JP5546790B2 - 歯科用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、歯科医療の分野において、天然歯の一部分又は全体を代替し得る歯科材料、特に歯科用コンポジットレジンとして好適に使用できる歯科用組成物に関する。
重合性単量体、無機充填材及び重合開始剤から構成される歯科用組成物は、コンポジットレジンと呼ばれ、歯の欠損部や虫歯を充填修復するための材料として今日最も多用される歯科材料となっている。このような歯科用組成物においては、以下のような特性が要求される。すなわち、重合硬化後の硬化物においては、天然歯と置換可能な十分な機械的強度、硬度、口腔内での噛み合わせに対する耐磨耗性、表面の滑沢性、天然歯との色調適合性、透明性等である。またさらには、重合硬化前のペースト状態では、適度な流動性や付形性がある、歯科用インスツルメントに付着しない、べとつかない等、臨床医が扱いやすい(操作性が高い)ことが望まれている。
このような歯科用組成物の特性は、それに用いられる無機充填材の材質、形状、粒子径、さらには該充填材の含有量に大きく影響を受ける。たとえば平均粒子径が1μm以上の粒径の大きい無機充填材を用いた場合には、重合性単量体中への充填率を上げやすく、硬化物の十分な機械的強度と、高いペーストの操作性が得られるものの、仕上げ研磨しても十分な光沢が得られにくいという問題がある。一方、平均粒子径が1μmより小さい無機超微粒子充填材を用いると、硬化物の研磨滑沢性や口腔内での滑沢性の耐久性は改善されるが、該無機超微粒子充填材を重合性単量体へ混練した際に、ペーストの粘度上昇が著しく、充填材の含有量を上げることが困難となり、硬化物の機械的強度が低くなったり、重合前のペースト状組成物がベトついたりして操作性が悪くなるという問題がある。このような事情により、硬化物の機械的強度、研磨滑沢性、及びペーストの操作性をバランスよく高めることは困難となっている。
近年、歯科用コンポジットレジンの開発は、無機超微粒子を主要構成成分として研磨滑沢性を確保した上で、従来の問題とされるペーストのべた付きや機械的強度の不足を改良する方法が検討されてきた。例えば、下記の特許文献1には、0.01〜0.05μmの平均粒子径の超微粒子シリカと重合性単量体とを混合して重合硬化させた後に粉砕して得られた、1〜30μmの平均粒子径の有機−無機複合充填材を使用した歯科用コンポジットレジンが記載されている。
特許文献2には平均粒子径が1μm以下の二酸化珪素と、少なくとも一種の他の金属酸化物の凝集物を充填材として使用した歯科用コンポジットレジンが記載され、具体的には、シリカ粒子を含む市販のゾルとオキシ硝酸ジルコニウムの混合溶液を乾燥、熱処理して得られた粒子径が20μm程度のシリカ系微粒子を主成分とする凝集物を充填材として用いている。
特許文献3には、1次粒子径が1〜250nmであるシリカ及びシリカを除く少なくとも1種の金属酸化物の熱処理された凝集物を充填材として使用する技術、具体的には、例えば、平均粒子径が15nmのシリカゾルと平均粒子径が23nmのジルコニアゾルを混合し、噴霧乾燥及び熱処理して得られたシリカ系微粒子とジルコニア微粒子が混ざった凝集物を充填材として用いている。
特許文献4には、アルコキシシランの加水分解溶液と周期律表第II族、第III族、第IV族元素の少なくとも1種類の加水分解可能な有機金属化合物の溶液との混合溶液から調製された、シリカと周期律表第II族、第III族、第IV族元素の少なくとも1種の金属からなる無機酸化物の、平均粒子径0.01〜1μmの1次粒子からなる凝集粒子であって、平均粒子径が1〜100μmの範囲にある凝集粒子の充填材が開示されている。
特開昭63−88110号公報 特開平7−196428号公報 特開2001−302429号公報 特開平10−306008号公報
特許文献1に記載された超微粒子シリカを有機−無機複合充填材として配合した歯科用コンポジットレジンでは、有機−無機複合充填材自身の粒径が大きいことから、ペーストの著しい粘度上昇とベタつきが改善され、硬化物の機械的強度も向上している。しかし、実質的な無機充填材含有量を十分に上げることができず、さらに有機−無機複合充填材表面と、これと併せて用いられる重合性単量体とは、実質的に化学結合による一体化が出来ないことから、該充填材と重合性単量体界面との結合力が乏しく、該コンポジットレジンの硬化物の機械的強度には改善の余地があった。
また、特許文献2、3及び4に記載された歯科用組成物では、シリカの微粒子を、酸化ジルコニウム等の金属酸化物の微粒子等と共に凝集させてミクロン単位以上の大きさの凝集粒子に調製し、見かけ上、粒径の大きな粒子を充填材として用いている。これにより、ペースト性状が改善され、硬化物の機械的強度も向上している。しかし、無機充填材含有量は依然として低いレベルに止まることもあり、機械的強度に改善の余地があった。さらに、これらの充填材はミクロ領域では不均一な構造であるため、歯科用重合性単量体と混合して歯科用組成物とした際に内部での光散乱により白化することがあり、透明性にも改善の余地があった。
本発明は、従来技術が抱える上記の課題を解決すべくなされたものであって、その目的とするところは、硬化物の機械的強度、研磨滑沢性、及び透明性に優れ、かつペーストの操作性が良好な歯科用組成物を提供することにある。本発明はまた、硬化物の機械的強度、研磨滑沢性、及び透明性に優れ、かつペーストの操作性が良好なコンポジットレジンを提供することを目的とする。
上記課題を解決した本発明は、重合性単量体成分(A)、
シリカ系微粒子と、当該シリカ系微粒子の表面を被覆する、ジルコニウム原子、珪素原子及び酸素原子を含有する酸化物とを含む非晶質の充填材(B)、及び
重合開始剤(C)を含んでなる歯科用組成物であって、
前記重合性単量体成分(A)が、水酸基を有する芳香族重合性単量体(a)、水酸基を有しない芳香族重合性単量体(b)、及び脂肪族重合性単量体(c)を含み、
前記重合性単量体成分(A)中において、重合性単量体(a)、(b)、及び(c)の含有量が、(a)20〜60質量%、(b)20〜60質量%、及び(c)5〜45質量%である歯科用組成物である。
本発明においては、前記重合性単量体(a)及び前記重合性単量体(b)が、ビスフェノールA骨格を有することが好ましい。前記重合性単量体成分(A)を重合させた場合に、その重合体の屈折率が1.52〜1.58であり、かつ充填材(B)の屈折率が1.52〜1.58であることが好ましい。前記シリカ系微粒子は、2〜300nmの平均粒子径を有することが好ましい。
前記充填材(B)において、前記酸化物の被覆が、複数のシリカ系微粒子を被覆していることが好ましい。このとき、前記シリカ系微粒子の酸化物の被覆、及び当該シリカ系微粒子に近接するシリカ系微粒子の酸化物の被覆が、伸長して互いに連結した構造を、充填材(B)が有することが好ましい。また、前記酸化物の被覆を有する複数のシリカ系微粒子が、当該酸化物の被覆において連結して凝集した、多孔質状の粒子構造を充填材(B)が有することが好ましい。
前記充填材(B)は、焼成体であることが好ましい。前記充填材(B)が、前記酸化物の被覆の上に、有機珪素化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、及び有機アルミニウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物の表面処理層をさらに含むことが好ましい。
本発明の歯科用組成物は、さらに重合促進剤(D)を含むことが好ましい。
本発明はまた、上記の歯科用組成物を用いたコンポジットレジンである。
本発明の歯科用組成物によれば、高い機械的強度を有する硬化物が得られる。また、硬化物が高い研磨滑沢性と透明性を有するため、本発明の歯科用組成物を用いた歯科材料は、審美性に優れたものとなる。また、本発明の歯科用組成物は、ペーストの操作性が良好で適度な流動性や付形性を有し、歯科用インスツルメントへの付着、べとつきが抑制されており、取り扱い性に優れている。本発明の歯科用組成物は、特にコンポジットレジンとして好適に用いることができ、当該コンポジットレジンは、硬化物の機械的強度、研磨滑沢性、及び透明性に優れ、かつペーストの操作性が良好なコンポジットレジンとなる。
乾燥工程を経た後の充填材(B)の一例のSEM写真(×50万)である。 乾燥工程を経た後の充填材(B)の別の例のSEM写真(×30万)である。
本発明に用いられる重合性単量体成分(A)は、水酸基を有する芳香族重合性単量体(a)、水酸基を有しない芳香族重合性単量体(b)、及び脂肪族重合性単量体(c)を含む。
本発明において「重合性単量体」とは、少なくとも1個の重合性基を有する化合物のことをいい、歯科用組成物においては一般的にラジカル重合が行われるため、当該重合性基は、通常、ラジカル重合可能な基である。重合性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基が好ましく、重合性単量体の入手が容易であるという観点から(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましく、生体に対する安全性の観点から、メタクリロイルオキシ基がさらに好ましい。
本発明において「芳香族重合性単量体」とは、少なくとも1個の芳香環を有する重合性単量体のことをいう。芳香環は、ベンゼン環、縮合ベンゼン環(例、ナフタレン等)、非ベンゼン系芳香環、複素芳香環(例、ピリジン環、ピロール環)のいずれであってもよく、好ましくは、ベンゼン環である。
本発明において「脂肪族重合性単量体」とは、芳香環を有していない重合性単量体のことをいう。
