JP2005061223A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】機関バルブの開閉に伴うカムシャフトの実際の回転位相の理論上の回転位相に対する変動を検出することができ、当該変動の増大に対して適切に対策を講じることの可能な内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】バルブ開閉時のカムシャフト14,15には、平均回転速度で等速回転させたときの理論上回転位相に対する実際の回転位相の変動が発生する。また、カムシャフト14,15の周方向所定部位について、基準のタイミングから上記各部位がバルブリフタ12a,13aに接触するタイミングまでの経過時間が計測される。そして、上記変動が顕著でない各部位についての上記経過時間から上記理論上の回転位相を求め、これによって上記変動の顕著な部位についての上記経過時間の上記理論回転位相での経過時間(理論値)を推定する。その後、上記変動の顕著な部位における上記経過時間の実測値と上記理論値との差を上記変動として検出する。
【選択図】 図1
【解決手段】バルブ開閉時のカムシャフト14,15には、平均回転速度で等速回転させたときの理論上回転位相に対する実際の回転位相の変動が発生する。また、カムシャフト14,15の周方向所定部位について、基準のタイミングから上記各部位がバルブリフタ12a,13aに接触するタイミングまでの経過時間が計測される。そして、上記変動が顕著でない各部位についての上記経過時間から上記理論上の回転位相を求め、これによって上記変動の顕著な部位についての上記経過時間の上記理論回転位相での経過時間(理論値)を推定する。その後、上記変動の顕著な部位における上記経過時間の実測値と上記理論値との差を上記変動として検出する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用エンジンなどの内燃機関においては、クランクシャフトの回転が伝達されて吸気バルブや排気バルブといった機関バルブを開閉駆動すべく回転するカムシャフトが設けられている。また近年は、内燃機関の出力向上や排気エミッションの改善等を目的として、機関バルブのバルブタイミングを変更する可変動弁機構を備えたものが実用化されている。こうした可変動弁機構では、クランクシャフトの回転に基づき駆動されるオイルポンプからの吐出オイルを進角側油圧室と遅角側油圧室とに選択的に供給し、そのオイルの油圧でクランクシャフトの回転に対するカムシャフトの相対回転位相を進角側又は遅角側に変更するようにしている。
【0003】
ところで、機関バルブを開閉すべくカムシャフトを回転させるときには、機関バルブのバルブスプリングの弾性力によって、カムシャフトに対し回転方向と逆方向又は同方向のトルクが働くことになる。即ち、カムシャフトの回転に伴いカムが機関バルブを押して開くときには、機関バルブのバルブスプリングの弾性力によってカムシャフトには回転方向と逆方向のトルクが働く。一方、カムが機関バルブを押しきった後にカムシャフトの回転に伴い機関バルブが閉じるときには、機関バルブのバルブスプリングの弾性力によってカムシャフトには回転方向と同方向のトルクが働く。このようにカムシャフトに回転方向と逆方向のトルクや回転方向と同方向のトルクが働くと、カムシャフトの回転速度が低下したり上昇したりして、カムシャフトの回転位相に影響を及ぼすことになる。
【0004】
カムシャフトの回転位相については、基準とするタイミングからカムシャフトの周方向各部位が例えば機関バルブに対応する回転位置に達するタイミングまでの経過時間によって表すことが可能である。仮に、カムシャフトの回転位相が同シャフトを平均回転速度で等速回転させたときの理論上の回転位相と一致していれば、上記各部位についての経過時間はカムシャフトの回転方向前側の部位から後側の部位に向かって一定の割合で長くなってゆく。しかし、実際には機関バルブの開閉に伴いカムシャフトの回転速度が変動するため、実際の回転位相が上記理論上の回転位相に対して変動し、上記各部位のうち当該変動が顕著な部位については上記経過時間が上記理論上の回転位相のときに比べて長くなったり短くなったりする。
【0005】
こうした機関バルブの開閉に伴う上記実際の回転位相の上記理論上の回転変動に対する変動は、可変動弁機構を備えた内燃機関で特に顕著に現れる。これは、可変動弁機構を備えた内燃機関では、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相が進角側油圧室及び遅角側油圧室に充填されたオイルによって保持されることから、上記トルクがカムシャフトの回転速度に対し大きな影響を及ぼす可能性があるためである。従って、機関バルブの開閉に伴い上記トルクがカムシャフトに作用したとき、機関運転状態によってはカムシャフトの実際の回転位相の上記理論上の回転位相に対する変動が適正状態よりも大となる可能性がある。
【0006】
ここで、上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動が大となり易い機関運転状態としては、例えばアイドル運転時など機関バルブのバルブタイミングがその変更範囲の境界に保持される状況があげられる。
【0007】
この場合、進角側油圧室と遅角側油圧室とのうちの一方の油圧が高められ、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相(機関バルブのバルブタイミング)がその変更範囲の境界で保持されるよう、上記油圧によってカムシャフトの押し付けが行われる。ただし、このときにも進角側油圧室と遅角側油圧室とのうちの他方には、ある程度のオイルが供給され続け、このオイルの油圧によって上述したカムシャフトの押し付けとは反対方向への押し付けも行われる。これは、機関バルブのバルブタイミングをその変更範囲の上記境界とは反対側の境界に向けて変更する際、その動作の応答性を良好なものとするためである。
【0008】
従って、この場合は、機関バルブのバルブタイミングが変更範囲の境界に保持されるようカムシャフトを押し付ける力が、上記進角側油圧室と遅角側油圧室とのうちの他方に供給されるオイルの油圧に対応する分だけ小さくなる。更に、アイドル運転時は、もともと機関回転速度が低くオイルポンプから吐出されるオイルの油圧が低い状態にある。これらのことから、アイドル運転時には、機関バルブの開閉に伴いカムシャフトにトルクが作用するとき、同シャフトの回転速度の適正状態に対する変動が大きくなる可能性がある。そして、カムシャフトの回転速度の適正状態に対する変動の増大に伴い、カムシャフトの実際の回転位相の上記理論上の回転位相に対する変動が適正状態よりも大きくなると、可変動弁機構で打音が発生したり、機関バルブのバルブタイミングの適正状態からのずれが大きくなって機関運転に影響を及ぼすおそれがある。
【0009】
そこで、特許文献1に示されるように、カムシャフトに機関バルブの開閉に伴うトルクが作用することを考慮し、進角側油圧室及び遅角側油圧室の油圧を補正することも考えられる。この場合、上記補正用のデータとしてカムシャフトの回転位置と同シャフトに作用するトルクとの関係に基づいた補正用データを予め記憶しておき、同データを用いて進角側油圧室及び遅角側油圧室の油圧が補正される。このため、機関バルブの開閉に伴いカムシャフトに作用するトルクによって同シャフトの回転速度の適正状態に対する変動が大となるのを抑制するよう、進角側油圧室及び遅角側油圧室に作用する油圧を補正することができる。その結果、カムシャフトの上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動が適正状態よりも大となることに伴い、上述した不具合が生じるのを抑制することができるようになる。
【0010】
【特許文献1】
特開平9−144571公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ただし、上記補正用データは、カムシャフトの回転位置と同シャフトに作用するトルクとの関係に基づいて予め決定したものにすぎない。このため、同補正用データに基づく油圧の補正が実際の内燃機関の運転状況全てにおいて適切であるとは限らず、場合によっては上記油圧の補正が不足したり過剰になったりすることが考えられる。
【0012】
例えば、カムシャフトの回転位置が所定の位置にあるとき、実際に同シャフトに作用する機関バルブの開閉に伴うトルクが上記補正用データ上で想定された値と同じであっても、そのときの機関回転速度や油温によって進角側油圧室及び遅角側油圧室の油圧は異なる。このため、カムシャフトの相対回転位相を保持する力が異なるものとなり、同シャフトの回転速度の変動の大きさも異なるものとなることから、カムシャフトの上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動も異なるものとなる。従って、同変動を抑制するための上記補正用データに基づき、進角側油圧室及び遅角側油圧室の油圧を補正したとしても、その補正が不足したり過剰になったりする。
【0013】
このように、予め決定された上記補正用データに基づく進角側油圧室及び遅角側油圧室の油圧の補正では、機関運転状況によって様々に変化する機関バルブ開閉時の実際のカムシャフトの回転速度の変動、即ち上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動を適切に許容レベル未満に抑制することは困難である。従って、内燃機関の運転状況によっては、上記変動が許容レベル以上に増大しているとき、それに対し適切に対策を講じることができないという事態が生じる。
【0014】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、機関バルブの開閉に伴うカムシャフトの実際の回転位相の理論上の回転位相に対する変動を検出することができ、当該変動の増大に対して適切に対策を講じることの可能な内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、内燃機関の機関バルブを開閉動作すべく回転するカムシャフトと、同機関のクランクシャフトに対する前記カムシャフトの相対回転位相を変更する可変動弁機構とを備え、前記機関バルブの開閉に伴い、前記カムシャフトの実際の回転位相が同シャフトの平均回転速度での等速回転時の理論上の回転位相に対して変動する内燃機関の制御装置において、前記カムシャフトの回転位相については、基準とするタイミングから前記カムシャフトの周方向各部位が前記機関バルブに対応する回転位置に達するタイミングまでの経過時間によって表されるものであり、前記カムシャフトの周方向各部位のうち、前記実際の回転位相の前記理論上の回転位相に対する変動が顕著でない部位についての前記経過時間から前記理論上の回転位相を求め、これによって前記変動の顕著な部位についての前記理論上の回転位相での前記経過時間の理論値を推定する推定手段と、前記変動の顕著な部位についての前記経過時間の実測値と前記理論値との差を、前記理論上の回転位相に対する前記実際の回転位相の変動として検出する検出手段とを備えた。
【0016】
機関バルブの開閉時には、それに伴うトルクをカムシャフトが受けるため、同シャフトの回転速度が低下したり上昇したりするようになる。このカムシャフトの回転速度の変動によって、同シャフトの上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動が生じるが、当該変動態様は内燃機関の運転状況に応じて様々である。ここで、カムシャフトにおける周方向各部位のうち、上記変動の顕著でない部位についての上記経過時間は上記理論上の回転位相のときとほとんど変わらない値をとる。このため、上記変動の顕著でない部位についての上記経過時間から上記理論上の回転位相を求めることができ、これによって上記変動の顕著な部位についての上記理論上の回転位相での上記経過時間の理論値が推定される。一方、カムシャフトにおける周方向各部位のうち、上記変動の顕著な部位についての上記経過時間は上記理論上の回転位相のときに比べて長くなったり短くなったりする。そして、上記変動が顕著な部位についての上記経過時間の実測値と理論値との差が、上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動として検出される。こうして、上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動を検出することができるため、その変動が適正状態に対し増大したときに適切に対策を講じることが可能になる。
【0017】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記理論上の回転位相に対する前記実際の回転位相の変動が機関運転状態に応じて可変設定される適正値に対し所定量以上離れているか否かに基づき、前記変動が許容レベル以上かどうかを判断する判断手段を更に備えた。
【0018】
機関回転速度の変化に伴うカムシャフトの平均回転速度の変化など、機関運転状態によって上記変動の適正値は異なるものとなる。しかし、それに対応して当該適正値を可変設定することができるため、上記変動が許容レベル以上かどうかを適切に判断することができ、上記変動が許容レベル以上であるときに適切に対策を講じることができる。
【0019】
請求項3記載の発明において、請求項1又は2記載の発明において、前記推定手段は、前記変動の顕著でない部位についての前記経過時間として同経過時間を複数回求めて平均したものを用いて前記理論上の回転位相を求め、これによって前記変動の顕著な部位についての前記理論上の回転位相での前記経過時間の理論値を推定するものとした。
【0020】
上記のように変動の顕著でない部位についての上記経過時間を求めることにより、仮に一度の経過時間の計測に誤差が生じたりしても、その誤差による影響を最小限に抑えることができ、上記のように推定される理論値が不適切な値になることはなくなる。
【0021】
請求項4記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記検出手段は、前記変動の検出に用いられる前記経過時間の実測値と前記理論値との差として、当該差を複数回求めて平均したものを用いることを要旨とした。
【0022】
上記のように経過時間の実測値と理論値との差を求めることにより、仮に一度の当該差の算出時に誤差が生じたりしても、その誤差による影響を最小限に抑えることができ、上記のように求められる差が不適切な値になることはなくなる。
【0023】
請求項5記載の発明では、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記検出手段は、内燃機関の定常運転中と判断されるとき、前記変動の検出を行うものとした。
【0024】
内燃機関の定常運転中に上記変動の検出を行うことで、検出された変動は機関運転の急変による影響を受けていない値となり、同変動を信頼性の高い値とすることができる。
【0025】
請求項6記載の発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記可変動弁機構は、前記クランクシャフトの回転に基づき駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルの油圧により前記カムシャフトの相対回転位相を進角側又は遅角側に変更し、内燃機関のアイドル運転状態にあっては前記カムシャフトの相対回転位相をその変更範囲の境界に保持するものであって、前記検出手段は、内燃機関のアイドル運転時に、前記変動の検出を行うものとした。
【0026】
アイドル運転時には、カムシャフトの相対回転位相がその変更範囲の境界に保持されるよう油圧による力をカムシャフトに作用させることになるが、当該相対回転位相を上記境界とは逆方向に変更する際の応答性を確保するため、上記油圧による力とは逆方向にも油圧による力が作用させられることになる。このため、カムシャフトの相対回転位相を上記境界に保持するために同シャフトに作用する油圧による力は、上述したように逆方向に作用する油圧による力の分だけ小さくなる。また、アイドル運転時には、もともと機関回転速度が低くオイルポンプから吐出されるオイルの油圧が低い状態になる。これらのことから、アイドル運転時には、機関バルブの開閉に伴うカムシャフトの回転速度の変動が大きくなり、上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動が大きくなる可能性がある。しかし、このとき上記変動の検出が行われるため、当該検出に基づき上記変動が適正状態よりも増大したとき、適切に対策を講じることができる。
【0027】
請求項7記載の発明では、請求項6記載の内燃機関の制御装置において、
前記変動が許容レベル以上である旨判断されるとき、前記カムシャフトの相対回転位相をその境界に保持する力が大きくなるよう前記可変動弁機構を制御する制御手段を更に備えた。
【0028】
アイドル運転時には、カムシャフトの相対回転位相がその変更範囲の境界に保持されるよう油圧による力がカムシャフトに作用するが、このときに上記変動が許容レベル以上になると、その対策として上記油圧による力が大きくされ、当該変動が抑制されるようになる。
【0029】
請求項8記載の発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置において、前記変動が許容レベル以上である旨判断されるとき、内燃機関の運転制御に用いられるパラメータを同機関の運転を安定させる方向に変更する制御手段を更に備えた。
【0030】
カムシャフトの上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動が許容レベル以上になると、機関バルブが機関運転にとって適切でないタイミングで開閉するようになり、機関運転状態の悪化に繋がる。しかし、この対策として内燃機関の運転制御に用いられるパラメータが同機関の運転を安定させる方向に変更され、上記変動に伴う機関運転状態の悪化が抑制されるようになる。
【0031】
請求項9記載の発明では、請求項8記載の発明において、前記内燃機関は複数の気筒を備え、前記制御手段は、内燃機関の運転を安定させる方向への前記パラメータの変更を各気筒毎に実行するものとした。
【0032】
複数の気筒を備える内燃機関にあっては、カムシャフトの上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動の増大による影響が各気筒によって異なるものとなる。上記構成によれば、カムシャフトの上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動が許容レベル以上であるとき、各気筒毎に機関運転を安定させる方向への上記パラメータの変更が行われるため、同変更を各気筒毎に最適なものとすることができる。
【0033】
請求項10記載の発明では、請求項8記載の発明において、前記内燃機関は、複数のシリンダブロックを備えるとともに各シリンダブロックに対応してカムシャフトを備え、前記検出手段は、それらカムシャフトの前記理論上の回転位相に対する前記実際の回転位相の変動をそれぞれ検出するものであり、前記制御手段は、許容レベル以上の前記変動が生じているカムシャフトに対応するシリンダブロックの気筒に対し、内燃機関の運転を安定させる方向への前記パラメータの変更を実行するものとした。
【0034】
複数のシリンダブロックを備える内燃機関にあっては、各シリンダブロックに対応してカムシャフトが設けられており、それぞれのカムシャフトにおいて上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動が大きくなる可能性がある。上記構成によれば、同変動が許容レベル以上になったカムシャフトに対応したシリンダブロックの気筒に対し、機関運転を安定させる方向への上記パラメータの変更が行われ、上記変動の増大に対し適切に対策を講じることができるようになる。
【0035】
請求項11記載の発明において、請求項8記載の発明において、前記内燃機関は、吸気用の機関バルブに対応した吸気カムシャフトと、排気用の機関バルブに対応した排気カムシャフトとを備え、前記検出手段は、それらカムシャフトの前記理論上の回転位相に対する前記実際の回転位相の変動をそれぞれ検出するものであり、前記制御手段は、前記吸気カムシャフトの前記変動が許容レベル以上である旨判断されるときに同判断に対応して前記パラメータの機関運転安定方向への変更を行い、前記排気カムシャフトの前記変動が許容レベル以上である旨判断されるとき同判断に対応して前記パラメータの機関運転安定方向への変更を行うものとした。
【0036】
吸気カムシャフトと排気カムシャフトとを備える内燃機関にあっては、それらカムシャフト各々に上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動が大きくなる可能性がある。そして、吸気カムシャフトで上記変動が大きくなる場合と排気カムシャフトで上記変動が大きくなる場合とでは、内燃機関への影響が異なるものとなる。しかし、上記構成によれば、吸気カムシャフトでの上記変動に対応した上記パラメータの変更と、排気カムシャフトでの上記変動に対応した上記パラメータの変更とを、互いに異なるものとすることができる。従って、吸気カムシャフトでの上記変動と排気カムシャフトでの上記変動とに対し、それぞれ適切に内燃機関の運転を安定させる方向への上記パラメータの変更を行うことができ、それらカムシャフト各々についての上記変動の増大に対し適切に対策を講じることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、本発明を自動車用のV型六気筒エンジンに適用した第1実施形態を図1〜図11に従って説明する。
【0038】
図1に示されるV型六気筒のエンジン1は、一番気筒#1、三番気筒#3、及び五番気筒#5(一番気筒#1のみ図示)を有する第1バンク2と、二番気筒#2、四番気筒#4、及び六番気筒#6(二番気筒#2のみ図示)を有する第2バンク3とを備えている。各気筒#1〜#6の吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程は、一番気筒#1、二番気筒#2、三番気筒#3、四番気筒#4、五番気筒#5、六番気筒#6の順で行われることとなる。
【0039】
エンジン1の第1及び第2バンク2,3は、それぞれシリンダブロック4を備えている。そして、第1バンク2のシリンダブロック4には一番気筒#1、三番気筒#3、及び五番気筒#5のピストン5が設けられ、第2バンク3のシリンダブロック4には二番気筒#2、四番気筒#4、及び六番気筒#6のピストン5が設けられている。
【0040】
一番〜六番気筒#1〜#6の燃焼室6には吸気通路7及び排気通路8が接続されている。そして、吸気通路7を通過する空気と燃料噴射弁9から噴射された燃料とからなる混合気が燃焼室6に充填され、同混合気が点火プラグ10による点火に基づき燃焼すると、そのときの燃焼エネルギによってピストン5が往復移動するとともに、エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11が回転する。また、燃焼後の混合気は、排気として排気通路8に送り出されるようになる。
【0041】
燃焼室6と吸気通路7との間は吸気バルブ12の開閉駆動によって連通・遮断され、燃焼室6と排気通路8との間は排気バルブ13の開閉駆動によって連通・遮断される。エンジン1には、各バンク2,3のシリンダブロック4毎に吸気バルブ12を開閉駆動するための吸気カムシャフト14、及び排気バルブ13を開閉駆動するための排気カムシャフト15が設けられている。これら吸気カムシャフト14、及び排気カムシャフト15には、クランクシャフト11の回転が伝達される。
【0042】
吸気カムシャフト14が回転すると、それに伴い吸気バルブ12のバルブエンドに当接するバルブリフタ12aが同シャフト14のカムによって押され、吸気バルブ12が開弁する。その後、バルブリフタ12aが吸気カムシャフト14のカムによって押されきると、今度はバルブスプリング12bの弾性力によって吸気バルブ12が閉弁する。こうした吸気バルブ12の開閉は吸気行程で行われることとなる。また、排気カムシャフト15が回転すると、それに伴い排気バルブ13のバルブエンドに当接するバルブリフタ13aが同シャフト15のカムによって押され、排気バルブ13が開弁する。その後、バルブリフタ13aが排気カムシャフト15のカムによって押されきると、今度はバルブスプリング13bの弾性力によって排気バルブ13が閉弁する。こうした排気バルブ13の開閉は排気行程で行われることとなる。
【0043】
エンジン1には、クランクシャフト11の回転に対する吸気カムシャフト14の相対回転位相を変更すべく油圧駆動される吸気側可変動弁機構16と、クランクシャフト11の回転に対する排気カムシャフト15の相対回転位相を変更すべく油圧駆動される排気側可変動弁機構17とが設けられている。これらの機構17,18の油圧駆動により、クランクシャフト11に対する吸気カムシャフト14及び排気カムシャフト15の相対回転位相が変更されると、吸気バルブ12及び排気バルブ13のバルブタイミングが変更されるようになる。
【0044】
エンジン1が搭載される自動車には、吸気バルブ12及び排気バルブ13のバルブタイミング制御、燃料噴射弁9から噴射される燃料の燃料噴射量制御、及び点火プラグ10による点火についての点火時期制御など、エンジン1の運転制御を行う電子制御装置18が設けられている。この電子制御装置18には、以下に示す各種センサからの検出信号が入力される。
【0045】
・クランクシャフト11が回転するとき、同シャフト11に取り付けられたクランクロータ19の通過に対応した信号を、同シャフト11の回転に対応する信号として出力するクランクポジションセンサ20。
【0046】
・第1バンク2の吸気カムシャフト14が回転するとき、同シャフト14に取り付けられたカムロータ21の通過に基づく信号を、同シャフト14の回転位置に対応した信号として出力するカムポジションセンサ22。
【0047】
・第1バンク2の排気カムシャフト15が回転するとき、同シャフト15に取り付けられたカムロータ23の通過に基づく信号を、同シャフト15の回転位置に対応した信号として出力するカムポジションセンサ24。
【0048】
・第2バンク3の吸気カムシャフト14が回転するとき、同シャフト14に取り付けられたカムロータ25の通過に基づく信号を、同シャフト14の回転位置に対応した信号として出力するカムポジションセンサ26。
【0049】
・第2バンク3の排気カムシャフト15が回転するとき、同シャフト15に取り付けられたカムロータ27の通過に基づく信号を、同シャフト15の回転位置に対応した信号として出力するカムポジションセンサ28。
【0050】
次に、吸気カムシャフト14及び排気カムシャフト15について、図2及び図3を参照して詳しく説明する。
図2は、吸気バルブ12を開閉するのに用いられるカムの吸気カムシャフト14に対する位置関係を示すために、同吸気カムシャフト14をその軸線方向から見た図である。
【0051】
同図に示されるように、吸気カムシャフト14には、その軸線から離れる方向に突出するカムノーズ31を備えたカム32〜34が三つの気筒に対応して設けられている。なお、ここでいう三つの気筒は、上記吸気カムシャフト14を第1バンク2で用いる場合には一番気筒#1、三番気筒#3、五番気筒#5になり、同吸気カムシャフト14を第2バンク3で用いる場合には二番気筒#2、四番気筒#4、六番気筒#6になる。
