JP5644170B2 - R−t−b系焼結磁石の製造方法 - Google Patents

R−t−b系焼結磁石の製造方法 Download PDF

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本発明は、R214B型化合物を主相として有するR−T−B系焼結磁石の製造方法に関する。
214B型化合物を主相とするR−T−B系焼結磁石(RはYを含む希土類元素の少なくとも1種、TはFeまたはFeとCo)は、永久磁石の中で最も高性能な磁石として知られており、ハードディスクドライブのボイスコイルモータや、ハイブリッド自動車用モータ等の各種モータや家電製品等に使用されている。
R−T−B系焼結磁石は、主相であるR214B相中の希土類元素Rに含まれる軽希土類元素RL(NdおよびPrの少なくとも1種)の一部を重希土類元素RH(Dy、Tbの少なくとも1種)に置換すると固有保磁力HcJ(以下、単に「HcJ」という)が向上することが知られている。高いHcJを得るためには、重希土類元素RHを多く添加する必要があった。しかし、R−T−B系焼結磁石において、軽希土類元素RLを重希土類元素RHで置換すると、保磁力が向上する一方、残留磁束密度Br(以下、単に「Br」という)が低下してしまう。そのため、より少ない重希土類元素RHの使用で、Brを低下させず、HcJを向上させることが求められている。また、重希土類元素RHは軽希土類元素RLに比べ希少であるため、その使用量の削減が望まれている。
R−T−B系焼結磁石のHcJ向上手段として、焼結磁石の段階で重希土類元素RHを含む金属、合金、化合物等を磁石表面に被着後、熱処理、拡散させることによって、Brをそれほど低下させずにHcJを回復または向上させる手法が検討されている(特許文献1、特許文献2、及び特許文献3)。
特許文献1は、Ti、W、Pt、Au、Cr、Ni、Cu、Co、Al、Ta、Agのうち少なくとも1種を1.0原子%〜50.0原子%含有し、残部R´(R´はCe、La、Nd、Pr、Dy、Ho、Tbのうち少なくとも1種)からなる合金薄膜層を焼結磁石体の被研削加工面に形成することを開示している。
特許文献2は、小型磁石の最表面に露出している結晶粒子の半径に相当する深さ以上に金属元素R(このRは、Y及びNd、Dy、Pr、Ho、Tbから選ばれる希土類元素の1種又は2種以上)を拡散させ、それによって加工変質損傷部を改質して(BH)maxを向上させることを開示している。
特許文献3は、厚さ2mm以下の磁石の表面に希土類元素を主体とする化学気相成長膜を形成し、磁石特性を回復させることを開示している。
また、特許文献4は、R−Fe−B系微小焼結磁石や粉末の保磁力を回復するための希土類元素の収着法を開示している。この方法では、収着金属(Yb、Eu、Smなどの沸点が比較的低い希土類金属)をR−Fe−B系微小焼結磁石や粉末と混合した後、攪拌しながら真空中で均一に加熱するための熱処理が行われる。この熱処理により、希土類金属が磁石表面に被着するとともに、内部に拡散する。また特許文献4には、沸点の高い希土類金属(例えばDy)を収着させる実施形態も記載されている。
一方、特許文献4に開示されている従来技術では、Dyなどの希土類金属を充分に気化する温度に加熱し、成膜を行っているため、磁石中の拡散速度よりも成膜速度の方が圧倒的に高く、磁石表面上に厚いDy膜が形成される。その結果、磁石表層領域(表面から数十μmの深さまでの領域)では、Dy膜と焼結磁石体との界面におけるDy濃度の大きな濃度差を駆動力として、Dyが主相中にも拡散することを避けられず、Brが低下してしまう。また、Dyを含む高沸点希土類金属を対象とした実施形態においては、高周波によって収着原料と磁石の双方を加熱するため、希土類金属のみを充分な温度に加熱し磁石を磁石特性に影響を及ぼさない程度の低温に保持することは容易ではなく、磁石は、誘導加熱されにくい粉末の状態か極微小なものに限られてしまう。
また、特許文献4の方法では、成膜処理時に装置内部の磁石以外の部分(例えば真空チャンバーの内壁)にも多量に希土類金属が堆積するため、貴重資源である重希土類元素の省資源化に反することになる。
更に、Ybなどの低沸点の希土類金属を対象とした実施形態においては、確かに個々のR−Fe−B系微小磁石のHcJは回復するが、拡散熱処理時にR−Fe−B系磁石と収着金属が融着したり、処理後お互いを分離することが困難である。また、焼結磁石体表面に未反応の収着金属の残存が事実上避けられない。希土類金属は本来非常に活性で酸化しやすいため、実用環境において未反応収着金属が腐食の起点になりやすく好ましくない。また、混合攪拌するための回転と真空熱処理を同時に行う必要があるため、耐熱性、圧力(気密度)を維持しながら回転機構を組み込んだ特別な装置が必要になり、量産製造時に設備投資や品質安定製造の観点で課題がある。また、収着原料に粉末を使用した場合は安全性の問題(発火や人体への有害性)や作製工程に手間がかかりコストアップ要因となる。
