JP6458481B2 - 反射防止物品及び美術品展示体 - Google Patents
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Description
従来の反射防止物品では、アウトガスによる問題を防止するために、例えば反射防止物品を清浄な空気環境下で一定期間、例えば数ヶ月間静置してアウトガスを放出させるいわゆる枯らしを行ってから、反射防止物品を使用している。
前記微小突起は、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmin、当該微小突起の隣接突起間隔dの平均値をdAVGとしたときに、
dAVG≦Λmin
なる関係を有し、
前記樹脂組成物が、(i)2つ以上の単環芳香族炭化水素及び(ii)多環芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも一種を有する(メタ)アクリレート化合物と、水素引き抜き型の光開始剤と、更にカルボジイミド基を有する化合物を含有し、前記(メタ)アクリレート化合物の含有割合が、前記樹脂組成物に含まれる全固形分に対して50〜90質量%であることを特徴とする。
なお、本明細書において「物品」は、「板」、「シート」、「フィルム」等の態様を含む概念である。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタアクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各々を表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル又はメタクリロイルの各々を表す。
また、本発明において樹脂組成物の硬化物とは、化学反応を経て又は経ないで固化したものをいう。
本発明に係る反射防止物品は、透明基材の少なくとも一方の面に、複数の微小突起が密接して配置されてなる微小突起群を備えた微細凹凸形状を表面に有し、樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸層を備えた反射防止物品であって、
前記微小突起は、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmin、当該微小突起の隣接突起間隔dの平均値をdAVGとしたときに、
dAVG≦Λmin
なる関係を有し、
前記樹脂組成物が、(i)2つ以上の単環芳香族炭化水素及び(ii)多環芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも一種を有する(メタ)アクリレート化合物と、水素引き抜き型の光開始剤とを含有し、前記(メタ)アクリレート化合物の含有割合が、前記樹脂組成物に含まれる全固形分に対して50〜90質量%であることを特徴とする。
前記微細凹凸層2の表面は、微小突起3が集合してなる微小突起群を備えた微細凹凸面2aであり、前記微小突起3は、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmin、当該微小突起3の隣接突起間隔d(図1)の平均値をdAVGとしたときに、dAVG≦Λminなる関係を有することにより、Λmin以上の波長を有する光の反射防止を図ることができる。
これは、第一に、水素引き抜き型の光開始剤が、水素引き抜き反応により活性ラジカル種を発生させて、重合反応を開始させることができるため、自己開裂型の光開始剤を用いた場合とは異なり、光開始剤の分解物由来のアウトガスの発生が抑制されるためと考えられる。第二に、前記特定の(メタ)アクリレート化合物が有する(i)2つ以上の単環芳香族炭化水素及び(ii)多環芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも一種が、活性ラジカルによる当該(メタ)アクリレート化合物の分解反応を抑制すると推定され、微細凹凸層を形成する樹脂組成物として前記特定の(メタ)アクリレート化合物を特定量以上含有したものを用いることにより、樹脂の分解物に由来するアウトガスの発生も抑制されるためと考えられる。また、前記特定の(メタ)アクリレート化合物は成形性及び機械強度に優れるため、前記特定の(メタ)アクリレート化合物の含有量が前記下限値以上であることにより、アウトガスの発生を抑制しながら、反射防止性能に優れる微細凹凸形状を微細凹凸層に容易に形成することができる。また、前記特定の(メタ)アクリレート化合物の含有量が前記上限値以下であることにより、微細凹凸層に更に各種添加剤等を含有させることができるため、それにより所望の性能を付与することができる。
本発明に係る反射防止物品が備える微細凹凸層は、複数の微小突起が密接して配置されてなる微小突起群を備えた微細凹凸形状を表面に有し、樹脂組成物の硬化物からなる。
微細凹凸層用の樹脂組成物は、少なくとも(i)2つ以上の単環芳香族炭化水素及び(ii)多環芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも一種を有する(メタ)アクリレート化合物と、水素引き抜き型の光開始剤とを含有し、必要に応じてその他の成分を含有する。
また、本発明において、微細凹凸層を形成している樹脂組成物の硬化物は、前記特定の(メタ)アクリレート化合物に由来する単量体単位を有する重合体と、前記水素引き抜き型の光開始剤の反応生成物とを含み、未反応の前記特定の(メタ)アクリレート化合物、及び未反応の前記水素引き抜き型の光開始剤を含んでいてもよい。
以下、(i)2つ以上の単環芳香族炭化水素及び(ii)多環芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも一種を有する(メタ)アクリレート化合物、及びその他の(メタ)アクリレート系電離放射線硬化性樹脂を含有する、本発明において好適に用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物を例にとって、具体的に説明する。
本発明において、単環芳香族炭化水素とは、環構造を1つのみ有する芳香族炭化水素をいう。単環芳香族炭化水素としては、例えば、四員環、五員環、六員環、七員環の芳香族炭化水素が挙げられ、中でも安定性の点から、六員環の芳香族炭化水素、すなわちベンゼン環が好適に用いられる。
また、本発明において、多環芳香族炭化水素とは、2つ以上の単環芳香族炭化水素が縮合した芳香族炭化水素をいう。多環芳香族炭化水素としては、例えば、ナフタレン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ナフタセン環、アセナフチレン環、トリフェニレン環、クリセン環等が挙げられる。
中でも、微小突起が柔軟性と弾性復元性を両立する点からは、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを併用することが好ましい。
また、前記(i)2つ以上の単環芳香族炭化水素及び(ii)多環芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも一種を有する(メタ)アクリレート化合物としては、反応性の点から、アクリレート化合物であることが好ましい。