水酸基を有する芳香族重合性単量体(a)は、少なくとも1個の水酸基、少なくとも1個の芳香環、及び少なくとも1個の重合性基を有する重合性単量体であり、水酸基、芳香環、及び重合性基の数に特に制限はない。入手容易性及び歯科用組成物の硬化物の機械的強度の観点から重合性基の数は、1〜6個が好ましく、2〜4個がより好ましい。入手容易性及び歯科用組成物の親水性の観点から、水酸基の数は1〜3個が好ましい。入手容易性及び歯科用組成物の硬化物の機械的強度の観点から、芳香環の数は1〜3個が好ましく、より好ましくは2個であり、重合性単量体(a)がビスフェノールA骨格(ビスフェノールAの2つの水酸基の水素を除いた構造)を有していることが特に好ましい。このような重合性単量体(a)の例としては、2,2−ビス[4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン(以降、Bis−GMAと記載する場合がある)、2−[4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]−2−[4−〔2,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ〕フェニル]プロパン(以降、Bis3と記載する場合がある)、2−[4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]−2−〔4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル〕プロパン、2−[4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]−2−〔4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル〕プロパン、2−[4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]−2−〔4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル〕プロパン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を適宜組合せて用いることができる。これらのうち、歯科用組成物の硬化物の機械的強度の観点から、Bis−GMAが好ましい。
重合性単量体(a)の含有量としては、歯科用組成物の硬化物の機械的強度の観点から、重合性単量体成分(A)(100質量%)中において、20〜60質量%であり、好ましくは25〜55質量%であり、より好ましくは30〜50質量%である。
水酸基を有しない芳香族重合性単量体(b)は、少なくとも1個の芳香環及び少なくとも1個の重合性基を有し、水酸基を有しない重合性単量体であり、芳香環及び重合性基の数に特に制限はない。入手容易性及び歯科用組成物の硬化物の機械的強度の観点から重合性基の数は、1〜6個が好ましく、2〜4個がより好ましい。入手容易性及び歯科用組成物の硬化物の機械的強度の観点から、芳香環の数は1〜3個が好ましく、より好ましくは2個であり、重合性単量体(b)がビスフェノールA骨格を有していることが特に好ましい。このような重合性単量体(b)の例としては、式(I):
Figure 0005546790
(式中、R1及びR2はそれぞれ、水素原子又はメチル基であり、m及びnはエトキシ基の平均付加モル数を示す0又は正の数であり、mとnの和は好ましくは1〜6、より好ましくは2〜4である)で表される化合物、例えば、m+n=2.6である2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン(以降、D2.6Eと記載する場合がある)、m+n=6である2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン(2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル〕プロパン、以降、D6Eと記載する場合がある)、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル〕プロパン(m+n=0)、2−〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕−2−〔4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル〕プロパン(m+n=1)、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン(m+n=2)、2−〔4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル〕−2−〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン(m+n=3)、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル〕プロパン(m+n=4)、2−〔4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル〕−2−〔4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル〕プロパン(m+n=5)、等が挙げられる。また、重合性単量体(b)としては、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル〕プロパン、2−〔4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル〕−2−〔4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル〕プロパン等を用いることもできる。これらは単独で又は2種以上を適宜組合せて用いることができる。中でも、重合性単量体の性状(析出性等)の観点から、D2.6E及びD6Eが好ましい。
重合性単量体(b)の含有量は、歯科用組成物の硬化物の機械的強度と操作性の観点から、重合性単量体成分(A)(100質量%)中において、20〜60質量%であり、好ましくは20〜50質量%であり、より好ましくは20〜40質量%である。
脂肪族重合性単量体(c)は、芳香環を有していない重合性単量体であれば特に制限なく使用することができる。入手容易性及び歯科用組成物の硬化物の機械的強度の観点から、重合性基の数は、1〜6個が好ましい。脂肪族重合性単量体(c)は、水酸基を有しない脂肪族重合性単量体(c−1)であっても水酸基を有する脂肪族重合性単量体(c−2)であってもよい。
重合性単量体(c−1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(以降、3Gと記載する場合がある)、1,2−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)クリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)クリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート(以降、DDと記載する場合がある)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジ(メタ)アクリレート(以降、UDMAと記載する場合がある)、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンが挙げられる。
重合性単量体(c−2)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を適宜組合せて用いることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの総称である。
重合性単量体(c)の含有量は、操作性の観点から、重合性単量体成分(A)(100質量%)中において、5〜45質量%であり、好ましくは10〜40質量%であり、より好ましくは10〜35質量%である。
本発明では、上記のような構成を有する重合性単量体成分(A)を、後述する新規な充填材(B)と組み合わせて用いることにより、歯科用組成物が極めて高い透明性を奏するだけでなく、高いペーストの操作性を同時に達成することができる。また充填材(B)と組み合わせて用いる際により高い透明性が得られるという観点から、重合性単量体成分(A)を重合した場合の、その重合体の屈折率が1.52〜1.58であることが好ましい。なお、重合体の屈折率は、重合性単量体の屈折率よりやや高くなるのが通常であるため、上記重合体の屈折率を1.52〜1.58の範囲に制御するには、重合性単量体成分(A)の屈折率が1.52〜1.58よりやや低い値となるよう、重合性単量体(a)〜(c)の種類を選択し、含有量を調整すればよい。
本発明においては、シリカ系微粒子と、当該シリカ系微粒子の表面を被覆する、ジルコニウム原子、珪素原子及び酸素原子を含有する酸化物とを含む非晶質の充填材(B)を用いる。
シリカ系微粒子とは、酸化物換算でSiO2を80モル%以上含有する微粒子のことをいう。SiO2以外の成分は、本発明の効果を阻害しない成分であれば特に制限がなく、例えば、TiO2、ZrO2、Al23、Na2O等が挙げられる。SiO2の含有量は90モル%以上が好ましく、実質的に(すなわち不可避的不純物を除いて)100モル%であることが好ましい。シリカ系微粒子の平均粒子径は、2〜300nmであることが好ましい。平均粒子径が2nm未満では、最終的に歯科用組成物の硬化物の機械的強度が不十分となるおそれがあり、300nmを超えると、歯科用組成物を用いて歯を修復した場合に、研磨滑沢性が不十分となるおそれがある。なお、シリカ系微粒子の平均粒子径は、動的散乱法により求めることができる。例えば、シリカ微粒子を含む水分散ゾル(固形分含有量20重量%)7.0gを長さ3cm、幅2cm、高さ2cmの透過窓付き円柱状ステンレスセルに入れて、動的散乱法による超微粒子粒度分析装置(Honeywell社製、型式9340-UPA150)を用いて、粒子径分布を測定し、これより平均粒子径を算出することができる。
