JP6739809B2 - 歯科用組成物、及び該歯科用組成物を用いた歯科切削加工用複合レジン材料 - Google Patents
歯科用組成物、及び該歯科用組成物を用いた歯科切削加工用複合レジン材料 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6739809B2 JP6739809B2 JP2018545092A JP2018545092A JP6739809B2 JP 6739809 B2 JP6739809 B2 JP 6739809B2 JP 2018545092 A JP2018545092 A JP 2018545092A JP 2018545092 A JP2018545092 A JP 2018545092A JP 6739809 B2 JP6739809 B2 JP 6739809B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- dental
- filler
- meth
- acrylate
- dental composition
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Classifications
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61C—DENTISTRY; APPARATUS OR METHODS FOR ORAL OR DENTAL HYGIENE
- A61C13/00—Dental prostheses; Making same
- A61C13/08—Artificial teeth; Making same
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K6/00—Preparations for dentistry
- A61K6/80—Preparations for artificial teeth, for filling teeth or for capping teeth
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K6/00—Preparations for dentistry
- A61K6/80—Preparations for artificial teeth, for filling teeth or for capping teeth
- A61K6/831—Preparations for artificial teeth, for filling teeth or for capping teeth comprising non-metallic elements or compounds thereof, e.g. carbon
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K6/00—Preparations for dentistry
- A61K6/80—Preparations for artificial teeth, for filling teeth or for capping teeth
- A61K6/831—Preparations for artificial teeth, for filling teeth or for capping teeth comprising non-metallic elements or compounds thereof, e.g. carbon
- A61K6/838—Phosphorus compounds, e.g. apatite
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K6/00—Preparations for dentistry
- A61K6/80—Preparations for artificial teeth, for filling teeth or for capping teeth
- A61K6/884—Preparations for artificial teeth, for filling teeth or for capping teeth comprising natural or synthetic resins
- A61K6/887—Compounds obtained by reactions only involving carbon-to-carbon unsaturated bonds
Landscapes
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Oral & Maxillofacial Surgery (AREA)
- Epidemiology (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Animal Behavior & Ethology (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Public Health (AREA)
- Veterinary Medicine (AREA)
- Plastic & Reconstructive Surgery (AREA)
- Dentistry (AREA)
- Dental Preparations (AREA)
- Dental Prosthetics (AREA)
Description
また、虫歯のう蝕部分を削って形成した窩洞等に、フッ化物を含む歯科材料を詰めるという歯科治療が行われている。削ったう蝕部分の大きさに合わせて修復材料が選択され、その修復材料には、歯冠材料、合着材料、接着材料、充填材料等が用いられる。
グラスアイオノマーセメントの無機フィラー成分であるフルオロアルミノシリケートガラス粉末は、歯科用複合レジン材料の原料としても用いられており、歯に詰めた後にフッ化物イオンを放出するが、フッ化物イオンの放出に伴って、材料中のその他成分も溶出することから、歯科用組成物の機械的強度が低下するという問題点があった。
特許文献2には、フッ化物イオンを放出する無機フィラーに、重合性基を有するシランカップリング材を用いて高分子が架橋された網目構造に形成された第1層、その上にリン酸系モノマーと重合性モノマーとを用いて膜状に形成された第2層、さらにその上にシランカップリング材を用いて高分子が架橋された網目構造を形成する第3層を備えた3層構造の歯科用フィラーが、歯科用複合レジン材料の強度の低下を抑えながら長期間のフッ化物イオンの放出を可能であることが開示されている。
項1.
(A)SiO2、ZrO2及びAl2O3を含有する複合金属酸化物フィラー、
(B)フッ化物を含有する無機フィラー、
(C)平均粒子径0.1μm以下の超微粒子SiO2フィラー、及び
(D)(メタ)アクリレート系重合性モノマーを
含有する歯科用組成物であって、
前記(A)複合金属酸化物フィラーが21〜61重量%であり、かつ
前記(B)フッ化物を含有する無機フィラーが7〜50重量%である、前記歯科用組成物。
項2.
前記(A)複合金属酸化物フィラーが、平均粒子径0.1〜0.9μmの一次粒子を焼結により部分的に結合させた平均粒子径が2〜8μmの二次粒子であるフィラーである、項1に記載の歯科用組成物。
項3.