(i)2つ以上の単環芳香族炭化水素及び(ii)多環芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも一種を有する多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAPジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールBジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールBPジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールEジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールMジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールPジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールPHジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールTMCジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールZジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、特に限定はされないが、微小突起が柔軟性及び復元性に優れる点からは、前記(i)2つ以上の単環芳香族炭化水素及び(ii)多環芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも一種を有する(メタ)アクリレート化合物としては、中でも、アルキレンオキサイドを含む多官能(メタ)アクリレート化合物から選ばれたものであることが好ましく、例えば、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。
なお、本発明において固形分とは、溶剤を除いたすべての成分を表す。
その他の(メタ)アクリレート化合物として用いられる単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、イソデキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、硬化物表面の防汚性が向上し、微小突起が柔軟性に優れる点から、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましく、中でも、炭素数12以上であることがより好ましく、トリデシル(メタ)アクリレート、及びドデシル(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含むことが更により好ましい。これらの単官能(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において、前記樹脂組成物は、樹脂の硬化反応を開始又は促進させるために、水素引き抜き型の光開始剤を含有する。水素引き抜き型の光開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、ジベンゾスベロン類、アントラキノン類、キサントン類、チオキサントン類、ハロゲノアセトフェノン類、ジアルコキシアセトフェノン類、ヒドロキシアセトフェノン類、ハロゲノビスイミダゾール類、ハロゲノトリアジン類等が挙げられる。中でも、アウトガスの発生を抑制する効果に優れる点から、前記水素引き抜き型の光開始剤としては、ベンゾフェノン類が好ましい。
ベンゾフェノン類の水素引き抜き型の光開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、4−モルフォリノベンゾフェノン、4,4’−ジフェノキベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン、及び2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等が挙げられ、中でもベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノンが好ましい。
前記水素引き抜き型の光開始剤は、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記樹脂組成物において、前記水素引き抜き型以外の光開始剤の含有量は、アウトガスの発生が低減する点から、光開始剤の合計量中の5質量%以下であることが好ましく、水素引き抜き型以外の光開始剤を含有しないことがより好ましい。
前記樹脂組成物は、更にカルボジイミド基を有する化合物を含有することが、アウトガスの発生を更に抑制する点から好ましい。ここで、本発明においてカルボジイミド基を有する化合物とは、カルボジイミド基を含む化合物の総称を表し、1分子中にカルボジイミド基を1つのみ含むモノカルボジイミド化合物、及び1分子中にカルボジイミド基を2つ以上含むポリカルボジイミド化合物を含む。前記樹脂組成物が更にカルボジイミド基を有する化合物を含有することによりアウトガスの発生がさらに抑制されるのは、カルボジイミド基を有する化合物が、アウトガスとなり得る有機酸と反応して脱水縮合することにより、有機酸がアウトガスとして発生することが抑制され、有機酸の発生が抑制されることにより、平衡反応からアルデヒド類の酸化が進み、アルデヒド類がアウトガスとして発生することも抑制されるためと推定される。
なお、前記微細凹凸層用の樹脂組成物がカルボジイミド基を有する化合物を含有する場合、微細凹凸層を形成している樹脂組成物の硬化物には、カルボジイミド基を有する化合物、及び、カルボジイミド基を有する化合物由来の成分(例えば、有機酸との反応生成物や分解物等)のうち少なくとも一種が含まれる。
前記ジイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族、脂肪族及び脂環式のジイソシアネートを挙げることができ、具体的には例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びジシクロヘキシルジイソシアネート等を挙げることができ、より具体的には、例えば、特公昭47−33279号公報及び特開平9−235508号公報等に記載されるジイソシアネート化合物等が挙げられる。
また、前記ポリカルボジイミド化合物の製造方法としては、例えば、特公昭47−33279号公報及び特開平9−235508号公報に記載される方法等を用いることができる。
前記モノカルボジイミド化合物の市販品としては、例えば、和光純薬工業(株)製の各種カルボジイミド系縮合剤等を挙げることができる。
前記ポリカルボジイミド化合物の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル(株)製のカルボジライトシリーズ等を挙げることができる。
本発明においては、前記樹脂組成物中に帯電防止剤を含有することが好ましい。帯電防止剤を含有することにより、微細凹凸層表面に汚れが付着することを抑制することができ、また、拭取り時に汚れが落ちやすい。
帯電防止剤は、従来公知のものの中から適宜選択して用いることができる。帯電防止剤の具体例としては、例えば、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、1級〜3級アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物、スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられる。中でも、カチオン性化合物が好ましく、3級アミノ基を有するカチオン性化合物がより好ましく、N,N−ジオクチル−1−オクタンアミン等のトリアルキルアミンであることが更により好ましい。
