JP7288462B2 - 歯科用硬化性組成物及びその製造方法 - Google Patents

歯科用硬化性組成物及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、歯科医療の分野において、天然歯の一部分又は全体を代替し得る歯科材料、特に歯科用コンポジットレジンとして好適に使用される歯科用硬化性組成物、その歯科用硬化性組成物又はその硬化物からなる歯科用コンポジットレジン及び歯科用ミルブランク、並びに、それらの製造方法に関する。
重合性単量体、無機充填材及び重合開始剤から構成される歯科用硬化性組成物は、歯の欠損部や虫歯を修復するための材料として多用される歯科材料となっている。このような歯科用硬化性組成物においては、天然歯と置換可能な十分な機械的強度、硬度、口腔内での噛み合わせに対する耐磨耗性等の機械的特性に加え、天然歯と同等の光沢を得るための研磨性や口腔内で歯ブラシ等により表面の摩耗が生じてもツヤを維持できる滑沢耐久性等の審美性が要求される。また近年では、インレー、クラウン等の歯科用補綴物を、コンピューターによって設計し、ミリング装置により切削加工して作製するCAD/CAMシステムが普及しているおり、本システムに用いられる被切削材料であるミルブランクの素材として、歯科用硬化性組成物から製造される歯科用ミルブランクの検討が行なわれている。該歯科用硬化性組成物から製造される歯科用ミルブランクは、対合歯を傷つけない適度な硬度を有し、耐衝撃性に優れることから歯科用補綴物に加工されて臨床で使われ始めている。
例えば、機械的強度及び研磨性を実現するために、無機充填材をプレス成形した後、成形体に重合性単量体を浸漬して加熱重合する、歯科用ミルブランクの製造方法が記載されている(特許文献1)。この製造方法により、ナノ粒子を高密度に充填することが可能となり、機械的強度及び研磨性に優れた歯科用ミルブランクを得ることができる。しかしながら本発明者らが検討した結果、機械的強度が十分とは言えず、滑沢耐久性についても改善の余地があった。
また、特許文献2には、光重合開始剤としてカンファーキノン及び重合促進剤としてアミンを用いて、UDMA/TEGDMA=99/1(質量%)の重合性単量体混合物に、平均粒子径3.3μmの無機充填材と平均粒子径15nmの超微粒子シリカをそれぞれ添加した歯科用硬化性組成物を光照射によって硬化させた後に、加熱処理によって歯科用ミルブランクを得る方法が記載されている。しかしながら、本発明者らが検討した結果、UDMAのような高粘度の重合性単量体を多く含む歯科用硬化性組成物を光照射により硬化させたところ、高粘度によって重合性単量体の衝突因子が低下し重合率が低くなるために十分な機械的強度得られないという問題があることがわかった。
国際公開第2014/021343号 特開2015-67543号公報
本発明は、従来技術が抱える上記の課題を解決すべくなされたものであって、機械的強度及び口腔内環境下において長期間に渡って審美性に優れる歯科用硬化性組成物、並びに、その歯科用硬化性組成物又はその硬化物からなる、歯科用コンポジットレジン及び歯科用ミルブランクを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び加熱重合開始剤(C)を含み、重合性単量体(B)を特定の組成とし、かつ特定の加熱重合開始剤(C)を用いることによって、上記課題を一挙に解決できることを見出し、この知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の発明を包含する。
[1]無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び加熱重合開始剤(C)を含み、
前記重合性単量体(B)が、粘度が300mPa・s/25℃以上1500000mPa・s/25℃以下である重合性単量体(B-1)を含み、さらに必要に応じて粘度が1mPa・s/25℃以上300mPa・s/25℃未満である重合性単量体(B-2)を含み、
前記重合性単量体(B-1)と、前記重合性単量体(B-2)との質量比が、90:10~100:0であり、
前記加熱重合開始剤(C)の10時間半減期温度(τ)が90~170℃である、歯科用硬化性組成物。
[2]前記重合性単量体(B)100質量部に対して、前記無機充填材(A)が100~600質量部であり、前記加熱重合開始剤(C)が0.1~5質量部である、[1]に記載の歯科用硬化性組成物。
[3]前記無機充填材(A)の平均一次粒子径が0.01~5μmである、[1]又は[2]に記載の歯科用硬化性組成物。
[4]前記重合性単量体(B-1)及び前記重合性単量体(B-2)が、それぞれ独立して、(メタ)アクリレート系重合性単量体及び(メタ)アクリルアミド系重合性単量体からなる群から選ばれる1種以上の重合性単量体である、[1]~[3]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
[5]前記加熱重合開始剤(C)が、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、及び1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物からなる、歯科用コンポジットレジン。
[7][1]~[5]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物の硬化物からなる、歯科用ミルブランク。
[8]以下の工程(1)~(3)を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物の製造方法。
(1)重合性単量体(B)と加熱重合開始剤(C)を含む重合性単量体(B)含有組成物と、無機充填材(A)とを混練してペースト状組成物を作製する工程;
(2)工程(1)で得たペースト状組成物を、真空度5~200Torrにて3~30分間保持する工程;
(3)工程(2)の後に、ペースト状組成物を圧力0.5~5MPaにて3~30分間かけて押出す工程。
[9][1]~[5]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物を、圧力1MPa以上で加圧して所望の形状に加工した後、(10時間半減期温度(τ)-20)℃~(10時間半減期温度(τ)+30)℃の温度で重合硬化させる工程を含む、歯科用ミルブランクの製造方法。
本発明の歯科用硬化性組成物の硬化物は、機械的強度に優れ、かつ口腔内環境下において長期間に渡って滑沢耐久性が高く、審美性にも優れている。
本発明の歯科用硬化性組成物は、無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び加熱重合開始剤(C)を含み、前記重合性単量体(B)が、粘度が300mPa・s/25℃以上1500000mPa・s/25℃以下である重合性単量体(B-1)を含み、さらに必要に応じて粘度が1mPa・s/25℃以上300mPa・s/25℃未満である重合性単量体(B-2)を含み、前記重合性単量体(B-1)と、前記重合性単量体(B-2)との質量比が、90:10~100:0であり、前記加熱重合開始剤(C)の10時間半減期温度(τ)が90~170℃であることを特徴とする。これにより、硬化物の機械的強度及び審美性に優れる歯科用硬化性組成物、及びその硬化物からなる歯科用ミルブランクを提供することができる。
