JP2006119345A - Nir吸収転写シート、及びそれを用いた複合電磁波シールドフィルタの製造方法 - Google Patents

Nir吸収転写シート、及びそれを用いた複合電磁波シールドフィルタの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 透明基材にメッシュ層とNIR(近赤外線)吸収層を積層した複合電磁波シールドフィルタについて、NIR吸収層の塗工時の問題を解決できる製造方法と、その為のNIR吸収転写シートを提供する。
【解決手段】 複合電磁波シールドフィルタ10の表面、裏面、或いは層間のいずれかとなる位置に、NIR吸収転写シート20でNIR吸収転写層3を転写形成して製造する。NIR吸収転写シート20は、離型性基材シート6に、近赤外線吸収剤をバインダー樹脂中に含有するNIR吸収層を少なくとも含むNIR吸収転写層3を積層した構成とする。複合電磁波シールドフィルタの製造は、例えば、透明基材1上にメッシュ層2が積層され更にメッシュ層側の表面凹凸を平坦化する平坦化樹脂層4を積層した積層体に対して、平坦化樹脂層の表面にNIR吸収転写層3を転写形成して製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、光学フィルタ機能として近赤外線(以下NIRとも記す)吸収性能を転写法で付与できるNIR吸収転写シートと、それを電磁波シールドフィルタの製造方法に適用して、電磁波シールド性能に加えて、NIR吸収性能も付与した複合電磁波シールドフィルタの製造方法に関する。該複合電磁波シールドフィルタは、特にPDP等のディスプレイ用に好適なフィルタである。また、該製造方法に使用できるNIR吸収転写シートに関する。
PDP(プラズマディスプレイパネル)、CRT(ブラウン管)ディスプレイ、等の各種ディスプレイから発生する電磁波をシールドする為に、ディスプレイ前面に配置する電磁波シールドフィルタが知られている。この様な用途に用いる電磁波シールドフィルタでは電磁波シールド性能と共に光透過性も要求される。しかし、透明基材の全面にITO(酸化スズインジウム)膜を設けたもの(特許文献1、特許文献2、等参照)では、十分な電磁波シールド性能と十分な透明性との両立が得られない。そこで、樹脂フィルムからなる透明基材に接着剤で貼り合わせた銅箔等の金属箔をエッチングでメッシュ化してメッシュ状導電体層としたもの等が知られている(特許文献3、等参照)。また、金属層等からなるメッシュ状導電体層のみのメッシュ層でも良いが、金属光沢や錆びが気になるので、通常は更にメッシュ状導電体層の表面に防錆層や黒化層等も設けた構成のメッシュ層することも知られている。
更に、ディスプレイの前面に配置する前面フィルタ等では、ディスプレイからの不要な近赤外線(NIR)放射を抑え赤外線利用機器の誤動作を防ぐNIR吸収性能が求められることがある。また、前面フィルタには軽量、薄さも要求される。この為、実際の前面フィルタに対して、電磁波シールドフィルタが電磁波シールド性能のみを有する場合には、この電磁波シールドフィルタに更に、樹脂フィルムベースのNIR吸収フィルタを粘着剤等で積層一体化して、電磁波シールド機能以外の機能を複合化させた、複合電磁波シールドフィルタとする等の工夫がなされている(特許文献3、等参照)。
しかし、更なる、軽さ、薄さ、製造工程簡略化、構成層低減(低コスト化、低ヘイズ化、光透過性向上等につながる)等の点を考慮すると、上記の様な、追加的な別部品としてNIR吸収フィルタを積層した構成のものは、まだ改善の余地があった。
そこで、追加的なNIR吸収フィルタの積層を必要としない構成の、複合電磁波シールドフィルタも提案されている。例えば、反射防止フィルタや前面板等の被着体との積層用の接着剤中や、電磁波シールドフィルタを構成する樹脂層中にNIR吸収剤を含有させてそれをNIR吸収層と兼用させたもの等であり、例えば、次の(1)〜(4)様なものが提案されている。
(1)エッチングでメッシュ状導電体層とする銅箔等を透明基材にラミネートし積層する為に塗工形成する接着剤層中、つまり透明基材とメッシュ層との間となる接着剤層にNIR吸収剤を含有させNIR吸収層としたもの(特許文献4)。
(2)上記の様な銅箔ラミネート用の接着剤層がメッシュ開口部で露出した部分が表面粗面となり光透過性が低下するのを防止したり、電磁波シールドフィルタを被着体と接着させたりする等の為に、該開口部を埋める様に塗工形成する透明化樹脂層中にNIR吸収剤を含有させNIR吸収層としたもの(特許文献4、特許文献5)。
(3)メッシュ層の開口部を埋めてメッシュ層による表面凹凸を平坦化する為にメッシュ層の面に塗工形成する平坦化樹脂層中にNIR吸収剤を含有させNIR吸収層としたもの(特許文献4、特許文献5)。
(4)透明基材に塗布形成しメッシュ層を該透明基材に接着積層する接着剤層にNIR吸収剤を含有させNIR吸収層とし、更にこの接着剤層の樹脂をプラスチック板等の他の被着体との接着にも利用する為に、被着体と重ねて加熱加圧することで前記接着剤層の樹脂を流動化させてメッシュから染み出させてメッシュの開口部を埋め尽くし被着体に接触させて接着したもの(特許文献6)。
特開平1−278800号公報 特開平5−323101号公報 特開2001−210988号公報 特開2002−311843号公報(〔請求項1〕、〔請求項2〕、〔0030〕) 特許第3473110号公報(〔請求項1〕〜〔請求項3〕、〔0014〕) 特開平11−145677号公報(〔請求項6〕、〔0007〕、〔0020〕、〔0024〕)
しかし、上記(1)〜(4)の様にして製造した複合電磁波シールドフィルタによれば、追加的な別部品としてNIR吸収フィルタの積層が不要となり、軽量、薄型、製造工程簡略化、構成層低減等の利点が得られるが、いずれも、NIR吸収層は塗工形成するものであり、塗工法に起因する課題もあった。
例えば、(2)及び(3)では塗工面がメッシュ層による凹凸面の為に、(4)では塗工後更にメッシュの開口部に流動化させる為に、品質上、光透過性を担う開口部領域でのNIR吸収層の厚みの(全面にわたる)均一性が必ずしも出し易いものではなかった。厚み均一性が損なわれると、NIR吸収剤が可視光領域にも吸収があると可視光領域で着色して見え、厚みムラが着色の面ムラとなって現れる問題があった。
また、メッシュ層上にNIR吸収層を塗工形成する場合、メッシュ層の周辺部はアースを取る額縁状のアース部としてその部分は塗工せずに露出させる様に、間欠塗工する等、塗工法を工夫する必要があり、そうすると、連続塗工に比べて厚み均一性の維持には更に注意する必要があった。
一方、(1)ではメッシュ層形成前に設ける為に、(2)〜(4)の様なメッシュ層に関係した問題はないが、高価なNIR吸収剤を含有させた接着剤層で銅箔と透明基材をラミネートする為に、その後、メッシュ層形成までの段階での製造歩留まりが悪いと、製造コストに影響するという問題があった。
以上の如く、本発明の課題は、透明基材にメッシュ層とNIR吸収層を積層して、近赤外線吸収性能も付与した複合電磁波シールドフィルタについて、NIR吸収層を塗工形成する場合の問題を解決できる製造方法を提供し、またその為に使用できるNIR吸収転写シートを提供することである。
上記課題を解決すべく、本発明では、NIR吸収層をNIR吸収転写層として転写形成して、複合電磁波シールドフィルタを製造する様にした。すなわち、本発明は、この様な複合電磁波シールドフィルタを製造可能とする、下記の如き、NIR吸収転写シートと、該NIR吸収転写シートを用いた複合電磁波シールドフィルタの製造方法である。
すなわち、本発明のNIR吸収転写シートは、離型性基材シートに積層された転写層として、近赤外線吸収剤(NIR吸収剤)をバインダー樹脂中に含有するNIR吸収層を少なくとも含むNIR吸収転写層を有する、構成とした。
この様な構成の転写シートとすることで、例えば電磁波シールドフィルタ等のNIR吸収性能を付与したい任意の物に対して、NIR吸収層を(NIR吸収転写層として)転写により形成できる。
また、本発明の複合電磁波シールドフィルタの製造方法は、電磁波シールド性能とともに近赤外線吸収性能を有する複合電磁波シールドフィルタの製造方法において、複合電磁波シールドフィルタの表面、裏面、或いは層間のいずれかとなる位置に、上記NIR吸収転写シートを用いて、転写によってNIR吸収転写層を形成する様にした。
この様な製造方法とすることで、近赤外線吸収性能も有する複合電磁波シールドフィルタについて、近赤外線吸収性能を発現するNIR吸収層をNIR吸収転写層として転写形成できる。また、NIR吸収転写層を設ける位置は、複合電磁波シールドフィルタの表面、裏面、層間のいずれにも転写で形成できる。従って、NIR吸収転写層を転写で形成する位置は、要求特性等に応じて、自由に選択すれば良い。そして、NIR吸収層は一旦、転写シートとして形成するので厚み均一性が容易に確保でき、それからメッシュ層上にNIR吸収(転写)層を転写形成する場合でも、メッシュ層の表面凹凸の影響も無く厚み均一性を維持できる。しかも、塗工法では部分形成するには間欠塗工等の工夫が必要だが、転写法の採用で部分形成する場合でも転写圧の加圧と開放により、容易に且つ厚み均一性を維持しつつ部分形成ができる。従って、例えば、生産性等の点で、連続帯状物で複合電磁波シールドフィルタを製造する際に、メッシュ層の周辺部分を額縁部等として露出させてアース部とする場合に、転写圧の加圧・開放によって、容易にアース部を露出させ且つ厚み均一性も維持できる。
また、本発明の複合電磁波シールドフィルタの製造方法は、上記製造方法に於いて、更に、透明基材上に、メッシュ状導電体層を含むメッシュ層が積層され、更に、透明基材にメッシュ層が積層された側の面の少なくともメッシュ層の開口部を含む面にメッシュ層による表面凹凸をより平坦化する平坦化樹脂層を積層した積層体について、該平坦化樹脂層の表面に転写によりNIR吸収転写層を形成する形成する様にした。
