JP2016093939A - 抗菌性物品 - Google Patents

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Abstract

【課題】抗菌性物質を用いずに、優れた抗菌性を発揮することができる抗菌性物品を提供する。【解決手段】複数の微小突起が密接して配置され、隣接する前記微小突起間の距離dの平均dAVGが30nm〜90nmであり、前記微小突起の高さHの平均HAVGと、前記微小突起間の距離dの平均dAVGとの比で規定される前記微小突起の平均アスペクト比(HAVG/dAVG)が3.0〜6.25である微小突起構造体を表面に有することを特徴とする、抗菌性物品。【選択図】図1

Description

本発明は、抗菌性物品に関するものである。
空調機器、家電製品、調理用機器、医療機器等の物品においては、清潔な環境を保つために、物品表面に対する細菌等の付着、及び付着した細菌等の繁殖を防ぐことができる抗菌性の付与が求められている。
従来、各種物品に抗菌性を付与するためには、例えば光触媒材料や銀イオンが用いられている。例えば特許文献1には、室内空間のような微弱光下においても、高い防汚性と高い抗菌性及び抗ウイルス性とを両立させることを目的とした材料として、撥水性樹脂バインダーと、光触媒材料と、亜酸化銅とを含有し、前記光触媒材料と前記亜酸化銅とが複合化している撥水性光触媒組成物及びその塗膜が開示されている。
特許文献2には、バクテリア、ウイルス、細菌などを分解除去することができる材料として、光触媒活性を有するアパタイトを含む光触媒粉体を含有する組成物が開示されており、光触媒粉体は、表面がイガグリ形状であると、光触媒として機能する表面積が拡大し、微生物との接触効率がより向上すると記載されている。
また、特許文献3には、表層に抗菌物質を有する抗菌性ガラスであって、表層において、ガラス表面から深さ30μm以内に銀イオンの拡散層と、ガラス表面から深さ方向に厚み15μm以上の圧縮層とを有する抗菌性ガラスが開示されている。
特許文献1〜3に記載されるような、光触媒材料や銀イオン等の抗菌性物質を用いた抗菌性物品は、抗菌性物質が表面から剥離、脱落すると、抗菌機能が維持されないという問題がある。
一方で、特許文献4には、表面粗さ(Ra)0.2μm以上、最大粗さ(Rt)1μm以上、0.5μm以上の粗さ(Pc)5ケ/mm以上の表面粗さをもつプラスチックフィルムの表面の微細凹部に、1μm以下の粒径をもつ、銀を含む無機化合物を定着させることにより、抗菌性を有する無機化合物の剥離、脱落を抑制し、抗菌機能を長期間保持できると記載されている。
特開2012−210557号公報 特開2012−239499号公報 特開2013−71878号公報 特開平9−57893号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されるような、光触媒材料を用いた抗菌性物品は、光照射がされない場合には抗菌性が発揮されない。
また、特許文献3や特許文献4に記載されるような、銀を含む抗菌性物質を用いた抗菌性物品においては、環境、及び金属アレルギーによる人体への影響等が懸念されている。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、抗菌性物質を用いずに、優れた抗菌性を発揮することができる抗菌性物品を提供することを目的とする。
本発明に係る抗菌性物品は、複数の微小突起が密接して配置され、隣接する前記微小突起間の距離dの平均dAVGが30nm〜90nmであり、前記微小突起の高さHの平均HAVGと、前記微小突起間の距離dの平均dAVGとの比で規定される前記微小突起の平均アスペクト比(HAVG/dAVG)が3.0〜6.25である微小突起構造体を表面に有することを特徴とする。
本発明に係る抗菌性物品は、前記微小突起構造体の表面における水の静的接触角が5°以上30°以下であることが、抗菌性に優れる点から好ましい。
本発明に係る抗菌性物品は、前記微小突起構造体の表面を構成する材料の平坦膜表面における水の静的接触角が5°以上90°未満であることが、抗菌性に優れる点から好ましい。
本発明に係る抗菌性物品は、前記微小突起構造体を構成する材料の25℃における貯蔵弾性率(E’)が200MPa以上であり、前記微小突起構造体を構成する材料の25℃における貯蔵弾性率(E’)に対する損失弾性率(E”)の比(tanδ(=E”/E’))が0.2以上であることが、前記微小突起構造体の硬度が向上することにより抗菌性に優れる点から好ましい。
本発明に係る抗菌性物品は、前記微小突起構造体を構成する材料が、樹脂組成物の硬化物であることが、微小突起構造体の形状をより長期間に渡り保持できる点から好ましい。
本発明によれば、抗菌性物質を用いずに、優れた抗菌性を発揮することができる抗菌性物品を提供することができる。
本発明に係る抗菌性物品の一例を模式的に示す断面図である。 本発明に係る抗菌性物品の別の一例を模式的に示す断面図である。 本発明に係る抗菌性物品が有する微小突起の一例を拡大した断面図である。 ドロネー図の一例を模式的に示す図である。
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本明細書において「物品」は、「板」、「シート」、「フィルム」等の態様を含む概念である。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
また、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタアクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各々を表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル又はメタクリロイルの各々を表す。
また、本発明において樹脂組成物の硬化物とは固化したもののことをいう。
本発明に係る抗菌性物品は、複数の微小突起が密接して配置され、隣接する前記微小突起間の距離dの平均dAVGが30nm〜90nmであり、前記微小突起の高さHの平均HAVGと、前記微小突起間の距離dの平均dAVGとの比で規定される前記微小突起の平均アスペクト比(HAVG/dAVG)が3.0〜6.25である微小突起構造体を表面に有することを特徴とする。
上記本発明に係る抗菌性物品について、図を参照して説明する。図1は、本発明に係る抗菌性物品の一例を模式的に示す断面図である。図1に例示される抗菌性物品10は、基材1の一面側に、微小突起構造体2を有する。図1に示す抗菌性物品10では、微小突起構造体2が、基材1とは別の材料からなる微小突起層に形成されている。
図2は、本発明に係る抗菌性物品の別の一例を模式的に示す断面図である。図2に例示される抗菌性物品10’は、一面側に微小突起構造体2を有し、基材を有しない又は微小突起構造体2が基材と一体となっている。
従来、微細な表面構造により機能を発現する物品としては、例えば、特開2011−33892号公報に記載されるような、錐形の構造物が可視光の波長以下の周期で周期的に形成された、いわゆるモスアイ(moth eye(蛾の目))構造の原理を利用した微細な凹凸パターンが表面に形成された反射防止フィルムがある。
