JP6398636B2 - 内燃機関の可変バルブタイミング制御装置 - Google Patents

内燃機関の可変バルブタイミング制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、内燃機関のバルブタイミングを変化させる可変バルブタイミング装置を備えた内燃機関の可変バルブタイミング制御装置に関する発明である。
車両に搭載される内燃機関においては、出力向上、燃費節減、エミッション低減等を目的として、内燃機関のクランク軸に対するカム軸の回転位相(VCT位相)を変化させて吸気バルブや排気バルブのバルブタイミング(開閉タイミング)を変化させる可変バルブタイミング装置を搭載したものがある。
可変バルブタイミング装置を備えたシステムにおいては、例えば、特許文献1(特開2009−138610号公報)に記載されたものがある。このものは、クランク軸の回転に同期してクランク角センサから出力されるクランク角信号とカム軸の回転に同期してカム角センサから出力されるカム角信号とに基づいて実VCT位相を算出し、実VCT位相(実バルブタイミング)を目標VCT位相(目標バルブタイミング)に一致させるように可変バルブタイミング装置を制御するようにしている。
また、可変バルブタイミング装置を備えたシステムでは、カム軸に作用するカムトルクの変動によってVCT位相が変動するという特性がある。そこで、上記特許文献1では、VCT位相の変動周期の節部でカム角信号を出力する第1カム角センサと節部以外でカム角信号を出力する第2カム角センサとを設けて、節部における実VCT位相と節部以外における実VCT位相とを算出し、両者の差に基づいて実VCT位相の変動を判定するようにしている。
特開2009−138610号公報
近年、可変バルブタイミング装置の電動化に伴って、内燃機関の始動時からVCT位相制御(バルブタイミング制御)を行うことが要求されるようになってきている。しかし、前述したように、可変バルブタイミング装置を備えたシステムでは、カム軸に作用するカムトルクの変動によってVCT位相が変動するという特性があり、特に内燃機関の始動中(例えばクランキング中)は、カムトルクの変動によるVCT位相の変動が大きくなると共に変動周期も長くなる傾向がある。このため、内燃機関の始動中にVCT位相を精度良く制御することは困難であり、上記特許文献1においても内燃機関の始動中のVCT位相の制御精度を確保する技術は開示されていない。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、内燃機関の始動中のVCT位相の制御精度を確保することができる内燃機関の可変バルブタイミング制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、内燃機関(11)のクランク軸(12)に対するカム軸(16)の回転位相(以下「VCT位相」という)を変化させてバルブタイミングを変化させる可変バルブタイミング装置(18)と、クランク軸(12)の回転に同期してクランク角信号を出力するクランク角センサ(21)と、カム軸(16)の回転に同期してカム角信号を出力するカム角センサ(19,20,33)とを備えた内燃機関の可変バルブタイミング制御装置において、内燃機関(11)の始動中にVCT位相の変動が小さくなるタイミングでカム角信号とクランク角信号とに基づいて変動小時の実VCT位相を算出し、該変動小時の実VCT位相と目標VCT位相とに基づいて可変バルブタイミング装置(18)の基準制御量を算出する基準制御量算出手段(30)と、内燃機関(11)の始動中にVCT位相の変動が大きくなるタイミングでカム角信号とクランク角信号とに基づいて変動大時の実VCT位相を算出し、該変動大時の実VCT位相と変動小時の実VCT位相とに基づいて各クランク角位置毎の基準制御量の補正量を算出する補正量算出手段(30)とを備えた構成としたものである。
この構成では、内燃機関の始動中にVCT位相の変動が小さくなるタイミングで変動小時の実VCT位相を算出することで、変動する実VCT位相の平均値(変動中心)に相当する実VCT位相を変動小時の実VCT位相として求めることができる。この変動小時の実VCT位相と目標VCT位相とに基づいて基準制御量を算出することで、変動小時の実VCT位相を目標VCT位相に制御するための基準制御量(変動する実VCT位相を目標VCT位相に制御するために変化する制御量の平均値に相当する制御量)を求めることができる。