なお、本発明において「非晶質」とは、無機粉末をX線回折装置(リガク社製RINT−1400、X線回折法)を用いて、下記条件によりX線回折ピークを測定しても、回折ピークが認められないことを意味する。
〔X線回折の測定条件〕
2θ:10〜70°
スキャンスピード:2°/min
管電圧:30kV
管電流:130mA
シリカ系微粒子の表面を被覆する酸化物は、ジルコニウム原子、珪素原子及び酸素原子を含有するものである。当該酸化物は、チタン原子、アルミニウム原子等をさらに含んでいてもよい。このような酸化物がシリカ系微粒子の表面を被覆することにより、充填材(B)の屈折率が重合性単量体の屈折率と近似するため、歯科用組成物の透明性が優れたものとなると共に、歯科用組成物の硬化物の機械的強度が優れたものとなる。
該酸化物の構造の具体例を以下に示す。
Figure 0005546790
Figure 0005546790
Figure 0005546790
充填材(B)において、酸化物の被覆は、シリカ系微粒子を1個ずつ被覆してもよいし、複数のシリカ系微粒子を被覆していてもよい。好ましい形態では、酸化物の被覆は、複数のシリカ系微粒子を被覆する。このとき、シリカ系微粒子の酸化物の被覆と、当該シリカ系微粒子に近接するシリカ系微粒子の酸化物の被覆とが、互いに連結した構造を充填材(B)が有するが、シリカ系微粒子の酸化物の被覆、及び当該シリカ系微粒子に近接するシリカ系微粒子の酸化物の被覆が、伸長して互いに連結した構造を充填材(B)が有することが好ましい。このように、酸化物の被覆によってシリカ系微粒子が連結している場合には、シリカ系微粒子が分子間力により凝集している場合よりも、シリカ系微粒子同士が強く結合した状態にある。従って、このような充填材(B)を歯科材料に用いると、機械的強度をより高めることができる。さらに、歯科材料が磨耗する際には、酸化物の被覆の連結部が破断することにより、充填材(B)の一部分のみが脱落するため、研磨滑沢性もより高くなる。ここで、当該連結構造の外形において、酸化物の被覆が連結する部分が、酸化物がシリカ系微粒子を被覆している部分よりも細くなっている、言い換えると、酸化物の被覆が連結する部分の太さが、その太さ方向におけるシリカ系微粒子の最大寸法と2箇所の酸化物の被覆の厚さとの和よりも小さいことが、研磨滑沢性の観点から好ましい。
また、当該充填材(B)の構造においては、1個のシリカ系微粒子の酸化物の被覆に、当該シリカ系微粒子と近接する複数のシリカ系微粒子の酸化物の被覆が連結していることがさらに好ましい。このとき、充填材(B)は、1個のシリカ系微粒子が中心となって、複数のシリカ系微粒子が酸化物の被覆を介してそれに連結した、テトラポッド型、星型等の構造を有していてもよく、また、1個のシリカ系微粒子と酸化物の被覆を介して連結したシリカ系微粒子が、さらに別のシリカ系微粒子と連結していくことにより形成されるような、分岐した三次元ネットワーク状の構造を有していてもよい。この三次元ネットワーク状の構造では、分岐の先端部、分岐点にシリカ系微粒子が存在しており、また、分岐の先端部及び分岐点以外にもシリカ系微粒子が存在していてもよい。充填材(B)は、前記酸化物の被覆を有する複数のシリカ系微粒子が、当該酸化物の被覆において連結して凝集した、多孔質状の粒子構造を有することが特に好ましい。本発明に用いられる充填材(B)の例として、そのSEM写真を図1及び図2に示す。
酸化物の被覆体の厚さは、上記シリカ系微粒子の粒径、後述の表面処理層の厚さ、及び後述の充填材(B)の粒径を考慮して適宜設定すればよい。
充填材(B)は必要に応じて、酸化物の被覆体の上に、有機珪素化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、及び有機アルミニウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物の表面処理層をさらに含んでいてもよい。この表面処理層により、充填材(B)の屈折率を調整することができ、また樹脂成分への分散性及び密着性を向上させることができる。有機金属化合物を2種以上使用する場合は、2種以上の有機金属化合物の混合物の表面処理層としてもよいし、複数の有機金属化合物層が積層した複層構造の表面処理層としてもよい。
有機珪素化合物としては、R3 nSiX4-nで表される化合物が挙げられる(式中、R3は、炭素数1〜12の置換又は無置換の炭化水素基であり、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は水素原子を示し、nは、0〜3の整数である。R3及びXが複数ある場合にはそれぞれ、同一でも異なっていてもよい。)。
具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリメトキシシラン((メタ)アクリロキシ基と珪素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリエトキシシラン((メタ)アクリロキシ基と珪素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等)等が挙げられる。
この中でも、重合性単量体成分(A)と共重合し得る官能基を有するカップリング剤、例えばω−(メタ)アクリロキシアルキルトリメトキシシラン((メタ)アクリロキシ基と珪素原子との間の炭素数:3〜12)、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリエトキシシラン((メタ)アクリロキシ基と珪素原子との間の炭素数:3〜12)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が特に好ましく用いられる。
有機チタン化合物としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート等が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニルアセテート等が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム有機酸塩キレート化合物等が挙げられる。
充填材(B)の平均粒子径としては、100〜50000nm(50μm)が好ましく、500〜30000nmがより好ましく、1000〜20000nmが特に好ましい。平均粒子径が100nm未満では、最終的に歯科用組成物の硬化物の機械的強度が不十分となるおそれがあり、50000nmを超えると、ペーストのたれが大きくなり操作性を損なうおそれがある。
なお、充填材(B)の平均粒子径は、レーザー回折散乱法により、求めることができる。具体的に例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2100:島津製作所製)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて測定することができる。充填材(B)が凝集粒子であった場合には、上記の平均粒子径は、凝集粒子の平均粒子径である。
充填材(B)の屈折率としては、1.52〜1.58が好ましい。充填材(B)の屈折率が係る範囲にあれば、重合性単量体成分(A)の屈折率を1.52〜1.58とした際に、両者の屈折率を一致させやすく、歯科用組成物の硬化物の透明性を高くすることが容易である。なお、充填材(B)の屈折率は、酸化物中の金属元素の比率を調整する、上記表面処理層を設ける等によって、制御することができる。
充填材(B)の配合量としては、重合性単量体成分(A)100質量部に対して50〜1900質量部が好ましく、100〜1400質量部がより好ましく、200〜900質量部が特に好ましい。本発明の歯科用組成物においては、充填材(B)がシリカ系微粒子の表面をジルコニウム原子、珪素原子及び酸素原子等を含む酸化物で被覆した構造であるため、充填材(B)の配合量を高く設定することができ、それにより、機械的強度をより高めることも可能である。
充填材(B)の製造方法には特に制限はないが、例えば、充填材(B)は、次の各工程に処することによって製造することができる。
(1)酸化ジルコニウム水和物を含む水溶液に、アルカリ金属の水酸化物と過酸化水素を添加して攪拌することにより、該酸化ジルコニウム水和物を解膠して溶解させた混合水溶液を調製する工程。
(2)平均粒子径2〜300nmのシリカ系微粒子を水に分散させたシリカゾルに、前記工程(1)で得られた混合水溶液と珪酸液の水溶液を撹拌しながら添加する工程。
(3)前記工程(2)で得られた混合水溶液を陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリする工程。
(4)前記工程(3)で得られた混合水溶液を反応容器中に入れて、100〜350℃の温度で水熱処理して、シリカ系微粒子の表面が少なくともジルコニウム原子、珪素原子及び酸素原子を含有する酸化物で被覆された充填材(B)を含む混合水溶液を調製する工程。
(5)前記工程(4)で得られた混合水溶液中に含まれる充填材(B)を乾燥する工程。
