JP5299044B2 - 光学フィルタおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
なお、本発明において単に電磁波という場合は、周波数が上記範囲を中心とするKHz〜GHz帯近辺の電磁波のことをいう。赤外線、可視光線、紫外線、X線等は含まないものとする(例えば、赤外線帯域の周波数の電磁波は赤外線と呼称する)。
そこで、我々は、低コスト化を狙い、金属パターン(EMIメッシュ)の金属材料として、銅箔よりも安いアルミニウム箔を用いた電磁波遮蔽フィルタの検討を行ったが、その結果、アルミニウム箔の実用化には、次の解決すべき課題があることがわかった。なお、以下の課題は、パターンの線幅及び厚みの寸法が100μm程度以上の場合は目立たない。高品質のディスプレイ用途の為に透視性を追及すべく、パターンの線幅及び厚みの寸法が10〜20μm程度以下に微細化した場合において、特に顕在化してくるものであることも判明した。
(b)エッチング液に接触した領域の酸化皮膜が一部除去されると、アルミニウム自体は化学的に活性の為、除去された部分がまだ除去されていない部分に対して急速にエッチングが進んでしまい、均一な安定したエッチングが困難である。
(c)上記(a)及び(b)の結果として、金属パターンのライン部の輪郭に、ギザ(zigzag状のこと。ラインの輪郭に凹凸があって直線性が悪くギザギザしている形態をこのように呼称する。)や断線が発生し、ラインのパターン精度が、銅箔の場合に比べてアルミニウムは劣る。
また、反射防止剤の塗りムラや気泡の混入を防止する為に平坦化層を1層追加することは、加工費用の高騰、加工時間と工程数増による生産効率の低下に繋がる。
また、これに加えて更に、塗りムラや気泡の混入のない優れた光鏡面反射防止性を有する光学フィルタを提供することである。
また、そのような光学フィルタの製造方法を、加工費用の高騰、加工時間と工程数増による生産効率の低下なしに光学フィルタを製造する方法を提供することである。
しかも、製造面でも、アルミニウムの酸化皮膜はそのままでケミカルエッチングできるので、酸化皮膜の追加的な除去工程が不要で、製造工程の複雑化やコストアップも避けられる。
また、本発明のフィルタは、金属パターン層の凹凸を埋めてその表面が平坦面である平坦化層と、光鏡面反射防止層を設けたことにより、電磁波遮蔽性とともに、優れた光鏡面反射防止性とを有する、特にディスプレイ用に好適な、光学フィルタとなる。
同図の場合、透明基材1の一方の面に、アルミニウムパターン2が形成され、アルミニウムパターン2はその上面(透明基材1から遠い側の表面)及び下面(透明基材1に近い側の表面)の表面にはアルミニウムの酸化皮膜3を有し、少なくとも上面の酸化皮膜の厚みが0〜13Åの範囲となっている。そして、同図の形態例では、このアルミニウムパターン2は、その下面側の酸化皮膜3の表面で透明接着剤層4によって透明基材1に接着固定され積層されている。透明接着剤層4はアルミニウムパターンの開口部も含めて透明基材1の全面に形成されている。
そして、本発明による光学フィルタは、表面に酸化皮膜3を有するアルミニウムパターン2の上に、透明樹脂からなり該アルミニウムパターンの凹凸を埋めてその表面が平坦面である平坦化層5と、光鏡面反射防止層6がこの順に積層されている。なお、図1において、上方が観察者(視聴者)側であり、下方が画像表示装置側である。
以下、本発明の光学フィルタの構成につき、詳細に説明する。
透明基材1は、可視領域での透明性(光透過性)、耐熱性、機械的強度等の要求物性を考慮して、公知の材料及び厚みを適宜選択すればよく、ガラス、セラミックス等の透明無機物の板、或いは樹脂板など板状体の剛直物でもよい。ただし、生産性に優れるロール・トゥ・ロールでの連続加工適性を考慮すると、フレキシブルな樹脂フィルム(乃至シート)が好ましい。なお、ロール・トゥ・ロールとは、巻取(ロール)から巻き出して供給し、適宜加工を施し、その後、巻取に巻き取って保管する加工方式をいう。
透明無機物としては、ソーダ硝子、カリ硝子、硼珪酸硝子、鉛硝子等の硝子、或いはPLZT、石英等の透明セラミックス等である。
また、透明基材は、その表面に、コロナ放電処理、プライマー処理、下地処理などの公知の易接着処理を行ったものでもよい。
アルミニウムパターン2はアルミニウムで形成したパターン層であり、該層自体は不透明であるが、開口部など該層の非形成部を設けたパターンとすることによって、電磁波遮蔽性能と光透過性とを両立させた層である。そして、本発明のアルミニウムパターン2は少なくともその上面に特定の厚み範囲0〜13Åのアルミニウムの酸化皮膜3を有する。なお、1Å=0.1nmである。
アルミニウムパターンのパターンを形成するには、透明基材上にアルミニウム箔などパターン形成前のアルミニウム層を積層した後、ケミカルエッチングによって形成できる。
ケミカルエッチング時のレジストパターンのパターン形成はフォトリソグラフィー法(パターン露光法)、印刷法などの公知のパターン形成法を適宜選択すればよい。なかでも、フォトリソグラフィー法は印刷法に比べて、電磁波遮蔽フィルタに要求されるライン幅やその均一性など高精度のパターンを安定的に形成できる点で好ましい方法である。
エッチングは、アルミニウム層の上面のレジストパターン非形成部におけるアルミニウムの酸化皮膜も含めて行われる。エッチングの前処理として、該上面のアルミニウムの酸化皮膜の除去は特に必要ない。
そして、レジストパターン形成部に対応した、上面や下面のアルミニウムの酸化皮膜3は、アルミニウムパターン2の上面や下面の酸化皮膜3となって残る。
アルミニウムの酸化皮膜はアルミニウム酸化物を含む層であり、アルミニウムパターンをアルミニウム箔を利用して形成する場合、アルミニウムの酸化皮膜は箔の上面及び下面の表裏両面に存在するが、本発明ではケミカルエッチングでパターン形成する際に、はじめにエッチングされる側、つまり上面側について、その厚みを規定する。アルミニウムパターンの少なくとも上面のアルミニウムの酸化皮膜の厚みについて、その上限を13Å、好ましくは12Å、より好ましくは10Å、更に好ましくは8Åとする。
少なくとも上面のアルミニウムの酸化皮膜の厚みについて、その上限を上記のようにすることで、該酸化皮膜がたとえ存在したままでも、安定したケミカルエッチングが可能となり、銅を安価なアルミニウムに変更したが故のパターン精度不良を回避できる。
