JP6346748B2 - 有機無機複合フィラーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、有機無機複合フィラーの製造方法に関する。さらに詳しくは、例えば、充填修復材料や歯冠材料等の歯科用組成物に好適な有機無機複合フィラーの製造方法、該製造方法により得られる有機無機複合フィラー、及び該有機無機複合フィラーを含有する歯科用コンポジットレジンに関する。
重合性単量体と無機充填材からなる歯科用コンポジットレジンは、充填修復材料や、クラウン、インレー、インプラント上部構造などの歯冠材料として広く用いられている。最近では、粒径が1μm以下の微細な無機粒子が充填材として、主に用いられるようになっており、表面滑沢性や研磨性は大きく改善されている。
しかしながら、このような粒子径が細かい無機粒子を重合性単量体中に配合すると、著しい増粘と、激しい糸引きを呈するペースト性状となってしまうため、歯科医師や歯科技工士が操作しやすいペースト性状を得ることが困難であった。
この問題を解決するため、無機充填材と重合性単量体を混合して得た重合性組成物を重合硬化させた後に、これを粉砕して得た、平均粒子径が数μm〜20μm程度の、比較的粒径が大きな有機無機複合フィラーを用いる方法が行われている(例えば、特許文献1参照)。このような有機無機複合フィラーを用いることで、上述のようなペースト性状の著しい悪化を避けることが出来る。
また、最近では適切な粒度分布の有機無機複合フィラーを製造するための新しい製造方法として、例えば、コロイダルシリカ等の超微粒子と重合性単量体とをキャピラリーミキサーで混合することにより、該超微粒子の凝集粒子の外周だけでなく間隙にまで重合性単量体を浸入させる状態で該超微粒子の重合性単量体によるコーティングを行い、次いで、重合性単量体を重合硬化させて有機無機複合塊状物を得、これを粉砕して有機無機複合フィラーを製造する方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、粒度の変動係数CVが小さい無機凝集粒子を用い、これを減圧下で液状の重合性単量体に接触させた後復圧し、該無機凝集粒子の一次粒子の凝集間隙に重合性単量体を侵入させた後にこれを重合硬化させることによって有機無機複合フィラーを製造する方法が提案されている(特許文献3参照)。
特開昭59−101409号公報 特開平10−258068号公報 特開2011−105953号公報
しかしながら、上記の特許文献1〜3のいずれにおいても、微細な無機充填材が、有機樹脂マトリックス中に緻密に充填された有機無機複合フィラーを得ることは困難であった。即ち、特許文献1の技術では、無機充填材と重合性単量体を混合練和して得られた均一なペースト状の組成物を作成する工程を含むため、上述の増粘の理由により、この段階で微細な無機充填材を重合性単量体中に多量に配合させることが困難であった。また、特許文献2及び3の技術では、無機粉末の充填率を上げるために粉末を圧密する工程を含まないので、無機粉末が緻密に隙間無く有機樹脂中に分散した状態の有機無機複合フィラーを作成することは困難であった。このような、無機充填材の含有量が低い有機無機複合フィラーが歯科用コンポジットレジンに配合されると、有機無機複合フィラー自体の機械的強度が低いことが影響して、これを含むコンポジットレジンの機械的強度や耐摩耗性が劣るといった問題点があった。
本発明は、従来技術が抱える上記の課題を解決すべくなされたものであって、その目的とするところは、微細な無機充填材が多量に充填された有機無機複合フィラーを提供することであり、そして、該有機無機複合フィラーが配合された機械的強度と耐摩耗性に優れた歯科用コンポジットレジンを提供することにある。
本発明は、下記〔1〕〜〔3〕に関する。
〔1〕 無機充填材をプレス成形してなる無機充填材成形体を重合性単量体含有組成物中に浸漬し、成形体内部に重合性単量体が浸透した後に、該重合性単量体を重合硬化させて得られた硬化物を微細化することを特徴とする、有機無機複合フィラーの製造方法。
〔2〕 前記〔1〕記載の製造方法によって得られた有機無機複合フィラー。
〔3〕 前記〔2〕記載の有機無機複合フィラーを含有する歯科用コンポジットレジン。
本発明の製造方法によって得られた有機無機複合フィラーを含む歯科用コンポジットレジンは、高い機械的強度と優れた耐摩耗性を有する。
本発明の有機無機複合フィラーの製造方法は、無機充填材(無機フィラーともいう)をプレス成形した無機充填材成形体を重合性単量体含有組成物中に浸漬して、成形体内部に重合性単量体が浸透した後に、該重合性単量体を重合硬化させて得られた硬化物を微細化して得ることを特徴とする。より詳しくは、本発明の有機無機複合フィラーの製造方法においては、無機充填材をプレス成形することにより、適当な大きさのバルク状の、無機充填材が凝集した成形体を調製する。かかる成形体は、例えば、無機充填材を焼結して得られるような多孔質構造を有するものではなく、個々の無機充填材が密着して充填されたものである。次いで、該成形体を重合性単量体含有組成物中に浸漬して無機充填材と重合性単量体を接触させることで、該成形体を構成する無機充填材の一次粒子の隙間に、該重合性単量体を侵入せしめ、その状態で重合硬化することによって、無機充填材が極めて密に充填された硬化物を得ることができる。引き続いて該硬化物を適当な方法で微細化することで、無機充填材の含有量が高い有機無機複合フィラーを得ることが可能となる。この点において、従来知られているような、無機充填材と重合性単量体とを均一に混合練和して、流動性を持ったペースト状の重合性組成物(コンポジットレジン)とし、その後、該重合性組成物(コンポジットレジン)を重合硬化し、該硬化物を粉砕等の方法により微細化することで有機無機複合フィラーを得る製造方法とは全く異なるものである。またさらに、本発明により得られた有機無機複合フィラーを含む歯科用コンポジットレジンにおいては、有機無機複合フィラー中の無機充填材の含有量が高くて機械的強度と耐磨耗性に優れるため、従来の方法で得た有機無機複合フィラーを含む歯科用コンポジットレジンよりも、機械的強度や耐磨耗性に優れる。
本発明で用いられる無機充填材としては、歯科用コンポジットレジンの充填材として用いられている公知の無機粒子がなんら制限なく用いられる。具体的には、例えば、各種ガラス類{二酸化珪素(石英、石英ガラス、シリカゲル等)、珪素を主成分とし、各種重金属とともにホウ素及び/又はアルミニウムを含有する}、アルミナ、各種セラミック類、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、シリカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、二酸化チタン(チタニア)、ヒドロキシアパタイト等の従来公知の物が使用出来る。これらの無機粒子は1種類又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、歯冠修復材料に望まれる重要な物性としては、天然歯と同様の透明性とX線造影性が挙げられる。透明性は無機充填材と硬化後の重合性単量体の屈折率を出来るだけ一致させることで達成される。また、X線造影性の付与のためには、ジルコニウム、バリウム、チタン、ランタン、ストロンチウム等の重金属元素を有する無機酸化物が用いられる。この様な重金属元素を含む無機充填材の屈折率は通常高く、1.5〜1.6の範囲内にある。よって、本発明において、例えば、重合性単量体として(メタ)アクリレート系単量体を用いた場合、(メタ)アクリレート系単量体の屈折率は通常、1.5〜1.6の範囲内にあることから、この様なX線造影性を有する屈折率の高い無機粒子と組み合わせても屈折率差を小さく調節することが出来るので、得られる有機無機複合フィラーは高い透明性を得やすく有用である。
