JP6372088B2 - RFeB系磁石の製造方法 - Google Patents
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Description
RFeB系焼結磁石を製造する際には、焼結工程においてキュリー温度(約310℃)よりも高い温度(通常、1000℃以上)に加熱する。また、RFeB系熱間塑性加工磁石を製造する際にも、成形すると共に結晶粒を配向させるために、約800℃に加熱した状態で塑性加工を行う。このような加熱を伴う工程を経て得られた焼結体や熱間塑性加工体は、全体では磁化が消失している。そのため、これら焼結体や熱間塑性加工体を磁石として使用するためには、磁界を印加することにより、それらを磁化させる処理を行わねばならない。このような処理を「着磁」と呼ぶ。
平均粒径が5μm未満である、RFeB系磁石の原料合金の粉末からRFeB系磁石の着磁前基材を作製する着磁前基材作製工程と、
前記着磁前基材の表面に、Tb、Dy及びHoから構成される群のうちの少なくとも1種である重希土類元素RHを含有する付着物を付着させた状態で所定温度に加熱する粒界拡散処理工程と、
前記粒界拡散処理工程後の前記着磁前基材を機械加工によって最終製品の形状に成形することにより精加工体を作製する精加工工程と、
前記精加工体を200〜900℃の温度に加熱する精加工後加熱工程と
をこの順で行うことを特徴とする。
本発明において「RFeB系磁石の着磁前基材」とは、焼結処理や熱間塑性加工処理により得られ、R2Fe14Bを主相とする焼結体や熱間塑性加工体であって、未だ着磁処理が行われていないものをいう。
本発明において前記粒界拡散処理工程で行う処理は、従来よりRFeB系磁石を作製する際に行われている粒界拡散処理と同様のものである。前記粒界拡散処理工程における前記所定温度は、典型的には800〜1000℃であるが、この温度範囲には限定されず、従来の粒界拡散処理で用いられている温度であれば本発明にも適用される。
本実施形態では、図1に示すように、(1)着磁前基材作製工程、(2)粒界拡散処理工程、(3)精加工工程、(4)精加工後加熱工程、(5)着磁工程の順で各工程を実施することにより、RFeB系磁石を製造する。以下、各工程を詳しく説明する。
この工程では、RFeB系焼結磁石やRFeB系熱間塑性加工磁石における従来の製造方法において、着磁前に行われている工程をそのまま用いることができる。RFeB系焼結磁石の着磁前基材の作製には、旧来より行われているプレス法と、上記PLP法のいずれも用いることができるが、上述の理由によりPLP法を用いることが望ましい。RFeB系熱間塑性加工磁石の着磁前基材の作製には、例えば特許文献4に記載の方法を用いることができる。なお、着磁前基材では、作製時にRFeB系磁石のキュリー温度(約310℃)よりも高温まで加熱されているため、残留磁化は発生しない。
粒界拡散処理工程においても、従来の粒界拡散処理をそのまま用いることができる。具体的には、着磁前基材の表面に、Tb、Dy及びHoのうちのいずれか1種又は複数種(重希土類元素RH)を含有する付着物を付着させ、所定温度に加熱する。付着物は重希土類元素RHの単体(金属)であってもよいし、他の元素との合金や化合物であってもよい。また、付着物には、粉体、粉体をグリースや液体等に混入させたもの、箔状にしたものなど、種々の形態のものを用いることができる。前記所定温度は、典型的には上述のように800〜1000℃であるが、この温度範囲には限定されない。
上記の各方法(焼結法であるプレス法及びPLP法、並びに熱間塑性加工)ではいずれも、最終製品に近い形状の着磁前基材を得ることができるものの、最終製品で要求される精度の寸法には合致せず、正確な形状にはならない。また、粒界拡散処理のために着磁前基材の表面に付着させた付着物が残存することによっても、形状の狂いが生じる。そのため、粒界拡散処理工程を行った着磁前基材を、機械加工によって最終製品の形状にする。機械加工には、単純に切断するという方法を取ることもできるが、より精度の高い加工面を形成するためには切削加工を行うことが望ましい。また、高精度の加工が必要な面のみを切削加工し、その他の面は切断により形成してもよい。例えば、板状磁石において、板の表裏2面のみを切削によって高精度に加工し、4つの側面では切断を行ってもよい。
なお、この精加工工程の前に、着磁前基材を加熱する時効処理を行ってもよいが、この段階では時効処理を行わずに、次に述べる精加工後加熱工程のみを行う方が望ましい。
