本発明の複合材料の製造方法は、平均粒子径が0.001〜20μm、粒径範囲が0.0005〜100μmである無機充填材(無機フィラーともいう)をプレス成形した無機充填材成形体と重合性単量体含有組成物を接触させて、該重合性単量体を無機充填材成形体の内部に浸透させた後に、重合性単量体を重合硬化させることを特徴とする。より詳しくは、本発明の複合材料の製造方法においては、無機充填材をプレス成形することにより、適当な大きさのバルク状の、無機充填材が凝集した成形体を調製する。かかる成形体は、例えば、無機充填材を焼結して得られるような多孔質構造を有するものではなく、個々の無機充填材が密着して充填されたものである。次いで、該成形体に重合性単量体を接触させることで、該成形体内部の無機充填材まで、一次粒子の隙間に該重合性単量体を侵入せしめ、その状態で重合硬化することによって、無機充填材が極めて密に充填された複合材料を得ることが可能となる。この点において、従来知られているような、無機充填材と重合性単量体とを均一に混合練和して、流動性を持ったペースト状の重合性組成物とし、その後、該重合性組成物を重合硬化して複合材料を得る製造方法とは全く異なるものである。またさらに、本発明により得られた複合材料においては、従来の複合材料で達成されている無機フィラー含有量を大幅に超えた硬化物を容易に与えることができる。なお、ここでいう成形体内部の無機充填材とは、好ましくは、成形体の中心部分に存在する無機充填材を含むことを意味し、本発明では、成形体全体に存在する無機充填材が重合性単量体と接触することが好ましい。
本発明で用いられる無機充填材としては、平均粒子径及び粒径範囲が特定範囲内にある無機粒子であればよい。通常は、複合材料の目的とする特性に対応して、粒子径が調整される。一般的には、粒子径が大きすぎると、無機充填材成形体の形状が、その後の操作においてそのまま保持することが出来なくなる恐れがある(形が崩れたり亀裂がはいりやすい)。また、粒子径が小さすぎると、無機充填材成形体内部に単量体を浸透させるのに時間がかかるようになる。従ってこれらの観点から、平均粒子径は0.001〜20μm、好ましくは0.005〜10μm、より好ましくは0.01〜1μmである。粒径範囲は0.0005〜100μm、好ましくは0.001〜50μm、より好ましくは0.005〜10μmである。なお、本明細書において、無機粒子の粒子径とは、無機粒子の一次粒子の粒子径(平均一次粒子径)を意味し、粒径範囲とは、用いる集団の95%以上の数の粒子が満足する粒子径の範囲のことであり、規定する粒径範囲を満たさない粒子が意図せず含まれていても、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に制限されない。無機粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法や粒子の電子顕微鏡観察により求めることができる。具体的には、0.1μm以上の粒子の粒子径測定にはレーザー回折散乱法が、0.1μm以下の超微粒子の粒子径測定には電子顕微鏡観察が簡便である。
レーザー回折散乱法は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2100、島津製作所製)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて測定することができる。
電子顕微鏡観察は、例えば、粒子の透過型電子顕微鏡(日立製作所製、H−800NA型)写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の粒子径を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Macview(株式会社マウンテック))を用いて測定することにより求めることができる。このとき、粒子の粒子径は、その粒子と同一の面積をもつ円の直径である円相当径として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均一次粒子径が算出される。
無機粒子の種類としては、通常、充填材として用いられている公知の無機粒子がなんら制限なく用いられる。具体的には、例えば、各種ガラス類{二酸化珪素(石英、石英ガラス、シリカゲル等)、珪素を主成分とし、各種重金属とともにホウ素及び/又はアルミニウムを含有する}、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、各種セラミック類、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、シリカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、二酸化チタン(チタニア)、酸化鉄、酸化亜鉛、ヒドロキシアパタイト、さらには金、銀、銅、チタン、ニッケルクロム合金、金銀パラジウム合金等の金属粉等の従来公知の物が使用出来る。また、これら無機粒子に重合性単量体を予め添加してペースト状にした後、重合硬化させ、粉砕して得られる有機無機複合粒子(有機無機複合フィラー)を用いても差し支えない。これらの無機粒子は1種類又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における無機充填材として用いられる無機粒子は、形態に特に制限が無く、例えば、破砕状、板状、鱗片状、繊維状(短繊維、長繊維)、針状、ウィスカー、球状等各種形状のものが用いられる。これらの形状の一次粒子が凝集した形態でも構わなく、異なる形状のものが組み合わさったものでもよい。なお、本発明においては、前記形状を有するよう何らかの処理(例えば、粉砕)を行なったものであってもよい。
本発明では、かかる無機粒子をプレス成形して、無機充填材からなる成形体(無機充填材成形体)を成形できればよい。よって、前記成形体を調製できるのであれば、異なった材質、粒度分布、形態を持つ2種以上の無機粒子を、混合又は組み合わせて用いることもあり、また、本発明の効果を損なわない範囲内で、意図せずに、無機粒子以外の粒子が不純物として含まれていてもよい。また、予め粉砕して、前記平均粒子径と粒径範囲を有する無機粒子を用いてもよい。
以下に、本発明における無機充填材の好ましい態様を挙げる。