これらの問題を解決するため、本出願人は、R−T−B系焼結磁石体と、重希土類元素RH(Dy、Ho、及びTbからなる群から選択された少なくとも1種)を含有するバルク体とを対向させて配置し、これらを加熱することにより、バルク体から重希土類元素RHを焼結磁石体の表面に供給しつつ、重希土類元素RHを焼結磁石体の内部に拡散させる技術(蒸着拡散法)を開示した(特許文献5)。この技術は、重希土類元素を焼結磁石体の表面に連続的に供給しつつ、その内部に拡散させることを特徴としている。蒸着拡散法によれば、焼結磁石体の表面に重希土類元素RHからなる膜は生成されないため、Brの低下を抑制しながら、HcJを向上させることができる。蒸着拡散の後、焼結磁石体の内部へ重希土類元素をさらに拡散させることを目的として、追加熱処理を施すこともある。
特開昭62−192566号公報 特開2004−304038号公報 特開2005−285859号公報 特開2004−296973号公報 国際公開第2007/102391号
しかし、上記の蒸着拡散法によっても、焼結磁石体の表層領域では重希土類元素RHの主相粒内部への拡散量が多めとなって、僅かとはいえどもBrが低下する問題があった。Brが低下した場合は、焼結磁石体の表層領域を薄く研削すれば、Brを回復させることも可能である。しかし、この方法は、生産工程の増加を招くとともに、焼結磁石体表面に拡散した重希土類元素RHを無駄にすることになる。よって、焼結磁石体の表層領域であってもBrの低下を抑制しながら、HcJを向上させる方法が強く求められている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、焼結磁石体の表層領域においても重希土類元素RHが主相粒内部に拡散することを抑制し、Brを実質的に低下させずにHcJを向上させたR−T−B系焼結磁石を提供することにある。
本発明のR−T−B系焼結磁石の製造方法は、軽希土類元素RL(Nd及びPrの少なくとも1種)を含有するR−T−B系焼結磁石体、及び重希土類元素RH(Dy及びTbの少なくとも1種)を含有するRH拡散源の両方を加熱することにより、前記RH拡散源から前記R−T−B系焼結磁石体へ重希土類元素RHの供給を行い、同時に、重希土類元素RHをR−T−B系焼結磁石体の内部に拡散させるRH供給工程(A)と、前記R−T−B系焼結磁石体の加熱状態を維持したまま、前記RH拡散源から前記R−T−B系焼結磁石体への重希土類元素RHの供給を中断し、その状態を維持するRH拡散工程(B)とを含み、前記工程(A)及び工程(B)を交互に2回以上繰り返す。
好ましい実施形態において、前記工程(A)及び工程(B)は、前記R−T−B系焼結磁石体の温度を700℃以上1000℃未満の範囲に保持した状態で交互に繰り返す。
好ましい実施形態において、前記工程(A)及び前記工程(B)は、同一処理室内における前記RH拡散源及び前記R−T−B系焼結磁石体に対して行い、前記工程(A)は、前記処理室内の圧力を1×10-5Pa〜1Paの範囲に調整する工程を含み、前記工程(B)は、前記処理室内の圧力を前記工程(A)の圧力より高くかつ重希土類元素RHの処理温度における飽和蒸気圧以上の値に調整する工程を含む。
本発明では、重希土類元素RHの供給と拡散を複数回繰り返すことにより、焼結磁石体の表層領域においても重希土類元素RHの主相粒内部への拡散量を抑制することができる。その結果、Brを実質的に低下させず、HcJを向上させたR−T−B系焼結磁石を提供することができる。
また、本発明では、焼結磁石体の表層領域において重希土類元素RHが主相粒内部に拡散することを抑制することができるので、焼結磁石体の表層領域におけるBrが低下した部分を研削する必要がなく、生産工程の短縮を図ることができる。あるいは、研削が必要であっても極めて少ない量で済むため、生産工程の増加をほとんど招くことがない。
本発明によるR−T−B系焼結磁石の製造方法における、RH拡散源と焼結磁石体との配置関係の一例を模式的に示す図である。 (a)、(b)、(c)は、それぞれ、重希土類元素RHとしてDyの拡散を行うときの制御工程の例を示すグラフである。 実施例の磁石特性評価用サンプルの切り出し位置を示す図である。 実施例1の研削前後における保磁力HcJのサイクル数依存性を示すグラフである。 実施例1の研削前後における残留磁束密度Brのサイクル数依存性を示すグラフである。 1サイクルのサンプルのEPMAによるDyのマッピングを示す図である。 6サイクルのサンプルのEPMAによるDyのマッピングを示す図である。 実施例2の研削前後におけるHcJのサイクル数依存性を示すグラフである。 実施例2の研削前後におけるBrのサイクル数依存性を示すグラフである。 実施例3の研削前後におけるHcJのサイクル数依存性を示すグラフである。 実施例3の研削前後におけるBrのサイクル数依存性を示すグラフである。 実施例4の研削前後におけるHcJのサイクル数依存性を示すグラフである。 実施例4の研削前後におけるBrのサイクル数依存性を示すグラフである。 実施例5の研削前後におけるHcJのサイクル数依存性を示すグラフである。 実施例5の研削前後におけるBrのサイクル数依存性を示すグラフである。 実施例6の研削前後におけるHcJのサイクル数依存性を示すグラフである。 実施例6の研削前後におけるBrのサイクル数依存性を示すグラフである。 本発明によるR−T−B系焼結磁石の製造方法における、RH拡散源と焼結磁石体との配置関係の一例を模式的に示す図である。