一方で、本発明の抗菌性物品が抗菌性を発揮する理由は、明らかではないが、以下のように考えられる。すなわち、本発明に用いられる微小突起構造体を構成する各微小突起が、前記dAVG及び前記平均アスペクト比を有することにより、本発明に係る抗菌性物品の微小突起構造体を有する表面は、微小突起の幅に対して微小突起の高さが非常に高い細長い形状の微小突起が、30nm〜90nmの周期で密接して配置された構造を有する。ここで、細菌の大きさは、一般的に約1μmであり、微小突起間の距離dの平均dAVGに比べて十分に大きいため、前記微小突起構造体を有する表面に細菌等が付着した場合には、当該細菌等は前記微小突起の頂部と接触することになる。また、本発明の抗菌性物品が有する微小突起は、前述した通り、微小突起の幅に対して微小突起の高さが非常に高く、また、微小突起間の距離dの平均dAVGが非常に小さい。そのため、各微小突起の幅も非常に小さく、細菌が突き刺さり得る程の針状の形状になると考えられる。従って、細菌が微小突起構造体を有する表面に付着すると、微小突起の先端が細菌の細胞に突き刺さり、細菌が死滅することによって、抗菌性能が発揮されると考えられる。
<微小突起構造体>
本発明に係る抗菌性物品は、微小突起構造体を表面に有する。本発明においては、典型的には、シート状の抗菌性物品の一方の表面全体に微小突起構造体を有するものであるが、シート状の抗菌性物品の両面全体に微小突起構造体を有するものであってもよいし、一方の表面又は両面の一部に微小突起構造体を有するものであってもよい。また、本発明に係る抗菌性物品は、所定形状に成形された成形体である場合において、表面全体に微小突起構造体を有するものであってもよいし、表面の一部に微小突起構造体を有するものであってもよい。なお、ここでシート状とは、巻き取り可能に曲がるもの、巻き取れるほどには曲がらないが負荷をかけることによって湾曲するもの、完全に曲がらないもの、のいずれであってもよい。
前記微小突起構造体を構成する各微小突起は、前記微小突起構造体を有する側の表面とは反対側の面(以下、単に裏面と称する場合がある。)、或いは本発明に係る抗菌性物品が所定形状に成型された成形体である場合には微小突起の底面、に対して植立するように形成される。
前記微小突起の形状は、特に限定はされないが、中でも、抗菌性に優れる点から、微小突起の先端が先細り形状となっていることが好ましい。中でも特に、抗菌性に優れる点から、当該微小突起の高さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部2tから底面2t方向に近づくに従い、微小突起の高さHの2/3以下の高さ(2/3H)の地点2t2/3の範囲までにおいて、連続的に漸次増加する構造であることが好ましく、頂部2tにおいて完全に断面積占有率が0に収束する形状であることがより好ましい。また前記微小突起は、微小突起の高さHの2/3の高さの地点2t2/3から底面2tの範囲までにおいては、当該微小突起の高さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、底面2t方向に近づくに従い、連続的に漸次増加する又は一定の構造であることが、微小突起の変形が抑制され、耐久性に優れる点から好ましい。
前記微小突起の具体的な形状としては、例えば、三角形状、鉛筆形状、半円状、半楕円状、放物線状、釣鐘状等の垂直断面形状を有するものが挙げられ、中でも、抗菌性に優れる点から、図1に示すような、垂直断面が三角形の微小突起、又は図2に示すような、垂直断面が鉛筆形状の微小突起が好ましく、図1に示すような垂直断面が三角形の微小突起が、抗菌性に優れ、成形が容易である点からより好ましい。垂直断面が三角形の微小突起は、典型的には、円錐状又は多角錐状である。垂直断面が鉛筆形状の微小突起は、典型的には、円柱又は多角柱上に、円錐又は多角錐が、尖った先端が表面に向くように置かれ、円柱又は多角柱と円錐又は多角錐とが一体化した形状である。なお、複数ある微小突起は、同一の形状を有していても異なる形状を有していてもよい。
微小突起の高さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部2tから底面2t方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有する微小突起は、抗菌性物品の抗菌性が向上する点から、微小突起の底面の面積(S)に対する微小突起の高さHの2/3の高さ(2/3H)の地点2t2/3における水平断面の面積(S2/3)の比(S2/3/S)が1/4以下であることが好ましく、1/5以下であることがより好ましい。また、前記比(S2/3/S)は、特に限定はされないが、成形性の観点から、通常1/9以上である。
図3に、本発明に係る抗菌性物品が有する微小突起の一例を拡大した断面図を示す。前記微小突起は、本発明に係る抗菌性物品の抗菌性が向上する点から、微小突起3の頂点2tを通る垂直断面において、頂点2tと、微小突起の高さHの2/3の高さの地点の端点2t2/3aと、2t2/3bとを結ぶ直線を引いたときにできる三角形の頂点2tにおける角度θ2/3が、45°以下であることが好ましく、26°以下であることがより好ましい。前記角度θ2/3は、小さいほど抗菌性が向上し、特に限定はされないが、成形性の観点から、4°以上であることが好ましい。
また、前記微小突起は、本発明に係る抗菌性物品の抗菌性が向上する点から、微小突起3の頂点2tを通る垂直断面において、頂点2tと、微小突起の高さHの5/6の高さの地点の端点2t5/6aと、2t5/6bとを結ぶ直線を引いたときにできる三角形の頂点2tにおける角度θ5/6が、50°以下であることが好ましく、36°以下であることがより好ましい。前記角度θ5/6は、小さいほど抗菌性が向上し、特に限定はされないが、成形性の観点から、6°以上であることが好ましい。
また、本発明に係る抗菌性物品の抗菌性に優れる点から、前記微小突起の先端の曲率半径の平均が30nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。曲率半径が前記上限値以下であることにより、前記微小突起の先端に付着した細菌の細胞膜に対する物理的刺突効果が向上し、抗菌性が向上すると考えられる。なお、前記曲率半径の平均は、例えば、10個以上の微小突起について測定した曲率半径の各測定値の算術平均とすることができる。
前記微小突起構造体は、抗菌性を付与する観点から、複数の微小突起が密接して配置され、隣接する前記微小突起間の距離dの平均dAVGが30nm〜90nmであり、製造の容易性、及び微小突起の強度の観点から、中でも40nm以上であることが好ましい。また、前記dAVGは、抗菌性が向上する点から、80nm以下であることが好ましく、60nm以下であることがより好ましい。
ここで、隣接する前記微小突起間の距離(以下、「隣接突起間距離」と称する場合がある。)dに係る隣接する微小突起は、いわゆる隣り合う微小突起であり、付け根部分である微小突起の裾の部分が接している突起である。本発明に係る抗菌性物品の微小突起構造体を有する表面の平面視において、微小突起間の谷の部位を順次辿るようにして線分を作成すると、各微小突起を囲む多角形状領域を多数連結してなる網目状の模様が作製されることになる。隣接突起間距離dに係る隣接する微小突起は、この網目状の模様を構成する一部の線分を共有する突起である。