前記樹脂組成物は、塗工性などを付与する点から溶剤を用いてもよい。溶剤を用いる場合、当該溶剤は、組成物中の各成分とは反応せず、当該各成分を溶解乃至分散可能な溶剤の中から適宜選択して用いることができる。このような溶剤の具体例としては、例えば、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)等のエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、シクロヘキサン等のアノン系溶剤、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶剤を例示することができるが、これらに限られるものではない。また、樹脂組成物に用いられる溶剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上の溶剤の混合溶剤でもよい。
本発明において用いられる微細凹凸層用の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更にその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、光増感剤、シリコーン系化合物、フッ素系化合物、濡れ性調整のための界面活性剤、安定化剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、粘度調整剤、離型剤等が挙げられる。
シリコーンオイルとしては、特に限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、アルコキシ基含有シリコーンオイル、シラノール基含有シリコーンオイル、ビニル基含有シリコーンオイル、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
なお、前記シリコーン系化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
前記微細凹凸層は、複数の微小突起が密接して配置されてなる微小突起群を備えた微細凹凸形状を表面に有する。前記微小突起の形状は、反射防止性能に優れる点から、前記微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有していることが、好ましい。このような微小突起の形状の具体例としては、半円状、半楕円状、三角形状、放物線状、釣鐘状等の垂直断面形状を有するものが挙げられる。複数ある微小突起は同一の形状を有していても異なる形状を有していてもよい。微小突起が上記の形状を有することにより、微細凹凸等の深さ方向に屈折率が連続的に変化するため、反射防止性能が向上する。
また、本発明に係る反射防止物品は、微小突起として多峰性微小突起を有することにより、拭取り性が向上する。これは、多峰性微小突起を設けた場合には、微小突起の付け根側に汚れが深くもぐり込まないことによるものと考えられる。
なお、本発明において、多峰性微小突起、単峰性微小突起に係る各頂部を形成する各凸部を、適宜、「峰」と称する。
図20は、多峰性微小突起の一例を示す平面視拡大写真である。
図21は、微小突起の形状の一例を示す斜視図であり、図22は、図21の例に示される微小突起の、平面図(図22(a))、正面図(図22(b))、及び側面図(図22(c))である。これら図21及び図22は、等高線図である。この図21及び図22による微小突起においては、高さの大きく異なる3つの峰が合体して1つの微小突起が形成されており、ほぼ中央より外方に向かって形成された3本の放射状の溝(沢状の極小部)によりこの3つの峰に係る領域に分割されて微小突起が作製されている。なおこの図21及び図22は、AFMによる計測結果によるデータを部分的に選択して詳細に示したものである。またこの図21及び図22における数字の単位はnmである。X座標及びY座標は、所定の基準位置からの座標値である。
図3に、複数の微小突起によって構成される凸状突起群の斜視図(図3(a))及び平面図(図3(b))を示す。図3に示す凸状突起群24は、相対的に高さの高い頂部微小突起3Cと、その周囲に隣接して配置された相対的に高さの低い複数の周辺微小突起3Dからなる。尚、図3(a)及び図3(b)は、理解を容易にするために模式的に示す図であり、xy方向は、基材の面内方向であり、z方向は微小突起の高さ方向である。
なお、本発明において、前記頂部微小突起は、前記周辺微小突起よりも相対的に高さが高く、高さの差が10nm以上のものをいい、当該高さの差は、20nm以上であることが好ましい。また、前記高さの差は、微細凹凸層表面のざらつき感を抑える観点から、50nm以下であることが好ましい。
なお、前記凸状突起群には、前記周辺微小突起にのみ隣接し、且つ前記頂部微小突起よりも高さが低い微小突起は含まれない。また、凸状突起群同士が隣接して形成される場合において、周辺微小突起が互いに隣接する凸状突起群に共有される場合がある。
前記凸状突起群を構成する微小突起の個数の比率は、例えば、前記微細凹凸層の表面をSEM等により観察し、画像解析により存在を確認できた微小突起の個数のうち、凸状突起群を構成する微小突起の個数の割合を算出することにより、求めることができる。
図12は、図8の微細凹凸層の例における、微小突起の高さHの度数分布のヒストグラムである。図12の例では、微小突起の付け根位置を基準(高さ0)とする。図12の例では、平均値HAVG=178nm、標準偏差σ=30nmとなる。これによりこの例では、突起の高さは平均値HAVG=178nmとなる。
Dmin=DAVG―2Σ
として定義する最小隣接突起間距離Dminを以って周期Dの代わりとして設計する。即ち、微細凹凸層30の表面31の残留反射光の散乱効果を十分奏し得る条件は、
Dmin>λMAX
である。通常、D又はDminは1〜500μm、好ましくは10〜100μmとされる。
尚、アスペクト比とは、微小突起の高さHを谷底に於ける径W(幅乃至太さと言う事も出来る)で除した比、H/Wとして定義される。ここで、谷底に於ける径とは、微小突起の谷底近傍の形状が円柱であれば、該円柱の(底面の)直径と一致する。微小突起の谷底近傍形状が円柱では無く、谷底を連ねた仮想的平面と微小突起とが交差して得られる底面の径の大きさが面内方向によって異なる場合は、その最大値を該微小突起の径とする。例えば、微小突起の底面形状が楕円の場合は、径は其の長径となる。又、微小突起の底面形状が多角形の場合は、径はその最大の対角線長となる。各微小突起のアスペクト比H/Wの平均値(H/W)aveは、設計上は実質、平均突起高さHAVG/平均隣接突起間隔dAVGとみなすことができる。
図13は、微小突起高さに関する、低高度領域、中高度領域、高高度領域についての説明の用に供する、微小突起高さの度数分布の模式的なヒストグラムである。図13に示すように、微小突起の高さHの度数分布における高さの平均値をHAVEとし、標準偏差をσHとし、H<HAVE−σHの領域を微小突起の低高度領域とし、HAVE−σH≦H≦HAVE+σHの領域を中高度領域とし、HAVE+σH<Hの領域を高高度領域とした場合に、各領域内の多峰性微小突起の数Nmと、度数分布全体における多峰性微小突起及び単峰性微小突起の総数Ntとの比率が、以下の(a)、(b)の関係を満たすことが好ましい。
(a)中高度領域のNm/Nt>低高度領域のNm/Nt
(b)中高度領域のNm/Nt>高高度領域のNm/Nt
上記関係を満たすことにより、可視光域に係る入射光に対する反射率を低減することができ、反射防止物品の反射防止機能の広帯域化をより具体的に図ることができ、更に微細凹凸面の耐擦傷性を向上することができる。
ここで、微小突起の高さHの度数分布において、低高度領域は、H<HAVE−σH=123.6nmとなり、中高度領域は、HAVE−σH=123.6nm≦H≦HAVE+σH=167.8nmとなり、高高度領域は、H>HAVE+σH=167.8nmとなる。
度数分布全体の微小突起の総数Ntは、263個であり、その中で、中高度領域の多峰性微小突起の数Nmは、23個であるので、中高度領域のNm/Ntは、0.087となる。低高度領域の多峰性微小突起の数Nmは、2個であるので、低高度領域のNm/Ntは、0.008となる。高高度領域の多峰性微小突起の数Nmは、5個であるので、高高度領域のNm/Ntは、0.019となる。