次に、上記精加工工程によって得られた精加工体を加熱する(精加工後加熱工程)。これにより、精加工の際に生じた加工歪みを除去することができる。前述のように、加熱温度は200〜900℃であり、400〜560℃とすることが望ましい。加熱時間は特に問わないが、10分未満であると充分に加工歪みを除去することができず、24時間を超えて加熱を行ってもそれ以上は加工歪みを除去する効果が得られない。そのため、加熱時間は10分〜24時間とすることが望ましい。
精加工後加熱工程を経た精加工体に、1方向に磁界を印加することにより、精加工体を着磁させる。これにより、RFeB系焼結磁石、あるいはRFeB系熱間塑性加工磁石が完成する。本実施形態では、精加工後に加熱を行うことによって着磁特性が向上するため、着磁の際に印加する磁界は、通常と同様に20kOe程度あればよい。もちろん、より着磁率を高めるために、20kOeよりも強い磁界で着磁させてもよい。また、RFeB系磁石の製造業者は着磁工程を行わずに、RFeB系磁石を用いた製品(モータなど)の製造業者が着磁工程を行ってもよい。
(a)本実施例のRFeB系磁石の作製方法
(a-1) 着磁前基材作製工程
本実施例では、着磁前基材には、PLP法により作製した焼結体を用いた。具体的は、以下の方法により着磁前基材を作製した。
まず、ストリップキャスト法によりNd:26.6重量%、Pr:4.7重量%、Fe:65.5重量%、Co:1.9重量%、B:1.0重量%、Al:0.2重量%、Cu:0.1重量%という組成を有する原料合金片を作製し、該原料合金片を水素解砕した後、ジェットミルを用いて微粉砕した。これにより、平均粒径が(i)3μm、(ii)4μmの原料合金粉末を作製した。以下、(i)の粉末を「3μm粉末」、(ii)の粉末を「4μm粉末」と呼ぶ。
この着磁前基材の表面に、Tb-Ni-Al合金を含有する粉末を付着させたうえで、875℃に加熱する粒界拡散処理を行った。
各基材において、表裏2つの板面に対して切削加工を行った後、ワイヤカッターで厚み方向に切断することにより側面(4面)を形成することにより、板面の大きさ6.0mm×6.0mm、厚み2.0mmの精加工体を得た。
得られた精加工体を、Arガス雰囲気中において200〜520℃の範囲内のいずれかの温度に加熱した。時効処理を行っていない3μm基材から得られた精加工体では、精加工後加熱工程における加熱温度を520℃とした(以下、「実施例1」と呼ぶ)。また、時効処理を行った3μm基材から得られた精加工体では、500℃、400℃、300℃、200℃という異なる4種類の温度で精加工後加熱を行った(以下、「実施例2」(500℃)、「実施例3」(同400℃)、「実施例4」(300℃)及び「実施例5」(200℃)とする)。4μm基材から得られた精加工体では、500℃で精加工後加熱を行った(以下、「実施例6」とする)。なお、本実施例では加熱温度を上記温度範囲内としたが、本発明では900℃程度まで加熱してもよい。
精加工体を2枚重ねて1組とした試料に対して空心コイルを用いて、50kOe以下の範囲内の印加磁界で着磁を行った。具体的には、ある1組の試料に対し、印加磁界が小さい方から順に各磁界での着磁を行い、着磁が終了する度に、フラックスメータを用いて磁束を求めた。ここで、印加磁界が50kOeのときの試料を完全着磁とみなし、「(それぞれの印加磁界における磁束)/(印加磁界が50kOeであるときの磁束)×100」を、その磁界における着磁率として求めた。磁束の測定は、電子磁気工業株式会社製のフラックスメータを用いて行った。
上記実施例1〜6の試料につき、保磁力、及び印加磁界が20kOeである場合の着磁率の測定結果を、上述した各試料の作製条件と合わせて表1に示す。表1には合わせて、後述の比較例1〜3の試料についても作製条件、並びに着磁率及び保磁力の測定結果を示す。実施例1〜6については、精加工後加熱を行う前と行った後の保磁力を示す。保磁力は、精加工体を2枚重ねて1組とした試料に対して、パルスコイル励磁型JH[BH]トレーサ(東英工業株式会社製)を用いて測定した。
(b-1) 精加工後加熱工程の有無による比較
実施例1の試料と、以下に述べるように精加工後加熱工程を行っていない2つの試料(比較例1及び2)につき、着磁率を測定した結果を比較する。ここで、比較例1の試料は、精加工工程の前に520℃で時効処理を行った3μm基材であり、比較例2の試料は、時効処理を行っていない3μm基材である。実施例1と比較例1は、いずれも520℃で加熱を行っているが、加熱を行ったのが精加工工程の後(実施例1)であるか、精加工工程の前(比較例1)であるか、という点で相違する。
精加工後加熱工程における加熱温度が異なる実施例2〜5の試料につき、着磁率を測定した結果を、図3のグラフを用いて比較する。図3には、比較例1の試料の着磁率も併せて示す。実施例2〜5のいずれも、比較例1よりも、同じ強度の磁界で比較すると着磁率をより高くすることができ、同じ着磁率で比較するとより弱い磁界で着磁させることができた。特に、実施例2及び3では、磁界の強度が20kOeのときに、98%以上という高い着磁率が得られた。また、加熱温度が200℃である実施例5においても、実施例2〜4ほどではないが、比較例1と比較して着磁率の向上が見られた。