また、前記微小突起構造体において、前記微小突起の高さHの平均HAVGと、前記微小突起間の距離dの平均dAVGとの比で規定される前記微小突起の平均アスペクト比(HAVG/dAVG)は、3.0〜6.25であり、抗菌性に優れながら、製造の容易性、及び微小突起の強度にも優れる点から、4.0〜6.25であることが好ましく、5.0〜6.25であることがより好ましい。
前記微小突起の高さは、前記微小突起が前記dAVG及び前記平均アスペクト比(HAVG/dAVG)を満たす高さであれば特に限定はされないが、抗菌性に優れる点から、微小突起の高さHの平均値HAVGは、200nm以上であることが好ましく、250nm以上であることがより好ましい。また、前記微小突起の高さは、製造の容易性、及び微小突起の強度の観点から、400nm以下であることが好ましく、360nm以下であることがより好ましい。
本発明において、隣接突起間距離dの平均値dAVG及び微小突起の高さHの平均値HAVGは、以下の方法により測定される。
(1)先ず、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)又は透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope; TEM)を用いて突起の面内配列(突起配列の平面視形状)を検出する。
(2)続いてこの求められた面内配列から各突起の高さの極大点(以下、単に極大点と称する。)を検出する。なお極大点を求める方法としては、平面視形状と対応する断面形状の拡大写真とを逐次対比して極大点を求める方法、平面視拡大写真の画像処理によって極大点を求める方法等、種々の手法を適用することができる。
(3)次に検出した極大点を母点とするドロネー図(Delaunary Diagram)を作成する。図4に、ドロネー図(白色の線分により表される図である)を本発明に係る抗菌性物品の平面視拡大写真の模式図と重ね合わせた図を示す。ここでドロネー図とは、図4に示すように、各極大点31を母点としてボロノイ分割を行った場合に、ボロノイ領域が隣接する母点同士を隣接母点と定義し、各隣接母点同士を線分32で結んで得られる3角形の集合体からなる網状図形である。各3角形は、ドロネー3角形と呼ばれ、各3角形の辺(隣接母点同士を結ぶ線分)は、ドロネー線と呼ばれる。
(4)次に、各ドロネー線の線分長の度数分布、すなわち隣接する極大点間の距離(隣接突起間距離)の度数分布を求める。
(5)このようにして求めた隣接突起間距離dの度数分布を正規分布とみなして平均値dAVGを求めることができる。
同様の手法を適用して微小突起の高さHの平均値HAVGを求める。まず、上述の(2)により求められる極大点から、特定の基準位置からの各極大点位置の相対的な高さの差を取得してヒストグラム化する。このヒストグラムによる度数分布から突起高さの平均値HAVGを求める。
なお、微小突起の高さを測る際の基準位置は、突起付け根位置、すなわち隣接する微小突起の間の谷底(高さの極小点)を高さ0の基準とする。但し、係る谷底の高さ自体が場所によって異なる場合、例えば、各微小突起間の谷底を連ねた包絡面が、微小突起の隣接突起間距離に比べて大きな周期でうねった凹凸形状を有する場合等は、(1)先ず、基材の表面若しくは裏面又は抗菌性物品の裏面から測った各谷底の高さの平均値を、該平均値が収束するに足る面積の中で算出する。(2)次いで、該平均値の高さを有し、且つ基材の表面若しくは裏面又は抗菌性物品の裏面と平行な面を基準面として考える。(3)その後、該基準面を改めて高さ0として、該基準面からの各微小突起の高さを算出する。
本発明においては、抗菌性が向上する点から、前記微小突起構造体の表面における純水の静的接触角が30°以下であることが好ましく、25°以下であることがより好ましく、15°以下であることが更により好ましい。前記静的接触角が前記上限値以下であることにより、前記微小突起構造体の表面が親水性となり、例えば細菌が一般的な人体、自然環境からの水性飛沫中に存在する場合、細菌が微小突起構造体表面に付着直後に、微小突起先端に覆い被さるように広くぬれ広がる事で、細菌が微小突起に突き刺さりやすくなることから、細菌を死滅させる効果が向上し、抗菌性が向上すると考えられる。
また、前記微小突起構造体の表面における純水の静的接触角は、特に限定はされないが、5°以上であることが好ましい。
本発明において、前記微小突起構造体の表面における純水の静的接触角は、以下のように測定される。
まず、本発明に係る抗菌性物品を、微小突起構造体表面側を上面にして、粘着層つきの黒アクリル板に水平に貼り付ける。次いで、接触角を測定しようとする溶剤(純水)1.0μLの液滴を滴下し、着滴10秒後の静的接触角をθ/2法に従って計測する。測定装置は、例えば、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いて、測定することができる。
以下、前記微小突起構造体の材料について説明する。本発明に係る抗菌性物品は、例えば、前記微小突起構造体が、後述する基材とは別の材料からなる微小突起層の表面に形成されてなるもの、前記微小突起構造体が、後述する基材と同じ材料からなり当該基材と一体化した微小突起層の表面に形成されてなるもの、基材を有さず、前記微小突起構造体が単層の微小突起層の表面に形成されてなるもの等が挙げられる。また、前記微小突起構造体が形成される微小突起層は、単層であっても、多層であってもよい。以下に説明する微小突起構造体の材料は、前記微小突起層を形成するために用いられる材料である。
前記微小突起構造体の材料は、樹脂を含有することができ、前記微小突起構造体は、特に、樹脂組成物の硬化物からなるものであることが、微小突起構造体の形状をより長期間に渡り保持できる点から好ましい。前記樹脂組成物は、少なくとも樹脂を含み、必要に応じて重合開始剤等その他の成分を含有する。また、本発明においては、前記微小突起構造体を樹脂組成物の硬化物からなるものとすることにより、当該樹脂組成物の組成を適宜調整することにより、微小突起構造体を賦型により形成する際の賦型性を向上したり、各種添加剤を含有させて、更に抗菌性を向上することが容易にできる。また、前記樹脂組成物に各種添加剤を含有させた場合であっても、樹脂や重合開始剤の種類及び含有量を調整することにより、当該樹脂組成物を硬化させるための温度、時間等の硬化条件を、微小突起構造体が変質しない範囲となるように調整することができる。
前記樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系等の電離放射線硬化性樹脂、アクリレート系、ウレタン系、エポキシ系、ポリシロキサン系等の熱硬化性樹脂、アクリレート系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の熱可塑性樹脂等の各種材料及び各種硬化形態の賦型用樹脂を使用することができる。なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線等が挙げられる。