この様な製造方法とすることで、NIR吸収転写層を転写形成する面は、メッシュ層による凹凸面ではなく、その凹凸がより平坦化された平坦化樹脂層の表面であるので、転写時の気泡抱き込み等の懸念無しに、凹凸面に対する転写法ではなく平坦面に対する通常の転写法と同様にして容易にNIR吸収転写層を転写形成できる。
(1)本発明によるNIR吸収転写シートによれば、近赤外線吸収性能を付与したい物に、近赤外線吸収剤をバインダー樹脂中に含有するNIR吸収層を転写法によってNIR吸収転写層として形成できる。しかも、形成面が凹凸面でも厚み均一性を維持でき且つ部分形成もできる。その結果、生産性等の点で連続帯状のウェブで製造するとき、メッシュ層に額縁部を設けて露出させアース部とする際も、容易に厚み均一性を維持しつつ部分形成で露出できる。
(2)本発明による複合電磁波シールドフィルタの製造方法によれば、近赤外線吸収性能も有する複合電磁波シールドフィルタについて、近赤外線吸収性能を発現するNIR吸収層を転写法によってNIR吸収転写層として形成できる。また、NIR吸収転写層を設ける位置は、複合電磁波シールドフィルタの表面、裏面、層間のいずれでも良く、要求特性等に応じて自由に選択すれば良い。しかも、メッシュ層周辺部にアース部とする額縁状等の露出部を設けたものを連続帯状で生産する場合でも、転写圧の加圧と開放という簡単な操作でNIR吸収転写層を部分形成して露出部を容易に設けられ、且つ、厚み均一性も維持できる。
(3)また、複合電磁波シールドフィルタとして平坦化樹脂層を有する場合では、該平坦化樹脂層の表面に転写でNIR吸収転写層を形成する様にすれば、転写面はメッシュ層による凹凸面を回避してより平坦化された平坦化樹脂層の表面となるので、転写時の気泡抱き込み等の懸念無しに、平坦面に対する通常の転写法と同様にして容易にNIR吸収転写層を転写形成できる。
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1(A)は、本発明による複合電磁波シールドフィルタ10の一形態を例示する断面図であり、図1(B)は本発明によるNIR吸収転写シート20の一形態を例示する断面図である。また、図2は本発明にて、転写形成されたNIR吸収転写層3の複合電磁波シールドフィルタ20中での層的な位置関係として、図1(A)の表面以外の例として、裏面〔図2(A)〕、層間〔図2(B)〕の各一例を示す断面図である。また、図3は、NIR吸収転写シート20の別の形態例を示す断面図である。また、図4は、メッシュ層2の周囲に設ける額縁部2Bの一例を示す平面図である。また、図5及び図6は、本発明による複合電磁波シールドフィルタ10の別の形態例の幾つかを例示する断面図である。
概要
本発明では、電磁波シールド性能とともにNIR吸収性能も有する複合電磁波シールドフィルタについて、NIR吸収性能を実現するNIR吸収層をNIR吸収転写層として転写形成して付与するものであり、また、該NIR吸収転写層の転写形成に用いる転写シートは、転写層として、少なくともNIR吸収層を含むNIR吸収転写層を有するものとする。
本発明による複合電磁波シールドフィルタは、その一例を図1(A)に例示の複合電磁波シールドフィルタ10で説明すれば、透明基材1上に、少なくともメッシュ状導電体層を含むメッシュ層2が積層され、更に、NIR吸収層としてNIR吸収転写層3を、前記メッシュ層2の直上及びその開口部を含めた全面に積層した平坦化樹脂層4の表面に対して、転写によって形成したものである。この様な、NIR吸収転写層3を(複合電磁波シールドフィルタの)表面に有する構成の複合電磁波シールドフィルタ10は、例えば、透明基材1上に銅箔等を利用したメッシュ層2を設けた後、そのメッシュ層2による凹凸面に平坦化樹脂層4を塗工形成して積層物とした後(ここまでは従来公知の各種製造方法を適宜採用すれば良い)、同図で例示される本発明では、この平坦化樹脂層4の表面に対して、NIR吸収層をNIR吸収転写層3として転写法によって形成して製造する。なお、平坦化樹脂層4は不要ならば省略しても良い。
上記の様なNIR吸収転写層3を転写形成する為の転写シートは、図1(B)に例示のNIR吸収転写シート20の如く、離型性基材シート6に積層する転写層が、近赤外線吸収剤をバインダー樹脂中に含有するNIR吸収層を転写層構成層として少なくとも含むNIR吸収転写層3からなるNIR吸収転写シートである。なお、NIR吸収転写層3中には、必要に応じ適宜、その他の層、例えば、従来公知の一般的な転写シート同様に剥離層、接着剤層等も設けることができる。
なお、NIR吸収転写層を転写形成する、複合電磁波シールドフィルタ内での層的な位置は、特に制限は無く、図1(A)で例示の表面以外に、図2(A)で例示の裏面、図2(B)で例示の層間でも良い。
また、本発明による製造方法では、基本的には、NIR吸収層をNIR吸収転写層として転写形成する以外は、その他、メッシュ層の形成法等は限定されるものではなく、従来公知の各種方法を適宜採用すれば良い。例えば、そのメッシュ状導電体層の形成法について述べれば、透明基材に透明接着剤層を介して金属箔を貼合せた後、エッチングでメッシュ状に開口部を形成する方法等は代表的である。また、上記平坦化樹脂層は、開口部で表面粗面の透明接着剤層による透明性低下を防ぐ為の透明化樹脂層と兼用させる等しても良い。或いは更に、近赤外線吸収フィルタ以外のその他の光学フィルタ、例えば、反射防止フィルタ、防眩フィルタ、色調整フィルタ等、或いは、保護フィルム、ディスプレイ自体の構成部品である前面基板等の光学物品等の、用途に応じた機能を更に付与する為の機能層を、接着剤を適宜用いる等して積層しても良い。その際、機能を実現する機能層が板状でなく薄ければ、それ自体も転写によって形成しても良い。
以下、本発明における、NIR吸収転写シートと複合電磁波シールドフィルタについて、先ず、NIR吸収転写シートから順に説明する。
NIR吸収転写シート
NIR吸収転写シート20は、基本的に、離型性基材シート6と、転写層であるNIR吸収転写層3とからなり、且つNIR吸収転写層3は少なくともNIR吸収層を有する。また、生産性の点で、NIR吸収転写シートは連続帯状として生産し、その状態で転写に使用するのが好ましい。
なお、上記の様なNIR吸収転写シートは、本発明の複合電磁波シールドフィルタの製造に好適には使用するものであるが、この他の任意の物に対して、それをNIR吸収性能を有するものとする用途にも適用できる。
〔離型性基材シート〕
離型性基材シート6としては、少なくとも転写層側とする面が転写層と離型性を有するシートであれば良く、従来公知の一般的な転写シートに於ける、各種の離型性基材シートを適宜採用すれば良い。例えば、離型性基材シートとしては、樹脂シート、紙、金属箔、或いはこれらの異種又は同種の積層体等である。但し、NIR吸収転写層を離型性基材シートに接して直接形成する場合では、その厚み均一性が損なわれると、可視光領域での色の面ムラ発生等が生じることもあるので、離型面の均一性、或いはシート自体の厚み均一性が良いものが好ましい。この様な点では、離型性基材シートとしては、紙を離型処理したもの等もあるが、樹脂シートが有利である。
上記樹脂シートの樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタル酸共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネートなどの樹脂が挙げられる。これらのなかでも、通常、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリノルボネンなどのポリオレフィン系樹脂が、平坦性、強度、離型性、耐熱性やコスト面から好適な樹脂である。また、機械的強度の点では、1軸延伸、2軸延伸等の延伸シートが好ましい。具体例を挙げれば、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートシートが最適である。
また、転写法では、通常の塗工法や印刷法等では不可能な非平面にも、層を転写形成できる利点が得られる。この為には、転写する面、つまり被転写面の凹凸形状の深さ・面的大きさ等にもよるが、NIR吸収転写層(NIR吸収層、或いはその他の接着剤層等の転写層構成層)で該凹凸形状を吸収して転写してしまう以外に、離型性基材シートを該凹凸形状に追従変形させて(NIR吸収層の厚みはなるべく維持したままで)転写させることもできる。その為には、離型性基材シートには、少なくとも転写時には変形可能な成形性を有するシートを用いるのが好ましい。この様な離型性基材シートに用いる樹脂シートとしては、上記列記した各種樹脂による樹脂シートを適宜採用すれば良いが、なかでも、未延伸、或いは低延伸のシートを用いたり、或いは、樹脂それ自体が成形性が良い樹脂シートを用いる。この様に樹脂としては、例えば、例えばポリエステル系樹脂では、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタル酸共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体等の成形性ポリエステル樹脂と呼ばれる樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン系熱可塑性エラストマー等である。
なお、離型性基材シートは、従来公知の転写シートの場合と同様に、その転写層側とする離型面について、転写層との離型性を向上させる必要がある場合には、離型性基材シートの構成要素として離型層を設ける等の離型処理を施しても良い。つまり、離型性基材シートの構成要素である該離型層とは、転写時に離型性基材シートを(被転写体に接着した)転写層から剥離する時に、(被転写体側にそのまま残る転写層に対して)離型性基材シートの一部として、転写層から剥離除去される層である。離型層としては、例えば、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ワックス等の単体又はこれらを含む混合物が用いられる。また、離型性の調整(この場合は離型性を低下させる方向での調整)の為に、離型性基材シートの転写層側の離型面に、コロナ放電処理、オゾン処理等を行っても良い。なお、転写層側で、離型性基材シートとの離型性を調整したりする転写層の一部となる層を、離型層とは区別して剥離層と呼ぶことにする。