本発明によるR−T−B系焼結磁石の製造方法では、軽希土類元素RL(NdおよびPrの少なくとも1種)を含有するR−T−B系焼結磁石体、及び重希土類元素RH(DyおよびTbのうち少なくとも1種)を含有するRH拡散源の両方を加熱することにより、RH拡散源からR−T−B系焼結磁石体に対する重希土類元素RHの供給を行い、同時に重希土類元素RHをR−T−B系焼結磁石体の内部に拡散させる工程(A)を行う。次に、R−T−B系焼結磁石体の加熱状態を維持したまま、RH拡散源からR−T−B系焼結磁石体への重希土類元素RHの供給を中断し、その状態を維持する工程(B)を行う。本発明の第1の特徴点は、これらの工程(A)、(B)を1サイクルとして、このサイクルを2回以上繰り返すことにある。
上記の工程(A)では、RH拡散源、及び焼結磁石体を好ましくは700℃以上1000℃未満に加熱することにより、RH拡散源から気化(昇華)して焼結磁石体の表面に飛来した重希土類元素RHを速やかに焼結磁石体内部に拡散させることができる。700℃以上1000℃未満の温度範囲は、R−T−B系焼結磁石における粒界拡散が活発に生じる温度でもある。このため、焼結磁石体表層における粒内への拡散よりも優先的に焼結磁石体内部への粒界拡散を促進させることが可能になる。工程(A)では重希土類元素RHの焼結磁石体への供給のみを意味するものではなく、この工程中に焼結磁石体内部への拡散も起こる。
なお、本願では、RH拡散源から重希土類元素RHを焼結磁石体表面に供給しつつ、重希土類元素RHを焼結磁石体の表面から内部に拡散させることを「RH供給工程」と称し、重希土類元素RHとしてDyを用いる場合は「Dy供給工程」と称する。
上記の工程(B)では、重希土類元素RHを焼結磁石体に供給することを抑制または中断した状態で焼結磁石体を加熱した状態に保持するため、工程(A)にて焼結磁石体に供給された重希土類元素RHを無駄なく焼結磁石体の内部に拡散する。この拡散は、主として粒界拡散によって進行する。以下、工程Bを「RH拡散工程」と称する。ここでRH拡散工程では、拡散を主に行う工程であり、必ずしも重希土類元素RHの供給を完全に停止する必要は無い。なお、重希土類元素RHとしてDyを用いる場合は「Dy拡散工程」と称する。
特許文献1から4に示される従来技術では、重希土類元素RHの膜(RH膜)を焼結磁石体の表面に形成した後、熱処理により焼結磁石体の内部に拡散させており、RH膜と接する領域で主相結晶粒内への拡散が顕著に進行し、Brが低下してしまう。これに対し、本発明の工程(A)(RH供給工程)では、焼結磁石体表面に飛来した重希土類元素RHが、粒界拡散によって速やかに焼結磁石体内部に浸透していく。また、1回のRH供給工程を相対的に短い時間で中断し、引き続いて工程(B)(RH拡散工程)を行うため、焼結磁石体の表面に供給した重希土類元素RHを焼結磁石体の内部にスムーズに拡散させることができる。このため、焼結磁石体の表層領域において、主相結晶粒内への拡散よりも優先的に粒界拡散が生じ、RH拡散工程後の焼結磁石体のままでもBrの低下を抑制し、HcJを効果的に向上させることが可能となる。
なお、特許文献5に記載された技術では、上記の工程(A)(RH供給工程)によって焼結磁石体への重希土類元素RHを供給するとき、1回の工程で必要な重希土類元素RHのすべてを供給する方法が記載されている。そして、必要に応じてRHバルク体(RH拡散源)への略同程度の追加熱処理を行うことにより、焼結磁石体に供給した重希土類元素RHを焼結磁石体内部へ更に拡散させる方法が記載されている。この追加熱処理は、本願発明における工程(B)(RH拡散工程)に対応する。このように、特許文献5に記載の技術では、上記のRH供給工程およびRH拡散工程を、それぞれ、1回のみ行うことが記載されている。本発明が、特許文献5に記載の従来技術と大きく異なる点は、RH供給工程及びRH拡散工程のサイクルを2回以上に繰り返すことにある。言い換えると、1回のRH供給工程では、最終的に供給すべき重希土類元素RH総量の一部を供給することになる。必要な重希土類元素RH総量の供給を複数回に分けて行い、かつRH拡散工程をそれぞれの後に実行することにより、焼結磁石体の表層領域でも主相粒内部まで重希土類元素RHが拡散することを避けることが可能になる。その結果多くの重希土類元素RHを焼結磁石体内部に供給・拡散することができる。
重希土類元素RHとしては、Dy、Tbが選択し得る。RH供給工程のしやすさ、コスト等を考慮すると、Dyが最も好ましい。ただし、Tbを用いる場合は高温、高真空を必要とする。 本発明では、重希土類元素RHを含有するR−T−B系焼結磁石体を用いても構わない。 工程(A)(RH供給工程)から工程(B)(RH拡散工程)への切替えは、例えば、以下の方法で実現することが可能である。
(1)処理室内の雰囲気圧力を調整する。
(2)RH拡散源と焼結磁石体との距離を変化させる。
(3)処理室内において、RH拡散源と焼結磁石体との間にシャッターを配置し、このシャッターの開閉を制御する。
(4)重希土類元素RHの供給を行うためにRH拡散源が配置された拡散処理室と、RH拡散源が配置されていない熱処理室とが連結された連続炉を使用し、拡散処理室と熱処理室との間で焼結磁石体を移動させる。
(実施形態)