ただ、アルミニウムの酸化皮膜は、不動態膜と言われており、アルミニウム箔を加工、搬送、保管する過程中において、アルミニウム箔の内部に(不用意な、望まれない)酸化乃至は腐食が進行することを防止する機能を有するので、この点では2〜3Å程度の、緻密なアルミニウム不動態膜としての酸化皮膜を形成しておいてもよい。
ただ、下面のアルミニウムの酸化皮膜も上面の酸化皮膜と同程度の厚みで存在するとすれば、下面のアルミニウムの酸化皮膜の厚みについても、上記した上面のアルミニウムの酸化皮膜の厚みと同じ規定をすることができる。
なお、アルミニウムパターンはその表面に黒化処理層を形成してもよい。
黒化処理層は、アルミニウムパターンやその表面の酸化皮膜による光反射を抑制することで、外光吸収、画像のコントラスト向上を図る層である。黒化処理層は外光吸収、画像のコントラスト向上が必要な場合に設ける。黒化処理層はアルミニウムパターンの表面、表面に酸化皮膜がある場合はその皮膜表面に設けて、その光反射率を低下させる層である。
透明接着剤層4は、アルミニウムパターンを透明基材に固定するための層であり、例えば、アルミニウムパターンをアルミニウム箔から形成する場合に、アルミニウム箔を透明基材に接着固定するために使用される。なお、透明接着剤層は、アルミニウムパターンをアルミニウム蒸着で透明基材上に直接積層したアルミニウム層から形成する場合には省略できる。
金属パターン層は凹凸表面(開口部が凹、線條部が凸)をなす。そして、光鏡面反射防止層を形成する材料は、一般的に、凹凸を充填して表面を平坦化する性能には乏しい為、金属パターン層上に直接、光鏡面反射防止層を形成すると、該金属パターン層の凹凸を該光鏡面反射防止層が完全に充填しない場合には、該光鏡面反射防止層表面に残留した凹凸が画像光を散乱する。又、該光鏡面反射防止層が完全に金属パターン層の凹凸を充填し切れた場合であっても、該金属パターン層の凹部内の空気が十分に置換されずに残留し、気泡となって画像光を散乱して、画像に曇りを生じ、又画像の明暗コントラストの低下、画像端部の輪郭の不鮮明化等の画質低下をもたらす。これを防止する為に、金属パターン層と光鏡面反射防止層との間に平坦化層を介在させる。
熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリオレフィン樹脂等が用いられる。
ここで、アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−エチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体、メチル(メタ)アクリレート−エチレン共重合体、メチル(メタ)アクリレート−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−2ヒドロキシ3フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等が挙げられる(なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する)。
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4シクロヘキサンジメタノール等の多価アルコールと、テレフタール酸、イソフタール酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸等の多塩基酸とを縮重合させたものが挙げられる。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、例えば、酢酸ビニル含有量が5〜20質量%程度、平均重合度350〜900程度の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。なお、必要に応じ、更にマレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸等のカルボン酸を共重合させたものでもよい。
セルロース系樹脂としては、例えば、ニトロセルロース(硝化綿)、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性ウレタン樹脂、熱硬化性の不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂当が用いられる。
ここで、ウレタン樹脂としては、例えば、(多価)ポリオールと(多価)イソシアネートとを反応させてなるから成るものである。(多価)ポリオールとしては、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール等が挙げられる。(多価)イソシアネートとしては、2,4トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、1,6ヘキサメチレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートの脂肪族(乃至脂環式)イソシアネートが挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂としては、電離放射線で架橋等の反応により重合硬化するモノマー(単量体)、或いはプレポリマーやオリゴマーが用いられる。モノマーとしては、例えば、ラジカル重合性モノマー、具体的には、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートが挙げられる。また、プレポリマー(乃至はオリゴマー)としては、例えば、ラジカル重合性プレポリマー、具体的には、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、等の各種(メタ)アクリレートプレポリマー、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオール系プレポリマー、不飽和ポリエステルプレポリマー等が挙げられる。その他、カチオン重合性プレポリマー、例えば、ノボラック系型エポキシ樹脂プレポリマー、芳香族ビニルエーテル系樹脂プレポリマー等が挙げられる。
これらモノマー、或いはプレポリマーは、要求される性能、塗布適性等に応じて、1種類単独で用いる他、モノマーを2種類以上混合したり、プレポリマーを2種類以上混合したり、或いはモノマー1種類以上とプレポリマー1種類以上とを混合して用いたりすることができる。