前記樹脂としては、微小突起の成形性及び機械的強度に優れる点から電離放射線硬化性樹脂が好ましい。電離放射線硬化性樹脂とは、分子中にラジカル重合性及び/又はカチオン重合性結合を有する単量体、低重合度の重合体、反応性重合体を適宜混合したものであり、重合開始剤によって硬化されるものである。なお、非反応性重合体を含有してもよい。
中でも、前記樹脂組成物は、前記樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率(E’)が200MPa以上であり、且つ、当該樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率(E’)に対する損失弾性率(E”)の比(tanδ(=E”/E’))が0.2以上であることが、本発明に係る抗菌性物品の抗菌性が優れる点から好ましい。前記E’及び前記tanδを、前記下限値以上とすることにより、微小突起が十分に硬くなり、微小突起構造体表面に付着した細菌を突き刺して死滅させる性能が向上すると考えられる。
本発明において貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E”)は、JIS K7244に準拠して、以下の方法により測定される。
まず、微小突起層形成用の樹脂組成物を、2000mJ/cmのエネルギーの紫外線を1分以上照射することにより十分に硬化させて、基材及び微小突起構造体を有しない、厚さ1mm、幅5mm、長さ30mmの単膜とする。
次いで、25℃下、上記樹脂組成物の硬化物の長さ方向に10Hzで25gの周期的外力を加え、動的粘弾性を測定することにより、25℃における、E’、E”が求められる。測定装置としては、一般的なレオメーター、例えば、UBM製 Rheogel E4000を用いることができる。
また、前記微小突起構造体表面が親水性であることにより、本発明に係る抗菌性物品の抗菌性が向上する点から、前記微小突起構造体に用いられる前記樹脂組成物は、平坦な硬化膜表面における純水の静的接触角が90°未満であるものを選択して用いることが好ましい。親水性を向上する点からは、前記樹脂組成物の硬化物は、平坦な硬化膜表面における純水の静的接触角が、60°以下であることが好ましく、更に40°以下であることがより好ましく、特に30°以下であることが好ましい。このような親水性の樹脂組成物を用いて微小突起構造体を形成すると、微小突起構造体表面における純水の静的接触角は、平坦な硬化膜表面に比べて小さくなり、親水性になる又は親水性が強調される。
また、前記微小突起構造体に用いられる前記樹脂組成物は、平坦な硬化膜表面における純水の静的接触角は、特に限定はされないが、5°以上であることが好ましい。
なお、本発明において、樹脂組成物の平坦な硬化膜表面における純水の静的接触角は、上述した微細凹凸面における純水の静的接触角と同様にして測定することができる。樹脂組成物の平坦な硬化膜は、平坦な基材上に微小突起層用の樹脂組成物を塗布し、硬化させることにより得ることができる。当該硬化膜は、純水の静的接触角の再現性が取れるように(例えば標準偏差が4°以内となるように)十分に溶媒を乾燥し、必要に応じて十分に反応させて硬化したものとする。例えば、電離放射線硬化性樹脂が用いられる場合、透明基材上に厚さ5μmの微小突起層用の樹脂組成物からなる塗膜を形成し、紫外線を940mJ/cm以上の積算光量となるように照射することにより十分に反応させて硬化した硬化膜を形成する。
前記樹脂組成物としては、中でも、前記樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率(E’)が前記下限値以上であり、貯蔵弾性率(E’)に対する損失弾性率(E”)の比(tanδ(=E”/E’))が前記下限値以上であり、且つ平坦な硬化膜表面における純水の静的接触角が前記上限値以下となるようなものを適宜選択することが好ましい。そのような樹脂組成物について、微小突起構造体の成形性及び機械的強度に優れる点から好適に用いられる電離放射線硬化性樹脂の中で、特に好ましく用いられる(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物を例にとって、以下具体的に説明する。
(1)(メタ)アクリレート
(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1個有する単官能(メタ)アクリレートであっても、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2個以上有する多官能アクリレートであってもよく、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを併用するものであってもよい。中でも、前記樹脂組成物の硬化物が前記貯蔵弾性率(E’)とtanδを満たしやすく、硬度を高くする点からは、単官能(メタ)アクリレートに比べて多官能(メタ)アクリレートを多く含有することが好ましい。
多官能アクリレートの具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、微小突起構造体の硬度に優れ、親水性を有し、抗菌性物品の抗菌性が向上する点から、長鎖ポリエチレングリコールを有する多官能(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
前記多官能(メタ)アクリレートの含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、40〜95質量%であることが好ましく、50〜95質量%であることがより好ましい。なお本発明において固形分とは、溶剤を除いたすべての成分を表す。
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、イソデキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ビフェニロキシエチルアクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
単官能(メタ)アクリレートを用いる場合の単官能(メタ)アクリレートの含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、1〜30質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましい。
また、単官能(メタ)アクリレートを用いる場合、多官能(メタ)アクリレートの含有量(質量部)に対する単官能(メタ)アクリレートの含有量(質量部)の比は、0.1以上0.5未満であることが、前記樹脂組成物の硬化物が前記貯蔵弾性率(E’)とtanδを満たしやすく、硬度が向上する点から、好ましい。
前記樹脂組成物は、親水性を向上する点から、水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、長鎖ポリエチレングリコールを有する多官能(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、長鎖ポリエチレングリコールを有する多官能(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの合計含有量は、親水性の観点から、電離放射線硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、70〜99質量%であることが好ましく、75〜90質量%であることがより好ましい。