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、処理室内における焼結磁石体2とRH拡散源4との配置例を示している。図1に示す例では、焼結磁石体2とRH拡散源4とが所定間隔をあけて対向配置されている。RH拡散源4は、例えばMoなどの高融点金属材料からなる支持治具8及び支柱9によって保持されている。焼結磁石体2及びRH拡散源4を保持する構成は、上記の例に限定されず、任意である。
焼結磁石体2とRH拡散源4の間隔は少なくとも供給工程において0.1mm〜300mm、例えば10mm程度になるように設定され得る。焼結磁石体2とRH拡散源4の配置関係は上下でも左右でも、また互いが相対的に移動するような配置であってもよい。
支持治具8は、好適にはMo、Nb、Ta、Wまたはこれらの合金から形成され、50%以上の開口率を有するように開口部が設けられている。
不図示の加熱装置で処理室を加熱することにより、処理室の温度を上昇させる。このとき、処理室の温度を、好ましくは700℃以上1000℃未満、さらに好ましくは850℃以上950℃以下の範囲に調整する。この温度領域では、重希土類金属RHの蒸気圧は僅かであるが、温度と圧力を適正な範囲に調節することで、RH拡散源4から気化した重希土類金属RHを焼結磁石体2の表面に供給するとともに、その内部に拡散させることができる。この温度範囲は、重希土類金属RHが焼結磁石体2の粒界相を伝って内部へ拡散する好ましい温度領域でもある。
本実施形態におけるRH供給工程では、焼結磁石体2の温度をRH拡散源4の温度と同じにすることが好ましい。ここで焼結磁石体2の温度がRH拡散源4の温度と同じとは、両者の温度差が20℃以内にあることを意味するものとする。具体的には、RH拡散源4の温度を700℃以上1000℃未満の範囲内に設定し、かつ、焼結磁石体2の温度を700℃以上1000℃未満の範囲内に設定することが好ましい。
RH拡散源4から重希土類金属RHを焼結磁石体2に供給する工程を例えば高温で長時間続けると、焼結磁石体2の表層付近における粒内への拡散が生じやすくなる。本実施形態では、焼結磁石体2へ重希土類金属RHを供給する工程と、焼結磁石体2の内部に重希土類金属RHを熱拡散させる工程とを複数のサイクルに分けて行うため、焼結磁石体2の表層領域に位置する主相粒内に重希土類金属RHを拡散させることなく効率的に焼結磁石体2の内部にまで重希土類金属RHを拡散させることが可能になる。
重希土類金属RHを焼結磁石体2に供給する工程(RH供給工程)を行うとき、処理室内は不活性雰囲気であることが好ましい。本明細書における「不活性雰囲気」とは、真空、または不活性ガスで満たされた状態を含むものとする。また、「不活性ガス」は、例えばアルゴン(Ar)などの希ガスであるが、RH拡散源4及び焼結磁石体2との間で化学的に反応しないガスであれば、「不活性ガス」に含まれ得る。不活性ガスの圧力は、大気圧よりも低い値を示すように減圧される。処理室内の雰囲気圧力が大気圧に近いと、RH拡散源4から重希土類元素RHが焼結磁石体2の表面に供給されにくくなる。このため、処理室内の雰囲気圧力は10-5Pa〜1Paにすることが好ましい。なお、これら圧力は処理温度に応じ、適宜選定することができる。
本発明の好ましい実施形態において、焼結磁石体2の表面への重希土類元素RHの供給を比較的短い時間で中断し、RH拡散工程を実施する。中断する方法としては、処理室内部の雰囲気圧力を重希土類元素RHの蒸気圧よりも高いレベルに上昇させる。RH拡散工程での圧力はRH拡散工程時の圧力がRH供給工程での圧力よりも高い圧力でかつ10-1Pa〜103Paにすることが好ましい。
このように高い雰囲気圧力のもとでは、RH拡散源4から焼結磁石体2への重希土類金属RHの供給が抑制され、重希土類金属RHの供給が実質的に中断される。そのような圧力で処理室の温度を拡散温度範囲に維持することで、焼結磁石体2に供給された重希土類元素RHが、粒界を伝って焼結磁石体2の内部に向かって更に拡散する。
図2は、重希土類元素RHとしてDyを用いた場合の制御工程を示すグラフである。図2(a)は、Dy供給工程(3時間)とDy拡散工程(6時間)を1サイクルだけ行う従来例を示している。Dy供給工程では、雰囲気圧力をDy飽和蒸気圧よりも低い圧力(例えば0.01Pa)に制御し、Dy拡散工程でDy飽和蒸気圧よりも高い圧力(例えば500Pa)に制御する。温度は、Dy供給工程及びDy拡散工程のいずれでも、例えば900℃に保持される。これに対して、図2(b)は、Dy供給工程(1時間)とDy拡散工程(2時間)を3サイクル繰り返す本発明の例を示し、図2(c)は、Dy供給工程(0.5時間)とDy拡散工程(1時間)とを6サイクル繰り返す本発明の例を示している。この例では、サイクル数が増えても、Dy供給工程の合計の時間は3時間であり、Dy拡散工程の合計の時間は6時間である。図2(b)及び図2(c)の例でも、温度は一定(例えば900℃)に保持したまま、雰囲気圧力の制御を繰り返すことにより、Dyの供給を断続的に繰り返している。
図2(b)及び図2(c)の例では、図2(a)の従来例と対比するため、Dy供給工程の合計時間及びDy拡散工程の合計時間を、それぞれ、3時間及び6時間に設定しているが、本発明は、このような例に限定されない。サイクル毎にDy供給工程時間及び/またはDy拡散工程時間を変化させても良い。また、各工程の合計時間も、供給すべきDy量や焼結磁石体の形状及び大きさに応じて適宜異なる長さに設定され得る。また、温度も常に一定に保持される必要は無い。例えば、6サイクルの処理工程を繰り返す場合、最初の3サイクルは900℃、次の3サイクルは、850℃に保持されても良い。