【0052】
これらカム32〜34のカムノーズ31は、吸気カムシャフト14の周方向について互いの間に等しい間隔をおいて、即ち同シャフト14の軸線を中心とする120°という間隔をおいて存在している。そして、吸気カムシャフト14がクランクシャフト11からの回転伝達に基づき例えば図中において右回転すると、各カム32〜34のカムノーズ31が吸気バルブ12のバルブリフタ12aに対応して位置したとき、吸気バルブ12が開弁状態とされることになる。
【0053】
カムノーズ31がバルブリフタ12aを押し始めてから同バルブリフタ12aにカムノーズ31の先端が接触するまでの間、即ち吸気バルブ12における開弁開始から全開への過程では、バルブスプリング12bの弾性力が吸気カムシャフト14に対しその回転を妨げるように作用する。このため、当該過程においては、吸気カムシャフト14に回転方向とは逆方向のトルクが働くことになる。また、カムノーズ31の先端がバルブリフタ12aに接触してから同バルブリフタ12aへのカムノーズ31の押し付けが終わるまでの間、即ち吸気バルブ12における閉弁開始から全閉への過程では、バルブスプリング12bの弾性力が吸気カムシャフト14に対しその回転を進めるように作用する。このため、当該過程においては、吸気カムシャフト14に回転方向と同方向のトルクが働くことになる。このように吸気カムシャフト14に回転方向と逆方向のトルクや回転方向と同方向のトルクが働くと、吸気カムシャフト14の回転速度が低下したり上昇したりして、吸気カムシャフト14の回転位相に影響を及ぼすことになる。
【0054】
吸気カムシャフト14の回転位相については、基準とするタイミングから吸気カムシャフト14の周方向各部位、例えば図2の位置P1〜P12に対応する部位が吸気バルブ12(バルブリフタ12a)に対応した位置に達するタイミングまでの経過時間によって表すことが可能である。仮に、吸気カムシャフト14の回転位相が同シャフト14を平均回転速度で等速回転させたときの理論上の回転位相と一致していれば、位置P1〜P12に対応する部位についての経過時間は位置P1から位置P12に向かって一定の割合で長くなってゆく。しかし、実際には吸気バルブ12の開閉に伴い吸気カムシャフト14の回転速度が変動するため、実際の回転位相が上記理論上の回転位相に対して変動し、上記各部位のうち当該変動が顕著な部位については上記経過時間が上記理論上の回転位相のときと比べて長くなったり短くなったりする。
【0055】
位置P1〜P12に対応する各部位のうち、上記変動が顕著な部位としては、吸気カムシャフト14においてカムノーズ31の側部に位置する位置P2,P4,P6,P8,P10,P12に対応する部位があげられる。これらの部位が吸気バルブ12に対応して位置しているときには、所定量の吸気カムシャフト14の回転に対する吸気バルブ12の開閉量が多くなり、同シャフト14に働くトルクの変化量が大きくなる。このトルクの変化量が大きいほど吸気カムシャフト14の回転速度の変動が大となる傾向があるため、上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動が顕著な部位として、位置P2,P4,P6,P8,P10,P12に対応する部位があげられるのである。
【0056】
一方、位置P1〜P12に対応する各部位のうち、上記変動が顕著でない部位としては、吸気カムシャフト14において周方向に隣り合うカムノーズ31の中間に位置する位置P1,P5,P9に対応する部位、及び各カムノーズ31の先端の位置P3,P7,P11に対応する部位があげられる。これらの部位が吸気バルブ12に対応して位置しているときには、所定量の吸気カムシャフト14の回転に対する吸気バルブ12の開閉量があまり大きくならず、同シャフト14に働くトルクの変化量が小さくなる。このトルクの変化量が小さいときには、吸気カムシャフト14の回転速度の変動がほとんど生じないため、上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動が顕著でない部位として、位置P1,P3,P5,P7,P9,P11に対応する部位があげられるのである。
【0057】
図3は、排気バルブ13を開閉するのに用いられるカムの排気カムシャフト15に対する位置関係を示すために、同排気カムシャフト15をその軸線方向から見た図である。
【0058】
同図に示される排気カムシャフト15は、クランクシャフト11からの回転伝達に基づき例えば図中右回転するようになる。この排気カムシャフト15にも、吸気カムシャフト14と同様にカムノーズ31を備えたカム32〜34が三つの気筒に対応して設けられている。なお、ここでいう三つの気筒は、上記排気カムシャフト15を第1バンク2で用いる場合には一番気筒#1、三番気筒#3、五番気筒#5になり、同排気カムシャフト15を第2バンク3で用いる場合には二番気筒#2、四番気筒#4、六番気筒#6になる。
【0059】
これらカム32〜34のカムノーズ31の排気カムシャフト15に対する位置関係は、吸気カムシャフト14の場合と同様となっている。ただし、排気カムシャフト15におけるカムノーズ31の同シャフト15の回転方向についての位置は、吸気カムシャフト14のカムノーズ31の同シャフト14の回転方向についての位置に対し270°遅れた状態となっている。そして、排気カムシャフト15の回転時に、カムノーズ31が排気バルブ13のバルブリフタ13aに押し付けられて排気バルブ13に開弁方向への力が作用すること、及び、バルブスプリング13bの弾性力が排気バルブ13に閉弁方向への力として作用することにより、同バルブ13が開閉動作する。
【0060】
排気バルブ13が開閉動作するとき、排気カムシャフト15には、バルブスプリング13bの弾性力に基づき、同シャフト15の回転方向と逆方向のトルクや回転方向と同方向のトルクが働く。このため、排気カムシャフト15においても、その回転速度が吸気カムシャフト14と同様に低下したり上昇したりして、排気カムシャフト15の回転位相に影響を及ぼすことになる。即ち、排気バルブ13の開閉に伴い排気カムシャフト15の回転速度が変動すると、排気カムシャフト15の回転位相が同シャフト15を平均回転速度で等速回転させたときの理論上の回転位相に対し変動する。また、排気カムシャフト15には吸気カムシャフト14と同じ態様でカム32〜34が設けられているため、排気カムシャフト15においても、吸気カムシャフト14の場合と同じ態様で、上記変動の顕著な部位、及び同変動の顕著でない部位が生じる。
【0061】
次に、吸気側可変動弁機構16及び排気側可変動弁機構17、並びに、それら機構16,17を油圧駆動するための油圧回路について、図4及び図5を参照して詳しく説明する。
【0062】
図4は、吸気側可変動弁機構16の内部構造、及び同機構16を油圧駆動する油圧回路を示している。同図に示されるように、吸気側可変動弁機構16は、吸気カムシャフト14の軸線上に設けられて同シャフト14に固定される回転部材41と、回転部材41と同軸上に設けられてクランクシャフト11に対しベルト等を介して連結されるリングカバー42とを備えている。回転部材41の外周部には複数のベーン43が形成され、これらベーン43によりリングカバー42内が進角側油圧室44と遅角側油圧室45とに区画されている。
【0063】
吸気側可変動弁機構16を油圧駆動するためのオイル供給を行う油圧回路は、進角側油圧室44に接続される進角側油路46と、遅角側油圧室45に接続される遅角側油路47とを備えている。そして、これら油路46,47は、オイルコントロールバルブ(OCV)48、供給通路49、及び排出通路50を介して、エンジン1のオイルパン51に繋がっている。
【0064】
上記供給通路49には、クランクシャフト11に連結されて同シャフト11の回転に基づき駆動されるオイルポンプ52が接続されている。また、上記OCV48は、互いに逆方向に働くコイルスプリング53及び電磁ソレノイド54の付勢力によって切換動作し、供給通路49及び排出通路50と進角側油路46及び遅角側油路47との接続状態を変更する。OCV48の駆動制御は、上記電子制御装置18を通じて、電磁ソレノイド54に対する電圧印可をデューティ制御することによって行われる。このデューティ制御ではデューティ比が用いられ、同デューティ比を所定範囲内で変更することにより電磁ソレノイド54に対する印可電圧が変更される。これにより、OCV48の駆動電流(電磁ソレノイド54を流れる電流)が調整され、OCV48が供給通路49及び排出通路50と進角側油路46及び遅角側油路47との接続状態を変更するための切り換え動作を行うようになる。
【0065】
デューティ比が上記所定範囲における最小値にされる場合、進角側油圧室44及び遅角側油圧室45に対するオイルの給排態様が、以下の態様をとるようOCV48の切り換え動作が行われる。即ちオイルパン51内からオイルポンプ52によって供給通路49に吐出されたオイルのうち、遅角側油路47を介して遅角側油圧室45に供給されるオイルの量が最大となるようにされる。また、このときには進角側油圧室44内から進角側油路46及び排出通路50等を介してオイルパン51に戻されるオイルの量も最大となるようにされる。
【0066】
その結果、遅角側油圧室45内の油圧による力に基づき、ベーン43が遅角側(図中左回転方向)に押され、クランクシャフト11の回転に対する吸気カムシャフト14の相対回転位相がその変更範囲の遅角側の境界に保持される。即ち、当該保持が行われるよう上記油圧によって吸気カムシャフト14(ベーン43)の遅角側への押し付けが行われ、これにより吸気バルブ12のバルブタイミングが最遅角状態に保持されるようになる。吸気バルブ12のバルブタイミングが最遅角状態に保持される状況としては、吸気バルブ12と排気バルブ13のバルブオーバラップ量を大きくすることで、良好なエンジン運転を確保する必要のあるアイドル運転時があげられる。
【0067】
なお、上記のようにデューティ比が最小値であって、クランクシャフト11に対する吸気カムシャフト14の相対回転位相がその変更範囲の遅角側の境界に保持された状態にあっても、進角側油路46(進角側油圧室44)に向けてある程度のオイル供給が続けられる。即ち、そのようにOCV48等を予め設定することで、進角側油圧室44内の油圧による力での吸気カムシャフト14の進角側への押し付けを行い、その分だけ遅角側油圧室45内の油圧による力での同シャフト14の遅角側への押し付けを弱めるようにしている。これを行うのは、エンジン回転速度が低いためにオイルポンプ52から吐出されるオイルの油圧が低くなるアイドル運転時に、吸気バルブ12のバルブタイミングを最遅角での保持状態から進角側に変更する際、その動作の応答性を良好なものとするためである。
【0068】
一方、デューティ比が上記所定範囲における最大にされた場合、進角側油圧室44及び遅角側油圧室45に対するオイルの給排態様が、以下の態様をとるようOCV48の切り換え動作が行われる。即ち、オイルパン51内からオイルポンプ52によって供給通路49に吐出されたオイルのうち、進角側油路46を介して進角側油圧室44に供給されるオイルの量が最大となるようにされる。また、このときには遅角側油圧室45内から遅角側油路47及び排出通路50を介してオイルパン51に戻されるオイルの量も最大となるようにされる。
【0069】
その結果、進角側油圧室44内の油圧による力に基づき、ベーン43が進角側(図中右回転方向)に押され、クランクシャフト11の回転に対する吸気カムシャフト14の相対回転位相がその変更範囲の進角側の境界に保持される。即ち、当該保持が行われるよう上記油圧によって吸気カムシャフト14(ベーン43)の押し付けが行われ、これにより吸気バルブ12のバルブタイミングが最進角状態に保持されるようになる。吸気バルブ12のバルブタイミングを最進角状態に保持される状況としては、高負荷時にエンジン1の吸気充填効率を向上すべく吸気バルブ12の開弁期間を極力進角させるという状況があげられる。
【0070】
また、デューティ比が上記所定範囲の最小値と最大値との間の値にされた場合、その値が大きくなるほど進角側油圧室44内の油圧が高くされるとともに遅角側油圧室45内の油圧が低くされ、逆に上記値が小さくなるほど進角側油圧室44内の油圧が低くされるとともに遅角側油圧室45内の油圧が高くされる。従って、クランクシャフト11の回転に対する吸気カムシャフト14の相対回転位相については、上記デューティ比が大きくなるほど進角側に変更され、逆に当該デューティ比が小さくなるほど遅角側に変更されることとなる。
【0071】
図5は、排気側可変動弁機構17の内部構造、及び同機構17を油圧駆動する油圧回路を示している。同図に示される排気側可変動弁機構17は、吸気側可変動弁機構16とほぼ同じ構成となっており、回転部材61、リングカバー62、ベーン63、進角側油圧室64、及び遅角側油圧室65を備えている。ただし、排気側可変動弁機構17においては、上記回転部材61が排気カムシャフト15に固定されるとともに、回転部材61を進角側(図中右回転方向)付勢するばね61aが設けられている。
【0072】
排気側可変動弁機構17を油圧駆動するためのオイル供給を行う油圧回路も、吸気側可変動弁機構16を油圧駆動するための油圧回路とほぼ同じ構成となっており、進角側油路66、遅角側油路67、オイルコントロールバルブ(OCV)68、供給通路69、及び排出通路70を備えている。なお、上記供給通路69はオイルポンプ52に接続されている。また、OCV68に対する進角側油路66及び遅角側油路67の接続位置が、OCV48に対する進角側油路46及び遅角側油路67の接続位置とは逆になっている。
【0073】
上記OCV68は、コイルスプリング71及び電磁ソレノイド72の付勢力によって切換動作し、供給通路69及び排出通路70と進角側油路66及び遅角側油路67との接続状態を変更するものである。OCV68の駆動制御は、上記電子制御装置18を通じて、電磁ソレノイド72に対する電圧印可をデューティ制御することによって行われる。このデューティ制御でも、デューティ比を所定範囲内で変更することにより、電磁ソレノイド72に対する印可電圧が変更される。これにより、OCV68の駆動電流(電磁ソレノイド72を流れる電流)が調整され、OCV68が供給通路69及び排出通路70と進角側油路66及び遅角側油路67との接続状態を変更するための切り換え動作を行うようになる。
【0074】
デューティ比が上記所定範囲における最小値にされる場合、進角側油圧室64及び遅角側油圧室65に対するオイルの給排態様が、以下の態様をとるようOCV68の切り換え動作が行われる。即ちオイルパン51内からオイルポンプ52によって供給通路69に吐出されたオイルのうち、進角側油路66を介して進角側油圧室64に供給されるオイルの量が最大となるようにされる。また、このときには遅角側油圧室65内から遅角側油路67及び排出通路70等を介してオイルパン51に戻されるオイルの量も最大となるようにされる。
【0075】
その結果、進角側油圧室64内の油圧による力に基づき、ベーン63が進角側(図中右回転方向)に押され、クランクシャフト11の回転に対する排気カムシャフト15の相対回転位相がその変更範囲の進角側の境界に保持される。即ち、当該保持が行われるよう上記油圧によって排気カムシャフト15(ベーン63)の進角側への押し付けが行われ、これにより排気バルブ13のバルブタイミングが最進角状態に保持されるようになる。また、このときの排気カムシャフト15には、排気バルブ13を開閉駆動する際の摩擦抵抗等によって、同シャフト15を遅角側に変更させようとする力が働くが、この力は上記ばね61aの付勢力によって打ち消される。排気バルブ13のバルブタイミングが最進角状態に保持される状況としては、吸気バルブ12と排気バルブ13のバルブオーバラップ量を大きくすることで、良好なエンジン運転を確保する必要のあるアイドル運転時があげられる。
【0076】
なお、上記のようにデューティ比が最小値であって、クランクシャフト11に対する排気カムシャフト15の相対回転位相がその変更範囲の進角側の境界に保持された状態にあっても、遅角側油路67(遅角側油圧室65)に向けてある程度のオイル供給が続けられる。即ち、そのようにOCV68等を予め設定することで、遅角側油圧室65内の油圧による力で排気カムシャフト15の遅角側への押し付けを行い、その分だけ進角側油圧室64内の油圧による力での同シャフト15の進角側への押し付けを弱めるようにしている。これを行うのは、エンジン回転速度が低いためにオイルポンプ52から吐出されるオイルの油圧が低くなるアイドル運転時に、排気バルブ13のバルブタイミングを最進角での保持状態から遅角側に変更する際、その動作の応答性を良好なものとするためである。
【0077】
一方、デューティ比が上記所定範囲における最大にされた場合、進角側油圧室64及び遅角側油圧室65に対するオイルの給排態様が、以下の態様をとるようOCV48の切り換え動作が行われる。即ち、オイルパン51からオイルポンプ52によって供給通路69に吐出されたオイルのうち、遅角側油路67を介して遅角側油圧室65に供給されるオイルの量が最大となるようにされる。また、このときには進角側油圧室64内から遅角側油路67及び排出通路70を介してオイルパン51に戻されるオイルの量も最大となるようにされる。
【0078】
その結果、遅角側油圧室65内の油圧による力に基づき、ベーン43が遅角側(図中左回転方向)に押され、クランクシャフト11の回転に対する排気カムシャフト15の相対回転位相がその変更範囲の遅角側の境界に保持される。即ち、当該保持が行われるよう上記油圧によって排気カムシャフト15(ベーン63)の押し付けが行われ、これにより排気バルブ13のバルブタイミングが最遅角状態に保持されるようになる。排気バルブ13のバルブタイミングを最遅角状態に保持される状況としては、適切なバルブオーバラップ量を確保すべく排気バルブ13の開弁期間を極力遅角させるという状況があげられる。
【0079】
また、デューティ比が上記所定範囲の最小値と最大値との間の値にされた場合、その値が大きくなるほど遅角側油圧室65内の油圧が高くされるとともに進角側油圧室64内の油圧が低くされ、逆に上記値が小さくなるほど遅角側油圧室65内の油圧が低くされるとともに進角側油圧室64内の油圧が高くされる。従って、クランクシャフト11の回転に対する排気カムシャフト15の相対回転位相については、上記デューティ比が大きくなるほど遅角側に変更され、逆に当該デューティ比が小さくなるほど進角側に変更されることとなる。
【0080】
次に、クランクロータ19及びクランクポジションセンサ20について、図6を参照して説明する。これらクランクロータ19及びクランクポジションセンサ20は、クランクシャフト11の回転状態をモニタするのに用いられる。
【0081】
同図に示されるように、クランクロータ19の外周部には、クランクシャフト11の軸線を中心とする所定角度(本実施形態では10°)毎に合計34個の突起19aと一つの欠歯19bとが設けられている。そして、クランクシャフト11が回転して、クランクロータ19の各突起19a及び欠歯19bが順次クランクポジションセンサ20の側方を通過することにより、同センサ20からはそれら各突起19a及び欠歯19bの通過に対応したパルス状の検出信号が出力されるようになる。従って、これら検出信号に基づきクランクシャフト11の回転速度(エンジン回転速度)を求めることができるとともに、クランクシャフト11の現在の回転位置を把握することが可能になる。
【0082】
次に、カムロータ21,23,25,27、及びカムポジションセンサ22,24,26,28について説明する。これらカムロータ21,23,25,27、及びカムポジションセンサ22,24,26,28は、第1及び第2バンク2,3の吸気カムシャフト14及び排気カムシャフト15の回転状態をモニタするのに用いられる。
【0083】
なお、各カムロータ21、23,25,27は各々同じ構成のものが採用され、カムポジションセンサ22,24,26,28も各々同じ構成のものが採用されている。このため、以下では、第1バンク2の吸気カムシャフト14の回転状態をモニタするためのカムロータ21及びカムポジションセンサ22についてのみ図7を参照して詳しく説明し、他のものについては説明を省略する。
【0084】
同図に示されるように、カムロータ21の外周部には、周方向長さの異なる合計三つの突起21a,21b,21cが設けられている。そして、クランクシャフト11からの回転伝達によって吸気カムシャフト14が回転すると、カムロータ21が図中右回転方向に回転し、突起21a,21b,21cが順次カムポジションセンサ22の側方を通過する。このとき、カムポジションセンサ22からは突起21a,21b,21cの通過に対応した検出信号が出力されるようになる。この検出信号から突起21a,21b,21cの周方向端部A,P,B,Q,C,Rがカムポジションセンサ22の側方を通過したのを検知することが可能になる。
【0085】
また、カムロータ21における各突起21a,21b,21cの形状、吸気カムシャフト14に対するカムロータ21の取付位置、及びカムポジションセンサ22の配設位置は、以下の各条件が全て満たされるように設定されている。
【0086】
・吸気カムシャフト14における位置P1(図2)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21aの周方向についての端部Aがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0087】
・吸気カムシャフト14における位置P4(図2)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21aの周方向についての端部Pがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0088】
・吸気カムシャフト14における位置P5(図2)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21bの周方向についての端部Bがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0089】
・吸気カムシャフト14における位置P6(図2)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21bの周方向についての端部Qがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0090】
・吸気カムシャフト14における位置P9(図2)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21cの周方向についての端部Cがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0091】
・吸気カムシャフト14における位置P11(図2)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21cの周方向についての端部Rがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0092】
次に、第1及び第2バンク2,3の吸気カムシャフト14及び排気カムシャフト15における上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動を検出する手順の概要について説明する。
【0093】
なお、各カムシャフト14,15における回転速度の適正状態に対する変動の検出は各々同じ手順によって行われることから、ここでは第1バンク2の吸気カムシャフト14での上記変動の検出についてのみ図8を参照して説明し、他のカムシャフトでの上記変動の検出については説明を省略する。
【0094】
図8において、(a)及び(b)は吸気カムシャフト14においてバルブリフタ12aに接触する部位が時間経過に伴いどのように変化してゆくかを示しており、(a)は吸気カムシャフト14の実際の回転位相に対応するものであって、(b)は上記理論上の回転位相に対応するものである。また、図8(c)は、時間経過に伴うクランクポジションセンサ20からの検出信号の出力態様を示している。
【0095】
吸気カムシャフト14における位置P1に対応する部位がバルブリフタ12aに接触している状態を基準(0°)とすると、同シャフト14の回転が30°進む毎に位置P2〜P12に対応する各部位が順次バルブリフタ12aに接触するようになる。仮に、吸気カムシャフト14を平均回転速度で等速回転させたとき、即ち同シャフト12の回転位相が上述した理論上の回転位相と一致しているとすれば、図8(b)に示されるように、位置P1〜P12に対応する部位が等しい時間間隔をおいて順次バルブリフタ12aに接触する。
【0096】
しかし、実際には、位置P2,P6,P10に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、吸気カムシャフト14には吸気バルブ12の開弁に伴う回転方向とは逆方向のトルクが働き、同シャフト14の回転速度が遅くなる。このため、吸気カムシャフト14の実際の回転時、上記各部位については、図8(a)に示されるように、バルブリフタ12aへの接触タイミングが理論上の回転位相のときに比べて遅れるようになる。また、位置P4,P8,P12に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するときには、吸気カムシャフト14に吸気バルブ12の閉弁に伴う回転方向と同方向のトルクが働き、同シャフト14の回転速度が速くなる。このため、上記各部位については、バルブリフタ12aへの接触タイミングが理論上の回転位相のときに比べて早くなる。
【0097】
従って、吸気カムシャフト14において、位置P2,P4,P6,P8,P10,P12に対応する部位は、上述したとおり理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動が顕著な部位ということになる。これら部位のうち、位置P4,P6に対応する部位がバルブリフタ12aに接触したことは、カムロータ21の突起21aの端部P、突起21bの端部Qがカムポジションセンサ22の側方を通過することによって検知することが可能である。
【0098】
また、吸気カムシャフト14において、位置P1,P3,P5,P7,P9,P11に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するときには、同シャフト14の回転速度がほとんど変動しないことは上述したとおりである。このため、上記各部位については、吸気カムシャフト14の実際の回転時においても、バルブリフタ12aへの接触タイミングが理論上の回転位相のときと比べてほとんど変わらない。
【0099】
従って、吸気カムシャフト14において、位置P1,P3,P5,P7,P9,P11に対応する部位は、上述したとおり理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動が顕著でない部位ということになる。これら部位のうち、位置P1,P5,P9,P11に対応する部位がバルブリフタ12aに接触したことは、カムロータ21の突起21aの端部A、突起21bの端部B、突起21cの端部C,Rがカムポジションセンサ22に側方を通過することによって検知することが可能である。
【0100】
