れた透明導電性被膜を形成することができる。また導電性微粒子を含有することによって、安価に透明導電性被膜付基材を製造することができる。
マトリックスとしては、シリカ、シリカ系複合酸化物、ジルコニア、酸化アンチモンから選ばれる1種または2種以上の酸化物が挙げられる。
【0041】
さらに、塗料用樹脂などが透明導電性膜中に含まれていてもよい。
このようなマトリックスは、酸化物としてあるいは樹脂として、前記金属微粒子1重量部当たり、0.01〜0.5重量部、好ましくは0.03〜0.3重量部の量で含まれていればよい。
透明導電性被膜形成用塗布液
本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液は、金属微粒子と酸化物粒子と極性溶媒とからなる。
【0042】
また、本発明に用いる透明導電性被膜形成用塗布液には、上記金属微粒子・酸化物粒子以外に導電性微粒子が含まれていてもよい。
導電性無機酸化物微粒子としては、前記した透明導電性無機酸化物微粒子あるいは微粒子カーボンなどを用いることができる。
透明導電性被膜形成用塗布液に用いられる極性溶媒としては、
水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
【0043】
本発明では、透明導電性被膜形成用塗布液中に、金属微粒子が、0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の量で含まれていることが望ましい。
透明導電性被膜形成用塗布液中の金属微粒子が0.05重量%未満の場合は、得られる被膜の膜厚が薄く、このため充分な導電性が得られないことがある。
金属微粒子が5重量%を越えると、膜厚が厚くなり、光透過率が低下して透明性が悪化するとともに外観も悪くなる。
【0044】
また、本発明では、透明導電性被膜形成用塗布液中に、酸化物粒子は、0.005〜10重量%、好ましくは0.02〜5重量%の量で含まれていることが望ましい。
また、このとき透明導電性被膜形成用塗布液中には、酸化物粒子が、前記金属微粒子との重量比(酸化物粒子重量/金属微粒子重量)で0.01〜0.5、好ましくは0.05〜0.3の範囲で含まれていることが望ましい。
【0045】
透明導電性被膜形成用塗布液中の酸化物粒子の重量比が0.01未満の場合は、酸化物粒子の割合が少なすぎて透明導電性被膜における屈折率の傾斜が不充分となり効果的に視感反射率を低減することができないことがある。
酸化物粒子の重量比が0.5を越えると、酸化物粒子の割合が多くなり、この場合も有効な透明導電性被膜における屈折率の傾斜が得られないことがあり、さらに得られる透明導電性被膜の導電性が低下し、充分な電磁遮蔽効果が得られないことがある。
【0046】
金属微粒子および酸化物粒子以外の導電性微粒子は、電磁波遮蔽効果が得られる102〜104Ω/□程度の表面抵抗を有する透明導電性被膜を得ようとする場合は、前記金属微粒子1重量部当たり、4重量部以下の量で含まれていればよい。導電性微粒子が4重量部を超える場合は、導電性が低下し電磁波遮蔽効果が低下することがあるので好ましくない。
【0047】
このような導電性微粒子を含有すると、金属微粒子のみで透明導電性被膜を形成した場合と比較して、より透明性に優れた透明導電性被膜を形成することができる。また導電性微粒子を含有することによって、安価に透明導電性被膜付基材を製造することができる。
さらに、本発明の係る透明導電性被膜形成用塗布液には、可視光の広い波長領域において可視光の透過率が一定になるように、染料、顔料などが添加されていてもよい。
【0048】
本発明で用いられる透明導電性被膜形成用塗布液中の固形分濃度(金属微粒子、酸化物粒子、金属微粒子および酸化物粒子以外の導電性微粒子と、必要に応じて添加される染料、顔料などの添加剤の総量)は、液の流動性、塗布液中における金属微粒子など粒状成分の分散性などの点から、15重量%以下、好ましくは0.15〜5重量%であることが好ましい。
【0049】
本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液には、被膜形成後の導電性微粒子のバインダーとして作用するマトリックス形成成分が含まれていてもよい。このようなマトリックス形成成分としては、従来公知のものを用いることができるが、本発明ではシリカ、シリカ系複合酸化物、ジルコニア、酸化アンチモンから選ばれる1種または2種以上の酸化物の前駆体からなるものが好ましく、特に、アルコキシシランなどの有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物またはアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を脱アルカリして得られるケイ酸が好ましく用いられる。
【0050】
この他、塗料用樹脂などを用いることもできる。
このようなマトリックス形成成分は、酸化物としてあるいは樹脂として、前記金属微粒子1重量部当たり、0.01〜0.5重量部、好ましくは0.03〜0.3重量部の量で含まれていればよい。
また、本発明では金属微粒子の分散性を向上させるため、透明導電性被膜形成用塗布液中に有機系安定剤が含まれていることが望ましい。このような有機系安定剤としては、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、クエン酸などの多価カルボン酸およびその塩、スルホン酸塩、有機スルホン酸塩、リン酸塩、有機リン酸塩、複素環化合物あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0051】
このような有機系安定剤の添加量は、その種類、金属微粒子の粒子径等によっても異なるが、金属微粒子1重量部に対し、0.005〜0.5重量部、好ましくは0.01〜0.2重量部の量で含まれていればよい。有機系安定剤の量が0.005重量部未満の場合は充分な分散性が得られず、0.5重量部を超えて高い場合は導電性が阻害されることがある。
【0052】
さらに本発明で用いられる透明導電性被膜形成用塗布液は、塗布液中に存在するアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンおよび多価金属イオンならびに鉱酸などの無機陰イオン、酢酸、蟻酸などの有機陰イオンで、粒子から遊離したイオン濃度の合計量が、塗布液中の固形分100g当り10ミリモル以下の量であることが望ましい。特に鉱酸などの無機陰イオンは、金属微粒子の安定性、分散性を阻害するので、塗布液中に含まれる量は低いほど好ましい。イオン濃度が低くなると、透明導電性被膜形成用塗布液中に含まれている粒状成分、特に導電性微粒子の分散状態が良好となり、凝集粒子をほとんど含んでいない塗布液が得られる。この塗布液中での粒状成分の単分散状態は、透明導電性被膜の形成過程でも維持される。このため、イオン濃度の低い透明導電性被膜形成用塗布液から透明導電性被膜を形成すると、微粒子層中に凝集粒子は観察されることがない。
【0053】
また上記のようなイオン濃度の低い塗布液から形成された透明導電性被膜では金属微粒子などの導電性微粒子が均一に分散され、かつ配列されるので、透明導電性被膜中で導電性微粒子が凝集している場合に比較して、より少ない導電性微粒子で同等の導電性を有する透明導電性被膜を提供することが可能である。さらに粒状成分同士の凝集に起因すると思われる被膜中の点欠陥および厚さむらのない透明導電性被膜を基材上に形成することが可能である。
【0054】