かかるX線造影性を有する屈折率の高い無機粒子としては、例えば、バリウムボロアルミノシリケートガラス(例えば、Esstech社製E3000;ショット社製8235、GM27884、GM39923)、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス(例えばEsstech社製E4000;ショット社製G018−093、GM32087)、ランタンガラス(例えばショット社製GM31684)、フルオロアルミノシリケートガラス(例えばショット社製G018−091、G018−117)、ジルコニアを含有するガラス(例えばショット社製G018−310、G018−159)、ストロンチウムを含有するガラス(例えばショット社製G018−163、G018−093、GM32087)、酸化亜鉛を含有するガラス(例えばショット社製G018−161)、カルシウムを含有するガラス(例えばショット社製G018−309)等が挙げられる。
本発明における無機充填材として用いられる無機粒子は、形態に特に制限が無く、例えば、破砕状、板状、鱗片状、繊維状(短繊維、長繊維)、針状、ウィスカー、球状等各種形状のものが用いられる。これらの形状の一次粒子が凝集した形態でも構わなく、異なる形状のものが組み合わさったものでもよい。なお、本発明においては、前記形状を有するよう何らかの処理(例えば、粉砕)を行なったものであってもよい。
また、これらの無機粒子の粒子径は、プレス成形に供することができ、歯科用コンポジットレジンの充填材として通常用いられる程度の大きさを有するのであればよく、例えば、平均粒子径が0.001〜1μm、粒径範囲が0.0005〜5μm、好ましくは、平均粒子径が0.01〜0.2μm、粒径範囲が0.005〜1μmである無機粒子が用いられる。なお、本明細書において、無機粒子の粒子径とは、無機粒子の一次粒子の粒子径(平均一次粒子径)を意味し、粒径範囲とは、用いる集団の95%以上の数の粒子が満足する粒子径の範囲のことであり、規定する粒径範囲を満たさない粒子が意図せず含まれていても、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に制限されない。
なお、本明細書において、無機粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法や粒子の電子顕微鏡観察により求めることができる。具体的には、0.1μm以上の粒子の粒子径測定にはレーザー回折散乱法が、0.1μm以下の超微粒子の粒子系測定には電子顕微鏡観察が簡便である。
レーザー回折散乱法は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2100、島津製作所製)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて測定することができる。
電子顕微鏡観察は、例えば、粒子の透過型電子顕微鏡(日立製作所製、H−800NA型等)写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の粒子径を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Macview(株式会社マウンテック))を用いて測定することにより求めることができる。このとき、粒子の粒子径は、その粒子と同一の面積をもつ円の直径である円相当径として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均一次粒子径が算出される。
本発明では、かかる無機粒子をプレス成形して、無機充填材からなる成形体(無機充填材成形体)を成形できればよい。よって、前記成形体を調製できるのであれば、異なった材質、粒度分布、形態を持つ2種以上の無機粒子を、混合又は組み合わせて用いることもあり、また、本発明の効果を損なわない範囲内で、意図せずに、無機粒子以外の粒子が不純物として含まれていてもよい。
以下に、本発明における無機充填材の好ましい態様を挙げる。
本発明において、好ましい実施態様の一つとしては、無機充填材が平均粒子径が0.1〜1μmの範囲、粒径範囲が0.05〜5μmである無機粒子(サブミクロンフィラー)を含有することが好ましい。なかでも、前記粒径範囲を有するものであって、平均粒子径が好ましくは0.1〜0.5μm、より好ましくは0.1〜0.3μmである無機粒子が好ましい。即ち、平均粒子径が0.1〜1μmの範囲、粒径範囲が0.05〜5μmである無機粒子が好ましく、平均粒子径が0.1〜0.5μmの範囲、粒径範囲が0.05〜5μmである無機粒子がより好ましく、平均粒子径が0.1〜0.3μmの範囲、粒径範囲が0.05〜5μmである無機粒子がさらに好ましい。この範囲の粒子径を持つ無機粒子の適用は、機械的強度が高い歯科用コンポジットレジンを与える有機無機複合フィラーを与えることができる。前記サブミクロンフィラーを適用する場合のサブミクロンフィラーの無機充填材中の含有量は、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
このようなサブミクロンフィラーとしては、シリカ粒子、周期律表第2族、同4族、同12族、及び同13族からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物粒子、又は、周期律表第2族、同4族、同12族、及び同13族からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属原子と、ケイ素原子と、酸素原子とを含む複合酸化物粒子であることが好ましい。これらの具体例としては、非晶質シリカ、石英、クリストバライト、トリジマイト;アルミナ、二酸化チタン、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム;シリカジルコニア、シリカチタニア、シリカチタニア酸化バリウム、シリカアルミナ、シリカチタニアナトリウムオキサイド、シリカチタニアカリウムオキサイド、シリカジルコニアナトリウムオキサイド、シリカジルコニアカリウムオキサイド、シリカバリウムオキサイド、シリカストロンチウムオキサイド、バリウムボロアルミノシリケートガラスなどの粒子が挙げられる。
また、このようなサブミクロンフィラーの形態としては特に何ら制限なく、例えば、破砕状、板状、繊維状、針状、球状等各種形状のものが用いられるが、これらの中でも、有機無機複合フィラー中の無機充填材の含有量を上げて、機械的強度や耐磨耗性に優れる歯科用コンポジットレジンを提供する観点から、球状粒子が好ましく用いられる。球状とは、略球状まで含み、必ずしも完全真球である必要はない。一般には、走査型電子顕微鏡を用いて粒子の写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子を任意に30個選び、それぞれの粒子について最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で徐した均斉度を求めた際に、その平均値(平均均斉度)が、0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、0.9以上であることがさらに好ましい。
かかる球状粒子としては、好適には、シリカ粒子、周期律表第4族の金属の酸化物粒子、及び周期律表第4族の金属原子とケイ素原子と酸素原子とを含む複合酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の粒子であり、X線造影性を有し、より耐摩耗性に優れた歯科用ミルブランクが得られることから、より好適には、シリカジルコニアの粒子である。かかる球状の無機粒子の製造法としては、例えば具体的には特許文献である、特開昭58−110414号公報又はWO2009/133913号公報に記載されている。また、球状無機粉末として、ヒドロキシアパタイトを用いることもできる。
なお、前記サブミクロンフィラーは、比表面積が好ましくは5〜25m/gである。本明細書において、比表面積は、比表面積BET法により、通法に従って測定することができる。