更に、内燃機関の始動中にVCT位相の変動が大きくなるタイミングで変動大時の実VCT位相を算出することで、変動する実VCT位相のピーク値又はボトム値に相当する実VCT位相を変動大時の実VCT位相として求めることができる。この変動大時の実VCT位相と変動小時の実VCT位相とに基づいて各クランク角位置毎の基準制御量の補正量を算出する。実VCT位相は周期的に変化するため、変動大時の実VCT位相と変動小時の実VCT位相との差(つまり実VCT位相の振幅)から、各クランク角位置における実VCT位相の平均値(変動中心)に対する変動量を把握することができ、その変動量に対応する分の補正量を求めることができる。従って、変動大時の実VCT位相と変動小時の実VCT位相とに基づいて各クランク角位置毎の基準制御量の補正量を算出することで、各クランク角位置における実VCT位相の変動量に対応する分の補正量を求めることができる。
このようにして求めた各クランク角位置毎の補正量を用いて各クランク角位置毎に基準制御量を補正して最終的な制御量を求めることで、内燃機関の始動中に変動する実VCT位相を目標VCT位相に制御するための制御量を各クランク角位置毎に精度良く求めることができ、内燃機関の始動中のVCT位相の制御精度を確保することができる。
図1は本発明の実施例1におけるバルブタイミング制御システムの概略構成を示す図である。 図2は実施例1の可変バルブタイミング装置及びその周辺部の概略構成図である。 図3は実施例1の可変バルブタイミング装置の制御量(基準制御量及び補正量)の算出方法を説明する図である。 図4は実施例1の始動時VCT位相制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。 図5は実施例2の可変バルブタイミング装置の制御量(基準制御量及び補正量)の算出方法を説明する図である。 図6は実施例2の始動時VCT位相制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。 図7は実施例3の可変バルブタイミング装置及びその周辺部の概略構成図である。 図8は実施例3の可変バルブタイミング装置の制御量(基準制御量及び補正量)の算出方法を説明する図である。
以下、本発明を実施するための形態を具体化した幾つかの実施例を説明する。
本発明の実施例1を図1乃至図4に基づいて説明する。
まず、図1及び図2に基づいてシステム全体の概略構成を説明する。
図1に示すように、内燃機関であるエンジン11は、クランク軸12からの動力がタイミングチェーン13(又はタイミングベルト)により各スプロケット14,15を介して吸気側カム軸16と排気側カム軸17とに伝達されるようになっている。吸気側カム軸16には、電動式の可変バルブタイミング装置18が設けられている。この可変バルブタイミング装置18によって、クランク軸12に対する吸気側カム軸16の回転位相(以下「VCT位相」という)を変化させることで、吸気側カム軸16によって開閉駆動される吸気バルブ(図示せず)のバルブタイミング(開閉タイミング)を変化させるようになっている。
また、図1及び図2に示すように、吸気側カム軸16の外周側には、吸気側カム軸16の回転に同期して所定のカム角毎にカム角信号を出力するカム角センサ19,20が取り付けられている。一方、クランク軸12の外周側には、クランク軸12の回転に同期して所定のクランク角毎にクランク角信号を出力するクランク角センサ21が取り付けられている。図2に示すように、可変バルブタイミング装置18は、モータ22(例えばブラシモータ等)を駆動源として、VCT位相(クランク軸12に対する吸気側カム軸16の回転位相)を変化させてバルブタイミングを変化させるように構成されている。
前述した各種センサの出力は、電子制御ユニット(以下「ECU」と表記する)30に入力される。このECU30は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御用のプログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて、燃料噴射量、点火時期、スロットル開度(吸入空気量)等を制御する。
また、ECU30は、エンジン運転状態等に基づいて目標VCT位相を算出すると共に、クランク角信号とカム角信号に基づいて実VCT位相を算出し、実VCT位相(実バルブタイミング)を目標VCT位相(目標バルブタイミング)に一致させるように可変バルブタイミング装置18のモータ26をフィードバック制御するVCT位相制御を行う。