従って、図18に示す例の反射防止物品は、上述の(a)、(b)の関係、すなわち、
(a)中高度領域のNm/Nt=0.087>低高度領域のNm/Nt=0.008
(b)中高度領域のNm/Nt=0.087>高高度領域のNm/Nt=0.019
を満足する。
H<m1−σ1の領域を低高度領域とし、
m1−σ1≦H≦m1+σ1の領域を中高度領域とし、
m1+σ1<H<hsの領域を高高度領域とした場合に、
hs未満の分布における各領域内の前記多峰性微小突起の数Nm1と、前記度数分布全体における前記微小突起の総数Ntとの比率が、以下の(c)、(d)の関係を満たし、
(c)中高度領域のNm1/Nt>低高度領域のNm1/Nt
(d)中高度領域のNm1/Nt>高高度領域のNm1/Nt
且つ、hs以上の分布における前記微小突起の高さhの平均値をm2とし、標準偏差をσ2とし、
hs<H<m2−σ2の領域を低高度領域とし、
m2−σ2≦H≦m2+σ2の領域を中高度領域とし、
m2+σ2<Hの領域を高高度領域とした場合に、
hs以上の分布における各領域内の前記多峰性微小突起の数Nm2と、前記度数分布全体における前記微小突起の総数Ntとの比率が、以下の(e)、(f)の関係を満たすことがより好ましい。
(e)中高度領域のNm2/Nt>低高度領域のNm2/Nt
(f)中高度領域のNm2/Nt>高高度領域のNm2/Nt
上記関係を満たすことにより、可視光域に係る入射光に対する反射率をより低減することができ、反射防止物品の反射防止機能の広帯域化を更により具体的に図ることができ、微細凹凸面の耐擦傷性を更に向上することができる。
また、図19に示す例においては、微小突起の高さhの度数分布において、低高度領域は、h<m−σ=138.5nmとなり、中高度領域は、m−σ=138.5nm≦h≦m+σ=252.9nmとなり、高高度領域は、h>m+σ=252.9nmとなる。
度数分布全体の微小突起の総数Ntは、131個である。また、中高度領域の多峰性微小突起の数Nmは、21個であるので、中高度領域のNm/Ntは、0.160となる。低高度領域の多峰性微小突起の数Nmは、3個であるので、低高度領域のNm/Ntは、0.023となる。高高度領域の多峰性微小突起の数Nmは、0個であるので、高高度領域のNm/Ntは、0となる。
従って、図19に示す例においては、上述の(a)、(b)の関係、すなわち、
(a)中高度領域のNm/Nt=0.160>低高度領域のNm/Nt=0.023
(b)中高度領域のNm/Nt=0.160>高高度領域のNm/Nt=0
を満足する。
そのため、hs未満の分布の低高度領域は、h<m1−σ1=28.1nmとなり、中高度領域は、m1−σ1=28.1nm≦h≦m1+σ1=77.7nmとなり、高高度領域は、m1+σ1=77.7nm<h<hs=100nmとなる。
また、中高度領域の多峰性微小突起の数Nm1は、2個であるので、中高度領域のNm1/Ntは、0.015となる。低高度領域の多峰性微小突起の数Nm1は、0個であるので、低高度領域のNm1/Ntは、0となる。高高度領域の多峰性微小突起の数Nm1は、0個であるので、高高度領域のNm1/Ntは、0となる。
従って、図19に示す例の反射防止物品は、hs未満の分布において、上記(c)、(d)の関係、すなわち、
(c) 中高度領域のNm1/Nt=0.015>低高度領域のNm1/Nt=0
(d) 中高度領域のNm1/Nt=0.015>高高度領域のNm1/Nt=0
の関係を満たす。
そのため、hs以上の分布の低高度領域は、hs=100nm≦h<m2−σ2=169.9nmとなり、中高度領域は、m2−σ2=169.9nm≦h≦m2+σ2=248.7nmとなり、高高度領域は、m+σ=248.7nm<hとなる。
また、中高度領域の多峰性微小突起の数Nm2は、19個であるので、中高度領域のNm2/Ntは、0.145となる。低高度領域の多峰性微小突起の数Nm2は、3個であるので、低高度領域のNm2/Ntは、0.023となる。高高度領域の多峰性微小突起の数Nm2は、0個であるので、高高度領域のNm2/Ntは、0となる。
従って、図19に示す例の反射防止物品は、hs以上の分布においても、上記(e)、(f)の関係、すなわち、
(e) 中高度領域のNm2/Nt=0.145>低高度領域のNm2/Nt=0.023
(f) 中高度領域のNm2/Nt=0.145>高高度領域のNm2/Nt=0
の関係を満たす。
本発明に係る反射防止物品は、支持体として透明基材を含む。本発明に用いられる透明基材は、反射防止物品に用いられる公知の透明基材の中から用途に応じて適宜選択して用いることができる。透明基材に用いられる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の透明樹脂や、ソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)等のセラミックス、石英、蛍石等の透明無機材料等が挙げられる。
中でも、アウトガスの発生が低減される点から、前記透明基材は、主成分としてポリエステル系樹脂を含むものであることが好ましく、前記ポリエステル系樹脂としては中でもポリエチレンテレフタレートが好ましい。なおここで、主成分とは、基材全体の50質量%以上を占める成分のことをいう。また、前記透明基材は、ポリエステル系樹脂を基材全体の80質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上含有することが更により好ましい。前記ポリエステル系樹脂としては中でもポリエチレンテレフタレートが好ましい。
また、透明基材と微細凹凸層との密着性を向上させ、ひいては耐摩耗性(耐傷性)を向上させるためのプライマー層を透明基材上に形成してもよい。このプライマー層は、透明基材と、当該透明基材とプライマー層を介して隣接する微細凹凸層に密着性を有し、可視光を透過するものが好ましい。また透明基材と微細凹凸層の屈折率差により干渉ムラが出る場合にはプライマー層の屈折率を透明基材と微細凹凸層の中間の値に調整することでムラ軽減が可能である。
本発明において反射防止物品の光の反射率は、黒アクリル板に粘着剤を介して、測定対象となる反射防止性物品の透明基材側を貼合し、紫外可視分光光度計(例えば日本分光社製の商品名「V−7100」等)を用いて、JIS Z8701−1999に準拠して、2度視野(D65光源)により、反射防止物品表面への5°正反射率を測定することにより、求めることができる。
本発明の反射防止物品は、透明基材上に樹脂組成物を用いて微細凹凸層を形成すればよく、従来公知の方法の中から適宜選択して形成することができる。
本発明に係る反射防止物品の製造方法は、例えば、前記透明基材上に、前記微細凹凸層用の樹脂組成物を塗布し、微細凹凸層形成用原版の微細凹凸形状を、前記樹脂組成物の塗膜に賦型した後、前記樹脂組成物を硬化させることにより微細凹凸層を形成し、前記微細凹凸層形成用原版から剥離する方法等が挙げられる。
前記微細凹凸層形成用原版の微細凹凸形状を有する面は、特に限定されないが、酸化されやすく、陽極酸化による加工が容易である点から、アルミニウムからなることが好ましい。
前記微細凹凸層形成用原版は、具体的には、例えば、ステンレス鋼、銅、アルミニウム等の金属製の母材の表面に、直接に又は他の層を介して、スパッタリング等により純度の高いアルミニウム層が設けられ、当該アルミニウム層に微細凹凸形状を形成したものが挙げられる。前記母材は、前記アルミニウム層を設ける前に、電解溶出作用と、砥粒による擦過作用の複合による電解複合研磨法によって母材の表面を超鏡面化しても良い。アルミニウム純度は、通常、99重量%以上の物が用いられる。