なお、本実施形態では、上記変動の顕著でない部位として、位置P1,P3,P5,P7,P9,P11に対応する部位のうち、位置P1,P5,P9,P11に対応する部位が採用されている。また、上記変動の顕著な部位としては、位置P2,P4,P6,P8,P10,P12に対応する部位のうち、位置P4,P6に対応する部位が採用されている。こうした採用は、単にカムロータ21の形状等に応じて行っているものであって、カムロータ21の形状等の変更とともに上記採用を任意に変更することが可能である。
【0101】
即ち、吸気カムシャフト14における上記変動の顕著でない部位としては、位置P1,P5,P9,P11に対応する部位以外に、位置P3,P7に対応する各部位のうちから適宜採用することもできる。また、吸気カムシャフト14における上記変動の顕著な部位としては、位置P4,P6に対応する部位以外に、位置P2,P8,P10,P12に対応する部位のうちから適宜採用することもできる。
【0102】
吸気カムシャフト14の上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動の検出は、以下の[1]〜[6]に示される手順で行われることとなる。
[1]クランクポジションセンサ20からクランクロータ19の欠歯19bに対応した信号Sが出力されたとき(図8(c)参照)、そのタイミングt1を基準のタイミングとして時間の計測を開始する。
【0103】
[2]タイミングt1から吸気カムシャフト14の位置P1に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するタイミングt2までの経過時間tAを求める。同様に、タイミングt1から吸気カムシャフト14の位置P4,P5,P6,P9,P10に対応する各部位が、それぞれバルブリフタ12aに接触するタイミングt3,t4,t5,t6,t7までの経過時間tP,tB,tQ,tC,tRを求める。
【0104】
[3]経過時間tA,tB,tC,tRを複数回(例えば5回)計測し、各経過時間tAの平均値tAav、各経過時間tBの平均値tBav、各経過時間tCの平均値tCav、及び各経過時間tRの平均値tRavを算出する。
【0105】
[4]平均値tAav,tBav,tCav,tRavから上記理論上の回転位相を求め、これによって位置P4,P6に対応する部位についての上記理論上の回転位相での経過時間(理論値)である経過時間tP’,tQ’を推定する。
【0106】
[5]位置P4,P6に対応する部位についての経過時間の実測値と上記理論値との差として、経過時間tP,tQと経過時間tP’,tQ’との時間差ΔtP,ΔtQを算出する。
【0107】
[6]時間差ΔtP,ΔtQを複数回(例えば5回)算出して平均した平均値ΔtPav,ΔtQavを、吸気カムシャフト14の上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動として検出する。
【0108】
以上の手順により、実際に吸気カムシャフト14で生じている上記変動を検出することができる。なお、上記変動の検出は、第1バンク2の吸気カムシャフト14についてだけでなく、エンジン1の他のカムシャフトについても同様に行われる。従って、吸気バルブ12や排気バルブ13といった機関バルブの開閉時にカムシャフトで上記変動の増大が生じたとき、その増大を検出して適切に対策を講じることができるようになる。こうした対策としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0109】
エンジン1のアイドル運転時、吸気カムシャフト14は、クランクシャフト11に対する吸気カムシャフト14の相対回転位相がその変更範囲の遅角側の境界に保持されよう遅角側に押し付けられる。また、排気カムシャフト15は、クランクシャフト11に対する排気カムシャフト15の相対回転位相がその変更範囲の進角側の境界に保持されるよう進角側に押し付けられる。このときに吸気カムシャフト14や排気カムシャフト15の上記変動が増大すると、吸気側可変動弁機構16や排気側可変動弁機構17で打音が発生するおそれがある。
【0110】
即ち、吸気側可変動弁機構16では、ベーン43等がリングカバー42に対し押し付けられた状態にあり、吸気カムシャフト14での上記変動の増大に伴いベーン43等とリングカバー42の相対位置が周方向に変化すると、ベーン43等がリングカバー42に打ち付けられて打音が発生する。また、排気側可変動弁機構17では、ベーン63等がリングカバー62に対し押し付けられた状態にあり、排気カムシャフト15での上記変動の増大に伴いベーン63等とリングカバー62の相対位置が周方向に変化すると、ベーン63等がリングカバー62に打ち付けられて打音が発生する。
【0111】
このため、アイドル運転時、吸気カムシャフト14の上記変動の増大が検出されたときには、同シャフト14を遅角側に押し付ける力が大きくなるよう、吸気側可変動弁機構16の遅角側油圧室45内の油圧の上昇が図られ、当該変動が抑制される。一方、排気カムシャフト15での上記変動の増大が検出されたときには、同シャフト14を進角側に押し付ける力が大きくなるよう、排気側可変動弁機構17の進角側油圧室64内の油圧の上昇が図られ、当該変動が抑制される。このようにアイドル運転時には、カムシャフト14,15の回転速度の適正状態に対する変動の増大への対策として、当該変動の抑制が行われるようになる。
【0112】
また、エンジン1のアイドル運転時以外のときには、吸気カムシャフト14が遅角側に押し付けられたり、排気カムシャフト15が進角側に押し付けられたりしていないため、それらカムシャフト14,15での上記変動の増大に伴い、上記のように打音が発生することはない。しかし、当該変動が生じるということは、吸気バルブ12や排気バルブ13のバルブタイミングに変動が生じるということであるから、同変動に伴いバルブタイミングにエンジン運転にとって適正な状態からのずれが生じる。このバルブタイミングのずれが上記変動の増大に伴い大きなものになると、エンジン運転状態に影響を及ぼすおそれがある。
【0113】
例えば、吸気カムシャフト14での上記変動が増大すると、吸気バルブ12のバルブタイミングが適正状態に対し進角側と遅角側との間で大きく変動するようになる。吸気バルブ12のバルブタイミングは、エンジン1の吸入空気量に影響を及ぼすため、上記のような変動に伴い吸入空気量が増減してエンジン1の空燃比が変動すると、エンジン運転が不安定になるおそれがある。また、排気カムシャフト15での上記変動が増大すると、排気バルブ13のバルブタイミングが適正状態に対し進角側と遅角側との間で大きく変動するようになる。排気バルブ13のバルブタイミングは、エンジン1のバルブオーバラップ量に影響を及ぼすため、上記のような変動に伴いバルブオーバラップ量が増減して内部EGR量が変動すると、エンジン運転が不安定になるおそれがある。
【0114】
このため、アイドル運転時以外のとき、吸気カムシャフト14や排気カムシャフト15の回転速度の適正状態に対する変動の増大が検出されたときには、燃料噴射量や点火時期といったエンジン1の運転制御に用いられるパラメータが、エンジン1の運転を安定化させる方向に変更される。例えば、燃料噴射量が所定量だけ減量されるとともに、その減量後の燃料噴射量に適した点火時期が得られるよう点火時期の変更も行われ、エンジン1の運転の安定化が図られる。このようにアイドル運転時以外のときには、カムシャフト14,15での上記変動の増大への対策として、当該変動の増大に伴いエンジン運転が不安定になることの抑制が行われるようになる。
【0115】
次に、カムシャフトにおける上記変動を検出するとともに、その変動が許容レベル以上であるときには対策を講じるための処理手順について、変動時処理ルーチンを示す図9及び図10のフローチャートを参照して説明する。この変動時処理ルーチンは、電子制御装置18を通じて例えば所定クランク角毎の角度割り込みにて実行される。
【0116】
同ルーチンにおいて、図9のステップS101〜S108の処理は、各カムシャフト毎に、上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動として、上述した平均値ΔtPav,tQavを算出するためのものである。
【0117】
この処理では、まずタイミングt1からの時間が計測され(図9のS101)、このタイミングt1からの経過時間として、各カムシャフトについて経過時間tA,tP,tB,tQ,tC,tRが算出される。そして、それら経過時間のうち、経過時間tA,tB,tC,tRがカムシャフト毎に複数(本実施形態では「5」)得られると(S102:YES)、カムシャフト毎に経過時間tA,tBの平均値tAav,tBav,tCav,tRavが算出される(S103)。
【0118】
ここで、平均値tAav,tBav,tCav,tRavは、カムシャフトにおける位置P1,P5,P9,P11に対応する部位、即ち上記変動の顕著でない部位がバルブリフタ12aに接触する回転位置に達したときの同シャフトの回転速度を表す値となる。これらのカムシャフトの回転速度は、同シャフトの平均回転速度とほぼ等しくなる。従って、平均値tAav,tBav,tCav,tRavの変化率、例えば前回算出された平均値tAav,tBav,tCav,tRavに対する変化率が所定値以上であることは、カムシャフトの平均回転速度が急変するエンジン1の過渡運転中であることを意味する。このような状況のとき、上述した平均値ΔtPav,tQavの算出を行うと、その値はンジン運転の急変による影響を受けた値となり、上記変動を表す値としての信頼性が不確かなものとなる。
【0119】
このことを考慮して、変動時処理ルーチンでは、平均値tAav,tBav,tCav,tRavの変化率が所定値よりも大であるとき(S104:NO)には、平均値ΔtPav,tQavを算出する処理をやめる。そして、同算出を平均値tAav,tBav,tCav,tRavの変化率が所定値以下(S104:YES)であるときに限定して行うようにしている。従って、上記処理によって算出される平均値ΔtPav,tQavについては、エンジン1の定常運転中と判断されるときに算出され、エンジン運転の急変による影響を受けていない値となることから、上記変動を表す値としての信頼性が確保される。
【0120】
ステップS104で肯定判定がなされると、平均値tAav,tBav,tCav,tRavから上記理論上の回転位相が求められ、これによって上記変動が顕著な部位である位置P4,P6に対応する部位についての上記理論上の回転位相での経過時間(理論値)である経過時間tP’,tQ’が推定される(S105)。続いて、上記部位についての経過時間の実測値である経過時間tP,tQと、上記理論値である経過時間tP’,tQ’との時間差ΔtP,ΔtQが算出される(S106)。即ち、経過時間tP’から経過時間tPを減算した値が時間差ΔtPとされ、経過時間tQから経過時間tQ’を減算した値が時間差ΔtQとされる。
【0121】
そして、それら時間差ΔtP,ΔtQがカムシャフト毎に複数(本実施形態「5」)得られていると(S107:YES)、カムシャフト毎に時間差ΔtP,ΔtQの平均値ΔtPav,ΔtQavが算出される(S108)。こうして算出された平均値ΔtPav,ΔtQavがカムシャフトの上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動として検出される。その後、図10のステップS109に進むことになる。
【0122】
変動時処理ルーチンにおいて、ステップS109〜S115の処理は、上記変動が許容レベル以上であるか否かを判断し、許容レベル以上であるときには対策を講じるためのものである。
【0123】
この処理では、まず平均値ΔtPav,ΔtQavの適正値X,Y、即ち上記変動が適正状態にあるときの平均値ΔtPav,ΔtQavの理論上の値がエンジン運転状態、例えばカムシャフトの平均回転速度に基づきマップを参照して算出される(S109)。なお、このマップは、予め実験等によって設定され、電子制御装置18に設けられたROMに記憶される。また、カムシャフトの平均回転速度は、例えば、経過時間tA,tB,tC,tRの平均値tAav,tBav,tCav,tRavに基づき求めることができる。
【0124】
平均値ΔtPav,ΔtQavの適正値X,Yを、カムシャフトの平均回転速度に基づき算出し、同平均回転速度に応じて可変とするのは次の理由による。即ち、エンジン回転速度の変化等に伴いカムシャフトの平均回転速度が変わると、オイルポンプ52のオイル吐出量が変わることから、吸気側可変動弁機構16及び排気側可変動弁機構17の進角側油圧室44,64及び遅角側油圧室45,65内の油圧が変化する。その結果、クランクシャフト11に対するカムシャフトの相対回転位相を保持する上記油圧による力が変化し、バルブ開閉時にカムシャフトにおける上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動が異なるものとなる。このため、上記変動として検出される平均値ΔtPav,ΔtQavの実際の適正値も変わってくるが、こうした変化に適正値X,Yを対応させるために、同適正値X,Yを、上記油圧に影響を及ぼすパラメータであるカムシャフトの平均回転速度に基づき算出するのである。
【0125】
上記適正値X,Yが算出された後、適正値Xから平均値ΔtPavを減算した値の絶対値として乖離量K1が求められるとともに、適正値Yから平均値ΔtQavを減算した値の絶対値として乖離量K2が求められる(S110)。これら乖離量K1,K2については、上記変動が適正状態に対してどれほど離れているかを表す値となる。そして、乖離量K1が所定値aよりも大であるか(S111:YES)、或いは乖離量K2が所定値aよりも大であれば(S112:YES)、それら乖離量K1,K2に対応したカムシャフトについて上記変動が許容レベル以上である旨判断される。そして、同シャフトでの上記変動の増大への対策として、ステップS113以降の処理が実行される。
【0126】
このステップS113では、エンジン1がアイドル運転中であるか否かが判断され、ここで肯定判定であればステップS114に進む。このステップS114の処理は、上記変動の増大が生じているカムシャフトに対し、その増大への対策として上述した変動の抑制を行うためのものである。
【0127】
即ち、吸気カムシャフト14で上記変動の増大が生じている場合には、OCV48の駆動電流を低減することにより、吸気側可変動弁機構16における遅角側油圧室45内の油圧が上昇させられ、吸気カムシャフト14を遅角側に押し付ける力が大きくされる。これにより吸気カムシャフト14での上記変動が抑制される。また、排気カムシャフト15で上記変動の増大が生じている場合には、OCV68の駆動電流を低減することにより、排気側可変動弁機構17における進角側油圧室64内の油圧が上昇させられ、排気カムシャフト15を進角側に押し付ける力が大きくされる。これにより排気カムシャフト15での上記変動が抑制される。
【0128】
カムシャフトでの上記変動を抑制するための上述したOCV48,68の駆動電流の低減については、図11に示されるように当該変動が許容レベルに対し増大するにつれて、言い換えれば乖離量K1,K2が所定値aよりも大きくなるにつれて低減量を大きくすることが好ましい。このようにすれば、上記変動が許容レベルに対し増大するにつれて、カムシャフトを押し付けて保持する力を大とすることができるため、上記変動の抑制を一層的確に行うことができるようになる。
【0129】
一方、ステップS113で否定判定がなされ、エンジン1がアイドル運転以外の状態である旨判断された場合には、ステップS115に進む。このステップS115の処理は、上記変動の増大が生じているカムシャフトに対応するシリンダブロックの各気筒について、当該変動の増大への対策として、その増大に伴いエンジン運転が不安定になることの抑制を行うためのものである。
【0130】
即ち、第1バンク2のシリンダブロック4に対応するカムシャフトにて上記変動の増大が生じている場合には、第1バンク2の各気筒#1,#3,#5に対し、燃料噴射量の減量及びその減量後の燃料噴射量に適した点火時期への変更が行われる。これにより上記カムシャフトでの上記変動の増大に伴い、エンジン1の運転が不安定になることは抑制される。また、第2バンク3のシリンダブロック4に対応するカムシャフトにて上記変動の増大が生じている場合には、第2バンク3の各気筒#2,#4,#6に対し、燃料噴射量の減量及びその減量後の燃料噴射量に適した点火時期への変更が行われる。これにより上記カムシャフトでの上記変動の増大に伴い、エンジン1の運転が不安定になることは抑制される。
【0131】
エンジン運転の不安定を抑制するための燃料噴射量の減量及び点火時期の変更については、吸気カムシャフト14にて上記変動の増大が生じている場合と、排気カムシャフト15にて上記変動の増大が生じている場合とで、それぞれに適した態様で行うことが好ましい。このようにすれば、カムシャフトでの上記変動の増大に伴うエンジン運転の不安定を一層好適に抑制することができるようになる。
【0132】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)バルブ開閉時には、それに伴うトルクをカムシャフトが受けるため、同シャフトの回転速度が低下したり上昇したりするようになる。このカムシャフトの回転速度の変動によって同シャフトの上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動が生じるが、当該変動態様はエンジン1の運転状況に応じて様々である。
【0133】
ここで、カムシャフトにおける周方向各部位のうち、位置P1,P5,P9,P11に対応する部位は上記変動が顕著でない部位であることから、それら各部位に対応する経過時間tA,tB,tC,tR(平均値tAav,tBav,tCav,tDav)は上記理論上の回転位相のときとほとんど変わらない値をとる。このため、経過時間tA,tB,tC,tRを用いて上記理論上の回転位相を求めることができ、これによって上記変動の編著でない部位である位置P4,P6に対応する部位についての上記理論上の回転位相での上記経過時間(理論値)である経過時間tP’,tQ’を推定することが可能である。また、上記変動の顕著な部位である位置P4,P6に対応する部位についての実際の回転位相での上記経過時間の実測値である経過時間tP,tQは、上記理論上の回転位相のときと比べて長くなったり短くなったりする。
【0134】
そして、上記部位についての上記経過時間の実測値と上記理論値との差、即ち経過時間tP,tQの平均値ΔtPav,ΔtQavと経過時間tP’,tQ’との時間差ΔtP,ΔtQが算出され、この時間差ΔtP,ΔtQの平均値ΔtPav,ΔtQavが上記変動として検出されるようになる。こうして、実際に生じる上記変動を検出することができるようになるため、バルブ開閉時に上記変動が増大したときに適切に対策を講じることが可能になる。
【0135】
(2)カムシャフトにおける上記理論上の回転位相を求めるのに、一度計測された経過時間tA,tB,tC,tRをそのまま用いるのではなく、複数回計測した経過時間tA,tB,tC,tRの平均値tAav,tBav,tCav,tRavが用いられる。このため、仮に一度の経過時間tA,tB,tC,tRの計測に誤差が生じたとしても、その誤差による影響を最小限に抑えることができ、上記理論上の回転位相、ひいては経過時間tP’,tQ’が上記誤差によって不適切な値になるのを抑制することができる。
【0136】
(3)上記変動として検出される値は、上記時間差ΔtP,ΔtQではなく、それらを複数回算出して平均した平均値ΔtPav,ΔtQavである。このため、仮に一度の時間差ΔtP,ΔtQの算出時に誤差が生じたりしても、その誤差による影響を最小限に抑えることができ、検出した上記変動が上記誤差によって不適切な値になるのを抑制することができる。
【0137】
(4)平均値ΔtPav,ΔtQavの適正値X,Yに対する乖離量K1,K2が所定値aよりも大きいとき、上記変動が許容レベル以上である旨判断され、対策が講じられるようになる。ただし、上記平均値ΔtPav,ΔtQavの実際の適正値はカムシャフトの平均回転速度といったエンジン運転状態に応じて異なるものとなる。しかし、それに対応して上記適正値X,Yをカムシャフトの平均回転速度といったエンジン運転状態に応じて可変設定することができるため、上記変動が許容レベル以上であるか否かを適切に判断することができ、上記変動が許容レベル以上であるときには適切に対策を講じることができる。
【0138】
(5)平均値ΔtPav,ΔtQavの上記変動としての検出は、エンジン1が定常運転中であることを条件に行われる。このため、上記平均値ΔtPav,ΔtQavは、エンジン運転の急変による影響を受けていない値となり、上記変動を表す値としての信頼性を確保することができる。
【0139】
(6)平均値ΔtPav,ΔtQavの上記変動としての検出は、エンジン1の定常運転となるアイドル運転中にも行われることとなる。アイドル運転時、吸気カムシャフト14については吸気側可変動弁機構16の遅角側油圧室45内の油圧によって遅角側に押し付けられるが、同シャフト14の相対回転位相を進角側に変更する際の応答性を確保するため、進角側油圧室44にもある程度の油圧が生じるようにされる。従って、吸気カムシャフト14を遅角側に押し付ける力は進角側油圧室44内の油圧による力の分だけ小さくなる。一方、排気カムシャフト15については排気側可変動弁機構17の進角側油圧室64内の油圧によって進角側に押し付けられるが、同シャフト15の相対回転を遅角側に移行する際の応答性を確保するため、遅角側油圧室65にもある程度の油圧が生じるようにされる。従って、排気カムシャフト15を進角側に押し付ける力は遅角側油圧室65内の油圧による力の分だけ小さくなる。また、アイドル運転時には、もともとエンジン回転速度が低くオイルポンプ52から吐出されるオイルの油圧が低い状態になる。これらのことから、アイドル運転時には上記変動が大きくなる可能性があるが、このときに実際にカムシャフトに生じている上記変動の検出が行われるため、当該検出に基づきカムシャフトの上記変動の増大に対し適切に対策を講じることができる。
【0140】
(7)アイドル運転時、上記変動が許容レベル以上になった旨判断されると、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相をその変更範囲の境界に保持する力が大きくなるようにされる。即ち、上記変動が許容レベル以上になったのが吸気カムシャフト14であれば、吸気側可変動弁機構16の遅角側油圧室45内の油圧が上昇させられ、同シャフト14を遅角側に押し付けて保持する力が大きくされるため、同シャフト14での上記変動が抑制される。また、上記変動が許容レベル以上になったのが排気カムシャフト15であれば、排気側可変動弁機構17の進角側油圧室44内の油圧が上昇させられ、同シャフト15を進角側に押し付けて保持する力が大きくされるため、同シャフト15での上記変動が抑制される。従って、アイドル運転時には、カムシャフトでの上記変動の増大への対策として、当該変動の抑制が図られるようになる。
【0141】
(8)上記クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相をその変更範囲の境界に保持する力の増大は、同シャフトにおける上記変動が許容レベルよりも大きくなるにつれて、大きなものとされるようになる。このため、アイドル運転時における同シャフトでの上記変動の抑制を一層的確に行うことができるようになる。
【0142】
(9)また、カムシャフトにおける上記変動が許容レベル以上になるということは、バルブタイミングがエンジン運転にとって適正な状態からずれるということになり、エンジン運転状態が不安定になることに繋がる。このため、アイドル運転以外においては、上記変動が許容レベル以上である旨判断されると、燃料噴射量や点火時期といったエンジン1の運転制御に用いられるパラメータが、エンジン運転を安定させる方向に変更される。即ち、燃料噴射量が所定量だけ減量されるとともに、その減量後の燃料噴射量に適した点火時期が得られるよう点火時期の変更も行われ、エンジン1の運転の安定化が図られる。従って、アイドル運転以外のときには、上記変動の増大への対策として、当該変動の増大に伴いエンジン運転が不安定になることの抑制が図られるようになる。
【0143】
(10)上記燃料噴射量や点火時期のエンジン運転安定化方向への変更は、上記変動が生じているカムシャフトに対応したバンク(シリンダブロック)の各気筒に対し行われる。従って、第1及び第2バンクを備えるV型のエンジン1においても、カムシャフトでの上記変動の増大に対し、適切に対策を講じることができるようになる。
【0144】
(11)また、吸気カムシャフト14で上記変動の増大が生じた場合と、排気カムシャフト15で上記変動の増大が生じた場合とでは、エンジン1に対する影響が異なるものとなる。従って、上記燃料噴射量や点火時期のエンジン運転安定化方向への変更を、吸気カムシャフト14にて上記変動の増大が生じている場合と、排気カムシャフト15にて上記変動の増大が生じている場合とで、それぞれに適した態様で行うことにより、同変動の増大への対策を一層適切なものとすることができる。
【0145】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図12〜図16に基づき説明する。なお、この実施形態では、自動車用の直列四気筒エンジンに本発明が適用されており、以下では同エンジンに本発明を適用する上で第1実施形態と異なる部分について詳しく説明する。
【0146】
図12は、本実施形態の吸気カムシャフト14をその軸線方向から見た図である。同図から分かるように、この吸気カムシャフト14には、カムノーズ81を備えたカム82〜85がエンジン1の四つの気筒、即ち一番〜四番気筒#1〜#4に対応して設けられている。これらカム82〜85のカムノーズ81は、吸気カムシャフト14の周方向について互いの間に等しい間隔をおいて、即ち同シャフト14の軸線を中心とする90°という間隔をおいて存在している。そして、吸気カムシャフト14がクランクシャフト11からの回転伝達に基づき例えば図中において右回転すると、各カム82〜85のカムノーズ81が吸気バルブ12のバルブリフタ12aに対応して位置したとき、吸気バルブ12が開弁状態とされることになる。
【0147】
吸気カムシャフト14において、カムノーズ81の側部の位置P2,P4,P6,P8,P10,P12,P14,P16に対応する部位については、吸気カムシャフト14の上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動が顕著な部位となる。これに対し、吸気カムシャフト14において、周方向に隣合うカムノーズ81の中間の位置P3,P7,P11,P15に対応する部位、及び各カムノーズ31の先端の位置P1,P5,P9,P13に対応する部位については、上記変動が顕著でない部位となる。
【0148】
なお、図示は省略するが、排気カムシャフト15についても、吸気カムシャフト14と同じくカムノーズ81を備えたカム82〜85が一番〜四番気筒#1〜#4に対応して設けられている。ただし、排気カムシャフト15においては、カムノーズ81の同シャフト15の回転方向についての位置が、吸気カムシャフト14のカムノーズ81の同シャフト14の回転方向についての位置に対し270°遅れた状態となっている。そして、排気カムシャフト15の回転時に、カムノーズ31が排気バルブ13のバルブリフタ13aに対応して位置したとき、排気バルブ13が開弁状態とされることになる。この排気カムシャフト15においても、吸気カムシャフト14の場合と同じ態様で、上記変動の顕著な部位及び顕著でない部位が生じる。