前記(B)フッ化物を含有する無機フィラーが、平均粒子径0.1〜1μmの無機フィラーである、項1又は2に記載の歯科用組成物。
項4.
フッ素徐放性を有する項1〜3の何れか一項に記載の歯科用組成物。
項5.
う蝕原性細菌を抑制できる、項1〜4の何れか一項に記載の歯科用組成物。
項6.
項1〜5の何れか一項に記載の歯科用組成物を重合硬化した歯科切削加工用複合レジン材料。
項7.
(A)SiO2、ZrO2及びAl2O3を含有する複合金属酸化物フィラー、
(B)フッ化物を含有する無機フィラー、
(C)平均粒子径0.1μm以下の超微粒子SiO2フィラー、及び
(D)(メタ)アクリレート系重合性モノマーを混合する工程を含む、
項1〜5の何れか一項に記載の歯科用組成物を製造する方法。
項8.
項1〜5の何れか一項に記載の歯科用組成物を重合硬化させる工程を含む、歯科切削加工用複合レジン材料の作製方法。
本発明の歯科用組成物(以下、「歯科用複合レジン材料」ということもある)及び該歯科組成物を重合硬化した歯科切削加工用複合レジン材料は、(A)SiO2、ZrO2及びAl2O3を含有する複合金属酸化物フィラーを(以下、「A成分」ということもある。)を21〜61重量%、(B)フッ化物を含有する無機フィラー(以下、「B成分」ということもある。)を7〜50重量%、(C)平均粒子径0.1μm以下の超微粒子SiO2フィラー(以下、「C成分」ということもある。)、及び(D)(メタ)アクリレート系重合性モノマー(以下、「D成分」ということもある。)を含有する。
該複合金属酸化物フィラーは1種のみを使用することができ、又は2種以上の異なる複合金属酸化物フィラーを混合することができる。
本発明に用いる複合金属酸化物フィラーは、アルコキシシラン、加水分解可能なジルコニウム化合物及び加水分解可能なアルミニウム化合物の混合物を、ゾル−ゲル法により共沈−乾燥させてゲル体とする工程(A1工程)、該ゲル体を粉砕して微細粒子(一次粒子)とする工程(A2工程)、及び該一次粒子を焼成することで二次粒子を形成する工程(A3工程)を備え、必要に応じて、シランカップリング材によって表面処理する工程(A4工程)を備える方法により製造される。
なお、複合金属酸化物フィラーの屈折率(nD)を増加させるTiO2、CeO2、Y2O3成分等の導入も可能であるが、最終的なフィラー全重量に対して、3重量%以下の少量に留めることが望ましい。
アルカリ性溶液としては、特に限定はなく、例えば、上記原料混合溶液を溶解し、水に任意の割合で溶解し、乾燥及び加熱処理によりフィラー中に残留しない点で、アンモニア水が好ましい。アンモニア水の量は、原料混合溶液と混合した時に塩基性を示すことが必要で、一般には、pH7〜9程度、好ましくはpH8程度になる量が一つの目安となる。例えば、市販アンモニア水(含有率:35wt%)の2倍希釈程度を採用することができる。
本発明の歯科用組成物又は歯科切削加工用複合レジン材料は、フッ化物を含有する平均粒子径1μm以下の無機フィラー(以下、「フッ素フィラー」ということもある。)を配合する必要がある。
該フッ素フィラーとしては、水溶液中でフッ素イオンを放出する化合物であれば特に限定はなく、例えば、平均粒子径が0.1〜0.9μmである公知のフッ化物を含有する無機フィラーを用いることができる。具体的に、フッ素フィラーとしては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム等のアルカリ金属フッ化物;フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム等のアルカリ土類金属フッ化物;フルオロ珪酸塩等のフッ化ケイ素化合物;フッ化亜鉛化合物;モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸アンモニウム、モノフルオロリン酸アルミニウム等のフッ化リン酸化合物;これらの複合化合物等が挙げられる。中でも、フッ素フィラーとして好ましくは、フッ素フィラー(CaO 5〜30重量%、SrO 5〜30重量%、SiO2 10〜70重量%、Al2O3 10〜50重量%、ZnO 0〜20重量%、Na2O 0〜10重量%、P2O5 0〜10重量%の合計)に対して、フッ素(F)の含有量は、5〜50重量%が好ましい。該フッ素フィラーの平均粒子径は、特に限定はなく、例えば、2μm以下であればよく、0.1〜1μmの範囲が好ましい。