本発明において、好ましい実施態様の一つとしては、無機充填材が、平均粒子径が0.001〜0.1μm、比表面積が500〜30m2/gの範囲内にある無機粒子を含有することが好ましい。本明細書において、前記無機粒子を無機超微粒子と記載することもある。即ち、本発明の別の好ましい実施態様の一つとしては、無機充填材が、平均粒子径0.001〜0.1μm、比表面積が500〜30m2/gの範囲内にある無機超微粒子を含有することが好ましい。なかでも、平均粒子径が好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは0.05μm以下、より好ましくは0.04μm以下の範囲内にあり、比表面積が好ましくは40m2/g以上、より好ましくは50m2/g以上であり、好ましくは400m2/g以下、より好ましくは200m2/g以下の範囲内にある無機超微粒子が好ましい。また、平均粒子径が好ましくは0.005〜0.05μm、より好ましくは0.01〜0.04μm、比表面積が好ましくは400〜40m2/g、より好ましくは200〜50m2/gである無機超微粒子が好ましい。即ち、平均粒子径が0.005〜0.05μm、比表面積が400〜40m2/gの範囲内にある無機超微粒子が好ましく、平均粒子径が0.005〜0.05μm、比表面積が200〜50m2/gの範囲内にある無機超微粒子あるいは平均粒子径が0.01〜0.04μm、比表面積が400〜40m2/gの範囲内にある無機超微粒子がより好ましく、平均粒子径が0.01〜0.04μm、比表面積が200〜50m2/g範囲内にある無機超微粒子がさらに好ましい。このような無機超微粒子は、いわゆるナノ粒子(超微粒子フィラー)といわれるが、透明性や研磨滑沢性により優れたナノコンポジットである複合材料を与えることができる。前記無機超微粒子を適用する場合の無機超微粒子の無機充填材中の含有量は、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。なお、前記平均粒子径と比表面積を有する無機超微粒子の粒径範囲は、0.0005〜100μm範囲内に含まれる。
かかるナノ粒子としては、公知の無機超微粒子が何ら制限なく使用される。好ましくは、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物粒子、又はこれらからなる複合酸化物粒子、燐酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フッ化イットリウム、フッ化イッテルビウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。好ましくは、火炎熱分解法で作製されるシリカ、アルミナ、チタニア、シリカ/アルミナ複合酸化物、シリカ/ジルコニア複合酸化物の粒子であり、例えば、日本アエロジル社製、アエロジル(登録商標)OX−50、アエロジル(登録商標)50、アエロジル(登録商標)130、アエロジル(登録商標)200、アエロジル(登録商標)380、アエロジル(登録商標)MOX80、アエロジル(登録商標)R972、アエロジル(登録商標)RY50、アエロキサイド(登録商標)AluC、アエロキサイド(登録商標)TiO2P25、アエロキサイド(登録商標)TiO2P25S、VP Zirconium Oxide 3−YSZ、VP Zirconium Oxide 3−YSZ PHが挙げられる。また、該無機超微粒子の形状は特に限定されず、適宜選択して使用することができる。
また別の好ましい実施態様の一つとしては、無機充填材が、平均粒子径が0.001〜0.1μm、比表面積が500〜30m2/gの範囲内にある無機超微粒子と、平均粒子径が0.2〜5μmの範囲、粒径範囲が0.1〜20μmである無機粒子とを併せて用いることである。このように、無機超微粒子と平均粒子径が0.2〜5μmの無機粒子の両者が配合(混合)された組成は、ハイブリッド型無機粒子と言われ、無機充填材の含有量をさらに上げることができて機械的強度により優れる複合材料を与えることができる。前記ハイブリッド型無機粒子を適用する場合のハイブリッド型無機粒子の無機充填材中の含有量は、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。なお、以降、平均粒子径が0.2〜5μmの範囲で、粒径範囲が0.1〜20μmである無機粒子のことを単にハイブリッド型の0.2μm以上の無機粒子と記載することもある。
ハイブリッド型における無機超微粒子は、前記超微粒子フィラーと同様のものが用いられる。一方、超微粒子フィラーと配合される0.2μm以上の無機粒子は、平均粒子径が好ましくは0.4μm以上で、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下であり、粒径範囲が0.1μm以上で、好ましくは10μm以下、より好ましくは5.0μm以下の範囲内である無機粒子であり、また、平均粒子径が好ましくは0.2〜2μm、より好ましくは0.4〜1.5μmで、粒径範囲が好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜5.0μmの無機粒子である。
ハイブリッド型における無機超微粒子と0.2μm以上の無機粒子の重量比(無機超微粒子/0.2μm以上の無機粒子)は、無機充填材の含有量を上げる観点から、1/1〜1/20が好ましく、1/3〜1/10がより好ましい。
かかるハイブリッド型無機粒子の具体例としては、以下の組み合わせが挙げられる。例えば、超微粒子フィラーの具体例としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の無機酸化物微粒子、又はこれらからなる複合酸化物微粒子が好ましく、この中でも、商品名アエロジルに代表される様な高分散性シリカや、商品名アエロキサイドに代表されるような高分散性のアルミナ、チタニア、ジルコニアはより好ましい。また、これと組み合わせるハイブリッド型の0.2μm以上の無機粒子としては、バリウムボロアルミノシリケートガラス、ランタンガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、長石、ムライト、石英、パイレックス(登録商標)ガラス、シリカガラスの他、雲母、ジルコニア、アルミナ、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、ヒドロキシアパタイトなどが好適に用いられる。
またさらに、別の好ましい実施態様の一つとして、本発明の複合材料の製造方法においては、異なる二種以上の無機粒子を又は同一の無機粒子を別々に層状にプレス成形し、物性、透明性、色調等の異なる層状構造を持った複合材料も作成することが出来る。
また、本発明においては、無機充填材として、予め表面処理が施された無機粒子を用いることができる。表面処理を施すことで、得られる複合材料の機械的強度が向上する。また、無機充填材を加圧成形し、得られた無機粒子の凝集体(無機充填材成形体)を、後述の重合性単量体に接触させて、無機粒子の凝集間隙に該重合性単量体を侵入させる際に、無機粒子表面と重合性単量体とのなじみが良くなり、凝集体間隙に、重合性単量体が浸入しやすくなるというメリットもある。なお、ハイブリッド型無機粒子に表面処理を施す場合は、ハイブリッド型における無機超微粒子とハイブリッド型の0.2μm以上の無機粒子のそれぞれに表面処理を施した後、混合してハイブリッド型無機粒子としてもよく、該無機超微粒子と0.2μm以上の無機粒子を混合したものに表面処理を施してもよい。