【0149】
次に、カムロータ21,23、及びカムポジションセンサ22,24について説明する。これらカムロータ21,23、及びカムポジションセンサ22,24は、吸気カムシャフト14及び排気カムシャフト15の回転状態をモニタするのに用いられる。
【0150】
なお、各カムロータ21、23は各々同じ構成のものが採用され、カムポジションセンサ22,24も各々同じ構成のものが採用されている。このため、以下では、吸気カムシャフト14の回転状態をモニタするためのカムロータ21及びカムポジションセンサ22についてのみ図13を参照して詳しく説明し、排気カムシャフト15の回転状態をモニタするためのカムロータ23及びカムポジションセンサ24については説明を省略する。
【0151】
同図に示されるカムロータ21においては、その外周部に設けられた合計三つの突起21a,21b,21cの周方向長さ及び形成位置が、第1実施形態のものとは異なっている。そして、このカムロータ21における各突起21a,21b,21cの形状、吸気カムシャフト14に対するカムロータ21の取付位置、及びカムポジションセンサ22の配設位置は、以下の各条件が全て満たされるように設定されている。
【0152】
・吸気カムシャフト14における位置P1(図12)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21aの周方向についての端部Aがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0153】
・吸気カムシャフト14における位置P4(図12)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21aの周方向についての端部Pがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0154】
・吸気カムシャフト14における位置P5(図12)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21bの周方向についての端部Bがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0155】
・吸気カムシャフト14における位置P10(図12)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21bの周方向についての端部Qがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0156】
・吸気カムシャフト14における位置P13(図12)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21cの周方向についての端部Cがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0157】
・吸気カムシャフト14における位置P14(図12)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21cの周方向についての端部Rがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0158】
次に、吸気カムシャフト14及び排気カムシャフト15における上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動を検出する手順の概要について説明する。
【0159】
なお、各カムシャフト14,15の上記変動の検出は各々同じ手順によって行われるものであることから、ここでは吸気カムシャフト14での上記変動の検出についてのみ図14を参照して説明し、排気カムシャフト15での上記変動の検出については説明を省略する。
【0160】
図14において、(a)及び(b)は吸気カムシャフト14においてバルブリフタ12aに接触する部位が時間経過に伴いどのように変化してゆくかを示しており、(a)は吸気カムシャフト14の実際の回転位相に対応するものであって、(b)は上記理論上の回転位相に対応するものである。また、図14(c)は時間経過に伴うクランクポジションセンサ20からの検出信号の出力態様を示している。
【0161】
吸気カムシャフト14における位置P1に対応する部位がバルブリフタ12aに接触している状態を基準(0°)とすると、同シャフト14の回転が22.5°進む毎に位置P2〜P16に対応する各部位が順次バルブリフタ12aに接触するようになる。仮に、吸気カムシャフト14を平均回転速度で等速回転させたとき、即ち同シャフト12の回転位相が上記理論上の回転位相と一致しているとすれば、図14(b)に示されるように、位置P1〜P16に対応する部位が等しい時間間隔をおいて順次バルブリフタ12aに接触する。
【0162】
しかし、実際には、位置P4,P8,P12,P16に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、吸気カムシャフト14には吸気バルブ12の開弁に伴う回転方向とは逆方向のトルクが働き、同シャフト14の回転速度が遅くなる。このため、吸気カムシャフト14の実際の回転時、上記各部位については、図14(a)に示されるように、バルブリフタ12aへの接触タイミングが理論上の回転位相のときに比べて遅れるようになる。また、位置P2,P6,P10,P14に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するときには、吸気カムシャフト14に吸気バルブ12の閉弁に伴う回転方向と同方向のトルクが働き、同シャフト14の回転速度が速くなる。このため、上記各部位については、バルブリフタ12aへの接触タイミングが理論上の回転位相のときに比べて早くなる。
【0163】
吸気カムシャフト14において、位置P2,P4,P6,P8,P10,P12,P14,P16に対応する部位が上記変動の顕著な部位であることは、上述したとおりである。これらのうち位置P4,P10,P14に対応する部位がバルブリフタ12aに接触したことは、カムロータ21の突起21aの端部P、突起21bの端部Q、及び突起21cの端部Rがカムポジションセンサ22の側方を通過することによって検知することが可能である。また、位置P1,P3,P5,P7,P9,P11,P13,P15に対応する部位が上記変動の顕著でない部位であることも上述した。これらのうち位置P1,P5,P13に対応する部位がバルブリフタ12aに接触したことは、カムロータ21の突起21aの端部A、突起21bの端部B、突起21cの端部Cがカムポジションセンサ22に側方を通過することによって検知することが可能である。
【0164】
なお、本実施形態では、上記変動の顕著でない部位として、位置P1,P3,P5,P7,P9,P11,P13,P15に対応する部位のうち、位置P1,P5,P13に対応する部位が採用されている。また、上記変動の顕著な部位として、位置P2,P4,P6,P8,P10,P12,P14,P16に対応する部位のうち、位置P4,P6,P14に対応する部位が採用されている。こうした採用は、単にカムロータ21の形状等に応じて行っているものであって、カムロータ21の形状等の変更とともに上記採用を任意に変更することが可能である。
【0165】
即ち、吸気カムシャフト14における上記変動の顕著でない部位としては、位置P1,P5,P13に対応する部位以外に、位置P3,P7,P9,P11,P15に対応する各部位のうちから適宜採用することもできる。また、吸気カムシャフト14における上記変動の顕著な部位としては、位置P4,P10,P14に対応する部位以外に、位置P2,P6,P8,P12,P16に対応する部位のうちから適宜採用することもできる。
【0166】
吸気カムシャフト14の上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動の検出は、以下の[1]〜[6]に示される手順で行われることとなる。
[1]クランクポジションセンサ20からクランクロータ19の欠歯19bに対応した信号Sが出力されたとき(図14(c)参照)、そのタイミングt1を基準のタイミングとして時間の計測を開始する。
【0167】
[2]タイミングt1から吸気カムシャフト14の位置P1に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するタイミングt2までの経過時間tAを求める。同様に、タイミングt1から吸気カムシャフト14の位置P4,P5,PP10,P13,P14に対応する各部位が、それぞれバルブリフタ12aに接触するタイミングt3,t4,t5,t6,t7までの経過時間tP,tB,tQ,tC,tRを求める。
【0168】
[3]経過時間tA,tB,tCを複数回(例えば5回)計測し、各経過時間tAの平均値tAav、各経過時間tBの平均値tBav、及び各経過時間tCの平均値tCavを算出する。
【0169】
[4]平均値tAav,tBav,tCavから上記理論上の回転位相を求め、これによって位置P4,P10,P14に対応する部位についての上記理論上の回転位相での経過時間(理論値)である経過時間tP’,tQ’,tR’を推定する。
【0170】
[5]位置P4,P10,P14に対応する部位についての経過時間の実測値と上記理論値との差として、経過時間tP,tQ,tRと経過時間tP’,tQ’,tR’との時間差ΔtP,ΔtQ,ΔtRを算出する。
【0171】
[6]時間差ΔtP,ΔtQ,ΔtRを複数回(例えば5回)算出して平均した平均値ΔtPav,ΔtQav,ΔtRavを、吸気カムシャフト14の上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動として検出する。
【0172】
以上の手順により、実際に吸気カムシャフト14で生じている上記変動を検出することができる。なお、上記変動の検出は、吸気カムシャフト14についてだけでなく、排気カムシャフト15についても同様に行われる。従って、吸気バルブ12や排気バルブ13といった機関バルブの開閉時にカムシャフトでの上記変動の増大が生じたとき、その増大を検出して適切に対策を講じることができるようになる。
【0173】
図15及び図16は、本実施形態の変動時処理ルーチンを示すフローチャートである。この変動時処理ルーチンも、電子制御装置18を通じて例えば所定クランク角毎の角度割り込みにて実行される。
【0174】
同ルーチンにおいては、まずタイミングt1からの時間が計測され(図15のS201)、このタイミングt1からの経過時間として、各カムシャフトについて経過時間tA,tP,tB、tQ,tC,tRが算出される。そして、それら経過時間のうち、経過時間tA,tB,tCがカムシャフト毎に複数(本実施形態では「5」)得られると(S202:YES)、カムシャフト毎に経過時間tA,tB,tCの平均値tAav,tBav,tCavが算出される(S203)。
【0175】
そして、これら平均値tAav,tBav,tCavの変化率が所定値よりも大であるとき(S204:NO)には、エンジン1の過渡運転中である旨判断され、乖離量K1,K2,K3を算出する処理(図10のS209,S210)をやめる。一方、平均値tAav,tBav,tCavの変化率が所定値未満(S204:YES)であるときには、エンジン1の定常運転中である旨判断され、ステップS205以降の処理が行われる。
【0176】
ここでは、平均値tAav,tBav,tCavから上記理論上の回転位相が求められ、これによって上記変動が顕著な部位である位置P4,P10,P14に対応する部位についての上記理論上の回転位相での経過時間(理論値)である経過時間tP’,tQ’,tR’が推定される。続いて、上記部位についての経過時間の実測値である経過時間tP,tQ,tRと、上記理論値である経過時間tP’,tQ’,tR’との時間差ΔtP,ΔtQ,ΔtRが算出される(S206)。即ち、経過時間tPから経過時間tP’を減算した値が時間差ΔtPとされ、経過時間tQ’から経過時間tQを減算した値が時間差ΔtQとされる。更に、経過時間tR’から経過時間tRを減算した値が時間差ΔtRとされる。
【0177】
そして、それら時間差ΔtP,ΔtQ,ΔtRがカムシャフト毎に複数(本実施形態「5」)得られていると(S207:YES)、カムシャフト毎に時間差ΔtP,ΔtQ,ΔtRの平均値ΔtPav,ΔtQav,ΔtRavが算出される(S208)。こうして算出された平均値ΔtPav,ΔtQav,ΔtRavがカムシャフトの上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動として検出される。その後、図16のステップS209に進むことになる。
【0178】
続いて、ステップS209では、平均値ΔtPav,ΔtQav,ΔtRavの適正値X,Y,Z、即ちカムシャフトの上記変動が適正状態にあるときの平均値ΔtPav,ΔtQav,ΔtRavの理論上の値が、エンジン運転状態に基づき算出される。なお、ここでエンジン運転状態としては、例えばカムシャフトの平均回転速度があげられる。そして、適正値Xから平均値ΔtPavを減算した値の絶対値が乖離量K1とされ、適正値Yから平均値ΔtQavを減算した値の絶対値が乖離量K2とされ、適正値Zから平均値ΔtRavを減算した値の絶対値が乖離量K3とされる(S210)。
【0179】
そして、以下の各条件のいずれか一つでも成立していれば、カムシャフトの上記変動が許容レベル以上である旨判断される。
・乖離量K1が所定値aよりも大(S211:YES)。
【0180】
・乖離量K2が所定値aよりも大(S212:YES)。
・乖離量K3が所定値aよりも大(S213:YES)。
ステップS211〜S213のいずれかで肯定判定がなされ、カムシャフトの上記変動が許容レベル以上である旨判断されると、同シャフトでの上記変動の増大への対策として、ステップS214以降の処理が実行される。
【0181】
このステップS214の処理では、エンジン1がアイドル運転中であるか否かが判断され、ここで肯定判定であればステップS215に進む。このステップS215の処理は、上記変動の増大が生じているカムシャフトに対し、その増大への対策として上述した変動の抑制を行うためのものである。
【0182】
即ち、吸気カムシャフト14で上記変動の増大が生じている場合には、吸気側可変動弁機構16における遅角側油圧室45内の油圧が上昇させられ、吸気カムシャフト14を遅角側に押し付ける力が大きくされる。また、排気カムシャフト15で上記変動の増大が生じている場合には、排気側可変動弁機構17における進角側油圧室64内の油圧が上昇させられ、排気カムシャフト15を進角側に押し付ける力が大きくされる。これにより、吸気カムシャフト14と排気カムシャフト15とのいずれの上記変動の増大に対しても、当該変動の抑制が図られるようになる。
【0183】
一方、ステップS214で否定判定がなされ、エンジン1がアイドル運転以外の状態である旨判断された場合には、ステップS216に進む。このステップS216の処理は、上記変動増大への対策として、その増大に伴いエンジン運転が不安定になることの抑制を行うためのものである。
【0184】
即ち、吸気カムシャフト14のにて上記変動の増大が生じている場合には、同シャフト14での上記変動の増大に対応して、燃料噴射量の減量及びその減量後の燃料噴射量に適した点火時期への変更が行われる。これにより吸気カムシャフト14での上記変動の増大に伴い、エンジン1の運転が不安定になることは抑制される。また、排気カムシャフト15にて上記変動の増大が生じている場合には、同シャフト15での上記変動に対応して、燃料噴射量の減量及びその減量後の燃料噴射量に適した点火時期への変更が行われる。これにより排気カムシャフト15での上記変動の増大に伴い、エンジン1の運転が不安定になることは抑制される。
【0185】
なお、エンジン運転の不安定を抑制するための上記燃料噴射量の減量及び点火時期の変更は、吸気カムシャフト14にて上記変動の増大が生じている場合と、排気カムシャフト15にて上記変動の増大が生じている場合とで、それぞれに適した態様で行われることとなる。
【0186】
以上詳述した本実施形態によれば、第1実施形態と同等の効果を得ることができる。
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
【0187】
・第1及び第2実施形態では、アイドル運転時、カムシャフトの上記変動の増大への対策として、カムシャフトを進角側や遅角側に押し付ける力、即ち油圧室内の油圧による力を増大する際、その力の増大量を上記変動が大きくなるにつれて大とするようにしたが、本発明はこれに限定されない。即ち、上記力の増大量をカムシャフトでの上記変動の大きさに関係なく一律としてもよい。
【0188】
・第1及び第2実施形態では、アイドル運転時以外のときの上記変動の増大への対策として燃料噴射量の減量と点火時期の変更との両方を行ったが、例えば燃料噴射量の減量のみを行うようにしてもよい。
【0189】
・上記燃料噴射量の減量と点火時期の変更については、吸気カムシャフト14にて上記変動の増大が生じている場合と、排気カムシャフト15にて上記変動の増大が生じている場合とで、それぞれに対応した異なる態様で行ったが、本発明はこれに限定されない。即ち。上記燃料噴射量の減量及び点火時期の変更に関する燃料噴射量制御や点火時期制御を簡略化すべく、当該燃料噴射量の減量及び点火時期の変更を吸気カムシャフト14にて上記変動の増大が生じている場合と、排気カムシャフト15にて上記変動の増大が生じている場合とで同じ態様としてもよい。
【0190】
・第1実施形態において、アイドル運転時以外のとき、いずれかのカムシャフトで上記変動の増大が生じた場合、第1バンク2と第2バンク3との両方の気筒、即ち一番〜六番気筒#1〜#6に対し、上記燃料噴射量の減量及び点火時期の変更を行ってもよい。この場合、上記燃料噴射量の減量及び点火時期の変更に関する燃料噴射量制御や点火時期制御をバンク毎に行わなくてもよくなる分だけ簡略化することができる。
【0191】
・第1及び第2実施形態において、アイドル運転時以外の状況であって、カムシャフトでの上記変動が許容レベル以上である旨判断されたとき、その変動の増大に伴う各気筒毎の影響に応じて、上記燃料噴射量の減量及び点火時期の変更を各気筒毎に行うようにしてもよい。この場合、上記変動の増大が生じたとき、その対策としての燃料噴射量の減量及び点火時期の変更を、各気筒毎に最適なものとすることができる。
【0192】
・第1及び第2実施形態において、カムシャフトでの上記変動を各気筒毎に検出し、アイドル運転以外のときに当該変動が所定レベル以上である旨判断される気筒に対し、上記燃料噴射量の減量及び点火時期の変更を行うようにしてもよい。この場合、各気筒での上記変動の大きさに応じて、気筒毎の燃料噴射量の減量及び点火時期の変更を異なるものとすることができ、同変動の増大に伴うエンジン運転の不安定を一層適切に抑制することができる。
【0193】
・第1及び第2実施形態において、カムシャフトでの上記変動が検出されたとき、同変動が許容レベル以上であれば同変動の増大への対策を講じたが、本発明はこれに限定されない。即ち、同変動の増大への対策を講じるのではなく、同変動が許容レベル以上であることを運転者に知らせるだけでもよい。
【0194】
・第1実施形態において、乖離量K1,K2のいずれか一方が所定値aよりも大となったとき、カムシャフトでの上記変動の増大への対策を講じたが、乖離量K1,K2の両方が所定値a以上になったときに当該対策を講じるようにしてもよい。
【0195】
・第2実施形態において、乖離量K1,K2,K3のいずれか一つが所定値aよりも大となったとき、カムシャフトでの上記変動の増大への対策を講じたが、乖離量K1,K2,K3のうちの二つ、或いは三つ全てが所定値a以上になったときに当該対策を講じるようにしてもよい。
【0196】
・第1及び第2実施形態において、乖離量K1,K2,K3の算出に、時間差ΔtP,ΔtQ,ΔtRの平均値ΔtPav,ΔtQav,ΔtRavを用いたが、これに代えて時間差ΔtP,ΔtQ,ΔtRを用いるようにしてもよい。
【0197】
・第1及び第2実施形態において、時間差ΔtP,ΔtQ,ΔtRを求める際、経過時間tA’,tB’,tC’の平均値tAav,tBav,tCavを用いたが、これに代えて経過時間tA’,tB’,tC’を用いるようにしてもよい。
【0198】
・第1及び第2実施形態において、適正値X,Y,Zをカムシャフトの平均回転速度に応じて可変とする際、その平均回転速度を平均値tAav,tBav,tCav,tRavに基づき求めたが、これに代えて経過時間tA,tB,tC,tRに基づき求めるようにしてもよい。
【0199】
・上記適正値X,Y,Zをカムシャフトの平均回転速度に応じて可変とするのではなく、例えばエンジン回転速度など他のエンジン運転状態に応じて可変とするようにしてもよい。なお、上記エンジン回転速度については、カムシャフトの平均回転速度に影響を与えるパラメータであることから、この平均回転速度に代えて用いることが可能である。
【0200】
・また、上記適正値X,Y,Zの可変設定を、カムシャフトの平均回転速度以外のパラメータであって、吸気側可変動弁機構16及び排気側可変動弁機構17の進角側油圧室44,64及び遅角側油圧室45,65内の油圧に影響を及ぼすパラメータに基づき行ってもよい。こうしたパラメータとしては、吸気側可変動弁機構16及び排気側可変動弁機構17を駆動するためのオイルの油温をあげることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の制御装置が適用されるV型六気筒エンジンの全体構成を示す略図。
【図2】吸気カムシャフトをその軸線方向から見た図。
【図3】排気カムシャフトをその軸線方向から見た図。
【図4】吸気側可変動弁機構の内部構造、及び同機構を油圧駆動するための油圧回路を示す図。
【図5】排気側可変動弁機構の内部構造、及び同機構を油圧駆動するための油圧回路を示す図。
【図6】クランクロータ及びクランクポジションセンサを示す拡大図。
【図7】カムロータ及びカムポジションセンサを示す拡大図。
【図8】(a)及び(b)は吸気カムシャフト14においてバルブリフタ12aに接触する部位が時間経過に伴いどのように変化してゆくかを示す説明図。(c)は時間経過に伴うクランクポジションセンサ20からの検出信号の出力態様を示す出力波形図。
【図9】カムシャフトにおける上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動を検出し、その変動が許容レベル以上になったときに対策を講じるための処理を実行する手順を示すフローチャート。
【図10】カムシャフトにおける上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動を検出し、その変動が許容レベル以上になったときに対策を講じるための処理を実行する手順を示すフローチャート。
【図11】カムシャフトの回転速度の適正状態に対する変動の増大に対するオイルコントロールバルブの駆動電流の低減態様を示すグラフ。
【図12】第2実施形態の吸気カムシャフトをその軸線方向から見た図。
【図13】第2実施形態のカムロータ及びカムポジションセンサを示す拡大図。
【図14】(a)及び(b)は吸気カムシャフト14においてバルブリフタ12aに接触する部位が時間経過に伴いどのように変化してゆくかを示す説明図。(c)は時間経過に伴うクランクポジションセンサ20からの検出信号の出力態様を示す出力波形図。
【図15】カムシャフトにおける上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動を検出し、その変動が許容レベル以上になったときに対策を講じるための処理を実行する手順を示すフローチャート。
【図16】カムシャフトにおける上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動を検出し、その変動が許容レベル以上になったときに対策を講じるための処理を実行する手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
1…エンジン、2…第1バンク、3…第2バンク、4…シリンダブロック、6…燃焼室、7…吸気通路、8…排気通路、9…燃料噴射弁、10…点火プラグ、11…クランクシャフト、12…吸気バルブ、12a…バルブリフタ、12b…バルブスプリング、13…排気バルブ、13a…バルブリフタ、13b…バルブスプリング、14…吸気カムシャフト、15…排気カムシャフト、16…吸気側可変動弁機構、17…排気側可変動弁機構、18…電子制御装置(推定手段、検出手段、判断手段、制御手段)、19…クランクロータ、19b…欠歯、19a…突起、20…クランクポジションセンサ、21,23,25,27…カムロータ、21a〜21c…突起、22,24,26,28…カムポジションセンサ、31…カムノーズ、32〜34…カム、44…進角側油圧室、45…遅角側油圧室、48…OCV(オイルコントロールバルブ)、52…オイルポンプ、64…進角側油圧室、65…遅角側油圧室、68…OCV(オイルコントロールバルブ)、81…カムノーズ、82〜85…カム。
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用エンジンなどの内燃機関においては、クランクシャフトの回転が伝達されて吸気バルブや排気バルブといった機関バルブを開閉駆動すべく回転するカムシャフトが設けられている。また近年は、内燃機関の出力向上や排気エミッションの改善等を目的として、機関バルブのバルブタイミングを変更する可変動弁機構を備えたものが実用化されている。こうした可変動弁機構では、クランクシャフトの回転に基づき駆動されるオイルポンプからの吐出オイルを進角側油圧室と遅角側油圧室とに選択的に供給し、そのオイルの油圧でクランクシャフトの回転に対するカムシャフトの相対回転位相を進角側又は遅角側に変更するようにしている。
【0003】
ところで、機関バルブを開閉すべくカムシャフトを回転させるときには、機関バルブのバルブスプリングの弾性力によって、カムシャフトに対し回転方向と逆方向又は同方向のトルクが働くことになる。即ち、カムシャフトの回転に伴いカムが機関バルブを押して開くときには、機関バルブのバルブスプリングの弾性力によってカムシャフトには回転方向と逆方向のトルクが働く。一方、カムが機関バルブを押しきった後にカムシャフトの回転に伴い機関バルブが閉じるときには、機関バルブのバルブスプリングの弾性力によってカムシャフトには回転方向と同方向のトルクが働く。このようにカムシャフトに回転方向と逆方向のトルクや回転方向と同方向のトルクが働くと、カムシャフトの回転速度が低下したり上昇したりして、カムシャフトの回転位相に影響を及ぼすことになる。
【0004】
カムシャフトの回転位相については、基準とするタイミングからカムシャフトの周方向各部位が例えば機関バルブに対応する回転位置に達するタイミングまでの経過時間によって表すことが可能である。仮に、カムシャフトの回転位相が同シャフトを平均回転速度で等速回転させたときの理論上の回転位相と一致していれば、上記各部位についての経過時間はカムシャフトの回転方向前側の部位から後側の部位に向かって一定の割合で長くなってゆく。しかし、実際には機関バルブの開閉に伴いカムシャフトの回転速度が変動するため、実際の回転位相が上記理論上の回転位相に対して変動し、上記各部位のうち当該変動が顕著な部位については上記経過時間が上記理論上の回転位相のときに比べて長くなったり短くなったりする。