ところで、近年、可変バルブタイミング装置18の電動化に伴って、エンジン11の始動時からVCT位相制御(バルブタイミング制御)を行うことが要求されるようになってきている。しかし、可変バルブタイミング装置18を備えたシステムでは、カム軸16に作用するカムトルクの変動によってVCT位相が変動するという特性があり、特にエンジン11の始動中(例えばクランキング中)は、カムトルクの変動によるVCT位相の変動が大きくなると共に変動周期も長くなる傾向がある。このため、従来技術では、エンジン11の始動中にVCT位相を精度良く制御することは困難である。
そこで、本実施例1では、図2及び図3に示すように、異なるタイミングでカム角信号を出力する第一のカム角センサ19と第二のカム角センサ20とが設けられている。
第一のカム角センサ19は、VCT位相の変動が小さくなるタイミング(例えば変動中心に対する変動量の絶対値が最小になるタイミング)で第一のカム角信号を出力するように設定されている。つまり、VCT位相の変動が小さくなるタイミングで第一のカム角センサ19が第一のカム角信号を出力するように第一のカムロータ31(図2参照)の外周部に歯が設けられている。
第二のカム角センサ20は、VCT位相の変動が大きくなるタイミング(例えば変動中心に対する変動量の絶対値が最大になるタイミング)で第二のカム角信号を出力するように設定されている。つまり、VCT位相の変動が大きくなるタイミングで第二のカム角センサ20が第二のカム角信号を出力するように第二のカムロータ32(図2参照)の外周部に歯が設けられている。
この場合、例えば、図3に示すように、第一のカム角センサ19は、VCT位相の変動中心に対する変動量がマイナス側からプラス側に切り換わるタイミングで第一のカム角信号を出力するように設定されている。第二のカム角センサ20は、VCT位相の変動中心に対する変動量がプラス側で最大になるタイミングとマイナス側で最大になるタイミングで第二のカム角信号を出力するように設定されている。
そして、ECU30により後述する図4の始動時VCT位相制御ルーチンを実行することで、エンジン11の始動中に可変バルブタイミング装置18の制御量(基準制御量及び補正量)を次のようにして算出してVCT位相制御を行う。
図3に示すように、エンジン11の始動中に第一のカム角センサ19が第一のカム角信号を出力するタイミング(つまりVCT位相の変動が小さくなるタイミング)で第一のカム角信号とクランク角信号とに基づいて変動小時の実VCT位相を算出する。この変動小時の実VCT位相と目標VCT位相とに基づいて可変バルブタイミング装置18の基準制御量を算出する。
このように、エンジン11の始動中にVCT位相の変動が小さくなるタイミングで変動小時の実VCT位相を算出することで、変動する実VCT位相の平均値(変動中心)に相当する実VCT位相を変動小時の実VCT位相として求めることができる。この変動小時の実VCT位相と目標VCT位相とに基づいて基準制御量を算出することで、変動小時の実VCT位相を目標VCT位相に制御するための基準制御量(変動する実VCT位相を目標VCT位相に制御するために変化する制御量の平均値に相当する制御量)を求めることができる。
更に、エンジン11の始動中に第二のカム角センサ20が第二のカム角信号を出力するタイミング(つまりVCT位相の変動が大きくなるタイミング)で第二のカム角信号とクランク角信号とに基づいて変動大時の実VCT位相を算出する。この変動大時の実VCT位相と変動小時の実VCT位相とに基づいて各クランク角位置毎の基準制御量の補正量を算出する。
このように、エンジン11の始動中にVCT位相の変動が大きくなるタイミングで変動大時の実VCT位相を算出することで、変動する実VCT位相のピーク値又はボトム値に相当する実VCT位相を変動大時の実VCT位相として求めることができる。この変動大時の実VCT位相と変動小時の実VCT位相とに基づいて各クランク角位置毎の基準制御量の補正量を算出する。実VCT位相は周期的に変化するため、変動大時の実VCT位相と変動小時の実VCT位相との差(つまり実VCT位相の振幅)から、各クランク角位置における実VCT位相の平均値(変動中心)に対する変動量を把握することができ、その変動量に対応する分の補正量を求めることができる。従って、変動大時の実VCT位相と変動小時の実VCT位相とに基づいて各クランク角位置毎の基準制御量の補正量を算出することで、各クランク角位置における実VCT位相の変動量に対応する分の補正量を求めることができる。