かかる表面処理剤としては、公知の表面処理剤を用いることができ、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物などの有機金属化合物、及びリン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の酸性基を少なくとも1個有する酸性基含有有機化合物を用いることができる。表面処理剤を2種以上使用する場合は、2種以上の表面処理剤の混合物の表面処理層としてもよいし、表面処理剤層が複数積層した複層構造の表面処理層としてもよい。また、表面処理方法としては、特に制限なく公知の方法を用いることができる。
有機ケイ素化合物としては、R1 nSiX4−nで表される化合物が挙げられる(式中、R1は炭素数1〜12の置換又は無置換の炭化水素基であり、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、アセトキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は水素原子を示し、nは0〜3の整数であり、但し、R1及びXが複数ある場合にはそれぞれ、同一でも異なっていてもよい)。
具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等〕、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等〕等が挙げられる。なお、本発明において「(メタ)アクリロキシ」との表記は、メタクリロキシとアクリロキシの両者を包含する意味で用いられる。
この中でも、重合性単量体と共重合し得る官能基を有するカップリング剤、例えばω−(メタ)アクリロキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が好ましく用いられる。
有機チタン化合物としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート等が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート等が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム有機酸塩キレート化合物等が挙げられる。
リン酸基を含有する酸性基含有有機化合物としては、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロキシコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロキシ(1−ヒドロキシメチル)エチル〕ハイドロジェンホスフェート、及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
カルボキシル基を含有する酸性基含有有機化合物としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、フマル酸、安息香酸、フタル酸、アクリル酸、メタクリル酸、トリメリット酸と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの付加物(通称、4−MET)等、およびこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が上げられる。
また、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基等の酸性基を有する酸性基含有有機化合物としては、例えば、WO2012/042911号公報に記載のものを好適に用いることができる。
上記の表面処理剤は、一種類単独を用いてもよく、複数種類を併用してもよい。また、無機充填材と重合性単量体との化学結合性を高めて硬化物の機械的強度を向上させるために、重合性単量体と共重合し得る官能基を有する酸性基含有有機化合物を用いることがより好ましい。
表面処理剤の使用量は、特に限定されず、例えば、処理前の無機充填材100重量部に対して、0.1〜50重量部が好ましい。
かかる無機充填材をプレス成形する方法としては、公知の方法が制限なく用いられる。例えば、無機充填材を所望の大きさのプレス用金型(ダイ)に充填し、上パンチと下パンチを用いて一軸プレスにより加圧する方法が好適である。このときのプレス圧は、目的とする成形体のサイズや、無機粒子の種類や粒子径により適宜最適な値が設定され、通常は、10MPa以上である。プレス圧が低いと、無機粒子が緻密に充填されず、無機粒子間の隙間が十分に狭くならないので、得られたミルブランクにおいて、単位体積あたりの無機粒子含有量を上げることが出来ない。その結果、複合材料の機械的強度や耐摩耗性、表面滑沢性が不十分となることがある。この観点からはプレス圧は高いほど好ましいが、プレス成形品のサイズや設備的要因等の生産性の面を考慮すると、一軸プレスでのプレス圧は、通常は200MPa以下であり、好ましくは10MPa以上、より好ましくは20MPa以上、さらに好ましくは25MPa以上であり、好ましくは180MPa以下、より好ましくは150MPa以下、更に好ましくは100MPa以下、更により好ましくは80MPa以下の範囲にある。また、好ましくは10〜200MPa、より好ましくは20〜100MPa、さらに好ましくは25〜80MPaの範囲にある。プレス時間は、プレス圧に応じて適宜設定できるが、通常、1〜120分間である。
また、本発明の製造方法におけるプレス成形の方法としては、冷間等方圧加圧(CIP)工程である/又はCIP工程を含むことが好ましい。具体的には、上記の一軸プレスを行うこと無く、CIP工程によりプレス成形を行うこと、或いは、上記の一軸プレスでのプレス成形の後、該成形体に対してさらに、CIP成形を施すことが好適である。CIP成形は、通常、一軸プレスよりも高いプレス圧をかけることが出来、また、成形体に対して3次元方向から均等に圧力をかけられるため、CIP成形を行うことで、成形体内部の好ましからざる微小な空隙や、無機粒子の凝集状態のむらが解消されたり、また無機粒子の圧縮密度がさらに上がって、無機粒子の含有量が極めて高いミルブランクが得られる。プレス成形がCIP工程である場合は、金型で一軸プレスする工程を経ずに、無機充填材をシリコンゴムやポリイソプレンゴム等の弾性に富む容器に充填して、これをそのまま又は真空状態にしてからCIP処理することにより、プレス成形体を得ることも出来る。CIP成形の際の加圧力も高い方が望ましい。あるいは、一軸プレスでのプレス成形の後、CIP成形を施す場合は、プレス成形体をそのまま又はビニール袋などで真空パックした状態にしてからCIP処理することができる。かかるCIP処理では、例えば、神戸製鋼所が製造する、1000MPa程度に加圧可能なCIP装置を用いることが出来る。CIP成形の際の加圧力は、一軸プレスの有無に関わらず高い方が好ましいが、生産性も考慮して、適当な装置と加圧条件が設定される。例えば、CIP成形の際の加圧力は、事前の一軸プレスの有無に関わらず、好ましくは30MPa以上、より好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは150MPa以上である。CIP成形時間は、プレス圧に応じて適宜設定できるが、通常、1〜60分間である。