図2の例では、雰囲気圧力の調整によってRH供給工程とRH拡散工程を切り換えているが、前述したように、本発明はこのような例に限定されない。RH拡散源と焼結磁石体との間隔を変化させてもよいし、シャッターの開閉を利用してもよい。シャッターの開閉を利用する場合、サイクル数を増加させることが容易である。
なお、RH拡散工程では、必ずしも重希土類元素RHの供給を完全に停止する必要は無い。RH拡散工程では、重希土類元素RHの供給が充分に抑制されていれば、本発明の効果を得ることが可能である。例えば上述したRH拡散源と焼結磁石体との間隔を変化させる場合、RH拡散源から焼結磁石体までの距離が拡大しても、供給を完全にゼロにするのは難しいが本発明の目的とする効果が得られる。
RH供給工程と、その後に行うRH拡散工程は、必ずしも同じ温度で行う必要がなく、700℃以上1000℃未満の範囲にあることが好ましい。RH供給工程における雰囲気圧力は、10-5Pa〜1Paにあることが好ましく、後に行うRH拡散工程で雰囲気圧力を調整する場合には、RH供給工程より高く、かつ重希土類元素RHの飽和蒸気圧以上にあること、具体的には10-1Pa〜103Paにするのが好ましい。RH供給工程とRH拡散工程の合計時間は、好ましくは1時間から24時間、さらに好ましくは2時間から12時間である。さらに必要に応じて熱処理(400℃から700℃)を行なってもよい。
焼結磁石体の表面は重希土類元素RHが拡散浸透しやすいように、事前に酸洗浄やブラスト処理等の活性化処理を行ってもよい。また、焼結磁石体の表面は、例えば焼結工程後や切断加工が完了した後の酸化が進んだ状態にあってもよい。
RH拡散源の形状・大きさは特に限定されず、板状であってもよいし、不定形であってもよい。RH拡散源は少なくとも1種の重希土類元素RHを含む金属または合金から形成されていることが好ましい。
RH拡散源は、元素X(Nd、Pr、La、Ce、Al、Zn、Sn、Cu、Co、Fe、Ag、及びInからなる群から選択された少なくとも1種)を含有していてもよい。
本発明によれば、例えば厚さ3mm以上の焼結磁石体に対しても、僅かな量の重希土類元素RHを用いてBrを低下させず、HcJを高めることができるため、高性能磁石を提供することができる。このような高性能磁石は、超小型・高出力モータの実現に大きく寄与する。本発明の効果は、厚さが10mm以下の焼結磁石体において特に顕著に発現する。
本発明においては、焼結磁石体の表面全体から重希土類元素RHを拡散させても良いし、焼結磁石体表面の一部分から重希土類元素RHを拡散させても良い。そのためには例えば、焼結磁石体のうち重希土類元素RHを拡散させたくない部分をマスキングする等して、上記の方法と同様の方法で処理すればよい。このような方法によれば、部分的にHcJが向上した磁石を得ることができる。
以下、本発明によるR−T−B系焼結磁石を製造する方法の好ましい実施形態を説明する。
[原料合金]
まず、25質量%以上40質量%以下の希土類元素Rと、0.6質量%〜1.6質量%のB(硼素)と、残部Fe及び不可避的不純物とを含有する合金を用意する。Bの一部はC(炭素)によって置換されていてもよいし、Feの一部(Feの50原子%以下)は、Coによって置換されていてもよい。この合金は、種々の目的により、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Pb、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種の添加元素Mを0.01〜1.0質量%程度含有していてもよい。なお、希土類元素Rの一部として重希土類元素RHを含んでいても良い。
上記の合金は、溶湯を例えばストリップキャスト法によって急冷して好適に作製され得る。以下、ストリップキャスト法による急冷凝固原料合金の作製を説明する。
まず、上記組成を有する合金をアルゴン雰囲気中において高周波溶解によって溶融し、合金の溶湯を形成する。次に、この溶湯を1350℃程度に保持した後、単ロール法によって急冷し、例えば厚さ約0.3mmのフレーク状合金を得る。こうして作製したフレーク状の原料合金を、次の水素粉砕前に例えば1〜10mmの大きさに粉砕する。なお、ストリップキャスト法による原料合金の製造方法は、例えば、米国特許第5、383、978号明細書に開示されている。
[粗粉砕工程]
上記のフレーク状の原料合金を水素炉の内部へ収容する。次に、水素炉の内部で水素粉砕処理を行う。水素粉砕処理で得られた後の粗粉砕粉を水素炉から取り出す際、粗粉砕粉が大気と接触しないように、不活性雰囲気下で取り出し動作を実行することが好ましい。そうすれば、粗粉砕粉が酸化・発熱することが防止され、焼結磁石の磁石特性の低下が抑制できるからである。
水素粉砕処理によって、フレーク状原料合金は0.1mm〜数mm程度の大きさに粉砕される。水素粉砕処理後、脆化した原料合金をより細かく解砕するとともに冷却することが好ましい。
[微粉砕工程]