かかるサブミクロンフィラーを用いた場合、通常の方法で製造された有機無機複合フィラーの無機充填材含有量は、本発明者らの検討によれば、実質的には80重量%を超えることは困難であるが、本発明の製造方法においては、80重量%以上の無機充填材含有量を持った有機無機複合フィラーを得ることができる。前記サブミクロンフィラーを用いた場合の本発明における有機無機複合フィラー中の無機充填材含有量としては、好ましくは80重量%以上、より好ましくは81重量%以上、さらに好ましくは82重量%以上、さらに好ましくは84重量%以上であり、好ましくは95重量%以下、より好ましくは92重量%以下の範囲内にある。また、好ましくは80〜95重量%、より好ましくは82〜92重量%、さらに好ましくは84〜92重量%の範囲内にある。なお、本明細書において、有機無機複合フィラーにおける含有量とは、有機無機複合フィラー中の単位重量あたりの含有量のことを意味する。通常、有機無機複合フィラー中の無機充填材の含有量は、該有機無機複合フィラーの強熱残分で測定することが出来る。
また別の好ましい実施態様の一つとしては、無機充填材が、平均粒子径0.001〜0.1μm、比表面積が500〜30m/gの範囲内にある無機粒子を含有することが好ましい。本明細書において、前記無機粒子を無機超微粒子と記載することもある。即ち、本発明の別の好ましい実施態様の一つとしては、無機充填材が、平均粒子径0.001〜0.1μm、比表面積が500〜30m/gの範囲内にある無機超微粒子を含有することが好ましい。なかでも、平均粒子径が好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは0.05μm以下、より好ましくは0.04μm以下の範囲内にあり、比表面積が好ましくは40m/g以上、より好ましくは50m/g以上であり、好ましくは400m/g以下、より好ましくは200m/g以下の範囲内にある無機超微粒子が好ましい。また、平均粒子径が好ましくは0.005〜0.05μm、より好ましくは0.01〜0.04μm、比表面積が好ましくは400〜40m/g、より好ましくは200〜50m/gである無機超微粒子が好ましい。即ち、平均粒子径が0.005〜0.05μm、比表面積が400〜40m/gの範囲内にある無機超微粒子が好ましく、平均粒子径が0.005〜0.05μm、比表面積が200〜50m/gの範囲内にある無機超微粒子あるいは平均粒子径が0.01〜0.04μm、比表面積が400〜40m/gの範囲内にある無機超微粒子がより好ましく、平均粒子径が0.01〜0.04μm、比表面積が200〜50m/g範囲内にある無機超微粒子がさらに好ましい。このような無機超微粒子は、いわゆるナノ粒子(超微粒子フィラー)といわれるが、透明性や研磨滑沢性により優れた有機無機複合フィラーを与えることができる。前記無機超微粒子を適用する場合の無機超微粒子の無機充填材中の含有量は、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
かかるナノ粒子としては、歯科用コンポジットレジン等に使用される公知の無機超微粒子が何ら制限なく使用される。好ましくは、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物粒子、又はこれらからなる複合酸化物粒子、燐酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フッ化イットリウム、フッ化イッテルビウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。好ましくは、火炎熱分解法で作製されるシリカ、アルミナ、チタニア、シリカ/アルミナ複合酸化物、シリカ/ジルコニア複合酸化物の粒子であり、例えば、日本アエロジル社製、アエロジル(登録商標)OX−50、アエロジル(登録商標)50、アエロジル(登録商標)130、アエロジル(登録商標)200、アエロジル(登録商標)380、アエロジル(登録商標)MOX80、アエロジル(登録商標)R972、アエロジル(登録商標)RY50、アエロキサイド(登録商標)AluC、アエロキサイド(登録商標)TiOP25、アエロキサイド(登録商標)TiOP25S、VP Zirconium Oxide 3−YSZ、VP Zirconium Oxide 3−YSZ PHが挙げられる。また、該無機超微粒子の形状は特に限定されず、適宜選択して使用することができる。
一般に、歯科用コンポジットレジンにおいては、配合する無機粒子の粒子径が小さくなるほど含有量を上げることが困難になってくるが、特に上記のような超微粒子フィラーが配合されると、その傾向が顕著になる。重合性単量体と超微粒子フィラーを混合してペースト状のコンポジットレジンを得ようとすると、超微粒子フィラーの含有量は多くても60重量%程度であり、現実的には65重量%以上の含有量で配合することは困難であった。しかし、本発明の製造方法を用いることで、65重量%以上の充填量を持つ有機無機複合フィラーを容易に得ることが出来る。このように、65重量%以上の含有量で超微粒子フィラーを含む有機無機複合フィラーは、本発明において好ましい実施態様の一つである。前記超微粒子フィラーを用いた場合の本発明における有機無機複合フィラー中の無機充填材含有量としては、好ましくは65重量%以上、より好ましくは70重量%以上であり、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは88重量%以下である。また、好ましくは65〜95重量%、より好ましくは70〜90重量%、さらに好ましくは70〜88重量%の範囲内である。
またさらに、別の好ましい実施態様の一つとして、公知の着色剤や顔料を無機充填材中に均一に分散させて、着色された有機無機複合フィラーとすることも出来る。
このような色調や透明性の異なる有機無機複合フィラーの調製方法としては、例えば、顔料(着色粒子)を無機粒子に混合分散させることで行うことができる。かかる顔料としては、歯科用組成物に用いられている公知の顔料がなんら制限なく用いられる。かかる顔料としては、無機顔料及び/又は有機顔料のいずれでもよく、無機顔料としては例えば、黄鉛、亜鉛、バリウム黄等のクロム酸塩;紺青等のフェロシアン化物;銀朱、カドミウム黄、硫化亜鉛、アンチモン白、カドミウムレッド等の硫化物;硫酸バリウム、硫酸亜鉛、硫酸ストロンチウム等の硫酸塩;亜鉛華、チタン白、ベンガラ、鉄黒、酸化クロム等の酸化物;水酸化アルミニウム等の水酸化物;ケイ酸カルシウム、群青等のケイ酸塩;カーボンブラック、グラファイト等の炭素等が挙げられる。有機顔料としては例えば、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY等のニトロソ系顔料;ナフトールS、リソールファストイエロー2G等のニトロ系顔料、パーマネントレッド4R、ブリリアントファストスカーレット、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー等の不溶性アゾ系顔料;リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD等の難溶性アゾ系顔料;ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、ピグメントスカーレット3B、ボルドー10B等の可溶性アゾ系顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー等のフタロシアニン系顔料;ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の塩基性染料系顔料;ピーコックブルーレーキ、エオシンレーキ、キノリンイエローレーキ等の酸性染料系顔料等が挙げられる。これらの顔料は一種又は二種以上の組み合わせで用いることができ、有機無機複合フィラーの目的とする色調に応じて適宜選択される。これらの顔料の中でも、耐熱性や耐光性等に優れる無機顔料である局方酸化チタン白、ベンガラ、鉄黒及び黄酸化鉄等が、本発明の有機無機複合フィラーにはより好ましい。顔料の含有量は、所望の色調によって適宜設定することができる。
また、本発明においては、無機充填材として、予め表面処理が施された無機粒子を用いることができる。表面処理を施すことで、得られる有機無機複合フィラーの機械的強度が向上する。また、無機充填材を加圧成形し、得られた無機粒子の凝集体(無機充填材成形体)を、後述の重合性単量体に接触させて、無機粒子の凝集間隙に該重合性単量体を侵入させる際に、無機粒子表面と重合性単量体とのなじみが良くなり、凝集体間隙に、重合性単量体が浸入しやすくなるというメリットもある。なお、無機充填材の表面処理を、後述のプレス成形後に得られた成形体の状態で行うことも出来る。