前記工程(1)で使用される酸化ジルコニウム水和物(ZrO2・xH2O)は、ジルコニウム塩を水溶液中で加水分解する、あるいはジルコニウム塩の水溶液中にアルカリ又はアンモニアを添加して中和反応を起こさせる等、従来公知の方法で調製することができる。たとえば、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム、オキシ炭酸ジルコニウム及びアンモニウムオキシ炭酸ジルコニウムから選ばれた1種又は2種以上のジルコン酸塩の水溶液に、アンモニア又はアンモニア水を撹拌下で添加して得られる中和反応物を洗浄したものなどがある。
前記工程(1)で使用されるアルカリ金属水酸化物(M2O)としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどがあるが、中でも水酸化カリウムを使用することが好ましい。
このアルカリ金属水酸化物は、前記酸化ジルコニウム水和物に対して、モル比(M2O/ZrO2・xH2O)が1/1〜10/1となるような割合で添加することが好ましい。
また、前記工程(1)で使用される過酸化水素(H22)は、前記酸化ジルコニウム水和物に対して、モル比(H22/ZrO2・xH2O)が5/1〜30/1となるような割合で添加することが好ましい。
前記工程(2)で使用されるシリカゾルとしては、平均粒子径が2〜300nmのシリカ系微粒子を含むものであれば、市販のもの(例えば、触媒化成工業(株)製SI-30等)を使用することができる。また、前記シリカゾル中に含まれるシリカ系微粒子の濃度は、0.5〜5重量%の範囲にあることが好ましい。
前記工程(2)で使用される珪酸液の水溶液(以下、単に「珪酸液」という場合がある)としては、珪酸ナトリウム(水ガラス)、珪酸カリウム等のアルカリ金属珪酸塩、第4級アンモニウムシリケート等の有機塩基の珪酸塩などの珪酸塩水溶液を陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリしたものがある。
この珪酸液の水溶液の中でも、pHが2〜4の範囲にあり、珪素成分の含有量がSiO2換算基準で0.5〜5重量%の範囲にあるものを使用することが好ましい。
前記工程(1)で得られる混合水溶液-(1)及び前記珪酸液は、該混合水溶液-(1)中に含まれるジルコニウム成分をZrO2で表し、前記珪酸液中に含まれる珪素成分をSiO2-(1)で表したとき、モル比(ZrO2/SiO2-(1))が1/16〜1/1となるようにそれぞれ調整して、前記シリカゾル中に共にゆっくりと添加することが好ましい。
また、前記シリカゾル中へのこれらの添加量は、該シリカゾル中に含まれるシリカ系微粒子上への被覆度合いによっても異なるが、該シリカ系微粒子をSiO2-(2)で表したとき、重量比{(ZrO2/SiO2-(1))/SiO2-(2)}が7/100〜15/10の範囲にあることが好ましい。なお、前記シリカゾルは、これらを添加する前に、あらかじめ70〜95℃の温度に加熱しておくことが好ましい。
このようにして、前記シリカゾル中に前記混合水溶液-(1)及び前記珪酸液の水溶液を撹拌しながら添加すると、この混合水溶液-(2)中で前記ジルコニウム成分と前記珪素成分の加水分解反応が起こって、前記シリカゾル中に含まれるシリカ系微粒子の表面が、前記成分の部分加水分解物や加水分解物で被覆される。
強いアルカリ性を呈する前記混合水溶液-(1)の添加に伴い、前記混合水溶液-(2)中のpHは経時的に高まるので、該混合水溶液のpHが11に近づいた段階で、前記混合水溶液-(1)と前記珪酸液の添加を中止することが望ましい。ここで、前記pHが11を超えると、前記シリカゾル中に含まれるシリカ系微粒子がアルカリにより混合水溶液-(2)中に溶解し始めるので、好ましくない。
よって、pHが11になった段階で前記混合水溶液-(2)及び前記珪酸液の添加が完了していない場合は、以下に述べる工程(3)に処して脱アルカリした後、この操作を再度又は繰り返して行うことが好ましい。
前記工程(3)では、前記工程(2)で得られた混合水溶液-(2)を陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリする。ここで使用される陽イオン交換樹脂としては、特に制限されるものではないが、三菱化学(株)製のSK1BH等の陽イオン交換樹脂を使用することが好ましい。
また、この工程では、前記混合水溶液-(2)を該混合水溶液のpHが7.0〜10.0となるように脱アルカリ処理することが好ましい。
前記工程(4)では、前記工程(3)で得られた混合水溶液-(3)を反応容器中に入れて、100〜350℃の温度で水熱処理する。ここで、前記反応容器としては、0.5〜16.5MPaの圧力に耐える耐圧・耐熱容器であれば特に制限されるものではないが、ステンレススチール製のオートクレーブを用いることが好ましい。
このようにして、シリカ系微粒子の表面が少なくともジルコニウム原子、珪素原子及び酸素原子を含有する酸化物で被覆された充填材(B)を含有する混合水溶液-(4)が得られる。
前記工程(5)では、前記工程(4)で得られた混合水溶液-(4)中に含まれる、充填材(B)からなる固形分を乾燥する。ここで、前記混合水溶液-(4)中に含まれる固形分は、従来より一般的に用いられている乾燥工程、たとえば該固形分を濾過分離した後、必要に応じて純水又は蒸留水で洗浄してから80〜250℃の温度で熱風乾燥する工程などに供して乾燥することができる。
この熱風乾燥工程から得られる乾燥体は、必要に応じてすり鉢やボールミル等を用いた粉砕工程に供してその粒子径を調整することが望ましい。得られる乾燥体の部分構造は、例えば、図1に示すように、シリカ系微粒子を被覆する酸化物及び近接するシリカ系微粒子を被覆する酸化物が、伸長して互いに連結した構造をとることによって、酸化物の被覆が複数のシリカ系微粒子を被覆している構造を有している。また、得られる乾燥体の全体構造は、例えば、図2に示すように、前記酸化物の被覆を有する複数のシリカ系微粒子が、当該酸化物の被覆において連結して凝集した、多孔質状の粒子構造を有している。
このようにして、本発明に用いられる充填材(B)を、非晶質の乾燥粉体又はその粉砕物として得ることができる。
本発明に用いられる充填材(B)としては、上記で得られた非晶質の乾燥粉体又はその粉砕物をそのまま使用してもよいが、機械的強度や耐磨耗性などを高めるという観点から、300〜900℃の温度で焼成することが好ましい。焼成の方法としては、公知の方法を何ら制限なく用いることができるが、好ましくは石英坩堝を用いて電気炉中で焼成する方法を選択することができる。
このように前記非晶質の乾燥粉体を焼成して、充填材(B)の焼成体(非晶質の焼成粉体)を容易に得ることができる。焼成体の粒子形状は、その形態収縮が一部見られるものの、前記非晶質の乾燥粉体の形状とほぼ同じである。従って、充填材(B)の焼成体も、前記酸化物の被覆を有する複数のシリカ系微粒子が、当該酸化物の被覆において連結して凝集した、多孔質状の粒子構造を有し得る。焼成工程で得られた焼成体は、必要に応じてすり鉢やボールミル等を用いた粉砕工程に供してその粒子径を調整するとよい。
本発明に用いられる重合開始剤(C)は、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられる。特に、光重合及び化学重合の重合開始剤が、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用される。
光重合開始剤としては、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、水溶性アシルホスフィンオキサイド類、チオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩、ケタール類、α−ジケトン類、ベンゾインアルキルエーテル化合物類、α−アミノケトン系化合物などが挙げられる。
上記光重合開始剤として用いられる(ビス)アシルホスフィンオキサイド類のうち、アシルフォスフィンオキサイド類としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネートなどが挙げられる。ビスアシルフォスフィンオキサイド類としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
上記光重合開始剤として用いられる水溶性アシルフォスフィンオキサイド類は、アシルフォスフィンオキサイド分子内にアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ピリジニウムイオン又はアンモニウムイオンを有することが好ましい。例えば、水溶性アシルフォスフィンオキサイド類は、欧州特許第0009348号明細書又は特開昭57−197289号公報に開示されている方法により合成することができる。
