以下、本発明の導電性基板の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の導電性基板の製造方法は、以下の工程を有することができる。
絶縁性基材の少なくとも一方の面上に銅層を形成する銅層形成工程。
銅層上に有機物層を形成する有機物層形成工程。
有機物層上に黒化層を形成する黒化層形成工程。
そして、銅層形成工程は、さらに以下のステップを有することができる。
湿式めっき法により銅めっき層を形成する銅めっき層形成ステップ。
電気伝導度が2000mS/m以上3000mS/m以下の銅めっき液により、銅めっき層を洗浄する銅めっき液洗浄ステップ。
なお、本実施形態の導電性基板の製造方法により得られる導電性基板は、銅層等をパターン化する前の、絶縁性基材の表面に銅層、有機物層、及び黒化層を有する基板と、銅層等をパターン化した基板、すなわち、配線基板と、を含む。
ここでまず、本実施形態の導電性基板の製造方法により得られる導電性基板(以下、単に「本実施形態の導電性基板」とも記載する)に含まれる各部材、及び構成例について以下に説明する。
絶縁性基材としては特に限定されるものではなく、可視光を透過する樹脂基板(樹脂フィルム)や、ガラス基板等の透明基材を好ましく用いることができる。
可視光を透過する樹脂基板の材料としては例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の樹脂を好ましく用いることができる。特に、可視光を透過する樹脂基板の材料として、PET(ポリエチレンテレフタレート)、COP(シクロオレフィンポリマー)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミド、ポリカーボネート等をより好ましく用いることができる。
絶縁性基材の厚さについては特に限定されず、導電性基板とした場合に要求される強度や静電容量、光の透過率等に応じて任意に選択することができる。絶縁性基材の厚さとしては例えば10μm以上200μm以下とすることができる。特にタッチパネルの用途に用いる場合、絶縁性基材の厚さは20μm以上120μm以下とすることが好ましく、20μm以上100μm以下とすることがより好ましい。タッチパネルの用途に用いる場合で、例えば特にディスプレイ全体の厚さを薄くすることが求められる用途においては、絶縁性基材の厚さは20μm以上50μm以下であることが好ましい。
絶縁性基材の全光線透過率は高い方が好ましく、例えば全光線透過率は30%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。絶縁性基材の全光線透過率が上記範囲であることにより、例えばタッチパネルの用途に用いた場合にディスプレイの視認性を十分に確保することができる。
なお絶縁性基材の全光線透過率はJIS K 7361−1に規定される方法により評価することができる。
次に、銅層について説明する。
銅層は、銅薄膜層と、銅めっき層とを有することができる。
絶縁性基材の少なくとも一方の面上に銅層を形成する際、光の透過率を低減させないため、絶縁性基材と銅層との間に接着剤を配置しないことが好ましい。すなわち銅層は、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に直接形成されていることが好ましい。なお、後述のように絶縁性基材と銅層との間に密着層を配置する場合には、銅層は密着層の上面に直接形成されていることが好ましい。
絶縁性基材等の上面に銅層を直接形成するため、上述の様に銅層は銅薄膜層と銅めっき層とを有することが好ましい。
銅薄膜層は乾式めっき法により形成することができる。
乾式めっき法としては、例えばスパッタリング法や蒸着法、イオンプレーティング法等を好ましく用いることができる。
また、銅めっき層は湿式めっき法により形成することができる。特に、銅めっき層は銅薄膜層を給電層として湿式めっき法の一種である電気めっき法により形成することが好ましい。
なお、密着層上に銅層を形成する場合も同様にして、密着層上に銅層を直接形成できる。
銅層の厚さは特に限定されるものではなく、銅層を配線として用いた場合に、該配線に供給する電流の大きさや配線幅等に応じて任意に選択することができる。
ただし、銅層が厚くなると、配線パターンを形成するためにエッチングを行う際にエッチングに時間を要するためサイドエッチが生じ易くなり、細線が形成しにくくなる等の問題を生じる場合がある。このため、銅層の厚さは5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
また、特に導電性基板の抵抗値を低くし、十分に電流を供給できるようにする観点から、例えば銅層は厚さが50nm以上であることが好ましく、60nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることがさらに好ましい。
なお、銅層は上述の様に銅薄膜層と、銅めっき層とを有しているため、銅薄膜層の厚さと、銅めっき層の厚さとの合計が上記範囲であることが好ましい。
銅層中の銅薄膜層の厚さと、銅めっき層の厚さとの比率は特に限定されるものではなく、生産性等を考慮して選択することができる。例えば銅層の厚さが150nm以上の場合、銅めっき層の厚さを100nm以上とし、残部を銅薄膜層により構成することが好ましい。
銅層は後述するように例えば所望の配線パターンにパターン化することにより配線として用いることができる。そして、銅層は従来透明導電膜として用いられていたITOよりも電気抵抗値が低いことから、銅層を設けることにより導電性基板の電気抵抗値を小さくできる。
次に有機物層について説明する。
有機物層は銅層上、すなわち銅層の後述する黒化層と対向する面に形成することができる。従って、導電性基板とした場合に、銅層と黒化層との間に配置することができる。
有機物層を銅層の上面に形成することで、銅層の表面に錆等が生じることを防止することができる。
有機物層は有機物として例えば、窒素系有機物を含有することができる。そして、有機物層が含有する窒素系有機物は特に限定されるものではないが、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール、またはその誘導体を含むことが好ましい。有機物層に含まれる窒素系有機物としては、具体的には例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾールや、5−メチル−1Hベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
有機物層は、銅層上に有機物層の材料を含有する有機物溶液を供給し、乾燥させることで、形成することができる。
有機物層は上述の様に例えば窒素系有機物を含有することができる。このため、有機物層の材料を含有する有機物溶液としては、窒素系有機物を含有する有機物溶液を好適に用いることができる。