【0005】
こうした機関バルブの開閉に伴う上記実際の回転位相の上記理論上の回転変動に対する変動は、可変動弁機構を備えた内燃機関で特に顕著に現れる。これは、可変動弁機構を備えた内燃機関では、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相が進角側油圧室及び遅角側油圧室に充填されたオイルによって保持されることから、上記トルクがカムシャフトの回転速度に対し大きな影響を及ぼす可能性があるためである。従って、機関バルブの開閉に伴い上記トルクがカムシャフトに作用したとき、機関運転状態によってはカムシャフトの実際の回転位相の上記理論上の回転位相に対する変動が適正状態よりも大となる可能性がある。
【0006】
ここで、上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動が大となり易い機関運転状態としては、例えばアイドル運転時など機関バルブのバルブタイミングがその変更範囲の境界に保持される状況があげられる。
【0007】
この場合、進角側油圧室と遅角側油圧室とのうちの一方の油圧が高められ、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相(機関バルブのバルブタイミング)がその変更範囲の境界で保持されるよう、上記油圧によってカムシャフトの押し付けが行われる。ただし、このときにも進角側油圧室と遅角側油圧室とのうちの他方には、ある程度のオイルが供給され続け、このオイルの油圧によって上述したカムシャフトの押し付けとは反対方向への押し付けも行われる。これは、機関バルブのバルブタイミングをその変更範囲の上記境界とは反対側の境界に向けて変更する際、その動作の応答性を良好なものとするためである。
【0008】
従って、この場合は、機関バルブのバルブタイミングが変更範囲の境界に保持されるようカムシャフトを押し付ける力が、上記進角側油圧室と遅角側油圧室とのうちの他方に供給されるオイルの油圧に対応する分だけ小さくなる。更に、アイドル運転時は、もともと機関回転速度が低くオイルポンプから吐出されるオイルの油圧が低い状態にある。これらのことから、アイドル運転時には、機関バルブの開閉に伴いカムシャフトにトルクが作用するとき、同シャフトの回転速度の適正状態に対する変動が大きくなる可能性がある。そして、カムシャフトの回転速度の適正状態に対する変動の増大に伴い、カムシャフトの実際の回転位相の上記理論上の回転位相に対する変動が適正状態よりも大きくなると、可変動弁機構で打音が発生したり、機関バルブのバルブタイミングの適正状態からのずれが大きくなって機関運転に影響を及ぼすおそれがある。
【0009】
そこで、特許文献1に示されるように、カムシャフトに機関バルブの開閉に伴うトルクが作用することを考慮し、進角側油圧室及び遅角側油圧室の油圧を補正することも考えられる。この場合、上記補正用のデータとしてカムシャフトの回転位置と同シャフトに作用するトルクとの関係に基づいた補正用データを予め記憶しておき、同データを用いて進角側油圧室及び遅角側油圧室の油圧が補正される。このため、機関バルブの開閉に伴いカムシャフトに作用するトルクによって同シャフトの回転速度の適正状態に対する変動が大となるのを抑制するよう、進角側油圧室及び遅角側油圧室に作用する油圧を補正することができる。その結果、カムシャフトの上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動が適正状態よりも大となることに伴い、上述した不具合が生じるのを抑制することができるようになる。
【0010】
【特許文献1】
特開平9−144571公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ただし、上記補正用データは、カムシャフトの回転位置と同シャフトに作用するトルクとの関係に基づいて予め決定したものにすぎない。このため、同補正用データに基づく油圧の補正が実際の内燃機関の運転状況全てにおいて適切であるとは限らず、場合によっては上記油圧の補正が不足したり過剰になったりすることが考えられる。
【0012】
例えば、カムシャフトの回転位置が所定の位置にあるとき、実際に同シャフトに作用する機関バルブの開閉に伴うトルクが上記補正用データ上で想定された値と同じであっても、そのときの機関回転速度や油温によって進角側油圧室及び遅角側油圧室の油圧は異なる。このため、カムシャフトの相対回転位相を保持する力が異なるものとなり、同シャフトの回転速度の変動の大きさも異なるものとなることから、カムシャフトの上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動も異なるものとなる。従って、同変動を抑制するための上記補正用データに基づき、進角側油圧室及び遅角側油圧室の油圧を補正したとしても、その補正が不足したり過剰になったりする。
【0013】
このように、予め決定された上記補正用データに基づく進角側油圧室及び遅角側油圧室の油圧の補正では、機関運転状況によって様々に変化する機関バルブ開閉時の実際のカムシャフトの回転速度の変動、即ち上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動を適切に許容レベル未満に抑制することは困難である。従って、内燃機関の運転状況によっては、上記変動が許容レベル以上に増大しているとき、それに対し適切に対策を講じることができないという事態が生じる。
【0014】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、機関バルブの開閉に伴うカムシャフトの実際の回転位相の理論上の回転位相に対する変動を検出することができ、当該変動の増大に対して適切に対策を講じることの可能な内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、内燃機関の機関バルブを開閉動作すべく回転するカムシャフトと、同機関のクランクシャフトに対する前記カムシャフトの相対回転位相を変更する可変動弁機構とを備え、前記機関バルブの開閉に伴い、前記カムシャフトの実際の回転位相が同シャフトの平均回転速度での等速回転時の理論上の回転位相に対して変動する内燃機関の制御装置において、前記カムシャフトの回転位相については、基準とするタイミングから前記カムシャフトの周方向各部位が前記機関バルブに対応する回転位置に達するタイミングまでの経過時間によって表されるものであり、前記カムシャフトの周方向各部位のうち、前記実際の回転位相の前記理論上の回転位相に対する変動が顕著でない部位についての前記経過時間から前記理論上の回転位相を求め、これによって前記変動の顕著な部位についての前記理論上の回転位相での前記経過時間の理論値を推定する推定手段と、前記変動の顕著な部位についての前記経過時間の実測値と前記理論値との差を、前記理論上の回転位相に対する前記実際の回転位相の変動として検出する検出手段とを備えた。
【0016】
機関バルブの開閉時には、それに伴うトルクをカムシャフトが受けるため、同シャフトの回転速度が低下したり上昇したりするようになる。このカムシャフトの回転速度の変動によって、同シャフトの上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動が生じるが、当該変動態様は内燃機関の運転状況に応じて様々である。ここで、カムシャフトにおける周方向各部位のうち、上記変動の顕著でない部位についての上記経過時間は上記理論上の回転位相のときとほとんど変わらない値をとる。このため、上記変動の顕著でない部位についての上記経過時間から上記理論上の回転位相を求めることができ、これによって上記変動の顕著な部位についての上記理論上の回転位相での上記経過時間の理論値が推定される。一方、カムシャフトにおける周方向各部位のうち、上記変動の顕著な部位についての上記経過時間は上記理論上の回転位相のときに比べて長くなったり短くなったりする。そして、上記変動が顕著な部位についての上記経過時間の実測値と理論値との差が、上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動として検出される。こうして、上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動を検出することができるため、その変動が適正状態に対し増大したときに適切に対策を講じることが可能になる。
【0017】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記理論上の回転位相に対する前記実際の回転位相の変動が機関運転状態に応じて可変設定される適正値に対し所定量以上離れているか否かに基づき、前記変動が許容レベル以上かどうかを判断する判断手段を更に備えた。
【0018】
機関回転速度の変化に伴うカムシャフトの平均回転速度の変化など、機関運転状態によって上記変動の適正値は異なるものとなる。しかし、それに対応して当該適正値を可変設定することができるため、上記変動が許容レベル以上かどうかを適切に判断することができ、上記変動が許容レベル以上であるときに適切に対策を講じることができる。
【0019】
請求項3記載の発明において、請求項1又は2記載の発明において、前記推定手段は、前記変動の顕著でない部位についての前記経過時間として同経過時間を複数回求めて平均したものを用いて前記理論上の回転位相を求め、これによって前記変動の顕著な部位についての前記理論上の回転位相での前記経過時間の理論値を推定するものとした。
【0020】
上記のように変動の顕著でない部位についての上記経過時間を求めることにより、仮に一度の経過時間の計測に誤差が生じたりしても、その誤差による影響を最小限に抑えることができ、上記のように推定される理論値が不適切な値になることはなくなる。
【0021】
請求項4記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記検出手段は、前記変動の検出に用いられる前記経過時間の実測値と前記理論値との差として、当該差を複数回求めて平均したものを用いることを要旨とした。
【0022】
上記のように経過時間の実測値と理論値との差を求めることにより、仮に一度の当該差の算出時に誤差が生じたりしても、その誤差による影響を最小限に抑えることができ、上記のように求められる差が不適切な値になることはなくなる。
【0023】
請求項5記載の発明では、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記検出手段は、内燃機関の定常運転中と判断されるとき、前記変動の検出を行うものとした。
【0024】
内燃機関の定常運転中に上記変動の検出を行うことで、検出された変動は機関運転の急変による影響を受けていない値となり、同変動を信頼性の高い値とすることができる。
【0025】
請求項6記載の発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記可変動弁機構は、前記クランクシャフトの回転に基づき駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルの油圧により前記カムシャフトの相対回転位相を進角側又は遅角側に変更し、内燃機関のアイドル運転状態にあっては前記カムシャフトの相対回転位相をその変更範囲の境界に保持するものであって、前記検出手段は、内燃機関のアイドル運転時に、前記変動の検出を行うものとした。
【0026】
アイドル運転時には、カムシャフトの相対回転位相がその変更範囲の境界に保持されるよう油圧による力をカムシャフトに作用させることになるが、当該相対回転位相を上記境界とは逆方向に変更する際の応答性を確保するため、上記油圧による力とは逆方向にも油圧による力が作用させられることになる。このため、カムシャフトの相対回転位相を上記境界に保持するために同シャフトに作用する油圧による力は、上述したように逆方向に作用する油圧による力の分だけ小さくなる。また、アイドル運転時には、もともと機関回転速度が低くオイルポンプから吐出されるオイルの油圧が低い状態になる。これらのことから、アイドル運転時には、機関バルブの開閉に伴うカムシャフトの回転速度の変動が大きくなり、上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動が大きくなる可能性がある。しかし、このとき上記変動の検出が行われるため、当該検出に基づき上記変動が適正状態よりも増大したとき、適切に対策を講じることができる。
【0027】
請求項7記載の発明では、請求項6記載の内燃機関の制御装置において、
前記変動が許容レベル以上である旨判断されるとき、前記カムシャフトの相対回転位相をその境界に保持する力が大きくなるよう前記可変動弁機構を制御する制御手段を更に備えた。
【0028】
アイドル運転時には、カムシャフトの相対回転位相がその変更範囲の境界に保持されるよう油圧による力がカムシャフトに作用するが、このときに上記変動が許容レベル以上になると、その対策として上記油圧による力が大きくされ、当該変動が抑制されるようになる。
【0029】
請求項8記載の発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置において、前記変動が許容レベル以上である旨判断されるとき、内燃機関の運転制御に用いられるパラメータを同機関の運転を安定させる方向に変更する制御手段を更に備えた。
【0030】
カムシャフトの上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動が許容レベル以上になると、機関バルブが機関運転にとって適切でないタイミングで開閉するようになり、機関運転状態の悪化に繋がる。しかし、この対策として内燃機関の運転制御に用いられるパラメータが同機関の運転を安定させる方向に変更され、上記変動に伴う機関運転状態の悪化が抑制されるようになる。
【0031】
請求項9記載の発明では、請求項8記載の発明において、前記内燃機関は複数の気筒を備え、前記制御手段は、内燃機関の運転を安定させる方向への前記パラメータの変更を各気筒毎に実行するものとした。
【0032】
複数の気筒を備える内燃機関にあっては、カムシャフトの上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動の増大による影響が各気筒によって異なるものとなる。上記構成によれば、カムシャフトの上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動が許容レベル以上であるとき、各気筒毎に機関運転を安定させる方向への上記パラメータの変更が行われるため、同変更を各気筒毎に最適なものとすることができる。
【0033】
請求項10記載の発明では、請求項8記載の発明において、前記内燃機関は、複数のシリンダブロックを備えるとともに各シリンダブロックに対応してカムシャフトを備え、前記検出手段は、それらカムシャフトの前記理論上の回転位相に対する前記実際の回転位相の変動をそれぞれ検出するものであり、前記制御手段は、許容レベル以上の前記変動が生じているカムシャフトに対応するシリンダブロックの気筒に対し、内燃機関の運転を安定させる方向への前記パラメータの変更を実行するものとした。
【0034】
複数のシリンダブロックを備える内燃機関にあっては、各シリンダブロックに対応してカムシャフトが設けられており、それぞれのカムシャフトにおいて上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動が大きくなる可能性がある。上記構成によれば、同変動が許容レベル以上になったカムシャフトに対応したシリンダブロックの気筒に対し、機関運転を安定させる方向への上記パラメータの変更が行われ、上記変動の増大に対し適切に対策を講じることができるようになる。
【0035】
請求項11記載の発明において、請求項8記載の発明において、前記内燃機関は、吸気用の機関バルブに対応した吸気カムシャフトと、排気用の機関バルブに対応した排気カムシャフトとを備え、前記検出手段は、それらカムシャフトの前記理論上の回転位相に対する前記実際の回転位相の変動をそれぞれ検出するものであり、前記制御手段は、前記吸気カムシャフトの前記変動が許容レベル以上である旨判断されるときに同判断に対応して前記パラメータの機関運転安定方向への変更を行い、前記排気カムシャフトの前記変動が許容レベル以上である旨判断されるとき同判断に対応して前記パラメータの機関運転安定方向への変更を行うものとした。
【0036】
吸気カムシャフトと排気カムシャフトとを備える内燃機関にあっては、それらカムシャフト各々に上記理論上の回転位相に対する上記実際の回転位相の変動が大きくなる可能性がある。そして、吸気カムシャフトで上記変動が大きくなる場合と排気カムシャフトで上記変動が大きくなる場合とでは、内燃機関への影響が異なるものとなる。しかし、上記構成によれば、吸気カムシャフトでの上記変動に対応した上記パラメータの変更と、排気カムシャフトでの上記変動に対応した上記パラメータの変更とを、互いに異なるものとすることができる。従って、吸気カムシャフトでの上記変動と排気カムシャフトでの上記変動とに対し、それぞれ適切に内燃機関の運転を安定させる方向への上記パラメータの変更を行うことができ、それらカムシャフト各々についての上記変動の増大に対し適切に対策を講じることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、本発明を自動車用のV型六気筒エンジンに適用した第1実施形態を図1〜図11に従って説明する。
【0038】
図1に示されるV型六気筒のエンジン1は、一番気筒#1、三番気筒#3、及び五番気筒#5(一番気筒#1のみ図示)を有する第1バンク2と、二番気筒#2、四番気筒#4、及び六番気筒#6(二番気筒#2のみ図示)を有する第2バンク3とを備えている。各気筒#1〜#6の吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程は、一番気筒#1、二番気筒#2、三番気筒#3、四番気筒#4、五番気筒#5、六番気筒#6の順で行われることとなる。
【0039】
エンジン1の第1及び第2バンク2,3は、それぞれシリンダブロック4を備えている。そして、第1バンク2のシリンダブロック4には一番気筒#1、三番気筒#3、及び五番気筒#5のピストン5が設けられ、第2バンク3のシリンダブロック4には二番気筒#2、四番気筒#4、及び六番気筒#6のピストン5が設けられている。
【0040】
一番〜六番気筒#1〜#6の燃焼室6には吸気通路7及び排気通路8が接続されている。そして、吸気通路7を通過する空気と燃料噴射弁9から噴射された燃料とからなる混合気が燃焼室6に充填され、同混合気が点火プラグ10による点火に基づき燃焼すると、そのときの燃焼エネルギによってピストン5が往復移動するとともに、エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11が回転する。また、燃焼後の混合気は、排気として排気通路8に送り出されるようになる。
【0041】
燃焼室6と吸気通路7との間は吸気バルブ12の開閉駆動によって連通・遮断され、燃焼室6と排気通路8との間は排気バルブ13の開閉駆動によって連通・遮断される。エンジン1には、各バンク2,3のシリンダブロック4毎に吸気バルブ12を開閉駆動するための吸気カムシャフト14、及び排気バルブ13を開閉駆動するための排気カムシャフト15が設けられている。これら吸気カムシャフト14、及び排気カムシャフト15には、クランクシャフト11の回転が伝達される。
【0042】
吸気カムシャフト14が回転すると、それに伴い吸気バルブ12のバルブエンドに当接するバルブリフタ12aが同シャフト14のカムによって押され、吸気バルブ12が開弁する。その後、バルブリフタ12aが吸気カムシャフト14のカムによって押されきると、今度はバルブスプリング12bの弾性力によって吸気バルブ12が閉弁する。こうした吸気バルブ12の開閉は吸気行程で行われることとなる。また、排気カムシャフト15が回転すると、それに伴い排気バルブ13のバルブエンドに当接するバルブリフタ13aが同シャフト15のカムによって押され、排気バルブ13が開弁する。その後、バルブリフタ13aが排気カムシャフト15のカムによって押されきると、今度はバルブスプリング13bの弾性力によって排気バルブ13が閉弁する。こうした排気バルブ13の開閉は排気行程で行われることとなる。
【0043】
エンジン1には、クランクシャフト11の回転に対する吸気カムシャフト14の相対回転位相を変更すべく油圧駆動される吸気側可変動弁機構16と、クランクシャフト11の回転に対する排気カムシャフト15の相対回転位相を変更すべく油圧駆動される排気側可変動弁機構17とが設けられている。これらの機構17,18の油圧駆動により、クランクシャフト11に対する吸気カムシャフト14及び排気カムシャフト15の相対回転位相が変更されると、吸気バルブ12及び排気バルブ13のバルブタイミングが変更されるようになる。
【0044】
エンジン1が搭載される自動車には、吸気バルブ12及び排気バルブ13のバルブタイミング制御、燃料噴射弁9から噴射される燃料の燃料噴射量制御、及び点火プラグ10による点火についての点火時期制御など、エンジン1の運転制御を行う電子制御装置18が設けられている。この電子制御装置18には、以下に示す各種センサからの検出信号が入力される。
【0045】
・クランクシャフト11が回転するとき、同シャフト11に取り付けられたクランクロータ19の通過に対応した信号を、同シャフト11の回転に対応する信号として出力するクランクポジションセンサ20。
【0046】
・第1バンク2の吸気カムシャフト14が回転するとき、同シャフト14に取り付けられたカムロータ21の通過に基づく信号を、同シャフト14の回転位置に対応した信号として出力するカムポジションセンサ22。
【0047】
・第1バンク2の排気カムシャフト15が回転するとき、同シャフト15に取り付けられたカムロータ23の通過に基づく信号を、同シャフト15の回転位置に対応した信号として出力するカムポジションセンサ24。
【0048】
・第2バンク3の吸気カムシャフト14が回転するとき、同シャフト14に取り付けられたカムロータ25の通過に基づく信号を、同シャフト14の回転位置に対応した信号として出力するカムポジションセンサ26。
【0049】
・第2バンク3の排気カムシャフト15が回転するとき、同シャフト15に取り付けられたカムロータ27の通過に基づく信号を、同シャフト15の回転位置に対応した信号として出力するカムポジションセンサ28。
【0050】
次に、吸気カムシャフト14及び排気カムシャフト15について、図2及び図3を参照して詳しく説明する。
図2は、吸気バルブ12を開閉するのに用いられるカムの吸気カムシャフト14に対する位置関係を示すために、同吸気カムシャフト14をその軸線方向から見た図である。
【0051】
同図に示されるように、吸気カムシャフト14には、その軸線から離れる方向に突出するカムノーズ31を備えたカム32〜34が三つの気筒に対応して設けられている。なお、ここでいう三つの気筒は、上記吸気カムシャフト14を第1バンク2で用いる場合には一番気筒#1、三番気筒#3、五番気筒#5になり、同吸気カムシャフト14を第2バンク3で用いる場合には二番気筒#2、四番気筒#4、六番気筒#6になる。
【0052】
これらカム32〜34のカムノーズ31は、吸気カムシャフト14の周方向について互いの間に等しい間隔をおいて、即ち同シャフト14の軸線を中心とする120°という間隔をおいて存在している。そして、吸気カムシャフト14がクランクシャフト11からの回転伝達に基づき例えば図中において右回転すると、各カム32〜34のカムノーズ31が吸気バルブ12のバルブリフタ12aに対応して位置したとき、吸気バルブ12が開弁状態とされることになる。
【0053】
カムノーズ31がバルブリフタ12aを押し始めてから同バルブリフタ12aにカムノーズ31の先端が接触するまでの間、即ち吸気バルブ12における開弁開始から全開への過程では、バルブスプリング12bの弾性力が吸気カムシャフト14に対しその回転を妨げるように作用する。このため、当該過程においては、吸気カムシャフト14に回転方向とは逆方向のトルクが働くことになる。また、カムノーズ31の先端がバルブリフタ12aに接触してから同バルブリフタ12aへのカムノーズ31の押し付けが終わるまでの間、即ち吸気バルブ12における閉弁開始から全閉への過程では、バルブスプリング12bの弾性力が吸気カムシャフト14に対しその回転を進めるように作用する。このため、当該過程においては、吸気カムシャフト14に回転方向と同方向のトルクが働くことになる。このように吸気カムシャフト14に回転方向と逆方向のトルクや回転方向と同方向のトルクが働くと、吸気カムシャフト14の回転速度が低下したり上昇したりして、吸気カムシャフト14の回転位相に影響を及ぼすことになる。
【0054】
吸気カムシャフト14の回転位相については、基準とするタイミングから吸気カムシャフト14の周方向各部位、例えば図2の位置P1〜P12に対応する部位が吸気バルブ12(バルブリフタ12a)に対応した位置に達するタイミングまでの経過時間によって表すことが可能である。仮に、吸気カムシャフト14の回転位相が同シャフト14を平均回転速度で等速回転させたときの理論上の回転位相と一致していれば、位置P1〜P12に対応する部位についての経過時間は位置P1から位置P12に向かって一定の割合で長くなってゆく。しかし、実際には吸気バルブ12の開閉に伴い吸気カムシャフト14の回転速度が変動するため、実際の回転位相が上記理論上の回転位相に対して変動し、上記各部位のうち当該変動が顕著な部位については上記経過時間が上記理論上の回転位相のときと比べて長くなったり短くなったりする。
【0055】
位置P1〜P12に対応する各部位のうち、上記変動が顕著な部位としては、吸気カムシャフト14においてカムノーズ31の側部に位置する位置P2,P4,P6,P8,P10,P12に対応する部位があげられる。これらの部位が吸気バルブ12に対応して位置しているときには、所定量の吸気カムシャフト14の回転に対する吸気バルブ12の開閉量が多くなり、同シャフト14に働くトルクの変化量が大きくなる。このトルクの変化量が大きいほど吸気カムシャフト14の回転速度の変動が大となる傾向があるため、上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動が顕著な部位として、位置P2,P4,P6,P8,P10,P12に対応する部位があげられるのである。
【0056】
一方、位置P1〜P12に対応する各部位のうち、上記変動が顕著でない部位としては、吸気カムシャフト14において周方向に隣り合うカムノーズ31の中間に位置する位置P1,P5,P9に対応する部位、及び各カムノーズ31の先端の位置P3,P7,P11に対応する部位があげられる。これらの部位が吸気バルブ12に対応して位置しているときには、所定量の吸気カムシャフト14の回転に対する吸気バルブ12の開閉量があまり大きくならず、同シャフト14に働くトルクの変化量が小さくなる。このトルクの変化量が小さいときには、吸気カムシャフト14の回転速度の変動がほとんど生じないため、上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動が顕著でない部位として、位置P1,P3,P5,P7,P9,P11に対応する部位があげられるのである。