この効果が発現する要因は定かではないが、例えば以下のように推測される。10時間半減期温度の高い加熱重合開始剤を用いることで、高温下での加熱重合が可能となるため、重合反応時の重合性単量体含有組成物の粘度を低下させることができる。そのため、〔2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)〕ジメタクリレート(通称「UDMA」)のような高粘度の重合性単量体を用いた場合においても、重合性単量体の衝突因子が低下することなく、重合率を向上させることができ、得られる重合体の機械的強度が向上すると推察される。さらに、特に、歯科材料に好適に用いられる(メタ)アクリレート系重合性単量体及び(メタ)アクリルアミド系重合性単量体を用いた場合には、高温で加熱重合することで連鎖移動反応が起こりやすく、重合体同士がさらに架橋することでより硬化物の機械的強度が向上するものと考えられる。また、歯ブラシ等により硬化物表面のツヤが消失する要因として、歯科用硬化性組成物の硬化物の表面において、初期段階で重合体が摩耗し、その摩耗箇所を起点に無機充填材が脱落することによって生じることが挙げられる。故に、重合体の機械的強度に優れる本発明の歯科用硬化性組成物は、初期の摩耗が生じにくいために硬化物表面のツヤを維持しやすい、すなわち滑沢耐久性に優れると推察される。
〔無機充填材(A)〕
本発明における無機充填材(A)としては、歯科用硬化性組成物(特に、歯科用コンポジットレジン)の充填材として用いられている公知の無機粒子を用いることができる。当該無機粒子としては、例えば、各種ガラス類(例えば、二酸化珪素(石英、石英ガラス、シリカゲル等)、珪素を主成分とし各種重金属と共にホウ素及び/又はアルミニウムを含有するものなど)、アルミナ、各種セラミック類、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、シリカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、二酸化チタン(チタニア)、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられる。なお、無機充填材(A)に用いる無機粒子は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
歯科材料に望まれる重要な物性として、天然歯と同様の透明性とX線造影性とが挙げられる。このうち透明性は、無機充填材(A)と重合性単量体の重合体の屈折率をできるだけ一致させることにより達成することができる。一方、X線造影性は、無機充填材(A)として、ジルコニウム、バリウム、チタン、ランタン、ストロンチウム等の重金属元素を含む無機充填材(酸化物など)を用いることにより付与することができる。このような重金属元素を含む無機充填材の屈折率は通常高く、1.5~1.6の範囲内にある。本発明において、例えば、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体及びモノ(メタ)アクリレート系重合性単量体の硬化物の屈折率は通常、1.5~1.6の範囲内にあることから、このようなX線造影性を有する屈折率の高い無機充填材と組み合わせても屈折率差を小さく調節することができ、得られる歯科材料の透明性を向上させることができる。
上記したX線造影性を付与することのできる屈折率の高い無機充填材としては、例えば、バリウムボロシリケートガラス(例えば、Esstech社製の「E-3000」やショット社製の「8235」、「GM27884」、「GM39923」等)、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス(例えば、Esstech社製の「E-4000」やショット社製の「G018-093」、「GM32087」等)、ランタンガラス(例えば、ショット社製の「GM31684」等)、フルオロアルミノシリケートガラス(例えば、ショット社製の「G018-091」、「G018-117」等)、ジルコニアを含有するガラス(例えば、ショット社製の「G018-310」、「G018-159」等)、ストロンチウムを含有するガラス(例えば、ショット社製の「G018-163」、「G018-093」、「GM32087」等)、酸化亜鉛を含有するガラス(例えば、ショット社製の「G018-161」等)、カルシウムを含有するガラス(例えば、ショット社製の「G018-309」等)などが挙げられる。
無機充填材(A)の形状に特に制限はなく、例えば、破砕状、板状、鱗片状、繊維状(短繊維、長繊維等)、針状、ウィスカー、球状など、各種形状のものを用いることができる。無機充填材は、本発明の要件を満たす限り上記の形状の内、異なる形状のものが組み合わさったものであってもよい。
本発明における無機充填材(A)の平均一次粒子径は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、0.01~5μmが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましく、0.04μm以上であることがさらに好ましく、また、3μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましい。平均一次粒子径が0.01μmよりも小さいと機械的強度が損なわれやすく、また5μmよりも大きいと硬化物の研磨性が損なわれ、歯科材料に求められる審美性が低下するおそれがある。
前記無機充填材(A)の平均一次粒子径は、レーザー回折散乱法や粒子の電子顕微鏡観察により求めることができる。具体的には、0.1μm以上の粒子径測定にはレーザー回折散乱法が簡便であり、0.1μm未満の粒子径測定には電子顕微鏡観察が簡便である。0.1μm以上であるか否かの判別にはレーザー回折散乱法を採用すればよい。
レーザー回折散乱法では、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製「SALD-2300」等)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて測定することで平均一次粒子径を求めることができる。
電子顕微鏡観察では、例えば、粒子の走査型電子顕微鏡(SEM;例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製「SU3500H-800NA型」等)画像写真を撮り、そのSEM画像写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の粒子径を画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(株式会社マウンテック製「Mac-View」等)を用いて測定することにより平均一次粒子径を求めることができる。このとき、粒子の粒子径は、その粒子の面積と同一の面積をもつ円の直径である円相当径として求められ、粒子の数とその粒子径より平均一次粒子径が算出される。
本発明における無機充填材(A)の含有量としては、重合性単量体(B)100質量部に対して、100~600質量部が好ましく、150~550質量部がより好ましく、200~500質量部がさらに好ましい。
本発明における無機充填材(A)は、表面処理剤で予め表面処理が施されたものであることが好ましい。表面処理が施された無機充填材(A)を用いることで、得られる歯科用硬化性組成物の硬化後の機械的強度をより向上させることができる。なお、2種以上の無機充填材(A)を用いる場合、そのうちのいずれかの1種のみが、表面処理が施されたものであってもよく、全てが、表面処理が施されたものであってもよい。後者の場合、個々に表面処理された無機充填材(A)を混合してもよいし、予め複数の無機充填材(A)を混合し、纏めて表面処理を施してもよい。