また、異なる二種以上の無機粒子を積み重ねてプレス成形する方法としては、以下の方法が挙げられる。例えば、下パンチを嵌めた一軸プレス用の金型(ダイ)に、第一の無機粒子粉末を充填して、上パンチを該金型にセットして該粉末をプレスする。次いで、上パンチを外し、プレスされた第一の無機粉末凝集体の上に、第二の無機粉末を充填して、再び、上パンチをセットして、第二の無機粉末をプレスする方法が挙げられる。その後、金型からプレス成形品を取り出すことで、第一の無機粒子と第二の無機粒子が層状に重なったプレス成形品を得ることが出来る。なお、前記プレス時のプレス圧は、用いる無機粒子の種類や量によって、適宜最適な値が設定され、各層におけるプレス圧は異なっても同じでもよい。また、第一の無機粉末を金型に充填した後、表面を平らにならし、プレスを行わないで、その上に第二の無機粉末を充填して、第一の無機粉末と第二の無機粉末を一緒にプレスすることも出来る。
かくして、無機充填材のプレス成形体が得られるが、そのサイズは特に限定されない。なお、本発明における無機充填材成形体としては、無機充填材を一度にプレス成形したものをそのまま成形体としても、別々に成形したものを積層後、プレス成形して一つの成形体としてもよく、別途成形した成形体の上に、新たに無機充填材をプレス成形することで一つの成形体としてもよい。
次いで、かくして得られた無機充填材の成形体(無機充填材成形体)に、重合性単量体を含有する組成物(重合性単量体含有組成物)を接触させる。
重合性単量体含有組成物は、以下の重合性単量体を含有する。
本発明で用いられる重合性単量体は、公知の重合性単量体が何ら制限無く用いられるが、一般には、ラジカル重合性単量体が好適に用いられる。ラジカル重合性単量体の具体例としては、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエステル類、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘導体等が挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。なお、本発明において「(メタ)アクリル」との表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。
(メタ)アクリル酸エステル系及び(メタ)アクリルアミド誘導体系の重合性単量体の例を以下に示す。
(I)一官能性(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミド誘導体
メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリトリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロライド、10−メルカプトデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(II)二官能性(メタ)アクリレート
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート(2,2−ビス[4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン(通称BisGMA))、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(通称UDMA)、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1,5−ペンチルジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(III)三官能性以上の(メタ)アクリレート
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンなどが挙げられる。
また、これらの(メタ)アクリル酸エステル系及び(メタ)アクリルアミド誘導体系の重合性単量体の他に、カチオン重合可能な、オキシラン化合物やオキセタン化合物も好適に用いられる。
前記重合性単量体は、いずれも、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、本発明で用いられる重合性単量体は液体状であることが好ましいが、常温で液体状である必要は必ずしも無く、重合性単量体を粉末のプレス成形体に接触させる工程の環境下で液体であればなんら差し支えない。さらに、固体状の重合性単量体であっても、液体状の、その他の重合性単量体と混合溶解させて使用することが出来る。
またさらに、重合性単量体のほかに、硬化物を所望の物性とするために、所望のポリマーを重合性単量体含有組成物に溶解させて用いることも出来る。かかるポリマーとしては、重合性単量体含有組成物に溶解可能であれば何ら制限なく用いることが出来、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、メチルメタクリレート(MMA)とスチレンの共重合体、ポリオキシエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリロニトリル等が例示される。
重合性単量体の好ましい粘度範囲(25℃)は10Pa・s以下、より好ましくは5Pa・s以下、さらに好ましくは2Pa・s以下であるが、重合性単量体を二種以上混合溶解したり、あるいはさらに溶剤希釈して用いる場合は、上記重合性単量体の粘度は、個々の重合性単量体が、該粘度範囲にある必要は無く、混合溶解して使用する組成物の状態において、該粘度範囲にあることが好ましい。
重合性単量体の複合材料中の含有量は、重合性単量体含有組成物の接触程度によって、適宜調整することができる。また、本発明の複合材料は無機充填材を構成する無機粒子の平均粒子径やプレス成形方法によって無機充填材の含有量が変動するので、重合性単量体の含有量は一概には決定されない。
本発明の複合材料は、無機充填材成形体の内部の隙間に含浸された重合性単量体を重合硬化することによって作製される。そこで、重合性単量体含有組成物は、重合硬化を容易にするために、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤は、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられ、加熱重合、光重合及び化学重合の重合開始剤が、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用されるが、本発明においては、加熱重合触媒が配合されて、加熱重合により重合硬化することが通常である。
加熱重合開始剤としては、有機過酸化物類とアゾ化合物類などが挙げられる。
上記加熱重合開始剤として用いられる有機過酸化物類の例としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