光重合開始剤としては、ラジカル重合性のモノマー又はプレポリマーの場合には、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系等の化合物が、また、カチオン重合系のモノマー又はプレポリマーの場合には、メタロセン系、芳香族スルホニウム系、芳香族ヨードニウム系等の化合物が用いられる。これら光重合開始剤は、上記モノマー及び/又はプレポリマーからなる組成物100質量部に対して0.1〜5質量部程度添加する。
なお、電離放射線としては、紫外線又は電子線が代表的なものであるが、この他、可視光線、X線、γ線等の電磁波、或いはα線、各種イオン線等の荷電粒子線を用いることもできる。
平坦化層の形成方法は、通常は、上記樹脂を、金属パターン層の凹凸を充填し得る程度に軟化させるか乃至は流動性を付与せしめる。より好ましくは、液状物とした状態で、透明基材上に形成された金属パターン層と光鏡面反射防止層との間に位置して、該金属パターン層の凹凸を充填するように塗工する。なお、ここでいう流動性としては、Newton粘性には限らず、ダイラタンシー或いはティキソトロピーの非Newton粘性であってもよい。粘度についても金属パターン層の凹凸を充填し得るに足る粘度であればよく、塗工或いは転写(平坦化層を転写で形成する場合)時の加工条件や該凹凸の程度に応じて適宜調整する。
塗工対象は、金属パターン層の凹凸側にのみ塗工、光鏡面反射防止層側にのみ塗工、或いは金属パターン層の凹凸側上及び光鏡面反射防止層側の両方に分割して塗工のいずれも可能である。塗工後、該液状物の塗膜を固体化乃至硬化せしめて平坦化層を形成する。
その他、別途、転写シート上に予め塗工形成しておいた平坦化層を、単独で或いは光鏡面反射防止層と一緒に、金属パターン層上に転写して形成する形態も選択できる。
上記熱可塑性樹脂、或いは上記電離放射線硬化性樹脂のうちでも特に高分子量であって未硬化物が室温でも固体状態のものを、一旦溶剤希釈して基材上に塗工形成した後、溶剤を乾燥除去してなる上記電離放射線硬化性樹脂の未硬化物を使用する場合(斯かる形態も熱可塑性樹脂に包含する)のように、それ自体が室温にて固体の高分子重合体からなる樹脂の場合は、これを融点乃至溶融温度以上に加熱して液状物化せしめるか(これを溶融ともいう)、もしくは有機溶剤により溶液化する。斯かる液状物又は溶液を金属パターン層上に塗工し、しかる後、融点乃至溶融温度以下に冷却もしくは溶剤を乾燥除去して固体化せしめ、平坦化層とする。特に、上記熱可塑性樹脂の場合は、専ら、この形態による。熱可塑性樹脂を溶融して用いる場合の塗工法としては、Tダイからの溶融押出し塗工法が代表的なものである。なお、熱可塑性樹脂の中でも、特に、上記の電離放射線硬化性樹脂の室温で固体状態の未硬化物を接着剤層に用いる場合には、接着剤層を加熱液状化して、冷却固体化して一旦接着が完了した後に、更に、電離放射線照射又は硬化せしめることが好ましい。このように硬化せしめることにより、冷却固体化した接着剤層は、接着力、強度、及び耐熱性ともに向上し、再度加熱しても再び接着剤が溶融乃至軟化することがなくなる。
一方、金属パターン層の凹凸面上に平坦化層を、転写して、形成する形態においては、後述の如き剥離基材上に、予め転写層として平坦化層を塗工形成した構成の転写シートを容易しておく。次いで、該転写シートの平坦化層側の面が金属パターン層側に当接する向きで、該転写シートを金属パターン層上に圧着する。そして、該平坦化層がその時点において流動性を有する場合は、その状態のままで、また該平坦化層がその時点において流動性がない場合は、該平坦化層を加熱し、軟化或いは溶融等の方法により流動化せしめる。次いで、該流動性の平坦化層を金属パターン層の凹凸内に充填させ、該凹凸内の空気と置換せしめる。なお、この過程の間、平坦化層の金属パターン側とは反対側面は、剥離基材の平坦面と接触し、変形を規制されるため、平坦面に保たれる。しかる後、該平坦化層を金属パターン層側に残し、該剥離基材のみを剥離除去する。
なお、この転写形態において、剥離基材上に、転写層として更に光鏡面反射防止層も形成しておき;
剥離基材/光鏡面反射防止層/平坦化層
の構成としておけば、金属パターン層上に平坦化層と同時に光鏡面反射防止層も形成することができ、好ましい。なお、斯かる転写形態では、平坦化層が転写層を被転写体に接着する接着剤層としても機能する。
下記防眩層又は反射防止層のいずれかを選択する。或いは、両者を併用して設けることもできる。
防眩層(Anti Glare層、略称してAG層)は、外来光を散乱もしくは拡散させるために、光の入射面を粗面化するか、或いは層内に光拡散性粒子を分散してなるものである。この粗面化処理には、サンドブラスト法やエンボス法等により基体表面に直接微細凹凸を形成して粗面化する方法;基体表面に放射線、熱のいずれかもしくは組み合わせにより硬化する樹脂バインダ中に、光拡散性粒子としてシリカなどの無機充填剤や、樹脂粒子などの有機充填剤を含有させて塗膜表面に充填剤に対応する微小凹凸を突出させた塗膜により粗面化層を設ける方法;及び基体表面に海島構造による多孔質膜を形成する方法等を挙げることができる。樹脂バインダの樹脂としては、表面層として表面強度が望まれる関係上、硬化性アクリル樹脂や、下記ハードコート層と同様に電離放射線硬化性樹脂等が好適に使用される。
また、層内に光拡散性粒子を分散させた形態の場合は、塗膜中に分散させた前記充填剤と塗膜バインダー樹脂との間に屈折率差(好ましくは、0.14以上)を有するように材料を選定する。この形態の場合は、塗膜表面は平坦面(平滑面)であってもよい。
防眩層の厚みは特に限定されるものではないが、0.07μm以上20μm以下が好ましい。
また、該防眩層の凹凸の平均間隔をSmとし、凹凸部の平均傾斜角をθaとし、凹凸の十点平均粗さをRzとした場合に、Smが60〜250μmであり、θaが0.3度〜1.0度であり、且つRzが0.3〜1.0μmであることが好ましい。
なお、上記Sm、θa及びRzはJIS B0601 1994に準拠し、例えば、表面粗さ測定器((株)小坂研究所製「SE−3400」)で測定し得るものである。
反射防止層(Anti Reflection層、略称してAR層)は、低屈折率層の単層、或いは、低屈折率層と高屈折率層とを、該低屈折率層が最上層に位置するように交互に積層した多層構成が一般的であり、蒸着やスパッタ等の乾式成膜法で、或いは塗工等の湿式成膜法も利用して形成することができる。
なお、ここで高(低)屈折率層とは、該層と隣接する層(例えば、平坦化層或いは低(高)屈折率層)と比較して該層の屈折率が相対的に高(低)いという意味である。
反射防止層に更に耐擦傷機能を付与する場合には、下記耐擦傷機能(ハードコート)層の項で記載するような硬度の高い材料を適宜用いて形成する。