本発明の歯科用組成物又は歯科切削加工用複合レジン材料は、平均粒子径が0.1μm以下の超微粒子SiO2フィラー(以下、「超微粒子SiO2フィラー」ということもある。)を配合する必要がある。該超微粒子SiO2フィラーとしては、一次粒子の平均粒子径が0.1μm以下である公知のSiO2フィラーであれば特に限定はなく、例えば、コロイダルシリカ、フュームドシリカ等が挙げられる。該超微粒子SiO2フィラーの平均粒子径は、0.1μm以下であればよく、0.01〜0.1μmの範囲が好ましい。
B成分のフッ素フィラーは、必ずフッ化物を含有する無機フィラーであるのに対して、A成分及びC成分には、フッ化物が含まれていないため、3種類のフィラーの成分は明確に区別できる。
本発明の歯科用組成物及び歯科切削加工用複合レジン材料は、(メタ)アクリレート系重合性モノマー(以下、「重合性モノマー」、又は「モノマー」ということもある)を配合する必要がある。該(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味している。
本発明の歯科用組成物は、(A)SiO2、ZrO2及びAl2O3を含有する複合金属酸化物フィラー、(B)フッ化物を含有する無機フィラー、(C)平均粒子径0.1μm以下の超微粒子SiO2フィラー及び(D)(メタ)アクリレート系重合性モノマーを含み、該(A)複合金属酸化物フィラーが21〜61重量%、かつ該(B)フッ化物を含有する無機フィラーが7〜50重量%の配合割合で混合することで製造できる。
該歯科用組成物は、公知の重合(光及び加熱)方法に従って、重合させることで硬化物が得られる。
本発明の歯科切削加工用複合レジン材料(「成形体」又は「硬化体」ということもある。)は、(A)SiO2、ZrO2及びAl2O3を含有する複合金属酸化物フィラー、(B)フッ化物を含有する無機フィラー、(C)平均粒子径0.1μm以下の超微粒子SiO2フィラー及び(D)(メタ)アクリレート系重合性モノマーを含み、該(A)複合金属酸化物フィラーが21〜61重量%、かつ該(B)フッ化物を含有する無機フィラーが7〜50重量%の配合割合で混合した歯科用組成物を、金型内に充填後に重合硬化させて作製することができる。
本発明の歯科用組成物又は歯科切削加工用複合レジン材料は、歯科医師又は歯科技工が歯科修復材として利用することができる。例えば、う蝕を除去した窩洞への直接充填又は歯冠形状に成型後、上記の光照射により重合硬化して、歯科補綴物を作製することができる。また、本発明の歯科切削加工用複合レジン材料は、手作業で切削加工してもよいが、例えば、歯科用CAD/CAM装置により切削加工されるなどして、歯冠の形状の歯科補綴物を作製することができる。
1.(A)複合金属酸化物フィラーの調製
硝酸アルミニウム(Al(NO3)39H2O) 10重量部及びAP-1(変性エタノール、日本アルコール販売社製AP-1、エタノール87%、イソプロピルアルコール13%)15重量部を混合し、溶解させた。次いで、得られた溶液にジルコゾールZN(硝酸ジルコニウム水溶液、第一稀元素化学工業社製、ZrO2含有率=25wt%)を118重量部添加し、さらに、MS51(メチルシリケートオリゴマー、三菱化学社製、SiO2含有率=52wt%)280重量部及び蒸留水430重量部を添加した。その後、得られた混合物を60分間攪拌機で混合し、透明かつ均一な原料混合液を調製した。次に、アンモニア水溶液(例えば、ナカライテスク社製、NH3=28%)の2倍希釈液127重量部を、先に調製した原料混合液に攪拌しながら添加すると、共沈ゲル化してゼリー状となった。このゲル化体を取り出し、100℃で乾燥して過剰のアンモニア、水及び溶媒を除去し、乾燥ゲルを得た。この乾燥ゲルを水洗及び濾過し、副成した硝酸アンモニウムを除去し、再度乾燥した。なお、硝酸アンモニウムが多量に残留すると焼成時にガスが発生し、爆発するリスクがあるため、十分に水洗する必要がある。
アルコール溶媒(AP-1)200重量部中に、平均粒子径0.7μmのフッ化イオンを放出する歯科用ガラスフィラー(G018−090(UF0.7)、NEC SCHOTTコンポーネンツ社製)100重量部及びγ-MPTSを2重量部加えて、1時間超音波分散した。その後、アルコール溶媒をエバポレーターで除去した後、減圧下80℃で2時間乾燥し、減圧下110℃で1時間乾燥することによりシランカップリング材で表面処理されたフッ素フィラーを得た。