以上のようにして求めた各クランク角位置毎の補正量を用いて各クランク角位置毎に基準制御量を補正して最終的な制御量(例えばモータ22の駆動電流又は駆動電圧等)を求めることで、エンジン11の始動中に変動する実VCT位相を目標VCT位相に制御するための制御量を各クランク角位置毎に精度良く求めることができる。
以下、本実施例1でECU30が実行する図4の始動時VCT位相制御ルーチンの処理内容を説明する。
図4に示す始動時VCT位相制御ルーチンは、ECU30の電源オン期間中に所定周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、エンジン11の始動中(例えばクランキング中)であるか否かを判定し、エンジン11の始動中ではないと判定された場合には、ステップ102以降の処理を実行することなく、本ルーチンを終了する。
一方、上記ステップ101で、エンジン11の始動中であると判定された場合には、ステップ102に進み、VCT位相の変動が小さくなるタイミングであるか否かを、第一のカム角センサ19から第一のカム角信号が出力されたか否かによって判定する。
このステップ102で、VCT位相の変動が小さくなるタイミングであると判定された場合には、ステップ103に進み、第一のカム角信号とクランク角信号とに基づいて変動小時の実VCT位相を算出する。
この後、ステップ104に進み、変動小時の実VCT位相と目標VCT位相との偏差を小さくするように基準制御量を算出することで、変動小時の実VCT位相を目標VCT位相に制御するための基準制御量を算出する。これらのステップ102〜104の処理が特許請求の範囲でいう基準制御量算出手段としての役割を果たす。
一方、上記ステップ102で、VCT位相の変動が小さくなるタイミングではないと判定された場合には、ステップ105に進み、VCT位相の変動が大きくなるタイミングであるか否かを、第二のカム角センサ20から第二のカム角信号が出力されたか否かによって判定する。
このステップ105で、VCT位相の変動が大きくなるタイミングであると判定された場合には、ステップ106に進み、第二のカム角信号とクランク角信号とに基づいて変動大時の実VCT位相を算出する。
この後、ステップ107に進み、変動大時の実VCT位相と変動小時の実VCT位相との差(つまり実VCT位相の振幅)を算出した後、ステップ108に進み、変動大時の実VCT位相と変動小時の実VCT位相との差に基づいて、所定期間における各クランク角位置毎の基準制御量の補正量をマップ又は数式等により算出する。
ここで、所定期間は、例えば、VCT位相の変動周期に相当する期間又は今回の第二のカム角信号の出力タイミングから次回の第二のカム角信号の出力タイミングまでの期間とする。また、各クランク角位置は、例えば、クランク角信号の各出力タイミングに相当するクランク角位置又はそれよりも大きい間隔で設定されたクランク角位置とする。これらのステップ105〜108の処理が特許請求の範囲でいう補正量算出手段としての役割を果たす。
以上説明した本実施例1では、エンジン11の始動中にVCT位相の変動が小さくなるタイミングで第一のカム角信号とクランク角信号とに基づいて変動小時の実VCT位相を算出し、この変動小時の実VCT位相と目標VCT位相とに基づいて可変バルブタイミング装置18の基準制御量を算出する。更に、エンジン11の始動中にVCT位相の変動が大きくなるタイミングで第二のカム角信号とクランク角信号とに基づいて変動大時の実VCT位相を算出し、この変動大時の実VCT位相と変動小時の実VCT位相との差に基づいて各クランク角位置毎の基準制御量の補正量を算出する。このようにして求めた各クランク角位置毎の補正量を用いて各クランク角位置毎に基準制御量を補正して最終的な制御量(例えばモータ22の駆動電流又は駆動電圧等)を求めることで、エンジン11の始動中に変動する実VCT位相を目標VCT位相に制御するための制御量を各クランク角位置毎に精度良く求めることができ、エンジン11の始動中のVCT位相の制御精度を確保することができる。
また、本実施例1では、第一のカム角センサ19が第一のカム角信号を出力するタイミング(つまりVCT位相の変動が小さくなるタイミング)で変動小時の実VCT位相を算出し、第二のカム角センサ20が第二のカム角信号を出力するタイミング(つまりVCT位相の変動が大きくなるタイミング)で変動大時の実VCT位相を算出するようにしている。このようにすれば、VCT位相の変動が小さくなるタイミングで変動小時の実VCT位相を算出すると共にVCT位相の変動が大きくなるタイミングで変動大時の実VCT位相を算出する構成を容易に実現することができる。