窒素系有機物を含有する有機物溶液としては、例えば銅用の防錆処理剤を好ましく用いることができ、市販されている薬品としては例えばOPCディフェンサー(商品名、奥野製薬工業株式会社)等を好ましく用いることができる。
次に黒化層について説明する。
黒化層は、有機物層の上面に形成することができる。
黒化層の材料は特に限定されるものではなく、銅層表面における光の反射を抑制できる材料であれば好適に用いることができる。
黒化層は例えば、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも1種類以上の金属を含むことが好ましい。また、黒化層は、炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素をさらに含むこともできる。
なお、黒化層は、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも2種類以上の金属を含む金属合金を含むこともできる。この場合についても、黒化層は炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素をさらに含むこともできる。この際、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも2種類以上の金属を含む金属合金としては、Cu−Ti−Fe合金や、Cu−Ni−Fe合金、Ni−Cu合金、Ni−Zn合金、Ni−Ti合金、Ni−W合金、Ni−Cr合金、Ni−Cu−Cr合金を好ましく用いることができる。特にNi−Cu合金をより好ましく用いることができる。
黒化層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば15nm以上であることが好ましく、25nm以上であることがより好ましい。これは、黒化層の厚さが薄い場合には、銅層表面における光の反射を十分に抑制できない場合があるため、上述のように黒化層の厚さを15nm以上とすることにより銅層表面における光の反射を特に抑制できるように構成することが好ましいためである。
黒化層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、必要以上に厚くしても成膜に要する時間や、配線を形成する際のエッチングに要する時間が長くなり、コストの上昇を招くことになる。このため、黒化層の厚さは70nm以下とすることが好ましく、50nm以下とすることがより好ましい。
また、本実施形態の導電性基板には上述の絶縁性基材、銅層、有機物層、黒化層以外に任意の層を設けることもできる。例えば密着層を設けることができる。
密着層の構成例について説明する。
上述のように銅層は絶縁性基材上に形成することができるが、絶縁性基材上に銅層を直接形成した場合に、絶縁性基材と銅層との密着性は十分ではない場合がある。このため、絶縁性基材の上面に直接銅層を形成した場合、製造過程、または、使用時に絶縁性基材から銅層が剥離する場合がある。
そこで、本実施形態の導電性基板においては、絶縁性基材と銅層との密着性を高めるため、絶縁性基材上に密着層を配置することができる。
絶縁性基材と銅層との間に密着層を配置することにより、絶縁性基材と銅層との密着性を高め、絶縁性基材から銅層が剥離することを抑制できる。
また、密着層は黒化層としても機能させることができる。このため、銅層の下面側、すなわち絶縁性基材側からの光による銅層の光の反射も抑制することが可能になる。
密着層を構成する材料は特に限定されるものではなく、絶縁性基材及び銅層との密着力や、要求される銅層表面での光の反射の抑制の程度、また、導電性基板を使用する環境(例えば湿度や、温度)に対する安定性の程度等に応じて任意に選択することができる。
密着層は例えば、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも1種類以上の金属を含むことが好ましい。また、密着層は炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素をさらに含むこともできる。
なお、密着層は、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも2種類以上の金属を含む金属合金を含むこともできる。この場合についても、密着層は炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素をさらに含むこともできる。この際、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも2種類以上の金属を含む金属合金としては、Cu−Ti−Fe合金や、Cu−Ni−Fe合金、Ni−Cu合金、Ni−Zn合金、Ni−Ti合金、Ni−W合金、Ni−Cr合金、Ni−Cu−Cr合金を好ましく用いることができる。特にNi−Cu合金をより好ましく用いることができる。
密着層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば3nm以上50nm以下とすることが好ましく、3nm以上35nm以下とすることがより好ましく、3nm以上33nm以下とすることがさらに好ましい。
密着層についても黒化層として機能させる場合、すなわち銅層における光の反射を抑制する場合、密着層の厚さを上述のように3nm以上とすることが好ましい。
密着層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、必要以上に厚くしても成膜に要する時間や、配線を形成する際のエッチングに要する時間が長くなり、コストの上昇を招くことになる。このため、密着層の厚さは上述のように50nm以下とすることが好ましく、35nm以下とすることがより好ましく、33nm以下とすることがさらに好ましい。
本実施形態の導電性基板の具体的な構成例について、図面を用いて以下に説明する。
図1(a)、図1(b)は、本実施形態の導電性基板の、絶縁性基材、銅層、有機物層、黒化層の積層方向と平行な面における断面図の例を示している。
本実施形態の導電性基板は、例えば絶縁性基材の少なくとも一方の面上に、絶縁性基材側から銅層と、有機物層と、黒化層とがその順に積層された構造を有することができる。
具体的には例えば、図1(a)に示した導電性基板10Aのように、絶縁性基材11の一方の面11a側に銅層12と、有機物層13と、黒化層14と、を一層ずつその順に積層することができる。また、図1(b)に示した導電性基板10Bのように、絶縁性基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ銅層12A、12Bと、有機物層13A、13Bと、黒化層14A、14Bと、を一層ずつその順に積層することができる。
また、さらに任意の層として、既述のように例えば密着層を設けた構成とすることもできる。この場合例えば、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に、絶縁性基材側から密着層と、銅層と、有機物層と、黒化層とがその順に形成された構造とすることができる。