かかる表面処理剤としては、公知の表面処理剤を用いることができ、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物などの有機金属化合物、及びリン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の酸性基を少なくとも1個有する酸性基含有有機化合物を用いることができる。表面処理剤を2種以上使用する場合は、2種以上の表面処理剤の混合物の表面処理剤層としてもよいし、複数の表面処理剤層が積層した複層構造の表面処理剤層としてもよい。また、表面処理方法としては、特に制限なく公知の方法を用いることができる。
有機ケイ素化合物としては、R SiX(4-n)で表される化合物が挙げられる(式中、Rは炭素数1~12の置換又は無置換の炭化水素基であり、Xは炭素数1~4のアルコキシ基、アセトキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は水素原子を示し、nは0~3の整数であり、但し、R及びXが複数ある場合にはそれぞれ、同一でも異なっていてもよい)。
具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3-トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ω-(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3~12、例、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11-メタクリロイルオキシドデシルトリメトキシシラン等〕、ω-(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3~12、例、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等〕等が挙げられる。なお、本発明において「(メタ)アクリロイルオキシ」との表記は、メタクリロイルオキシとアクリロイルオキシの両者を包含する意味で用いられる。
この中でも、重合性単量体(B)と共重合し得る官能基を有するカップリング剤、例えばω-(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3~12〕、ω-(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3~12〕、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が好ましく用いられる。
有機チタン化合物としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラn-ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート等が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn-ブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート等が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム有機酸塩キレート化合物等が挙げられる。
リン酸基を含有する酸性基含有有機化合物としては、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7-(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9-(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11-(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12-(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16-(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20-(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2-(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4-(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8-(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9-(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10-(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、ビス〔2-(メタ)アクリロイルオキシ-(1-ヒドロキシメチル)エチル〕ハイドロジェンホスフェート、及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
また、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の酸性基を有する酸性基含有有機化合物としては、例えば、国際公開第2012/042911号に記載のものを好適に用いることができる。
上記の表面処理剤は、1種単独を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、無機充填材(A)と重合性単量体との化学結合性を高めて硬化物の機械的強度を向上させるために、重合性単量体(B)と共重合し得る官能基を有する酸性基含有有機化合物を用いることがより好ましい。
表面処理剤の使用量は、特に限定されず、例えば、無機充填材(A)100質量部に対して、0.1~50質量部が好ましい。
〔重合性単量体(B)〕
本発明で用いられる重合性単量体(B)は、特定の質量比を満たす限り、歯科用硬化性組成物(歯科用コンポジットレジン等)に使用される公知の重合性単量体が何ら制限無く用いられるが、一般には、ラジカル重合性単量体が好適に用いられる。ラジカル重合性単量体の具体例としては、α-シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α-ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエステル類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体等の(メタ)アクリルアミド系重合性単量体;ビニルエステル類;ビニルエーテル類;モノ-N-ビニル誘導体;スチレン誘導体等が挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリレート系重合性単量体及び(メタ)アクリルアミド系重合性単量体からなる群から選ばれる1種以上の重合性単量体であることが好ましく、(メタ)アクリレート系重合性単量体がより好ましい。なお、本発明において「(メタ)アクリル」との表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられ、「(メタ)アクリレート」との表記はメタクリレートとアクリレートの両者を包含する意味で用いられる。