上記のようなイオン濃度の低い塗布液を得るための脱イオン処理の方法としては、最終的に塗布液中に含まれているイオン濃度が上記のような範囲になるような方法であれば特に制限されないが、好ましくは、塗布液の原料として用いられる粒状成分の分散液、または前記分散液から調製された塗布液を陽イオン交換樹脂および/または陰イオン交換樹脂と接触させる方法、あるいはこれらの液を、限外濾過膜を用いて洗浄処理する方法などが挙げられる。
【0055】
透明導電性被膜の形成
透明導電性被膜は、前記透明導電性被膜形成用塗布液を基材上に塗布し・乾燥して、透明導電性被膜を基材上に形成される。
具体的には、たとえば、前記透明導電性被膜形成用塗布液をディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法などの方法で、基材上に塗布したのち、常温〜約90℃の範囲の温度で乾燥する。
【0056】
透明導電性被膜形成用塗布液中に上記のようなマトリックス形成成分が含まれている場合には、マトリックス形成成分の硬化処理を行ってもよい。
硬化処理としては、以下のような方法が挙げられる。
▲1▼加熱硬化
乾燥後の塗膜を加熱して、マトリックス成分を硬化させる。このときの加熱処理温度は、100℃以上、好ましくは150〜300℃であることが望ましい。100℃未満ではマトリックス成分が充分に硬化しないことがある。また加熱処理温度の上限は基材の種類によって異なるが、基材が分解、溶解、燃焼しない温度以下であればよい。
【0057】
▲2▼電磁波硬化
透明導電性被膜形成用塗布液の塗布時、または塗布後の乾燥工程の後に、あるいは乾燥工程中に、塗膜に可視光線よりも波長の短い電磁波を照射して、マトリックス成分を硬化させる。このとき照射する電磁波としては、マトリックス成分の種類に応じて紫外線、電子線、X線、γ線などが適宜選択される。例えば、マトリックス成分が紫外線硬化性の場合、発光強度が約250nmおよび360nmにおいて極大となり、光強度が10mW/m2以上である高圧水銀ランプを紫外線源として用い、100mJ/cm2以上のエネルギー量の紫外線が照射される。
【0058】
▲3▼ガス硬化
アンモニアなどの活性ガスで硬化が促進されるマトリックス成分が含まれている場合、透明導電性被膜形成用塗布液の塗布時、または塗布後の乾燥工程の後に、塗膜をガス雰囲気中に晒すことによって、マトリックス成分を硬化させることもできる。このようなガス硬化では、活性ガスのガス濃度が100〜100000ppm、好ましくは1000〜10000ppmであるような雰囲気下で 1〜60分処理することによって硬化が行われる。
【0059】
[透明被膜]
前記透明導電性被膜の上に、透明被膜が形成されている。
前記透明被膜の屈折率は1.45(シリカの屈折率)以下、さらに好ましくは1.40以下であることが好ましい。
前記透明被膜は、通常、無機酸化物マトリクスからなる。
【0060】
無機酸化物マトリクスとしては、シリカ、チタニア、ジルコニアなどの無機酸化物、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニアなどの複合酸化物が挙げられる。これらのうちでもとくにシリカが望ましく、通常アルコキシシラン化合物の加水分解・重縮合物が使用される。
この透明被膜は、前記透明導電性被膜表面から酸化物粒子が一部露出した透明導電性被膜上に形成されている。このため、前記した酸化物粒子は、透明被膜中に一部侵入している。
【0061】
このような透明被膜の膜厚は、50〜300nm、好ましくは80〜200nmの範囲にあることが好ましい。
透明被膜の膜厚が50nm未満の場合は、低反射を実現しようとすると導電性微粒子層を薄くする必要があり、全体として薄い透明導電性被膜となるため傾斜が急となり、滑らかな傾斜を有する傾斜屈折率膜を得ることが困難となる。
【0062】
透明被膜の膜厚が300nmを越える場合は、低反射を実現するためには、透明導電性被膜を厚くする必要があるが、却って光透過率が低下して透明性が悪化したり外観も悪くなることがある。
また。必要に応じて、透明被膜中には、無機酸化物マトリックスとともに、積層粒子または空洞粒子が含まれていてもよい。
【0063】
前記積層粒子としては、シリカとシリカ以外の無機酸化物からなる多孔質の核粒子と、シリカ被覆層からなる。空洞粒子は、粒子壁で囲まれた内部に空洞を有し、かつ空洞内に溶媒および/または気体が充填された粒子である。積層粒子のシリカ被覆層の厚さおよび空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜20nm、好ましくは2〜15nmの範囲にあることが望ましい。
【0064】
また積層粒子を構成する核粒子の平均粒子径は、5〜300nmの範囲にあり、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機酸化物をMOXで表したときのモル比MOX/SiO2が0.0001〜0.3の範囲にあるものが好適に使用される。
空洞粒子は、内部に空洞を有し、かつ空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、空洞粒子の調製時に使用した溶媒、気体などの内容物で充填されている。また内容物中には、一部多孔質物質が含まれていてもよい。
【0065】
このような積層粒子または空洞粒子は屈折率が低く、通常1.40以下である。このため、このような積層粒子または空洞粒子を含む透明被膜は、屈折率が1.43以下とすることができ、より滑らかな屈折率の傾斜を有する傾斜屈折率膜を得ることができる。
このような積層粒子または空洞粒子の平均粒子径は、形成される透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、形成される透明被膜の膜厚の2/3〜1/10の範囲にあることが望ましい。
【0066】
前記積層粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とする。また積層粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁には、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al23、B23、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O5、Sb23、MoO3、ZnO2、WO3などが挙げられる。
積層粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF2、NaF、NaAlF6、MgFなどからなるものが挙げられる。このうち特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al23、B23、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O5、Sb23、MoO3、ZnO2、WO3等との1種または2種以上を挙げることができる。このような多孔質粒子では、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOX)で表したときのモル比MOX /SiO2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。多孔質粒子のモル比MOX /SiO2 が0.0001未満のものは得ることが困難であり、得られたとしてもさらに屈折率が低いものを得ることはない。また、多孔質粒子のモル比MOX /SiO2 が、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が小さく、かつ屈折率の低い粒子を得られないことがある。
【0067】
このような多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。