具体的には例えば図2(a)に示した導電性基板20Aのように、絶縁性基材11の一方の面11a側に、密着層15と、銅層12と、有機物層13と、黒化層14と、をその順に積層することができる。
この場合も絶縁性基材11の両面に密着層、銅層、有機物層、黒化層を積層した構成とすることもできる。具体的には図2(b)に示した導電性基板20Bのように、絶縁性基材11の一方の面11a側と、他方の面11b側と、にそれぞれ密着層15A、15Bと、銅層12A、12Bと、有機物層13A、13Bと、黒化層14A、14Bとをその順に積層できる。
図1(b)、図2(b)において、絶縁性基材の両面に銅層、有機物層、黒化層等を積層した場合において、絶縁性基材11を対称面として絶縁性基材11の上下に積層した層が対称になるように配置した例を示したが、係る形態に限定されるものではない。例えば、図2(b)において、絶縁性基材11の一方の面11a側の構成を図1(b)の構成と同様に、密着層15Aを設けずに銅層12Aと、有機物層13Aと、黒化層14Aとをその順に積層した形態とし、絶縁性基材11の上下に積層した層を非対称な構成としてもよい。
なお、既述のように本実施形態の導電性基板は、銅層、有機物層、黒化層、場合によってはさらに密着層をパターン化した基板、すなわち配線基板とすることもできる。銅層等をパターン化した導電性基板については、後述する。
次に、本実施形態の導電性基板の製造方法における各工程について説明する。
(銅層形成工程)
銅層形成工程では、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に銅層を形成することができる。
ところで、既述のように、銅層の表面に有機物層を形成し、有機物層上に黒化層を形成した場合、黒化層と、黒化層の下層である銅層等との密着性が低下するという問題があった。
そこで、本発明の発明者らは、銅層と黒化層との間に有機物層を形成した導電性基板において、黒化層の密着性が高い導電性基板が得られる導電性基板の製造方法について鋭意検討を行った。
そして、銅めっき層を形成した後、銅めっき層の表面を、所定の電気伝導度を有する銅めっき液により洗浄することで、銅層上に有機物層、黒化層を形成した場合でも黒化層の有機物層や銅層への密着性を高められることを見出した。
銅めっき層を形成した後、銅めっき層の表面を所定の電気伝導度を有する銅めっき液で洗浄することにより、黒化層の、その下層である銅層等への密着性が高まる理由については明らかではないが、以下のように推察できる。
銅めっき液内には通常、レベラー、ポリマー、及びブライトナーが含まれており、レベラーやポリマーは通電時にのみ銅めっき層表面に吸着し、非通電時には吸着しない。これに対して、ブライトナーは非通電時であっても銅めっき層表面に吸着できる。このため、銅めっき層を形成後に、銅めっき液により銅めっき層表面を洗浄することで、銅めっき層表面にブライトナーが選択的に吸着され、銅めっき層表面を改質できる。そして、改質した銅めっき層の表面に有機物層、黒化層を形成することで黒化層の密着性を高めることができると考えられる。
そこで、本実施形態の導電性基板の製造方法の銅層形成工程は、以下のステップを有することができる。
湿式めっき法により銅めっき層を形成する銅めっき層形成ステップ。
電気伝導度が2000mS/m以上3000mS/m以下の銅めっき液により、銅めっき層を洗浄する銅めっき液洗浄ステップ。
以下に各ステップについて説明する。
銅めっき層形成ステップでは、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に、銅層に含まれる銅めっき層を湿式法により形成することができる。
なお、銅層形成工程に供する絶縁性基材は予め準備しておくことができる。用いる絶縁性基材の種類は特に限定されるものではないが、既述のように可視光を透過する樹脂基板(樹脂フィルム)や、ガラス基板等の透明基材を好ましく用いることができる。絶縁性基材は必要に応じて予め任意のサイズに切断等行っておくこともできる。
また、銅層は既述のように、銅薄膜層と銅めっき層とを有することができる。このため、銅層形成工程はさらに、銅薄膜層形成ステップを有することができる。銅薄膜層形成ステップは、銅めっき層形成ステップを実施する前に実施することができ、例えば乾式めっき法により、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に銅薄膜層を形成することができる。
銅薄膜層形成ステップで用いる乾式めっき法としては、特に限定されるものではなく、例えば、蒸着法、スパッタリング法、又はイオンプレーティング法等を用いることができる。なお、蒸着法としては真空蒸着法を好ましく用いることができる。銅薄膜層形成ステップで用いる乾式めっき法としては、特に膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法がより好ましい。
そして、銅めっき層形成ステップでは例えば、銅薄膜層形成ステップで絶縁性基材の少なくとも一方の面上に形成した銅薄膜層を給電層として、湿式めっき法の一種である電気めっき法により銅めっき層を形成することができる。湿式めっき法により銅めっき層を形成する銅めっき層形成ステップにおける条件、例えば、電気めっき処理の条件は、特に限定されるものではなく、常法による諸条件を採用すればよい。電気めっき処理により銅めっき層を形成する場合、例えば銅めっき液を入れためっき槽に銅薄膜層を形成した絶縁性基材を供給し、電流密度や、基材の搬送速度を制御することによって形成できる。
なお、銅めっき層形成ステップで用いる銅めっき液の特性については特に限定されないが、例えば電気伝導度が17S/m以上30S/m以下の銅めっき液を好ましく用いることができ、18S/m以上25S/m以下の銅めっき液をより好ましく用いることができる。
銅層の好適な厚さ等については既述のため、ここでは説明を省略する。
そして、銅めっき液洗浄ステップでは、電気伝導度が2000mS/m以上3000mS/m以下の銅めっき液により、銅めっき層を洗浄することができる。
銅めっき液洗浄ステップでの洗浄の対象としては銅めっき層だけに限定されるものではなく、銅めっき層の下層である絶縁性基材、及び銅薄膜層、また密着層を形成した場合には密着層についても銅めっき液により洗浄してもよい。
銅めっき液洗浄ステップで用いる銅めっき液の電気伝導度は上述の様に2000mS/m以上であることが好ましく、2500mS/m以上であることがより好ましい。
これは銅めっき液の電気伝導度が2000mS/m以上の場合、銅めっき層の表面に十分な量のブライトナーを吸着させることができ、銅めっき層上に有機物層、及び黒化層を形成した場合に、黒化層の密着性を特に高めることができるからである。
なお、銅層形成工程では銅めっき液洗浄ステップを実施した後、付着した余分な銅めっき液を除去するため、銅めっき層を水洗する水洗ステップを実施することもできる。