かかる表面処理剤としては、公知の表面処理剤を用いることができ、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物などの有機金属化合物、及びリン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の酸性基を少なくとも1個有する酸性基含有有機化合物を用いることができる。表面処理剤を2種以上使用する場合は、2種以上の表面処理剤の混合物の表面処理層としてもよいし、表面処理剤層が複数積層した複層構造の表面処理層としてもよい。また、表面処理方法としては、特に制限なく公知の方法を用いることができる。
有機ケイ素化合物としては、R SiX4−nで表される化合物が挙げられる(式中、Rは炭素数1〜12の置換又は無置換の炭化水素基であり、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、アセトキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は水素原子を示し、nは0〜3の整数であり、但し、R及びXが複数ある場合にはそれぞれ、同一でも異なっていてもよい)。
具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等〕、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等〕等が挙げられる。なお、本発明において「(メタ)アクリロキシ」との表記は、メタクリロキシとアクリロキシの両者を包含する意味で用いられる。
この中でも、重合性単量体と共重合し得る官能基を有するカップリング剤、例えばω−(メタ)アクリロキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が好ましく用いられる。
有機チタン化合物としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート等が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート等が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム有機酸塩キレート化合物等が挙げられる。
リン酸基を含有する酸性基含有有機化合物としては、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロキシデシルジハイドロジェンホスフェート(通称MDP)、11−(メタ)アクリロキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロキシコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロキシ(1−ヒドロキシメチル)エチル〕ハイドロジェンホスフェート、及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
また、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の酸性基を有する酸性基含有有機化合物としては、例えば、WO2012/042911号公報に記載のものを好適に用いることができる。
上記の表面処理剤は、一種類単独を用いてもよく、複数種類を併用してもよい。複数種類を併用する場合は、その割合も特に限定されない。また、無機充填材と重合性単量体との化学結合性を高めて硬化物の機械的強度を向上させるために、重合性単量体と共重合し得る官能基を有する酸性基含有有機化合物を用いることがより好ましい。
表面処理剤の使用量は、特に限定されず、例えば、無機充填材100重量部に対して、0.1〜50重量部が好ましい。ここでいう使用量とは、複数種類を併用する場合は合計使用量を意味する。
かかる無機充填材をプレス成形する方法としては、公知の方法が制限なく用いられる。例えば、無機充填材を所望の大きさのプレス用金型(ダイ)に充填し、上パンチと下パンチを用いて一軸プレスにより加圧する方法が好適である。このときのプレス圧は、目的とする成形体のサイズや、無機粒子の種類や粒子径により適宜最適な値が設定され、通常は、10MPa以上である。プレス圧が低いと、無機粒子が緻密に充填されず、無機粒子間の隙間が十分に狭くならないので、得られた有機無機複合フィラーにおいて、単位体積あたりの無機粒子含有量を上げることが出来ない。その結果、該有機無機複合フィラーを含有する歯科用補綴物の機械的強度や耐摩耗性、表面滑沢性が不十分となることがある。この観点からはプレス圧は高いほど好ましいが、プレス成形品のサイズや設備的要因等の生産性の面を考慮すると、一軸プレスでのプレス圧は、通常は200MPa以下であり、好ましくは10MPa以上、より好ましくは20MPa以上、さらに好ましくは25MPa以上である。プレス時間は、プレス圧に応じて適宜設定できるが、通常、1〜120分間である。
また、本発明の製造方法におけるプレス成形の方法としては、冷間等方圧加圧(CIP)工程である/又はCIP工程を含むことが好ましい。具体的には、上記の一軸プレスを行うこと無く、CIP工程によりプレス成形を行うこと、或いは、上記の一軸プレスでのプレス成形の後、該成形体に対してさらに、CIP成形を施すことが好適である。CIP成形は、通常、一軸プレスよりも高いプレス圧をかけることが出来、また、成形体に対して3次元方向から均等に圧力をかけられるため、CIP成形を行うことで、成形体内部の好ましからざる微小な空隙や、無機粒子の凝集状態のむらが解消されたり、また無機粒子の圧縮密度がさらに上がって、無機粒子の含有量が極めて高い有機無機複合フィラーが得られる。プレス成形がCIP工程である場合は、金型で一軸プレスする工程を経ずに、無機充填材をシリコンゴムやポリイソプレンゴム等の弾性に富む容器に充填して、これをそのまま又は真空状態にしてからCIP処理することにより、プレス成形体を得ることも出来る。CIP成形の際の加圧力も高い方が望ましい。あるいは、一軸プレスでのプレス成形の後、CIP成形を施す場合は、プレス成形体をそのまま又は真空状態にしてからCIP処理することができる。かかるCIP処理では、例えば、神戸製鋼所が製造する、1000MPa程度に加圧可能なCIP装置を用いることが出来る。CIP成形の際の加圧力は、一軸プレスの有無に関わらず高い方が好ましいが、生産性も考慮すると、例えば、一軸プレスを行う場合は、好ましくは30MPa以上、より好ましくは50MPa以上、さらに好ましくは100MPa以上であり、好ましくは500MPa以下、より好ましくは400MPa以下、さらに好ましくは300MPa以下の範囲内である。また、30〜500MPaが好ましく、50〜500MPaがより好ましく、100〜300MPaがさらに好ましい。また、一軸プレスを行なわずにCIP処理を行う場合は、好ましくは30MPa以上、より好ましくは50MPa以上、さらに好ましくは100MPa以上であり、好ましくは1000MPa以下、より好ましくは800MPa以下、さらに好ましくは700MPa以下の範囲内である。また、30〜1000MPaが好ましく、50〜800MPaがより好ましく、100〜700MPaがさらに好ましい。CIP成形時間は、プレス圧に応じて適宜設定できるが、通常、1〜60分間である。
かくして、無機充填材のプレス成形体が得られるが、該成形体は後述の様に、重合性単量体含有組成物中に含浸させた後に重合硬化させ、その後粉砕などの手法で粉末状に微細化されるので、そのサイズは特に限定されない。
このようにして得られた、無機充填材が凝集した成形体は、後述の重合性単量体含有組成物中に浸漬させることで、粉末一次粒子の隙間に重合性単量体が侵入し、その結果、重合性単量体に無機粒子が極めて密に分散した構造の組成物が得られることになる。