なお、離型性基材シートの厚みは、特に制限は無いが、通常10〜200μm程度である。
また、離型性基材シートの転写層側の面は、後述する賦形シート同様に、マット面等と凹凸形状にしても良い。
なお、離型性基材シートは、転写後のNIR吸収転写層に対する表面保護目的の保護シートとして、転写圧加圧後もそのまま付けておき、転写層に更に別の層を積層するときや、転写後の複合電磁波シールドフィルタを客先に製品として出荷後、部品として組付け時等、不要になったときに、剥がす様にしても良い。本来ならば、転写の完了とは厳密には離型性基材シートが剥がされた時点となるが、この様な離型性基材シートの使われ方も想定して、本発明では、転写が完了する意味で使う「転写後」とは、離型性基材シートを剥離しようとした時に(被転写体に接触した)転写層が被転写体側に接着し被転写体側に残る状態になった時以降を意味し、未だ離型性基材シートは剥離していない状態でも良いし離型性基材シートが剥離された状態でも良いことにする。
〔NIR吸収転写層〕
NIR吸収転写層3は、少なくともNIR吸収層をその構成層として有し、必要に応じ適宜、その他の層を構成層として追加しても良い。従って、最も単純なNIR吸収転写層はNIR吸収層のみからなる構成である。その他の追加的な層は、例えば、図3に例示のNIR吸収転写シート20の様に、剥離層31、接着剤層33等であり、或いはこれら層間接着性向上の為のプライマー層等の、従来公知の一般的な転写シートに於ける各種構成層、或いはその他の層等が挙げられる。なお、剥離層31や接着剤層33等は転写機能補助層として通常作用する。追加的な転写層構成層を有する場合も含めて、NIR吸収転写シート20に於けるNIR吸収転写層3の全層が、被転写体側に転写され、例えば複合電磁波シールドフィルタ10に於いては、NIR吸収転写層3となってNIR吸収層を付与して近赤外線吸収性能を実現する。ここでは、本発明の層的特徴部分であるNIR吸収層から説明する。
〔NIR吸収転写層:NIR吸収層〕
NIR吸収層32は、その層自体がNIR吸収性能を持ち、被転写体(転写の対象物)に対して、近赤外線吸収性能を付与する層である。NIR吸収層としては、転写シートの転写層となり得る特性を有するもので、且つ近赤外線吸収性能を有する層であれば、基本的には特に制限は無い。但し、複合電磁波シールドフィルタに適用する場合等では、NIR吸収層によって可視光領域にも光吸収が生じ着色するのはなるべく避けるのが好ましく、この点では、可視光領域の光吸収が有ってもなるべく少なく、また該吸収が有ってもなるべく可視光領域で均一で無彩色の着色となるのが好ましい。この様な、転写層としてなり得て、且つ可視光領域での着色も無いか少なくできるNIR吸収層としては、好ましくは、NIR吸収剤(近赤外線吸収剤)をバインダー樹脂中に含有させた層が挙げられる。
なお、近赤外線とは、可視光領域に隣接し可視光よりも長波長側の光線であり、少なくとも複合電磁波シールドフィルタ用途に於いては、注目する近赤外線とは、波長780〜1100nm程度の光線のことである。また、該近赤外線の吸収性能としては、該780〜1100nmの波長領域にて、平均して、少なくとも50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、吸収するのが望ましい。
NIR吸収剤としては、近赤外線領域は吸収するが、可視光領域の吸収がなるべく少なく、また吸収が有ってもなるべく可視光領域で均一なものが好ましい。この様なNIR吸収剤としては、耐熱性、経時的安定性、溶解性等の諸特性も必要に応じ配慮しながら、公知のものを適宜選んで単独又は2種以上を使用すれば良い。例えば、次の(1)〜(6)等の色素が挙げられる。
(1)フタロシアニン系色素(特開平8−120186号公報、特開平9−279125号公報、特開2002−123180号公報、等参照)、
(2)ジイモニウム塩系色素(特開平5−178808号公報、特開平5−295967号公報、特開平9−310031号公報、特開2003−096040号公報、等参照)、
(3)ジチオールニッケル系色素等のジチオール金属錯体系色素(特開昭57−21458号公報、特開昭61−32003号公報、特開昭62−187302号公報、特公昭61−32003号公報、特開昭61−32003号公報、特開2003−139946号公報、等参照)、
(4)ナフタロシアニン系色素(特開平10−78509号公報、特開平11−133868号公報、特開2002−123180号公報、等参照)、
(5)アントラキノン系色素(特開昭60−43605号公報、特開昭61−115958号公報、特開昭61−291651号公報、特開昭62−132963号公報、特開平1−172458号公報等参照)、
(6)アミニウム塩系色素(特開昭60−236131号公報および特開平4−174403号公報等参照)。
なお、NIR吸収層は2層以上の多層構成でも良く、多層構成の場合では層毎にNIR吸収剤の種類や併用割合、含有量等を変えても良い。NIR吸収剤の含有量は、要求特性、NIR吸収層の厚み等に応じて適宜決めれば良いが、例えば、NIR吸収層の樹脂分全量に対して0.1〜20質量%である。また、NIR吸収層の厚みは、用途、適用部分、要求物性等に応じた厚みとすれば良く、基本的には特に制限は無いが、通常1〜10μm程度である。
また、NIR吸収剤を分散保持するバインダー樹脂としては、用途、適用部分、要求物性等に応じた樹脂を適宜採用すれば良く、例えば、一般的な転写シートに於ける転写層の樹脂を適宜採用することができる。具体的には、該バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂であるである。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂等が挙げられ、上記熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、硬化性アクリル樹脂等が挙げられ、上記電離放射線硬化性樹脂としては、各種アクリレート系樹脂が挙げられる。
なお、転写層として接着剤層を設けずに、NIR吸収層自体で被転写体に直接接着し転写する場合には、NIR吸収層のバインダー樹脂自体を少なくとも転写時には接着性を発現する樹脂とすれば、被転写体自体が少なくとも転写時に接着性を発現しない材料であっても、転写層側の接着性によって接着し転写できる。それには、バインダー樹脂として、熱可塑性樹脂等の接着剤層33としても利用可能な樹脂を選択すればよい。熱可塑性樹脂では、公知の熱融着等の接着機構を利用して接着し転写される。
また、NIR吸収層のバインダー樹脂が熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂で、転写シートの段階で既にその硬化物として、該NIR吸収層自体の接着性が期待できない場合には、熱可塑性樹脂等による接着剤層を追加的に設けて、接着剤層によって接着し転写する様にすれば良い。NIR吸収層のバインダー樹脂に硬化性樹脂を用い、更に熱可塑性樹脂の接着剤層を組み合わせた場合等では、転写時のNIR吸収層の厚み均一性を維持し易い利点が得られる。或いは、熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂の場合でも、未硬化状態では常温固体で熱可塑性の樹脂組成物を用いて、転写時は未硬化乃至は半硬化状態で接着性を発現させて、被転写体に接着した後に完全硬化させても良い。
なお、NIR吸収層には、適宜必要に応じNIR吸収剤以外の添加剤、例えば、塗液やインキに於ける公知の各種添加剤を添加しても良い。該添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤等の光安定剤、分散安定剤等である。
また、NIR吸収層中には、NIR吸収剤以外の色素を含有させても良い。例えば、NIR吸収剤に用いる色素が可視光領域にも吸収を持ち、その吸収が可視光領域で均一で無いために着色し画像のホワイトバランスが崩れるのを防ぐ為には、可視光領域全体で光吸収がニュートラル(無彩色)となる様に、更に、可視光領域内のその他の部分に吸収を持つ色素を併用すると良い。或いは、PDPから放射されるネオン発光を抑えて色再現性を向上させるネオン光吸収剤、不要な外光反射を抑える色素等である。なお、これら色素は、NIR吸収層とは別の転写層構成層を設けて該層に含有させても良い。
NIR吸収層は、上記の如き、NIR吸収剤と、バインダー樹脂と、通常は更に溶剤と、その他必要に応じ添加剤とを含む組成物を、塗液乃至はインキとして用いて、公知の塗工法乃至は印刷法によって、離型性基材シート上に形成することができる。この場合に於いて、剥離層等のより離型性基材シートに近い転写層構成層は、もちろん、NIR吸収層の先に離型性基材シート上に形成する。
なお、上記塗工法としては、例えば、ロールコート、コンマコート、グラビアコート、カーテンコート、スクイズコート、ブレードコート等が挙げられる。また、印刷法では、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷等が挙げられる。印刷法では部分形成も容易である。また、NIR吸収転写シートに於いては、NIR吸収層は通常は塗工で連続帯状物の流れ方向に全面連続形成したものとするのが厚み均一性の点で有利であるが、必要箇所のみに対応して部分形成されたNIR吸収層としても良い。この様にすることにより、高価なNIR吸収剤の無駄を極小化できる。