細孔容積が0.1ml/g未満では、充分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。
【0068】
なお、このような多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることができる。
また、空洞粒子の空洞内には、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質などが含まれている。さらに、溶媒中には空洞粒子を調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒などが含まれていてもよい。また多孔質物質としては、前記多孔質粒子で例示した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
【0069】
このような積層粒子・空洞粒子は、透明被膜中に10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%の割合で含まれていることが望ましい。
積層粒子・空洞粒子の調製
このような粒子の製造方法としては、たとえば特開平7−133105号公報に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。
【0070】
具体的に、積層粒子の被覆層、空洞粒子の粒子壁がシリカからなる場合、以下の第1〜第3工程から粒子は製造される。
第1工程:多孔質粒子前駆体の調製
第1工程では、予め、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料のアルカリ水溶液を個別に調製するか、または、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料との混合水溶液を調製しておき、この水溶液を目的とする複合酸化物の複合割合に応じて、pH10以上のアルカリ水溶液中に攪拌しながら徐々に添加して多孔質粒子前駆体を調製する。
【0071】
シリカ原料としては、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機塩基の珪酸塩を用いる。アルカリ金属の珪酸塩としては、珪酸ナトリウム(水ガラス)や珪酸カリウムが用いられる。
有機塩基としては、テトラエチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類を挙げることができる。なお、アンモニウムの珪酸塩または有機塩基の珪酸塩には、珪酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物などを添加したアルカリ性溶液も含まれる。
【0072】
また、シリカ以外の無機化合物の原料としては、アルカリ可溶の無機化合物を用いられる。具体的には、Al、B、Ti、Zr、Sn、Ce、P、Sb、Mo、Zn、Wなどから選ばれる元素のオキソ酸、該オキソ酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩を挙げることができる。より具体的には、アルミン酸ナトリウム、四硼酸ナトリウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、アンチモン酸カリウム、錫酸カリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、硝酸セリウムアンモニウム、燐酸ナトリウムが適当である。
【0073】
以上のような原料の水溶液を混合すると同時に、混合水溶液のpH値は変化するが、このpH値を所定の範囲に制御するような操作は特に必要ない。水溶液は、最終的に、無機酸化物の種類およびその混合割合によって定まるpH値となる。このときの水溶液の添加速度にはとくに制限はない。
また、積層粒子または空洞粒子の製造するに際して、シード粒子の分散液を出発原料と使用することも可能である。当該シード粒子としては、特に制限はないが、SiO2、Al23、TiO2またはZrO2等の無機酸化物またはこれらの複合酸化物の微粒子が用いられ、通常、これらのゾルを用いることができる。さらに前記の製造方法によって得られた多孔質粒子前駆体分散液をシード粒子分散液としてもよい。シード粒子分散液を使用する場合、シード粒子分散液のpHを10以上に調整したのち、該シード粒子分散液中に前記化合物の水溶液を、上記したアルカリ水溶液中に攪拌しながら添加する。この場合も、必ずしも分散液のpH制御を行う必要はない。このようにして、シード粒子を用いると、調製する多孔質粒子の粒径コントロールが容易であり、粒度の揃ったものを得ることができる。
【0074】
上記したシリカ原料および無機化合物原料はアルカリ側で高い溶解度を有する。しかしながら、この溶解度の大きいpH領域で両者を混合すると、珪酸イオンおよびアルミン酸イオンなどのオキソ酸イオンの溶解度が低下し、これらの複合物が析出して微粒子に成長したり、あるいは、シード粒子上に析出して粒子成長が起こる。したがって、微粒子の析出、成長に際して、従来法のようなpH制御は必ずしも行う必要がない。
【0075】
第1工程におけるシリカとシリカ以外の無機化合物との複合割合は、無機化合物を酸化物(MOx)に換算し、MOx/SiO2のモル比が、0.05〜2.0、好ましくは0.2〜2.0の範囲内にあることが望ましい。この範囲内において、シリカの割合が少なくなる程、多孔質粒子の細孔容積が増大する。なお、MOx/SiO2のモル比が2.0を越えても、多孔質粒子の細孔の容積はほとんど増加しない。他方、MOx/SiO2のモル比が0.05未満の場合は、細孔容積が小さくなる。空洞粒子を調製する場合、MOx/SiO2のモル比は、0.25〜2.0の範囲内にあることが望ましい。
【0076】
第2工程:多孔質粒子前駆体からのシリカ以外の無機化合物の除去
第2工程では、前記第1工程で得られた多孔質粒子前駆体から、シリカ以外の無機化合物(珪素と酸素以外の元素)の少なくとも一部を選択的に除去する。具体的な除去方法としては、多孔質粒子前駆体中の無機化合物を鉱酸や有機酸を用いて溶解除去したり、あるいは、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去する。
【0077】
なお、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体は、珪素と無機化合物構成元素が酸素を介して結合した網目構造の粒子である。このような多孔質粒子前駆体から無機化合物(珪素と酸素以外の元素)を除去することにより、いっそう多孔質でかつ細孔容積の大きい多孔質粒子が得られる。
また、多孔質粒子前駆体から無機化合物(珪素と酸素以外の元素)を除去する量を多くすれば、空洞粒子を調製することができる。
【0078】
また、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去するに先立って、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体分散液に、シリカのアルカリ金属塩を脱アルカリして得られる珪酸液あるいは加水分解性の有機ケイ素化合物を添加して、多孔質粒子前駆体表面にシリカ保護膜を形成することが好ましい。シリカ保護膜の厚さは0.5〜15nmの厚さであればよい。なおシリカ保護膜を形成しても、この工程で形成されるシリカ保護膜は多孔質であり厚さが薄いので、多孔質粒子前駆体から、前記したシリカ以外の無機化合物を、除去することは可能である。
【0079】
このようにシリカ保護膜を形成することによって、粒子形状を保持したまま、前記したシリカ以外の無機化合物を多孔質粒子前駆体から除去することができる。