水洗ステップでは、例えば銅層を形成した絶縁性基材を水洗槽に入れ、水洗槽内の水により洗浄することができる。このため、水洗ステップでの洗浄対象は、銅めっき層だけに限定されるものではなく、その下層である絶縁性基材、及び銅薄膜層、また密着層を形成した場合は密着層もあわせて水洗できる。
ところが、銅めっき液洗浄ステップで用いる銅めっき液の電気伝導度が3000mS/mを超えていると、水洗ステップにおいて、銅層を形成した絶縁性基材と共に、水洗槽に導入される銅めっき液の量が多くなる。このため、水洗槽が汚染され易く、水洗水の洗浄度が低下して、銅めっき層表面に外観ムラを生じる恐れがある。このため、銅めっき液洗浄ステップで用いる銅めっき液の電気伝導度は3000mS/m以下であることが好ましく、2800mS/m以下であることがより好ましい。
なお、銅めっき液洗浄ステップで用いる銅めっき液としては、銅めっき層形成ステップで、銅めっき層を形成する際に用いた銅めっき液を、所望の電気伝導度となるように希釈した銅めっき液を用いることが好ましい。銅めっき液を希釈する際に用いる溶媒については特に限定されるものではないが、水等を好ましく用いることができる。
銅めっき液洗浄ステップにおいて、銅めっき液を用いて銅層を洗浄する方法は特に限定されるものではないが、例えば、銅めっき液を入れた水槽に、銅層を形成した絶縁性基材を浸漬し、洗浄することができる。また、銅層を形成した絶縁性基材の、銅層表面にめっき液を吹き付けたり、かけ流したりして洗浄することもできる。なお、ここでいうかけ流しとは、銅めっき層の表面と略平行な平面状の銅めっき液の流れを形成し、銅めっき層の表面に銅めっき液の流れを接触させて銅めっき層表面を洗浄する方法をいう。
また、上述の様に銅めっき液洗浄ステップの後、付着した余分な銅めっき液を水洗により洗浄、除去する水洗ステップを実施する場合、水により銅層を形成した絶縁性基材を洗浄する方法は特に限定されない。水洗ステップでは、例えば水を入れておいた水洗槽内に銅めっき液洗浄ステップ後の銅層を形成した絶縁性基材を供給し、洗浄することができる。
以上のように、銅めっき層形成ステップにより、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に銅めっき層を形成した後、銅めっき液洗浄ステップを実施することで、銅めっき層表面を改質できる。このため、銅めっき層を含む銅層上に有機物層を介して黒化層を形成した場合でも黒化層の密着性を高めることができる。
なお、操作の形態上、銅めっき層の表面を銅めっき液で洗浄する銅めっき液洗浄ステップとして説明したが、銅めっき液洗浄ステップでは、非通電環境下で銅めっき層の表面に所定の電気伝導度の銅めっき液を供給し、接触させる操作を行うことができる。このため、銅めっき液洗浄ステップは銅めっき液接触ステップのように呼ぶこともできる。
(有機物層形成工程)
次に、有機物層形成工程について説明する。
有機物層形成工程では、銅層上に有機物層を形成することができる。具体的には例えば、銅層上に有機物層の材料を含有する有機物溶液を供給し、乾燥させることで、有機物層を形成することができる。
銅層上に有機物溶液を供給する方法としては特に限定されるものではなく、任意の方法により供給することができる。例えば、有機物溶液をスプレー等により塗布したり、有機物溶液に銅層を形成した絶縁性基材を浸漬することにより銅層上に有機物層を構成する材料を含む溶液を塗布することができる。
ただし、有機物溶液を供給する際、銅層と有機物層とが結合した均一な皮膜となるように、銅層表面に対して、有機物溶液を均一に供給することが好ましい。このため、例えば、銅層の黒化層を形成する側の面に対して、有機物溶液を2種類以上の複数の手段により同時に供給したり、銅層の黒化層を形成する側の面に対して、有機物溶液を複数回に分けて繰り返し供給することが好ましい。
なお、銅層の黒化層を形成する面に対して、有機物溶液を供給する際の有機物溶液の供給条件は特に限定されるものではなく、有機物溶液の種類等に応じて任意に選択できる。
例えば、有機物層を形成する際に用いる有機物溶液中の有機物の濃度は特に限定されるものではなく、有機物層中の、目標とする有機物の含有量や、操作性等を考慮して任意に選択することができる。
ただし、有機物溶液中の有機物の濃度の下限値は、1mL/L以上であることが好ましく、2mL/L以上であることがより好ましい。上限値は、4mL/L以下であることが好ましい。これは、有機物溶液中の有機物の濃度を1mL/L以上とすることで、銅層と有機物層とが結合した均一な被膜をより確実に形成することができるためである。ただし、有機物溶液中の有機物の濃度が4mL/Lを超えると、溶液中に析出物等が生じる恐れがあるため、4mL/L以下であることが好ましい。
また、銅層表面に有機物溶液を供給する際の有機物溶液の温度は特に限定されるものではなく、該溶液の粘度や操作性、反応性等を考慮して任意に選択することができる。例えば10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。ただし、温度が高くなると含まれる有機物が他の物質と反応する恐れがあることから、40℃以下とすることが好ましい。
また、有機物溶液のpHは特に限定されるものではなく、用いる有機物の種類や該溶液の反応性等を考慮して選択することができるが、例えば有機物溶液のpHは2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。ただし、pHが高くなると含まれる有機物が析出等する恐れがあることから、有機物溶液のpHは4以下であることが好ましい。
銅層表面に対して有機物溶液を供給し、反応させる処理時間の長さは特に限定されるものではなく、用いる有機物溶液の種類や、形成する有機物層の厚さ等に応じて任意に選択することができる。例えば処理時間は5秒以上であることが好ましく、6秒以上であることがより好ましい。ただし、処理時間を長くしすぎると、生産性が低下する恐れがあることから10秒以下であることが好ましい。
有機物層は既述のように窒素系有機物を含有することが好ましい。このため、有機物層を形成する際に用いる有機物溶液は、窒素系有機物溶液であることが好ましい。有機物層が好適に含むことができる窒素系有機物等については既に説明したため、ここでは説明を省略する。
(黒化層形成工程)
黒化層形成工程では、有機物層上に黒化層を形成することができる。
黒化層は例えば乾式法により成膜することができる。
黒化層を乾式法により成膜する場合、その具体的な方法は特に限定されるものではないが、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等の乾式めっき法を好ましく用いることができる。黒化層を乾式法により成膜する場合、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。なお、黒化層には上述のように炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素を添加することもでき、この場合は反応性スパッタリング法をさらに好ましく用いることができる。