本発明で用いられる重合性単量体(B)において、粘度が300mPa・s/25℃以上1500000mPa・s/25℃以下である重合性単量体(B-1)(以下、単に重合性単量体(B-1)と称することがある)と、粘度が1mPa・s/25℃以上300mPa・s/25℃未満である重合性単量体(B-2)(以下、単に重合性単量体(B-2)と称することがある)との質量比が、90:10~100:0である。重合性単量体(B-1)の粘度が1500000mPa・s/25℃を超えると、後述の10時間半減期温度(τ)が90~170℃である加熱重合開始剤(C)を用いた場合でも、重合性単量体(B)の衝突因子が低下してしまい重合率が低下することで、得られる硬化物の機械的強度が低下する恐れがある。重合性単量体(B-1)の粘度の好ましい範囲としては、300~1000000mPa・s/25℃が好ましく、300~500000mPa・s/25℃がより好ましく、300~100000mPa・s/25℃がさらに好ましく、1000~100000mPa・s/25℃が特に好ましい。また、重合性単量体(B-2)の粘度の好ましい範囲としては、1~250mPa・s/25℃が好ましく、1~200mPa・s/25℃がより好ましい。一方、重合性単量体(B-1)と重合性単量体(B-2)の質量比としては、重合性単量体(B-1)を93質量%以上、かつ重合性単量体(B-2)を7質量%以下含有することが機械的強度により優れるという観点から好ましく、重合性単量体(B-1)を95質量%以上、かつ重合性単量体(B-2)を5質量%以下含有することがより好ましく、重合性単量体(B-1)を99質量%以上、かつ重合性単量体(B-2)を1質量%以下含有することがさらに好ましく、重合性単量体(B-1)を99質量%超、かつ重合性単量体(B-2)を1質量%未満含有することがよりさらに好ましい。重合性単量体(B-1)を90質量%未満、かつ重合性単量体(B-2)を10質量%より多く含むと、重合体の構造に起因して硬化物の機械的強度が低くなる恐れがある。
〔重合性単量体(B-1)〕
重合性単量体(B-1)としては、例えば、2,2-ビス[4-〔3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(通称「Bis-GMA」)、2,2-ビス〔4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン(例えば、エトキシ基の平均付加モル数2.6(D2.6E));9,9-ビス〔4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕フルオレン等の芳香族系二官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体;1,2-ビス〔3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、〔2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)〕ジメタクリレート(UDMA)等の脂肪族系二官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の三官能性以上の(メタ)アクリレート系重合性単量体等の多官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体が挙げられる。この中でも、機械的強度の観点よりBis-GMA、D2.6E、UDMAが好適に用いられる。なお、重合性単量体(B-1)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
〔重合性単量体(B-2)〕
重合性単量体(B-2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3-ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロライド等の単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等の単官能性(メタ)アクリルアミド系重合性単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族系二官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の三官能性以上の(メタ)アクリレート系重合性単量体等が挙げられる。この中でも、機械的強度の観点よりトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族系二官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体が好適に用いられる。なお、重合性単量体(B-2)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明で用いられる重合性単量体(B)としては、前記重合性単量体(B-1)及び重合性単量体(B-2)以外の、固体状もしくは粘度が1500000mPa・s/25℃を超える重合性単量体を用いることができ、例えば、前記重合性単量体(B-1)及び/又は(B-2)と混合溶解させて使用することができる。
本発明における重合性単量体(B)の粘度は、TV-30型粘度計(TVE―30HT、東機産業株式会社製)を用いて測定することができる。具体的には、重合性単量体65gを50mLガラス製ビンに入れた後、25℃の恒温室(湿度50%)で1日間静置した後に、TV-30型粘度計(TVE―30HT、東機産業株式会社製)を用いて、25℃にて粘度を測定することで求められる。なお、測定開始から3分後における値をその重合性単量体の粘度とする。
本発明における重合性単量体(B)の含有量としては、特に限定されないが、歯科用硬化性組成物の全量において、5~50質量%が好ましく、10~45質量%がより好ましく、15~40質量%がさらに好ましい。
〔加熱重合開始剤(C)〕
次に、加熱重合開始剤(C)について説明する。本発明における加熱重合開始剤(C)は、特定の10時間半減期温度(τ)を有する限り、一般工業界で使用されている加熱重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている加熱重合開始剤が好ましく用いられる。
本発明における加熱重合開始剤(C)は、10時間半減期温度(τ)が90~170℃であることが重要である。これにより、高粘度な重合性単量体(B)を用いた場合においても、重合率を向上させることができ、得られる硬化物の機械的強度が向上する。また、本発明の歯科用硬化性組成物は、加熱重合開始剤(C)を用いることによる硬化物強度向上に伴い、歯ブラシ等による表面の摩耗が生じにくくなるために硬化物表面のツヤを維持しやすい、すなわち滑沢耐久性に優れる。このような観点から、加熱重合開始剤(C)の10時間半減期温度(τ)は100~170℃が好ましく、105~170℃がより好ましく、110~170℃がさらに好ましい。10時間半減期温度(τ)が90℃より低い場合、高粘度な重合性単量体(B)を用いた場合に十分な重合率が得られず機械的強度が低下する恐れがある。一方、170℃より高い場合、熱による劣化によって硬化物の機械的強度の低下及び黄変が生じる恐れがある。
本発明における10時間半減期温度(τ)とは、加熱重合開始剤の半減期が10時間となる温度のことを表し、半減期とは、加熱重合開始剤の濃度が初期値の半分に減少するまでの時間を表し、以下の方法によって求められる。