上記水溶性アシルフォスフィンオキサイド類の具体例としては、モノメチルアセチルフォスフォネート・ナトリウム、モノメチル(1−オキソプロピル)フォスフォネート・ナトリウム、モノメチルベンゾイルフォスフォネート・ナトリウム、モノメチル(1−オキソブチル)フォスフォネート・ナトリウム、モノメチル(2−メチル−1−オキソプロピル)フォスフォネート・ナトリウム、アセチルフォスフォネート・ナトリウム、モノメチルアセチルフォスフォネート・ナトリウム、アセチルメチルフォスフォネート・ナトリウム、メチル4−(ヒドロキシメトキシフォスフィニル)−4−オキソブタノエート・ナトリウム塩、メチル−4−オキソフォスフォノブタノエート・モノナトリウ厶塩、アセチルフェニールフォスフィネート・ナトリウム塩、(1−オキソプロピル)ペンチルフォスフィネート・ナトリウム、メチル−4−(ヒドロキシペンチルフォスフィニル)−4−オキソブタノエート・ナトリウム塩、アセチルペンチルフォスフィネート・ナトリウム、アセチルエチルフォスフィネート・ナトリウム、メチル(1,1−ジメチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム、(1,1−ジエトキシエチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム、(1,1−ジエトキシエチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム、メチル−4−(ヒドロキシメチルフォスフィニル)−4−オキソブタノエート・リチウム塩、4−(ヒドロキシメチルフォスフィニル)−4−オキソブタノイックアシッド・ジリチウム塩、メチル(2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−チアゾリディン−2−イル)フォスフォナイト・ナトリウム塩、(2−メチルパーヒドロ−1,3−ディアジン−2−イル)フォスフォナイト・ナトリウム塩、アセチルフォスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジエトキシエチル)フォスフォナイト・ナトリウム塩、(1,1−ジエトキシエチル)メチルフォスフォナイト・ナトリウム塩、メチル(2−メチルオキサチオラン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2,4,5−トリメチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1,1−プロポキシエチル)フォスフィネート・ナトリウム塩、(1−メトキシビニル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、(1−エチルチオビニル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチルパーヒドロ−1,3−ジアジン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチルパーヒドロ−1,3−チアジン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−ジアゾリジン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−チアゾリジン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、(2,2−ジシアノ−1−メチルエチニル)フォスフィネート・ナトリウム塩、アセチルメチルフォスフィネートオキシム・ナトリウ厶塩、アセチルメチルフォスフィネート−O−ベンジルオキシム・ナトリウム塩、1−[(N−エトキシイミノ)エチル]メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−フェニルイミノエチル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−フェニルヒドラゾンエチル)フォスフィネート・ナトリウム塩、[1−(2,4−ジニトロフェニルヒドラゾノ)エチル]メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、アセチルメチルフォスフィネートセミカルバゾン・ナトリウム塩、(1−シアノ−1−ヒドロキシエチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、(ジメトキシメチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、フォーミルメチルフォスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−オキソプロピル)フォスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルフォスフィネート・ドデシルグアニジン塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルフォスフィネート・イソプロピルアミン塩、アセチルメチルフォスフィネートチオセミカルバゾン・ナトリウム塩、1,3,5−トリブチル−4−メチルアミノ−1,2,4−トリアゾリウム(1,1−ジメトキシエチル)−メチルフォスフィネート、1−ブチル−4−ブチルアミノメチルアミノ−3,5−ジプロピル−1,2,4−トリアゾリウム(1,1−ジメトキシエチル)−メチルフォスフィネート、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイドナトリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイドカリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイドのアンモニウム塩などが挙げられる。さらに、特開2000−159621号公報に記載されている化合物も挙げられる。
これら(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類及び水溶性アシルフォスフィンオキサイド類の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイドナトリウム塩が特に好ましい。
上記光重合開始剤として用いられるチオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩としては、例えば、チオキサントン、2−クロルチオキサンセン−9−オン、2−ヒドロキシ−3−(9−オキシ−9H−チオキサンテン−4−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(1−メチル−9−オキシ−9H−チオキサンテン−4−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(1,3,4−トリメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライドなどが使用できる。
これらチオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩の中でも、特に好適なチオキサントン類は、2−クロルチオキサンセン−9−オンであり、特に好適なチオキサントン類の第4級アンモニウ厶塩は、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライドである。
上記光重合開始剤として用いられるケタール類の例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等が挙げられる。
上記光重合開始剤として用いられるα−ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ジベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナンスレンキノン、4,4’−オキシベンジル、アセナフテンキノン等が挙げられる。この中でも、可視光域に極大吸収波長を有している観点から、カンファーキノンが特に好ましい。
上記光重合開始剤として用いられるベンゾインアルキルエーテル類の例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
上記光重合開始剤として用いられるα−アミノケトン類の例としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
これらの光重合開始剤の中でも、(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類及びその塩、並びにα−ジケトン類からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。これにより、可視及び近紫外領域での光硬化性に優れ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンランプのいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示す組成物が得られる。
本発明に用いられる重合開始剤(C)のうち化学重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。上記の化学重合開始剤に使用される有機過酸化物は特に限定されず、公知のものを使用することができる。代表的な有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるケトンパーオキサイドとしては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド及びシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるハイドロパーオキサイドとしては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド及びt−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるジアシルパーオキサイドとしては、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるジアルキルパーオキサイドとしては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン及び4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレリックアシッド−n−ブチルエステル等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシエステルとしては、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタラート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート及びt−ブチルパーオキシマレリックアシッド等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシジカーボネートとしては、ジ−3−メトキシパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート及びジアリルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