スパッタリング法により黒化層を成膜する場合、ターゲットとしては、黒化層を構成する金属種を含むターゲットを用いることができる。黒化層が合金を含む場合には、黒化層に含まれる金属種毎にターゲットを用い、基材等の被成膜体の表面で合金を形成してもよく、予め黒化層に含まれる金属を合金化したターゲットを用いることもできる。
また、黒化層に炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素が含まれる場合、これらは黒化層を成膜する際の雰囲気中に添加しておくことにより、黒化層中に添加することができる。例えば、黒化層に炭素を添加する場合には一酸化炭素ガスおよび/または二酸化炭素ガスを、酸素を添加する場合には酸素ガスを、水素を添加する場合には水素ガスおよび/または水を、窒素を添加する場合には窒素ガスを、スパッタリングを行う際の雰囲気中に添加しておくことができる。黒化層を成膜する際の不活性ガス中にこれらのガスを添加することにより、炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素を黒化層中に添加することができる。なお、不活性ガスとしてはアルゴンを好ましく用いることができる。
本実施形態の導電性基板の製造方法は、ここまで説明した銅層形成工程、有機物層形成工程、及び黒化層形成工程以外にも例えば以下に説明する任意の工程を含むこともできる。
(密着層形成工程)
本実施形態の導電性基板の製造方法は、例えば密着層形成工程を含むこともできる。
密着層形成工程を実施する場合、密着層形成工程では、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に密着層を形成することができる。なお、密着層を絶縁性基材と銅層との間に配置することにより、銅層の密着性を高めることができる。このため密着層は、絶縁性基材の、銅層を形成する面に形成することが好ましい。
密着層の成膜方法は特に限定されるものではないが、乾式めっき法により成膜することが好ましい。乾式めっき法としては例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等を好ましく用いることができる。密着層を乾式法により成膜する場合、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。なお、密着層には既述のように炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素を添加することもでき、この場合は反応性スパッタリング法をさらに好ましく用いることができる。
密着層が炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素を含む場合には、密着層を成膜する際の雰囲気中に炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素を含有するガスを添加しておくことにより、密着層中に添加することができる。例えば、密着層に炭素を添加する場合には一酸化炭素ガスおよび/または二酸化炭素ガスを、酸素を添加する場合には酸素ガスを、水素を添加する場合には水素ガスおよび/または水を、窒素を添加する場合には窒素ガスを、乾式めっきを行う際の雰囲気中に添加しておくことができる。
炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素を含有するガスは、不活性ガスに添加し、乾式めっきの際の雰囲気ガスとすることが好ましい。不活性ガスとしては特に限定されないが、例えばアルゴンを好ましく用いることができる。
密着層を上述のように乾式めっき法により成膜することにより、絶縁性基材と密着層との密着性を高めることができる。そして、密着層は例えば金属を主成分として含むことができるため銅層との密着性も高い。このため、絶縁性基材と銅層との間に密着層を配置することにより、銅層の剥離を抑制することができる。
なお、密着層は上述の様に絶縁性基材と銅層との間に配置することが好ましい。このため、密着層形成工程を実施する場合には、銅層形成工程は、密着層形成工程の後に実施することが好ましい。
(パターン化工程、積層工程)
本実施形態の導電性基板は例えばタッチパネル等の各種用途に用いることができる。そして、各種用途に用いる場合には、銅層、有機物層、及び黒化層がパターン化されていることが好ましい。なお、密着層を設ける場合は、密着層についてもパターン化されていることが好ましい。銅層、有機物層、及び黒化層、場合によってはさらに密着層は、例えば所望の配線パターンにあわせてパターン化することができ、銅層、有機物層、及び黒化層、場合によってはさらに密着層は同じパターンとなるようにパターン化されていることが好ましい。
このため、本実施形態の導電性基板の製造方法は、銅層、有機物層及び黒化層をパターン化するパターン化工程をさらに有することもできる。なお、密着層を形成した場合には、パターン化工程は、さらに密着層もパターン化することができ、密着層、銅層、有機物層、及び黒化層をパターン化する工程とすることができる。
パターン化工程の具体的手順は特に限定されるものではなく、任意の手順により実施することができる。例えば導電性基板が図1(a)のように絶縁性基材11上に銅層12、有機物層13、黒化層14が積層された導電性基板10Aの場合、まず黒化層14上の表面Aに所望のパターンを有するレジストを配置するレジスト配置ステップを実施することができる。次いで、黒化層14上の表面A、すなわち、レジストを配置した面側にエッチング液を供給するエッチングステップを実施できる。
エッチングステップにおいて用いるエッチング液は特に限定されるものではなく、エッチングを行う層を構成する材料に応じて任意に選択することができる。例えば、層毎にエッチング液を変えることもでき、また、同じエッチング液により同時に銅層、有機物層、及び黒化層、場合によってはさらに密着層をエッチングすることもできる。
また、図1(b)のように絶縁性基材11の一方の面11a、他方の面11bに銅層12A、12B、有機物層13A、13B、黒化層14A、14Bを積層した導電性基板10Bについてもパターン化するパターン化工程を実施できる。この場合例えば黒化層14A、14B上の表面A、及び表面Bに所望のパターンを有するレジストを配置するレジスト配置ステップを実施できる。次いで、黒化層14A、14B上の表面A、及び表面B、すなわち、レジストを配置した面側にエッチング液を供給するエッチングステップを実施できる。
パターン化工程で形成するパターンについては特に限定されるものではなく、導電性基板の用途等に応じて任意のパターンとすることができる。
例えば本実施形態の導電性基板はタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。タッチパネル用の導電性基板として用いる場合、得られる導電性基板はメッシュ状の配線を備えた構成とすることが好ましく、パターン化工程は、係るメッシュ状の配線を備えた導電性基板となるように実施することが好ましい。