【0057】
図3は、排気バルブ13を開閉するのに用いられるカムの排気カムシャフト15に対する位置関係を示すために、同排気カムシャフト15をその軸線方向から見た図である。
【0058】
同図に示される排気カムシャフト15は、クランクシャフト11からの回転伝達に基づき例えば図中右回転するようになる。この排気カムシャフト15にも、吸気カムシャフト14と同様にカムノーズ31を備えたカム32〜34が三つの気筒に対応して設けられている。なお、ここでいう三つの気筒は、上記排気カムシャフト15を第1バンク2で用いる場合には一番気筒#1、三番気筒#3、五番気筒#5になり、同排気カムシャフト15を第2バンク3で用いる場合には二番気筒#2、四番気筒#4、六番気筒#6になる。
【0059】
これらカム32〜34のカムノーズ31の排気カムシャフト15に対する位置関係は、吸気カムシャフト14の場合と同様となっている。ただし、排気カムシャフト15におけるカムノーズ31の同シャフト15の回転方向についての位置は、吸気カムシャフト14のカムノーズ31の同シャフト14の回転方向についての位置に対し270°遅れた状態となっている。そして、排気カムシャフト15の回転時に、カムノーズ31が排気バルブ13のバルブリフタ13aに押し付けられて排気バルブ13に開弁方向への力が作用すること、及び、バルブスプリング13bの弾性力が排気バルブ13に閉弁方向への力として作用することにより、同バルブ13が開閉動作する。
【0060】
排気バルブ13が開閉動作するとき、排気カムシャフト15には、バルブスプリング13bの弾性力に基づき、同シャフト15の回転方向と逆方向のトルクや回転方向と同方向のトルクが働く。このため、排気カムシャフト15においても、その回転速度が吸気カムシャフト14と同様に低下したり上昇したりして、排気カムシャフト15の回転位相に影響を及ぼすことになる。即ち、排気バルブ13の開閉に伴い排気カムシャフト15の回転速度が変動すると、排気カムシャフト15の回転位相が同シャフト15を平均回転速度で等速回転させたときの理論上の回転位相に対し変動する。また、排気カムシャフト15には吸気カムシャフト14と同じ態様でカム32〜34が設けられているため、排気カムシャフト15においても、吸気カムシャフト14の場合と同じ態様で、上記変動の顕著な部位、及び同変動の顕著でない部位が生じる。
【0061】
次に、吸気側可変動弁機構16及び排気側可変動弁機構17、並びに、それら機構16,17を油圧駆動するための油圧回路について、図4及び図5を参照して詳しく説明する。
【0062】
図4は、吸気側可変動弁機構16の内部構造、及び同機構16を油圧駆動する油圧回路を示している。同図に示されるように、吸気側可変動弁機構16は、吸気カムシャフト14の軸線上に設けられて同シャフト14に固定される回転部材41と、回転部材41と同軸上に設けられてクランクシャフト11に対しベルト等を介して連結されるリングカバー42とを備えている。回転部材41の外周部には複数のベーン43が形成され、これらベーン43によりリングカバー42内が進角側油圧室44と遅角側油圧室45とに区画されている。
【0063】
吸気側可変動弁機構16を油圧駆動するためのオイル供給を行う油圧回路は、進角側油圧室44に接続される進角側油路46と、遅角側油圧室45に接続される遅角側油路47とを備えている。そして、これら油路46,47は、オイルコントロールバルブ(OCV)48、供給通路49、及び排出通路50を介して、エンジン1のオイルパン51に繋がっている。
【0064】
上記供給通路49には、クランクシャフト11に連結されて同シャフト11の回転に基づき駆動されるオイルポンプ52が接続されている。また、上記OCV48は、互いに逆方向に働くコイルスプリング53及び電磁ソレノイド54の付勢力によって切換動作し、供給通路49及び排出通路50と進角側油路46及び遅角側油路47との接続状態を変更する。OCV48の駆動制御は、上記電子制御装置18を通じて、電磁ソレノイド54に対する電圧印可をデューティ制御することによって行われる。このデューティ制御ではデューティ比が用いられ、同デューティ比を所定範囲内で変更することにより電磁ソレノイド54に対する印可電圧が変更される。これにより、OCV48の駆動電流(電磁ソレノイド54を流れる電流)が調整され、OCV48が供給通路49及び排出通路50と進角側油路46及び遅角側油路47との接続状態を変更するための切り換え動作を行うようになる。
【0065】
デューティ比が上記所定範囲における最小値にされる場合、進角側油圧室44及び遅角側油圧室45に対するオイルの給排態様が、以下の態様をとるようOCV48の切り換え動作が行われる。即ちオイルパン51内からオイルポンプ52によって供給通路49に吐出されたオイルのうち、遅角側油路47を介して遅角側油圧室45に供給されるオイルの量が最大となるようにされる。また、このときには進角側油圧室44内から進角側油路46及び排出通路50等を介してオイルパン51に戻されるオイルの量も最大となるようにされる。
【0066】
その結果、遅角側油圧室45内の油圧による力に基づき、ベーン43が遅角側(図中左回転方向)に押され、クランクシャフト11の回転に対する吸気カムシャフト14の相対回転位相がその変更範囲の遅角側の境界に保持される。即ち、当該保持が行われるよう上記油圧によって吸気カムシャフト14(ベーン43)の遅角側への押し付けが行われ、これにより吸気バルブ12のバルブタイミングが最遅角状態に保持されるようになる。吸気バルブ12のバルブタイミングが最遅角状態に保持される状況としては、吸気バルブ12と排気バルブ13のバルブオーバラップ量を大きくすることで、良好なエンジン運転を確保する必要のあるアイドル運転時があげられる。
【0067】
なお、上記のようにデューティ比が最小値であって、クランクシャフト11に対する吸気カムシャフト14の相対回転位相がその変更範囲の遅角側の境界に保持された状態にあっても、進角側油路46(進角側油圧室44)に向けてある程度のオイル供給が続けられる。即ち、そのようにOCV48等を予め設定することで、進角側油圧室44内の油圧による力での吸気カムシャフト14の進角側への押し付けを行い、その分だけ遅角側油圧室45内の油圧による力での同シャフト14の遅角側への押し付けを弱めるようにしている。これを行うのは、エンジン回転速度が低いためにオイルポンプ52から吐出されるオイルの油圧が低くなるアイドル運転時に、吸気バルブ12のバルブタイミングを最遅角での保持状態から進角側に変更する際、その動作の応答性を良好なものとするためである。
【0068】
一方、デューティ比が上記所定範囲における最大にされた場合、進角側油圧室44及び遅角側油圧室45に対するオイルの給排態様が、以下の態様をとるようOCV48の切り換え動作が行われる。即ち、オイルパン51内からオイルポンプ52によって供給通路49に吐出されたオイルのうち、進角側油路46を介して進角側油圧室44に供給されるオイルの量が最大となるようにされる。また、このときには遅角側油圧室45内から遅角側油路47及び排出通路50を介してオイルパン51に戻されるオイルの量も最大となるようにされる。
【0069】
その結果、進角側油圧室44内の油圧による力に基づき、ベーン43が進角側(図中右回転方向)に押され、クランクシャフト11の回転に対する吸気カムシャフト14の相対回転位相がその変更範囲の進角側の境界に保持される。即ち、当該保持が行われるよう上記油圧によって吸気カムシャフト14(ベーン43)の押し付けが行われ、これにより吸気バルブ12のバルブタイミングが最進角状態に保持されるようになる。吸気バルブ12のバルブタイミングを最進角状態に保持される状況としては、高負荷時にエンジン1の吸気充填効率を向上すべく吸気バルブ12の開弁期間を極力進角させるという状況があげられる。
【0070】
また、デューティ比が上記所定範囲の最小値と最大値との間の値にされた場合、その値が大きくなるほど進角側油圧室44内の油圧が高くされるとともに遅角側油圧室45内の油圧が低くされ、逆に上記値が小さくなるほど進角側油圧室44内の油圧が低くされるとともに遅角側油圧室45内の油圧が高くされる。従って、クランクシャフト11の回転に対する吸気カムシャフト14の相対回転位相については、上記デューティ比が大きくなるほど進角側に変更され、逆に当該デューティ比が小さくなるほど遅角側に変更されることとなる。
【0071】
図5は、排気側可変動弁機構17の内部構造、及び同機構17を油圧駆動する油圧回路を示している。同図に示される排気側可変動弁機構17は、吸気側可変動弁機構16とほぼ同じ構成となっており、回転部材61、リングカバー62、ベーン63、進角側油圧室64、及び遅角側油圧室65を備えている。ただし、排気側可変動弁機構17においては、上記回転部材61が排気カムシャフト15に固定されるとともに、回転部材61を進角側(図中右回転方向)付勢するばね61aが設けられている。
【0072】
排気側可変動弁機構17を油圧駆動するためのオイル供給を行う油圧回路も、吸気側可変動弁機構16を油圧駆動するための油圧回路とほぼ同じ構成となっており、進角側油路66、遅角側油路67、オイルコントロールバルブ(OCV)68、供給通路69、及び排出通路70を備えている。なお、上記供給通路69はオイルポンプ52に接続されている。また、OCV68に対する進角側油路66及び遅角側油路67の接続位置が、OCV48に対する進角側油路46及び遅角側油路67の接続位置とは逆になっている。
【0073】
上記OCV68は、コイルスプリング71及び電磁ソレノイド72の付勢力によって切換動作し、供給通路69及び排出通路70と進角側油路66及び遅角側油路67との接続状態を変更するものである。OCV68の駆動制御は、上記電子制御装置18を通じて、電磁ソレノイド72に対する電圧印可をデューティ制御することによって行われる。このデューティ制御でも、デューティ比を所定範囲内で変更することにより、電磁ソレノイド72に対する印可電圧が変更される。これにより、OCV68の駆動電流(電磁ソレノイド72を流れる電流)が調整され、OCV68が供給通路69及び排出通路70と進角側油路66及び遅角側油路67との接続状態を変更するための切り換え動作を行うようになる。
【0074】
デューティ比が上記所定範囲における最小値にされる場合、進角側油圧室64及び遅角側油圧室65に対するオイルの給排態様が、以下の態様をとるようOCV68の切り換え動作が行われる。即ちオイルパン51内からオイルポンプ52によって供給通路69に吐出されたオイルのうち、進角側油路66を介して進角側油圧室64に供給されるオイルの量が最大となるようにされる。また、このときには遅角側油圧室65内から遅角側油路67及び排出通路70等を介してオイルパン51に戻されるオイルの量も最大となるようにされる。
【0075】
その結果、進角側油圧室64内の油圧による力に基づき、ベーン63が進角側(図中右回転方向)に押され、クランクシャフト11の回転に対する排気カムシャフト15の相対回転位相がその変更範囲の進角側の境界に保持される。即ち、当該保持が行われるよう上記油圧によって排気カムシャフト15(ベーン63)の進角側への押し付けが行われ、これにより排気バルブ13のバルブタイミングが最進角状態に保持されるようになる。また、このときの排気カムシャフト15には、排気バルブ13を開閉駆動する際の摩擦抵抗等によって、同シャフト15を遅角側に変更させようとする力が働くが、この力は上記ばね61aの付勢力によって打ち消される。排気バルブ13のバルブタイミングが最進角状態に保持される状況としては、吸気バルブ12と排気バルブ13のバルブオーバラップ量を大きくすることで、良好なエンジン運転を確保する必要のあるアイドル運転時があげられる。
【0076】
なお、上記のようにデューティ比が最小値であって、クランクシャフト11に対する排気カムシャフト15の相対回転位相がその変更範囲の進角側の境界に保持された状態にあっても、遅角側油路67(遅角側油圧室65)に向けてある程度のオイル供給が続けられる。即ち、そのようにOCV68等を予め設定することで、遅角側油圧室65内の油圧による力で排気カムシャフト15の遅角側への押し付けを行い、その分だけ進角側油圧室64内の油圧による力での同シャフト15の進角側への押し付けを弱めるようにしている。これを行うのは、エンジン回転速度が低いためにオイルポンプ52から吐出されるオイルの油圧が低くなるアイドル運転時に、排気バルブ13のバルブタイミングを最進角での保持状態から遅角側に変更する際、その動作の応答性を良好なものとするためである。
【0077】
一方、デューティ比が上記所定範囲における最大にされた場合、進角側油圧室64及び遅角側油圧室65に対するオイルの給排態様が、以下の態様をとるようOCV48の切り換え動作が行われる。即ち、オイルパン51からオイルポンプ52によって供給通路69に吐出されたオイルのうち、遅角側油路67を介して遅角側油圧室65に供給されるオイルの量が最大となるようにされる。また、このときには進角側油圧室64内から遅角側油路67及び排出通路70を介してオイルパン51に戻されるオイルの量も最大となるようにされる。
【0078】
その結果、遅角側油圧室65内の油圧による力に基づき、ベーン43が遅角側(図中左回転方向)に押され、クランクシャフト11の回転に対する排気カムシャフト15の相対回転位相がその変更範囲の遅角側の境界に保持される。即ち、当該保持が行われるよう上記油圧によって排気カムシャフト15(ベーン63)の押し付けが行われ、これにより排気バルブ13のバルブタイミングが最遅角状態に保持されるようになる。排気バルブ13のバルブタイミングを最遅角状態に保持される状況としては、適切なバルブオーバラップ量を確保すべく排気バルブ13の開弁期間を極力遅角させるという状況があげられる。
【0079】
また、デューティ比が上記所定範囲の最小値と最大値との間の値にされた場合、その値が大きくなるほど遅角側油圧室65内の油圧が高くされるとともに進角側油圧室64内の油圧が低くされ、逆に上記値が小さくなるほど遅角側油圧室65内の油圧が低くされるとともに進角側油圧室64内の油圧が高くされる。従って、クランクシャフト11の回転に対する排気カムシャフト15の相対回転位相については、上記デューティ比が大きくなるほど遅角側に変更され、逆に当該デューティ比が小さくなるほど進角側に変更されることとなる。
【0080】
次に、クランクロータ19及びクランクポジションセンサ20について、図6を参照して説明する。これらクランクロータ19及びクランクポジションセンサ20は、クランクシャフト11の回転状態をモニタするのに用いられる。
【0081】
同図に示されるように、クランクロータ19の外周部には、クランクシャフト11の軸線を中心とする所定角度(本実施形態では10°)毎に合計34個の突起19aと一つの欠歯19bとが設けられている。そして、クランクシャフト11が回転して、クランクロータ19の各突起19a及び欠歯19bが順次クランクポジションセンサ20の側方を通過することにより、同センサ20からはそれら各突起19a及び欠歯19bの通過に対応したパルス状の検出信号が出力されるようになる。従って、これら検出信号に基づきクランクシャフト11の回転速度(エンジン回転速度)を求めることができるとともに、クランクシャフト11の現在の回転位置を把握することが可能になる。
【0082】
次に、カムロータ21,23,25,27、及びカムポジションセンサ22,24,26,28について説明する。これらカムロータ21,23,25,27、及びカムポジションセンサ22,24,26,28は、第1及び第2バンク2,3の吸気カムシャフト14及び排気カムシャフト15の回転状態をモニタするのに用いられる。
【0083】
なお、各カムロータ21、23,25,27は各々同じ構成のものが採用され、カムポジションセンサ22,24,26,28も各々同じ構成のものが採用されている。このため、以下では、第1バンク2の吸気カムシャフト14の回転状態をモニタするためのカムロータ21及びカムポジションセンサ22についてのみ図7を参照して詳しく説明し、他のものについては説明を省略する。
【0084】
同図に示されるように、カムロータ21の外周部には、周方向長さの異なる合計三つの突起21a,21b,21cが設けられている。そして、クランクシャフト11からの回転伝達によって吸気カムシャフト14が回転すると、カムロータ21が図中右回転方向に回転し、突起21a,21b,21cが順次カムポジションセンサ22の側方を通過する。このとき、カムポジションセンサ22からは突起21a,21b,21cの通過に対応した検出信号が出力されるようになる。この検出信号から突起21a,21b,21cの周方向端部A,P,B,Q,C,Rがカムポジションセンサ22の側方を通過したのを検知することが可能になる。
【0085】
また、カムロータ21における各突起21a,21b,21cの形状、吸気カムシャフト14に対するカムロータ21の取付位置、及びカムポジションセンサ22の配設位置は、以下の各条件が全て満たされるように設定されている。
【0086】
・吸気カムシャフト14における位置P1(図2)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21aの周方向についての端部Aがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0087】
・吸気カムシャフト14における位置P4(図2)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21aの周方向についての端部Pがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0088】
・吸気カムシャフト14における位置P5(図2)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21bの周方向についての端部Bがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0089】
・吸気カムシャフト14における位置P6(図2)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21bの周方向についての端部Qがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0090】
・吸気カムシャフト14における位置P9(図2)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21cの周方向についての端部Cがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0091】
・吸気カムシャフト14における位置P11(図2)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21cの周方向についての端部Rがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0092】
次に、第1及び第2バンク2,3の吸気カムシャフト14及び排気カムシャフト15における上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動を検出する手順の概要について説明する。
【0093】
なお、各カムシャフト14,15における回転速度の適正状態に対する変動の検出は各々同じ手順によって行われることから、ここでは第1バンク2の吸気カムシャフト14での上記変動の検出についてのみ図8を参照して説明し、他のカムシャフトでの上記変動の検出については説明を省略する。
【0094】
図8において、(a)及び(b)は吸気カムシャフト14においてバルブリフタ12aに接触する部位が時間経過に伴いどのように変化してゆくかを示しており、(a)は吸気カムシャフト14の実際の回転位相に対応するものであって、(b)は上記理論上の回転位相に対応するものである。また、図8(c)は、時間経過に伴うクランクポジションセンサ20からの検出信号の出力態様を示している。
【0095】
吸気カムシャフト14における位置P1に対応する部位がバルブリフタ12aに接触している状態を基準(0°)とすると、同シャフト14の回転が30°進む毎に位置P2〜P12に対応する各部位が順次バルブリフタ12aに接触するようになる。仮に、吸気カムシャフト14を平均回転速度で等速回転させたとき、即ち同シャフト12の回転位相が上述した理論上の回転位相と一致しているとすれば、図8(b)に示されるように、位置P1〜P12に対応する部位が等しい時間間隔をおいて順次バルブリフタ12aに接触する。
【0096】
しかし、実際には、位置P2,P6,P10に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、吸気カムシャフト14には吸気バルブ12の開弁に伴う回転方向とは逆方向のトルクが働き、同シャフト14の回転速度が遅くなる。このため、吸気カムシャフト14の実際の回転時、上記各部位については、図8(a)に示されるように、バルブリフタ12aへの接触タイミングが理論上の回転位相のときに比べて遅れるようになる。また、位置P4,P8,P12に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するときには、吸気カムシャフト14に吸気バルブ12の閉弁に伴う回転方向と同方向のトルクが働き、同シャフト14の回転速度が速くなる。このため、上記各部位については、バルブリフタ12aへの接触タイミングが理論上の回転位相のときに比べて早くなる。
【0097】
従って、吸気カムシャフト14において、位置P2,P4,P6,P8,P10,P12に対応する部位は、上述したとおり理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動が顕著な部位ということになる。これら部位のうち、位置P4,P6に対応する部位がバルブリフタ12aに接触したことは、カムロータ21の突起21aの端部P、突起21bの端部Qがカムポジションセンサ22の側方を通過することによって検知することが可能である。
【0098】
また、吸気カムシャフト14において、位置P1,P3,P5,P7,P9,P11に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するときには、同シャフト14の回転速度がほとんど変動しないことは上述したとおりである。このため、上記各部位については、吸気カムシャフト14の実際の回転時においても、バルブリフタ12aへの接触タイミングが理論上の回転位相のときと比べてほとんど変わらない。
【0099】
従って、吸気カムシャフト14において、位置P1,P3,P5,P7,P9,P11に対応する部位は、上述したとおり理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動が顕著でない部位ということになる。これら部位のうち、位置P1,P5,P9,P11に対応する部位がバルブリフタ12aに接触したことは、カムロータ21の突起21aの端部A、突起21bの端部B、突起21cの端部C,Rがカムポジションセンサ22に側方を通過することによって検知することが可能である。
【0100】
なお、本実施形態では、上記変動の顕著でない部位として、位置P1,P3,P5,P7,P9,P11に対応する部位のうち、位置P1,P5,P9,P11に対応する部位が採用されている。また、上記変動の顕著な部位としては、位置P2,P4,P6,P8,P10,P12に対応する部位のうち、位置P4,P6に対応する部位が採用されている。こうした採用は、単にカムロータ21の形状等に応じて行っているものであって、カムロータ21の形状等の変更とともに上記採用を任意に変更することが可能である。
【0101】
即ち、吸気カムシャフト14における上記変動の顕著でない部位としては、位置P1,P5,P9,P11に対応する部位以外に、位置P3,P7に対応する各部位のうちから適宜採用することもできる。また、吸気カムシャフト14における上記変動の顕著な部位としては、位置P4,P6に対応する部位以外に、位置P2,P8,P10,P12に対応する部位のうちから適宜採用することもできる。
【0102】
吸気カムシャフト14の上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動の検出は、以下の[1]〜[6]に示される手順で行われることとなる。
[1]クランクポジションセンサ20からクランクロータ19の欠歯19bに対応した信号Sが出力されたとき(図8(c)参照)、そのタイミングt1を基準のタイミングとして時間の計測を開始する。
【0103】
[2]タイミングt1から吸気カムシャフト14の位置P1に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するタイミングt2までの経過時間tAを求める。同様に、タイミングt1から吸気カムシャフト14の位置P4,P5,P6,P9,P10に対応する各部位が、それぞれバルブリフタ12aに接触するタイミングt3,t4,t5,t6,t7までの経過時間tP,tB,tQ,tC,tRを求める。
【0104】
[3]経過時間tA,tB,tC,tRを複数回(例えば5回)計測し、各経過時間tAの平均値tAav、各経過時間tBの平均値tBav、各経過時間tCの平均値tCav、及び各経過時間tRの平均値tRavを算出する。
【0105】
[4]平均値tAav,tBav,tCav,tRavから上記理論上の回転位相を求め、これによって位置P4,P6に対応する部位についての上記理論上の回転位相での経過時間(理論値)である経過時間tP’,tQ’を推定する。
【0106】
[5]位置P4,P6に対応する部位についての経過時間の実測値と上記理論値との差として、経過時間tP,tQと経過時間tP’,tQ’との時間差ΔtP,ΔtQを算出する。
【0107】
[6]時間差ΔtP,ΔtQを複数回(例えば5回)算出して平均した平均値ΔtPav,ΔtQavを、吸気カムシャフト14の上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動として検出する。
【0108】
以上の手順により、実際に吸気カムシャフト14で生じている上記変動を検出することができる。なお、上記変動の検出は、第1バンク2の吸気カムシャフト14についてだけでなく、エンジン1の他のカムシャフトについても同様に行われる。従って、吸気バルブ12や排気バルブ13といった機関バルブの開閉時にカムシャフトで上記変動の増大が生じたとき、その増大を検出して適切に対策を講じることができるようになる。こうした対策としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0109】
エンジン1のアイドル運転時、吸気カムシャフト14は、クランクシャフト11に対する吸気カムシャフト14の相対回転位相がその変更範囲の遅角側の境界に保持されよう遅角側に押し付けられる。また、排気カムシャフト15は、クランクシャフト11に対する排気カムシャフト15の相対回転位相がその変更範囲の進角側の境界に保持されるよう進角側に押し付けられる。このときに吸気カムシャフト14や排気カムシャフト15の上記変動が増大すると、吸気側可変動弁機構16や排気側可変動弁機構17で打音が発生するおそれがある。