上記加熱重合開始剤として用いられるケトンパーオキサイドとしては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド及びシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
上記加熱重合開始剤として用いられるハイドロパーオキサイドとしては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド及び1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
上記加熱重合開始剤として用いられるジアシルパーオキサイドとしては、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
上記加熱重合開始剤として用いられるジアルキルパーオキサイドとしては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン等が挙げられる。
上記加熱重合開始剤として用いられるパーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン及び4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレリックアシッド−n−ブチルエステル等が挙げられる。
上記加熱重合開始剤として用いられるパーオキシエステルとしては、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート及びtブチルパーオキシマレリックアシッド等が挙げられる。
上記加熱重合開始剤として用いられるパーオキシジカーボネートとしては、ジ−3−メトキシパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート及びジアリルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
これらの有機過酸化物の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルパーオキサイドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルパーオキサイドがより好ましく用いられる。
上記加熱重合開始剤として用いられるアゾ化合物類としては、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、4,4−アゾビス−4−シアノバレリック酸、1,1−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチラート、2,2−アゾビス−(2−アミノプロパン)ジヒドロクロライド等が挙げられる。
本発明においては、加熱重合の他、光重合開始材が配合されて、光重合により硬化物を作製することも出来る。かかる光重合開始剤としては、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、α−ジケトン類、クマリン類、ケタール類などが挙げられる。
また、かかる光重合開始剤は、必要に応じて、更に、第3級アミン類、アルデヒド類、チオール基を有する化合物、スルフィン酸及び/又はその塩等の、重合促進剤を配合することで、光重合をより短時間で効率的に行うことができる場合がある。
重合性単量体含有組成物に配合される重合開始剤の配合量は特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点からは、重合性単量体100重量部に対して、重合開始剤を0.001〜30重量部含有することが好ましい。重合開始剤の配合量が0.001重量部以上の場合、重合が十分に進行して機械的強度の低下を招くおそれがなく、より好適には0.05重量部以上、さらに好適には0.1重量部以上である。一方、重合開始剤の配合量が30重量部以下であると、重合開始剤自体の重合性能が低い場合にでも十分な機械的強度が得られ、さらには組成物からの析出を招くおそれがなく、より好適には20重量部以下である。
本発明で用いる重合性単量体含有組成物には、前記成分以外に、目的に応じて、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、着色剤、顔料、抗菌剤、X線造影剤、増粘剤、蛍光剤などをさらに添加することも可能である。
重合性単量体含有組成物は、重合性単量体を含有するのであれば特に限定なく、調製することができる。例えば、重合性単量体に、必要により、重合開始剤を配合して混合することにより調製することができる。
重合性単量体含有組成物と無機充填材成形体の接触方法は、重合性単量体含有組成物が無機充填材成形体中の無機粒子間隙に侵入できるのであれば、特に限定はないが、簡便で好ましい方法は、重合性単量体含有組成物の中に、該無機充填材成形体を浸漬することである。浸漬することによって、毛細管現象により、単量体が徐々に凝集体の内部に浸透することができる。このとき周囲の環境を減圧雰囲気下に置くことは、液体状の単量体の浸透を促すことになるので、好ましい手段である。また、減圧操作の後に常圧に戻す操作(減圧/常圧の操作)を複数回繰り返すことは、単量体を成形体内部に完全に浸透させる工程の時間短縮のためには有効である。このときの減圧度は、単量体の粘度や無機充填材の粒子径により適宜選択されるが、通常は100ヘクトパスカル(10kPa)以下、好ましくは50〜0.001ヘクトパスカル(5〜0.0001kPa)、より好ましくは20〜0.1ヘクトパスカル(2〜0.01kPa)の範囲である。また、真空下(1×10−1〜1×10−8Pa)であってもよい。
また、浸漬以外の方法としては、金型でプレス成形した状態で、そのまま、圧力をかけて重合性単量体含有組成物を金型中の無機充填材成形体に送り込む方法も考えられる。この方法をとると、重合硬化の工程も該金型中でそのまま引き続いて行うことが可能である。かかる加圧条件としては、好ましくは2MPa以上、より好ましくは10MPa以上、さらに好ましくは20MPa以上である。
またさらに、重合性単量体を無機充填材成形体内部に隙間無く浸透させる方法として、見かけ上、重合性単量体が含浸した無機充填材成形体を、一定時間加圧条件に置く方法がある。即ち、重合性単量体が含浸した無機充填材成形体を、重合性単量体と共に、CIP装置等を用いて加圧条件下に置くことが望ましい。かかる加圧条件としては、好ましくは10MPa以上、より好ましくは20MPa以上、さらに好ましくは50MPa以上、さらに好ましくは100MPa以上が望ましい。またさらに、加圧を解除して常圧に戻し、再び加圧するという、加圧/常圧を繰り返して行うとさらに好ましい。