また、前記微細凹凸層形成用原版の形状としては、所望の形状を賦型することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、平板状であっても良く、ロール(中空円筒又は中実円柱)状であっても良いが、前記微細凹凸層形成用原版は、生産性向上の観点からは、ロール状の金型(以下、「ロール金型」と称する場合がある。)を用いることが好ましい。
本発明において用いられるロール金型としては、例えば、母材として、円筒形状の金属材料を用い、当該母材の周側面に、直接に又は各種の中間層を介して設けられたアルミニウム層に、上述したように、陽極酸化処理、エッチング処理の繰り返しにより、微細な凹凸形状が作製されたものが挙げられる。
前記微細凹凸層形成用原版に微細凹凸形状を形成する方法としては、例えば、陽極酸化法によって前記アルミニウム層の表面に複数の微細穴を形成する陽極酸化工程と、前記アルミニウム層をエッチングすることにより前記微細穴の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、前記アルミニウム層を前記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより前記微細穴の穴径を拡大する第2エッチング工程とを順次繰り返し実施することによって形成することができる。即ち、図14に示すように、陽極酸化工程A1、…、AN、エッチング工程E1、…、ENを交互に繰り返して母材を処理し、ロール金型を作製する。
微細凹凸形状を形成する際には、アルミニウム層の純度(不純物量)や結晶粒径、陽極酸化処理及び/又はエッチング処理の諸条件を適宜調整することによって、所望の形状とすることができる。前記陽極酸化処理において、より具体的には、液温、印加する電圧、陽極酸化に供する時間等の管理により、微細な穴をそれぞれ目的とする深さ及び微小突起形状に対応する形状に作製することができる。
このようにして、前記微細凹凸層形成用原版は、深さ方向に徐々に穴径が小さくなる多数の微細穴が密に作製される。当該微細凹凸層形成用原版を用いて製造される微細凹凸層には、前記微細穴に対応して、頂部に近付くに従って徐々に径が小さくなる微小突起群を備えた微細凹凸が形成され、すなわち、当該微細凹凸の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微細凹凸を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微細凹凸の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する微細凹凸形状が形成される。
次に、多峰性微小突起を形成し、また、微小突起の高さの分布が制御された微細な穴が形成される方法について説明する。上述したように、賦型用金型(ロール版)に形成される微細穴は、陽極酸化処理及びエッチング処理の交互の繰り返しによって形成されるが、この繰り返しの陽極酸化処理における印加電圧を可変することによって、微細穴の深さ(微小突起の高さ分布)を制御することができる。ここで、陽極酸化処理における印加電圧と、形成される微細穴の間隔(ピッチ)とは、比例する関係にあるため、陽極酸化処理、エッチング処理の繰り返しにおいて、陽極酸化処理の印加電圧を可変すれば、深さ方向に掘り進める時間が相違する微細穴を混在させてその比率を制御することができる。
上述したように、陽極酸化処理における印加電圧と、微細穴のピッチとの関係は比例関係であるが、実際上、処理に供するアルミニウムの粒界等により微細穴のピッチにはばらつきが生じる。しかし、図15においては、このばらつきが存在しないものとして、微細穴が規則正しい配列により作製されるものとして説明する。なお、図15(a)〜図15(e)において、左側の図は、ロール金型の表面の拡大図を示し、右側の図は、左側の図におけるa−a断面図を示す。
図15(a)に示すように、まず、賦型用金型の表面のアルミニウム層に、電圧V1を印加して陽極酸化工程A1を実行した後に、エッチング工程E1を実行し、微細穴f1を形成する。ここで、陽極酸化工程A1は、アルミニウムのフラット面に後続する陽極酸化処理のきっかけを作製するものである。なお、この場合、エッチング工程を適宜省略してもよい。
次に、電圧V1よりも高い電圧V2(V2>V1)を印加して陽極酸化工程A2を実行した後に、エッチング工程E2を実行する。これにより、陽極酸化工程A2では、図15(b)に示すように、先の陽極酸化工程A1により形成された微細穴f1のうち、陽極酸化工程A2に対応する間隔の微細穴f1を更に掘り下げる。
本実施形態では、陽極酸化工程A2によって、先の陽極酸化工程A1で形成された微細穴f1を二つ置きに掘り進める処理が行われる。従って、賦型用金型の表面には、二つ置きに広くかつ深く掘り下げられた微細穴f2が形成され、ロール版の表面には、微細穴f1と微細穴f2とが混在する状態となる。
続いて、電圧V2よりも高い電圧V3(V3>V2)を印加して陽極酸化工程A3を実行した後に、エッチング工程E3を実行する。この工程では、ピッチの異なる微細穴を作製する。具体的には、印加する電圧を、電圧V2から電圧V3へ徐々に上昇させ、この印加電圧の上昇を離散的(段階的)に実行すると、微小突起の高さ分布(微細穴の深さ分布)を離散的に作製することができ、この印加電圧の上昇を連続的に実行すると、微小突起の高さ分布を正規分布に設定することができる。そのため、本実施形態では、陽極酸化工程A3における印加電圧の印加時間、エッチング工程の処理時間を上述の第1の工程、第2の工程よりも長く設定することにより、図15(c)に示すように、最初の陽極酸化工程A1において形成された微細穴f1が二つ、一つに纏まるように広くかつ深く掘り進められ、また、その一つに纏められた微細穴f3の底面が略平坦に形成される(平坦微細穴形成工程)。ここで、略平坦とは、微細穴の底面が平坦な状態だけでなく、その底面が大きい曲率半径で湾曲している状態をも含む状態をいう。
続いて、電圧V3よりも高い電圧V4(V4>V3)を印加して陽極酸化工程A4を実行した後に、エッチング工程E4を実行する。この工程では、目的とする突起間間隔によるピッチにより微細穴を作成する。この陽極酸化工程A4においても、印加電圧は、電圧V3から電圧V4へ徐々に上昇させる。これにより、上記第3の工程により掘り進められた微細穴f3の一部が更に掘り進められ、その結果、図15(d)に示すように、微細穴f4となり、この微細穴f4が高さの高い単峰性微小突起を形成する。
続いて、印加電圧を上記第1の工程における電圧V1に変更して陽極酸化工程A5を実行した後に、エッチング工程E5を実行する。この工程では、陽極酸化工程A3において形成された微細穴f3であって、第4の工程の陽極酸化工程A4の影響を受けていない微細穴f3の底面に、図15(e)に示すように、微細穴を複数個形成し、多峰性微小突起に対応する微細穴f5を形成する(多峰突起用微細穴形成工程)。ここで、印加する電圧V1の大きさを調整することによって、微細穴f5の底面に形成される微細穴の数を増減したり、その微細穴の間隔を調整したりすることができる。
ここで、この一連の工程では、第1の工程及び第2の工程により作製された深さの異なる微細穴f1、f2を、第3の工程で掘り進めて底面の略平坦な微細穴f3を作製し、第4の工程において、この微細穴f3を掘り進めて単峰性微小突起に係る微細穴f4を作製し、また、第5の工程において、この微細穴f3の底面を加工して多峰性微小突起に係る微細穴f5を作製している。ここで、第1の工程から第4の工程に係る陽極酸化工程の印加時間、処理時間、エッチング工程の処理時間等を制御して、各工程で作製される微細穴の深さを制御することにより、微小突起の高さの分布や、多峰性微小突起の高さの分布を制御することができる。なお、上述の第1の工程〜第5の工程は、必要に応じて回数を省略したり、繰り返したり、工程を一体化したりすることができる。