次に、粗粉砕粉に対してジェットミル粉砕装置を用いて微粉砕を行う。本実施形態で使用するジェットミル粉砕装置にはサイクロン分級機が接続されている。ジェットミル粉砕装置は、粗粉砕工程で粗く粉砕された粗粉砕粉の供給を受け、粉砕機内で粉砕する。粉砕機内で粉砕された粉末はサイクロン分級機を経て回収タンクに集められる。こうして、0.1〜20μm程度(典型的にはF.S.S.S粒度で3〜5μm)の微粉砕粉を得ることができる。このような微粉砕に用いる粉砕装置は、ジェットミルに限定されず、アトライタやボールミルであってもよい。微粉砕前にステアリン酸亜鉛などの潤滑剤を粉砕助剤として用いてもよい。
[プレス成形]
本実施形態では、上記方法で作製された微粉砕粉に対し、例えば潤滑剤を0.3質量%添加・混合する。次に、上述の方法で作製した微粉砕粉を公知のプレス装置を用いて配向磁界中で成形し、成形体を作製する。印加する磁界の強度は、例えば0.8〜1.2MA/mである。また、成形圧力は、成形体密度が例えば4〜4.5g/cm3程度になるように設定される。
[焼結工程]
上記の成形体に対して、1000℃から1200℃の温度で焼結する。雰囲気は真空でもよいし、減圧アルゴン雰囲気で行ってもよい。また、昇温途中で真空から水素ガスを導入してもよい。焼結工程の後、熱処理(400℃〜1000℃)や、寸法調整のための研削を行っても良い。
[RH供給工程、RH拡散工程]
こうして作製された焼結磁石体に重希土類元素RHを拡散させる。具体的には、図1に示すように処理室内にRH拡散源と焼結磁石体とを配置する。そして、処理室内を700℃以上1000℃未満に加熱し、例えば図2(b)及び図2(c)に示すように雰囲気圧力を制御してRH供給工程とRH拡散工程とを2サイクル以上繰り返す。さらに必要に応じて熱処理(400℃から700℃)を行なってもよい。
実用上、焼結磁石には表面処理を施すことが好ましい。表面処理は公知の表面処理でよく、例えばAl蒸着や電気Niめっきや樹脂塗装などの表面処理を行うことができる。表面処理を行う前にはサンドブラスト処理、バレル処理、エッチング処理、機械研削等公知の前処理を行ってもよい。また、寸法調整のための研削を行っても良い。このような工程を経ても、HcJ向上効果はほとんど変わらない。寸法調整のための研削量は、例えば1〜300μmである。
[実施例1]
まず、ストリップキャスト法により厚さ0.2〜0.3mmの原料合金を作製した。
次に、この原料合金を容器内に充填し、水素処理装置内に収容した。そして、水素処理装置内を圧力200kPaの水素ガス雰囲気で満たすことにより、室温で原料合金に水素吸蔵させた後、放出させた。このような水素処理を行うことにより、原料合金を脆化し、大きさ約0.15〜0.2mmの粉末を作製した。
上記の水素処理により作製した粗粉砕粉に対し粉砕助剤として0.04wt%のステアリン酸亜鉛を添加し混合した後、ジェットミル装置による粉砕を行うことにより、粉末粒度が約3μm(F.S.S.S)の微粉砕粉を作製した。
こうして作製した微粉砕粉をプレス装置により成形し、成形体を作製した。具体的には、印加磁界中で粉末粒子を磁界配向した状態で圧縮し、プレス成形を行った。その後、真空炉により1020℃で4時間の焼結工程を行った。こうして、焼結体ブロックを作製した後、この焼結体ブロックを機械加工することにより、厚さ(配向方向)5.4mm×縦14mm×横23mmの焼結磁石体を得た。この焼結磁石体の組成を分析した結果、Nd:19.8、Pr:5.7、Dy:4.3、B:0.93、Co:2.0、Cu:0.1、Al:0.15、Ga:0.08、O:0.19、N:0.03、C:0.1、残部:Fe(質量%)であった。
この焼結磁石体を図1に示す処理容器内に配置した。RH拡散源には、純度99.9%のDyを用いた。焼結磁石体とRH拡散源との間隔は約10mmに設定した。支持治具はMo製で、開口率は50%である。
次に、処理容器を加熱し、RH供給工程(Dy供給工程)とRH拡散工程(Dy拡散工程)とを行った。処理条件は、以下の表1に示す通りである。
サンプル1と2は本発明の実施例である。サンプル1では、Dy供給工程(1時間)とDy拡散工程(2時間)を3サイクルに分けて行った(図2(b))。Dy供給工程では雰囲気圧力を0.01Paに制御し、Dy拡散工程では雰囲気圧力を500Paに制御された。温度は、Dy供給工程及びDy拡散工程のいずれでも、900℃に保持した。サンプル2では、Dy供給工程(0.5時間)とDy拡散工程(1時間)とを6サイクル繰り返した(図2(c))。
一方、サンプル3は比較例であり、Dy供給工程(3時間)とDy拡散工程(6時間)を1サイクルのみ行った(図2(a))。
その後、熱処理(480℃で4時間、100Pa)を行った。
次に、図3に示すように、厚さ5.4mm×縦14mm×横23mmの焼結磁石から厚さ5.4mm×縦5.0mm×横5.0mmの大きさに切り出し、B−Hトレーサで磁石特性を測定した。
図4は、研削前後におけるHcJのサイクル数依存性を示すグラフであり、図5は、研削前後におけるBrのサイクル数依存性を示すグラフである。ここで研削前とはDy供給工程とDy拡散工程後に焼結磁石体の厚み方向の加工を行っていない状態(厚さ5.4mm)を意味し、研削後とはDy供給工程とDy拡散工程後にDy供給面(Dy拡散源との対向面)およびRH拡散源支持部材との接触面をそれぞれ0.1mm研削した状態(厚さ5.2mm)を意味する。図4、5では研削前の特性値を□で記し、研削後の特性値を○で示している。また、これらのグラフには、参考としてDy供給工程とDy拡散工程を行っていないサンプルで熱履歴だけを同じくしたときの焼結磁石体の特性値を「RH拡散前」として破線で記載している。