超微粒子SiO2フィラーである、平均粒子径15nmのコロイダルシリカフィラー溶液(MEK-ST 100、日産化学工業社製、メチルエチルケトン中にSiO2が30重量%含有)100重量部中に、γ-MPTSを10重量部加えて、1時間超音波分散した。その後、重合性モノマー(UDMA)を60重量部加えた後、溶媒をエバポレ−タ−で除去し、シランカップリング材で表面処理された超微粒子SiO2フィラーを30重量%含有するUDMAを得た。歯科切削加工用複合レジン材料は、この超微粒子SiO2フィラーを含有するUDMAを適量混合して作製する。
重合性モノマーに対して加熱重合開始剤(BPO)が1重量%になるように添加したUDMA及びDEGDMAの混合重合性モノマー(D)に、(A)複合金属酸化物フィラー、(B)フッ素フィラー及び(C)超微粒子SiO2フィラーを含有するUDMAを混合し、(D)重合性モノマー(UDMA/DEGDMA=80/20重量比)が29重量%、(A)複合金属酸化物フィラーが61重量%、(B)フッ素フィラーが7重量%及び(C1)超微粒子SiO2フィラーが3重量%含有するペーストを作製する。次いで、減圧下において、均一に混練・脱泡することで、歯科切削加工用複合レジン材料を形成するための歯科用組成物を得た。
実施例2〜7及び比較例1〜2は、表1に記載の配合割合にする以外は、実施例1と同様の方法で歯科切削加工用複合レジンを作製した。
従来技術の比較例として、既存の製品でフッ化物イオン徐放性の無いKZR-CAD ハイブリッドレジンブロック(山本貴金属地金社製)のA3/Lを用いた。これは、複合金属酸化物フィラー及び超微粒子SiO2フィラーを重合性モノマーと複合化し、重合硬化した歯科切削加工用複合レジンであり、特許文献4(特開2015-67543号公報)に基いて作製されたものである。
遮光下で重合性モノマーに対して光開始剤(CQ)が0.5重量%、重合促進剤(DMAEMA)が0.5重量%及び重合促進剤(DMBE)が1重量%になるように添加したUDMA及びBis-GMAの混合重合性モノマー(D)に、超微粒子SiO2フィラー(C1)、複合金属酸化物フィラー(A)及びフッ素フィラー(B)を混合し、重合性モノマー(D)(UDMA/Bis-GMA=88/12重量比)が25重量%、超微粒子SiO2フィラー(C1)が5重量%、複合金属酸化物フィラー(A)35重量%及びフッ素フィラー(B)35重量%含有するペーストを作製した。次いで、減圧下において、均一に混練及び脱泡することで、歯科用組成物を得た。
実施例9、10及び11は、表2に記載の配合割合で、実施例8の同様の方法により歯科切削加工用複合レジン材料(光重合型)を作製した。
実施例9、10及び11に使用した複合金属酸化物フィラーとフッ素フィラーは、γ-MPTSに代えて、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン(KBM-5803,信越シリコーン社製)を用いて表面改質されたものを用い、実施例1と同じ条件での表面処理を行った。
また、実施例10及び11には、超微粒子SiO2フィラー(C2)として平均粒子径が15nmのコロイダルシリカフィラーの他に、平均粒子径0.1μmのシリカフィラー(アドマナノYC100C-SM2,アドマテックス社製、γ-MPTS表面処理品)を添加した。
従来技術の比較例として、既存の製品でフッ化物イオン徐放性の無いハイブリッド型硬質レジン「ツイニー(商標)」(山本貴金属地金社製)のDA3シェードを用いた。これは、重合性モノマーに特定の無機フィラーを加えることにより、優れた機械的強度等の特性を付与した複合レジン材料であり、特開2005-263648号公報に記載の製法に基いて作製されたものである。
従来技術の比較例として、既存の製品でフッ化物イオン徐放性を有する歯科充填用コンポジットレジンである「ビューティフィルII(松風社製)」のA3シェードを用いた。これは、表面にセメント反応層が形成された酸反応性元素を含む無機微粒子の外側をポリシロキサンで被覆し、さらに酸性ポリマーを反応させた無機フィラーを用いたものであり、特許文献2(特開2001-139844号公報)に基いて作製されたものであると推側される。
実施例及び比較例で得られた歯科切削加工用複合レジン材料について、曲げ強さ、研磨性(研磨後の光沢性)及び虫歯菌抑制の有無は、以下の測定方法で測定した。