メッシュ状の配線を備えた導電性基板は、ここまで説明した本実施形態の導電性基板の製造方法により得られる導電性基板の銅層、有機物層、及び黒化層をパターン化工程でエッチングすることにより得ることができる。
例えば、二層の配線によりメッシュ状の配線とすることができる。具体的な構成例を図3に示す。図3はメッシュ状の配線を備えた導電性基板30を銅層等の積層方向の上面側から見た図を示しており、配線パターンが分かり易いように、銅層をパターン化して形成した配線31A、31Bと、絶縁性基材11以外の層は記載を省略している。また、絶縁性基材11を透過して見える配線31Bも、図3中に示している。
図3に示した導電性基板30は、絶縁性基材11と、図中Y軸方向に平行な複数の配線31Aと、X軸方向に平行な配線31Bとを有している。なお、配線31A、31Bは銅層をエッチングして形成されており、該配線31A、31Bの上面または下面には図示しない有機物層、及び黒化層が形成されている。また、有機物層、及び黒化層は配線31A、31Bと同じパターンとなるようにエッチングされている。
絶縁性基材11と配線31A、31Bとの配置は特に限定されない。絶縁性基材11と配線との配置の構成例を図4(a)、(b)に示す。図4(a)、(b)は図3のA−A´線での断面図に当たる。
まず、図4(a)に示したように、絶縁性基材11の上下面にそれぞれ配線31A、31Bが配置されていてもよい。なお、図4(a)では配線31Aの上面、及び31Bの下面には、配線と同じパターンとなるようにエッチングされた有機物層32A、32B、黒化層33A、33Bが配置されている。
また、図4(b)に示したように、1組の絶縁性基材11を用い、一方の絶縁性基材11を挟んで上下面に配線31A、31Bを配置し、かつ、一方の配線31Bは絶縁性基材11間に配置されてもよい。この場合も、配線31A、31Bの上面には配線と同じ形状にエッチングされた有機物層32A、32B、黒化層33A、33Bが配置されている。なお、既述のように、銅層、有機物層、黒化層以外に密着層を設けることもできる。このため、図4(a)、(b)いずれの場合でも、例えば配線31Aおよび/または配線31Bと絶縁性基材11との間に密着層を設けることもできる。密着層を設ける場合、密着層も配線31A、31Bと同じパターンとなるようにエッチングされていることが好ましい。
図3及び図4(a)に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は例えば、図1(b)のように絶縁性基材11の両面に銅層12A、12Bと、有機物層13A、13Bと、黒化層14A、14Bとを備えた導電性基板から形成することができる。
図1(b)の導電性基板を用いて形成した場合を例に説明する。この場合、パターン化工程では、絶縁性基材11の一方の面11a側の銅層12A、有機物層13A、及び黒化層14Aを、図1(b)中Y軸方向に平行な複数の線状のパターンがX軸方向に沿って所定の間隔をあけて配置されるようにパターン化工程を実施する。なお、図1(b)中のX軸方向は、各層の幅方向と平行な方向を意味している。また、図1(b)中のY軸方向とは、図1(b)中の紙面と垂直な方向を意味している。
そして、絶縁性基材11の他方の面11b側の銅層12B、有機物層13B、及び黒化層14Bを図1(b)中X軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけてY軸方向に沿って配置されるようにパターン化工程を実施する。
以上の操作により図3、図4(a)に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板を形成することができる。なお、絶縁性基材11の両面のエッチングは同時に行うこともできる。すなわち、銅層12A、12B、有機物層13A、13B、黒化層14A、14Bのエッチングは同時に行ってもよい。また、図4(a)において、配線31A、31Bと、絶縁性基材11との間にさらに配線31A、31Bと同じ形状にパターン化された密着層を有する導電性基板は、図2(b)に示した導電性基板を用いて同様にエッチングを行うことで作製できる。
図3に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は、図1(a)または図2(a)に示した導電性基板を2枚用いることにより形成することもできる。図1(a)の導電性基板を2枚用いて形成した場合を例に説明すると、図1(a)に示した導電性基板2枚についてそれぞれ、銅層12、有機物層13、及び黒化層14を、X軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけてY軸方向に沿って配置されるようにパターン化工程を実施する。
そして、パターン化工程により各導電性基板に形成した線状のパターンが互いに交差するように向きをあわせて2枚の導電性基板を貼り合せることによりメッシュ状の配線を備えた導電性基板とすることができる。
すなわち、本実施形態の導電性基板の製造方法では、パターン化工程で導電性基板について銅層12等をパターン化した後、パターン化した2枚以上の導電性基板を積層する積層工程を実施することもできる。そして、例えば積層する際、各導電性基板の銅層のパターンが交差するように積層することにより、メッシュ状の配線を備えた積層導電性基板を得ることもできる。
積層した2枚以上の導電性基板を固定する方法は特に限定されるものではないが、例えば接着剤等により固定することができる。
2枚の導電性基板を貼り合せる際に貼り合せる面は特に限定されるものではない。例えば、銅層12等が積層された図1(a)における表面Aと、銅層12等が積層されていない図1(a)における他方の面11bとを貼り合せて、図4(b)に示した構造となるようにすることもできる。
また、例えば絶縁性基材11の銅層12等が積層されていない図1(a)における他方の面11b同士を貼り合せて断面が図4(a)に示した構造となるようにすることもできる。
なお、図4(a)、図4(b)において、配線31A、31Bと、絶縁性基材11との間にさらに配線31A、31Bと同じパターンにパターン化された密着層を有する導電性基板は、図1(a)に示した導電性基板にかえて図2(a)に示した導電性基板を用いることで作製できる。
図3、図4に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板における配線の幅や、配線間の距離は特に限定されるものではなく、例えば、配線に流す電流量等に応じて選択することができる。
また、図3、図4においては、直線形状の配線を組み合わせてメッシュ状の配線(配線パターン)を形成した例を示しているが、係る形態に限定されるものではなく、配線パターンを構成する配線は任意の形状とすることができる。例えばディスプレイの画像との間でモアレ(干渉縞)が発生しないようメッシュ状の配線パターンを構成する配線の形状をそれぞれ、ぎざぎざに屈曲した線(ジグザグ直線)等の各種形状にすることもできる。