次に、図5及び図6を用いて本発明の実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
本実施例2では、ECU30により後述する図6の始動時VCT位相制御ルーチンを実行することで、エンジン11の始動中に可変バルブタイミング装置18の基準制御量と補正量を次のようにして算出する。
図5に示すように、まず、エンジン11のクランキング回転速度と油温とカムリフト量とに基づいて、基準制御量の初期値と各クランク角位置毎の補正量の初期値を設定する。その後、変動小時の実VCT位相と目標VCT位相とに基づいて基準制御量の修正値を算出し、この修正値を用いて基準制御量を修正して修正後の基準制御量を求める。更に、変動大時の実VCT位相と変動小時の実VCT位相とに基づいて各クランク角位置毎の補正量の修正値を算出し、各クランク角位置毎の修正値を用いて各クランク角位置毎の補正量を修正して各クランク角位置毎の修正後の補正量を求める。
以下、本実施例2でECU30が実行する図6の始動時VCT位相制御ルーチンの処理内容を説明する。
図6の始動時VCT位相制御ルーチンでは、まず、ステップ201で、エンジン11の始動中(例えばクランキング中)であるか否かを判定し、エンジン11の始動中ではないと判定された場合には、ステップ202以降の処理を実行することなく、本ルーチンを終了する。
一方、上記ステップ201で、エンジン11の始動中であると判定された場合には、ステップ202に進み、クランキング回転速度と油温とカムリフト量とに応じた基準制御量の初期値と、クランキング回転速度と油温とカムリフト量とに応じた各クランク角位置毎の補正量の初期値を、それぞれマップ又は数式等により算出する。ここで、基準制御量の初期値を算出するためのマップ又は数式等や、補正量の初期値を算出するためのマップ又は数式等は、予め試験データや設計データに基づいて作成され、ECU30のROMに記憶されている。このステップ202の処理が特許請求の範囲でいう初期値設定手段としての役割を果たす。
この後、ステップ203に進み、VCT位相の変動が小さくなるタイミングであるか否かを、第一のカム角センサ19から第一のカム角信号が出力されたか否かによって判定する。
このステップ203で、VCT位相の変動が小さくなるタイミングであると判定された場合には、ステップ204に進み、第一のカム角信号とクランク角信号とに基づいて変動小時の実VCT位相を算出する。
この後、ステップ205に進み、変動小時の実VCT位相と目標VCT位相との偏差を小さくするように基準制御量の修正値を算出することで、変動小時の実VCT位相を目標VCT位相に制御するための基準制御量の修正値を算出する。
この後、ステップ206に進み、今回算出した修正値を用いて基準制御量を修正して修正後の基準制御量を求める。
一方、上記ステップ203で、VCT位相の変動が小さくなるタイミングではないと判定された場合には、ステップ207に進み、VCT位相の変動が大きくなるタイミングであるか否かを、第二のカム角センサ20から第二のカム角信号が出力されたか否かによって判定する。
このステップ207で、VCT位相の変動が大きくなるタイミングであると判定された場合には、ステップ208に進み、第二のカム角信号とクランク角信号とに基づいて変動大時の実VCT位相を算出する。
この後、ステップ209に進み、変動大時の実VCT位相と変動小時の実VCT位相との差(つまり実VCT位相の振幅)を算出した後、ステップ210に進み、変動大時の実VCT位相と変動小時の実VCT位相との差に基づいて、所定期間における各クランク角位置毎の補正量の修正値をマップ又は数式等により算出する。
この後、ステップ211に進み、今回算出した各クランク角位置毎の修正値を用いて各クランク角位置毎の補正量を修正して各クランク角位置毎の修正後の補正量を求める。
以上説明した本実施例2では、エンジン11のクランキング回転速度と油温とカムリフト量とに基づいて基準制御量の初期値と補正量の初期値を設定するようにしている。このようにすれば、そのときの条件(クランキング回転速度や油温やカムリフト量)に応じた基準制御量や補正量の初期値を予め設定しておくことができるため、基準制御量や補正量を速やかに適正値に収束させて、VCT位相を速やかに安定化させることが可能となる。また、修正後の基準制御量や補正量に基づいて初期値のマップや数式等を更新するようにしても良く、この場合、経時劣化等に対する初期値のずれを補正することもできる。