また、重合性単量体含有組成物の粘性は浸透速度に影響を与え、通常は粘度が低いほど浸透が早い。好ましい粘度範囲(25℃)は10Pa・s以下、より好ましくは5Pa・s以下、さらに好ましくは2Pa・s以下であるが、重合性単量体の選択は粘度以外にも、機械的強度や屈折率も加味して行う必要がある。また、重合性単量体含有組成物を溶剤で希釈して用いて、後の減圧操作で溶剤を留去する方法をとることもある。また、温度を好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上であり、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下の範囲内に上げることで重合性単量体含有組成物の粘度を下げて、浸透を早めることも出来る。
重合性単量体含有組成物を無機充填材成形体中に接触させる時間は、無機充填材の種類、成形体のサイズ、単量体の浸透程度、接触方法等によって一概には決定されず、適宜、調整することができる。例えば、常圧雰囲気下での浸漬の場合は、通常1時間〜20日間であり、減圧下での浸漬の場合は、通常0.5〜12時間であり、加圧下で接触させる場合は、通常0.2〜6時間である。
このように浸漬することで、成形体内部まで重合性単量体が十分浸透したものとなる。
次に、重合性単量体が成形体内部に侵入した状態で、重合性単量体の重合硬化を行なう。
重合硬化は、加熱重合及び/又は光重合及び/又は化学重合によって行うことが出来、その条件は公知の方法に従って行なうことができる。また、重合性単量体の重合率を高めて、より機械的強度の高い複合材料を得る観点から、光重合を行なって、引き続き加熱重合を行なってもよい。光重合は、可視光だけでなく、UV光で行なっても良い。また、重合硬化の際、重合性単量体が含浸したプレス成形体を、窒素ガスなどの不活性雰囲気下や、減圧環境下で重合せしめることで、重合率を高め、機械的強度をより高めることができる。また、重合性単量体が含浸した成形体を真空パック等に詰めて真空状態にして重合操作を行うことは、生産性の面から好ましい。この場合、オートクレーブ等を用いて、加圧加熱重合することも出来る。加熱温度としては、周囲の圧力環境に応じて適宜設定することができ、例えば、60℃〜200℃が好ましく、80℃〜180℃がより好ましい。
更には、重合性単量体が含浸した無機充填材成形体を加圧した状態のまま、重合硬化を行なうこともできる。このような加圧重合は本発明においてより好ましい重合硬化方法の一つである。即ち、重合性単量体が含浸された無機充填材成形体を、重合性単量体と共に加圧条件下に置くことで、成形体の微小な隙間まで重合性単量体がより入り込むことが出来たり、微小な気泡の残存を解消する事が出来る。加圧条件下で重合させることで、機械的強度をさらに高めることが出来る。かかる条件としては、好ましくは20MPa以上、より好ましくは50MPa以上、さらに好ましくは100MPa以上が望ましい。基本的には圧力は高いほど好ましいが、実際には用いる加圧装置の能力に依存する。このような加圧装置としては、オートクレーブやCIP装置、HIP(熱間等方圧加圧)装置が用いられる。例えば、神戸製鋼社の1000MPa程度に加圧可能なCIP装置も知られている。加圧条件下で、温度を上げることで重合せしめる加熱重合の他、光重合や化学重合で重合させることも可能である。より好ましい加圧重合方法として、モノマー含浸した成形体をビニール袋やゴムチューブなどに真空パックで密封し、CIP装置等を用いて加圧しながら重合する方法がある。この時の圧力は高いほど好ましく、好ましくは50MPa以上、より好ましくは100MPa以上である。また、密封したモノマー含浸した成形体をCIP処理室に入れ、所定の圧力をかけた後に、処理室を加温して、高圧下で重合を開始させる方法は、機械的強度を高める上で、さらに好ましい重合方法である。例えば、室温でCIPで圧力をかけた後、30分から24時間程度の時間をかけて温度を上げて行き、到達温度は80℃〜180℃が望ましい。重合時間と到達温度は、重合性単量体に配合される重合開始剤の分解温度を考慮して設定される。
かくして、本発明の製造方法により、無機充填材が高密度に充填された複合材料が得られる。得られた複合材料は、必要に応じて所望の大きさに切断、切削、表面研磨が施されて製品として出荷される。本発明により得られる複合材料は、その硬化物中の無機粒子の含有量が、従来の一般的な複合材料で達成されている無機粒子含有量に比較して、飛躍的に高いレベルを実現できることにある。
本発明により得られる複合材料における無機充填材の含有量は、使用する無機粒子の粒子径や形状、さらにはプレス圧力により変動するが、粒子径の小さい無機粒子を用いても、通常は50体積%以上で含有され、好ましくは55体積%以上、より好ましくは60体積%以上、さらに好ましくは65体積%以上、さらに好ましくは68体積%以上、さらに好ましくは70体積%以上である。なお、ここでいう無機充填材含有量(体積%)は、複合材料の強熱残分により測定された値(重量%)から、無機充填材の比重と、重合性単量体の硬化後の比重(通常は1.0〜1.3の範囲)を基にした計算から算出することが出来る。
複合材料の強熱残分の測定は、具体的には例えば、硬化物を坩堝に入れて電気炉で575℃の温度で所定の時間加熱することで、有機樹脂成分を焼却し、残った無機粒子の重量を測定することで算出することが出来る。この方法では、表面処理が施された無機粒子を用いて得た複合材料の場合、施された表面処理剤は焼却された有機樹脂成分として算出されることには留意されたい。
一般に、複合材料においては、配合する無機粒子の粒子径が小さくなるほど含有量を上げることが困難になってくる。無機充填材が平均粒径が0.001〜0.1μmの無機超微粒子である複合材料は、本発明において好ましい態様の一つであるが、このような超微粒子フィラーは、従来の複合材料の製造方法、即ち、重合性単量体と超微粒子フィラーを混合してペースト状の重合性組成物を得ようとすると、粘度上昇が著しくなって、超微粒子フィラーの含有量は多くても40体積%程度であり、現実的には50体積%以上の含有量で配合することは困難であった。しかし、本発明の製造方法を用いることで、50体積%以上の充填量を持つ複合材料を容易に得ることが出来る。このように、50体積%以上の含有量で超微粒子フィラーを含む複合材料は、本発明において好ましい実施態様の一つである。超微粒子フィラーを用いた場合の本発明における複合材料中の無機充填材含有量としては、好ましくは55体積%以上、より好ましくは60体積%以上、さらに好ましくは65体積%以上であり、上限は好ましくは85体積%である。
また、平均粒子径0.001〜0.1μmの無機超微粒子と、平均粒子径0.2〜5μmの無機粒子の両者が配合された、ハイブリッド型無機粒子を用いた複合材料も、本発明において好ましい態様の一つであり、この場合は、無機フィラー含有量がより高い複合材料が得られる。このようなハイブリッド型無機粒子を用いた場合の本発明における複合材料中の無機充填材含有量は、通常、70体積%以上、好ましくは75体積%以上、より好ましくは80体積%以上であり、そして、上限は好ましくは92体積%である。ここでいう、無機充填材の含有量とは、ハイブリッド型における無機超微粒子とハイブリッド型の0.2μm以上の無機粒子の合計含有量のことである。