斯かる低屈折率を有する材料としては、例えばLiF(屈折率n=1.36)、MgF2(屈折率n=1.38)、3NaF・AlF3 (屈折率n=1.4)、AlF3(屈折率n=1.37)、Na3AlF6(屈折率n=1.33)、NaF(屈折率n=1.33)、CaF2(屈折率n=1.44)、Na3AlF6(屈折率n=1.33)、SiO2(屈折率n=1.45)等の無機材料を微粒子化し、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂等に含有させた無機系低反射材料、フッ素系・シリコーン系の有機化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、放射線硬化型樹脂等の有機低反射材料を挙げることができる。
高屈折率層に用いる樹脂については、透明なものであれば任意の樹脂が使用可能であり、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、電離放射線(紫外線を含む)硬化型樹脂などを用いることができる。熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を用いることができ、これらの樹脂に、必要に応じて架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等を加えることができる。
高い屈折率を有する超微粒子としては、例えば、紫外線遮蔽の効果をも得ることができる、ZnO(屈折率n=1.9)、TiO2(屈折率n=2.3〜2.7)、CeO2(屈折率n=1.95)の微粒子、また、帯電防止効果が付与されて埃の付着を防止することもできる、アンチモンがドープされたSnO2(屈折率n=1.95)又はITO(屈折率n=1.95)の微粒子、また近赤外線遮蔽の効果も得ることができる、Cs0.33WO3(セシウム含有酸化タングステン(屈折率n=2.5〜2.6)の微粒子、また、耐摩耗性の効果も得ることができる、金剛石(ダイヤモンド、C;屈折率n=2.37〜2.47)の微粒子が挙げられる。その他の微粒子としては、Al2O3(屈折率n=1.63)、La2O3(屈折率n=1.95)、ZrO2(屈折率n=2.05)、Y2O3(屈折率n=1.87)等を挙げることができる。これらの微粒子は単独又は混合して使用され、有機溶剤又は水に分散したコロイド状になったものが分散性の点において良好であり、その粒径としては、1〜100nm、塗膜の透明性から好ましくは、5〜20nmであることが望ましい。
低屈折率層の厚みは特に限定されるものではないが、通常、低屈折率層の屈折率と厚みの積が反射率を最小化すべき可視光線の波長(380nm〜780nm)の1/4程度(95〜195nm)とする。
耐擦傷機能(ハードコート)層は、JISK5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものであることが好ましく、このような硬度と上記透明(樹脂)基材と同様な透明性を実現できるものであれば、材料は特に限定されない。
耐擦傷機能(ハードコート)層は、通常樹脂硬化層として形成される。形成する位置及び形態としては、上記光鏡面反射防止層の構成層の何れかを兼用するか、或いは上記光鏡面反射防止層と平坦化層との間に独立した別層として形成する。
用いる硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂などを要求性能などに応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系などが挙げられる。例えば、アクリレート系の電離放射線硬化性樹脂は、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートプレポリマー、或いは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーを単独で或いはこれらの中から2種以上選択して組み合わせて配合した電離放射線硬化性樹脂を用いた塗膜として形成することができる。
耐擦傷機能(ハードコート)は上記材料を必要に応じて溶剤で希釈して上記平坦化層或いは光鏡面反射防止層上に塗工等の湿式成膜法により形成することができる。
耐擦傷機能層の厚みは特に限定されるものではないが、1.0μm以上20μm以下が好ましく、より好ましくは3.0μm以上5μm以下である。
平坦化層上への光鏡面反射防止層6の形成法としては、転写シート上から光鏡面反射防止層を転写する方法(転写シート上の光鏡面反射防止層の上に平坦化層を形成し、両層を導電パターン層上に同時に転写形成してもよい)、予め透明樹脂シートからなる支持体上に形成した光鏡面反射防止層を貼り合わせて積層する方法(ラミネート法)、或いは平坦化層上に直接光鏡面反射防止層を塗工する方法のいずれでもよい。
以下、転写法、ラミネート法について説明する。
本発明では、剥離性基材上に光鏡面反射防止層、或いは光鏡面反射防止層及び平坦化層を剥離可能に積層してなる転写シートを用いた転写法が、光鏡面反射防止層の形成法として好ましい方法の一つである。
予め導電パターン層上に形成された平坦化層上に光鏡面反射防止層を転写するには、先ず、該平坦化層表面に、該転写シートの光鏡面反射防止層形成側を当接して加圧し、該転写シートと該平坦化層とを積層する。該加圧のみ、或いは接着剤層乃至平坦化層の材料に応じて、更に適宜、加熱、電離放射線照射等により、該光鏡面反射防止層と該平坦化層とを、間に接着剤層を介するか或いは介さないで、接着せしめる。而かる後、該剥離性基材のみを剥離除去し、該光鏡面反射防止層を該平坦化層上に残留、接着せしめる。
また、剥離性基材上に光鏡面反射防止層及び平坦化層を積層した転写シートを得、これを金属パターン層上に各種転写法により転写してもよい。転写後、剥離性基材を離型層とともに剥離し、金属パターン層の凹凸に平坦化層が埋め込まれた光鏡面反射防止層付きのフィルタを得ることができる。
適宜の基材シートからなる。必要に応じて、転写層との剥離性(離型性ともいう)を確保する為に、転写層側に離型層を形成することが好ましい。
基材シートは、適度な強度と応力に対する寸法安定性(弾性率)、耐熱性(特に転写時に過熱する場合)、及び表面平滑性の高いものを選択する。厚さ20〜100μm程度の樹脂シート、或いは坪量20〜100g/m2の紙が用いられる。該樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。紙としては上質紙、パーチメント紙、グラシン紙、硫酸紙等で地合のできるだけ均一なものが用いられる。