これらの有機過酸化物の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルパーオキサイドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルパーオキサイドが特に好ましく用いられる。
本発明に用いられる重合開始剤(C)の配合量は特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点からは、重合性単量体成分(A)100質量部に対して、重合開始剤(C)を0.01〜10質量部含有してなることが好ましく、0.1〜5質量部含有してなることがより好ましい。重合開始剤(C)の配合量が0.01質量部未満の場合、重合が十分に進行せず、機械的強度の低下を招くおそれがあり、より好適には0.1質量部以上である。一方、重合開始剤(C)の配合量が10質量部を超える場合、重合開始剤自体の重合性能が低い場合には、十分な機械的強度が得られなくなるおそれがあり、さらには組成物からの析出を招くおそれがあるため、より好適には5質量部以下である。
好ましい実施態様では、重合促進剤(D)が用いられる。本発明に用いられる重合促進剤(D)としては、アミン類、スルフィン酸及びその塩、アルデヒド類、チオール化合物などが挙げられる。
重合促進剤(D)として用いられるアミン類は、脂肪族アミン及び芳香族アミンに分けられる。脂肪族アミンとしては、例えば、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミンなどが挙げられる。これらの中でも、組成物の硬化性及び保存安定性の観点から、第3級脂肪族アミンが好ましく、その中でもN−メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンがより好ましく用いられる。
また、芳香族アミンとしては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、組成物に優れた硬化性を付与できる観点から、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル及び4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。
重合促進剤(D)として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、例えば、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが特に好ましい。
重合促進剤(D)として用いられるアルデヒド類としては、例えば、テレフタルアルデヒドやベンズアルデヒド誘導体などが挙げられる。ベンズアルデヒド誘導体としては、ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−メチルオキシベンズアルデヒド、p−エチルオキシベンズアルデヒド、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒドなどが挙げられる。これらの中でも、硬化性の観点から、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒドが好ましく用いられる。
重合促進剤(D)として用いられるチオール化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、チオ安息香酸等が挙げられる。
本発明に用いられる重合促進剤(D)の配合量は特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点からは、重合性単量体成分(A)100質量部に対して、重合促進剤(D)を、0.001〜10質量部含有してなることが好ましく、0.001〜5質量部含有してなることがより好ましい。重合促進剤(D)の配合量が0.001質量部未満の場合、重合が十分に進行せず、機械的強度の低下を招くおそれがあり、より好適には、0.05質量部以上である。一方、重合促進剤(D)の配合量が10質量部を超える場合には、十分な機械的強度が得られなくなるおそれがあり、より好適には5質量部以下である。
本発明の歯科用組成物は、充填材(B)以外の充填材(E)を含んでいてもよい。充填材(E)は、無機充填材、有機充填材、有機−無機複合充填材のいずれであってもよく、好適には無機充填材である。
当該無機充填材としては、各種ガラス類(二酸化珪素を主成分とし、必要に応じ、重金属、ホウ素、アルミニウム等の酸化物を含有する。例えば、溶融シリカ、石英、ソーダライムシリカガラス、Eガラス、Cガラス、ボロシリケートガラス(パイレックス(登録商標)ガラス)等の一般的な組成のガラス粉末;バリウムガラス(GM27884、8235、ショット社製、Ray−SorbE2000、Ray−SorbE3000、SpecialtyGlass社製)、ストロンチウム・ボロシリケートガラス(Ray−SorbE4000、SpecialtyGlass社製)、ランタンガラスセラミックス(GM31684、ショット社製)、フルオロアルミノシリケートガラス(GM35429、G018−091、G018−117、ショット社製)、などの歯科用ガラス粉末。)、各種セラミック類、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイトなど)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、フッ化イットリウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、硬化後の表面からフッ素イオン徐放性を期待する場合、フルオロアルミノシリケートガラス、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムなどのフッ素イオン徐放性フィラーを添加することもできる。
前記無機充填材は、充填材(B)と同様に、重合性単量体と組み合わせて歯科用組成物に用いることから、該無機充填材と重合性単量体との親和性を改善したり、該無機充填材と重合性単量体との化学結合性を高めて複合材料の機械的強度を向上させるために、予め表面処理剤で表面処理を施しておくことが望ましい。かかる表面処理剤としては充填材(B)で例示した有機金属化合物を同様に用いることができる。
前記無機充填材の平均粒子径は、硬化物の研磨滑沢性の点から0.1超〜1.0μmが好ましく、0.2〜0.7μmがより好ましい。この場合、ペーストの操作性を損なわない限り任意の配合量で含んでもよく、好ましくは重合性単量体成分(A)100質量部に対して、50〜1000質量部であり、より好ましくは100〜500質量部である。なお、無機充填材の平均粒子径は、前述した充填材(B)の平均粒子径と同様にして測定することができる。
本発明の歯科用組成物には、目的に応じて、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、着色剤、抗菌剤、X線造影剤、増粘剤、蛍光剤などをさらに添加することもできる。
例えば、抗菌性を期待する場合は、例えば、セチルピリジニウムクロライド、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイドなどの抗菌活性を有する界面活性剤や光触媒性酸化チタンを添加することができる。
粘性や塗布性を調整する場合は、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴムなどの増粘剤や、平均粒子径が0.1μm以下のミクロフィラー〔例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル、アエロキサイドAluC、アエロキサイドTiO2P25、アエロキサイドTiO2P25S、VP Zirconium Oxide 3−YSZ、VP Zirconium Oxide 3−YSZ PH〕、フッ化イッテルビウム、フッ化イットリウム等を添加することができる。
前記ミクロフィラーは、充填材(B)と同様に、重合性単量体と組み合わせて歯科用組成物に用いることから、該ミクロフィラーと重合性単量体との親和性を改善したり、該ミクロフィラーと重合性単量体との化学結合性を高めて複合材料の機械的強度を向上させるために、予め表面処理剤で表面処理を施しておくことが望ましい。かかる表面処理剤としては充填材(B)で例示した有機金属化合物を同様に用いることができる。
ミクロフィラーの平均粒子径としては、0.1μm以下であれば何ら制限なく用いることができるが、5〜50nmが好ましく、10〜40nmがより好ましい。ミクロフィラーの配合量は、重合性単量体成分(A)100質量部に対して、10〜50質量部が好ましい。なお、ミクロフィラーの平均粒子径は、ミクロフィラー粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、無作為に選択した100個の粒子の粒子径の平均値として測定できる。なお、粒子が非球状である場合には、粒子径は、粒子の最長と最短の長さの算術平均をもって粒子径とし、凝集粒子である場合には、一次粒子の粒子径とする。