また、シリカ保護膜を形成することによって、後述するシリカ被覆層を形成する際に、多孔質粒子の細孔がシリカ被覆層形成成分である加水分解性の有機ケイ素化合物またはケイ酸液等によって閉塞されてしまうことがなく、このため細孔容積を低下させることなく後述するシリカ被覆層を形成することができる。
【0080】
なお、多孔質粒子前駆体から除去する無機化合物の量が少ない場合は粒子が壊れることがないので必ずしも保護膜を形成する必要はない。
また空洞粒子を調製する場合は、このシリカ保護膜を形成しておくことがとくに望ましい。空洞粒子を調製する際には、無機化合物の除去によって、シリカ保護膜と、該シリカ保護膜内の溶媒、未溶解のため残存する前記多孔質粒子の一部とからなる空洞粒子の前駆体が得られ、該空洞粒子の前駆体に後述のシリカ被覆層を形成すると、形成されたシリカ保護膜およびシリカ被覆層が、粒子壁となり空洞粒子が形成される。
【0081】
上記シリカ保護膜形成のために添加するシリカ源の量は、粒子形状を保持できる範囲で少ないことが好ましい。シリカ源の量が多すぎると、シリカ保護膜が厚くなりすぎるので、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去することが困難となることがある。
シリカ保護膜形成用に使用される加水分解性の有機ケイ素化合物としては、一般式RnSi(OR')4-n 〔R、R':アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2または3〕で表されるアルコキシシランを用いることができる。特に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
【0082】
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、およびアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリ又は酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子前駆体の分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を無機酸化物粒子の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることができる。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
【0083】
多孔質粒子前駆体の分散媒が、水単独、または有機溶媒に対する水の比率が高い場合には、ケイ酸液を用いてシリカ保護膜を形成することも可能である。
ケイ酸液を用いる場合には、分散液中にケイ酸液を所定量添加し、同時にアルカリを加えてケイ酸液を多孔質粒子前駆体表面に沈着させる。なお、ケイ酸液と上記アルコキシシランを併用してシリカ保護膜を作製してもよい。
【0084】
以上のように、多孔質粒子前駆体からのシリカ以外の無機化合物を除去することによって多孔質粒子分散液(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体分散液)が調製される。
第3工程:シリカ被覆層の形成
第3工程では、第2工程で調製した多孔質粒子分散液(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体分散液)に加水分解性の有機ケイ素化合物またはケイ酸液等を加えることにより、粒子の表面を加水分解性有機ケイ素化合物またはケイ酸液等の重合物で被覆してシリカ被覆層を形成する。
【0085】
シリカ被覆層形成用に使用される加水分解性の有機ケイ素化合物としては、前記したような一般式RnSi(OR')4-n 〔R、R':アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2または3〕で表されるアルコキシシランを用いることができる。特に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
【0086】
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、およびアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリ又は酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子前駆体(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を多孔質粒子前駆体(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることができる。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
【0087】
多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の分散媒が水単独、または有機溶媒との混合溶媒であって、有機溶媒に対する水の比率が高い混合溶媒の場合には、ケイ酸液を用いて被覆層を形成してもよい。ケイ酸液とは、水ガラス等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液をイオン交換処理して脱アルカリしたケイ酸の低重合物の水溶液である。
【0088】
ケイ酸液は、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中に添加され、同時にアルカリを加えてケイ酸低重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)表面に沈着させる。なお、ケイ酸液を上記アルコキシシランと併用して被覆層形成用に使用してもよい。
被覆層形成用に使用される有機ケイ素化合物またはケイ酸液の添加量は、コロイド粒子の表面を充分に被覆できる程度であればよく、最終的に得られるシリカ被覆層の厚さが1〜20nmとなるように量で、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中で添加される。また前記シリカ保護膜を形成した場合はシリカ保護膜とシリカ被覆層の合計の厚さが1〜20nmの範囲となるような量で、有機ケイ素化合物またはケイ酸液は添加される。
【0089】
ついで、被覆層が形成された粒子の分散液を加熱処理する。加熱処理によって、多孔質粒子の場合は、多孔質粒子表面を被覆したシリカ被覆層が緻密化し、多孔質粒子がシリカ被覆層によって被覆された積層粒子の分散液が得られる。また空洞粒子前駆体の場合、形成された被覆層が緻密化して空洞粒子壁となり、内部が溶媒、気体または多孔質物質で充填された空洞を有する空洞粒子の分散液が得られる。
【0090】
このときの加熱処理温度は、シリカ被覆層の微細孔を閉塞できる程度であれば特に制限はなく、80〜300℃の範囲が好ましい。加熱処理温度が80℃未満ではシリカ被覆層の微細孔を完全に閉塞して緻密化できないことがあり、また処理時間に長時間を要してしまうことがある。また加熱処理温度が300℃を越えて長時間処理すると緻密な粒子となることがあり、低屈折率の効果が得られないことがある。
【0091】
このようにして得られた積層粒子または空洞粒子は、屈折率が1.44未満であり、低い。
透明被膜形成用塗布液
つぎに、本発明に係る透明被膜形成用塗布液について説明する。
本発明の透明被膜形成用塗布液は、無機酸化物前駆体を含んでなる透明被膜形成用塗布液であって、必要に応じて、前記した積層粒子または空洞粒子を含んでいる。
【0092】
[無機酸化物前駆体]