本発明では、NIR吸収層を先ず、転写シートの形態で準備することで、NIR吸収層をメッシュ層上に直接塗工形成する場合に比較して、NIR吸収層を形成する対象面の平坦性は、メッシュ層による表面凹凸の影響を完全遮断した、極めて優れたものにできる。この為、NIR吸収層の厚み均一性は、より優れたものとなる。これにより、NIR吸収剤が可視光領域で着色していても、その着色が面ムラとなる不具合を容易に防ぐことができる。なお、メッシュ層上に平坦化樹脂層を介してNIR吸収層を塗工形成する場合でも、平坦化樹脂層形成時に賦形シートを利用する等工夫しても、メッシュ層の表面凹凸の影響を本質的に遮断することはできない。
〔NIR吸収転写層:剥離層〕
剥離層31は、適宜必要に応じて設ける透明な層であり、離型性基材シートと転写層との間の離型性調整、転写後の最表面層となって表面保護や多層との密着性向上、等の1以上の目的の為に、離型性基材シートに接する層として設ける転写層の一構成層である。この様な剥離層の使い方は、従来公知の一般的な転写シートに於ける剥離層と同様である。剥離層は、通常、樹脂主体の樹脂層として形成され、該樹脂としては、上記NIR吸収層で列記した様な、各種、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等、例えば、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂等の熱可塑性樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリレート系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂等を、用途、適用部分、要求物性等に応じて適宜採用すれば良い。剥離層の厚みは用途、要求特性等に応じたものとすれば良く特に制限は無いが、通常0.1〜5μm程度である。なお、剥離層は、NIR吸収層同様に、公知の塗工法や印刷法等で形成できる。
〔NIR吸収転写層:接着剤層〕
接着剤層33は、適宜必要に応じて設ける透明な層であり、NIR吸収転写シートに於けるNIR吸収転写層の最外層となり、被転写体に接触し、NIR吸収転写層を被転写体に接着させる層である。この様な接着剤層の使い方は、従来公知の一般的な転写シートに於ける接着剤層と同様である。接着剤層は、通常、樹脂主体の樹脂層として形成され、該樹脂としては、上記NIR吸収層で列記した様な熱可塑性樹脂の他、硬化性樹脂等も完全硬化前の状態であれば利用できる。従って、例えば、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂等の熱可塑性樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリレート系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂、或いはゴム系樹脂等を、用途、適用部分、要求物性等に応じて適宜採用すれば良い。接着剤層の厚みは用途、要求特性等に応じたものとすれば良く特に制限は無いが、通常1〜10μm程度である。なお、接着剤層は、NIR吸収層同様に、公知の塗工法や印刷法等で形成できる。
〔NIR吸収転写層:その他の層〕
NIR吸収転写層としては、従来公知の一般的な転写シートでの転写層と同様に、上記剥離層、接着剤層以外にもプライマー層等を必要に応じ適宜、追加しても良く、更には、従来公知の電磁波シールドフィルタに於ける付加的な機能層も転写層構成層として追加しても良い。例えば、NIR吸収剤以外の色素を含有させた樹脂層等である。更に具体的に挙げれば、例えば、紫外線吸収層、色調調整用可視光吸収層、反射防止層等の光学フィルタとなる層、ハードコート層、反射防止層、防眩層、防汚染層等の光学フィルタ機能以外の機能層等、その他、ディスプレイ用光学フィルタに於ける各種公知の機能層等である。これら機能層もNIR吸収転写層に含めることで、これら機能も同時に転写形成できる。
一般にNIR吸収剤、特に有機系のものは、日光等の紫外線によってNIR吸収性能が劣化するものが多い、よって、この様な劣化を防止する為に、好ましくは、複合電磁波シールドフィルタになった状態に於いて、NIR吸収層よりも外側(日光等の入射方向側)の位置に紫外線吸収層を設けると良い。例えば、剥離層がNIR吸収層よりも外側に位置する場合には、該剥離層中に紫外線吸収剤を添加して、剥離層を紫外線吸収層と兼用することは、好ましい実施形態である。この様な構成とすれば、電磁波シールドフィルタのメッシュ層にNIR吸収層を転写するのと同時に、これを保護する紫外線吸収層も形成できる。なお、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の有機系紫外線吸収剤、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化亜鉛等の無機系紫外線吸収剤等の、公知のものが用いられる。該紫外線吸収剤は、通常当該層中に0.1〜5質量%程度添加する。
複合電磁波シールドフィルタの製造方法:
本発明では、複合電磁波シールドフィルタを構成する少なくともNIR吸収層については、転写によってNIR吸収転写層として形成する。その為には、上述したNIR吸収転写シートを用いることができる。複合電磁波シールドフィルタのその他の構成層については、従来公知の電磁波シールドフィルタに於ける従来公知の各種方法、材料を適宜採用すれば良い。本発明による複合電磁波シールドフィルタは、少なくとも、透明基材、メッシュ層、NIR吸収転写層とからなり、且つ、前記メッシュ層は少なくともメッシュ状導電体層からなり、前記NIR吸収転写層は少なくともNIR吸収層からなる。この様な構成の複合電磁波シールドフィルタの製造方法について、先ず、使用する透明基材から順に層毎に説明する。
〔透明基材〕
透明基材1は、一般的に機械的強度が弱いメッシュ層を補強する為の層である。従って、機械的強度と共に光透過性を有すれば、その他、耐熱性、絶縁性等も適宜勘案した上で、用途に応じたものを選択使用すれば良い。透明基材の具体例としては、例えば、樹脂板、樹脂シート(乃至はフィルム、以下同様)、ガラス板等である。
樹脂板、樹脂シート等として用いる透明樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
なお、これら樹脂は、樹脂材料的には、単独、又は複数種類の混合樹脂(ポリマーアロイを含む)として用いられ、また層的には、単層、又は2層以上の積層体として用いられる。また、樹脂シートの場合、1軸延伸や2軸延伸した延伸シートが機械的強度の点でより好ましい。
また、これら樹脂中には、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。
また、ガラス板のガラスとしては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラスなどがあり、より好ましくは熱膨脹率が小さく寸法安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラス等が挙げられ、ディスプレイの前面基板等とする電極基板と兼用することもできる。
なお、透明基材の厚さは、用途に応じたものとすれば良く特に制限は無く、透明樹脂から成る場合は、通常12〜1000μm程度であるが、好ましくは50〜700μm、より好ましくは100〜500μmが望ましい。一方、透明基材がガラス板である場合には、通常1〜5mm程度が好適である。いずれの材料に於いても、上記未満の厚さとなると機械的強度が不足して反りや弛み、破断などが起こり、上記を超える厚さとなると過剰性能でコスト高となる上、薄型化が難しくなる。
なお、透明基材としては、これらの無機材料、有機材料等からなる、シート(乃至はフィルム)、板などが適用でき、また、透明基材は、前面基板及び背面基板等からなるディスプレイ本体の一構成要素である前面基板と兼用しても良いが、前面基板の前に配置する前面フィルタとして複合電磁波シールドフィルタを用いる形態では、薄さ、軽さの点で、板よりもシートの方が優れており、また割れない等の点でも、ガラス板よりも樹脂シートが優れていることは言うまでもない。
また、複合電磁波シールドフィルタを連続的に製造し生産性を向上できる点では、透明基材は、メッシュ層やNIR吸収転写層等の積層は、連続帯状のシートの形態で取り扱うのが好ましい。
この様な点で、透明基材としては樹脂シートが好ましい材料であるが、樹脂シートのなかでも、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂シート、セルロース系樹脂シートが、透明性、耐熱性、コスト等の点で好ましく、より好ましくはポリエチレンテレフタレートシートが最適である。なお、透明基材の透明性は高いほどよいが、好ましくは可視光線透過率で80%以上となる光透過性が良い。
なお、樹脂シート等の透明基材は、適宜その表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの公知の易接着処理を行ってもよい。
〔メッシュ層:メッシュ状導電体層〕
メッシュ状導電体層21は、電磁波シールド機能を担う層であり、またそれ自体は不透明性であっても、メッシュ状の形状で開口部が存在することにより、電磁波シールド性能と光透過性を両立させており、メッシュ状の形状をしているメッシュ層2の必須の層である。なお、メッシュ層2には、メッシュ状導電体層21以外にも、メッシュ層の形状的特徴の元となるメッシュ状導電体層が有するメッシュ状の形状が維持される点で、後述する防錆層22や黒化層23等も、メッシュ層の構成層として捉える(図5参照)。従って、図1(A)や図2の断面図では、層構成の内訳は明示せずただ単にメッシュ層2として描いてあるが、必要に応じ設ける防錆層や黒化層を有する場合のメッシュ層も含めた概念的な図面である。