本発明の歯科用組成物によれば、高い機械的強度を有する硬化物が得られる。さらに、本発明の歯科用組成物においては、重合性単量体成分(A)と充填材(B)の親和性が高いため、充填材(B)の配合量を高くすることができ、機械的強度をさらに高めることも可能である。また、硬化物が高い研磨滑沢性と透明性を有するため、本発明の歯科用組成物を用いた歯科材料は、審美性に優れたものとなる。また、本発明の歯科用組成物は、ペーストの操作性が良好で適度な流動性や付形性を有し、歯科用インスツルメントへの付着、べとつきが抑制されており、取り扱い性に優れている。
本発明の歯科用組成物は、常法に従い、例えば、歯科用複合充填材料、歯冠用材料、合着用材料などの歯科用コンポジットレジン、歯列矯正用接着剤、窩洞塗布用接着剤及び歯牙裂溝封鎖材などの歯科用接着剤、義歯床用材料、義歯床用粘膜調整材、フィッシャーシーラント、歯面や歯科用補綴物へのコーティング剤、表面滑沢剤、歯科用マニキュアなどの歯科材料として好適に用いることができる。また、本発明の歯科用組成物を重合硬化した硬化物を成型加工して、人工歯、義歯、CAD/CAM用レジンブロック等としても用いることができる。これらの中でも、本発明の歯科用組成物は、歯科用コンポジットレジンとして有利に用いることができ、当該コンポジットレジンは、硬化物の機械的強度、研磨滑沢性、及び透明性に優れ、かつペーストの操作性が良好なコンポジットレジンとなる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に制限されるものではない。
〔製造例1〕表面処理非晶質乾燥粉体の製造
オキシ塩化ジルコニウム250kg(ZrOCl2・8H2O、太陽鉱工(株)製)を温度15℃の純水4375kgに加えて攪拌し、オキシ塩化ジルコニウムを溶解させた。
前記オキシ塩化ジルコニウム水溶液に、15重量%濃度のアンモニア水250Lを攪拌下でゆっくりと添加して、15℃の温度条件下で前記オキシ塩化ジルコニウムの中和反応を行い、酸化ジルコニウム水和物の沈殿を含むスラリーを得た。このスラリーのpHは8.5であった。
次いで、このスラリーを濾過し、得られたケーキ状物質を純水で繰り返し洗浄して、前記中和反応での副生物や未反応物などを除去した。その結果、酸化ジルコニウム水和物をZrO2換算基準で10重量%含み、残余物が水分であるケーキ状物質860kgを得た。
次に、前記酸化ジルコニウム水和物を含むケーキ状物質5416gに純水45800gを加え、さらに攪拌しながら純度85%の水酸化カリウム(関東化学(株)製)1024gを添加してアルカリ性にした後、過酸化水素(林純薬工業(株)製)を35重量%含む過酸化水素水10248gを添加した。
さらに、この混合水溶液を攪拌しながら1時間、放置し、前記酸化ジルコニウム水和物を解膠して水溶液中に溶解させた。次いで、純水を冷凍して得られた氷水39991gを加えて、発熱反応によって温度が上昇した前記水溶液を30℃以下の温度に冷却した。これにより、ZrO2換算基準でジルコニウム成分を0.5重量%含み、pHが約11の混合水溶液102400g(以下、調製液1Aという)を得た。
市販の水ガラス10kg(旭硝子エスアイテック(株)製)を純水38kgで希釈した後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)を用いて脱アルカリして、pHが3で、SiO2濃度が4重量%の珪酸液9kgを調製した。その後、この珪酸液10768gと純水14860gを混合し、2重量%の珪酸液25628gを調製した。
次いで、平均粒子径12nmのシリカ系微粒子を30重量%含むシリカゾル3336g(触媒化成工業(株)製 SI-30)に純水47900gを加えて十分に撹拌し、シリカ系微粒子濃度2重量%のシリカゾル51236gを得た。
次に、前記シリカゾルを90℃に加熱し、これを撹拌しながら、これに前記調製液1A51200gと前記珪酸液の水溶液12814gとを10時間かけてゆっくりと添加した。これにより、pHが約11の混合水溶液115250g(以下、調製液1B-(1)という)を得た。
次いで、前記調製液1B-(1)を陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、SK1BH)で処理して脱アルカリした。これにより、pHが約9.5の混合水溶液117250g(以下、調製液1C-(1)という)を得た。
さらに、前記調製液1C-(1)中に、上記の場合と同様に、前記調製液1A51200gと前記珪酸液の水溶液12814gとを10時間かけてゆっくりと添加した。これにより、pHが約11の混合水溶液181264g(以下、調製液1B-(2)という)を得た。
次に、前記調製液1B-(2)を陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、SK1BH)で処理して脱アルカリした。これにより、pHが約9.5の混合水溶液182264g(以下、調製液1C-(2)という)を得た。
次いで、前記調製液1C-(2)100200gをステンレススチール製のオートクレーブ(耐圧ガラス工業(株)製)の中に入れ、165℃の温度で18時間、水熱処理を行った。これにより、シリカ系微粒子の表面がジルコニウム原子、珪素原子及び酸素原子を含有する酸化物で被覆された充填材を含む混合水溶液99750g(以下、調製液1Dという)を得た。
次いで、前記調製液1Dを90℃の熱風乾燥機中で予備乾燥し、予備乾燥固体を得た。得られた予備乾燥固体を、さらに200℃の熱風乾燥機中で1時間乾燥した後、振動ボールミルにて1.5時間粉砕し、屈折率1.53、平均粒子径4.9μmの非晶質乾燥粉体(以下、乾燥粉体1Aという)を得た。得られた乾燥粉体1A100質量部に対して、30質量部のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、表面処理非晶質乾燥粉体(以下、乾燥粉体1Bという)を得た。
〔製造例2〕表面処理非晶質焼成粉体の製造
製造例1で得られた予備乾燥固体を800℃に設定した電気炉に投入して1時間熱処理した。熱処理した固体を振動ボールミルにて1.5時間粉砕し、屈折率1.55、平均粒子径6.3μmの非晶質焼成粉体(以下、焼成粉体1Aという)を得た。得られた焼成粉体1A100質量部に対して、30質量部のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、表面処理非晶質焼成粉体(以下、焼成粉体1Bという)を得た。
〔製造例3〕表面処理焼成シリカ粉体の製造
市販のシリカゾル(触媒化成製カタロイドSI−30、平均粒子径10〜14nm)を90℃の熱風乾燥機中で乾燥し、得られた乾燥固体を600℃に設定した電気炉に投入して1時間熱処理した。熱処理した固体を振動ボールミルにて1.5時間粉砕し、平均粒子径5.2μmの焼成シリカ粉体を得た。得られた焼成シリカ粉体100質量部に対して、30質量部のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、表面処理焼成シリカ粉体を得た。得られた表面処理焼成シリカ粉体の屈折率は1.45であった。
〔製造例4〕表面処理焼成ジルコニア粉体の製造
平均粒子径が23nmの市販のジルコニアゾル(第一稀元素製、ZSL−10T)を90℃の熱風乾燥機中で乾燥し、得られた乾燥固体を750℃に設定した電気炉に投入して1時間熱処理した。熱処理した固体を振動ボールミルにて1.5時間粉砕し、平均粒子6.4μmの焼成ジルコニア粉体を得た。得られた焼成ジルコニア粉体100質量部に対して、30質量部のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、表面処理焼成ジルコニア粉体を得た。得られた表面処理焼成ジルコニア粉体の屈折率は2.16であった。
〔製造例5〕表面処理焼成シリカ−ジルコニア凝集粉体
オキシ硝酸ジルコニウム32.5gを325gの蒸留水に溶解した。この溶液を攪拌しながら、市販のシリカゾル(日産化学製スノーテックスOL、平均粒子径40〜50nm)425gを徐々に加え混合液を得た。この混合液を90℃の熱風乾燥機中で乾燥し、得られた乾燥固体を600℃に設定した電気炉に投入して1時間熱処理した。熱処理した固体を振動ボールミルにて1.5時間粉砕し、平均粒子径5.8μmの焼成シリカ−ジルコニア凝集粉体を得た。得られた焼成シリカ−ジルコニア凝集粉体100質量部に対して、30質量部のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、表面処理焼成シリカ−ジルコニア凝集粉体を得た。得られた表面処理焼成シリカ−ジルコニア凝集粉体の屈折率は1.51であった。
〔製造例6〕表面処理バリウムガラス粉体(i)
バリウムガラス「RaySolb E−3000」(Specialty Glass社製)を振動ボールミルで粉砕し、体積中位粒径2.5μmの不定形の無機粒子微粉末を得た。得られた無機粒子微粉末100質量部に対して、1質量部のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、表面処理バリウムガラス粉体(i)を得た。得られた表面処理バリウムガラス粉体(i)の屈折率は1.55であった。
〔製造例7〕表面処理バリウムガラス粉体(ii)