(2)光重合開始剤
上記(メタ)アクリレートの硬化反応を開始又は促進させるために、必要に応じて光重合開始剤を適宜選択して用いても良い。光重合開始剤の具体例としては、例えば、ビスアシルフォスフィノキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フォスフィンオキサイド、フェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤を用いる場合、当該光重合開始剤の含有量は、通常、電離放射線硬化性樹脂組成物の全固形分に対して0.8〜20質量%であり、0.9〜10質量%であることが好ましい。
(3)帯電防止剤
本発明においては、前記樹脂組成物中に帯電防止剤を含有することが好ましい。帯電防止剤を含有することにより、微小突起層表面に汚れが付着することを抑制することができ、また、拭取り時に汚れが落ちやすい。
帯電防止剤は、従来公知のものの中から適宜選択して用いることができる。帯電防止剤の具体例としては、例えば、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、1級〜3級アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物、スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられる。中でも、カチオン性化合物が好ましく、3級アミノ基を有するカチオン性化合物がより好ましく、N,N−ジオクチル−1−オクタンアミン等のトリアルキルアミンであることが更により好ましい。
帯電防止剤を用いる場合、当該帯電防止剤の含有量は、通常、電離放射線硬化性樹脂組成物の全固形分に対して1〜20質量%であり、2〜10質量%であることが好ましい。
(4)溶剤
前記樹脂組成物は、塗工性などを付与するために、塗工時等に溶剤を含有していてもよい。溶剤を用いる場合、当該溶剤は、組成物中の各成分とは反応せず、当該各成分を溶解乃至分散可能な溶剤の中から適宜選択して用いることができる。このような溶剤の具体例としては、例えば、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)等のエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、シクロヘキサン等のアノン系溶剤、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶剤を例示することができるが、これらに限られるものではない。また、樹脂組成物に用いられる溶剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上の溶剤の混合溶剤でもよい。
前記樹脂組成物の塗工時において、前記樹脂組成物全量に対する、固形分の割合は20〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。
(5)その他の成分
本発明において用いられる微小突起層用の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更にその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、濡れ性調整のための界面活性剤、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、安定化剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、粘度調整剤、離型剤等が挙げられる。
前記微小突起層は、微小突起構造体表面を親水性とするために、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などを単独またはそれらを組み合わせて用いる表面処理が施されたものであってもよい。プラズマ処理は真空プラズマ処理および常圧プラズマ処理のいずれでもよく、用いるガスは特に限定しないが、例えば、窒素、酸素、水素などを単独または複数組み合わせて使用することができる。紫外線処理としては、紫外線−オゾン処理等の表面改質効果が得られる紫外線を使用した方法全般を用いることが可能である。
前記微小突起層は、前記樹脂組成物からなる単層構造を有していてもよいし、異なる種類の樹脂組成物の層を複数有する多層構造を有していてもよく、中でも、成形が容易な点から、単層構造であることが好ましい。
また、前記微小突起層は、前記樹脂組成物からなる樹脂層上に、更に被覆層を有した多層構造を有するものであってもよい。前記被覆層としては、例えば、前記微小突起構造体表面の親水性を向上させるための親水性層、及び、前記微小突起構造体に硬度を付与するためのハードコート層等を挙げることができる。
前記微小突起層が多層構造を有する場合は、前記微小突起層を構成する全ての材料を混合した混合物の硬化物の25℃におけるが200MPa以上であり、且つ、当該混合物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率(E’)に対する損失弾性率(E”)の比(tanδ(=E”/E’))が0.2以上であることが、本発明に係る抗菌性物品の抗菌性が優れる点から好ましい。
前記微小突起層の厚みは、適宜調整すればよく、特に限定はされない。図1に示すように基材1上に微小突起層を形成する場合、当該微小突起層の厚みは、微小突起構造体を形成可能な最低限の厚みにて適宜調整することができるが、後述の賦型プロセスでの生産性を考慮すると、厚みが薄い場合は異物による外観欠陥が発生しやすく、厚みが厚いと賦型速度が低下したりカールの懸念が高くなるため、3μm〜30μmであることが好ましく、5μm〜20μmであることがより好ましい。なお、この場合の微小突起層の厚みとは、微小突起層の基材側の界面から、最も高さの高い微小突起の頂部の高さまでの基材平面に対する垂線方向の距離を意味する。
なお、本発明に係る抗菌性物品は、基材を有しないものであってもよく、また、微小突起層の材料と基材の材料が同じものであることにより、微小突起層と基材とが一体化したものであってもよい。この場合の微小突起層は当該基材の厚みに依存するため、特に限定されない。
<基材>
本発明に係る抗菌性物品は、支持体として基材を含むものであっても良い。本発明に用いられる基材は、用途に応じて適宜選択することができ、透明基材であっても、不透明基材であってもよく、特に限定されない。前記透明基材の材料としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂、ソーダ硝子、カリ硝子、無アルカリガラス、鉛ガラス等の硝子、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)等のセラミックス、石英、蛍石等の透明無機材料等が挙げられる。前記不透明基材の材料としては、例えば、金属、紙、木、及びこれらの複合材料、並びにこれらと前記透明基材の材料との複合材料等が挙げられる。