実施例1〜11及び比較例1〜5の歯科切削加工用複合レジン材料から、25mm×2mm×2mmの寸法の試験片を、ダイヤモンドカッターブレードを装着した切断機で切り出してして得た。この試験片を、粒度P2000の耐水研磨紙で表面を研磨した後、37℃の蒸留水に24時間浸漬後、小型万能試験機(島津製作所社製,EZ-Graph)を用いてクロスヘッドスピード1mm/min、支点間距離20mmの条件で三点曲げ試験を実施した。また、実施例8並びに比較例3及び4については、各歯科用複合レジンのペーストを25mm×2mm×2mmの金型に充填し、光重合器(デンケン・ハイデンタル社製、LEDキュアマスター)で両面から90秒間の光照射により硬化させた試験片を、粒度P2000の耐水研磨紙で表面を研磨した後、37℃の蒸留水に24時間浸漬後、三曲げ試験を実施した。なお、試験片は5個作製し、5回の測定値の平均値を曲げ強さとした。
実施例1〜11及び比較例1〜5の歯科切削加工用複合レジン材料から、歯科用切削加工装置を用い、円柱状に削り出した後、ダイヤモンドカッターブレードを装着した切断機で切り出してして直径12mm及び厚さ1mmの試験片を得た。
また、実施例8並びに比較例3及び4の歯科切削加工用複合レジン材料は、対応する歯科用組成物のペーストをそれぞれφ12mm及び厚さ1mmの金型に充填し、光重合器で両面から90秒間の光照射により硬化させて試験片を得た。各試験片は、耐水研磨紙(P2000)で両面を研磨し、24穴培養プレートのウエル試験体を設置し、う蝕原性細菌(Streptococcus mutans,以下「虫歯菌」ということもある。)の菌液(1.0×107 CFU/mL,1%スクロース含有BHI液体培地) を1mL添加後、37℃の恒温器で24時間好気培養した。
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(-)で洗浄後、試験片をクリーンなウエルに移し、PBS(-) 0.95 mL、Microbial Viability Assay Kit-WST (同仁化学社製) の試験薬0.05mLを順次添加し2時間呈色させ、450 nmにおける吸光度を測定した。試験片に虫歯菌の抑制機能が無い場合は、溶液が橙色に変化し、虫歯菌の抑制機能がある場合は、溶液の変色が抑えられる。また、この試験方法では、歯科切削加工用複合レジン材料から徐放しうる数ppmの極めて低濃度のフッ化物イオンでも、虫歯菌を抑制することが確認された。つまり、この試験方法を用いることで、歯科切削加工用複合レジン材料の虫歯菌の抑制機能の有無を評価できる。吸光度は、各3枚の試験片で測定し、その平均値を示した。評価基準は以下のとおりである。
虫歯菌抑制[有]:吸光度が0.4未満の場合であり、虫歯菌が抑制されている状態
なお、虫歯菌抑制とは、歯科切削加工用複合レジン材料から徐放されるフッ化物イオンによって、試験片上での虫歯菌の付着又は増殖を抑制している状態を示す。
直径15mm及び厚さ1mmの試験片を虫歯菌抑制試験と同様の方法で作製し、試験片の光沢度が30±1%になるまで耐水研磨紙(P1500)で研磨し、研磨用試料とした。次に歯科技工用エンジンを用いてアルミナ含有の研磨材(大榮歯科産業社製,マルチブルー)を0.02g付着させた布バフ(綿糸ポイント(103),茂久田商会社製)により、20gfで120秒間研磨した。研磨後の光沢について光沢計(VG-2000、日本電色工業社製)を用いJIS Z 8741(1997)に従い、反射角60°での光沢度を測定した。光沢度(%)は3回測定し、その平均値を示した。評価基準は以下のとおりである。
1:光沢度が65%以上であり、歯科材料として十分な光沢がある状態
2:光沢度が60%以上であり、65%以上と比べるとわずかに劣るが、実用上問題がない光沢がある状態
3:光沢度が60%以下であり、光沢が不十分であり、実用上問題がある状態。
表1に示す結果から、実施例1〜7では、209〜245MPaの高い曲げ強さを示し、表面の光沢性は全て良好であり、虫歯菌の抑制が有ることが確認された。一方、比較例2では、フッ素フィラーの増加により、硬化時にブロックの内部に気泡が残存し易くなるため、気泡の影響で曲げ強さが200MPaを下回ったと考えられる。実施例1〜4では、フッ素フィラーの配合比率が多くなるに従い、吸光度が急激に低下し、虫歯菌抑制が高くなった。なお、実施例5〜7では吸光度が一定となり、虫歯菌抑制が高い状態で安定した。この結果は、フッ素フィラーの配合比が曲げ強さと虫歯菌抑制の両方に影響を及ぼすことを示しており、フッ素フィラーの配合比を調整することで、物性と虫歯菌抑制とを両立した材料の開発が可能であることが分かった。表1の結果を総合的に考慮すると、複合金属酸化物フィラーとフッ素フィラーとの配合比率が7:3〜5:5で曲げ強さと、虫歯菌抑制が共に優れた高い値を示すため、実施例3〜5の組成が特に好ましい。また、実施例3の組成で成形した歯科切削加工複合レジン材料をCAD/CAM装置でクラウンに切削加工したところ、加工性に優れ、かつ表面の研磨が容易で十分な光沢が得られた。