離型層は、基材シート自体では光鏡面反射防止層(転写層)との剥離性が不足する場合に形成される。離型層は、基材シートとの密着性が高く、且つ転写層との剥離性の高い材料を選定する。
剥離層の材料としては、メラミン樹脂、シリコン樹脂、ポリオレフィン樹脂等が用いられる。必要に応じて、これにワックス、フッ素樹脂等からなる離型剤を添加する。離型層の厚さは、通常、0.1〜5μm程度である。
剥離性基材側から平坦化層側に転写する層である。少なくとも該光鏡面反射防止層からなる。その他、必要に応じて、接着剤層、その他転写層を含む。
転写層の1要素としての接着剤層は、該光鏡面反射防止層と該平坦化層との両方に対して接着性を持つ材料からなる。
接着剤層の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂として、平坦化層のところで例示したものと同様のものの中から選択した、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ポリエステル樹脂等が使用できる。その他、熱硬化性樹脂、或いは電離放射線硬化性樹脂を使用することもできる。
接着剤層の厚みは、通常、1〜30μm程度である。
なお、接着剤層の形成形態は、次の3形態がある。
(1)転写層としては形成せずに、予め導電パターン上に形成済みの平坦化層上に接着剤層を別途塗工する。そして、平坦化層上の接着剤層上に、光鏡面反射防止層を、直接塗工、転写、或いは積層用シートの積層のいずれかの方法により、形成する。
また、該光鏡面反射防止層自体が平坦化層に対して十分な接着力を有する場合には、接着剤層は省略することができる。
(2)予め、転写シート上に転写層として接着剤層を形成しておく。一方、導電パターン層上には予め平坦化層は形成しておく。その状態にて、該平坦化層上に該転写シートから接着剤層を転写する。なお、転写シート上に、転写層として接着剤層と光鏡面反射防止層の両方を形成しておくと、1転写工程で、接着剤層の形成と光鏡面反射防止層の形成を同時に行うことができる。なお、この場合も、該光鏡面反射防止層自体が平坦化層に対して十分な接着力を有する場合には、接着剤層は省略することができる。
(3)予め、転写シート上に転写層として平坦化層としても機能し得る接着剤層(平坦化層及び接着剤層兼用層)を形成しておく。一方、導電パターン層上には平坦化層は未形成とする。その状態にて、該導電パターン層上に該転写シートから該接着剤層を転写する。接着の際に、該接着剤層を加熱等によって流動性を付与せしめ、導電パターン層の凹凸内に該接着剤層を充填し、該接着剤層の表面が平坦化して後、該接着剤層を固化せしめる。かくすることにより、導電パターン層上に、接着剤層形成と同時に平坦化層も形成が完了する。なお、この形態においても、転写シート上に、転写層として接着剤層及び平坦化層兼用層と光鏡面反射防止層の両方を形成しておくと、1転写工程で、平坦化層の形成、接着剤層の形成、及び光鏡面反射防止層の形成を同時に行うことができる。
必要に応じて設けるその他転写層としては、例えば、適宜樹脂中に近赤外線吸收剤、紫外線吸收剤、ネオン光吸收剤、各種着色色素、帯電防止剤等を含む層であり、これらは各々、近赤外線吸収層等として機能する。
本発明における光鏡面反射防止層6の形成法としては、上記の転写法の他に、ラミネート法が好ましい方法として挙げられる。
ラミネート法は、透明基材シート10の一方の面に光鏡面反射防止層を、他方の面に金属パターン層の凹凸を埋めて平坦化層となり得る厚みの熱可塑性樹脂の接着剤層11を成膜してなる光鏡面反射防止シート12を準備し、その熱可塑性樹脂の接着剤層側を金属パターン層に対面する向きで、電磁波遮蔽フィルタ上に重ね合わせて、反射防止層の上から、これを熱可塑性樹脂の融点乃至溶融温度以上に加熱して該接着剤層を液状物化せしめ、しかる後、融点乃至溶融温度未満に冷却して固体化(固化ともいう)せしめることにより、光鏡面反射防止シートをメッシュパターン状電磁波遮蔽フィルタ上に貼り合わせる(積層する、或いはラミネートするともいう)ものである。
透明基材シート10は、可視領域での光透過性、耐熱性、機械的強度等の要求物性を考慮して、公知の材料及び厚みを適宜選択すればよく、厚さ20〜200μmの樹脂シートが好ましい。該樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。
光鏡面反射防止層は、前記したように、防眩層(AG層)又は反射防止層(AR層)、及びハードコート層(HC層)から適宜構成される。
熱可塑性樹脂の接着剤は、室温(0〜30℃乃至その前後)で固体であり、100℃前後で溶融状態となり、しかる後、融点乃至溶融温度未満に冷却して固体化せしめることにより金属パターン層と基材シートの両方に対して接着性を持つ材料である。斯かる形態で用いる熱可塑性樹脂の接着剤のことを熱溶融(ホットメルト;Hot Melt)型接着剤、感熱融着型接着剤、熱封着(ヒートシール;Heat Seal)型接着剤等とも呼称する。そのような熱可塑性樹脂の接着剤の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂として、平坦化層の材料のところで列記した各種のアクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ポリエステル樹脂等が好適に使用できる。熱可塑性樹脂の接着剤層は、金属パターン層の凹凸を埋めて平坦化層ともなるものであり、その厚みは金属パターン層の厚み以上であることを要する。
基材シートの一方の面に光鏡面反射防止層を、他方の面に熱可塑性樹脂の接着剤層を成膜してなる光鏡面反射防止シートを、その熱可塑性樹脂の接着剤層側を金属パターン層に対面する向きで、電磁波遮蔽フィルタ上に重ね合わせて、光鏡面反射防止層の上から熱ローラを当て、一方向に移動させて、間歇的に熱圧を加える。熱圧を加える部分は、光鏡面反射防止シートを電磁波遮蔽フィルタに接着して、光鏡面反射防止層を設ける部分であり、画像表示装置の前面フィルタとして使う場合は、画面に対峙する領域に当たる。熱圧を加えない部分は、画像表示装置の前面フィルタとして使う場合は、画面に対峙する領域外であり、接地を取る領域に当たるが、ここでは光鏡面反射防止シートを電磁波遮蔽フィルタに接着させず(図2の如く、光鏡面反射防止シート12及び熱可塑性樹脂の接着剤層11がアルミニウムパターン2から浮いた状態にして)、光鏡面反射防止層を設けずに金属パターン層を露出させる部分である。加熱のみでもよいが、通常は、加熱及び加圧の両方を加える。加熱及び加圧(熱圧の付与)は、通常、鉄等の金屬の円筒状芯材の周囲をシリコンゴム等の耐熱性弾性体で表面を被覆した加熱ローラにて押圧する。斯かる加熱ローラによる熱圧条件としては、温度100〜220℃、圧力0.1〜50kgf/cm2、時間1〜60秒が好ましい。加熱、或いは加熱及び加圧し、溶融状態の接着剤がアルミニウムパターンの凹凸を十分に充填し、凹部内の空気と十分に置換し、該接着剤層のアルミニウムパターンと反対側(上面側)表面が十分に平坦化した後、該熱可塑性樹脂の接着剤層11をその溶融温度乃至融点未満、最終的には室温迄に冷却し、該熱可塑性樹脂の接着剤層11を固体化せしめる。斯かる冷却は、室温空気中に放置するのみでも足りるが、より効率的に冷却する場合は、冷風吹き付け、冷却ローラとの接触、冷水中への浸漬等の手段を採用する。