次に、本発明に用いる無機酸化物前駆体としては、得られる被膜が透明性を有し、基材より屈折率の低い透明被膜が得られれば特に制限はないが、シリカ、チタニア、ジルコニアなどの無機酸化物の前駆体、またはこれらの複合酸化物の前駆体が挙げられる。このとき、前駆体とは、ケイ素化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物の塩またはこれらの加水分解物から選ばれる1種または2種以上を意味している。
【0093】
中でも、加水分解性有機ケイ素化合物の部分加水分解物、加水分解重縮合物、またはアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を脱アルカリして得られるケイ酸液、特に下記一般式[1]で表されるアルコキシシランの加水分解重縮合物であるシリカ前駆体が好ましい。
aSi(OR')4-a [1]
(式中、Rはビニル基、アリール基、アクリル基、炭素数1〜8のアルキル基、水素原子またはハロゲン原子であり、R'はビニル基、アリール基、アクリル基、炭系数1〜8のアルキル基、−C24OCn2n+1(n=1〜4)または水素原子であり、aは0〜3の整数である。)
このようなアルコキシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラオクチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0094】
さらに、前記シリカ前駆体の分子量はポリスチレン換算の分子量で500〜10000の範囲にあることが好ましく、特に好ましい範囲は700〜2500である。
ポリスチレン換算の分子量で500未満の場合は、塗布液中に未加水分解物が存在することがあり、下層の導電層に均一に塗布できないことがあり、できたとしても導電層との密着性に劣ることがある。
【0095】
ポリスチレン換算の分子量で10000を越えると被膜の強度が低下する傾向にある。
このような無機酸化物前駆体を含む塗布液から形成される透明被膜は、基材上に形成された導電性微粒子層よりも屈折率が小さく、得られる透明被膜付基材は反射防止性に優れている。
【0096】
透明被膜形成用塗布液の調製方法
上記のケイ素化合物、チタニウム化合物、ジルコニウム化合物の塩の1種または2種以上を、水および/または有機溶媒中で酸または塩基触媒の存在下、加水分解すると無機酸化物前駆体分散液が得られる。この無機酸化物前駆体分散液に前記積層粒子または空洞粒子を混合して本発明の透明被膜形成用塗布液を得る。
【0097】
また、上記のアルコキシシランの1種または2種以上を、たとえば水−アルコール混合溶媒中で酸触媒の存在下、加水分解すると、アルコキシシランの加水分解重縮合物からなる無機酸化物前駆体分散液が得られる。この無機酸化物前駆体分散液に前記積層粒子または空洞粒子を混合して本発明の透明被膜形成用塗布液を得る。
【0098】
このようにして得られる塗布液中に含まれる積層粒子または空洞粒子の濃度は、酸化物換算で0.05〜3重量%の範囲にあることが好ましい。特に好ましくは0.2〜2重量%の範囲である。
塗布液に含まれる積層粒子または空洞粒子の濃度が0.05重量%未満の場合は、積層粒子または空洞粒子の量が少なすぎて得られる透明被膜が反射防止性能に劣ることがあり、積層粒子または空洞粒子の濃度が3重量%を越えると得られる膜にクラックが生じたり、膜の強度が低下することがある。
【0099】
また、塗布液中に含まれる無機酸化物前駆体の濃度は、酸化物換算で0.05〜10重量%の範囲にあることが好ましい。特に好ましくは0.2〜5.0重量%の範囲である。
塗布液に含まれる無機酸化物前駆体の濃度が0.05重量%未満の場合は、得られる膜の膜厚が薄いために耐薬品性や反射防止性能に劣ることがあり、また1回の塗布で充分な膜厚の膜を得られないことがあり、塗布を繰り返して行った場合は均一な膜厚の膜が得られないことがある。
【0100】
無機酸化物前駆体の濃度が10重量%を越えると得られる膜にクラックが生じたり、膜の強度が低下することがある。また膜が厚過ぎて反射防止性能が不充分となることがある。
さらにまた、本発明で使用される透明被膜形成用塗布液には、フッ化マグネシウムなどの低屈折率材料で構成された微粒子、透明被膜の透明度および反射防止性能を阻害しない程度に少量の導電性微粒子および/または染料または顔料などの添加剤が含まれていてもよい。
【0101】
透明被膜の形成
透明被膜の形成方法としては、特に制限はなく、基材等の材質に応じて、真空蒸発法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの乾式薄膜形成方法、あるいは上述したようなディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法など方法で塗布した後乾燥する湿式薄膜形成方法を採用することができる。
【0102】
また、得られる透明被膜の膜厚は、50〜300nm、好ましくは80〜200nmの範囲であることが好ましく、このような範囲の膜厚であるとボトム反射率および視感反射率が低く優れた反射防止性能を発揮する。
透明被膜の膜厚が50nm未満の場合は、膜の強度、耐薬品性、反射防止性能等が劣ることがある。
【0103】
透明被膜の膜厚が300nmを越えると、膜にクラックが発生したり膜の強度が低下することがあり、また膜が厚過ぎて反射防止性能が不充分となることがある。
本発明では、このような透明被膜形成用塗布液を塗布して形成した被膜を、乾燥時、または乾燥後に、100℃以上で加熱するか、未硬化の被膜に可視光線よりも波長の短い紫外線、電子線、X線、γ線などの電磁波を照射するか、あるいはアンモニアなどの活性ガス雰囲気中に晒してもよい。このようにすると、被膜形成成分の硬化が促進され、得られる透明被膜の硬度が高くなる。
【0104】
さらに、透明被膜形成用塗布液を塗布して被膜を形成する際に、後述する透明導電性被膜付基材を約40〜90℃に保持しながら透明被膜形成用塗布液をスプレー法で塗布して、前記のような処理を行うと、透明被膜の表面にリング状の凹凸が形成し、ギラツキの少ないアンチグレアの透明被膜付基材が得られる。
表示装置
本発明に係る透明導電性被膜付基材は、電磁遮蔽に必要な102〜104Ω/□の範囲の表面抵抗を有し、かつ可視光領域全域および近赤外領域で充分な反射防止性能を有する透明導電性被膜付基材は、表示装置の前面板として好適に用いられる。
【0105】
本発明に係る表示装置は、ブラウン管(CRT)、蛍光表示管(FIP)、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶用ディスプレイ(LCD)などのような電気的に画像を表示する装置であり、上記のような透明導電性被膜付基材で構成された前面板を備えている。
従来の前面板を備えた表示装置を作動させると、前面板に埃等が付着したり、前面板に画像が表示されると同時に電磁波が前面板から放出されることがあるが、本発明に係る表示装置では、前面板が104Ω/□以下の表面抵抗を有する透明導電性被膜付基材で構成されているので、埃等が付着しにくく、電磁波、およびこの電磁波の放出に伴って生じる電磁場を効果的に遮蔽することができる。
【0106】
また、表示装置の前面板で反射光が生じると、この反射光によって表示画像が見にくくなるが、本発明に係る表示装置では、前面板が、低屈折率かつ傾斜屈折率膜からなるためにボトム反射率および視感反射率が低い透明被膜付基材で構成されているので、このような反射光を可視光領域全域および近赤外領域効領域にわたって効果的に防止することができる。
【0107】