尚、上記実施例2では、クランキング回転速度と油温とカムリフト量とに基づいて基準制御量の初期値と補正量の初期値を設定するようにしているが、これに限定されず、例えば、クランキング回転速度と油温とカムリフト量のうちの一つ又は二つに基づいて基準制御量の初期値と補正量の初期値を設定するようにしても良い。また、クランキング回転速度と油温とカムリフト量のうちの少なくとも一つに基づいて基準制御量の初期値と補正量の初期値のうちの一方のみを設定するようにしても良い。
次に、図7及び図8を用いて本発明の実施例3を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
本実施例3では、図7及び図8に示すように、吸気側カム軸16の外周側には、一つのカム角センサ33が設けられ、このカム角センサ33は、VCT位相の変動が小さくなるタイミングでカム角信号が立ち上がり、VCT位相の変動が大きくなるタイミングでカム角信号が立ち下がるように設定されている。つまり、VCT位相の変動が小さくなるタイミングでカム角センサ33のカム角信号が立ち上がると共に、VCT位相の変動が大きくなるタイミングでカム角センサ33のカム角信号が立ち下がるようにカムロータ34(図7参照)の外周部に歯が設けられている。
そして、図8に示すように、エンジン11の始動中にカム角センサ33のカム角信号の立ち上がりタイミング(つまりVCT位相の変動が小さくなるタイミング)でカム角信号とクランク角信号とに基づいて変動小時の実VCT位相を算出し、この変動小時の実VCT位相と目標VCT位相とに基づいて基準制御量を算出する。
更に、エンジン11の始動中にカム角センサ33のカム角信号の立ち下がりタイミング(つまりVCT位相の変動が大きくなるタイミング)でカム角信号とクランク角信号とに基づいて変動大時の実VCT位相を算出し、この変動大時の実VCT位相と変動小時の実VCT位相とに基づいて各クランク角位置毎の基準制御量の補正量を算出する。
以上説明した本実施例3では、カム角センサ33のカム角信号の立ち上がりタイミング(つまりVCT位相の変動が小さくなるタイミング)で変動小時の実VCT位相を算出し、カム角センサ33のカム角信号の立ち下がりタイミング(つまりVCT位相の変動が大きくなるタイミング)で変動大時の実VCT位相を算出するようにしている。このようにすれば、変動小時の実VCT位相の算出タイミングと変動大時の実VCT位相の算出タイミングを別々のカム角センサの出力信号に基づいて設定する場合に比べて、実VCT位相の算出タイミングの設定精度を高めることができる。その結果、変動小時の実VCT位相や変動大時の実VCT位相の算出精度を高めて、基準制御量や補正量の算出精度を高めることができ、VCT位相の制御精度を向上させることができる。
尚、上記実施例3では、VCT位相の変動が小さくなるタイミングでカム角信号が立ち上がり、VCT位相の変動が大きくなるタイミングでカム角信号が立ち下がるように設定している。しかし、これとは逆に、VCT位相の変動が小さくなるタイミングでカム角信号が立ち下がり、VCT位相の変動が大きくなるタイミングでカム角信号が立ち上がるように設定しても良い。この場合、カム角信号の立ち下がりタイミング(つまりVCT位相の変動が小さくなるタイミング)でカム角信号とクランク角信号とに基づいて変動小時の実VCT位相を算出し、カム角信号の立ち上がりタイミング(つまりVCT位相の変動が大きくなるタイミング)でカム角信号とクランク角信号とに基づいて変動大時の実VCT位相を算出する。
また、上記実施例3においても、クランキング回転速度と油温とカムリフト量のうちの少なくとも一つに基づいて、基準制御量の初期値と補正量の初期値のうちの少なくとも一方を設定するようにしても良い。
また、上記各実施例1〜3では、吸気バルブの可変バルブタイミング装置に本発明を適用したが、これに限定されず、排気バルブの可変バルブタイミング装置に本発明を適用しても良い。
また、本発明は、電動式の可変バルブタイミング装置に限定されず、エンジン始動時からVCT位相制御(バルブタイミング制御)を実行可能なシステムであれば、油圧駆動式の可変バルブタイミング装置(例えばモータ等で駆動される電動オイルポンプにより油圧が供給される可変バルブタイミング装置)に適用しても良い。