まず、ベンゼンもしくはトルエンを溶媒として使用し、0.1mol/Lに調整した加熱重合開始剤の溶液を、窒素置換を行ったガラス管中に密封する。これを所定温度にセットした恒温槽に浸し、熱分解させる。一般的に希薄溶液中の加熱重合開始剤の分解は近似的に一次反応として取り扱うことができるため、分解した加熱重合開始剤の量をx(mol/L)、分解速度定数をk(1/h)、時間をt(h)、加熱重合開始剤の初期濃度をa(mol/L)とすると、下記式〔I〕及び式〔II〕が成立する。
dx/dt=k(a-x) 〔I〕
ln{a/(a-x)}=kt 〔II〕
半減期は分解により加熱重合開始剤の濃度が初期の半分に減ずるまでの時間であるから、半減期をt1/2で示し式〔II〕のxにa/2を代入すれば、下記式〔III〕のようになる。
kt1/2=ln2 〔III〕
したがって、ある一定温度で熱分解させ、時間(t)とln{a/(a-x)}の関係をプロットし、得られた直線の傾きからkを求めることで、式〔III〕からその温度における半減期(t1/2)を求めることができる。一方、分解速度定数kに関しては、頻度因子をA(1/h)、活性化エネルギーをE(J/mol)、気体定数をR(8.314J/mol・K)、絶対温度をT(K)とすれば、下記式〔IV〕が成立する。
lnk=lnA-ΔE/RT 〔IV〕
式〔III〕及び式〔IV〕よりkを消去すると、
ln(t1/2)=ΔE/RT-ln(A/2) 〔V〕
で表されるため、数点の温度についてt1/2を求め、ln(t1/2)と1/Tの関係をプロットし得られた直線からt1/2=10(h)における温度(10時間半減期温度)が求められる。
10時間半減期温度(τ)が90~170℃である加熱重合開始剤(C)の例としては、2,2-ビス(4,4-ジーt-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)バレレート、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン等のペルオキシケタール;t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド;t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジ-t-ヘキシルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド;t-ブチルペルオキシラウレート、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート等のカーボネート;2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ヘキシルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシベンゾエート等のアルキルペルオキシエステル等が挙げられる。この中でも、より高温で加熱重合が可能なt-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシドが好適に用いられる。なお、加熱重合開始剤(C)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明における加熱重合開始剤(C)の含有量は、重合性単量体(B)100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましく、0.3~3質量部であることがより好ましく、0.5~2質量部であることがさらに好ましい。加熱重合開始剤(C)の含有量が少なすぎると、未重合分が残存することで強度低下を招く恐れがあり、多すぎると硬化物の変色のリスクがある。
本発明の歯科用硬化性組成物には、前記成分以外に、目的に応じて、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤(顔料等)、抗菌剤、X線造影剤、増粘剤、蛍光剤などをさらに添加することも可能である。また、本発明の歯科用硬化性組成物には、光重合開始剤を含めてもよい。ある好適な実施形態では、無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び加熱重合開始剤(C)を含み、重合性単量体(B)が重合性単量体(B-1)と重合性単量体(B-2)を含み、重合性単量体(B-1)と重合性単量体(B-2)との質量比が、90:10~100:0であり、加熱重合開始剤(C)の10時間半減期温度(τ)が90~170℃であり、光重合開始剤を含まない歯科用硬化性組成物が挙げられる。光重合開始剤としては、例えば、(ビス)アシルホスフィンオキシド類(塩を含む)、チオキサントン類(第4級アンモニウム塩等の塩を含む)、ケタール類、α-ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル類、α-アミノケトン類などが挙げられる。
前記顔料としては、歯科用組成物(特に、歯科用コンポジットレジン)に用いられている公知の顔料が何ら制限なく用いられる。前記顔料としては、無機顔料及び/又は有機顔料のいずれでもよく、無機顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄等のクロム酸塩;紺青等のフェロシアン化物;銀朱、カドミウム黄、硫化亜鉛、カドミウムレッド等の硫化物;硫酸バリウム、硫酸亜鉛、硫酸ストロンチウム等の硫酸塩;アンチモン白、亜鉛華、チタン白、ベンガラ、鉄黒、酸化クロム等の酸化物;水酸化アルミニウム等の水酸化物;ケイ酸カルシウム、群青等のケイ酸塩;カーボンブラック、グラファイト等の炭素等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY等のニトロソ化合物;ナフトールイエローS、リソールファストイエロー2G等のニトロ系顔料;パーマネントレッド4R、ブリリアントファストスカーレット、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー等の不溶性アゾ系顔料;リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD等の難溶性アゾ系顔料;ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、ピグメントスカーレット3B、ボルドー10B等の可溶性アゾ系顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー等のフタロシアニン系顔料;ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の塩基性化合物;ピーコックブルーレーキ、エオシンレーキ、キノリンイエローレーキ等の酸性化合物等が挙げられる。前記顔料は1種又は2種以上の組み合わせで用いることができ、目的とする色調に応じて適宜選択される。
本発明の歯科用硬化性組成物における顔料の含有量は、所望の色調によって適宜調整されるため、特に限定されないが、歯科用硬化性組成物100質量部において、好ましくは0.000001質量部以上であり、より好ましくは0.00001質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは1質量部以下である。また、顔料の含有量は、歯科用硬化性組成物100質量部において、好ましくは0.000001~5質量部であり、より好ましくは0.00001~1質量部である。
本発明の歯科用硬化性組成物及びその硬化物は、機械的強度及び審美性に優れることから、歯科材料として好適に用いることができる。具体的には、歯科用硬化性組成物としては歯科用コンポジットレジン等、歯科用硬化性組成物の硬化物としては歯科用ミルブランク等の歯科医療の分野において、天然歯の一部分又は全体を代替し得る歯科材料に好適に用いることができる。