次に、このようにして得た電磁波遮蔽フィルタ上に光鏡面反射防止シートを間歇的にラミネートした積層体を、図2に示すように、光鏡面反射防止シートの接着剤層の電磁波遮蔽フィルタへの接着部と非接着部の境界、加工適性上、より好ましくは、該境界部から非接着部側(外側)に1〜10mm程度離れた位置で、光鏡面反射防止層側からハーフカット刃13を入れてハーフカットする。ハーフカット刃は光鏡面反射防止層及び透明基材シートを切断し、該接着剤層11の表層にほんの少し食い込む。
次に、光鏡面反射防止シートに切れ目を入れたハーフカット後の積層体について、熱圧を加えていない接着剤層が電磁波遮蔽フィルタに非接着の光鏡面反射防止シート部分を剥がすと、アルミニウムパターン層2周縁部の接地用領域上において、金属パターン層が露出する。そして、金属パターン層露出部の中間で、図2に図示の光鏡面反射防止層6から透明基材1に至る全層を1画面分毎に分離するように、全カットすることにより、長尺積層体シートを裁断し、枚葉化する。
出来上がった1画面分の光学フィルタの周縁部のうちの上記全カットした部分(周縁部の全周或いはその一部)は、長辺方向及び短辺方向は所定幅で金属パターン層が露出している。
なお、前記転写法の場合は、枚葉化フィルタ製造時、ハーフカット工程は不要である。剥離フィルム上に光鏡面反射防止層及び接着剤層兼平坦化層が形成されているため、剥離フィルムの剥離時に、電磁波遮蔽フィルタに非接着の周縁部上において、光鏡面反射防止層部分及び接着剤層部分が剥がれて金属パターン層を露出させることができる。一方、このような構成ではないラミネート法では、光鏡面反射防止シートの接着剤層の電磁波遮蔽フィルタへの接着部と非接着部の境界で、光鏡面反射防止シートをハーフカットする必要がある。
また、本発明の光学フィルタの実施形態として、上記した各種積層構成に対して、更に、光鏡面反射防止層以外の光学フィルタ層、乃至は光学フィルタ以外の各種機能層の中から選ばれた1層以上の層を、層間の適宜位置に、追加形成した形態が挙げられる。
斯かる光鏡面反射防止層以外の光学フィルタ層としては、近赤外線吸收フィルタ層、紫外線吸収フィルタ層、PDPのネオン発光を吸収するネオン光吸收フィルタ層、表示画像を好みの色調に補正する色補正機能などの特定光透過(着色)フィルタ層、特開2007−272161号公報等に記載の微小ルーバ型フィルタ層等が挙げられる。
斯かる光学フィルタ以外の各種機能層としては、反射防止層の構成層の一部として前記例示した耐擦傷機能(ハードコート)層の他、耐衝撃層(衝撃吸收層)、帯電防止層、汚染防止層、抗菌層、防黴層、防炎乃至難燃層等が挙げられる。
これらの中から上記微小ルーバ型フィルタ層を積層した形態を例に挙げて、以下詳述する。
該微小ルーバ型フィルタ層は、透明樹脂層(厚み20〜5000μm程度)中に、黒色樹脂からなり一方向に延在する細長い4角柱状又は3角柱状の形状をした楔状黒色部が、該延在方向を互いに平行にして、所定間隔で、多数埋め込まれて配列した構成からなる。隣接する該楔状黒色部の間は透明樹脂からなる透光部(開口部)をなし、光学的には、簾、格子、乃至は鎧戸を微小化したような構造をなす。該楔上黒色部の該延在方向と直交する断面(主切断面)は4角形であり、好ましくは、台形形状である。該楔上黒色部の(主切断面と直交する方向への)配列周期は、通常、10〜1000μm程度、主切断面の高さ(層の法線方向に向かって測った長さ)は層厚みの10〜100%程度、主切断面の幅(法線と直交する方向に向かって測った長さ、台形の場合は上底と下底の平均長で評価、又3角形の場合は底辺で評価)が10〜1000μm程度、底角70〜120度程度である。また、該楔状黒色部の間の透光部の幅(層の法線と直交する方向に向かって測った長さ、透光部の主切断面が台形の場合は上底と下底の平均長で評価)は10〜1000μm程度である。
該透光部の主切断面が台形の場合、該透光部のシート表面と平行な方向の断面積(開口面積)の厚み方向の変化(増減)については、(1)画像表示装置の観察者に向かって開口面積が増加する形態、(2)画像表示装置の観察者に向かって開口面積が一定不変の形態、(3)画像表示装置の観察者に向かって開口面積が減少する形態、の3通りの形態がある。用途、目的、要求性能(視野角、外光入射時の画像コントラスト等)に応じて、設計すればよい。
また、通常は、該楔上黒色部を配置した透明樹脂層の強度の補強、及び製造の容易性等の理由から、該透明樹脂層の表裏のいずれか片面又は両面に透明樹脂シートを更に積層することが好ましい。
(アルミニウムメッシュ作製)
先ず、アルミニウムパターンとする金属箔として、厚み12μmの連続帯状の圧延アルミニウム箔を用意した。このアルミニウム箔の表面の酸化皮膜の厚みを測定したところ、上面下面とも8Åだった。
また、透明基材として、片面にポリエステル樹脂系プライマー層が形成された、連続帯状の無着色透明な厚み100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。
次いで、上記透明基材のプライマー層面と、上記アルミニウム箔の光沢面とを、透明な2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤(主剤として平均分子量3万のポリエステルポリウレタンポリオール12質量部に対して、硬化剤としてキシリレンジイソシアネート系プレポリマー1質量部を含む)でドライラミネートした後、50℃で3日間養生して、アルミニウム箔と透明基材間に厚み7μmの透明接着剤層を有する連続帯状のアルミニウム箔積層シートを得た。