また、一般に、本発明のような粒子分散型複合材料においては、樹脂中に分散する無機粒子の粒子径は小さいほど、研磨滑沢性に優れ、また、口腔内での光沢が長期間維持できる歯冠修復材料が得られる。一方で、無機粒子の粒子径が小さくなるほど、複合材料中に無機粒子を高密度に充填することが困難になり、硬化物の機械的強度や耐摩耗性が低下する傾向がある。しかしながら、本発明では、無機充填材をプレス成形して有機無機複合フィラーを製造するので、無機粒子の粒子径が小さくても高密度充填が可能となる。
本発明により得られる有機無機複合フィラーにおける無機充填材の含有量は、使用する無機粒子の粒子径や形状により変動するが、粒子径の小さい無機粒子を用いても、通常は60重量%以上で配合され、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上であり、好ましくは96重量%以下、より好ましくは95重量%以下である。また、好ましくは60〜96重量%、より好ましくは70〜96重量%、さらに好ましくは70〜95重量%、さらに好ましくは80〜95重量%である。なお、ここでいう無機充填材含有量は、硬化物の強熱残分により測定された値である。
硬化物の強熱残分の測定は、具体的には例えば、硬化物を坩堝に入れて電気炉で575℃の温度で所定の時間加熱することで、有機樹脂成分を焼却し、残った無機粒子の重量を測定することで算出することが出来る。この方法では、表面処理が施された無機粒子を用いて得た有機無機複合フィラーの場合、施された表面処理剤は焼却された有機樹脂成分として算出されることには留意されたい。
次いで、かくして得られた無機充填材の成形体(無機充填材成形体)を、重合性単量体を含有する組成物(重合性単量体含有組成物)中に浸漬して、無機充填材と重合性単量体を接触させる。
重合性単量体含有組成物は、以下の重合性単量体を含有する。
本発明で用いられる重合性単量体は、歯科用コンポジットレジン等に使用される公知の重合性単量体が何ら制限無く用いられるが、一般には、ラジカル重合性単量体が好適に用いられる。ラジカル重合性単量体の具体例としては、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエステル類、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘導体等が挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体からなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステルを用いることがより好ましい。なお、本発明において「(メタ)アクリル」との表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。
(メタ)アクリル酸エステル系及び(メタ)アクリルアミド誘導体系の重合性単量体の例を以下に示す。
(I)一官能性(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミド誘導体
メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリトリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロライド、10−メルカプトデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(II)二官能性(メタ)アクリレート
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート(2,2−ビス[4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン(通称BisGMA))、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(通称UDMA)、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1,5−ペンチルジメタクリレート(通称HFPD)、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート(通称TCDMA)などが挙げられる。
(III)三官能性以上の(メタ)アクリレート
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンなどが挙げられる。
また、これらの(メタ)アクリル酸エステル系及び(メタ)アクリルアミド誘導体系の重合性単量体の他に、カチオン重合可能な、オキシラン化合物やオキセタン化合物も好適に用いられる。
前記重合性単量体は、いずれも、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、本発明で用いられる重合性単量体は液体状であることが好ましいが、常温で液体状である必要は必ずしも無く、重合性単量体を粉末のプレス成形体に接触させる工程の環境下で液体であればなんら差し支えない。さらに、固体状の重合性単量体であっても、液体状の、その他の重合性単量体と混合溶解させて使用することが出来る。
重合性単量体の好ましい粘度範囲(25℃)は10Pa・s以下、より好ましくは5Pa・s以下、さらに好ましくは2Pa・s以下であるが、重合性単量体を二種以上混合溶解したり、あるいはさらに溶剤希釈して用いる場合は、上記重合性単量体の粘度は、個々の重合性単量体が、該粘度範囲にある必要は無く、混合溶解して使用する組成物の状態において、該粘度範囲にあることが好ましい。
重合性単量体の有機無機複合フィラー中の含有量は、重合性単量体含有組成物の接触程度によって、適宜調整することができる。また、本発明の有機無機複合フィラーは無機充填材を構成する無機粒子の平均粒子径やプレス成形方法によって無機充填材の含有量が変動するので、重合性単量体の含有量は一概には決定されない。
本発明の有機無機複合フィラーは、無機充填材成形体の内部の隙間に含浸された重合性単量体を重合硬化して得られた硬化物を粉砕することによって作製される。そこで、重合性単量体含有組成物は、重合硬化を容易にするために、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤は、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられ、加熱重合、光重合及び化学重合の重合開始剤が、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用されるが、本発明の目的からすると、加熱重合方式が採用されることが好ましい。
加熱重合開始剤としては、有機過酸化物類とアゾ化合物類などが挙げられる。
上記加熱重合開始剤として用いられる有機過酸化物類の例としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
上記加熱重合開始剤として用いられるケトンパーオキサイドとしては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド及びシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
上記加熱重合開始剤として用いられるハイドロパーオキサイドとしては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド及び1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
上記加熱重合開始剤として用いられるジアシルパーオキサイドとしては、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
上記加熱重合開始剤として用いられるジアルキルパーオキサイドとしては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン等が挙げられる。