このように2層の配線から構成されるメッシュ状の配線を有する導電性基板は、例えば投影型静電容量方式のタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。
なお、本実施形態の導電性基板は、黒化層の銅層、及び有機物層への密着性が高くなっている。このため、パターン化工程において黒化層等をパターン化する際でも黒化層が剥離することを防止することができ、配線の線幅が狭いパターンも形成することができる。そこで、本実施形態の導電性基板は、特に微細配線加工に好適に使用できる。このため、本実施形態の導電性基板の製造方法において、例えばパターン化工程で形成するパターンが、線幅が5μm以下のパターンを含むことが好ましく、線幅が3μm以下のパターンを含むことがより好ましい。
以上の本実施形態の導電性基板の製造方法によれば、銅層と黒化層との間に有機物層を形成した導電性基板において、黒化層の密着性が高い導電性基板を製造できる。このため、製造時や、製造後に黒化層が剥離することを抑制することができる。
また、本実施形態の導電性基板の製造方法によれば、黒化層等をパターン化する際にも黒化層の剥離が起きにくい。このため、本実施形態の導電性基板の製造方法は、微細配線加工が要求されるメタルメッシュ用の導電性基板等の製造に好適に使用することができる。
以下に具体的な実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(評価方法)
まず、得られた導電性基板の評価方法について説明する。
(1)電気伝導度
銅めっき液洗浄ステップを実施する際に用いた、希釈した銅めっき液について、ポータブル型電気伝導率計(株式会社堀場製作所製 型式:ES−71)により電気伝導度を測定した。
(2)密着性試験
図5に示すように、黒化層まで形成した導電性基板の黒化層に対して、切込み工具(Precision Gate&Tool Company社製 Cross Cut Kit 1.0MM)を用いて、長さ20mmの縦切り込み線51aを1.0mm間隔で互いに平行になるように11本形成する。
次いで同じ切込み工具を用いて、先に形成した縦切込み線51aと直交するように、長さ20mmの横切り込み線51bを1.0mm間隔で互いに平行になるように11本形成する。
以上の工程により、図5に示すように黒化層に縦方向、横方向それぞれ11本の切込み線により、格子状の切込みが形成される。
次いで、格子状の切込みを覆うように密着度評価用テープ(エルコメーター社製 Elcometer99テープ)を貼り付けた後、十分に擦り付ける。
密着度評価用テープを貼り付けてから30秒経過後に測定面に対して可能な限り180°の方向に素早く密着度評価用テープを剥がす。
密着度評価用テープを剥がした後、格子状の縦切込み線51a、及び横切込み線51bとで囲まれた、図5中の評価領域52内で黒化層の下に形成した銅層(有機物層)が露出した面積により密着性の評価を行った。
評価領域内の銅層の露出面積が0%の場合を5B、0%より多く5%未満の場合を4B、5%以上15%未満の場合を3B、15%以上35%未満の場合を2B、35%以上65%未満の場合を1B、65%以上の場合を0Bと評価した。係る評価について0Bが最も黒化層の密着性が低く、5Bが黒化層の密着性が最も高くなる。
密着性試験の結果、4Bまたは5Bの場合について黒化層の密着性が十分であると評価できる。
(3)外観ムラの評価
外観ムラの評価について以下に説明する。
以下の実施例、比較例で作製した導電性基板に対し、3波長昼白色ランプにより、導電性基板の表面において照度が2000lmとなるように光を照射した。光を照射した状態で、導電性基板表面を目視で検査し、視認できる導電性基板表面のムラの有無を評価した。
(4)レジストの浮き上がりの有無の評価
パターン化工程において、黒化層等をエッチングする際、レジストの浮き上がりの有無について評価を行った。レジストの浮き上がりの有無については目視で行った。
黒化層の、有機物層及び銅層への密着性が低い場合には、レジストの浮き上がりが発生し、密着性が高い場合にはレジストの浮き上がりは発生しないため、黒化層の密着性の評価の一環として行った。
(試料の作製条件)
実施例、比較例として、以下に説明する条件で導電性基板を作製し、上述の評価方法により評価を行った。
[実施例1]
(密着層形成工程)
縦500mm×横500mm、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)製の絶縁性基材の一方の面上に密着層を成膜した。なお、絶縁性基材として用いたポリエチレンテレフタレート樹脂製の絶縁性基材について、全光線透過率をJIS K 7361−1に規定された方法により評価を行ったところ97%であった。
密着層形成工程では、Ni−35重量%Cu合金のターゲットを装着したスパッタリング装置により、密着層として酸素を含有するNi−Cu合金層を成膜した。以下に密着層の成膜手順について説明する。
予め100℃まで加熱して水分を除去した上述の絶縁性基材を、スパッタリング装置のチャンバー内に設置した。
次に、チャンバー内を1×10−4Paまで排気した後、アルゴンガスと酸素ガスとを導入し、チャンバー内の圧力を2Paとした。なお、この際チャンバー内の雰囲気は体積比で30%が酸素、残部がアルゴンとしている。
そして係る雰囲気下でターゲットに電力を供給し、絶縁性基材の一方の面上に密着層を厚さが20nmになるように成膜した。
(銅層形成工程)
銅層形成工程では、銅薄膜層形成ステップと、銅めっき層形成ステップと、銅めっき液洗浄ステップと、水洗ステップとを実施した。
まず、銅薄膜層形成ステップについて説明する。
銅薄膜層形成ステップでは、基材として密着層形成工程で絶縁性基材上に密着層を成膜したものを用い、密着層上に銅薄膜層を形成した。
銅薄膜層は、銅のターゲットを用いた点と、基材をセットしたチャンバー内を排気した後、アルゴンガスを供給してアルゴン雰囲気とした点以外は、密着層の場合と同様にしてスパッタリング装置により成膜した。
銅薄膜層は膜厚が150nmとなるように成膜した。
次に、銅めっき層形成ステップにおいては、銅めっき層を形成した。銅めっき層は、電気めっき法により銅めっき層の厚さが0.5μmになるように成膜した。
銅めっき層形成ステップで用いた銅めっき液としては、硫酸銅をベースとし添加剤を加えた浴を用い、電気伝導度を測定したところ22S/mであった。
次いで、銅めっき液により銅めっき層の洗浄を行う銅めっき液洗浄ステップを実施した。
銅めっき液洗浄ステップでは、銅めっき液として、銅めっき層形成ステップを実施した際に用いた銅めっき液100重量部に対して、純水を1000重量部添加し、希釈した銅めっき液を用いた。なお、希釈した銅めっき液について電気伝導度を測定したところ、2000mS/mであった。
銅めっき液洗浄ステップでは、絶縁性基材の一方の面上に密着層と、銅層とが形成された積層体の、銅めっき層表面に希釈めっき液を吹き付けることで、銅めっき層の洗浄を行った。