本発明の製造方法において、従来に無いレベルで多量の無機粒子を含む複合材料が得られる理由は、無機フィラーを高い圧力でプレス成形することにより、該プレス成形体においては、無機粒子が極めて緻密に充填され、かつ、充填された粒子の粒子間距離は極めて小さく、基本的には接触した状態にあると考えられる。一方、単量体と無機粒子を均一に混合練和して得られるペースト状の組成物においては、そのペースト性状において、ある程度の流動性が必要であり、このような組成物中においては、無機粒子は媒体中である程度自由に動く必要があるため、一定以上の粒子間距離が確保されている必要があり、無機粒子同士が接触した状態になるまでの高密度充填は原理的にほとんど不可能である。
本発明の複合材料は、例えば、通常の成形材料としての用途、電子回路基板、各種部品、玩具、建築用構造部材、タイル、電磁波シールド材、人工大理石、人工骨などの医療用途(歯科材料用途を除く)に好適に用いることが出来る。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
〔無機粒子の平均粒子径と粒径範囲〕
平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、型式「SALD−2100」)を用いて測定、又はSEM顕微鏡(日立製作所社製、S−4000)による直接観察により測定する。なお、直接観察による粒子径は、粒子の最長の長さと最短の長さの算術平均値として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均粒子径(一次平均粒子径)と粒径範囲が算出される。
〔無機粒子の比表面積〕
比表面積は、比表面積BET法により、通法に従って測定する(測定機器:湯浅アイオニクス製、カンタソーブQS−13。吸着ガス:窒素。キャリアガス:窒素/ヘリウム=3/7)。
〔複合材料(成形体)の強熱残分、無機充填材含有量〕
複合材料(成形体)の1〜2gを磁性坩堝にとり、電気炉で、575℃で2時間加熱処理を行って、有機樹脂を焼却し、加熱前後の重量変化を測定することで強熱残分(重量%)を算出する。さらに、強熱残分の値(重量%)から、無機充填材の比重と、重合性単量体の硬化後の比重を基に、無機充填材含有量(体積%)を算出する。
重合性単量体含有組成物の製造例1(重合性単量体含有組成物aの製造)
[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(通称UDMA)60重量部及びデカンジオールジメタクリレート(DDMA)40重量部に、加熱重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド1.5重量部を溶解させて、重合性単量体含有組成物aを調製した。
重合性単量体含有組成物の製造例2(重合性単量体含有組成物bの製造)
メチルメタクリレート(通称MMA)を65重量部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(通称NPG)を15重量部、ポリメチルメタクリレートポリマー(通称PMMA)を20重量部、加熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(通称AIBN)を1.5重量部、これらを混合溶解して重合性単量体含有組成物bを調製した。
重合性単量体含有組成物の製造例3(重合性単量体含有組成物cの製造)
ポリメチルメタクリレート(PMMA)(パラビーズHR−L、クラレ社製)12重量部、メタクリル酸メチル(MMA)50重量部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート(BGDMA)5重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.04重量部、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン0.2重量部を均一に溶解して、重合性単量体含有組成物cを調製した。
無機充填材の製造例1(無機充填材A−1の製造)
市販の超微粒子シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル(登録商標)OX−50、平均一次粒子径0.04μm、BET比表面積50m2/g)100gに対して、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン7gと水5gを加えて室温で2時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって表面処理して、無機充填材A−1を得た。
無機充填材の製造例2(無機充填材A−2の製造)
市販の超微粒子アルミナ(日本アエロジル社製、AEROXIDE(登録商標)Alu C、平均一次粒子径0.02μm、BET比表面積100m2/g)50gと、市販のバリウムボロアルミノシリケートガラス粉末(ショット社製GM27884、平均粒子径0.4μm、粒径範囲0.2〜1μm、破砕状)300gをエタノール2Lに分散し、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン15gと水5gを用いて、無機充填材の製造例1と同様の方法により表面処理して、ハイブリッド型の無機充填材A−2を得た。
無機充填材の製造例3(無機充填材A−3の製造)
市販のヒドロキシアパタイト粉末をボールミルで粉砕、分級して平均粒子径1.4μm、粒径範囲0.1〜5μm、破砕状のヒドロキシアパタイト微粉末を得た。該微粉末200gをエタノール500mLに分散し、10−メタクリロキシデシルジハイドロジェンホスフェート(通称、MDP)4gを用いて、無機充填材の製造例1と同様の方法により表面処理して、無機充填材A−3を得た。
無機充填材の製造例4(無機充填材A−4の製造)
水酸化アルミニウム粉末(ハイジライトH−310、昭和電工社製、平均粒子径20μm、粒径範囲1〜100μm)100重量部に、表面処理剤としてステアリン酸0.1重量部、2−エチルへキシルアシッドホスフェート(JP−508、城北化学工業製)0.3重量部をインテグラルブレンドにより、均一に添加して、表面処理水酸化アルミニウム粉末の無機充填材A−4を得た。
実施例1
前記製造例で得た表面処理された無機充填材A−1の100gを、直径20cmの穴を持つプレス用金型に入れ、一軸プレス機で25MPaのプレス圧で3分間プレス成型を行った後、プレスされた成形体を取り出し、引き続き、該成形体をビニール袋に入れてCIP処理(950MPa、時間は1分間)を行って、無機充填材A−1が凝集したプレス成形体を得た。該プレス成形体を、重合性単量体含有組成物aに浸漬した。室温(25℃、常圧)で7日間静置すると、プレス成形体内部に重合性単量体が完全に浸透した。この半透明の重合性単量体含浸成形体を目視で確認すると、内部に気泡の存在は認められなかった。次いで、重合性単量体が含浸された該成形体を、真空パックでビニール袋に密封し、300MPaでCIP処理を行いながら、90℃で24時間加熱加圧処理を行って重合硬化を行った。硬化物をビニール袋から取り出し、余剰のモノマーの硬化物を表面から一層グラインダーで削り取って除去することで、目的の複合材料成形物が得られた。強熱残分を測定すると、78.8重量%であり、超微粒子シリカの比重を2.2とすると、成形体中の無機含有量は、67体積%であった。