また、基材と微小突起構造体が一体となって形成される場合は、基材の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂や前述した微小突起形成用の樹脂組成物を用いることができる。
また、前記基材は、シートであってもフィルムであってもよく、また、巻き取れるもの、巻き取れるほどには曲がらないが負荷をかけることによって湾曲するもの、完全に曲がらないもののいずれであってもよい。基材の厚みは、用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、通常10〜5000μmである。
本発明に用いられる基材の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。
微小突起構造体が、基材とは別の材料からなる微小突起層に形成される場合は、基材と前記微小突起層との密着性を向上させ、ひいては耐摩耗性(耐傷性)を向上させるためのプライマー層を基材上に形成してもよい。このプライマー層は、基材として透明基材を用いる場合には、当該透明基材とプライマー層を介して隣接する微小突起層に密着性を有し、可視光を透過するものが好ましい。また透明基材と微小突起層の屈折率差により干渉ムラが出る場合にはプライマー層の屈折率を基材と微小突起層の中間の値に調整することでムラ軽減が可能である。
本発明に用いられる基材の可視領域における全光線透過率は、用途に応じて適宜調節することができ、特に限定されず、前記透過率が80%以上の透明基材を用いることもできるし、前記透過率が80%未満の半透明の基材又は不透明の基材を用いることもできる。前記透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
本発明に係る抗菌性物品を、例えば保護フィルム等のような透明部材として用いる場合には、前記基材としては透明基材を用いることが好ましい。また、本発明に係る抗菌性物品を、後から貼り付ける態様において用いる場合に、意匠性を妨げないようにするためにも、前記基材としては透明基材を用いることが好ましい。
また、本発明に係る撥抗菌性物品を、ガラス部分へ設置する場合は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂基材を用いることが、ガラス破損時の耐飛散性を付与する点から好ましい。
本発明に係る抗菌性物品は、特に限定はされないが、用途に応じて、可視領域における全光線透過率を80%以上とすることができる。前記透過率が前記下限値以上であることにより、本発明に係る抗菌性物品を他の物品に貼り付けて用いる態様において、下地の意匠性の損傷を抑制することができ、また、視認性に優れるものとすることができる。前記透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)により測定することができる。
<抗菌性物品の製造方法>
本発明に係る抗菌性物品の製造方法は、前述したような本発明に係る抗菌性物品を製造することができる方法であれば特に限定はされないが、例えば、まず透明基材上に、微小突起層形成用の樹脂組成物を塗布し、所望の凹凸形状を有する微小突起構造体形成用原版の当該凹凸形状を有する面を、前記樹脂組成物の塗膜表面に押圧し、該樹脂組成物を硬化させ、前記微小突起構造体形成用原版から剥離し、所望の微小突起構造体を賦型により形成する方法等が挙げられる。前記樹脂組成物を硬化させる方法は、該樹脂組成物の種類等に応じて適宜選択することができる。なお、微小突起構造体形成用原版の凹凸形状とは、多数の微小孔が密に形成されたものであり、微小突起構造体の形状に対応する形状である。微小突起構造体形成用原版の凹凸形状を微小突起層形成用樹脂組成物に賦型し、該樹脂組成物を硬化させる方法は、該樹脂組成物の種類等に応じて適宜選択することができる。
前記微小突起構造体形成用原版としては、繰り返し使用した際に変形および摩耗するものでなければ、特に限定されるものではなく、金属製であっても良く、樹脂製であっても良いが、通常、金属製が好適に用いられる。耐変形性および耐摩耗性に優れているからである。
前記微小突起構造体形成用原版の凹凸形状を有する面は、特に限定されないが、酸化されやすく、陽極酸化による加工が容易である点から、アルミニウムからなることが好ましい。
前記微小突起構造体形成用原版は、具体的には、例えば、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属製の母材の表面に、直接に又は各種の中間層を介して、スパッタリング等により純度の高いアルミニウム層が設けられ、当該アルミニウム層に凹凸形状を形成したものが挙げられる。前記母材は、前記アルミニウム層を設ける前に、電解溶出作用と、砥粒による擦過作用の複合による電解複合研磨法によって母材の表面を超鏡面化しても良い。
前記微小突起構造体形成用原版に凹凸形状を形成する方法としては、例えば、陽極酸化法によって前記アルミニウム層の表面に複数の微小孔を形成する陽極酸化工程と、前記アルミニウム層をエッチングすることにより前記微小孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、前記アルミニウム層を前記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより前記微小孔の孔径を拡大する第2エッチング工程とを順次繰り返し実施することによって形成することができる。
前記微小突起構造体形成用原版に凹凸形状を形成する際には、アルミニウム層の純度(不純物量)や結晶粒径、陽極酸化処理及び/又はエッチング処理の諸条件を適宜調整することによって、所望の形状とすることができる。前記陽極酸化処理において、より具体的には、液温、印加する電圧、陽極酸化に供する時間等の管理により、微小な孔をそれぞれ目的とする深さ及び形状に作製することができる。
このようにして、前記微小突起構造体形成用原版には、多数の微小孔が密に作製される。当該微小突起構造体形成用原版を用いて製造される微小突起構造体には、前記微小孔に対応した形状を有する微小突起が密接して配置されてなる微小突起群が形成される。
また、前記微小突起構造体形成用原版の形状としては、所望の形状を賦型することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、平板状であっても良く、ロール状であっても良いが、本発明においては、微小突起構造体の形成が容易な点から、前記微小突起構造体形成用原版としては平板状の金型を用いることが好ましい。平板状の金型を用いることにより、当該金型を樹脂組成物の硬化物から剥離する際に、微小突起の変形や、微小突起同士の付着等による微小突起構造体の変形を容易に抑制することができる。
本発明において用いられる平板状の金型としては、例えば、母材として、板状の金属材料を用い、当該母材の周側面に、直接に又は各種の中間層を介して設けられたアルミニウム層に、上述したように、陽極酸化処理、エッチング処理の繰り返しにより、微小突起構造体の形状に対応する凹凸形状が作製されたものが挙げられる。
<抗菌性物品の用途>