メッシュ状導電体層21のメッシュ状としての形状は、任意で特に限定されないが、そのメッシュの開口部の形状として、正方形が代表的である。開口部の平面視形状は、例えば、正三角形等の三角形、正方形、長方形、菱形、台形等の四角形、六角形、等の多角形、或いは、円形、楕円形などである。メッシュはこれら形状からなる複数の開口部を有し、開口部間は通常幅均一のライン状のライン部となり、通常は、開口部及び開口部間は全面で同一形状同一サイズである。具体的サイズを例示すれば、開口率及びメッシュの非視認性の点で、開口部間のライン部の幅は25μm以下、好ましくは20μm以下が良い。また、開口部サイズは〔ライン間隔或いはラインピッチ〕−〔ライン幅〕であるが、この〔ライン間隔或いはラインピッチ〕で言うと150μm以上、好ましくは200μm以上とするのが、光透過性の点で好ましい。
なお、バイアス角度(メッシュのライン部と複合電磁波シールドフィルタの外周辺との成す角度)は、ディスプレイの画素ピッチや発光特性を考慮して、モアレが出難い角度に適宜設定すれば良い。
また、複数の開口部を有する領域(メッシュ部2A)は、少なくとも光透過性が必要な領域であれば良く、従って全面でなくても良い。その一例として、図4の平面図で例示する如く、四角形を成す複合電磁波シールドフィルタ10の4辺周囲の画像表示に影響しない部分を額縁状に、開口部無しのままにした額縁部2Bとして、その内側のみに複数の開口部を有するメッシュ部2Aとする形態が挙げられる。額縁部はアースを取るのに利用できる。なお、額縁部2Bは全周囲でなくても、一辺のみ等でも良い。また、額縁部の一部領域或いは全領域はアースが取り易い様に露出させるのが好ましく、この為には、平坦化樹脂層、透明化樹脂層、NIR吸収転写層等をメッシュ層上に設ける場合は、額縁部では露出された部分(露出部)が残る様にメッシュ部2A、乃至はメッシュ部2Aから一部額縁部2Bにかかる様に設けると良い。
特に本発明では、NIR吸収層を転写法によりNIR吸収転写層として形成するので、上記の様に露出部が、連続帯状のウェブ幅方向に伸びる部分でも、面倒な間欠塗工等によらずに、転写圧の加圧と開放という簡単な方法で、NIR吸収層の厚み均一性を確保しつつ、露出部は残してNIR吸収転写層を部分形成できる利点が得られる。従って、NIR吸収層による可視光領域での着色の面ムラも回避できる利点が得られる。
メッシュ状導電体層21は、一般的には金属箔のエッチングで形成した物が代表的であるが、これ以外のものでも、電磁波シールド性能に於いては意義を有する。従って、本発明では、メッシュ状導電体層の材料及び形成方法は特に限定されるものでは無く、従来公知の光透過性の電磁波シールドフィルタに於ける各種メッシュ状導電体層を適宜採用できるものである。例えば、印刷法やめっき法等を利用して透明基材上に最初からメッシュ状の形状でメッシュ状導電体層を形成したもの、或いは、最初は透明基材上に全面に、めっき法で導電体層を形成後、エッチング等でメッシュ状の形状にしてメッシュ状導電体層としたもの等でも構わない。
例えば、メッシュ状導電体層のメッシュ形状をエッチングで形成する場合は、透明基材に積層した金属層をエッチングでパターンニングして開口部を空けてメッシュ状にすることで形成できる。透明基材に金属層を積層するには、金属箔として用意した金属層を接着剤で透明基材にラミネートしたり、或いはラミネート用接着剤は用いずに、金属層を蒸着、スパッタ、めっき等の1或いは2以上の物理的或いは化学的形成手法を用いて透明基材上に積層したりすることもできる。なお、エッチングによるメッシュ状導電体層は、透明基材に積層前の金属箔単体をエッチングでパターンニングしてメッシュ状のメッシュ状導電体層とすることも可能である。この層単体のメッシュ状導電体層は、接着剤等で透明基材に積層する。これらのなかでも、機械的強度が弱いメッシュ状導電体層の取扱が容易で且つ生産性にも優れる等の点で、金属箔を接着剤で透明基材に積層した後、エッチングでメッシュ状に加工して、透明基材上に接着剤を介して積層された形態となる、メッシュ状導電体層が望ましい。
メッシュ状導電体層は、電磁波シールド性能を発現するに足る導電性を有する物質であれば、特に制限は無いが、通常は、導電性が良い点で金属層が好ましく、金属層は上記の如く、蒸着、めっき、金属箔ラミネート等により形成することができる。金属層乃至は金属箔の金属材料としては、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等が挙げられる。また金属層の金属は合金でも良く、金属層は単層でも多層でも良い。例えば、鉄の場合には、低炭素リムド鋼や低炭素アルミキルド鋼などの低炭素鋼、Ni−Fe合金、インバー合金、等が好ましい。一方、金属が銅の場合は、銅や銅合金となるが、銅箔としては圧延銅箔や電解銅箔があるが、薄さ及びその均一性、黒化層との密着性等の点からは、電解銅箔が好ましい。
なお、金属層による導電体層の厚さは、1〜100μm程度、好ましくは5〜20μmである。厚さがこれより薄くなり過ぎると電気抵抗上昇により十分な電磁波シールド性能を得難くなり、厚さがこれより厚くなり過ぎると高精細なメッシュ形状が得難くなり、開口率低下により光透過性や、メッシュ側面が邪魔してディスプレイの視野角が低下する。
また、メッシュ状導電体層となる金属層の表面は、透明接着剤層等の隣接層との密着性向上の為に粗面である事が好ましい。例えば、銅箔の場合、黒化処理による黒化層の形成と同時にその表面(黒化層の表面)に粗面が得られる。なお、その粗面の程度は、10点平均粗さRz〔JIS−B0601準拠(1994年版)〕で、0.1〜10μm程度が良く、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは0.5〜1.5μmである。粗さがこれ未満では、粗面化の効果が十分に得られず、またこれより大きくなると、接着剤やレジスト等の塗布時に気泡を抱き込んだりし易くなる。
〔メッシュ層:防錆層〕
メッシュ層2はメッシュ状導電体層21だけでも良いが、金属層からなるメッシュ状導電体層は製造時、取扱時等に錆びて変質し電磁波シールド性能の低下を来すことがあるので、錆びを防ぐ必要がある場合には、防錆層22でメッシュ状導電体層の表面を被覆すると良い。また、後述する黒化層が錆び易い場合には、黒化層も含めて被覆するのが好ましい。防錆層の被覆は、メッシュ状導電体層の表面、裏面、側面の各面のうち必要な1以上の面の中から製造コスト等を勘案して選んだ面について行えば良い。従って、防錆層の被覆は、表面だけ、裏面だけ、表裏両面〔例えば図5(A)参照〕、側面(両側或いは片側)だけ、表面と両側面、裏面と両側面、表裏両面と両側面等である。
なお、本明細書にて、「表面」とは、注目層(ここではメッシュ状導電体層、NIR吸収転写層等も同様)の透明基材から遠い方の面(図面上方の面、透明基材ではその図面上方の面)、「裏面」とは該注目層の透明基材に近い方の面(図面下方の面、透明基材ではその図面下方の面)、「側面」とは表面と裏面とを連結する面(図面左右方向に向いた面)を言うことにする。また、ディスプレイ用途等に適用した場合に於いて、観察者側の面が常に本発明で定義する表面では無く裏面の場合もあり得る。
そして、「複合電磁波シールドフィルタの表面、裏面、或いは層間」の場合では、複合電磁波シールドフィルタという積層体を注目層として、透明基材に対してメッシュ層が積層された側となる積層体の面(本発明ではこちらの面は全て図面上方の面として描いてある)を表面、その反対側の面を裏面(図面下方の面)、積層体中の隣接層間の界面を層間と言うことにする〔図1(A)、図2参照〕。
防錆層は、それで被覆するメッシュ状導電体層よりも錆び難いものであれば、金属等の無機材料、樹脂等の有機材料、或いはこれらの組合せ等、特に限定されるものではない。また場合によっては、黒化層をも防錆層で被覆することで、黒化層の粒子の脱落や変形を防止し、黒化層の黒さを高めることもできる。この点では、メッシュ状導電体層を金属箔で形成する場合、透明基材上の金属箔に黒化処理で黒化層を設けておく場合には、該黒化層の脱落や変質防止の意味で、透明基材と金属箔との積層前に設けておくのが好ましい。
防錆層22は、従来公知のものを適宜採用すれば良く、例えば、クロム、亜鉛、ニッケル、スズ、銅等の金属乃至は合金、或いは金属酸化物の金属化合物の層等である。これらは、公知のめっき法等で形成できる。ここで、防錆効果及び密着性等の点で好ましい防錆層の一例を示せば、亜鉛めっきした後、クロメート処理して得られるクロム化合物層が、挙げられる。また、このクロム化合物層による防錆層は、後述する銅−コバルト合金粒子層からなる黒化層、及び透明接着剤層5(特に2液硬化型ウレタン樹脂系の接着剤)との密着性にも優れる。
なお、クロムの場合はクロメート(クロム酸塩)処理等でもよい。なお、クロメート処理は、処理面にクロメート処理液を接触させて行うが、該接触は、ロールコート、カーテンコート、スクイズコート、かけ流し法(以上片面接触)等の塗布法の他、静電霧化法、浸漬法等によれば両面接触も可能である。また、接触後は水洗せずに乾燥すればよい。なお、クロメート処理液にはクロム酸を含む水溶液を通常使用し、具体的には、「アルサーフ(登録商標)1000」(日本ペイント株式会社製)、「PM−284」(日本パ−カライジング株式会社製)等の処理液を利用できる。
また、クロメート処理は、該処理前に亜鉛めっきするのが、密着性、防錆効果の点で好ましい。また、防錆層中には、エッチングや酸洗浄時の耐酸性向上の為に、シランカップリング剤等のケイ素化合物を含有させることもできる。
なお、防錆層の厚さは通常0.001〜10μm程度、好ましくは0.01〜1μmである。
〔メッシュ層:黒化層〕