次いで、上記アルミニウム箔積層シートのアルミニウム箔に対して、フォトリソグラフィー法を利用したケミカルエッチング処理を行い、開口部及びライン部とからなるメッシュ状領域、及びメッシュ状領域を囲繞する外縁部に額縁状の開口部非形成の接地用領域を有するアルミニウムパターンを形成した。
上記エッチングは、具体的には、カラーTVシャドウマスク用の製造ラインを利用して、連続帯状の上記積層シートに対して、マスキングからエッチングまでを一貫して行った。すなわち、上記積層シートのアルミニウム箔面全面に感光性のエッチングレジストを塗布後、所望のメッシュパターンを密着露光し、現像、硬膜処理、ベーキングして、メッシュの開口部に相当する領域上にレジスト層が非形成となったレジストパターンを形成した後、レジスト層非形成部のアルミニウム箔を、塩化第二鉄を含む酸性水溶液のエッチング液でエッチングして除去して、メッシュ状の開口部を有したアルミニウムパターンを形成し、次いで、水洗、レジスト剥離、洗浄、乾燥を順次行った。
メッシュ状領域(画像表示領域)のメッシュの形状は、その開口部が正方形で非開口部となる線状のライン部のライン幅は20μm、そのライン間隔(ピッチ)は300μm、ライン部の高さは12μm、長方形の枚葉シートに切断した場合に、該ライン部と該長方形の長辺とが構成する劣角として定義されるバイアス角度は49度であった。このようにして、幅寸法605mmの電磁波遮蔽フィルタの中間体を得て、ロール状に巻き取った。
得られたロール状の、電磁波遮蔽フィルタの中間体を、ロール・トウ・ロールで連続的に黒化処理装置に供給し、中間体のアルミニウムパターン面に対してニッケル化合物の黒化処理層を形成し、巻き取って電磁波遮蔽フィルタを得た。
得られたアルミニウムパターンのパターン精度は、メッシュのライン幅のバラツキは4.5μmであり、面ムラは外観上問題はなく、また、電磁波遮蔽性の支障となるレベルの表面電気抵抗値のバラツキもなかった。また、目視で観察したところ、メッシュパターン開口部内の気泡に起因する白濁も認められなかった。
離型基材の準備:
片面にメラミン樹脂系の離型層が形成された幅1000mmで厚さ100μmの長尺2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。
反射防止層の形成:
反射防止層を構成する低屈折率層形成用組成物として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)1.95質量部に、光重合開始剤として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」]0.1質量部を添加し、次いで処理シリカゾル含有溶液[空隙を有する微粒子(平均粒子径60nm)、シリカゾル固形分20質量%、溶媒;メチルイソブチルケトン]12.3質量部、及びシリカ粒子含有溶液[ナカライテスク社製、商品名「sicastar」、巨大粒子(平均粒子径100nm)、シリカ粒子固形分20質量%、溶媒;メチルイソブチルケトン]1.23質量部を混合したのち、メチルイソブチルケトン83.5質量部を加えて、紫外線硬化性樹脂組成物の形態の低屈折率層形成用塗工液を調製した。
該PETフィルムの離型層に上記低屈折率層形成用塗工液を、乾燥重量0.1g/m2塗布(バーコーティング)し、次いで、40℃にて60秒間乾燥した。その後、高圧水銀燈からなる紫外線照射装置を用いて、照射線量200mJ/cm2で紫外線照射を行うことにより硬化せしめて低屈折率層となし、反射防止層を連続的に形成した。
なお、該低屈折率層の硬化後の膜厚は、90nm、屈折率が1.44になるように形成した。
次いでウレタンアクリレートプレポリマーと1,6ヘキサンジオールジアクリレートとを混合した組成物100質量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5質量部、メチルセロソルブ300質量部を混合し均一化した電離放射線硬化性樹脂から成るコーティング剤を、該反射防止層(低屈折率層)上に、ロールコーター法により塗布し、80℃で乾燥後、80Wの高圧水銀灯照射し、3μm厚さのハードコート層を形成した。
前記ハードコート層の上に、熱可塑性ポリエステル樹脂10質量部、トルエン40質量部、メチルエチルケトン50質量部からなる溶液をリバースロールコーティング法にて連続的に50m/分で塗布、乾燥し厚さ15μmの接着剤層(平坦化層兼用)を形成して、反射防止用転写シートを得た。
このようにして得た反射防止用転写シートを、上記メッシュ上に熱転写法により転写した 該転写シートの接着剤層側を該電磁波遮蔽フィルムのメッシュ側に対峙させて当接し、表面を140℃に加熱したシリコンゴムロール(鉄芯有り)にて加圧し、同時に加熱した。溶融した該接着剤層を該メッシュ凹部内に充填してのち、室温(23℃)雰囲気中で冷却して、該接着剤層を固化せしめると共に、該接着剤層の表面に該PETフィルム表面の平坦面を賦形して、冷却固化した該接着剤層表面(ハードコート層界面)を平坦面とせしめた。即ち、この場合、該接着剤層が平坦化層として機能していた。しかる後にポリエチレンテレフタレートフィルムを離型層とともに剥離し、反射防止層付きのメッシュからなる実施例1の光学フィルタを作製した。
実施例1において、メッシュパターン状電磁波遮蔽層(特に、平坦化層の金属パターン層上への形成)、及びAR転写シート(特に、接着剤層の厚み)について、以下の点を変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の光学フィルタを作製した。
実施例1と同様に、外観上の面ムラ、電気抵抗値のバラツキ、及び気泡混入による白濁のない良好なものが得られた。
(メッシュパターン状電磁波遮蔽層の形成)
実施例1と同様に作製した電磁波遮蔽フィルムの金属パターン層上に、熱可塑性ポリエステル樹脂10質量部、トルエン40質量部、メチルエチルケトン50質量部からなる溶液を、バーコタにより塗工して、乾燥させ、乾燥時の厚さ(透明基材1表面から測った値であり、開口部における膜厚)が15μmの平坦化層を形成した。
(AR転写シートの作製)
実施例1のAR転写シートと同様にハードコート層迄形成した。次いで、該ハードコート層への、熱可塑性ポリエステル樹脂10質量部、トルエン40質量部、メチルエチルケトン50質量部からなる溶液をリバースロールコーティング法にて連続的に50m/分で塗布、乾燥し、厚さ1μmの接着剤層を形成して、反射防止用転写シートを得た。
(光鏡面反射防止シートの作製)
幅500mmで厚さ100μmの長尺2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。