さらに、ブラウン管の前面板が、本発明に係る透明導電性被膜付基材で構成され、この透明導電性被膜のうち、透明導電性被膜、その上に形成された透明被膜の少なくとも一方に少量の染料または顔料が含まれている場合には、これらの染料または顔料がそれぞれ固有な波長の光を吸収し、これによりブラウン管から放映される表示画像のコントラストを向上させることができる。
【0108】
また、ブラウン管の前面板が、本発明に係る傾斜屈折率膜を有する透明被膜付基材で構成されているので視感反射率が低く、可視光の散乱もなく鮮明な表示画像が得られる。また、透明被膜は導電性微粒子層との密着性に優れ、このため保護膜としての性能にも優れるため、導電性を長期にわたって維持することができるので帯電防止性能、電磁波遮蔽性能が低下することもない。
【0109】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0110】
【製造実施例】
a)透明導電性被膜形成用塗布液用酸化物粒子分散液の調製
酸化物粒子 (OP-1) 分散液
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:SI−80P、平均粒子径80nm、SiO2濃度20重量%)を両性イオン交換樹脂で脱イオンした後、エタノールで希釈してSiO2濃度5重量%の酸化物粒子(OP-1)分散液を調製した。
【0111】
酸化物粒子 (OP-2) 分散液
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:SI−50、平均粒子径25nm、SiO2濃度20重量%)を両性イオン交換樹脂で脱イオンした後、エタノールで希釈してSiO2濃度5重量%の酸化物粒子(OP-2)分散液を調製した。
酸化物粒子 (OP-3) 分散液
硝酸インジウム79.9gを水686gに溶解して得られた溶液、および錫酸カリウム12.7gを濃度10重量%の水酸化カリウム溶液に溶解して得られた溶液を、それぞれ調製し、これらの溶液を、50℃に保持された1000gの純水に2時間かけて添加して、Snドープ酸化インジウム水和物分散液を調製した。この間、系内のpHを11に保持した。得られたSnドープ酸化インジウム水和物分散液からSnドープ酸化インジウム水和物を濾別・洗浄した後、乾燥し、次いで空気中で350℃の温度で3時間焼成し、さらに空気中で600℃の温度で2時間焼成することによりSnドープ酸化インジウム微粒子を得た。これを濃度が30重量%となるように純水に分散させ、さらに硝酸水溶液でpHを3.5に調製した後、この混合液を30℃に保持しながらサンドミルで、3時間粉砕してゾルを調製した。次に、このゾルをイオン交換樹脂で処理して硝酸イオンを除去し、エタノールを加えてスズをドープした酸化インジウム(ITO)の濃度が5重量%の酸化物粒子(OP-3)分散液を調製した。
【0112】
酸化物粒子 (OP-4) 分散液
アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)ゾル(触媒化成工業(株)製:TL−98FC、平均粒子径50nm、濃度20重量%)を両性イオン交換樹脂で脱イオンした後、エタノールで希釈してATOの濃度が5重量%の酸化物粒子(OP-4)分散液を調製した。
【0113】
酸化物粒子 (OP-5) 分散液
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:SS−120、平均粒子径130nm、SiO2濃度20重量%)を両性イオン交換樹脂で脱イオンした後、エタノールで希釈してSiO2濃度5重量%の酸化物粒子(OP-5)分散液を調製した。
酸化物粒子 (OP-6) 分散液
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:カタロイド SI−550、平均粒子径5nm、SiO2濃度20重量%)を両性イオン交換樹脂で脱イオンした後、エタノールで希釈してSiO2濃度5重量%の酸化物粒子(OP-6)分散液を調製した。
b)導電性微粒子分散液の調製
本実施例および比較例で用いた金属微粒子および導電性微粒子の分散液の組成を表1に示す。
【0114】
▲1▼金属微粒子(Q-1、Q-4)の分散液は、以下の方法で調製した。
純水100gに、あらかじめクエン酸3ナトリウムを金属微粒子1重量部当たり0.01重量部となるように加え、これに金属換算で濃度が10重量%となり、金属種が表1の重量比となるように硝酸銀および硝酸パラジウム水溶液を加え、さらに硝酸銀および硝酸パラジウムの合計モル数と等モル数の硫酸第一鉄の水溶液を添加し、窒素雰囲気下で1時間攪拌して金属微粒子の分散液を得た。得られた分散液は遠心分離器により水洗して不純物を除去した後、水に分散させ、ついで溶媒(1−エトキシ−2プロパノール)を混合した後ロータリーエバポレーターにて水分を除去するとともに濃縮して表1に示す固形分濃度(10重量%)の金属微粒子分散液(S-1、S-4)を調製した。
【0115】
▲2▼金属微粒子(Q-2,Q-3)の分散液は、以下の方法で調製した。
純水100gに、あらかじめクエン酸3ナトリウムを金属微粒子1重量部当たり0.1重量部となるように加え、これに金属換算で濃度が1重量%となるように表1の金属種の金属塩水溶液(塩化金酸水溶液、塩化ルテニウム水溶液)を加えて溶解し、さらに溶解した金属塩の合計モル数と等モル数の濃度5重量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液を添加して金属微粒子の分散液を得、さらにこの分散液を限外濾過装置で洗浄し、ついで濃縮した。その後、溶媒(1−エトキシ−2プロパノール)と混合した後、ロータリーエバポレーターにて水分を除去するとともに濃縮して表1に示す固形分濃度(10重量%)の金属微粒子分散液(S-2,S-3)を調製した。
【0116】
なお、調製した各微粒子の粒子径は、マイクロトラック粒度分析計((株)日機装製)を使用した。
【0117】
【表1】
Figure 0004372301
【0118】
c)透明被膜用酸化物粒子の調製
(1)積層粒子(P-1)の調製
平均粒径5nm、SiO2 濃度20重量%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2 として1.5重量%の珪酸ナトリウム水溶液9000gとAl2 3 として0.5重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、殆ど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のSiO2 ・Al2 3
核粒子前駆体粒子の分散液(A)を調製した。(第1工程)
この核粒子前駆体粒子の分散液(A)500gに純水1,700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2 濃度3.5重量%)3,000gを添加してシリカ保護膜を形成した核粒子前駆体粒子の分散液を得た。ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13重量%になったシリカ保護膜を形成した核粒子前駆体粒子の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。
【0119】
次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、一部のアルミニウムが除去されたSiO2・Al23核粒子の分散液(B)を調製した。(第2工程)