上記加熱重合開始剤として用いられるパーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン及び4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレリックアシッド−n−ブチルエステル等が挙げられる。
上記加熱重合開始剤として用いられるパーオキシエステルとしては、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート及びtブチルパーオキシマレリックアシッド等が挙げられる。
上記加熱重合開始剤として用いられるパーオキシジカーボネートとしては、ジ−3−メトキシパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート及びジアリルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
これらの有機過酸化物の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルパーオキサイドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルパーオキサイドがより好ましく用いられる。
上記加熱重合開始剤として用いられるアゾ化合物類としては、2,2−アゾビスイソブチロニトリル(通称AIBN)、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、4,4−アゾビス−4−シアノバレリック酸、1,1−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチラート、2,2−アゾビス−(2−アミノプロパン)ジヒドロクロライド等が挙げられる。
重合性単量体含有組成物に配合される重合開始剤の配合量は特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点からは、重合性単量体100重量部に対して、重合開始剤を0.001〜30重量部含有することが好ましい。重合開始剤の配合量が0.001重量部以上の場合、重合が十分に進行して機械的強度の低下を招くおそれがなく、より好適には0.05重量部以上、さらに好適には0.1重量部以上である。一方、重合開始剤の配合量が30重量部以下であると、重合開始剤自体の重合性能が低い場合にでも十分な機械的強度が得られ、さらには組成物からの析出を招くおそれがなく、より好適には20重量部以下である。
本発明で用いる重合性単量体含有組成物には、前記成分以外に、目的に応じて、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、着色剤、顔料、抗菌剤、X線造影剤、増粘剤、蛍光剤などをさらに添加することも可能である。
重合性単量体含有組成物は、重合性単量体を含有するのであれば特に限定なく、調製することができる。例えば、重合性単量体に、必要により、重合開始剤を配合して混合することにより調製することができる。
重合性単量体含有組成物と無機充填材成形体の接触方法は、重合性単量体含有組成物が無機充填材成形体中の無機粒子間隙に侵入できるのであれば、特に限定はないが、簡便で好ましい方法として、本発明では、重合性単量体含有組成物の中に、該無機充填材成形体を浸漬する。浸漬することによって、毛細管現象により、単量体が徐々に凝集体の内部に浸透することができる。このとき周囲の環境を減圧雰囲気下に置くことは、液体状の単量体の浸透を促すことになるので、好ましい手段である。また、減圧操作の後に常圧(101.3kPa)に戻す操作(減圧/常圧の操作)を複数回繰り返すことは、単量体を成形体内部に完全に浸透させる工程の時間短縮のためには有効である。このときの減圧度は、単量体の粘度や無機充填材の粒子径により適宜選択されるが、通常は100ヘクトパスカル(10kPa)以下、好ましくは50〜0.001ヘクトパスカル(5〜0.0001kPa)、より好ましくは20〜0.1ヘクトパスカル(2〜0.01kPa)の範囲である。また、真空下(1×10−1〜1×10−8Pa)であってもよい。
また、浸漬する態様としては、無機充填材成形体が重合性単量体含有組成物の中にて載置されるのであれば特に限定はないが、例えば、金型でプレス成形した状態で、そのまま、圧力をかけて重合性単量体含有組成物を金型中の無機充填材成形体に送り込んで浸漬する方法も考えられる。この方法をとると、重合硬化の工程も該金型中でそのまま引き続いて行うことが可能である。かかる加圧条件としては、好ましくは2MPa以上、より好ましくは10MPa以上、さらに好ましくは20MPa以上である。
またさらに、重合性単量体を無機充填材成形体内部に隙間無く浸透させる方法として、前記のようにして浸漬することで、見かけ上、重合性単量体が含浸した無機充填材成形体を、一定時間加圧条件に置く方法がある。即ち、重合性単量体が含浸した無機充填材成形体を、重合性単量体と共に、CIP装置等を用いて加圧条件下に置くことが望ましい。かかる加圧条件としては、好ましくは20MPa以上、より好ましくは50MPa以上、さらに好ましくは100MPa以上が望ましい。またさらに、加圧を解除して常圧に戻し、再び加圧するという、加圧/常圧を繰り返して行うとさらに好ましい。
また、重合性単量体含有組成物の粘性は浸透速度に影響を与え、通常は粘度が低いほど浸透が早い。好ましい粘度範囲(25℃)は10Pa・s以下、より好ましくは5Pa・s以下、さらに好ましくは2Pa・s以下であるが、重合性単量体の選択は粘度以外にも、機械的強度や屈折率も加味して行う必要がある。また、重合性単量体含有組成物を溶剤で希釈して用いて、後の減圧操作で溶剤を留去する方法をとることもある。また、温度を好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上であり、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下の範囲内に上げることで重合性単量体含有組成物の粘度を下げて、浸透を早めることも出来る。
重合性単量体含有組成物を無機充填材成形体中に浸漬する時間は、無機充填材の種類、成形体のサイズ、単量体の浸透程度、浸漬方法等によって一概には決定されず、適宜、調整することができる。例えば、常圧雰囲気下での浸漬の場合は、通常1〜120時間であり、減圧下での浸漬の場合は、通常0.5〜12時間であり、加圧下で接触させる場合は、通常0.2〜6時間である。
このように浸漬することで、成形体内部まで重合性単量体が十分浸透したものとなる。
次に、重合性単量体が成形体内部に侵入した状態で、重合性単量体の重合硬化を行なう。
重合硬化は、公知の方法に従って行なうことができる。なかでも、本発明では重合性単量体の重合率を高めて、より機械的強度の高い有機無機複合フィラーを得る観点から、加熱重合を行なうことが好ましい。また、重合硬化の際、重合性単量体が含浸したプレス成形体を、窒素ガスなどの不活性雰囲気下や、減圧環境下で重合せしめることで、重合率を高め、機械的強度をより高めることができる。また、重合性単量体が含浸した成形体を真空パック等に詰めて真空状態にして重合操作を行うことは、生産性の面から好ましい。この場合、オートクレーブ等を用いて、加圧加熱重合することも出来る。加熱温度としては、周囲の圧力環境に応じて適宜設定することができ、好ましくは70℃〜200℃、より好ましくは90℃〜180℃、さらに好ましくは100℃〜150℃の範囲で行うことが出来る。