次に、精加工後加熱工程における加熱温度が等しく(500℃)、原料合金の粒径が異なる実施例2(粒径3μm)及び実施例6(粒径4μm)につき、着磁率を測定した結果を、図4のグラフを用いて比較する。このグラフには併せて、比較例1、及び精加工工程の前に時効処理を行い、精加工工程には加熱処理を行っていない4μm基材(比較例3)の試料の着磁率を測定した結果も示す。実施例6と実施例2を比較すると、原料合金の粒径が大きい実施例6の方が、各磁界における着磁率が高くなっている。これは、実施例6の方が、原料合金の粒径が大きいことにより、最終的に得られたRFeB系焼結磁石の粒径も大きくなっていることによると考えられる。また、実施例2の方が比較例1よりも着磁率が高く、また実施例6の方が比較例3よりも着磁率が高くなっており、本発明の方法により、粒径に依らずに着磁率を向上することが確認できた。
実施例1〜6ではいずれも、23.6〜25.6kOeという高い保磁力が得られている。また、精加工後加熱を行う前と行った後では保磁力が変化していない。このように、本実施例では精加工後加熱によって、高い保磁力を維持しつつ着磁率を向上させることができた。
実施例1と比較例2の試料につき、X線回折測定(2θスキャン)を行った結果を図5に示すと共に、得られたピークのうちの1つ(2θ=72°付近のもの)を拡大して図6に示す。測定に用いたX線はCo-Kα線である。Co-Kα線は、Co原子のL殻からK殻に電子が遷移する際に生じるX線であり、L殻の縮退が解けていることにより、波長が0.1789nmであるCo-Kα1線と、波長が0.1793nmであるCo-Kα2線という、2種の波長のX線が混合した状態で生じる。図6に示すように、実施例1ではCo-Kα1線とCo-Kα2線による2つのピークが重なりつつも、ピークトップが分離しているが、比較例2ではピークトップの分離が見られない。また、ピークの半値全幅は、実施例1では0.36°であるのに対して、比較例2では実施例1よりも広い0.66°である。これらの結果は、比較例2よりも実施例1の方が、RFeB系磁石を構成する個々の微結晶における結晶構造の欠陥や歪みが少ないことを意味している。このX線回折測定のデータは、本発明の方法で行う精加工後加熱工程により、前述の通り、加工歪みを除去できることを裏付けている。
Claims (6)
- 希土類元素RとしてNd及びPrから構成される群のうちの少なくとも1種である軽希土類元素RLを含有するRFeB系磁石を製造する方法であって、
平均粒径が5μm未満である、RFeB系磁石の原料合金の粉末からRFeB系磁石の着磁前基材を作製する着磁前基材作製工程と、
前記着磁前基材の表面に、Tb、Dy及びHoから構成される群のうちの少なくとも1種である重希土類元素RHを含有する付着物を付着させた状態で所定温度に加熱する粒界拡散処理工程と、
前記粒界拡散処理工程後の前記着磁前基材を機械加工によって最終製品の形状に成形することにより精加工体を作製する精加工工程と、
前記精加工体を200〜900℃の温度に加熱する精加工後加熱工程と
をこの順で行うことを特徴とするRFeB系磁石の製造方法。 - 前記精加工後加熱工程において前記精加工体を400℃〜560℃に加熱することを特徴とする請求項1に記載のRFeB系磁石の製造方法。
- 前記精加工後加熱工程を真空又は不活性ガス雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のRFeB系磁石の製造方法。
- 前記精加工工程において切削加工を行うことにより、前記粒界拡散工程で着時前基材の表面に付着させた付着物を除去することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のRFeB系磁石の製造方法。
- 前記着磁前基材作製工程において、前記原料合金の粉末に対して圧縮成形を行うことなく、該粉末をモールドに充填し、該モールド内の該粉末に対して磁界を印加することにより該粉末を配向し、該モールド内の該粉末を所定の焼結温度に加熱することにより、前記着磁前基材を作製することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のRFeB系磁石の製造方法。
- 前記焼結温度が900℃以上1000℃以下であることを特徴とする請求項5に記載のRFeB系磁石の製造方法。
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