上記核粒子の分散液(B)1500gと、純水500g、エタノール1,750gおよび28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO2 28重量%)104gを添加し、核粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆した。次いで、エバポレーターで固形分濃度5重量%まで濃縮した後、濃度15重量%のアンモニア水を加えてpH10とし、オートクレーブで180℃、2時間加熱処理し、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20重量%の積層粒子または空洞粒子(P-1)の分散液を調製した。(第3工程)
この積層粒子(P-1)の平均粒径、SiO2/MOx(モル比)、および屈折率を表3に示す。ここで、平均粒径は動的光散乱法により測定し、屈折率は標準屈折液としてCARGILL 製のSeriesA、AAを用い、以下の方法で測定した。
【0120】
粒子の屈折率の測定方法
▲1▼複合酸化物分散液をエバポレーターに採り、分散媒を蒸発させる。
▲2▼これを120℃で乾燥し、粉末とする。
▲3▼屈折率が既知の標準屈折液の数滴を、ガラス板上に滴下し、これに上記粉末を混合する。
【0121】
▲4▼上記▲3▼の操作を種々の標準屈折液で行い、混合液が透明になったときの標準屈折液の屈折率をコロイド粒子の屈折率とする。
(2)積層粒子(P-2)の調製
上記積層粒子(P-1)と同様に調製した核粒子前駆体粒子の分散液(A)100gに、純水1,900gを加えて95℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液(SiO2として1.5g重量%)27,000gおよびアルミン酸ナトリウム水溶液(Al23として0.5重量%)27,000gを同時に徐々に添加し、核粒子前駆体粒子の分散液(A)の粒子を核として粒子成長を行わせた。添加終了後、室温まで冷却した後、限外濾過膜で洗浄、濃縮して、固形分濃度20重量%のSiO2・Al23核粒子前駆体粒子の分散液(C)を得た。
(第1工程)
この核粒子前駆体粒子の分散液(C)500gを採り、実施例1と同様の方法により、第2工程の保護膜の形成と脱アルミニウム処理、および、第3工程のエチルシリケートの加水分解物による被覆処理等を行い、表2に示す積層粒子(P-2)の分散液を調製した。
【0122】
(3)積層粒子(P-3)の調製
上記で得られたSiO2・Al23核粒子前駆体粒子の分散液(C)100gに純水1,900gを加えて95℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液(SiO2 として1.5g重量%)7,000gおよびアルミン酸ナトリウム水溶液(Al2 3 として0.5重量%)7,000gを同時に徐々に添加し、粒子成長を行わせた。添加終了後、室温まで冷却した後、限外濾過膜で洗浄、濃縮して、固形分濃度13重量%のSiO2 ・Al2 3核粒子前駆体粒子の分散液(D)を得た。(第1工程)
この前駆体粒子分散液(D)500gを採り、これに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。
【0123】
次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、一部のアルミニウムが除去されたSiO2 ・Al2 3 核粒子の分散液(E)を調製した。(第2工程)
上記核粒子の分散液(E)1500gと、純水500g、エタノール1,750gおよび濃度28重量%のアンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO2 28重量%)104gを添加し、核粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆した。次いで、エバポレーターで固形分濃度5重量%まで濃縮した後、濃度15重量%のアンモニア水を加えてpH10とし、オートクレーブで180℃、2時間加熱処理し、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換して表2に示す固形分濃度20重量%の積層粒子(P-3)の分散液を調製した。(第3工程)
(4)積層粒子(P-4)の調製
前記積層粒子(P-1)を調製する際のアルミン酸ナトリウムの代わりに、SnO2 として0.5重量%の錫酸カリウム水溶液9,000gを用いた以外は、積層粒子(P-1)と同様の方法で、固形分濃度20重量%のSiO2 ・SnO2 核粒子前駆体粒子を得たのち、さらに積層粒子(P-1)と同様の方法で、保護膜の形成、脱Sn処理および被覆処理等を行い、表2に示す積層粒子(P-4)の分散液を調製した。
【0124】
(5)多孔質SiO2・Al23粒子(P-5)の調製
積層粒子(P-1)の調製と同様にして、平均粒径5nm、SiO2 濃度20重量%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2 として1.5重量%の珪酸ナトリウム水溶液9000gとAl2 3 として0.5重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄した後、溶媒をエタノールに置換して表2に示す固形分濃度20重量%のSiO2 ・Al2 3粒子(P-5)の分散液を調製した。
【0125】
(6)非孔質シリカ粒子(P-6)の調製
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:カタロイド SI−45P、濃度40重量%)をエタノールで希釈し、ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換して表2に示す固形分濃度20重量%の非孔質シリカ粒子(P-6)の分散液を調製した。
【0126】
(7)多孔質シリカ粒子(P-7)の調製
メチルシリケート(SiO2 39重量%)100gとメタノール530gとの混合液に、濃度28重量%のアンモニア水を添加し、35℃で24時間撹拌した後、限外濾過膜を用いて洗浄した後、溶媒をエタノールに置換して表2に示す固形分濃度20重量%の多孔質シリカ粒子(P-7)の分散液を調製した。
【0127】
【表2】
Figure 0004372301
【0128】
d)マトリックス形成成分液 (M) の調製
正珪酸エチル(TEOS)(SiO2:28重量%)50g、エタノール194.6g、濃硝酸1.4gおよび純水34gの混合溶液を室温で5時間攪拌してSiO2濃度5重量%のマトリックス形成成分を含む液(M)を調製した。
【0129】
【実施例1〜5】
透明導電性被膜形成用塗布液の調製 (CS-1) (CS-4)
調製した(S-1)〜(S-4)分散液(金属微粒子(P-1)〜(P-4)の分散液)、(OP-1)〜(OP-4)分散液と、上記マトリックス形成成分を含む液(M)、エタノール、イソプロピルアルコール、t-ブタノール、1-エトキシ-2プロパノールから表3に示す透明導電性被膜形成用塗布液(CS-1)〜(CS-4)を調製した。
【0130】
透明被膜形成用塗布液 (B-1 B-5) の調製
上記マトリックス形成成分を含む(M)液に、エタノール/ブタノール/ジアセ トンアルコール/イソプロピルアルコール(2:1:1:5重量混合比)の混合溶媒を加え、表4に示す上記で調製した積層粒子(P-1〜P-4)の分散液を積層粒子の濃度が表に示す濃度となるように添加して、SiO2 濃度1重量%の透明被膜形成用塗布液(B-1〜B-5)を調製した。
【0131】
透明導電性被膜付パネルガラスの製造
ブラウン管用パネルガラス(14")の表面を40℃で保持しながら、スピナー 法で100rpm、90秒の条件で上記透明導電性被膜形成用塗布液(CS-1)、(CS-3)および(CS-4)をそれぞれ透明導電性被膜の膜厚が40nmとなるように塗布し乾燥した。また同様に、上記透明導電性被膜形成用塗布液(CS-2)を透明導電性被膜の膜厚が20nmとなるように塗布し乾燥した。