本発明の歯科用硬化性組成物の製造方法は、以下の工程(1)~(3)を含む。
(1)重合性単量体(B)と加熱重合開始剤(C)を含む重合性単量体(B)含有組成物(以下、単に「重合性単量体(B)含有組成物」という)と、無機充填材(A)とを混練してペースト状組成物を作製する工程;
(2)工程(1)で得たペースト状組成物を、真空度5~200Torrにて3~30分間保持する工程;
(3)工程(2)の後に、ペースト状組成物を圧力0.5~5MPaにて3~30分間かけて押出す工程。
上記工程(1)は混練工程、工程(2)及び(3)は脱泡工程であり、その詳細な手順を以下に説明する。
〔混練工程〕
混練工程は混練作業を行う工程であり、混練機内で、重合性単量体(B)含有組成物と、無機充填材(A)とを投入し混練を行うことでペースト状組成物を作製する。混練工程において、本発明の効果を奏する限り特に混練する方法は限定されず、公知の方法を採用することができるが、混練時間を短縮しペーストのバラツキの発生を防止する観点より、加温しながら混練することが好ましい。混練温度としては40~60℃が好ましい。40℃以上であることで、混練時間の短縮効果が十分に得られる。混練温度が60℃以下であることで、混練中に重合硬化が起こることを抑制できる。また、混練中、必要に応じて真空脱泡の処理を行うこともできる。この時、真空度は特に限定されないが、効率よく気泡を抜くために、真空度は5~200Torrであることが好ましい。
〔脱泡工程〕
脱泡工程は脱泡作業を行う工程であり、脱泡機容器内で、前記ペースト状組成物に対して、減圧によってペースト内部の気泡を抜きながら、圧力をかけながら容器外へ押出すことによって脱泡を行う。脱泡条件は特に限定されないが、効率よく気泡を抜くこと、及び重合性単量体(B)含有組成物中に均一分散している無機充填材(A)の分散状態に偏りが生じることを抑制するために、真空度は5~200Torrが好ましい。脱泡条件としての減圧時間は3~30分間が好ましい。また、押出時の圧力は0.5~5MPaが好ましい。押出時の加圧時間は3~30分間が好ましい。また、脱泡中、必要に応じて加熱処理を行うこともできる。この時、温度は特に限定されないが、効率よく気泡を抜くために、温度は40~60℃が好ましい。
前述の通り、本発明の歯科用硬化性組成物の硬化物は歯科用ミルブランクとして用いることができる。すなわち、本発明の歯科用ミルブランクの製造方法としては、上記工程(混練工程、脱泡工程)を経て得た歯科用硬化性組成物を加熱重合により硬化させる重合工程を有し、より具体的には、該歯科用硬化性組成物を型に流し込み、圧力1MPa以上に加圧して所望の形状に加工した後、(10時間半減期温度(τ)-20)℃~(10時間半減期温度(τ)+30)℃の温度で重合硬化させる工程を含む。その詳細な手順を以下に説明する。
〔重合工程〕
重合工程は、本発明の歯科用硬化性組成物を加熱重合により硬化させる工程である。まず、歯科用硬化性組成物を型に流し込み、プレス成形することにより所望する形状に加工する。さらに、重合硬化の工程も該金型中でそのまま引き続いて行うことが可能である。かかる加圧条件としては、好ましくは1MPa以上であり、より好ましくは2MPa以上であり、さらに好ましくは5MPa以上である。昇圧完了と共に加熱することにより、重合硬化して本発明の歯科用ミルブランクを得ることができる。かかる重合温度としては、より機械的強度の高い硬化物を得る観点から、(10時間半減期温度(τ)-20)℃~(10時間半減期温度(τ)+30)℃が好ましく、(10時間半減期温度(τ)-15)℃~(10時間半減期温度(τ)+25)℃がより好ましく、(10時間半減期温度(τ)-10)℃~(10時間半減期温度(τ)+20)℃がさらに好ましい。(10時間半減期温度(τ)-20)℃より低温で重合した場合、未反応の重合性単量体が残存することで強度低下を招く恐れがあり、(10時間半減期温度(τ)+30)℃より高温で重合した場合、急速に硬化することで硬化物に亀裂が生じるリスクがある。さらに、重合硬化後に、より高い温度で加熱処理することで、硬化物内部に生じた応力歪を緩和し、機械的強度を向上させることができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
[無機充填材(A)]
UF2.0:バリウムガラス(平均一次粒子径2.0μm、ショット社製)
UF1.5:バリウムガラス(平均一次粒子径1.5μm、ショット社製)
UF0.7:バリウムガラス(平均一次粒子径0.7μm、ショット社製)
NF180:バリウムガラス(平均一次粒子径0.180μm、ショット社製)
Ox50:微粒子シリカ(平均一次粒子径0.04μm、日本アエロジル株式会社製)
上記無機充填材及び後述の表面処理剤を用いて、後述の無機充填材の製造例1~5のようにして、無機充填材(A1)~(A5)を得た。
無機充填材(A6):SiO、Al及びZrOを含有する複合金属酸化物からなる無機充填材。詳細は、無機充填材の製造例6として後述する。
無機充填材(A7):MEK-ST:超微粒子シリカ(平均一次粒子径15nm、日産化学工業株式会社製、メチルエチルケトン分散シリカゾル)
[表面処理剤]
γ-MPS:γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)
11-MUS:11-メタクリロイルオキシドデシルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)
[重合性単量体(B-1)]
UDMA:[2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(共栄社化学株式会社製);粘度8000mPa・s/25℃
D2.6E:2,2-ビス〔4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン(エトキシ基の平均付加モル数2.6);粘度1200mPa・s/25℃
Bis-MEPP:2,2-ビス〔4-メタクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン(新中村化学工業株式会社製);粘度1000mPa・s/25℃
[重合性単量体(B-2)]
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製);粘度9mPa・s/25℃
[加熱重合開始剤(C)]
THP:1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド(τ=152.9℃、日油株式会社製)
パーヘキサV:n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)バレレート(τ=104.5℃、日油株式会社製)
BPO:ベンゾイルペルオキシド(τ=73.6℃、日油株式会社製)
[その他の重合開始剤、重合促進剤]
CQ:カンファーキノン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
DMAEMA:ジメチルアミノエチルメタクリレート(富士フイルム和光純薬株式会社製)
〔無機充填材の製造例1〕
80質量部のUF2.0及び20質量部のNF180の混合物をエタノール300質量部に分散し、γ-MPS2.25質量部、酢酸0.15質量部及び水5質量部を加えて室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって表面処理して、無機充填材(A1)を得た。
〔無機充填材の製造例2〕