次いで、水洗ステップを実施した。水洗ステップでは、銅めっき液洗浄ステップを終えた積層体を、純水を入れた水洗槽に入れ、水洗槽内で揺動することで、該積層体について洗浄を行った。
(有機物層形成工程)
有機物層形成工程では、絶縁性基材の一方の面上に、密着層と、銅層とが形成された積層体の銅層上に有機物層を形成した。
有機物層形成工程ではまず、上述の積層体を窒素系有機物として1,2,3−ベンゾトリアゾールを含有するOPCディフューザー(奥野製薬工業株式会社製)溶液に7秒間浸漬した。なお、用いたOPCディフューザー溶液は、1,2,3−ベンゾトリアゾールの濃度が3mL/Lであり、浴温30℃、pH3となるように予め調整して用いた。
そして、銅層の上面、すなわち銅層の密着層と対向する面と反対側の面以外に付着した溶液を除去した後、乾燥することで、銅層上に有機物層を形成した。
(黒化層形成工程)
黒化層形成工程では、有機物層形成工程で形成した有機物層上に、スパッタリング法により黒化層として酸素を含有するNi−Cu層を形成した。
黒化層形成工程では、有機物層上に形成した点と、その膜厚を30nmとした点以外は、密着層形成工程と同様にして実施し、有機物層上に厚さ30nmになるように黒化層を成膜した。
以上の工程により、断面形状が図2(a)と同様の構成となっている導電性基板が得られた。すなわち、絶縁性基材上に、密着層、銅層、有機物層、黒化層がその順で積層された導電性基板が得られた。
得られた導電性基板について、外観ムラの評価を実施した。また、得られた導電性基板の一部を切り出し密着性試験に供した。
結果を表1に示す。
また、得られた導電性基板の密着層、銅層、有機物層、黒化層について、複数の直線形状となるようにパターン化を行うパターン化工程を実施した。
既述のように、上記黒化層形成工程までを実施することで、断面形状が図2(a)と同様の構成を有する導電性基板を得た。このため、パターン化工程では、図2(a)の黒化層14の表面14a上に複数の所定の形状の開口部を有するレジストを配置するレジスト配置ステップと、レジストの上面からエッチング液を供給し、エッチングを行うエッチングステップとを実施した。
エッチングステップにおいては、3%塩化第二鉄と、0.3%塩酸とを混合した、室温のエッチング液を用いて、エッチングを行った。
なお、銅層をエッチングして形成した金属配線は複数の直線形状のパターンとなるように形成しており、各直線形状のパターンは幅3μm、長さ500mmとなるように形成している。また、隣接する直線形状のパターン間の幅は0.2mmとしている。
なお、パターン化工程を実施する際、レジストの浮き上がりの有無の評価もあわせて行った。
また、ここまで説明した方法と同様の手順により、同じ構成のパターン化された導電性基板をもう1枚作製した。
そして、作製した2枚の導電性基板を図3、図4(b)に示したように積層し、両導電性基板を接着剤により固定することによって積層導電性基板を作製した(積層工程)。なお、図4(b)においては密着層が設けられていない例が示されているが、本実施例では絶縁性基材11と配線31Aとの間、及び絶縁性基材11と配線31Bとの間に、配線31A、配線31Bと同じパターンにパターン化された密着層が配置されている。
[実施例2、実施例3]
銅層形成工程の銅めっき液洗浄ステップにおいて用いた、希釈した銅めっき液の電気伝導度が異なる点以外は実施例1と同様にして導電性基板を製造した。
なお、実施例2では、銅めっき層形成ステップを実施した際に用いた銅めっき液100重量部に対して、純水を800重量部添加し、希釈した銅めっき液を用い、希釈した銅めっき液の電気伝導度を評価したところ、2500mS/mであった。
また、実施例3では、銅めっき層形成ステップを実施した際に用いた銅めっき液100重量部に対して、純水を650重量部添加し、希釈した銅めっき液を用い、希釈した銅めっき液の電気伝導度を評価したところ、3000mS/mであった
得られた導電性基板について、外観ムラの評価を実施した。また、得られた導電性基板の一部を切り出し密着性試験に供した。
また、得られた導電性基板の密着層、銅層、有機物層、黒化層について、実施例1の場合と同様にしてパターン化を行った(パターン化工程)。なお、パターン化工程を実施する際、レジストの浮き上がりの有無の評価もあわせて行った。
さらに、同様の手順により、同じ構成のパターン化された導電性基板をもう1枚作製し、2枚の導電性基板を積層して(積層工程)、実施例1の場合と同様にして積層導電性基板を作製した。
結果を表1に示す。
[比較例1、比較例2]
銅層形成工程の銅めっき液洗浄ステップにおいて、用いた銅めっき液の電気伝導度が異なる点以外は実施例1と同様にして導電性基板を製造した。
比較例1では、銅めっき層形成ステップを実施した際に用いた銅めっき液100重量部に対して、純水を1100重量部添加し、希釈した銅めっき液を用い、希釈した銅めっき液の電気伝導度を評価したところ、1800mS/mであった。
また、比較例2では、銅めっき層形成ステップを実施した際に用いた銅めっき液100重量部に対して、純水を550重量部添加し、希釈した銅めっき液を用い、希釈した銅めっき液の電気伝導度を評価したところ、3200mS/mであった。
得られた導電性基板について、外観ムラの評価を実施した。また、得られた導電性基板の一部を切り出し密着性試験に供した。
また、得られた導電性基板の密着層、銅層、有機物層、黒化層について、実施例1の場合と同様にしてパターン化を行った(パターン化工程)。なお、パターン化工程を実施する際、レジストの浮き上がりの有無の評価もあわせて行った。
さらに、同様の手順により、同じ構成のパターン化された導電性基板をもう1枚作製し、2枚の導電性基板を積層して(積層工程)、実施例1の場合と同様にして積層導電性基板を作製した。
結果を表1に示す。
表1に示した結果によると、銅めっき液洗浄ステップにおいて用いた銅めっき液の電気伝導度が、2000mS/m以上3000mS/m以下である実施例1〜実施例3については密着性試験の結果が4Bまたは5Bとなっていることが確認できた。また、実施例1〜実施例3についてはパターン化工程においてもレジストの浮き上がりがみられないことを確認できた。
すなわち、実施例1〜実施例3については黒化層の、黒化層の下層である銅層等に対する密着性が高くなっていることが確認できた。
これに対して、銅めっき液洗浄ステップにおいて用いた銅めっき液の電気伝導度が、2000mS/m未満の比較例1においては、密着性試験の結果が3Bであり、パターン化工程においてレジストの浮き上がりが観察された。これらの結果から、比較例1においては、黒化層の、黒化層の下層である銅層等に対する密着性が十分ではないことが確認できた。
また、比較例2においては、密着性試験の結果が5Bであり、パターン化工程でのレジストの浮き上がりは見られなかったものの、外観ムラが観察された。これは銅めっき液洗浄ステップ後の水洗ステップにおいて、水洗槽内に銅めっき液が多く持ち込まれ、銅めっき層表面に洗浄に用いた銅めっき液が残留したためと考えられる。