黒化層23により、ディスプレイの明室時の画像のコントラストを向上できる。なお、黒化層の中には、上述した如く該層表面が粗面となり密着強化を図れるものもある。黒化層はディスプレイ画像のコントラスト向上の点では、観察者から見えるメッシュ層(メッシュ状導電体層自体、或いは防錆層等形成済みのメッシュ状導電体層)の全ての面に設けることが好ましいが、そのうち、表面、裏面、側面の各面のうち1以上の面に設ければ相応の効果が得られる。従って、設ける面は、本複合電磁波シールドフィルタとディスプレイとの配置関係にもよるが、表面だけ、裏面〔例えば図5(A)参照〕だけ、表裏両面、側面(両側或いは片側)だけ、表面と両側面〔例えば図5(B)参照〕、裏面と両側面、表裏両面と両側面等である。
いずれにしても、黒化層としては、黒等の暗色を呈する層であれば良く、密着性等の基本的物性を満足するものであれば良く、公知の黒化層を適宜採用し得る。
従って、黒化層としては、金属等の無機材料、黒着色樹脂等の有機材料等を用いることができ、例えば無機材料としては、金属、合金、金属酸化物、金属硫化物の金属化合物等の金属系の層として形成する。金属系の層の形成法としては、従来公知の各種黒化処理法を適宜採用できる。なかでも、めっき法による黒化処理は密着性、均一性、容易性等で好ましい。めっき法の材料は、例えば、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、モリブデン、スズ、クロム等の金属や金属化合物等を用いる。これらは、密着性、黒さ等の点でカドミウム等による場合よりも優れている。
なお、メッシュ状導電体層が銅箔等、銅による場合、黒化層形成の為の黒化処理として好ましいめっき法には、銅からなるメッシュ状導電体層(メッシュ状とする前に行うのであればその前の導電体層)を、硫酸、硫酸銅及び硫酸コバルト等からなる電解液中で、陰極電解処理を行いカチオン性粒子を付着させるカソーディック電着めっき法がある。この方法によれば、カチオン性粒子の付着で黒色と同時に粗面も得られる。カチオン性粒子としては、銅粒子、銅合金粒子を採用できる。銅合金粒子としては、銅−コバルト合金粒子が好ましく、更にその平均粒子径は0.1〜1μmが好ましい。銅−コバルト合金粒子により、銅−コバルト合金粒子層からなる黒化層が得られる。カソーディック電着法では、付着させるカチオン性粒子の平均粒子径0.1〜1μmに揃えられる点でも好ましい。平均粒子径が上記範囲超過では、付着粒子の緻密さが低下し黒さの低下やムラが起こり、粒子脱落(粉落ち)が発生し易くなる。一方、平均粒子径が上記範囲未満でも、黒さが低下する。なお、カソーディック電着法は処理を高電流密度で行うことで、処理面がカソーディックとなり、還元性水素発生で活性化し、銅面とカチオン性粒子との密着性が著しく向上する。
また、黒化層として、黒色クロム、黒色ニッケル、ニッケル合金等も好ましく、該ニッケル合金としては、ニッケル−亜鉛合金、ニッケル−スズ合金、ニッケル−スズ−銅合金である。特に、ニッケル合金は黒色度合いと導電性が良い上、黒化層に防錆機能も付与でき(黒化層兼防錆層となる)、防錆層を省略することもできる。しかも、通常、黒化層の粒子は針状のために、外力で変形して外観が変化しやすいが、ニッケル合金による黒化層では粒子が変形し難く、後加工工程で外観が変化し難くい利点も得られる。なお、黒化層として、ニッケル合金の形成方法は、公知の電解または無電解メッキ法でよく、ニッケルメッキを行った後に、ニッケル合金を形成してもよい。
〔透明接着剤層〕
透明接着剤層5は、メッシュ状導電体層21から少なくとも構成されるメッシュ層2を、透明基材1に接着固定するものであり、メッシュ状導電体層の形成法次第では不要で省略可能な層でもある。透明接着剤層5が必要となるメッシュ状導電体層を例示すれば、メッシュ状導電体層となる金属箔を透明基材に接着剤で接着固定する場合である。この場合、金属箔を透明基材に接着する接着剤としては、メッシュ状導電体層からなるメッシュ層の開口部から見える該接着剤が光透過性を損なわない様に、透明な接着剤を用いる必要がある。特に、金属箔を透明基材に積層してからエッチングで開口部を設けてメッシュ状に加工する場合には、該開口部の全領域で接着剤が露出するので接着剤の透明性が要求される。従って、金属箔によるメッシュ状導電体層21は、透明な接着剤からなる透明接着剤層を介して透明基材に積層されている構成が好ましい。
なお、金属箔と透明基材との具体的な積層方法としては、特に限定されるものでは無く公知の積層法が適宜採用されるが、透明基材がそのなかでも代表的な樹脂シートである場は、ドライラミネーション法が一般的である。
透明接着剤層に用いる透明な接着剤も、特に限定されるものでは無く公知の接着剤を適宜採用すれば良い。例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等が挙げられ、なかでも、ウレタン系接着剤が接着力等の点で好ましい。なお、この様なウレタン系接着剤としては、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤等があり、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等の各種ヒドロキシル基含有化合物と、トリレンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート等の各種ポリイソシアネート化合物を含む2液硬化型ウレタン樹脂を利用した接着剤である。
なお、透明接着剤層は、透明な接着剤を、金属箔(メッシュ状とする前のものが良い)、透明基材の、何れか又は両方に公知の形成方法により施した後、これらを積層することで形成される。該塗工法としては、例えば、ロールコート、コンマコート、グラビアコート等の塗工法、スクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷法が挙げられる。なお、透明接着剤層の厚み(乾燥時)は特に制限は無いが、通常0.1〜20μmであるが、接着力、コスト、作業性等の点でより好ましくは1〜10μmである。
〔平坦化樹脂層〕
平坦化樹脂層4は、適宜必要に応じ形成する層であり、透明基材上に積層されたメッシュ層の開口部による表面凹凸の凹部を埋めて、透明基材にメッシュ層が積層された積層体の該メッシュ層側の表面を、その凹凸面からより平坦面に近づける平坦化を図る透明な樹脂層である。平坦化樹脂層により、メッシュ層の面に、NIR吸収転写層を転写形成したり、或いはその他の層、例えば別の光学フィルタや前面板等のディスプレイ自体の構成部品等の機能層を、適宜接着剤等を用いて積層したりする場合に、該面の凹凸による気泡抱込みや、光学的な像の歪み発生等を、防ぐ効果が得られる。また、NIR吸収転写層の転写形成面を平坦化樹脂層で平坦化しておくことで、一般的な平面への普通の転写と同様に工夫をせずにNIR吸収転写層を転写できる利点が得られる。
なお、NIR吸収層を平坦化樹脂層上に形成する場合、該形成に塗工法を採用すると、平坦化樹脂層の表面の平坦性がNIR吸収層の厚みに影響するが、本発明では該形成に転写法を採用するので、平坦化樹脂層の表面の平坦性は本質的にNIR吸収層の厚み無関係にできる利点がある。このため、NIR吸収層をNIR吸収転写層として平坦化樹脂層の表面に転写形成する場合では、該表面の平坦性は気泡抱き込み等、転写自体に悪影響しない程度のものとすれば良く、塗工法採用の場合に比べて、平坦化樹脂層に要求される平坦性はより緩やかな性能でも良いという利点も得られる。従って、場合によっては、平坦化樹脂層の表面の平坦性をより良くする為の賦形シート(後述)の適用を省略することもできる。
なお、平坦化樹脂層は、図1(A)に例示の様に、メッシュ層2の開口部も非開口部も含めた連続層として形成しても良いが、平坦化が図れる点では開口部のみを埋める様に形成したものでも良い。
平坦化樹脂層に用いる樹脂としては、透明な樹脂であれば特に限定は無く、透明基材やメッシュ層等の隣接層との密着性等を勘案して公知の樹脂を適宜採用すれば良い。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等である。例えば、熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、酢酸ビニル系樹脂等であり、熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、硬化性アクリル樹脂等であり、電離放射線硬化性樹脂としては紫外線や電子線で硬化するアクリレート系樹脂等である。なかでも、メッシュ層による凹凸を埋め易い点では、無溶剤或いは無溶剤に近い状態で塗工形成したりできる、電離放射線硬化性樹脂は好ましい樹脂である。
平坦化樹脂層は、メッシュ層積層済みの透明基材の該メッシュ層側の面に、塗工法の公知の層形成手段で形成することが出来る。該形成手段としては、ロールコート、コンマコート、グラビアコート等の塗工法、或いは、任意形状での部分形成が容易なスクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷法を適宜採用すれば良い。
また、平坦化樹脂層は、メッシュ層の少なくとも開口部に設ければ平坦化が図れる関係上、メッシュ層が透明基材に該透明基材上の全面の透明接着剤層によって積層され、前記開口部で露出する該透明接着剤層の面が粗面である為に光透過性が低下する場合には、それを防ぐ透明化樹脂層として機能させることもできる。従って、平坦化と透明化を兼用する平坦化樹脂層としても良い。或いは、もっぱら平坦化が主目的ではなく透明化が主目的の透明化樹脂層を設けても良い。
なお、図1(A)や図5等では、平坦化樹脂層4の表面は完全な平坦面となっているが、これら図面は層構成を例示する概念的なものであり、該表面は(図面の様に)完全な平坦面の事もあるし、多少の凹凸面であることもあり、これらを包含した形で、メッシュ層による凹凸面よりは平坦面に近いという意味で断面水平一直線の平坦面として描画したものである。
但し、平坦化樹脂層の表面は、凹凸面であると、それによって平坦化樹脂層の表面(他層を更に密着積層する場合は該他層との界面)で、開口部を通過した光の進路が曲げられという光学特性の点では、より完全に近い平坦面の方が好ましい。