11…エンジン(内燃機関)、12…クランク軸、16…吸気側カム軸、18…可変バルブタイミング装置、19,20…カム角センサ、21…クランク角センサ、30…ECU(基準制御量算出手段,補正量算出手段,初期値設定手段)、33…カム角センサ

Claims (6)

  1. 内燃機関(11)のクランク軸(12)に対するカム軸(16)の回転位相(以下「VCT位相」という)を変化させてバルブタイミングを変化させる可変バルブタイミング装置(18)と、前記クランク軸(12)の回転に同期してクランク角信号を出力するクランク角センサ(21)と、前記カム軸(16)の回転に同期してカム角信号を出力するカム角センサ(19,20,33)とを備えた内燃機関の可変バルブタイミング制御装置において、
    前記内燃機関(11)の始動中に前記VCT位相の変動が小さくなるタイミングで前記カム角信号と前記クランク角信号とに基づいて変動小時の実VCT位相を算出し、該変動小時の実VCT位相と目標VCT位相とに基づいて前記可変バルブタイミング装置(18)の基準制御量を算出する基準制御量算出手段(30)と、
    前記内燃機関(11)の始動中に前記VCT位相の変動が大きくなるタイミングで前記カム角信号と前記クランク角信号とに基づいて変動大時の実VCT位相を算出し、該変動大時の実VCT位相と前記変動小時の実VCT位相とに基づいて各クランク角位置毎の前記基準制御量の補正量を算出する補正量算出手段(30)と
    を備えていることを特徴とする内燃機関の可変バルブタイミング制御装置。
  2. 前記内燃機関(11)のクランキング回転速度と油温とカムリフト量のうちの少なくとも一つに基づいて、前記基準制御量と前記補正量のうちの少なくとも一方の初期値を設定する初期値設定手段(30)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の可変バルブタイミング制御装置。
  3. 前記カム角センサとして、前記VCT位相の変動が小さくなるタイミングで前記カム角信号を出力する第一のカム角センサ(19)と、前記VCT位相の変動が大きくなるタイミングで前記カム角信号を出力する第二のカム角センサ(20)とを備え、
    前記基準制御量算出手段(30)は、前記第一のカム角センサ(19)が前記カム角信号を出力するタイミングで前記変動小時の実VCT位相を算出し、
    前記補正量算出手段(30)は、前記第二のカム角センサ(20)が前記カム角信号を出力するタイミングで前記変動大時の実VCT位相を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の可変バルブタイミング制御装置。
  4. 前記カム角センサ(33)は、前記VCT位相の変動が小さくなるタイミングと前記VCT位相の変動が大きくなるタイミングのうちの一方のタイミングで前記カム角信号が立ち上がって他方のタイミングで前記カム角信号が立ち下がるように設定され、
    前記基準制御量算出手段(30)は、前記カム角信号の立ち上がりタイミングと立ち下がりタイミングのうちの一方のタイミングで前記変動小時の実VCT位相を算出し、
    前記補正量算出手段(30)は、前記カム角信号の立ち上がりタイミングと立ち下がりタイミングのうちの他方のタイミングで前記変動大時の実VCT位相を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の可変バルブタイミング制御装置。
  5. 前記基準制御量算出手段は、前記内燃機関の始動時のクランキング中に前記VCT位相の変動が小さくなるタイミングで前記変動小時の実VCT位相を算出し、該変動小時の実VCT位相と目標VCT位相とに基づいて前記可変バルブタイミング装置の基準制御量を算出し、
    前記補正量算出手段は、前記内燃機関の始動時のクランキング中に前記VCT位相の変動が大きくなるタイミングで前記変動大時の実VCT位相を算出し、該変動大時の実VCT位相と前記変動小時の実VCT位相とに基づいて各クランク角位置毎の前記基準制御量の補正量を算出する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の内燃機関の可変バルブタイミング制御装置。
  6. 前記可変バルブタイミング装置は、電動式の可変バルブタイミング装置である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の内燃機関の可変バルブタイミング制御装置。
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