測定した磁石特性の数値は表2に示す。表2中、RH拡散前1の磁石特性の数値はRH供給工程、拡散工程を行わず、900℃で9時間の熱処理と480℃で4時間、100Paの熱処理をした焼結磁石体をB−Hトレーサで測定した磁石特性の値を示す。また、ΔBrはRH供給工程、拡散工程後の焼結磁石から測定したBrの値からRH拡散前のBrの値を除いた数値を示している。
表2および図4より、HcJはサイクル数にはほとんど依存していない。一方、表2および図5よりBrは、サイクル数が3回および6回の本発明のサンプル1および2が、研削前でも0.01TのBrの低下で済んでおり、RH拡散前に近いBrが得られているのに対し、サイクル数が1回の比較例のサンプル3は、RH拡散前に比べてBrが0.02T低下していることがわかる。また、研削後、本発明のサンプル1および2は、RH拡散前とほぼ同じBrまで回復するが、比較例のサンプル3はBrがRH拡散前と同じレベルにまでは回復されない。回復の差に起因するのは、重希土類元素RHが濃縮した主相外殻部の厚みの差によるものと考えられる。
以上のことから明らかなように、サイクル数が2回以上になると、RH供給面における粒内への拡散が抑制され、Brの低下が抑制できることがわかる。
サンプル2と3について、EPMA(島津製作所製EPMA−1610)により、磁石内部へのDyの拡散状況を観察した結果を図6と図7にそれぞれ示す。図6(a)、図7(a)は磁石表面からおよそ150μmの深さまでのDyの拡散状況を観察したものであり、図6(b)、図7(b)は図6(a)、図7(a)の磁石表面近傍をさらに拡大しDyの拡散状況を観察したものである。明るさはDyの濃度を反映している。図6と図7とを比較することにより、6サイクル繰り返したサンプル2では、1サイクルのみのサンプル3に比べて粒内への拡散が抑制されていることがわかる。
[実施例2]
図18のようにRH拡散源を焼結磁石体の上下に配置した以外は、サンプル4は実施例1のサンプル1、サンプル5は実施例1のサンプル2、そしてサンプル6は実施例1のサンプル3とそれぞれ同条件にてRH供給工程とRH拡散工程とを行った。RH拡散源を焼結磁石体の上下に配置したことによりDy供給量は倍増した。得られたサンプル4、5、6の磁石特性を実施例1と同条件で測定した。測定結果を表3、図8及び図9に示す。表3は測定した磁石特性の数値を示す表であり、図8は研削前後におけるHcJのサイクル数依存性を示すグラフであり、図9は研削前後におけるBrのサイクル数依存性を示すグラフである。
表3中、RH拡散前2の磁石特性の数値はRH供給工程、拡散工程を行わず、900℃×9時間の熱処理と480℃で4時間、100Paの熱処理をした後の焼結磁石体をB−Hトレーサで測定した磁石特性の値を示す。図8、9では研削前の特性値を□で記し、研削後の特性値を○で示している。表3、図8及び図9より、焼結磁石体の両面からRH供給工程、RH拡散工程を施しても、実施例1と同様にサイクル数を2回以上繰り返すことにより、HcJを大きく向上しつつBrの低下が抑制できることがわかる。
[実施例3]
表4に示す条件以外は、実施例1と同じ条件でRH供給工程およびRH拡散工程を行った。
サンプル7は本発明の実施例、サンプル8は比較例である。得られたサンプルの磁石特性を実施例1と同条件で測定した。測定結果を表5、図10及び図11に示す。表5は測定した磁石特性の数値を示す表であり、図10は研削前後におけるHcJのサイクル数依存性を示すグラフであり、図11は研削前後におけるBrのサイクル数依存性を示すグラフである。
表5中、RH拡散前3の磁石特性の数値はRH供給工程、拡散工程を行わず、950℃×4.5時間の熱処理と480℃で4時間、100Paの熱処理をした後の焼結磁石体をB−Hトレーサで測定した磁石特性の値を示す。図10、11では研削前の特性値を□で記し、研削後の特性値を○で示している。表5、図10及び図11より、RH供給工程、RH拡散工程の処理温度、処理時間を変えても、実施例1と同様の効果が得られることがわかる。サイクル数が6回の本発明のサンプル7は、研削前でもRH拡散前とほぼ同じBrが得られることがわかる。
[実施例4]
図18のようにRH拡散源を焼結磁石体の上下に配置した以外は、サンプル9は実施例3のサンプル7、サンプル10は実施例3のサンプル8とそれぞれ同条件にてRH供給工程とRH拡散工程とを行った。得られたサンプル9、10の磁石特性を実施例1と同条件で測定した。測定結果を表6、図12及び図13に示す。表6は測定した磁石特性の数値を示す表であり、図12は研削前後におけるHcJのサイクル数依存性を示すグラフであり、図13は研削前後におけるBrのサイクル数依存性を示すグラフである。