なお、平坦面とは鏡面でも良いが鏡面で無くても良い。平坦面とは、少なくともメッシュ層の厚みの面(水平)方向分布に応じた(開口部は低く谷部となり非開口部は高く山部となる様な)凹凸が無く、またその様な凹凸、或いはその他の凹凸があったとしても、その表面に更にNIR吸収転写層等の別の層を積層する場合には、間に残留気泡を生じ無い程度の平面性があり、ディスプレイ用途に於いてはディスプレイ画像の歪曲や、光散乱による曇り(ヘイズ)等を生じ無い程度の平面性であれば良い。従って、平坦面でも、例えばメッシュ層に応じた緩慢な凹凸面で且つそれが鏡面やマット面である場合もあるし、メッシュ層に応じた緩慢な凹凸も急峻な凹凸も無く平坦であるが、細かいマット状の微細凹凸があるマット面である場合もある。つまり、平坦面と鏡面とは別の概念であり、鏡面と非鏡面は、平坦面と非平坦面よりも細かい微凹凸による区分である。
なお、表面をマット面とすると、ピラミッド現象(可撓性のシート状とした複合電磁波シールドフィルタを、ロール状に巻取る際に、平坦化樹脂層の表面が鏡面だと、フィルタの層間に巻き込まれた空気が脱出出来ずに気泡として残留し、それらが巻取り時の張力によって該フィルタに圧入されて、該フィルタの表面にピラミッド状外観の微小突起欠点が生じること。)防止、別の層を接着積層時の層間密着性向上等の利点が得られ、また、表面の微細凹凸により、層間界面で屈折率段差がある場合はそれを実質的に滑らかにして界面での不要な光反射を防止しても良い。
なお、平坦化樹脂層の厚みは、メッシュ層の厚み、必要とされる平坦化の程度等に応じて適宜な厚みとすれば良く、特に制限は無い。例えば、メッシュ層の全面に亙って平坦な表面を得る為には、図1(A)に例示の様にメッシュ層の非開口部上も含めて平坦化樹脂層を形成してしまうのが容易であり、この様な場合では、平坦化樹脂層の厚みは、メッシュ層の開口部と非開口部では異なりメッシュ層の開口部ではメッシュ層の厚みの分だけ厚くなる。この場合、メッシュ層の非開口部上を平坦化樹脂層で確実に覆うには、例えばその部分が1μm以上となる様にすると良い。但し、いずれの場合でも、厚みが厚過ぎると、コスト高等となるので、最も厚い部分でも100μm以下(メッシュ層の厚みも含む)とするのが好ましい。
平坦化樹脂層の表面を、平坦面、マット面、鏡面等と所望の凹凸形状とするには、賦形シートを利用しても良い。賦形シートの利用方法は、例えば、透明基材上に積層されたメッシュ層の上から、平坦化樹脂層を形成する為の塗液を施して塗膜が液状であるうちに、塗膜表面に賦形シートを被せて、該表面に賦形シートの面を賦形し、塗膜が固化する等、塗膜表面に賦形された表面形状が維持される状態になった後、賦形シートを剥がせば、平坦化樹脂層の表面を所望の表面形状とすることができる。或いは、塗膜が固化後でも加熱により塑性変形する状態が発現するならば、固化後でも賦形シートを被せて加熱加圧して賦形した後、賦形シートを剥がしても良い。なお、通常は、賦形シートを剥がす前に樹脂を固化させ、その後賦形シートを剥がす。
なお、平坦化樹脂層上に更に別の層を積層しないのであれば、賦形シートは平坦化樹脂層が固化後も剥がさずに付けたまま、製品として出荷し、客先で剥がすような、保護シートとして使うこともできる。
賦形シートとしては、平坦面等、表面を所望の表面形状に賦形でき、また、平坦化樹脂層の塗膜と離型性を有するものであれば特に制限は無く、適宜な材料を選択使用すれば良い。なお、平坦化樹脂層に電離放射線硬化性樹脂を用い、賦形シート側から電子線や紫外線等の電離放射線を照射して該樹脂を硬化させるのであれば、電子線や紫外線に対して透過性を有するものを選ぶと良い。この様な材料としては、各種樹脂シートからなるものが挙げられる。
上記樹脂シートの樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタル酸共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネートなどの樹脂が挙げられる。これらのなかでも、通常、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリノルボネンなどのポリオレフィン系樹脂が、平坦性、強度、離型性、電離放射線透過性、耐熱性やコスト面から好適な樹脂である。また、機械的強度の点では、1軸延伸、2軸延伸等の延伸シートが好ましい。具体例を挙げれば、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートシートが最適である。なお、樹脂シートの厚みは10〜1000μm程度である。
また、賦形シートの賦形面は、平坦面、鏡面の他、凹凸面とするには、樹脂シートの賦形面とする表面をエンボス加工、型押し加工、樹脂シート中への粒子添加、ケミカルエッチングなどを利用することができる。
なお、賦形シートとして樹脂シート単体では、その賦形面の離型性が不足する場合には、賦形面に、シリコーン等の離型性物質からなる離型層を形成すると良い。
また、賦形シートの賦形面の離型性を適度に(離型性のみを考慮した場合に対してはそれを減らす方向で)調整することで、メッシュ層のメッシュ部では平坦化樹脂層を残して賦形シートが剥離され、額縁部では平坦化樹脂層と共に賦形シートが剥離される様にすることもできる。これにより、一旦は額縁部も含めて形成した平坦化樹脂層を額縁部では賦形シートと共に除去して額縁部を露出させ、額縁部でアースがとり易い様にできる。この様にする為の離型性の調整は、例えば該賦形面の濡れ性を指標として、ぬれ張力を35〜45mN/m(JIS K−6768準拠)の範囲とすると良い。賦形面を適度な離型性に調整する為には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理等の易接着処理を行ってもよい。
〔NIR吸収転写層の転写形成〕
複合電磁波シールドフィルタに於けるNIR吸収転写層3は、上述したNIR吸収転写シートを用いてそのNIR吸収転写層3を、複合電磁波シールドフィルタに於ける所望の面に転写で形成すれば良い。該面とは、複合電磁波シールドフィルタの表面、裏面、或いは層間となる面である。図1(A)に例示の複合電磁波シールドフィルタ10は表面の一例として、メッシュ層2上に平坦化樹脂層4を形成した後、該平坦化樹脂層の表面に対してNIR吸収転写層3を転写形成した例である。
また、図2(A)は裏面の一例として、透明基材1の表面側にメッシュ層2を積層し、該透明基材1の裏面側に対してNIR吸収転写層3を転写形成した例である。また、図2(B)は層間の一例として、透明基材1とメッシュ層2間となる位置に転写形成した例であり、同図は、このうち、透明基材1側を転写形成したNIR吸収転写層3とし、メッシュ層2側を透明接着剤層5として、これら2層を介在させた例である。この場合、NIR吸収転写層3とメッシュ層2間に透明接着剤層5が介在するので、メッシュ層2のメッシュ形状をエッチング形成する際にエッチング液等からNIR吸収転写層中のNIR吸収剤を保護できる利点が得られる。なお、層間とは、例えば図1(A)の表面の構成に対して、NIR吸収層3の上に更に別の層(例えば反射防止フィルタ等)を積層した構成等も該当する〔図6(B)参照〕。
なお、層間となる位置にNIR吸収転写層を転写形成する場合、その転写面は、該層間に関連するNIR吸収層に隣接する表裏2層のうち何れの層であっても良く、製造の容易さ等を適宜勘案して転写対象面(層)を選択すればよい。例えば、図2(B)の層間の場合、NIR吸収転写層3は、透明基材1の面に対して転写形成し、その後、転写形成したNIR吸収層3の面と、メッシュ層2とする為のメッシュ形状形成前の全面の銅箔等の導電体層とを、間に透明接着剤層5を介してラミネートする等すれば良い。
NIR吸収転写層をNIR吸収転写シートにより転写する場合に、その転写圧の加圧手段としては、従来公知の各種転写圧加圧手段による各種転写法を適宜採用すれば良い。なかでも、代表的な加圧手段は転写ローラであり、これによる転写法をローラ転写法とも呼ぶ。転写ローラには、通常、鉄等の剛体の軸芯の周囲を弾性体で被覆したローラを加熱して用いる。弾性体にはシリコーンゴム等を用い、ゴム硬度は適宜なものとする。凹凸表面へ転写では、ゴム硬度を下げて例えば60°以下等とすると良い。或いはまた、凹凸表面への転写も可能な転写法としては、(1)真空成形転写法〔特公昭56−45768号公報(オーバーレイ法)、特公昭60−58014号公報(真空プレス法)等参照〕では、転写シート表裏の空気圧差(真空圧や加圧等)等を転写圧に利用し、(2)固体粒子衝突圧を利用する転写方法(特許第2844524号公報等参照)では、多数の固体粒子を転写シート背面側に衝突させ、その衝突圧を転写圧に利用する。この他、転写物の用途、大きさ、形状等次第では、(3)樹脂の射出圧を転写圧に利用する射出成形同時絵付転写法(特開平6−315950号公報、特公平2−42080号公報等参照)等も利用できる。
以上の様に、本発明によれば、NIR吸収層を転写法で形成するので、NIR吸収層の厚み均一性を高度に維持でき、しかも、メッシュ層側でもその表面凹凸の影響を無くしてNIR吸収層を形成することもできる。更に、連続帯状で生産時に、額縁部等のアース部がウェブ幅方向に延びている部分でも、その部分を露出させつつ厚み均一性も維持できる等の、塗工法では得られない利点が得られる。
そして、この様なNIR吸収層をNIR吸収転写層として転写形成して、複合電磁波シールドフィルタを製造するには、その他の層の形成法は従来公知の各種方法・材料を適宜採用すれば良く、少なくともNIR吸収層のみをNIR吸収転写層として、所望の層的位置となる様に転写形成すれば良い。
〔その他の層〕