【0110】
即ち、吸気側可変動弁機構16では、ベーン43等がリングカバー42に対し押し付けられた状態にあり、吸気カムシャフト14での上記変動の増大に伴いベーン43等とリングカバー42の相対位置が周方向に変化すると、ベーン43等がリングカバー42に打ち付けられて打音が発生する。また、排気側可変動弁機構17では、ベーン63等がリングカバー62に対し押し付けられた状態にあり、排気カムシャフト15での上記変動の増大に伴いベーン63等とリングカバー62の相対位置が周方向に変化すると、ベーン63等がリングカバー62に打ち付けられて打音が発生する。
【0111】
このため、アイドル運転時、吸気カムシャフト14の上記変動の増大が検出されたときには、同シャフト14を遅角側に押し付ける力が大きくなるよう、吸気側可変動弁機構16の遅角側油圧室45内の油圧の上昇が図られ、当該変動が抑制される。一方、排気カムシャフト15での上記変動の増大が検出されたときには、同シャフト14を進角側に押し付ける力が大きくなるよう、排気側可変動弁機構17の進角側油圧室64内の油圧の上昇が図られ、当該変動が抑制される。このようにアイドル運転時には、カムシャフト14,15の回転速度の適正状態に対する変動の増大への対策として、当該変動の抑制が行われるようになる。
【0112】
また、エンジン1のアイドル運転時以外のときには、吸気カムシャフト14が遅角側に押し付けられたり、排気カムシャフト15が進角側に押し付けられたりしていないため、それらカムシャフト14,15での上記変動の増大に伴い、上記のように打音が発生することはない。しかし、当該変動が生じるということは、吸気バルブ12や排気バルブ13のバルブタイミングに変動が生じるということであるから、同変動に伴いバルブタイミングにエンジン運転にとって適正な状態からのずれが生じる。このバルブタイミングのずれが上記変動の増大に伴い大きなものになると、エンジン運転状態に影響を及ぼすおそれがある。
【0113】
例えば、吸気カムシャフト14での上記変動が増大すると、吸気バルブ12のバルブタイミングが適正状態に対し進角側と遅角側との間で大きく変動するようになる。吸気バルブ12のバルブタイミングは、エンジン1の吸入空気量に影響を及ぼすため、上記のような変動に伴い吸入空気量が増減してエンジン1の空燃比が変動すると、エンジン運転が不安定になるおそれがある。また、排気カムシャフト15での上記変動が増大すると、排気バルブ13のバルブタイミングが適正状態に対し進角側と遅角側との間で大きく変動するようになる。排気バルブ13のバルブタイミングは、エンジン1のバルブオーバラップ量に影響を及ぼすため、上記のような変動に伴いバルブオーバラップ量が増減して内部EGR量が変動すると、エンジン運転が不安定になるおそれがある。
【0114】
このため、アイドル運転時以外のとき、吸気カムシャフト14や排気カムシャフト15の回転速度の適正状態に対する変動の増大が検出されたときには、燃料噴射量や点火時期といったエンジン1の運転制御に用いられるパラメータが、エンジン1の運転を安定化させる方向に変更される。例えば、燃料噴射量が所定量だけ減量されるとともに、その減量後の燃料噴射量に適した点火時期が得られるよう点火時期の変更も行われ、エンジン1の運転の安定化が図られる。このようにアイドル運転時以外のときには、カムシャフト14,15での上記変動の増大への対策として、当該変動の増大に伴いエンジン運転が不安定になることの抑制が行われるようになる。
【0115】
次に、カムシャフトにおける上記変動を検出するとともに、その変動が許容レベル以上であるときには対策を講じるための処理手順について、変動時処理ルーチンを示す図9及び図10のフローチャートを参照して説明する。この変動時処理ルーチンは、電子制御装置18を通じて例えば所定クランク角毎の角度割り込みにて実行される。
【0116】
同ルーチンにおいて、図9のステップS101〜S108の処理は、各カムシャフト毎に、上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動として、上述した平均値ΔtPav,tQavを算出するためのものである。
【0117】
この処理では、まずタイミングt1からの時間が計測され(図9のS101)、このタイミングt1からの経過時間として、各カムシャフトについて経過時間tA,tP,tB,tQ,tC,tRが算出される。そして、それら経過時間のうち、経過時間tA,tB,tC,tRがカムシャフト毎に複数(本実施形態では「5」)得られると(S102:YES)、カムシャフト毎に経過時間tA,tBの平均値tAav,tBav,tCav,tRavが算出される(S103)。
【0118】
ここで、平均値tAav,tBav,tCav,tRavは、カムシャフトにおける位置P1,P5,P9,P11に対応する部位、即ち上記変動の顕著でない部位がバルブリフタ12aに接触する回転位置に達したときの同シャフトの回転速度を表す値となる。これらのカムシャフトの回転速度は、同シャフトの平均回転速度とほぼ等しくなる。従って、平均値tAav,tBav,tCav,tRavの変化率、例えば前回算出された平均値tAav,tBav,tCav,tRavに対する変化率が所定値以上であることは、カムシャフトの平均回転速度が急変するエンジン1の過渡運転中であることを意味する。このような状況のとき、上述した平均値ΔtPav,tQavの算出を行うと、その値はンジン運転の急変による影響を受けた値となり、上記変動を表す値としての信頼性が不確かなものとなる。
【0119】
このことを考慮して、変動時処理ルーチンでは、平均値tAav,tBav,tCav,tRavの変化率が所定値よりも大であるとき(S104:NO)には、平均値ΔtPav,tQavを算出する処理をやめる。そして、同算出を平均値tAav,tBav,tCav,tRavの変化率が所定値以下(S104:YES)であるときに限定して行うようにしている。従って、上記処理によって算出される平均値ΔtPav,tQavについては、エンジン1の定常運転中と判断されるときに算出され、エンジン運転の急変による影響を受けていない値となることから、上記変動を表す値としての信頼性が確保される。
【0120】
ステップS104で肯定判定がなされると、平均値tAav,tBav,tCav,tRavから上記理論上の回転位相が求められ、これによって上記変動が顕著な部位である位置P4,P6に対応する部位についての上記理論上の回転位相での経過時間(理論値)である経過時間tP’,tQ’が推定される(S105)。続いて、上記部位についての経過時間の実測値である経過時間tP,tQと、上記理論値である経過時間tP’,tQ’との時間差ΔtP,ΔtQが算出される(S106)。即ち、経過時間tP’から経過時間tPを減算した値が時間差ΔtPとされ、経過時間tQから経過時間tQ’を減算した値が時間差ΔtQとされる。
【0121】
そして、それら時間差ΔtP,ΔtQがカムシャフト毎に複数(本実施形態「5」)得られていると(S107:YES)、カムシャフト毎に時間差ΔtP,ΔtQの平均値ΔtPav,ΔtQavが算出される(S108)。こうして算出された平均値ΔtPav,ΔtQavがカムシャフトの上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動として検出される。その後、図10のステップS109に進むことになる。
【0122】
変動時処理ルーチンにおいて、ステップS109〜S115の処理は、上記変動が許容レベル以上であるか否かを判断し、許容レベル以上であるときには対策を講じるためのものである。
【0123】
この処理では、まず平均値ΔtPav,ΔtQavの適正値X,Y、即ち上記変動が適正状態にあるときの平均値ΔtPav,ΔtQavの理論上の値がエンジン運転状態、例えばカムシャフトの平均回転速度に基づきマップを参照して算出される(S109)。なお、このマップは、予め実験等によって設定され、電子制御装置18に設けられたROMに記憶される。また、カムシャフトの平均回転速度は、例えば、経過時間tA,tB,tC,tRの平均値tAav,tBav,tCav,tRavに基づき求めることができる。
【0124】
平均値ΔtPav,ΔtQavの適正値X,Yを、カムシャフトの平均回転速度に基づき算出し、同平均回転速度に応じて可変とするのは次の理由による。即ち、エンジン回転速度の変化等に伴いカムシャフトの平均回転速度が変わると、オイルポンプ52のオイル吐出量が変わることから、吸気側可変動弁機構16及び排気側可変動弁機構17の進角側油圧室44,64及び遅角側油圧室45,65内の油圧が変化する。その結果、クランクシャフト11に対するカムシャフトの相対回転位相を保持する上記油圧による力が変化し、バルブ開閉時にカムシャフトにおける上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動が異なるものとなる。このため、上記変動として検出される平均値ΔtPav,ΔtQavの実際の適正値も変わってくるが、こうした変化に適正値X,Yを対応させるために、同適正値X,Yを、上記油圧に影響を及ぼすパラメータであるカムシャフトの平均回転速度に基づき算出するのである。
【0125】
上記適正値X,Yが算出された後、適正値Xから平均値ΔtPavを減算した値の絶対値として乖離量K1が求められるとともに、適正値Yから平均値ΔtQavを減算した値の絶対値として乖離量K2が求められる(S110)。これら乖離量K1,K2については、上記変動が適正状態に対してどれほど離れているかを表す値となる。そして、乖離量K1が所定値aよりも大であるか(S111:YES)、或いは乖離量K2が所定値aよりも大であれば(S112:YES)、それら乖離量K1,K2に対応したカムシャフトについて上記変動が許容レベル以上である旨判断される。そして、同シャフトでの上記変動の増大への対策として、ステップS113以降の処理が実行される。
【0126】
このステップS113では、エンジン1がアイドル運転中であるか否かが判断され、ここで肯定判定であればステップS114に進む。このステップS114の処理は、上記変動の増大が生じているカムシャフトに対し、その増大への対策として上述した変動の抑制を行うためのものである。
【0127】
即ち、吸気カムシャフト14で上記変動の増大が生じている場合には、OCV48の駆動電流を低減することにより、吸気側可変動弁機構16における遅角側油圧室45内の油圧が上昇させられ、吸気カムシャフト14を遅角側に押し付ける力が大きくされる。これにより吸気カムシャフト14での上記変動が抑制される。また、排気カムシャフト15で上記変動の増大が生じている場合には、OCV68の駆動電流を低減することにより、排気側可変動弁機構17における進角側油圧室64内の油圧が上昇させられ、排気カムシャフト15を進角側に押し付ける力が大きくされる。これにより排気カムシャフト15での上記変動が抑制される。
【0128】
カムシャフトでの上記変動を抑制するための上述したOCV48,68の駆動電流の低減については、図11に示されるように当該変動が許容レベルに対し増大するにつれて、言い換えれば乖離量K1,K2が所定値aよりも大きくなるにつれて低減量を大きくすることが好ましい。このようにすれば、上記変動が許容レベルに対し増大するにつれて、カムシャフトを押し付けて保持する力を大とすることができるため、上記変動の抑制を一層的確に行うことができるようになる。
【0129】
一方、ステップS113で否定判定がなされ、エンジン1がアイドル運転以外の状態である旨判断された場合には、ステップS115に進む。このステップS115の処理は、上記変動の増大が生じているカムシャフトに対応するシリンダブロックの各気筒について、当該変動の増大への対策として、その増大に伴いエンジン運転が不安定になることの抑制を行うためのものである。
【0130】
即ち、第1バンク2のシリンダブロック4に対応するカムシャフトにて上記変動の増大が生じている場合には、第1バンク2の各気筒#1,#3,#5に対し、燃料噴射量の減量及びその減量後の燃料噴射量に適した点火時期への変更が行われる。これにより上記カムシャフトでの上記変動の増大に伴い、エンジン1の運転が不安定になることは抑制される。また、第2バンク3のシリンダブロック4に対応するカムシャフトにて上記変動の増大が生じている場合には、第2バンク3の各気筒#2,#4,#6に対し、燃料噴射量の減量及びその減量後の燃料噴射量に適した点火時期への変更が行われる。これにより上記カムシャフトでの上記変動の増大に伴い、エンジン1の運転が不安定になることは抑制される。
【0131】
エンジン運転の不安定を抑制するための燃料噴射量の減量及び点火時期の変更については、吸気カムシャフト14にて上記変動の増大が生じている場合と、排気カムシャフト15にて上記変動の増大が生じている場合とで、それぞれに適した態様で行うことが好ましい。このようにすれば、カムシャフトでの上記変動の増大に伴うエンジン運転の不安定を一層好適に抑制することができるようになる。
【0132】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)バルブ開閉時には、それに伴うトルクをカムシャフトが受けるため、同シャフトの回転速度が低下したり上昇したりするようになる。このカムシャフトの回転速度の変動によって同シャフトの上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動が生じるが、当該変動態様はエンジン1の運転状況に応じて様々である。
【0133】
ここで、カムシャフトにおける周方向各部位のうち、位置P1,P5,P9,P11に対応する部位は上記変動が顕著でない部位であることから、それら各部位に対応する経過時間tA,tB,tC,tR(平均値tAav,tBav,tCav,tDav)は上記理論上の回転位相のときとほとんど変わらない値をとる。このため、経過時間tA,tB,tC,tRを用いて上記理論上の回転位相を求めることができ、これによって上記変動の編著でない部位である位置P4,P6に対応する部位についての上記理論上の回転位相での上記経過時間(理論値)である経過時間tP’,tQ’を推定することが可能である。また、上記変動の顕著な部位である位置P4,P6に対応する部位についての実際の回転位相での上記経過時間の実測値である経過時間tP,tQは、上記理論上の回転位相のときと比べて長くなったり短くなったりする。
【0134】
そして、上記部位についての上記経過時間の実測値と上記理論値との差、即ち経過時間tP,tQの平均値ΔtPav,ΔtQavと経過時間tP’,tQ’との時間差ΔtP,ΔtQが算出され、この時間差ΔtP,ΔtQの平均値ΔtPav,ΔtQavが上記変動として検出されるようになる。こうして、実際に生じる上記変動を検出することができるようになるため、バルブ開閉時に上記変動が増大したときに適切に対策を講じることが可能になる。
【0135】
(2)カムシャフトにおける上記理論上の回転位相を求めるのに、一度計測された経過時間tA,tB,tC,tRをそのまま用いるのではなく、複数回計測した経過時間tA,tB,tC,tRの平均値tAav,tBav,tCav,tRavが用いられる。このため、仮に一度の経過時間tA,tB,tC,tRの計測に誤差が生じたとしても、その誤差による影響を最小限に抑えることができ、上記理論上の回転位相、ひいては経過時間tP’,tQ’が上記誤差によって不適切な値になるのを抑制することができる。
【0136】
(3)上記変動として検出される値は、上記時間差ΔtP,ΔtQではなく、それらを複数回算出して平均した平均値ΔtPav,ΔtQavである。このため、仮に一度の時間差ΔtP,ΔtQの算出時に誤差が生じたりしても、その誤差による影響を最小限に抑えることができ、検出した上記変動が上記誤差によって不適切な値になるのを抑制することができる。
【0137】
(4)平均値ΔtPav,ΔtQavの適正値X,Yに対する乖離量K1,K2が所定値aよりも大きいとき、上記変動が許容レベル以上である旨判断され、対策が講じられるようになる。ただし、上記平均値ΔtPav,ΔtQavの実際の適正値はカムシャフトの平均回転速度といったエンジン運転状態に応じて異なるものとなる。しかし、それに対応して上記適正値X,Yをカムシャフトの平均回転速度といったエンジン運転状態に応じて可変設定することができるため、上記変動が許容レベル以上であるか否かを適切に判断することができ、上記変動が許容レベル以上であるときには適切に対策を講じることができる。
【0138】
(5)平均値ΔtPav,ΔtQavの上記変動としての検出は、エンジン1が定常運転中であることを条件に行われる。このため、上記平均値ΔtPav,ΔtQavは、エンジン運転の急変による影響を受けていない値となり、上記変動を表す値としての信頼性を確保することができる。
【0139】
(6)平均値ΔtPav,ΔtQavの上記変動としての検出は、エンジン1の定常運転となるアイドル運転中にも行われることとなる。アイドル運転時、吸気カムシャフト14については吸気側可変動弁機構16の遅角側油圧室45内の油圧によって遅角側に押し付けられるが、同シャフト14の相対回転位相を進角側に変更する際の応答性を確保するため、進角側油圧室44にもある程度の油圧が生じるようにされる。従って、吸気カムシャフト14を遅角側に押し付ける力は進角側油圧室44内の油圧による力の分だけ小さくなる。一方、排気カムシャフト15については排気側可変動弁機構17の進角側油圧室64内の油圧によって進角側に押し付けられるが、同シャフト15の相対回転を遅角側に移行する際の応答性を確保するため、遅角側油圧室65にもある程度の油圧が生じるようにされる。従って、排気カムシャフト15を進角側に押し付ける力は遅角側油圧室65内の油圧による力の分だけ小さくなる。また、アイドル運転時には、もともとエンジン回転速度が低くオイルポンプ52から吐出されるオイルの油圧が低い状態になる。これらのことから、アイドル運転時には上記変動が大きくなる可能性があるが、このときに実際にカムシャフトに生じている上記変動の検出が行われるため、当該検出に基づきカムシャフトの上記変動の増大に対し適切に対策を講じることができる。
【0140】
(7)アイドル運転時、上記変動が許容レベル以上になった旨判断されると、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相をその変更範囲の境界に保持する力が大きくなるようにされる。即ち、上記変動が許容レベル以上になったのが吸気カムシャフト14であれば、吸気側可変動弁機構16の遅角側油圧室45内の油圧が上昇させられ、同シャフト14を遅角側に押し付けて保持する力が大きくされるため、同シャフト14での上記変動が抑制される。また、上記変動が許容レベル以上になったのが排気カムシャフト15であれば、排気側可変動弁機構17の進角側油圧室44内の油圧が上昇させられ、同シャフト15を進角側に押し付けて保持する力が大きくされるため、同シャフト15での上記変動が抑制される。従って、アイドル運転時には、カムシャフトでの上記変動の増大への対策として、当該変動の抑制が図られるようになる。
【0141】
(8)上記クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相をその変更範囲の境界に保持する力の増大は、同シャフトにおける上記変動が許容レベルよりも大きくなるにつれて、大きなものとされるようになる。このため、アイドル運転時における同シャフトでの上記変動の抑制を一層的確に行うことができるようになる。
【0142】
(9)また、カムシャフトにおける上記変動が許容レベル以上になるということは、バルブタイミングがエンジン運転にとって適正な状態からずれるということになり、エンジン運転状態が不安定になることに繋がる。このため、アイドル運転以外においては、上記変動が許容レベル以上である旨判断されると、燃料噴射量や点火時期といったエンジン1の運転制御に用いられるパラメータが、エンジン運転を安定させる方向に変更される。即ち、燃料噴射量が所定量だけ減量されるとともに、その減量後の燃料噴射量に適した点火時期が得られるよう点火時期の変更も行われ、エンジン1の運転の安定化が図られる。従って、アイドル運転以外のときには、上記変動の増大への対策として、当該変動の増大に伴いエンジン運転が不安定になることの抑制が図られるようになる。
【0143】
(10)上記燃料噴射量や点火時期のエンジン運転安定化方向への変更は、上記変動が生じているカムシャフトに対応したバンク(シリンダブロック)の各気筒に対し行われる。従って、第1及び第2バンクを備えるV型のエンジン1においても、カムシャフトでの上記変動の増大に対し、適切に対策を講じることができるようになる。
【0144】
(11)また、吸気カムシャフト14で上記変動の増大が生じた場合と、排気カムシャフト15で上記変動の増大が生じた場合とでは、エンジン1に対する影響が異なるものとなる。従って、上記燃料噴射量や点火時期のエンジン運転安定化方向への変更を、吸気カムシャフト14にて上記変動の増大が生じている場合と、排気カムシャフト15にて上記変動の増大が生じている場合とで、それぞれに適した態様で行うことにより、同変動の増大への対策を一層適切なものとすることができる。
【0145】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図12〜図16に基づき説明する。なお、この実施形態では、自動車用の直列四気筒エンジンに本発明が適用されており、以下では同エンジンに本発明を適用する上で第1実施形態と異なる部分について詳しく説明する。
【0146】
図12は、本実施形態の吸気カムシャフト14をその軸線方向から見た図である。同図から分かるように、この吸気カムシャフト14には、カムノーズ81を備えたカム82〜85がエンジン1の四つの気筒、即ち一番〜四番気筒#1〜#4に対応して設けられている。これらカム82〜85のカムノーズ81は、吸気カムシャフト14の周方向について互いの間に等しい間隔をおいて、即ち同シャフト14の軸線を中心とする90°という間隔をおいて存在している。そして、吸気カムシャフト14がクランクシャフト11からの回転伝達に基づき例えば図中において右回転すると、各カム82〜85のカムノーズ81が吸気バルブ12のバルブリフタ12aに対応して位置したとき、吸気バルブ12が開弁状態とされることになる。
【0147】
吸気カムシャフト14において、カムノーズ81の側部の位置P2,P4,P6,P8,P10,P12,P14,P16に対応する部位については、吸気カムシャフト14の上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動が顕著な部位となる。これに対し、吸気カムシャフト14において、周方向に隣合うカムノーズ81の中間の位置P3,P7,P11,P15に対応する部位、及び各カムノーズ31の先端の位置P1,P5,P9,P13に対応する部位については、上記変動が顕著でない部位となる。
【0148】
なお、図示は省略するが、排気カムシャフト15についても、吸気カムシャフト14と同じくカムノーズ81を備えたカム82〜85が一番〜四番気筒#1〜#4に対応して設けられている。ただし、排気カムシャフト15においては、カムノーズ81の同シャフト15の回転方向についての位置が、吸気カムシャフト14のカムノーズ81の同シャフト14の回転方向についての位置に対し270°遅れた状態となっている。そして、排気カムシャフト15の回転時に、カムノーズ31が排気バルブ13のバルブリフタ13aに対応して位置したとき、排気バルブ13が開弁状態とされることになる。この排気カムシャフト15においても、吸気カムシャフト14の場合と同じ態様で、上記変動の顕著な部位及び顕著でない部位が生じる。
【0149】
次に、カムロータ21,23、及びカムポジションセンサ22,24について説明する。これらカムロータ21,23、及びカムポジションセンサ22,24は、吸気カムシャフト14及び排気カムシャフト15の回転状態をモニタするのに用いられる。
【0150】
なお、各カムロータ21、23は各々同じ構成のものが採用され、カムポジションセンサ22,24も各々同じ構成のものが採用されている。このため、以下では、吸気カムシャフト14の回転状態をモニタするためのカムロータ21及びカムポジションセンサ22についてのみ図13を参照して詳しく説明し、排気カムシャフト15の回転状態をモニタするためのカムロータ23及びカムポジションセンサ24については説明を省略する。
【0151】
同図に示されるカムロータ21においては、その外周部に設けられた合計三つの突起21a,21b,21cの周方向長さ及び形成位置が、第1実施形態のものとは異なっている。そして、このカムロータ21における各突起21a,21b,21cの形状、吸気カムシャフト14に対するカムロータ21の取付位置、及びカムポジションセンサ22の配設位置は、以下の各条件が全て満たされるように設定されている。
【0152】
・吸気カムシャフト14における位置P1(図12)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21aの周方向についての端部Aがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0153】
・吸気カムシャフト14における位置P4(図12)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21aの周方向についての端部Pがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0154】
・吸気カムシャフト14における位置P5(図12)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21bの周方向についての端部Bがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0155】
・吸気カムシャフト14における位置P10(図12)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21bの周方向についての端部Qがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0156】
・吸気カムシャフト14における位置P13(図12)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21cの周方向についての端部Cがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0157】
・吸気カムシャフト14における位置P14(図12)に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、突起21cの周方向についての端部Rがカムポジションセンサ22の側方を通過する。
【0158】
次に、吸気カムシャフト14及び排気カムシャフト15における上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動を検出する手順の概要について説明する。
【0159】
なお、各カムシャフト14,15の上記変動の検出は各々同じ手順によって行われるものであることから、ここでは吸気カムシャフト14での上記変動の検出についてのみ図14を参照して説明し、排気カムシャフト15での上記変動の検出については説明を省略する。