100質量部のNF180をエタノール300質量部に分散し、γ-MPS7質量部、酢酸0.15質量部及び水5質量部を加えて室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって表面処理して、無機充填材(A2)を得た。
〔無機充填材の製造例3〕
100質量部のNF180をエタノール300質量部に分散し、11-MUS11質量部、酢酸0.15質量部及び水5質量部を加えて室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって表面処理して、無機充填材(A3)を得た。
〔無機充填材の製造例4〕
90質量部のUF0.7及び10質量部のAr130の混合物をエタノール300質量部に分散し、11-MUS4質量部、酢酸0.15質量部及び水5質量部を加えて室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって表面処理して、無機充填材(A4)を得た。
〔無機充填材の製造例5〕
100質量部のOx50の混合物を蒸留水300質量部に分散し、γ-MPS7質量部、酢酸0.15質量部を加えて室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理剤で表面処理された無機充填材を有する無機充填材(A5)を得た。
〔無機充填材の製造例6〕
硝酸アルミニウム(Al(NO・9HO)148.7質量部を148.7質量部の蒸留水に溶解し、AP-1(変性エタノール、日本アルコール販売株式会社製「AP-1」、エタノール87質量%、イソプロピルアルコール13%)を132.3質量部添加し均一化した後、ジルコゾールZN(硝酸ジルコニウム水溶液、第一稀元素化学工業株式会社製、ZrO含有率=25質量%)を18.1質量部添加し、溶解した。さらに、MS51(メチルシリケートオリゴマー、三菱化学株式会社製、SiO含有率=52質量%)132.3質量部を添加溶解し透明かつ均一な原料混合液を調製した。アンモニア水溶液(ナカライテスク株式会社製、NH=28質量%)の2倍希釈液1Lを撹拌機(株式会社小平製作所製、ACM-5LVTJ)に入れ、90rpmで撹拌しながら、先に調製した原料混合液添加すると、共沈ゲル化してゼリー状となった。このゲル化体を取り出し、100℃で乾燥して過剰のアンモニア、水、溶媒を除去し乾燥ゲルを得た。この乾燥ゲルを水洗し、副成した硝酸アンモニウムを除去し、再度乾燥した。この乾燥ゲル100質量部を直径1mmのアルミナボール2kgと直径8mmのアルミナボール1kgとAP-1を340質量部入れた3.6Lのアルミナポットに入れ、遊星ミル(株式会社セイシン企業製、SKF-04)で150rpm、90分間粉砕して、スラリーとした。このスラリーを乾燥して溶媒を除去した。この段階の粒子は、完成後の無機充填材における一次粒子に対応する。次にこの粉砕乾燥ゲル30質量部を直径5mmのアルミナボール300gと共にアルミナポットに入れ、遊星ミル(株式会社伊藤製作所製、LA-PO.4)で200rpm、30分間処理して、凝集させた。この凝集ゲルをアルミナ製の皿に入れ電気炉中、毎時500℃の昇温速度で1100℃まで昇温して、同温度で2時間保持した後、炉外に取り出し放冷し、焼成ゲルとして白色の粉末を得た。この焼成ゲル30質量部を、直径5mmのアルミナビーズ300質量部を入れた500mLのアルミナポットに入れ、遊星ミルで200rpm、30分間解砕してSiO、Al及びZrOを含有する複合金属酸化物からなる無機充填材とした。この無機充填材100質量部をAP-1中に懸濁し、γ-MPS10質量部を添加し時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに減圧下80℃で2時間乾燥し、減圧下110℃で1時間乾燥することによって、表面処理剤で表面処理された無機充填材を有する無機充填材(A6)を得た。
無機充填材(A1)~(A5)の組成を下記表1に示す。
Figure 0007288462000001
〔重合性単量体含有組成物の製造例1〕
95質量部のUDMA及び5質量部のTEGDMAに、加熱重合開始剤としてTHPを0.5質量部溶解させて、重合性単量体含有組成物(M1)を調製した。
〔重合性単量体含有組成物の製造例2〕
95質量部のD2.6E及び5質量部のTEGDMAに、加熱重合開始剤としてTHPを0.5質量部溶解させて、重合性単量体含有組成物(M2)を調製した。
〔重合性単量体含有組成物の製造例3〕
80質量部のBis-MEPP及び15質量部のUDMA及び5質量部のTEGDMAに、加熱重合開始剤としてTHPを0.5質量部溶解させて、重合性単量体含有組成物(M3)を調製した。
〔重合性単量体含有組成物の製造例4〕
90質量部のUDMA及び10質量部のTEGDMAに、加熱重合開始剤としてTHPを0.5質量部溶解させて、重合性単量体含有組成物(M4)を調製した。
〔重合性単量体含有組成物の製造例5〕
100質量部のUDMAに、加熱重合開始剤としてTHPを0.5質量部溶解させて、重合性単量体含有組成物(M5)を調製した。
〔重合性単量体含有組成物の製造例6〕
95質量部のUDMA及び5質量部のTEGDMAに、加熱重合開始剤としてパーヘキサVを0.5質量部溶解させて、重合性単量体含有組成物(M6)を調製した。
〔重合性単量体含有組成物の製造例7〕
70質量部のUDMA及び30質量部のTEGDMAに、加熱重合開始剤としてTHPを0.5質量部溶解させて、重合性単量体含有組成物(M7)を調製した。
〔重合性単量体含有組成物の製造例8〕
95質量部のUDMA及び5質量部のTEGDMAに、加熱重合開始剤としてBPOを0.5質量部溶解させて、重合性単量体含有組成物(M8)を調製した。
〔重合性単量体含有組成物の製造例9〕
70質量部のUDMA及び30質量部のTEGDMAに、加熱重合開始剤としてBPOを1.5質量部溶解させて、重合性単量体含有組成物(M9)を調製した。
〔重合性単量体含有組成物の製造例10〕
99質量部のUDMA及び1質量部のTEGDMAに、光重合開始剤としてCQを0.5質量部及び重合促進剤としてDMAEMAを1.0質量部溶解させて、重合性単量体含有組成物(M10)を調製した。
各重合性単量体含有組成物の製造例を下記表2に示す。
Figure 0007288462000002
〔実施例1~5、7~11、比較例1〕
各製造例で得られた無機充填材及び重合性単量体含有組成物を、表3に示す組成比で、40℃で混合練和して均一にした後、真空度50Torrで15分間脱泡して、圧力1MPaで15分かけてペーストを容器から押出し、ペースト状の歯科用硬化性組成物を製造した。次いで、該歯科用硬化性組成物を14.5mm×14.5mm×18mmの長方体型の金型に流し込みプレス真空引きにより酸素を除外し、5MPaでプレス成形した。該成形体を150℃で1時間加熱処理を行い、硬化物としての歯科用ミルブランクを得た。調製した歯科用ミルブランクについて後述の試験例1及び2により評価を実施した。結果を表3に示す。
〔実施例6〕
各製造例で得られた無機充填材(A1)及び重合性単量体含有組成物(M6)を、表3に示す組成比で、40℃で混合練和して均一にした後、真空度50Torrで15分間脱泡して、圧力1MPaで15分かけてペーストを容器から押出し、ペースト状の歯科用硬化性組成物を製造した。次いで、該歯科用硬化性組成物を14.5mm×14.5mm×18mmの長方体型の金型に流し込みプレス真空引きにより酸素を除外し、5MPaでプレス成形した。該成形体を120℃で1時間加熱処理を行い、表3に示す実施例6の歯科用ミルブランクを得た。調製した歯科用ミルブランクについて後述の試験例1及び2により評価を実施した。結果を表3に示す。
〔比較例2、3〕