【0132】
次いで、このようにして形成された各透明導電性被膜上に、同じように、スピナー法で100rpm、90秒の条件で透明被膜形成用塗布液(B-1〜B-5)を透明被膜の膜厚がそれぞれ100nmとなるように塗布・乾燥し、160℃で30分間焼成して透明被膜付基材を得た。
上記で得た各透明導電性被膜付基材の表面抵抗を表面抵抗計(三菱油化(株)製:LORESTA)で測定し、ヘーズをへーズコンピューター(日本電色(株)製:3000A)で測定した。視感反射率は反射率計(大塚電子(株)製:MCPD-2000)を用いて測定し、波長400〜700nmの範囲で反射率が最も低い波長での反射率としこれを表示した。
【0133】
なお、本実施例で使用される金属微粒子、酸化物粒子および積層粒子の粒子径は、マクロトラック粒度分析計((株)日機装製)を使用して測定した。
透明被膜の屈折率
上記で調製した透明補膜形成用塗布液をガラス板(10×10cm)に、スピナー法で100rpm、90秒の条件で透明被膜形成用塗布液(B-1〜B-5)を透明被膜の膜厚がそれぞれ100nmとなるように塗布・乾燥し、160℃で30分間焼成して透明導電性被膜付基材とした後、エリプソメーター(ULVAC社製:EMS−1、波長550nm)で測定し、結果を表に示した。
【0134】
密着性の評価
透明被膜の表面にナイフで縦横それぞれ1mmの間隔で11本の傷を付け100個の升目を作り、これに粘着テープ(セロファンテープ)を接着し、ついで粘着テープを剥離したときに、被膜が剥離せず残存している升目の多少を以下の2段階で評価した。
【0135】
残存升目の数95個以上:○
残存升目の数94個以下:×
表示性能の評価
また、上記で得た透明導電性被膜付基材を用いて、表示装置を組立て、表示性能を評価した。
【0136】
表示性能の評価方法:
表示装置画面から5m離れた位置に円形の蛍光灯(60W)を点灯し、画面より1m離れた位置に画面を乾燥し、円形の蛍光灯の映り込みを以下の尺度で観察した。
映り込みわずかに認められるが、ほとんど気にならないもの :◎
弱い映り込みがあるがそれほど、気にならないもの :○
強い映り込みがあり、気になるもの :△
鮮明に着色した強い映り込みがあり、画像を妨害し、気になるもの:×
耐久性の評価
さらに、上記で得た透明被膜付基材について耐久性の評価を実施した。
【0137】
耐久性は、透明導電性被膜付基材を、100℃の沸騰蒸留水に30分間浸漬した後、前記と同様に表面抵抗、視感反射率、ヘーズを測定した。
結果を表5に示した。
【0138】
【比較例1〜4】
透明導電性被膜形成用塗布液の調製 (CS-5) (CS-7)
調製した(S-1)分散液(金属微粒子(P-1)の分散液)、(OP-5)および(OP-7)分散液、上記マトリックス形成成分を含む液(M)、エタノール、イソプロピルアルコール、t-ブタノール、1-エトキシ-2プロパノールから表3に示す透明導電性被膜形成用塗布液(CS-5)〜(CS-7)を調製した。
【0139】
透明被膜形成用塗布液 (B-6 B-8) の調製
上記マトリックス形成成分を含む(M)液に、エタノール/ブタノール/ジアセ トンアルコール/イソプロピルアルコール(2:1:1:5重量混合比)の混合溶媒を加え、上記で調製した粒子(P-5〜P-7)分散液を粒子の濃度が表4に示す濃度となるように添加して、SiO2 濃度1重量%の透明被膜形成用塗布液(B-6〜B-9)を調製した。なお、比較例3では実施例5で使用した透明被膜形成用塗布液(B-5)を使用した。
【0140】
透明被膜付パネルガラスの製造
上記で得た透明被膜形成用塗布液(B-6〜B-8)および(B-5)を用いて、実施例1と同様にして透明被膜付基材を得た。
得られた透明被膜付基材の表面抵抗、ヘーズ、反射率、密着性および表示性能を評価し、結果を表5に示した。
【0141】
また、実施例1と同様に耐薬品性を評価した。
結果を表5に示す。
【0142】
【表3】
Figure 0004372301
【0143】
【表4】
Figure 0004372301
【0144】
【表5】
Figure 0004372301

【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る透明導電性被膜付基材に設けられた傾斜屈折率膜を模式的に表す概略図を示す。
【符号の説明】
1・・・・・・基材
2・・・・・・透明導電性被膜
3・・・・・・透明被膜
4・・・・・・金属微粒子
5・・・・・・酸化物粒子

Claims (7)

  1. 基材と、該基材表面に形成された透明導電性被膜と、該透明導電性被膜表面に形成された透明被膜とからなり、
    前記透明導電性被膜および透明被膜が、基材側から透明被膜側に向かって屈折率が順次低下する傾斜屈折率膜であり、
    前記透明導電性被膜が、金属微粒子と酸化物粒子とを含み、
    (i)酸化物粒子の屈折率(R o )と、金属微粒子の屈折率(R m )と、透明被膜の屈折率(R t )とが、下記式(1)で表される関係を満足し、R t <R o <R m …(1)
    (ii)酸化物粒子の平均粒子径(D o )と、透明導電性被膜の厚さ(L e )と、透明被膜の厚さ(L t )とが、下記式(2)で表される関係を満足し、
    1.2L e <D o <5L e …(2)
    (ただし、D o はL e +L t を超えない)
    (iii)酸化物粒子の平均粒子径(D o )と、金属微粒子の平均粒子径(D m )とが下記式(3)で表される関係を満足する
    2D m <D o <200D m …(3)
    ことを特徴とすることを特徴とする透明導電性被膜付基材。
  2. 前記透明被膜の屈折率が1.45以下であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電性被膜付基材。
  3. 前記透明被膜が、無機酸化物マトリックスとともに、
    (i)シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる多孔質の核粒子と、該核粒子表面のシリカ被覆層とからなる積層粒子、または、
    (ii)内部に空洞を有し、かつ空洞内に溶媒および/または気体が充填された空洞粒子を含み、かつ前記積層粒子または空洞粒子の平均粒子径が5〜300nmの範囲にあり、積層粒子のシリカ被覆層の厚さまたは空洞粒子の粒子壁の厚さが1〜20nmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電性被膜付基材。
  4. 透明導電性被膜が、さらに、前記金属微粒子以外の導電性微粒子を含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性被膜付基材。
  5. 透明導電性被膜が、さらにマトリックス成分を含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性被膜付基材。
  6. 前記マトリックス成分がシリカ、シリカ系複合酸化物、ジルコニア、酸化アンチモンからなる群から選ばれる1種以上の無機酸化物または塗料用樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の透明導電性被膜付基材。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電性被膜付基材で構成された前面板を備え、透明導電性被膜が該前面板の外表面に形成されていることを特徴とする表示装置。
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