ここで図16(a)に示すように、第1の工程において、先ず、賦型用金型の表面のアルミニウム層に、電圧V1を印加して陽極酸化工程A1を実行した後に、エッチング工程E1を実行し、微細な穴f1を形成する。ここで、陽極酸化工程A1は、アルミニウムのフラット面に後続する陽極酸化処理のきっかけを作製するものである。なお、この場合、エッチング工程を適宜省略してもよい。
次に、電圧V1よりも高い電圧V2(V2>V1)を印加して陽極酸化工程A2を実行した後に、エッチング工程E2を実行する。これにより、陽極酸化工程A2では、図16(b)に示すように、先の陽極酸化工程A1により形成された微細な穴f1のうち、陽極酸化工程A2に対応する間隔の微細な穴f1を更に掘り下げる。
続いて、電圧V1と電圧V2の間の電圧V3(V2>V3>V1)を印加して陽極酸化工程A3を実行した後に、エッチング工程E3を実行する。この工程では、ピッチの異なる微細な穴を作製する。具体的には、印加する電圧を、電圧V3として、縦横に面内に配列した微細な穴f2の間に存在する図示の如くの特定の微細な穴f1を一つ置きに広く且つ深く掘り下げる。ここで印加電圧V3をV3=(V1)1/2に設定すると、陽極酸化工程A3における印加電圧の印加時間、エッチング工程の処理時間を上述の第1の工程よりも長く設定することにより、図16(c)に示すように、最初の陽極酸化工程A1において形成された微細な穴f1のうち、4個の微細な穴f2で囲まれる最小の四角形の中心に位置する微細な穴f1が選択的に深く掘り下げられる。且つ同時に、第2の陽極酸化工程A2形成された微細な穴f2のうちで図16(c)で図示される位置関係に有る一部のものが更に掘り下げられ、微細な穴f3となる。
図5に示す方法では、樹脂供給工程において、帯状フィルム形態の透明基材45に、ダイ41により微細凹凸層形成用の樹脂組成物を塗布し、微小突起形状を受容する受容層46を形成する。樹脂組成物の塗布方法については、ダイ41による場合に限らず、各種の手法を適用することができる。続いて、押圧ローラ43により、微細凹凸層形成用原版であるロール金型42の周側面に透明基材を加圧押圧し、これにより透明基材に受容層46を密着させると共に、ロール金型42の周側面に作製された微細な凹凸形状の凹部に、受容層46を構成する樹脂組成物を充分に充填する。この状態で、紫外線の照射により樹脂組成物を硬化させ、これにより透明基材表面に微細凹凸層を作製する。続いて剥離ローラ44を介してロール金型42から、硬化した微細凹凸層と一体に透明基材を剥離する。必要に応じてこの透明基材に粘着層等を作製した後、所望の大きさに切断して反射防止物品10が得られる。これにより反射防止物品は、ロール材による長尺の透明基材45に、微細凹凸層形成用原版であるロール金型42の周側面に作製された微細凹凸形状を順次賦型して、効率良く大量生産される。
本発明の反射防止物品は、後述する美術品展示体用途のほか、種々の用途に適用することができる。本発明の反射防止物品は、各用途において、反射防止物品に起因するアウトガスの発生を抑制しながら、光反射を防止して視認性を向上することができる。そのため、本発明の反射防止物品は、アウトガスの発生が問題となりやすい用途に特に好適に用いられる。本発明の反射防止物品の用途としては、具体的には、例えば、店舗のショウウインドウや商品展示箱、美術館の展示物の展示窓や展示箱等に特に適しており、使用する透明板の裏面(商品又は展示物側面)或いは裏面及び表面(外界側)の両面に配置するようにしても良い。なおこの場合、反射防止物品に起因するアウトガスの発生を抑制して、商品や美術品等の展示物に対するアウトガスの影響を抑制しながら、該硝子板表面の光反射防止による商品、美術品等の顧客や観客に対する視認性を向上することができる。
本発明に係る美術品展示体は、前記本発明に係る反射防止物品と、美術品とを備え、前記反射防止物品が、前記微細凹凸形状を有する面が前記美術品側を向くように配置されてなることを特徴とする。
本発明に係る美術品展示体は、図6及び図7に示す美術品展示体50のように、美術品51を収納するための収納体52を備えていても良い。また、本発明に係る美術品展示体は、例えば図6に示す美術品展示体50のように、透明保護板53を備えていても良いし、例えば図7に示すように、本発明に係る反射防止物品10が、美術品の透明保護板として機能するものであっても良い。
本発明に係る美術品展示体が、2つ以上の反射防止物品を備える場合、少なくとも1つの反射防止物品が、本発明に係る反射防止物品であり且つ微細凹凸面2aが美術品51側を向くように配置されてなるものであればよく、その他の反射防止物品としては、本発明に係る反射防止物品を用いてもよいし、本発明に係る反射防止物品とは異なる従来の反射防止物品を用いてもよい。
前記収納体の材料としては、特に限定はされず、ガラス、樹脂、金属、木材等が挙げられる。
本発明に係る美術品展示体に用いられる透明保護板53としては、特に限定はされないが、例えば、本発明に係る反射防止物品に用いられる透明基材と同じものを挙げることができる。
本発明に係る美術品展示体は、密閉性が高く、発生したアウトガスが当該美術品展示体内から放出され難いものにおいて、特に好適に用いられる。
純度99.50%の圧延されたアルミニウム板を、その表面が、十点平均粗さRz30nm、且つ周期1μmの凹凸形状となるように研磨後、0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、印加電圧40V、20℃の条件にて160秒間、陽極酸化工程A1を実施した。次に、濃度1.8mol/L(18質量%)のリン酸水溶液で35℃の条件で900秒間エッチング工程E1を行い、第1の工程とした。次に、第2の工程として、印加電圧45V、20℃の条件にて120秒間、陽極酸化工程A2を実施した後、濃度1.8mol/L(18質量%)のリン酸水溶液で35℃の条件で700秒間エッチング工程E2を行った。続いて、第3の工程として、印加電圧50V、20℃の条件にて90秒間、陽極酸化工程A3を実施した後、濃度1.8mol/L(18質量%)のリン酸水溶液で35℃の条件で600秒間エッチング工程E3を行った。続いて、第4の工程として、印加電圧55V、20℃の条件にて60秒間、陽極酸化工程A4を実施した後、濃度1.8mol/L(18質量%)のリン酸水溶液で35℃の条件で300秒間エッチング工程E4を行った。続いて、第5の工程として、印加電圧60V、20℃の条件にて60秒間、陽極酸化工程A5を実施した後、濃度1.8mol/L(18質量%)のリン酸水溶液で35℃の条件で300秒間エッチング工程E5を行った。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、微細凹凸層形成用原版を得た。
下記成分を各々混合し、希釈溶剤として、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンを用いて、固形分45質量%の微細凹凸層用樹脂組成物A〜F及び比較微細凹凸層用樹脂組成物G〜Iを調製した。
9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(新中村化学工業(株)製) 50質量%
EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 35質量%
トリデシルアクリレート 5質量%
ドデシルアクリレート 5質量%
光開始剤(ベンゾフェノン) 2質量%
光増感剤(4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン) 1質量%
ジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製) 2質量%
EO変性ビスフェノールAジアクリレート 50質量%
EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 35質量%
トリデシルアクリレート 5質量%
ドデシルアクリレート 5質量%
光開始剤(ベンゾフェノン) 2質量%
光増感剤(4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン) 1質量%
ジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製) 2質量%
EO変性ビスフェノールAジアクリレート 50質量%
EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 35質量%
ドデシルアクリレート 5質量%
トリデシルアクリレート 5質量%
光開始剤(4−メチルベンゾフェノン) 2質量%
光増感剤(4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン) 1質量%
ジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製) 2質量%
EO変性ビスフェノールAジアクリレート 50質量%
EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 35質量%
ドデシルアクリレート 5質量%
トリデシルアクリレート 5質量%
光開始剤(4−フェニルベンゾフェノン) 2質量%
増感剤(4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン) 1質量%
ジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製) 2質量%
EO変性ビスフェノールAジアクリレート 75質量%
EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 10質量%
ドデシルアクリレート 5質量%
トリデシルアクリレート 5質量%
光開始剤(4−フェニルベンゾフェノン) 2質量%
増感剤(4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン) 1質量%
ジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製) 2質量%
9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(新中村化学工業(株)製) 50質量%
EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 35質量%
トリデシルアクリレート 5質量%
ドデシルアクリレート 5質量%
光開始剤(ベンゾフェノン) 2質量%
光増感剤(4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン) 1質量%
ジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製) 1質量%
カルボジライトV−03(日清紡ケミカル(株)製、ポリカルボジイミド化合物) 1質量%
EO変性ビスフェノールAジアクリレート 50質量%
EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 35質量%
トリデシルアクリレート 5質量%
ドデシルアクリレート 5質量%
光開始剤(ルシリンTPO、BASF社製) 3質量%
ジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製) 2質量%
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 50質量%
EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 35質量%
トリデシルアクリレート 5質量%
ドデシルアクリレート 5質量%
光開始剤(ルシリンTPO、BASF社製) 3質量%
ジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製) 2質量%
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 50質量%
EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 35質量%
トリデシルアクリレート 5質量%
ドデシルアクリレート 5質量%
光開始剤(ベンゾフェノン) 2質量%
増感剤(4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン) 1質量%
ジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製) 2質量%
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製、U40、厚さ75μm)にウレタンアクリレート(東亜合成社製、商品名M−1100)とメタクリル酸メチルを含有したプライマー層用組成物を、硬化後の厚さが1μmとなるように塗布した。
微細凹凸層用樹脂組成物Aを、微細凹凸層形成用原版の微細凹凸面が覆われ、硬化後の微細凹凸層の厚さが3μmとなるように塗布、充填し、その上に、前記透明基材のプライマー層側の面を、斜めから貼り合わせた後、貼り合わせられた貼合体をゴムローラーで10N/cm2の加重で圧着した。原版全体に均一な組成物が塗布されたことを確認し、透明基材側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して、プライマー層用組成物及び微細凹凸層形成用樹脂組成物を硬化させた。その後、原版より剥離し、微細凹凸層を形成することにより、参考例1の反射防止物品を得た。当該微細凹凸層の微細凹凸形状は、微小突起の平均高さHAVGが250nmの先細り形状の微小突起が、隣接突起間隔の平均dAVGが170nmで密に配置されてなるものであり、単峰性微小突起と多峰性微小突起とが混在するものであった。
参考例1において、微細凹凸層用樹脂組成物Aに代えて、微細凹凸層用樹脂組成物Bを用いたこと以外は、参考例1と同様にして、参考例2の反射防止物品を得た。
参考例1において、微細凹凸層用樹脂組成物Aに代えて、微細凹凸層用樹脂組成物Cを用いたこと以外は、参考例1と同様にして、参考例3の反射防止物品を得た。
参考例1において、微細凹凸層用樹脂組成物Aに代えて、微細凹凸層用樹脂組成物Dを用いたこと以外は、参考例1と同様にして、参考例4の反射防止物品を得た。
参考例1において、微細凹凸層用樹脂組成物Aに代えて、微細凹凸層用樹脂組成物Eを用いたこと以外は、参考例1と同様にして、参考例5の反射防止物品を得た。
参考例1において、微細凹凸層用樹脂組成物Aに代えて、微細凹凸層用樹脂組成物Fを用いたこと以外は、参考例1と同様にして、実施例6の反射防止物品を得た。
参考例1において、微細凹凸層用樹脂組成物Aに代えて、比較微細凹凸層用樹脂組成物Gを用いたこと以外は、参考例1と同様にして、比較例1の反射防止物品を得た。
参考例1において、微細凹凸層用樹脂組成物Aに代えて、比較微細凹凸層用樹脂組成物Hを用いたこと以外は、参考例1と同様にして、比較例2の反射防止物品を得た。
参考例1において、微細凹凸層用樹脂組成物Aに代えて、比較微細凹凸層用樹脂組成物Iを用いたこと以外は、参考例1と同様にして、比較例3の反射防止物品を得た。
比較例1で得られた反射防止物品を1カ月間、自然放置(23℃、50%RH)したものを、比較例4の反射防止物品とした。
1.小形チャンバー法(JISA1901)によるアウトガス濃度分析