更には、重合性単量体が含浸した無機充填材成形体を加圧した状態のまま、重合硬化を行なうこともできる。このような加圧重合は本発明においてより好ましい重合硬化方法の一つである。即ち、重合性単量体が含浸された無機充填材成形体を、別途用意した重合性単量体と共に加圧条件下に置くことで、成形体の微小な隙間まで重合性単量体がより入り込むことが出来たり、微小な気泡の残存を解消する事が出来る。加圧条件下で重合させることで、機械的強度をさらに高めることが出来る。かかる条件としては、好ましくは20MPa以上、より好ましくは50MPa以上が望ましい。基本的には圧力は高いほど好ましいが、実際には用いる加圧装置の能力に依存する。このような加圧装置としては、オートクレーブやCIP装置、HIP(熱間等方圧加圧)装置が用いられる。より好ましい加圧重合方法として、モノマー含浸した成形体をビニール袋やゴムチューブなどに真空パックで密封し、CIP装置等を用いて加圧しながら重合する方法がある。この時の圧力は高いほど好ましく、好ましくは50MPa以上、より好ましくは200MPa以上である。また、密封したモノマー含浸した成形体をCIP処理室に入れ、所定の圧力をかけた後に、処理室を加温して、高圧下で重合を開始させる方法は、機械的強度を高める上で、さらに好ましい重合方法である。例えば、室温でCIPで圧力をかけた後、30分から24時間程度の時間をかけて温度を上げて行き、到達温度は80℃〜180℃が望ましい。重合時間と到達温度は、重合性単量体に配合される重合開始剤の分解温度を考慮して設定される。
かくして、上記の方法により、有機無機複合フィラーの原料となる、バルク状の硬化物が得られる。さらに該硬化物を、粉砕等の方法によって微細化することで本発明の有機無機複合フィラーが得られる。かかる微細化して粉末を得る方法としては、公知の方法が用いられ、例えば、ボールミル、ロールクラッシャー、ジョークラッシャー、ジェットミル等が何ら制限なく用いられる。また、所望の粒子径、粒度分布を持った粉末とするために、必要に応じて分級が施されることもある。本発明の有機無機複合フィラーの粒子径は、通常、平均粒子径が3〜20μm、粒径範囲は0.1〜50μmの範囲にあるが、歯科用コンポジットレジンのペースト性状や機械的強度の調整の観点から適宜選択される。
本発明の有機無機複合フィラーは、歯科用コンポジットレジンに配合される歯科用フィラーとして有用である。かかる歯科用コンポジットレジンにおいては、重合開始剤を含む重合性単量体含有組成物と本発明の有機無機複合フィラーを混合することで調製することが出来る。よって、本発明はまた、本発明の有機無機複合フィラーを含有する歯科用コンポジットレジンを提供する。かかる重合性単量体や重合開始剤は、公知のものが何ら制限なく使用されるが、既に前述したような、本発明の有機無機複合フィラーを製造する際に用いた重合性単量体と同じものを例示することが出来る。また、重合開始剤としては、既に前述した加熱重合触媒のほか、当該領域で用いられる光重合触媒や化学重合触媒が用いられる。
本発明の歯科用コンポジットレジンにおける本発明の有機無機複合フィラーの含有量は、通常、歯科用コンポジットレジン全体を100重量部とすると、好ましくは10重量部〜80重量部、より好ましくは20重量部〜70重量部、さらに好ましくは30重量部〜60重量部の範囲である。また、必要に応じて、その他の無機充填材も配合されることがある。
本発明の歯科用コンポジットレジンは、無機充填材が高密度に充填された有機無機複合フィラーを含有しているため、機械的強度及び耐摩耗性に優れることから、充填修復材料や歯冠材料として好適に用いられる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において「室温」とは25℃を示す。
〔無機充填材及び有機無機複合フィラーの平均粒子径と粒径範囲〕
平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、型式「SALD−2100」)を用いて測定、又はSEM顕微鏡(日立製作所社製、S−4000)による直接観察により測定する。なお、直接観察による粒子径は、粒子の最長の長さと最短の長さの算術平均値として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均粒子径(一次平均粒子径)と粒径範囲が算出される。
〔無機充填材の比表面積〕
比表面積は、比表面積BET法により、通法に従って測定する(測定機器:湯浅アイオニクス製、カンタソーブQS−13。吸着ガス:窒素。キャリアガス:窒素/ヘリウム=3/7)。
〔有機無機複合フィラーの強熱残分〕
有機無機複合フィラーの強熱残分は、フィラーの3〜5gを磁性坩堝に取り、電気炉で575℃で2時間加熱処理を行い、加熱前後の重量変化を測定することで算出する。
重合性単量体含有組成物の製造例1(重合性単量体含有組成物aの製造)
[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(通称UDMA)60重量部及びトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)40重量部に、加熱重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド1.5重量部を溶解させて、重合性単量体含有組成物aを調製した。
重合性単量体含有組成物の製造例2(重合性単量体含有組成物bの製造)
トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート1モルとグリセリンジメタクリレート2モルの付加物(通称U−4TH)30重量部、2,2−ビス〔4−アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン(分子内にエトキシ基が平均2.6個 通称D2.6E)30重量部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(通称NPG)25重量部、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1,5−ペンチルジメタクリレート(通称HFPD)15重量部、加熱重合開始剤として2,2−アゾビスイソブチロニトリル(通称AIBN)1.5重量部、これらを混合溶解して重合性単量体含有組成物bを調製した。
重合性単量体含有組成物の製造例3(重合性単量体含有組成物cの製造)
2,2−ビス〔4−アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン(分子内にエトキシ基が平均2.6個 通称D2.6E)70重量部、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(通称TCDMA)30重量部に、加熱重合開始剤として、ジ−t−ブチルパーオキサイド1.0重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.5重量部を溶解させて、重合性単量体含有組成物cを調製した。
無機充填材の製造例1(無機充填材A−1の製造)
市販の超微粒子シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル(登録商標)OX−50、平均粒子径0.04μm、粒径範囲0.01〜0.1μm、BET比表面積50m/g、略球状)100gに対して、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン7gと水5gを加えて室温で2時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって表面処理して、無機充填材A−1を得た。
無機充填材の製造例2(無機充填材A−2の製造)
球状シリカ粒子として、コロイダルシリカの一種であるスノーテックスMP2040(日産化学工業社製、平均粒子径0.27μm、粒径範囲0.17〜0.4μm、BET比表面積25m/g、球状、シリカ含有量40重量%)を用いた。スノーテックスMP2040の1000gに対して、イソプロパノール800mLを加え、さらに、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン20gを加えて、室温で24時間攪拌した。この混合物に6N塩酸水溶液を加えてpHが2になるように調整すると、シリカ粒子が沈殿、析出した。このシリカ粒子をろ紙で集めて、さらに蒸留水で洗浄した。得られたシリカ粒子を真空乾燥し、さらに90℃で2時間熱処理して、表面処理された球状シリカ充填材(無機充填材A−2)が360g得られた。
無機充填材の製造例3(無機充填材A−3の製造)