本発明に係る抗菌性物品は、抗菌性の付与が求められるあらゆる用途に用いることができ、特に限定されない。本発明に係る抗菌性物品が抗菌性を発揮し得る用途としては、例えば、エアコン、空気清浄機等の空調機器;冷蔵庫、洗濯機、電話機、掃除機等の家電製品;電子レンジ、炊飯器等の調理用機器;医療機器等の医療設備;学校設備の事務用機器及びその他の電子機器等が挙げられ、具体的には例えば、これら各種機器に内蔵される抗菌フィルター、及びこれら各種物品が備える電子表示部やタッチパネル等の保護フィルム、並びに窓ガラス用フィルム等を挙げることができる。本発明に係る抗菌性物品は、抗菌性が長期間維持されるため、中でも、各種物品において人の手が届きにくい部分に好適に用いることができ、例えば、前記各種機器に内蔵される抗菌フィルター等として好ましく用いられる。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
(微小突起構造体形成用原版Aの作製)
純度99.50%の圧延されたアルミニウム板を、その表面が、十点平均粗さRz30nm、且つ周期1μmの凹凸形状となるように研磨後、0.04Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧20V、20℃の条件にて120秒間、陽極酸化を実施した。次に、第一エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第二エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径処理を行った。さらに、上記処理を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム基板上に微細な凹凸形状が形成された陽極酸化アルミニウム層が形成された。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、微小突起構造体形成用原版Aを得た。なお、アルミニウム層に形成された微細な凹凸形状は、平均間隔が40nmで、深さ方向に徐々に孔径が小さくなる多数の微細孔が密に形成された形状であった。
(微小突起構造体形成用原版Bの作製)
微小突起構造体形成用原版Aの製造において、化成電圧を25V、第二エッチング処理を180秒間としたこと以外は、上記と同様にして、微小突起構造体形成用原版Bを得た。アルミニウム層に形成された微細な凹凸形状は、平均間隔が60nmで、深さ方向に徐々に孔径が小さくなる多数の微細孔が密に形成された形状であった。
(微小突起構造体形成用原版Cの作製)
微小突起構造体形成用原版Aの製造において、化成電圧を36V、第二エッチング処理を170秒間としたこと以外は、上記と同様にして、微小突起構造体形成用原版Cを得た。アルミニウム層に形成された微細な凹凸形状は、平均間隔が90nmで、深さ方向に徐々に孔径が小さくなる多数の微細孔が密に形成された形状であった。
(微小突起層形成用樹脂組成物Aの調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)20質量部、アロニックスM−260(東亜合成社製、ポリエチレングリコールジアクリレート)70質量部、ヒドロキシエチルアクリレート10質量部、及び、光開始剤としてルシリンTPO3質量部を酢酸エチル200質量部に溶解させ、微小突起層形成用樹脂組成物Aとして活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化型樹脂組成物)を得た。
(微小突起層形成用樹脂組成物Bの調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)27質量部、アロニックスM−260(東亜合成社製、ポリエチレングリコールジアクリレート)70質量部、ヒドロキシエチルアクリレート3質量部、光開始剤としてルシリンTPO3質量部を酢酸エチル200質量部に溶解させ、微小突起層形成用樹脂組成物Bとして活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化型樹脂組成物)を得た。
[実施例1]
微小突起層形成用樹脂組成物Aを、上記微小突起構造体形成用原版Aの表面を覆うようにして、厚さ20μmとなるように塗布、充填し、その上に透明基材として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、品番:T80SZ)を斜めから貼り合わせた後、貼り合わせられた貼合体をゴムローラーで10N/cmの加重で圧着した。微小突起構造体形成用原版A全体に均一な組成物が塗布されたことを確認し、透明基材側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して微小突起層形成用樹脂組成物Aを硬化させて微小突起構造体を有する微小突起層を透明基材上に作製した。その後、微小突起層形成用樹脂組成物Aの硬化物としての微小突起層を透明基材とともに、微小突起構造体形成用原版Aより剥離することにより、実施例1の抗菌性物品を得た。得られた抗菌性物品が有する微小突起構造体は、微小突起間の距離の平均dAVGが40nmであり、微小突起の平均高さHAVGが250nmであった。また、SEMにより観察した各微小突起の頂点を通る垂直断面は、概ね三角形であり、微小突起の先端の曲率半径の平均は10nmであった。また、前記垂直断面における微小突起の底面の面積(S)に対する微小突起の高さHの2/3の高さ(2/3H)の地点2t2/3における水平断面の面積(S2/3)の比(S2/3/S)は、1/8であり、微小突起の頂点2tと、微小突起の高さHの2/3の高さの地点の端点2t2/3aと、2t2/3bとを結ぶ直線を引いたときにできる三角形の頂点2tにおける角度θ2/3は4.6°であり、頂点2tと、微小突起の高さHの5/6の高さの地点の端点2t5/6aと、2t5/6bとを結ぶ直線を引いたときにできる三角形の頂点2tにおける角度θ5/6は6.0°であった。
なお、微小突起の先端の曲率半径の平均、前記S2/3/S、前記角度θ2/3及び前記角度θ5/6は、10個の微小突起について測定した測定値の算術平均であり、以下の各実施例及び各比較例においても同様である。
[実施例2]
実施例1において、微小突起構造体形成用原版Aに代えて、微小突起構造体形成用原版Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の抗菌性物品を得た。得られた抗菌性物品が有する微小突起構造体は、微小突起間の距離の平均dAVGが60nmであり、微小突起の平均高さHAVGが350nmであった。また、SEMにより観察した各微小突起の頂点を通る垂直断面は、概ね三角形であり、微小突起の先端の曲率半径の平均は20nmであった。また、前記垂直断面における微小突起の前記S2/3/Sは、1/6であり、前記角度θ2/3は4.8°であり、前記角度θ5/6は6.2°であった。
[実施例3]
実施例2において、微小突起層形成用樹脂組成物Aに代えて、微小突起層形成用樹脂組成物Bを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例3の抗菌性物品を得た。得られた抗菌性物品が有する微小突起構造体は、微小突起間の距離の平均dAVGが60nmであり、微小突起の平均高さHAVGが350nmであった。また、SEMにより観察した各微小突起の頂点を通る垂直断面は、概ね三角形であり、微小突起の先端の曲率半径の平均は20nmであった。また、前記垂直断面における微小突起の前記S2/3/Sは、1/6であり、前記角度θ2/3は4.8°であり、前記角度θ5/6は6.2°であった。