参考例1及び実施例6並びに比較例1及び比較例4で得られた反射防止物品について、それぞれ0.210m×0.243mの大きさに切断したものを試験体として、小形チャンバー法(JISA1901)によるアウトガス濃度分析により、以下の方法で、アルデヒド類並びに有機酸及びアンモニアの濃度を測定した。
測定は、温度28℃、相対湿度50%RH、換気回数0.5回/hの条件下において行い、評価面積1.53m2、試料負荷率76.5m2/m3とし、容積20Lのステンレス製チャンバーを用いて、試験体30枚について測定した。測定結果を表1に示す。本実施例における試料負荷率は、下記式により求めた。
試料負荷率(m2/m3)=(0.210m×0.243m)×30/0.020(m3)
試験体30枚を容積20Lのステンレス製チャンバーに設置し、上記条件のもと高純度空気を通気させ、1日後の試料から発生したアルデヒド類をDNPH(2,4−ジニトロフェニルヒドラジン)カートリッジに捕集した。DNPHカートリッジはアセトニトリルで溶出を行い、アルデヒド類の濃度を高速液体クロマトグラフ(HPLC)で測定した。サンプリング方法の概略図を図17に示す。
試験体30枚を容積20Lのステンレス製チャンバーに設置し、上記条件のもと高純度空気を通気させ、1日後の試料から発生したガスを、吸収液を充填したインピンジャーに捕集した。サンプリング後の吸収液に捕集された有機酸及びアンモニアの濃度はイオンクロマトグラフ(IC)で測定した。サンプリング方法の概略図を図17に示す。
前記で測定したアウトガス中のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ギ酸、酢酸及びアンモニアについて、気中濃度(volppb)を以下の式により算出した。
気中濃度(volppb)=(気中濃度(g/m3)×((273+サンプリング時温度(℃))/273)×22.4)/分子量
なお、気中濃度(g/m3)は、以下の式により算出した。
・アルデヒド類:
気中濃度(g/m3)=液中濃度(g/mL)×溶出量(mL)/捕集量(m3)
・有機酸、アンモニア:
気中濃度(g/m3)=吸収液中の目的成分濃度(g/mL)× 吸収液量(mL)/捕集量(m3)
各成分の気中濃度の定量には標品を用いた。なお、定量下限値はホルムアルデヒド1.1volppb、アセトアルデヒド0.71volppb、ギ酸6volppb、酢酸5volppb、アンモニア14volppbとした。表1において、定量下限値未満の成分については「<定量下限値」と示した。
また、IC測定で検出されたギ酸イオン(HCOO−)をギ酸、酢酸イオン(CH3COO−)を酢酸、アンモニウムイオン(NH4+)をアンモニアに換算し、算出した。
各実施例及び各比較例で得られた反射防止物品について、前記小形チャンバー法よりも簡易に測定可能な以下の方法により有機酸濃度を測定した。なお、当該方法は、前記小形チャンバー法と相関がよく、信頼できることが、例えば、佐野千絵、外2名、「展示ケース内有機酸の低減対策の評価法」、保存科学、東京文化財研究所、平成25年度、第53号、p.33〜43に記載されている。
ガス検知管による有機酸の濃度分析では、北川式ガス検知管(光明理化学工業(株)製、美術館博物館用有機酸、No.910)を用いて、デシケータ(37.2L)内に試料負荷率3.3(m2/m3)となるように反射防止物品をセットし、有機酸濃度を測定した。吸引流量0.2L/分、60分間吸引とし、定量下限値は10volppbとした。測定結果を表2に示す。なお、定量下限値未満の場合は「<定量下限値」と示した。
各実施例及び比較例で得られた反射防止物品の裏面(基材側の面)に、黒色テープを貼り付け、紫外可視分光光度計(日本分光社製、商品名「V−7100」)を用いて、JIS Z8701−1999に準拠して2度視野(D65光源)により、反射防止物品表面への5°正反射率を測定した。測定結果を表2に示す。
参考例1〜5、実施例6で得られた反射防止物品は、本発明で特定する微細凹凸形状を表面に有し、当該微細凹凸形状を有する微細凹凸層が、(i)2つ以上の単環芳香族炭化水素及び(ii)多環芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも一種を有する(メタ)アクリレート化合物を特定量含有し、さらに水素引き抜き型の光開始剤を含有する樹脂組成物の硬化物からなるものであったため、アウトガスの発生が抑制され、反射防止性に優れていた。
一方で、比較例1で得られた反射防止物品は、微細凹凸層に用いられた樹脂組成物が、水素引き抜き型の光開始剤に代えて、自己開裂型の光開始剤を含有するものであったため、アウトガスの発生を抑制する効果に劣っていた。
比較例2で得られた反射防止物品は、微細凹凸層に用いられた樹脂組成物が、水素引き抜き型の光開始剤に代えて、自己開裂型の光開始剤を含有し、(i)2つ以上の単環芳香族炭化水素及び(ii)多環芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも一種を有する(メタ)アクリレート化合物を含有しないものであったため、アウトガスの発生を抑制する効果に劣っていた。
比較例3で得られた反射防止物品は、微細凹凸層に用いられた樹脂組成物が、(i)2つ以上の単環芳香族炭化水素及び(ii)多環芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも一種を有する(メタ)アクリレート化合物を含有しないものであったため、アウトガスの発生を抑制する効果に劣っていた。
比較例4で得られた反射防止物品は、比較例1で得られた反射防止物品にいわゆる枯らしを行ったものであるため、比較例1で得られた反射防止物品と比べると、アウトガスの発生は抑制されていたものの、微細凹凸層に用いられた樹脂組成物が、水素引き抜き型の光開始剤に代えて、自己開裂型の光開始剤を含有するものであったため、参考例1〜5、実施例6に比べると、アウトガスの発生を抑制する効果に劣っていた。
2 微細凹凸層
2a 微細凹凸面
3 微小突起
3C 頂部微小突起
3D 周辺微小突起
5、5A、5B 微小突起
10 反射防止物品
24 凸状突起群
30 微細凹凸層
31 微細凹凸層表面
32 微小突起
33 うねりによる凹凸面
41 ダイ
42 ロール金型(原版)
43 押圧ローラ
44 剥離ローラ
45 透明基材
46 受容層
50 美術品展示体
51 美術品
52 収納体
53 透明保護板
g 溝
Claims (3)
- 透明基材の少なくとも一方の面に、複数の微小突起が密接して配置されてなる微小突起群を備えた微細凹凸形状を表面に有し、樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸層を備えた反射防止物品であって、
前記微小突起は、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmin、当該微小突起の隣接突起間隔dの平均値をdAVGとしたときに、
dAVG≦Λmin
なる関係を有し、
前記樹脂組成物が、(i)2つ以上の単環芳香族炭化水素及び(ii)多環芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも一種を有する(メタ)アクリレート化合物と、水素引き抜き型の光開始剤と、更にカルボジイミド基を有する化合物を含有し、前記(メタ)アクリレート化合物の含有割合が、前記樹脂組成物に含まれる全固形分に対して50〜90質量%であることを特徴とする、反射防止物品。 - 前記透明基材が、ポリエステル系樹脂を含有する、請求項1に記載の反射防止物品。
- 前記請求項1又は2に記載される反射防止物品と、美術品とを備え、
前記反射防止物品が、前記微細凹凸形状を有する面が前記美術品側を向くように配置された、美術品展示体。
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