市販のバリウムボロアルミノシリケートガラス粉末(ショット社製GM27884、NF180、平均粒子径0.18μm、粒径範囲0.05〜0.5μm、BET比表面積15m/g、破砕状)200gをエタノール500mLに分散し、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン8gと水5gを用いて、無機充填材の製造例1と同様の方法により表面処理して、無機充填材A−3を得た。
無機充填材の製造例4(無機充填材A−4の製造)
市販の超微粒子アルミナ(日本アエロジル社製、アエロキサイド(登録商標)Alu C、平均一次粒子径0.02μm、粒径範囲0.01〜0.1μm、BET比表面積100m/g、略球状)100gに対して、表面処理剤として、10−メタクリロキシデシルジハイドロジェンホスフェート(通称MDP)10g、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5gを用いて、無機充填材の製造例1と同様の方法により表面処理して、無機充填材A−4を得た。
実施例1
前記製造例で得た表面処理された無機充填材A−1の100gを、直径20cmの穴を持つプレス用金型に入れ、一軸プレス機で25MPaのプレス圧で3分間プレス成型を行った後、プレスされた成形体を取り出し、引き続き、該成形体をビニール袋に入れてCIP処理(170MPa、1分間)を行って、無機粉末A−1が凝集したプレス成形体を得た。該プレス成形体を、重合性単量体含有組成物aに浸漬した。室温で5日静置した後、浸漬した状態のまま減圧して脱気した(10ヘクトパスカル、10分間)。減圧を解除して、重合性単量体が含浸された成形体を取り出し半透明の重合性単量体含浸成形体を得た。この半透明の重合性単量体含浸成形体を室内の蛍光灯に透かして目視で確認すると、内部に気泡の存在は認められなかった。次いで、重合性単量体が含浸された該成形体を、真空パックでビニール袋に密封し、オートクレーブ中で加熱加圧処理を行って重合硬化を行った(50MPa、2時間、110℃)。得られた硬化物を、ジョークラッシャーで解砕して1cm以下の塊にし、さらに振動ボールミル、引き続き分級を行うことで、平均粒子径4.5μm、粒径範囲が0.2〜17μmの、目的とする有機無機複合フィラー(B−1)を得た。該フィラーの強熱残分を測定すると、73.6重量%であった。
実施例2
実施例1の製造方法において、無機充填材A−1 100gの代わりに無機充填材A−2 200gを用いる以外は実施例1と同じ手順で有機無機複合フィラー(B−2)を得た(実施例1と同じ重合性単量体含有組成物aを使用)。該フィラーの平均粒子径は4.1μm、粒径範囲は0.2〜18μm、強熱残分は82.1重量%であった。
実施例3
実施例1の製造方法において、無機充填材A−1 100gの代わりに無機充填材A−3 200gを用い、さらに、重合性単量体含有組成物aの代わりに重合性単量体含有組成物bを用いる以外は実施例1と同じ手順で有機無機複合フィラー(B−3)を得た。該フィラーの平均粒子径は3.4μm、粒径範囲は0.2〜22μm、強熱残分は84.8重量%であった。
実施例4
実施例1の製造方法において、無機充填材A−1 100gの代わりに無機充填材A−4 100gを用い、重合性単量体含有組成物aの代わりに重合性単量体含有組成物cを用いる以外は、実施例1と同じ手順で、有機無機複合フィラー(B−4)を得た。該フィラーの平均粒子径は3.1μm、粒径範囲は0.1〜15μm、強熱残分は82.1重量%であった。
比較例1
重合性単量体含有組成物aの100gを混練機に入れ、ここに無機充填材A−1を徐々に加えてペースト状の組成物を調製した。充填材を加えることでペーストは増粘し、145g以上の無機充填材を加えて混練することは困難であった。この状態のペーストを取り出し、真空で脱泡したのち、真空パックでビニール袋に詰めて、実施例1と同じ条件で重合硬化させ、同様に粉砕して、有機無機複合フィラー(C−1)を得た。平均粒子径4.3μm、粒径範囲が0.2〜19μm、強熱残分を測定すると、56.1重量%であった。
以下に、得られた有機無機複合フィラーについて表1にまとめて示す。
Figure 0006346748
[歯科用コンポジットレジンの調製]
実施例5
重合性単量体含有組成物として、UDMA60重量部、TEGDMA40重量部、光重合触媒として、カンファーキノン0.25重量部、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル0.5重量部を均一に溶解した。該重合性単量体含有組成物 30重量部、実施例1で得た有機無機複合フィラー(B−1) 55重量部、無機充填材A−1 15重量部を均一に混練して、歯科用コンポジットレジンを得た。
比較例2
実施例5と同じ重合性単量体含有組成物 30重量部、比較例1の有機無機複合フィラー(C−1) 55重量部、無機充填材A−1 15重量を均一に混練して、歯科用コンポジットレジンを得た。
得られたコンポジットレジンの特性を、下記試験例1〜2の方法に従って評価した。結果を表2に示す。
試験例1[圧縮強度の測定]
ペースト状のコンポジットレジンを金型に詰めて、光照射機で、直径4mm、高さ4mmの円柱状試験片を作成した。得られた試験片を37℃水中に24時間浸漬し、万能試験機(インストロン社製)を用いて、クロスヘッドスピード2mm/minに設定して圧縮強さを測定した。圧縮強さは大きい方が好適とされ、400MPa以上であればより好適とされる。
試験例2[歯ブラシ磨耗試験]
コンポジットレジンを光重合して硬化させ、試験片(10mm×10mm×2mm)を作製した。綺麗な平滑面を#1500研磨紙、#2000研磨紙、#3000研磨紙の順に乾燥条件下で研磨し、最後にダイヤモンドペーストで光沢度が90%となるまで研磨した。ここで作製した試験片を、歯ブラシ磨耗試験{歯ブラシ:ビットウィーンライオン(硬さふつう)、歯磨き粉:デンタークリアーMAX(ライオン社製)、荷重250g、試験溶液:蒸留水/歯磨き粉=90/10(v/v、50mL)、磨耗回数4万回}した後の試験片の光沢度を測定した。また、試験前後の試験片の重量変化から、磨耗量を体積で算出した。残存光沢度が60%以上であれば、滑沢耐久性が好適とされ、残存光沢度が65%以上であればより好適とされる。また、磨耗量は少ない方が好適とされ、0.5mm以下であればより好適とされる。
Figure 0006346748
以上の結果より、本発明の製造方法を用いることによって、機械的強度と耐磨耗性に優れた、有機無機複合フィラーを含む歯科用コンポジットレジンが得られることがわかった。
本発明の製造方法を用いると、無機粉末含有量が高く、機械的強度に優れる歯科用コンポジットレジンが得られる。

Claims (11)

  1. 無機充填材をプレス成形してなる無機充填材成形体を重合性単量体含有組成物中に浸漬し、成形体内部に重合性単量体が浸透した後に、該重合性単量体を重合硬化させて得られた硬化物を微細化することを特徴とする、有機無機複合フィラーの製造方法。
  2. プレス成形が一軸プレス成形である、請求項1記載の製造方法。
  3. 一軸プレス成形時のプレス圧が10MPa以上である、請求項2記載の製造方法。
  4. プレス成形が冷間等方圧加圧(CIP)工程である/あるいはCIP工程を含むことを特徴とする、請求項1〜3いずれかに記載の製造方法。
  5. CIP成形時のプレス圧が30MPa以上である、請求項4に記載の製造方法。
  6. 重合硬化を、加圧下で行う請求項1〜5いずれかに記載の製造方法。
  7. 無機充填材が、平均粒子径が0.1〜1μm、粒径範囲が0.05〜5μmである無機粒子を含む、請求項1〜6いずれかに記載の製造方法。
  8. 無機充填材が、平均粒子径が0.001〜0.1μm、比表面積が500〜30m/gである無機粒子を含む、請求項1〜6いずれかに記載の製造方法。
  9. 有機無機複合フィラー中の無機充填材の含有量が60重量%以上である、請求項1〜8いずれかに記載の製造方法。
  10. 請求項1〜9いずれかに記載の製造方法によって得られた有機無機複合フィラー。
  11. 請求項10に記載の有機無機複合フィラーを含有する歯科用コンポジットレジン。
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