表6中、RH拡散前4の磁石特性の数値はRH供給工程、拡散工程を行わず、950℃×4.5時間の熱処理と480℃で4時間、100Paの熱処理をした後の焼結磁石体をB−Hトレーサで測定した磁石特性の値を示す。図12、13では研削前の特性値を□で記し、研削後の特性値を○で示している。表6、図12及び図13より、RH供給工程、RH拡散工程の処理温度、処理時間を変え、さらに、焼結磁石体の両面からRH供給工程、RH拡散工程を施しても、実施例1と同様の効果が得られることがわかる。サイクル数が6回の本発明のサンプル9は、研削前でもRH拡散前とほぼ同じBrが得られることがわかる。
[実施例5]
Nd:21.0、Pr:5.8、Dy:4.1、B:0.99、Co:0.9、Cu:0.1、Al:0.15、Ga:0.1、O:0.5、N:0.01、C:0.06、残部:Fe(質量%)の組成を有する焼結磁石体を用いて、表7に示す条件およびRH拡散工程後の熱処理条件(450℃で4時間、100Pa)以外は実施例2と同条件でRH供給工程、RH拡散工程を行った。
サンプル11、および12は本発明の実施例、サンプル13は比較例である。得られたサンプルの磁石特性を実施例1と同条件で測定した。測定結果を表8、図14及び図15に示す。表8は測定した磁石特性の数値を示す表であり、図14は研削前後におけるHcJのサイクル数依存性を示すグラフであり、図15は研削前後におけるBrのサイクル数依存性を示すグラフである。
表8中、RH拡散前5の磁石特性の数値はRH供給工程、拡散工程を行わず、900℃×9時間の熱処理と450℃で4時間、100Paの熱処理をした後の焼結磁石体をB−Hトレーサで測定した磁石特性の値を示す。図14、15では研削前の特性値を□で記し、研削後の特性値を○で示している。表8、図14及び図15より、焼結磁石体の組成を変えても、HcJ、Brともに実施例2と同様な効果を得られることがわかる。
[実施例6]
Nd:30.5、Pr:0.1、Dy:0.02、B:0.95、Co:0.9、Cu:0.1、Al:0.10、Ga:0.08、O:0.4、N:0.01、C:0.07、残部:Fe(質量%)の組成を有する焼結磁石体を用いて、表9に示す条件以外は実施例2と同条件でRH供給工程、RH拡散工程を行った。
サンプル14、および15は本発明の実施例、サンプル16は比較例である。得られたサンプルの磁石特性を実施例1と同条件で測定した。測定結果を表10、図16及び図17に示す。表10は測定した磁石特性の数値を示す表であり、図16は研削前後におけるHcJのサイクル数依存性を示すグラフであり、図17は研削前後におけるBrのサイクル数依存性を示すグラフである。
表10中、RH拡散前6の磁石特性の数値はRH供給工程、拡散工程を行わず、900℃×9時間の熱処理と480℃で4時間、100Paの熱処理をした後の焼結磁石体をB−Hトレーサで測定した磁石特性の値を示す。図16、17では研削前の特性値を□で記し、研削後の特性値を○で示している。表10、図16及び図17より、Dyをほとんど含まないR−T−B系焼結磁石を用いた場合でも、HcJ、Brともに実施例2とほぼ同様な効果を得ることができる。研削前では、サイクル数が1回のサンプル16に比べ、サイクル数が3回、および6回のサンプル14、および15の方が高いBrが得られていることがわかる。
本発明によれば、焼結磁石体の表層領域においても重希土類元素RHが主相粒内部に拡散することを抑制することができるため、Brを実質的に低下させず、HcJを向上させたR−T−B系焼結磁石を提供することができる。また、焼結磁石表層領域の残留磁束密度Brが低下した部分を研削する必要がなく、生産工程の短縮を図ることができる。あるいは、研削が必要であっても極めて少ない量で済むため、生産工程の増加をほとんど招くことがない。
2 焼結磁石体
4 RH拡散源
8 支持治具
9 支柱

Claims (3)

  1. 軽希土類元素RL(Nd及びPrの少なくとも1種)を含有するR−T−B系焼結磁石体、及び重希土類元素RH(Dy、Tbの少なくとも1種)を含有するRH拡散源の両方を加熱することにより、前記RH拡散源から前記R−T−B系焼結磁石体に対する重希土類元素RHの供給を行い、同時に、重希土類元素RHをR−T−B系焼結磁石体の内部に拡散させるRH供給工程(A)と、
    前記R−T−B系焼結磁石体の加熱状態を維持したまま、前記RH拡散源から前記R−T−B系焼結磁石体への重希土類元素RHの供給を抑制または中断するRH拡散工程(B)と、
    を含み、
    前記工程(A)及び前記工程(B)を交互に2回以上繰り返す、R−T−B系焼結磁石の製造方法。
  2. 前記工程(A)及び前記工程(B)は、前記R−T−B系焼結磁石体の温度を700℃以上1000℃未満の範囲に保持した状態で繰り返す、請求項1に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  3. 前記工程(A)及び前記工程(B)は、同一処理室内における前記RH拡散源及び前記R−T−B系焼結磁石体に対して行い、
    前記工程(A)は、前記処理室内の圧力を1×10-5Pa〜1Paの範囲に調整する工程を含み、
    前記工程(B)は、前記処理室内の圧力を前記工程(A)の圧力より高くかつ重希土類元素RHの飽和蒸気圧以上の値に調整する工程を含む、請求項1または2に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
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