[実施例4]
実施例1において、微小突起構造体形成用原版Aに代えて、微小突起構造体形成用原版Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の抗菌性物品を得た。得られた抗菌性物品が有する微小突起構造体は、微小突起間の距離の平均dAVGが90nmであり、微小突起の平均高さHAVGが267nmであった。また、SEMにより観察した各微小突起の頂点を通る垂直断面は、概ね三角形であり、微小突起の先端の曲率半径の平均は40nmであった。また、前記垂直断面における微小突起の前記S2/3/Sは、1/4であり、前記角度θ2/3は8.9°であり、前記角度θ5/6は11.2°であった。
[比較例1]
実施例1において、微小突起構造体形成用原版Aを用いた賦型処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の比較物品を得た。
[比較例2]
実施例3において、微小突起構造体形成用原版Aを用いた賦型処理を行わなかったこと以外は、実施例3と同様にして、比較例2の比較物品を得た。
[評価]
<接触角の測定>
(微小突起層形成用樹脂組成物の平坦な硬化膜表面における純水の静的接触角)
PETフィルム上に微小突起層形成用樹脂組成物A、Bをそれぞれ塗布して硬化させて、微小突起構造体を有しない平坦な塗膜を形成した。当該塗膜側表面を上面にして、粘着層つきの黒アクリル板に貼り付けたものの上に、純水1.0μLの液滴を滴下し、着滴10秒後の純水の静的接触角を計測した。なお、測定装置は協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いて、θ/2法に従って静的接触角を測定した。測定結果を表1に示す。
(微小突起構造体表面における純水の静的接触角)
各実施例で得られた抗菌性物品及び各比較例で得られた比較物品の微小突起構造体表面を上面にして黒アクリル板に貼り付け、上記の微小突起層形成用樹脂組成物の平坦な硬化膜表面と同様にして、純水の静的接触角を測定した。測定結果を表1に示す。
<貯蔵弾性率(E’)及びtanδの測定>
微小突起層形成用樹脂組成物A、Bをそれぞれ2000mJ/cmのエネルギーの紫外線を1分以上照射することにより十分に硬化させて、微小突起構造体を有しない、厚さ1mm、幅5mm、長さ30mmの試験用単膜A、Bをそれぞれ得た。
次いで、JIS K7244に準拠し、25℃下、上記樹脂組成物の硬化物の長さ方向に10Hzで25gの周期的外力を加え、動的粘弾性を測定することにより、25℃における、貯蔵弾性率E’、及び損失弾性率E”を求めた。また、当該E’及びE”の結果からtanδを算出した。測定装置はUBM製 Rheogel E4000を用いた。測定結果を表1に示す。
<抗菌性評価>
各実施例で得られた抗菌性物品及び各比較例で得られた比較物品を、5cm角となるように切り取り試験片を得た。JIS Z2801(2010年版)に準拠して、各試験片の微小突起構造体表面にそれぞれ黄色ブドウ球菌を有する所定菌液を0.4ml滴下し、その上をポリエチレンテレフタラートフィルムで密着するように覆った。当該各試験片を、培養器中で温度35℃、相対湿度90%、蛍光灯照射下で、24時間培養し、培養後の生菌数を測定した。また、これとは別に、未加工試料として、東洋紡A4100のPETフィルムについて、同様にして24時間培養後の生菌数を測定した。さらに、各物品について、試験菌液接種直後の試験片の生菌数(試験前生菌数)も測定した。なお、生菌数は、発光測定法により測定した。具体的には、それぞれの洗い出し液にATP抽出試薬を加え、細胞内から抽出したATPと発光試薬(ルシフェラーゼ)を反応させ、発光光度計によりその発光量を測定してATP濃度、さらに生菌数に換算した。各測定値から、下記式により算出した抗菌活性値を表1に示す。
抗菌活性値=log(未加工試料の生菌数)−log(抗菌性物品又は比較物品の生菌数)
なお、抗菌活性値の対数値が2.0以上であれば、抗菌効果があるものとして判断される。
また、黄色ブドウ球菌の滅菌率を下記式により算出し、下記評価基準に基づいて、抗菌性を評価した。評価結果を表1に示す。
滅菌率(%)=(試験前生菌数−24時間培養後生菌数)×100/試験前生菌数
(抗菌性評価基準)
A:滅菌率99.9%以上
B:滅菌率99.0%以上99.9%未満
C:滅菌率99.0%未満
(結果のまとめ)
実施例1〜4で得られた抗菌性物品は、微小突起間の距離の平均dAVGが30nm〜90nmであり、平均アスペクト比(HAVG/dAVG)が3.0〜6.25である微小突起構造体を表面に有する、本発明に係る抗菌性物品であったため、抗菌性物質を用いていないものの、優れた抗菌性を発揮した。また、同様の形状の微小突起構造体を有する実施例2と実施例3とを比較すると、実施例2で得られた抗菌性物品は、実施例3で得られた抗菌性物品に比べて、微小突起構造体表面の水の接触角が小さく、親水性が高かったため、より抗菌性に優れていた。
一方で、比較例1、2で得られた比較物品は、微小突起構造体を有さず、表面が平坦であったため、抗菌性に劣っていた。
上記の結果は、各実施例で得られた抗菌性物品においては、微小突起間の距離の平均dAVGが対象となる細菌(約1μm〜2μm)より十分に小さく、平均アスペクト比が高い事に起因して、細菌の細胞膜に対し、物理的刺突効果を有するためと推定される。
1 基材
2 微小突起構造体
3 微小突起
10 抗菌性物品
10’ 抗菌性物品

Claims (5)

  1. 複数の微小突起が密接して配置され、隣接する前記微小突起間の距離dの平均dAVGが30nm〜90nmであり、前記微小突起の高さHの平均HAVGと、前記微小突起間の距離dの平均dAVGとの比で規定される前記微小突起の平均アスペクト比(HAVG/dAVG)が3.0〜6.25である微小突起構造体を表面に有することを特徴とする、抗菌性物品。
  2. 前記微小突起構造体の表面における水の静的接触角が5°以上30°以下である、請求項1に記載の抗菌性物品。
  3. 前記微小突起構造体の表面を構成する材料の平坦膜表面における水の静的接触角が5°以上90°未満である、請求項1又は2に記載の抗菌性物品。
  4. 前記微小突起構造体を構成する材料の25℃における貯蔵弾性率(E’)が200MPa以上であり、前記微小突起構造体を構成する材料の25℃における貯蔵弾性率(E’)に対する損失弾性率(E”)の比(tanδ(=E”/E’))が0.2以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗菌性物品。
  5. 前記微小突起構造体を構成する材料が、樹脂組成物の硬化物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗菌性物品。
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