比較例1
重合性単量体含有組成物aの100gを混練機に入れ、ここに無機充填材A−1を徐々に加えていってペースト状の組成物を調製した。充填材を加えることでペーストは増粘し、145g以上の無機充填材を加えて混練することは困難であった。この状態のペーストを取り出し、真空で脱泡したのち、真空パックでビニール袋に詰めて、実施例1と同じ条件で重合硬化させて複合材料を得た。実施例1と同様に、強熱残分を測定すると56.3重量%であり、シリカの体積含有量は41体積%であった。
得られた成形体の特性を、下記試験例1〜2の方法に従って評価した。結果を表1に示す。
試験例1[圧縮強度の測定]
得られた複合材料から、ダイヤモンドカッターで4×4mm、高さ8mmの角柱状試験片を作製した。試験片を37℃水中に24時間浸漬し、万能試験機(インストロン社製)を用いて、クロスヘッドスピード2mm/minに設定して圧縮強さを測定した。圧縮強さは大きい方が好適とされ、400MPa以上であればより好適とされる。
試験例2[曲げ強度の測定]
得られた複合材料から、ダイヤモンドカッターで2×2mm、長さ25mmの角柱状試験片を作製した。試験片を37℃水中に24時間浸漬し、万能試験機(インストロン社製)を用いて、クロスヘッドスピード1mm/minに設定して曲げ強さを測定した。曲げ強さは大きい方が好適とされ、120MPa以上であればより好適とされる。
表1より、実施例1の複合材料は、ナノフィラーが高密度に均一に充填されたナノコンポジットであり、機械的強度や耐磨耗性が求められる用途として例えば航空機や自動車部品の用途、また透明性にも優れるので光学部品に好適である。一方、比較例1は、実施例1と比較すると、同じ無機充填材と重合性単量体から得られた複合材料であるが、本発明の実施例1で得た複合材料のほうが、無機充填材の含有量が高く、機械的強度に優れていた。
比較例2
市販のシリカガラス粉末(平均粒子径30μm、粒径範囲25〜30μm、ユニチカSPL−30)100gに対して、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1gを用いて表面処理を行い、無機充填材を得た。この無機充填材を、実施例1と同じ方法で1軸プレス機を用いてプレス成型を行ったところ、成形体を金型から取り出そうとすると、成形体が崩れてしまい、バルク状の成形体を得ることが出来なかった。
実施例2
前記製造例で得た表面処理された無機充填材A−2の200gを、直径20cmの穴を持つプレス用金型に入れ、一軸プレス機で25MPaのプレス圧で3分間プレス成型を行った後、プレスされた成形体を取り出し、引き続き、該成形体をビニール袋に入れてCIP処理(600MPa、時間は5分間)を行って、無機充填材A−2が凝集したプレス成形体を得た。該プレス成形体を、重合性単量体含有組成物aに浸漬した。室温(25℃、常圧)で10日間静置すると、プレス成形体内部に重合性単量体が完全に内部に浸透して、内部が目視で確認できる程度の透明性を有した含浸体が得られた。重合性単量体含浸成形体を目視で確認すると、内部に気泡の存在は認められなかった。次いで、重合性単量体が含浸された該成形体を、真空パックでビニール袋に密封し、CIP処理(100MPa)を行いながら、90℃で24時間加熱加圧処理を行って重合硬化を行った。硬化物をビニール袋から取り出し、余剰のモノマーの硬化物を表面から一層グラインダーで削り取って除去することで、目的の複合材料成形物が得られた。強熱残分を測定すると、93.2重量%であり、超微粒子アルミナの比重を3.1、ガラス粉末の比重を2.84とすると、成形体中の無機含有量は85.2体積%であった。
実施例3
前記製造例で得た表面処理された無機充填材A−3の200gを、直径5cm、長さ40cmの穴を持つシリコンチューブに詰めて、CIP処理(500MPa、時間は5分間)を行って、無機充填材A−3が凝集したプレス成形体を得た。該プレス成形体を、重合性単量体含有組成物bに浸漬した。オートクレーブ中で、そのまま常温(25℃)、常圧で1日間放置後、さらに常温(25℃)で20MPa加圧することで、プレス成形体内部に重合性単量体が完全に浸透して、内部が目視で確認できる程度の透明性を有した含浸体が得られた。重合性単量体含浸成形体を目視で確認すると、内部に気泡の存在は認められなかった。次いで、重合性単量体が含浸された該成形体を、真空パックでビニール袋に密封し、100MPaでCIP処理を行いながら、90℃で24時間加熱加圧処理を行って重合硬化を行った。硬化物をビニール袋から取り出し、余剰のモノマーの硬化物を表面から一層グラインダーで削り取って除去することで、目的の複合材料成形物が得られた。強熱残分を測定すると、92.4重量%であり、ヒドロキシアパタイトの比重を3.16とすると、成形体中のヒドロキシアパタイトの含有量は82.3体積%であった。
実施例4 人工大理石の製造
前記製造例で得た表面処理された無機充填材A−4の50gを、10cm×10cmのスペースを持った一軸プレス用ステンレス製金型を用いて、20MPaの圧力で5分間一軸プレス成型を行った。得られた成形体をビニール袋に密封し、170MPaの圧力で10分間CIP処理を行った。得られた水酸化アルミニウム粉末成形体を取り出し、ビーカー中で上述の重合性単量体含有組成物cに浸漬した。常温(25℃、常圧)で5日間放置すると、重合性単量体が内部まで染み込んだ含浸体が得られた。次いで、重合性単量体が含浸された該成形体を、真空パックでビニール袋に密封し、CIP処理(80MPa)を行いながら、90℃で24時間加熱加圧処理を行って重合硬化を行った。硬化物をビニール袋から取り出し、余剰のモノマーの硬化物を表面から一層グラインダーで削り取って除去することで、目的の複合材料成形物が得られた。強熱残分を測定すると、90.3重量%であり、水酸化アルミニウムの比重を2.42とすると、水酸化アルミニウムの含有量は82.2体積%であった。
得られた成形体の特性を、前記試験例1〜2の方法に従って評価した。結果を表2に示す。
表2より、本発明の製造方法を用いることによって、無機充填材の含有量が高く機械的強度が優れた複合材料が得られることがわかった。なかでも、実施例2の複合材料は、粒度分布の異なる無機充填材を組み合わせて配合して、無機充填材の含有量を高めた複合材料であり、機械的強度、耐久性、耐熱性、高い弾性率が求められる用途に好適で、例えば、建築用部材、機械部品、放射線シールド材、断熱材料として好適である。また、実施例3の複合材料は、生体親和性に優れるヒドロキシアパタイトをふくむことから人工骨材料として好適である。実施例4の複合材料は、色調は白色で人工大理石として好適である。