各製造例で得られた無機充填材(A1)又は(A5)及び重合性単量体含有組成物(M8)又は(M9)を、表3に示す組成比で、25℃で混合練和して均一にした後、真空度50Torrで15分間脱泡して、圧力1MPaで15分かけてペーストを容器から押出し、ペースト状の歯科用硬化性組成物を製造した。次いで、該歯科用硬化性組成物を14.5mm×14.5mm×18mmの長方体型の金型に流し込みプレス真空引きにより酸素を除外し、5MPaでプレス成形した。該成形体を80℃で1時間加熱処理を行い、表3に示す比較例1、2の歯科用ミルブランクを得た。調製した歯科用ミルブランクについて後述の試験例1及び2により評価を実施した。結果を表3に示す。
〔比較例4〕
遮光下、無機充填材(A6)74質量部、無機充填材(A7)6質量部及び重合性単量体含有組成物(M10)20質量部を25℃で混合練和して均一にした後、真空度50Torrで15分間脱泡して、圧力1MPaで15分かけてペーストを容器から押出し、ペースト状の歯科用硬化性組成物を製造した。前記歯科用硬化性組成物を透明なシリコーン樹脂製の型(15mm×15mm×30mm)に充填した後、LED光源の光照射器で該型の両面から、300~500nmの波長の光を180秒間照射後、130℃で30分加熱処理し、重合硬化させて歯科用ミルブランクを作製した。調製した歯科用ミルブランクについて後述の試験例1及び2により評価を実施した。結果を表3に示す。
〔試験例1:曲げ強さ〕
各実施例及び比較例で得られた歯科用ミルブランクの曲げ強さを以下の方法により測定した。すなわち、製造した歯科用ミルブランクから、ダイヤモンドカッターを用いて、試験片(1.2mm×4mm×14mm)を作製し、#2000研磨紙で研磨した。これを万能試験機(株式会社島津製作所製、商品名「AG-I 100kN」)にセットし、クロスヘッドスピード1mm/分、支点間距離12mmの条件で3点曲げ試験法により曲げ強さを測定し(n=10)、平均値を算出した。なお、当該曲げ強さは、240MPa以上であることが好ましく、270MPa以上であることがより好ましく、300MPa以上であることがさらに好ましい。
〔試験例2:滑沢耐久性〕
各実施例及び比較例で得られた歯科用ミルブランクの滑沢耐久性を以下の方法により測定した。すなわち、製造した歯科用ミルブランクから、ダイヤモンドカッターを用いて、試験片(10mm×10mm×2mm)を作製した。綺麗な平滑面を#1000研磨紙、#2000研磨紙、#3000研磨紙の順に乾燥条件下で研磨し、最後にラッピングフィルムにて研磨した。この試験片について、歯ブラシ摩耗試験(歯ブラシ:「ビトイーンライオン」(硬さ:ふつう;ライオン株式会社製)、歯磨き粉:「デンタークリアMAX」(ライオン株式会社製)、荷重:250g、試験溶液:蒸留水/歯磨き粉=90/10(質量%、50mL)、摩耗回数:4万回)をする前及びした後のそれぞれの光沢度を光沢計(「VG-2000」、日本電色工業株式会社製)によって求めた。各実施例及び比較例について、サンプル数は2つで、1サンプル当たり光沢度を4点測定し、その平均値を光沢度とした。なお、当該光沢度として60°鏡面光沢(Gs(60°))を測定した。得られた歯ブラシ摩耗試験後の光沢度を試験前の光沢度で除すことにより光沢度保持率(%)を算出し、滑沢耐久性の評価とした。なお、当該光沢度保持率は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、93%以上であることがさらに好ましい。
Figure 0007288462000003
実施例1~11において得られた歯科用ミルブランクは高い機械的強度を有していることがわかった。さらに、滑沢耐久性が高いため、ミルブランク表面のツヤを長期間に渡って維持できることから審美にも優れることがわかった。これに対して、比較例1~4で得られた歯科用ミルブランクは機械的強度及び滑沢耐久性が低かった。
以上の結果より、本発明の歯科用硬化性組成物の硬化物は、機械的強度及び審美性に優れることがわかった。
本発明の歯科用硬化性組成物の硬化物は、機械的強度及び審美性に優れる。すなわち天然歯と置換可能な十分な機械的強度と審美性を有しており、歯の欠損部や齲蝕を修復するための材料、すなわち歯科用コンポジットレジンや歯科用ミルブランクとして好適に用いられる。

Claims (9)

  1. 無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び加熱重合開始剤(C)を含み、
    前記重合性単量体(B)が、粘度が300mPa・s/25℃以上1500000mPa・s/25℃以下である重合性単量体(B-1)を含み、さらに必要に応じて粘度が1mPa・s/25℃以上300mPa・s/25℃未満である重合性単量体(B-2)を含み、
    前記重合性単量体(B-1)と、前記重合性単量体(B-2)との質量比が、90:10~100:0であり、
    前記加熱重合開始剤(C)の10時間半減期温度(τ)が90~170℃である、歯科用硬化性組成物。
  2. 前記重合性単量体(B)100質量部に対して、前記無機充填材(A)が100~600質量部であり、前記加熱重合開始剤(C)が0.1~5質量部である、請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
  3. 前記無機充填材(A)の平均一次粒子径が0.01~5μmである、請求項1又は2に記載の歯科用硬化性組成物。
  4. 前記重合性単量体(B-1)及び前記重合性単量体(B-2)が、それぞれ独立して、(メタ)アクリレート系重合性単量体及び(メタ)アクリルアミド系重合性単量体からなる群から選ばれる1種以上の重合性単量体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科用硬化性組成物。
  5. 前記加熱重合開始剤(C)が、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、及び1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか一項に記載の歯科用硬化性組成物。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用硬化性組成物からなる、歯科用コンポジットレジン。
  7. 請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用硬化性組成物の硬化物からなる、歯科用ミルブランク。
  8. 以下の工程(1)~(3)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用硬化性組成物の製造方法。
    (1)重合性単量体(B)と加熱重合開始剤(C)を含む重合性単量体(B)含有組成物と、無機充填材(A)とを混練してペースト状組成物を作製する工程;
    (2)工程(1)で得たペースト状組成物を、真空度5~200Torrにて3~30分間保持する工程;
    (3)工程(2)の後に、ペースト状組成物を圧力0.5~5MPaにて3~30分間かけて押出す工程。
  9. 請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用硬化性組成物を、圧力1MPa以上で加圧して所望の形状に加工した後、(10時間半減期温度(τ)-20)℃~(10時間半減期温度(τ)+30)℃の温度で重合硬化させる工程を含む、歯科用ミルブランクの製造方法。
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