比較例1は、フッ素フィラーを含まないため、虫歯菌を抑制せず、比較例2はフッ素フィラーを含むため虫歯菌を抑制するが、曲げ強さが低下した。
比較例3の既存の市販品では、実施例と同等の高い曲げ強さ(235MPa)を示したが、フッ素フィラーを含まないため、虫歯菌の抑制をせず、しかも研磨後の光沢も十分でなかった。比較例3の市販品の研磨の際には、本評価で用いたアルミナ含有の研磨材ではなく、ダイヤモンド含有の専用研磨材が指定されている。これは、比較例3に含まれている無機フィラーが、実施例に含まれている無機フィラーよりも硬いため、アルミナ含有の研磨材では十分な光沢が得られなかったと推察される。
表2に示す結果から、実施例8〜11では、曲げ強さは比較例4とは同程度であるが、表面の光沢性は良好であり、虫歯菌抑制が有ることが確認された。表1の実施例1〜7と比べて曲げ強さが低い原因は、光重合後に加熱処理を行っていないためである。歯科充填用コンポジットレジンとして使用する場合は、歯科医師が歯の窩洞部に材料を直接充填し、光照射によって重合硬化するため、臨床での使用方法を想定して実施例8では加熱処理を行わなかった。しかし、特許文献2の光重合性組成物においても、実施例の曲げ強さは150〜186MPaであり、実施例8〜11の曲げ強さの176〜192MPaは、十分な強度と考えられる。実施例9では、フィラーの表面処理剤をγ-MPTSから8−MOTSに代えることで、実施例8と比べてフィラー含有率は高くなったが、曲げ強さは向上しなかった。実施例10及び11において、超微粒子フィラーとして2種類添加することで、複合金属酸化物フィラー含有率がさらに高くなり、それに伴い曲げ強さも向上した。実施例8〜11の曲げ強さは、優れた機械的強度を有することが知られている市販品の比較例4と同等であり、フッ化物イオン徐放性を有する比較例5よりも高かった。
また、実施例8〜11の歯科切削加工用複合レジン材料を、間接修復用の歯科補綴材料(歯冠用硬質レジン等)として歯科技工士が使用する場合は、口腔外で形成するため光重合後に加熱処理を行うことも可能である。そこで、実施例8の歯科切削加工用複合レジン材料について、光重合後に追加で加熱処理(150℃、1時間)を行った場合、曲げ強さが226MPaまで向上することが確認された。
比較例4の市販品も同様に光重合後に加熱処理をすれば、220MPa以上の高い曲げ強さを得られることが知られているが、比較例3と同様に、強度は高いが虫歯菌抑制が無く、アルミナ含有の研磨材では、研磨後に十分な光沢度は得られなかった。
比較例5の市販品は、フッ化物イオンを含むイオン徐放性があることを製品の特徴の一つとしており、虫歯菌抑制が認められた。
表1の結果より、曲げ強さと虫歯菌抑制のバランスが最も良い歯科切削加工用複合レジン材料であった実施例3についてのフッ化物イオン徐放量を測定した。また、歯科切削加工用複合レジン材料として実施例8についても評価した。
実施例3及び8の歯科切削加工用複合レジン材料を用いて、直径15mm及び厚さ0.8mmの試験片を虫歯菌抑制試験と同様の方法で作製した。その表面を耐水研磨紙(P2000)で表面を研磨し、直径15mm、厚さ0.75mmのフッ化物イオン測定用試験片とした。試験片を蒸留水中に浸漬後、表3に記載の各期間におけるフッ化物イオン濃度を測定した。試験片は各3枚作製し、それぞれ測定し、その平均値を示した。
その結果、表3に示すように、浸漬1日後に最もフッ化物イオンが徐放され、その後、徐放量は減少するが、6ヶ月後まで安定的な徐放が確認された。実施例8のフッ化物イオンの徐放量は、実施例3に比べて、初期及び長期間の徐放の累計ともに約2倍であった。これは、実施例3に比べて、実施例8の方がフッ素フィラーを多く含有することと、硬化条件の違いが影響していると考察される。
Claims (10)
- (A)SiO2、ZrO2及びAl2O3を含有する複合金属酸化物フィラー、
(B)フッ化物を含有する無機フィラー、
(C)平均粒子径0.1μm以下の超微粒子SiO2フィラー、及び
(D)(メタ)アクリレート系重合性モノマーを
含有する歯科用組成物であって、
該(A)複合金属酸化物フィラーが21〜37.5重量%であり、かつ
該(B)フッ化物を含有する無機フィラーが35〜50重量%であり、
曲げ強さが176〜220MPaであり、
虫歯菌抑制試験後の450nmにおける吸光度が0.12〜0.18であり、かつ、