該PETフィルム上に、実施例1で用いたのと同じ電離放射線硬化性樹脂から成るコーティング剤を塗布し、乾燥後、高圧水銀灯照射して、6μm厚さのハードコート層を形成した。
さらに、その上に、実施例1で用いたのと同じ反射防止層を構成する低屈折率層形成用塗工液を塗布し、乾燥後、高圧水銀灯照射して、150μm厚さの低屈折率層を形成した。
ハードコート層、低屈折率層を形成した面と反対側のPETフィルム上に、塩化ビニル/酢酸ビニル系の熱溶融型接着剤(DIC社製、ヒートシール剤A−100Z)を、トルエンとメチルエチルケトンとの1対1質量比の混合溶剤に希釈した溶液を塗布して希釈溶剤を乾燥し、厚さ30μmの接着剤層を形成した。
かくして、片面にAR層、裏面に溶融型接着剤層を形成した光鏡面反射防止シートを得た。
(光鏡面反射防止シートと電磁波遮蔽フィルタの貼り合わせ)
実施例1と同様にして得た幅605mmのメッシュパターン状電磁波遮蔽フィルムのメッシュ状のアルミニウムパターン側と、上記で得た幅500mmの光鏡面反射防止シートの接着剤層側とを対峙させて重ね合わせた。
光鏡面反射防止シートのAR層の上から、鉄芯表面にシリコンゴム層を被覆してなる、加熱の幅が510mmの熱ローラを押し付けることにより、熱可塑性樹脂の接着剤が溶融してメッシュ状のアルミニウムパターン凹部内に流入し、気泡を残すことなく該メッシュ凹部内に充填する。その後、室温(23℃)雰囲気中で冷却して、該接着剤層を固化せしめて、メッシュパターン状電磁波遮蔽フィルタ上に光鏡面反射防止シートをラミネートした光学フィルタを得た。
ここで、熱ローラによる熱圧条件は、温度110℃、圧力30kgf/cm2、時間20秒である。流れ方向に熱ローラを移動して、間歇的に熱圧を加えた。熱圧を加える部分は、光鏡面反射防止シートを電磁波遮蔽フィルタに接着させてAR層を設けるアルミニウムパターン2の中央部分で、流れ方向1100mmの距離であり、熱圧を加えない部分は、光鏡面反射防止シートを電磁波遮蔽フィルタに接着せず、AR層を設けずに金属パターン層を露出させる部分で、流れ方向200mmの距離であった。
(光鏡面反射防止シートのハーフカット)
次に、このようにして得たメッシュパターン状電磁波遮蔽フィルタ上に光鏡面反射防止シートを間歇的にラミネートした積層体を、光鏡面反射防止シートの接着剤層の電磁波遮蔽フィルタへの接着部と非接着部の境界よりも42.5mm外側でAR層側からハーフカット刃(塚谷刃物製フレキシブルピナクルダイ;刃の寸法595mm×1105mm)を入れてハーフカットした。ここで、下りた状態のハーフカット刃と受け板のクリアランスは125μmであり、ハーフカット刃はAR層及びPETフィルムを切断し、接着剤層の表層にほんの少し食い込んでいる。
次に、光鏡面反射防止シートに切れ目を入れたハーフカット後の積層体について、熱圧を加えていない電磁波遮蔽フィルタに非接着の光鏡面反射防止シートを、該ハーフカット線よりも外側部分を、剥がすと、メッシュ上領域周縁部のアルミニウムパターン層(金属パターン層)が露出する。そして、流れ方向に隣接する金属パターン層で挾まれた露出部の中間で全カットすることにより、長尺積層体シートを裁断し、枚葉化した。
出来上がった1画面分の光学フィルタは、長辺方向は95mm幅で金属パターン層が露出し、短辺方向は47mm幅で金属パターン層が露出している。なお、長辺方向両端のハーフカット刃が入った箇所の金属パターン層に破壊、断線等はみられなかった。
実施例1において、アルミニウム箔の表面酸化皮膜の厚みが15Åのものを使用した以外は同様にして反射防止層付きのメッシュを作製した。
得られたアルミニウムパターンのパターン精度は、メッシュのラインに断線が多発し(ライン幅のバラツキ20μm以上)、外観的にも目視で面ムラが目立ち、また表面抵抗値が大きくばらつき、電磁波遮蔽性は実施例1の場合に比べて低下した。
2 アルミニウムパターン
3 アルミニウムの酸化皮膜
4 透明粘着剤層
5 平坦化層
6 光鏡面反射防止層
10 透明基材シート
11 熱可塑性樹脂の接着剤層
12 光鏡面反射防止シート
13 ハーフカット刃
Claims (3)
- 透明基材上に、金属パターン層と、透明樹脂からなり該金属パターン層の凹凸を埋めてその表面が平坦面である平坦化層と、光鏡面反射防止層とがこの順に積層されてなり、
該金属パターン層がアルミニウムパターン層であり、アルミニウムパターン層の少なくとも上面(透明基材に対して遠い側のアルミニウムパターン層表面)のアルミニウムの酸化皮膜の厚みが0〜13Åであることを特徴とする電磁波遮蔽性と光鏡面反射防止性とを有するフィルタ。 - 透明基材の一方の面に金属パターン層と光鏡面反射防止層とが形成されてなる電磁波遮蔽性と光鏡面反射防止性とを有するフィルタの製造方法であって、
透明基材上に、少なくとも上面のアルミニウムの酸化皮膜の厚みが0〜13Åであるアルミニウムパターン層を形成する金属パターン層形成工程と、
前記金属パターン層形成工程後、剥離性基材上に光鏡面反射防止層を剥離可能に積層してなる転写シートを準備し、該金属パターン層の凹凸を埋めてその表面が平坦面である平坦化層を間に介して、該転写シートをその光鏡面反射防止層側を金属パターン層側に対面する向きで重ねることで、該金属パターン層及び該平坦化層上に該光鏡面反射防止層を積層せしめ、該剥離性基材を剥離除去する光鏡面反射防止層転写工程とを有することを特徴とする、請求項1に記載の電磁波遮蔽性と光鏡面反射防止性とを有するフィルタの製造方法。 - 透明基材の一方の面に金属パターン層と光鏡面反射防止層とが形成されてなる電磁波遮蔽性と光鏡面反射防止性とを有するフィルタの製造方法であって、
透明基材上に、少なくとも上面のアルミニウムの酸化皮膜の厚みが0〜13Åであるアルミニウムパターン層を形成する金属パターン層形成工程と、
前記金属パターン層形成工程後、基材の一方の面に光鏡面反射防止層を、他方の面に金属パターン層の凹凸を埋めて平坦化層となり得る厚みの熱可塑性樹脂の接着剤層を成膜してなる光鏡面反射防止シートを、その熱可塑性樹脂の接着剤層側を金属パターン層に対面する向きで、金属パターン層上に重ねて、これを熱可塑性樹脂の融点乃至溶融温度以上に加熱して該接着剤層を液状物化せしめ、しかる後、冷却して固体化せしめる光鏡面反射防止シート積層工程とを有することを特徴とする、請求項1に記載の電磁波遮蔽性と光鏡面反射防止性とを有するフィルタの製造方法。
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