【0160】
図14において、(a)及び(b)は吸気カムシャフト14においてバルブリフタ12aに接触する部位が時間経過に伴いどのように変化してゆくかを示しており、(a)は吸気カムシャフト14の実際の回転位相に対応するものであって、(b)は上記理論上の回転位相に対応するものである。また、図14(c)は時間経過に伴うクランクポジションセンサ20からの検出信号の出力態様を示している。
【0161】
吸気カムシャフト14における位置P1に対応する部位がバルブリフタ12aに接触している状態を基準(0°)とすると、同シャフト14の回転が22.5°進む毎に位置P2〜P16に対応する各部位が順次バルブリフタ12aに接触するようになる。仮に、吸気カムシャフト14を平均回転速度で等速回転させたとき、即ち同シャフト12の回転位相が上記理論上の回転位相と一致しているとすれば、図14(b)に示されるように、位置P1〜P16に対応する部位が等しい時間間隔をおいて順次バルブリフタ12aに接触する。
【0162】
しかし、実際には、位置P4,P8,P12,P16に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するとき、吸気カムシャフト14には吸気バルブ12の開弁に伴う回転方向とは逆方向のトルクが働き、同シャフト14の回転速度が遅くなる。このため、吸気カムシャフト14の実際の回転時、上記各部位については、図14(a)に示されるように、バルブリフタ12aへの接触タイミングが理論上の回転位相のときに比べて遅れるようになる。また、位置P2,P6,P10,P14に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するときには、吸気カムシャフト14に吸気バルブ12の閉弁に伴う回転方向と同方向のトルクが働き、同シャフト14の回転速度が速くなる。このため、上記各部位については、バルブリフタ12aへの接触タイミングが理論上の回転位相のときに比べて早くなる。
【0163】
吸気カムシャフト14において、位置P2,P4,P6,P8,P10,P12,P14,P16に対応する部位が上記変動の顕著な部位であることは、上述したとおりである。これらのうち位置P4,P10,P14に対応する部位がバルブリフタ12aに接触したことは、カムロータ21の突起21aの端部P、突起21bの端部Q、及び突起21cの端部Rがカムポジションセンサ22の側方を通過することによって検知することが可能である。また、位置P1,P3,P5,P7,P9,P11,P13,P15に対応する部位が上記変動の顕著でない部位であることも上述した。これらのうち位置P1,P5,P13に対応する部位がバルブリフタ12aに接触したことは、カムロータ21の突起21aの端部A、突起21bの端部B、突起21cの端部Cがカムポジションセンサ22に側方を通過することによって検知することが可能である。
【0164】
なお、本実施形態では、上記変動の顕著でない部位として、位置P1,P3,P5,P7,P9,P11,P13,P15に対応する部位のうち、位置P1,P5,P13に対応する部位が採用されている。また、上記変動の顕著な部位として、位置P2,P4,P6,P8,P10,P12,P14,P16に対応する部位のうち、位置P4,P6,P14に対応する部位が採用されている。こうした採用は、単にカムロータ21の形状等に応じて行っているものであって、カムロータ21の形状等の変更とともに上記採用を任意に変更することが可能である。
【0165】
即ち、吸気カムシャフト14における上記変動の顕著でない部位としては、位置P1,P5,P13に対応する部位以外に、位置P3,P7,P9,P11,P15に対応する各部位のうちから適宜採用することもできる。また、吸気カムシャフト14における上記変動の顕著な部位としては、位置P4,P10,P14に対応する部位以外に、位置P2,P6,P8,P12,P16に対応する部位のうちから適宜採用することもできる。
【0166】
吸気カムシャフト14の上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動の検出は、以下の[1]〜[6]に示される手順で行われることとなる。
[1]クランクポジションセンサ20からクランクロータ19の欠歯19bに対応した信号Sが出力されたとき(図14(c)参照)、そのタイミングt1を基準のタイミングとして時間の計測を開始する。
【0167】
[2]タイミングt1から吸気カムシャフト14の位置P1に対応する部位がバルブリフタ12aに接触するタイミングt2までの経過時間tAを求める。同様に、タイミングt1から吸気カムシャフト14の位置P4,P5,PP10,P13,P14に対応する各部位が、それぞれバルブリフタ12aに接触するタイミングt3,t4,t5,t6,t7までの経過時間tP,tB,tQ,tC,tRを求める。
【0168】
[3]経過時間tA,tB,tCを複数回(例えば5回)計測し、各経過時間tAの平均値tAav、各経過時間tBの平均値tBav、及び各経過時間tCの平均値tCavを算出する。
【0169】
[4]平均値tAav,tBav,tCavから上記理論上の回転位相を求め、これによって位置P4,P10,P14に対応する部位についての上記理論上の回転位相での経過時間(理論値)である経過時間tP’,tQ’,tR’を推定する。
【0170】
[5]位置P4,P10,P14に対応する部位についての経過時間の実測値と上記理論値との差として、経過時間tP,tQ,tRと経過時間tP’,tQ’,tR’との時間差ΔtP,ΔtQ,ΔtRを算出する。
【0171】
[6]時間差ΔtP,ΔtQ,ΔtRを複数回(例えば5回)算出して平均した平均値ΔtPav,ΔtQav,ΔtRavを、吸気カムシャフト14の上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動として検出する。
【0172】
以上の手順により、実際に吸気カムシャフト14で生じている上記変動を検出することができる。なお、上記変動の検出は、吸気カムシャフト14についてだけでなく、排気カムシャフト15についても同様に行われる。従って、吸気バルブ12や排気バルブ13といった機関バルブの開閉時にカムシャフトでの上記変動の増大が生じたとき、その増大を検出して適切に対策を講じることができるようになる。
【0173】
図15及び図16は、本実施形態の変動時処理ルーチンを示すフローチャートである。この変動時処理ルーチンも、電子制御装置18を通じて例えば所定クランク角毎の角度割り込みにて実行される。
【0174】
同ルーチンにおいては、まずタイミングt1からの時間が計測され(図15のS201)、このタイミングt1からの経過時間として、各カムシャフトについて経過時間tA,tP,tB、tQ,tC,tRが算出される。そして、それら経過時間のうち、経過時間tA,tB,tCがカムシャフト毎に複数(本実施形態では「5」)得られると(S202:YES)、カムシャフト毎に経過時間tA,tB,tCの平均値tAav,tBav,tCavが算出される(S203)。
【0175】
そして、これら平均値tAav,tBav,tCavの変化率が所定値よりも大であるとき(S204:NO)には、エンジン1の過渡運転中である旨判断され、乖離量K1,K2,K3を算出する処理(図10のS209,S210)をやめる。一方、平均値tAav,tBav,tCavの変化率が所定値未満(S204:YES)であるときには、エンジン1の定常運転中である旨判断され、ステップS205以降の処理が行われる。
【0176】
ここでは、平均値tAav,tBav,tCavから上記理論上の回転位相が求められ、これによって上記変動が顕著な部位である位置P4,P10,P14に対応する部位についての上記理論上の回転位相での経過時間(理論値)である経過時間tP’,tQ’,tR’が推定される。続いて、上記部位についての経過時間の実測値である経過時間tP,tQ,tRと、上記理論値である経過時間tP’,tQ’,tR’との時間差ΔtP,ΔtQ,ΔtRが算出される(S206)。即ち、経過時間tPから経過時間tP’を減算した値が時間差ΔtPとされ、経過時間tQ’から経過時間tQを減算した値が時間差ΔtQとされる。更に、経過時間tR’から経過時間tRを減算した値が時間差ΔtRとされる。
【0177】
そして、それら時間差ΔtP,ΔtQ,ΔtRがカムシャフト毎に複数(本実施形態「5」)得られていると(S207:YES)、カムシャフト毎に時間差ΔtP,ΔtQ,ΔtRの平均値ΔtPav,ΔtQav,ΔtRavが算出される(S208)。こうして算出された平均値ΔtPav,ΔtQav,ΔtRavがカムシャフトの上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動として検出される。その後、図16のステップS209に進むことになる。
【0178】
続いて、ステップS209では、平均値ΔtPav,ΔtQav,ΔtRavの適正値X,Y,Z、即ちカムシャフトの上記変動が適正状態にあるときの平均値ΔtPav,ΔtQav,ΔtRavの理論上の値が、エンジン運転状態に基づき算出される。なお、ここでエンジン運転状態としては、例えばカムシャフトの平均回転速度があげられる。そして、適正値Xから平均値ΔtPavを減算した値の絶対値が乖離量K1とされ、適正値Yから平均値ΔtQavを減算した値の絶対値が乖離量K2とされ、適正値Zから平均値ΔtRavを減算した値の絶対値が乖離量K3とされる(S210)。
【0179】
そして、以下の各条件のいずれか一つでも成立していれば、カムシャフトの上記変動が許容レベル以上である旨判断される。
・乖離量K1が所定値aよりも大(S211:YES)。
【0180】
・乖離量K2が所定値aよりも大(S212:YES)。
・乖離量K3が所定値aよりも大(S213:YES)。
ステップS211〜S213のいずれかで肯定判定がなされ、カムシャフトの上記変動が許容レベル以上である旨判断されると、同シャフトでの上記変動の増大への対策として、ステップS214以降の処理が実行される。
【0181】
このステップS214の処理では、エンジン1がアイドル運転中であるか否かが判断され、ここで肯定判定であればステップS215に進む。このステップS215の処理は、上記変動の増大が生じているカムシャフトに対し、その増大への対策として上述した変動の抑制を行うためのものである。
【0182】
即ち、吸気カムシャフト14で上記変動の増大が生じている場合には、吸気側可変動弁機構16における遅角側油圧室45内の油圧が上昇させられ、吸気カムシャフト14を遅角側に押し付ける力が大きくされる。また、排気カムシャフト15で上記変動の増大が生じている場合には、排気側可変動弁機構17における進角側油圧室64内の油圧が上昇させられ、排気カムシャフト15を進角側に押し付ける力が大きくされる。これにより、吸気カムシャフト14と排気カムシャフト15とのいずれの上記変動の増大に対しても、当該変動の抑制が図られるようになる。
【0183】
一方、ステップS214で否定判定がなされ、エンジン1がアイドル運転以外の状態である旨判断された場合には、ステップS216に進む。このステップS216の処理は、上記変動増大への対策として、その増大に伴いエンジン運転が不安定になることの抑制を行うためのものである。
【0184】
即ち、吸気カムシャフト14のにて上記変動の増大が生じている場合には、同シャフト14での上記変動の増大に対応して、燃料噴射量の減量及びその減量後の燃料噴射量に適した点火時期への変更が行われる。これにより吸気カムシャフト14での上記変動の増大に伴い、エンジン1の運転が不安定になることは抑制される。また、排気カムシャフト15にて上記変動の増大が生じている場合には、同シャフト15での上記変動に対応して、燃料噴射量の減量及びその減量後の燃料噴射量に適した点火時期への変更が行われる。これにより排気カムシャフト15での上記変動の増大に伴い、エンジン1の運転が不安定になることは抑制される。
【0185】
なお、エンジン運転の不安定を抑制するための上記燃料噴射量の減量及び点火時期の変更は、吸気カムシャフト14にて上記変動の増大が生じている場合と、排気カムシャフト15にて上記変動の増大が生じている場合とで、それぞれに適した態様で行われることとなる。
【0186】
以上詳述した本実施形態によれば、第1実施形態と同等の効果を得ることができる。
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
【0187】
・第1及び第2実施形態では、アイドル運転時、カムシャフトの上記変動の増大への対策として、カムシャフトを進角側や遅角側に押し付ける力、即ち油圧室内の油圧による力を増大する際、その力の増大量を上記変動が大きくなるにつれて大とするようにしたが、本発明はこれに限定されない。即ち、上記力の増大量をカムシャフトでの上記変動の大きさに関係なく一律としてもよい。
【0188】
・第1及び第2実施形態では、アイドル運転時以外のときの上記変動の増大への対策として燃料噴射量の減量と点火時期の変更との両方を行ったが、例えば燃料噴射量の減量のみを行うようにしてもよい。
【0189】
・上記燃料噴射量の減量と点火時期の変更については、吸気カムシャフト14にて上記変動の増大が生じている場合と、排気カムシャフト15にて上記変動の増大が生じている場合とで、それぞれに対応した異なる態様で行ったが、本発明はこれに限定されない。即ち。上記燃料噴射量の減量及び点火時期の変更に関する燃料噴射量制御や点火時期制御を簡略化すべく、当該燃料噴射量の減量及び点火時期の変更を吸気カムシャフト14にて上記変動の増大が生じている場合と、排気カムシャフト15にて上記変動の増大が生じている場合とで同じ態様としてもよい。
【0190】
・第1実施形態において、アイドル運転時以外のとき、いずれかのカムシャフトで上記変動の増大が生じた場合、第1バンク2と第2バンク3との両方の気筒、即ち一番〜六番気筒#1〜#6に対し、上記燃料噴射量の減量及び点火時期の変更を行ってもよい。この場合、上記燃料噴射量の減量及び点火時期の変更に関する燃料噴射量制御や点火時期制御をバンク毎に行わなくてもよくなる分だけ簡略化することができる。
【0191】
・第1及び第2実施形態において、アイドル運転時以外の状況であって、カムシャフトでの上記変動が許容レベル以上である旨判断されたとき、その変動の増大に伴う各気筒毎の影響に応じて、上記燃料噴射量の減量及び点火時期の変更を各気筒毎に行うようにしてもよい。この場合、上記変動の増大が生じたとき、その対策としての燃料噴射量の減量及び点火時期の変更を、各気筒毎に最適なものとすることができる。
【0192】
・第1及び第2実施形態において、カムシャフトでの上記変動を各気筒毎に検出し、アイドル運転以外のときに当該変動が所定レベル以上である旨判断される気筒に対し、上記燃料噴射量の減量及び点火時期の変更を行うようにしてもよい。この場合、各気筒での上記変動の大きさに応じて、気筒毎の燃料噴射量の減量及び点火時期の変更を異なるものとすることができ、同変動の増大に伴うエンジン運転の不安定を一層適切に抑制することができる。
【0193】
・第1及び第2実施形態において、カムシャフトでの上記変動が検出されたとき、同変動が許容レベル以上であれば同変動の増大への対策を講じたが、本発明はこれに限定されない。即ち、同変動の増大への対策を講じるのではなく、同変動が許容レベル以上であることを運転者に知らせるだけでもよい。
【0194】
・第1実施形態において、乖離量K1,K2のいずれか一方が所定値aよりも大となったとき、カムシャフトでの上記変動の増大への対策を講じたが、乖離量K1,K2の両方が所定値a以上になったときに当該対策を講じるようにしてもよい。
【0195】
・第2実施形態において、乖離量K1,K2,K3のいずれか一つが所定値aよりも大となったとき、カムシャフトでの上記変動の増大への対策を講じたが、乖離量K1,K2,K3のうちの二つ、或いは三つ全てが所定値a以上になったときに当該対策を講じるようにしてもよい。
【0196】
・第1及び第2実施形態において、乖離量K1,K2,K3の算出に、時間差ΔtP,ΔtQ,ΔtRの平均値ΔtPav,ΔtQav,ΔtRavを用いたが、これに代えて時間差ΔtP,ΔtQ,ΔtRを用いるようにしてもよい。
【0197】
・第1及び第2実施形態において、時間差ΔtP,ΔtQ,ΔtRを求める際、経過時間tA’,tB’,tC’の平均値tAav,tBav,tCavを用いたが、これに代えて経過時間tA’,tB’,tC’を用いるようにしてもよい。
【0198】
・第1及び第2実施形態において、適正値X,Y,Zをカムシャフトの平均回転速度に応じて可変とする際、その平均回転速度を平均値tAav,tBav,tCav,tRavに基づき求めたが、これに代えて経過時間tA,tB,tC,tRに基づき求めるようにしてもよい。
【0199】
・上記適正値X,Y,Zをカムシャフトの平均回転速度に応じて可変とするのではなく、例えばエンジン回転速度など他のエンジン運転状態に応じて可変とするようにしてもよい。なお、上記エンジン回転速度については、カムシャフトの平均回転速度に影響を与えるパラメータであることから、この平均回転速度に代えて用いることが可能である。
【0200】
・また、上記適正値X,Y,Zの可変設定を、カムシャフトの平均回転速度以外のパラメータであって、吸気側可変動弁機構16及び排気側可変動弁機構17の進角側油圧室44,64及び遅角側油圧室45,65内の油圧に影響を及ぼすパラメータに基づき行ってもよい。こうしたパラメータとしては、吸気側可変動弁機構16及び排気側可変動弁機構17を駆動するためのオイルの油温をあげることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の制御装置が適用されるV型六気筒エンジンの全体構成を示す略図。
【図2】吸気カムシャフトをその軸線方向から見た図。
【図3】排気カムシャフトをその軸線方向から見た図。
【図4】吸気側可変動弁機構の内部構造、及び同機構を油圧駆動するための油圧回路を示す図。
【図5】排気側可変動弁機構の内部構造、及び同機構を油圧駆動するための油圧回路を示す図。
【図6】クランクロータ及びクランクポジションセンサを示す拡大図。
【図7】カムロータ及びカムポジションセンサを示す拡大図。
【図8】(a)及び(b)は吸気カムシャフト14においてバルブリフタ12aに接触する部位が時間経過に伴いどのように変化してゆくかを示す説明図。(c)は時間経過に伴うクランクポジションセンサ20からの検出信号の出力態様を示す出力波形図。
【図9】カムシャフトにおける上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動を検出し、その変動が許容レベル以上になったときに対策を講じるための処理を実行する手順を示すフローチャート。
【図10】カムシャフトにおける上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動を検出し、その変動が許容レベル以上になったときに対策を講じるための処理を実行する手順を示すフローチャート。
【図11】カムシャフトの回転速度の適正状態に対する変動の増大に対するオイルコントロールバルブの駆動電流の低減態様を示すグラフ。
【図12】第2実施形態の吸気カムシャフトをその軸線方向から見た図。
【図13】第2実施形態のカムロータ及びカムポジションセンサを示す拡大図。
【図14】(a)及び(b)は吸気カムシャフト14においてバルブリフタ12aに接触する部位が時間経過に伴いどのように変化してゆくかを示す説明図。(c)は時間経過に伴うクランクポジションセンサ20からの検出信号の出力態様を示す出力波形図。
【図15】カムシャフトにおける上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動を検出し、その変動が許容レベル以上になったときに対策を講じるための処理を実行する手順を示すフローチャート。
【図16】カムシャフトにおける上記理論上の回転位相に対する実際の回転位相の変動を検出し、その変動が許容レベル以上になったときに対策を講じるための処理を実行する手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
1…エンジン、2…第1バンク、3…第2バンク、4…シリンダブロック、6…燃焼室、7…吸気通路、8…排気通路、9…燃料噴射弁、10…点火プラグ、11…クランクシャフト、12…吸気バルブ、12a…バルブリフタ、12b…バルブスプリング、13…排気バルブ、13a…バルブリフタ、13b…バルブスプリング、14…吸気カムシャフト、15…排気カムシャフト、16…吸気側可変動弁機構、17…排気側可変動弁機構、18…電子制御装置(推定手段、検出手段、判断手段、制御手段)、19…クランクロータ、19b…欠歯、19a…突起、20…クランクポジションセンサ、21,23,25,27…カムロータ、21a〜21c…突起、22,24,26,28…カムポジションセンサ、31…カムノーズ、32〜34…カム、44…進角側油圧室、45…遅角側油圧室、48…OCV(オイルコントロールバルブ)、52…オイルポンプ、64…進角側油圧室、65…遅角側油圧室、68…OCV(オイルコントロールバルブ)、81…カムノーズ、82〜85…カム。
Claims (11)
- 内燃機関の機関バルブを開閉動作すべく回転するカムシャフトと、同機関のクランクシャフトに対する前記カムシャフトの相対回転位相を変更する可変動弁機構とを備え、前記機関バルブの開閉に伴い、前記カムシャフトの実際の回転位相が同シャフトの平均回転速度での等速回転時の理論上の回転位相に対して変動する内燃機関の制御装置において、
前記カムシャフトの回転位相については、基準とするタイミングから前記カムシャフトの周方向各部位が前記機関バルブに対応する回転位置に達するタイミングまでの経過時間によって表されるものであり、
前記カムシャフトの周方向各部位のうち、前記実際の回転位相の前記理論上の回転位相に対する変動が顕著でない部位についての前記経過時間から前記理論上の回転位相を求め、これによって前記変動の顕著な部位についての前記理論上の回転位相での前記経過時間の理論値を推定する推定手段と、
前記変動の顕著な部位についての前記経過時間の実測値と前記理論値との差を、前記理論上の回転位相に対する前記実際の回転位相の変動として検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項1記載の内燃機関の制御装置において、
前記理論上の回転位相に対する前記実際の回転位相の変動が機関運転状態に応じて可変設定される適正値に対し所定量以上離れているか否かに基づき、前記変動が許容レベル以上かどうかを判断する判断手段を更に備える
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 前記推定手段は、前記変動の顕著でない部位についての前記経過時間として同経過時間を複数回求めて平均したものを用いて前記理論上の回転位相を求め、これによって前記変動の顕著な部位についての前記理論上の回転位相での前記経過時間の理論値を推定する
請求項1又は2記載の内燃機関の制御装置。 - 前記検出手段は、前記変動の検出に用いられる前記経過時間の実測値と前記理論値との差として、当該差を複数回求めて平均したものを用いる
請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。 - 前記検出手段は、内燃機関の定常運転中と判断されるとき、前記変動の検出を行う
請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。 - 前記可変動弁機構は、前記クランクシャフトの回転に基づき駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルの油圧により前記カムシャフトの相対回転位相を進角側又は遅角側に変更し、内燃機関のアイドル運転状態にあっては前記カムシャフトの相対回転位相をその変更範囲の境界に保持するものであって、
前記検出手段は、内燃機関のアイドル運転時に、前記変動の検出を行う
請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。 - 請求項6記載の内燃機関の制御装置において、
前記変動が許容レベル以上である旨判断されるとき、前記カムシャフトの相対回転位相をその境界に保持する力が大きくなるよう前記可変動弁機構を制御する制御手段を更に備える
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置において、
前記変動が許容レベル以上である旨判断されるとき、内燃機関の運転制御に用いられるパラメータを同機関の運転を安定させる方向に変更する制御手段を更に備える
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 前記内燃機関は複数の気筒を備え、
前記制御手段は、内燃機関の運転を安定させる方向への前記パラメータの変更を各気筒毎に実行する
請求項8記載の内燃機関の制御装置。 - 前記内燃機関は、複数のシリンダブロックを備えるとともに各シリンダブロックに対応してカムシャフトを備え、
前記検出手段は、それらカムシャフトの前記理論上の回転位相に対する前記実際の回転位相の変動をそれぞれ検出するものであり、
前記制御手段は、許容レベル以上の前記変動が生じているカムシャフトに対応するシリンダブロックの気筒に対し、内燃機関の運転を安定させる方向への前記パラメータの変更を実行する
請求項8記載の内燃機関の制御装置。 - 前記内燃機関は、吸気用の機関バルブに対応した吸気カムシャフトと、排気用の機関バルブに対応した排気カムシャフトとを備え、
前記検出手段は、それらカムシャフトの前記理論上の回転位相に対する前記実際の回転位相の変動をそれぞれ検出するものであり、
前記制御手段は、前記吸気カムシャフトの前記変動が許容レベル以上である旨判断されるときに同判断に対応して前記パラメータの機関運転安定方向への変更を行い、前記排気カムシャフトの前記変動が許容レベル以上である旨判断されるとき同判断に対応して前記パラメータの機関運転安定方向への変更を行う
請求項8記載の内燃機関の制御装置。
Priority Applications (1)
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JP2003206835A JP2005061223A (ja) | 2003-08-08 | 2003-08-08 | 内燃機関の制御装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009138610A (ja) * | 2007-12-05 | 2009-06-25 | Denso Corp | 内燃機関の制御装置 |
WO2016075944A1 (ja) * | 2014-11-13 | 2016-05-19 | 株式会社デンソー | 内燃機関の可変バルブタイミング制御装置 |
CN112703410A (zh) * | 2018-11-15 | 2021-04-23 | 潍柴动力股份有限公司 | 一种相位诊断方法及装置 |
-
2003
- 2003-08-08 JP JP2003206835A patent/JP2005061223A/ja active Pending
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