研磨後の光沢度(JIS Z 8741)が71〜75である、
前記歯科用組成物。 - 前記(A)複合金属酸化物フィラーが、平均粒子径0.1〜0.9μmの一次粒子を焼結により部分的に結合させた平均粒子径が2〜8μmの二次粒子であるフィラーである、請求項1に記載の歯科用組成物。
- 前記(B)フッ化物を含有する無機フィラーが、平均粒子径0.1〜1μmの無機フィラーである、請求項1又は2に記載の歯科用組成物。
- 前記(A)複合金属酸化物フィラーと、前記(B)フッ化物を含有する無機フィラーとの配合比率が、(A):(B)=5:5〜3:7である、請求項1〜3の何れか一項に記載の歯科用組成物。
- さらに、光重合開始剤を含有する、請求項1〜4の何れか一項に記載の歯科用組成物。
- フッ素徐放性を有する請求項1〜5の何れか一項に記載の歯科用組成物。
- う蝕原性細菌を抑制できる、請求項1〜6の何れか一項に記載の歯科用組成物。
- 請求項1〜7の何れか一項に記載の歯科用組成物を重合硬化した歯科切削加工用複合レジン材料。
- (A)SiO2、ZrO2及びAl2O3を含有する複合金属酸化物フィラー、
(B)フッ化物を含有する無機フィラー、
(C)平均粒子径0.1μm以下の超微粒子SiO2フィラー、及び
(D)(メタ)アクリレート系重合性モノマーを混合する工程を含む、
請求項1〜7の何れか一項に記載の歯科用組成物を製造する方法。 - 請求項1〜7の何れか一項に記載の歯科用組成物を重合硬化させる工程、及び、
得られた複合レジン材料を、アルミナを含む研磨材で研磨する工程、
を含む、歯科切削加工用複合レジン材料の作製方法。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016203180 | 2016-10-15 | ||
JP2016203180 | 2016-10-15 | ||
PCT/JP2017/037283 WO2018070544A1 (ja) | 2016-10-15 | 2017-10-15 | 歯科用組成物、及び該歯科用組成物を用いた歯科切削加工用複合レジン材料 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPWO2018070544A1 JPWO2018070544A1 (ja) | 2019-07-25 |
JP6739809B2 true JP6739809B2 (ja) | 2020-08-12 |
Family
ID=61905736
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018545092A Active JP6739809B2 (ja) | 2016-10-15 | 2017-10-15 | 歯科用組成物、及び該歯科用組成物を用いた歯科切削加工用複合レジン材料 |
Country Status (2)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6739809B2 (ja) |
WO (1) | WO2018070544A1 (ja) |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR102237491B1 (ko) * | 2018-12-28 | 2021-04-07 | (주) 베리콤 | 치과용 코팅 조성물 및 그를 포함하는 치과재료 |
WO2020195028A1 (ja) * | 2019-03-27 | 2020-10-01 | 株式会社ジーシー | 2剤型の歯科用硬化性組成物 |
CN114306094B (zh) * | 2021-12-24 | 2022-11-22 | 山东大学 | 一种牙科修复树脂组合物及其制备方法和应用 |
JP7420405B2 (ja) | 2022-05-31 | 2024-01-23 | Yamakin株式会社 | 歯科用硬化性組成物 |
CN115429701A (zh) * | 2022-06-02 | 2022-12-06 | 四川省医学科学院·四川省人民医院 | 高暴露优势海胆状氧化锌抗菌型牙科复合树脂的制备方法 |
Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP6255144B2 (ja) * | 2013-09-26 | 2017-12-27 | Yamakin株式会社 | 歯科切削加工用複合レジン材料 |
-