バリウムガラス(ショット社製、GM27884NanoFine180、平均粒子径0.18μm、粒子径範囲0.05〜0.5μm)、100質量部に対して、10質量部のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、平均粒子径0.18μmの表面処理バリウムガラス粉体(ii)を得た。得られた表面処理バリウムガラス粉体(ii)の屈折率は1.53であった。
〔製造例8〕表面処理ミクロフィラー
平均粒子径が20nmの略球状超微粒子(日本アエロジル社製、アエロジル130)100質量部に対して、40質量部のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、表面処理ミクロフィラーを得た。
〔実施例1〜16及び比較例1〜9〕
表1〜3に示す割合で重合性単量体(a)、(b)及び(c)を混合して重合性単量体成分(A)を調製し、該重合性単量体成分(A)100質量部に対して、重合開始剤(C)としてα-カンファーキノン0.5質量部、及び重合促進剤(D)として4−ジメチルアミノ安息香酸エチル1.0質量部を溶解させて、光重合性組成物を調製した。
得られた光重合性組成物に、非晶質乾燥粉体及び/又は非晶質焼成粉体(実施例13〜16ではさらに表面処理バリウムガラス粉体及び/又は表面処理ミクロフィラー)を混合練和して均一にしたものを真空脱泡し、表1〜2に示す実施例1〜16の歯科用組成物を得た。また、上記記載の表面処理焼成シリカ粉体、表面処理焼成ジルコニア粉体、表面処理バリウムガラス粉体又は表面処理シリカ−ジルコニア凝集粉体を混合練和して均一にしたものを真空脱泡し、表3に示す比較例1〜9の歯科用組成物を得た。
なお、表1〜3に示す略号は、以下のことを意味する。
Bis−GMA:2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン
Bis3:2−〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−2−〔4−(2,3−ジメタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル〕プロパン
D2.6E:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数:2.6)
D6E:4−(メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数:6)
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
DD:1,10−デカンジオールジメタクリレート
UDMA:2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート
次に、得られた歯科用組成物の物性を以下の方法に従って調べた。その結果を表1〜3に示す。
[平均粒子径の測定]
製造した充填材の平均粒子径の測定には、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2100:島津製作所製)を用いた。分散媒には、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用いた。
[屈折率]
アッベ屈折計を用い、ナトリウムのD線を光源として、イオウの溶解したジヨードメタン、1−ブロモナフタレン、サリチル酸メチル、ジメチルホルムアミド等を液体として液浸法で測定した。なお、各実施例及び比較例で用いた重合性単量体成分(A)の重合体の屈折率の測定には、カンファーキノンを溶解した重合性単量体を脱泡後、光重合させて得た硬化物を、5mm×10mm×20mmの直方体に成形したものを試験片として用いた。
[曲げ強さ]
歯科用組成物の硬化物の試験片(2mm×2mm×30mm)を作製した。試験片は、37℃の水中に24時間浸漬し、万能試験機(インストロン社製)を用いて、クロスヘッドスピードを1mm/minに設定して、支点間距離20mmで3点曲げ試験法により曲げ強さを測定した。なお、曲げ強さが120MPa以上である場合を良好と判断した。
[操作性]
歯科用組成物を4mmφ×4mmの穴に充填し、ペースト性状について充填操作のしやすさの観点から、以下の評価基準に従って操作性を評価した。
<操作性の評価基準>
A:べたつき、ぱさつきがなく充填操作に優れる
B:べたつき、ぱさつきが若干あるものの、充填操作がしやすい
C:べたつき、ぱさつきが強く、充填操作が困難
なお、A、Bが実使用レベルである。
[透明性]
歯科用組成物の硬化物の試験片(20mmφ×1.0mm)を作製した。分光測色計(ミノルタ社製、CM−3610d)を用いて、試験片の背後に標準白板を置いて色度を測定した場合の明度(L1)と、同じ試験片の背後に標準黒板を置いて色度を測定した場合の明度(L2)を測定し、両者の差(ΔL=L1−L2)を算出して、透明度の指標とした。ΔLの値が大きいほど透明度が高いことを意味し、ΔLが20以上である場合を良好と判断した。
[滑沢性]
製造した歯科用組成物を、テフロン(登録商標)製の金型(10mm×30mm×1mm)に充填した。上下面をスライドガラスで圧接し、両面から各2分間光照射して硬化させた。硬化物を金型から取り出した後、800番の耐水研磨紙で研磨した。この研磨面を、松風社製シリコンポイントM3タイプHP13を用いて、注水下30秒間研磨した。特に滑沢性に優れるものについてはA、滑沢性に優れるものについてはB、滑沢性に劣るものについてはCの判定をした。
Figure 0005546790
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以上の結果より、特定の構造を有する重合性単量体(a)、重合性単量体(b)及び重合性単量体(c)を特定の組成比で配合した重合性単量体成分(A)と、シリカ系微粒子と、当該シリカ系微粒子の表面を被覆する、ジルコニウム原子、珪素原子及び酸素原子を含有する酸化物とを含む非晶質の充填材(B)を組み合わせることにより、優れたペーストの操作性を有しつつ、硬化物の機械的強度、透明性、及び滑沢性に優れる歯科用組成物が得られることがわかる。
より具体的には、実施例1〜4の比較より、重合性単量体(a)の配合量が多いほど機械的強度に優れることがわかる。一方、比較例1〜5及び10より重合性単量体の配合比が特定の範囲以外の場合に、機械的強度、操作性を損なうことがわかる。比較例6及び7より、焼成シリカ粉体や焼成ジルコニア粉体を用いた場合には、重合性単量体との屈折率の差が大きくなるため、該歯科用組成物は透明性に劣ることがわかる。比較例8より焼成シリカ−ジルコニア凝集粉体を用いた場合には凝集力が弱く機械的強度に劣ることがわかる。また比較例9より、単に粒子径が大きいバリウムガラスを用いた場合には、滑沢性に非常に劣ることがわかる。
このように、本発明の歯科用組成物は、優れたペーストの操作性を有しつつ、硬化物の機械的強度、透明性、及び滑沢性に優れることが示唆される。
本発明の歯科用組成物は、歯科医療の分野において、天然歯の一部分又は全体を代替し得る歯科材料、特にコンポジットレジンとして好適に用いられるものである。

Claims (9)

  1. 重合性単量体成分(A)、
    シリカ系微粒子と、当該シリカ系微粒子の表面を被覆する、ジルコニウム原子、珪素原子及び酸素原子を含有する酸化物とを含む非晶質の充填材(B)、及び
    重合開始剤(C)を含んでなる歯科用組成物であって、
    前記重合性単量体成分(A)が、水酸基を有する芳香族重合性単量体(a)、水酸基を有しない芳香族重合性単量体(b)、及び脂肪族重合性単量体(c)を含み、
    前記重合性単量体成分(A)中において、重合性単量体(a)、(b)、及び(c)の含有量が、(a)20〜60質量%、(b)20〜60質量%、及び(c)5〜45質量%であり、
    前記充填材(B)において、前記酸化物の被覆が、複数のシリカ系微粒子を被覆しており、
    前記シリカ系微粒子の酸化物の被覆、及び当該シリカ系微粒子に近接するシリカ系微粒子の酸化物の被覆が、伸長して互いに連結した構造を、前記充填材(B)が有する、
    歯科用組成物。
  2. 前記重合性単量体(a)及び前記重合性単量体(b)が、ビスフェノールA骨格を有する、請求項1に記載の歯科用組成物。
  3. 前記重合性単量体成分(A)を重合させた場合に、その重合体の屈折率が1.52〜1.58であり、かつ前記充填材(B)の屈折率が1.52〜1.58である、請求項1又は2に記載の歯科用組成物。
  4. 前記シリカ系微粒子が、2〜300nmの平均粒子径を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の歯科用組成物。
  5. 前記酸化物の被覆を有する複数のシリカ系微粒子が、当該酸化物の被覆において連結して凝集した、多孔質状の粒子構造を充填材(B)が有する請求項1〜4のいずれかに記載の歯科用組成物。
  6. 前記充填材(B)が、焼成体である請求項1〜のいずれかに記載の歯科用組成物。
  7. 前記充填材(B)が、前記酸化物の被覆の上に、有機珪素化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、及び有機アルミニウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物の表面処理層をさらに含む、請求項1〜のいずれかに記載の歯科用組成物。
  8. さらに重合促進剤(D)を含む、請求項1〜のいずれかに記載の歯科用組成物。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載の歯科用組成物を用いたコンポジットレジン。
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