本発明の複合電磁波シールドフィルタは、必要に応じ適宜、上述した以外の層を積層した構成としても良い。例えば、複合電磁波シールドフィルタの表面、裏面、層間の1以上の位置に、適宜、表面保護、機械的強度向上、光学特性改善等、上述した層構成からは実現できないその他の機能を更に付与する為の機能層である。該機能層は、例えば従来ディスプレイ用途等で公知の各種フィルタ等である。具体的に例示すれば、例えば、反射防止(含む防眩)フィルタ、色調調整フィルタ(ネオン光吸収フィルタ、色再現性向上フィルタ等)等の各種光学フィルタ、或いは、防汚染フィルム、ハードコートフィルム等の光学フィルタ機能以外の物等を、適宜接着剤等を用いて積層しても良い。これらは市販品等、公知のものを適宜使用することができる。或いは、塗膜として形成しても良い。また、ディスプレイの前面基板と接着積層しても良い。この際、NIR吸収転写層を接着剤層として機能させても良い。もちろん、該NIR吸収転写層とは別に接着剤層を設けても良い。
以下、実施例及び比較例にて、本発明を更に具体的に説明する。なお、文中、「%」は
全て質量%である。
〔実施例1〕
図5(A)に示す複合電磁波シールドフィルタ10を次の様にして作製した。先ず、メッシュ状導電体層21とする金属箔として、一方の面に銅−コバルト合金粒子から成る黒化層23が形成された厚さ10μmの連続帯状の電解銅箔を用意した。また、透明基材1として厚さ100μmで連続帯状の無着色透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。
そして、前記銅箔の両面に対して、亜鉛めっき後、ディッピング法にて公知のクロメート処理を行い、表裏両面に防錆層22を形成した。次いで、この銅箔をその黒化層面側で上記透明基材に、透明な2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤でドライラミネートした後、50℃3日間養生して、銅箔(防錆層)と透明基材間に厚さ7μmの透明接着剤層5を有する連続帯状の銅貼積層シートを得た。
次いで、上記銅貼積層シートに対して、その銅箔(全面の、導電体層、黒化層及び防錆層)をフォトリソグラフィ法を利用したエッチングにより、防錆層22、メッシュ状導電体層21及び黒化層23からなるメッシュ層2が透明基材1上に形成されたメッシュ積層シートを得た。
エッチングは、具体的には、カラーTVシャドウマスク用の製造ラインを利用して、連続帯状の上記銅貼積層シートに対してマスキングからエッチングまでを行った。すなわち、上記銅貼積層シートの導電体層面全面にエッチングレジストを塗布後、所望のメッシュパターンを密着露光し、現像、硬膜処理、ベーキング後、塩化第二鉄溶液で黒化層、防錆層を含めて銅箔をエッチングしてメッシュ状の開口部を形成し、次いで、水洗、レジスト剥離、洗浄、乾燥を順次行った。メッシュ層のメッシュの形状は、その開口部が正方形で非開口部となる線状部分のライン幅は10μm、そのライン間隔(ピッチ)は300μm、メッシュ部2Aの長方形領域の長辺(図4参照)に対する劣角として定義されるバイアス角度49度である。また、メッシュ層のメッシュは、連続帯状のシートを所望の大きさの枚葉の四角形のシートに切断した時に、その四辺外周に開口部が無い幅15mmの額縁部を残す様にエッチングした。
次いで、一旦巻き取られた上記メッシュ積層シートを、巻き出してそのメッシュ層2の面に対して、平坦化樹脂層4を形成する為に、アクリル樹脂をメチルエチルケトンとトルエンの1対1質量比の混合溶剤に溶解した塗液を、間欠ダイコート法による間欠塗工によって、メッシュ上に塗布した。塗工は、幅方向に走る額縁部及び両側の額縁部の全内周に向かって2.5mm進入した位置まで塗工されその外側は塗工されない露出部とする様にした。
そして、上記塗布後、溶剤を乾燥後の塗膜に対して、平坦面を賦形する賦形シートとして、厚さ50μmで連続帯状の市販2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムをその易接着処理未処理面で塗膜にラミネートした。この後、賦形シートのみを剥離して、表面が平坦面の平坦化樹脂層4とした。平坦化樹脂層は、メッシュ層の開口部と共に非開口部上も含めてメッシュ層上に(額縁部は残して)連続層で、開口部の厚みで13μm、非開口部の厚みは3μmとして形成された。
一方、NIR吸収転写シートは次の様にして作製した。離型性基材シート6には、厚さ25μmで連続帯状の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に厚さ1μmのメラミン樹脂系離型層を設けたシートを用意した。そして、この離型性基材シートの離型面(離型層面)に、NIR吸収転写層3として、厚み10μmのNIR吸収層32と、厚み4μmの接着剤層33をこの順にグラビアロールコートして形成した。なお、NIR吸収層32の厚みの分布をマイクロメータで測定したところ、10±0.5μmの範囲(±5%以内の分布)に収まっていた。NIR吸収層32は、フタロシアニン系色素からなるNIR吸収剤をアクリル樹脂系の樹脂バインダー中に樹脂分に対して5%含有させた塗液で形成し、接着剤層33はアクリル樹脂系の塗液で形成した。なお、得られたNIR吸収転写シートは、図3に例示のNIR吸収転写シート20に於いて、剥離層31が省略された構成である。
そして、上記連続帯状のNIR吸収転写シートを用いて、前記連続帯状での平坦化樹脂層の表面に対して、転写圧に加熱した転写ローラのローラ圧を利用するロール転写法で、NIR吸収層32及び接着剤層33からなるNIR吸収転写層3を転写形成した。転写圧は額縁部の露出部では開放して、連続帯状のウェブ幅方向に伸びる露出部には転写しない様に間欠的に転写した。一方、ウェブ流れ方向に伸びるウェブ両端の露出部に対しては、NIR吸収転写シート上でのNIR吸収転写層自体の幅を該露出部間の内側に収まる様な幅として、該露出部には転写されない様にした。なお、離型性基材シートはNIR吸収転写シートが転写ローラ通過後、剥離した。なお、転写条件は、転写ローラ温度200℃、転写圧50N/cm(約5kgf/cm)、転写速度55mm/sであった。
以上の様にして、複合電磁波シールドフィルタの表面にNIR吸収転写層が転写形成された図5(A)の断面図の様な複合電磁波シールドフィルタを作製した。
なお、図5(A)の複合電磁波シールドフィルタ10の層構成は、透明基材1側から順に、透明基材1/透明接着剤層5/メッシュ層2(防錆層22/黒化層23/メッシュ状導電体層21/防錆層22)/平坦化樹脂層4/NIR吸収転写層3(層内容は図示しないが、接着剤層32/NIR吸収層32)で、観察者側は透明基材1側となる構成である。なお、「/」はその左右の層が積層一体化されている事を示す。平坦化樹脂層4はメッシュ層2の直上及び開口部の両方に亙って全面に且つ表面を平坦面として形成されている。
〔実施例2〕
実施例1において、平坦化樹脂層4形成後、透明基材1の裏面に対して、間欠的な転写ではなくウェブ流れ方向に連続して転写して、図6(A)の様な、複合電磁波シールドフィルタの裏面にNIR吸収転写層3が転写形成された、複合電磁波シールドフィルタ10を作製した。
〔実施例3〕
実施例1において、NIR吸収転写層3形成後、そのNIR吸収転写層3の表面に対して更に、市販の反射防止フィルムからなる機能層7を、粘着剤を用いた厚さ10μmの接着剤層8によってラミネートして、図6(B)の様な、複合電磁波シールドフィルタの層間にNIR吸収転写層が転写形成された、複合電磁波シールドフィルタ10を作製した。
〔実施例4〕
実施例1のNIR吸収転写シート作成工程に於いて、離型性基材シート6の離型面上に、先ず、剥離層31として、アクリル樹脂系の樹脂バインダー中にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を0.8%含有させた塗液をグラビアロールコートして厚み3μmの塗膜を形成後、更にこの剥離層31上に、各々実施例1と同様のNIR吸収層32及び接着剤層33を形成した他は、実施例1と同様にして、複合電磁波シールドフィルタを製作した。
本発明による、複合電磁波シールドフィルタ(A)とNIR吸収転写シート(B)の各一形態を例示する断面図。 NIR吸収転写層の層的位置関係の裏面(A)、層間(B)の各一例を例示する断面図。 本発明によるNIR吸収転写シートの別の一形態を例示する断面図。 メッシュ層の周囲部に設ける額縁部を例示する平面図。 本発明による複合電磁波シールドフィルタの別の形態例として2例を例示する断面図。 本発明による複合電磁波シールドフィルタの別の形態例として2例を例示する断面図。
符号の説明
1 透明基材
2 メッシュ層
2A メッシュ部
2B 額縁部
21 メッシュ状導電体層
22 防錆層
23 黒化層
3 NIR吸収転写層
31 剥離層
32 NIR吸収層
33 接着剤層
4 平坦化樹脂層
5 透明接着剤層
6 離型性基材シート
7 機能層
8 接着剤層
10 複合電磁波シールドフィルタ
20 NIR吸収転写シート

Claims (3)

  1. 離型性基材シートに積層された転写層として、近赤外線吸収剤をバインダー樹脂中に含有するNIR吸収層を少なくとも含むNIR吸収転写層を有する、NIR吸収転写シート。
  2. 電磁波シールド性能とともに近赤外線吸収性能を有する複合電磁波シールドフィルタの製造方法において、
    複合電磁波シールドフィルタの表面、裏面、或いは層間のいずれかとなる位置に、請求項1記載のNIR吸収転写シートを用いて、転写によってNIR吸収転写層を形成する、複合電磁波シールドフィルタの製造方法。
  3. 透明基材上に、メッシュ状導電体層を含むメッシュ層が積層され、更に、透明基材にメッシュ層が積層された側の面の少なくともメッシュ層の開口部を含む面にメッシュ層による表面凹凸をより平坦化する平坦化樹脂層を積層した積層体について、該平坦化樹脂層の表面に転写によりNIR吸収転写層を形成する、請求項2記載の複合電磁波シールドフィルタの製造方法。
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