2017
- 2017-10-15 WO PCT/JP2017/037283 patent/WO2018070544A1/ja active Application Filing
- 2017-10-15 JP JP2018545092A patent/JP6739809B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPWO2018070544A1 (ja) | 2019-07-25 |
WO2018070544A1 (ja) | 2018-04-19 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6739809B2 (ja) | 歯科用組成物、及び該歯科用組成物を用いた歯科切削加工用複合レジン材料 | |
EP2881077B1 (en) | Method for manufacturing dental mill blank | |
JP4782251B2 (ja) | 歯科用硬化性組成物及びそれを用いたコンポジットレジン | |
JP2868448B2 (ja) | 重合性歯科材料 | |
CN102665605B (zh) | 牙科用组合物、铣削块和方法 | |
JP5148696B2 (ja) | 歯科用組成物及びコンポジットレジン | |
JP6116520B2 (ja) | 改善された透明性を有する長期耐用の歯科材料 | |
JP2001302429A (ja) | 凝集物を含有する歯科用複合組成物 | |
JP6255144B2 (ja) | 歯科切削加工用複合レジン材料 | |
US11400028B2 (en) | Dental milling blank for the production of permanent indirect restorations and computer-aided process for producing the permanent indirect restorations | |
JP7191387B2 (ja) | 歯科用硬化性組成物 | |
JP4895443B2 (ja) | 歯科用硬化性組成物 | |
JPWO2019189698A1 (ja) | 歯科切削加工用レジン系ブロック | |
JP3481660B2 (ja) | 充填材および充填材を含む歯科用複合材料 | |
JP2019507139A (ja) | 重合性樹脂と充填剤との間に屈折率差をもたらすナノ粒子を含む歯科用組成物 | |
JP6615549B2 (ja) | 歯科用硬化性組成物 | |
CN107411974B (zh) | 牙科复合树脂填料用的具有纳米结构的填料粉的制备方法 | |
JPH0641404B2 (ja) | 人工歯材料 | |
JP6806547B2 (ja) | 歯科用硬化性組成物 | |
JP7422994B2 (ja) | 歯科用硬化性組成物 | |
JP4502673B2 (ja) | フィラー、該フィラーを用いた複合レジン、及び該複合レジンを用いた歯科補綴物 | |
JP2016153382A (ja) | 歯科用硬化性組成物 | |
JP7420405B2 (ja) | 歯科用硬化性組成物 | |
JP7261555B2 (ja) | 接着性を向上させた歯科切削用レジン硬化体 | |
JP3421072B2 (ja) | 歯科用充填組成物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20190411 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20200218 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20200410 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20200604 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20200623 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20200716 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6739809 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |